もしもアグネスがルナマリアの代わりにミネルバに着任して居たらpart16

  • 1二次元好きの匿名さん25/01/25(土) 23:59:25

    アグネスが士官学校(ザフトアカデミー)卒業後、親のコネでミネルバに着任し、ルナマリアが入れ替えに月軌道艦隊に着任したいたら…、という何番煎じかわからないSSの16スレ目です。

    アグネスは目の前で次々と発生する出来事に圧倒されつつ、必死に目前の課題をこなそうと躍起になります。色恋沙汰に手を出すどころか、怪我の完治さえままなりません。彼女はカリーニングラード軍管区の地球連合軍に痛打を与えることがゴルディアスの結び目を解く鍵と思っていますが、果たしてその結果は?

    翼に傷を負った大天使は、癒しの海を求めてボスニア湾上空を北に進みます。
    ミネルバは彼らの説得と保護、レニングラード軍管区軍への牽制、スカンジナビア王国への警告を同時にこなさなければなりません。

    彼らは雲の上の人間が進めるチェスの駒に過ぎないのでしょうか。誰がプレイヤーで誰が駒なのか、それを見定めることに意味があるのかも渦中にいる人間には理解しようがないのかもしれません。

    彼ら彼女らは凍てついた海の果てに何を見るのか。

    おつきあいをいただければ。

  • 2二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 00:04:59

    前スレです。

    もしもアグネスがルナマリアの代わりにミネルバに着任して居たらpart15|あにまん掲示板アグネスが士官学校(ザフトアカデミー)卒業後、親のコネでミネルバに着任し、ルナマリアが入れ替えに月軌道艦隊に着任したいたら…、という何番煎じかわからないSSの15スレ目です。アークエンジェル問題を何と…bbs.animanch.com

    1スレです。

    もしもアグネスがルナマリアの代わりにミネルバに着任して居たら|あにまん掲示板アグネスが士官学校卒業ザフトアカデミー、親のコネでミネルバに着任し、ルナマリアが入れ替えに月軌道艦隊に着任したいたら…、という何番煎じかわからないSSを書く予定です。お付き合い頂ければ。bbs.animanch.com

    2スレです。

    もしもアグネスがルナマリアの代わりにミネルバに着任して居たらpart2|あにまん掲示板アグネスが士官学校(ザフトアカデミー)卒業後、親のコネでミネルバに着任し、ルナマリアが入れ替えに月軌道艦隊に着任したいたら…、という何番煎じかわからないSSの2スレ目です。はたして、アグネスは、ルナマ…bbs.animanch.com

    3スレです。

    もしもアグネスがルナマリアの代わりにミネルバに着任して居たらpart3|あにまん掲示板アグネスが士官学校(ザフトアカデミー)卒業後、親のコネでミネルバに着任し、ルナマリアが入れ替えに月軌道艦隊に着任したいたら…、という何番煎じかわからないSSの2スレ目です。己を取り巻く不可解な状況に四…bbs.animanch.com
  • 3二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 00:07:35
  • 4二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 00:10:29

    ※落としてしまった7スレ目です。

    もしもアグネスがルナマリアの代わりにミネルバに着任して居たらpart7|あにまん掲示板アグネスが士官学校(ザフトアカデミー)卒業後、親のコネでミネルバに着任し、ルナマリアが入れ替えに月軌道艦隊に着任したいたら…、という何番煎じかわからないSSの7スレ目です。出世の点数稼ぎの場として『戦…bbs.animanch.com

    再建てされた7スレ目です。

    もしもアグネスがルナマリアの代わりにミネルバに着任して居たらpart7(再立)|あにまん掲示板アグネスが士官学校(ザフトアカデミー)卒業後、親のコネでミネルバに着任し、ルナマリアが入れ替えに月軌道艦隊に着任したいたら…、という何番煎じかわからないSSの7スレ目です。※不注意から一度スレを落とし…bbs.animanch.com

    8スレ目です。

    もしもアグネスがルナマリアの代わりにミネルバに着任して居たらpart8|あにまん掲示板アグネスが士官学校(ザフトアカデミー)卒業後、親のコネでミネルバに着任し、ルナマリアが入れ替えに月軌道艦隊に着任したいたら…、という何番煎じかわからないSSの8スレ目です。戦いに消耗したアグネスとミネ…bbs.animanch.com

    9スレです。

    もしもアグネスがルナマリアの代わりにミネルバに着任して居たらpart9|あにまん掲示板アグネスが士官学校(ザフトアカデミー)卒業後、親のコネでミネルバに着任し、ルナマリアが入れ替えに月軌道艦隊に着任したいたら…、という何番煎じかわからないSSの9スレ目です。C.E.73年- C.E.7…bbs.animanch.com
  • 5二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 00:14:44

    10スレです。

    もしもアグネスがルナマリアの代わりにミネルバに着任して居たらpart10|あにまん掲示板アグネスが士官学校(ザフトアカデミー)卒業後、親のコネでミネルバに着任し、ルナマリアが入れ替えに月軌道艦隊に着任したいたら…、という何番煎じかわからないSSの10スレ目です。遂に開始される『ロゴスとの…bbs.animanch.com

    11スレです。

    もしもアグネスがルナマリアの代わりにミネルバに着任して居たらpart11|あにまん掲示板アグネスが士官学校(ザフトアカデミー)卒業後、親のコネでミネルバに着任し、ルナマリアが入れ替えに月軌道艦隊に着任したいたら…、という何番煎じかわからないSSの11スレ目です。『対ロゴス戦』は本編とはや…bbs.animanch.com

    12スレです。

    もしもアグネスがルナマリアの代わりにミネルバに着任して居たらpart12|あにまん掲示板アグネスが士官学校(ザフトアカデミー)卒業後、親のコネでミネルバに着任し、ルナマリアが入れ替えに月軌道艦隊に着任したいたら…、という何番煎じかわからないSSの11スレ目です。対ロゴス戦争が変え行く世界…bbs.animanch.com

    13スレです。

    もしもアグネスがルナマリアの代わりにミネルバに着任して居たらpart13|あにまん掲示板アグネスが士官学校(ザフトアカデミー)卒業後、親のコネでミネルバに着任し、ルナマリアが入れ替えに月軌道艦隊に着任したいたら…、という何番煎じかわからないSSの13スレ目です。本編を上回るほどの規模とな…bbs.animanch.com

    14スレです。

    もしもアグネスがルナマリアの代わりにミネルバに着任して居たらpart14|あにまん掲示板アグネスが士官学校(ザフトアカデミー)卒業後、親のコネでミネルバに着任し、ルナマリアが入れ替えに月軌道艦隊に着任したいたら…、という何番煎じかわからないSSの14スレ目です。激しい戦いの後、戦女神と大…bbs.animanch.com
  • 6二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 07:45:50

    アークエンジェル撃沈目的じゃなく、保護だから…エンジェルキャッチか、エンジェルシェルター作戦って感じかな?
    …あくまで名目上は、だけど

  • 7二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 09:08:18

    保守

  • 8二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 10:22:13

    アグネス「AWACSディン、カリーニングラード・チカロフスク海軍航空基地の防備は?分かる範囲で構わない」
    AWACSディンパイロット「空港を囲むように地対空75mmバルカン砲塔システムが30門、空港東端にはヘルダートタイプ・ミサイルランチャー5基程度。空港の南斜面に大型砲20門。空港から見て11時の方向7.6㎞の軍事基地にカモフラージュされた50mmガトリング砲が15門程度、同じく1時の方向7.1㎞に15門程度、2時の方向8.5㎞に10門程度」

    シホ「硬いですね。要塞クラスです」
    アグネス「この空港が落ちればカリーニングラード市も陥落しますから。防空部隊はどうなっている?」

    彼女の言を肯定しつつ、続きを聞く。ローエングリンが備え付けられていないだけマシと思うしかない。地下から出てくる可能性も排除は出来ないが…。

    AWACSディンパイロット「防空部隊に関して、ゲルズゲーが3機!陸上モビルスーツはストライクダガー連隊64機。フラブロヴォ空軍基地の防衛を切り捨てらしく、あちらが空になっている代わりに!ドンスコエのストライクダガー隊も隙を衝き輸送機で合流したようです。軍事車両は自走リニア榴弾砲が180両、ブルドックが60両。カリーニングラード配備の装甲戦闘車が市と空港を繋ぐA192線に延々と光の帯を作っています。配置についた装甲車両だけでも75両。おそらく乗ってきた歩兵は携帯ミサイル発射装置を持って展開中と思われます」

    そこに来て上空にはダガーL175機か。彼ら、カリーニングラード市内防衛に必要な分以外は間に合うもの全員を搔き集めたのね。

    それならおそらく-。

    アグネス「市内と東方89㎞のチェルニアホフスクを繋ぐE28線上は?敵地上部隊が全速力で迫っているのでは?」
    AWACSディンパイロット「…はい。リニアガン・タンク旅団とブルドック大隊、機械化歩兵旅団、軍用トラックに積まれたストライクダガー大隊が縦列をなして向かっています。先頭を進んでいる隊は後、35分ほどでカリーニングラードに到着します」

    つまり、ゆっくりしている間などないと。せめてセイバーを一回、ミネルバで充電してもらいたかったけれど、無理みたいね。時間がたつほどに市内から進む機械化歩兵の車列が空軍基地に到着してしまう。

  • 9二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 10:57:41

    アグネス「ハイネ先輩、ルナマリア隊、後、5分後に攻勢に出ます。私達が出払ったら、バルチ―スク飛行場の防衛をお願いします」

    ハイネ「了解!」
    ルナマリア「了解」
    アグネス「ありがとうございます」

    簡潔に答えてくれる二人を心強く思う。彼らに少しでも不安がられたら、こちらが折れてしまいそうな局面だ。

    それともう一つ、かなり苦しいお願いになるけれど…。

    アグネス「アスラン先輩、後一撃できますか?」
    アスラン「分かった。だが、それ以上は無理だ。電力が残り12%。攻撃が終わり次第、電源車に繋いでもらいたい」
    アグネス「ありがとうございます。ある程度、貯まったらミネルバに行ってください。アークエンジェルのことを…」
    アスラン「それは皆でマルボルクに帰ってからだ。そう言う約束だっただろう!」

    覚えていてくれたのか…。キラ・ヤマトとアスハ代表とアークエンジェルのことが心配でたまらないだろうに。

    アグネス「はい。『皆で帰りましょう。あの部隊を墜として空港を焼けば勝利です』」
    一同「了解!」

    皆にコックピット回線で呼びかけ、その返事を聞いて自分も覚悟を固める。やるしかない!

    アグネス「カオスの突入と共に作戦を決行します。アスラン先輩は任意に最善の一手を。シホ先輩は私のフォローを。他の者は、バビは高高度から攻撃、ディンはその護衛、グフ隊はやや下を飛んで対ビームシールドで下から飛んでくる榴弾とミサイルから仲間を守れ。
    小隊ごとに連携を、中隊長はその調整とバビ隊の空爆、グフ隊の斬り込みのタイミングの指示を」
    アスラン、ギーベンラート教導航空団「了解!」

    5分後、充電率が30%を超えた瞬間に、電源コードを抜いてカオスをモビルアーマー形態のまま離陸させる。
    予備として届いたグフの対ビームシールドを両腕で取り前方に構える。左腕には自機の巡航機動防盾をマウントしている。
    『荷物』が増え少しだけ速度が落ちるかも知れないが、皆の前に立って突っ込む都合上、止むを得ない。
    私に各機がコードを引き抜き空に上がる。

  • 10二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 12:03:18

  • 11二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 17:33:35

    バルチ―スク飛行場を東北東2時の方向に向けて飛び立つ。まず、飛行場に続々と駆けつけつつある地上からの援軍を切断しなければいけない。

    そのためにはこの方向に39.6㎞飛行して、カリーニングラード市外周を廻りバルチ―スクに伸びるウーリツァ・ボリシャヤ・オクルジュナヤ道とカリーニングラード・チカロフスク海軍航空基地の傍を通るA192線の交わるジャンクションを破壊しなければいけない。

    より正確に言うなら、ジャンクションの上を埋めている機械化歩兵の縦列を爆撃すると言うこと。道路が破壊され、炎上中の装甲戦闘車だらけになれば、一時的にしろ敵の進軍は止まる。

    ただ、そのためには航空基地の真ん前を南西から北西にかけて飛行しなければいけない。

    アグネス「(ある意味、最高の囮ね。よろしい)」
    アグネス「これまで通り私が先行する!難しい局面だわ。後続する中隊は中隊長の指揮の下、私とシホ先輩の戦闘の動向を注視し、戦力投下ポイントを決定せよ。続け!」
    ギーベンラート教導航空団「了解!」

    皆より大きく突出して中程度の高さを飛行、斜め後方にシホ先輩のグフが続く。彼女も今回は対ビームシールドを3枚持って飛ぶ。左腕にマウントしている1枚と両手に持っている2枚、無論、戦闘となれば投げ捨てるつもりだわ。

    2時方向に22㎞、ヴィスワ砂洲北端にあるバルチ―スク飛行場からヴィスワ潟を突っ切って陸地の差しか勝ったタイミングで敵の攻撃が開始され、砲火が私たち2機に集中する。

    航空基地上空を飛行するダガーL175機のジェットストライカーからはヴュルガー空対空ミサイルが3連装のポッドを空にして525本発射される。空港東端のヘルダートタイプ・ミサイルランチャー5基からは対空防御ミサイルが50発発射、地上のブルドックが60両からは480本のミサイルが飛び出し、コックピットレーダーを1055の閃光が埋め尽くす。

    南斜面に備え付けられた大型砲20門、空港周囲の軍事基地から覗く50mmガトリング砲40門、空港自体を守る地対空75mmバルカン砲塔システム30門と自走リニア榴弾砲180門も一斉に火を噴きだす。

    無数の文字通り無数の火線が暗闇の空を上下に駆け抜け、まるでゲームの戦闘場面のように見える。何時も無茶苦茶な戦場を駆け回って来たけれど、この規模の弾幕を身に受けるのは流石に初めてだ。

  • 12二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 17:38:23

    でも、これで私達の勝ちは確定した!

    アグネス「(カオスの雷名に恐れをなしたのか、何にせよ敵は景気よく撃ち過ぎだわ。あれではすぐ弾切れよ。私の後ろに続く者達が彼らを必ず倒す)」

    だから、私とシホ先輩は生き残り、突進を完遂することが使命。攻撃は予想通り、私達から見て左斜め下と左斜め上空から飛来してくる。そのためにモビルスーツの左腕には横と前、計2枚の盾を持って来たのだ。無論、右手の盾も使う。こちらは腹を、コックピットを守るためだ。ここを凌ぐためなら何でも使う!

    中程度の高度から機体をジグザグ飛行しながら一気に地面擦れ擦れまで降下する。シホ先輩も同様に動くがジグザグの方向は逆向きだ。少しでも当たる確率を下げる。

    上空から飛んできたミサイルは私達が避けるたび、数発、数十発と地面にぶつかり大爆発を起こす。地面で爆発する無数の花火がヴィスワ潟の輪郭をくっきり浮かびあげる。水面に落ちた砲弾とミサイルは特大の水柱を何本も巻き上げる。

    飛び散る破片と地面から吹き上がる石と砂のつぶて、そして爆風が機体に吹き付け装甲を鬼のように連続ノックする。シホ先輩のグフの装甲もガリガリ、ガリガリ削れて行く。風にあおられて操作を誤らないよう、私達は必死だ。

    決死の意思と極度の冷静さが同時に求められる。破れかぶれの蛮勇では直ぐに無駄死にしてしまう。

    シホ先輩の前を飛び、回避不可能な軌道の榴弾と砲弾は一発でも多く受け止めるよう努める。特にグフにはヴァリアブルフェイズシフト装甲はない。私が頑張るほかない。

    カオスの右手で扱うグフの対ビームシールドは50発近い砲弾を受けて表面に罅が入り始めている。もう長くはない。

    避けきれないミサイルは焼き落とすしかない。回避、降下飛行を実行しつつも、斜め上に機首を上げる。そして、カリドゥス改・複相ビーム砲からビームの猛火を夜の帳を焼き払うように噴き出す。

    炎に吞まれたヘルダートミサイルとヴュルガー空対空ミサイルは次々と爆発し、近くを飛来中だったミサイルもそれに巻き込まれる。

    その瞬間、光が空を明るく照らしカリーニングラードが昼に戻ったような錯覚に陥る。しかし、誘爆したミサイルの後ろから後ろから次のミサイルが飛んでくる。

  • 13二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 17:46:26

    瞬時に機体を縦ロールし、モビルスーツ形態に変形を終え、仰向け飛行を開始する。左腕の盾にもミサイルと砲弾がガンガン当たっている。

    この我慢比べ、怖気づいた方が負ける。メインカメラにチラっと移る副隊長機は健在だ。それだけで今は良いわ。

    空を見上げながら12.5mmCIWSをフル回転させる。もう撃ち尽くす勢いで連射して、数十発のミサイルを天空で爆散させる。

    また大誘爆が起こり、再び空が昼になり、次の瞬間には夜に引き戻される。コックピットモニターが明暗を自動調整してくれていなかったら、コーディネイターとは言え視覚が麻痺していただろう。

    この間、水平方向からの砲弾は右腕の盾で防ぐが、隙を逃すまいと飛行場周囲の全砲弾がカオスに集中、直ぐに弾けるような音が響いた後、盾は破砕されてしまう。直後にカオスの頭頂部と両肩に大型砲と榴弾砲が炸裂する。

    アグネス「痛っ!」

    「痛い」じゃすまされない衝撃が私を襲うが、結構。その分、シホ先輩を守ることが出来た。この無茶につき合わせたせいで彼女に何かあれば、イザーク先輩はあの世まで追っかけて叱りつけてきそうだわ。

    それに極度の興奮状態、実は痛みなど感じてはいない。

    さて、残った盾を持ち換え、左腕は面積の広いグフの対ビームシールドを構える。

    航空基地前の斜面が遂に目前に!

    12.5mmCIWSを使ったミサイルの迎撃が終わり、機体を再びモビルアーマーに変形させ、姿勢を元に戻すやカリドゥス改・複相ビーム砲を南斜面の大型砲群に向け照射開始する。

    猛火に薙ぎ払われた大型砲が一度に10門炎上、傍の弾薬にも引火し空港の敷地が明かりで丸見えになる。同時に機動兵装ポッドからビーム突撃砲を発射し、さらに2門の大型砲を破壊する。

    装甲戦闘車のバルカン砲と対空ミサイル、散開した歩兵が発射する携帯ミサイルが火の豪雨となって斜め下から吹き付けるので、こちらも胸部20mmCIWSをフル回転し、20両の戦闘車両と2個小隊60名の命を消し飛ばす。

    迎撃しきれなかったミサイルと砲弾は巡航機動防盾の表面を強打し続け、その衝撃はカオスの右腕を伝わってコックピットまで振動させる。

  • 14二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 17:59:24

    その攻撃の切れ間にもピクウス 76mm近接防御機関砲を回転させ、1個中隊200名ほどを肉片に変え、15両の装甲戦闘車を穴だらけにする。

    ダガーLからは集中豪雨のようなビームがM703kビームカービンから降り注ぎ始め、それを左腕の対ビームシールドで防ぎながら、猶、前進を続ける。

    このままでは私の急接近を止められない、そう観念したゲルズゲーがストライクダガー中隊と共に斜面に這い進む。地球連合軍としては、出来れば、後続の『本隊』のため、温存したかったはず。上手くやれたわ。

    巨虫が2丁のビームライフルと下半身の前脚部先端のビーム突撃砲2門をカオスに向け、ストライクダガー24機もそれに倣ったことろで、私にとっての救世主が降臨する。

    アスラン「はぁぁっ!」

    私と後続のシホ先輩を狙うのに意識を取られていたダガーLの編隊に割り込む形でセイバーは突入、スーパーフォルティスビーム砲2門で敵飛行隊8機を撃ち落とす。

    そのまま機首を下にして、アムフォルタス・プラズマ収束ビーム砲を私の前に立ちはだかろうとしたゲルズゲーとストライクダガー中隊に浴びせかける。

    殆んど反射的にゲルズゲーのパイロットは陽電子リフレクタービームシールド『シュナイドシュッツSX1021』を展開し、自機と仲間の中隊を守る。
    そのドームを思わせるリフレクターシールドが消え切る前に、急降下してきたセイバーはモビルスーツ形態に変形を終え、両手で引き抜いたビームサーベルをゲルズゲーの機体側面に突き立て、護衛のストライクダガー1機を両断している。

    あまりの手際に呆然としている残りの11機の内、6機をスーパーフォルティスビーム砲の連射で撃ち抜くと再びモビルアーマー形態に変形して闇の帳の中へ消えていく。

    セイバーは完全にフェイズシフトダウン一歩手前だわ。フェイズシフトダウンしていないのは私の左側で生じた8つの閃光が照らして知らせてくれた。

    アグネス「(アスラン、ありがとうございます)」

    カオスの上空、編隊をかき回された上、飛び退るセイバーに注意がそれたダガーLに向け、ファイヤーフライ・誘導ミサイルをここで全弾撃ち、24機の敵機を頭上で爆散させる。

  • 15二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 18:03:01

    そして、チャージが終わったカリドゥス改・複相ビーム砲を薙ぎ払い、生き残りのストライクダガー4機と大型砲8門を燃やし尽くす。これで南斜面の脅威は一掃されたのだと、無感情にそれを認識する。


    しかし、その歓喜は一瞬でかき消され、冷たい現実が首元に刃を突き付ける。生死の狭間を跳び越え、まだここまで...。


    アグネス「(残りの電力は…。20%か。随分、持っている、そう思わないと)」


    正直心もとない。でも、まだ終われない。もう少し頑張れ。もう少しだから。


    (カウントMS921〈+共同撃破多数〉 デストロイ2(共同)  セカンドシリーズ1(共同) 大型MA21(共同2) 

    戦闘機46 対MS戦闘ヘリコプター245 大型輸送機33〈+共同撃破多数〉 VTOL輸送機33〈+共同撃破多数〉

    リニアガン・タンク141〈+共同撃破多数〉 自走リニア榴弾砲210〈+共同撃破多数〉 ブルドック190〈+共同撃破多数〉 工兵車60<+共同撃破多数> レーダー車7 汎用車両・兵站車両・軍用トラック等297〈+共同撃破多数〉

    地対空75mmバルカン砲塔システム7  大型砲20

    空母11 イージス艦16 フレーザ級5 大型輸送艦1 コルベット艦2 哨戒艇1 軍用艇3 アガメムノン級14 ネルソン級14 ドレイク級17 リフレクターシールド装備型ドレイク級10)

  • 16二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 22:35:37

    上空のダガーL部隊は、セイバーとカオスの攻撃で一度に32機を撃ち落とされ混乱している。本来こう言った瞬間に主力を投入して勝負をつけるべきなのだけれど、多数の防空部隊の援護がそれを阻む。

    アグネス「(横着は出来ないと言うことね。ワンステップずつ進めるしかない)」

    機動兵装ポッドから伸ばしたビーム突撃砲でヘルダートタイプ・ミサイルランチャー2基を撃破し、右手に構えた巡航機動防盾からは、ピクウス 76mm近接防御機関砲を発射する。

    ピクウス 76mm近接防御機関砲の標的は空港敷地内道路に陣取るブルドック、機関砲の回転と共に爆発炎上していく。ブルドックの炎上と時間差で大爆発を起こすヘルダートタイプ・ミサイルランチャーが現場の混乱を加速させていく。爆発の規模から考えて、次の対空防御ミサイルを補充している最中だったのだろう。

    付近の軍人・軍属も爆発に巻き込まれ、燃えながら転がる者、バラバラに四散する者、中には20メート以上の高さまで吹き飛ばされて滑走路に叩きつけられる者も視認できる。

    ただ、それ以上に悲惨なのは目や耳を押さえて呻きよろめきながら彷徨い出す者達の方だ。痛みと喪失感に嫌なリアルさがある。それに身体は無事に見えるものに内部損傷でもう助からないもだえ苦しむ兵士たち、かれらを見ると込み上げてくるものがある。

    それでも機関砲を止めるわけにはいかない。高速で移動しながらの斉射では有るが、ブルドック30両を撃破し、炎上させる。ブルドック隊は、再序盤に弾切れを起こしていたため、ダガーL隊、ストライクダガー隊、ゲルズゲー隊三者からの注意が疎かだった。狙い目とはこのこと、と言える。

    弾切れを起こしたからと言って、彼らは無力化されてなどいない。現に乗員は弾薬車から、予備のミサイルを運び出し、補充作業をしていたのだから。それで部下を撃たせるわけにはいかない。

    そんなこと地球連合軍も冷静に考えれば分かることなのに、異常事態が彼らを極度の視覚狭窄状態にして、普段見えるはずのものを見えなくしている。機動兵器パイロット達は空港施設と弾切れを起こしていない自走リニア榴弾砲の防衛で必死だった。

    その結果、再補充、再発射が間に合わなかった対モビルスーツミサイルが車両ごと何十発も地上で爆散し、弾薬車両まで巻き込む大惨事となる。

  • 17二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 22:38:55

    ゲルズゲー2機は咄嗟に陽電子リフレクターを起動し、自機周辺の施設とモビルスーツ、軍用車両と人員を守る。ストライクダガーも対ビームシールドで庇えるだけの味方を庇い、損害の最小化に務める。それでも9両ほどの自走リニア榴弾砲と11両の装甲戦闘車の撃破は防ぎようが無かった。

    敵の失血を最大化するため、これ等の攻撃と共に胸部20mmCIWSを用いた装甲戦闘車と歩兵の排除も続行する。急速に減っていく残弾と引き換えに22両の戦闘車と1個中隊以上の歩兵を屠る。彼らの残骸と亡骸で空港南の斜面と敷地の端は埋め尽くされて行く。

    カオスの左手に構えていた対ビームシールドが弾けるような音と共にバラバラになる。この空港を守る丘側の要塞群から轟いた45門の50mmガトリング砲に耐え切れなくなったのだ。

    防ぎきれなかった砲弾がカオスの左上半身に4、5発命中し、そこを狙った地対空75mmバルカン砲塔システムも至近距離から猛火を浴びせかけ、20発近い弾丸が命中してしまう。自走リニア榴弾砲の榴弾も15発近く命中しコックピットに衝撃が何度も襲ってくる。

    アグネス「く…」

    頭の中で星が光り、耳鳴りがした後、前を見るとコックピットモニターに罅が入っている。慌ててカオスの右手に持つ巡航機動防盾を左手に持ち替える。もう盾は1枚しかない。

    アグネス「(シホ先輩は…。良かった無事だわ)」

    私に攻撃が集中していること、彼女の操縦技術が高いこと、その2点で斜め後ろを飛ぶグフは健在だ。ただ、彼女の盾も3枚から1枚に数が減っている。ビームとは違う脅威が実体弾にはある。

    ただ、これでカオスの右腕が空き、高エネルギービームライフルを使う思い切りがつけられた。
    新たに握りしめた高エネルギービームライフルとビーム突撃砲でヘルダートタイプ・ミサイルランチャー3基を撃ち抜き、前後して、近くの地対空75mmバルカン砲塔システムを片っ端からビームクローで蹴とばし5基潰す。

    装填されたばかりの対空防御ミサイルが各基10発ずつ、次弾以降も含めればそれ以上が誘爆するのだから、その規模たるや凄まじい。ただ、空港施設、基地防空隊への被害は限定的だ。基地東側からの大爆発をゲルズゲーの陽電子リフレクタービームシールド『シュナイドシュッツSX1021』は抑えて見せた。

  • 18二次元好きの匿名さん25/01/26(日) 22:45:27

    今回、あの2機はこれまでの教訓を生かし、敢えて浮上せず、地面に張り付いて『大盾』に徹することで空港の防衛に貢献し続けている。

    しかし、思わぬ効果が上空の戦場で発生する。ヘルダートタイプ・ミサイルランチャー3機の大爆発の煽りを受け、ダガーL隊は急遽、飛行高度を変更し、その結果、地上防空隊との相互連携が一瞬途絶する。

    ギーベンラート教導航空団各中隊長「今だ!バビ隊、全機アルドール複相ビーム砲発射せよ!」
    バビ隊「了解!」

    ダガーL隊が私とシホ先輩に気を取られている間、我等のバビとディン隊は敵の翼包囲に成功していたのだ。これは私も気が付いていなかった。視野狭窄は私も敵といい勝負だわ。

    中隊長たちは、ダガーL隊のジェットストライカーの3連装ヴュルガー空対空ミサイルポッドが空になり、地上を吹き荒れる大爆炎・爆風が自走リニア榴弾砲の耳目を潰した瞬間を見逃さなかった。ベラルーシ上がりの経験がそんなふうに生きるとはね。

    33の大ビーム砲が十字砲火を成功させ、暗黒の空に太く赤い閃光が数十幾つもの真っ赤な太い火線が走り抜ける。その後に焼き尽くされた99機ダガーLと人体の残骸が地上にボトボトと落下していく。

    その有様をどう受け取れば良いかも分からないまま、カオスは遂に目標のジャンクションを射程に捉え、カリドゥス改・複相ビーム砲で十字路と4つのループ、1つの大ループの路上に存在した装甲戦闘車と歩兵達を舐め尽くすように焼き払っていく。

    アグネス「(これでカリーニングラードから、カリーニングラード・チカロフスク海軍航空基地への救援の道は断たれた)」

    炎が舐めた後は捲れ上がり、溶け固まったアスファルトと70両を超える燃え上がる撃破車両、800体近い黒焦げの人間だけが残される。

    暗闇に立ち込める赤いちろちろした焔と立ち込める黒煙、それを目の当たりにして、自分の中の何かも燃え尽きてしまった。戦場に有るまじき虚脱感と虚無感、喪失感が不意に私を呑み込み意識を混濁させ始める。

    アグネス「(こんなもののために私は戦ってきたの…。私はもっとキラキラしたもののため、アカデミーの門を潜ったはず。それがあんまものなのか。私の数か月の戦果がこれなのか?)」

    まだ、砲火は止まってなどいないのに、震えとも慄きともつかない感情が私の身体を強張らせ、離してくれない。

  • 19二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 03:17:44

    息を整えろ。息を吐いて、吐いて、止めて、数を数えながら1回吸って、吐いて、吐いて-。
    ガン、ガン、ガンッ!ガガンと無数の砲弾がカオスを打ち付けている。巡航機動防盾でコックピットとバイタル部を守る癖が無ければ今頃死んでいた。

    シホ「隊長!ご無事ですか?」

    シホ先輩の叫ぶような声がコックピット回線を伝わってくる。彼女の狼狽した顔を目にするのは初めてかもしれない。

    何でも、この方は先の大戦最末期、プラントに撃ち込まれる核から人々を守るため体当たり攻撃を敢行しようとしたことがあるそうだわ。あくまで噂を耳にしただけだから、本人には何も言わないけれど、陰徳とは誰からともなく溢れるもの。

    アグネス「(そんな人に『隊長』と呼ばれ、心配してもらえるとは。私もまた随分偉くなったものね)」

    そしてご無事ではなかった!精神的な意味ではなく肉体的な意味でも。コックピットモニターにまで罅を入れたさっきの攻撃で内壁の左側が捲り上がって剥離し、左半身に4カ所、突き刺さっている。じわじわ痛くなってきたわ。特に左の腿に刺さっているのが痛い…というより熱い!

