ここだけノエル先生が『一周目の記憶』を引き継いだ世界 7.5

  • 1スレ主25/02/04(火) 23:20:51
  • 2スレ主25/02/04(火) 23:21:26
  • 3スレ主25/02/04(火) 23:22:26

    このスレのノエル先生
    ・フランス事変後に修道院に隔離されて間もなく『一周目の記憶』を自覚する
    ・隔離後すぐに代行者として就任。この時点でエレイシアに対する報復を決意し復讐者として生きる
    ・エレイシアが目覚めて代行者になるまでの六年半でひたすらに自己研鑽&限界を超えるための代償を払い続ける。その甲斐あって原作とは非にならない強さを得る
    ・人間以上の耐久を得るための一環で左足を聖別化した義足に改造してもらってる
    ・偶然にも手に入れた十四の石を用いて人外と化す。外見の変化は肌が白くなったくらい。完全に適応してからは恐らく瞳孔も十字になってると思われる
    ・幻想種の中で神獣に区分される『白鯨』モビーディックの遺骸を直接的な経口摂取で取り込み、更に肉体の存在規模を拡張させる事に成功している
    ・現時点での強さは少なくともシエルとの連携でなら後継者をも斃せるまでになっている
    ・というよりシエルとの連携の末に二十七祖のクロムクレイに引導を渡すという大快挙を成しえてしまった
    ・↑の功績もあって教会から『焔(ほむら)のノエル』という異名をつけられる
    ・着実に強くなっていってる事と『一周目の記憶』の自分を反面教師にしてる事もあって大分精神が安定している
    ・ただし完全な復讐者として生きているので高い身分だの裕福な生活だのと言った人並みの幸せには全く固執していない。もはや彼女が望んでいるのはロアやシエルに対する復讐のみとなっている
    ・そんなんだからマーリオゥからは『手を焼かせる制御不能の猪』と厄介に思われてる
    ・ここまで復讐鬼に振り切っているものの、無辜の人々が死徒に虐殺されるのを何よりも許せない代行者としての正義感もちゃんとあったりする

  • 4スレ主25/02/04(火) 23:28:33

    前スレで有志の方が描いてくださったとっても仲良しで尊いノエシエの神絵
    この二人の退廃的で狂気的な絡みが見たい人は6スレ目にどうぞ

  • 5二次元好きの匿名さん25/02/04(火) 23:29:29

    建て乙

  • 6二次元好きの匿名さん25/02/04(火) 23:29:39

    スレ保守間に合わなくて申し訳ない
    続編感謝

  • 7スレ主25/02/04(火) 23:34:27

    現在の状況:志貴クンの救護に間に合ったシエル先輩が彼を護る為にノエル先生とバチバチにやりあっている。ノエル先生は戦闘の中で蛇腹剣を破壊されるも白鯨の力をそこそこ開放してより本気になり、先輩の方は拷問具アーマーを纏って杭打機で何とか応戦中。志貴クンは完全にヤムチャ視点

  • 8二次元好きの匿名さん25/02/04(火) 23:36:56

    「は―――!」
    「っ……!!」

    人間の域を超えた鍔迫り合いの中で、瞬きにも満たない瞬間(すき)を捉えたシエルの一撃がノエルの蛇腹剣を破壊する。
    痛手ではあるが、大した問題ではない。元々長期間による傷や劣化の蓄積が激しかったので、どの道この街での一件が済み次第、教会から新しく寄越させるつもりだった。
    加えて、13年間もの間を死地で戦ってきたノエルにとっては劣勢に追い詰められる事はシエルよりも全然慣れっこである。
    否―――恵まれた才能と精神力、何より不死身の力のおかげで最初から割とスムーズに生き延びてこれたシエルと違い、彼女はいつもいつも生きるか死んで終わるかの瀬戸際に立たされてきた。
    生き延びる為に、強くなる為に知恵(あたま)と肉体(からだ)を無理やりでも動かしていかねばならなかった。人間だった頃も人外と化してからもそれは変わっていないし、今この瞬間も例外ではない。

