- 1二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 15:26:53
仲冬の寒さもわずかに緩み始めた睦月の終わり、色の淡い一枚のシクラメンの花びらがゆったりと風と戯れつつ街の上空を踊っていた。冬の風ではあるが、寒風という字面はどうも合わない。緩やかな余韻すら感じさせるように、その花びらはひらひらと高度を下げ、とある学校の中庭に降り立つ。
「あら、これは・・・シクラメンの花びら?」ベンチに腰掛けていた読書に耽っていた雄英高校2年生・八百万モモは自らのつま先を可愛らしく飾り付けた一片の花びらに、幼児に向けるような優し気な微笑みを見せた。
気品を感じさせる動作でふわりと花びらをつまみ、読んでいた本のしおり代わりに挟みこむ。頃合いを見て中庭を去る八百万の心持ちはどこか和やかであった。 - 2二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 15:27:43
同時刻、雄英高校2年生・轟焦斗は級友との歓談に興じていた。
「轟も分かるようになってきたな!」
同級生である峰田は友と喜びを分かち合える僥倖ににっこりと相好を崩している。
「心ってのは話さねえと分からねえだろ…?思ったんだ。生きてるうちにもっともっと色んな人と色んな話をしようって…。」
「俺はカウンセリング対象かよ~、はははは」
サイドテーブルには上等な玉露の緑茶といくつかのチョコレート菓子、そして蜜のかかったわらび餅が置かれている。
「でもよ、峰田。俺たちは17歳だ。18歳未満はこういうサイトにアクセスするのはダメなんじゃねえか?」
轟はごく真面目にヒーローたらんとしている。その誠実さこそが、彼の容姿以上に人々を惹きつけてやまないのである。 - 3二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 15:28:28
「まあ聞けよ。」
轟の反論など峰田にとっては最初から想定済みだったのだろう。落ち込むことも荒げることもなく、父が子に諭すような懐の深さを感じさせる語り口で峰田は言う。
「18歳ってのは何のことだと思う?」
「そりゃあ・・・大人のことだろ」
「そうだ。大人なんだ。それじゃあ聞くけどよ。“大人”ってのは歳だけ取ればなれるもんなのか?」
「っ!」
「気づいたみたいだな。そうだ、轟。“大人”ってのは“心”なんだ。心の在り方が大人を決めるんだ、轟。んで、“大人”の役割ってのなんだと思う?」
「役割・・・社会を・・・子供たちを・・・守ること・・・だろ・・・」轟は己の胸を強く打つ何かを感じている。血が、臓腑が沸き立つのを強く感じている。
「“守る”か、轟らしいな。そうだよ、守るやつが大人なんだ。守ったやつが大人になるんだ。守った経験が大人にしてくれるんだよ、轟。」峰田の口調はどこか演説がかっていて、普段の彼の言い回しとは違った印象を感じさせる。 - 4二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 15:29:09
「峰田・・・」
「轟、お前も守っただろ?俺も守った。俺たち、一生懸命守ったよな?」
「・・・・ああ、守った」
「なら、俺たちもう」
「ああ、悪かった、峰田。俺たちはもう大人だ。18歳以上の大人だ。」
もちろん、そんなはずはない。17歳は17歳であり18歳ではない。
このときの口八丁を峰田はこの後、友人の奇癖に大きく後悔することになるが、この時点では彼の胸に去来していたのは作戦成功と自らの手腕への賞賛であった。
彼らが歓談に興じていたのはそれぞれの自室ではなく、寮の共用スペースであった。そこに自前のPCを持ち込んでこのような話をしていたのは、この女子陣があらかた連れ立って街の方へ出かけて行ったため、寮内には女子がいないと思われていたからである。
一月の寒空の下、復興も大部分が終わった街を散策するのは、彼女たちの胸にどんな思いをもたらすのだろうか。峰田は何も語らない。 - 5二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 15:30:08
羞恥心やスリルというものは、人に不思議な快感をもたらしてくれる。古今東西、春になると共に様々な変態達が現れるのは、そういった人のさがと無関係ではないのだろう。峰田は女子がいないという絶好の日和をもって轟と心の底から通じ合おうという算段を立てたのだった。
それもまた、友と共に腹の底から笑い合いたいという彼のヒーロー性によるものなのかもしれない。
しかし、峰田少年最大の誤算は、女子全員が町に行ったのではなく、急な事情により、八百万が外出しておらずちょうど寮内に居たということ。そして、もう一つの誤算、いや、誤算というよりはミスというべきか、峰田は女子がいないという慢心から刺激の強いホームページを開いたままの状態で、自室に菓子や飲料を取りに轟と共に一時離席してしまったのである。
「あら、なんでしょう・・・」
結果として、八百万は誰もいない共用スペースに置かれたPCの画面を視界に入れることになる。
「これは・・・・蕎麦打ち・・・?」 - 6二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 15:30:26
いや草
- 7二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 15:31:21
あまりに脈絡のない状況がそこには展開されていた。
一心不乱に蕎麦を打つ職人とおぼしき男性。恐らくはその道の玄人なのだろう、その手の動きは洗練され一種の機能美を宿すことに成功していた。
速く走ることを追求したサラブレットや、切るという一念を突き詰めた日本刀などと同種の魅力を、その蕎麦打ちの男は備えているのは明らかだった。しかし、八百万を困惑させたのはその男の熟練の動きではない。男の傍らに緊縛された露出度の高い女性が放置されているという事実であった。
カメラアングルなどから、これが映像作品であることは間違いない。八百万の背には一筋の汗が奔り始めた。一年生の頃よりは多少世間の見識を広めた彼女である。人の性癖には様々な世界があることを理解していたつもりであった。
