[SS]架空のFateシリーズ「Fate/ecstasy」2

  • 1◆zIKR/QD4og25/01/31(金) 21:52:06
  • 2◆zIKR/QD4og25/01/31(金) 21:54:05

    青の陣営/連合陣営 ()内はサーヴァントのマスター
    剣:ローラン(アンジェ・シュヴァルツ)/シグルド(ヘルカ)
    弓:アルジュナ(ヨハナ・バーナー)/ギルガメッシュ(グナーテ・ウヌグ)
    槍:エルキドゥ(エンキ・シュヴァルツ)/ジャガーマンinタイガー(グロリア・オブシディアン)
    騎:コロンブス(レダ・スレブロ)/マリー・オルタ(ソンブル・ローブリュー)
    術:ネロ・クラウディウス(ボイド・ヴィッテルスバハ)/太公望(宝・黎明(パオ・リーミン))
    殺:百貌のハサン(ヒメル・ハプスブルク)/山の翁(死徒トッド・エンゲル:死亡済み)
    狂:スパルタクス(ベヴストザイン・ムジーク)/土方歳三(バーナード・ソザートン)

  • 3◆zIKR/QD4og25/01/31(金) 21:54:23
  • 4◆zIKR/QD4og25/01/31(金) 21:55:57
  • 5二次元好きの匿名さん25/01/31(金) 21:56:04

    立て乙

  • 6◆zIKR/QD4og25/01/31(金) 21:56:46

    登場人物情報

    x.gd

    x.gd
  • 7◆zIKR/QD4og25/01/31(金) 22:02:07

    それではここからSSを流していきます

  • 8◆zIKR/QD4og25/01/31(金) 22:04:00

    『11月9日 天地乖離す神話の戦い Ⅱ』

     西部戦線

     ギルガメッシュ。万夫不当の英雄王。
     エルキドゥ。英雄王の盟友にして天の鎖。

     この両雄の激突する戦場に姿を現した“橙”のキャスター――太公望。

    「お二方、今宵はその辺りでお開きにして頂けませんか?」

     太公望の言葉は、一先ず一時、彼らの戦いを止めることには成功した。
     ただ、その代償とばかりに、友との語らいに水を差された英雄王の怒気が天を衝くように吹き上がる。

    「……そうだな。我としたことが忘れていたぞ、我が宝を狙う盗人どもがいることを」

     傲岸な独言と共に、紅玉よりも鮮やかな瞳が、断頭台の刃の如き鋭さを持って不粋な乱入者を睨み付ける。

  • 9◆zIKR/QD4og25/01/31(金) 22:05:04

    「おや? 聖杯の所有者を決めるのがこの戦いだと聞いていましたが」

    「戯け、この世に遍く宝は我のものよ。それを勝手に奪い合う不埒な雑種どもに王として誅を下すのみ。そう思っていたが……まさかここまでの身の程知らずまで紛れ込んでいたとはな!」

    「いや、僕らも別に聖杯を求めてるわけでは、ないん、ですが………………」

     そしてギルガメッシュの纏っていた怒気が、いよいよ殺気に変わって溢れ出した。
     反論しようとした太公望だったが、その声はどんどん尻すぼみしていき、語末は誰に届くでもなく消え入る始末だ。
     冷や汗を隠す余裕も奪い去られる。

  • 10◆zIKR/QD4og25/01/31(金) 22:08:27

     弁明の余地はない。酌量の余地もない。王の裁きは、王がそう決め、刃を下すのみである。
     エルキドゥとの戦いへ向けられていたギルガメッシュの数百もの宝物庫の扉、その内二十を超える数が一斉に、咎人たる青年へ狙いを定める。

    「此度の不敬、万死すら生ぬるいが、貴様には勿体無い死に様をくれてやる。歓喜に咽び泣いて散れ、雑種!」

     英雄王の怒号と共に、並んだ断罪の刃は一斉に太公望目掛けて撃ち出された。
     高速で飛来するそれらを同等の応射で撃ち落とすなどという、エルキドゥのような芸当は彼にはできない。そして襲い来る宝剣、魔槍、戦斧はいずれも純然たる宝具。二十余りの武具全てと言わず、一振り命中するだけでも消滅することさえあり得る威力だ。
     送り出した彼をベルリンから見守る少女が、悲鳴を上げかけた瞬間。

    「ええい、やるしかありませんか!」

     鉄鞭を持ち出した太公望は、それを以てして宝具を打ち払うのかと思いきや、唯一の武器を空中へ放り投げた。

  • 11◆zIKR/QD4og25/01/31(金) 22:09:56

     絶体絶命の状況に焦ったがための致命的な失態にも見えるが、決して手を滑らせたわけではない。

    「!」

     空を舞った鉄鞭は突如、物理法則ではあり得ない角度へあり得ない加速を果たし、飛来する宝具群の先頭にあった刀剣を弾いた。
     そして弾かれた刀剣は更に周囲の武具に衝突。玉突きのように互いを弾き合い、その弾道を標的から逸らしたのである。
     無論、それが偶然の筈もなく、その間に鉄鞭は他の武具も同様に弾いていた。

    「ふう、危ない危ない」

     足下に突き立ったを見る青年がそう息を吐くが、状況はそれすら彼の余裕であるかのように演出している。
     鉄鞭が直接弾いたものは四つほど。
     しかし、ただそれだけで二十を超える武具が標的を仕留め損ねた。
     太公望は鉄鞭を投げただけで、宝具の一斉掃射を凌いでみせたのである。

  • 12◆zIKR/QD4og25/01/31(金) 22:19:33

    「その曲芸で永らえたつもりか?」

     だがその快挙も、金色の王には神経を逆撫でされる悪あがきでしかない。
     彼は既に次なる掃射の準備を始めていた。その数、実に五十以上。

    「小賢しい手品でどこまで凌げるか、見てやろうではないか」  

    「僕としては、いま戦うつもりはないんですがね……」

     取りつく島もない態度に苦笑いする太公望。
     次の瞬間、王の財宝の第二陣が、不敬者を処断するべく発射された。

  • 13◆zIKR/QD4og25/01/31(金) 22:24:56

    今夜はこれにて以上となります
    太公望の戦闘はFGOのモーションを参考にしています

  • 14二次元好きの匿名さん25/01/31(金) 22:31:11

    僕としては、いま戦うつもりはないんですがね(いま戦うつもりはないんですがねの意)

  • 15二次元好きの匿名さん25/01/31(金) 22:33:29

    >>14

    胡散臭い……

  • 16二次元好きの匿名さん25/01/31(金) 22:45:20

    王、友との語らいを邪魔され激おこ

  • 17二次元好きの匿名さん25/02/01(土) 02:20:52

    こうしてる間もあずかり知らぬとこで勝手にヘルカの好感度上がってそうなんだよな

  • 18二次元好きの匿名さん25/02/01(土) 10:00:58

    保守

  • 19◆zIKR/QD4og25/02/01(土) 18:48:30

    今夜も続きを上げます

    保守代わり
    ★4 レディズトーク
     効果:毎ターンスターを獲得(3個)&バスター性能をアップ(6%)
     ある喫茶店の一角が、華で満ちていた。
     いずれも、月並みであるが間違いなく美女と呼んで差し支えない女傑たち。
     自然、他の客たちの視線も集まると言うもの。

     そんな大人の女たちの談話の内容はというと――

    「なんで変態さと紳士振りを両立できるのかしら……あのバカっ」

    「仏頂面であれもダメこれもダメって、あの堅物眼鏡~!」

    「いい加減、あのジャガーもどき焼いてやろうか……」

    「ここ酒出ないのかしら?」


    「うーん、言わぬが花、ならぬ聞かぬが花というやつですかね」

     少女(ガール)にはまだ早かろう。
     離れた席に居た青年は、傍らの小さな主の耳を、静かに塞ぐのであった。

  • 20二次元好きの匿名さん25/02/01(土) 19:09:37

    この花々枝葉の棘と毒すごくね?

  • 21二次元好きの匿名さん25/02/01(土) 19:14:10

    >>20

    綺麗な花には……と言うし多少はね?

  • 22二次元好きの匿名さん25/02/01(土) 19:22:59

    マトモなのがパオちゃんとアンジェくらいしかいない

  • 23二次元好きの匿名さん25/02/01(土) 19:26:15

    喫茶店で酒を頼むな聖職者

  • 24◆zIKR/QD4og25/02/01(土) 21:28:11

    やべー女だらけの喫茶店でした

    ここから続きです
    英雄王ぶちギレ案件、命を狙われる太公望


    「これは……流石に……!」

     彼は先程のように飛んでくる宝具に鉄鞭で玉突きを起こし、あるいは道術で魔力の竜巻を起こして対処するが、それでも捌ききれる物量ではない。
     全力で応じてようやく半分。
     しかし残る半分が青年を大地へ串刺しにせんと迫り――

     武具の殺到した大地が、着弾の衝撃だけで爆ぜる。
     その光景を使い魔越しに観ていた魔術師たちの殆どは、これで黒髪の英霊は消滅したと思った。
     防ぎ、往なすのならばともかく、大量の宝具をまともに受けては英雄といえど生き残れまい。

    「器用だね、君は」

     だが一連の流れを同じく眺めていたエルキドゥは、爆撃の中に消えた者へ向けてそう声をかける。

    「いやぁ、それほどでもっ、あります!」

     それへの返事と共に、煙の中から件の青年が現れた。
     先程までは姿のなかった、四足で空を駆ける獣に跨がって。

  • 25◆zIKR/QD4og25/02/01(土) 22:04:16

    「貴様っ!」

     怒声と共に放たれた追加の宝具を獣は躱し、ギルガメッシュへ接近する。
     そしてすり抜け様。
     神獣の騎手は、その手の鉄鞭を英雄王目掛けて振り抜いた。

     鈍い衝撃音。

    「助かりました、シフソウ君」

     鉄鞭は既の所で展開された盾に防がれて届かず。
     しかし、二度の斉射を凌いだ騎手は神獣を戻し、降り立った地上から再び黄金の影を見上げた。
     その英雄王は相変わらず、否、より一層不愉快そうに太公望を見下ろしていた。

    「フン、裁きを逃れるばかりか我が宝具に傷を付けようとは、どこまでも無礼な奴よ」

    「ご無礼は誠心誠意お詫びさせて頂きますので、お話だけでも聞いて頂けませんかねぇ……?」

     吐き捨てるように告げるギルガメッシュは太公望の言葉を一顧だにせず、更なる宝具を展開しようとして――

  • 26◆zIKR/QD4og25/02/01(土) 22:19:06

    「!」

    「ぬっ」

     寒気がゾワリと彼らの背を撫でる。
     それは殺気。生きとし生ける者たちの逃れ得ぬ死の香りだ。
     ギルガメッシュすら、怒りのままの財宝の発射を思い止まった。隙を晒せば、その瞬間に首が飛んでいるかもしれないという悪寒がゆえに――

    (これは……)

