ライブ成功後の手毬と学Pが

  • 1二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 10:03:10

    舞台袖で勢い余って盛大なハグをしてしまって、それ以降何かある度にハグをねだるようになる手毬のSSってありませんか?

  • 2二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 10:03:51

    当店セルフサービス定期

  • 3二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 10:05:00

    そこに無かったら無いですね…でも他のお客様は皆自分でお作りになられていますよ

  • 4二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 10:17:59

    無さそうなので書きますね

  • 5二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 10:19:32

    「ん」
    「はい?」
    「……ん!」

    とある日のレッスン後。事務所とした与えられたプロデューサー室に帰ってきた俺を迎えたのは、先に部屋に戻っていた俺の担当アイドル――月村手毬だった。
    何故か、両手をこちらに向けて広げながら。

    「……なんですか?」
    「なんですかじゃないでしょ! 言わないと分からないんですか!?」
    「ええ、分かりませんよ。ちゃんと言葉にしてください。得意でしょう?」
    「はぁ!?」

    嘘をついた。ポーズと表情と、傘貸しに来たカンタみたいな声で、恐らくハグをねだっているのだろうと流石の俺も理解している。
    が、このワガママに唯唯諾諾と従っていては身が持たないのもまた理解していた。

    「まったく、片付けたなら帰りますよ。明日も早いんですから」
    「……プロデューサーの意地悪」
    「なんのことやら」

    彼女の拗ねた声を適当に流しながら、俺は先日のライブのことを思い出していた。今起こった奇行の原因が一つ頭に浮かぶ。

  • 6二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 10:20:09

    あの日のライブは、大成功だった。慣れないステージ、新曲の発表、慌ただしいスケジュールとトラブルの種は満載だったものの、月村手毬は見事やり遂げたのだった。俺も俺で四方八方に駆け回り、当日ですら落ち着いて聴けたのは最後の二、三曲だけだったくらいだ。
    そしてラストを飾る「Luna say maybe」を歌いきった彼女は、拍手に包まれながら舞台袖に下がるなり俺の元に駆け寄って来た。お互い感極まっていたのもあり、ふらつく彼女をそのまま抱き締めてしまったのである。それを見た周りのスタッフも力強い拍手をしてくれたから、まあ試合後のアスリートとコーチみたいな雰囲気であの場は許されたんだと思う。

    ……というのは、舞台袖の話だ。日常に戻った俺達はいつも通りのプロデューサーとアイドル。そんな行為は許されないのである。というか、あの時のハグですら他所に漏れたら危ないんじゃないかとヒヤヒヤしているのに。

  • 7二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 10:20:59

    「ねえプロデューサー、私今日頑張ったんですけど」
    「はい、頑張りましたね」
    「そうでしょ? じゃあ、」
    「明日もこの調子でお願いしますね」
    「……じゃなくて! 私が言いたいこと、分かってて言ってますよね!?」

    どう答えたものかと一瞬考える。
    分からない→キレる
    分かる→キレる
    うん、話が早い方にしよう。

    「分かっていますよ。その上で答えるなら、NOです。貴女はアイドルなんですよ?」
    「うぐっ……それはそうですけど!」
    「じゃあ終わりです。あの時のはライブが終わった後の雰囲気だったので、あれっきりですよ」
    「でも……」

    捨てられた子犬みたいにしゅんとなる彼女を見ると少し揺らいでしまう。いやダメだ、アイドルじゃなくても女子高生と成人男性。普通にアウトだ。これ以上亜紗里先生に呼び出されたくない。

  • 8二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 10:21:36

    「人に見られなきゃ良いんですよね?」
    「そういう問題ではありません」
    「じゃあどういう問題なんですか!」
    「……プロデューサーとしてです」

    そう言うも、彼女も俺自身も納得した答えじゃないのは分かっている。あの時俺が気にしていたのは、人に見られたこと。何か噂が立つこと。彼女の経歴に傷がつくこと。それだけだ。
    だから。