が、しかし、彼女の脳が眼前のビデオの内容を理解することを早々に諦めているかのように、八百万の中ではこの「蕎麦打ち」というものと性の世界がリンクしない。 - 8二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 15:31:41
とはいえ、彼女にも分かることが一つだけあった。それは・・・、
「なんて・・・美しい・・・」
恐らく主演であろう男の蕎麦打ちの技は、確かに美しいものであるということ。洗練された技術は人を感嘆させ、いずれは美へと至る。その蕎麦打ちは確かにドラスティックであり、エロティシズムを内包していた。 - 9二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 15:32:22
ドキドキという心臓の高鳴り。八百万、17歳。はじめての感覚であった。
自らの高鳴る鼓動を聞きながら、口元を押さえてぼんやりと窓の外を見る八百万。そんな折、和やかな話し声と共に峰田と轟が共用スペースにやってきた。分かりやすく狼狽してみせる峰田。事態を呑み込めない轟。頬を染める八百万。
反応は三者三様であったが、そこはやはりあの戦いを生き抜いた猛者たち。状況を収拾するための会話のひとつやふたつは当然の嗜みである。
結局のところ、三人の会話は当たり障りのないところで切り上げられ、男女それぞれの自室へと戻っていくことになったが、八百万は会話の端々からひとつの可能性へと到達していた。
(轟さん・・・まさか「蕎麦打ち」に性的な魅力を・・・?いえ、無理もありませんわ・・・殿方ですもの、あれほどのアトラクティブ・・・ああ、なんてこと・・・) - 10二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 15:33:11
それから1時間ほど経っての昼休み、とはいっても休日であるため彼らの自由時間に区切りはない。寮内をところなく歩いていた轟は同じく暇を持て余していた八百万を見かけた。
普段ならば空いた時間は勉学にあてている彼女にとって、あてもなくただ歩くというのは存外新鮮な心持ちである。
そこで、はたと落ち合った二人。轟の口から出てきたのは、昼食の誘いであった。
「八百万、これから飯食いに行かねえか?」
「え、ええ。昼食ですわね。喜んでご一緒いたしますわ。どちらまで?」 - 11二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 15:33:41
轟の性癖を把握してしまったと誤解している八百万としては、顔を合わすだけでもどこか頬が熱くなるような気がしていたが、一番の衝撃はこの後の轟のひと言である。
「蕎麦食いに行こうぜ」
「・・・・そ、そば!!!???//////」
「蕎麦打ちからやってるところがあんだ」
「そ、蕎麦打ちから!?ヤってる・・・!!?//////」
(轟さん!?まだ明るいうちから一体何を…そうですか、葉隠さんも芦戸さんも確か殿方はオオカミだと…益荒男なのだとのことでしたが、これほどとは…変化は急に訪れるのですね…)
一年生の頃ならこうはならないだろう。しかし、二年生に上がり八百万は知識を増やした。その膨大な知の泉の中には同級生たちから与えられた少々下世話な情報も含まれている。 - 12二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 15:34:13
結果として、八百万の脳は轟のランチへのお誘いを性的なアプローチと同義語として捉え、彼女の精神を大きく揺るがしていた。
だがしかし、忘れてはならない。彼ら、彼女らはあの大戦争を生き抜いた戦士たちのだということを。
一瞬の逡巡、ひとかけらの動揺、わずかな熟考と確かな覚悟・・・。半刻ほどののち、轟・八百万両名は学校近くの蕎麦屋の暖簾をくぐっていた。 - 13二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 16:16:43
博識なヤオモモなら蕎麦屋の二階が何を意味するかわかるはず…
- 14二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 16:38:18
「・・・」
「・・・」
てんぷらの衣は小気味よい音をたててまるで意思があるかのように楽し気に二人の口の中に消えていく。別段気まずいわけではないのだが、二人の間には何となく会話がなく、不思議とけだるげな雰囲気すら漂っていた。
「なあ、八百万」
「っ!?ひゃ、はいっ」
少々緊張しているのか、八百万の応答は上ずっている。丸一年もの間、芦戸や葉隠たちによる女子教育の成果によって、思春期少女・八百万へと進化した今、これまでは意識の端にすら上らなかった男子との一対一での食事という事態は、八百万の脳を揺るがしてやまない。 - 15二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 16:39:04
「汁付けすぎると香りが飛ぶっていうけどよ、俺、結構濡らすの嫌いじゃないんだよな」
「ぬ、濡らっ!?」
「そりゃビシャビシャは論外だけど」
「ビ、ビシャビシャ!?」
「旨く食えりゃそれが一番だと思う」
「美味しく頂く(意味深)!?」
完全に空回りしている八百万だが、それに気づくほど轟は女性の機微に敏い方ではない。結果として、店を出る頃にはすっかり茹でだこのようになり、事後のごとく気だるい足を引きずって寮へと帰っていくのだった。先に帰寮していた数名の女子たちに轟と一緒に外出から帰ってきたところを目撃され、当然質問の雨嵐。 - 16二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 16:39:56
トンチキテーマに対してこの文章力よ
- 17二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 17:08:42
焦凍ォォォォォォ!!!!
