白草四音の日記

  • 125/02/02(日) 16:56:08

    ○月+日
    今日、初星から移籍したプロデューサーが来た。
    どんな人間かと煽っても馬鹿にしても気にも留めない男だった。張り合いが無い。...つまらない男だった。
    別れ際にようやく何か言ったと思えばボクには才能がある、だ。
    ...今までも似たようなことを言ってくる人間はいた。けれど所詮どれも打算で埋め尽くされたものばかりだった。月花姉さまに取り入りたい、才能を育てたい、良い顔をしたい、自慢したい。...結局は良い才能だと誉めそやす自分達に酔っている人間の体のいいマトに使われるだけ。
    思い出したくない過去を思い出すハメになった。
    ふざけるなと言いかけて男と眼が合った。
    ...随分と妖しい眼をしていた。
    本気で才能があると感じた人間の眼を、していた。
    本気なのか、それを聞こうとした時にはもう踵を返していってしまっていた。
    ...普通、才能を感じたならスカウトをするんじゃないのか、ボクの方からさせようとしている?
    そう思うとイライラする。

  • 225/02/02(日) 16:58:36

    ○月<日
    あの男と話をした。
    「白草月花なんかより才能がある」はっきりとそう言っていた。...所詮スター性の範疇に収まっているだけのアイドルで求めているのはボクのような存在だ、とも。
    ...ボクのしてきた嫌がらせやズル、印象操作すら把握していた。そのうえで全て肯定していた。
    何をしても許される特異的な資質がボクにはある。
    見た者の脳細胞まで支配して熱狂させる才能がボクにはある。
    信仰を生む力がボクにはある。
    カリスマ性と呼ばれるモノがボクにはある。
    心底嬉しそうにそう話すあの男が...少し怖かった。
    プロデュース契約を結んでやってもいい。
    そう話しに行くつもりだったのに結局逃げて帰ってきた。
    ...一緒にいた撫子も震えていたし。

  • 325/02/02(日) 17:00:26

    ○月「日
    今日は黒井社長にあの男について聞いてきた。
    ...極月の系列出身で初星のプロデューサー科を主席で合格。あの十王と同じ才能が視える眼の持ち主。そしてここに来る直前まで『一番星』十王星南のプロデュースをしていて最近の躍進はあの男の手腕によるものが大きいらしい。近く開かれるN.I.Aに向けて呼び戻したのだと言う。まだ経験の浅い極月の低ランクアイドルの底上げをさせたいそうだ。
    黒井社長は「信念を忘れさせた男だ」と楽しそうに笑っていた。
    ...そんな男がボクに目をつけた。
    正直、高揚感のようなモノがあるのも確かだ。
    月花姉さまよりも才能がある__そんなこと今まで何度も夢想して期待して現実に失望した。
    ...本当に月花姉さまよりもボクの方が才能があるのだろうか?
    ...嬉しい、と思ってしまっている自分がいるだけにタチが悪い。

  • 425/02/02(日) 17:02:01

    ○月^日
    あの男は正気なのか?
    どうかしている。あれだけボクに期待させておいて「先約がある」だ。ふざけるな、お前はもうボクのモノじゃないのか。
    ...撫子がボク以上に怒っていて少し冷静になれたがボクをその気にさせるだけさせておいてどうかと思う。
    ...N.I.Aに向けて初星の方から極月へ移籍するアイドルが近い内に来るらしい。なんでも引退ライブをしてファンとしっかりとしたお別れをしたがっているのに十王社長が引き留め続けていてさせてもらえていないそうだ。それで、極月へ移籍した上で所属アイドルのサポートを条件に引退ライブの実施を約束してもらったらしい。ただそのアイドルは活動を辞めていて極月に来てからの立て直しに時間がかかる。だからプロデューサーとして支えなければ、ということを言っていた。
    ...そんなものボクのプロデューサーにならない理由にはならない。
    ボクとそのアイドル、両方担当すればいい話じゃないのか。
    そう言うと立て直しが軌道に乗り次第ボクと契約を結びたい、と言ってきた。
    ボクを優先しないことにイライラする。
    ...あの男が欲しくてたまらない自分に一番イライラする。

  • 525/02/02(日) 17:02:53

    ○月☆^日
    __イライラする。
    あの賀陽燐羽とかいうアイドル。
    見れば分かる、アレもあのプロデューサーに絆されている。少なからず好意的に思っているのだろう。
    ...ボクを見て勝ち誇ったように笑っていた。
    頭に来て、目の前であのプロデューサーに宣言させた。
    もうボクのモノだって。
    あからさまに蝙蝠女の機嫌が悪くなったのを見てスカッとした。
    だと言うのにあの男は「仲良くして下さいね」だ。
    空気が読めないのか?
    仲良くなど出来るハズがない。
    ...早く引退してしまえ。

  • 625/02/02(日) 17:06:12

    ○月¥%日
    撫子があの蝙蝠女について調べていた。
    初星学園中等部元No.1ユニット Syng Up!のリーダー。実力は間違いなく一級品、ただ何かと素行に問題があったユニットで最終的にあの女が大炎上してユニットの解散の原因だとかなんとか言われているらしい。他にも色々言っていたが撫子のことだ、あまり信憑性のあるものでもないだろう。聞き流すぐらいでちょうどいい。
    ...そんな女でもわざわざ極月へ来てまでファンと別れの挨拶をしたいなど殊勝なものだ。
    ...ボクはファンのことなど道具にしか思っていないしプロデューサーにも「そんなアイドルの在り方もいいでしょう」と肯定された。...それなのにあの女に負けた気がするのは何故だろう。

