- 1125/02/05(水) 22:34:52
- 2125/02/05(水) 22:35:16
- 3125/02/05(水) 22:35:31
- 4125/02/05(水) 22:37:03
- 5二次元好きの匿名さん25/02/05(水) 22:37:37
立て乙
- 6二次元好きの匿名さん25/02/05(水) 22:38:03
立て乙
- 7125/02/05(水) 22:38:57
おつあり!
じゃあ出していくね
高校の入試は何一つ分からなくて、入れるところがなかった。
仕方ないからすぐに就職したんだけど、誰でもできるって言われてた倉庫業は作業が覚えられなくて、細かいことを何個も失敗してすぐに辞めた。手に職をつけた方が良いって言われて職人って呼ばれる物を目指したけど、作業を覚えるのに時間がかかりすぎてどこに行っても向こうから「辞めてほしい」って頭下げられた。
バイトでどうにか自分の生活費くらいは稼ぎたいと思って飲食業についてホールに配属されたけど、注文ミスが多すぎてこれもダメだった。ここらへんで「あれ、俺もしかして人生詰んでね?」って思い始めたんだ。
やり方自体がわからないから努力もあんま出来ないし、出来ないことを何度もやるのが嫌で結局何もやらなくなった。でも、今まで育ててくれた母ちゃんとか父ちゃんを安心させたくて、なんか俺みたいなのが出来る仕事ないかなって探してた時だった。
ある日鏡をまじまじと見て、思ったんだ。
「俺、もしかしてイケメンじゃね……!?」
【朗報】俺、顔が良かった!
この顔ならなんか職があるはずだろって思って、そういえば体動かすのは得意だし体育のダンスの授業はいつも褒められてたのを思い出した。だからこれもうアイドルになるしかないっしょ! って思って、この世界に飛び込んだ。 - 8二次元好きの匿名さん25/02/05(水) 22:39:05
立て乙!
ついに17スレ目か…
最初期から追ってきたから感慨深い - 9125/02/05(水) 22:39:37
そしたら大正解! この世界は俺を「使えないバカ」から「個性のあるキャラ」に変えてくれた。バカはキャラ的にウケるからみんな計算したバカを演じるけど、俺のは天然のバカだから飽きが来ないってプロデューサーが言ってくれた。バカじゃないのにバカな振りしたがるなんてみんな変だよな。
でも、それもあんまし続かなかった。
事務所の下積みからDD9のグループに編成されて、暫くしたころ光木が“個性”事故を起こしちゃって、それをメンバーに叩かれた。
俺はそれがすごいムカついて、でも俺は口げんかが凄い弱いから言い負かされちまって、結局彰とかマネさんが「一緒に来るか?」って声をかけてくれてようやく動くことが出来た。
その、記者会見をする日のことを俺はふとした時にいつも思い出す。
「嫌な事には答えなくて良いです。全部僕が答えますから」
「でも……」
一番苦しいのは光木なのに、どうして全部光木がやるんだろうって不思議だった。でも俺はバカで口も上手くなくて、いつも余計な事ばっか言っちゃうから彰みたく「俺が代わりに応える」なんてことは言えなかった。そっちの方が足引っ張るってわかってたし。
- 10125/02/05(水) 22:40:31
光木は「ダメですよ」甘くて優しい、ファンに言う時みたいな声で俺たちに言った。
「みんながここに来てくれて、僕はそれだけで嬉しいんです。僕と違ってアイドルになるためにこの業界に飛び込んだみんなが、危ない橋を僕と一緒に行くって言ってくれただけで、すごく、すごく。だからせめて、背負うことは僕だけにさせてほしいんです」
その時俺は、何も言えなかった。
危ない橋を一緒に渡るって言われても、俺はその危なさが全然わからない。DD9に残った方が良いのかも、一緒に行った方が良いのかも、俺には判断が出来ない。ただ、隣に居た彰が俺と一緒に行くか? って聞いてくれたから手を取っただけだ。
──俺、自分が思ってるよりもバカなんじゃ……?
急に怖くなった。
自分で自分の将来をこんなに考えられない俺って本当にバカすぎるんじゃないかって。そんな俺がここに居ても、怒られるんじゃないかって。
「だから、みんな……代わりと言っては何だけど」
変な気持ちが頭の中をぐるぐるし始めたら、それを遮るように光木が声を出した。いつもよりちょっと低い、聞いたことない声だった。
拳を俺たちの前に突き出して、サングラス越しにニカッて笑う。
- 11125/02/05(水) 22:40:48
- 12125/02/05(水) 22:41:26
頭ん中にあったぐるぐるが全部吹っ飛んだみたいな。
テーブルクロスの上に落ちたコーヒーのシミみてえな悩みが、クロスごと変えられたみたいな……なんだろうちょっと頭良い表現しようとしたけどしっくりこねえ。
とにかく、そんくらいの衝撃で。
「おう!」
俺、コイツみたいになりてえって、心底思ったんだ。
‡
鼓膜ぶち破んのかってくらいの音量の目覚ましを止めて横を見る。ホワイトボードに書いてある文字を見て、時計の時間と見比べて起き上がった。
壁にかけてあるチェックボードにある項目を一個ずつ埋めていく。顔を洗う、歯を磨く、化粧する、服着替える、朝飯を食う……他にもいろんなことをやって、準備が出来たら鞄を持って玄関に行く。
そこで鞄を広げて、玄関の扉に貼り付けてあるボードの物がちゃんと入っているかを確認。ハンカチがなかったから手の届く位置に置いてある棚から予備を入れた。
全部完璧にして、最後に今日のダイヤを確認した。時間通りなら三十分で着く。時間に余裕は持たせてるけど遅延した場合の迂回路をスクショに撮った。
- 13二次元好きの匿名さん25/02/05(水) 22:41:39
oh…
最初から飛ばすねスレ主
ワクワクしながら見てる - 14125/02/05(水) 22:42:32
「よし、行ってきます!」
元気よく外に出る。ドアを閉めたら動画を起動して鍵を締めるところを撮って保存した。これで完璧。
電車はスムーズに全部乗り換えが出来て、せっかくだからと近くの駅で差し入れのお菓子を買っておく。予定より遅い四十五分で到着した。もうロケの現場にはスタッフさんが集まってたから、さっき買ったお菓子を皆さんで分けてくださいって渡す。
「おはようございます~! 佐伯さんこれみんなで食べて~!」
「REN~! お前マジ後輩力たっけえなあ!」
「いやバカなんでこんくらいは出来ねえと! 今日もミスったらいい感じにカットしてくださいね!」
「ははっ! 任せとけイケメンなところ使ってやるよ!」
人の顔を覚えるのは好きだ。この人は佐伯さん、怒ると滅茶苦茶怖いけど甘いものが好きでシゴデキなアラフォーのおじさん。好きなヒーローはMtレディ。
差し入れを皆が食べるところに置いておくと、やけに机が寂しいことに気付いた。いつもなら先に置いてある差し入れが無い。
- 15125/02/05(水) 22:43:38
「あれ、SHOTAは?」
「まだSHOTAくん来てねえのよ」
「えっ!? アイツがっすか!?」
「そうなんよ、まあまだ一時間以上あるから全然大丈夫なんだけどさ、珍しいよな」
SHOTAに対抗するみたいに始めた俺の差し入れ大作戦は、大抵いつもSHOTAが先に渡してる。アイツは前に仕事が入ってない限りは必ず余裕を持って現場に来るし、人に迷惑をかけないようにしっかり台本を読み込む時間を作る。
机の上にあった置時計を確認すると、開始までもう五十分を切ってる。
「嘘だろ」
撮影開始一時間前に居ないって言うのは衝撃どころじゃない。俺は携帯を点けてすぐにSHOTAに電話をかけた。
出ない。
「で、出ねえ……」
「SHOTAくん遅刻かあ~?」
後ろから飛んできた声に背筋が跳ね上がった。俺が怒られてるわけじゃないのに冷や汗が止まらない。
「えっ、いや、アイツが遅刻はあり得ないと思……いますけど、あるとしたら敵に巻き込まれたとか……?」
「それもあるか。おーい、日高~! 敵の発生状況わかるか~?」
- 16125/02/05(水) 22:44:31
ADの日高さんが佐伯さんに言われて調べるけど「ここ近辺は無さそうっす」って簡単な返事が来た。俺の頭の中がパニックになる。BLACK CASEのグループチャットをつけて「誰かSHOTAどこにいるか知らん?」って送るけど、みんな「知らない」って言ってる。
『どうしたの?』
『SHOTAまだ来てない』
『えマジ? 電話は?』
『繋がらない』
『このチャットも既読付きませんね』
『マネさんに確認して緊急用のGPSで場所探してみる』
『拓哉ナイスゥ~』
拓哉がすぐにマネさんに連絡をしてくれたのか、位置情報が送られてきた。場所はここからはちょっと遠いけど、地図の上にあるマークの速さ的にあと三十分もすればつきそうだ。
電話に出ない理由は分からんけど。
「SHOTAあと三十分くらいで来そうっす!」
「おっ、了解~」
心底安心して心臓がバクバク言ってる。
俺はその間に化粧と服の着替えを済ませておいた。ぴったり三十分後、タクシーに乗ったSHOTAが現場に飛び込んでくる。
- 17125/02/05(水) 22:45:20
「すみません、遅れました!」
「遅れてないよSHOTAくん~、準備してきな~」
「はい、有難うございます!」
大焦りをしているショータに周りの大人たちは笑顔を向けてる。佐伯さんなんかは「SHOTAくん珍しいなあ」ってデカい腹を撫でて笑ってた。
「……」
でも、アイツの顔は真っ青だった。
みんなが許してくれてるのに、今にも倒れそうなくらい青い顔でメイク用のロケバスに入っていく。ちゃんと間に合ったのに、何であんな不安な顔をしてんだろう。
結局その日のロケは無事に終了したし、アイツはいつも通りのリアクションしかしなかったんだけど俺の胸にはその違和感がずっとつっかえていた。
‡
売れっ子SHOTAにもスケジュールの穴ってのが存在する。今日はちょうどその日で、二人して一緒に事務所に帰ってきた。他のメンバーは仕事とプライベートで事務所にはいない。扉を閉めると、前を歩いていたショータがいきなり立ち止まって俺の方を向いて頭を勢い良く下げた。
- 18125/02/05(水) 22:45:59
「朝、ごめん」
「えっ、なにが」
「その、遅刻しただろ」
「遅刻はしてないじゃん。いやまあ電話位出ろよって思ったけど」
ちょっとした不満を言えば「それも悪かった」って、随分大人しい声で言われた。なんだか不気味だなって思うけど、それ以上に大袈裟だった。
「遅刻してないし、ロケもいつも通りできてただろ。たまに調子悪い日くらいあんじゃね? そんな気にするようなことじゃないだろ」
「でも、最年少の俺があんな遅くにタクシーで来たらお前だって嫌味いわれるだろ」
えっ、こいつそんなことまで考えてんの。凄いな。
でも今日のスタッフさんたちは優しかったし、寧ろショータも寝坊とかするんだ~って微笑ましそうにしてたけどな、俺が遅刻寸前の時は死ぬほど怒鳴り散らかす癖に。
大人びてるって言うか社会人感がすげえんだよなショータって。芸能人の大人たちとも全然違うっていうか、サラリーマンやってる俺の親みたいな責任感の感じ方してるっつーか。
実は人生二周目なんじゃねえの?