- 18二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 17:50:52
顔を赤らめて八百万は言う。
「轟さんは、とても・・・大胆で・・・(蕎麦を食べるのが)お上手でしたわ・・・///」
女子陣の燃え上がりは天を衝くばかり。
無理に手を出したとあれば全霊を以ての鉄拳制裁が待っているはずだが、当の本人がこれほどまでに幸せな表情で語っているのだから、これに茶々を入れるのは野暮というもの。
次はどちらから誘うのか、どんなところに行くのか、もはや女子陣の中ではすでに二人は恋人同士として成立し、その青い甘さのおこぼれを啜るのもやぶさかではない、というのが大方の感想であった。 - 19二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 18:03:07
これがお嬢様の力…
- 20二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 19:48:02
確か本家のそば打ちAVは寝取られもの?不倫もの?じゃなかったっけ
- 21二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 22:05:35
- 22二次元好きの匿名さん25/01/29(水) 22:19:37
- 23二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 00:04:11
いや…何…?この…???
謎のシチュエーションかつテーマにして文章力が高いのはなんなんだよ
続きください - 24二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 06:34:40
続きはよ
- 25二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 09:06:46
一方の男子勢、当然ながら八百万と帰寮してきた轟の姿は数名の同級生男子たちに目撃され、質問を受けることになったが、女子ほどの熱量はなく、もっぱら「どこに食事に行ったのか」「飯の値段は」「旨かったか」などなど。概して色気のない質問ばかり。
その一つ一つに丁寧に答えていく轟の心中は極めて穏やかで、友人との歓談に興じるのはなんとも言えない多幸感をもたらしてくれていた。
後日、A組の中では、いや正しくは女子勢の中では「蕎麦」というものが恋愛的なアプローチの意味とリンクした言葉として機能するようになっていた。いわゆる隠語の誕生である。また、発信源の八百万にとってはもはや性的な意味すら併せ持っている非常にタッチ―でセンシティブな言葉となっていることは筆目に値する。
睦月も終えようという1月暮れのとある週末。真冬にしてはいやに暖かいその日、八百万は両親が学友を連れてきて食事会でもしないかと提案を受けているところであった。もちろん電話口での話だが、久方ぶりの両親との会話は彼女にほのかな安堵感を与える。いくらヒーローといえど、彼女もまた人の子なのである。
八百万の口から両親へと告げられたのは、一人の男子生徒の名前。両親としては女子勢や男女複数人、または同級生全員などを想定していたのだが、娘の口から出てきたのは一人の異性の名前。されども、それを口に出して茶化すような愚を踏む彼らではない。
若干の生暖かさは詮無いこととして、両親は愛娘がうまく招待できるよう背中を押すのみであった。 - 26二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 09:41:13
その日、轟は先日の八百万と同様に、中庭のベンチに腰掛けぼんやりと雲を眺めていた。傍らにはタオルとスポーツドリンク、彼自身の顔が紅潮し息が上がっているのを見る限り、トレーニングに励んだ後か休憩をとっている最中といったところだろう。時刻としてはそろそろ昼食時。いつもならば緑谷や飯田が鍛錬に付き添っているところだが、飯田は何やら用事があるとのこと、緑谷は麗日に腕を引かれて校外に出ているのを見ていたため、この日は独りでの鍛錬である。
空は澄み渡ってどこまでも青く、点々と浮かぶ白い雲は実にあでやかなコントラストを描いている。一幅の絵画のように美しい風景を見つめながら、フーッと長い息をつく轟。激しい鍛錬の直後のためか、それでも息が整うにはまだ早い。
そんな彼の背後、正しくはベンチの背後から近づく影があった。
八百万である。 - 27二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 09:41:54
遠くから声をかけようと思っていたが、なんとなく近づいてきたしまった彼女の目には紅潮し息を荒らげている轟の姿が。
(!!!????と、轟さん!?真昼の中庭で一体なにを!?)
「・・・(何喰おうかな・・・)そばにするか・・・・」
(そ、そば!!??)
「ん?ああ、八百万、ちょうどいい。蕎麦食いに行こうぜ」
(ちょうどいい!?わたくしが!?そばに!?)
八百万にはもはや轟が猥談をしているようにしか見えない。
元々、世間知らずなところのあるお嬢様であったが、芦戸の教育が災いし彼女はいま思春期が暴走している。これもまた一つの個性なのかもしれない。 - 28二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 15:14:17
1から10までを言葉にしないからこんなことになるんだよ
- 29二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 15:46:24
思春期ヤオモモかわいい
- 30二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 18:41:39
思春期未満お断りって感じのヤオモモだ
かわいい - 31二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 19:58:02
今回のショート君は1から10まで蕎麦食べに行こうしか意図してないんだよ!
