ゴールドシップ「トレーナーへ ゴールドシップより」

  • 1二次元好きの匿名さん21/09/13(月) 17:35:12

    「ゴールドシップさん。ご臨終です」
    そう告げる電話の向こうの声が、自分には酷く無機質なものに思えた



    何も手につかない。何も、何ひとつ
    3年間を共にした彼女は、病気で死んだ。呆気なく

    「まだ治療法が確率されていませんからね。五分五分と言った所でしょうか。本人の気力と、そして運次第になってしまいます」

    あまりに残酷な宣告を受けて。打ちひしがれている俺をあいつは笑った。

    「なーに死んだ顔してんだ。何とかなるに決まってんだろ!このゴールドシップ様だぜ!んな事よりあんたは復帰レースまでの計画を立ててくれよな!」
    「……あぁ!そうだな!」

    この時、俺は過信してしまった
    こいつなら、ゴールドシップなら大丈夫だと。規格外を幾度となく起こす彼女なら大丈夫だと。
    だがその言葉と裏腹に彼女はどんどん弱っていった
    しなやかな筋肉はみるみる落ち、やつれていく
    艶のある銀髪には枝毛が増えていく
    頬の肉がこけていく
    その度に、どうしようもない不安に駆られていた
    誤魔化すために、ひたすら復帰レースへの計画を立てた。立てた。立て続けた



    「ご臨終です」


    どこか遠くで、何かが割れる音がした

  • 2二次元好きの匿名さん21/09/13(月) 17:36:03

    「……だるいな」


    ぼんやりとトレーナー室の天井を見上げる
    少し前までは、もっと忙しなく動いていたはずなのに。今は鉛のように体が動かない


    コンコンコン

    しんと静まりかえった部屋にノックの音が響く

    「失礼します、こんにちは。トレーナーさん」

    少しやつれた様子の、メジロマックイーンが入ってきた
    彼女も、ゴルシがいなくなったことがショックだったのだろう


    「………何かな。」

    少しぶっきらぼうな口調になるが、構う余裕はなかった

    「こちらを渡しに参りました。ゴールドシップさんに生前頼まれていたものです」

    そんな俺の態度に眉を下げながらも少し掠れた声でマックイーンが差し出された封筒には、あのヤンチャなゴルシわらしくない達筆な文字で書かれた トレーナーへ の一言
    思わず息をのむ
    吸い寄せられるようにようにそれを手に取り、封を切る

  • 3二次元好きの匿名さん21/09/13(月) 17:36:46

    よーーす!トレーナー!
    この手紙を読んでるっつーことは、まぁー残念ながらあたしは死んじまったってことなんだなぁ。いやぁ全力で生き残るつもりだったんだけどよ、猿も木から落ちるって言うしな
    どんまいどんまいってことで

    んまぁ、前置きはこんぐらいで。あたしはじっと机の前で手紙書くなんてい好きじゃねぇからちゃっちゃと本題に移らせて貰うぜ!

    かーわいい担当愛バが死んじまって、律儀に落ち込みまくってなーんにも手につかないトレーナーさんよ。どうか、どうか前を向いてくれ。
    あたしのことばっかり考えて、ずっとずっと後を向いて塞ぎ込んでるなんてやめてくれよ。
    なぁ、あたしがあんたをトレーナーにスカウトさせた時の言葉、覚えてるか?
    あたしはあんたを楽しませたくて、だからあたしはあんたをトレーナーにした。もちろん、このゴルシ様のことだ。あんたを最高に楽しませることが出来たはずだ。胸を張って宣言できる。
    でもな…でもな。あんたと一緒に過ごして、あんたとずっと一緒にいて。あたしも最高に楽しかったんだ。
    あんたを楽しませるつもりが、いつのまにかあたしも楽しませられてた。最高の、最高の時間だった。
    もちろんそれだけじゃねぇ。あたしの走りを見て。お前に、トレーナーに指導されたあたしの走りを見て。沢山の人が、楽しんでくれるんだ。笑ってくれるんだ。
    あたしだけじゃ、絶対にできないすげぇことだぜ。これ!
    トレーナーはな、ウマ娘を指導するのもすげぇ上手いけど、人を楽しませることも上手いんだ。
    だからあたしはお前にここで止まって欲しくない。もっともっと、たくさんの人を楽しませて欲しい。それにな、うじうじしてるトレーナーは見てて少しも楽しくねぇからよ。だからちゃんと進んでくれよ。過去にばっかり見てないで、未来にな。
    かわいいかわいい担当愛バの最後のワガママ。もちろん聞いてくれるよな?
    たっくさんの土産話。待ってるからな!