    「あっははははまーた面白い冗談を言うのね!全力で私を止めるぅ?止められるべきはアンタのこの行いをそのものだって言うのにさ!明らかな戒律違反に該当してるっつー自覚はあんのかしらぁ!?」
    「分かっています!それでも、それでもわたしは彼を救いたい!彼をロアから引き剥がし、その上でロアを完全に消滅させる。その手段が、可能性があると信じて!救いたいんです!!」
    「だから!!そののぼせ上がったクッソ寒い妄言を吐き散らすのやめろっつってんのよ偽善者ァァァァァ!!!」

    尚もありもしない希望に縋る彼女の発言と覚悟に、怨讐の少女はその焔(ほのお)を更に迸らせて苛烈さを加速度的に上げていく。
    ノエルはこれまで幾多にも渡る死の逆境を潜り抜けてきた影響で、普通に戦うよりも追い詰められれば追い詰められるほどに本領を発揮させやすいスタイルが自然と身についていた。
    つまり今の彼女は、ほんの先ほどまでの全力の彼女よりも更に厄介な手合いと化している。無論、当人はそれを自覚してはいないが。
    現にこれほどまでのシエルへの殺意と憤怒と憎悪を向けていても、その攻撃の殆どが彼女ではなく遠野志貴に向けられている。冷静さを欠いていないわけではないが、勝利条件まで見失うほど我に染まってもいない。

  • 9二次元好きの匿名さん25/02/04(火) 23:38:05

    「そら、さっさと私を殺すかぶちのめして気絶でもさせなきゃ志貴クンは惨たらしく死んでしまうわよ!?
    ま、ホントにそれをやったらやったで勿論後から教会に連絡を入れるけどね!『代行者シエルは存在しない希望的観測を優先して代行者としての責務を放棄し戒律違反に走った』ってなぁ!!?
    幾らアンタが治外法権の立場を手にしてるっつっても、そんな報告をされたら教会はアンタにどんな対応をするんでしょうね!あははははははははは!!」
    「構いません。わたしはもう、自分可愛さに逃げたくない。何を敵に回そうと、彼を守り抜いてみせます……!!」
    「あっそう!じゃあまずはおまえが食い残した虫ケラの炎から愛しの彼氏を守ってみろよクソ悪魔がァ!!」

    互いに一歩も一瞬も譲る事なく、少女たちは全力でぶつかり合う。シエルの重戦車(ジャガーノート)の魔力がじわじわと消費されつつあるのに対し、ノエルの焔(まりょく)は萎えるどころか益々その火力を底上げしていく。
    体内で適合している白鯨の遺骸も、その魔力増産を助長している。不死身の肉体である事と元々の超人的スペックの恩恵でシエルの魔力が尽きる事はまだまだないが、だからと言って決して余裕があるワケではない。魔力(オド)の生産が無尽蔵になっているのはノエル(向こう)も同じ。
    しかもこれほどまでに過剰放出しているのに自壊の気配なども一切ない。十四の石と遺骸が彼女の存在強度そのものをより強固なモノとして改良してる故なのだろう。

    「―――そこぉっ!!」
    「ご、ぅぶ―――!?」

    やがて、ノエルの槍斧の刃がシエルの脇腹を刺し貫く。同時に、その内側から蒼黒い炎が焼き焦がしていく。

    「が―――らぁぁああっ!」
    「はっ!?」

    直後、激痛を堪えたシエルの前蹴りが炸裂する。数十トンは下らない重さと威力の手加減なしのキックがノエルの腹筋に直撃し、これを向こうの壁際まで吹っ飛ばす。

    「ふぅ―――ふっ―――セブン!『拷問死(ペイン)』並びに『衝突死(ブレイク)』に換装!『出血死(ブレイド)』では彼女の手数と立ち回りに付いていくには厳しいです!」