    「プロデューサーは、嫌?」
    「……そうとは言ってませんが」
    「ん」

    拒めない。ああ、そうだ、俺が担当したのはこういうアイドルだ。
    せめてもの抵抗に、見せ付けるように盛大な溜息を吐く。

    「……絶対、他の人に言わないで下さいね」
    「言わないよ」
    「本当に絶対ですよ。万が一こういう事が誰かにバレたら、月村さんに悪評が付く前に俺はプロデューサーを降ります」
    「はぁ!? なんでそんなっ」
    「貴女がアイドルを続けられなくなる方が俺は嫌だ」
    「っ、……分かりました」
    「よろしい」

  • 9二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 10:22:10

    情に絆されても、最大限の予防線を張るのを忘れずに。こうでもしなきゃ、安心できない。安心して抱き締められない。

    「じゃ、じゃあ……」
    「はい。どうぞ」

    同じポーズをとって、彼女を迎え入れる。おずおずと近付いて、ぎこちなく両手が背中に回された。
    もう少し近付くと、肉付きの良い身体が押し付けられて心臓が跳ねる。そんな内心を気取らせないように俺も腕を回すと、長い髪が触れてくすぐったい。最近ビジュアルレッスンの一環でヘアケアをしてるからか、手触りが良い。いい匂いがする。
    いや、何を考えてるんだ俺は。かぶりを振る代わりに、彼女の背をポンポンと叩いて誤魔化した。

    「……何か言ってください」
    「今日も、よく頑張りました」
    「うん」
    「明日も頑張りましょうね」
    「……もっと」

    子供っぽい要求に笑ってしまいそうになる。この捻くれた素直さが彼女の魅力の一つなんだろう。

  • 10二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 10:22:40

    「ボイストレーナーさんが言ってましたよ、ライブ前より良くなってるって」
    「……当然です」
    「まだ少し先ですが、次のライブも成功させましょうね」
    「うん……はい。絶対、成功させます」

    最後にもう一度ギュッと強く抱き締めると、満足したのか手を離してくれた。こう言ってはなんだが、こんな事で彼女のモチベーションを保てるなら安いものだ。……色々なリスクに目を瞑れば、だけど。

    「……はい、終わりですよ」
    「ん……」

    なんだか返事がおかしい彼女を見ると。

    「……何やってるんですか」

    目を閉じ、顔を少し上に傾け、心做しか唇を突き出している。馬鹿でも分かる。キス待ち顔だ。
    今日一番の溜息が零れた。

    「帰りますよ」
    「えっ、あっ……ちょっと!」
    「戸締りお願いしますね」
    「待って下さい! なんで勝手に帰るんですか!!」
    「帰るって最初に言ったじゃないですか。ではまた明日」

    さっきまでのしおらしさは何処へやら、ギャーギャーと騒ぐ彼女を置いて俺は足早にプロデューサー室を出た。
    フットインザドア……こんな言葉をよもや担当アイドルに対して使うことになるとは。やっぱりやめとくべきだったかな。そう思いながら、俺は目を瞑った彼女の端正な顔を思考の隅に追いやるのだった。
    ああもう、本当に心臓に悪い。

  • 11二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 10:24:16

    終わり

    気が向いたら続き書きます
    スレタイはSS投げたいだけの口実

  • 12二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 10:26:23

    供給ありがてえ
    最近はセルフサービスですぐにお出ししてくれる方も多くて嬉しいよ

  • 13二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 10:26:57

    まったく…続きはないの?