    シホ先輩はモニター越しに私より先に負傷の状況を知ったから、だから、そんなに慌てているのね。

    アグネス「ご心配なく。副隊長も榴弾砲に注意を。ありがとうございます」

    彼女にお礼を言いながらカオスを旋回させる。左ももに刺さった大きめの破片は抜かない方が良いだろう。抜けばマルボルクまで持たないかもしれない。

    左肩と左胸、左脇腹に突き刺さっている破片も鬱陶しいが致命傷にはなり得ないはず。肋骨と鎖骨の怪我を支えるために身に着けていたコルセットとバンドが鎧代わりになってくれた。先生に感謝しなければ。

    カオスの旋回と共に空港を守る丘の軍用地に高エネルギービームライフルとビーム突撃砲を撃ち込んでいく。50mmガトリング砲はカモフラージュされたトーチカの中、だけれどもこれだけ撃ちまくれば火線のせいで位置が丸わかりになっている。

    カオスをぐるりと水平旋回させつつ、3連射して、三つの丘から合わせて9門の脅威を撃ち抜き、消し去る。

  • 20二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 03:27:20

    その間、スラスターを一気に吹かせて、副隊長機-シホ先輩は私の傍に駆けつけ、カオスの右半分をグフの掲げるシールドで守ってくれる。こう云うの悪くはないわね。

    アグネス「(もし、死して、戦友の盾で担がれて帰ることが名誉で、仲間を守るべき盾を失うことが不名誉ならば。私はそれを体現する絶好の好機を得ることが出来たと言うべきよ)」

    そして、私は死ぬ前に、あるいは死ぬほど馬鹿なことをする前に、自分が馬鹿なことを知ることが出来た。友達にもちゃんと謝って仲直りしてもらった。その友達の妹はとても良い人で、アカデミーの時は関わる機会が無かったけれど良き友になれたと思う。

    悔やむべくは、自分がアホなことをミネルバに乗るまで-乗ってしばらくたつまで気が付かなかったこと。シンやまだ体が元気なレイ、ヴィーノやヨウランと厳しくも楽しいスクールライフを送ってみたかった。

    でも、それはまた、生まれ変わって、機会が有ればの話。今も彼らは生きて、己の居場所で支え合っているのだから、私も自分を放り捨てるべきではないだろう。

    アグネス「『全機に通達、教導航空団!よくやったわ。もう少しよ!制空は取ったのだから、焦らず、確実に追い込め。グフ隊は榴弾砲と50mmガトリング砲に特に注意し、引き続き味方の盾役を務めよ。
    カオスはこれより空港敷地内に突入を敢行する。諸君はその機に乗じて、己がなせる最大のパフォーマンスを示せ。任務を達成し、自分と戦友が生きて帰るための最善を尽くしなさい。中隊長は引き続き戦力投下時の判断と指揮を!ダガーL隊を殲滅した段階でこの作戦は達成したものとみなします』」
    ギーベンラート教導航空団一同「了解!」、シホ「…」

    皆の元気の良い返事を気持ちよく聞く。吶喊前に中隊長4名がコックピットモニターに顔を見せる。一様に私の有様を見て驚愕しているわ。自分自身ビックリしているのだから仕方ない。

    彼ら4人は何か涙ぐみながら敬礼してくるが、別に私は死にに行くつもりはない。ちゃんと電力も14%残っている。

    飛来する砲弾から庇いあっている最中のシホ先輩にもう一つご無理を頼み込む。

    アグネス「ハーネンフース副隊長はこれからカオスの右側に飛来する50mmガトリング砲弾を防いで下さい。2機で敵基地に斬り込みます」
    シホ「…」

  • 21二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 03:32:29

    巻き沿いを喰った感のあるシホ先輩は、ご自分のことではなく私のことに心を痛め、返事を中々してくれない。

    納得が出来なくても理解して欲しい。もうこれ以上戦闘を長引かせるわけにはいかない。必ず、もう少しでも長引けば味方に死傷者が出る。

    アグネス「シホ先輩、制空はバビが取ってくれました。生き残ったダガーLは空港滑走路付近まで降下し、ゲルズゲーのリフレクターシールド展開範囲内に。自走リニア榴弾砲も同様。地球連合軍は団子になっています。ここでケリを付けます。」
    シホ「っ…!」

    そう伝えると彼女の口から詰まったような息が漏れる。

    シホ「…ご自愛ください」
    アグネス「ご武運を、とは言われ慣れていますが、ご自愛…。ありがとうございます。突入開始!」
    シホ、一同「了解!」

    焼き尽くしたジャンクション上空で方向転換したカオスを滑らせるように10時の方向に北進させ、次に9時の方向に旋回させる。低空飛行中は、自走リニア榴弾砲の射線から少しでも身を隠すためだ。高台の空港という立地が今は逆に彼らの仇となっている。

    シホ先輩はグフで盾を掲げて、命じられた通り丘の軍用地から50mmガトリング砲弾から私と己の身を守ってくれている。

    空港に続く南東斜面から登るように接近飛行する私達を迎え撃つのは、射角調整に手間取る自走リニア榴弾砲ではなくストライクダガー中隊24機とゲルズゲー1機。

    24本のビームライフルと2丁のビームライフル、GMA628ビーム砲が2門…。

    角度の問題で真っ先に私達を睨んだゲルズゲーの下半身の前脚部先端、GMA628ビーム砲に向け、出し惜しみせずカリドゥス改・複相ビーム砲を発射させ、後ろに向いたスラスターは逆方向に全力噴射する。

    ゲルズゲーパイロットは、予想通り―というか彼らが積んだ訓練通りに陽電子リフレクタービームシールド『シュナイドシュッツSX1021』を起動させる。このビームシールドの最大の欠点の一つは内側からの攻撃が通らないこと。

    それに付け込むべく、一拍の内に1000mの距離を詰める。『何かの拍子』に備えて巡航機動防盾は左手で前に掲げつつ、右手でビームサーベルを抜き、両足のビームクローは展開!

  • 22二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 03:35:50

    ゲルズゲー前で横二列となっているストライクダガー中隊の左翼に体当たりを-文字通りの体当たりを加え、2機を転倒させる。

    アグネス「痛ッ…」

    既に破壊されていたコックピット左側の内壁は更に破損が進み、新たに飛び出した破片はコックピット内を跳弾のように跳ね回る。それはヘルメットの透明部分をカチ割り、私の額を真ん中から左のこめかみ付近まで10センチ以上切り裂いたあとヘルメット内側に突き刺さってようやく動きを止める。

    でも、それは中のことだ。外ではカオスの右手が振るったビームサーベルが巨虫の本体に致命的な切れ込みを入れ、押し倒したばかりのストライクダガー2機は両足で蹴り上げ、ビームクローの餌食とした。危うい橋だったが、私は渡り切ったのだ。

    そのままカオスとシホ先輩のグフは加速しながら乱入した滑走路を飛び抜ける。勇敢さではなく生存のためだ。ゲルズゲーが大爆発を起こすから!

    アグネス「シホ先輩、対ビームシールドを。代わりに巡航機動防盾!後ろは私、前は先輩が!」
    シホ「了解!」

    瞬時に盾を交換し、互いの位置も入れ替わる。カオスの左腕はさっきの吶喊で不具合を起こしている。右手で掲げる。

    一拍後、空港東側を守ろうとした巨人は、彼の前で横隊を作っていた兵士22人と共に大爆発し、眩い光に包まれながら、天国へ続く橋を我等の先に渡っていく。

    乱入した私達に照準を合わそうとした最後のゲルズゲーのパイロットは直後に事態を把握、自機と44機のダガーL、28機のストライクダガー、残存の戦闘車両を守ろうとリフレクターシールドを展開させる。だが、全力でシールドを張れば、私達まで中に入ってしまうため展開出力は絞らざるを得ない。

    シールドからはみ出た戦闘車両に上空から、バビのアルドール複相ビーム砲が降り注ぎ、装甲戦闘車17両、自走リニア榴弾砲89両、ブルドック6両が暖炉にくべられた氷のように解ける。

    爆風と火焔に巻き込まれたのは周辺に展開していた歩兵部隊も同様だ。きちんとした塹壕を掘る暇も無かった。勇敢な殉教者の骸は空港周囲の斜面を埋め尽くす。まるで古代の墳丘の周囲にて殉じた生贄のようだ。

    勿論、爆風は私達も包む。というか、後ろに回った私を包む。グフの対ビームシールドは大きい方だけれど、それでも全てをころしきることはできない。電力のゲージがあっと言う間に6パーセントまで減る。

  • 23二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 03:40:50

    後ろの爆炎と爆発、前に固まる敵群、周囲を焼き尽くす味方のビーム砲という非日常の極みとしか言えない空間、常人なら身を固くし、思考停止してしまうだろう。

    シホ「はッ!」
    ただ、私に代わって前に進んでくださる方は私と同じく常人ではない。

    爆風をむしろ追い風と言わんばかりに、シホ・ハーネンフース機はスレイヤーウィップを振るう。灼熱の鞭は届く範囲にある地対空75mmバルカン砲塔システム10基を連続して溶断する。

    訓練生のグフ隊もこの機を逃すことなく、あの鬱陶しい丘の中の50mmガトリング砲を潰しにかかる。残った砲台32門にグフ32機、一門につき一機というパワープレイで突進し、無事、撃破を完了させて見せる。バビの12連装航空ミサイルランチャーの飽和攻撃で残る地対空75mmバルカン砲塔システム10門も沈黙に追い込まれる。

    状況を憂いてダガーLがゲルズゲーの傍から飛び出るが、飛び出た端からディンとバビの連携によるビーム突撃銃とビームライフルの弾幕で撃ち落とされて行く。ジェットストライカーの武装を使い果たし、補充の時間も無かった以上、上を取られたらもうどうしようもない。

    連続して7機が墜とされ、爆風の効果が無くなったタイミングで、今度はアルドール複相ビーム砲の第2斉射がゲルズゲーにビームシールドの展開を強制させる。

    巨大な半虫半人の広げる傘の上を真っ赤な滝が流れ下る、その渦中、達壺直下の空洞でグフはスレイヤーウィップで自走リニア榴弾砲12両を撃破、至近距離まで寄ったところで抜き放ったテンペスト ビームソードでブルドック20両を立て続けに斬っていく。

    グフを止めようと危険を承知で飛び出してきたストライクダガーは、こちらも危険を承知で滝つぼに飛び込んだ私のビームクローで一度に2機撃破される。

    ゲルズゲーがまだ撃破されていないのは、滝つぼの上の岩が砕けてしまうと私達もビームで溶けてしまうためだ。考えてみると大概正気じゃないわ。私も敵も皆、馬鹿者だ!

    国際救難チャンネル「降伏する!ザフト軍!攻撃を止めよ。こちら地球連合軍ユーラシア連邦軍カリーニングラード・チカロフスク海軍航空基地司令官。これ以上の戦闘は不可能、武装解除し降伏する」

    この場にも賢者がいたのか...。罠か?いや、信じたい!

  • 24二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 03:41:15

    ぐああ、満身創痍!少なくともカオスはこれでリタイアか!?死ぬなよアグネスー!

  • 25二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 03:47:20

    アグネス「国際救難チャンネル、降伏の意思有なら、即時、手持ちの武装を捨てよ」

    航空基地司令官「了解した…。捨てられる武装は捨てよ!アークエンジェルを痛打すること、ザフト軍に遅滞戦術を強いることが、この戦闘の目的だと言うのなら、本航空基地と航空隊、兵士たちはその任を果たしたものと判断する!尚これは、カリーニングラード・チカロフスク海軍航空基地司令官の独断で在り、当基地の全将兵並びに途中合流した部隊将兵には、一切この判断に責任はない!ザフト軍指揮官の回答を聞きたい!」

    赤い滝が下る中、半虫の巨人が両手に持つビームライフルを地に落とす。それを目にした者達も糸が切れたようにビームライフル、ビームカービン、ビームサーベルを手放していく。

    アグネス「攻撃一時停止。ただし、油断するな!違約があるかも知れない。それに国際救難チャンネルの降伏宣言はこの基地に限定されたもの。それ以外との戦闘は継続中よ!」
    シホ、一同「了解…」

    赤い滝が下り終わった瞬間に戦闘車両から両手を上げた兵士たちが続々と降車を開始する。ダガーLは空港に着地し、何とモビルスーツで万歳の姿勢を取る。効率的な意思表示だけれど、何か面白ささえ感じる。

    空港滑走路上にこの戦闘を生き延びた自走リニア榴弾砲が70両、ブルドックが4両。ゲルズゲーが1機とダガーL37機とストライクダガー連隊26機。

    基地管制搭からは白旗が視認される。

    アグネス「『国際救難チャンネル、カリーニングラード・チカロフスク海軍航空基地司令官に告ぐ。貴官らの勇戦に敬意を表す。降伏を受諾します。武器と機密データの廃棄は禁止、引き渡してもらいます。捕虜は西ユーラシア連邦とザフト勢力圏に移送すること。回答は如何に?』」
    航空基地司令官「先に伝えた通りだ。降伏し、武器と機密データを引き渡す。捕虜の安全は保障してくれたまえ」
    アグネス「分かりました。保障します。勇気ある決断に感謝を」
    航空基地司令官「貴官にも。最大の感謝と敬意を」

    終わったのか…。

    アグネス「全員敬礼。コンディションはレッドのまま。上空で編隊を組み直せ。第4中隊のグフ20機は降下して武装解除を監視せよ。虐殺、虐待をする者がいたら私が頭を撃ち抜く。良いわね!」
    教導航空団一同「了解!」

    良し。何とか、前大戦のようなことは回避しないと…。でも、ここは敵地の真っ只中、厄介な展開ね。

  • 26二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 07:59:19

    アグネス早く病院!
    死んじゃう(泣

  • 27二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 09:19:31

    アグネスが失血死しそうで怖いな…顔の切り傷だけじゃなくて体にも破片刺さってんだろ…?

  • 28二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 11:14:11

    作中アグネスに言ったら怒られるような感想かもしれんが若い綺麗な女性がボロボロになってんのはなかなかキツいな⋯
    身体に、特に顔に傷が残らないといいが(せめてイザークの顔の傷みたいに後から消せる程度であってくれ)

  • 29二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 22:02:39

    そのために為すべきことは-。

    まず、報連相ね。それと自己の生命の保存。ここで私が死ぬことは、あらゆる意味で最悪の結果を生じさせる。殉国のヒロインにはなれるかもしれないけれど、私は高価な墓石も生前の名誉も幸福な人生も全部欲しい人間なんだ!

    先ず、カオスを陥落させたカリーニングラード・チカロフスク海軍航空基滑走路に着地させ、機体右腕にはビームライフルを構える。部下にも指示を、出来るだけ声に力を込めて話す。

    アグネス「AWACSディンは監視を継続せよ。E28線の敵援軍とドンスコエ、ドンスコエにはブルドックと自走リニア榴弾砲からなる防空連隊が残っている。この両者の動向を注視せよ。バビの内、電力に余裕がない機体は順次、バルチ―スク飛行場に着陸して充電を開始、ただし、一度に8機ずつ。各中隊長間で調整せよ」
    ギーベンラート教導航空団一同「了解!!!」

    私の声が思いのほか力強かったためか、爆発するような元気の良い返事が返って来たわ。大変よろしい。

    指示を終えると今度はコックピット回線で、作戦参加中の特務隊全員、グラディス提督、ハイネ先輩、アスラン、ルナマリアに呼び掛ける。

    アグネス「グラディス提督、ハイネ先輩、アスラン先輩、ルナマリア、非常事態ゆえ独断でチカロフスク海軍航空基地の投降を受け入れました。申し訳ありませんが、追認を願います」

    コックピットモニターに4人の顔が映り込む。すると全員が痛ましいものを見たかのような表情を浮かべ、絶句する。勘弁してほしいわ。

    ただ、現実問題、私ことアグネス・ギーベンラートの現状は惨憺たる有様だ。
    左肩と左胸、左脇腹に突き刺さっている破片はバンドとコルセットが受け止めてくれた。とは言え、傷の深さは分からない。

    一見して危ういと分かるのは左太腿に突き刺さった金属片だ。厚さは薄いが長さは10㎝、刺さった先端は、おそらく左大腿骨骨幹部に喰い込んで止まっている。傷の先の部位、足の指は動くから神経に損傷はないだろうけど、出血はそれなりにある。

    そして、なによりカオスの電力は残り4%で切れる。それと顔面が血まみれなのもインパクトが強いのかな。

    皆が通信回線の先で戸惑う中、グラディス提督は冷静に返事を返して下さる。

    タリア「特務隊長として追認します。頑張ったわね。欧州合同軍司令本部とプラント国防委員会にも一報を。皆もそれで良いわね?」

  • 30二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 22:18:42

    彼女の返事で気を取り戻した皆も次々と回答し始める。

    ハイネ「はい、提督。アグネス、よくやった!」、アスラン「了解した。追認する」、
    ルナマリア「ええ。追認するわ。それよりアグネス、顔が血まみれよ!体も!」

    私の有様を見て驚愕したルナマリアの大声が回線越しに響く。心配してくれるのは嬉しいけれど、ドッキリするわ。

    アグネス「安心して。意識は明瞭よ。顔面が広く流血して見えるのは額の傷によるもの。飛んだ破片は前頭骨の上を滑ったから、傷は脳に達していないはず。流血で左目は開けないけど、眼球と視神経は無事よ」

    そう言いながら、もう割れて無用の長物と化したヘルメットを脱ぎ捨てる。すると、ヘルメットとパイロットスーツの境目に溜まっていた血がドバっとパイロットスーツの表面を一気に流れていく。

    ルナマリア「そんな…。うっ…」
    アグネス「大袈裟な…。うん。いえ…。心を痛めてくれてありがとうね」

    額から血が滝のように顔面を流れている。流れ出た血はパイロットスーツの上を滴り落ちていく。だから、元々、赤いパイロットスーツの色も相まって、実態以上に凄惨に見えるのだろう。軽傷とは言い難いのも事実ではあるけれど。

    アスラン「身体の方は?太腿の傷は…」
    アグネス「…浅くは有りません。ともあれ、話を進めましょう。『グラディス提督、本部への一報の前に、カリーニングラード軍管区司令部に対し、3時間の現地停戦を提案したいと思います。地球連合軍将兵の救助と遺体収容、武装解除した捕虜と押収した武器の後方輸送のため、どうか許可をいただけませんか?』」

    私が本題を切り出すや、すぐグラディス提督は同意して下さる。

    タリア「許可します。ただし、その提案はハイネからなさい。彼がこの場の最先任で、何より負傷していない。デバイスが打てるなら彼に草案を送りなさい。何にしても、そこからポーランドに飛ぶのは無理よ。貴女はバルチ―スク飛行場まで移動しなさい。飛べる?」
    アグネス「飛びます。地球連合軍にカオスが健在である…、少なくとも軽傷であると思わせておかねば。でないと、停戦どころか敵の投降すら引っ繰り返りかねません」

    そう返答するとグラディス提督は艦長席でぐっと拳を握る。

  • 31二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 22:23:13

    タリア「今、副長に命じて緊急医療班を呼びました。バルチ―スク飛行場に空路、20分以内に到着する。もう少しよ。ギーベンラート教導航空団はヴィスワ潟上空の制空を継続すること」
    アグネス「了解。ありがとうございます」、ハイネ「了解。アグネス、頼む」

    コックピット回線からはハイネ先輩の労わるような声が聞こえる。政治的あれこれで忘れることもあるけれど、この方は善人だ。今日だけでも何度も助けてもらった。また、助けてもらうとは…。

    右目を凝らし、自由が利く右手で必死にデバイスを叩き送信する。自分で応急処置を進めようか余程迷った。けれど、両手が効かない以上、どうしようもない。

    画面に『送信済み』の表示が出たことに胸を撫で下ろす。

    ハイネ「良し…。では-。『国際救難チャンネルの放送を開始する。カリーニングラード軍管区司令部に告ぐ。こちらはザフト軍特務隊ハイネ・ヴェステンフルスとアグネス・ギーベンラートである。
    貴官らの勇戦に敬意を表する。人道上の理由により、貴軍に3時間の停戦を提案する。
    この停戦時間をもって、カリーニングラード・チカロフスク海軍航空基地周辺の負傷兵の救助活動と遺体の収容、投降兵の安全な移送を実施したい。収容したご遺体はお引渡しする。
    なお、カリーニングラード軍管区司令部が望むのであれば、人命救助と遺体の収容は両軍共同で行うものとする。この提案は降伏を宣言したチカロフスク海軍航空基地の周辺区域を念頭とするが、先に戦闘が行われたバルチ―スクでも我らに救助活動の意思有りとお伝えしたい。回答は10分以内に。なお、地球連合軍から攻撃が再開された場合、この提案は無効とみなす。
    我等は異なる国に仕えようとも同じ軍人同士、戦友同士として騎士道に基づいた振舞いを心がけようではないか?』」

    ハイネ先輩が草案をほぼそのまま読んでくださり、軽い安堵を覚える。これで、一先ず出来ることは済んだわね。

    文面はかなり強圧的になってしまっているが仕方ない。本当はこちらも苦しいのだ。カリーニングラードには続々と敵の地上部隊が接近している。ザフト軍は地球連合軍のモビルスーツ部隊・航空部隊を殲滅した。とは言え、拠点確保を出来るような用意はこちらにはない。この空港も早く引き払いたいけど、投降者が多すぎる。

  • 32二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 23:28:34

    カオスがボロボロだしレイも居ないから再入院から退院したらアグネスのとこにレジェンド来そう?
    アスランはこの先何の拍子に脱走するか分かったもんじゃないし
    もうミネルバ隊みんなで脱走しようぜ! って有様だが

  • 33二次元好きの匿名さん25/01/28(火) 07:23:15

    前と同じ病院だったらドクターがブチ切れるな…

  • 34二次元好きの匿名さん25/01/28(火) 11:53:48

    >>33

    MS搭乗禁止を言い渡されそう

  • 35二次元好きの匿名さん25/01/28(火) 23:08:53

  • 36二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 00:08:35

    これでまたネヴュラ勲章が増えるんだろうか。だけど今のアグネス、

    「そんなものもう十分! それより休養をよこして!!そうでなければせめて増援を!!」

    とか文字通り血を吐きながら叫びそうだな。

  • 37二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 01:16:43

    何にせよ、一旦投降を受け入れた以上は彼らを保護して、無事、後送しなければいけない。『管理できないから歩いてカリーニングラードに帰って下さい』などと言った日には…。

    そんなことをすれば、最悪の場合、降伏した彼らは味方のはずの連合軍に、反逆者、臆病者と見なされ銃殺刑にされるかもしれない。そんなニュースを明日の朝に聞くのは勘弁してほしいわ。彼らは彼らの軍法がある。でも、一度、頭を冷やしてからでないと、ヒステリックな対応が最悪の状況を引き起こしてしまう。

    アグネス「(パッと見た感じだと…。軍用車両が3人乗り(車長、操縦、砲手)だったとして。自走リニア榴弾砲70両とブルドック4両で222名。モビルスーツは、ダガーL37機とストライクダガー26機で63人、ゲルズゲーの乗員は3名だから)」

    だから、今、目の前で武装解除を進めている彼らは全員で288名と言うことになる。これに航空基地に配備された人員が加わる。

    すなわち、基地司令部要員、防空管制要員、各飛行隊の整備補給班、電子作戦隊、気象観測隊、軍病院、基地全体の整備隊と補給隊、憲兵隊、それと事務・総務・人事等の内勤の軍人。軍人でない背広組の公務員、たまたま今夜居合わせた出入り業者等の軍属…。

    これ等の人が一度に降伏して来たわけだから。少なく見積もっても1500名、多ければ5000人程度の人間に私達は責任を持たなくてはいけない。特に軍病院に入院している傷病兵には慎重にも慎重な対応が求められる。

    だが…。申し訳ないけれど、私はその作業全てを監督することはできない。無責任と言われても仕方ないけれど、身体が…。

    アグネス「ハイネ先輩、お叱りを覚悟で…」
    ハイネ「早く下がれって!アグネス、後は俺の方で責任を持って進めるから」

    いや。これは大事な話なんだ。ちょっと呂律が怪しいが今思いついた方法をお伝えしないと…。

    アグネス「ありがとうございます。ただ、1点、武装解除したダガーLとゲルズゲーはザフト軍の監視の下、速やかにポーランド領に移動させるべきです。その際、同じく武装解除させたストライクダガーも中のパイロットごと抱きかかえて飛行させれば手間が省けます。同様の方法でブルドック4両と自走リニア榴弾砲8両も乗員ごと移動が…」

  • 38二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 01:25:36

    コックピット回線の向こうの皆と視線を合わせる。半ば呆れ、半ば拝み倒されているみたい。これはまいったわね。

    アグネス「はい…。そのようにいたします。『ハーネンフース副隊長、申し訳ありませんが、私は一旦、バルチ―スク飛行場に移動します。不測の事態が有れば、航空団の指揮は貴女が執って下さい』」
    シホ「了解。ともかくご自愛ください!」
    アグネス「ありがとうございます」

    お説教を受けて、ようやく諦めがつき、カオスのスラスターを吹かせる。かなりガタが来た機体がチカロフスク海軍航空基地の滑走路に浮かび上がり、2分20秒後にはバルチ―スク飛行場に上空に到達する。

    飛行場は、アビスとガイアとバクゥハウンド小隊がしっかり守ってくれている。弾薬車・電源車も無事だわ。守りながらもこの5機は電源車にコードを繋げて補給は継続している。
    補給がある程度できている予備兵力がここに存在してくれている意味は大きく、心強いものだわ。

    カオスを飛行場に着地させると間髪入れず、ガイアが傍に寄って来て、電源コードを差し込んでくれる。

    ルナマリア「アグネス、下りられる?いや、良いわ。私がそっちに行くから!コックピットを開けて、動かないで」
    アグネス「その前にファイヤーフライ・誘導ミサイルを機動戦闘ポッドに入れて!まだここは戦場だから。応急処置も医療班が到着するまではカオスのコックピットの中でして!敵の目があるわ」
    ルナマリア「分かったわ…。そうね。頑張ろう」
    アグネス「ええ」

    会話を終えるやルナマリアはガイアのマニュピレーターを使って、ガッコン、ガッコンとテンポよくミサイルの補充をしてくれる。その音を聞いている内に何故か眠たくなってきたわ…。

    ルナマリア「寝たら死ぬわよ!終わったからコックピットを開けなさい。仰せの通り、そっちに乗り移るから!」

    一瞬意識が飛んでいる内にルナマリアはガイアの胸部をカオスの胸部に近づけ、コックピットを開けている。手にはコックピットに備え付けの救急キットを握っている。無防備な状態の彼女を見て慌ててカオスのコックピットを開く。

    アグネス「危ないわよ!攻撃が有ったら…」
    ルナマリア「やっぱり、気絶していたわね。カリーニングラード軍管区司令部が現地停戦を呑んだわ。大丈夫よ」

  • 39二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 01:28:39

    そう言って彼女は軽やかに私の傍に乗り移り、刺さった破片を動かさないように慎重にシートベルトを外していく。
    危ない危ない!本当に寝たら死ぬところだったわ。

    アグネス「停戦の条件は?」
    ルナマリア「3時間以内にザフト全軍はカリーニングラード・チカロフスク海軍航空基地から撤収すること。バルチ―スク軍港の救助と遺体収容は両軍共同で行うこと。バルチ―スク市のヴィスワ砂洲部は無防備都市宣言をして、ザフトの保障占領を認めること。以上よ。つまり、ここは安全ってこと。今のところはね」

    そう話しながら、彼女は私の太腿の処置を始める。
    ルナマリア「止血は直接圧迫止血法が基本。止血帯は使い方を間違えると壊死して手足切断になりかねないから注意。でも、あんたの場合は物が刺さっている。ナイフが刺さっている場合に近いケースね」
    アグネス「その場合は、抜くのは絶対にNG。ナイフを固定して救急隊を待つこと。固定法はタオルをクロスして…」
    ルナマリア「そうそう!」

    何やらアカデミーの頃に戻ったような会話を始めてしまう。無論、これは私の意識と気持ちを保たせるための彼女なりの配慮だ。軽口のような会話の向こう側、彼女の眼差しは真剣そのもの。

    お互いの感染症を防ぐため、医療用手袋を嵌めたルナマリアの手が私に触れる。
    優しいけれど、しっかりした手つきだわ。ひと昔、ふた昔前は、こういうのを『良いお嫁さんになれる』と褒めたのだろうか…。今は使う時と場所を間違えるとセクハラになるけれど。

    ルナマリア「なに?」
    アグネス「良い男、見つかった?」
    ルナマリア「元気そうで安心したわ!」

    半分は本気、半分は空元気だわ。お互い分かっている。
    彼女は白い清潔なタオルが私の太腿の傷を挟みこむ。タオルで挟んだら、たくさんのテープで仮止め。タオルで別の角度からクロスして、たくさんのテープで仮止め。もう一回、別の角度からタオルでクロスしてたくさんのテープで仮止めする。

    その後、長いテープでこれまでクロスして来たタオルを身体(この場合は太腿)ごとグルグル巻きにして固定しておく。

    太腿が終わったら、同様の処置を左脇腹、左胸、左肩と同様の処置を続ける。

  • 40二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 01:33:55

    ルナマリア「乳房に傷が…」
    アグネス「乳癌のもとになるかな?」
    ルナマリア「ちゃんと検診を受けていれば大丈夫でしょう!乳房を怪我した人全員がすぐに乳癌になったら、今頃、病院はパンクしているわ」

    自分で傷の場所を心配しておいて、直後にこれはどうなんだろう?我が友ながら困ったものだわ。

    刺さった4カ所の処置をした後、彼女は顔の処置にかかる。

    ルナマリア「これは前額部の圧迫包帯止血ね。八つ折り三角巾を使って…と」
    太くてしっかりした包帯が頭に巻かれるが、みるみる血が滲んでいく。まあ、こればかりは仕方ない。

    アグネス「ありがとう。助かったわ」
    ルナマリア「どういたしまして。後、10分後にはここに専門医療班が着くから…」
    アグネス「トリアージの順番は守るわ」
    ルナマリア「それは私が判断することじゃないけれど…。まあ、気を楽に…。でも、寝たらダメよ」

    そんな会話の後、カオスのコックピットの中で私とルナマリアは暫く他愛もない話に盛り上がる。勿論、ルナマリアはサボっているわけでは無い。こうして負傷兵の気を紛らわして、気力を保たせるのも応急処置の内なのだ。

    お互い半分は本気でお喋りしているかもしれないけれど…。これだけ頑張ったのだ。少しぐらい役得が有っても良いじゃない!

    ペラペラお話しているとセイバーが北の空から舞い戻って来たわ。ミネルバで電力の充電が終わったのだろう。アスランが来てくれたなら、もう安心して良いだろう。

    ルナマリア「アスラン・ザラ、良い人なんだけど…。ちょっと憧れてたのよね」
    アグネス「また今更…。しょっぱなから冷めていたじゃない?そう伝えたのは私だけれど」
    ルナマリア「そう言うんじゃないわよ。そうね。それを合わせても、思っていたよりずっと良い人だったわ」

    確かに。私もそれは同感。

    アグネス「多分、私がこれまで出会った男性の中で最上の一人ね。パパ…お父様…父も含めてね。はぁ、アスランは友人としてなら…いや、それもめんどくさいかも」

  • 41二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 01:40:17

    それにしても-。パパの呼び方で迷うとは、出血量が多すぎかな。

    ルナマリア「うーん。友人には、もうなっちゃってるでしょ、私達。仕方ないわ」
    アグネス「そうね。大事な戦友だから。まあ、お互いね…」

    さはさりながら、アークエンジェルのことで今の彼はパニックになっていることだろう。何とかしてあげたいと思うけれど…。

    アグネス「うん?」
    ルナマリア「あれは!?」

    ポーランド側から急速接近する3機のモビルスーツを発見。2機の非武装のディン、赤十字が慌ててペイントされている。正式な意味での赤十字飛行機とは異なるけれど、まあ、衛生兵には該当するのかな。今回の場合、合意も取り付けてあるし。

    そのディン2機に両脇を支えられ、持ち上げられて運ばれるホスピタルウィザードのザクが1機、男と男で女を挟んで『嬲』の状態で飛んでくるわ。

    アグネス「嬲、あくまで外見的な説明での意味ね」
    ルナマリア「あんた漢字分かったっけ?」
    アグネス「細かいことはよろしい。中国史の授業も受けたでしょう?」
    ルナマリア「そう言えばそうね。日本史のコマも有ったわ…。シンは得意かも知れないけれど…」

    そんな話をしている内に3機はどんどん大きくなり、気が付けば、カオスとガイアの横に降り立っている。

    コンテナ型の医療設備が早速、3基、展開されて始める。

    その中で最初に地面に降ろされたコンテナから軍医が飛び出して、下から私とルナマリアに敬礼して下さる。まさか、コンテナごと人員まで運んでくるとは!戦時というものはあらゆる無茶を押し通すわね。

    そちらも敬礼しようとするが上手く右手が上がらない。その様子を見たルナマリアはそっと、私の右手を押さえる。

  • 42二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 01:50:38

    軍医「アグネス・ギーベンラートさん。治療を開始します。もう大丈夫、助かりますよ」
    アグネス「ありがとうございます」
    ルナマリア「ありがとうございます、と彼女は言っています!意識はしっかりしていますが、出血は多いです。一度、意識を失っていました」

    今になって、自分が思いのほか小さな声で喋っていたことに驚く。ああ…、本当に意識がヤバかったのね。ルナマリアありがとう。

    ルナマリア「待っててね」

    そう言うと彼女はガイアのコックピットに乗り移り、機体の掌を地面につけて衛生兵を乗せる。そのまま掌をカオスのコックピットまで持ってきてくれる。移動の最中も開けっ放しにしたコックピットから、私の症状と傷の状態を逐一、掌の上の戦友に説明してくれているのが気配でわかる。

    衛生兵「もう大丈夫ですよ。助かります。安心してください」
    アグネス「ありがとうございます。虐殺とかは起きていませんか?戦闘は…」
    ルナマリア「起こっていないわ!戦闘も終わっている…。あっそうだ!シンってどう?男性として?」
    アグネス「山猿がどうしたって?」

    懸命に私に話しかけるルナマリアに呂律が回らぬ声で必死に答える。私の意識を保たせるためだと分かるけど、シン、男性?生物的にはオスね。

    ルナマリア「まだ、大丈夫そうです!」
    衛生兵「良し!それ!」

    赤十字マークの兵士が、私をコックピット座席から解放してくれる。その時、これまで張り詰めていた気持ちが遂に切れ、意識が途絶える。

  • 43二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 08:01:28

    うわ、ついに気絶してしまったかアグネス。文字通りの満身創痍だよ。痛々しい事この上ない。
    それに、次に彼女の目が覚めた時、世界はどうなっているのやら……。

  • 44二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 08:07:05

    AAは無事に逃げ切れただろうか
    いやまぁモブの奇襲程度で簡単に落ちるやつらじゃないのは言うまでもないけど既に船体は結構ダメージ負ってたはずだし

  • 45二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 14:30:34

    >>44

    メタだけど、種自由レベルの全面攻撃喰らわない限りはなんとかなっているんじゃなかろーか。

  • 46二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 18:27:43

    なんかもう戦闘終わったら気絶どころか戦闘終わったら負傷して気絶が当たり前みたいなとこまで悪化してるのが…

  • 47二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 00:47:38

    気絶が休息みたいになってない?