    脇腹を抑えながらもシエルがそう告げた直後。第七聖典は瞬間的に形態を変え、赤い線の走る黒き鉄の鎧を形成し、巨大な蛇腹剣をコンパクトな杭打機へと変貌させる。

  • 10二次元好きの匿名さん25/02/04(火) 23:39:01

    聖典が秘める七つの死因の一つ、拷問具・純潔証明(ヴァージンペイン)。着用すれば使用者が死ぬまで外す事はできないが、逆を言えば使用者が死ぬまではその安全(いのち)を絶対のものとして保証する甲冑でもある。
    機動力こそ若干下がるが、それはシエルの身体能力の前ではデメリットとも言えない些細な事である。
    『出血死』の蛇腹剣から杭打機に変換させたのは、これまでの打ち合いの中で大振りな蛇腹剣ではノエルのスピードに追い縋るのは難しいと判断したからだ。
    対神秘にも特化した拷問具の甲冑で雷霆や炎を正面から耐えつつ突破し、『衝突死』で一気に決着をつける。これが今の彼女の算段だった。

    「っ!?」

    だが、そう都合よく決着に持っていける事は問屋が卸さない。換装を終えて今まさに突撃しようとしたノエルが吹っ飛んだ方角の炎の檻から巨大な水の砲弾がシエルに襲いかかる。
    ほんの一瞬虚をつかれるも、すぐさまそれを杭打機で打ち払いながら突撃する。
    そのままお返しのつもりで炎ごと杭で穿った―――が、そこにノエルの姿はなく。

    「―――上!」
    「当ったりぃ!」

    直上より殺気を感じた瞬間、ウォータージェットなど及びもつかない流水の津波(レーザー)が地盤ごと貫かんとシエル目掛けて発射される。
    食らえば並の上級死徒でも一撃で跡形もなく潰れかねないその津波を前に、シエルは最小限のジャンプで後退してコレを寸でのところで回避した。
    そのまま動きを一旦止める―――なんて事はない。飛び退いた際に柱に飛び移り、そこから一秒弱で駆け上がり天井に足を着かせ、そして前方のノエルに向かって突貫する!

    「はっははははすっごいわ!今ので確実に決まったと思ったのに避けたどころかこうして天井を走りながら私に向かってくるとか!やっぱアンタは吸血鬼よりも吸血鬼らしいデタラメなバケモノね、シエル!!」
    「それはどうも。ですが、バケモノなのはお互い様でしょう……っ!!」

    そして二人の少女(かいぶつ)は重力など知った事かと言わんばかりに天井を、柱を、壁を駆け巡り、跳び回っていく。本気とは程遠かったノエルに追い詰められていた遠野志貴からすれば、最早ただ見守る事しかできなかった。

  • 11スレ主25/02/04(火) 23:40:23

    とりあえず保守がてらに前回の進行を少しだけ再掲しました
    さあこっから書くぞぉ

  • 12二次元好きの匿名さん25/02/05(水) 00:23:55

    だが―――どれだけ実力が拮抗していようとも、決着の時は必然として迎えるものである。

    徐々に、本当に徐々にではあるもののシエルの動きがノエルを制し始めてきている。何だかんだといってもシエルとて、魔人揃いの埋葬機関をして特例と言わしめるほどの弓を始めとした武芸に秀でた天才の中の天才。

    逆境に追い詰められるほどに力を発揮し、相手の上を行くのは何もノエルだけの特権ではない。


    「―――そこっ!!」

    「ぐ、っ―――ちぃぃぃぃ……!!」


    コンマ1秒を下回る一瞬(すき)を突いた聖典の杭が、槍斧の切っ先を砕く。先に破壊された蛇腹剣と同じように、槍斧の耐久自体はそこそこガタが来ている状態にある。それ故に秘蹟と炎を付与して神秘を纏わせていなければ、シエルのような超人とこうして打ち合うにはあまりにも心許ない。