  • 14二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 10:27:52

    なんだよセルフサービスかと思ったら店側じゃねえか
    もう1杯頼むよ

  • 15二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 11:01:59

    >>5

    「ええ、分かりませんよ。ちゃんと言葉にしてください。得意でしょう?」


    ここ、とても眼鏡なセリフで良い

  • 16二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 20:42:48

    贅沢言わないから続きが欲しい

  • 17二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 21:27:11

    >>16

    仕込み中です

  • 18二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 21:44:39

    続きです

  • 19二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 21:45:04

    カチャリ。
    プロデューサー室の鍵をかける。これがいつしか二人の合図になっていた。

    「プロデューサー、レッスン終わりました」
    「はい、お疲れ様です」

    部屋に帰ってくるなりそう言った彼女は、ソファーに座る俺の元にいそいそと寄ってくる。褒められるのを待つ子犬のような仕草からして、今日のレッスンは調子が良かったのだろう。仕事があって様子を見れなかったのが残念だ。

    「プロデューサーは何してたんですか?」
    「資料を作っていました。今度出演する番組の打ち合わせ前に用意しておきたかったので」
    「ふーん、そう。歌番組?」
    「少しバラエティ寄りですね。この前のライブを見て声をかけてくれたようです」

    画面から目を離さずに応えていると、そわそわした気配が漂ってきた。観念した俺は保存ボタンを押してパソコンを閉じ、立ち上がって両手を広げる。

  • 20二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 21:45:29

    「いいですよ」
    「ん……」

    短い返事と同時に、未だにぎこちない動作で抱きつかれる。平均よりやや低めな彼女の体温は、ダンスレッスンの後だからか少し火照っていた。

    「今日もお疲れ様でした。頑張りましたね」
    「ダンス、新しい振り付け覚えました」
    「今度見せてください」
    「うん」

    いつも通りポンポンを背をさすり、髪をひと撫で。少し汗の匂いがした。

    「……っ、嗅がないでください!」
    「嗅いでません」
    「だって今、汗……!」
    「臭くないですよ」
    「そう言うってことは嗅いでるじゃないですか!」

    腕の中でジタバタしだしたので、ちょっと強めに抱き締めると大人しくなった。ああ、なんか癒されるな。実家で昔飼ってた犬を思い出す。
    …………俺が、癒されてる?

    「はい、終わりです。明日はお休みですよね?」
    「ちょっと、なんか短くないですか今日?」
    「気のせいです」

    妙な気配を感じてパッと離した。危ない。疲れが溜まっているんだろう。そろそろ切り上げようかな。

  • 21二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 21:45:53

    不満面から顔を背けて再びパソコンを開くと、彼女はまだその場から動かずにいた。

    「明日はゆっくり休んでくださいね」
    「プロデューサーは、帰らないの?」
    「もう少し仕事をしてからにします。ミーティングはしないので月村さんは帰っていいですよ」

    テーブルに広げた紙の資料と画面を照らし合わせて細かいチェックを始めると、彼女は反対側に回り込んでソファーの隣に座った。何か問題がありますか、とでも言いたげな顔だ。

    「……帰らないんですか?」
    「終わるまで待っててあげます」
    「頼んでません」

    そう言っても立ち上がることなく、所在無さげにスマホを見たり、机の上の資料をペラペラ捲ったり、画面を覗き込んだりしている。正直鬱陶しい。

  • 22二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 21:46:19

    「気が散るんですが」
    「別に邪魔はしてませんけど」
    「いや……」

    邪魔です、と言いかけて口を噤む。確かに明確な邪魔はしてない。そして、何もしていないと自覚する彼女に邪魔と言ったら余計に拗ねそうだ。
    ……仕方ないな。

    「大人しくしてて下さいよ、っと」
    「わっ!」

    身を乗り出してパソコンを覗き込んでいた――本人は邪魔してないつもりらしい――彼女の頭を抑え、腿の上に乗せる。不本意ながら膝枕だ。

    「ちょっと!」
    「はいはい、邪魔じゃないですから」

    ようやく完璧に確保できた視界に画面と資料だけを収め、作業を再開する。うん、やっぱり犬だ。今は亡き実家の老犬は、テレビを点ける度に「俺を構え」と画面の前に居座っては母に抱き寄せられていた。同じだな。
    なんだかぶつぶつ言っているが、無視して仕事を進めることにする。