- 32二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 21:07:09
(ああ・・・こんな・・・衆人環視の中で・・・)
蕎麦屋に着いた両名だが、八百万は明らかにそわそわと落ち着かない様子。自覚していないとはいえ、憎からず想っている異性との逢瀬を余人に目撃されるというのは、多感な彼女にとっては耐え難い羞恥である。しかし、そんな羞恥の中にも八百万の精神はピンと一本の筋を通していた。いざとなれば、この場にいる全員が彼女にとっての守るべき対象となる、そんな気概が感じられる眼差しであった。
そんな彼女の姿を見て柔らかく微笑む轟。
彼にとって八百万は混じりけの無い敬意の対象であり、昼食という気の抜け時にすら眼光鋭く気を研ぎ澄ます級友の姿は、まさしく襟を正すに相応しい。しかし轟の微笑みを横目で視界に入れた八百万はといえば・・・。
(轟さん!?いま、わた、わたくしを見て、不敵に・・・!?一体なにを・・・ああ、なんてこと・・・)
確かなエロティシズムを感じ取った八百万だが、今回の蕎麦屋訪問は以前とは違う。
今回は、自ら攻めの姿勢を取ると決めている。それはつまり、自らの食事姿勢を以て轟の官能を刺激し、蕎麦に性的興奮を感じる彼の異常性癖を矯正しようというのである。
八百万は気づいていない。
それが、”わたしの魅力で悩殺してやる”と同じものであるということに。 - 33二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 21:19:54
これ誰かが問い質して誤解の発端が峰田のAV布教にあって内容が蕎麦打ちだったってのまで発覚しないと解決しない奴では?峰田は処される
- 34二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 22:26:50
純粋に草生えるわこんなん
- 35二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 22:32:28
羨ましい文章力だ
普段読んだら本とか教えてくれ - 36二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 22:35:25
(芦戸さん、葉隠さん・・・貴女たちの教え、今ここで活かさせていただきます!)
今回はかけそばを注文した八百万。轟の方は相変わらずざるそばである。店内には蕎麦のふくよかな香りが上品に漂い、店の客たちを蠱惑的に刺激している。
高級店ではないしろ、大衆店とも言い難いカジュアルな装いの雰囲気は、来店客の肩から強張りを解きほぐし、純粋に蕎麦の味をむき合うこと可能にしている。それほど数が多いわけではないが、轟はたびたびこの店を訪れ、ひそかに「行きつけ」というものを生み出そうとしていた。ちなみに緑谷も峰田もこの店には訪れているものの、一対一での来店は八百万が初めてである。
「それでは・・・いただきますわ・・・」
(耳に、髪を・・・こう・・・これでいいのかしら・・・こう・・・あれ・・・)
芦戸たちが八百万に授けた策。それは"髪を耳にかける仕草"であった。それそのものは魅力的な動作のひとつとして間違いないものではあるが、問題は、八百万モモ17歳が考える最大の色仕掛けがそれであり、”髪を耳にかける仕草”一本で勝負しようというところである。
無論、轟としては自身の髪の毛に苦戦している八百万という印象しかない。 - 37二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 22:42:52
「大丈夫か、八百万。ほら」
そっ・・・と。彼女の髪を耳にかけてやる轟。その表情には柔らかな微笑みが浮かび、その背には父性にも似た力強さが漲っている。
優しい手つき。ゆったりとした動き。必然的に近づく距離。かみ合わない思惑。微笑む隣の客。
八百万の渾身の色仕掛けは不発に終わり、あろうことか至近距離での反撃を許す大失態。
いつの時代も渾身の攻撃をすかされれば、次に待つのは手痛いカウンターである。
「ここ、八百万が初めてだな」
「は、初めて!?」
普段からあまり表情の豊かな方ではない彼が見せた気の抜けた笑顔。その追撃となる「初めて」のひとこと。もはやその後に続いた「二人で来るのは」の下の句など寸毫たりとも聞こえていない。
結果として、八百万は足元からふるふると震えているような衝撃を受けつつかけそばを啜ることになったが、その心を推しはかれるほど、轟は女心に詳しくない。 - 38二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 22:44:05
なんなんこの文章力(ありがとうございます)
- 39二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 23:08:03
スレタイと文体の教養が合っとらんぞ
- 40二次元好きの匿名さん25/01/30(木) 23:08:45
ヤオモモが想定する精一杯の色仕掛けがかわいいw
- 41二次元好きの匿名さん25/01/31(金) 00:07:09
- 42二次元好きの匿名さん25/01/31(金) 06:35:02
何でよりによって蕎麦打ちAVとかキワモノ見せたんだよ峰田の奴も