- 19二次元好きの匿名さん25/02/05(水) 22:46:44
図星で草
- 20125/02/05(水) 22:47:15
「別に気にしてねえって。寧ろ人間味合ってオモロって言われてたぞお前」
「本当にそう言ってたのか?」
「大体こんな感じで言ってた」
安心したのか「有難う」って言って茶ぁ淹れに行った。何がそんなに不安だったんだろ。「茶いるか?」って聞かれたから「お願い」って言って椅子に座って考える。
今まで他のメンバーが遅刻したの見たことないから比較対処がないしわからねえな。DD9時代なら何人か遅刻寸前の奴ら居たけど、アイツらはアイツらで「ギリだし大丈夫っしょ!」って全然違うこと言ってたし。俺もギリだし大丈夫っしょ! 派だったからなんも思わなかったなあ。
でも、光木とかはめっちゃ怖い顔してたからギリはダメなんだろうな。なんでかは分からないけど、多分その「なんで」は俺がわからなくても良いやつだ。そんでショータは「なんで」が分かってるから今回のを凄いやらかしだと思ってる……のかな。
茶を持ってきてくれたショータにお礼を言って一口すする。いつも通りのショータが目の前に居るけど、なんかむずがゆくなった。
「あのさ」
「なに?」
「俺ってさあ、バカじゃん?」
「なんだよ急に」
あれ、切り出し方ミスったかな。
でも良いか、ショータは頭良いし俺の言葉ちゃんとわかってくれんだろ。
- 21125/02/05(水) 22:48:18
「ええと……ちょっと俺の話しても良い?」
「別に良いが」
「やったぜ。いやさ、俺ってめちゃくちゃバカなんだけど、ちょっと他の人とは違うバカなのね」
こんな変な切り出し方だったのにショータは真剣に俺の話を聞いていた。目を見られるのがちょっと恥ずかしくて逸らす。
俺のコップを持った手が震えてた。
「違うっていうのは?」
「なんていうんだろ……例えばさ、家の鍵締めたかどうかわかんなくて不安になることってショータある?」
「あるが……」
「そういう時ってどうする?」
「どうって。早く帰りてえなって思うけど」
「やっぱそうなんだ」
頭の良いやつってすげえな。
光木も彰も拓哉もマネさんもみんなそうだったから、多分ショータもそうなんだなってえ思ってたけど。俺はスマホの画面を弄って動画のフォルダを開いた。
鍵を差して回して、扉が閉まっていることを確認するだけの動画がずらりと並んだフォルダを見て、ショータが息をのむ。
- 22125/02/05(水) 22:49:15
「俺ね、こうやって鍵かけた証拠? みたいなの残しとかないと家出れねえんだ。怖くてどんなに遅刻ギリでも家に戻って鍵かかってるか確認しちゃう」
そのあとに見せたのはホワイトボードや大きな目覚まし時計がたくさん並んでる画像。
「これは俺の部屋。でけえ目覚ましは一撃で起きる為に光木がくれた。枕もとのホワイトボードは目が覚めた時必ず目に入る場所に何時にどこに出かけるかを書いとかないとやっぱり二度寝しちゃうからって彰と拓哉がくれたのを置いてある」
「……この、やることリストってのは」
「そのまんま。家を出るまでにやらなきゃいけないことを一個ずつ書いてあんの。これないと次何やれば良いんだっけって焦って余計遅れんだわ」
最後に見せたのが玄関の画像。
「このホワイトボードは出かける時に確認する「取りあえずこれ持っときゃどうにかなるリスト」マネさんが作ってくれたの。前に携帯忘れて死にかけたからその時から必須の確認事項になったんだわ」
全部見せると、なんか嫌な沈黙がショータを攻撃してるみたいにアイツの顔を青くさせてた。何を言えばいいのかわからないのか、ショータはずっと口を開けたり開いたりして、結局無言になった。
- 23125/02/05(水) 22:50:24
そりゃびっくりするよな。俺にとっては「ちょー良いアイディアじゃん! これなら遅刻しなくて済むわ!」って言う世紀の発明だったけど、他の奴らからすれば「こんだけ対策しても遅刻しそうになるヤバイ奴」だもんな。
“個性”が産まれて世の中がぐちゃぐちゃになる前は俺みたいな奴の症状にもちゃんと名前が付いてたらしい。そんくらい、人とは違うってことなんだろ。
とりあえず、なんでこんなことを話したのかちゃんと説明しないといけない。彰からも「何か話したらちゃんと理由を言うんだぞ」って言われてるもんな。
「俺はさ、ここまでしないと遅刻無くせねえんだ」
「……その、蓮」
「でも俺は、なんでここまでして遅刻を無くさないといけないのか、わかってねえの」
「は?」
本当に理解できない顔って結構堪える。
でも、俺だって光木みたいにちゃんと人を励ます人になりたい。こいつの不安はちゃんと取り除いておいてやりたい。やり方があってるかわからねえけど。
「いや、遅刻しちゃいけないってわかってるからここまで対策してんだろ?」
「対策してんのは「とにかく遅刻だけはするな」ってマネさんに言われたから。それ以外は頑張らなくていいまで言われたし、とにかく遅刻対策に全振りしてどうにかしてるけど、遅刻をしちゃダメな理由はよくわかってない」
- 24125/02/05(水) 22:51:28
すっげえ口開いてる、間抜け面。
でもそっか、そうなんだよな。頭良いやつらはみんなわかるんだよな、どうして遅刻しちゃいけないかとか、そう言う理由が。
「なんだっけ、信頼関係がどうとか色々言われたけど、言葉は分かっても意味がよくわからないっていうか。オレンジとかの皮だけを食ってる感じ? 中身がわかんねえの、伝わるかな」
「伝わってる」
「そっか、良かった。そんなわけでさ、俺はお前らと一緒に仕事するために頑張ってこうしてそれっぽく振舞ってるわけなんだけど……ショータはさ、今日たまたま寝坊しただけなんだろ? そのうえ、なんで遅刻したらダメなのかをわかってるからあんなに真っ青になってた」
やっと言いたいことが言える。
ちゃんと頼もしい兄ちゃんみたいに出来てるかな。俺は言いたいこと散らかりすぎててわからないって拓哉からもしょっちゅう言われるから不安だ。
「ショータにとっては当たり前なのかもしれないけど、「なんで」「どうして」って理由がわかるのってすげえことだよ。俺は場の雰囲気に流されてそれっぽい回答をしてるだけ。みんなと仕事出来てるのもみんなのおかげだ。そんな俺から見たら、相手のこと考えて反省して次につなげようとするお前は、凄いと思う」
- 25125/02/05(水) 22:52:36
ショータは本当に凄い。
俺が諦めた数学も国語も全部俺より出来てる。努力って言う行為が苦手でダンスの練習が出来なかった俺に根気強く教えることも出来る。こいつは本当に凄いやつ。
だから、凄いやつが俺みたいな『バカ』で『普通』な人間とおんなじって顔をしてるのが、ちょっと気にくわない。
「凄いんだから、もっと堂々としててくれよ。お前が『普通』みたいなツラされたら、俺が『普通』じゃないみたいじゃん」
「蓮」
「いや違う、あの、なんだ、もっと良いことを言おうとしてたんだ俺は。光木みたいにお前のことを励ませる最高の言葉をだな、俺は……」
「大丈夫だよ」
言いたいことが伝わってない気がして焦る。こういうちょっと馬鹿にした感じの言い方じゃなくって、もっとストレートに、あの時の光木みたいに格好いい励ましの言葉が言えるはずなんだ俺は。
でも、目の前のショータが歯を見せて笑ってて、言葉が止まった。
「わかってる、伝わってるよ」
「ほ、ほんと……?」
「ああ。元気出させようとしてくれてたんだろ? 有難うな」
何とか伝わったみたいで良かった。
- 26125/02/05(水) 22:54:22
俺はすっかり冷めた茶を啜る。ショータはちょっと考えてから俺に話し始めてくれた。
「この間敵に襲われたって言ったろ? それのせいでちょっと不安になっちまって、最近寝つきが悪いんだ。電話に出れなかったのは寝起きでパ二くってたから」
「ごめんそれ俺に言って良いやつ? 俺あんま隠し事とか出来ねえんだけど」
「大丈夫、近いうちにマネさんからみんなに伝えようと思ってたし。仕事も少し調整する」
「はー……まあ最近お前忙しすぎたからなあ」
ブレイクしたころの光木もびっくりな仕事量だったもんな。
それにしてもあんま寝れてないって大丈夫なのかよ。もっかい心配の言葉をかけたら「大丈夫だよ」って同じ答えを返される。
「光木みたいにって言ってたけど、お前の中の目標ってアイツなのか?」
「目標……って言うとちげえな。光木っていつもほんわかしてるけど時々すっげえ頼りがいある感じになるじゃん? ああいうのに憧れるんだよね」
- 27125/02/05(水) 22:55:07
ショータはピンとこないみたいだった。確かにこいつの前だと光木ってあんま昔の感じ出さねえもんな。俺は事務所に備え付けてある事務用のパソコンを勝手に立ち上げて、そこにショータを手招きした。
過去フォルダの中に入ってるのはDD9よりもずっと昔、今から十年近く前の写真たちだ。
「これは……」
「十代の頃の光木。あの頃アイツって舞台役者やっててさ、スポンサーにDD9時代の事務所つけて劇団ひっさげてそこらじゅうで公演してたんだぜ」
「なんか今と雰囲気違うな」
「あの頃の光木ってオラオラしてたらしいからなあ。映像見るだけでも男らしくて格好いいよな!」
舞台で声を張る光木は今とは全然違う男らしさ全開で、この頃はどうやら男ファンもかなり多かったらしい。今とは違いすぎるその姿にショータも目を丸くする。
「……今はどうしてアイドルに?」
「それがさあ、なんか昔光木が責任者の劇団がボランティアに行った場所で子供に怪我させて解体になっちまったんだって。表立って大きな騒ぎにはならなかったけど、元々スポンサー側は光木を舞台役者のままにしたくなかったから不祥事を理由にゴリ押ししたんだろうって彰が言ってた」
- 28125/02/05(水) 22:56:22
舞台役者ってあんま金にならないらしい。
だから事務所は出来るだけ芸能系で活動させたがるんだと。だったら最初からスポンサーなんかやらなきゃいいのに。
「……勿体ねえな」
「だろ!? そう思うだろ!?」
写真の中の光木はすごく格好いい。DD9の事務所に入った時は光木のことよくわかってなかったけど、この写真とか当時の動画を見せてもらってマジかっけー! って大興奮したのを覚えてる。
今の光木も格好いいけど、俺はやっぱりこっちも好きだ。
「また劇やらねえの? もう事務所離れたのに」
「うーん、事務所は離れたけど向こうがエンタメにめちゃくちゃ手を伸ばしてて入れる隙がねえって拓哉が言ってた」
アイツは元々演技がべらぼうに上手いから、すぐにドラマにも慣れた。でもやっぱり板の上にかなりこだわりがあるのか、時々マネさんに直談判するところを見たことがある。それくらい、光木にとって劇ってのは大切なんだろう。
「俺の目標はこういう感じの格好いい大人になること!」
「……そうか」
「なあ、目線で「無理だろ」って言うのやめてくんねえ? 傷つくんだけど」
「じゃあお前ならできるって言ってほしかったか?」
「うーん、僅差で「無理だろ」が勝つなあ」
「だろ」
すっかりいつも通りの調子に戻ったショータに安心してパソコンの電源を落とした。
残った茶を飲み干して、今度は俺がおかわりを淹れて来てやる。たぶんこいつが事務所に入ってから、初めてサシで長話をした日だった。
- 29二次元好きの匿名さん25/02/05(水) 23:00:58
1話のボリュームが凄いなぁ
- 30125/02/05(水) 23:02:44
以上です!