     この殺気に心当たりのあった太公望は、黄金の英霊の斉射が来ない内にと、ここまで静観の姿勢を保っていた緑の英霊へ顔を向ける。

    「あなたはどうですか? 一先ずこの場で矛を収めてくだされば、僕はそれだけで十分なのですが」

    「僕は構わないよ? 夜明けが近いから帰還するようにと、マスターからも命令が来ているし。ギル、続きはまた今度にしよう」

    「ぬぅ……まったくおまえというやつは……」

     太公望から話を振られたエルキドゥは彼の言葉にあっさりと頷いた。
     聞いていたギルガメッシュの方が酷いしかめ面になり、先ほどまでの殺気が弛緩し始める。
     手早く邪魔者を片付けて続きをと思っていたところで、よりによって当の友から梯子を外された形になってしまったようだ。

  • 27◆zIKR/QD4og25/02/01(土) 22:24:32

    「……我も興が削がれた。宴の続きは、逆賊どもを一掃した後としよう」

     臨戦態勢だった宝物庫が閉ざされていく様子にほっと胸を撫で下ろしかけた太公望へ、黄金の王は再び刺すような視線を向ける。

    「忘れるな、雑種。貴様には必ず此度の不敬を我直々に償わせてくれる」

     遠回しでもなんでもない死刑宣告に顔を青くした太公望をもう居ないものとした彼は、ようやく友と向き直って言う。

    「今宵最後の一撃だ。再会の約定代わりに受けていけ」

     開戦と同様乖離剣が回転を始めた。

    「もちろん、そのつもりだよ」

     すまない、マスター。最後にもう一度だけ。
     念話でそう詫びながら、笑みを浮かべて友への返答とするエルキドゥ。

    「おっとぉ!? 最後の最後にそれやりますか!


     ――昆崙山は、元始天尊に奉る!」

     両者のはじめより力を増そうとしている一撃を見て、太公望は大急ぎで被害を抑えるための術式を展開する。
     数秒後、神話の激突がこの地で再び巻き起こった。

  • 28◆zIKR/QD4og25/02/01(土) 22:48:34

     それらの一部始終を、遥か遠方から眺めていた影。

    「……無益。あまりにも無益……」

     戦いを見届けた彼はただ一言呟くと、やがて昇ってきた朝日と共に姿を消す。



     以上の戦いにおける魔力の激震は当然、魔術協会も聖堂教会も捉えていた。
     協会は遅まきながらも更なる介入を検討し、教会は更なる増員を大真面目に議論し始めた。
     様子見、或いは偵察という姿勢だった彼らは聖杯戦争が一体何であるのかを理解したのだ。

     これはもはや、極東の儀式と侮っていられる代物ではない。
     古き神話の再演か。現代に始まった新たな英雄譚か。
     人知を超えた英雄たちと魔術師たちの全てを賭けた闘争。神秘の世界における“大戦”が幕を開けたのだと。

     戦場跡に刻まれた半径1㎞を超すクレーターが、その事実を静かに物語っていた。

  • 29◆zIKR/QD4og25/02/01(土) 23:07:02

     11月10日 夜明け前

     まだ薄暗いベルリンの街の中、拠点となった家の前に立ち尽くす少女が居た。
     自らが送り出した青年の帰りを待つ彼女は、戦いが終わってから連絡の取れない相棒がいる筈の西方を見続けている。
     もしかしたら、もう彼に会えないのではないか。
     そんな不安を、彼から詳細を教わった令呪を見て振り払いながら、彼女は青年の帰還を待ち続ける。

    「大丈夫と言いましたでしょうに。夜更かしはいけませんよ、マスター」

     小さな背中に子どもを窘めるような声がかかって、少女は勢いよく振り返る。
     そこに立っていたのは、紛れもない彼女の待ち人だった。

    「マスター。あなたのキャスター、ただいま戻りましたよ」

    「……っ、もう!」

     少し気取った台詞を吐いて、青年は少女に笑いかける。
     パオは涙を流し、しかし笑いながら、そんな彼に抱き着いて、心の限りに叫んだ。

    「おかえりなさい、キャスター!」

     帰ってきてくれてありがとう、と。

     まだ戦いは始まったばかり。
     それを止めようとするのなら、これからも苦悩が彼女を襲うだろう。
     けれど。今だけは。
     友達の無事を喜べる時間が何物にも邪魔されない、それくらいのことは許されていいだろう。

  • 30◆zIKR/QD4og25/02/01(土) 23:08:35

    三者の激突、聖杯大戦の開幕戦、これにて以上となります
    以前のスレで「ここまでは書きたい」と言ったところまで、ようやく到達できました

  • 31二次元好きの匿名さん25/02/01(土) 23:10:40


    これから本格的にクレアさん達教会一同が隠蔽デスマーチが始まるのか

  • 32二次元好きの匿名さん25/02/02(日) 00:03:40

    おつです
    できたらこれからも続きを書いてほしい。滅茶苦茶大変そうだけど…

  • 33二次元好きの匿名さん25/02/02(日) 08:39:09

    朝保守

  • 34二次元好きの匿名さん25/02/02(日) 16:18:40

    保守
    翁さんナイスプレー

  • 35◆zIKR/QD4og25/02/02(日) 17:39:56

    スレも立てたばかりなのでもう少し書かせて頂きたいと思っておりますが、今夜の更新は見送らせて頂きます
    いましばらくお待ちください

  • 36二次元好きの匿名さん25/02/02(日) 22:12:23

    OK

  • 37二次元好きの匿名さん25/02/03(月) 07:32:07

    ほしゅ

  • 38◆zIKR/QD4og25/02/03(月) 15:24:09

    保守を兼ねて投下
    今夜は本文も少し上げる予定です

    ★3 諦めバッドガイズ
     効果:クリティカル威力アップ(10%)&スター発生率アップ(10%)

    「……お三方、申し訳ありません。ロイヤルストレートフラッシュです」

     洋館の地下、娯楽室にて。
     見守っていた軍人たちのおお、というどよめきが響く。

     いくら戦争中といえども、常に気を張り詰めていては限界が来るというもの。
     サーヴァントでも、マスターでも、精神を安らがせる息抜きの時間の重要性は馬鹿にできない。

    「本当にイカサマとかしてないんだろうなぁ?」

    「何を言うかヒメル君! そんな筈がないだろう、シュヴァルツ君に限って!」

    「なんでもいいから早く次の勝負をしようぜ。俺は諦めねえ……絶対に次で全てを取り返すっ」

     その息抜きに熱を上げすぎては、本末転倒であるのだが。

  • 39二次元好きの匿名さん25/02/03(月) 15:26:57

    レジライはさあ…

  • 40二次元好きの匿名さん25/02/03(月) 20:52:38

    野郎どもでも楽しそうな事してんな

  • 41◆zIKR/QD4og25/02/03(月) 22:36:33

    こんばんは
    予告通り、今夜のSS上げていこうと思います
    ここまであまり焦点を当てられなかった面々の出番です

  • 42◆zIKR/QD4og25/02/03(月) 22:40:36

    『11月10日 未明 炎神の弓、太陽の魔剣』

     ベルリン郊外

     腹の底から揺らすような重低音が、街の外に広がる森林の中で響く。
     その正体は排気音。先の戦争でも軍用として大いに活躍した自動二輪。現代における機械仕掛けの馬が、ただ一騎で力強い唸り声を吹き鳴らしていたのである。
     しかしその馬に跨がっているのは、筋骨逞しい軍人ではなかった。

     少女である。
     ヘルメットの下に隠れる、ふわふわとした金髪。海の蒼さを閉じ込めたような碧眼。
     しかも、一先ず10代半ばだろうかという程度の幼い体つき。
     武骨なオートバイとはあまりにもちぐはぐな組み合わせだったが、操縦は堂に入っており、まだ夜明け前の森の真っ暗な獣道を危うげなく進み、坂を駆け上がっていく。
     やがて、ベルリン市街へ繋がる道を視野に収める高台へ出ると、彼女はそこで乗機を止めた。

     オートバイに跨がったままの少女は、片足を地面に降ろすと、双眼鏡を取り出した。

  • 43◆zIKR/QD4og25/02/03(月) 22:42:41

    「情報が確かならここを通る可能性が高い筈なんだけどー……」

     少女の名は、ヨハナ・バーナー。
     “青”のマスターの一人、フリーランスの魔術使い。見た目通りの年齢ではなく、既にそれなりの経験を持つ傭兵である。
     まだ教会や協会、そしてこちらの盟主による、数時間前の旧西部戦線での被害の隠蔽工作の真っ最中にも拘わらず彼女がここに居るのは、ドイツ国内に張り巡らされた警戒網に魔術師がかかったからだ。

     無論、ただの魔術師ならわざわざマスターが出てきたりはしない。報告によれば令呪も確認されており、その魔術師はサーヴァントを連れたマスターである可能性が高かったのだ。

    『情報を総合すると、この女が“橙”から触媒を盗み出した張本人と考えていいだろう。英国から我が国へ直接入らず、スカンジナビアを経由しているのも、時計塔の網を避ける意図を含んでいたと見た』

     出発前。
     “青”の陣営の指導者となっている死霊魔術師は、そんな推察をヨハナに語った。

    『この女も、奇遇なことに君と同じフリーランスだよ、ヨハナ君。私も何度か耳にしたことがあるが、あちこちの揉め事に首を突っ込んでは引っ掻き回し、例のハイエナ(エーデルフェルト)とぶつかったことも数知れぬ魔術使いだ』

     確か、ヘルカと名乗っているのだったか。
     そう件の女の名を呟いた男は、資料を眺めていた少女を見下ろして本題を告げる。

  • 44◆zIKR/QD4og25/02/03(月) 22:46:30

    『君に任せたい仕事は、現在ベルリンに向かってきているこの女との接触だ』

     ボイド曰く。
     可能ならばこちらへ引き込み、女が召喚したサーヴァントを戦力に加えろ。
     拒むならばそのまま戦闘に移り、最低でも敵サーヴァントの能力を引き出すように。

    『他の“橙”のマスターたちの多くも既に、ベルリンやその近辺に潜伏しているだろう。あまり戦力は割けんが、よろしく頼むよ。


     ――全ては祖国のために!』

    『大佐殿、教会から秘匿の工作に関する再度の協議の要請が!』

    『何ぃっ!? 教会め、ハゲ鷹のように目敏く首を突っ込んできた癖に偉そうに……! ……すまんが私は先の戦いの後処理が続く。それでは任せたぞ!』

     忌々しげにしながら、ボイドはあまりにも大規模だった緒戦の後始末に戻っていった。
     そして詳細を理解したヨハナも、洋館を出発したのだ。

  • 45◆zIKR/QD4og25/02/03(月) 22:47:27

    今夜はここまで
    あんまり描写できてなかったヨハナさんでした

  • 46二次元好きの匿名さん25/02/03(月) 22:49:08

    > 例のハイエナ(エーデルフェルト)とぶつかったことも

    ヘルカさん何やってんですか

  • 47二次元好きの匿名さん25/02/03(月) 22:52:21

    >>この女も、奇遇なことに君と同じフリーランスだよ


    ヨハナの両親を謀殺し、バーナー家を没落させてヨハナがフリーランスに身をやつした元凶の言葉である

  • 48二次元好きの匿名さん25/02/04(火) 01:07:56

    たぶんヘルカは特に何も考えずに密入国してると思われる

  • 49二次元好きの匿名さん25/02/04(火) 07:30:15

    ほしゅ

  • 50二次元好きの匿名さん25/02/04(火) 12:13:12

    まあヴィナシス君を何故か遥か遠くの中国に送った女だしな

  • 51二次元好きの匿名さん25/02/04(火) 12:31:43

    >>46

    ヘルカの地元(ノルウェー)とエーデルフェルトの地元(フィンランド)