  • 725/02/02(日) 17:09:38

    ○月¥「日
    今日は何人かのアイドルと一緒にあのプロデューサーにレッスンを見てもらった。才能が視えるというのは本当のようで伸び悩んでいるダンスの動きをすぐに指摘された。身体の使い方、筋肉の効かせ方、使わない筋肉の脱力のさせ方...どれもこれもボクの身体が必要としていたモノだ。コントロールの質が上がっていく感覚があった。
    ...指導方法もボクに合わせていたように思う。
    ボクがどうイメージして身体を動かしているか。それを損なわないようにしてくれていたのがありがたかった。ボクの世界観を理解して尊重してくれていることがわかる。
    撫子も指導してもらったようでダンスの表現が目に見えて上達していた、と喜んでいた。
    そんな撫子を見てふと思った。
    ああ、毒だ、と。
    理解してくれて、成長させてくれて、たくさん褒めて、夢を見させてくれる。それでいて人の心を見透かしたような心から欲していた言葉を淡々と投げかけてくる。
    心が満たされていくのを感じる。
    でも、それではダメだ。特に女という生き物は、だ。満たされた途端に弱くなってしまう。弱くなっていく実感がある。
    そのうち、満足できなくなる。
    撫子も他のアイドルもきっと「誰にも目を向けないで自分だけを満たして欲しい」と依存する。
    ...少なくともボクはもうそう思ってしまっている。
    ......あの男はボクを弱くする。

  • 825/02/02(日) 17:10:56

    ○月¥^日
    賀陽燐羽と少しだけ話した。
    終始喧嘩のようなやりとりだったが「初星潰し」をして予定通り引退をするつもりのようだ。それが黒井社長との約束だから、と。
    「あのプロデューサーは私が貰いますので引退したあとの心配はいりませんよ」と言うと「引退ついでにあのプロデューサーも貰って行こうかしら」と煽り返してきた。
    ...間違いない。何を言われたか知らないがあの男に執着している。
    __きっとボクと同じようにあの男の居心地の良い毒のような言葉に救われたのだろう。
    そう思うと少しだけ好きになれた気がする。

  • 925/02/02(日) 17:12:12

    +月☆日
    ...まさかあの『一番星』十王星南があそこまで取り乱すとは。
    あのプロデューサーと雑談していたら『一番星』から電話がかかってきたようで内容が少し聞こえただけなのだが...。
    「わたしを1人にしないで」だ。
    それの答えが「合意の上では」はあんまりだ。
    ...どこまで女を狂わせるつもりだあの男は。
    何があったか知らないが流石に『一番星』が可哀想だった。
    撫子が引いていた。
    その後の『一番星』の取り乱し様といったら...いや、あまり日記に書くことでもない。これ以上はやめておこう。
    まあ、ともかく。あまりに不憫だったので話しをするように言って席を外したが...。大丈夫だっただろうか?
    何故、わざわざボクが『一番星』に気を遣わなきゃいけないんだ...。
    ...ボクもそのうち彼女のようになるのだろうか。

  • 1025/02/02(日) 17:15:25

    +月¥日
    あの男に少し出かけるので一緒に来てくださいと言われたので車に乗った。
    ...行き先は初星だった。
    しかも出迎えたのは『一番星』だった。
    『一番星』は気丈に振る舞っていたが今にも泣きそうな顔をしていた。
    最悪だ、絶対にロクなことにならない。
    そう思った。
    当の本人は着いて早々挨拶を済ませたら「十王さん抜きで一度話をする」とかで行ってしまって、『一番星』と2人きりで話すことになった。
    そこで、まあ色々あった。
    最初に、彼女があのプロデューサーと契約を結んだ経緯を聞かされた。その後に今していることを。
    要は新入生を対象としたスカウトをしているが、そのスカウト対象にどうも誤解されているらしく誤解を解いて欲しい、というのが先日の電話だったらしい。
    ...ボクの勘違いだった。
    てっきり『一番星』があの男に恋心を抱いていて...。という話しだと思っていたがどうも違ったらしい。
    ...ボクが恋愛脳なわけじゃない。仕方がない。あの男の極月での誑しぶりを見ているだけに、極月へ来る直前まではプロデューサーと担当アイドルの関係だったという『一番星』について邪推してしまうのも無理はない、ハズだ。うん、仕方がないと思う。
    『一番星』本人はプロデューサーの先輩としてあの男のことを純粋に尊敬しているそうだ。
    そんな先輩が極月で目にかける才能を見たくなったのだ、と言っていた。
    あとは普通に雑談をしていたら、あの男が例の新入生と一緒にやってきてそのまま『一番星』と契約をしていた。
    誤解が解けたと喜んでいた。
    ...『一番星』はスカウトが下手らしい。
    別れ際に『一番星』と連絡先を交換した。
    まあ、そんな一日だった。すごく疲れた。

  • 11二次元好きの匿名さん25/02/02(日) 17:17:44

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  • 1225/02/02(日) 17:23:56

    +月「日
    改めて、だが。
    ボクはあのプロデューサーのことが...その、好きというか悪くないと思っている。多分、賀陽燐羽も似た様な気持ちを抱いている。
    負けたくないと思う。
    月花姉さまより上だと認めてくれて、褒めてくれて、欲しい言葉を言ってくれる。ボクの可能性をボク以上に信じてくれている。
    誰にも取られたくないと、みっともない嫉妬心も持ち始めている。
    ...まあ、何が言いたいかというと最近、あの人が賀陽燐羽につきっきりで話せていないことにイライラする。
    賀陽燐羽といつから繋がりがあるのか知らないが、ボクに夢中じゃなかったのか?
    ...見捨てられたのかと不安になる。
    撫子に慰められるのが日課になりつつある。