  • 48二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 00:50:01

    >>47

    ザフトのえらい人

    「なるほど、そういうのもあるのか!」

  • 49二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 03:59:38

    白い霞がかかったような意識の中、私は靄のようなトンネルを一人歩いている。久しぶりにのんびり過ごせているようで、何となく嬉しい。多分、私は寝ているのか…。

    久しぶりにゆっくり熟睡したいるみたい…。昨日の夜は勲章授与式に国防委員長とのリモート会議に速成教官養成課程卒業簡易試験と大忙しだったから、ありがたい。寝不足だったから…。

    アグネス「(このまま暫く、惰眠を貪っても文句は言われまい。上手く思い出せないけれど、今朝起きてから、ジェットコースターのように忙しい一日を過ごしていたような気がするわ)」

    正直、心も体もくたくただわ。

    タリア「国際救難チャンネルの放送を開始します。本官はザフト軍月軌道艦隊司令官、特務隊隊長、タリア・グラディスです。アークエンジェル聞こえますか?」

    この深い安らぎを思う存分堪能したい…?

    タリア「アークエンジェル、聞こえますか?本官は現在、プラント最高評議会より貴艦の保護命令を受けて受けて行動しています。決して貴艦を撃沈する意図は有していないので誤解なきよう願います」

    耳が起きてしまった。身の周りは、医療器具が奏でる何とも言えない耳障りな音、その向こう側から聞き馴染みのある貫禄に満ちた女性の声がする。

    平穏ならざる空気を鼓膜がびんびんに感じ取ってしまう。あ~、これ、起きないといけないやつかな…。せっかく熟睡(?)出来ていたのに…。

    しかし、悪い出来事が生じて-。それに対して自分が何かできたのに、何もしなかった、そんな後悔したくはない。気力を必至に振り絞って瞼を持ち上げ、薄目を開ける。

    案の定、目線の先には知らない天井、心電図が機械音を出して医療ドラマでよく見るジグザクしたグラフをモニターに表示している。素人目だと脈拍、心肺共に正常値に見えるのだけれど。

    ルナマリア「ああ!アグネス、起きた?じゃなくて、ごめん。うるさかったわね…」
    アグネス「…ここは?」
    ルナマリア「グダニスクの病院よ」
    アグネス「そう」

  • 50二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 04:12:22

    付き添いと言ったポジションでルナマリアがベッドの脇の椅子に腰を下ろしている。今のグラディス提督の声は彼女が手元で開いている業務用デバイスから漏れ聞こえたものね。

    ルナマリア「音が聞こえていた方が目を覚ましてくれるんじゃないかと思って…。もう死んじゃうのかと思って…」

    何やら涙ぐんでいるルナマリア、その気持ちはとてもありがたい。でも…それどころじゃない!

    アグネス「スピーカーモードにして!」
    ルナマリア「意識が戻って良かった…。ええ分かったわ。看護師さんにも伝えないと」

    ルナマリアは、私の頼みを中半無視して、ナースコールを強く押し込む。その間もグラディス提督の呼びかけは続いている。デバイスの向こうの彼女の表情は険しさを増している。

    タリア「アークエンジェル、どうかこちらの意を御汲み下さい。乗員、乗客の生命の安全は絶対に保証します。プラントはオーブ首長国連合代表カガリ・ユラ・アスハ閣下を国賓としてお迎えいたします。オーブ軍籍者は捕虜ではなく賓客としての待遇を、アークエンジェルの乗員、パイロットも同じく。貴艦が拘束中の2名のテロリストも、お引き渡し後は人権を最大限尊重した対応をお約束します」

    かなりの好条件、ほとんど満額回答みたいなものだわ。最高評議会の方針はブリュッセルで聞いたものと同じようね。

    アグネス「(しかし―。表面上がそうであったとしても、と彼ら彼女らは考えてしまうか...。でも、今ならミネルバ組の特務隊員(ハイネ先輩は?)のパワーで何とか守れる、かも知れない。ともあれ-)」

    バタバタと医師と看護師が部屋に詰めかける音がする。その気配を察してルナマリアは一安心と微笑みを浮かべ、私に話しかけてくる。

    ルナマリア「頑張ったわね。偉いわ、あんた」
    アグネス「それはどうも!それで…」

    私の現状はデバイスの向こう側とギャップがある。否応なくね。あれから何時間たったのか、教導航空団の皆は無事なのか、ミネルバは何処でアークエンジェルはどうなっているのか?

    疑問が幾つも浮かんでくる。一方、向こう側の交渉は芳しくないらしい。

  • 51二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 04:22:20

    タリア「残念ですが、不幸な行き違いや誤解から、もし衝突が発生した場合、本官としては責任を負いかねます。一刻も早く、貴艦が搭載機をも含めた全ての武器を一時的に引き渡し、本艦ミネルバの護衛の下、リアパーヤ港に同行されんことを。貴艦の賢明な判断を望みます。引き続き、及びかけします。アークエンジェル、聞こえますか-」

    リアパーヤ。ラトビアのブルと海沿岸都市で不凍港をもつ。彼の日本海海戦に参加したブルチック艦隊の母港でもあり、あの壮挙としか言えない大航海の出発地点でもある。後に2度の独立を達成するラトビア海軍の本拠地もあの都市にある。

    アグネス「(一番近場の不凍港に同行を呼び掛けているのか…。それはそうとどうなっている?)」

    残念ながら、私の関心を他所に白い部屋の現実は散文的に進む。ルナマリアは業務用デバイスを閉じて、医師と看護師を迎える。

    扉が音もなく開くと真面目そうな男性の医師-軍医ね。彼とゴツイ-ではなくて-逞しい女性看護兵が入室する。

    軍医「良かった。目が覚めましたね。これが何本か分かりますか?」

    そう言って医師は指を3本立てて見せる。

    アグネス「3本です」

    軍医「ではこれは?」
    アグネス「1本です」

    今こんなことやっている場合なの?

    そんな私の気持ちを他所に医師は、ふむふむ頷き、傍のルナマリアは安堵の表情を浮かべている。あんたは私のママか?ああ…ルナマリアは特務隊だから、同僚兼保護者代わりとしていてくれたのかな。多分、グラディス提督の命令と彼女自身の希望だろう。

    それはそれで嬉しいんだけどね。

    アグネス「軍医殿。質問しても良いでしょうか?」
    軍医「どうぞ。思ったより回復が早い。よく頑張りましたね」
    アグネス「はぁ。ありがとうございます。いろいろ伺いたいですが…。あの後、つまり私が救助された後から何時間経っていますか?」
    軍医「4時間後です」

  • 52二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 04:40:06

    4時間…。長いと見るべきか短いと見るか。この局面では-。

    アグネス「ありがとうございます。それと、私が指揮していた教導航空団とミネルバは今どこに?」
    ルナマリア「ギーベンラート航空団は誰一人欠けることなく、マルボルクの基地に戻ったわ。安心して。今はあんたの代理でハーネンフース副隊長が指揮を。ミネルバはボスニア湾の北部上空を飛行中よ」

    医師に代わってルナマリアが吉報と判断に迷う報を伝えてくれる。取り合えず、ミネルバはスカンジナビア王国領海付近にいるのね。

    アグネス「(西暦時代のスウェーデンとフィンランドの間に広がるボスニア湾の北部か。ボスニア湾は10月から6月ごろまで氷結する。アークエンジェルを追い駆けて、そこまで行くとは)」

    アークエンジェルの船足が私の想定よりも遅い。推測するに何処かの地点で艦の応急修理を行ったのだろう。艦の損傷は、前見た時点で中破よりの小破だった。あの後さらに被害を受けたかもしれない。

    何より私達がバルト海の地球連合軍を叩き潰したから、一時的にしろ余裕が出来たはず。もし彼らが外洋の荒波を超え、嵐の空を切り裂こうと望むなら、艦をメンテナンスする最後のチャンスだったはず。

    アグネス「カリーニングラード・チカロフスク海軍航空基地の投降兵は…無事、後送できた?」
    ルナマリア「ええ。ちゃんと。というかグダニスクで降ろしたのよ。降伏した人が4000以上いたから、輸送が追いつかなくて。ミネルバに来てもらったわ」

    そう話したルナマリアは軍医達に目配せして、一歩下がらせた後、私に耳打ちする。

    ルナマリア「議長は渋ったらしいわ。どうもアークエンジェルに固執しているみたい。国防委員会がカリーニングラード情勢の方が大事と言って、他の評議員も投降兵の人命を優先すべきと。それで折れたみたい」
    アグネス「そう…」

    アークエンジェルの何にあの腹黒議長は拘っているのやら。もう分からないわ。

    軍医「ゴホン!では、そろそろギーベンラート隊長のお怪我の状況について説明してもよろしいですかな?」

    軍医殿は一つ咳払いする。彼にもまた果たすべき任務がある。

    アグネス「申し訳ありません。お願いします」

  • 53二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 04:45:51

    そう答えると、ルナマリアは気を効かせて部屋を出ていく。多分、彼女は私の症状についても聞いてくるよう下命されていると思う。ただ、個人情報だからワンクッションおいてくれるのね。

    彼女が退出して、扉を閉めたタイミングで軍医が私を褒めてくれる。

    軍医「改めて、よく頑張りましたね。出血性ショックの初期症状が始まっていました。1リットルの輸血をして、大急ぎで。止むを得ないとはいえ、破片が刺さったまま戦闘を続行しているとは!とは言え、お疲れさまでした。大戦果、おめでとうございます」
    アグネス「…ええ。ありがとうございます」

    腕に繋がる輸血の管を見る。管の先のパックはちょうど空になるところ。輸血し始めはともかく、身体が慣れてからは相当なハイペースで輸血を行ったのだろう。

    軍医「額の負傷は破片が顔面の皮膚と前頭筋、つまり眉毛を動かす筋肉を断裂させ、前頭骨まで届いていました。おでこの中央、やや左に突き刺さって、その状態でこめかみ付近まで骨の上を滑って行きました。もうあと数ミリずれれば顔面神経も損傷していました」

    そう言われて、額に手をやる。しっかりと巻かれた包帯が指に触れる。眉毛を試しに動かす気力はない。動かないだろうし。

    軍医「前頭骨の傷は軽度、なので、傷ついた筋肉と血管を吸収糸で縫合、皮膚は皮膚縫合接着剤で閉鎖しました。西暦の頃と比べると吸収糸も皮膚縫合接着剤も大幅に進歩しています。ただ、全く痕が残らないという訳ではありません。傷跡の綺麗な治療には改めてプラントの病院を訪ねることをお勧めします」
    アグネス「ありがとうございます」

    流石に傷跡は残るか。戦争が終わったら、改めて傷跡治療を受けてみよう。

    アグネス「(これまで顔面に大けがを負った女性兵を何人も見てきた。視力や聴覚、鼻や口を失い、それでなくとも大火傷を負った方達も。額の傷は髪で隠せる。大騒ぎしたらみっともないわ)」

    そう言い聞かせることにしよう。でも、怪我した顔をママには見せたくない…。私以上に傷つけてしまいそうで…。

  • 54二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 04:59:19

    軍医「左肩と左脇腹に突き刺さっていた破片による刺傷は-。元々、身に着けていたコクセットとバンドが大部分は防いでいました。とは言え、両方とも皮下組織・筋膜を破り筋肉まで先端は届いていました。処置は顔の時と同じく、血管と筋肉は吸収糸で縫い、皮膚は皮膚縫合接着剤で閉鎖」

    筋肉まで届いていたのか。ワンチャン皮膚までで済むかと思っていたのに。最悪だわ。

    軍医「左胸に刺さった破片は…。防がれていたのは同じく。そのおかげで大胸筋には届いていません。ただ、左乳房の下側、やや外側にかけ乳腺と乳管を断裂させていました。出来得る限り綺麗に治療はしましたが…」

    大胸筋と肺が無事なら、贅沢は言えないわね。

    アグネス「将来、授乳に差し障りますか?」
    軍医「他の乳腺と乳管が無事なので、恐らく大丈夫と思います。ただ、炎症が起きないようによく注意してください。軍務の中では難しいかもしれませんが…」

    大胸筋と肺が無事なら文句は言わない。もう一回自分に言い聞かせる。仕方ないことだ。捥げたりしなかっただけマシなのだ。しっかりしろ。

    軍医「左太腿の怪我は、刺さった破片が筋肉を断裂した後、大腿骨骨幹部にめり込んでいました。それにより骨にヒビが入っています。ただ、ボルトなどを使うほどではないと判断、筋肉と血管を縫合、皮膚は接着剤で閉鎖しました。暫くギブスで固定して、それからリハビリを頑張ってください。幸い西暦時代より早く治せますので」
    アグネス「以前の怪我は悪化していませんでしたか?」

    これは大事なポイントだわ。特に内蔵の傷が心配、物がまた食べられなくなるのは精神的にも辛い。

    軍医「良い治療を受けられたのですね。さほどの悪化は見られません。ただ、治りきる前に無理をしているのですから、相応に体に負荷が掛かっています。突然死を防ぐためにも安静に過ごすことをお勧めします。苦しい戦局で難しいことは理解していますが…」

    軍医殿はそこまで話して口調を変え、もごもごする。前のベルリンの病院とは異なる。病院は患者の身体を治すところ。軍病院は軍人を治療して-、可能なら再び軍務に復帰させるところ。だから、前の先生とは立場が違う。軍務と戦局を片眼に見ながら負傷者と向き合わないといけない。

  • 55二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 05:09:10

    同じような方とお会いしたことがある。辛いお役目だと思う。自分なら途中で耐え切れなくなるかもしれない。

    そんなことを考えている内に元の先生の顔が脳裏に浮かんで、何とも言えない懐かしさを感じる。

    アグネス「(ほんの数日の付き合いだったのだけれど…。ベルリンの先生や看護師さん達にまた会いたい。ちゃんとお礼も言えていない。自動車の運転どころか、モビルスーツに勝手に乗ってしまったわ。怒られるだろうな…)」

    そもそも、また会うも何も私は一時外出の許可をもらっただけで退院していない。もうギブアップして帰っても良いかな。でも、教導航空団をラムシュタイン空軍基地に帰還するよう命令をしないといけない。戦果報告なども…。

    軍医「大丈夫ですか?お気を落とさず」

    考え事に引き込まれそうになった私を彼が引き上げる。やはり本調子とは程遠い。そう言えばもう一つ聞かないといけないことがある。

    アグネス「はい、ありがとうございます。ところで、治癒にどれぐらいかかりますか?」
    軍医「ギーベンラート隊長は、若く、普段から鍛えている軍人で、コーディネイター…。とは言え、1か月は見た方が良いかもしれません」

    1か月、傷病休暇がでるかな?でも、訓練生の講義がある。モビルスーツに搭乗しない訓練と課程全体の統括はしないといけない。
    まだ、一抜けできる状況ではない。そもそも現実逃避しそうになったけれど、ボスニア湾の奥でミネルバは難しい任務を完遂させようと必死だ。自分だけ惰眠を貪るわけにはいかない。

    アグネス「軍医殿、看護兵殿、改めてありがとうございます。おかげで命を長らえることが出来ました。私はまだ為さなければいけないことが数多くあります。本当にありがとうございます」
    軍医「いえ…。どうかご自愛ください」、看護兵「まだ、ゆっくりして行ってくださいね」

    二人はそう言って、敬礼する。私が返礼すると静かに部屋を出ていく。二人を見送ってまたぼんやり天井を眺める。これで、やっと一息つける。スカンジナビア王国は後背の脅威が減じた分、大西洋連邦に強気に出られるだろう。少なくとも進駐を3都市以外に広げさせるような真似は許すまい。

    後はアークエンジェルの説得をゆるゆると続けるだけ…。

  • 56二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 10:11:27

    なんだかんだエンジェルダウンしそうな曇行き…

  • 57二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 10:19:29

    肝心な局面を無力な状態で見守るしかない、というのも王道な展開。まーこれでアスラン離反からのメイリン諸共撃墜√
    は確定か?……いや待て、じゃあ「その時」にレジェンドに乗っているのは……いや、周知徹底と根回しはしているから
    そうはならんかも試練が、「あのアスラン」という種死(とあえて表記する)本編の負の信頼感があまりにも……。

  • 58二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 15:10:14

    現場勢までアークエンジェルに対する議長の謎の拘りに「?」ってなってるの、本人だけが自覚してないんじゃ…

  • 59二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 15:16:03

    …ここでアコードが闇に堕ちろしてアークエンジェル側か逆にザフト側からミネルバ組以外の適当な奴に攻撃させれば議長ニッコリなエンジェルダウンする事になりそう

  • 60二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 22:34:55

    ここで議長が茶々入れてアークエンジェル撃墜しろなんて言ったらアスラン&メイリンどころかミネルバ自体が離反しかねないし、離反しなかったとしてもサボタージュとかしそう

  • 61二次元好きの匿名さん25/01/31(金) 01:16:20

    私のそんな捕らぬ狸の皮算用は、軍医達と入れ替わりになるように突入して来たルナマリアによってご破算になる。

    ルナマリア「アグネス!これ!」
    アグネス「なに?どうしたの」

    ルナマリアの指し示す彼女の業務用デバイス、その画面越しのミネルバブリッジの通信モニターに20代後半のオーブ軍女性士官の姿が映っている。やはりあの人が、分かっていたけどね。

    マリュー「アークエンジェル艦長、マリュー・ラミアスです。グラディス提督のご親切な申し入れに感謝します。ありがとう」

    マリュー・ラミアス、そう名乗った女性の面差しは、心労からか少し痩せてはいるものの、美しく凛々しい。そして、優しい口調で発せられた『ありがとう』という言葉に籠った真心は、氷結したボスニア湾から遥か1200㎞以上離れたグダニスクの私にも確かに届いた。
    アグネス「(ちゃんと分かってくれたのね。あれこれと気を回して来た甲斐が有ったというものだわ…)」

    一方、このデバイスの持ち主であるルナマリアの受け止め方は異なっている。いや、受け止め方というのとは少し違うわね…。

    ルナマリア「やっぱり、あの映像データは…。事件は本当だったのね…」

    そう。ルナマリアは、月の戦いの最中にダコスタ氏からフリーダムのコックピット記録映像を見せてもらった面子の一人。ラクス暗殺事件の映像記録にマルキオ導師やヤマト夫人と一緒にラミアス艦長も映っていたから-。

    だから、ルナマリアもラミアス艦長の顔を知っている。そして、それが一致したということが突き付けてくる現実についても-。

  • 62二次元好きの匿名さん25/01/31(金) 01:21:37

    離反の話ちょくちょく出るけど、少なくとも地上のザフト全体の士気は総崩れになるからやりたいと思ってもできないだろうね
    もうそういうポジションにまで来てしまっている
    ⋯って考えるとまず怪我で1ヶ月も前線から下がることすら現実的じゃない状況なんだよねぇ地獄か?

  • 63二次元好きの匿名さん25/01/31(金) 01:23:43

    アグネス「…予断は持つべきじゃないわ。命取りよ」

    そう言いながら彼女に目線で注意を促す。ラクス暗殺未遂事件は確かに発生していた。実行犯はザフト軍特殊部隊のアッシュ隊。そして、彼らに正規のルートを跳び越えて命令を下せるのはプラントの上層部のなかでも、極限られた人。

    しかし、私達はこの秘密を意図的に『グレー』にして墓場まで持って行かないといけない。今の戦局と将来の国際関係的にも、真実を明かすことによるデメリットが大きすぎるから。そして何より-私もルナマリアも自分や身の回りの人の命は惜しい-

    アグネス「(壁に耳あり障子に目あり。余計なことを言えば消されるかもしれないわ)」

    ルナマリアにそうアイサインを送ると彼女も納得してくれる。さっきの彼女の言葉は打ち消しておこう。

    アグネス「そうそう!前、見せたミネルバの記録データにちょびっと映っていたでしょ!マリア・ヴェルネスさん。まさかモルゲンレーテ社員の彼女がアークエンジェルの艦長だったとは!」
    ルナマリア「ええ。スパイ小説みたい。本当に興味深い事件ね!」

    二人して急いで取り繕う。まさか、この病室に盗聴器が仕掛けられているとまでは思っていない。あくまで念のため。今更かもしれないけれど。

    私達の狼狽ぶりはどこ吹く風、艦長席のラミアス艦長は謝辞を述べた際の優しげな表情を一変させ、毅然とした態度でこちらに返答を送ってくる。

    マリュー「ですが、残念ながらそれを受け入れることは出来ません」

    アグネス「…」、ルナマリア「やっぱり、そうなっちゃうのね…」

    ここに来て事情を悟ったルナマリアは半ば諦めが混じった納得の表情を浮かべている。でも、ベッドの上の私は憤懣やるかたない!
    ラクス暗殺未遂などやらかした馬鹿者どもが一番悪いのは分かっている。屑が軽率に犯した悪行と愚行が何時まで経っても私達の足を引っ張る。

    -とは言え!

    アグネス「アークエンジェル側も、もう少し柔軟に対応してくれても良いじゃない!少なくとも私達は誠心誠意対応しているのに」
    ルナマリア「ちょっと、落ち着いて…」
    アグネス「私は落ち着いているわよ!」

  • 64二次元好きの匿名さん25/01/31(金) 01:31:28

    私とて、自分の感情が八つ当たりであると分かっている。ただ、そうであったとしても、此方だけでなく彼らも一緒に妥協点を探して欲しかった。というか、馬鹿正直に断らずに時間稼ぎをして欲しいかった。

    アグネス「ちょっと、ルナマリア。回線貸して!引き延ばさないと!」
    ルナマリア「ええ…。ちょっと待って!これ、一方通行よ」

    今になって衝撃の事実が発覚する。何てこと、しまった!私の業務用鞄とデバイス、何処にある?せっかく国防委員長から秘匿回線使用権を得ておいたのに…。

    アグネス「あれ?もしかしてカオスの中?」
    肝心な時に…。カオスは何処だ?!

    私が慌てている向こう側で事態は刻一刻と推移している。彼女の答えはもう少し続く。

    マリュー「本艦にはまだ仕事があります。連合かプラントか。今また二色になろうとしている世界に、本艦はただ邪魔な色なのかもしれません。ですが、だからこそ今ここで消えるわけにはいかないのです。願わくば脱出を許されんことを」

    彼女の悲壮な決意表明、その決意は尊いものかも知れないけれど…。私としては軽く首をひねってしまう。

    アグネス「言うほど今の世界は二色かな…。むしろ馬鹿者どものせいで無茶苦茶だと思うけど。少なくとも連合側は。プラントも意味不明…ゴホン!」
    ルナマリア「まあ、私達と彼女達では立場が違い過ぎるし…」

    ルナマリアと話しながら必死に頭を捻る。まだだ、まだ挽回できる。ここから交渉をスタートすれば良い。

    アグネス「ルナマリア、カオスは?」
    ルナマリア「グダニスク近郊の第49空軍基地よ。ガイアと一緒にミネルバから降ろしてもらったわ。2機とも緊急点検・応急修理中よ。何で?」
    アグネス「直通可能なチャンネルが設定されているから!ああ、というかこのデバイスでもなんとか行けるかな?」

    ルナマリアにデバイスを貸してもらおうとしている間に、国際救難チャンネルの通信は修了してしまう。入れ替わりになるようにモニターに白服を纏った恰幅の良い男性士官が映される。

    どっしりとした貫禄のある中年のザフト白服軍人。ミネルバと共同して、アークエンジェルの説得・保護作戦を行っているウィラード隊長だわ。

  • 65二次元好きの匿名さん25/01/31(金) 01:41:31

    アグネス「(確か前大戦から活躍していらっしゃる歴戦の軍人。アラスカもヤキン・ドゥーエも戦い抜いたとか)」

    その経歴を勘案すれば、人相の悪いお顔もご愛嬌と捉えるべきだろう。ただ、画面の向こうの彼は明らかに今のアークエンジェルの返答に激高している。画面の背景から、彼が指揮するウボズゴロフ級がボスニア湾の氷を叩き割って浮上してきたことが判明する。

    ウィラード「グラディス提督、侮られていますぞ!奴らも何をふざけたことを。今更そんなことが通るものか! モビルスーツ隊の攻撃を開始させろ!舐められたぞ、決して脱出など許すな!」
    副官「はあ?」

    アホかな。ちょっと冷静に考えるべきところ。アークエンジェルは『見逃してくれ』と言っただけで、こちらを攻撃するとは一言も言っていない。ここは双方の合意できる妥協点を探るべき時、説得はまだ始まったばかりよ!

    アグネス「あの副官も副官よ!『はぁ?』じゃないわよ!しっかりしなさい!仕事する気が無いなら、その黒服私に寄こしなさい!」
    ルナマリア「アグネス、興奮しすぎると傷に障るわよ。でも、変な雲行きね。ウィラード隊長、なんで、わざわざ自分から矢面に立つかな…」

    そう言われてみれば確かに。ベテラン軍人らしからぬ振る舞いだわ。無論、人間は一貫性をもって合理的に振舞えるような生き物ではない。偶に自分でも分からない不合理な真似をすることもある。

    彼の今の状態がどちらなのかは付き合いが無い私達では分からないけれど…。

    アグネス「もっと慎重な御仁と聞いていたわ。痺れを切らしたってことなのかしら」

  • 66二次元好きの匿名さん25/01/31(金) 01:50:27

    何にしても血が上った時の人間は碌なことをしない。一旦、クールダウンして欲しい。それを伝える手段はないけれども。副官がしっかりそれをしなさい!

    画面の向こうのミネルバブリッジも突然、暴走し始めたウィラード隊長の言動に動揺している。

    タリア「ウィラード隊長!何を勝手に!」
    ウィラード「討たねば逃げられるわ。そう言ったではないか奴等は。いかに武勇名高き特務隊長と言えども、こうまで敷いた布陣、無駄にしてそれで済むか!」
    タリア「それでは作戦の趣旨に反します!お考え直し下さい」
    ウィラード「作戦の趣旨というなら、ここで奴らを逃がすことこそ間違いではないか。あと少しでスカンジナビア王国の領海に逃げ込まれるぞ!ミネルバがやらぬというなら我等がやる!バビ隊、アークエンジェルの機関を破壊しろ!」

    彼の号令の下、ボズゴロフ級からバビ2個小隊6機が発艦する。彼らはモビルスーツ形態に変形し、一旦急上昇した後、アークエンジェル目がけて急降下攻撃を敢行する。

    流石に撃沈命令が出ていないことを考慮してか、アルドール複相ビーム砲は発射しないが、その代わりに12連装航空ミサイルランチャーからミサイルが雨のように一斉発射される。

    ミネルバブリッジの映像が切り替わり、北の空を飛ぶアークエンジェルが表示される。バビ隊の狙いはCIWSの損傷が激しいアークエンジェルの左舷側のスラスター。急接近していくミサイルは、艦に届く前に、フリーダムが全て撃墜する。

    激しい爆発の後、暗い海と輝く星々の下、眩いシルエットがくっきり浮かび上がる。アークエンジェルは無事、とは言え戦闘の火蓋を切ってしまった。あの太っちょめ!何てことを-。

    こんな形であの艦と衝突するのか?散々手を尽くして来たのに!失望してしまう。これまでの私の努力は何だったのか!全部無駄にしてたまるものか!こんな部屋にいられない。私は基地に行くわ。

    アグネス「やっぱり、カオスに置きっぱなしにして来た業務用鞄、取りに行くわ。あれ…。鞄があるのはマルボルクだったっけ?」

    何だか記憶があやふやになっている。うーん、どうだっけ。頭がまだ本調子じゃないのか。

  • 67二次元好きの匿名さん25/01/31(金) 01:51:09

    極秘裏で奇襲した本編エンジェルダウンと違って、スカンジナビア防衛まで明確に手を貸してくれていたAAを地球軍を押しのけてまでして撃墜しようとしてるの普通に悪手だよね
    どうするつもりなのかな⋯

  • 68二次元好きの匿名さん25/01/31(金) 02:07:34

    SEEDのオーブ沖でザラ隊とAAが交戦したときみたいにスカンジナビア側でテレビ中継とかされてたらあっという間にザフトの旗色悪くなりそう

  • 69二次元好きの匿名さん25/01/31(金) 02:08:24

    ルナマリア「私に聞かれても!ともかく落ち着いて。あんた、さっきまで昏睡していたのよ!」
    アグネス「もう起きたわ。そして、思い出した!シャトルから大気圏降下して戦闘後に部下と合流したからマルボルクには置いて来ていない。機密保持のためにも第49空軍基地まで回収に行かないと」

    思い立つや即、ナースコールを押す。というか機密保持は本当に急務だわ。業務用鞄、ちゃんとしたところに置いて来られなかったのは一生の不覚。基地までの移動はストレッチャーに乗せてもらえば良い。機密漏えい防止のためなら救急車もタクシー代わりに使うわ。

    ルナマリア「完全に目的が変わっている…。私が代わりに行くわよ。大きさは?多分、基地の整備班が見つけて保管してくれていると思う。連絡を入れよう?頭を冷やして…」

    私達が言い合いをしている間も戦況は移ろい続ける。ルナマリアのデバイスの向こう、ミネルバブリッジの視界の先で早速、ウィラード隊のバビ6機がフリーダムに不殺撃破されている。頭や腕を飛ばされて退散を始めるバビ小隊、ザフトの第1波を退けたアークエンジェルは速度を上げてスカンジナビア領海に逃げ込もうとする。

    プラントの方針としては今の段階でスカンジナビア王国領土を侵すつもりはない。である以上、彼らはここで止める必要がある。逃してしまえば、スカンディナビア半島の反対側、大西洋か北極海に逃げ込もうとするところをキャッチするしか方法が無くなる。

    作戦難易度は言うまでもなく爆上がりする。足を止めてもらって説得したかったのに。ウィラード隊長の短慮で台無しだわ。領海との距離と緊迫した現地情勢から即断が求められたことは確かではあるのだけれど…。

    アグネス「(それにしても、これは何なんだ?何としてもアークエンジェルを攻撃したい。そんな意思さえ感じる。ウィラード隊長は何でこんなことを…)」

    まさか、『誰か』に圧力を受けていたのか?もしそうなら拷問しても答えてはくれないだろうけれど。何にしろ、ボスニア湾では、頭の悪い戦いが始まっている。信じられないわ...。

    戦犯などどうとでもなるだろう。何ならもう少しバルト海に彼らを匿っても良い!

  • 70二次元好きの匿名さん25/01/31(金) 02:16:27

    †闇に堕ちろ†でも喰らったか、それとも議長から直接『お願い』が来たのか⋯

  • 71二次元好きの匿名さん25/01/31(金) 02:34:38

    アグネス「(いや…。それは不味いか。ラミアス艦長ご自身のお言葉ではないけれど、こと今の西ユーラシアでは対ロゴス戦の是非についてだけでも態度表明をして欲しいところではあったわ)」

    ただ、デストロイを防いでくれたことだけで、もう十分お釣りがくるようにも思う。今からでもアークエンジェルが折れてくれないものか...。その先は私達が何とかする-つもりだから。そうか!

    アグネス「(この『つもり』というのが信じられない、というか信じるに足りないと彼らは言っているのね。私達がどう振舞おうがザフトの制服を着ている限り、と)」

    それを分からず屋とか妥協しろとか言うのは簡単ではあるけれど…。もう、スカンジナビア王国がこうなって居なかったらサッサっと領海の向こうに入ってもらえば済むのに。

    身体が怖気にも似た震えを起こし始める。怪我のせいなのか、画面の向こうの状況のせいなのかも分からない。

    ボスニア湾ではウィラード隊のボズゴロフ級がもう1隻氷を割って浮上する。2隻の母艦で第2波攻撃の開始、もう最悪だわ。その戦力、本当にカリーニングラードに分けて欲しかったわ。

    ウィラード隊の独走にグラディス提督も決断を迫られる。軍人にとって仲間を見殺しにしたという汚名は耐えがたい。しかし、今の状況、どう考えても手を出すべきじゃない。

    タリア「ブリッジ遮蔽。コンディションレッド発令。対艦対モビルスーツ戦闘用意」
    メイリン「?!…。コンディションレッド発令。パイロットは搭乗機にて待機してください」
    アーサー「CIWS、トリスタン、クルヴェナール、誘導砲塔は未分離状態で起動。ミサイル発射管、全門パルジファル装填」

    最悪の事態への備えをしつつも提督はまだ、事態の軟着陸を諦めていない。彼女はメイリンと目線で合図する。

    タリア「国際救難チャンネルの放送を再開します。ともかく流して!メイリン、出来るわね!」
    メイリン「はい!」

    タリア「国際救難チャンネルの放送を再度行います。これは当方の意志ではない。ウィラード隊長の独断です。しかしながら、貴艦が拘束中のテロリストをこちらも逃すわけにはいきません。せめて彼らだけでもお引き渡しを。貴艦に寄港先の希望があるなら、本官にお伝えください。その旨、国防委員会にお伝えします!」

  • 72二次元好きの匿名さん25/01/31(金) 09:02:42

    やりやがったなあの野郎!