- 43二次元好きの匿名さん25/01/31(金) 06:37:07
ピュアセレブと蕎麦打ち○Vのマリアージュでこんなことになるんだ…
- 44二次元好きの匿名さん25/01/31(金) 10:35:04
芦戸と葉隠の色仕掛けレベルもヤオモモと同レベルなのかヤオモモだからこの程度にしておいたのか
- 45二次元好きの匿名さん25/01/31(金) 11:18:46
店を出る段となって、ひとつ事件が起きた。
いや、もちろん大事件などではないし、他人にとっては事件ですらないのだが、当の本人、八百万モモ17歳思春期にとってはここ数日分の勉学の内容が吹き飛ぶほどの大事件・・・。
「さてと・・・そばも食ったし、そろそろ出るか」
「そろそろ出る・・・そ、そうですわね、殿方ですもの・・・出るものもあるでしょう・・・」
微妙にかみ合わない会話を交わしつつ出口へと向かう二人。
実はこの店、衛生管理のために来店客の履物を入口付近の靴置きに置いて座敷に上がるよう取り決めを敷いていたため、必然的に二人が店を出るときにはそれぞれの靴を履き直すというフェーズが必要となる。
しゃがみこもうとする八百万と、少々無造作にスニーカーを履こうとする轟。ほんの少し、ほんの少しだけ、轟の腕が八百万の肩に当たってしまった。
肩の露出した服を着用していた八百万。店を出てから上着のコートを羽織ろうとしていたため、このときはまさに身体的接触に他ならない。バランスを崩す八百万、もちろんどたんと倒れるような形ではなく、少しだけ尻もちをつきそうになるが、彼女にはこれが”押し倒された”と認識される。
その上、轟は素早いで彼女の腰を抱きかかえ転倒を防ぐことに成功。
これもまた、八百万にとっては”押し倒されたうえで、強く抱きしめられた”ということになる。 - 46二次元好きの匿名さん25/01/31(金) 11:23:19
致命傷を重ねた八百万。10代の屈強な肉体であるため無事で済んだが、もし彼女が妙齢の女性であれば跳ね上がる心臓に自らの身を焼かれていたであろうことは必定。
荒い息、紅潮する頬・・・奇しくも、この朝に八百万が見かけた轟と同じ状態となった。
まさにグロッキーといった様子で帰寮する八百万。
迎えたのは芦戸と葉隠。
もちろん、今日の逢瀬の報告会である。
コーラとポップコーンが欲しいところだと思っていた二人だが、ここは主賓である八百万の嗜好に合わせて上品に紅茶とお茶菓子でティーパーティとしゃれこむ。
彼女らとて、うら若き少女。こういった小じゃれた空気感が嫌いなはずもない。 - 47二次元好きの匿名さん25/01/31(金) 11:33:40
「その・・・芦戸さん、葉隠さん・・・」
「なになに?どったの?」
「なんでも聞いてよー!」
八百万は言う。伝えられた秘伝の仕草を使ったと。聴衆は問う。結果はどうだったと。
八百万は返す。なんの効果もなかった上にカウンターまで食らったと。八百万は重ねる。そもそも自分はあの仕草がどのような効果をもたらすのかを把握していなかったと。
「芦戸さん、あの仕草を使用した経験があるのでしょう?どうでしたの?一体どんな効果が?」
これは手痛いカウンター。いやもちろん、八百万にそんな意図はないのだが、お茶会中に投げかけられたこの質問は、茶葉を港に捨てるがごとき衝撃を放つ。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いや・・・・・・・・その・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・切島・・・・そういうの・・・・・ほら・・・・ニブいし・・・・・」
「は、葉隠さんは・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そもそも私見えないし・・・・」
「は、葉隠さん!?この前、尾白さんは自分のことをまるで見えているように気遣ってくれるって・・・」
「・・・・・・・・服着てたら見えるけど・・・・」
「で、では、そのときは全裸で!?」
「・・・いや制服着てた・・・」
「ダメじゃありませんの!?」
「・・・・お、お二人とも・・・元気を出してくださいまし!たまたまそのときは視界に入っていなかっただけかも・・・」
八百万はようやく気付いた。そもそも自分と同じ年齢の少女が、そこまで隔絶した恋愛テクニックを習得しているはずがないということに。 - 48二次元好きの匿名さん25/01/31(金) 11:40:34
「あ、でも、デクくんはそわそわしてたよ!」
「上鳴もなんか赤くなってちらちらしてた」
背中から声をかけたのは麗日お茶子、耳郎響香の両名。傍らには蛙吹梅雨が何やら珍妙な菓子を持って微笑んでいる。
「クリケットクッキーよ」
「え、えと、今回は遠慮しておき・・・・・いえ、頂きましょう」
八百万はクリケットクッキーをざくりと齧り、アッサムの紅茶を口に含む。
新たなブレーンを交えて、作戦会議の続行である。目指すは轟の完全悩殺と異常性癖の矯正。彼女らの議論は八時間に及んだという。 - 49二次元好きの匿名さん25/01/31(金) 14:39:46
>新たなブレーンを交えて、作戦会議の続行である。目指すは轟の完全悩殺と異常性癖の矯正。彼女らの議論は八時間に及んだという。
更に駄目そうだな!