    「っざけんな裏切り者の偽善者ぁぁぁっ!!」


    復讐鬼は激昂に叫び、さりとて冷静さを失わずに縦横無尽に駆け巡りつつ遠野志貴に狙いを定める。しかし放つ傍から目の前を阻む女によってその一撃一撃を正確に迎撃され、撃ち落とされる。

    ならばと今度は眼前の女に全神経を集中させて浄炎、激流、雷霆の雨あられを浴びせるも、忌々しい事に対神秘に特化している黒い甲冑に護られてるせいで強行突破をギリギリのところで許してしまう。


    「ふざ……ふざけんな。ふざけんなっ!抵抗しないでよ!向かってこないでよ!何もかもアンタが間違ってんのに私にその剣を振りかざすな!!

    倒れろ!倒れろ!斃れろぉぉぉぉっ!!!!」


    なりふり構わずに今の自分にできる全てを以て迎え撃つ。殺しにかかる。このままここが崩落しようが関係ない。それはそれでこの女はともかく、彼方の彼は燃えながら崩れる瓦礫を前に生き埋めになって死に果てるから結果オーライだ。

    いや、もう寧ろここまでくればそれを狙うのもまたいいのかもしれない。記憶の中とは違って今は深夜帯、直上のデパートは無人だし最後の一手としては躊躇いなく使える状況ではある。


    そこまで考えた彼女は―――


    dice1d2=2 (2)

    1.迷いなくそれを実行に移すと判断した

    2.しかしながら後々のリスクが大きいと懸念し、今はまだすべきタイミングではないと判断した

  • 13二次元好きの匿名さん25/02/05(水) 00:36:35

    おそらくアルク対策…?
    個人的には復讐鬼であっても無辜の市井の人々に対しての被害は極力抑える姿勢のノエルさんが好きなのでそうだと嬉しい
    自分自身が元々弱き者だったからその者達の心情が一番理解できるのは生まれつきの化物であるシエルでもなくノエルだと思うし

  • 14二次元好きの匿名さん25/02/05(水) 03:51:06

    今度こそ見届けるぞ 保守

  • 15二次元好きの匿名さん25/02/05(水) 08:26:42

    このままやりあってもジリ貧だし、この場で志貴を殺してシエルの首根っこ掴んでアルクと戦おうにも蛇腹剣は壊れハルバートは壊れそうだから、こんな状態の得物だと不味いから後顧の憂いであるアルクを片付けてからじっくりと志貴を殺そうって方針に切り替えたのか?

  • 16二次元好きの匿名さん25/02/05(水) 12:39:25

    シエルは結局志貴が言うようにノエルを説得出来るのか?
    現状ありもしない手段に縋ってロアという吸血鬼を庇い多くの無辜の人々の生命を危険に晒そうとしてる時点でノエルの復讐という私情抜きにしても
    その根底にある罪もない人々が理不尽に殺される事が許せないっていう信条に抵触するからどう足掻いても無理だと感じる…
    この世界だとシエルがノエルを理詰めで追い詰めるのは不可能か

  • 17二次元好きの匿名さん25/02/05(水) 18:17:20

    理詰めは難しいだろうな 力でねじ伏せるしかないのか

  • 18二次元好きの匿名さん25/02/05(水) 21:37:38

    「っ……!」

    苛立ちに歯噛みしながらも冷静に思考を回す。ここで今すぐ実行しようと思えば容易くできる。だが人気の静まっている深夜であろうと、それでもデパート一つを周囲一帯ごと巻き込んでの崩落など些か目立ちすぎる。
    何より、

    (その騒ぎに真祖が気づかない筈がない……!そんなコトすれば絶対にこっちに向かって飛んでくるに決まってるわ!)