  • 23二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 21:46:42

    「終わりましたよ、月村さん――って」

    三十分ほどして、誤字脱字の確認まで済んだ頃。いつの間にか膝の上で大人しくなっていた彼女に目を向けると、静かな寝息を立てていた。本当に人の膝を枕にしてしまったようだ。

    「おーい、月村さん。起きてください。帰りますよ」
    「んんぅ」
    「月村さん……はぁ」

    画面上の資料の一つ、前回のライブの凛々しいベストショットと、だらしない寝顔を見比べる。なんなんだこれは。

    「……もうちょっと仕事するか」

    そう思い直して、急ぎではないタスクに手を付けようとした時。
    コンコン、と軽いノックの音。

    「プロデューサー君、ちょっといいですか?」
    「亜紗里先生?」

  • 24二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 21:47:04

    何の用だか知らないが、良い話から悪い話まで心当たりはいくらでもある。そして……この場を見られたら、その悪い方が更に一つ足されてしまう!

    「ちょ、ちょっと待って下さい! 月村さん、起きてください……!」
    「んん……なんですかぁ、プロデューサー……」

    小声で起こしながら頭を揺すると、目を閉じたまま不機嫌そうに返事が。そんな事を言ってる場合じゃないので、無理やり頭を持ち上げて脱出し、急いでドアを開け……る前に、パソコンと資料をデスクの上に移す。証拠隠滅だ。

    「プロデューサー君?」
    「は、はい、ただ今!」

    一息整えてから鍵を開けると、不審な顔付きの亜紗里先生。手に持っているのはうちわやペンライトが入った紙袋だ。

    「これ、今度の学園のイベントで配るグッズのサンプルです。確認お願いします。変更の要望があれば月曜までにメールくださいね」
    「ありがとうございます」
    「……鍵、掛けてました?」

  • 25二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 21:47:27

    紙袋を受け取って踵を返そうとしたが、怪しむ質問にピタリと止まる。落ち着け。あくまで月村さんが居ない体で。ソファーの背に隠れて見えないはずだ。

    「ええ。番組制作に関わる資料を扱っていたので。万が一ということもありますから」
    「…………月村さんもいますよね?」

    バレてた。だがポーカーフェイスを貫く。プロデューサーの基本技術だ。それに、嘘は言っていない。

    「疲れて寝ているようです。お静かにお願いします」
    「変なこと、してませんよね?」
    「まさか」

    写真の件で前科のある俺は疑われているようだ。シラを切る以外に選択肢は無い。

    「それならいいですけど。仲が良いのは結構ですが、くれぐれも節度のある関係を保って下さいね」
    「ははは、分かってますよ。プロデューサーですから」
    「……そうですね。信じておきます」

    何とか躱せたらしい。

    「では、グッズの件お願いしますね」
    「はい。ありがとうございます」

    最後に事務的なやり取りをして、先生は去っていった。
    …………ああ、何とかなった。

  • 26二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 21:47:49

    亜紗里先生の足音が遠くなってから、意味も無く慎重に鍵をかける。

    「月村さん、起きましたか?」

    返事は無い。俺の胃壁が削れるようなやり取りの最中にも、彼女はすやすやと眠っていたようだ。

    「はぁ……」

    トラブルメーカーなのは今に始まったことじゃない。今日は俺も迂闊だった。プロデューサーたる者、これくらい想定すべきだ。

    「……まったく、本当に退屈しませんね」

    自分に言い聞かせるようにそう言って、デスクのパソコンを開く。
    静かな寝息をBGMに、俺は気の乗らない仕事に取り掛かるのだった。

  • 27二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 21:48:56

    終わり
    時期とかそういうのは適当です。なんとなく冬かも

    気が向いたら続き書きます

  • 28二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 21:50:55

    手毬というよりPの話になってる気がしますが、趣味なので悪しからず
    色々言いながらベタ惚れなのが良いんです

  • 29二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 21:56:17

    最高だよ>>1

  • 30二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 21:57:52

    終わるまで待っててあげます

    手毬はこういうこと言う

  • 31二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 22:01:13

    ダイススレみたいなハチャメチャは無いけど、こういうしっとりしたイチャイチャが沁みるぜ…

  • 32二次元好きの匿名さん25/01/27(月) 22:47:38

    これ待ってたらまた続きあんの?居座るよ?