    一応北欧に属してるね

    そもそもエーデルフェルトは世界中の争いに首突っ込んでるから出身地が近かろうと遠かろうと関係ないが

  • 52◆zIKR/QD4og25/02/04(火) 19:19:11

    こんばんは
    ヘルカとエーデルフェルトのいざこざは、まあやってそうだなと思いついて入れました
    それでは、今夜も続きを書いていこうと思います

  • 53◆zIKR/QD4og25/02/04(火) 19:38:25

    (あのクソボケ、簡単に言いやがるわほんと……)

     つい先程見せられた、神代へとタイムスリップさせられたかのようなあの光景を思い起こす。
     聖杯戦争が如何なるものか知っておいてもらいたかった、とはボイドの言だが、忌々しくも少女の心境は彼の思惑通りである。
     この戦いは、何が起こってもおかしくない。
     遺憾ながらそれは、ヨハナの胸にも確かに刻まれた。
     そして今、仕事とはいえ昨日の今日どころではない早さでその戦いの前線に送られている。

     内心には、 内心には、一応の雇い主に対する罵詈雑言が滾り、双眼鏡を握る手にも力が入った。
    への罵詈雑言が滾り、双眼鏡を握る手にも力が入った。
     なにかとこちらを使い走りにするボイドには憤懣遣る方ないが、目的のためにも今は我慢だ。そう己に言い聞かせながら、対象の姿を待ちわびる。

  • 54◆zIKR/QD4og25/02/04(火) 19:55:25

    「マスター」

     そんな荒れた心中を感じ取ったのだろうか。咎めるように聞こえる己のサーヴァントの呼び声に、ヨハナは不貞腐れたようになって振り向いた。

    「……なによ、アーチャー」

     傍らに立つ褐色の美青年――彼女のサーヴァント、“青”のアーチャー。
     真名をアルジュナ。インド二大叙事詩の片割れ、“マハーバーラタ”における授かりの英雄。
     神話において主人公格(ヒーロー)の一人であったのに違わぬ清廉潔白といった振る舞いは、彼に付き従われるヨハナには若干居心地が悪かった。

    「いえ、淑女のすべきではない顔をされておりましたので。ここは既に戦場に等しい。些事に気を散らすべきではないかと。差し出口でありましたら申し訳ありません」

     涼しい顔でそう告げると、彼は再び視線を北へ向けた。
     押しも押されぬ大英雄アルジュナは、このようにヨハナの忠実な従者のように振る舞っている。

  • 55◆zIKR/QD4og25/02/04(火) 20:46:58

     英霊は、令呪の縛りがあったとしても、人間では太刀打ちできない絶大な力を持つ上位存在であることに変わりはない。
     加えてアルジュナは、古き神話の時代とはいえ歴とした王族。人の上に立つ者というのはあのキャスターのように気位が高いイメージがあった。
     そんな相手に、諌めはすれど自分に対する臣従の姿勢を徹底されるのはどうにも慣れない。
     反発されるよりマシではあろうが、落ち着かないものだ。

    (まあ、必要以上に踏み込んでこないのはいいことだけど)

     そう。例えばあの全裸セイバーみたいなサーヴァント、それに付き合わされるマスターであったならばさぞ喧しかったことだろう。
     だがこの男はそうではない。

     誰にも知られなくていい。私の心は私だけが知っていれば――

    「マスター、対象と思しき魔術師を視認しました。直にマスターからも見えます」

     アルジュナの報告を受け、ヨハナは即座に思考を戦場のものへ切り替える。

    「了解。私が先に降伏勧告を送るけど、どうせ撥ねつけるだろうから、すぐ射てるようにしておいて」

    「承知しました」

  • 56◆zIKR/QD4og25/02/04(火) 21:18:06

     少女の眼にはまだ何もわからないが、驚くには値しない。
     千里眼。
     大英雄である彼の持つスキルの視野には、双眼鏡如きで及ぶ筈もなし。
     数分後。彼の言葉通り、ベルリンへ向かうライトの光、一台の車がやって来た。

    「来たわね」

     一言呟いた彼女の眼下では、こちらの監視に気づいたらしい車が道の端に寄って停車し、中から例の女が降りてきていた。傍らに立つ男が召喚されたサーヴァントか。
     もう射たせてしまえばいいんじゃないか、という思考が鎌首をもたげるが、命令違反でボイドに小言を聞かされるのも馬鹿らしい。
     面倒に思いながらも、ヨハナは使い魔の小鳥を送り出して用件を伝達すると、

    「殺っちまいなさい、アーチャー」

    「口が悪いです、マスター」

     こちらへ向けて舌を出して交渉決裂を表明した女の首を吹き飛ばせと、首を掻き切る仕草と共に己のサーヴァントへ命じた。
     アルジュナは主の粗野な振る舞いに苦言を呈しながら、引き絞った弓矢を解き放ち、次の瞬間には首どころか女の立っていた道路の一角を砲でも撃ち込んだかのように吹き飛ばした。

     常識で考えられる矢の威力ではない。
     射程距離ではない。精度ではない。
     確かなことは、狙われた者に逃れる術がないということ。 

    「確認。これより迎撃を開始する」

     相手もまた英雄でなかったのならば。

  • 57◆zIKR/QD4og25/02/04(火) 21:21:02

    今夜はこれにて以上となります
    次はヘルカサイドからの展開となる予定です

    青弓主従
    見た目も相まって、パッと見はお転婆娘とそれに仕える世話役みたいな雰囲気
    しかしお互い踏み込みすぎないビジネスライク、というイメージです
    今後の展開でここから変化はあるのか

  • 58二次元好きの匿名さん25/02/04(火) 21:39:40

    片や舌を突き出す女と片やF仕草をする女

  • 59二次元好きの匿名さん25/02/04(火) 21:40:21

    クレーターの秘匿作業をしてる教会に追加のお仕事

  • 60二次元好きの匿名さん25/02/04(火) 21:51:05

    >>59

    これ朝までによろしくね~(隠蔽工作)

  • 61二次元好きの匿名さん25/02/04(火) 21:53:17

    クレア「F**k!」

  • 62二次元好きの匿名さん25/02/05(水) 07:30:25

    保守

  • 63二次元好きの匿名さん25/02/05(水) 14:14:18

    >>59

    Zeroなんかでも埠頭のサーヴァント大集合による倉庫街爆発とビル倒壊が一夜で起こってるし、街の中でやってないだけまだ可愛いもんよ

  • 64◆zIKR/QD4og25/02/05(水) 17:44:30

    こんばんは
    今夜はヘルカサイドから開戦までを上げていきます
    日付が変わるまでに続きを上げる予定

     数時間前 

     ドイツ ロストック

     旧西部戦線の戦いが終わり、クレーターが築かれた直後。

    「聖杯大戦~♪ 行くぞ~ベルリン~♪」

     バルト海に面するドイツ北部の港湾都市。
     その真夜中の静けさとは、対極に位置する陽気さで道を歩く女が居た。
     目立つのは童話の魔女を想起させる尖った帽子と、シルエットを隠す黒いコート。
     スラリと長い、裾から覗く綺麗な足が、石畳で独特のリズムを刻んでいる。

     タン、タタン。タタン、タン。

     その様子を、当世のスーツに身を包んだ英雄が冷めた目で見ていた。

    「マスター。当方の聞いていた予定では、当面は身を潜めて戦況を見守るという話だった筈だが?」

     固い口調。
     触媒を盗み出して自らを召喚したという点は置いておくとしても、彼女の気紛れ、享楽的に過ぎる性分を“橙”のセイバーはこの数日だけで嫌というほど味わわされている。
     それゆえか、声は心なしか非難めいて聞こえたが、マスターである彼女――ヘルカはそんなこと気にも留めずに振り返っり、嘆かわしいと逆に非難の声を向けた。

  • 65◆zIKR/QD4og25/02/05(水) 23:01:52

    お待たせしました
    続きです


    「なに言ってるのセイバー! さっきのあれを見てなにも感じなかったの貴方は?」

    「当方とて武に生きる者。あの戦いに沸き上がるものがあったことは否定しない。だが、その事実と現行の不可解さへの疑問は矛盾しない。事前の方針を捨てるだけの根拠を聞かせてもらおう」

    「そんなの、面白そうだからに決まってるじゃない! あのクレーターを作る激ヤバサーヴァントたちの間に割って入った命知らずサーヴァント! そしてそれを送り出したマスター! これは是非ともお近づきになりたくなあい?」

    「…………」

     予測はしていたが、あまりにもあんまりな答えにセイバーは閉口する。
     武人である彼は、このマスターの事態を混ぜ返して楽しむ性質が、正直に言って好ましくなかった。
     自分たちが此度の大戦の弱小勢力である以上、同様の状況にあることが目される相手と接触を図るといえば、一応の合理性はある。

  • 66◆zIKR/QD4og25/02/05(水) 23:04:16

    「それでは、移動に際してわざわざ当方にまで姿を晒しての活動を命じたのは何故だ? “青”はこの国に根を張る相手。であるからこそ、貴殿も当方に隠密を厳守させていた筈。このままベルリンへ向かえば、確実にあちらの迎撃を受けることは容易に予想可能である」

    「それはヒミツ!」

     だが如何せん、肝心のマスターが背中を預ける相手として信用ならない。
     この女にはまだ幾つも自分に秘していることがあると、彼――北欧の竜殺し、シグルドの頭脳、かつて竜を斃して得た叡智が告げている。
     今はまだ致命的な決裂こそしていないが、彼は既に、度が過ぎればサーヴァントの立場をかなぐり捨てることも辞さない覚悟だった。

    「……承諾した」

     故に含むところはある。あるが、彼の叡智は、この聖杯大戦自体にも何か危険が潜んでいることを警告している。
     招かれた経緯はどうあれ、英雄として現世の憂いに背は向けるわけにはいかない。
     こうしてシグルドは、不信を呑み込みヘルカへの追従を決めたのだった。

