- 1◆zIKR/QD4og25/01/31(金) 21:52:06
- 2◆zIKR/QD4og25/01/31(金) 21:54:05
青の陣営/連合陣営 ()内はサーヴァントのマスター
剣:ローラン(アンジェ・シュヴァルツ)/シグルド(ヘルカ)
弓:アルジュナ(ヨハナ・バーナー)/ギルガメッシュ(グナーテ・ウヌグ)
槍:エルキドゥ(エンキ・シュヴァルツ)/ジャガーマンinタイガー(グロリア・オブシディアン)
騎:コロンブス(レダ・スレブロ)/マリー・オルタ(ソンブル・ローブリュー)
術:ネロ・クラウディウス(ボイド・ヴィッテルスバハ)/太公望(宝・黎明(パオ・リーミン))
殺:百貌のハサン(ヒメル・ハプスブルク)/山の翁(死徒トッド・エンゲル:死亡済み)
狂:スパルタクス(ベヴストザイン・ムジーク)/土方歳三(バーナード・ソザートン) - 3◆zIKR/QD4og25/01/31(金) 21:54:23
- 4◆zIKR/QD4og25/01/31(金) 21:55:57
これまでのSSスレ
架空のFateシリーズ|あにまん掲示板以前見かけて最後まで見たスレだったんですが、落ちちゃってて続きが見れないのが寂しかったので自給自足に書いたのをいくつか放流してみたいと思います。取り敢えず、FakeのPVみたいな各サーヴァントが出揃う…bbs.animanch.com架空のFateシリーズ「Fate/ecstasy」|あにまん掲示板前スレhttps://bbs.animanch.com/board/3457921/前回までのあらすじその男は、筋肉だった――(スパルタクス召喚)bbs.animanch.com架空のFateシリーズ「Fate/ecstasy」を語るスレ|あにまん掲示板bbs.animanch.com↑の137以降
- 5二次元好きの匿名さん25/01/31(金) 21:56:04
立て乙
- 6◆zIKR/QD4og25/01/31(金) 21:56:46
- 7◆zIKR/QD4og25/01/31(金) 22:02:07
それではここからSSを流していきます
- 8◆zIKR/QD4og25/01/31(金) 22:04:00
『11月9日 天地乖離す神話の戦い Ⅱ』
西部戦線
ギルガメッシュ。万夫不当の英雄王。
エルキドゥ。英雄王の盟友にして天の鎖。
この両雄の激突する戦場に姿を現した“橙”のキャスター――太公望。
「お二方、今宵はその辺りでお開きにして頂けませんか?」
太公望の言葉は、一先ず一時、彼らの戦いを止めることには成功した。
ただ、その代償とばかりに、友との語らいに水を差された英雄王の怒気が天を衝くように吹き上がる。
「……そうだな。我としたことが忘れていたぞ、我が宝を狙う盗人どもがいることを」
傲岸な独言と共に、紅玉よりも鮮やかな瞳が、断頭台の刃の如き鋭さを持って不粋な乱入者を睨み付ける。 - 9◆zIKR/QD4og25/01/31(金) 22:05:04
「おや? 聖杯の所有者を決めるのがこの戦いだと聞いていましたが」
「戯け、この世に遍く宝は我のものよ。それを勝手に奪い合う不埒な雑種どもに王として誅を下すのみ。そう思っていたが……まさかここまでの身の程知らずまで紛れ込んでいたとはな!」
「いや、僕らも別に聖杯を求めてるわけでは、ないん、ですが………………」
そしてギルガメッシュの纏っていた怒気が、いよいよ殺気に変わって溢れ出した。
反論しようとした太公望だったが、その声はどんどん尻すぼみしていき、語末は誰に届くでもなく消え入る始末だ。
冷や汗を隠す余裕も奪い去られる。 - 10◆zIKR/QD4og25/01/31(金) 22:08:27
弁明の余地はない。酌量の余地もない。王の裁きは、王がそう決め、刃を下すのみである。
エルキドゥとの戦いへ向けられていたギルガメッシュの数百もの宝物庫の扉、その内二十を超える数が一斉に、咎人たる青年へ狙いを定める。
「此度の不敬、万死すら生ぬるいが、貴様には勿体無い死に様をくれてやる。歓喜に咽び泣いて散れ、雑種!」