  • 33二次元好きの匿名さん25/01/28(火) 08:45:06

    たすかる

  • 34二次元好きの匿名さん25/01/28(火) 08:51:30

    すみませーん
    抱きしめてるとき「今日のライブも良かったよ手毬」って耳元で囁くようにおねだりしてくるまりちゃんも追加オーダーお願いしますー

  • 35二次元好きの匿名さん25/01/28(火) 09:42:46

    こういうのがいいんだよ
    本当にありがとうございます

  • 36二次元好きの匿名さん25/01/28(火) 18:42:06

    秦谷「この店の株を一万株買います」

  • 37二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 02:42:14

    >>32

    仕込み中です

  • 38二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 02:49:33

    今日はいい夢が見られそうだ

  • 39二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 08:20:25

    よろしくお願いします。

  • 40二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 13:37:59

    続きが楽しみ

  • 41二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 20:22:36

    保守

  • 42二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 23:06:45

    保守

  • 43二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 23:09:20

    pixivで書きなよ

  • 44二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 23:12:57

    続きです。保守ありがとうございます

  • 45二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 23:13:17

    最近、プロデューサーが冷たい。

    ここの所レッスンもあんまり見に来てくれないし、出張とかで三日くらい居ない時もあった。昨日も午後から急にどっか行っちゃったし。
    そりゃ、ミーティングはほぼ毎日やってるし、レッスン終わったらプロデューサー室で待っててくれてるし……その、ハグも、してくれるけど。

    「ハァ〜、何の話かと思ったらそんな事かよ。心配して損したじゃん」
    「良いじゃない、ことね。手毬は最近プロデューサーに構って貰えなくて寂しいからわたし達に相談したんでしょ? 友達冥利に尽きるわ!」
    「ち、違っ!」
    「ハイハイ、寂しい手毬ちゃんのためなら昼飯くらい付き合ってあげますよっと」
    「だから違うって!」

    昼時の学生食堂。クラスメイトの咲季とことねを呼び出して相談をしたら、二人はこの言い様だ。人が悩んでるのに失礼なやつ。
    ……もちろん、ハグのことは言ってないけど。

    「まあでも、最近プロデューサーの人達みんなバタバタしてるらしいじゃん? 星南先輩もなんか忙しそうだし」
    「そうなの! そのせいで生徒会の仕事が大変って言って、佑芽とあんまり一緒にいれないのよ〜!」
    「いやお前らいつも関係なく一緒だろ」

    二人の話からして、今はプロデューサー陣が皆忙しいみたいだ。学園主催のイベントが来月にあるから、その影響だと思う。

  • 46二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 23:13:45

    「んでサ、手毬はどうしたい訳?」
    「ど、どうって……」
    「プロデューサーとイチャイチャしたいんだろ?」
    「いっ!!?」

    思わずガタン、と立ち上がる。食堂の喧騒が一瞬静まり返って注目を浴びた気がするけど、大人しく座り直すとすぐに元に戻った。

    「そ、そんな訳ないでしょ。何言ってるか意味分からないんだけど」
    「あら、手毬ってプロデューサーとすごく仲良かったわよね?」
    「べ、別に? あくまでビジネスの関係だし。変なこと言わないでくれる?」
    「分かった分かった、そういうコトにしとくから」

    まったく、二人は何を言ってるんだか。プロデューサーはあくまでプロデューサーだ。私をトップアイドルにしてくれるって言うから一緒にいるだけ。そりゃ、ずっとついて来てくれるって言ってるけど……そう、ビジネスの関係。大好きってのも、プロデューサーとして。いつものやつも、全部プロデュースの一環だ。別にあの人のことなんて……