  • 73二次元好きの匿名さん25/01/31(金) 09:13:39

    FAITH権限持ちが4人(タリア、アスラン、ハイネ、シン)がいても止められんか⋯

  • 74二次元好きの匿名さん25/01/31(金) 12:21:48

  • 75二次元好きの匿名さん25/01/31(金) 12:23:13

    戦略や戦術を詰めていったらオカルトパワーで全てひっくり返される

  • 76二次元好きの匿名さん25/01/31(金) 17:55:34

    >>57

    アコードが控えてたらアグネスがその気もないのに撃墜してしまって我に返ってめっちゃ曇る人の心のないSEEDイズム溢れる展開もできるな…

  • 77二次元好きの匿名さん25/01/31(金) 18:00:35

    闇に堕ちろの有効活用これでユーラシアからの独立とコンパス貶めるの成功しているので強力な武器

  • 78二次元好きの匿名さん25/02/01(土) 00:45:29

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  • 79二次元好きの匿名さん25/02/01(土) 00:47:47

    病室の扉の外、私が押したナースコールに呼び出された看護兵の足音が響く。気配を感じ取ったルナマリアは私に視線を遣ると静かに首を振る。

    『今、あんたに出来ることは無い。休んでいなさい』
    そう伝えたいのだわ。分かっている。彼女が正しい。平時なら…いや、戦時でもここまで逼迫していないなら状況なら、ね。

    そして、私達がどうであろうと、ボスニア湾の最奥の情勢は混沌を極めている。ルナマリアのデバイス画面はミネルバブリッジの様子を中継し続けている。グラディス提督が一縷の望みをかけて呼びかけた国際救難チャンネル、モニターに再びラミアス艦長のお顔が表示される。

    ただ、その表情は先程よりは幾分厳しい。現在進行形で攻撃を受けているのだから、良く抑制されている方だと思う。

    マリュー「…グラディス提督、度々のお申し入れ感謝いたします。この事態、我々はミネルバが初めからそのつもりで本艦を追って来たとは思いません。ただ、この混乱の最中に、ロアノーク大佐とバヤン中尉の引き渡しには応じられません。そして、先程申し上げた通り、本艦は世界の二極化に抗うことを目的としています、悲劇を繰り返させないためにも。なので、寄港先はお伝えしかねます。どうか、ご理解…」

    アークエンジェルの再度の決意表明が済んだ瞬間、狙いすましたかのようにノイズが発生、ミネルバブリッジの通信モニターがノイズに呑み込まれる。グラディス提督は突然の事態に驚かれている。けれども、次の瞬間には、今、ルナマリアの下にあるデバイスの画面自体に砂嵐が吹きすさぶ。ミネルバブリッジからの中継そのものが途絶したのだ。

    突然の出来事にルナマリアと二人で一瞬視線を交わし合う。
    一体、何が起こったの?

    寝たままでは分からない!ベッドの角度調整ボタンを押して上体を起こそうとする。

    アグネス「ルナマリア、デバイスを貸して!」
    ルナマリア「ちょっと!起きちゃダメよ。でも何で…」

    扉がガラッと開いて看護兵が2人入室してくる。
    看護兵「ギーベンラート隊長、どうされました?」

    看護兵達はどちらがナースコールを押したのか確認しようとする。最初に視線を向けられたルナマリアは首を振り、今度は私に視線を向かう。彼女達と目が合ったタイミングで敬礼する。そうすると向こうも慌てて姿勢を正して返礼して下さる。

  • 80二次元好きの匿名さん25/02/01(土) 00:55:09

    アグネス「お忙しい中、お呼び立てして申し訳ありません。実は本官の業務鞄がグダニスク南方の第49空軍基地に野放図に放置されている可能性があります。中には機密書類と同じく重要機密業務用デバイスが入っています。また、現在、母艦のミネルバはボスニア湾北部で緊急事態に直面しています。ご無理を承知で申します。私は基地に行きます。ストレッチャーと救急車で送ってください!」

    良し、言えたわ。出来るだけ、しっかり筋道を立てて。

    しかし―

    看護兵「ええ…。貴女…いえ、ギーベンラート隊長は重症なんですよ!いくらFATHであっても…。先生に許可を貰って下さい。分を過ぎたことですが、小官は反対です!お休みください」

    私のお願いを聞いて若い女性看護兵は仰天する。回答してくれたのは二人の内、先任の方。ややきつい口調で注意されてしまうが、止む無し。角度を上げたベッドの上でルナマリアにもう一度言う。

    アグネス「ルナマリア、業務用デバイスを少し貸して。そのノイズ…」
    看護兵「勝手に起き上がってはダメです!拘束しますよ」

    鬼の角を生やした二人の看護兵が左右に分かれて私ににじり寄る。不味いわ…、聞き分けのない患者だと思われて拘束される?或いは既に錯乱状態にあると誤解されているかも…。

    その状況を見かねたルナマリアが諦めて私にデバイスをそっと差し出してくれる。看護兵2人は、今度はルナマリアに怒れる眼差しを向けてくる。彼女はその剣幕に気圧され、縮こまってしまう。悪意からの圧には強い人ほど、善意からの圧には弱いものなのだ。彼女をこの件で叱るのは勘弁してあげて欲しい。我儘なのは私なのだから…。

    アグネス「このノイズの向こうで戦友が危機に陥っています。ミネルバには私の友人でこの友の妹も乗艦しています。無数の戦友たちも同じく」

    ルナマリアが差し出してくれたデバイスを管が繋がったままの右手で受け取り、不快な機械音を発し続ける乱れた画面を二人にお見せする。拘禁されたらお終いだわ。何か不味いことが立て続けに起きていることだけは本当なんだから。

    アグネス「私は今回もこれまでも何度も医療班・衛生兵の皆さんに命を救われました。お二人のお仕事と人格を尊敬しています。ただ、私と彼女にも自身の身体と同じか、それ以上に守りたいものがあるのです」

  • 81二次元好きの匿名さん25/02/01(土) 00:56:19

    本編エンジェルダウンで使ったジャミング弾か、映画で出ててきたNJダズラー(の試作版)か⋯?
    とにかくAA側からの回答を公的記録に残したくないらしい

  • 82二次元好きの匿名さん25/02/01(土) 01:16:10

    そう言って、二人の看護兵にアイサインを送ると、彼女達も不承不承頷いてくれる。了解が取れた、そう判断して借り上げたデバイスのキーボードを必至に叩く。このノイズはなんだ?ミネルバのブリッジも被害を受けているのか?

    そう言って、二人の看護兵にアイサインを送ると、彼女達も不承不承頷いてくれる。了解が取れた、そう判断して借り上げたデバイスのキーボードを必至に叩く。このノイズはなんだ?ミネルバのブリッジも被害を受けているのか?

    アグネス「(アカデミー次席卒業の私の処理能力、今こそ示すべき時!)」

    私が必死に作業するのを、ルナマリアは覗き込み、二人の看護兵はハラハラ見守る。

    ルナマリア「どう?何とかなりそう?ミネルバは…」
    アグネス「ダメ!解析できないし、解消できないわ。この通信途絶がジャミングによるものだとは分かるけど…。専門兵種じゃないとこんなに歯が立たないの?!」

    自分は何でもこなして来た、そんな自負を何時の頃からか抱いていた。そんな幻想は間違いなのだと嫌でも思い知らされる。

    というか、今言ったばかりではないか!専門兵種の看護兵に。私は何でもできる超人ではない。キラ・ヤマトやそこまでいかなくともアスランとは違う。専門班の人達にお膳立てしてもらってここまで戦ってこられた。そのことを何度も胸に刻み込んできたはず。

    アグネス「(私は優秀な人間。そう産まれ、その才を伸ばすべく競争に勝ち抜いてきたわ。でも、そこから先は機会と運と周囲の人達に恵まれたからこそ)」

    無論、その過程で私も伸びたし、もしかしたら他人に力を貸せたことも有ったかも知れない。だが、それは今の本題ではない。
    今考えるべきことは-。残念ながら、この場にはジャミングを解消し、1200㎞先で危難に遭っている戦友を助ける術が無いと言うこと。ここには専門兵種の者もいない。医学で何とかできる問題じゃないから。

    アグネス「ルナマリア、ごめん。ジャミングされていて向こうのことは分からない。でも、これは相当不味い状況なのだと言うことだけは断言できる。出発準備を」

    そう言って、デバイスを彼女に返す。彼女は静かに受け取り、呟くように言葉を漏らす。
    ルナマリア「うん…。ミネルバにはメイリンもシンも皆も。戦っているなら私も行くしかないわね」

  • 83二次元好きの匿名さん25/02/01(土) 01:33:02

    そう。どう『戦う』のかは置いておいてね。だから、先ず近場で規模の大きい基地に行き、それでも駄目なら、場合によってはミネルバと合流することも検討しないといけない。

    だから万難を排して第49空軍基地まで行く。シャトルも手配させる。ただ、心配性な友人を安心させたいとも思う。いや、本当に安心したいのは私のほうか…。

    アグネス「多分、よっぽどじゃない限りミネルバは大丈夫だと思うわ。でも、何かあっても遅いから…。ストレッチャー押して」
    ルナマリア「え…。あんたも来るの?自分を虐めない方が良いわ。これがPTSD?サバイバーズギフト?」
    アグネス「カウンセリングはまた今度受けるわ!」

    何やら、明後日の方向の心配をされる。でも、私は今日の心配をしている!戦場から距離があるせいで、どうしても私達のアクションは周回遅れになっている。

    このジャミングがアークエンジェルから仕掛けられたものならまだ良い。彼らが積極的に悪行を行わないと私は確信している。もし、ザフトを振り切るため、自衛目的で電子攻撃をしているだけなら、撤収するだけのこと。ミネルバの査定に響くかもしれないけれど、これまで貰いまくった勲章パワーが、そんなもの弾き飛ばしてくれるはず!

    ただ、厄介なのはこれが漁夫の利を得ようとする第3者-例えば、ファントムペインやブルーコスモス派地球連合軍の攻撃なら大惨事を招く。それどころか、この間隙を衝こうと第4者や第5者まで出てくるかも。

    私自身、忘れかかっていたけれど、ミネルバには敵も多い。多くの敵を屠って来た。善良な勢力や善人も巻き込んできたのだから、無防備になってはいけない。

    結論を私自身で出したところに、軍医殿が顔を見せる。

    軍医「ギーベンラート隊長!何かありましたか?」
    アグネス「外出許可を出してください。包帯を巻き直して、新しいコルセットとバンドの装着もお手伝いください。緊急車両と看護兵をほんの一時的にお借りします。特務隊権限で、一応、国防委員長の許可は取ってあります!」

    嘘は言っていない。こういう事態を想定した措置では無かっただけだわ。
    私の勢いに飲まれかけた軍医殿は寸で踏み止まり、質問してくる。

    軍医「自動車の運転を予定していますか?」
    アグネス「予定していません。ただ、乗車に備えた処置をお願いします」

  • 84二次元好きの匿名さん25/02/01(土) 10:39:57

    保守

  • 85二次元好きの匿名さん25/02/01(土) 11:08:24

    ミネルバは交戦避けようとしてるけど、原作のエンジェルダウンより状況悪いな⋯
    元々連合との戦闘でAAは初めから損傷してるし、相手は潜水艦付きときたから潜っても追撃の水中用MS出されかねない(ミネルバも戦闘に加わる場合はハイネアビスとアッシュ隊が確定で出てくる)
    フリーダム1機で相手できるか⋯?

  • 86二次元好きの匿名さん25/02/01(土) 20:24:10

    保守

  • 87二次元好きの匿名さん25/02/02(日) 02:35:57

    私の返答を聞く間に軍医殿も気持ちを整える。

    軍医「では、どのような予定がありますか?私達は医療隊として、プラントとザフトとギーベンラート隊長、三者に責を負っています。正直に話してください」

    ドアを開けた際の慌てた表情は、冷静で頼れる軍医の顔に切り替わっている。勢いで呑もうとした相手に正面から返されるのは気まずい。

    アグネス「(また、何時もの癖が出たわ…。そう、私は何だかんだと言って、周囲を下に見ている。この姿勢が骨の髄まで染みついて抜けない。一握りの者以外、真に他人を尊敬できない。そんな人間性ではこの局面を乗り切れない)」

    幸い、医師には守秘義務がある。何よりこの部屋にいる者は2人の看護兵も含めて戦友同士、隠し事は無しで行こう。そもそも、アークエンジェル保護作戦は最高評議会と国防委員会を通した正式なもの。

    アグネス「看護兵殿、部屋の鍵を閉めて下さい。軍医殿、ボスニア湾で現在、ザフトとアークエンジェルが偶発的な武力衝突を引き起こしています。直後のジャミングでその後の状況は不明。最悪、地球連合軍の介入を招いているかもしれません。私とルナマリアは-いえ、私は―義務を負い、使命を帯びています。それは、今、取りうる全ての手段をもってボスニア湾で危難に陥っている戦友に報いること。ベッドで寝ていては果たせないことです」

    上半身を起こしたお陰で、近い高さの目線から彼とお話することができる。今度は誤魔化したりしない。『嘘をつかない』だけでなく、きちんと自分の本心を打ち明ける。医療的な意味で、私は軍医殿達に身を委ねている。不正確なことを言っても仕方ない。

    軍医「事情は分かりました…。よもやそんなことが!先日は共にデストロイを撃退したと言うのに。彼らを見逃すことぐらい…、いや。申し訳ない、分を過ぎたことでした」
    アグネス「いえ。私もそう思います」

    そう話しつつ、ルナマリアに視線を向ける。彼女も頷き、軍医と看護兵の3人に一応、釘を刺す。

    ルナマリア「この件はいずれ公開されることと思います。ですが、今は内密にお願いします」
    軍医「了解しました。FATHの急患が来た段階で、一応、心の準備はしていました」

    軍医殿が看護兵2人に視線を投げ掛けると二人も頷く。なるほど、突然、大物が搬送されて彼ら彼女らも大変だったのね。思いっきり巻き込んでしまった。仕方ないことだけれど-。

  • 88二次元好きの匿名さん25/02/02(日) 02:50:42

    アグネス「そこで-。私と特務隊ルナマリア・ホークは第49空軍基地に向かいます。私はこのベッドを離れ、ストレッチャーに乗せ換えてもらい救急車両へ、車にはルナマリアも乗せて下さい。基地で用が済めば良し。駄目なら、スピースシャトルに乗ってミネルバと合流を目指します。基地とグダニスク国際空港間の移動はヴァルファウで。私自身もカオスの操縦を行うかもしれません。自動車運転の予定が無いのは先に述べた通りです」

    一通り、説明する間に軍医殿の目に力が漲って来る。どうした?

    軍医「話は分かりました。隊長のお身体の状態を保護した上で任務に臨めるよう準備を整えます。15分ほどお時間を-いや、7分30秒で済ませます。緊急車両と基地内までは私達が付き添います。用意を!」
    看護兵「はい!」

    突如やる気モードに突入した医療班の面々は、私から素早く管を抜き抜いていく。軍医殿は病室から院内薬局と薬剤官に連絡を入れる。今日当直だった者は災難だろう。

    私の身体を手際よくベッドから切り離していく看護兵、その目に浮かぶ真剣さと使命感と好奇心。なるほど、この人達は警察官に『あの車を追ってくれ』と言われたタクシードライバーみたいなもの。テンションも上がるわね。まあ、心強いことだわ。

    軍医殿が再入室、課長に許可を取って来たとかなんとか。その彼に何本か注射を打たれる。抗炎症剤、解熱剤、熱を下げ過ぎない薬、痛み止め、痛みを止め過ぎない薬、だそうだわ。

    説明の間も看護兵はテキパキ、私の身体に包帯を巻いていく。包帯法というのは奥深い技なのだ。単に傷口を保護するだけではない。止血、浮腫の軽減、傷んだ部位の固定、貼付した薬やドレッシング材のずれ防止。

    実際に身体を壊したことのある人なら身に覚えがあることだろう。専門家が包帯をしっかり巻いてくれると身体がどれだけ楽になるかを!

    アグネス「(うぉぉォォォォォ。ギブスやコルセット、バンドの効果も合わさって何と動ける、動けるわ、私!)」

    看護兵「くれぐれも無理をしないで下さい。包帯巻いて身体が治るなら、医師は要りません。あくまで、傷んだところを保護して、圧迫して、固定して、支持しているだけです。死の淵を彷徨っていたことをお忘れなく」
    看護兵「無理して立ち上がろうとしないで下さい。というか立ってはダメです」

    二人の看護兵が恐い顔でいろいろ注意してくる。

  • 89二次元好きの匿名さん25/02/02(日) 03:03:26

    私の対処が進む中、ルナマリアは必死に情報を搔き集めている。情報が集まるごとに事態の深刻さが浮き彫りになる。あのジャミングは、ミネルバとウィラード隊、アークエンジェル周辺の状況を世界から完全に切り離してしまった。欧州合同軍本部、バルト軍管区、ザフト軍本部も彼らと通信途絶状態という。

    カリーニングラード戦の勝利に舞い上がって祝杯を挙げていた国防委員会は一転してパニック状態らしい。国防委員長殿は文字通りの意味でシャンパングラスを落として割ってしまったらしいわ。

    ジャミングの件まで、国防委員会は大勝ですっかり気を大きくしていたらしい。病院にも私宛にお見舞いとお褒めの電報が届いていた。

    アグネス「バルチ―スクのヴィスワ砂洲部分、とりわけバルチ―スク飛行場を保障占領できたことに大喜びなされているわね。酔っぱらってないと良いけど」
    ルナマリア「多分、口を着けただけだと思うわよ。流石に、ね」

    騒ぎが国防委員会まで伝わっているのだから、その下の人達の安眠が打ち壊されたのは言うまでもない。ザフト軍本部とブリュッセルは蜂の巣を突いたような騒ぎだ。彼らは先頃まで連携して4000人の捕虜への対応を進めていたところだった。西ユーラシア政変のせいで捕虜収容所は何処もパンク気味だから。

    詰め込むだけなら詰め込めるけれど、『ロゴスとの戦い』を強く打ち出している手前、人道主義に徹する姿勢が求められる。万事が万事その調子だ。良い事なんだけどね。

    それで、その手配をグダニスク市行政府の協力も受けて、やっと済ませて、一安心していたところに大問題発生。仮眠に向かった軍人や防衛職員は叩き起こされ、目玉がグルグル状態になっている。

    これは、たかが軍艦2程度で大袈裟な、という話ではない。この2隻には陽電子砲が装備され、練度の高いモビルスーツ隊が配備されている。

    西暦時代の空母と同じ、一隻で一国を亡ぼせるほどの戦力だ。オーブの艦であるアークエンジェルだけなら、ともかく、ミネルバまで行方不明となってパニックにならない方がおかしい。私達は『中の人間』だから、その辺の感覚が麻痺してしまっていた。

    ルナマリア「どうなっているのよ」
    アグネス「分からないわよ。確かめないと、分からないなら、『分からない』と言う事実を」

  • 90二次元好きの匿名さん25/02/02(日) 03:19:28

    彼女と話しつつ、私はと言えば、包帯グルグルが終わったので、看護兵達にパイロットスーツを着せてもらっている。コルセットにバンドにギブスに包帯、着ぶくれした状態で着られるか心配だったけれど、ちゃんと着られたわ。考えてみれば一次的に体重が増えたパイロットも着用できるのだから当然か。


    軍医「これがお薬と説明書、これが医療情報。医療情報は電子送信済みです。ただ書面でも一応、身に着けておいてください」


    軍医殿はそう言うと紙に印刷した医療データを油紙に包み、封筒に入れた後、もう一度防水シートに入れる。そうして厳重に包装した書類をパイロットスーツ、私のお腹の上に透明テープでべろりと張り付ける。


    ルナマリア「何か…。もう、カオス乗る前提ね」

    アグネス「備えあれば患いなしよ。ありがとうございます」

    看護兵「どういたしまして!いっせいの、エイ!」


    看護兵2人に身体を持ち上げてもらいストレッチャーに乗る。前と後ろに看護兵、真ん中に軍医、医療ドラマの急患移送フォーメーションを彼ら彼女らは組む。ルナマリアの位置は横になった私を挟んで軍医殿の正面だわ。


    軍医「では行きましょう!」

    アグネス「はい、お願いします」、ルナマリア「はい、お願いします」

    軍医「良し。扉を開けて、出発!」


    キュルキュルキュル!キュルキュルキュル!軍病院の床の上をストレッチャーで高速移動、結局私は寝不足のまま明日を戦うことになりそうだ。


    (カウントMS971〈+共同撃破多数〉 デストロイ2(共同)  セカンドシリーズ1(共同) 大型MA22(共同2) 

    戦闘機46 対MS戦闘ヘリコプター245 大型輸送機33〈+共同撃破多数〉 VTOL輸送機33〈+共同撃破多数〉

    リニアガン・タンク141〈+共同撃破多数〉 自走リニア榴弾砲210〈+共同撃破多数〉 ブルドック220〈+共同撃破多数〉 工兵車60<+共同撃破多数> レーダー車7 汎用車両・兵站車両・軍用トラック等297〈+共同撃破多数〉

    地対空75mmバルカン砲塔システム7  大型砲20 ヘルダートタイプ・ミサイルランチャー5基 50mmガトリング砲9

    空母11 イージス艦16 フレーザ級5 大型輸送艦1 コルベット艦2 哨戒艇1 軍用艇3 アガメムノン級14 ネルソン級14 ドレイク級17 リフレクターシールド装備型ドレイク級10)

  • 91二次元好きの匿名さん25/02/02(日) 10:57:19

    ここのアグネス物凄く成長してるな

  • 92二次元好きの匿名さん25/02/02(日) 16:48:50

    前の病院のドクター「何してんのアンタら!?」

  • 93二次元好きの匿名さん25/02/02(日) 22:56:59

    カオス動くのか?
    コクピットの内装までダメージ行くってことは結構深刻だと思うけど⋯

  • 94二次元好きの匿名さん25/02/02(日) 23:52:04

    皆で軍用救急車に乗り、軍病院から飛び出す。グダニスク南方の第49空軍基地まで、12㎞以内の距離、8分以内に到着できる。

    ルナマリア「確認が取れた!あんたの鞄、基地の整備班長が回収してくれていたわ。着いたら、受け渡し可能な状態にしておいてくれるって!」
    アグネス「ありがとう。助かるわ!お礼をお伝えして」
    ルナマリア「はいはい」

    軍用救急車の中でも忙しく通信を続ける。次は、マルボルクの第22戦術航空基地にいるシホ先輩に一報入れないといけない。

    シホ「はい。こちらはギーベンラート教導航空団副隊長、シホ・ハーネンフースです。隊長!?」

    ルナマリアのデバイス越しにシホ先輩の顔が覗く。疲労から隈が出来かかっている…。それでも、彼女は一分の隙も無く、即時に姿勢を正して敬礼して下さる。私もストレッチャーの上で横臥しながらも敬礼する。

    彼女は急ごしらえで設けられた教導航空団の仮司令室に詰めていた。戦闘が終わっても、管理職には、その後の処理がある。今夜は徹夜の覚悟だったのだろう。この辺り、お互い下っ端の内は気楽だった。出世も善し悪しだわ。

    アグネス「ハーネンフース副隊長、お疲れの所、申し訳ありません」
    シホ「そんなことはありません!隊長、意識をご回復されたのですね。本当によくぞ…。所でそちらは?院内ではないのですか?」

    今の状況、彼女が聞いたらどんな表情を浮かべられるのだろう。これだけ心配して下さっている方のご厚意を無にするような振る舞いをしてしまっている。

    アグネス「(彼女は私と共に敵の猛攻撃に晒されつつ戦い抜いた。一眠りしても何ら責められるべき立場ではない。でも、『副隊長』の立札を机に置いたうえで、必死に書類仕事をこなして下さっている)」

    本当に真面目な人なんだわ。中途半端な形で仕事を丸投げしてしまったことを申し訳なく思う。

    アグネス「先程までは院内でした。今は軍用救急車で第49空軍基地に移動中です。教導航空団の皆の健康状態を確認したい。副隊長ご自身も含めてです」

  • 95二次元好きの匿名さん25/02/03(月) 00:11:37

    ミネルバのことも大事、教導航空団のことも大事、私はその両方に責任を負っている。ただ、相対的に重いのは、こちらの方だろう。部下の命と健康だけは疎かにできない。

    シホ「私も含め、体調に異常が生じている者はいません。皆、壮健です。ただ、初陣の者も多く、メンタル面での配慮が必要な者も5,6人見つかりました。他の者も多かれ少なかれ激戦を戦い抜き、気分の落ち込みや興奮、緊張と弛緩が散見されます。今夜は少し危ういと判断し、ラムシュタイン空軍基地への帰還は明日の午前と仮決定しました」

    良い判断ね。特にアカデミー繰り上げ卒業組のメンタルはかなり心配していた。私から見ても幼い彼らには、どうしてもニコル先輩の生き様を重ねてしまう。

    ニコル先輩はC.E.56年3月1日生まれ。彼は戦地で15歳の誕生日を迎えられ、その僅か一月半後のC.E.71年4月15日に散華した。彼と私とルナマリアは同い年。

    そのせいか、アカデミーにいた時は大した感慨を抱くことが出来なかった。私達も後に続くのだから当然のこととさえ感じていた。無論、私に死ぬ気はなく、あくまで『後に続いて戦地に赴く』という意味だったけど…。
    2年経ち、遺影の向こうの早熟した彼と、日々大人びていく自分達の顔つきが事態の深刻さを突き付けている。私の場合は、彼が知らせてくれていたことに気が付くまで、さらに時間が必要だった。

    もう今となっては、それがどれ程、異常で避けるべきことであったのか嫌なほど身に染みている。

    アグネス「その決定を支持します。ただ、訓練生のリズムを乱すのは良くない。早朝に出発してラムシュタイン空軍基地帰還せよ。18歳未満の訓練生の心には目に見えないダメージが生じている可能性もある。訓練中もそれとなく気を配って欲しい。
    明日からの訓練のメニューは、先ずはカリーニングラード戦の振り返りを。グフは大気圏内ではやはり盾役としての活躍がメインになるかも知れない。バビやディン等、空戦機との連携戦術を磨いていく方向が良い。いずれにしろ、少しの間、指揮を代行して下さい」
    シホ「了解しました。このタイミングで第49空軍基地に向かわれているのは、やはりミネルバの…失礼しました」

    軍用救急車の中にいるのが、私とルナマリアだけでないと気が付いた彼女は慌てて口を閉ざす。

  • 96二次元好きの匿名さん25/02/03(月) 00:19:21

    ただ、それに関してはあまり神経質にならなくても良いだろう。他には医師と看護師しか載っていない。運転している兵士には聞こえないし、聞こえたとて彼も衛生兵の一員だ。

    アグネス「はい。シホ先輩のご厚意を無にするようなことをして申し訳ありません」
    シホ「いえ。ご武運とご自愛を!それと以前申し上げた通り、この任務中は副隊長、副教官呼び捨てでお願いします」
    アグネス「はい。ありがとうございます」

    そう言って互いに敬礼を交わし、通信を終了する。

    アグネス「ルナマリア、基地に着くまでに、ミネルバの現状をもう少し詳しく聞かせて」
    ルナマリア「分かったわ。現在、ミネルバの搭載機は20機。インパルス、セイバー、アビス、グフ3機、ザズウート隊6機、AWACSディン4機、ザクウァントム2機、ザクウォーリア2機よ。内、グフ1機は今回、補機扱いね。ハイネ先輩が引継ぎを終えて合流後に出港したのよ」

    なるほど。改ミネルバ級の搭載機数が22機、補機2機、計24機であることを思えば妥当な数。しかし、ミネルバはこれまで過積載上等で戦ってきた。今回がそうでないのは-。

    アグネス「残りは抑えとボーンホルム島?」
    ルナマリア「ええ。アッシュ小隊3機がバルト海北部中央部に進出し、ボスニア湾とフィンランド湾を見張っている。バクゥハウンド小隊3機は、保障占領したヴィスワ砂洲を後続の部隊と合同で守備中。ザクウォーリア6機はボーンホルム島でアビーと一緒に復旧活動を継続しているわ」

    アッシュ隊がバルト海北部中央部を押さえてくれているのは大助かりね。カリーニングラードを叩いてそこまでザフト水中部隊が進出できたことで、サンクトペテルブルクを東奥に抱えるフィンランド湾、ボスニア湾の入口の多島海とオーランド海を封鎖できる。

    アグネス「アッシュ隊の疲労蓄積は大丈夫?」
    ルナマリア「明日になれば…。もう今日ね。新たに組織し直された合同軍バルト海部隊が引き継ぐみたい。お役御免とはならないけど、少しは休めるはずよ」
    アグネス「良かったわ」

    現状確認が終了したタイミングで基地に到着、検問を通ると出迎えの将兵が待機していた。残念ながら、ルナマリアによると、ボスニア湾北部の状況は判明していない。ザフト軍と欧州合同軍が必死になって解析、解消させようとしているのに無理とは恐れ入る。

  • 97二次元好きの匿名さん25/02/03(月) 00:27:37

    アグネス「(しかし、西ユーラシア連邦軍は先頃、離脱するまでは建前上、地球連合軍だったわけで…。そうなると連合の技術でもないのか?)」

    ただ、連合と言っても数か国に跨り、内部には様々な組織がある。味方を出し抜く形で技術を開発・秘匿している勢力が有っても不思議ではない。となると、やはりファントムペインが怪しいのかな。

    軍医「良し。着きました。基地格納庫まで急ぎましょう」
    看護兵「ストレッチャーを下ろします。一、二、三、ハイ!」

    駐車場にストレッチャーが丁寧に降ろされると出迎えてくれた基地の軍人が一斉に敬礼してくれる。私も上体を起こして敬礼したいが、ルナマリアも含めて皆が鬼の形相で此方を睨むので、しょんぼり横臥したまま返礼する。

    基地軍人「ギーベンラート隊長!お預かりしていた業務鞄をお持ちしました」
    アグネス「ありがとうございます。ストレッチャーの上、私の右脇に乗せて下さい」
    基地軍人「はい!赫赫たる武勲、お見事です。どうかご武運を!」
    アグネス「ありがとうございます」

    ストレッチャーに置いてもらった鞄を体と右腕で右脇腹に挟んでいざ出発、ガタガタ音を立てて進んでいく。

    格納庫に着くとまたも皆が出迎えて敬礼してくれる。今度こそは上半身を起こし返礼を返す。カオスに『乗るかも知れない』状況が迫っている。

    整備班長「ギーベンラート隊長のカオスに関しては…。かなりくたびれています。先ず、コックピットの内部左側側面に関しては応急修理と補強を施しました。ただ、左側のモニターは使えません。人間で例えるなら片目片耳が不自由になっている状態です。一応、通信用モニターに外部カメラからの線を接続して、そこから視認可能にしておきました。代わりに通信回線は音声のみとなります。
    機体左腕の第一、第二関節、手首の関節部の不具合は解消されていません。これまでの累積ダメージに隊列突破時の衝突攻撃が最後の止めです。左腕は巡航機動防盾のマウント用の金具と思って下さい。一応、マニピュレーターは動きます。モニターに入った罅と-その奥の内部機構もエラーと警告音が鳴りやむところまでは直しました。ただ、直ぐに総点検が必要です」

    そこまで直してくれたなら特に言うことは無い。

    アグネス「ありがとうございます」

  • 98二次元好きの匿名さん25/02/03(月) 00:38:20

    整備班長は次にルナマリアに説明を始める。
    整備班長「ホーク女史のガイアの整備は無事、完了しました。心配された対戦車地雷原突破時のダメージも特に見つかりませんでした」
    ルナマリア「ありがとうございます」

    セーフね。対戦車地雷原に突っ込むようお願いした時、相当しんどかったから。ルナマリアに何かあったら、私はどうなっていたのだろう。関わりが深い人を最悪の危地に放り込むのはもうこりごりだわ。

    そて、それはそれとして-。そろそろ回収したデバイスを開け、状況を確認したい。しかし、格納庫のど真ん中でそれは不可能だ。機密を守って処理できる『部屋』に行く必要がある。

    ストレッチャー前後の看護兵と軍医に目線で合図して、ガイアの報告を終えた基地整備班長に声をおかけする。
    アグネス「早速ですが、モビルスーツ昇降機をお貸しください。カオスに搭乗します」
    整備班長「そ…その身体でですか?」