  • 1325/02/02(日) 17:26:19

    +月☆〜日
    今日、いい事があった。本格的にボクのプロデューサーとして活動したいとお願いされた。
    ここ最近の賀陽燐羽への熱の入れようは仕上げのようなモノだったらしい。
    賀陽燐羽へのサポートも継続するが、何もN.I.A期間中に引退するわけではない。「初星潰し」をこなせるように仕上げて、引退ライブの日取りが決まればそれに向けた調整で見れないこともあるかもしれないが一先ず今は問題無しと判断したようだ。
    ようやく、だ。ようやくボクのプロデューサーになった。嬉しい、嬉しい。早く明日になって欲しい。早くレッスンがしたい。褒めてもらいたい。

  • 1425/02/02(日) 17:28:03

    +月☆☆日
    たくさん褒めてもらえた。見ていない間もレッスンの手を抜いていなかったのがわかる動きだって。
    ただ、パフォーマンスで十分戦えても舞台はN.I.Aだ。ファンの数が勝敗を決める。
    ファンへの接し方なんてわからない。
    いつも見下してきた。バカにしてきた。
    ...ボクには致命的なまでに向いていない不利な舞台。
    そう言っていた。
    でもプロデューサーは「それでいい、ファンは任せてください」って言ってくれた。
    N.I.Aは単純な勝負ではない。
    プロデューサーという存在がいるからこそ出来る選択肢がある。
    「私これでも主席ですよ」と笑っていた。
    ボクらしいファンサまで考えてくれている。
    今まで、ズルも嫌がらせもしてきた。悪意を込めた言葉も沢山人に向けた。
    それでもついてくるファンはいた。
    そんなファンだからこそ、ファンサは届く。愛想も笑顔も振り撒かなくていい、ただ一瞥して笑うだけ。ファンに手を差し伸べて振り払う。
    届きそうで届かない。
    魔性の女。
    白草四音はそういうアイドルだとN.I.Aで知らしめる。
    そう言っていた。
    「出来ますね」と期待してくれている。
    応えたい。

  • 1525/02/02(日) 17:29:54

    +月☆%日
    以前から気になっていたので思い切って聞いてみた。
    ボクはボクがやってきたことに後悔はない。でも褒められることでもないと自覚している。なのに何故ボクを肯定してくれるのか、と。
    答えは至極単純。
    「マイナスだと、悪いことだと、私は思わないからです」
    「アイドルの才能や魅力は〈服〉の様なモノだと思うんです」
    「それをどう見せるか、どうデザインするか、どう着こなすか」
    「それを考えるのがプロデューサーの仕事です」

    __きっと白草さんのはドレスですね。

    ...顔が熱くなったのを覚えている。思い出しただけでも頭が茹ってくる感覚がある。
    あんな恥ずかしいことを本人の前で顔色一つ変えずに言えるのはやっぱり誑しだと思う。
    ...これからもああいうのはボクだけに言って欲しいな。

  • 1625/02/02(日) 17:32:51

    +月☆<日
    今日は完成したプロモーション動画の確認をしたりN.I.Aでの方針について説明を受けた。
    N.I.A期間中は大きなオーディションの他にもミニライブをする。それも各地で衣装やヘアメイクも変えると言っていた。しかもプロデューサーがやってくれるらしい。
    そこまでするのか、と言うと「顔が良いのだから色んな顔を見せたい」そういってボクの髪をいじり始めた。
    ...デリカシーがない。
    それに、慣れてた。髪の触り方も遊び方も何もかも。
    ボクがどう思ったかも気にしないで「こういうのはどうですか、好みですか」なんて言っていたこともイライラした。
    ...やってくれたアレンジが全部ボクに似合ってたのもどうかと思った。負けた気がする。
    一通り遊ばれたあと少し話した。
    でも、こういうのは久々で楽しかった。

  • 1725/02/02(日) 17:33:50

    +月☆^日
    調子がいい。
    最近はダンスの最中にファンサも入れる余裕が出てきた。
    今までしてこなかったからこそ、ファンサをしていることそのものがファンは嬉しく感じるらしい。
    ...そういうものなのだろうか?
    N.I.A開幕まで1ヶ月と少し。気を抜かず、備えたい。
    それと『一番星』から連絡があった。
    スカウトした新入生たちを送り込む、と。
    あの『一番星』が選んだアイドルだ。
    きっと手強い。
    負けるつもりはない。

  • 1825/02/02(日) 17:36:05

    <月+日
    今日は休養日。
    疲労回復のためにリゾートのスパに行って来た。
    というか行かされた。
    撫子が提案してチケットの用意までしてくれた。
    ...プロデューサーとペアで。
    あの子は変に気を遣いすぎだと思う。
    まあ、それはいい。
    スパはとても良かった。身体の疲労が抜けていく感覚は気持ちよかったしこれからの疲労も溜まりにくい気がする。
    そのあとはプロデューサーとご飯を食べて、時間に余裕があったから併設されている水族館を少しだけ見て回って、近くの公園で休んで、ゆっくり帰った。
    水族館は思ったよりしっかりしていたし、力も入っていた。
    ああいうのを楽しむ人をあまり理解出来なかったが存外悪くない。
    次はちゃんと見て回ろうとプロデューサーと話した。
    戻って来てから撫子にデートはどうでしたかと聞かれたが、アレはデートじゃない。
    何度否定してもデートだと言われた。
    意識しないようにしていたのにこれでは意味がない。
    ...プロデューサーもデートだと思ってくれてたら嬉しいな。

  • 1925/02/02(日) 17:37:42

    <月¥〒日
    N.I.Aが始まった。
    驚くぐらい調子が良くて最初のオーディションを難なく突破した。
    参加していたアイドルだってそう簡単に勝てる相手ではなかったハズだ。
    だというのに、初めからボクのファンが多かった。
    プロデューサーが作ってくれたPVのおかげだと思う。
    ...結構言葉の強い過激なPVだったと記憶しているが好意的に見てもらえているようだ。
    SNSでも今日のライブの評判は良かった。