    恐らくは、今もどこか離れたところで観ているだろう白い化身。それを迎え撃つ算段もしっかりと用意してはいるものの、生憎とそれを設けているのは学校だ。
    ここで遠野志貴(ロア)を殺し、そしてシエルと共にすぐさま学校へと向かい、そこを戦場として襲い来るであろう真祖を迎撃・撃退する。これがノエルの組み立てている予定である。
    そしてそれ故に、今ここで強行手段に及びその結果としてアルクェイドに即座に来られるのは非常に不味い。自分は崩落に巻き込まれたところですぐに復帰できるだろうが、シエルは恐らく遠野志貴を守れなかったショックでそのまま瓦礫の中で蹲るに違いない。
    そうなれば自分一人で憤怒に染まった真祖の姫と殺し合わねばならない。ただでさえこうしてシエルとの戦いで消耗しているというのに、仮にそんな状況になってしまえばまず間違いなく殺されてしまう。

    (ああクソ。ロアがいる限り絶対に殺しに来るのは分かってるけど!なんで大人しく城で眠らずに出てきやがったのよ!!)

    改めて想像以上に面倒で恐ろしい手合いだという事を実感し、やり場のない苛立ちを目の前の女にぶつける。しかしそれもまた女を止めるには至らずに接近を許してしまう。
    ノエルはこの時点で薄々悟っていた。身を焦がすような怒りと焦燥で炎の勢いは更に増してこそいるが、同時にそのせいで動きの精度が欠け落ちつつある事を。反対にシエルの方は戦闘が激化するほどに少しずつこちらの動きを学習し、一つ一つの微かな隙を確実に突いて来るようになっている事を。

    「ちく、しょう―――ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう!!」

    一撃ごとに圧されていく。一撃ごとに削られていく。一撃ごとに反撃(かえ)し、そして反撃(かえ)されていく。
    しかしまだ余裕がない訳ではない。それどころか純粋な火力では今やこちらが上だ。
    だから殺す。ここから何とか押し返し、この怪物を殺した上であの少年を確実に灰にする―――!

  • 19二次元好きの匿名さん25/02/05(水) 22:26:46

    「―――、―――、―――!!」

    荒んだ息をなるべく整え、今まで以上に攻めの方に余力を回す。もう何合目かも分からない撃ち合いの中で、それでも裏切り者の代行者は止まらずに突き進む。
    裏切り者の攻撃の一つ一つに迷いはなくとも殺意は乗せていない。つまり本気でこそあるものの殺すつもりはないということ。
    そんな中途半端な剣で、どうして尚も自分とこうして対等に戦えているというのか……!

    「なによ……なによ、なによ、なによそれ……!!ふざけるのも大概にしろ!
    あの代行者シエルが!!私という被害者を、私という復讐鬼を、私という理解者(バディ)を裏切っておきながら、私との誓いを反故にしやがりながら!まだ“敵”として殺意を向けないの!?なんでこの期に及んで、そうして手加減して私を倒そうとしてんの!?
    裏切るんならちゃんと殺れ!私に少しでも負い目があんならせめて戦闘マシーンに戻れ!それともなに、その子を生かそうとするに飽き足らず私もこのまま追い詰めて叩き伏せた上で殺さずに説得しようってか!?
    笑わせないでちょうだい。この場において正しいのは私だ。私こそが正義だ。中途半端な使命感で中途半端に戦ってんなら!さっさとそこを退けぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」

    血走った目で怨讐に狂う少女は叫ぶ。彼女は、ここまで来ても人間らしさを捨てきれていない裏切り者の甘さを全力で糾弾する。
    散々疑わしきは罰してきた。散々女だろうが子供だろうが死徒であるとして殺してきた。散々、お互いに非人間として徹してきた。
    本当に、どうしてこうなる。どうして記憶の中と同じようにこの女は私を置いていく。どうして、どうして―――記憶の中とは違って、自分(かいぶつ)を殺そうとしない?