    何やら早合点が過ぎる。防音室が欲しいだけだ。今のところはね。

    アグネス「操縦すると決めたわけではありません。音漏れせず、落ち着いて座って作業できる場所が欲しいだけです」

    そう言って、難色を示す整備班長を宥め賺す。ルナマリアと軍医殿の口添えもあり、大型の昇降機にストレッチャーごと乗せてもらい、ゆるゆるカオスの胸部まで持ち上げてもらう。

    開かれたコックピット、内部左表面の破損部は白いとりもちのような物体で覆われている。おそらく一時しのぎ用で後日改めて本格修理するのだろう。前面モニターの罅は、金継ぎのように塞がれている。内部機構もこの短期間にあれこれと工夫して手直ししたようだ。

    せっかくのセカンドステージシリーズ、使い潰すまで使わないとね。

    アグネス「軍医殿、看護兵殿ありがとうございます」
    軍医「いえ。ともあれ状況のご確認を」
    アグネス「はい」
    看護兵「はい。行きますよ。一、二、三、はい!」

    二人の看護兵が合図と共に私をコックピットに押し込んでくれる。席に座り、改めて病院からの3人とこの機体と悪戦苦闘してくれた整備班長、整備兵の皆さんに敬礼する。彼らが敬礼を返して下さったのを確認して、コックピットハッチを閉める。

  • 99二次元好きの匿名さん25/02/03(月) 01:56:51

    コンコン、白いとこりもちを叩く。流石に固まっているわね。しかし、パイロットもギブス、機体も継ぎ接ぎ。何かおそろいで親近感すら湧いてきたわ。まあ、お役御免になったら、それまでなんだけど-お互いに。

    狭いコックピットの中、工夫しながら鞄を空けて業務用デバイスを広げスイッチをオンにする。新着の業務メールが山と入っていて、うんざりする。

    重症だと言っているでしょう!私が無理をすることを前提で、国防委員会は仕事を投げているのではないかと勘繰ってしまうわ。
    昨日から立て込んでいる案件は、何割かは私が『増やした仕事』な面もあるからグチグチ言えないけれども。

    そして、状況は相変わらずさっぱり分からない。ボスニア湾の中で何が起こっているのか?届いているメールを片っ端から読んでみても分からない。ともあれ、グダニスク国際空港で待機しているシャトルに発進準備開始の依頼は出しておく。

    さて、私のデバイスからの回線でミネルバに呼び掛けても応答なし。ウィラード隊長にも繋がらない。国防委員会に問い合わせることもできるけれど、果たしてそれに意味はあるのか?最終確認時には必要かな。

    アグネス「(ここまで来たら、電子通信による状況把握は諦めた方が良い。偵察機を直接、ボスニア湾に飛ばして観測させ、戻ったパイロットに口頭で報告させる方が手っ取り早い。如何にも原始的だけれど、確実だわ)」

    ただ、『霧の中』に偵察機を突っ込ませて、彼ら彼女らは生還できるのか?無責任な作戦に人命を浪費したくない。罠の可能性100%な状況なのだ。無茶を通すなら『自分の目』で確信して、必要なら戦友を助けるべく戦うべきだわ。

    アグネス「ルナマリア、『分からない』が分かったわ。グダニスク国際空港に、宙に上がろう」
    ルナマリア「やっぱりそうなるわね。もう、仕方ない。ガイア、飛べないんだけど、どうするの?」
    アグネス「熱圏を抜けたらカオスにしがみ付けばいいんじゃない?ガイアのスラスターも全開にして。若しくは、月軌道艦隊の降下ポッドでグゥルと一緒に降下させてもらうか」
    ルナマリア「荒業ね。良いわ。メイリンもシンも皆も危ない。行くわよ」

  • 100二次元好きの匿名さん25/02/03(月) 08:55:08

    いつ初陣のルナザクみたいに機体トラブル起こしてもおかしくない状況なんですが⋯マジで戦場に飛び込むつもりか

  • 101二次元好きの匿名さん25/02/03(月) 17:34:02

    保守

  • 102二次元好きの匿名さん25/02/04(火) 02:03:31

    アグネス「軍医殿、カオス及びセイバー、発進します。整備班長殿、前言を翻すような振る舞いをお許しください。格納庫の扉を開いてください。滑走路上のヴァルファウはハッチを開いて、輸送準備をの願いします」

    足元の人々に呼び掛けると、医療班も整備班も皆が手を振って応えて下さる。カオスとガイアの発進準備が急ピッチで始まる中、コックピット通信に整備班長の声が届く。

    整備班長「ギーベンラート隊長!中の損傷はサインが出なくなるまでは直しました。ただ、先程お伝えしたように精密検査は出来ていません。いつも通りのパフォーマンスが可能か断言できかねます。無理だと思ったら直ぐ御下がりください!」

    なるほど。通信が音声のみになっている。最初に言われたようにコックピットモニターは左側が使えない。白い補強材でスクリーンごと覆われているから。だから、そちらは普段の通信用モニターに小さく、ちょうど西暦時代の自動車のバックモニターカメラのようなイメージで映る仕組みになっているのね。

    アグネス「ありがとうございます。慎重に操縦します。私も負傷中の身、無理をするつもりは最初からありません」
    整備班長「そう願います」

    さて、それはそうとやはり映像が見られないのは何かと不便、一応工夫はしてみる。

    アグネス「ルナマリア、聞こえる?」
    ルナマリア「聞こえるわ。デバイスのほうで繋いでいるのね」
    アグネス「そう。カオスのと同期させたわ。こっちで対応してみる」

    そう話しながら、業務用デバイスを太いテープでコックピット内部左側面にしっかり固定する。正確に言うなら壊れた左側面を覆っている白い補強材の上に固定している、というべきか。

    ルナマリア「いいアイデアね」
    アグネス「でしょう!」

    ただ、戦闘中に吹っ飛ぶかもしれない。そこだけは用心したいところ。強度に関しては戦闘中も携帯することを前提とした造りだから問題ないけれどね。

    透明なテープで✖✖✖と止め、一応、対策はする。剝がすとき面倒だと思う。緊急脱出時はナイフで切れば良いか。情報漏洩が恐いから、危険度が増しても置きっぱなしには出来ない。

    そうしている内に格納庫の扉が開き終わる。今夜私は相当な無茶を撒き散らしてしまった。もう、我が身は自分一人の物ではない。もし、私が落命すれば、無理を聞いてくれた医療班や整備兵達が上からお叱りを受けることになりかねない。

  • 103二次元好きの匿名さん25/02/04(火) 02:09:23

    仮に私の形振り構わぬ行動がルナマリアの言うように心の傷に惹起されるものであったとしても、そうでなかったとしても、どちらにしろ彼らにとっては関係のないこと。

    皆がリスクを取ってくれたことに感謝を示しておきたい。

    アグネス「皆さん、ありがとうございます。行ってきます」

    コックピットを一度開いて、足元の皆に直接敬礼して見せる。ルナマリアもそれに倣って、ガイアのコックピットを開き、同じく敬礼する。

    軍医、看護兵「気をつけて!低体温症とエコノミー症候群に注意を!ルナマリアさんも!」
    整備班長、整備兵達「ご武運を!バルト海とボスニア湾に平穏を。ザフトのために!」

    彼らの敬礼を受けて、名残惜しいがコックピットハッチを閉じる。

    アグネス「アグネス・ギーベンラート、カオス、出ます!」
    ルナマリア「ルナマリア・ホーク、ガイア、行くわよ!」

    2機で基地滑走路を歩き、待機中のヴァルファウの貨物室に入る。クジラの口に飲まれた気分だわ。

    ヴァルファウパイロット「当機は、第49空軍基地を発、グダニスク国際空港着。ものの70秒ほどの距離ですが、よろしくお願いします」
    アグネス、ルナマリア「はい。よろしくお願いします」

    緊急離陸して、上空に昇るヴァルファウ。北にはグダニスクの夜景が広がっている。眩い光、その意味に気が付くまで時差が生じてしまう。灯火管制が解除されている!

    アグネス「(ザフト軍のカリーニングラード戦、大勝利によって連合のバルト海における制空権が消滅したからね。綺麗…)」

    ポーランド最大の港湾都市、第二次世界大戦と中欧諸国の共産主義体制崩壊の象徴的な都市。悲劇とドラマの歴史が積み重なったこの地の人々が今夜は楽しい時間を過ごせている。明日はどうなるのかなんて誰にも分からない。灯火管制も明日には元通りかもしれない。

    それでも今夜、あの町に灯をもたらすことに幾分かの貢献が出来たのなら、頑張った甲斐が有ったというもの。後はでっかい勲章貰って100点満点ね。

  • 104二次元好きの匿名さん25/02/04(火) 02:15:03

    70秒後、グダニスク国際空港にヴァルファウは着陸を成功させる。ルナマリアと一緒にお礼を言って下りようとするととんでもない知らせが舞い込んで来る。

    スカンジナビア王国スポークスマン「国際救難チャンネルの放送を開始します。こちらはスカンジナビア王国政府です。ボスニア湾北部旧フィンランド領ケミ市沖合のザフト軍並びに帰属不明モビルスーツ4機に告ぐ。我が国の領海、領空、接続水域から速やかに退去せよ。
    スカンジナビア王国はプラント、西ユーラシア連邦、帰属不明モビルスーツの背後勢力にボスニア湾内での軍事行動の即時停止を勧告します。繰り返す、ザフト軍及び帰属不明モビルスーツ4機はスカンジナビア王国の領海、領空、接続水域から速やかに退去せよ」

    平穏ならざるメッセージがコックピットに木霊する。アンノウンが4機?なんだそれは…。ファントムペインの新型機かな。

    ルナマリア「帰属不明モビルスーツが4機…。一体何のこと?」
    アグネス「さぁ?ザフト軍って言うのはウィラード隊ね。グラディス提督が王国の接続水域や領空を侵す許可を出すとは思えないし」
    ルナマリア「でも…。どうして。というかその前にスカンジナビア王国政府はジャミングの中どうやって知ったのよ!」

    どうもこうも…。思うに目で見て知ったのだろう。ボスニア湾は旧スウェーデン領と旧フィンランド領に囲まれている。偵察機(モビルスーツでも飛行機でも)を飛ばせば目視で確認できる。
    後は首都なり重要都市までパイロットが帰還して口頭で上官に伝えればよい。何だったら光を使ったモールス信号や地上に降りたら有線通信も可能なはず。

    電子攻撃・電波攻撃で目くらましするには、ボスニア湾は人口密度が高すぎた。ジャミングで稼げる時間は限られている。もう、この放送が掛かった以上、ウィラード隊もそのアンノウン4機についても時間切れだ。アークエンジェルは粘り勝ちしたのか?

    そう伝えるとルナマリアは安堵とも落胆ともつかない表情を浮かべる。

    ルナマリア「これでザフトの威信も地に落ちたわね…」
    アグネス「そうでもないわよ。先の大戦のアークエンジェルのオーブ寄港時と今では状況が異なる。スカンジナビア王国は何度も言うように表向きはプラントの交戦国。今の勧告に本来、拘束力はない。向こうもアークエンジェルに何一つ触れていない以上、道義的にはアイコよ」

  • 105二次元好きの匿名さん25/02/04(火) 02:23:54

    むしろ、緊急事態とは言えスカンジナビア王国に『西ユーラシア連邦』という国名を言わせたのは外交的勝利と言って良い。彼の国のユーラシア連邦からの分離独立をスカンジナビア王国に認知させたのだから。ここらが引き時のはず。

    ともあれ-このままヴァルファウに乗っているわけにも行かない。

    アグネス「パイロット、乗員の皆さん。お疲れさまでした。行ってきます」
    ルナマリア「皆さんの武運長久をお祈りします」
    ヴァルファウパイロット「はい!お二人こそ武運長久を!しかし、どうなっているのやら…」
    ルナマリア、「ええ…」、アグネス「本当にそう思います」

    張り付けたデバイス越しにパイロットに敬礼して、開口されたハッチを下り、そのままスペースシャトルに向けて進む。

    怪我が身体の左側に集中していて助かったわ。お陰で敬礼だけは上手くできるから。痛み止めが聞いている内は、だけどね。

    空港滑走路を歩いている間も通信状況の確認は継続する。スカンジナビア王国の発表は効果てきめんだったようだわ。ジャミングの霧が徐々に晴れていく。件の4機は電波妨害を撒き散らしながら尻尾を撒いて撤収したらしい。スカンジナビア王国上層部に情報が伝わり、国際発信がされた時点で正体不明勢力にとっては勝負あったと言える。

    本当は奴らも捕えたいところだけど。ジャミングがあるとはいえ、夜間でなければ、ちゃんと追跡できたのに。

    メイリン「やっと繋がった!アグネスさん!重症だったのでは?もう操縦して大丈夫ですか?!」
    アグネス「メイリン!良かった。無事だったのね。こちらに損害は?」

    突然繋がった回線!メイリンの顔を見て、嬉し泣きしてしまいそう。アンノウンだなんだと言うから心配したじゃない!

    メイリンも破顔一笑して、私の感激を共有してくれる。不安だったのはこちらだけではない。しかし、損害という言葉を聞いた瞬間、彼女の表情は険しくなる。

    メイリン「こちら…というのが月軌道艦隊という意味なら死者は出ていません。ただ、ウィラード隊モビルスーツ隊に1名死亡者が出ました。フリーダムに不殺撃破された直後にアンノウンとの戦闘に巻き込まれて…」
    アグネス「そう…。何てことを!」

    最悪の事態じゃない。馬鹿者が!アホか!こんなことは避けられたはずよ!

  • 106二次元好きの匿名さん25/02/04(火) 02:40:23

    メイリン「セイバーは大破、一時墜落。アビスが海中から救出しました。インパルスはフォースシルエットのチェストフライヤーが中破。幸いなことにチェストフライヤーには予備があります。ウィラード隊の艦載機は、バビ隊16機の内、15機は中破。1機はフリーダムに不殺撃破されたタイミングで背後から帰属不明機の攻撃を受け撃墜…」
    アグネス「セイバーが墜落!何で?アスランが乗っていたんでしょう!」

    信じられない…。アスランは私が知っている中で最強のパイロットなのに。キラ・ヤマトとは互角かもしれないけど。

    メイリン「フリーダムを正体不明モビルスーツの短針投射攻撃から庇ったからです。フリーダムは核搭載機ですから、本当に危ないところでした」
    ルナマリア「負傷は?二人の!」

    ルナマリアが凄い剣幕で割り込んで来た。無礼を咎めるつもりはない。私も聞きたい。

    メイリン「アスランさんもシンも外傷は有りません。アスランさんは一応、検査を受けています」
    アグネス、ルナマリア「良かった」

    しかし、短針投射、なんだそれは?そんな機体、ザフトに存在しない。発射機構自体の仕組みは単純だろうから作って作れないことは無いだろうけれど。連合の機体でもあまり聞かないわね。

    アグネス「詳しいことは後で。ウィラード隊長やウィラード隊のボズゴロフ級2隻は?」
    メイリン「ボズゴロフ級2隻は外部からはザク隊が甲板を制圧。空はショーンさんとデイルさんのグフが、水中はアビスが押さえました。ウィラード隊長ご本人は、ミネルバに呼応した副官・クルーと乗り合わせた観戦武官が取り押さえ医務室に。隊長は一時的な譫妄状態と診断され、艦内で拘束しています」

    観戦武官が乗っていたの?最悪だわ。他国に恥をさらしてしまった!

    アグネス「メンタル管理まで含めて管理職の仕事でしょうに。ウィラード隊長にはしばらく休養が必要みたいね」
    ルナマリア「それ、あんたが言う?観戦武官ってどの国の?」
    メイリン「ファウンデーション王国と大洋州連合です。勲章授与式から始まったご縁で、と。それで今回は両国から、アークエンジェル説得後の武器、テロリストの身柄引き渡しの立会人になってもらう予定だったそうです」

    うーん。その2国ならセーフかな。大洋州は最友好国だし、ファウンデーション王国はプラントの子分みたいなものだし。どうにでもなるわ。

  • 107二次元好きの匿名さん25/02/04(火) 02:52:56

    アグネス「じゃあ、ボズゴロフ級にはトラドール国務秘書官が?」
    メイリン「いえ。公務が有ると。今回はグリフィン・アルバレスト親衛隊隊員が乗艦されています。ともあれ、ウィラード隊はリアパーヤまで撤退させることが決定しました。グフ隊とザク隊は護送任務にあたる予定です」
    アグネス「妥当なところね」

    では、次に聞くべきなのは-。

    アグネス「アークエンジェルとフリーダムは?」
    メイリン「フリーダムは…。ケミ川 (旧フィンランド)河口上空で撃墜されました。湖のようなケミ川下流に墜落、直後に爆発が発生…。巨大な水柱が発生しました。ただ放射能漏れは確認されていません」
    アグネス「!…」

    それでスカンジナビア王国は空侵犯を止めよ、と。アスランの献身は報われなかったの?

    アグネス「(いや。放射能漏れが起きていないなら…。直前でキラ・ヤマトが核動力炉を停止した可能性がある。つまり、彼にはそれだけの余裕が有ったということ。脱出できているかもしれない。難しいだろうけれど…)」

    メイリン「アークエンジェルもアンノウン2機の猛攻に晒されて。ミネルバはインパルスとセイバーを出撃させ、艦の自衛に事実上協力したのですが…。
    アークエンジェルは中破しつつスカンジナビア王国領内に侵入しています。225cm2連装高エネルギー収束火線砲『ゴットフリートMk.71』、110cm単装リニアカノン『バリアントMk.8』、75mm対空自動バルカン砲塔システム『イーゲルシュテルン』は全門使用不能。破壊されています。一応、陽電子破城砲『ローエングリン』2門と艦橋後方ミサイル発射管、艦尾大型ミサイル発射管は損害無しと推測されます」

    よくぞ粘ったと言うべきなのかしら。どうやらアスハ代表とオーブ軍ムラサメ隊も無事のようだわ。しかし―

    アグネス「最悪じゃない…。中途半端に戦闘能力が残っているから『艦の無力化を確認した』として追跡を打ち切ってあげることにも難があるわ」

    こちらに投降してくれたら、まだやりようがあるのに!それが無理な事情も承知しているけれど、彼らが苦渋の決断を下すなら、今しかない。

  • 108二次元好きの匿名さん25/02/04(火) 08:12:36

    メタ視点で見てると「うわぁ…」ってなる要素山盛りなのに、予備知識無しだと普通の事に見える辺り、精神干渉ってマジで禁じ手だな…

  • 109二次元好きの匿名さん25/02/04(火) 09:21:02

    この時点でブラックナイトスコードできてるのか…

  • 110二次元好きの匿名さん25/02/04(火) 09:27:49

    >>109

    武装の試作段階としてコストをかければファーストステージとセカンドステージの間の機体としては作れそうですね

  • 111二次元好きの匿名さん25/02/04(火) 12:53:01

    観戦武官として潜り込んでいたか……!アコードの特性を知らなければ、正に対処の仕様が無い工作員だよなぁ。

    ……まてよ?この一件を議長が握りつぶせずにきちんと調査されたなら、「何か分からないけど何かがおかしい」
    位の事は分かるよな?ある意味この時点でアコードの手札一枚切らせたのは不幸中の幸いでは?これで種自由で
    キラが暴走したら「なんでこういう事が起きると、ファウンデーションの連中が居合わせるんだ?」位の不信感
    は共有できるんじゃ……。

  • 112二次元好きの匿名さん25/02/04(火) 13:14:48

    あちゃーこう来たか⋯
    AAとミネルバの共闘はアツいけどこのタイミングでセイバーとフリーダムが落ちたのは痛いな⋯
    グリフィンいたってことはやっぱウィラード隊は闇に落ちろ食らったのかな

  • 113二次元好きの匿名さん25/02/04(火) 13:36:27

    思考が読まれるのもキラアスランシンハイネ辺りなら気付けるか?どうかな⋯

  • 114二次元好きの匿名さん25/02/04(火) 15:30:13

    >>111

    >>113

    記録は残るだろうけど一回二回くらいだと無理だと思う。

    ウィラードが功を焦ったって取る事もできる訳だし、思考盗聴に関しても実際にされている、出来るって証拠取りしないといけない。

    協力的なアコードが必須で、それも面の影響力が強すぎるラクスだよそれもダウト

  • 115二次元好きの匿名さん25/02/04(火) 15:42:06

    >>113

    アスランは気づいてるんじゃない

    自由でシュラとの短時間の一戦だけで推測してるんだし

    キラとシンはどうだろう

    戦略戦術組み立てて戦ってるイメージないんだよ

    ハイネはわからない

    戦闘シーン少なすぎてアスランみたいに詰将棋な戦いするタイプなら気づいてるかも

  • 116二次元好きの匿名さん25/02/04(火) 19:41:36

    >>113

    どうかなー

    映画でアスランが気付けたのは「アイツら胡散臭い」って言う前提からの潜入調査と、その後の明確な敵対関係があったのも大きそうだし…

    現時点だと「まるで動きが読まれてるようだ」止まりになりそうな気もする。自分ができるから相手もできる、みたいな感じで。

  • 117二次元好きの匿名さん25/02/05(水) 01:06:44

    カオスごとシャトルに乗り込む。一度にいろいろ起こりすぎて頭がくらくらする。負傷と疲労と薬剤のせいもあって何となく薄ぼんやりした意識の中、現状を少しでも呑み込もうと努める。

    遂にアークエンジェルに絡んでザフト側に戦死者が出てしまった。その意味するところは重大だ。ただの死者ではない。国家の任務に従事しているものが、その最中に倒れたのだ。プラントはその意味について、遺族と国民に説明をしなければいけない。これまでの戦死者にしたのと同じように。

    おまけに軍と云う組織は、良くも悪くも身内意識、戦友意識が強い。仲間が殺されたとなれば、黙って居られない者もいるだろう。

    話を聞く限り、バビを直接、撃墜したのは帰属不明機とのこと。アークエンジェルにとっては貰い事故みたいなものだわ。でも、こちらにはこちらの立場がある。

    ラクス暗殺未遂を知らないザフト軍将兵の心情やプラント国民の世論の動向を注視せざるを得ない。人間は合理的な存在に徹することは出来ない。我等は理性と同じくらい感情に支配され得る。

    アグネス「(『アークエンジェルがテロリスト・戦犯を庇い、頑なな態度を取ったせいで、味方に死者が出た』そう受け取る者も出てくるわ。これに関して、私達は事情を説明することができない…)」

    逆恨みと分かっていても、人は怒りの矛先を何かに向けずにはいられない。ウィラード隊長が譫妄状態であったなら、病人にどうこう言っても仕方が無いから。それならば、『元はと言えば…』という話になる。

    ルナマリア「どうしよう?」
    アグネス「本国の最高評議会・国防委員会しだいとしか言えないわね。それと西ユーラシア連邦首脳部もか。どちらもこれ以上、スカンジナビア王国を刺激したくないはず。でも-」

    プラントもザフト軍も、もう穏便な解決など無理と悟っているだろう。皆、『もうここまで来て引き下がれるものか!せめてテロリストだけでも引き渡してくれ』、この一事に尽きると言ったところではないか。

    でないプラントの面子が建たない。万一、フラガ少佐(ネオ・ロアノーク)とバヤン中尉がスカンディナビア半島北側で地球連合軍に解放され、新たなテロでも起こされた日には、それこそザフトの威信は地に落ちる。

  • 118二次元好きの匿名さん25/02/05(水) 01:26:48

    何より西ユーラシア連邦がプラントに人道犯罪者・戦犯を逃がさないよう強い要請をしているはず。ブリュッセルのカザエフスキー評議員は今頃、激詰めされて、頭を抱えていることだろう。

    アグネス「(もうウィラード隊長の独断が譫妄であったのか、単なる軽挙であったのかはもう問題ではない。満たされていたコップに最後の一滴を入れられてしまった。アークエンジェルは、多分、キラ・ヤマトの捜索も行いつつ、スカンディナビア半島の縦断を続けている。ノルウェー海とバレンツ海の地球連合軍が傷ついた大天使を見逃すだろうか?)」

    スカンジナビア王国の放送は地球連合にも届いている。王国はアークエンジェルについて一言も言及していないが、その意味するところを見逃すほどには奴らも鈍くはないだろう。

    戦犯の身柄、アスハ代表、前大戦の英雄艦にして今なお強力な戦闘艦アークエンジェル、地球連合軍・ファントムペインも何としても拿捕したいはず。北の海の高波は収まっていない。

    アグネス「メイリン、話はまとまりそう?」
    メイリン「まだ、グラディス提督は本国と通信中です。一先ず、ザフトのボスニア湾北部からの撤収が正式に決定しました。既にウィラード隊のボズゴロフ級2隻はビーコンを発信しながら氷の下を南下しています。上空からザク隊とグフ、水中はアビスが護衛と監視中です。アッシュ隊を迎えに北上させているのでボスニア湾中部でそちらに引き継ぎます。ミネルバも北クォルク海峡、旧フィンランド領バーサ市沖合まで下がります」

    そう。なら1時間ぐらいはゆっくりできるわね。カオスを下りてシャトルの客室スペースに行って寛ごうかしら。身体に少しでも休息を与えたい。

    ルナマリア「アスラン先輩の検査結果はどう?」
    メイリン「軽度から中度の低体温症と診断されました。アスランさん本人は気丈に振舞っていましたが、軍医殿が正しかったです。敵の短針攻撃がセイバーのコックピットを貫通した時に、パイロットスーツが破れてしまって…。セイバーが氷を割って海中に墜落した際に冷水が内部に浸水。外傷が無くて本人が『大丈夫だ』と言っていたので危うく見逃すところだったとのこと」
    アグネス「…」

  • 119二次元好きの匿名さん25/02/05(水) 01:49:34

    やはり、私は何処か彼の強さに甘えていた。こと、戦場においてはアスランなら大丈夫だろう、と。考えてみれば疲労が溜まっていたのは彼とて同じ。

    アグネス「…回復を祈るわ。フリーダムが撃墜されて精神的にもショックでしょう。セイバーの破損状況は?」
    メイリンが答えようとしたところカメラが切り替わり、トライン副長が私に敬礼して下さる。慌てて敬礼を返す。

    アグネス「お疲れさまです。ご無事で何よりです」
    アーサー「ああ。君たちこそ。セイバーに関しては-。大量の針でフェイズシフトダウン。敵が噴射した数十本の針はセイバーのシールドと左右の下腕を破壊、コックピットに3本刺さっていた。艦内での修理は無理そうだ。ある程度、大規模な施設でないと。アグネス、こちらの心配も結構だが、君は少し休め。スペースシャトルなら、客室部に行って横になりなさい。今後の動きが分かり次第。機長に伝えておくから」
    アグネス「はい!そのようにします」

    何時のも昼行燈ぶりをかなぐり捨て、真剣な表情の副長が私に忠告してくれる。ありがたく受け入れておくべきだろう。『寝ろ』と言ってもらえるだけ、私は恵まれている。

    アーサー「よろしい。駆けつけようしてくれて、ありがとう。ルナマリアも同じだ。短時間でも横になりなさい」
    アグネス、ルナマリア「はい。ありがとうございます」

    お言葉に甘えよう。ただ、身体が不自由なため、カオスから降りる時はシャトルの乗員の手助けを必要とする。
    シャトル乗員「こちらにどうぞ」
    アグネス「ありがとうございます」

    格納庫で内部で丁寧に降ろしてもらい、客席に案内される。特務隊特権(+国防委員長パワー)で貸切になっている。
    ちょうど、私が入って来た時、ルナマリアは寝間着に着替えていた。いいなぁ。私は脱ぐと着るのが大変だから、パイロットスーツのまま毛布を被るしかないわ。

    アグネス「ありがとうございます。少しだけ休みます」
    乗員「はい。おやすみなさい」

    乗員の挨拶に、『おやすみなさい』と応じる。かつての日々を思う。また、ミネルバの自室で、メイリンと『おやすみなさい』を言い合って眠りたい。現実から目を逸らしたいわけじゃない。でも、本当に疲れている。限界だ。流石にもう抱えきれない。

  • 120二次元好きの匿名さん25/02/05(水) 01:54:00

    盤上を様々な自国を含め国を巻き込んでめちゃくちゃにしているのでいくら権限があるとは言っても任官したての一隊長クラスではもう無理

  • 121二次元好きの匿名さん25/02/05(水) 07:55:11

    「大丈夫だ(大丈夫じゃない)」なの本当にDESTINYアスラン仕草って感じだ⋯
    セイバーは原作よかマシだから直せなくはないけど⋯ってところか

  • 122二次元好きの匿名さん25/02/05(水) 12:27:19

    誰も彼も疲弊しきってるなぁ
    アグネスは寝ると言うより気絶だ…
    もう気絶(ね)ろ、アグネス

  • 123二次元好きの匿名さん25/02/05(水) 16:20:48

    最後に病室じゃないベッドで寝たのいつだったっけな⋯

  • 124二次元好きの匿名さん25/02/05(水) 16:57:23

    >>123

    クレタ島攻略作戦から、ほとんどノンストップでここまで来たからなぁ。太平洋戦争中のラバウルで日本軍パイロットが

    自嘲気味に言った「航空自滅戦」(ガダルカナル島まで往復七時間、戦闘は20分、これを毎日行う)レベルの、ブラック

    作戦状況だと思われ。おーい腹黒ワカメー。こういう事ばかりしてる軍隊は大抵負けるんだぞー?

  • 125二次元好きの匿名さん25/02/05(水) 22:12:45

  • 126二次元好きの匿名さん25/02/05(水) 22:14:43

    >>124

    宇宙の勢力は地球園の勢力に比べたら少ないので結局エース頼みなのはどこも変わらない

  • 127二次元好きの匿名さん25/02/06(木) 04:43:58

    仮の寝床に横たわって毛布に包まる。瞳を閉じれば、底知れぬ眠りの泥の中に引き込まれてしまう。それが分かっているから、瞼を閉じるのがとても怖い。

    自分が意識を失っている内に見知った誰かが命を落としているのではないか?

    起きた時、全てが取り返しのつかない状況に陥っているのではないか…。

    アグネス「(夢であって欲しい…こんなことは。何時になったら覚めるのだろう?)」

    無論、夢でないことぐらい分かっている。このC.E.では数億人が同じことを考えているだろう。その中でも私はマシな方。しっかりしろ!私は愚民を導く側の立場では無かったのか!