  • 67◆zIKR/QD4og25/02/05(水) 23:09:17

     そうして調達した車で南下し、ベルリンへと向かう途上で。

    「……マスター」

    「はいは~い」

     シグルドが、運転していた車を停車させ、隣に乗っていたヘルカもそれに疑問を抱くことなく軽快に降車した。
     目的地であるベルリンまではまだまだ距離があるが、車を停めた理由は明白。

    ――視られているな。

     密かに発動させたルーン魔術によってサーヴァントの気配を探知し、その方向へ視線を向けたシグルドの隣で、ヘルカは飛んできた小鳥を指先に止まらせている。

    「へー、ほー、ふーん」

     彼女が小鳥の足から外して開いた文書の内容はというと。
     端的に言えば、“青”の陣営との共闘。
     時計塔を中心とした“橙”の陣営を目下共通の敵として、敵陣営の撃破まで互いに不可侵の盟約を結ぼうという提案だった。

     ヘルカの戦力はセイバー一騎、対する“青”は七騎、触媒を盗んだ都合上敵対したも同然の“橙”は先の第一戦で姿を見せたサーヴァントを除いても五騎。
     順当に考えれば、たった一騎のヘルカや乱入したサーヴァントが勢力で勝る両陣営から磨り潰されるしかない構図だ。
     そこで、少なくとも数の上では最大勢力となる“青”の陣営を一時的とはいえ敵に回さずに済むと考えれば、利しかないように思えるが、ヘルカは文書に目を向けながら、顔も見ずに自らのサーヴァントへ告げた。

    「セイバー、戦闘用意」

  • 68◆zIKR/QD4og25/02/05(水) 23:12:14

    「了解した」

     この彼女の言葉を、シグルドは眉一つ動かさずに受け入れた。
     彼は戦士であり、戦うべき時が訪れたのならば否やはない。すぐに動けるような態勢を取り、遠方からこちらを見ている敵の出方を窺う。
     探知したサーヴァントとの距離はおよそ5㎞。このままこちらに接近せずに仕掛けてくるのならば、敵のクラスは自ずと絞られる。

    (恐らくはアーチャー、ないしキャスターといったところか)

     そう考察を進める男の冷悧さは、神話において戦士の王と称えられた経歴に偽りなしと言えよう。
     だが、相も変わらず彼のマスターは奔放だった。

    「べーっ」

     ヘルカは、シグルドと同じく敵が居る方向を向いたかと思うと、子供のように舌を出しておどけてみせる。
     剣士の英霊は、仮にも主である女の振る舞いに内心辟易するのをその身から欠片も漏らすことなく。

    「確認。これより迎撃を開始する」

     音を優に超えた速度で飛来する蒼炎を帯びた矢を、その手の大剣で斬り伏せたのだった。

  • 69◆zIKR/QD4og25/02/05(水) 23:13:35

    これにて今夜は以上です
    ヒメルのことも何もかも、シグルドに教えていないことの多すぎるヘルカでした
    次はサーヴァントの戦闘となります

  • 70二次元好きの匿名さん25/02/05(水) 23:23:50

    大事な事隠してるマスターとかそりゃ警戒しますわ
    聖杯戦争止めようとする第三者がいるのも知ってるし

  • 71二次元好きの匿名さん25/02/06(木) 07:30:22

    ほしゅ

  • 72二次元好きの匿名さん25/02/06(木) 13:24:35

    こんなふざけたマスターだけど近接持ち込まれたら大体のマスター圧倒されそうなんだよな

  • 73二次元好きの匿名さん25/02/06(木) 14:13:00

    >>72

    サシで殴り合えそうなのはグナーテさんやグロリアさん辺りか

  • 74二次元好きの匿名さん25/02/06(木) 18:28:20

    >>73

    フィジカルと魔術の練度は凄いけど素のスペックと装備は凡だからその二人には微妙に敵わない感じはする

  • 75◆zIKR/QD4og25/02/06(木) 19:15:54

    こんばんは
    シグルドvsアルジュナ、聖杯大戦の第二戦をあげていきます


     命中の直前で、一刀にて両断された蒼炎の矢。
     しかし矢に籠められていた魔力が爆ぜ、彼らの立っていた一帯に爆炎を撒き散らす。
     その余波だけでも常人では容易に死に至るが、ルーンを併用して疾走するシグルドはマスターのことを気にしていなかった。
     事前に彼女に持たせておいたルーンには、矢の直撃はともかく余波程度から命を守るのに十分な防御力があり、また享楽のためならばリスクを厭わぬ魔女も、いつまでも無意味に危険地帯に留まるほど愚かではないと理解している。

     故に確認は無用。
     己がすべきは、敵の弓兵にマスターを狙う暇を与えずに接近し、白兵戦に持ち込むこと。
     遮蔽物のない平地。足を止めては的になる。
     優先すべきは速さ。

     疾走のルーンを使用し、速力を底上げして5㎞の間合いを詰めに行く。
     既にこちらの動きを察知した弓兵が近寄らせまいと浴びせてくる矢を躱し、弾き、時にルーンの防壁で防ぎ、着実かつ強硬に接近していった。

  • 76◆zIKR/QD4og25/02/06(木) 19:17:25

     敵もさる者。この状況で焦りを見せず、ただ一騎で軍勢の斉射の如き物量、恐るべき狙撃精度を以て剣士を阻まんとするが、英雄といえども一人では限度がある。

    「!」

     連続する鋭い風切り音。飛来する何本もの短剣が、弓兵の視界に入る。
     射撃の僅かな間隙を縫って剣士が投擲したものだ。
     放たれたタイミングはバラバラであるのに、標的である弓兵へ到達するタイミングはほぼ同時。計算され尽くした、精密な技巧による投擲である。
     当然その全てを撃ち落とした弓兵だったが、矢を短剣の迎撃へ差し向けた分の一瞬、剣士への圧が僅かに弱まった。

     その隙に、崖へ一直線に接近した剣士はそこから魔術によって飛翔。
     崖に陣取った弓兵を見下ろす高度へ飛び上がる。

    「くっ」

     剣士は己を見上げる弓兵が即座に放った弾幕が自身の横をすり抜けて空へ昇っていくのを背中で見送ると、手に握る大剣を胸の前へ置いた。
     普通ならばわざわざ的になりかねない空中に出たのは、下から上より、上から下の方が狙い易いというだけのこと。
     既に弓兵は彼の剣の間合いだった。
     剣士は、眼下の敵へ目掛けてその大剣を――

    「沈め」

    ――思い切り殴り飛ばした。

  • 77◆zIKR/QD4og25/02/06(木) 19:43:45

     轟音と共に山が揺れる。崖が崩れる大破壊が起こる。
     積み上がった落石の山の中心で、彼らは火花を散らしていた。

    「……!」

     一人はここに大剣を打ち込んだ剣士。シグルド。
     打ち込んだ大剣をより押し込んで、敵へ止めを刺すべく、力を込めて握っている。
     
    「しくじりましたね」

     その切っ先を炎を纏わせた弓で受け止めているのはアルジュナ。
     胸へ突き立てられようとした大剣を、寸前で押し留め続けている。
     弓と剣の鍔迫り合い。
     倒れ込んだ形のアルジュナとその上から心臓を狙うシグルドでは、体勢の差もあって絶体絶命に見えたが、それにも拘わらず彼はそう一言呟いた。

    「!」

     瞬間。シグルドの背後へ、振り返るより速く空から矢の雨が降り注ぐ。
     彼の一撃の直前のアルジュナの射撃。
     彼に回避され、そのまま空へ消えたかに思えたあの弾幕は、最初からこうして戻ってくることを図って放たれていたのである。
     再びの轟音。落石が空へ舞い上がった。

  • 78◆zIKR/QD4og25/02/06(木) 19:49:18

     もうもうと立ち籠める土煙。
     出来上がった穴の際で、それを切り裂くように弓を振るって払い、凛々しい立ち姿を見せるアルジュナ。
     彼自身、己に剣を突きつけていた剣士共々に矢の雨を浴びた筈なのに傷一つないのは、単なる幸運などではなく紛れもない神域の弓術の成せる業。
     澄んだその眼は、両手に短剣を構えて数十m先の対岸に立つ敵手の姿を捉えていた。

    「……我が弓をこれほどまでに凌いだその凄烈なる剣を称え、尋ねましょう。あなたが“橙”のセイバーですね?」

    「如何にも。当方は“橙”のセイバーである。貴殿こそ“青”のアーチャーに相違ないか」

    「ええ、確かに」

     煙が晴れ、二人の視線がかち合う。
     ここに至り、彼らは初めて言葉を交わした。
     一連の攻防を以て、互いを容易ならざる難敵であると認めたがための膠着。なし崩しの小休止だ。

    「貴殿ほどの使い手と競える此度の巡り合わせを嬉しく思う」

    「こちらこそ。名乗り合うことこそできませんが、さぞ名のある英雄と見受けます。……戦士として、現世に招かれたサーヴァントとして、互いに恥じるところなく振る舞うと致しましょう」

    「同意する。元より当方、戦闘で手加減ができぬ性質(タチ)だ」

     短い会話。それを最後に、小手調べを終えた英雄たちは戦いを再開させた。

  • 79◆zIKR/QD4og25/02/06(木) 20:46:01

     再び放たれた一矢。
     投げられた短剣とそれは、両者の丁度中間で激突し、爆炎が彼らの間を隔てるように幕を成す。

     その幕を切り裂いて、シグルドが大剣でアルジュナに肉迫するが、既にそこにアルジュナは居なかった。
     振り返れば、まるでもう一つの月のようにたなびく純白の衣。
     逆さになって宙を舞う彼が、弓を引きながらこちらを見下ろしている。

     シグルドが炎を突っ切って斬りかかる間に、アルジュナは彼を飛び越える形で飛び上がっていたのだ。
     そのままアルジュナは引き絞った弓を解き放つ。
     無数の矢が一つの弓から機関銃のように放たれ、地上に立つ標的を目掛けて致死の一撃を殺到した。

     その迫る矢の雨を竜殺しは結界で防ぐ。
     だが、矢の勢いは雷の伴う豪雨に等しく、神代の原初のルーンによる結界とてやがては砕かれる運命だろう。

  • 80◆zIKR/QD4og25/02/06(木) 20:58:07

    (強い)

     揺らぐ結界の様子から冷静にそう予測を立てつつ、シグルドは思う。
     こうしている間にも絶え間なく矢を放ち続けている褐色の射手。彼の前で一手誤れば、それだけで剣が弾かれ、腕が抉れ、足を失い、この首を刎ねられているだろう。
     僅かな予断も許されない戦闘。
     それは、かつて討ち果たした邪竜のような――

    (だが)

     彼の弓兵が知っているのか定かではないが。
     この戦いに現世を脅かす何かがあるのならば、己はここで消えるわけにはいかない。
     逆境上等。此度も越えてみせよう。