蓮の話はどっかでちゃんと書きたかったので書いた
蓮みたいに支援がないと『普通』に生活ができない子って絶対“個性”社会では埋もれて得るべき支援を受けられないし
なんなら支援のリソース自体が“個性”に取られてなくなってるだろうなと思いながら書いた
先生が担任をしていた頃であっていたのはそういうのと無縁そうな子ばかりだったと思うけど
アングラ時代はその生きづらさゆえにドロップアウトしてしまった子も沢山みていただろうなあとも思い書いてる
メンバーが蓮のことをバカ扱いするのは本人が一番それを望んでいるから
一時期は「こいつ普通とは違うんじゃ」って思われて丁寧にされてたんだけどそれが逆に苦しくて耐えられなかったから「普通の友達にするみたいにバカ扱いしてほしい」って蓮から頼んだ
蓮は自分が普通ではないしバカという括りでもないことをわかっているけどわかったところでこの社会に救いはないのでせめて「そこら辺に居るバカ」でありたいと思ってる
メンバーもそれを理解して接してる
ただSHOTAはそれを知らなかった(伝えるタイミングがなかった)のでこうしてサシで伝えることにした
っていう感じの話
- 31二次元好きの匿名さん25/02/05(水) 23:04:03
うーん
なんか考えさせられる話だなあ… - 32二次元好きの匿名さん25/02/05(水) 23:09:07
そっか個性社会の弊害ってそう言うのもあるか
今のところ出てきたメンバー全員がそれぞれ別種の問題抱えつつちゃんと前に進もうとしてるの良いな
オリキャラなのにちゃんと生きてる感があってみんなのこと大好きだよ…
いつもありがとうスレ主… - 33二次元好きの匿名さん25/02/05(水) 23:18:58
ワイ所謂ギリ健なんだけど途中の「言葉は分かるけど意味は分からない」に共感しまくってしまった
説明されてもなんか言葉の上っ面だけが脳の中を滑ってなんも納得できないんだよ
でも周りがそう言ってるからとりあえず従わなきゃいけないか…って感じ
でもちゃんと意味を理解してないからちゃんと意味を理解してれば対応できたはずの不具合とかに全然対応できない
友達とかは「わかるわかる納得できないけどやらなきゃいけないことってあるよね~」みたいに共感してくれるんだけど明らかにそのレベルが違うんだよね
こういう人間に対して全く理解のなくなっただろう個性社会あまりにも怖すぎる…
ショータが眠れてないとか光木の過去とか気になるところがいっぱいあるのに芸能人としてちゃんと仕事してる蓮に死ぬほど共感してそれどろこじゃなくなっちゃった
有難うスレ主この話好きだよ - 34二次元好きの匿名さん25/02/05(水) 23:32:29
最初はただのおバカキャラだと思ってたのに普通のバカになるために試行錯誤と努力を重ねてるのを知ってより一層蓮に惹かれてしまった
確かに個性関連のケアでも手が回ってなさそうだからそっち方面のケアはおざなりになっててもおかしくないんだよな
ここに気付けるくらいヒロアカの世界について色々考えてるスレ主凄いよ
自分はその視点に気づくことすらできなかったわ - 35二次元好きの匿名さん25/02/05(水) 23:32:58
正直今まで蓮のことそんな好きじゃなかったと言うかモブの一人くらいに見てたんだけどこんな…こんな頑張って…って泣きそうになった
次あたりみつきの話来そうでドキドキしてる
過去オラオラ系の金髪ウェーブヘアサングラス男はダメだろ - 36二次元好きの匿名さん25/02/06(木) 08:06:04
蓮努力家なメンバーたちの中では珍しいサボり癖のあるバカだと思って見てたけどこの話見てから今までの話見るとイメージ変わるな
眠りにくくなってる相澤先生お労しいし光木の過去の匂わせもちょっと不穏で怖い - 37二次元好きの匿名さん25/02/06(木) 08:09:06
スレ主いろんなことへの解像度が高いから本当に話に入り込める
今回の話も蓮の普通の生活をおくる大変さとか不器用な優しさとかが凄い伝わってきた - 38二次元好きの匿名さん25/02/06(木) 12:10:08
頼りになるリーダーな光木格好いいけど過去が結構重そうだな
先生も早くお仕事減らして安眠してほしい - 39125/02/06(木) 20:47:05
ただいま
ファッキン労働
相澤先生ってオールマイトにはワーカホリックって言ってたけど自分も大概だよね
多分周りもそういう奴らばっかだから感覚麻痺しててお医者さんから「言いづらいんですがヒーローの勤務時間ってやばいんです」って真顔で言われて欲しい
本人は改善する気なし
今日はちょっと無理
明日は約束されしクソ労働なのでもっと無理
すまないが土曜の夜か日曜まで来れなさそうや〜!
お待たせしてすまんやで
保守を頼む - 40125/02/06(木) 20:49:52
ごめん言うの忘れてた!
感想ありがとう!
今回の話は“個性”社会になってからの福祉ってどうなってるんだろうて考えてからずっと書きたかったので受け入れてもらえて嬉しい!
ドル澤はあと2〜3話で完結する予定だから本編は今週終わらせるつもりだよ〜 - 41二次元好きの匿名さん25/02/06(木) 23:42:05
保守了解!
トップのオールマイトがあれだしランキングもあるしで無意識のうちに過労気味になる人確かに多そう
ドル澤あと2〜3話で完結マジか
楽しみと寂しいの感情が入り混じってる - 42二次元好きの匿名さん25/02/07(金) 07:28:18
ドル澤もうすぐ完結か…
ここまで書き切るスレ主今更だけどすごい - 43二次元好きの匿名さん25/02/07(金) 08:11:57
労働がんばれスレ主
ドル澤ももうそこまできたか…
ショータと先生がどう落ち着くのかすごい楽しみ - 44二次元好きの匿名さん25/02/07(金) 12:21:55
ドル澤完結寂しい〜
でも残った伏線回収たのしみにしてるぜ
スレ主は体気をつけてくれ - 45二次元好きの匿名さん25/02/07(金) 21:23:07
ドル澤もう少しで完結か~
どんな風になるのか楽しみ - 46二次元好きの匿名さん25/02/07(金) 21:30:00
ドル澤完結まじか!
結末と伏線が気になる!
でも余っちゃうと思うとちょっと寂しい… - 47二次元好きの匿名さん25/02/07(金) 21:36:33
完結前だからドル澤の妄想話すんだけどみんなでご飯行った時に一人だけ十代だからって理由でショータにみんなおかずあげてたら可愛い
お菓子とかもらうと最初に配られる末っ子 - 48二次元好きの匿名さん25/02/07(金) 23:33:28
結末まで見れるの嬉しいけど終わっちゃうの寂しいな
グループの子達も好きになったから小ネタとか時々投下してくれると嬉しいぜ - 49二次元好きの匿名さん25/02/07(金) 23:48:53
今日はあるのだろうか…
- 50二次元好きの匿名さん25/02/08(土) 07:05:55
土曜の夜か日曜まで来れないって言ってるから来れないんじゃね?
気持ちとしては今すぐにでも見たい - 51二次元好きの匿名さん25/02/08(土) 08:46:47
グループの末っ子エピ大好き人間だからショータもメンバーにいっぱい甘やかされてたら嬉しい
ドル澤終わるの悲しいけど続き読めるのはめちゃくちゃ楽しみ! - 52二次元好きの匿名さん25/02/08(土) 09:42:57
初めて一人だけの現場に行くショータが心配すぎて無理やり一日オフにして現場に付き添いに来る光木とかなんぼでも見たい
- 53二次元好きの匿名さん25/02/08(土) 14:59:46
実際のアイドルでも末っ子初仕事で観客席からぬいぐるみ必死に振って緊張和らげようとした話とか卒業式や入学式にメンバー総出でお祝いに来た話とかあるけどショータもそういう可愛がられ方してげんなりした顔してたら面白い
- 54125/02/08(土) 20:52:39
ファッキン休日出勤
今日出しに来れるとしたら夜中か明け方になりそう〜
それか寝落ちする
みんなは先に寝ててくれ - 55二次元好きの匿名さん25/02/08(土) 21:51:40
スレ主お疲れ様〜
いつも更新ありがとやで
ゆっくり休んでくれ - 56二次元好きの匿名さん25/02/08(土) 22:09:47
朝の3時とかに更新されてると心配になっちゃうからゆっくり寝ててもええんやで
ワイらはいくらでも待てるので - 57二次元好きの匿名さん25/02/08(土) 22:40:52
スレ主お疲れ様
健康が1番だから無理せずゆっくり休んでくれ
雑談でもしながら気長に待つで - 58二次元好きの匿名さん25/02/09(日) 00:56:10
スレ主休日出勤お疲れ様!
元気が一番だからな!寝れる時寝ときや
末っ子エピじゃないけどショータの格付けを見守るメンバーとショータが泣いちゃった時あたふたしてたメンバーが可愛くて好きだった - 59二次元好きの匿名さん25/02/09(日) 07:01:09
格付け可愛かったよな
元旦なのにみんな集まっててほっこりした - 60125/02/09(日) 14:42:39
おはよう普通に寝落ちしてた
今から書くぜ
たぶん今日中の完結は難しいと思うが書きたいところまで書くぜ - 61二次元好きの匿名さん25/02/09(日) 15:59:52
ありがとう
- 62二次元好きの匿名さん25/02/09(日) 17:40:27
続きやった!楽しみに待ってる!
- 63125/02/09(日) 19:45:17
ごめんあと2~3話って言ったけどぜんっぜん終わらん
終わりが分かってるのにまだ全然たどり着けない
完結までドル澤の更新続いちゃう~興味ない人ごめんよ
まず今日の夜と明日の夜に前後編で一話書くね
それ以降で完結編を書くぜ
今日は21時くらいに持ってくるよ - 64二次元好きの匿名さん25/02/09(日) 20:26:42
ドル澤大好きだからもうまだまだ続くの嬉しいよ!
なんでも美味しく食べるからスレ主のペースで好きなの書いてくれ - 65125/02/09(日) 20:51:57
はじめるぜ!!
前編開始や
ショータの活動縮小は最初にメンバーに伝えられ、そのあとファンクラブのお知らせメールで告知された。ファンは皆最初こそ驚きをしたものの、彼の活動時間を考えれば活動停止でないだけでもありがたいと思ったらしく、想定よりも混乱はずっと少なかった。
どちらかと言えば、混乱していたのはグループ内の方で。
「ショータどれくらい会えない? もう事務所来ないの?」
「いやなことがあったんですか? 誰かにセクハラをされたとか」
「鬱になったとかそういうんじゃないんだよな?」
矢継ぎ早にされる質問にショータはたじろぎ、どれから答えれば良いかわからなくなって視線を彷徨わせ、近くで突っ立っている蓮の後ろに隠れた。
「おいっ、俺を巻き込むなよ!」
「すまんちょっと盾になってくれ」
いつもならばこういう状況で誰かに頼るという選択肢を取らない末っ子の反応に、拓哉の視線がじとりと湿り気を帯びる。
「なんで蓮そんな落ち着いてるわけ?」
「俺この前聞いたから」
「はあ!?」
「えっなに今怒られるところあった?」
「蓮に相談できて俺らには相談できなかったのか?」
「相談してねえ。ただ活動縮小するって確定事項を伝えただけだ」 - 66125/02/09(日) 20:52:28
蓮の体の後ろから出てこずに言葉だけで返事をする。まさかこの三人がここまで荒れるとは想像していなかったショータは「言うタイミングがずれたのは謝る」肉の壁越しに謝罪をした。
複雑な事情があるわけではなく、引退や活動停止になるわけでもない。そこまで重要ではないと思っていたから話す優先順位を下げていた。ショータが頑なに蓮の後ろから出てこないでいると、光木が一歩前に出た。
「ショータ、何も僕らは君に相談してもらえなかったことを怒ってるんじゃないんですよ」
「……」
体越しに三人を見ると、彰は頷いているが拓哉は微動だにしない。
反応の差に若干の違和感を覚えつつ、優し気な声を出す光木を陰から見上げた。
「最近の君の仕事量は芸能界に長くいる僕から見ても異常でした。見兼ねて何度かマネさんに仕事量の調整を申し出たこともあります」
「知らねえんだが」
「でも「今は大切な時期だから仕事を減らしたくないとショータから強い要望が出ているので出来ない」と言われました。そんな君がいきなり活動縮小をすると言いだしたのだから、何かあったと思うのは仕方ないでしょう」
子供に言い聞かせるような語り口に、ショータのなかの相澤消太が気まずさを見せる。
- 67125/02/09(日) 20:54:21
だが実際、ショータも言われる心当たりはあった。デビューしてから約半年以上、十六歳の少年が担うには多すぎる仕事をこなしてきた自覚はある。光木の言う通り、そんな人間がいきなり活動縮小をすると言うのだから燃え尽き症候群や精神を病んだなどを疑うのが当然だ。
渋々とショータは三人の前に出てくる。蓮は「もう隠れるなよ」と自分の背中を壁につけた。
「ええと……最近ちょっと不眠が続いてて」
「は?」
「大丈夫なの? 医者には行った?」
「縮小じゃなくて休止にしろ」
「最後まで聞けって」
過保護な反応に辟易しつつ、これも自分が蒔いた種だと納得させる。
とにかく不安を取り除く必要があった。ショータは「本当に大丈夫だから」と前置きをする。