  • 2025/02/02(日) 17:40:07

    「月¥日
    ボクは何をしているのか...。
    初星が学園主導のプロモーションを行うというので行ってきた。
    まあ、随分と煽ってしまった。
    そして、盛大にやり返された。
    「持ち歌がないクセに」と。
    この後がマズかった。
    持ち歌ならある、FINALEを飾るに相応しいモノが。
    __そう口走ってしまっていた。
    しかも自信満々で。
    やってしまった。強がってしまった。
    そんなモノない。
    恥ずかしくてまた強がった言葉を言って帰って来た。
    ネットでも今日の一件が拡散されている。ボクのファンは持ち歌という言葉に喜んで、相手のアイドルのファンには罵られて、他にも単に面白がっている人もいる。極月の恥晒しとまで言われていてとにかく騒ぎになっている。
    向こうのアイドルの言葉も強かったこともありあちらも批判されてはいるがそれでも喧嘩を売ったのはこちらだ。極月の看板にも泥を塗った。
    それに、きっとプロデューサーにも失望された。
    今日は今後の打ち合わせや営業で一緒じゃなかった。騒ぎになっているネットのアレを見たら失望されるに決まっている。
    そばにいない間にあんな醜態を晒すなんて見限られるに、決まってる。
    ...ましてやありもしない持ち歌で啖呵を切るなんて。
    ちゃんと謝ろう。
    ちゃんと謝って、ちゃんと言うんだ。
    プロデューサーを続けて欲しいって。

  • 2125/02/02(日) 17:47:20

    「月%日
    ...あの人はズルい。本当にズルい。
    朝の打ち合わせで顔を合わせた途端「私たちすっかり悪役ですね」と言われた。
    迷惑をかけてしまった、と謝るとデモ音源を渡された。
    ボクの持ち歌だった。
    少し前から作っていたらしい。
    ボクのそばにいて、ボクの在り方を見てきた。
    それを曲にした、と。
    本当はこれを元にコンポーザーに曲を作ってもらうつもりだった、らしい。
    「ですが、時間があまりありません」
    「このまま私が作ります」
    「ただ振り付けもボイトレも何もかも今から練習することになります。それでも出来ますか?」
    当然だ、やってみせる。
    だから、これからもそばで見ていて欲しい。
    そう言うと「それでは引き続き悪巧みを続けましょうか」と言って2人で振り付けを考えたり歌詞を考えた。

    プロデューサーに迷惑をかけた。
    出来の悪いアイドルだと思われたかもしれない。
    そう不安に思ってた。
    でもプロデューサーは曲を作っててボクの不安なんか吹き飛ばしてくれた。
    本人は「私が作る曲なんかで申し訳ない」と何故か謝ってたけど、ボクはプロデューサーが作ってくれた方が嬉しい。どんなに有名で実力のある人よりプロデューサーが作ってくれる方が、嬉しい。

  • 2225/02/02(日) 17:50:12

    「月+日
    改めてN.I.A期間中の方針について説明を受けた。
    以前からプロデューサーの指示でイベントやミニライブ、オーディションでの振る舞いで気をつけていたことがある。
    常に上から、揶揄うように、余裕を感じさせる振る舞いを。
    それが効いてくるらしい。
    現にボクの批判や悪評はほぼ鎮火していて、白草四音はPV通りのアイドルというのが次の話題になっている。見せてもらったが、あのPVを見てファンになった人たちは「本当にあの通りのアイドルなんだ」と喜んで、批判していた人もライブのパフォーマンスを見て「実力に見合った振る舞いをしている」と評価を改めてくれていた。
    とにかく、ボクのライブやパフォーマンスがSNSでトレンドになっている。
    それに便乗してミニライブを観に来ていた観客やイベントを見ていた人がボクについて書き込む。
    そういうサイクルが出来上がっていて、これからのライブやオーディションでボクに注目する人たちを全員揃って手に入れる、ということらしい。
    「引き続き、振る舞いは同じことを」
    「こちらからのアクションはなしです」
    「白草四音を追いかけさせる」
    謹慎などしない、声明も出さない。大人しくなどしない。恥の上塗りなど言わせない。全て黙らせる。
    悪い顔をしながらそう言っていた。
    ...本当に頼りになる。助けられてばかりだ。

  • 2325/02/02(日) 17:51:37

    「月〒日
    今日、賀陽燐羽と話した。というか話しかけられた。
    この前ボクが喧嘩を売った相手...確か月村手毬だったか。
    その彼女が元ユニットのメンバーだったらしい。
    それで、その時の状況とか周りにプロデューサーらしき人間はいたのかとか、とにかく色々聞かれた。
    なんでも月村手毬にしては火消しが上手すぎるということらしい。
    ...確かにボクほどまでとは言わないが批判の声もあった割に沈静化している。
    相当腕のいいプロデューサーがついている、と言っていた。
    あと釘を刺された。
    アイドルとしてファンに見せられない言動をするな、プロデューサーにもちゃんと考えろと言ったが聞く耳を持たない、と言われた。
    ...反省はしている。
    ...そのあとも色々と言われたが、去り際に小さい声で「失恋した」と言っていた気がするのが気になる。