- 50二次元好きの匿名さん25/01/31(金) 16:12:55
轟の異常性癖が共有されてて駄目だった
- 51二次元好きの匿名さん25/01/31(金) 17:10:11
目の目に巨大な壁があればどうするか。
答えは単純、迂回して道を探すものである。むろん、ヒーローたるものそびえ立つ困難の壁を踏み砕いて希望の黎明を眺めようという気概が必要なのはその通り。そうはいっても万物に適用される不変の真理など存在しない。
A組女子生徒たち総出での作戦会議。積み上げられていく空きペットボトルと紙コップの山。もはや持ち寄った茶菓子も乾ききった頃、彼女らが出した結論は、まさに「壁を迂回する」発想のものであった。
「蕎麦に対して性的興奮を覚えるという轟さんの異常性癖・・・人の嗜好に対して”異常”という言葉はあまり使いたくはありませんが・・・」控えめに言う八百万。末尾の言葉を濁すのは彼女なりのせめてもの抵抗か。
「いや完全に異常だよ!変態だよ!」強く叫ぶのは芦戸三奈。葉隠透も同調している。
「極まった性癖・・・この部分では、もはや轟さんは手遅れ・・・ですわね」八百万の表情は暗くはない。いや、正確には確かに暗いのだが、ほの暗い眼差しの中にどこかほの甘いニュアンスが感じられる。
「個性:蕎麦打ち性癖の方はもうお手上げとして・・・」蛙吹がまとめつつ結論を促すように視線を送る。普段ならばその状況判断能力の高さから中隊指揮官としての才を発揮して、この場に常識的なひとことを差してくれる彼女だが、なにしろ時期が悪い。長く厳しい冬が両生類型の生態を持つ蛙吹の才気を鈍らせたかと思えば、春分を超えて、少しずつ春の気配が見え始めるこの時期、彼女は常識人としてのブレーキ役をこなすことに失敗していた。
白梅のつぼみがじわりと梢を伸ばし始めた頃、八百万らA組女子陣は轟悩殺作戦の転換を余儀なくされる。
あのとき、八百万が見ていた動画の内、蕎麦打ちの方はすでに道がない。となれば残るは・・・、
「”緊縛”と”放置”・・・ですわね・・・」みなの目を見て力強くうなずく八百万。
女子たちも同様に八百万を見て、力強く首肯し、明日への活力を漲らせるのだった。 - 52二次元好きの匿名さん25/01/31(金) 17:21:09
何 故 そ う な る
- 53二次元好きの匿名さん25/01/31(金) 17:21:59
>>いや完全に異常だよ!変態だよ!
容赦なさすぎて笑った
誤解なのに…
- 54二次元好きの匿名さん25/01/31(金) 17:24:45
とある晴れた週末の朝。轟は緑谷と共に鍛錬場にてトレーニングに励んでいた。個性を失ったとはいえ、複数個性を十全に駆使したその頭脳の並立処理能力と時間をかけて鍛え抜かれたその肉体の身体能力は、轟にとってはまさに教則本のような存在。緑谷出久は今も尚、轟焦斗の特別な友人なのである。
時刻はそろそろ食事時、先日のように外出して件の蕎麦屋に向かおうかという運びとなったが、そんな折、彼らの視界に入ってきたのはぐつぐつと煮えたぎる鍋とその中で踊る蕎麦のふくよかな香り・・・ではなく、その傍らで緊縛された八百万であった。
目のまえに拘束された人間がいれば事件の可能性を疑うのは、当然の反応。それがヒーローともなれば言わずもがな。しかし轟も、緑谷も、事件性を感じてはいなかった。
緊縛といっても、動きを封じ込めるための”拘束”、敵を殺傷するための”絞縛”、そして縄を装飾品に見立てて美を生み出すための”縄化粧”など、その種類はじつに多岐にわたる。今回、八百万が緊縛されていたのはまさに後者の縄化粧であった。
そのため、手足の自由は明らかに確保されている。しかし本人は赤面しつつも真顔で轟たちを見ている。いや、無言で見つめている。
「な、なんなんだ?・・・・なんなんだ、この・・・なに?」
「や、八百万さん?・・・あの・・・えと・・・?」
「緑谷さん」
「ひっ」
「蕎麦が伸びてしまいますわよ」
八百万は勝利を確信していた。轟の視線は明らかに蕎麦ではなく、自身に向いている。釘付けといってもいい。どことなく恥ずかしい気持ちがあるが、己が羞恥心の小さな抵抗など些事と切って捨てる。大事な級友の性癖が矯正されてきている事実を喜ぶのが、ヒーローなのだろう。もちろん誰に頼まれたものでもないが、余計なお世話こそ、ヒーローの本質である。 - 55二次元好きの匿名さん25/01/31(金) 17:35:17
「やりましたわ!!」
寮に戻ってから女子陣に報告する八百万。
知恵の胆力の勝利とはこういうものをいうのだろうか。皆の手で勝ち取った”轟の性癖矯正”という勝利は確かな甘さとそこはかとない寂しさを伴っていた。
「緊縛されたわたくしを傍らに放置しつつ、わたくしが用意した蕎麦に舌鼓を打つ轟さん。」
おおっ、とうめきに近い感嘆の声を上げる女子陣。誰に見られるわけではないが、葉隠透は両腕を組んで何度もうなずいてことの成功を噛みしめている。
「食事をしながらも、ちらちらとわたくしに視線を送っていました。これは”放置”や”蕎麦”よりもわたくしに魅力を感じて下さった・・・そう捉えてもよいのではないでしょうか」
普段の彼女ならしないような芝居がかった言い回し。それだけこの度の成果が大きいのだろう。
一方の男子寮では、精神汚染系の個性に攻撃を受けた可能性を考慮し、専門家である心操人使と真剣に話し合う轟と緑谷の姿があった。
結論としては、おそらく問題はないだろうし、思春期の奇行として受け止めてやるのもヒーローとしての、いや、男子としての責務だろうという流れとなっていた。 - 56二次元好きの匿名さん25/01/31(金) 20:03:21
とんちんかんすぎて面白いよ…助けて…
- 57二次元好きの匿名さん25/01/31(金) 20:11:51
R18は守ろうというのがよく分かるな(錯乱)
- 58二次元好きの匿名さん25/01/31(金) 20:48:13
このヤオモモ、最初はシクラメンの花びらで微笑む少女だったんだぜ…?