    「おーい手毬ー、ブツブツ言ってないで食べ終わったら行くぞー。ほら昼休み終わっちゃうじゃん」
    「う、うるさい!」
    「こーら、騒がないの手毬。ことね、お皿の残ってる野菜食べちゃってちょうだい。勿体ないわよ」
    「いやこれ手毬のじゃん。あたしは母親じゃねーっつーの。咲季が食べなよ」
    「カロリー計算がズレるから嫌よ」
    「ああもう、分かったって……」

    お盆を持って立ち上がった二人に続いて私も片付ける。いつの間にか皿の人参が無くなっていた。
    そして、ふと思いついたように振り返った咲季がこんな事を言う。

    「いい、手毬? これはわたしの経験だけど。片方が寂しい時ってのは、絶対もう一人も寂しがってるものよ。仲が良いなら尚更ね」

    だから佑芽も今頃、お姉ちゃんに会いたいって思ってるに違いないわ! と笑いながら教室へと歩いていくのだった。

  • 47二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 23:14:16

    「プロデューサー! 最近私と一緒に居れなくて寂しいんじゃないですか?」
    「はあ?」

    一泊の出張から帰ってきた俺を出迎えた彼女は、開口一番にそんな事を言い出した。急遽決まった地方のイベント会場での打ち合わせで疲弊してる所に、余計な負荷をかけないで欲しい。
    ……ああ、そういうことか。

    「すみません、今週のレッスンは見れなくて。寂しかったんですね」
    「はあ!? 別にプロデューサーがいなくても何とも思いませんけど!」
    「そうですか、それは失礼」
    「なに笑ってるんですか!」

    分かりやすい強がりに思わず口元が綻ぶ。こういう事を言う時の彼女はだいたい図星だ。

    「では居なくても構わないプロデューサーは帰りますよ。荷物を置きに来ただけなので」
    「えっ」
    「明日の午後のレッスンには顔を出せるので。それじゃあまた明日」
    「ま、待って!」

    部屋から出ようドアに手を掛けると、焦った声と共に腕を掴まれた。ちょっと痛い。

    「どうしましたか?」
    「……プロデューサーのそういうところ、嫌いです」

    意地悪しすぎたか。
    そう思い直し、ドアを開ける代わりに鍵を閉める。その音だけで、彼女の表情が少し和らいだ。

  • 48二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 23:14:48

    「ほら、どうぞ」
    「……」

    腕を開くと、倒れ込むような勢いで飛び込んでくる。背中がドアに当たって、バタンと音を立てた。

    「寂しくさせましたね」
    「別に……」
    「こういう時くらい素直になってください」

    この期に及んで意地を張る彼女を、少し強めに抱き締める。丸一日離れていただけで、なんだかとても久しぶりに感じる。

    「じゃあ、プロデューサーも寂しかったんですよね」
    「……いいえ、全く?」
    「絶対嘘です」
    「さあどうでしょうね」

    正直自分でもよく分からないので、適当にはぐらかした。寂しいかと言われたら、少し違う気がする。物足りなさ……というんだろうか。隣にいるとトラブルが絶えないから、そう感じてしまうだけだろう。
    しばらく無言で抱き合って、そろそろ良いかなと手を離した。だが、なんだか不満げだ。

    「プロデューサー、やっぱり嘘つきましたね」
    「何を?」
    「咲季が言ってました。片方が寂しい時はもう片方も絶対寂しいんだって」

    妙に自信ありげだが、ドヤ顔で情けないことを言ってるのには気付いているのだろうか。

  • 49二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 23:15:13

    「……なら、そういうことにしときましょうか」
    「ふーん、じゃあ嘘ついてたってことですね」
    「変なところに拘りますね……もうそれでいいですよ。はい、俺も寂しかったです」

    仕方なく認めると、今度は急にそわそわし始めた。ああ、何かさせる気だ。その手には乗らないぞ。

    「そ、そんなに寂しかったなら……その……」
    「しませんよ」
    「まだ何も言ってないじゃないですか!」
    「もう一回ギュッてしてあげますから。ほらおいで」
    「そうじゃなくて……!」