  • 2425/02/02(日) 17:56:33

    「月☆¥日
    先日聞こえた一件が気掛かりだが、賀陽燐羽にレッスンに付き合ってもらうことにした。
    パフォーマンスの立て直しになる、と思いの外簡単に承諾してくれた。
    プロデューサーと考えた振り付けを見てもらいながら練習して、改善するところがあれば指摘してもらいより良くしていく。
    一緒にいて思い知ったが万全ではないとはいえ今の賀陽燐羽の実力も能力も桁違いだ。視点も考え方も何もかもがボクと違う。流石はあの初星の元No.1ユニットのリーダーだと思った。
    態度に出ていたのか呆れながら「あのプロデューサーのおかげ」だと言われた。
    初星から極月への移籍の際に極月側の設備の概要から初星との仕様の違いなど色々とまとめてもらったらしい。だから慣れるのに時間はかからず使いこなせたし、レッスンの指導も的確で無駄がない。その上、SNSのリサーチも取ってくる営業もプランニングも何もかもこなす。間違いなくトップレベルのプロデューサー、と。
    「それに引退するアイドルだってわかってるのに、私の身勝手な夢に付き合ってくれるし、ね」と嬉しそうに言っていた。
    ...やっぱり貴方もあの人のことを好きなのか、と聞くと「失恋よ、私を見る目とあなたを見る目が違うもの」
    一緒にいれば嫌でもわかる、と。
    ...聞かなきゃよかったと思った。
    その、つらいことを言わせてしまったと思う。
    し、その場でもそう言った。
    そうしたら「だから彼を失望させるな」と励ましてくれた。頑張ろうと思う。その、色々と。

    ...プロデューサーはボクのことどう思っているんだろう。
    ...いや、そんなことを考えている余裕はない。まずは持ち歌をちゃんと自分のモノにすることからだ。

  • 2525/02/02(日) 17:59:19

    「月☆○日
    今日はミニライブをやった。
    無事成功したし、毎回衣装やヘアメイクを変え、パフォーマンスにも変化を入れていたことで"白草四音に同じライブはない"ということが周知されかなり話題になっている。先日の騒動で下がったボクのランキングもすでに盛り返している。
    それにボクの巻き添えで下がってしまった極月全体のランキングもボクが巻き返したことで引っ張られるように回復している。
    その上賀陽燐羽の「初星潰し」で初星のアイドルは大打撃を受けている。
    黒井社長の当初の予定通り極月の低ランクアイドルたちもプロデューサーのサポートで成績は順調であの子たちも良い結果も残せるはずだ。
    そしてこのままいけばボクのFINALEの出場は確実だろう、とプロデューサーが言っていた。
    油断したくない。そう伝えた。
    幸い、持ち歌はFINALEで披露することになっていて少ないとはいえまだ時間はある。
    だから焦らなくていい。焦る必要なんてない。ボクならFINALEまでにモノにするに決まっている。
    そうやって今日のボクではなく明日のボク、明後日のボクに託せばいい。
    プロデューサーにそう言われた。...焦っているのがバレていたようだ。
    本当にボクのことをよく見ていると思う。

  • 2625/02/02(日) 18:02:20

    「月¥☆日
    今日は二次オーディションがあった。
    無事突破した、と言いたいがギリギリ一位通過出来たというのが本心だ。
    なんだあのアイドルは。
    本当に同じ世代なのか。
    ほぼ無名だったが実力は間違いなく優勝候補の1人だと思う。
    一緒に参加していた他のアイドルなら彼女の実力に気づいたハズだ。少なくとも彼女を見るみんなの目が変わったのを覚えている。
    ただ世間では余裕の突破、と見られているようでまだボクの化けの皮は剥がれていない。
    "白草四音は余裕を崩さない"というイメージを壊してはいけない。
    プロデューサーの方針通りに出来ている。
    まあ、とにかくだ。
    あのアイドルをここで下せたのは大きい。
    自信につながる。
    FINALEの舞台に立つ。
    それが現実味を帯びてきた。

  • 2725/02/02(日) 18:08:43

    「月¥%日
    賀陽燐羽から「燐羽でいい」と言われた。
    あれからもレッスンを時々見てもらって話す機会が増えたからなのか仲良くなれた気がする。
    ...ボクのことを認めてくれた、ということなのかもしれない。
    少なくとも初対面の時の印象通りの人間ではないことぐらいお互いもうわかっているハズだ。
    燐羽のことを尊敬している。実力もアイドルとしての心構えも勉強になることばかりだ。
    引退するのは寂しい。
    ...本人に言ったらきっと困らせてしまうから言えないな。
    こうして振り返るとボクは随分変わったと思う。
    傲慢で卑怯でボク以外の人間を見下してきた。
    ...撫子のことだって。
    あんなに慕ってくれているというのに素直に受け止められなかった。
    あの子の笑顔が眩しかった。煩わしくて仕方がなかった。でも、もうそうは思わない。あの子が隣にいてくれて笑顔を向けてくれるのがボクでよかったと、嬉しい。
    ...ボクは変わった。
    ......あのプロデューサーと出会って。
    ボクを認めてくれて、そばにいてくれて、成長させてくれて、恋をした。
    見える景色が変わったのだな、と思う。
    この恋が実るかはわからない。
    でもあのプロデューサーと出会えて良かったと心から思える。

  • 2825/02/02(日) 18:16:27

    「月¥<日
    どうしよう、どうしよう。
    月花姉さまから「N.I.Aを見た。今までと違うが何があった?」と連絡があった。
    調子に乗ってプロデューサーのことを話してしまった。
    そうしたら、月花姉さまがプロデューサーに興味を持ってしまった。
    あの姉さまが、プロデューサーの名前を覚えてしまった。
    「面白そうな男だ、会いに行く」と。
    嫌だ、嫌だ。
    プロデューサーはボクのことを認めてくれているけれど、月花姉さまを直接見たら月花姉さまの方が良いって言うかもしれない。
    そんなの嫌だ。取られたくない。月花姉さまに会わせたくない。ボクの持っているモノ欲しいモノ全部姉さまに取られてきた。好きな人まで取られたくない。


    (文字が潰れていて読めない)