    「ねえ、聞いてんの?黙ってないで何か言いなさいよ。私がこうしてベラベラと喋れてんだからアンタも何か言ってよ。
    私の怒りに、恨みに、悲しみに、殺意に!!どう思ってんのか言ってみなさいよぉ!!!」

    劣勢に立たされつつも魂からの叫びをぶつける。そんなノエルの怒号に呼応するかのように礼拝堂を囲う炎の檻も一層と燃え盛る。
    それに温度上昇と熱気が、向こうで見守っている遠野志貴にも襲いかかる。直接触れていなくとも、既に死に体も同然である今の彼からすれば、その熱は徐々に体力を奪われるには十分だった。

  • 20二次元好きの匿名さん25/02/05(水) 23:11:52

    このまま炎の勢いが増していけば、その熱で彼を殺す事もできるだろう。しかしそう単純に事が運ばないのもノエルは理解している。

    「ふっ―――!!」

    シエルの動きが更に精度を増していく。ご自慢の杭打機の一撃が、槍斧の耐久を擦り減らしていく。
    負けじとノエルも抗う。炎で燃やし、激流の渦を繰り出し、雷霆で焼き焦がす。だがそのどれもを乗り越え、女はどこまでも止まらずに迫り続ける。
    礼拝堂は戦いの余波でもうボロボロだ。いつ倒壊しても不思議じゃない。
    そしてそうなれば異変を悟った真祖が一瞬で飛んでくるだろう。それだけは避けねばならない。
    その焦りと苛立ちが、ノエルのパフォーマンスを阻害している。皮肉にも逆境の中で力を発揮していながら、それ以上に彼女自身の感情が彼女を追い詰めていく。

    「なんで、どうして!?強くなる為にこの13年間を死に物狂いで必死に戦ってきたのに!復讐する為に、アンタを責めて殺す為に人間を辞めてまで強さを得てきたのに!
    なんで倒れてくれないの!?なんで私が正しくて自分が間違っているって分かってるのに戦ってくるの!?
    結局、結局―――この私“も”、ここまで強くなってもアンタには及ばないっていうの!?」

    どうしようもない悔しさがこみ上げてくる。思い返せば、この6年間で何度も稽古という名の鍛錬を交わした事はあったが何れも目の前の怪物に勝つ事ができなかった。
    でもそれはあくまで試合であって殺し合いとかではないからと、本気で殺し合えば自分にだって勝機はなくはない筈だと、そう誤魔化すように思い込んでいた。
    しかしこれはなんだ。なぜ自分への殺意のないこの女に、全力で殺す気で掛かっている自分が劣勢に立たされている?
    なぜ中途半端な偽善者如きに、復讐鬼でありながらも正しい立場にいる自分がこうも追い詰められているというのか?

    「―――分からない。分からない。全っ然理解できない!その子は、遠野志貴はもう間もなくロアに書き換えられる。その汚染は精神でどうにかなるものなんかじゃないってのは他ならないアンタ自身が一番分かってるでしょ?
    仮にロアを引き剥がす方法が本当にあるとして、それを見つけ出して実行するまでにその子が耐えられるとでも思ってんの!?
    転生体をロアから救う手段。そんなお優しい事を、アンタを散々いたぶって私を汚染物扱いしやがった“あの”聖堂教会が律義に考えているとでも!?」

  • 21二次元好きの匿名さん25/02/05(水) 23:19:15

    ノエルさん一貫して正論しか言ってねぇ…
    後ノエル自身はロアを恨んでるだけで志貴対しては常に人としての尊厳が失われる前に安寧な最期を与えようとする慈悲を見せてるし

  • 22二次元好きの匿名さん25/02/05(水) 23:39:33

    お辛いけどすごい引き込まれる
    ノエルの感情とか文章とか台詞とか本当にすごい

  • 23二次元好きの匿名さん25/02/06(木) 05:04:29

    どっちも欠けずに続いて欲しいが難しそう……

スレッドは2/6 15:04頃に落ちます

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