    毛布を引き上げ、嗚咽を漏らさないよう頑張る。

    ルナマリア「おやすみ、アグネス」

    しんどい気持ちで耐えていると、何時の間にか、傍にルナマリアが寄って来てくれた。

    アグネス「…」
    毛布を少しだけ下げて小さく頷き、彼女の声に応える。顔を出さないのは拗ねているからではない。泣き顔を見せたくないから、彼女にも自分にも。

    ルナマリア「あんた、すごく頑張っていたわ。アスランも…。でも、それ以上のことが起きたなら、もう仕方ないこと、ね?」
    アグネス「うん…」

    泣き声が漏れそうになって、声が続かない。そんな私の内面を知ってか知らずか、ルナマリアはその後も暫く、側にいてくれた。私の瞼が落ちる瞬間まで…。

    アグネス「(もっと楽しいパジャマパーティーがしたかったわ…。でも、生きていれば何時か…)」

    暗い眠りの沼に引き摺り込まれながらも、少しだけ前向きにいられる。ホーク姉妹に私は随分、多くのものを頼ってきた。私は誰かにとってそうあれただろうか-。

  • 128二次元好きの匿名さん25/02/06(木) 04:50:59

    ルナマリア「ごめん!アグネス、起きて!」

    しなやかな手が控えめに、次第に強く私の右半身を揺する。状況が動いたの?そう…。機長から後で詳しく聞かなきゃね…。
    ルナマリアの必死のゆさゆさ攻撃も今の私には効果は薄い。今の状態、とても国家のお役に立てる状況では無い-

    ルナマリア「ミネルバが攻撃を受けているの!北極圏上空宙域で!!」
    アグネス「何ですって!準備が出来次第、速やかに出発せよ!」

    彼女の言葉で反射的に飛び起き、叫ぶ。傷に障るとか今は無しだ!
    目が開くと共に脳全体のシナプスに電気信号が駆け回り、稲妻が見えるようだわ。生きている、戦える証よ。

    アグネス「乗員さん、機長にお伝えしてください!管制にも」
    乗員「既にシークエンス前です。席に着いてシートベルトを」
    ルナマリア「私とアグネスはモビルスーツに乗り込みます。アグネス、それで良いわね?」

    瞼を開けた瞬間から、慌ただしく飛び退っていく時間、彼女の気遣うような視線さえも余裕がない。

    アグネス「勿論、でも事情を話して。カオスの中で聞くわ」
    ルナマリア「勿論よ!」
    私達の決断を待っていた乗員たちは私を担架に担ぐとルナマリアと一緒にシャトル格納庫に突き進む。

    その先にはカオス-とザフト軍整備兵達、第49空軍基地の人達だわ。グダニスク国際空港まで駆けつけて、直前までメンテナンスと点検をしてくれていたのね。

    整備班長「総員敬礼。ギーベンラート隊長、ホーク女史。武運長久を」
    アグネス、ルナマリア「ありがとうございます!」

    敬礼を返すと今度は整備兵の皆さんの手を借りてカオスに乗り込む。その途中、整備班長が私に説明してくれる。

    整備班長「カオスの故障した左腕について。戦闘の妨げにならないよう固定しておきました。見ての通り、肘を90度で曲げて下腕を前に。コックピットの内部の点検も再度行いました。ルナマリアさんの立会いの下、デバイスは一度剥がし、内部左側に固定スタンドを仮設。戦闘中はそこに嵌め込んで使用してください」
    アグネス「何から何までありがとうございます」

  • 129二次元好きの匿名さん25/02/06(木) 05:01:42

    操縦席に座らせてもらいながらお礼を言う。彼の真剣な眼差しが状況の逼迫具合を教えてくれる。

    アグネス「あなた達にもどうかご武運を!」
    整備班長「ありがとうございます」

    カオスに乗り込むと、成程、左壁面に便利そうな固定装置が後付けされ、デバイスが嵌め込まれている。スイッチを入れて、ガイアのルナマリアと回線を固定する。

    カオスの向こう側ではシャトルの発進シークエンスが開始されている。

    アグネス「状況を端的に教えて」
    ルナマリア「ミネルバは現在、ノルウェー海とバレンツ海の境界、スカンジナビア王国マーゲロイ島ノールカップ岬上空。カーマン・ラインの上でガーティ・ルー級特殊戦闘艦2隻と交戦中。待ち伏せに遭ったわ。

    他、ダークダガーLが少なくとも2個中隊以上。こちらは母艦が見当たらない」

    つまり敵機は少なくとも計54機以上か。ダークダガーLの母艦が無いのは発艦後、戦闘宙域から前もって離脱したと推測。ステルスを活かした作戦なら、通常の母艦は邪魔になる。元よりある程度は擦り減ることを前提とした作戦なのだろう。

    ガーティ・ルー級にしても15機は詰め込める限度限界のはず。乾坤一擲の勝負に出たのか…。

    アグネス「分かったわ。片方はアーモリーワンを襲ったネオ隊のガーティ・ルーね。艦長は押収した資料によるとイアン・リー少佐、替わっていなければね。もう1隻は?」
    ルナマリア「不明。カラーは薄紫色。ミネルバはゴットフリートMk.71の集中砲火を受け、装甲にダメージが発生している。アンチビーム爆雷で相殺しきれなかったわ。タンホイザー故障。その後、通信が乱れて…」

    現実が一度に襲ってくる。伏線も何もあったものではない。待ち伏せされていたのだ。それは分かったわ。でも何で?

    シャトルパイロット「発進します!」
    ルナマリア「了解!」
    アグネス「危険を承知でお願いします。極力、敵艦隊、モビルスーツ群の真後ろで出撃できるよう軌道を取って下さい。皆さんはそのまま最大速度で退避を」
    シャトルパイロット「善処します。ただ、本艦と乗員の安全が確保可能な範囲で!」
    アグネス「了解」、ルナマリア「お願いします」
    シャトルパイロット「ありがとうございます。発進!」

  • 130二次元好きの匿名さん25/02/06(木) 05:08:35

    何処か現実感が無いまま機長の号令を聞く。何時もの習性で指示を出したものの頭の中は『?』でいっぱいだわ。何が起こった?私が戸惑っている間にも、シャトルの滑走と共に身体にかかる重力は加速度的に増していく。

    ルナマリア「詳しくはあんたのデバイスに文章で送ったわ。確認して」
    アグネス「了解!」

    コックピット左に固定したデバイスを操作し、ルナマリアが送ってくれたと言う報告書に目を通す。宙に向け飛翔するシャトルのお腹の中、必死に外の世界を知覚しようと藻掻く。

    私が仮眠を取っている間、案の定、プラント最高評議会は大荒れだったようだ。今回の事態の責任問題は棚上げ、それどころでは無い。

    アークエンジェルはスカンジナビア王国旧フィンランド領ケミ市近郊に上陸、そのまま、ス半島の上空を進み北上を続けている。方向としては旧ノルウェー領フィンマルク県方面!

    その対応を巡っての緊急会議、最初こそアークエンジェルに同情的な空気もあったらしい。今回の衝突に関してはザフトの勇み足な面もあり、正体不明勢力の介入も判明している。西ユーラシア連邦の懸念も分かるがスカンジナビア王国の顔も立てたい。

    だから、アークエンジェル側がネオ・ロアノークとスウェン・カル・バヤンの解放を行わず、囚人の管理に厳格厳正に臨む旨、宣言してくれるなら今日の所は矛を収めてはどうか?

    ルイーズ・ライトナー最高評議会議員達からはそんな意見も表明され、全体のムードも一度は其方に傾きかけた。

    ただ、そこに来てザフト広報局がキャッチしたと言う情報が最高評議会に舞い込み議論を一変させる。

    ナルヴィックに進駐していた大西洋連邦を主力とした地球連合軍が航空部隊の発進準備に着手し、ムルマンスクを拠点とするユーラシア連邦北方艦隊は既にスカンディナビア半島沖合に展開中とのこと。ムルマンスクの場合は航空基地からの参加もあり得ると言うおまけつきだ。

    アークエンジェルは半島を縦断して海に出ればゴールと思っているかもしれない。でも、その実、フィヨルドの先には北方艦隊が正面に待ち構え、ノルウェー海とバレンツ海の東西両翼からは、飛行モビルスーツ群が挟み撃ちを狙う。ここまで移動に時間がかかり過ぎた-

  • 131二次元好きの匿名さん25/02/06(木) 05:17:35

    このままアークエンジェルを見逃したところで、どの道、北大西洋、北極海で地球連合軍に撃沈ないし拿捕される。

    それでも、撃沈ならまだ良い。

    万一拿捕された場合のマイナスは計り知れない。

    その場合、地球連合軍はファントムペイン司令官と士官の解放に成功、オーブ連合首長国の国家元首アスハ代表は囚われの身になり、陽電子砲装備艦アークエンジェルは連合の戦力として逆利用される。何としてもそれだけは避けなければいけない。

    今のスカンジナビア王国は大西洋連邦の引き渡し圧力を跳ね返すほどの力を持っていない!ノルウェーに進駐されている以上、匿うと言う選択肢もない。

    そこで、改めてミネルバの出番となった。『スカンジナビア王国の領土・領海・領空を侵犯しない』、『アスハ代表を始めとしたアークエンジェルのパイロット・乗員とテロリスト二人を収容して味方勢力圏に帰還可能』この条件を満たせる軍事ユニットが私達しかいないと本国は結論したという。何と迷惑な!

    ルナマリア「作戦は…。ミネルバはウィラード隊の護送を終えた後、部隊を再編。アスラン先輩を含む現時点での傷病兵を退艦させる。
    モビルスーツの編成はザズウート隊6機、インパルス、アビス、グフ3機(内、補機1)、AWACSディン4機、ザクウァントム2機、ザクウォーリア2機、アッシュ隊3機の計22機」

    アスランを退艦させるところに意地悪さを感じるが今回ばかりは仕方ないだろう。

    その上で、ミネルバはスカンジナビア王国に事前勧告を発し、予告時間に達した後、作戦を発動する。

    まず、ボスニア湾南部より上昇、大気圏を離脱。その後は王国の領空を侵犯しないようにカーマン・ラインの上の宇宙空間を航行してスカンディナビア半島を跳び越える。

    そして、アークエンジェルが半島縦断を終えてスカンジナビア王国の領海に到った段階で降下を開始。接続水域外で待ち構える地球連合を撃破しながらアークエンジェルに通信を入れて、最終勧告を発する。その後は-。

    もし、アークエンジェルが素直に従ってくれた場合、パイロットと乗員、『乗客』、アスハ代表とストライクルージュ、ムラサメ隊代表1機はミネルバに移乗してもらい、アークエンジェルと移乗できなかった艦載機は自沈・自爆処分。それを確認後、すぐさまミネルバは再上昇して大気圏を離脱し、バルト海ないしプラントに帰還する。

  • 132二次元好きの匿名さん25/02/06(木) 05:26:40

    もし、アークエンジェルがこの期に及んでも抵抗するようなら、プランBを発動する。『当作戦の意図は貴殿・貴女の保護である』と再通知した上でアークエンジェルの推進装置を破壊、出撃したモビルスーツ隊はコックピット部の攻撃を極力避けて撃破する。

    アークエンジェルがこの期に及んでも抵抗するようなら、プランBを発動する。『当作戦の意図は貴殿・貴女の保護である』と再通知した上でアークエンジェルの推進装置を破壊、出撃したモビルスーツ隊はコックピット部の攻撃を極力避けて撃破する。
    しかる後に、艦内に陸戦隊が突入、非殺傷兵器を用いて内部を制圧。全員をミネルバに移乗・収容後、速やかに大気圏を離脱して帰還せよ、と。

    アグネス「(建前上は『エンジェルレスキュー作戦』と。これ良く通ったわね。ミネルバがアークエンジェルを捉えるタイミングはある程度、勘に頼らざるを得ない。おまけに大気圏再突入後の作戦は地球連合軍を撃破しながら実行することになる。こんな机上の空論の発案者は…。ああ、言わなくても良いわ。分かるから!)」

    私が流れを把握している間もシャトルは大気の壁を切り裂き飛び続ける。外壁は灼熱に焼かれて真っ赤になり、眼下には青い星がどんどん丸くなる。

    ルナマリア「それと…。アスラン以外のミネルバ特務隊にプランCが通達されているわ。プランBが不可能なら、アークエンジェル本体への直接攻撃とモビルスーツの通常撃破、制圧時の殺傷兵器の使用を許可する、と。最優先すべきはアスハ代表の保護とテロリストの解放阻止、そして戦闘艦としてのアークエンジェルを地球連合に渡さないことだって…」

    そんな命令も出ていたのか。どうりでアスランを下ろしたがる訳だ。知られたらどうするつもりなのだろう?

    アグネス「(よせ、今考えることじゃないわ)」

    私がそう自分に言い聞かせる中、デバイスの向こうのルナマリアは表情を曇らせる。アスランに申し訳ない、という気持ちだけではない。何やら私に謝りたいことがあるらしい。

    ルナマリア「本当は…。私達は任務不参加の予定だったの。アグネスは重傷、ガイアは飛べないし、海も潜れないから。でも-」」
    アグネス「ファントムペインに宇宙で先回りされ、ミネルバに第一射目をぶつけられてしまった、と。急な展開、大気圏外の月軌道艦隊との連携に一瞬隙が出来たのね」

  • 133二次元好きの匿名さん25/02/06(木) 05:27:33

    もう一隻のガーティ・ルー級…ホアキン隊のナナバルクか!

  • 134二次元好きの匿名さん25/02/06(木) 05:35:20

    まあ、隙も何もクレタから艦隊総出で働き詰めだ。この任務もウィラード隊の独断と帰属不明機の介入で予定外のそのまた予定外で生じたもの。人間の注意力は本来有限なんだ。

    ルナマリア「ごめん。ミネルバが攻撃されたと一報を受けて私が即断したわ。アンチビーム爆雷で防いだみたいだけど、艦の装甲にも被害が-」
    アグネス「それさっきも聞いたわ。元々そのつもりでシャトルに乗ったの。それより、ミネルバの被害が心配だわ。先手を取られた!まだ直後だけど、巻き返せるか…」

    宇宙の部隊は連合の拿捕作戦の側面援護とミネルバ撃沈の一石二鳥狙いと考えるべきね。ファントムペインないしロゴスは先を読んでいた。どの段階からかは知りようがない。ノルウェー進駐の頃?ボーンホルム島を襲撃した時、いや、案外、スカンジナビア王国への事前通告が最後の決め手だったのかもしれない。何にしろ、今考えても無意味だ。

    アグネス「(あの時、アルザッヘルを何としても陥落させておけば…)」

    いや、ダイダロスの時点で相当無理をしていた。どう考えてもコストに見合わない。それでも、ジャガンナート艦隊には哨戒はちゃんとして欲しかった。月は想像以上に大きいから難しいのは分かっているけど。

    アグネス「(この期に及んで人の過失を云々してどうする。責難は成事に非ずだわ!)」

    生き残った後なら、幾らでも文句を言える。先ずはそこからだわ。

    アグネス「巻き返すだけね。ミネルバが沈んだら、多分、私は立ち直れない」
    ルナマリア「ええ。もうそんなのはこりごりよ」

    戦友を失う痛みはルナマリアにとって切実なものだ。私以上に…。

    ただ、戦況は心の準備の時間を与えてくれない。シャトルの外の大気がどんどん薄くなる。

    この層を出た瞬間、戦いが始まる。

    シャトルパイロット「センサーに感あり。敵モビルスーツ群、3個中隊66機程度。敵艦影は見えず。熱源探知センサー起動中、感無し!どうなっている?!」

    『艦影見えず』、『熱源センサーに感無し』映らない-となると。

    アグネス「追加スラスターです!おそらく2隻は第一斉射とモビルスーツ発艦後、ミラージュコロイドを起動。同時に低温ガスを用いて身を潜めています。ここまでで結構です。どうかご無事で!カオス、ガイア発進後、急速離脱してください。アグネス・ギーベンラート、カオス、出ます!」

  • 135二次元好きの匿名さん25/02/06(木) 07:32:40

    嗚呼、またしても鉄火場に⋯
    しかもこれまで頼りにしてきたアスランがいない

  • 136二次元好きの匿名さん25/02/06(木) 07:36:21

    AAがザフトにも連合にも追跡されたままなのがどうしようもないな
    やっぱりエンジェルダウンの時みたくどうにか偽装撃沈して誤魔化して追撃を撒くしかないが、ミネルバと大っぴらに打ち合わせができるわけでもないしどうやって⋯
    しかもフリーダムも落ちてるし

  • 137二次元好きの匿名さん25/02/06(木) 12:33:47

    連合艦の動きは、どこまでが怪人ワカメ男の仕込みで、どこまでが偶然なんだろうな。
    仕込みにしてはミネルバを失うリスクが高すぎる気もする。

  • 138二次元好きの匿名さん25/02/06(木) 15:10:13

    そもそも議長とファウンデーションがちゃんと報連相できてるのかも分からん…

  • 139二次元好きの匿名さん25/02/06(木) 15:23:24

    >>137

    これでワカメが事態の急変とミネルバのピンチに泡食って慌ててたらワロス。

  • 140二次元好きの匿名さん25/02/06(木) 17:31:37

    >>139

    アグネスの働きでジブリも議長もゆかり王国もみんなチャート崩壊してるのを無理やり修正かけて失敗してるから着地点が行方不明に…

    誰にも事態の収拾ができないのである!

  • 141二次元好きの匿名さん25/02/06(木) 23:38:23

    >>138

    多分大雑把な指示はしてるとは思われる。

    フリーダムは排除。アークエンジェルは武装をある程度残して落とせ辺りか?

    ウィラード隊の落とされた人は邪魔だったから落としたんじゃない? アコード組の人間性的にデュランダルとアウラと同族以外、変えのきく歯車や駒的な認識だろうし。

  • 142二次元好きの匿名さん25/02/07(金) 03:21:33

    シャトルパイロット「ご武運を!」

    機長の応答と共に格納庫ハッチが開放される。その間にルナマリアも短い旅の仲間にご挨拶を済ませる。

    ルナマリア「皆さん、お気をつけて。ルナマリア・ホーク、ガイア、行くわよ!」
    シャトルパイロット「お二人もどうかご無事に!」
    アグネス、ルナマリア「はい!」

    カオスとガイア、2機は足場を蹴り、生物全てを瞬時に死滅させる虚空に向け旅立つ。我等プラントの民の母なる大宇宙、残念ながら感慨にふける間はない。

    シャトルから飛び出た瞬間、レーダーには厳しい戦況がありありと浮かび上がる。事前情報の通りだわ。私達の発進地点の先で、ミネルバは105スローターダガー2個中隊(15機編成×2)とダークダガーL3個中隊(12機編成×3)に翼包囲され猛攻を受けている。

    気勢を制されたためか、ミネルバはモビルスーツ隊の発進もままならない。甲板にすら、ガズウート1機の姿も無い。いや、敢えて発進させていないのか?

    ルナマリア「やっぱり、ガーティ・ルー級特殊戦闘艦2隻の艦影は確認できない!熱センサーによる探知も不発よ」
    アグネス「カオスも同じ。低温スラスター、厄介ね。ただ、攻撃の直前にはミラージュコロイドを解除するはず。連携していくわよ」
    ルナマリア「了解」

    カオス、ガイア共にスラスターを噴射しつつ敵の後背を衝こうと試みる。接近中、戦況の細部をよく観察する。

    まず、ファントムペインは105スローターダガー30機でミネルバを半包囲している。30機は対ビームシールドを構え、連携しつつ展開中だ。ラミネート装甲にバイタルエリアを守られた105スローターダガーにその方法を取られると押し返すのは容易ではない。

    この30機が喩えるなら『重装歩兵』の役目をはたしている。ミネルバの陽電子破砕砲『タンホイザー』が破損していなければ、敵編隊ごと粉砕できたのだが、無い物ねだりしても仕方ない。

  • 143二次元好きの匿名さん25/02/07(金) 03:28:55

    105スローターダガー2個中隊の後方には、ドッペルホルン連装無反動砲を装備したダークダガーL1個中隊12機が布陣。絶え間なく主砲を撃ち続けている。

    喩えるなら彼らは『弩隊』ないし『攻城兵器部隊』と言ったところか。重装歩兵の隊列の後方には投射部隊、セオリー通りね。

    対してミネルバは回避運動を繰り返しつつ、アンチビーム爆雷で必死に抵抗している。ただ、この防御方法は諸刃の剣ならぬ諸刃の盾。拡散された特殊粒子はドッペルホルン連装無反動砲を始めとしたビーム兵器から艦を守ってくれるが、反面、味方のビーム砲の威力も減退させてしまう。

    ミネルバ主砲の2連装高エネルギー収束火線砲XM47/D『トリスタン』、事実上の移動砲塔として戦うガズウート隊6機のフルカ 2連装ビーム砲は文字通り無用の長物と化している。

    甲板にガズウート隊を上げない理由が先ず判明したわ。彼らを今出しても戦術的意味はなく、人命を損なうだけ。

    『重装歩兵』、『弩・攻城兵器部隊』と来れば、後必要なのは『軽装歩兵』と『騎兵』と分かる。その役回りを負っているのは残るダークダガーL2個中隊、全機エールストライカーで宇宙機動力を底上げしている。

    アグネス「(その喩えで言うなら-。105スローターダガー隊とドッペルホルン連装無反動砲装備ダークダガーL隊と連携しているエールストライカー装備ダークダガーL1個中隊。あれが『軽装歩兵』ね。ビームカービンとトーデスシュレッケン12.5mm自動近接防御火器の弾幕で此方のミサイルを迎撃している。練度は高い方ね)」

    そして、最後のエールストライカー装備ダークダガーL1個中隊が『軽装騎兵』。この包囲陣の最後尾、頭を外側に向け、背後からの逆襲撃に備えている。ミネルバ撃沈に手間取ればザフトの応援が来るから。

    アグネス「(というかもう来ているけれどね)」

    アグネス「彼らの真の狙いはモビルスーツを用いたミネルバ撃沈ではないと推測。神経戦に盛り込み、ミネルバが消耗して回避行動に決定的な隙が生じた瞬間を逃さず、ガーティ・ルー級特殊戦闘艦2隻の主砲225cm2連装高エネルギー収束火線砲『ゴットフリートMk.71』6基12門×2で24門を一斉射。そのタイミングを探っているのでしょう」

  • 144二次元好きの匿名さん25/02/07(金) 03:43:24

    アンチビーム爆雷もそれだけ受ければ、無効化出来ないはず。万一、大破に留まってもモビルスーツ隊が即座に止めを刺すだろう、と。

    ルナマリア「チキンレースね。味方の、月軌道艦隊の他の艦はまだ?!」

    焦れたようなルナマリアの声。残念ながらコックピットレーダーに味方宇宙艦は表示されていない。
    ただ、これは月軌道艦隊が無能であることを意味しない。味方が無情な訳でもない。

    アグネス「グラディス提督が接近を制止している筈よ。ミラージュコロイドで身を潜めている艦が2隻。駆けつけてくれても、かえって被害を拡大させかねないから」
    ルナマリア「そうね...」

    つまり、この場の者達でこの難局を打破しなければいけない、ということ。

    幸いミネルバはやられっぱなしという訳じゃない。確かにビーム兵器の使用に制約があるけれど、誘導砲塔を巧みに操作して、敵モビルスーツの接近を牽制。さらに副砲であるリニア砲 Mk.162『クルヴェナール』を発射し、敵機をコツコツ削っている。

    敵5個編隊66機は私達の発進時の数字、今は63機となっている。『軽装歩兵』のエールストライカー装備ダークダガーLが立ちどころに爆散していたから。

    それと興味深いのは宇宙用ミサイル『ナイトハルト』の使用法。ガーティ・ルー級2隻の予想進路上に絶え間なく発射し、ばら撒き続けている。なるほど、そうくるか。やはり、グラディス提督の戦術指揮能力は確かだわ。

    アグネス「(そしてミネルバブリッジの皆の力量も抜きん出ている。トライン副長の下、索敵のバートさんと火器管制のチェンさんが連携してくれている。じきに、撃ちだされたミサイルのどれかがコツンと敵艦にぶつかるわ)」

    モビルスーツ隊の出撃を控えているのもただ敵勢を恐れてのものではない。ファントムペインは私達が連戦で疲弊の極であることに付け込むつもりでいる。それならそれで対策の立てようもある。

    戦闘時の精神力はしばしば水の勢いに擬えられるもの。大気圏を突破した時、ミネルバパイロット隊とクルーの心の泉は枯れかけていた。敵が岩となって行く手に立ちはだかるなら、激流となってそれを砕くしかない。そのためには機体ではなく人の心に活力を満たす必要がある。

    ミネルバは追い詰められたネズミではない。手負いの梟だ。爪こそ痛めたものの、勝機をじっと窺っている。

  • 145二次元好きの匿名さん25/02/07(金) 03:52:26

    アグネス「さて…。ポッチッと」
    ルナマリア「?」

    状況把握に努めつつ、ルナマリアのコックピットデバイスに作戦計画を送信する。左側のデバイスの先、ガイアのルナマリアは即時に目を通してくれる。

    アグネス「!」

    コックピットレーダーの先、エールストライカー装備ダークダガーL中隊に動きあり。ミネルバを包囲しているモビルスーツ群の最後尾、私が『軽装騎兵』に喩えた中隊が此方に反応、流石にここまで接近すれば気づかれるか。

    敵装備を再確認する。全機左腕には対ビームシールドを構え、右腕にはMk39低反動砲を装備。かなり強力な装備ね。

    アグネス「ルナマリア!グラディス提督は、皆の精神を『ダム』に溜めて、堤を切るタイミングを見計らっていらっしゃるわ。最初に鍬を入れる役は私達みたいね!」
    ルナマリア「ええ!それと、作戦は分かったわ。善処しますとも」
    アグネス「ありがとう」

    自分を励ましながら言った強がりにルナマリアはガイアのスラスターを吹かして応えてくれた。ありがたいわ。2機編隊、助け合わないと味方を解囲できないから。

    カオスの動かない左腕にマウントされた巡航機動防盾を右手で取り外し、前に構えると彼女の前に立って進む。スラスターの推力を徐々に上げていく。

    対して、急接近する敵中隊は3機小隊4つに分かれて私達を袋叩きにしようとする。反応が早いのも時に考え物だ。きびきび動きすぎて、最大の長所たる漆黒のステルスが無意味になっている。

    今動かずに何時動くと言うものではあるのだけどね!お互いに!!

    高速で接近する敵飛行中隊と私達2機編隊、接敵は刹那の間。

    アグネス「カリドゥス改複相ビーム砲を発射!敵編隊の足並みを乱す!」
    ルナマリア「了解」

    焦った方が先に墜ちる。もし、現実が散文的なものなら、淡々と冷静に進められた方が勝つ。

  • 146二次元好きの匿名さん25/02/07(金) 04:08:28

    ルナマリアの返信と同時に暗黒の宙をカオスの猛火で薙ぎ払う。
    赤い大ビーム砲を避けきれずまともに受けたダークダガーL2機が最初の梟の生餌となる。

    対ビームシールドで大ビームを受け流すのにはコツがいる。角度や機体の制御、いざとなったら手放す判断。彼らは訓練と経験が不足していたわね。本音では3機を屠りたかったのだけど、止む無し。

    残る敵は10機。彼らは編隊をやや崩しながらも前進し続ける。右肩に担ぎ上げたMk39低反動砲の砲門が先頭のカオスをロックオン、仇を撃たんと引き金に指を掛ける。

    アグネス「回避運動、宙返りのち逆宙返り」
    ルナマリア「了解」

    身体に負荷がかかるのも構わず大立ち回りを始める。手を抜けば死ぬ。後ろのガイアも機動防盾を掲げて、カオスと軸を同じく飛行を続ける。

    頭と足が逆転するたび、頭上と眼下を反動砲から発射された巨大な砲弾が飛来する。後方に虚しく飛び抜ける砲弾を見送るたびに胸を撫で下ろす。便利な武器だけど、取り回しが良いとは言えないみたいね。

    敵中隊も馬鹿じゃない。そのことにすぐに気が付き、長すぎる武器を捨て去る。そして、取り回しと連射に優れたビームカービンに主武装を切り替え始める。

    でも、遅い!その判断は一拍前に終えていなければいけなかったわ!
    既にカオスとガイアはその間に逆宙返りを4分の3まで終えている。武器を持ち換えた頃には互いがすれ違う寸前-。いよいよ勝負に出る時。

    アグネス「起動兵装ポッドをビーム突撃砲、第1射直後に分離する。カリドゥス改複相ビーム砲第2射、準備良し」

    ルナマリアに号令を掛けつつ、両側の起動兵装ポッドからビーム突撃砲を伸ばして発射!

    逆宙返りを受け、足元から狙い撃ちにされた形のダークダガーL2機が閃光となって消える。左手が故障しているカオスの右手は巡航機動防盾で塞がっている。この態勢では高エネルギービームライフルを撃てない。だから先ずは2機だ。

    直後にスラスターを兼ねたドラグーン型兵器を分離する。後方からはガイアの高エネルギービームライフルからビームの線が3本前に迸り、対ビームシールドの扱いが敵中隊で最も未熟な2機を焼き抜いている。

  • 147二次元好きの匿名さん25/02/07(金) 04:25:14

    私の呼び声にルナマリアが力強く応えてくれる。

    ルナマリア「了解。前に出るわ!」

    『前に出るわ』の掛け声と共にカオスの前に躍り出たガイア、その掲げた機動防盾に4本のビームと3本のスティレット投擲噴進対装甲貫入弾が炸裂!投擲された短刀がシールド上で弾け、ガイアに衝撃が襲う。

    ルナマリア「くッ!」

    ルナマリアは反動を相殺すべく更にスラスターを吹かす。そして、3本の短刀(ダガー)から発した爆炎が収まった頃には、その持ち主の命も燃え尽きてしまっている。

    なぜか?それはカオス本体から分離した起動兵装ポッドが、その間に彼ら編隊の後ろに回り込み、ビーム突撃砲2発と、ファイヤーフライ誘導ミサイル4本で残る6機を閃光に変えているのからだ。

    アグネス「(この兵器をドラグーンとして使用するのは初めて。これまで戦場は大気圏内だった。シミュレーターで訓練はしていたのだけど)」

    暗いステルス兵器が最後に放つ眩い閃光、反撃の狼煙としては十分かな。

    カオスの起動兵装ポッドは、ある程度は普遍的なパイロットでも使用可能となっている。とは言え、機体と誘導端末の同時制御は相応の素質が必要。戦場は発表会の場所ではない。訓練で出来たからといって必要なければ敢えて用いるまでもない。

    陳腐な技術が何だかんだと言って一番確実だ。この兵器は高性能なスラスター兼兵装ポッドとして場所に寄らず分離せずに使用するのが正解。それが本来の私のスタンスだった。

    ただ、それも戦況次第、使って有利に戦えるなら使えば良い。今のカオスは左腕が故障、私も怪我をしている。極力、『楽に』勝ちたい。一方、ルナマリアの体調は万全、ガイアも無傷でしっかり整備してもらっている。しかし-。

    ルナマリア「ガイアは地上戦特化。高エネルギービームライフルと射角に難があるビーム突撃砲では宇宙の戦いで火力に欠ける。だから、火力が足りないガイアは、カオスの分離攻撃中、その本体の防御を助ける、ね」

  • 148二次元好きの匿名さん25/02/07(金) 04:33:41

    ルナマリア「便利に使われちゃったなぁ。でも、あんたは訓練したとは言えぶっつけ本番、体調も悪い。だから私が本体を守ることで、より安心して集中して操作できる-、『賭け』なんてなしに真っ当に勝てる、と。考えたわね」

    ちょっと冗談めかしたような声をデバイス越しに聞く。彼女はふざけているわけでは無い。鉄火場でこそユーモアが必要なんだ。

    アグネス「そう言うことよ。念のためチャージしたカリドゥスは使わずにすんだわ。次に進むわよ!」
    ルナマリア「了解!」

    私とルナマリアの体感時間と外で流れる本当の時間は異なる。シャトルから中隊殲滅まで2分かかっていない。1分も有れば戦場の風を逆転させるのに十分だ。

    ミネルバにドッペルホルン連装無反動砲を撃ち込み続けていた『弩隊・攻城兵器部隊』は突然の味方の消滅を知り浮足立っている。そして、彼らとスローターダガーの間隙を埋めていたエールストライカー装備ダークダガーL中隊の片割れは、気が付けば6機まで撃ち減らされている。

    副長、チェンさん、ナイスだわ。

    このタイミングで満を持したように凛とした声が左のデバイスから響く。

    タリア「全モビルスーツ隊、発進シークエンスを開始せよ。残存する敵機48機、カオス・ガイアと共に挟撃します」
    アーサー「はい!」

    デバイスに映り込む、ブリッジ組の生き生きした顔。堤を切る時が来たことを如実に示している。なかなか連絡が無かったのは、やはり傍受を恐れてのものだったのね。

    アグネス、ルナマリア「了解!」

    起動兵装ポッドの合体は済ませている。スラスターを全開、再びガイアの前に出て今度はドッペルホルン連装無反動砲装備ダークダガーL中隊の背後に突き進む。

  • 149二次元好きの匿名さん25/02/07(金) 13:37:23

    保守

  • 150二次元好きの匿名さん25/02/07(金) 21:42:08

  • 151二次元好きの匿名さん25/02/08(土) 02:00:35

    保守

  • 152二次元好きの匿名さん25/02/08(土) 02:26:47

    ペイバックタイムだ!

  • 153二次元好きの匿名さん25/02/08(土) 03:12:15

    その間もミネルバの回避運動は止まらない。大艦はその身に見合わぬ軽やかさでバレルロールと急旋回、あるいはバレルロールをしつつの急旋回を繰り返している。

    マリクさんの上達は目を見張るばかりだわ。何とアクロバティックな操艦なのだろう!負けてはいられないわ!

    アグネス「カオス、ミネルバブリッジと通信回線を固定!吶喊を継続します」
    ルナマリア「ガイアも同じく!」

    デバイスの先に呼び掛けるとグラディス提督は黙って頷く。こわばった表情、ミネルバは未だ危地の真っ只中にいる。

    それに対する敵編隊。ドッペルホルン連装無反動砲装備ダークダガーL中隊はミネルバへの砲撃を一時、中断する。カオスとアビスに自分達が撃たれてはどうしようもない。

    彼らは背中を105スローターダガーに守って貰った上で、回れ右、左腕には対ビームシールド、右手にはビームカービンを装備している。

    ドッペルホルン連装無反動砲は背負う形で装着するストライカーパック、使用にマニピュレーターを用いない。だから、両手で武器を同時に使用可能、とは言え、機動力は劣る。

    それを補うべく、エールストライカー装備ダークダガーLの生き残り6機は進路を急変更し、最後列に回ろうとする。吶喊を止めないカオスとガイアの最初の壁になるに-。

    無論、その隙を見逃すほどミネルバは鈍間ではない。

    急機動で隙が出来たエールストライカー装備ダークダガーL2個小隊を副砲クルヴェナールが撃ち抜く。105スローターダガーが庇う暇も無い。たまらず1機が爆散、レーダー上の光点と共に命が吹き消される。直後に艦はモビルスーツ隊発進のため、航行法をやや安定させる。

    それと同時にブレイズザクウァントム2機がエレベーターを使って甲板に姿を現す。牽制のためだわ!両機両肩からファイヤビー誘導ミサイル28×2の計56発が全弾発射される。

    突然の攻勢、105スローターダガーは40mm口径近接自動防御機関砲イーゲルシュテルンIIのフル回転を強いられる。後背に注意を向ける暇をミネルバは与えない。

  • 154二次元好きの匿名さん25/02/08(土) 03:28:51

    ミサイルを撃ち尽くしたブレイズザクウァントムは長居をせずに甲板エレベーターを降り、入れ代わりにブレイズザクウォーリア2機は上昇、敵編隊に更なるミサイル弾幕を投射する。

    ミネルバの本体のミサイル発射管は、その間も宇宙用ミサイル『ナイトハルト』を撒き続ける。もう敵艦もかなり追い詰められているのではないだろうか?
    そして、このタイミングで再度明確にグラディス提督から命令が発せられる。

    タリア「アンチビーム爆雷の散布は継続せよ。ブラストインパルス、アビス、グフ2機は発進開始!ザクも順次」
    メイリン「はい!カタパルト推力正常、進路クリアー-」

    慌ただしいブリッジの映像がデバイス画面に流れる。

    一方の私達は、後方に回った5機のエールストライカー装備ダークダガーLに吶喊を図るが…。その途中で突如、カオスのコックピットに大音量の警報音が響く!
    反転したドッペルホルン連装無反動砲装備ダークダガーL中隊、計12基24門の対艦砲に照準を定められた!