- 59二次元好きの匿名さん25/01/31(金) 20:48:19
巻き込まれる心操…
- 60二次元好きの匿名さん25/01/31(金) 21:48:47
スレ主あれだろ最終決戦後もなんでか歴代継承者がデクの中に居座って彼のプライベートを逐一観察してお茶子とくっつけようとトンチキな努力してたスレのスレ主だろ?美文と落差のある内容がそっくり
- 61二次元好きの匿名さん25/01/31(金) 22:09:11
映画「団鬼六 縄化粧」あたりを参考資料として閲覧したのでしようかね?
白い肌には紅い縄が映えそうです
次はさらにレベルを上げて、吊るされ緊縛放置に蕎麦でしょうか - 62二次元好きの匿名さん25/02/01(土) 00:26:09
男子がガチで心配してるw
- 63二次元好きの匿名さん25/02/01(土) 00:28:30
ブッダよ、まだ寝ておられるのですか?
- 64二次元好きの匿名さん25/02/01(土) 00:38:55
- 65二次元好きの匿名さん25/02/01(土) 04:59:01
梅雨ちゃんが居ればトンチキな事にはなるまいと思っていたら冬という蛙個性の弱点という盲点で突くとはこの海のリハクの眼をもってしても……
- 66二次元好きの匿名さん25/02/01(土) 08:44:23
色んな意味で凄いなコレ
- 67二次元好きの匿名さん25/02/01(土) 11:31:34
雄英高校本校舎の一室。
普段、2年A組の教室として使われているこの部屋。本来ならば休日であるため使われる予定はなかったはずだが、趣味の登山に興じている爆豪少年をはじめ、数名の生徒らを除いた2年A組の面々は、男女ともに深刻な面持ちで集まっていた。
「緊急招集・・・か。休日という闇の中で蠢く集会・・・」
「芦戸くん、麗日くん、今回の招集はいったい?轟くんについてだと聞いているが・・・」
「俺自身も知らねえこと、なんだよな?」
「ふーっ」
芦戸三奈は長く息を吐く。その息はため息ではなく、これからの議題に対する意力を研ぎ澄まし高めるための深呼吸であった。 - 68二次元好きの匿名さん25/02/01(土) 11:41:36
「とりあえず、休みの日なのに集まってくれてありがとう、みんな」
会議進行を務めるのだろうか、司会者のようにふわりと頭を下げる芦戸。10代の少女ながら堂に入ったその姿は未熟ながらヒーローのそれ、ということだろう。
「単刀直入に聞くんだけど、轟、こないだのヤオモモみてどう思った?」
「こないだ・・・って、あの縛られてたやつか?」
「うん、それ」
「なんか、こう・・・・すげえな・・・って」
轟焦斗17歳。後のエアコンヒーロー・ショートが生涯ではじめて空気を読んで言葉を濁したのは、この瞬間であったと、彼は後の回顧録で語っている。
「そう、そこ!ヤオモモは轟の・・・性癖・・・・をさ?こう、どうにかしようと・・・・ね?」
奔放な芦戸とはいえ花も恥じらう女子である。性に切り込むには少々言葉が濁る。
「俺の・・・・?性癖・・・?」
「ケロケロ・・・分かってないのかしら?」元気のない様子でつぶやく蛙吹だが、その声は意外にもよく通る。
「轟くんが一番分かってないといけないことやん!」麗日少女、少々声が荒いのは朴念仁ぶりに思うところでもあるのだろうか。
「そうはいってもよ・・・?」腑に落ちない様子で頭をひねる轟。
そもそもなぜこんなにも深刻な会議になっているのか、ことの発端は数日前にさかのぼる。 - 69二次元好きの匿名さん25/02/01(土) 11:49:00
「八百万が奇行を?・・・・そっとしといてやれ。あいつもそういう年頃だ・・・」
担任の相澤は相談を受けた緑谷や轟に、極めて大人として真っ当な対応をした。
安心させるために”これは些事であるため気に掛ける必要はない”と言って聞かせ、裏ではカウンセラーの手配をするなど、その流れは生徒を真に思うがためのもの。
結果的にカウンセリング対象となり、何度かのヒアリングを受けた八百万ら女子一同。
彼女らも才気煥発なヒーローの卵である。
あっという間に状況を把握し、いち早く八百万への誤解を解く必要があると考えた。