    __お願い、どうかボクの恋まで奪わないで。

  • 2925/02/02(日) 18:22:32

    「月%〜日
    今朝、姉さまから連絡が来た。
    明日の昼には着くハズだ、って。
    ...嫌だ。
    来ないで。

    __来るな。

    ......そう言えたら、良いのに。

  • 3025/02/02(日) 18:26:56

    「月%☆日
    ...月花姉さまが来た。
    しかもこのままN.I.Aに出場するつもりらしい。
    本人が出たいなら好きにしろ、と黒井社長は乗り気だ。こうなってはどうせ制御できない、初星相手に極月有利の盤面をさらに押し付けるためにも暴れてもらうと言っていた。
    プロデューサーはずっと怒ってた。
    「極月の主役は白草四音だ、お前じゃない」って。
    姉さまは凄く嬉しそうだった。面白いおもちゃを見つけたような顔をしていた。
    プロデューサーのことをしばらくジッと見て「ニューヨークへ連れて行く」と。
    そのままボクの方を見もしないで「いいな、四音」とだけ言われた。
    胸が苦しかった、辛かった。
    逆らうのが怖かった。
    呼吸が出来なくて体が固まったのを覚えてる。
    でも、それだけは嫌だ、できない、と震えながらだけど声に出せた。
    姉さまはようやくボクの方を見て何か言おうとしてたけどプロデューサーが遮って「白草月花なんかに興味はない、私の求めるアイドルじゃない」「お前ではダメだ」「行くわけがない」って。
    姉さまは少し考えて「そうか」とだけ言い残して行ってしまった。
    そのあとプロデューサーと2人だったけど、大人げないところを見せたと申し訳なさそうに謝って来た。
    ...凄く、嬉しかった。姉さまよりもボクを選んでくれたことが、ボクの方がいいんだって言ってくれたことが夢みたいに嬉しい。
    そんなことを言って少しだけ2人きりで話をした。
    本当に姉さまがN.I.Aに出るならきっとFINALEで姉さまとぶつかる。
    __倒して、ボクは姉さまを超えなきゃいけない。

  • 3125/02/02(日) 18:29:39

    〒月○日
    FINALEに向けて最終調整が始まった。
    営業の数もミニライブの数もある程度絞ってレッスンをこなす。燐羽にも協力してもらってフットワークや表情管理も見てもらう。
    持ち歌の方も仕上がってきて、あとは全体の質をさらに上げて昇華させる。
    やることがまとまって視界がクリアになってきた。
    あとボクの持ち歌のタイトルが決まった。

    『ファム・ファタール』

    男を破滅させる女を意味するフランス語の言葉。
    魔性のアイドルたるボクにふさわしいとプロデューサーが決めたタイトル。
    ...縁起が悪い、プロデューサーのことを破滅させたくない。
    そう言うと「貴方になら破滅させられてもいいですよ」と恥ずかしがることもなく言ってきた。
    ...ああいうのは燐羽がいないときにして欲しい。
    その、気まずい。
    でも燐羽はもう吹っ切れたのか「いつもこうなの?」とボクを気遣ってくれた。
    まあ、なんだ。タイトルに負けないアイドルになろうと思った。

  • 3225/02/02(日) 18:33:31

    〒月☆¥日
    N.I.Aが荒れてきた。
    姉さまの参加が認められて極月初星関係なく手当たり次第蹴散らしたからだ。
    それを受けて『一番星』が参加すると初星から声明が出た。
    プロデューサーが頭を抱えていた。
    N.I.Aの趣旨が崩れていく、と。
    ...ボクもそう思う。
    それに最悪の場合、FINALEで姉さまと『一番星』の両方を相手にしないといけないかもしれなくなった。
    でもプロデューサーは強気だ。
    ボクが負けることなど考えてもない。
    ...ボクのことを好きすぎるな、と思う。
    でも安心する。

    あとプロデューサーがもうすぐ衣装が出来上がる、と言っていた。
    ...ボクだけの衣装だ。
    楽しみにしている、と素直に伝えられた。

  • 33二次元好きの匿名さん25/02/02(日) 18:40:59

    このレスは削除されています

  • 3425/02/02(日) 18:44:12

    〒月☆%日
    『一番星』から連絡があった。
    FINALEで待っていろ、と。
    ...あの『一番星』が挑戦者として挑んでくる。ボクのことを越えるべき壁だと、認識した。
    不思議と恐怖はない。あるのは身体に熱が籠っていく感覚だ。
    ワクワクしている、とも言えるかもしれない。

  • 35二次元好きの匿名さん25/02/02(日) 18:45:31

    このレスは削除されています

  • 36二次元好きの匿名さん25/02/02(日) 18:52:04

    最近野生の文豪増えて嬉しい 

  • 3725/02/02(日) 18:53:20

    〒月☆○日
    ...最近、プロデューサーの前で素が出る。
    今に始まったことではないが最近は特にだ。
    気をつけていても、"私"ではなく"ボク"と言ってしまうし口調だって気づいた時には敬語を使ってなかった...。失礼な態度を取っていたかもしれない、と謝った。
    ...嫌いにならないで、という下心が大きいが。
    そうしたら取り繕ってるボクも取り繕わないボクも好きですよと口説かれた。
    ...わかってやってるよね、と思う。

  • 3825/02/02(日) 18:57:39

    〒月☆<日
    衣装が届いた。
    黒を基調としたドレス調で礼服としても見えるデザインだった。差し色の黄色が映えて大人っぽくてカッコいい。
    ...良い衣装だと思う。
    でもなんでリテイクなしでサイズがぴったり合うのか気になって仕方がなかった。
    ...ボクのスリーサイズを知ってるの?
    声にでかけたが、抑えた。
    聞くのも恥ずかしい。
    それよりも、だ。
    少し前から考えていたことがある。
    その提案をしたら、楽しそうにすぐに作ると言ってくれた。
    ...作ったのプロデューサーなんだ。
    発注とかじゃ、ないんだ。
    ...本当になんでサイズ知ってるの?
    ......こんなこと聞けるわけ、ない。