     養父にして、後に竜の財宝のために騙し討ちを企てた鍛冶師は、己を英雄(そのよう)に育てたのだから。

  • 81◆zIKR/QD4og25/02/06(木) 21:01:17

     然る後、結界は粉砕された。

     内側から竜殺しが放った、一振りの斬撃をとどめにして。

     衝撃波により空を覆った矢が結界諸共に打ち払われ、空中に在る射手までの道が開ける。
     見逃さずルーンで飛び上がったシグルドは、当世の飛行機でもあり得ぬ速度で今度こそアルジュナへ肉迫した。
     振るわれる竜殺しの魔剣。

    「フッ――」

     それを、授かりの英雄は炎神より授かった神弓に炎の斬撃を纏わせて再び受け止める。

    (……ああ。この男は、ヤツではない)

     脳裏に浮かぶのは、生前の宿敵。
     あの男と眼前の剣士は、間違えようもない別人だ。
     それはそうだろうと自嘲する。
     聖杯戦争に招かれるのは古今東西、土地どころか時代さえ異なる英雄英傑。同じであろう筈もない。

  • 82◆zIKR/QD4og25/02/06(木) 21:02:27

     だが一つだけ、琴線に触れるものがある。
     何やら見慣れぬ眼鏡というらしいものの奥に覗く、こちらを射抜く水晶の如き瞳。
     それが自らの闇を暴き立てるのではないかと恐れを覚える。

     そんなものは被害妄想だ。
     あれはただ、自分の戦い方を観察しているだけだ。それ以上の意図などない。

    (そう。私の成すべきことは、何も変わらない)

     ひたすらに己を律する。
     成すべきは、マスターに仕えるサーヴァントとして勝利を献上し、その務めを全うすること。
     実直。清廉。忠実。
     英雄を体現せよと言い聞かせ、彼はその力を振るう。

  • 83◆zIKR/QD4og25/02/06(木) 21:05:02

    大分長くなりましたが、今夜はここまで
    次で戦闘終結となります
    書きながら何度もシグルド、アルジュナのモーションや設定を調べられる限り見返しました

  • 84二次元好きの匿名さん25/02/06(木) 21:41:56

    享楽主義のイカれポンチが大人しくしてるとは思えないから何かしてるんじゃないかと心配

  • 85二次元好きの匿名さん25/02/06(木) 22:14:59

    今更ながらこのシリーズが復活していたことを知りました。パオちゃんの令呪描いていた者です。
    初めてリアルタイムで追っていたスレが復活して、しかも字書き様の手によって凄まじい作品に昇華されていた事実に喜びが隠せません。
    読んでる時もうずっとにやにやしていました。
    本当にありがとうございます

  • 86◆zIKR/QD4og25/02/06(木) 22:54:56

    >>85

    おお、パオちゃんの令呪を描かれた方!

    そう言って頂けますと書き手冥利に尽きます、ありがとうございます!

  • 87二次元好きの匿名さん25/02/07(金) 07:30:34

    保守

  • 88◆zIKR/QD4og25/02/07(金) 17:11:26

    今夜はアルジュナvsシグルドの続きをあげていきます
    というわけで保守

  • 89◆zIKR/QD4og25/02/07(金) 19:44:00

     二人の英雄が、空を火花で照らしながら切り結ぶ。

     弓を振るった斬撃で敵手を振り払い、間合いを空けた瞬間にアルジュナが矢を放つ。

     それを頭の横、紙一重で躱したシグルドが魔剣を振るう。

     幾度も響く衝撃音。

     矢が山を崩し、斬撃が森を薙ぎ払う。
     一挙手一投足が地形を変える、神話の力の果てなき応酬。
     永劫に続くかに思われたそれは、やがて終わりを告げる。

    「……夜明けですか」

     東の空が、明らみ始めていた。どちらともなく、手が止まる。
     夜が明ければ、この戦闘の痕が地元の人間に周知のものとなるだろう。
     聖杯戦争は神秘の秘匿のため、闇に紛れて行うが定石。大戦となれば、尚更に気を払わねばなるまい。
     二人とも、聖杯から与えられた知識で知っていた。

  • 90◆zIKR/QD4og25/02/07(金) 19:55:17

    (アーチャー、ここまでよ! 仕事は終わり。帰るわよ)

    「了解しました、マスター」

     この戦いの第一射が凌がれた時点で退避していた少女の声が念話で届く。
     主もその例に漏れなかったようだ。
     無辜の人々を巻き込むことを望むわけでもない。アルジュナも従順に従った。

    「“青”のアーチャー、この勝負は預けよう。再び相見えられることを願っている」

     あちらも同様らしい。
     向かい合っていたシグルドも、戦意を解いていた。

    「同感です、“橙”のセイバー。次こそは、尋常に決着を着けましょう」

     彼の言葉にアルジュナは、英雄らしく答えて戦場を後にする。
     続いてシグルドも戦場から姿を消す。
     残されたのは、抉れ、崩れた山。粉砕された道。薙ぎ倒された、鋭利な切り口の木々。
     超常の戦いの痕だけが、地平線から差す朝日に照らされていたのだった。

  • 91◆zIKR/QD4og25/02/07(金) 20:00:45

     一連の戦いを見届けたヨハナは今、ベルリンへの帰路に居た。
     走らせたオートバイを適当な所で一時停止させ、傍らに実体化させた自らのサーヴァントを労っている。

    「ご苦労様、アーチャー。あんたの力、直に見れてよかったわ」

    「お褒めに預かり光栄です、マスター」

    「初めは魔力持ってくの流石にえげつなかったけど」

    「……恐縮です」

     サーヴァントの活動は原則として、マスターによる魔力供給を必要とする。
     宝具の発動はもちろん、全力の戦闘にも膨大な魔力を湯水のように消費し、その負担は魔力供給を担うマスターに振りかかるのだ。
     その負担にマスターが耐えきれなかったために自滅に至った事例もあり、狂化によってステータスを引き上げられたバーサーカーや、元々強力なスペックを持つ大英雄は特にこの傾向が強い。
     如何にヨハナが優れていても、本来ならばこうして話していられるほどの余裕なかっただろう。

    「ま、それでも途中から持ってく魔力を加減してくれてたんでしょ? それでもあんなに戦えてたのは、あんたのスキルのお蔭かしら」

     その秘密は、アルジュナのスキルにある。
     授かりの英雄。
     神話上で多くの者に、多くの者を与えられてきた彼の生涯が、英霊となってスキルと化したもの。
     呪いのような積極的に彼への害となる要因が存在しない限りは、アルジュナに必要なものが不足することはない。
     それは魔力も例外ではなく、限度はあるが自力での魔力補給が叶う。
     アーチャーとして持つ高ランクの単独行動スキルも合わせ、彼は霊格に比して魔力の負担を抑える術が多かった。

    「よかったわ、ほんと、授かりの英雄様々ね」

  • 92◆zIKR/QD4og25/02/07(金) 20:05:12

    「…………」

    「……もしかして気に障った?」

     ヨハナの言葉に、アルジュナは微妙な顔をする。
     授かりの英雄。そう称されるほどに、彼は本当に様々なものを授かった。
     宝具や祝福のみならず、宿敵への勝機でさえも。
     その生涯には、彼自身も複雑な想いがあった。
     沈黙するサーヴァントに、少女は褒めたつもりが失言だったかとその顔を窺うが、彼はすぐ落ち着き澄ました表情を取り戻した。

    「いえ、お気になさらず。私の未熟です」

     激しい戦いの高揚で弛んでいたか。
     そう己を恥じ、努めてなんでもないように振る舞うアルジュナ。ヨハナも、あまり触れられたくなさそうなことぐらいはわかる。わざわざ追及しようとは思わなかった。

    「んー……まあいいわ、気になるなら二度は言わないから。さ、戻って休むわよ」

    「はい」

     頷くと、アルジュナは霊体化して再び姿を隠す。
     それと同時に、オートバイが再び排気音を派手に鳴る。

    「……そうね、遅くなったけど。よろしく頼むわね、アーチャー」

    (ええ。こちらこそ、よろしくお願いします、マスター)

     そのやり取りを最後に、彼女たちは以降何事もなくベルリンへ帰還するのだった。

  • 93◆zIKR/QD4og25/02/07(金) 20:16:04

    「あ、お帰りなさ~い」

     一方、薙ぎ払われた森の更に奥深く。
     戦闘中、切り株に腰かけて戦いを観戦していた魔女が、自らの元へ戻ってきたサーヴァントを呑気な声で出迎えていた。

    「ああ」

     それにシグルドはただ一言だけ応えて霊体化した。

    「……なんだか冷たくない? セイバーあなた、あのアーチャー相手の方がフレンドリーだったんじゃない?」

    (そう感じたのなら、自分の胸に手を当てて考えるべきであると助言しよう)

    「もう仕方ないサーヴァント! いいわよ、ベルリン行くわよ、セイバー!」

     素っ気ない態度に憤慨したヘルカが立ち上がり、肩を怒らせながら森を進んでいく。
     車は先の“青”のアーチャーの一射で木っ端微塵となった。ベルリンまで歩くしかない。

    「……セイバー。ちょっと負ぶってもらっても……」

    (断固として拒否する)

    「堅物サーヴァント! ギャグもなんにもつまらない男!」

    (堅物で結構)

     彼女たちのベルリン到着は、その日の午後になった。 

  • 94◆zIKR/QD4og25/02/07(金) 20:20:06

    これにて聖杯大戦第二戦終了です
    まだギルエルの戦いから半日も経ってないという

  • 95二次元好きの匿名さん25/02/07(金) 20:22:32

    ノウハウ全くないのに立て続けに秘匿工作しないとな案件生えてて教会はかわいそうですね

  • 96◆zIKR/QD4og25/02/07(金) 20:42:29

    ヘルカはこの裏で、しれっと百貌を通してヒメルと連絡を取っています
    目立つベルリン行きは、シグルドに話した理由(パオとの接触)と、ヒメルという協力者への連絡という趣味と実益を兼ねていました

  • 97二次元好きの匿名さん25/02/07(金) 20:46:57

    本当にちゃっかりしてんな……

  • 98二次元好きの匿名さん25/02/08(土) 00:39:08

    おつほしゅ

  • 99◆zIKR/QD4og25/02/08(土) 00:40:11

    ここまで書いてきましたが、構想の固まってた分を書ききってしまったので、本文はここで一区切りとして、また🎲を交えてこの先の展開を取り敢えず幾つか固めてさせて頂こうかと思います

  • 100二次元好きの匿名さん25/02/08(土) 10:30:09

    保守

  • 101二次元好きの匿名さん25/02/08(土) 19:35:25

    ほしゅ

  • 102◆zIKR/QD4og25/02/08(土) 21:04:59

    こんばんは
    今夜は11月10日、夜明け以降に起こるイベントを纏める感じで進行させて頂こうかと思います

  • 103◆zIKR/QD4og25/02/08(土) 21:12:43

    現在構想しているイベントとその主要人物は以下の通りです


    教会 クレアの仕事終わり(クレア、アストライア)
    洋館 エンキの起床(エンキ、エルキドゥ、青の誰か)