そのためには、どうしても轟の性癖を共有する必然性が生まれる。本来であれば、極めてプライベートな部分の話である。それを暴き立てるなどあってはならない。女子陣は悩んだ。話し合った。それでも今後のことを考え、秘密保持を厳重に課した上での緊急招集会議となったのである。 - 70二次元好きの匿名さん25/02/01(土) 11:53:29
「轟さん」
八百万がゆっくりと口を開く。凛とした佇まいには清涼な空気感が伴うようで、級友たちはどこか居ずまいを正したくなる思いを覚えた。
「”蕎麦打ち”・・・お好きですよね」
「ん・・・まあ、そうだな」
「”緊縛と放置”・・・・これもまたお好きですよね」
「いやちょっと待て、それはおかしい」
”認識の齟齬”。
これがどれほどの事態を産むことになるのか、峰田は後の著作で繰り返し指摘している。
轟と八百万ふたりの認識の齟齬はこの場に来てはじめて露見したのであった。 - 71二次元好きの匿名さん25/02/01(土) 12:04:37
「っ!?轟さん!?何をおっしゃるのです!?」
「いや何って・・・」
「轟さんは、轟さんは!”蕎麦打ち”と”緊縛放置”に性的興奮を感じるのでしょう!?」
「っ!?何言ってんのかわかんねえよ!?」
「ナニだろ」
「後にしてくれ!」
茶々を入れた途端に激怒される峰田。会議は踊り、さらに進む。
「でしたらなぜあのとき、あんな、あんな・・・あのようなビデオを見ていらしたの!?わたくしセザンヌやフェルメールを彷彿としましたわ!」
「何の話なんだ!?緑谷ちょっと心操呼んでくれ!今日いないのか!?」
全くもって心当たりがなく、専門家の助けを求める轟だったが・・・、
「ケロケロ・・・顔色が悪いわね・・・峰田ちゃん」
蛙吹の視線の先には、青ざめた峰田が小さく座っていた。 - 72二次元好きの匿名さん25/02/01(土) 12:13:23
・・・
「それじゃ峰田の処遇はこっちで決めとくから。ルドヴィコ療法全開でいっとく」
快闊に告げる芦戸。傍らには赤面した八百万と、特殊繊維でぐるぐる巻きにされ、無重力状態で拘束された峰田が。
「任せた」
「煮るなり焼くなり」
「人道に反しない程度に済ますんだぞ!」
「漆黒の懲罰」
「これは峰田くんが悪い」
黒幕の捕縛、誤解の解消、謝罪と受け入れ・・・戦後処理をあらかた済ませたA組一同。校舎の外に出たところ、青い空に白い雲が良いコントラストとなっている。
時刻はちょうど昼食どき。
「飯食いに行こうぜ」と提案したのは上鳴少年
「いいな、何喰う?」と広げたのは瀬呂少年
「「「そりゃあやっぱり・・・」」」悪童のような笑顔を目を合わせ合う男子一同とそれを呆れ笑って見ている女子一同。数刻後、帰寮してきた彼らからは、蕎麦のふくよかな香りが漂っていた。 - 73二次元好きの匿名さん25/02/01(土) 12:22:04
それからしばらく経った後日、轟はとある病院を訪れていた。
「また来やがったか・・・・飽きねえな・・・・ハハ・・・観光名物じゃねえだよ・・・・」
「焦斗・・・」
「親父も元気そうだな・・・燈矢兄は・・・」
「元気に・・・見えるか・・・?へっ・・・」
「色んな・・・話をしようぜ、燈矢兄」
「・・・・・・・」
「燈矢兄、好きな動画って何?」
「体力の限界です!今日は眠らせてまた・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・”蕎麦打ち”・・・・・」
「おんなじだ」
ヤオモモ「蕎麦打ちA〇?」~完~ - 74二次元好きの匿名さん25/02/01(土) 12:34:48
爽やかな笑顔で言ってそう
- 75二次元好きの匿名さん25/02/01(土) 12:37:26
- 76二次元好きの匿名さん25/02/01(土) 12:53:28
いかれた文章を紡ぐ者にはなぜこうも文才があるのか
- 77二次元好きの匿名さん25/02/01(土) 17:21:07
何?この……何?
- 78二次元好きの匿名さん25/02/01(土) 23:38:00
峰田サイレントで処されてて草
- 79二次元好きの匿名さん25/02/02(日) 00:38:24
とんちき過ぎて常時混乱してたけど面白かったです
ありがとう - 80二次元好きの匿名さん25/02/02(日) 02:48:46
これ純粋に蕎麦打ちの動画見るのが好きなのか特殊な癖のAV指してるのかどっちなんだよ!?