「……仕事が原因じゃなくて、こないだ敵に襲われただろ? あれでちょっとバランス崩しちまって。だから仕事を辞めて休んだところで大した意味はないってお医者さんにも言われた」
「この間の」
「言っておくけど彰のせいじゃねえからな。これは俺の問題」
- 68125/02/09(日) 20:56:12
思い詰めたみたいに声を出した彰を牽制しつつ、仕事が原因ではないことを伝える。
拓哉は悲しそうな表情を見せるが、光木の顔はサングラス越しで分かりにくい。
「でも、仕事をしている限りは心を休めることは出来ないでしょう?」
「何もしてない時間って逆にキツいんだよ。適度に仕事しつつ、睡眠時間と勉強時間を確保して疲労を貯めないようにしていきたい。ちゃんと事前にマネさんやお医者さんたちみたいな体を休めるプロに相談してある、心配しなくて大丈夫だから」
何せ前世は教師とプロヒーロー二足の草鞋という激務の究極系のような仕事ぶりだった。ライフワークバランスのライフを考えたこともなく、ライフはワークに浸食されワークワークバランスという有様だった。
そんな人間がいきなり長期休暇などとっても逆に精神を病む原因にしかならないのは明白だ。
「……わかりました」
一応の納得を見せた光木に安堵する。
- 69125/02/09(日) 20:57:29
光木が理解を示すと何か言いたげだった彰と拓哉も目線を交わして頷き、それ以上追及することはなかった。やはり、良くも悪くもこのグループは光木という人物を中心に回っているのだなとショータは声に出さずに思う。
微妙な空気が流れ始めると、耳の奥を叩くような軽快な音が近づいてくる。それがハイヒールが床を蹴る音であるとわかると音源に皆目を向けた。
「話はまとまったか? それでは仕事の話をしよう」
「今縮小するって言ったばっかじゃなかった?」
「言っていたさ、だがするのは縮小であり休止ではない。逆に出てくる場面では常に最上のパフォーマンスをしてもらう必要がある。今からする話はそういう仕事だ」
現れたマネージャーはいつも通り尊大な喋り口調だった。全員が席に着き、彼女を見上げる。光木がグループをまとめるリーダーであるならば、彼女は優秀な参謀のような人だった。
彼女は一冊の本を取り出す。台本らしき本に書かれている文字を見て、全員がざわついた。
「マネさん、これって」
「ああそうだ。『AIDORISE』(アイドライズ)に君たちの出演が決定した」
「うおおおマジ!?」
- 70125/02/09(日) 20:58:58
メンバーが浮足立つ中、ショータは現実味のない表記に目を見開いている。この文字を忘れたことなど一度もなかった。
資料を手渡されると表紙に釘付けになる。光木は柔らかく声をかけた。
「……ショータにとっては、思い出深いものかもしれませんね」
「光木」
資料から顔をあげると、優し気に微笑む彼と目が合った。恥ずかしい気持ちもあったが素直に「そうだな」と答える。この名前は、ショータにとって特別な物だった。
横で聞いていた蓮は会話に割って入ってくる。
「『AIDORISE』つったら超でけえアイドルフェスだけどなんでそれがショータと関係あんの?」
「お前マジか」
「これの成り立ち知らないの?」
「待って俺だけ知らないやつ?」
彰が「お前何年アイドルやってんだよ」とツッコミを入れている。確かに本職が知らないでどうするのだという気持ちもあるが、そこまで目くじらを立てることでもなくショータは苦笑し、含みを持たせずに事実を伝えた。
「このフェスは十年前の災害をきっかけに作られたんだよ」
「十年前……あっ」
十年前、災害。
二つの言葉が合わさればさすがの蓮も気づかないわけがない。蓮は口元を抑えて俯いた。それに「別に気にしなくていいから」とショータは笑う。本当に気にしなくて良いことなのだ。
- 71125/02/09(日) 21:00:37
『AIDORISE』……通称ADRは十年前に起こった大規模な災害を助ける為、多くのアイドルたちがチャリティーライブをしに集まったことから作られた大規模なアイドルフェスだ。
十年前の被災地から場所は変わってしまったが、代わりに多くの人数を収容できる巨大な海上会場がメインステージとなり、その日得た収益は全額寄付に回される。
無給ではあるものの、アイドルにとってこのステージに選ばれ立つことが許されることは赤白歌合戦よりも名誉なことだった。
「……今回、我々が選ばれたのは十年前の災害の被災者でもあるショータがメンバーに居ることが大きい」
「それっておこぼれってこと?」
「ああ。我々が入ったことによってその分出演することが叶わなかったアイドルもいるだろう。例えば、DD9は今年も出演の依頼が来ていないと噂がある」
「まあ一昨年やっとブレイクしそうだった時に俺ら抜けちったからな」
「DD9が出演勝ち取れなかったのは完全に実力じゃないですか?」
棘のある言葉に「そうかもしれんな」とマネージャーは同意を示すが次に続いたのはうすら寒い予感を感じさせる言葉だった。
- 72125/02/09(日) 21:02:01
「だが、DD9や元ファンはそう思わないだろう。我々のせいでせっかく今年は取れるはずだったADRの枠を取られてしまったと思うだろうし、事務所もきっと世間にそう思わせるようメディア操作をしてくる。かなり厳しい戦いになると思っていてほしい」
「うへえ……」
「ショータの縮小期間が重なって良かったですね」
「こいつから提案されなければこちらから言っていたところだ。……ショータ」
マネージャーは眼鏡越しの目で見つめる。目の下にはレンズ越しにもわかる隈があった。どれだけの調整を重ねていたのかショータには理解することはできない。
「はい」
「お前が要だ。くれぐれも倒れてくれるなよ」
「こんだけ休ませてもらって使い物になりません、なんて情けねえこと言うつもりないですよ」
不遜な末っ子の言葉にメンバーはあきれ返る。だがマネージャーはそれでこそ、と言いたげに胸を張った。
「それでは、『AIDRISE』で結果を残すためにある助っ人を頼んでいる。……入ってきてくれ」
彼女が呼びかけると、事務所の扉が開く。
黒い長い髪を無造作に一つ結びにし、無精ひげを生やした顔色の悪い男が背を丸めたまま入ってきた。テレビ関係者でも見たことのない人物に、一同が首をかしげる。
だがショータの横で一人、光木が目を見開いて立ち上がり、その男の元へと駆けて行った。
- 73125/02/09(日) 21:04:00
「ライムさん! お久しぶりです!」
「おー久しぶり、光木。元気してたか?」
「それはこっちのセリフですよ! お仕事は何個か拝見してましたけど貴方どこ行っても捕まらないから……」
ライムと呼ばれた男は照れ臭そうにはにかみつつ光木の差し出した手を取って強く握る。二人が既知であることは一目でわかることだった。
こんなにテンションの高い光木を見たのは初めてかもしれない。マネージャーに説明を求める視線を送ると、彼女は一つ咳払いをした。
「こちらの男性はライム氏。ライブ、舞台等の演出を手掛けられている。最近だとYOMAWARIのドームツアーを担当されていた」
「あの演出エグいって噂の!?」
「や、どーもどーも」
「そんなすごい人よく捕まえてこれましたね」
ショータはまさか、“個性”で弱みを握ったのではないだろうなと胡乱気な目になる。“個性”を知らない他の面子もまさかそんな豪華な人を連れてくるとは思っていなかったのか、不審そうだった。
マネージャーは「失礼だな」と笑った。
「今回私はほとんど何もしていない。ライム氏の方からBLACK CASEのライブ演出に携わりたいとお話が合ったんだ」
- 74125/02/09(日) 21:05:32
光木と握手をしていた手を離し、ライムは全員に顔が見えるように体を向けた。
「昔光木が劇団をやっていたのは知ってるだろ? 俺はそこで演出やらせてもらっててね。彼がいつか大舞台に立つ日がくるなら絶対に携わりたいって思ったんだよ」
「そんな……恐縮です」
頭を下げる光木の背中をライムが豪快に叩く。静かな室内に破裂音みたいなそれが大きく響いた。
「って」
「昔はこんな優男じゃなかったんだがなあ! だいぶ丸くなったな光木ぃ!」
「そりゃ十年も経てば誰だって丸くなりますよ」
「それもそうか!」
アメリカンのような笑い方をして、ライムは大股でショータの方へと歩み寄ってくる。そして、無表情でやり取りを眺めていたショータの手を両手で取った。
「君がSHOTAだな? 活躍、見てるぜ」
「どうも」
「歳に似合わねえクールな男だと思ってたが、可愛げのある顔してんじゃねえの」
「はあ」
「……お前のおかげで光木がまた日の目を見られた。感謝してるぜBLACK CASEのラッキーシンボル」
- 75125/02/09(日) 21:06:29
まるで祈りを捧げるように握った手に額をつけられて、離される。一連の姿がまるで映画みたいでどこで口を挟めばいいかわからなかった。
話が終わったと思ったのかマネージャーが次に話を進める。
「舞台の時間は三十分程度。普段ならば構成はこちらで組むがライム氏の希望もあって光木も話し合いに入ってもらう」
「光木かなり忙しくならない?」
「まあ僕は忙しいの慣れているので」
「っか~~~~国民的スターは言うことがちげえや」
場数の違いを見せつけるリーダーは心なしか嬉しそうだった。マネージャーはライムの「希望」と言っていたが恐らく仕事を受ける「条件」でもあったのではないかと勘繰ってしまう。
そのあとは今ショータが持っている仕事の割り振りと軽いミーティングをして解散になった。ショータは資料を握りしめる。あの日の輝きが脳裏に浮かんではなれなかった。
‡
- 76125/02/09(日) 21:07:12
マイクの家に帰ると、やたらめったら豪華な食事と浮かれ切った男がシャンメリー片手に出迎えた。ド派手にクラッカーを鳴らされて「うるせえ」と言うが相手が堪えた様子はない。
「『AIDORISE』出演オメデトー! BLACK CASEと相澤の更なる発展を祈ってェ、カンパァイ!」
「やかましいんだよ」
BLACK CASEは蓮という爆弾が居る為メンバーに知らされるときは基本的に情報解禁日でもある。相澤が家に帰るまでの間に公式SNSから告知が出ていたのを見たのだろう。
それにしても、その短時間で良くもここまで集められたものだ。素直にうれしいが口に出すのは憚られた。
「マッジスッゲーじゃん! 『AIDORISE』つったらチャリティーライブとしてもアイドルフェスとしても日本最大規模、知らねえ奴はモグリ! アイドルの頂点みてえなフェスじゃんかよA・I・ZA・WA~!」
「俺が被災地出身だから選ばれただけだよ。全部が全部実力じゃない」
「そんなこと言うなって! 運だって実力の内だし被災地出身者を抱えてもライブに出れないグループなんぞ山のようにいる。それでも選ばれたんだからもっと誇れよ」
席に座らされ、シャンメリーがシャンパングラスに注がれた。気泡が浮かぶ透明度の高い水面を見て、相澤は下唇を突き出した。
- 77125/02/09(日) 21:08:24
「……喜んでる、けど」
「ケドォ~?」
「少し、驚きすぎて。どう反応すりゃいいかわからねえ」
初めて見たアイドルのライブ。キラキラの景色。
先に見えるもの全てに絶望をしていた時に現れた光り輝く目標。あの光があったから、今日まで相澤はSHOTAとして活動することが出来た。
それが、もうすぐ届く。現実味のない事実に、頭が混乱していた。
ぼんやりと目の前の食事を眺めていると、乾燥した男の掌がぐしゃりと相澤の頭を無遠慮に撫でる。
「よろこんどきゃ良いんだガキなんだから」
「……いまいち、喜び方がわからない」
「じゃあボイスヒーローが教えてやるよ。とりあえず美味いモン死ぬほど食って満腹になって「やったー!」って言ってみ。嬉しい実感沸くぜ?」
「じゃあそれの「やったー!」抜きで頼む」
「シヴィーぜ!」
騒がしいマイクが対面に座り、二人で手を合わせた。豪華なオードブルはどれも美味しくて、箸が進む。シャンメリーにアルコールは入っていないのに、つい心が浮かれて口が勝手に喋り出した。
- 78125/02/09(日) 21:09:46
「俺、このフェス名前も好きなんだよ」
「名前?」
「ん。アイドルって普通綴りは「IDOL」だけど、これは頭文字がAになってて日本語の発音に寄せてあるだろ?」
「あ、やっぱこれアイドルって意味なんだな」
「そりゃアイドルフェスなんだからそうだろ」
いつだったか。
フェスのタイトルを決めたある社員のインタビューを見たことを思い出す。彼は普段テレビに出るような人ではないのか、とても緊張した顔だった。
「これの頭文字をAにすることで最初の単語が『AID』……助けるって意味になる。後ろの単語は立ち上がるって意味の『RISE』だ。アイドルが、助けて、立ちあがる。初めて聞いたときちょっと感動した」
「相澤酔ってる?」
「シャンメリーだぞ」
言われた通り、少しだけ場の空気に酔っているかもしれない。アルコールが入っている感覚はないが、それでも頭は浮かれてふわふわとしていた。
フェスのタイトルに込められた思いが、今もまだ続いている。あの日見た輝きが、同じ志を持つ人たちによって繋がっている。そう気づけたとき、あの目印に向かって走り出した自分は間違いではなかったのだと思えた。
- 79125/02/09(日) 21:11:32
