- 1二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 15:21:18
「う、うーん……あれ、いつの間にか寝ちゃってた……。」
「むにゃむにゃ……ちちー ははー」
「……ああ、よく寝た……って、いけない! ボクとした事がうたた寝だなんて、皆に見られでもしたら大変……」
「「「あーっ!!!」」」
「ここって……何処? 私、さっきまでトレセン学園にいたのに……」
「アーニャ分かる、ここアーニャんちじゃない。アーニャんち、もっとあかるくてきれい」
「周りにはデフォルメされたロボットや怪獣のイラスト……床に敷き詰められたやたらとカラフルなタイル……まるでどこかの玩具工場のようにも思えるけど、灯りがついていないじゃないか。」
「真っ暗……ではないけど、なんだかお化けでも出そうな、不気味な雰囲気です……。」
「アーニャここキライ。今すぐ出たい。」
「嘘だ……このボクがこんな薄汚い場所で横になって眠るなんて……ああ、衣装が汚れているじゃないか!」
「早くトレセン学園に帰らないと……あっ。」
「でぐちをおしえろ。さもないと……あっ。」
「ああ。早くフォンテーヌいちの洗濯屋を予約して洗濯させないと……あっ。」
「あなた達は……。」「だれだ、おまえら。」「何者だ、キミ達は!」 - 2二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 15:21:41
- 3二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 15:38:33
「わ、私はウマ娘のスペシャルウィークです! トゥインクルシリーズの出場を目指して、普段は東京都府中市にあるトレセン学園という場所でトレーナーさんや友達と一緒に走りの特訓をしてます。」
「トゥインクルシリーズ……トレセンがくえん?」
「ああ、その辺は後で説明するね!」
「ふふん、そのトレセン学園とやらについては僕は存じないけれど、この僕の経歴の華やかさには敵わないだろう。何せ僕は、水の国フォンテーヌの神にして大スター、フリーナさ!」
「水の国の神……? 大スター……? それって、どこまでが設定ですか?」
「何を疑うべきことがあるんだい! この僕のカリスマ性に、既に君も虜になっているのだろう?」
「あー……これ、流れ的にアーニャのばん?」
「無理にとは言わないけど、名前とどこから来たのかは教えてくれたら嬉しいな。」
「アーニャ・フォージャー。オスタニアからきた。いつもはちちとははとくらしてる。はじめてあうひとにはこういえってちちいってた。」
「自己紹介してくれてありがとう。ところで、『フォンテーヌ』とか『オスタニア』とか、私には馴染みのない地名が出てきたけど……。」
「そういう君こそさっきから『フチュウ』だの『トゥインクル・シリーズ』だの、僕の知らない単語ばかりを左から右に並べるじゃないか。」
「ええっ!?」
「もしも僕の勘が正しければ、僕達はきっと……」 - 4二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 15:50:24
「いせかいてんせー。」
「ええっ!?」
「アーニャ、アニメで観たことある。あるひめざめたらまったくちがうせかいにつれていかれてしまう。かえれるかどうかはわからない。」
「いせかい……異世界転生……?」
「そんな! 異世界転生だなんて、稲妻の娯楽小説の世界のみで起こる単なる絵空事だと思っていたのに……。」
「しかも私達、全く別の世界から飛ばされちゃったみたいだよ……。」
「そんな! 僕は裁判と公演で忙しいのに……。」
「私も、早く戻ってトレーニングをしないと…」
「とけいのみじかいほうのはりがましたをむくまでにかえれって、アーニャちちにいわれてる。」
「………」
「で、でも、こうして自分以外に同じ状況にいる人がいるってだけで、すごく安心したよ。」
「きょうかんする。ひとりでこんなくらいばしょあるいてでぐちさがすの、アーニャやだ。」
「と、いうわけなので。もしよかったら、私達が出口を探すのを手伝ってくれませんか?」
「断る。この僕が、得体の知れない余所者と行動を共にするだなんてあり得ない。そもそも君は、僕達にどんなメリットを与えられるのかい?」 - 5二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 16:05:57
「帽子のお前、けち。」
「い、意地を張ってる場合じゃないよ! せっかくこうして同じ状況の人と会えたんだから……。」
「ケチで結構。それに意地なんて張っていないとも。」
「もしかして、怖いんですか?」
「こ、怖くなんてない! 怖いのは君達のような華やかさに欠ける庶民と行動を共にしたせいで、僕の価値が下がる事だけさ!」
「……ちち、スパイ。はは、ころしや。」
「な、なんだい! 急にぶつぶつと何かを言い出して! それに殺し屋だなんて、子供なのに随分と物騒な言葉を使うものだね、君は!」
「ちち、せんそうふせぐためにスパイしてる。はは、わるいやつころしてくにまもる。」
「それは本当かい、それとも作り話かい? 歌劇の題材にするなら面白そうな設定だとは思うけれど。それにそれが本当であったとして、すごいのは君の父と母であって君自身でないではないか。そもそも僕は……」
「!!」
「確かスペシャルウィークといったかな。どうしたんだい、僕はまだ話の途中……」
「……何か、音がしませんか?」
「何を不気味な事を言うんだい。ここには僕達三人しかいないだろう。」
「……アーニャもきこえる。あしおと、あっちのとびらのむこうから。」
「君まで何を一緒になって! 僕はくだらない冗談に騙されたりしな……えっ。」 - 6二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 16:21:33
「……そんな、君達の言う通りだ。僕の耳にもドンドンと足音のようなものが聞こえる。しかもこの足音、少しづつ大きくなっていないかい?」
「足音だけじゃなくて、扉のすりガラス越しにぼんやりと二つの光る目みたいなものが見えるよ!」
「なんだって! ここはいけない、一旦退却だ!」
「アーニャ、こわい。たべられちゃう。」
「ああ、すぐそこまで来てる!」
「あっ! あそこのパイプから逃げられそうです!」
「とびらがひらいた。アーニャでてきたやつとめがあった。」
「早く! あのパイプに入って!!」
「なんだいあの青い毛むくじゃらの化け物は! 近くにあれに似た人形が落ちているけど、あんなに大きくないよ!」
「わー。ゆっくりだけど追ってくるー。」
「多分あの怪物は今は私達を余裕で狩れると思っているからゆっくり歩いているだけで、本気を出せばもっと速いです! 早く!」
「アーニャいちばんのり!」
「うう……こんなパイプに入る機会、どうかこれが最後であって欲しいものだ!」
「二人とも入ったね。じゃあ私も! ………ってこのパイプ、滑り台みたいになってるよ!?」
「「「うわああああああ!!!!!!」」」