    市街 橙術、昼食しつつ作戦会議(パオ、太公望、ギルガメッシュ)
    市街 橙騎、青から襲撃される(ソンブル&マリー、橙の誰か)


    市街 サーヴァントの戦闘(組み合わせ未定)
    市街 橙剣と橙術の接触(パオ、太公望、ヘルカ、シグルド)
    洋館 ノイン失踪(イシュタル活動開始)

    大体こんな感じで、まずは朝昼にあと1つずつくらい追加するイベントを🎲安価で募集させて頂きたいと思います

  • 104◆zIKR/QD4og25/02/08(土) 21:15:59

    というわけでまずは、朝の場面を>>105~>>107で🎲してみようと思います

  • 105二次元好きの匿名さん25/02/08(土) 21:19:49

    スパルタクス、マスターを連れて牢から脱走

  • 106二次元好きの匿名さん25/02/08(土) 21:20:03

    ヘルカからの連絡を受けてのヒメル側の反応とか?
    胃キリキリさせてそう

  • 107二次元好きの匿名さん25/02/08(土) 21:23:03

    橙狂主従のベルリン入り

  • 108◆zIKR/QD4og25/02/08(土) 21:24:11

    1.>>105

    2.>>106

    3.>>107


    dice1d3=3 (3)

  • 109◆zIKR/QD4og25/02/08(土) 21:25:14

    土方さん初登場ですね
    マフィアのドンとその付き人みたいな絵面になりそうな……

  • 110◆zIKR/QD4og25/02/08(土) 21:30:26

    続いて昼間のイベント🎲です

    >>111>>115

  • 111二次元好きの匿名さん25/02/08(土) 21:31:52

    ネロリサイタル開催

  • 112二次元好きの匿名さん25/02/08(土) 21:32:30

    スパルタクス脱獄

  • 113二次元好きの匿名さん25/02/08(土) 21:32:38

    スパルタクス、マスターに叛逆を説く

  • 114二次元好きの匿名さん25/02/08(土) 21:33:52

    エドマンド君ベルリン入り

  • 115二次元好きの匿名さん25/02/08(土) 21:34:44

    レジライとレダさんの絡み

  • 116◆zIKR/QD4og25/02/08(土) 21:36:00
  • 117◆zIKR/QD4og25/02/08(土) 21:36:50

    リサイタルだーっ!

  • 118二次元好きの匿名さん25/02/08(土) 21:38:28

    哀れ青陣営
    ヨハナさんは帰りが遅い事を祈る

  • 119◆zIKR/QD4og25/02/08(土) 21:42:23


    教会 クレアの仕事終わり(クレア、アストライア)
    洋館 エンキの起床(エンキ、エルキドゥ、青の誰か)
    市街 橙狂主従のベルリン入り(New)


    市街 橙術、昼食しつつ作戦会議(パオ、太公望、ギルガメッシュ)
    市街 橙騎、青から襲撃される(ソンブル&マリー、橙の誰か)
    洋館 ネロリサイタル開催(New)


    市街 サーヴァントの戦闘(組み合わせ未定)
    市街 橙剣と橙術の接触(パオ、太公望、ヘルカ、シグルド)
    洋館 ノイン失踪(イシュタル活動開始)

    聖杯大戦一日目の主要イベントは以上で決定となりましたが、繋げられそうな流れが思いついたら🎲を外れた安価の内容も書かれる可能性はあります

  • 120二次元好きの匿名さん25/02/08(土) 21:43:45

    協議に来た教会の人間がリサイタルに巻き込まれる可能性もある

  • 121二次元好きの匿名さん25/02/08(土) 21:47:21

    >>120

    被害者を増やそうとするんじゃあない!

  • 122二次元好きの匿名さん25/02/08(土) 21:49:16

    ワシは徹夜でげっそりしてる酒ヤニカスシスターがリサイタル食らってダウンしてる光景が見たいだけなんじゃ!

  • 123◆zIKR/QD4og25/02/08(土) 22:02:24

    ここからは、各イベントの流れを簡素に書き、細部を決めていきます


    朝 教会


    「………………朝かぁ」


      窓から差し込む冬の朝日。

     この教会を一人で受け持っていた修道女は、それを疲れきった顔で浴びたことで、ようやく夜明けに気付いた。


    クレアの疲労度(高いほど疲労困憊) dice1d100=47 (47)

  • 124◆zIKR/QD4og25/02/08(土) 22:09:36

    意外とまだ余裕あるな……


     呟いた修道女は、ゆっくりと目を閉じて――

    (それは怠惰ではないのかしら、異教の信徒?)

    「……うるさいわね……異教の女神……」

     頭の中に響いた咎める声に憎まれ口を叩きながら、彼女はのそのそと身を起こす。

  • 125◆zIKR/QD4og25/02/08(土) 22:15:04

     クレア・スコッティ。聖堂教会より派遣された、この聖杯大戦の監督役である。
     旧西部戦線でクレーターを作る戦いが繰り広げられた昨夜は、儀式の運営と秘匿を取り仕切る監督役としては激動の一夜だった。
     しかも夜明け前にも、追加でサーヴァントの戦闘が勃発し、崖崩れ、道路の破壊、などなど諸々の被害が発生。
     人死にこそ出ていないが、早くも当初の想定を優に超える規模の戦いばかりだ。

     ……実を言うと、その隠蔽工作についてクレアが関与した割合はそこまで多くはない。
     一方はベルリンから遠くはなれた西部での出来事であるし、もう一方もベルリンの外のこと。
     直接現場へ出向くような機会はなく、命の危険もなにもない。

     彼女にとって苦行だったのはむしろ、隠蔽作業に携わった組織間の折衝であった。
     聖杯大戦ならずとも、元より聖杯戦争を企図して準備を行っていたボイド率いるドイツ復権派。彼らは基本的に、聖堂教会の介入を快く思っていない。
     教会による監督役の派遣が滞りなく進んだのはただ、聖杯大戦を控える状況で強硬に排除しようとして教会と衝突を起こすのは得策ではない、という政治的判断に過ぎなかった。
     表向き監督役は置かせるが、実際の運営は自分たちでやるというのが彼らの内心であろう。

  • 126◆zIKR/QD4og25/02/08(土) 22:17:41

     だが彼らにとってお飾りであろうと、監督役が教会からこの件を一任された責任者であることは紛れもない事実である。
     気は重いが、任命された以上ただの傍観者に甘んじるのは彼女自身が許さなかった。

     クレアはクレアで、教会の遣いとして復権派と儀式の運営について半ば押し掛けて協議を行い、地元の関係各所と連絡を取り、更に事態を確認して自分たちも大々的に介入しようと画策する魔術協会も、波風立たないようにしつつこれ以上場が荒れないよう抑え込んだ。
     彼女はそれらの、神経を磨り減らす政治工作に一晩中付き合わされたというわけだ。

    「これ絶対、私みたいな使い走りにやらせる仕事じゃないと思うんだけど……これも主の思し召しなら、やりきるしかないのかしら」

  • 127◆zIKR/QD4og25/02/08(土) 22:23:40

    教会の隠蔽作業の割合

    青陣営の100-dice1d100=30 (30)


     きっとここから戦闘はどんどん激しくなる。

     ベルリン市街での戦闘も起こり得るだろう。秘匿に不手際があれば、神父にどやされるだけでは済まず、無辜の人々への混乱と災いにも繋がりかねない。

     任された務めを果たせ。

     そう自分を鼓舞し、シスタークレアは伸びをして机仕事で凝り固まった身体を解す。


    (それで結構。もし私の召喚があなたに宿る形でなかったのなら、ええ――指導に入っていたでしょうね)


    「なにする気だったのよ……」


     目下もうひとつの悩みは、彼女に付いて回るこの声の主。

     クレアに憑依する形で現れた、アストライアを名乗るサーヴァントである。

  • 128◆zIKR/QD4og25/02/08(土) 22:36:31

     目下もうひとつの悩みは、彼女に付いて回るこの声の主。
     クレアに憑依する形で現れた、アストライアを名乗るサーヴァントである。

     アストライア。
     ギリシャ神話の女神であり、剣と天秤を携えた姿は現代でも正義の女神として裁判所などに見られている。
     また、彼女の天秤が星座の天秤座に、彼女自身が乙女座になったという説もある。
     聖杯戦争の規模を超えた聖杯大戦を司るべく、現世へやって来たというのが本人(本神)の弁。

    (今日はルーラーとして我が務めに付き合って貰いますよ)

    「……? 改まってなにするって言うのよ、公正を保つために基本不干渉なんでしょう?」

    (その通り。しかし昨晩、一瞬でしたが場違いな、現世ではあまりにも濃すぎる神の気配を感じました。この戦いを司る者として、確かめもせずに放置してはおけないでしょう)

    「……そう。行くしかないってわけね……」

     儀式の滞りない進行はルーラーと監督役共通の務めである。言われてしまっては、聞かなかったことにはできない。
     修道服の乱れを整え、クレアは教会の扉を開くのだった。

  • 129◆zIKR/QD4og25/02/08(土) 22:40:10

    クレアさんの新たな仕事
    アストライアが感じ取った神の気配(イシュタル)についての捜査
    監督役との二足のわらじである

  • 130二次元好きの匿名さん25/02/08(土) 22:44:13

    大変なのに割と余裕あるの仮にも代行者なだけはあるな

  • 131◆zIKR/QD4og25/02/08(土) 22:54:56

    次なるイベントは起床するエンキ君です

     朝 ヴィッテルスバハ邸

     窓から差し込む朝日で、“青”のランサーのマスター、エンキ・シュヴァルツは目を覚ました。

    「やあ、起きたね、おはようマスター」

    「……ランサーか」

     主の覚醒に気付き、ベッドを覗き込むエルキドゥ。
     彼の姿を見たエンキは、昨夜の戦闘による多大な魔力の消耗で、戦闘終了と共にすぐ寝込んでしまったことを思い出した。

  • 132◆zIKR/QD4og25/02/08(土) 23:00:18

    目覚めたばかりのエンキ君ですが、青陣営の者がとある悪い知らせを伝えに来ます

    悪い知らせを伝えてきたのは(帰還中のヨハナは除外)


    1.ボイド 2.アンジェ 3.レダ 4.ヒメル 5.ベヴストザイン 6.ランサー自身

    dice1d6=3 (3)

  • 133◆zIKR/QD4og25/02/08(土) 23:14:02

    丁度まだ殆ど出番書けてなかった人が来た


    「目が覚めたのね、ランサーのマスター」

     ランサーに自分が眠っていた間の状況を聞こうとして、それよりも早く私室の扉が開いた。
     入ってきたのは、従姉に匹敵する恵体をした黒髪の女性だった。

    (確か、大佐殿が雇い入れた魔術使いだったか)