    アグネス「回避する!左右不規則に急旋回しつつバレルロール。前進は継続!」
    ルナマリア「了解!!」

    カオスとガイアが回避運動を続けつつ急迫する中、敵『弩隊・攻城兵器部隊』も主砲を一斉射する。途轍もなく複雑な戦闘機動をこなすのに必死で、大型艦を轟沈させ得る大ビームを寸で避ける恐怖は特に感じない。

    アグネス「(何にしろ…。対艦砲でモビルスーツを撃つのは至難の業。落ち着け。私より彼らの方が苦しい)」

    こうして、辛くも大ビーム砲の弾幕を抜け、その先でビームカービンを構える敵5機が指呼の間に。我ながらよく頑張ったわ。

    アグネス「カリドゥス改複相ビーム砲発射、接敵寸前に起動兵装ポッドを分離する」
    ルナマリア「了解!」

    噴き出すカオスの猛火!それを前にダークダガーL5機は、散り散りに退避して、こちらの大ビーム砲を何とか避けきる。無論、避けた先が安息の地とは限らない。

    ルナマリア「そこ!」

    カオスの背後にピッタリ張り付いて来たガイアの高エネルギービームライフル、その見越し射撃のビームが虚空を駆け抜けて敵3機を一瞬で閃光に変えてしまう。

  • 155二次元好きの匿名さん25/02/08(土) 03:47:33

    ルナマリアはビームを連射しながら、ガイアをカオスの前に進める。そのタイミングを見極め、起動兵装ポッドを分離する。

    今度は敵の背後まで飛ばすまでもない。離したら即角度調整、ビーム突撃砲を伸ばし見越し射撃を実行!新たな閃光2つを3つの輝きに加える。

    敵撃破確認後は、速やかにスラスターをカオス本体にドッキング、再びガイアの前に立ち突進を続ける。

    直後に巨大な爆発が6つ目の前で生じる!エールストライクカー装備ダークダガーL殲滅とほぼ同時にドッペルホルン連装無反動砲装備ダークダガーL 6機が爆散したのだ。

    アグネス「(ファルコーネSSM 地対地対艦ミサイル!)」

    ガズウート隊の皆か!ありがたい。

    アグネス「戦況確認!ミネルバはこれまでガーティ・ルー級2隻相手に使用していたミサイル発射管全門からナイトハルトをスローターダガー隊目がけて一斉射!直後にガズウート隊はエレベーターで甲板に上昇、ファルコーネSSM 地対地対艦ミサイルを全弾発射!敵機6機に命中!」
    ルナマリア「やったわね!」

    ミネルバのミサイル弾幕に虚を突かれた105スローターダガー2個中隊30機の編隊は乱れ、ガズウートのミサイルはその隙を縫って飛来したのだ。巨砲を担いだダークダガーLでは対応しきれなかった。

    メイリンは彼らの揺らぎを見逃すことなく、落ち着いて発進シークエンスを続行する。

    彼女の声に導かれてカタパルトから飛び出したシンはブラストインパルスを操り敵に弾幕を張る。4連装ミサイルランチャー、デリュージー超高初速レール砲の順で撃っている。

    その攻撃が過ぎ去った後には、頭部を破壊されたスローターダガー4機と下半身を失った同種機4機が虚空を漂う。

    アグネス「(ミサイルの撃墜のため、対ビームシールドからイーゲルシュテルンIIを覗かせたところをデリュージー超高初速レール砲でズドン!下半身を飛ばされた機体は12.5mm対人機関銃で迎撃しようとした連中ね)」

    何れにしろ、一瞬で主力機が8機中破したのだ。ほぼこれで勝負は決まったと言って良い。

  • 156二次元好きの匿名さん25/02/08(土) 04:05:39

    さらに、同じタイミングでM68 キャットゥス500mm無反動砲を装備したデイルのグフが出撃、反対側のカタパルトから飛び出るや無反動砲の引き金を引く。

    目標はスローターダガー隊の内、シンの攻撃で小隊内の2機墜とされた機体。急展開にパニックになっている!
    デイルの攻撃は過たず命中する。両脇の味方が無力化された直後、躱せる筈もなかったのだ。

    アグネス「(撃破!いや…。ラミネート装甲がパイロットの命だけは守ったかもね。右腕と頭部が吹き飛んでいる以上、戦闘続行は厳しいだろうけど!)」

    さて、戦友達も頑張っている。私達も頑張るしかない。

    目の前まで接近したドッペルホルン連装無反動砲装備ダークダガーL中隊は既に2個小隊となっている。本当に近寄ってみると鈍間な機体だわ!
    カオスに近い手前の小隊3機目がけ、カリドゥス改複相ビーム砲の猛火を吹きかけ、全機を燃やし尽くす。

    たまらず逃げ散ろうとした残る3機は、ルナマリアが高エネルギービームライフルで順に撃破していく。いかに対ビームシールドを掲げようと、あの機動力では何ともしようがない。

    これでダークダガーL隊は全滅した。厄介な敵手だったけど、ステルスが持ち味な機体が普通の戦闘になった時点で負けたも同然ね。

    ミネルバの方では、デイルに続いて飛び出したショーンのグフが活躍している。彼は、シンとデイルにより戦闘力を奪られたスローターダガー各機の破損部を片っ端からスレイヤーウィップの鞭で打ち付けている。高周波で内部機械をショートさせ、戦闘能力を完全に封じるためだ。

    アグネス「各機にはテロリストが乗っている。可能なら法の裁きを。面白い機体だから鹵獲後、ザフト軍に組み込むのもありかもね」
    ルナマリア「気が早いわよ!でも、確かに裁判にかけるべきね。出来れば!」

    ショーンと同時にブレイズザクウォーリアも発艦している。こちらは発進直後にファイヤビーミサイルを一斉発射し、敵編隊はさらに後退させ、混乱させていく。

    もう彼らは組織的な抵抗力を喪失していると言っても過言ではない。更に良く見るとザクウォーリアは両手にエクスカリバー・レーザー対艦刀を持っている。自分で使うためと言うより、シンに渡すためね。準備が良くてよろしい。何ポイントが良いかな。10000000000アグネスポイントね!

  • 157二次元好きの匿名さん25/02/08(土) 04:33:41

    私の脳裏にそんな考えが過ぎった瞬間、8時の方向に大閃光が瞬く。宇宙用ミサイル『ナイトハルト』、ミネルバが撒いた罠を遂に敵艦が踏みつけたのだ!

    待ちに待った瞬間、眩い閃光の向こう側に薄紫色の艦影がチラリと見える。残念なことに、私が船体全体を確認することは永久に叶わない。ミサイル1発目が爆発した次の瞬間、周囲のミサイルも鼠花火のように駆け回り連続して誘爆し、条約違反船舶を乗員ごと宇宙の藻屑に変えてしまう。

    戦況が急速にミネルバ有利となる中、耐え切れずに急いで逃げようとして-、と言ったところか。爆散した船体、暗く冷たい宙を人道・戦争犯罪者ども永遠に漂い続ける。

    これまでの犯罪を償うことなく…。最悪だわ!戦死の名誉は兵士の特権、犯罪者のものではない!

    アグネス「ルナマリア、仕掛けるわ!テロリストどもを全て捕らえる」
    ルナマリア「望むところよ!」

    カオスとガイアで阿鼻叫喚の105スローターダガー隊を背後から強襲する。最初の目標は一番手前の1個小隊、奴等にカリドゥス改複相ビーム砲を勢いよく発射する。

    何時ものように舐めるように薙ぎ払ってはいけない。撫でるように薙ぎ払う。生け捕りにしたいのだ。燃やし尽くしたいわけでは無い。

    こちらの襲撃に縮こまり、対ビームシールドの裏側に身を隠した『虐殺者』3機の両足は、12.5mm対人機関銃ごと真っ赤に溶け落ちる。まあ、機関砲の対人使用は私も随分行っているのだが…。

    アグネス「(民間人に直接撃ったりはしていない!こいつ等はレッドラインを踏み越えた。危ういからこそ注意しなければいけない一線を臆面もなく!)」

    即、起動兵装ポッドを分離、ガイアが本体の援護に前に飛び出る間に、ビーム突撃砲2発とファイヤーフライミサイル7発で虐殺者どもの頭部と両腕部を捥ぎ取る。

    デバイスの向こう側ではシンがメイリンに指示を飛ばしている。

    シン「メイリン、フォースシルエットを!」
    メイリン「了解…」
    アグネス「シン!可能なら生け捕りにして!情報を聞き出したい。何より、極悪人どもは絞首刑が相応しい。ここで死なせるべきでは無いわ」
    シン「ああ!そうだな…。分かった!」

    つい通信に割り込んでしまう。案の定、私の無遠慮な振舞いにグラディス提督は一瞬、顔を顰める。ただ、この配慮自体は間違っていないはず。

  • 158二次元好きの匿名さん25/02/08(土) 04:46:16

    彼女もそれを直ぐ理解し、モニター越しにシンに向け肯きを返して下さる。

    タリア「ただし、努力目標と心得よ」
    シン「はい!」

    ハイネ先輩のアビスも既に出撃中、アンチビーム爆雷の効果範囲外まで進出を遂げている。

    彼もこのやり取りを聞いていたらしく、敢えて胸部のカリドゥス複相ビーム砲は発射しない。
    代わりに両肩部シールド裏面の3連装ビーム砲を用いて6機のスローターダガーのバックパックを爆散させるに留めている。ただ、あの爆発の仕方、ラミネート装甲で守られていたとしてもパイロットの生死は黒よりのグレーだろう。シュレディンガーの猫みたいね。嫌な喩えだけれども。

    気が付けば、戦闘は掃討戦の体を成している。ショーンとデイルのグフは大破・中破した機体の鹵獲、確保に専念している。スレイヤーウィップは本当に使い勝手が良い。

    フォースインパルスは大剣を振るって、対ビームシールドごと敵を両断、ただしコックピットは外す。そうして、瞬く間に3機を大破に持ち込む。

    ルナマリア「私だって!」

    皆の奮戦に感化されたルナマリアは高エネルギービームライフルでスローターダガー2機の頭を撃ち抜き、すれ違いざまにビームサーベルで手足をバラバラにする。

    その意気や良し!流石は我が友だわ。
    ガイアのビームサーベルが、その輝きが収まる前に最後の敵機は私が撃ち落とす。ルナマリアと連携して回り込ませた起動兵装ポッドのビーム突撃砲とファイヤーフライミサイルを用いて頭部と四肢を爆散させたのだ。

    アグネス「(これが最後。さて、ここから…。どうする?)」

    この宙域で戦闘を行っていたガーティ・ルー級特殊戦闘艦はあと1隻。ただ、こちらは冷静沈着、大胆不敵に身を潜めたまま。らちが明かない…。

    すると-。デバイスの向こうのグラディス提督はトライン副長と少し会話を交わし、決断する。

  • 159二次元好きの匿名さん25/02/08(土) 04:59:46

    タリア「信号弾上げ!『国際救難チャンネルの放送を開始します。当戦闘宙域に潜伏するガーティ・ルー級特殊戦闘艦に告ぐ。即時に武装解除し投降せよ!
    あなた達が展開したモビルスーツ部隊は既に全機撃破ないし鹵獲されました。戦闘の継続は無意味です。そして、あなた達は完全に包囲されています。既に月軌道艦隊及び対ロゴス戦参加予定ザフト艦が周辺宙域に展開中しています。いかにミラージュコロイド搭載艦であろうと、逃れる道は有りません。これ以上の抵抗は無意味です。即時に武装解除し投降せよ』」

    提督の勧告が終わるとミネルバから信号弾が撃ちあがる。停戦を呼び掛ける狼煙は端から見ると花火のようだ。それを皮切りに周辺宙域からも数十、数百の信号弾が流れ星のように宙を駆け抜け、3次元あらゆる方向で大きな光を瞬かせる。

    アグネス「綺麗ね…」
    ルナマリア「警戒を怠っちゃダメよ」
    アグネス「怠らないわよ!」

    無論、これを綺麗と思えるのは勝者の余裕というものだろう。敗者にとっては単なる威圧行動、『隠れれば隠れるだけお前達の立場は悪くなるのだぞ』と視覚的に示しているのだ。

    真っ当な神経の持ち主ならここで降るものだけど。ファントムペインのやることは理解不能だから…。敵が投降しない場合、虱潰しの捜索を行うことになる。こっちは忙しいし怪我しているのだ。勘弁してほしいわ。

    アグネス「うん!コックピットモニターに感あり!」
    ルナマリア「私も!」

    漆黒の宙に見覚えのある青と白の艦影が浮かび上がる。この戦争の最初の引き金を引いた禍々しい姿。ガーティ・ルーだ!

    コックピット左側に固定してあるデバイスに国際救難チャンネルの放送が流れ出す。

    イアン・リー「国際救難チャンネルの放送を開始する。本艦は地球連合軍第81独立機動群所属ガーティ・ルー、私は艦長のイアン・リー地球連合軍少佐だ。グラディス提督の勧告を受け入れる。武装解除に応じ、降伏します。部下の生命は保証して欲しい」

    画面の向こう地球連合士官は賢明な方の道を選んだらしい。彼は30代前半から半ば位の鋭い顔つき。だが、私が想像していた狂信徒とは程遠い。軍人としてしっかりしたキャリアを歩むことも出来ただろうに…。

  • 160二次元好きの匿名さん25/02/08(土) 05:06:00

    タリア「先ず武装解除の意思を示しなさい」
    イアン・リー「了解。降伏の証として、まず低温スラスターを放棄する。どうかこの意を組んで欲しい」

    そう宣言して、ガーティ・ルーは両舷の追加スラスターを分離させる。これで彼らは自らの退路を断ったことになる。一応の武装放棄と見て良いのだろうか?

    タリア「貴艦のブリッジ全景の映像を確認したい。火器管制官はブリッジより退去せよ。貴艦は追って、許可あるまで現座標で停船し続け、ザフト軍の乗船を受け入れること。ミラージュコロイドの制御ボタンは今、見ている前で破壊しなさい。投降を受け入れる条件は以上です」

    降伏条件を伝えつつ、ミネルバは全砲門とミサイル発射管の照準を姿をあらわにしたガーティ・ルーに合わせる。甲板にはガズウート隊も待機する。

    イアン・リー「了解した…。頼む」
    ガーティ・ルー艦橋要員「はい」

    視点が調整され、敵艦橋内部全体がデバイスに表示される。火器管制官は提督の指示通り両手を上げて、艦橋から退出する。引かれた視点が今度はアップされ、今度はとある操作装置が映される。あれでミラージュコロイドを操作していたのか―。

    イアン・リー「えい!」

    敵艦長は有事の時のためのハンマーを自ら振り上げ、操作装置を叩き壊して見せる。重い破壊音がガツン、ガツン、ガツンと10回程度、ガーティ・ルーに木霊す。

    その様を見ると何ともやり切れない気分になる。同情に値するような人間ではないと分かって入る。でも、私も宇宙戦闘艦に乗り込む身。自らの手で、敵の眼前で、自艦の核心装置を破壊するのはどんなに心苦しいことだろう!

    その気持ちはミネルバを預かるグラディス提督も同様だったのだろう。本来、敗将・敗兵は辱めるものではない。彼らはテロリストだと分かっていても軍人として、どうしても惻隠の情が湧いてしまう。

    タリア「そこまででよろしい。地球連合軍第81独立機動群所属ガーティ・ルーの投降を受け入れます。貴官の勇戦に敬意を表する、と言えないことを残念に思います。あらゆる意味において」

    グラディス提督の口調に同情と労りが籠っていることを私は責める気にはなれない。変な感傷であることは、自分自身理解しているけれども。

  • 161二次元好きの匿名さん25/02/08(土) 05:11:50

    イアン・リー「…。感謝します」


    敵艦長はその返事と共にグラディス提督に敬礼する。グラディス提督は反射的に敬礼を返しそうになるも寸で思いとどまり、目礼を返すのみとする。ミネルバ主砲トリスタンは、今もなお油断なく、ガーティ・ルーに照準を定めている。


    とは言え、勝負は着いた。出撃中の全機にブリッジから通信が入る。


    タリア「皆、良くやってくれた。もう少しよ。気を抜くな。モビルスーツ隊は交代で着艦、哨戒を担当せよ。本国から別命あるまで、本国から指示あるまで当宙域で待機。アグネス、先ずカオスから着艦せよ。負傷兵が先、分かるわね」

    アグネス「はい。ありがとうございます」


    グラディス提督のご厚意に今回は甘えさせて貰う。多分、私の身体は相当、苦しがっているはず。痛み止めのお陰で感じていないだけで。


    アグネス「ルナマリア、お先に。ありがとうね」

    ルナマリア「こちらこそ。少しでも休んで」

    アグネス「うん…」


    皆にご無礼して、先にミネルバに着艦する。アーモリーワンからの因縁の相手の降伏。それは本来何かの区切りになる筈だったもの。でも、今となっては…、それで丸く収まる地点を世界はとうに越えてしまっている。私にとっても…。


    (カウントMS988〈+共同撃破多数〉 デストロイ2(共同)  セカンドシリーズ1(共同) 大型MA22(共同2) 

    戦闘機46 対MS戦闘ヘリコプター245 大型輸送機33〈+共同撃破多数〉 VTOL輸送機33〈+共同撃破多数〉

    リニアガン・タンク141〈+共同撃破多数〉 自走リニア榴弾砲210〈+共同撃破多数〉 ブルドック220〈+共同撃破多数〉 工兵車60<+共同撃破多数> レーダー車7 汎用車両・兵站車両・軍用トラック等297〈+共同撃破多数〉

    地対空75mmバルカン砲塔システム7  大型砲20 ヘルダートタイプ・ミサイルランチャー5基 50mmガトリング砲9

    空母11 イージス艦16 フレーザ級5 大型輸送艦1 コルベット艦2 哨戒艇1 軍用艇3 アガメムノン級14 ネルソン級14 ドレイク級17 リフレクターシールド装備型ドレイク級10)

  • 162二次元好きの匿名さん25/02/08(土) 08:48:28

    MS撃破数がもうすぐで四桁か…戦いすぎてる

  • 163二次元好きの匿名さん25/02/08(土) 08:58:15

    >>162

    【地球連合】じゃなく1国だったら継戦不能になるレベル…

  • 164二次元好きの匿名さん25/02/08(土) 13:17:59

    改めて設定確認したらイアン艦長、あくまで地球連合軍の軍人であってファントムペインの一員ではないんだな
    とはいえ、作戦に参加している以上責任は免れない訳なんだけれども

  • 165二次元好きの匿名さん25/02/08(土) 21:09:35

    >>164

    あの人ファントムペインじゃなかったの!?

  • 166二次元好きの匿名さん25/02/08(土) 21:47:58

    人事に巻き込まれた純粋な連合の軍人の責任を上から下まで追及しすぎた結果後々来るであろう議長のやらかしの後処理で揺り戻しでとんでもないしっぺ返しが来そう

  • 167二次元好きの匿名さん25/02/09(日) 01:43:14

    ガイドビーコンに導かれ、ミネルバのカタパルトに着艦を果たす。脱力感で意識を持って行かれそうになる。ガーティ・ルーの降伏で切れかけていた糸、良くここまで持ったと自分でも感心する。

    モビルスーツ格納庫では既に医療班が待機してくれていて、カオスが定位置につくやストレッチャーごと大型昇降機で上がって来てくださるわ。コックピットを開放しないと…。

    重いハッチが開くとその場の全ミネルバクルーが私に向けて敬礼してくる。マッド・エイブスやヴィーノ、ヨウランも。私も随分偉くなったものだ。実際偉いのだけどね。

    操縦桿から手を離し、彼らに敬礼を返す。私も我ながらよく頑張った。でも、皆の頑張りもすごかった。ただ、気になるのはミネルバの損傷の程度。タンホイザーが故障しているのは外観からも明らかだ。おまけに艦外殻の装甲がゴリゴリ削られている。亀裂が入っている箇所もあるかも知れない。

    小破とは言え、今のミネルバでは大気圏突入と再離脱は覚束無い。そもそもガーティ・ルー級特殊戦闘艦2隻撃沈、105スローターダガーを含む旅団規模のモビルスーツ群殲滅、これだけで勲章ものの大手柄のはず。もう、ギブアップしたいが-それは私が決められることではない。

    アグネス「よっと…。え?」

    操縦席から立ち上がろうと足に力を入れるが、ダメだわ、立てない。思うに左太腿だけの問題ではないだろう。疲弊の極、張っていたものが切れた…。

    そんな私のすぐ目の前に逞しい女性看護兵が手を差し伸べてくれる。というか体を引き出しにかかる。

    看護兵「大丈夫です。無理せず。私達が医務室まで、安心してください。はい、一、二、三、持ち上げます!」

    力持ちな彼女とその後ろ、もう一人の看護兵の力で、私はコックピットから救出される。救出という表現はどうかと思うが、外見的にも私の内心としてもそう言うほかない。

    そのまま、即座にストレッチャーに乗せられて、点滴開始。自分の腕を見ると、針の穴だらけでげんなりする。麻薬中毒患者のような手ね。昔と違って、医療機器の管理はしっかりしているから、感染症にならないだけマシかな。

  • 168二次元好きの匿名さん25/02/09(日) 01:49:02

    キュルキュルキュ、と移動するストレッチャーで医務室にGO!

    看護兵「急患です!通してください!」
    アグネス「ドラマみたい…。『緊急救命医療室24時』みたいな?」
    看護兵「元気そうで何より。その調子です!」

    私のアホな感想にもちゃんと応えてくれる辺り、何だか嬉しいわ。彼女達も私を元気づけようと必死だ。私も無理せず元気に振舞おう。人間最後は気力だわ!

    エレベーター、廊下と踏破してガラガラ開けられた扉の先、お馴染みの医務室の天井が私を向かえてくれる。

    看護兵「ベッドに移します。一、二、三、はい!」
    アグネス「ふかふか…に感じます」
    看護兵「ふかふかと言って下さい!」

    そんなやり取りをしながら、私を運び込んでくださった女性看護兵2人と笑いあう。彼女達が少なくともこの瞬間は生きていてくれる。それだけで、無理して宙に飛び出した甲斐は有ったというもの。

    私達の会話が終わると軍医が静かに告げてくる。

    軍医「グラディス提督が、15分でも30分でもともかく休むようにと」
    アグネス「なるほど、作戦は終わっていないのですね。分かりました。ありがとうございます。休みます」
    軍医「はい…」

    カーテンが引かれる音を聞きながら静かに瞳を閉じる。正直、ミネルバはもうここまでで十分頑張ったと思う。国防委員会は今からでも『エンジェルレスキュー作戦』を中止してくれないものか?
    アグネス「(私は負傷という分かりやすい目印があるけれども。それが無いクルーやパイロットも限界だと思う。皆の精神力と士気はファントムペインとの戦いで消費してしまった。今から溜めるのも容易ではないはず)」

    ただ、その場合、アークエンジェルは見捨てることになる。普段ならいざ知らず、ボロボロになりフリーダムを欠いた今の大天使は、凍える海に待ち構える敵から翼を守り切れないだろう。

    アグネス「(地球連合軍・ファントムペイン・ブルーコスモスによる艦の拿捕とアスハ代表の拘束だけは万難を排して防がなくてはいけないわ。この際、デュランダル議長の腹の中も、最高評議会の意向さえも後回しで良い。ここまで来たら逃走でも良い、ともかく拿捕だけは…)」

    それが、意識が途絶える前に考えていた全てだった-。

  • 169二次元好きの匿名さん25/02/09(日) 02:00:59

    タリア「アグネス、起きられる?作戦に参加して欲しい」

    色さえもわからない意識の向こうから女性の声が耳に届く。30手前とは思えないドスのいた声、彼女は-。

    アグネス「はい!喜んで!」

    意識の霧をダッシュで駆け抜け、瞼をカット開けるや気合を入れて叫ぶ。眼球にはグラディス提督とメイリン、軍医殿の姿が映る。ベッドの横に立っていらっしゃるわ。

    タリア「え…!ああ…。ありがとう?」
    グラディス提督とメイリン、軍医殿は私が起きると同時に敬礼、私も横臥したままだけど、ちゃんと返礼する。

    私の反応に驚きを隠せないグラディス提督、彼女はその直後から、罪悪感に苛まれたような表情を浮かべ、痛々しいものを見るような眼差しをこちらに向けてくる。これは…流石に失礼じゃない?!

    タリア「無理に無理をさせて悪いわね。こんな言葉で納得してくれるとは思っていない。でも、貴女の力がいるの。それと-」

    グラディス提督の顔には『申し訳ない。心苦しい』と大書されている。そんな彼女は、一枚の証明書(表彰状)と手に持っていた少しシックな小箱を私の前に示して見せる。小箱の中には小さな金の星一つ。

    タリア「月軌道艦隊司令官にして、プラント国防委員会直属戦術統合即応本部隊長タリア・グラディスは、月軌道艦隊旗艦ミネルバ所属パイロットにして、戦術統合即応本部員にしてギーベンラート教導航空団隊長アグネス・ギーベンラートにプラント国防委員会の名において、『名誉戦死傷章』を授与します。カリーニングラード攻防戦に置いて、その身命を賭して国家の防衛に貢献したことに心からの賛辞を。3回目ね」

    パチパチパチパチ、とカーテンの向こう側から拍手が鳴り響く。提督はそんなに大きな声を出していないのだけれど、うむ。皆、元気が有ってよろしい。メイリンの目が真っ赤になっているのは少し悲しいけど、彼女も拍手をしてくれる。

    前に貰った名誉戦死傷章のリボンと略綬には金の小星が2個輝くことになる。略綬も同じく。まあ、私の身体の傷は2カ所どころでは無いが、貰えないより貰えた方が断然良いに決まっているわ。

    アグネス「ありがとうございます。それで-。ミネルバはやはりアークエンジェルを?」

    このタイミングで私を叩き起こす理由はそれぐらいしか思いつかない。グラディス提督は私の目線を受けて頷き返す。

  • 170二次元好きの匿名さん25/02/09(日) 08:21:36

    無意識下でサラッと失礼なことを考えてるアグネスに笑う

  • 171二次元好きの匿名さん25/02/09(日) 16:51:12

    タリア「国防委員会の結論よ。ミネルバは『エンジェルレスキュー作戦』を続行とのこと。ただ、本艦は装甲が破損、応急修理を施したけれど、降下後の戦闘はほぼ不可能。そこで、ローラシア級のカタパルトも併用、モビルスーツ隊を降下させます。降下部隊はフォースインパルスとカオス。グフ・ルナマリア機とショーン機、デイル機、AWACSディンが1機、潜水部隊はアッシュ3機とアビス」

    やはり、続行か。しかも敵地の真っ只中でミネルバの援護は無し。というかどうやって帰るの?私の疑問の答えはすぐ彼女の口から明かされる。

    タリア「ミネルバはその間、破損個所に耐熱ジェルを厚塗りして、上空の宇宙空間に待機。作戦終了もしくは遂行困難となった段階で降下、迎えに行きます。何とか1往復は可能だそうよ。特攻じゃない、見捨てたりしないわ」
    アグネス「分かりました」

    『分かった』から分かりましたと答える。もう何が何やら…。文字通り挺身突撃じゃない!

    アグネス「(でも、グラディス提督の眼差しは力強い。彼女の『見捨てない』『迎えに行く』と言う言葉だけは信頼に値するわね)」

    そこで説明は隣のメイリンにバトンタッチ、手早く説明が開始される。

    メイリン「現在、アークエンジェルは世界最北の不凍港ことホニングスヴォーグの北60㎞、スカンジナビア王国の接続水域内に海上に滞空中。一度は接続水域を外洋に向け抜けようとしましたが…。押し戻されました。海上には地球連合ユーラシア連邦海軍北方艦隊が展開中、主力はスペングラー級空母10隻艦、載機はウィンダム80とスピアヘッド10。他、アーカンソー級イージス艦7、デモイン級イージス艦4、フレーザ級小型水上駆逐艦15。攻撃型潜水艦の出撃も確認されています。数は推定25隻以上」

    北方艦隊の主力のほぼ全て、いや潜水艦はまだ半分温存してあるかもだけど。何にしろ威信をかけているわね。

    アグネス「アークエンジェルにとっては手荒いお見送りね。これに加えてムルマンスクの各飛行場から戦闘機と飛行モビルスーツ群、ナルヴィクの大西洋連邦からも。押し戻されたと言うのは?」

    その情勢では時間がたつほど彼らにとって不利になる。苦しい戦況ではあるが…。何故後退したのか。

  • 172二次元好きの匿名さん25/02/09(日) 17:00:52

    メイリン「陽電子破城砲『ローエングリン』1基が爆発。アークエンジェルが連合艦隊に向け牽制と警告を込めて発射しようとした直前に海中より、フォノンメーザー砲で狙撃されました。フォビドゥンヴォーテクスが海中に潜んでいます。ローエングリン発射寸前であったことから艦首片側の被害は深刻なものであると予想されます。スカンジナビア王国軍は海岸線ギリギリまで出動していますが、建前上は彼らも連合軍。救いの手を差し伸べることが出来ません」

    なるほど、それで私が叩き起こされたわけね。スカンジナビア王国もアークエンジェルを何時までも接続水域内に匿ってあげることは出来ない。決着の時は迫っている。

    タリア「本国からは既にアークエンジェルへの直接攻撃の許可が出ています。連合に拿捕されるよりは、と。しかし…」

    そう言ってグラディス提督は身体を屈めて私の耳元で耳打ちする。

    タリア「私の考えは少し違うわ。連合に拿捕されるぐらいなら-彼らに脱出してもらった方が良い。アークエンジェル撃沈は、それすら不可能な場合の最後の手段。降下する全員にそう告げています。貴女も良い?」

    無論、大賛成だわ。同じことを考えていたところだ。問題はより技術的なことに絞られる。

    アグネス「勿論です。グフにはM68キャットゥス500mm無反動砲を。潜水艦とフォビドゥンヴォーテクスがいるなら上空から魚雷弾頭を撃ち込める用意が要ります。フォースインパルスは普段の機動防盾の代わりにグフの対ビームシールドをテンペスト・ビームソード格納状態で装備していくべきです。エクスカリバー・レーザー対艦刀の代わりになります。降下時は少しでもシールドを傷めないため、表面に耐熱ジェルを塗布してください。ただ、パイロットはシン、彼が機体のことを一番理解しています。提案のみに」

    そう伝えるとグラディス提督は一瞬目を丸くする。M68キャットゥス500mm無反動砲までは準備していたようだけど。その先は想像の範疇を超えていたようだわ。

    タリア「急いで副長に。彼からシンに伝えさせます。貴女とシンは先行して降下してもらうわ。正念場よ。奮起を!」
    アグネス「了解」

    医務室ブリーフィングが済むとグラディス提督は退出、軍医殿は新しい携帯薬を私に手渡す。メイリンからはサプライズプレゼントがあった。『フロートライフリュック』ビジネスリュック仕様、流石メイリン。

  • 173二次元好きの匿名さん25/02/10(月) 00:09:43

    保守

  • 174二次元好きの匿名さん25/02/10(月) 02:03:09

    メイリン「アグネスさん、アグネスさんの業務用鞄はこちらで回収しました。厳重に保管しておきます。でも、カオスの故障を補うために使っているデバイスはミネルバに置いて行けません。いざとなったらこれに入れて、アグネスさんも助かって下さい。デバイスのセキュリティーはこれから一緒にカオスに向かい、強化します」
    アグネス「ありがとう、メイリン。急ぎましょう。看護兵さん、お願いします」

    話を聞く限り、勝負は一瞬で付けなければいけない。私の呼びかけに答え、力持ち二人組が掛け声を上げる。

    看護兵「行きますよ。一、二、三、はい!」

    はい、の声と共に身体がふわりと持ち上がりストレチャーに移される。ふーむ、行ったり来たりと我ながら忙しいわ。

    格納庫に向かいながら、携帯デバイスでシンに連絡する。副長から話は聞いているはずだけど、彼の反応が知りたい。

    アグネス「シン、どう?」
    シン「対艦刀が必要って言うアグネスの考えは分かる。下からの対空砲火も激しいだろうし。でも、機動防盾も欲しい。カリーニングラードでアグネスがやったみたいに機動防盾は左腕にマウント、両手のマニピュレーターはグフの対ビームシールドを装備でどうかな?タイミングしだいで捨てればいい」

    ほう。なかなかいい考えね。

    アグネス「それ採用。カオスも左腕は巡航機動防盾をマウントして、両手には対ビームシールドを。壊れた左腕もマニピュレーターは動くから。それと、対空戦の際に-」
    シン「うん?」

    少し突飛な策を彼に打ち明け、了承してもらう。彼の協力なしには出来ない策だ。

    シン「分かった。やるよ!」
    アグネス「そう来なくっちゃ。頼りにしているわよ」
    シン「お…おう」

    シンの驚いたような返事を携帯越しに聞き、一拍遅れで自分がとんでもないことを言ったことに気が付く。非常時のテンション、まあ、良くあることでしょう。あくまで戦友としてね。

  • 175二次元好きの匿名さん25/02/10(月) 02:06:46

    そうして、カオスの足元に到着すると大型昇降機でコックピットまで移動、メイリンは私の監督の下、業務用デバイスをカチャカチャ操作している。

    メイリン「速く!速く!速く!」

    その間、私は看護兵の助けで操縦席に座り、整備班はグフの対ビームシールドの予備をインパルスとカオスの2枚ずつ持たせる。インパルスは既に艦内で組み立て終わった状態、わざわざ出てからドッキングを見せる意味も無いから当たり前か。

    アグネス「えい!えい…、と」

    メイリンから貰ったばかりの『フロートライフリュック』ビジネスリュック仕様をコックピット内面左側の固定スタンドに無理やり挟み込む。極北の凍える海の上、無茶な作戦に臨む私へのせめてもの餞なのだろう。そう言うのは大事にしたい。

    自分のことを粗方終えて、少し周囲を見渡す。何時もと比べモビルスーツ格納庫の中は少し寂しい。ルナマリア達グフ3機とアッシュ3機、それにアビスとAWACSディン1機が抜けているから。今頃、彼ら彼女らはローラシア級のカプセルの中。今回の大気圏降下は私とシンが先駆けとなる。

    メイリン「終わりました」
    アグネス「ありがとう」

    それだけ言ってセキュリティーが強化されたデバイスを受け取り、敬礼を交わす。くどくど別れの挨拶を言う暇はない。

    看護兵「ご武運を!」
    アグネス「皆さんにも!」
    2機のモビルスーツの発進シークエンスが急速に、しかし淡々と開始される。プロたるものは、これで良い。

    アーサー「カタパルト推力正常、進路クリアー、カオス、フォースインパルス、発進どうぞ!」

    メイリンが私の世話で掛かりきりだったから、トライン副長がオペレーターの代打ね。良し!