ご飯をたらふく食べるとお腹がいっぱいで眠くなる。明日はちょうど休みになっているから昼まで寝ても構わない。相澤は思わず「ふっ……」と噴き出すような笑いをした。
「薬無くても寝れそう?」
「ん……」
「そっか。良かったなあ、相澤。良いこといっぱいあったんだな」
「んぅ……」
「ははっ、もうほぼ寝てやんの」
マイクは自分はほどほどに飯を食い、うつ伏せになった相澤を横抱きにしてリビングを出る。
「じゃ、余計ちゃんと成功させないとな」
「……なあ、山田」
「な~に~」
足がプラプラと揺れる。
全体重がかかっているのに鍛え上げられたマイクの足腰はびくともしなかった。
「もし、このライブを成功させられたら……俺、今自分が何なのかわかるかなあ」
「……どーだろなあ」
相澤の瞼はもう殆ど落ちかけていた。いつもならこれくらいでシャットダウンするような体力ではないが、今日は情報量が怒涛すぎていつも以上に付かれてしまったのだろう。自分が何を言っているかも、どんな言葉を返されているのかも、わからなかった。
- 80125/02/09(日) 21:13:51
「……俺は、今のお前が好きだよ」
当然、夢の大穴に落ちて行った相澤の意識はその言葉を拾わない。マイクは頭を撫でてベッドに彼を寝かせてやった。
「っと、忘れてた」
そう言うと完全に彼が眠っていることを確認してから、瞼を勝手に持ち上げて彼の目から1dayのカラーコンタクトを抜き取る。人の眼球に触るのは恐ろしいが、これを放置する方が怖かった。相澤がいつも癖で捨てているような形でコンタクトをゴミ箱に捨て、何事もなかったかのように布団をかけてやる。
「お前の口から、ちゃんと話してくれよ」
聞こえていないことを承知で語り掛け、マイクは部屋を出て行った。部屋の中には寝息だけが聞こえている。この寝息が誰の物なのかまではわからなかった。
‡
- 81125/02/09(日) 21:18:16
BLACK CASEは順調に全員分の仕事が入ってきている。蓮はロケ中心の、彰はひな壇で笑いを取るタイプのバラエティで。拓哉はBLACK CASEの配信でかなり人気が高まっていた。だがそんな三人さえ霞んでしまうのが光木の活躍だった。彼は地上波のドラマを二本こなしつつ、ウェブドラマにも出演し、時折番宣でバラエティにも顔を出していた。その勢いはDD9時代よりも凄まじい。
「アイツマジやべえ~」
「光木のことか?」
「そう。バイタリティバケモン」
「まあ俺らとは年季が違うからねそもそも光木は」
忙しい時間の合間に休みに来た拓哉と蓮が机に突っ伏していた。彰は流石に疲れたのか仮眠室で寝ている。三人の忙しさに申し訳なさが少し出るが、それ以上に忙しい光木は今日すれ違った時全く疲れを感じさせない笑顔だった。
それどころか、いつも以上に輝いていたようにも思える。
「劇団上がりだから体力の基礎ポイントみてえなのが全然違うんだよな。あとああ見えてハングリー精神爆高だし。ライムさんも正直同時進行で何個も演出抱えてるとは思えねえし」
- 82125/02/09(日) 21:19:24
ショータは拓哉と撮るSNS用の動画について打ち合わせをしつつ、蓮の言葉にも耳を傾ける。光木が仕事を複数本掛け持ちしているのは知っていたが、彼もそうだとは知らなかった。
あのあと、ライムというひとについて少し調べた。どうやら演劇業界では知らない人が居ないレベルの大御所で、ライブ事業に手を出し始めたのは最近らしい。恐らくそれも、光木がアイドルとして有名になり始めたからだろう。
それくらいライムと言う人は光木に入れ込んでいる。そうなると少し懸念材料があった。
「……もしかしてライムさん、光木を役者に戻すつもりなんじゃないか?」
ただ協力を申し出たにしてははっきり言って彼に旨味が無さ過ぎる。BLACK CASEがいくら飛ぶ鳥を落とす勢いだとは言え、きちんと世間に認知されているのは光木位な物だ。ショータは炎上騒ぎやヒーローの推し活により知名度自体は低くないがそれでもやはり「最近よく見る人」のラインを超えることはできない。
対して、ライムの手がけたステージや舞台は国内外からも高く評価される規模の大きなものが多く、中には国外の演出賞を取ったこともある。対価が釣り合わないのだ。
- 83125/02/09(日) 21:20:16
「みんな思ってても言わなかったのに」
「やっぱり思ってたか」
「俺は今ショータに言われて初めて気が付いた」
「実際、昔の光木って凄かったからね。日帝劇場で主演張ってたこともあるし、バックにDD9の事務所があるとはいえあそこまで有名になったのは光木の実力だよ」
「じゃあ役者に戻ってほしいって思う人が居るのもしょうがないのか。でも嫌すぎね? そういう外堀から埋めてやるみたいな感じのやつ」
「流石に今の光木を邪魔するようなことはしないよ」
外から入ってきた部外者の声に全員がそちらを向く。にこやかな顔で手を挙げて挨拶をするライムと気まずげな顔をする光木が立っていた。
「やべ」
「ヤバくないって。君らの心配はまあ最もだからね、ちゃんとここらで言っといた方が良いかなと思うし。俺は光木の活動を邪魔するつもりはないし、アイドルをやめさせて役者に戻そうとも考えてないよ。アイドルやりながらだって役者は出来るからね」
「そ、そうなん?」
蓮が見たのは光木だった。
彼は少し困ったように笑って「そうですよ」と答える。少しだけ心外だと言いたげな怒りも含まれていた。
- 84125/02/09(日) 21:21:21
「役者一本で食べていくのは夢でもありますけど……それはこの場を捨ててまで叶えたいことではありませんから」
「み、光木ぃ~!」
「ちょっと蓮。痛いですよ」
力強く抱きつく蓮を引きはがそうとはせず、その背中を抱きしめる。
「じゃあなんでライムさんは手伝ってくれるんですか?」
「ん? あー……」
そうなると疑問は最初に戻る。
どうしてこれだけ高名なライムが自分たちを手助けしてくれるのか。それもチャリティーライブである以上、収益は見込めない。
彼は歯切れ悪く答える。
「……このライブは俺たちにとって因縁、みたいなものがあるんだよね」
「ちょっとライムさん」
「良いだろ、ちゃんと説明しておきたい」
因縁、とはまた穏やかではない。
ライムの出した言葉に部屋の空気が張り詰めた。異様な空気を察したのか、パーテーションで区切った向こうで寝ていた彰も起きてくる。
- 85125/02/09(日) 21:22:20
「俺たちは子供に怪我をさせたことが原因で劇団を解散する羽目になったんだが……それが十年前のあの災害だったんだ」
「……っ」
「と、悪い。君は被災者だったな、配慮が足りなかった。だが俺たちにとってはとても大事なことだ、もし気分が悪くならないのなら最後まで聞いてほしい」
ショータは少し迷った。
あの頃の記憶は少し混濁していて、曖昧なところもある。悪意があるわけではない彼らの話を聞いても大丈夫だとは思うが……。
少し迷ってから「大丈夫です」と答えた。
「有難う。俺たちはボランティアであの街を訪れた。そもそもボランティアに行くことになったのはスポンサーになっている事務所の命令だったんだが、俺たちとしてもあの災害で何か力になれることがあればと思っていたのは事実だったからな。誰も反対することはなかったよ」
時計の音がやけに大きく響いた。
「俺たちの仕事は瓦礫の撤去だった。ヒーローたちがご遺体を片付けて安全を確保したあとの作業だ。それでも危険なことには変わりないから、瓦礫は必ず所定の位置に置くよう厳命されていた。俺たちはそれをしっかりと守っていた」
- 86125/02/09(日) 21:25:49
言葉に熱がこもり始める。彼の目にうっすらと涙が見えた。
「……瓦礫の山になっているところに、地元の少年が飛び込んできた。彼は瓦礫の下敷きになって……意識不明の重体、そのあとはわからない」
「そんな……」
「今でもあの時の光景が目に浮かぶよ。死角からいきなり飛んで来た小さな塊が、瓦礫の山にぶつかって音を立てて崩れていく様が。少し目を離したすきに絶望のどん底になった」
そのあとは事務所がご家族に謝罪をつけ、責任を取って劇団は解散となった。彼らは誰も被害者の家族に話をすることも、講義をすることも受け入れられなかった。
ライムが右手を強く握る。
「俺は、あの日にけりをつけたい。全部終わっちまったあの日が、実は始まりだったんだって思いたいんだ」
ショータは思わず口元を抑えた。
光木がすぐに近寄って背中をさする。
「大丈夫ですか」
「だい、じょうぶ」
「悪い、ちょっと言葉が荒くなっちまった」
「いえ、平気です。……その、俺もあの頃大怪我して入院したんで、思い出しちまって。俺の時は建物の崩落に巻き込まれたみたいなんですけど」
「それは……悪いことをした」
「それだけ強い思いでこれに臨んでいただいてるってことがわかって、良かったです」
- 87125/02/09(日) 21:26:58
ショータは思わず口元を抑えた。
光木がすぐに近寄って背中をさする。
「大丈夫ですか」
「だい、じょうぶ」
「悪い、ちょっと言葉が荒くなっちまった」
「いえ、平気です。……その、俺もあの頃大怪我して入院したんで、思い出しちまって。俺の時は建物の崩落に巻き込まれたみたいなんですけど」
「それは……悪いことをした」
「それだけ強い思いでこれに臨んでいただいてるってことがわかって、良かったです」
少なくとも光木を連れ戻すために今回のことを利用しているわけではないとわかっただけでもショータにとっては良いことだった。
BLACK CASEは光木という圧倒的なスターを中心に回っている。万が一抜ければ今度こそこグループはおしまいになってしまうだろう。
吐き気を抑え込んでいると、頭の上に掌が乗る感覚がする。マイクとは違う、皮の薄い柔らかな手だ。
「グループを抜ける提案をしたのは彰ですけど、グループを作る提案をしたのは僕なんですよ」
「そう、なのか」
「ええ。自分で言いだしたことなのに辞めるわけないでしょう。僕のこと見くびってます?」
- 88125/02/09(日) 21:28:02
- 89125/02/09(日) 21:31:06
前編ここまで!
後編は明日かけたら持ってくるぜ!
長いので一気読み用URLも用意した
ドルパロ澤10 前編 | Writening ショータの活動縮小は最初にメンバーに伝えられ、そのあとファンクラブのお知らせメールで告知された。ファンは皆最初こそ驚きをしたものの、彼の活動時間を考えれば活動停止でないだけでもありがたいと思っ…writening.netハートとか感想とかいつもありがとやで
そんじゃあ明日めちゃくちゃ早いからもう寝るぜ!
おやすみ!
- 90二次元好きの匿名さん25/02/09(日) 21:31:06
おっと不穏
- 91二次元好きの匿名さん25/02/09(日) 21:31:28
最後ォ!
- 92二次元好きの匿名さん25/02/09(日) 21:31:51
マイクカラコンのこと気付いてるのも怖いな
- 93二次元好きの匿名さん25/02/09(日) 21:34:28
最後が怖すぎるよ!!
あとマイクカラコンのこと気づいてたの?!え、もしかして髪のことも…? - 94二次元好きの匿名さん25/02/09(日) 21:47:46
髪色がバレた時先生はマイクに見られたくなかったからたぶん先生は白髪と目の色のことは秘密にしてるはず
でもマイクは知ってる
写真のネタは残ってる
い 嫌だ…なんかすごい嫌な予感がする… - 95二次元好きの匿名さん25/02/09(日) 22:45:33
めちゃくちゃほっこりした気分で読んでたら最後の一文で一気に突き落とされた
続きが気になるけど怖すぎる…… - 96二次元好きの匿名さん25/02/09(日) 23:03:44
もう不穏なことについてはみんな言い尽くしてると思うんだけど
冒頭の活動縮小するってことについて3人に激詰めされてたり過保護じゃない蓮の後ろに隠れたりするショータ可愛すぎた
マイクにお祝いされて照れてるのも可愛いが過ぎる
憧れのフェスに出れて良かったねえ〜っておばあちゃんみたいな気持ちになる - 97二次元好きの匿名さん25/02/10(月) 07:25:27
バレたくない相手の家でいつもカラコン捨てちゃったりする詰めの甘さがショータは平和に生きてきたんだなって感じがして癒される
案の定マイクには気づかれてるのも可愛いし - 98二次元好きの匿名さん25/02/10(月) 08:01:21
薬なくても寝れる?ってマイク聞いてんの良いなあ
幸せなことがたくさんあって不安を忘れて眠れて良かったね
なお - 99二次元好きの匿名さん25/02/10(月) 09:00:25
このレスは削除されています
- 100二次元好きの匿名さん25/02/10(月) 12:24:57
当たり前に受け入れてるんだけど前半だけで万字超えてるのビビる
スレ主の気合いの入り方がすごい
最近ちょっとドル澤の話をするだけのスレとかほしいなと思い始めてる - 101二次元好きの匿名さん25/02/10(月) 18:37:30
とても分かる
最初はそこまで気にしてなかったのに話しが進むにつれて愛着がどんどん増して今やメンバーやマネさんのオタクになってる - 102125/02/10(月) 21:10:01
ただいま
いっぱい反応ありがとう〜!好き勝手書いてるから反応もらえるの嬉しい!