     彼女――レダ・スレブロは、前置きもほどほどにそれを告げる。

    「ボイドが忙しくしてるから代わりに伝えに来たんだけどね。小聖杯のあの娘、昨晩から眠り姫になっちゃったんだよ」

    「なっ――」

     その一言は、エンキの意識に残留していた眠気を吹き飛ばす凶報だった。

  • 134◆zIKR/QD4og25/02/08(土) 23:30:21

    ギルエルの再会=イシュタル降臨によりノイン昏睡(夜になってイシュタルが完全に目覚め、活動開始)
    このような運びとなりました

    今夜はこの辺りでおしまいとなります
    進行の段取り悪くて申し訳ない
    文章書くのが追いつかないので、次からは本当に話のポイントを🎲や安価で決めていくだけな感じになるかと思います

  • 135二次元好きの匿名さん25/02/08(土) 23:34:14

    思ってた以上に展開早く進みそうだな

  • 136◆zIKR/QD4og25/02/09(日) 00:31:39

    >>135

    うーん、あるいはノイン昏睡のイベントはもう一日か二日遅らせた方がいいかもですね

    この辺のイベントは二日目か三日目にスライドしてエンキ君とノインちゃんの関わりをギリギリまで作るべきか……

  • 137二次元好きの匿名さん25/02/09(日) 08:02:42

    保守

  • 138二次元好きの匿名さん25/02/09(日) 17:12:53

    ほっしゅ

  • 139二次元好きの匿名さん25/02/09(日) 23:02:33

    保守

  • 140◆zIKR/QD4og25/02/10(月) 01:06:19

    こんばんは

    今夜は全然入れず申し訳ない

    前回述べた通り簡素になりますが、今夜はバーナード老&土方さんのベルリン入りの分だけさくっと🎲しておきます

    これで一日目朝のイベント分は終了で、明日は昼のイベントについて🎲する予定です

    橙狂主従のベルリン入り

    状況はdice1d2=2 (2)

    1.既に他のメンバーと合流もしくは連絡が取れている

     その相手dice1d3=3 (3)

         1.グナーテ

         2.グロリア

         3.ソンブル

    2.まだ単独、二人っきり

  • 141二次元好きの匿名さん25/02/10(月) 10:36:24

    保守

  • 142二次元好きの匿名さん25/02/10(月) 13:34:23

    昼保守

  • 143二次元好きの匿名さん25/02/10(月) 19:23:31

    関係性良好だから色々話しながらベルリン入りすんのかな?

  • 144二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 00:22:57

    ほしゅ

  • 145二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 10:00:18

    保守

  • 146◆zIKR/QD4og25/02/11(火) 18:45:54

    こんばんは
    なかなか時間取れず申し訳ない。今夜は昼のイベントについて決めていきたいと思います
    お昼イベントのあらすじ

     昼 ベルリン ある大衆食堂

     昨夜泣き疲れて眠ってしまったパオが目を覚ましたのは、街が既に昼を迎えようとしている頃だった。

    「夜明け前に、また戦いがあったようです」

     そう語る太公望に少女は詳細を尋ねようとしたが、その前に小さなお腹が唸り声を上げる。
     恥ずかしそうに黙り込む主に太公望は苦笑いしながら、

    「まずはお腹を満たしましょうか。腹が減っては戦はできぬと言いますので」

     食事の席で、今後の方針も含めて話しましょうという太公望の言葉で、いま彼女たちは再び大衆食堂に来ていた。

    「マスター、少し席を外します」

     昨日にも増して食べるパオの横で、黒いフードを被った老人に気づいた太公望が席を外す。
     そして戻ってくると――

    「フハハハハ! なかなか食べるではないか娘! 店主、いまの料理を追加だ!」

    (もっきゅもっきゅ)

     見覚えのある金色が、自分の居た席に我が物顔で座っていた。

    「…………なんでかなぁ」

  • 147◆zIKR/QD4og25/02/11(火) 19:04:06

    単独行動英雄王襲来(衣服調達のついでに発見された)

    ギルガメッシュ→パオ

    dice1d2=2 (2)

     1.まあ子どもの範疇

     2.よくないモノを孕んでいるな


    パオ

    昨夜の戦いでは怖かったが、今は危なくなさそう。奢ってくれると言ってるし遠慮なくご飯を食べている。図太い

    パオ→ギルガメッシュの印象

    低いほど変なおじさん認識⇔高いほど凄い人っぽい

    dice1d100=96 (96)

  • 148二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 19:08:58

    これはグッドコミュニケーションの予感

  • 149二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 19:49:01

    死徒はよくわからんAUOだが悪魔はどうなのか
    まあ幻想種だから似たようなのウルクで見飽きてるか

  • 150二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 23:03:34

    保守

  • 151◆zIKR/QD4og25/02/11(火) 23:14:09

    会話内容

    パオの話題

    dice1d3=2 (2)

     1.「あの綺麗な人とお友達だったんですか?」

     2.「ごめんなさい。それでもあんなに暴れるのはよくないと思います」

     3.「お願いしたのは私だから、怒るなら私にして、キャスターは許してあげてください」


    ギルガメッシュの話題

    dice1d2=2 (2)

     1.「お前はなぜこの戦いに挑む?」

     2.「聖杯は我のものだが?」



     

  • 152二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 23:19:38

    クソ度胸がすごいなこのスラムのガキ

  • 153二次元好きの匿名さん25/02/12(水) 01:36:35

    子供を餌付けする不審者みたいだ

  • 154二次元好きの匿名さん25/02/12(水) 07:34:30

    ほしゅ

  • 155二次元好きの匿名さん25/02/12(水) 13:47:08

    ギルがかなりの大物だってことは理解した上で
    今の発言出来るパオちゃんとんでもない度胸してんな…
    ギルからは子供認定されてそうなのと大物オーラ感じ取ってるのは
    察してそうなんで割と好印象だったりするのかな…?

  • 156◆zIKR/QD4og25/02/12(水) 17:41:43

    昨夜はぶつ切りになってしまって申し訳ない
    今夜も進行は難しいかもです
    保守代わりに、昨夜決めた分で書いたパオギル対談を置いておきます
    改めて書いたらもうちょっと地の文やら台詞回しやらで変わりますが、大体こんな感じという内容です


    「あの綺麗な人とお友達だったんですね。邪魔をしてごめんなさい。でも、やっぱりはしゃいでたからってあんなに暴れるのはよくないと思います」

    「……ほほう、言うではないか。だがまあ、一先ず謝意は認めよう」

    (僕には問答無用だったのになぁ……)

    ――

    「聖杯は我の宝であり、我はその盗人どもをに誅を下すのみよ。それ以外の道理はない」

    「それなら、もしも私たちが聖杯戦争を終わらせたら、ギルガメッシュ王さんは帰ってくれますか?」

    「ふん、それだけのものを示した勇者の言ならば、我が一考する価値はあろうな。できればの話だが」

  • 157二次元好きの匿名さん25/02/12(水) 23:29:14

    夜保守

  • 158二次元好きの匿名さん25/02/13(木) 01:58:18

    すげぇなこの娘、我様相手に(辛うじて)譲歩条件を引き出したぞ…
    連合と青の陣営、よかったなこの娘が止めに来てくれて(マジで)

  • 159二次元好きの匿名さん25/02/13(木) 07:33:01

    保守

  • 160◆zIKR/QD4og25/02/13(木) 16:46:58

    パオギル対談、その結末です
    今夜は残る昼のイベントについて行おうと思います

     王と少女が一通り言葉を交わし、食卓に並んでいた料理たちもその姿を消した頃。

    「我と友の宴に水を差した罪の償いは本来、万死でも足りぬところだが……道理を知らぬ童の行いであり、その謝意を受けて尚も怒りを露にしては王の沽券に関わる。故に、昨夜の件は不問としよう。我の寛大さに感涙し、讃えることを赦す」

    「しかし友が居る以上、我は今後もこの戯れ合いに本気で興じるつもりだ。そこな小賢しい術師とて、再び我の眼に入れば罪人として処すのみ。この戦に挑み続けるというのならば……その初心を、努々忘れぬことだ、娘」

     共に食堂を出た金色の王は、自身に意見した少女にそう告げて、街の雑踏を割るように歩き去っていった。

    「……マスター、僕は生きた心地がしませんでしたよ」

    「でも、ちゃんと話を聞いてくれる人だったよ、ギルガメッシュ王さん」

     それを見送った二人。
     一方はひきつった笑みを浮かべ、もう一方は「緊張したな」という程度で一息つく。
     英雄王という嵐への感想に温度差のある二人だった。

  • 161二次元好きの匿名さん25/02/13(木) 16:51:39

    見逃してくれた我様、(本人基準でなら)めっちゃ寛大でしたね…

    温度差はあるにはあるけど>>147の認識+>>151で暴れた張本人として認識してるから

    パオちゃん本人も下手したらこの場で殺されてもおかしくなかったとは思ってそう

    (スラム育ちなのに変に擦れてない分こういう所で図太い所が出てきてるのかな)

  • 162二次元好きの匿名さん25/02/13(木) 18:01:35

    >>161

    スラム育ちという経歴からして、恐らくパオちゃんは話の内容を受け取り、会話をしてくれてる時点でありがたいと思ってるのではないか


    スラムのみなしごなんて、汚いモノ扱いでまともに取り合わない人も多かっただろう。同じ孤児まちからさえ迫害されてたのもあるし

  • 163二次元好きの匿名さん25/02/13(木) 20:25:14

    恐れつつも勇気を出して物申す子供とか見応えあるなってなるわな

  • 164◆zIKR/QD4og25/02/13(木) 22:13:43

    こんばんは
    今度はネロリサイタルについてです

     ヴィッテルスバハ邸 大広間

     数日前の“青”のバーサーカーの暴走から見事に修復されたそこでは今、机とその上の多様な料理が並び、陣営の主要人物の殆どが参加する午餐会が開かれていた。
     彼らが行う聖杯大戦は、基本的には拠点に構え、敵の出方に都度対応する籠城戦の形になる。
     そして籠城戦で重要なのは味方の士気であり、それを保つ手段として美味な食事は特にメジャーと言っていい。

     この料理の総指揮は元々料理人だったベヴストザイン。
     こちらも、一般人出身である彼の気晴らしとして丁度いいだろうというボイドの計らいである。
     彼の思惑通りか、帰還したヨハナを含む全てのマスター、地下牢のバーサーカーを除いた全てのサーヴァント、更に館に詰める軍人たちが揃った会食の場はなかなかに賑わっていた。

     だがある時、流れが変わる。
     それは、自由気ままにあちこちの料理を味わっていたキャスター――ネロが、おもむろに広間の中央へ立った瞬間だった――

  • 165◆zIKR/QD4og25/02/13(木) 22:14:12

    ズバリ、何人逃げられたのか

     1=現実は非情である。2=逃げられたor耐えられた


    マスター陣(ボイドの現実は確定で非情である)

     アンジェdice1d2=2 (2) エンキdice1d2=1 (1) ヨハナdice1d2=2 (2)

     レダdice1d2=2 (2) ヒメルdice1d2=2 (2) ベヴストザインdice1d2=2 (2)

    サーヴァント(スパルタクスは地下のため除外)

     ローランdice1d2=2 (2) エルキドゥdice1d2=2 (2) アルジュナdice1d2=2 (2)

     レジライdice1d2=2 (2) 百貌dice1d2=2 (2)

    軍人たち(回避できた者の割合)

    dice1d10=8 (8) 割

  • 166二次元好きの匿名さん25/02/13(木) 22:15:24

    ダイスうっそだろ???

