- 1二次元好きの匿名さん25/02/02(日) 22:11:31
- 2二次元好きの匿名さん25/02/02(日) 22:12:11
むか〜しむかし鬼ヶ島という小さな島に、二人の鬼が住んでいました。
一人は鬼丸小糸という真面目で少し臆病な小鬼。
もう一人は鬼川雛菜という大柄で心優しい鬼でした。
二人は誰にも迷惑をかけることなく、仲良く穏やかに暮らしていました。 - 3二次元好きの匿名さん25/02/02(日) 22:12:37
ある日、雛菜ちゃんは近くの村に大好きなユアクマちゃんのポップアップストアが出店されることを知りました。
「あは〜」
雛菜ちゃんは滅多に人里に出ることはありません。
ですが、ユアクマちゃんのためとなれば話は別です。
「ちょっと行ってくるね〜」
それを聞いた小糸ちゃんは血相変えて止めました。
「あ、危ないよ……! 人間さんに見つかったら食べられちゃうよ……!」
ですが雛菜ちゃんは止まりません。
心配性だと言って笑い、それから村へ向かいました。 - 4二次元好きの匿名さん25/02/02(日) 22:12:59
雛菜ちゃんは角が見えないように頭巾で隠すことにしました。
それから小型の渡し船で海を渡り、村にあるポップアップストアに向かいます。
村へ入ると、雛菜ちゃんは周囲からの視線を感じました。
余所者が目立つというのもありますが、雛菜ちゃんの身体は成人男性より巨きいので、どうしたって注目を集めてしまいます。
雛菜ちゃんは気にせず進みました。
あくまで目当てはユアクマちゃん。矮小な人間には根本的に関心がないのです。 - 5二次元好きの匿名さん25/02/02(日) 22:13:19
「あは〜。 お店あそこだ〜」
雛菜ちゃんはユアクマちゃんの看板を見つけると、意気揚々と歩く速度を速めました。
ですから雛菜ちゃんは気がつきませんでした。
角を隠す頭巾が、木の枝に引っ掛かって解けてしまったのを。
「わぁ、鬼が出た。鬼が出たぞ」
「逃げろや逃げろ。捕まったら食べられちまうよ」
村の人達はあっという間に逃げてしまいました。
ポップアップストアもシャッターを閉められてしまいました。
「へ〜? 雛菜、グッズ買えないの〜?」 - 6二次元好きの匿名さん25/02/02(日) 22:13:24
雛菜強い…
- 7二次元好きの匿名さん25/02/02(日) 22:13:44
雛菜ちゃんは鬼ヶ島に帰ると、小糸ちゃんに村で起きたことを話しました。
すると、小糸ちゃんはもの凄い剣幕で起こりました。
「ひ、ひどい……! 雛菜ちゃんは何も悪いことしてないのに……!」
自分以上に怒ってくれる小糸ちゃんを見た雛菜ちゃんは、買えなくなったグッズなどどうでも良くなってしまったようで
「雛菜お昼寝する〜」と、寝床に入っていきました。
小糸ちゃんはというと、雛菜ちゃんの為に何か出来ることはないかと考えていました。
するとそこへ……
「ごめんくださーーーーい!!」
元気の良い声が響き渡りました。 - 8二次元好きの匿名さん25/02/02(日) 22:14:09
女の子の声です。
小糸ちゃんは思いました。
「し、新聞か宗教の勧誘かな……こ、断らないと……」
いつもなら雛菜ちゃんが対応してくれるのですが、寝てしまったので今は小糸ちゃんだけです。
「すいませーーーーん!! 誰かいませんかーーーー!!」
「鍵が開いているので入りまーーーーす!!!!」
「ぴぇ……!?」
困りました。
声の主は帰る気配がありません。
それどころか勝手に入ってきてしまったようです。 - 9二次元好きの匿名さん25/02/02(日) 22:14:32
「ど、どちら様ですか……?」
小糸ちゃんは漸く観念し来訪者の元へ。
そこにいたのは……
「こんにちはーーーー!! 鬼退治に来ました!!!!」
背丈は小糸ちゃんより大きく、けれど顔立ちや仕草は幼い。
とても元気の良い女の子でした。
「お、鬼退治……!?」
小糸ちゃんは驚きました。
文字通り心臓が飛び出そうな程に驚きました。 - 10二次元好きの匿名さん25/02/02(日) 22:14:57
「鬼さん! 村でりゃくだつした金銀財宝?を返してください!!」
「抵抗は無駄ですよ! 剣術をたしなんでいるので!!」
そうは言われても困ります。
抵抗も何も、小糸ちゃんも雛菜ちゃんも何一つ略奪なんてしていないのですから。
「あ……あの……わたし達、何も盗ってません……」
小糸ちゃんはか細い声で答えました。
「え? でも、村の人達が鬼ヶ島には悪い鬼がいるって……」
きっとどこかで噂に尾鰭が付いたのでしょう。 - 11二次元好きの匿名さん25/02/02(日) 22:15:25
「わん! わん!」
「わっ! だめだよ!マメ丸!」