  • 4二次元好きの匿名さん21/09/13(月) 17:37:27

    何度も、何度も、彼女の字を追う

    枯れたはずの涙がひっきりなしに溢れる

    手が震えて、喉は痛いばかりひくつく



    静まりかえった部屋に、男の泣き声がこだました

  • 5二次元好きの匿名さん21/09/13(月) 17:43:49

    春。桜舞い散る、出会いと別れの季節

    トレセン一大イベントの選抜レースが開催される時期でもある。特にこの時期は入ってきたばかりの新入生が参加する場合が多く狙い目だ

    「…っにしても、相変わらずレベル高いなぁ」

    さすが日本最高峰、と言ったところだろう。どの子の走りも力強い
    思わずまじまじと見ていたら…


    「……っ!」

    最後方でターフを駆け抜ける1人の少女に視線が留まる
    サラサラの黒髪を1つにまとめた、おっとりしてそうな優しい顔立ちの女の子

    ドクン、らしくもなく心臓が騒ぐ

    そして、最終コーナー手前

    「はぁぁぁぁぁぁっ!!!」

    大きな叫び声と共に彼女はグングンスピードをあげて…

    「……すげぇ!」

    見事なごぼう抜きをみせてゴールをした

    彼女となら、彼女と一緒なら

    無我夢中で駆け寄る

  • 6二次元好きの匿名さん21/09/13(月) 17:44:58

    「やぁ。君」
    「えっ!?私ですか?」

    少しオドオドした様子は彼女と正反対だけれど。

    「そう。君のことだよ。凄い走りだったね、どうだい?僕と一緒に組むって言うのは。君となら、たくさんの人を楽しませる、素晴らしいレースが出来そうだ!」
    「ほんとですか!嬉しい!是非お願いします!」

    礼儀正しく深々とお辞儀をする彼女となら、きっとあいつを、聞いてやれるだろう。
    そして何より彼女の走りに、強く、強く惹かれた

    「そうか。じゃよろしくだ。君、名前は?」
    「ユーバーレーベンです!」

    見てろよゴルシ。飽き性なお前が目を離せないくらいのレースを、彼女、ユーバーレーベンとしてやるからな

    「これから一緒に頑張ろうな!」
    「はい!」

  • 7二次元好きの匿名さん21/09/13(月) 17:46:25

    唐突に思いついたからかきなぐった
    誤字とか普通にあると思いますが…申し訳ない
    楽しんでくれたら嬉しいです
    ゴルシの遺言は別バージョンも考えてるんですけどまたの機会があったら書きたい

  • 8二次元好きの匿名さん21/09/13(月) 17:51:08

    とんねるずの葬式コントかと思ったら違った(困惑)

  • 9二次元好きの匿名さん21/09/13(月) 17:52:10

    🐴ゴルシちゃんは死なない

  • 10二次元好きの匿名さん21/09/13(月) 17:58:14

    やめてくれ泣く😭

  • 11二次元好きの匿名さん21/09/13(月) 17:58:23

    手紙を隣で読み始めるのかと思ったらしんみりさせやがって

  • 12二次元好きの匿名さん21/09/13(月) 19:03:25

    勝手に殺すな

  • 13二次元好きの匿名さん21/09/13(月) 19:06:27

    ゴルシちゃんは今も元気に生きとるやろが!それはそれとしていいSSだった

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