  • 167◆zIKR/QD4og25/02/13(木) 22:16:08

    ここまで偏る???
    エンキ君(ランサーのマスター)が死んだ!

  • 168二次元好きの匿名さん25/02/13(木) 22:17:38

    この人でなし!

    それはそれとして共に同じ痛みを分かち分かり合ったエンキ君とクソボケはやはりベストフレンドなのでは?

  • 169二次元好きの匿名さん25/02/13(木) 22:21:42

    クソボケからの一方的な矢印が更に大きくなりそうではあるけども……

  • 170二次元好きの匿名さん25/02/13(木) 22:31:20

    耐えれた人達は爆心地からは離れててダメージ軽減出来てたとかかな?

  • 171◆zIKR/QD4og25/02/13(木) 23:19:18

    まさかの🎲結果でしまが、気を取り直して、次は橙騎主従への襲撃へ行きます

     ベルリン 市街地

     ある喫茶店の、街並みを望むテラス席。
     そこには、昼食を摂る二人の少女が居た。

    「使い魔で見られた分だけでも、向こうの拠点の守りは厳重だったわ。近辺の上等な霊地も抑えられていて、私なんかじゃ手出しできない」

     食の進んでいない黒い少女の片割れ――ソンブルは、俯きながら偵察の結果を対面に座る少女へ告げる。
     それを受ける、白を基調とした可憐な服装ながらにどこか退廃的な雰囲気を漂わせる少女は、特段驚きを見せなかった。

    「そうでしょうね。ここは“青”の領地なのでしょう? まともに突っ込んだら死んじゃうわね」

     そう言って、引き裂いたパンケーキを口に運ぶのはライダーだ。
     真名をマリー・アントワネット。
     フランス革命の混乱に散った王家の白百合。
     後年に彼女の言葉ではないと明らかになるが、“パンがなければお菓子を食べればいい”という発言で知られ、フランス王国を傾けた浪費家と印象づけられた彼女。
     そんな彼女がケーキを口にする姿には、やはり王族の気品がある。
     ソンブルも既に、食事をはじめとした様々な作法について何度も指導されており、見た目は大して変わらないのにこうした点に関して彼女にはすっかり頭が上がらなくなっていた。

    「……だから、予定通り他のマスターたちとも合流するわよ、ライダー。目的地は――」

     だから、聖杯大戦においてはちゃんとしたマスターとして振る舞おうとしたソンブルだったがそこへ、ゴトンという重い音が鳴った。

  • 172◆zIKR/QD4og25/02/13(木) 23:19:53

    「――――?」

     見てみれば、足下に奇妙なモノが転がっていた。
     小さな缶詰のようなものに木製の棒がついた、小さな棍棒のような何か。
     それが先の戦争で使われた手榴弾と呼ばれる歩兵兵器であることなど、ソンブルの知識で気づくことはできず。

    「ソンブル!!」

     ソンブルは叫んだマリーに勢いよく街路へ引っ張り出され、その次の瞬間、寸前まで彼女たちが居たテラス席が爆発したのだった。

    「大丈夫かしら?」

    「え、えぇ、ありがとう、ライダー」

     ライダーの確認にふるふると頷くソンブルが思考を回す。

    (“青”の襲撃!? こんな昼間から!?)

     なんて馬鹿なことを、と思いかけて、少女は街中で爆発が起きたのに自分たち以外の人の声がしないことに気づいた。
     いつの間にやら、この辺り一帯から人の気配が消えている。
     人払いがされていたというわけだ。

  • 173◆zIKR/QD4og25/02/13(木) 23:20:12

     完全に油断していた。
     考えてみれば、敵はこの街を掌握している。どんな方法を用いたかは想像するしかないが、民間人を立ち去らせるくらいは権力と魔術が揃えば不可能な筈がないのだ。

    (失敗した、失敗した、失敗した)

     動揺冷めやらぬうちに、路地や向かいの建物の屋根など至るところから軍服を着込んだ影が現れる。
     仕留め損ねた相手の追撃だろう。彼らは銃を向けている。
     狙いは当然、敵である自分の命。

    「あ……」

     殺される。死を想起した少女の前で、その死の化身たちは首が飛んだ。

    「ライダー……?」

    「ええ、ええ、殺しましょう、ここは楽しい処刑場。八つ当たりには最適ね」

     尚も現れる影たちにライダーは愉しげに応じる。
     ソンブルはその姿に、何も言えなかった。

    「私から離れないでね、マスター」

     その笑顔が、同じ人物のものとは彼女には思えなかった。

  • 174◆zIKR/QD4og25/02/13(木) 23:25:26

    というわけで、青による橙のメンバーへの襲撃です


    襲撃を受けたのは

    dice1d4=3 (3)

     1.ソンブルたちだけ

     2.+橙槍

     3.+橙狂も

     4.…2+3

  • 175二次元好きの匿名さん25/02/13(木) 23:27:33

    とりあえず単独で動いてそうなとこに襲撃してんな

  • 176二次元好きの匿名さん25/02/13(木) 23:31:35

    マッドな初恋拗らせ虫爺に襲いかかるかと後が怖いな

  • 177◆zIKR/QD4og25/02/13(木) 23:38:56

    バーナード老も襲撃されていました。

    ちなみに襲撃者たちはボイドの操る死体です(主な構成員は大戦の死者)


    ちなみに襲われなかったグロリアさんは……

    dice1d2=2 (2)

     1.単純に捕捉されてなかった

     2.ジャガーの鼻が利いた



     

  • 178二次元好きの匿名さん25/02/13(木) 23:40:35

    流石ジャガー野生力がすごい

  • 179二次元好きの匿名さん25/02/13(木) 23:50:55

    死体なら腐ってて臭そうだしな

  • 180二次元好きの匿名さん25/02/13(木) 23:52:46

    青もなりふり構わなくなってきたな…まぁあのコンビの初手激突見たし当然か
    現状我様を単体で何とか出来るのはエルキドゥ+エンキのコンビだけだし
    (早速そのエンキが歌の犠牲になってるが)

  • 181二次元好きの匿名さん25/02/13(木) 23:54:54

    ノインがダウンしてるのを聞かされた後ネロちゃまの歌声を聴いたダウン

  • 182◆zIKR/QD4og25/02/14(金) 00:00:30

    ボイド「人払いは済ませたし被害はスパルタクス団残党に被せる準備万端なのでセーフ」


     現れた数多の襲撃者たちを、ライダーは断頭の刃で蹂躙した。

     マリー・アントワネットに武勇の逸話はないが、現代の魔術師の操る使い魔が数を揃えた程度で勝てるほどサーヴァントは甘くない。

     無論、相手もそれは折り込み済みだろう。恐らくこれは、敵サーヴァントへの威力偵察。


     軍服に身を包んだ動く死体たち。

     彼らを全員首無し死体へ進化させたライダーの背に、ソンブルの声がかかる。


    「ら、ライダー、終わったのかしら?」


    「油断はしちゃダメよ、まだ」


    ここで現れるのは

    dice1d2=2 (2)

    1.「無事でなによりだな、後輩」

    2.「無事だったようだの、ローブリューの娘」

  • 183二次元好きの匿名さん25/02/14(金) 00:06:06

    お爺ちゃんと合流か

  • 184◆zIKR/QD4og25/02/14(金) 00:23:22

    「無事だったようだの、ローブリューの娘」

     現れたのは、洋装の東洋人を背後に控えさせる銀髪の老爺だった。

    「あなたは……」

    「先に名乗ろうか。儂(おれ)はバーナード・ソザートン、この“橙”のバーサーカーのマスターよ」

     ソザートン家。200年程度の歴史であるローブリュー家の倍以上の歴史を持つ、歴とした貴族の名だ。
     ソンブルの顔に緊張が走る。

    「まあそう緊張するな、儂(おれ)も孫くらいの娘を怯えさせる趣味はない。楽にしろ」

     好好爺のような言葉とは裏腹に、彼が自分へ向ける視線からソンブルは寒気を感じる。
     この老人の視線は、そのまま自分を絡めとる蜘蛛の糸のようだった。

    「儂もこいつら死体どもに襲撃を受けてな。ヴィッテルスバハの小僧の差し金だろうが、派手にやりやがる。既に他にも連絡を取ったが、元々味方同士、連携して“青”の陣営に当たろうと思うが、どうだね?」

     その老人が、そう言ってこちらへ手を差しのべる。魔術師として未熟なソンブルにとって、味方との合流は正しく望んでいた展開。
     まさか突き放せはせず、ソンブルは震えを堪えてその手を取るのだった。

  • 185二次元好きの匿名さん25/02/14(金) 00:24:52

    まぁこの人本人は…………悪い人だけどわざわざ味方を攻撃して
    敵陣営相手に戦うための戦力を減らすタイプじゃないから大丈夫だよ、多分…

  • 186二次元好きの匿名さん25/02/14(金) 00:36:55

    まあ減る事はないんじゃない?

  • 187◆zIKR/QD4og25/02/14(金) 00:44:01

    ソンブル、不穏な味方との合流でした
    グロリアさんだったらもうちょっと安心して合流できてましたね

    土方さんとマリーオルタの相性は想像しかできませんが、もし大人フォルムだったら別嬪さんだと言ってるんだろうな土方さんは

  • 188◆zIKR/QD4og25/02/14(金) 01:09:39

    これで昼のイベントは全て終了し、残るは夜のイベントです
    今夜は以上となります

  • 189二次元好きの匿名さん25/02/14(金) 07:31:01

    保守

  • 190二次元好きの匿名さん25/02/14(金) 14:56:23

    ほうしゅ

  • 191◆zIKR/QD4og25/02/14(金) 20:58:35

    こんばんは
    今夜は夜のイベントの進行をしていきます

  • 192◆zIKR/QD4og25/02/14(金) 20:59:03

    ただあと僅かなので次のスレを立てますね

  • 193◆zIKR/QD4og25/02/14(金) 21:02:20
  • 194二次元好きの匿名さん25/02/14(金) 21:02:39

    立て乙

  • 195二次元好きの匿名さん25/02/14(金) 21:05:55

    埋め

  • 196二次元好きの匿名さん25/02/14(金) 21:17:56

    うめ

  • 197二次元好きの匿名さん25/02/14(金) 21:54:12

  • 198二次元好きの匿名さん25/02/14(金) 21:55:10

    うめめ

  • 199二次元好きの匿名さん25/02/14(金) 22:26:49

    埋め

  • 200二次元好きの匿名さん25/02/14(金) 22:37:51

    うめ

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