女の子のお供の犬……
豆柴のマメ丸が小糸ちゃんに飛びつきました。
「ぴゃ……!?」
それに驚いた小糸ちゃんは怖がって縮こまってしまいました。
小さなマメ丸を怖がって震えている小糸ちゃんを見て、女の子はどうやら小糸ちゃんの言っていることが嘘じゃないと思いました。
「あの……もしかして鬼さんは良い鬼さんなんですか?」 - 12二次元好きの匿名さん25/02/02(日) 22:15:45
「い、良い鬼さん……?」
人間にとって鬼に良いも悪いもあるのでしょうか。
小糸ちゃんは、そんな人間もいるのかと驚きました。
「鬼さんはなんて名前なんですか!?」
「お、鬼丸小糸……です」
「あたしは小宮果穂っていいます!! 桃太郎お兄ちゃんの代わりに鬼退治にきました!!」
何年か前、巷ではある少年の噂が広まっていました。
川を流れていた大きな桃を切ると、中から男の子が出てきて、桃太郎と名付け育てられたと。
けれど、実際のところは不思議な桃を食べた老夫婦が若返り、子どもを授かったというものでした。
「お兄ちゃんが旅に出るのを嫌がったので、あたしが代わりに名乗りを上げたんです!」
「でも、鬼さんが良い鬼さんなら退治したくありません!」
「鬼さん! あたし達、お友達になりませんか!?」 - 13二次元好きの匿名さん25/02/03(月) 06:36:19
節分福丸小糸SP…
- 14二次元好きの匿名さん25/02/03(月) 13:53:39
ぴゃ
- 15二次元好きの匿名さん25/02/03(月) 20:46:03
ほ、保守…!
- 16二次元好きの匿名さん25/02/03(月) 21:30:06
「お友達になりませんか?」
果穂ちゃんの提案に、けれど小糸ちゃんはおいそれと乗ることはできませんでした。
関わりこそないものの、人間に良い印象はありませんでしたし、人間もまた鬼に良い印象を持っていないことも知っていました。
どうやら果穂ちゃんは悪い人間ではないようですが、人と鬼の間に友情が成立するとは思えません。
「あっ よかったらこれ、一緒に食べませんか?」
果穂ちゃんは謎の茶色い固形物を差し出しました。
「チョコレートです! 鬼退治に出るときに、ちょこ先輩がいーっぱいくれました!」
「チョ……チョコ……!?」
聞いたことがありました。
人間の間でチョコレートという、とても甘くて美味しいお菓子が人気だと。 - 17二次元好きの匿名さん25/02/03(月) 21:30:24
鬼ヶ島でひっそりと暮らす小糸ちゃんにとって甘味はとても貴重な物。
普段ありつける甘味といえば、木々になった木の実や、少し離れた山に住む鬼の円香ちゃんがお土産にくれる飴玉くらいのものです。
小糸ちゃんは差し出されたチョコレートを恐る恐る手に取り、それを口に含みました。
「…………!」
あまりの甘さに、あまりの美味しさに小糸ちゃんは悶絶しそうになりました。
小糸ちゃんは思いました。こんな良い物を分けてくれるなんて、この人間はとても良い人間に違いない……と。
そして小糸ちゃんは試しに雛菜ちゃんの件を相談してみようと考えました。 - 18二次元好きの匿名さん25/02/03(月) 21:30:42
「う、うん……いいよ……友達になろう……」
「本当ですかっ! 嬉しいですーーーー!」
「あたし、鬼さんのお友達って初めてです!」
「わ、わたしも……人間さんと話すのはじめて……」
「あの……他の人間さんには内緒で……」
「はいっ!分かりました! ところで小糸さんはここに一人で住んでるんですか?」
果穂ちゃんは周りを見渡しながら尋ねました。
「う、ううん……雛菜ちゃんっていう友達も住んでて……」
小糸ちゃんは丁度良いと思い、雛菜ちゃんの村での出来事を話すことにしました。 - 19二次元好きの匿名さん25/02/03(月) 21:31:00
「雛菜さん……可哀想です…………!」
「あたしも欲しかったヒーローのグッズが目の前で買えなくなったら、すっごくショックだと思います!」
果穂ちゃんは目を潤ませながら、会ったこともない鬼に同情の言葉を掛けました。
そして是非協力させて欲しいと、そう言いました。
「そ……それで……どうすればいいかな……?」
人間のことは人間に訊くのが一番。小糸ちゃんは意見を求めます。
「うーん……雛菜さんを見ただけでみんな怖がる
ですよね?」
「だったら、雛菜さんが怖い鬼さんじゃないって分かって貰うのがいいと思います!」
「そ、それはそうなんだけど……どうやって……?」
「人助けをするのはどうでしょう!」 - 20二次元好きの匿名さん25/02/04(火) 06:56:29
ぴぇぴぇ
- 21二次元好きの匿名さん25/02/04(火) 14:47:48
ほ