  • 3925/02/02(日) 19:02:32

    〒月☆〒日
    プロデューサーがまた新しくPVを出した。
    20秒もないティーザー予告のようなモノだったけどボクの持ち歌とその衣装のチラ見せということでかなり話題になっている。
    当然『ファム・ファタール』はイントロだけ。衣装に関しても光の加減で見えているのはほぼシルエットのみで頑張っても色程度しかわからない。
    それなのにみんながボクに夢中になっている。
    極月のアイドルたちのボクを見る目が変わった。
    ボクを良く思っていない人も今までの実力とパフォーマンスでボクから目が離せないでいる。
    初星陣営を推しているファンだってあの時の振る舞いは見栄ではなかったと見直してくれている。
    『一番星』にも「本気で行く」と言われた。
    「初めてお前のライブに興味が沸いた」とあの姉さまにだって褒められた。
    なによりずっと前からボクのファンだった人たちが喜んでいる。持ち歌の存在が確実だとわかってはしゃいでいる。
    みんながボクを見てる。
    ボクがみんなの中心。
    ...全員だ。全員手に入れる。
    ____弄んで堕としてやる。
    だってボクはお前たちのファタールだから。

    ...自分で書いておいてアレだけど結構恥ずかしい。でも、まあこういうのは昔を思い出してちょっとだけ楽しい。

  • 40二次元好きの匿名さん25/02/02(日) 19:03:37

    このレスは削除されています

  • 4125/02/02(日) 19:06:16

    〒月¥☆日
    ...反響がすごい。
    あれから極月学園に取材の依頼がたくさん来ている。
    黒井社長は受けたそうだったけどプロデューサーが断固としてN.I.Aが終わるまでは受けないと譲らなくて黒井社長が手を焼いていた。終わってから取材を受けるとしてもちゃんと精査してプロデューサーがここならいいと判断したところだけ、一つだけでいいとまで言っていた。
    誰も彼もボクを手に入れたくて仕方がない。
    遠く離れたところから「こっちへおいで」と煽るだけ煽って見向きもしない。
    白草四音はそういうアイドルだから。
    そう言って悪い顔をしていた。
    ...あの黒井社長が引いていた。
    ボクのことを好きすぎる、って。
    ......ボクもそう思う。
    まあ、とにかく依頼は受けないということでまとまった。

  • 42二次元好きの匿名さん25/02/02(日) 19:11:31

    四音が活躍すると理由はなんでアレ、月花姉様が来日・飛び入り参加して星奈もそれに合わせて参戦、さらには成長したメインキャラも決勝で戦う可能性あるのか
    四音√は地獄かな?

  • 4325/02/02(日) 19:12:44

    〒月¥%日
    プロデューサーが言ってた。
    曲も衣装もパフォーマンスも熱も何もかもほぼ完成した、って。
    たった一つ、残っているらしい。
    魔性というのはボクが持つ資質そのもの。
    自然体で溢れさせなきゃいけない。
    だから今まで通りの振る舞いやプロデューサーの指示を守っていればで表せるものじゃないと言っていた。
    ...要はアドリブをしろってことだと思う。
    そうあろうとするのではなく、振り撒く。自信満々にやる仕草ではなく、何の意味もない所作に色気を感じさせる。ボクにただ宿すのではなく会場全体の空気を変える。
    とのことだ。
    ...不安だ。
    何も今伝えなくても、もっと前から言って欲しかった。そうすれば意識出来たし上手く出来たかも。
    そんなことを言うと、「心配なんてしていない、もう出来ているから」と言われた。
    必要なのは自覚らしい。
    ボクが出来ると自覚するために今言った、と教えられた。
    ...関係ないけど、それってプロデューサーは何度かボクのことを女として意識したということなのだろうか。
    ......それが気になって不安なんて消えていた。

  • 4425/02/02(日) 19:21:56

    〒月%☆日
    FINALEを明日に控えている。
    リハーサルをした。
    やはり、FINALEには姉さまと『一番星』が出る。それに、もう1人...初星のアイドルもいる。最近テレビや雑誌でも良く目にしたしランキングもかなりの上位だったハズだ。
    __状況だけ見れば、初星vs極月。
    実際は全然違う。
    姉さまは看板なんか気にしないし『一番星』だって初星の生徒に優勝を譲るなんてことしない。それに、残る初星のアイドルも姉さまにも『一番星』にも負けるつもりはないだろう。
    ボクだけが完全なアウェー。
    緊張を隠そうとしたけど無理だった。すぐにバレた。みんなにナメられた、と思う。
    ボクのリハーサルは一番最後だったから今話題の白草四音はこの程度かとみんな本気は出していないように感じた。それでも洗練されていてボクなんかとは格が違うパフォーマンスだった。
    ボクの番になったけどプロデューサーがそばにいてくれたからかボクのパフォーマンスの調子はすごく良くて、すぐに空気が変わったのを感じた。
    ああ、ボクより強い人たちがボクを見ている。
    今、品定めをされている。
    そういう感覚があった。
    __きっと明日はあの人たちも本気で来る。
    100%中の120%なんかじゃない。200%で来る。
    ...頑張ろう。
    優勝するのはボクだ。

  • 4525/02/02(日) 20:05:41

    ^月☆日
    ああ、ボクはきっと一生今日のことを忘れない。
    優勝した。
    __ボクがN.I.Aの勝者だ。
    ...抽選でまたボクが最後になった時は正直泣きそうだった。
    でも、凄いパフォーマンスが出来た。
    ボクの身体なのに動かしてるのはボクじゃなかった。
    ライブが始まって、ボクの中の何かが少しずつ大きくなっていった。
    それがライブの途中で爆ぜた。
    ボクの身体中に溢れて止まらない感覚があった。
    声も身体も表情もひとりでに動き出した、あの感覚。
    今でも思い出せる。
    髪をかきあげて、目線を送って、笑う。
    観客に近づいて脚を差し出す。
    また違う観客に手を差し伸べる。
    誰も彼も誑かした。
    そうやって会場に熱を伝染させた。
    サビ終わりの一瞬の間奏のターンで前を開いて衣装を脱ぎ捨てる。
    自然に__落とす。
    現れるのは鋭い赤をしたランジェリー調の衣装。
    __歓声が上がる。
    あはは。ふふふふ、くすくす。
    囁くような笑い声のコーラス。
    せせら笑うようにボクの笑い声を合わせる。
    __あはっ。
    歓声の勢いは増していた。
    「こんなのではしゃぐなんて」
    「かわいいね」
    と囁いた。