今から書くけど下手したら寝落ちしそう
こんな超ニッチな作品の感想スレはちょっと考えてなかった…ありがたいことだけども
もし欲しくなったら作るので言ってくれ〜 - 103125/02/10(月) 21:18:59
いやごめんほんま眠い寝る
後半は明日持ってくるで - 104二次元好きの匿名さん25/02/10(月) 21:25:56
ゆっくり寝てくれ
スレ主の健康が1番や
俺らはあったかくして待ってるから - 105二次元好きの匿名さん25/02/10(月) 21:30:12
おかえりスレ主〜!
明日了解やで、ゆっくり休んでね - 106二次元好きの匿名さん25/02/10(月) 22:53:57
お疲れ様スレ主
睡眠が1番大事やいっぱい寝てくれ - 107二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 08:05:45
超ニッチでも俺たちにはブッ刺さった
ドル澤メンバーと絡んでる時は大人っぽく感じるのにプロヒと絡む時は隙のある子供みたいな雰囲気になるのスレ主すごいなと思いながら毎回読んでる - 108125/02/11(火) 15:16:59
おはよう~
今日の後編は21時に出せるように書くつもりだよ
ついでに小ネタも少し更新したので暇な人は見てね
小ネタ | Writening読まなくても良い設定 BLACK CASE# 元々DD9という大手事務所のグループから離脱した四人とオーディションで選ばれたSHOTAで結成された新進気鋭のボーイズグループ 四人は全員が二十代なのでSHOTA一人だけ年…writening.net - 109二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 16:27:36
小ネタの補強によりどんどんBLACKCASEの実在性が高まってくの好き
TAKUYAガチすぎてファンからも弄っちゃダメじゃねって思われてんの草 - 110二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 17:12:20
ファンがコンビ名投げやりになるとこ笑ったしそのせいでしっかり新規が困惑してるのもおもろい
段々自分のメンカラが好きになるメンバーと無意識に他メンカラーの服でファンをざわつかせるミツキ可愛いな - 111二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 18:32:59
メンカラ赤嫌がってたのに他メンからワイルドかっこいいショータから紅白コンビだなって言われてええやんってなる拓哉チョロくて可愛い
あとペンラが反射して俺今黄金じゃね?で黄色好きになる蓮おもしれえ男すぎる - 112二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 18:43:06
勝手にSHOTAのメンカラ黒だと思ってたから白なんだ!?ってなった 新メンバーでセンターで白ってめちゃくちゃ「ぽい」な
- 113二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 19:07:26
売り出したかったDD9のメンカラ白の人マジ自業自得ではあるんだけど自分たちのせいで抜けたメンバーで作った後発グループの新メンバーのカラーが同じ白で自分より遥かに人気になってるのちょっと同情しちゃうな
同時にDD9の白担は絶対SHOTAのこと死ぬほど嫌いだろうな… - 114125/02/11(火) 20:46:44
すまん22時に持ってくる!
- 115二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 21:11:32
了解!
ゆっくり待ってる - 116125/02/11(火) 21:51:19
ごめん後編14,000字になっちゃった…
かなり長くなるけど直貼りしてリアルタイムで楽しんでほしいから貼っていくね
最後に一気読みURLもつけるよ
‡
それからの毎日はまさしく怒涛の日々だった。
「だからさあ! やっぱ空から登場しようよ! そっちの方が格好いいって!」
「空は無理だろ。ステージは海上なんだから海からどばーっと登場したほうが良いんじゃないか?」
「僕らの登場は夜ですから、海も空も危ないですよ。当日ヒーローの皆さんは警備に駆り出されていますし安全面の確保ができません」
「やっぱ無難に床下から登場でいいんじゃねえか」
「それはちょっとつまらないかも。ライムさんは爆破演出が得意だし、ステージ上に安全な花火とか上げられませんか?」
「出来るよ~」
「出来るんだ!?」
ステージ演出について光木だけでなく全員が参加するようになった。
「誰だよこの振り考えたやつ!?」
「あ、それ僕の提案です」
「これだから超人は……」
「ちなみにショータは三十分で振り入れしてたよ」
「これだから超人どもは……」
「お前が下手なだけだろ」
「おいこらクソガキ! もっぺん言ってみろや!」
「蓮は足バタバタすんのがだいぶ好きなんだなあって言った」
「突然の京言葉すぎる」 - 117125/02/11(火) 21:52:13
新規の演出に伴う振り付けの変更。
休み期間が十分にあったショータや元々覚えるのが早い光木以外は皆苦戦しながらも期間に間に合わせるように必死に習得をしていった。
「やっべえ~このダンスしながらじゃ声でねえ」
「ここのファルセット出る気がしねえな」
「おっと~? 優秀なショータくんギブかあ~?」
「お前らに任されるよりは全然問題ねえが」
「ショータって結構売り言葉に買い言葉するよね」
「これでちゃんと実力があるから手に負えねえよな」
「頼りになるの間違いだろ」
「はいはい、末っ子に頼り切りになるのは止しましょう。じゃあ最初から通しでやりますよ」
通常では考えられないほどの大舞台だ、当然全員のやる気も高い。
日々はめまぐるしく過ぎていった。二カ月あったはずのあと期日はあと一週間に迫っていて、そのころにはショータの体調もだいぶ安定し始めていた。
その日はショータが自主練を終え事務所に戻ってくると、演出についての会議が終わった光木がこちらに気付いて近寄ってくる。
「そっちどうなってる?」
「話していた演出が安全面の基準をクリアしたのでこれで進めていく予定です。あとは演出に見合ったステージを僕らが出来るかどうかですかね」
「それについては他の三人に言ってやれ」
- 118125/02/11(火) 21:53:21
昨日も同じところでダンスに躓いていた蓮を思い出して苦笑する。なんだかんだ当日までにしっかり仕上げてくるから誰の心配もしていないが、口だけは悪態をついてしまう。
光木は「口が悪いですよ」とは言いつつ、本気でないことを理解しているからそれ以上は言わない。拓哉と約束をしたイソスタライブの開始までまだ時間があるので勉強道具を広げた時「そうだ」と機を見計らったようにこちらを向いた。
「ショータ、次のファンミに出ませんか?」
「次の……?」
「ええ。もう体調もだいぶ安定しているようですし、ファンの皆さんもお会いしたがっています。今度のフェスが成功したら暫くメディア対応で忙しくてライブも出来ないと思いますから、この辺りが良い機会なんじゃないかと」
「……俺が出たら顰蹙買ったりしねえか」
ショータが活動を縮小してからここ最近、BLACK CASEの評判がいい。元々ファンの大半はDD9から来た面々で構成されているから、他の四人にスポットライトが当たることが歓迎されているせいだ。
いつもならば何件も引っかかるアンチコメントも最近はさっぱり引っかからず、このままフェスまで雲隠れをしたほうがファンにとっては良いのではないかとすら思った。
だが光木はサングラス越しの目を見開いて固まっている。
「光木?」
「いえ……いえ。ちょっと待ってくださいね」
- 119125/02/11(火) 21:54:31
何か大きな言葉を飲み込んだ光木は手早くスマホを操作して、幾つかの文字を打ち込んだ。そしてその画面をショータの前に出す。
綴られている文字を眺め、次第に文字の意味を脳が理解し始めると今度はショータが固まる番だった。
『SHOTAまだ復活しないのかなあ』
『SHOTA早く帰ってきて~早く五人のBLACK CASEが見たいよ~!』
『RENの暴走見ててひやひやする…SHOTA頼むからはよ帰ってきて…』
『TAKUYAってSHOTAが配信の時居ないと露骨にテンション下がるの可愛いよね。早くデレデレのTAKUYA見たいな』
『AKIRA「いつもはうちに注意してくれるやつがいるんでちょっと調子乗っちゃいました」だって~。これSHOTAのことだよね。早く『飽き性』復活してくれ』
『BLACK CASEは『干支コン』のダンスと歌が好きでハマッたけど最近SHOTA出てこなくて寂しい。MITUKIだって寂しいって言ってます』
それはSNSのポストたちだった。自分で検索したときは目に入らなかったそれらは、間違いなく『SHOTA』で検索をかけられた結果だ。画面を上から下までスクロールして、そこに沢山書かれている「帰ってきてほしい」の言葉をしっかりと目に焼き付ける。
スマホを光木に返すと、「わかりましたか?」と彼は聞く。
- 120125/02/11(火) 21:55:43
「自分で検索するとどうしても悪いことばっかり目についちゃいますよね。アンチは確かに今大人しくなっていますけど、貴方のことを好きなファンは沢山待ってくれているんですよ」
「そう、みたいだな……」
「びっくりしました?」
「少し」
「少しって顔じゃないですけど」
「うるせえな」
驚きの気持ちが強く素直に受け取ることができない。スマホを返したのに、まだ応援の言葉が簡単によみがえる。
「……ファンミ、出る」
「そうですか、良かった。じゃあマネさんにも言って調整してもらいますね」
「ん」
光木は多くを言わず、マネージャーへと連絡をつける。ほどなくしてBLACK CASEの公式SNSから次回のファンミで復帰する旨が連絡された。ファンミ三日前の急な連絡に、ファンからは困惑が広がっていたがすぐに「配信もするのでご安心ください」の文字が付いて安堵の声に変わる。
『SHOTAが居ないから買ったのに』というアンチコメントも幾つか見られたが、それらは復帰を祝うコメントに流されていった。
「みんなに会えるの、楽しみですね」
「そうだな」
- 121125/02/11(火) 21:56:39
この男はショータよりもずっと年下のはずだ。まだ三十を超えておらず、肌も感性も若々しい。それでも人を慮る行動をとる時、彼はショータが相澤消太だった頃よりも思慮深くなる。
彼の優しさに触れると、どうしても幼い体に精神が引っ張られて甘えそうになる。自分をどうにか律しようとする心すら滑稽に思えた。
三日後。
フェス直前のファンミーティングに出席をすると、最近顔を見ていなかったファンがショータのメンバーカラーである白で出迎えてくれた。ファンに感謝するイベントなのに、こちらばかりが元気をもらって申し訳ないというと「元気で良かった」と大きなファンの声が響き、拍手が続いた。
「この子、暫くみんなに会ってなかったから俺もう要らないかなって不安がってたんですよ」
「MITUKI!」
トーク中に彼が言い始めたせいでファンからの視線が生暖かくなる。いたたまれなくて彰の後ろに隠れようとするが、首根っこを掴まれステージの前に差し出された。