    アグネス「アグネス・ギーベンラート、カオス、出ます!」
    シン「シン・アスカ、フォースインパルス、行きます!」

  • 176二次元好きの匿名さん25/02/10(月) 02:22:46

    インパルスとともにミネルバを発艦する。眼下には巨大な星、夜の地球を輝かせる電気の光は各国が小細工したGDPより雄弁に各国の国力差を示している。ユーラシア連邦の心臓部、ウラルから西部のモスクワ、サンクペテルブルクを始めとした諸都市の輝きに陰りは見えない。

    ザフト側が戦略爆撃などを行っていない以上、ブレイク・ザ・ワールドを生き延び、あるいは再建された各国の工場は24時間フル稼働で軍需物資を吐き出し続けている。第一次・第二次世界大戦時に倣うかの如く-。いや、空襲を掛けていない以上、下手したら兵役対象年齢者が全て斃れるまで戦争は続くのか…。ロゴスを潰せば収まるのか?

    アグネス「(よそう。今考えることじゃない…)」

    今は降下とそこからコンボを決める強襲に全神経を集中させるべき!スカンディナビア半島北側に広がる真っ暗いノルウェー海(北大西洋の一部)とバレンツ海(北極海の一部)に辿り着かないといけないのだ!

    両手に持ったグフの対ビームシールドを下向きに構えて、二つの海を分けるマーゲロイ島ノールカップ岬、44㎞北方の連合艦隊に向け、私達は2つの真っ赤な流星と化し流れ落ちる。

    赤い大気の壁が機体にぶつかるのをじっと耐える。これまで散々、私を困らせてきたアークエンジェル問題に一つの答えが出ようとしている。

    左のデバイスから国際救難チャンネルの放送を受信!グラディス提督からのものだわ。

    タリア「国際救難チャンネルの放送を開始します。アークエンジェル、貴艦の思いは確かに傾聴に値するかもしれません。しかし、既に状況は切迫しています。ミネルバから貴艦の生存のためにモビルスーツ隊を投下します。共に難局を切り抜けましょう。しかる後に我々の監督下にお入りください」

    なるほど、これがアークエンジェルへのグラディス提督からの信号弾か。伝わると良いけれど。

    アグネス「(『しかる後に我々の監督下にお入りください』は方便ね。無論、それが命令で在りベストではあるけれど。要はこちらの援軍に呼応して連合と戦うなり逃げるなりして欲しい。地球連合側に拿捕されるのだけは回避して欲しい、のサインね)」

  • 177二次元好きの匿名さん25/02/10(月) 02:32:26

    さて、建前は示した。後は実務を粛々とこなしていくのみ。先ず、シンに通信を入れる。

    アグネス「シン、インパルスとカオスの戦術リンクを!相互に補う」
    シン「了解。打ち合わせ通りと」
    アグネス「ええ」

    反している間も落下は続く。オーロラの空を真っ赤に切り裂き進むと、その先は凍て付く海が広がる。下に構えた盾の先に注意を向ける。

    アグネス「コックピットレーダーに感あり。下に連合の長距離哨戒機1機を確認。ビーム突撃砲で撃墜する。…発射!」
    シン「了解。命中を確認。今ので気づかれたかな?」
    アグネス「あそこに飛ばされたら墜とさなくても気づかれたわよ!」
    シン「そうだね!」

    それが実質的な開戦の狼煙となった。マーゲロイ島沖合の敵連合艦隊は対空戦を開始する。デモイン級とアーカンソー級イージス艦計11隻の対空ミサイルランチャーから264本以上の対空ミサイルが一度に発射される。

    イージス艦に連動してスペングラー級空母10隻からも対空ミサイルが計240本、15隻のフレーザ級小型水上駆逐艦も90以上のミサイルを発射し、アーカンソー級とスペングラー級空母艦首連装ビーム砲は34の光の奔流が迸る。

    シン「カオスは小破している。俺が前を!」
    アグネス「お願い!」

    ピッカっと光ったかと思えば1本のビームが目の前に迫る!だが、下向きに構えていた対ビームシールドが辛くもそれを弾く。先行したインパルスはカオスの分も合わせて3本の光の濁流を受け流している。

    恐ろしい光景だ。しかし、敵は弾幕を張るのに一生懸命すぎる。この防御行動で艦の位置が丸見えとなってしまった。何よりこの距離でしかも夜間では十分に照準など定められる筈もない。

    アグネス「(だからこそ『弾幕』なのだけどね!)」

  • 178二次元好きの匿名さん25/02/10(月) 02:38:12

    今度はミサイルが迫る。スラスターを吹かせ、今度は私、カオスがインパルスの前に出る。ミサイルの迎撃ならカオスの方が適任だ。

    アグネス「カオスはモビルスーツ形態を維持!頭部CIWS4門、胸部CIWS2門、ピクウス76mm近接防御機関砲2門発射開始!」
    シン「了解!」

    シンへの合図と共に左手の対ビームシールドは捨てる。巡航機動防盾ピクウス76mm近接防御機関砲に干渉してむしろ生存率を下げる。

    背後にインパルスを庇いつつ、目前に迫るミサイル弾幕を迎え撃つ。接近する鼻からミサイルは爆散し続ける。今日、マーゲロイ島でオーロラを観察しようとした人にとっては災難だろう。汚い花火が数百発、極北の空を明るく染めているのだから。

    身の前で幾つものミサイルが弾け、炎と飛び散った破片が周囲の空間を薙ぎ払う。その煙と金属片の嵐を潜り抜ける前に次のミサイルが急接近する。無論、急降下は続行だ。この一撃で全てを決めないといけない。とは言え、そろそろ砲弾を節約しないとまずい。

    アグネス「モビルアーマー形態に変形、カリドゥス改複相ビーム砲発射!」
    シン「了解!」

    瞬時にモビルスーツ形態に変形すると主砲を掃射、猛火で目前の空間を舐め尽くす。地獄の業火に炙られたミサイルがお仲間を誘爆させながら大爆発していく。

    その大爆炎を背後から切り裂くように先程よりも細いビームが50本煌めく!航空部隊が連隊規模、上昇してきたのだ。ウィンダム50機、スペングラー級から出撃していたやつね。

    シン「俺が!」

    凄い本能でカオスの前に躍り出たシンが両手と左腕のシールドで敵モビルスーツ隊のビーム弾幕を防ぎきる。しかし―スピアヘッド10機がインパルスとカオスの間に間隙を作ろうと下から突っ込んで来る!

  • 179二次元好きの匿名さん25/02/10(月) 02:53:45

    アグネス「させないわよ!」

    カオスの角度を調整し、奴等がドラム式ランチャーを回転させて撃ち込んで来る対空ミサイルをCIWSで迎撃!
    直後、こちらを撃って旋回、反転しようとした敵機を片っ端から撃ち抜く。右手に持ち替えたピクウス76mm近接防御機関砲で!
    危ない所だったけど、何とか6機をハチの巣にして撃ち落とし撃退に成功、その間、対ビームシールドは左手で持ち、用が済んだら元の手に戻す。

    敵航空部隊がやはり出てきた。悪い意味で想定通り。アークエンジェルに気を取られて奇襲が楽に決まるのがベストだったが、やはり甘かった。そうなると、彼らを一気に斃さねば私達も後が続かない。

    アグネス「シン、事前の打ち合わせ通り。やるわよ!」
    シン「ああ!」

    言うが早いか、シンはインパルスが両手で持つグフの対ビームシールドを2アクションで投げ捨てる。まず、1アクション目でシールドを手放しつつ、鞘走らせてテンペスト・ビームソードを引き抜く。2アクション目でそれを下から攻めてくるウィンダムに向け投擲する。

    1拍おいて眼下で爆発の光が二つ。ウィンダムに過たず命中したようだわ。本当にコントロール良いわね!

    その間にカオスは右手のシールドを構え直し、スラスターを加速させインパルスの前に進む。そして、自機とインパルスに延びるビームを対ビームシールドで受け流し、飛来するヴュルガー空対空ミサイルと空対地ミサイル・ドラッヘASMはカリドゥス改複相ビーム砲で焼き尽くす。

    私が敵の集中攻撃を捌いている間に、シンはインパルスの右肩からビームサーベルを引き抜き投棄、代わりに左手で高エネルギービームライフルを構え、急速に接近しつつあるウィンダム連隊中1機を撃ち抜く。

    ここからだ!

    アグネス「一、二、三!」
    シン「一、二、三!」

    息を合わせて数を数え、『三』でくるっとカオスを回転させる。すると、カオスは直ぐ後ろを降下していたインパルスと向き合ったような形となる。このままでは衝突不可避だが…。そんな腕ではアカデミー次席も最新鋭機テストパイロットも夢のまた夢だわ!

  • 180二次元好きの匿名さん25/02/10(月) 02:59:10

    シン「えい!」

    私とシンは機体間の速度を調整しつつ、最適速度で接触、機体同士を組み合わせる。インパルスはカオスの脇の間に頭部を入れ、右腿の後ろに右腕を回し、足側の手で反対側の手首を持つ。所謂、『ファイヤーマンズ・キャリー(俵担ぎ・お米様だっこ)』ふざけてやっているわけでは無い。死ぬ気でやっている、文字通りの意味でね。

    敵前で無防備にならないよう、インパルスの左腕には機動防盾がマウントされ、本体左側面と左前方を防御する。
    担がれたカオスは左腕に巡航機動防盾をマウントしたままなので後方右側も守れる。手首を握られた右手はグフの対ビームシールドを手放していないので、不十分ながらインパルス正面は左右どちらも守られていることになる。

    インパルスの左手マニピュレーターには高エネルギービームライフルが握られたまま、シンは2斉射して2機のウィンダムを撃墜する。攻撃手段も確保はしてある。

    とは言え、こんな危機一髪の空中組体操、有事とは言え絶対にやりたくない。それでもやって見せたのは-

    アグネス「(この一撃が我等コーディネイターと友邦諸国民の-)

    インパルスに担がれながら、カオスは機動兵装ポッドを分離、今やすれ違う寸前のウィンダム隊の編隊両翼に飛ばす。カオスの機動兵装ポッドはブースターを兼ねるため有重力化では着脱は本来不可能-ならその間、味方に担いでもらえば-どうだ!

    アグネス「量子通信、良好!全門発射!(創世の一撃とならんことを!)」

    機動兵装ポッドはウィンダム編隊の虚を突き、死角に回り24発のファイヤーフライ誘導ミサイルを発射し、ビーム突撃砲を3斉射する。

    たった2秒足らずの間に30機のウィンダムが自機から生じた爆炎と爆風に呑み込まれる。一仕事を終えた機動戦闘ポッドはカオスの背中に帰還し、同時にインパルスとカオスはこの居心地の悪い組体操を終える。奇策は頻繁に用いるべきではない。

    組体操を解く際、カオスは右手に後生大事に持っていた対ビームシールドをインパルスに差し出す。シンはその盾からエクスカリバーを右手で引き抜く。その間にカオスはモビルアーマー形態に変形を完了し、空いた右手で動かぬ左腕の巡航機動防盾を取り外し構えるとインパルスの前に立つ。

  • 181二次元好きの匿名さん25/02/10(月) 03:07:23

    ここからが本当の勝負よ!機首を下に、真っ逆さまにして急降下攻撃を開始する。

    私達を迎え撃った50機のウィンダム編隊は今や16機、それもパニックになりかけている16機だ。

    アグネス「カリドゥス改複相ビーム砲、ビーム突撃砲発射!」
    シン「了解」

    カオス機首から薙ぎ放たれた猛火で6機が墜ち、ビーム突撃砲で2機が撃ち落とされる。連合のジェットストライカーも良し悪しだ。

    大きすぎて対ビームシールドでしっかり守るには高い練度が必要とされ、中途半端にミサイルが残っていれば、大誘爆する。おまけに急旋回が得意とは言い難い。では、カオスが得意と言えるかは少し疑問だけれど。

    後ろのインパルスが撃った高エネルギービームライフルが更に3機の翼を捥ぎ、爆炎に包んでしまう。あっと言う間に艦隊の守りは5機だ。

    瞬く間に直上まで迫られた敵艦隊は狂乱しながら再度ミサイルを発射、デモイン級の250mm速射砲も火を噴き、チャージが終わった連装ビーム砲は上空の我等を狙い撃つ。

    アグネス「宙返りのち逆宙返り!くッ…!」
    シン「了解!」

    その緑の大光線を必至に避け、ピクウス 76mm近接防御機関砲は空になるまで回転を続けさせる。躱しきれないビームは角度を調整しながら対ビームシールドで弾くしかない。

    ただ、慌て者の一斉攻撃は思わぬ副産物を生む。上空で戦闘中だったウィンダム5機はこのなりふり構わぬ防御法に巻き込まれ、パイロットの血肉ごとばらばらになって海面に降り注いでいる。

    海面近く、艦隊の文字通りの直下にまで迫ったところでカオスは後続のインパルスに順番を譲る。シンもそれに応えてまず、艦隊旗艦と思しきスペングラー級に高エネルギービームライフルをお見舞いする。

    シン「うぉぉォォォォォ!」

    艦橋から艦底まで撃ち抜かれた空母は大爆発と炎上を開始する。ビームに内部が焼き抜かれた時、弾薬にも誘爆したようだ。

    さて、シンに一応、注意喚起しておこう。
    アグネス「海中よりのフォノンメーザー砲に注意!」

  • 182二次元好きの匿名さん25/02/10(月) 03:18:25

    シン「了解!あぁぁぁ!」

    シンは気合十分みたいね。雄叫びを上げつつ、ーカンソー級1隻に降り立つと25m対空ガトリング砲の反撃をものともせず、テンペスト・ビームソードを一振り。

    この武器はエクスカリバーほどの刃渡りが無いため斬り捨てると言うよりは、こう思いっきり切り付けてぐりぐり切裂くような形になっている。まあ、切れれば何でも良い。

    真っ二つになって轟沈しつつある艦内から這い出す無数の乗組員。今の気温なら溺死の前に凍死してしまう。それをどうにか出来る術など私達が持ち合わせている筈もない。

    シンはその勢いのまま、フォースインパルスの揚力も用いてアーカンソー級6隻を刀の錆にしていく。ここでイージス艦を削れるだけ削る必要がある。敵の防空能力を削がないと後続の味方も守れないし、アークエンジェルは接続水域の外に前進できないだろう。

    私は手近なスペングラー級1隻をカリドゥス改複相ビーム砲で焼き沈める。シンに海上を任せるなら、私は上空に意識を向けるべき。そろそろアークエンジェルを睨んでいたウィンダム30機が戻ってくるころだ。

    ありがたいことにコックピットレーダーに寄れば、上空では降下されたポッドの一つ目が開き、グフ3機とAWACSディンが1機飛び出している。第一段階は終了、これらの機体は飛行可能機なので、その気になれば比較的、高い高度で降下ポッドから発進できる。

    アグネス「(問題はアッシュ隊とアビスの方、潜水部隊を何とかしないことには…)」

    何にせよ、大気圏降下から連続して遂行した強襲は上手く決まった。このまま順調に進めば良いけれど…。

  • 183二次元好きの匿名さん25/02/10(月) 09:02:33

    保守

  • 184二次元好きの匿名さん25/02/10(月) 11:09:45

    なんか某国防委員長のセリフだのダイナミックでダイナマイトな巨人に変身する人のセリフが聞こえるんですけど……(w。

  • 185二次元好きの匿名さん25/02/10(月) 20:25:05

    保守

  • 186二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 01:38:43

    心臓が早鐘のように鼓動を刻む。脳内麻薬よ、今は引くな!

    今回の作戦はこれ前で以上に時間との勝負だ。敵地の只中に降下した私達には電力・弾薬の補充の見込みはない。海上だから追加物資を投下してもらうこともできない。

    宇宙での戦いで装甲を損ないタンホイザーも故障したミネルバは実質戦闘不能、出来ることは私達を迎えに来て大気圏外に連れ帰ることのみ。

    だから、私達がなすべきことはただ一つ。スカンジナビア沖の敵艦隊・航空隊・潜水部隊を強襲し、アークエンジェルの突破口を作る。それが済み次第、出来ればナルヴィクとムルマンスクの増援が到着する前に引き上げる。接続水域突破後のアークエンジェルの対応はまた別のアプローチを試みてください、と。

    無論、私達を迎えに来た時、アークエンジェルのパイロットと乗員、囚人が一斉にミネルバに移乗してくれれば作戦は大成功だ。けれど、そんな皮算用は画餅に過ぎないことは明らか。タイムリミット的にもね。

    アグネス「(『連合による拿捕さえ阻止できれば、アークエンジェルは逃しても構わない』。グラディス提督のご判断は彼らへの同情のみが理由ではない。もっと現実的な見地によるもの)」

    ただ-。

    逆に言えば、ここまで切羽詰まっていなければ、この決定は特務隊長とは言え不可能だったはず。腹黒議長を筆頭にした諸勢力の意図が絡み合った-ゴルディアスの結び目-を快刀乱麻に断ち切る決断、今夜だけは嘘をつかず説明し、相手に吞ますことができる。

    アグネス「コックピットレーダーに感あり。6時の方向8㎞。スカンジナビア王国接続水域上空に地球連合ユーラシア連邦軍ウィンダム隊が30機。アークエンジェルに追い込みをかけていた2個中隊が反転。迎撃する!」

    そうシンに呼び掛けるや機首を上空に突き立てカオスを上昇させる。去り際に右手の対ビームシールドを高エネルギービームライフルに持ち替え、フレーザ級小型水上駆逐艦を1隻撃ち抜き轟沈させる。

    シン「分かった!うぉぉォォォォォ!」

    私が通信を入れた瞬間にシンは最後のアーカンソー級イージス艦の両断に成功、二つに引き裂かれた艦が真っ赤な炎を上げながら海に引き込まれて行く。

  • 187二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 01:48:00

    今夜ばかりは彼の雄叫びを揶揄う気にはなれない。インパルスもまた、満身創痍だ。大量のミサイルとデイモン級4隻の250mm速射砲、ビーム連装砲、CIWSは攻撃中も止めどなく降り注いでいる。

    スペングラー級残り8隻から撃ちだされるビーム砲だけは必死に避けるか機動防盾で弾き、ミサイルは胸20mmCIWSを空になるまで撃ち尽くしながら迎撃している。

    敵艦の速射砲とCIWSはノーガード戦法だ。CIWSの弾丸が尽きればミサイルさえもそうなる。エネルギー残量は鑢を掛けられたように減っていく。命のタイムリミットだ。カオスも初手からカリドゥス改複相ビーム砲と機動兵装ポッドを用いたため、エネルギー切れは遠くない。

    それでも、無理な戦いを続けるには訳がある。

    この戦いの主役は潜水部隊だ。極論、フォビドゥンヴォ―テクスと攻撃型潜水艦を沈めなければ意味はない。しかし、アビスとアッシュ小隊の乗り込むポッドを投下するためには一時的にしろこの空域の制空権を取らなければいけない。

    さらに味方モビルスーツ隊の潜水後、水上艦の対潜ミサイル攻撃を防ぐ必要がある。だから目前の巡洋艦と駆逐艦は前もって過半を沈めておく必要がある。

    アグネス「任せたわ、シン」

    そう言い置いて、さらにスラスターを吹かせる。望外の幸運が一つ。

    ウィンダム隊の注意をアークエンジェルから出撃したムラサメ隊が引き付けてくれている。オーブ本国に配慮して直撃攻撃はしていないものの、その機動力でウィンダム隊を翻弄中。おそらく敵のジェットストライカーのミサイルポッドが空なのは、彼らの12.5mm自動近接防御火器に全弾撃墜されてしまったせいだろう。

    アグネス「AWACSディン、ルナマリア機、回線を固定。戦術リンクを構築せよ」
    ルナマリア、AWACSディンパイロット「了解!」

    6時方向に旋回したカオスは上昇を継続、敵ウィンダム編隊の足元を狙う。それにいち早く気が付いたムラサメ隊10機は協力を無言で申し出る。

    戦闘機型モビルアーマーに変形済みのオーブ軍機は、敵編隊に急接近してプレッシャーをかけ、直後に離脱する。この威圧飛行によりカオスを睨むウィンダムのビームライフルは15本にまで減った。

  • 188二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 01:55:41

    残る15機のウィンダムは攻盾タイプEを下に構え、ビームライフルを持った右腕を突き出している。直上で降下ポッドが開き、ルナマリア達が飛び出したことに彼らはまだ気が付いていない。というか、それを抜きにしても大ビーム砲相手にその備えはいただけない。

    アグネス「グフ隊に通達!カリドゥス改複相ビーム砲を発射する」
    ルナマリア「了解!私達も上を衝くわ」
    アグネス「お願い」

    そう告げるとカオス主砲の引き金を引く。赤い大ビーム砲が暗闇を一薙ぎして消えた直後、1個小隊3機の翼が炎上しながら暗い海に消えていく。

    その直後にグフは急降下、各機右腕のドラウプニル4連装ビームガンを乱射する。連合機とて襲撃の1拍前には把握したようだが、どうしようもない。ルナマリア、ショーン、デイルによって3機ずつ計9機がカオスの頭上で爆散する。

    この時点で生き残っていた18機はようやく自分達の不利を悟り逃亡を図るも、グフ隊のスレイヤーウィップの餌食となる。中世の鎖武器のように振り回される灼熱の鞭が瞬く間に6機を両断している。

    逃げ出した彼らの下腹を見上げるような形となったカオスからは3本のビームが発射され、コックピットをほぼ同時に撃ち抜く。高エネルギービームライフル、ビーム突撃砲を併用したのだ。

    残る15機のウィンダムは攻盾タイプEを下に構え、ビームライフルを持った右腕を突き出している。直上で降下ポッドが開き、ルナマリア達が飛び出したことに彼らはまだ気が付いていない。というか、それを抜きにしても大ビーム砲相手にその備えはいただけない。

    アグネス「グフ隊に通達!カリドゥス改複相ビーム砲を発射する」
    ルナマリア「了解!私達も上を衝くわ」
    アグネス「お願い」

    そう告げるとカオス主砲の引き金を引く。赤い大ビーム砲が暗闇を一薙ぎして消えた直後、1個小隊3機の翼が炎上しながら暗い海に消えていく。

    その直後にグフは急降下、各機右腕のドラウプニル4連装ビームガンを乱射する。連合機とて襲撃の1拍前には把握したようだが、どうしようもない。ルナマリア、ショーン、デイルによって3機ずつ計9機がカオスの頭上で爆散する。

  • 189二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 02:03:23

    この時点で生き残っていた18機はようやく自分達の不利を悟り逃亡を図るも、グフ隊のスレイヤーウィップの餌食となる。中世の鎖武器のように振り回される灼熱の鞭が瞬く間に6機を両断している。

    逃げ出した彼らの下腹を見上げるような形となったカオスからは3本のビームが発射され、コックピットをほぼ同時に撃ち抜く。高エネルギービームライフル、ビーム突撃砲を併用したのだ。

    当然、敵も死に物狂いの反撃を行う。ビームライフル9門に加え、2連装多目的ミサイル・ヴュルガーSA10が18本、上空から降り注いでくる。

    カオスの故障した左腕には巡航起動防盾がマウントされ、左手にはグフの対ビームシールドが握られている。ただ、生死が掛かった9機の猛攻を凌ぐのに十分では無かった。

    2回目の斉射時で敵3機を撃ち落とした瞬間、カオスに激震が走り、私の背中とお尻が操縦席で強打される。

    アグネス「くッ…!」
    ルナマリア「アグネス!」

    目玉の奥で星が飛び散る。一瞬呼吸が出来なくなるが、耐える。今は墜落しないことが何より優先される。

    アグネス「かはッ…。はあ」

    飛行姿勢が崩れかけたカオスの何とか安定飛行させることに成功する。まったく私は何をしているのか。もうドロップアウトしたい。この作戦を生き延びたら…。

    コックピットデバイスを確認、カオスの後ろスカートに敵のヴュルガーSA10が4本命中。カオスの後ろスカートは長く、モビルアーマー形態時は、本体スラスターの後ろに持ち上がっている。どおりで衝撃が良く伝わるわけだ。

    ルナマリア「6機は私達で…。しっかり!」
    アグネス「了解」

    気を紛らわすようにコックピットレーダーを睨みつける。ウィンダム隊は再度、上空からグフ隊の襲撃を受けている。ドラウプニル4連装ビームガンの弾幕を躱せるほどの余裕を彼らは持つことができない。

    6つの赤い閃光が闇夜に輝く。その光は煙を激しく噴き出しながら、真っ逆さまに海面に落下し、水柱を上げる。そして、それっきりだ。次は我が身か?

  • 190二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 02:11:32

    左のデバイスからはルナマリアが必死に私に呼び掛けている。大袈裟な…。


    ルナマリア「アグネス、大丈夫?!」

    アグネス「しっかりしているわ!平気よ」


    まあ、仮に平気でなかったらどうなるのだと言う話だけれど。


    私達がウィンダム隊を撃墜している内にシンはデイモン級4隻を叩き切っている。末恐ろしいわね。炎上しながら漂流しているスペングラー級2隻は高エネルギービームライフルを用いたのか…。


    ふと視線を感じて振り向くと暗闇の向こうに白亜の巨艦が浮かび上がる。この艦は傷ついてなお美しい。『彼女』を守るムラサメ隊は尾翼を揺すって飛び、艦橋からは光を用いた信号が視認される。私達に謝辞を伝えてくれるのだ。


    ルナマリア「今は答えられないわね」

    アグネス「そうね。手だけ振っておきましょう」


    ルナマリアとショーンとデイルのグフは右腕を、カオスは右手に持ち替えた大盾を大天使に精一杯振る。この挨拶を交わせたことそのものが私にとってのご褒美なのかもしれない。


    (カウントMS1032〈+共同撃破多数〉 デストロイ2(共同)  セカンドシリーズ1(共同) 大型MA22(共同2) 

    戦闘機52 対MS戦闘ヘリコプター245 大型輸送機33〈+共同撃破多数〉 VTOL輸送機33〈+共同撃破多数〉 長距離偵察機1

    リニアガン・タンク141〈+共同撃破多数〉 自走リニア榴弾砲210〈+共同撃破多数〉 ブルドック220〈+共同撃破多数〉 工兵車60<+共同撃破多数> レーダー車7 汎用車両・兵站車両・軍用トラック等297〈+共同撃破多数〉

    地対空75mmバルカン砲塔システム7  大型砲20 ヘルダートタイプ・ミサイルランチャー5基 50mmガトリング砲9

    空母12 イージス艦16 フレーザ級6 大型輸送艦1 コルベット艦2 哨戒艇1 軍用艇3 アガメムノン級14 ネルソン級14 ドレイク級17 リフレクターシールド装備型ドレイク級10)

  • 191二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 02:35:54

    さーてAAはどうなるか⋯
    キラは本編通りカガリに回収されてればいいが

  • 192二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 07:45:39

    本編でもこう動けていたら…

  • 193二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 08:42:47

    本編ですら十分きつかったのに戦闘量がその倍くらいになった結果だからなぁ⋯

  • 194二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 18:22:24

    グフの鞭は地味に強武器なんだよなぁ

  • 195二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 18:55:29

    ネオとスウェンはイアン達の首で一先ず手打ちになるかなぁ
    フリーダムとキラのいないAAなんて大した脅威ではないと議長が慢心してくれればいいのだが

  • 196二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 22:17:33

    アークエンジェルに対ビームシールドを振り挨拶を終えた時、ムラサメ隊のうち一機が急にモビルスーツ形態に変形、身振りで何かを必至に伝えてくる。

    アグネス「?」

    カオスとグフ隊はそれを見て急いで反転、危ない!うっかり存在を忘れかけていた生き残りのスピアヘッド4機が味方の仇を討とうと決死の突撃を図っていた。

    アグネス「カリドゥス改複相ビーム砲、ビーム突撃砲発射!ショーンとデイルのグフはシンの援護を!海中からの攻撃に注意せよ」
    ショーン、デイル「了解!」

    そう指示した次の瞬間には北方艦隊機動打撃軍、最後の勇者たちは星々煌めく夜空の下で猛火に呑まれ、ビームに貫かれている。

    やはり現実は散文的なもののようだ。誰にとっても。神様は私達にほっこりした満足感を抱きながら大天使を見送る暇を与えてくれないみたい。

    アグネス「(カリドゥス改複相ビーム砲を使い過ぎている。でも、しかたない。今は時間が優先される)」

    アークエンジェル艦橋に向け、一度、コックピットの中で敬礼すると私達は血みどろの戦争に舞い戻る。ここからの作戦スケジュールは0.1秒刻みに加速する。

    ショーンとデイルのグフ2機編隊は、水上艦の対処を一手に引き受けていたシンの援護に空を駆ける。目標はフレーザ級小型駆逐艦の漸減。

    未だ14隻残存している小型駆逐艦はインパルスに向け猛攻を続けている。艦首の主砲を始め、CIWS、ミサイル発射装置から絶え間なく無理注ぐ火線がヴァリアブルフェイズシフト装甲を叩き続けている。

    インパルスの電力の消費が心配だ。それに爆発の度、衝撃が内部のシンを打ちのめしているはず。

    アグネス「インパルスに通達。敵航空部隊殲滅。ショーンとデイルが援護に行く。まだナルヴィクとムルマンスクの部隊は現空域に辿り着いていないわ!」
    シン「了解…。『上空のローラシア級に連絡!ハイネ先輩達のポッドを降下してくれ!』水上艦は俺とショーンとデイルで何とかする!」
    ローラシア級「了解。降下シークエンス最終段階…」

    左側のデバイスから私に届くシンの声、やはり苦悶の響きが混ざっている。機体を突き抜ける衝撃が彼の身体を傷つけていた。しかし、お互いどうしようもない。

  • 197二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 22:36:27

    わぁとうとうアグネスどころかシンまで負傷するように…

  • 198二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 22:44:44
  • 199左遷されたガチタン好き25/02/12(水) 00:11:44

    うめ

    あれ、シン負傷、アグネス負傷、アスランは撃墜と低体温症、キラも撃墜、ルナは宇宙、ムゥはネオ化…
    …ハイネー!
    早く来てくれーっ!

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