英雄王の怒号と共に、並んだ断罪の刃は一斉に太公望目掛けて撃ち出された。
高速で飛来するそれらを同等の応射で撃ち落とすなどという、エルキドゥのような芸当は彼にはできない。そして襲い来る宝剣、魔槍、戦斧はいずれも純然たる宝具。二十余りの武具全てと言わず、一振り命中するだけでも消滅することさえあり得る威力だ。
送り出した彼をベルリンから見守る少女が、悲鳴を上げかけた瞬間。
「ええい、やるしかありませんか!」
鉄鞭を持ち出した太公望は、それを以てして宝具を打ち払うのかと思いきや、唯一の武器を空中へ放り投げた。 - 11◆zIKR/QD4og25/01/31(金) 22:09:56
絶体絶命の状況に焦ったがための致命的な失態にも見えるが、決して手を滑らせたわけではない。
「!」
空を舞った鉄鞭は突如、物理法則ではあり得ない角度へあり得ない加速を果たし、飛来する宝具群の先頭にあった刀剣を弾いた。
そして弾かれた刀剣は更に周囲の武具に衝突。玉突きのように互いを弾き合い、その弾道を標的から逸らしたのである。
無論、それが偶然の筈もなく、その間に鉄鞭は他の武具も同様に弾いていた。
「ふう、危ない危ない」
足下に突き立ったを見る青年がそう息を吐くが、状況はそれすら彼の余裕であるかのように演出している。
鉄鞭が直接弾いたものは四つほど。
しかし、ただそれだけで二十を超える武具が標的を仕留め損ねた。
太公望は鉄鞭を投げただけで、宝具の一斉掃射を凌いでみせたのである。 - 12◆zIKR/QD4og25/01/31(金) 22:19:33
「その曲芸で永らえたつもりか?」
だがその快挙も、金色の王には神経を逆撫でされる悪あがきでしかない。
彼は既に次なる掃射の準備を始めていた。その数、実に五十以上。
「小賢しい手品でどこまで凌げるか、見てやろうではないか」
「僕としては、いま戦うつもりはないんですがね……」
取りつく島もない態度に苦笑いする太公望。
次の瞬間、王の財宝の第二陣が、不敬者を処断するべく発射された。 - 13◆zIKR/QD4og25/01/31(金) 22:24:56
今夜はこれにて以上となります
太公望の戦闘はFGOのモーションを参考にしています - 14二次元好きの匿名さん25/01/31(金) 22:31:11
僕としては、いま戦うつもりはないんですがね(いま戦うつもりはないんですがねの意)
- 15二次元好きの匿名さん25/01/31(金) 22:33:29
胡散臭い……
- 16二次元好きの匿名さん25/01/31(金) 22:45:20
王、友との語らいを邪魔され激おこ
- 17二次元好きの匿名さん25/02/01(土) 02:20:52
こうしてる間もあずかり知らぬとこで勝手にヘルカの好感度上がってそうなんだよな
- 18二次元好きの匿名さん25/02/01(土) 10:00:58
保守
- 19◆zIKR/QD4og25/02/01(土) 18:48:30
今夜も続きを上げます
保守代わり
★4 レディズトーク
効果:毎ターンスターを獲得(3個)&バスター性能をアップ(6%)
ある喫茶店の一角が、華で満ちていた。
いずれも、月並みであるが間違いなく美女と呼んで差し支えない女傑たち。
自然、他の客たちの視線も集まると言うもの。
そんな大人の女たちの談話の内容はというと――
「なんで変態さと紳士振りを両立できるのかしら……あのバカっ」
「仏頂面であれもダメこれもダメって、あの堅物眼鏡~!」
「いい加減、あのジャガーもどき焼いてやろうか……」
「ここ酒出ないのかしら?」
「うーん、言わぬが花、ならぬ聞かぬが花というやつですかね」
少女(ガール)にはまだ早かろう。
離れた席に居た青年は、傍らの小さな主の耳を、静かに塞ぐのであった。 - 20二次元好きの匿名さん25/02/01(土) 19:09:37
この花々枝葉の棘と毒すごくね?
- 21二次元好きの匿名さん25/02/01(土) 19:14:10
綺麗な花には……と言うし多少はね?