隣では蓮がにやにやと笑って弄ってくるし最悪だ。
不貞腐れていると配信中のコメントを拓哉が見せてくれる。途中から見に来てくれた人たちが「久しぶり!」「会いたかった~」「元気そうで良かった」と暖かいことを言ってくれているのを見て、少しだけ気が上向いた。
「それじゃあこっからはお渡し会だよ~!」
ファンミーティングの最後はいつもプレゼントのお渡し会に移る。最近は接触有りの特典会を控えていたので久しぶりにファンとの距離が近い。
- 122125/02/11(火) 21:58:21
何人もの「戻ってきてくれてありがとう」を聞きながら沢山のプレゼントを受け取っていると、順番が来た中に見覚えのある人が居る。
「お久しぶりです、ナイトハイド」
「今は非番だから心操って呼んで」
「すいませんつい癖で」
紫色の髪と不愛想な目つきをした心操がはにかんでプレゼントを渡してきた。やたらと大きいそれは最近野外ロケが増えたショータが欲しがっていた高機能スニーカーで思わず固まってしまう。「こんな高い物……」
だが心操は最低でも百万以上するそれを渡してもいつも通りの無感情な顔で口元だけ笑うだけだった。
「気にしないで、俺があげたくてあげてるだけだし」
「……じゃあ、お言葉に甘えて。いっぱい使いますね」
「そうして。ああそうだ、伝言なんだけどデクとダイナマイトは暫く現場来れないみたいでさ、復帰おめでとうだって」
ヒーローとして精力的に活動している二人がサポートアイテムの開発事業に協力すると言って暫くエリアから離れるという話は有名な事だった。そんな忙しい中わざわざ伝言までしてくれたことの有難さに心が温かくなる。
- 123125/02/11(火) 22:00:11
「嬉しいです、気にかけてくれてありがとうとお伝えください」
「伝えておく。SHOTAが活動縮小するって言ってからだいぶ動揺してたから今回の復帰すごい喜んでたよ」
「……心操さんは?」
切り返した質問にえっ、と心操は驚いていた。
だがショータは首をかしげてもう一度質問をする。
「いえ、今日まだお帰りって言ってもらってないなって思って」
「え、あ、そ、そうだった?」
「はい。俺、心操さんにお帰りって言ってほしいんですけど、ダメですか?」
ぷらりと揺れていた心操の手を握って自分の胸の近くまで引きよせる。彼の顔を見上げると、お手本みたいに真っ赤になっていた。若干の罪悪感があるが、辛抱強くこの男から言葉が出てくるのを待つ。
時間ギリギリまで粘ってから、漸く心操の口が開く。
「お、おかえり」
「ただいま、心操さん」
すぐに来た剥がしによって手が離れていく。だが視線は交わったままで、最後ブースの外に引っ張られていくまで手を振った。
ファンミーティングが終わり、会場の後片付けを手伝っていると、後ろから拓哉がしかめっ面をして話しかけてきた。
「ああいうの良くないと思うんだけど」
「ああいうのって何?」
「さっきのナイトハイドの奴。あんなの絶対勘違いするじゃん」
- 124125/02/11(火) 22:01:30
あれを見ていたのか、とショータは考える。
心操が自分の元弟子だからか、他のファンよりも少し特別な思いで見ているのは事実だった。だから、少し他のファンよりも特別にファンサをしてしまっている自覚はある。
だが、メンバーから注意を受けるほどだとは思っておらずむっとした顔になった。
「別にファンサの範囲内だろ」
「他のファンにはあんなことしないじゃん」
「ナイトハイドは最初期から応援してくれてるんだし、ちょっと特別でも良いだろうが」
自分の弟子ならば絶対に勘違いをして道を踏み外してくることなどないという自負もあったゆえの過剰なファンサービスではあるが、それを知らない拓哉からすれば少々不快だったのだろう。
「まあ次から気を付けるよ」
「いやあの、そうじゃなくて」
「あ? なんだよ」
「拓哉はショータの特別が出来るのが嫌なんですよ」
横からきた光木の言葉に拓哉の肩が跳ねる。
ショータは首を傾げた。
「なんで?」
「大切な友達に恋人が出来たら寂しくなっちゃうじゃないですか。そういう気持ちです」
「恋人って……あのなあ拓哉」
「み、光木。光木。やめてよ」
「やめてほしかったらこういうことで突っかかるのはよしなさい。ほらあっち手が必要みたいですよ」
- 125125/02/11(火) 22:03:10
光木に促されて拓哉が飛んでいく。まだ小言を言い足りないショータは不服そうな顔をするが、光木が「大目に見てやってください」と言うので言葉を飲み込んだ。
大切な友人に恋人ができると寂しくなる。そう言われてもショータはあまりピンとこない。昔からあまり色恋沙汰に熱中することがなかったせいだだろう。
数少ない相澤消太時代の恋愛経験は全て女性側からのアプローチによるものだったし、自分から熱烈に誰かを求めたこともなかった。
「よくわからねえな」
「恋愛感情が、ですか?」
「まあそれもあるが……友達を取られる? って感覚」
光木はああ、と頷く。
「恋人相手じゃなくたっていいんですよ。ずっと自分が親友だと思っていた相手が実は他に仲のいい人が居たとか言ったらなんだかちょっと嫌な気分になりません?」
ショータであればマイクだろうか。言われて考えを巡らせる。どちらかと言えば、ショータはマイクに心を許せる友人が増えてほしいとすら思っていた。それによって自分が排除されれば悲しいが、彼は交友関係が広いのに心を許す友人が少なすぎる。
心に少し、寒い物が流れた。
「……どうしました?」
「え、あ、いや」
「ははっ、アイドルが恋愛に関わる話なんてオフでもするもんじゃないですね。じゃあ僕向こう手伝ってくるので、ショータも程々にして切り上げてくださいね」
「お、おう」
- 126125/02/11(火) 22:04:11
光木に返事をするも、心は少しざわついていた。
マイクにとって相澤消太は恐らくかけがえのない友人の一人だ。では、今「自分」をどこかに探そうとしているショータの行動は、彼から友人の一人を奪う行為ではないだろうか。
悪い方向にばかり向きそうになる思考を押さえつけて、ショータは椅子を持ち上げて元の場所に戻した。
‡
マネージャーが持って来た仕事にショータを除く全員がしかめっ面をする。彼女もその反応は織り込み済みだったのか、「仕方ないだろう」勝手に釈明を始めた。
「『AIDORISE』の最大出資はUTVで、これはDD9の事務所NOVA STARと資本提携を結んでいるテレビ局だ。今までは他のNOVA STAR所属アイドルが番宣をしていたが、流石に本番三日前までUTVで一切番宣をしないというのは難しい」
「だからって生放送はどうなんですか?」
「この間のファンミーティングでショータの復活がネットで騒がれただろう。今ねじ込めるのが生放送しかなかったんだ」
朝の生放送番組への出演依頼は、普段ならば喜ぶところだろう。UTVとなれば見ている人も多いので切り抜きがSNSで拡散されることもしばしばある。
ここで一気にショータ復活の印象を世間につけておきたい気持ちはあった。
だが、UTVはNOVA STARとの関係上本心ではBLACK CASEを良く思っていないことは明らかだ。そんな企業が行う生放送に飛び込んでいくのはリスクが大きい。
「……当日、何か危険なことに巻き込まれないように一応護衛を雇っておいた」
「護衛?」
「お前も良く知る人だよ」
- 127125/02/11(火) 22:05:41
安心させようと眼鏡越しに優し気な目をするマネージャーから出た言葉に、ショータは思わず絶叫した。
翌日。
ショータは自分たちの前で上機嫌に振舞うイカれた髪型の男を見て露骨に嫌そうな表情を見せる。
「HEYボーイズ! プレゼント・マイクが護衛に来たぜェ!」
「今日はよろしくお願いします」
「いつもSHOTAがお世話になってます」
「俺が世話してやってんだよ」
「嘘つくなよSHOTA~! こないだなんて部屋で寝こけたお前を俺がやさしぃ~く運んでやっただろぉ?」
「SHOTA赤ちゃんじゃん」
「うるせえ」
プレゼント・マイクはハイテンションな仕事モードでメンバーの前に現れた。家からずっと一緒に来たせいで「保護者だ」と散々蓮に揶揄われショータは朝から機嫌が悪い。
光木とギリギリまで仕事の話をしていたライムも加わり、マイクと握手をする。
「プレマイ! 本物だ~! いつもラジオ聞いてます! 夜の作業用に良いんですよ!」
「その時間配信してる俺が言うのもナンだけどその作業環境ちょっと見直した方がイイゼ!」
「ははっ! それは確かに!」
- 128125/02/11(火) 22:06:55
夜中から始まり朝まで放送されているそれを聞いているライムの生活環境は少し心配になるレベルだ。
全員が集まったことを確認して局の中を移動しながらマイクは指を立てる。
「俺は荒事が置きそうになったら守れっけど、生放送中は流石になんも出来ねえ。一応事前に根回ししてはあっけどこの業界立場の弱い連中に対してそういうのマジ無視してくっからナ~。本番での対応はそっち任せになっちまう」
「大丈夫、生放送で放送事故起こすのは向こうだって本位じゃないですよ」
「だと良いんだが」
事前にマネージャーからも「何かスキャンダルになりそうなことはあるか」と聞かれていたが、全員心当たりはない。ここ数週間は共演者と言えど女性とは一緒にご飯に行かないようにしたり、他の人と触れ合うことすらもしないようかなり気を付けていた。
放送事故を起こせるだけの材料はないが火のないところでも煙を立たせるのが連中だ。油断はできない。
「もし何かあっても僕らでどうにかしますから」
「どうにもならなくなったらこっちで無理やり放送止めるから合図してくれ」
「それやったらウチも終わるんだよ」
話しながら歩いているとすぐにスタジオについてしまう。既に化粧や服の着替えは終わっていて、あとは撮影が始まるのを待つばかりだった。
- 129125/02/11(火) 22:08:09
五人が所定の位置に付き、マイクとライムは一歩下がった場所で見守る。今日の特集は開催目前の『AIDORISE』についてだ。直前である以上自分たちの持つ意味は大きい。
本番開始五秒前の合図が聞こえる。その秒数が消え、カメラが回り始めた。
「今日も!」
「GENKI! に行きましょう!」
朝の情報番組である『GENKI!』のお決まりの決め台詞とポーズをとる。自分たちに与えられた時間は僅か五分程度だ。
女性のアナウンサーが現れると、「スタジオにBLACK CASEの皆さんにお越しいただきました~」とにこやかに紹介された。五人の紹介をしつつ、『AIDORISE』の魅力を簡単に光木が紹介していく。
「『AIDORISE』は十年前の災害から始まったエールのバトンです。それにアイドルとして参加できて、光栄に思っています」
「メンバーのSHOTAさんは当時被災されていたんですよね、このフェスには並々ならぬ思いがあるとお聞きしたのですが……」
「はい。自分がアイドルを目指すきっかけにもなったフェスなので、恥じないパフォーマンスをしていきたいと思っています」
台本通りの言葉を言っているショータはきっと好青年に映るだろう。BLACK CASEを嫌っている人でなければ「辛い思いを乗り越えた強い人」と思うはずだ。
アナウンサーがなるほど、楽しみですねと言う。本来ならばここで他のメンバーに話が移りそこでSHOTAの話は終わりのはずだった。
「実は! SHOTAさんがイメチェンを考えている、とある噂を入手しています!」
.