  • 4625/02/02(日) 20:08:04

    歓声が一瞬止んで、なのに興奮が止まらないというようにまた大きな歓声が上がった。
    そのまま、囀るように歌ってパフォーマンスをこなす。
    ライブが終わる。
    歓声も、行かないでとボクを引き止める声も、私を見てとボクを求める声もあった。
    まだ身体が言うことを聞いてくれなくて
    「もうおしまいだよ」
    「またおいで。遊んであげる」
    そう笑ってすぐに去った。
    ____あれはきっと、観客に向けて言ったんじゃない。
    ボクの中の誰かがボクに向かって言ったんだ。
    あれが、ボクの魔性。
    誰も彼も破滅させる、運命の女。
    いつかボクは彼女に破滅させられる。
    __みんなと一緒にボクも彼女に堕ちた。
    でも、いつか振り解く。
    彼女を__ボクはボクを飼い慣らす。
    そう、決意した。

  • 4725/02/02(日) 20:11:02

    舞台裏に行って、プロデューサーと2人でN.I.A優勝を噛み締めた。それに、たくさん褒めてもらえた。
    「白草さんの考えた衣装の案、大成功でしたね」と。
    でもプロデューサーの顔が凄く赤くて揶揄ったら「直視できない」と恥ずかしそうに言っていた。
    ...ボクも照れてちょっとだけ変な空気になった。
    そのあと『一番星』が優勝おめでとうと祝福してくれた。
    間違いなくトップレベルのパフォーマンスだった。
    アイドル全体の実力も引っ張られるようにこれから伸びる。
    特に今日出たもう1人の初星アイドルは強くなる。
    そう言っていた。
    ボクもそう思う。
    そのアイドルの子とも『一番星』に紹介してもらって話すことが出来た。初星の友達がまた1人増えた。

  • 4825/02/02(日) 20:11:37

    姉さまとも話したかったけど、ボクのプロデューサーと少し会話したら会場を後にしたようだと『一番星』に教えてもらった。
    何を話したか気になるけど、プロデューサーは教えてくれなかった。気になると何度も言ったのに顔を赤くさせてばかりでやっぱり教えてくれなかった。
    ...気になる。
    まあ、こうしてボクたちのN.I.Aは閉幕した。
    帰ってる途中ボクは寝てしまったようで、起きたら寮の部屋で今日記を書いてる。
    ボクの服がパジャマになってる。誰が着替えさせてくれたんだろう。その、ブラもショーツも変わってる。
    ...プロデューサーじゃないよね?
    でもシャワーだけでも浴びるようにと書き置きされているメモの字はプロデューサーの字だ。
    ...プロデューサーじゃない、よね?
    ...用意してくれていた軽食のサンドイッチは美味しかった。

  • 4925/02/02(日) 20:23:38

     書き溜めはまだあるのですが、一旦きりのいいここまでとさせてください。
     付き合ってくださった方、ありがとうございます。
     続きをある程度書き溜めたら別スレでまた投稿しようと思います。
     筆があまり早い方ではないのですが近いうちに投稿できるよう頑張ります。

  • 50二次元好きの匿名さん25/02/02(日) 20:24:39

    おつ!
    Pラブ四音はガンにも効く

  • 51二次元好きの匿名さん25/02/02(日) 20:26:34

    素晴らしかったやで!続きも楽しみにしてるで!!!!

  • 52二次元好きの匿名さん25/02/02(日) 20:27:02

    P四音はいいぞ~

  • 53二次元好きの匿名さん25/02/02(日) 20:31:09

    よかった!次も見に来ます!

  • 54二次元好きの匿名さん25/02/02(日) 20:32:00

    夢中で読ませてもらいました ありがとう

    >どんなに有名で実力のある人よりプロデューサーが作ってくれる方が、嬉しい。

    ここ大好き

  • 55二次元好きの匿名さん25/02/02(日) 20:35:02

    これあれだな
    賀陽燐羽のファンを託されたような格好の四音だ

  • 56二次元好きの匿名さん25/02/02(日) 20:56:30

    あーなんていうかもう
    幸せになってくれ…

  • 57二次元好きの匿名さん25/02/02(日) 21:44:10

    素晴らしいSS、お疲れ様です!

  • 58二次元好きの匿名さん25/02/02(日) 21:55:40

    最近四音スレ増えてきて嬉しい

    その中でもこれは特に引き込まれたし、楽しめた!

    >>1乙です

  • 59二次元好きの匿名さん25/02/02(日) 22:07:57

    初めて四音スレを見たがこれはいいものだ……

    やっぱりPはさぁ、インキュバスかなにかか?

  • 60二次元好きの匿名さん25/02/02(日) 22:17:15

    見事な出来なのにちょくちょく不穏なPで笑ってしまった

  • 61二次元好きの匿名さん25/02/02(日) 22:17:15

    四音は幸せになるべきだ

  • 62二次元好きの匿名さん25/02/02(日) 23:14:44

    すげぇ……すげぇ!!!

  • 63二次元好きの匿名さん25/02/02(日) 23:41:59

    効いたよ…これが野生の文豪…アイマスカテの魔物…『怪文書』…!

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