- 22二次元好きの匿名さん25/02/01(土) 19:22:59
マトモなのがパオちゃんとアンジェくらいしかいない
- 23二次元好きの匿名さん25/02/01(土) 19:26:15
喫茶店で酒を頼むな聖職者
- 24◆zIKR/QD4og25/02/01(土) 21:28:11
やべー女だらけの喫茶店でした
ここから続きです
英雄王ぶちギレ案件、命を狙われる太公望
・
「これは……流石に……!」
彼は先程のように飛んでくる宝具に鉄鞭で玉突きを起こし、あるいは道術で魔力の竜巻を起こして対処するが、それでも捌ききれる物量ではない。
全力で応じてようやく半分。
しかし残る半分が青年を大地へ串刺しにせんと迫り――
武具の殺到した大地が、着弾の衝撃だけで爆ぜる。
その光景を使い魔越しに観ていた魔術師たちの殆どは、これで黒髪の英霊は消滅したと思った。
防ぎ、往なすのならばともかく、大量の宝具をまともに受けては英雄といえど生き残れまい。
「器用だね、君は」
だが一連の流れを同じく眺めていたエルキドゥは、爆撃の中に消えた者へ向けてそう声をかける。
「いやぁ、それほどでもっ、あります!」
それへの返事と共に、煙の中から件の青年が現れた。
先程までは姿のなかった、四足で空を駆ける獣に跨がって。 - 25◆zIKR/QD4og25/02/01(土) 22:04:16
「貴様っ!」
怒声と共に放たれた追加の宝具を獣は躱し、ギルガメッシュへ接近する。
そしてすり抜け様。
神獣の騎手は、その手の鉄鞭を英雄王目掛けて振り抜いた。
鈍い衝撃音。
「助かりました、シフソウ君」
鉄鞭は既の所で展開された盾に防がれて届かず。
しかし、二度の斉射を凌いだ騎手は神獣を戻し、降り立った地上から再び黄金の影を見上げた。
その英雄王は相変わらず、否、より一層不愉快そうに太公望を見下ろしていた。
「フン、裁きを逃れるばかりか我が宝具に傷を付けようとは、どこまでも無礼な奴よ」
「ご無礼は誠心誠意お詫びさせて頂きますので、お話だけでも聞いて頂けませんかねぇ……?」
吐き捨てるように告げるギルガメッシュは太公望の言葉を一顧だにせず、更なる宝具を展開しようとして―― - 26◆zIKR/QD4og25/02/01(土) 22:19:06
「!」
「ぬっ」
寒気がゾワリと彼らの背を撫でる。
それは殺気。生きとし生ける者たちの逃れ得ぬ死の香りだ。
ギルガメッシュすら、怒りのままの財宝の発射を思い止まった。隙を晒せば、その瞬間に首が飛んでいるかもしれないという悪寒がゆえに――
(これは……)
この殺気に心当たりのあった太公望は、黄金の英霊の斉射が来ない内にと、ここまで静観の姿勢を保っていた緑の英霊へ顔を向ける。
「あなたはどうですか? 一先ずこの場で矛を収めてくだされば、僕はそれだけで十分なのですが」
「僕は構わないよ? 夜明けが近いから帰還するようにと、マスターからも命令が来ているし。ギル、続きはまた今度にしよう」
「ぬぅ……まったくおまえというやつは……」
太公望から話を振られたエルキドゥは彼の言葉にあっさりと頷いた。
聞いていたギルガメッシュの方が酷いしかめ面になり、先ほどまでの殺気が弛緩し始める。
手早く邪魔者を片付けて続きをと思っていたところで、よりによって当の友から梯子を外された形になってしまったようだ。 - 27◆zIKR/QD4og25/02/01(土) 22:24:32
「……我も興が削がれた。宴の続きは、逆賊どもを一掃した後としよう」
臨戦態勢だった宝物庫が閉ざされていく様子にほっと胸を撫で下ろしかけた太公望へ、黄金の王は再び刺すような視線を向ける。
「忘れるな、雑種。貴様には必ず此度の不敬を我直々に償わせてくれる」
遠回しでもなんでもない死刑宣告に顔を青くした太公望をもう居ないものとした彼は、ようやく友と向き直って言う。
「今宵最後の一撃だ。再会の約定代わりに受けていけ」
開戦と同様乖離剣が回転を始めた。
「もちろん、そのつもりだよ」
すまない、マスター。最後にもう一度だけ。
念話でそう詫びながら、笑みを浮かべて友への返答とするエルキドゥ。
「おっとぉ!? 最後の最後にそれやりますか!
――昆崙山は、元始天尊に奉る!」
両者のはじめより力を増そうとしている一撃を見て、太公望は大急ぎで被害を抑えるための術式を展開する。
数秒後、神話の激突がこの地で再び巻き起こった。 - 28◆zIKR/QD4og25/02/01(土) 22:48:34
それらの一部始終を、遥か遠方から眺めていた影。
「……無益。あまりにも無益……」
戦いを見届けた彼はただ一言呟くと、やがて昇ってきた朝日と共に姿を消す。
以上の戦いにおける魔力の激震は当然、魔術協会も聖堂教会も捉えていた。
協会は遅まきながらも更なる介入を検討し、教会は更なる増員を大真面目に議論し始めた。
様子見、或いは偵察という姿勢だった彼らは聖杯戦争が一体何であるのかを理解したのだ。
これはもはや、極東の儀式と侮っていられる代物ではない。
古き神話の再演か。現代に始まった新たな英雄譚か。
人知を超えた英雄たちと魔術師たちの全てを賭けた闘争。神秘の世界における“大戦”が幕を開けたのだと。
戦場跡に刻まれた半径1㎞を超すクレーターが、その事実を静かに物語っていた。