    と言いつつも再び腕の中に収まる。でも、何だか落ち着かない様子でモゾモゾしている。髪が当たってくすぐったいのには慣れたつもりだったけど、流石にこそばゆい。

    「なんですか、まだ足りませんか?」
    「違います! ああもう……プロデューサー、頭下げて!」
    「まったく、何を――」

    それくらいなら、と素直に屈んだ時、

  • 50二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 23:15:35

    「――っ」

    頬に、柔らかな感触。
    それがただの皮膚よりも少し湿っていたことに気付いたのは、温かさが離れてから。

    「……月村、さん?」
    「ぷ、プロデューサーがそんなに寂しかったって言うからです!」
    「いや俺は」
    「さよなら!!」

    荷物を引っ掴んでドアを勢いよく開け、風のように去っていった。
    ……普段から走り込みを欠かしていないだけあるな。

    「――じゃなくて!」

    今、何をされた? いや、分かってはいる。そうじゃなくて。油断してた。俺に何かさせるんじゃないかと思っていたら……

    「って、違う違う、そういう問題じゃない!」

    キスをされた。頬に、だが。アイドルから。未来のトップアイドルから。細心の注意を払っても尚斜め上の方向から問題を起こす、愛すべきトラブルメーカーから。
    月村手毬から。

    「はぁ……」

    スキャンダルだとか、呼び出しだとか、誰かに話さないかとか。色々な思考が一気に巡る、更にその上を駆け回る感情。

    「……顔、あっつ」

    鮮明な感触が残る頬は、自分のものでは無いかのように火照っていた。

  • 51二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 23:16:00

    やっちゃった、やっちゃった、やっちゃった……!

    廊下を走りながら、私は今しがたの行動を思い返していた。
    いや、そんなに冷静じゃない。ただ、あの感触を思い出していただけだ。

    「〜〜〜っ!!」

    いやいや、別にあれくらい海外じゃ普通だし。恥ずかしいとかじゃないし! そう、燐羽も咲季にやったらしいし! だったら私も全然、全然恥ずかしくないから!

    「美鈴!!」

    がむしゃらに走って寮に戻ってきた私は、ルームメイトの名を呼ぶ。

    「そんなに慌ててどうしたんですか、まりちゃん?」
    「そのっ、プロデューサーが……!」

    と、そこまで言ってから。私はプロデューサーとの約束を思い出した。

    「喧嘩、ですか?」
    「いや、違うの……そうじゃなくて……」
    「……あら」

    その一言で、美鈴が「察した」のが分かった。多分、話せないことも。

  • 52二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 23:16:22

    「まりちゃん」
    「なに?」
    「まりちゃんは、プロデューサーさんのことが大好きなんですね」
    「はぁっ!?」

    美鈴までことねみたいな事言ってる!

    「ふわぁ……疲れたのでわたしは寝ます。もう夜ですから、あんまりうるさくしちゃダメですよ」
    「ちょっ、美鈴! 夜ご飯まだだよね!?」
    「おやすみなさい……後で食べます……」

    それだけ言って布団に潜ってしまった美鈴。優しい彼女も、こうなったら何も聞いてくれない。
    一人だけ取り残された気分だ。

    「うう……りんはぁ……」

    誰にも相談できないとは分かっていても、ついその名前を呼んでしまうのだった。

  • 53二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 23:18:32

    終わり

    だいたいN.I.Aまでの手毬コミュ軸です。生徒会組3人とことねは会長のプロデュース受けてます

    他のキャラ書きたかったので手毬視点入れてみました

    気が向いたらまた続き書きます

  • 54二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 23:22:55


    信号機エミュ上手くて笑った

  • 55二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 02:26:08

    こう考えると本編で本当に咲季にちゅっ♡してる燐羽が特異点だな
    全ての可能性を生み出してしまった

  • 56二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 08:21:32

    保守

オススメ

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