- 130125/02/11(火) 22:09:33
聞いていなかった振りにショータも、メンバーも一瞬困惑の色を見せた。だがそれはカメラには映らず、画面いっぱいに別の映像が映し出される。
「……っ」
彰と一緒に映っている、白い髪の自分。
今まで隠し通していた素の姿が、そこに堂々と映し出されていた。
「真っ白な髪に青い目! 格好いいですよね~! ご自身のメンバーカラーに合わせて変えたのでは!? と一部ファンの中でかなり話題になっているこちらのお姿ですが……」
アナウンサーの視線が泳いでいる。
ショータの表情がかなり硬くなってしまっているからだろう。恐らく、アナウンサーはなにも知らないのだ。彼女も台本通りのことを言っているだけで、きっとこれが仕込みなのだと疑っていない。
だからカメラが向けられるまでに表情を作らないといけない。ここで何でもないという顔をしないといけないのに、ショータは頭が真っ白になっていた。カメラがこちらを向きそうになる。どうすればいい、目線を動かしたときだった。
「あ~! これ俺が「白い髪も似合うんじゃね?」ってヅラ被せたときの奴っすね」
「えっ、これカツラなんですか!?」
助け舟は彰の言葉だった。ショータを向きそうだったカメラがすぐに違和感を察して彰を向く。
アナウンサーは台本にない言葉に驚くが、現状に柔軟に対応した。
- 131125/02/11(火) 22:11:38
「そ~なんですよ。いやこいつ結構堅物だからなんかイメージ変えた方が良くね? つって前にメンバーに内緒で色んな髪型試してみたんですよね。でも中々ピンとくるのがなくって!」
「あ、この大量のごみ袋はもしかして……」
「他のカツラ入ってんすよ~!」
大量の毛が入っているごみ袋がアップになった。遠目から見れば大量のカツラにも見えるだろう。その間も心臓がバクバクと動いていて、目の前から光が消えそうになる。だが今は生放送中だ、今ここでいなくなったりしたら放送事故だし、何よりフェスの関係者が良い顔をしない。
光木がマイクに入らないよう「捌けましょう」と肩を抱いてくれる。だが、ここで逃げる選択肢を取れない現状を分かっているから、その提案に乗ることはできなかった。
ショートしそうな頭を振って頭を正常に戻す為思考を繰り返す。しかし心を落ち着けようと呼吸を深くしようとするがそれすら出来ない。視線を遠くにさ迷わせると、カメラに映る範囲から離れた場所に立っているマイクがこちらを見ていた。
「──ッ」
ああ、バレた。
全部バレてしまった。心の中に強い絶望感が蔓延する。幸か不幸か、強いマイナスの感情が流れ込んだせいで思考が完全に落ちてしまい、逆に冷静な姿を取り戻していた。
- 132125/02/11(火) 22:12:15
「いやマジSHOTA困るって~! 白い髪とか俺とキャラ被るじゃん! そのまま黒で居てくれ~!」
「SHOTAはRENと違って今のままで十分格好いいからね、イメチェンは当分しなくて良いんじゃない?」
「待ってなんでそんな棘のある言い方するの? 泣いちゃうからね」
みんなが場を繋いでくれたおかげですぐにCMに入りそうだ。何も考えることができない状態で、ショータはどうにか愛想笑いを浮かべた。
「あんま似合わなかったから暫くは変えるつもりねえよ」
大きな笑いがスタジオに響く。
アナウンサーが無難に「今後も気になるBLACKCASEの皆さんでした! フェスが楽しみですね!」と締めて、そのままCMへと流れた。
途端、足元から崩れ落ちる。遠くから、他のメンバーが名前を呼ぶ声が聞こえた。
‡
目を覚ましたら知らない天井だった。とは、使い古された言葉だがこういうものなのだなと思う。白い清潔感のある天井を見上げていると、ぼうっとした脳が現状を正しく認識しようとし始める。
そしてすぐ、先ほどの失態を思い出した。蹲って呻きそうな心を押さえつけ、出来るだけ冷静に言葉を吐きだす。
- 133125/02/11(火) 22:13:21
「誰が撮ったんだ……」
「出所はファンの鍵アカウント。投稿したファンと繋がってたDD9ファンが持ち出してBLACK CASEのアンチスレに書き込み、それを見つけた番組スタッフ……っていうかたぶんNOVA STARの連中が見て今回のを仕込んだっぽい」
聞きなれた声に心臓がひっくり返りそうになる。
だができるだけ表には出さず、首だけを動かした。ヒーロースーツに身を包んだマイクが、ベッドの横の椅子に腰かけて「調子は?」と聞くので「少し気分が悪いくらい」と返した。
「アナウンサーや番組スタッフは違う台本を渡されてた。一足先のイメチェン画像を世間に発表って流れだったらしい。向こうとしてはなんもスキャンダルがねえからなんかネタを掴みたかったんだろうな」
そんなことを聞きたいわけじゃない。
ショータは口の中が異様に乾いていた。聞きたいことが山ほどあるのに、彼の落ち着いた反応を見て逆に恐ろしくなっていく自分が居る。
あの髪色を見て、あの目を見て、何の事情も知らないマイクが落ち着いていられるわけがないのに。目の前の男からは揺れ動く感情が全く見えない。
「……知ってたのか」
絞り出した声は、情けないくらい震えていた。
マイクは無言で答えた。それが何よりの返答だった。
- 134125/02/11(火) 22:14:28
「いつ、から」
「お前をウチで預かるって決めた時。お前のご両親から、話を聞いた」
嫌だ。
自分で聞いたのに、耳が聞くことを拒絶している。現実を知りたくなくて子供みたいな癇癪を起しそうになる。
「お母さんは……あれこそカツラなんだってな。お前が地毛を見るとトラウマで過呼吸を起こすから、家では黒のストレートウィッグをつけてるってことも聞いた」
嫌だ、嫌だ、嫌だ。
聞きたくない。それなのに、視線が外せない。
「お母さんにとって俺は『兄の親友の一人』だからな。そりゃ、もしバレたときのショックを考えたら話とかなきゃってなったんだろ」
呼吸が苦しい、怖い。
お前にだけは知っていてほしくなかった。いつか言わなきゃいけないとは思っていたけど、それは今日じゃなかったはずだった。
指先が震える。その震えを見ていても、マイクは言葉をつづけた。
「……俺は、お前が」
やめて。
言わないで。そう願うのに、マイクは止まらない。止まるわけもなかった、これは後回しにしていい問題じゃない。
- 135125/02/11(火) 22:15:25
- 136125/02/11(火) 22:17:13
‡
真っ白な髪に青い瞳。白雲家の特徴を色濃く受け継いだ少年は今から十六年前に生を受けた。
名前は白雲霞。
彼は幼いころから随分と聡明な子供だった。他の赤ん坊が喃語をしゃべるのでやっとな頃から意思疎通が出来るそぶりを見せ、一歳を超える頃には完全に会話が成り立つようになっていた。白雲家は「天才だ!」と我が子の成長を喜び、毎日毎日楽し気に話しかけていた。
だがそれには絡繰りがあった。白雲霞の脳内では別の人間が毎日おしゃべりに付き合っていたのだ。それが、転生を果たした相澤消太だった。白雲霞は喋ることができるようになってからことあるごとに「変なおじさんが頭の中にいる」と両親に訴えていたが、小児科医の「イマジナリーフレンドでしょうね」という言葉で納得してあまり取り合ってはくれなかった。
「おじさん、いつまで居るの?」
『……いつまで、だろうなあ。おじさんも早く出て行ってあげたいんだが』
相澤は非常に申し訳ない気持ちでいっぱいだった。どうやらこの体の中でする思考は全て霞に駄々洩れらしく、彼はそれをとても嫌がった。
- 137125/02/11(火) 22:18:22
だが三歳になる頃には完全に慣れたのか、相澤を自分の一部として知識の宝庫代わりに使うようになる。
「おじさん、これなに?」
『銀杏だな、食うなよ』
「おじさん、これは?」
『狸の糞だ、食うなよ』
「おじさん、これ」
『桜の花……おい食うな食うな食うな!』
やたらと物を口に入れたがる子供だが、それが寸前で止められていたのは相澤のおかげもあっただろう。
「おじさん、このしゃしん、好き?」
『……そうだね、好きだよ』
「このひとね、おじさんなんだって。おじさんっておじさん?」
『俺とは違う人かな』
相澤は良く、霞に強請って霞の母のアルバムを見たがった。霞が何度も取りに来るので、アルバムは霞がとりやすい低い位置に設置されていた。
とりわけ彼が見たがったのは母が十代前半の頃……彼女の兄がまだ存命だった頃の写真だ。そこには相澤消太にとっては親友の白雲朧が笑ってこちらを見ている。仲睦まじい家族の写真だ。
この家は白雲朧の実家でもあった。霞の祖母は息子を亡くしてから娘まで死ぬことを怖がり、手元から離したがらなかった。同時に母も家を出て夢を追うことを怖がり、ここから出ようとはしていないらしい。
だからここには、白雲朧の痕跡がたくさん残っている。
- 138125/02/11(火) 22:19:35
「おぼろってどんな人?」
『強くて格好良くて、心の底からヒーローなやつだったよ』
「ひーろー……」
『朝テレビでオールマイトの動画見てるだろ? ヒーローってのはああいう人達』
「ふうん」
霞は興味が無さそうだった。この年代の子供たちならば皆オールマイトに釘付けになるものだが、それもない。
『霞はオールマイト嫌いか?』
「すきじゃない」
『そ、そうか……』
「おぼろのはなしね、ママしたくないっていうの」
霞は子供ながらに順序だてて話す。
本当に良く話す子だった。それでもまだ大人のようには話せないので相澤は彼の言葉を繋げて文にしていく。話をきちんと聞くと、霞の母は朧が死んだことを今でも深く悲しんでおり、それを霞もまた悲しんでいるという話だった。
「ママのことなかせたから、ヒーローはいや」
『霞……』
「もっとキラキラなひとがいい。みんなわらっちゃうような、キラキラなひとになりたい」
彼はそれきり白雲朧の話をしたがらなかった。どうやら白雲朧は霞にとってママを泣かせた最低な奴らしい。いつか自我がしっかりしたら白雲朧は凄いやつだと話してやろうと、相澤もそれ以上言うことはなかった。
- 139125/02/11(火) 22:21:23
それからは二人で常に話していた。霞はどんどん物事を吸収して、善悪の区別や現実を見る力を養っていった。そのせいで子供らしくないと言われることもしばしばあったが、天才児という肩書が彼を窮屈にはさせなかった。
「やっぱりお笑い芸人かなあ」
『お笑い芸人はやめた方が良いんじゃないか? まあ血筋的には向いてないこともないが』
「え~、じゃあおじさんはどんな人が良いと思う?」
『……ヒーローとか』
「やだ。ヒーロー怖いじゃん。死んだりするんでしょ? 俺死にたくないもん。オールマイトは格好いいと思うけどさ~」
霞は五歳になる頃には完全に小学校高学年程度の会話ができるようになっていた。だが情緒は完全に子供のままで、深く考えるようなことはしていない。将来の夢も前に話してくれた「キラキラしてみんな笑っちゃうような人」から変わっていなかった。
「あれ、おじさんもう寝る?」
『ん……ああ、そろそろ落ちそう』
「ええ~。おじさん居なくなったりしないよね?」
『はいはい。ちゃんと起きるから』
相澤の活動時間は必ずしも霞と同じではなかった。だが、活動の限界時間はあるらしく、疲れると自然と『眠る』ことがあった。
霞が寝ている間意識だけ相澤が起きていることもあるし、霞が起きている時に相澤が寝ていることもある。体の主導権は必ず霞が握っているから、相澤が起きて異様と寝ていようと、大した違いはなかった。
「じゃあおやすみおじさん、良い夢を~」
『ん、おやすみ霞』
それが二人で交わした最期の言葉だった。
- 140125/02/11(火) 22:23:02
相澤が次に目覚めた時感じたのは鮮烈な体の痛みだ。白雲霞と共に生きてから暫く全く感じていなかった体の異変に、勢いよく目を開ける。
「……っ、……!」
「ぁ、あ、霞! 霞! 起きたのね、良かった!」
何度も聞いた、朧の妹の声。それは間違いなく、今自分に向けられていた。
「おかあ、さん」
声は、自分の意志で、自分の喉から出ていた。
「すぐにお医者さん来るからね、もう大丈夫よ。ああよかった、良かった……!」
泣きながら彼女は相澤の手を握った。
手を握られる感覚があることに、相澤は絶望するしかなかった。
「建物の崩落に巻き込まれたの。ああ良かった……本当に、良かった……! お兄ちゃん、守ってくれたんだね……!」
この人にかける言葉も見つからない。
ここに居るのは白雲霞ではなかった。だがそんなことを言えば彼女はきっと絶望どころでは済まなかっただろう。相澤は口を噤むしかなかった。
集中治療室から出ると、外の景色は一変していた。瓦礫の山になった市街地と、テレビの情報を合わせると未曽有の災害が起きたという事だけは分かった。時間は最後に眠ってから既に二週間が経っていた。災害が起きたのは、相澤が眠った直後だった。
医者の話を聞くと白雲霞は一度完全に心臓が止まったらしい。だがその直後息を吹き返したのだという。
- 141125/02/11(火) 22:24:30
「きっとね、お兄ちゃんが霞のこと守ってくれたんだわ。同じ死に方なんかさせないって、そうやって守ってくれたの。だってお兄ちゃんはヒーローだったもの」
彼女が夫にそう話しているのを寝たふりをして聞いていた。自分が寝てから起きるまでの間の記憶はない。他の人の話を聞いていると、どうやら霞は災害に耐えられなくなって飛び出したところ崩落に巻き込まれたらしい。
「……俺のせいだ」
本来、五歳程度の子供は現実を正確認識できる能力はない。どこか楽観的で、何が起こっているのかわからず両親に付ききりになるものだ。
だが、白雲霞は相澤と話をして同年代とは思えないほどの把握能力を持っていた。けれど心は子供のまま、アンバランスな成長をしていた。
「俺が、あいつと話をしていたせいで」
白雲霞は歪な成長をした結果、現状に耐えきれず逃げ出した。
相澤消太が同じ体なんかに居なければ、彼は今頃避難所で日々に怯えつつも健康に暮らしていただろう。
相澤消太は既に白雲朧を見殺しにしている。
その甥を、白雲霞さえも、相澤消太は殺したのだ。
- 142二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 22:25:52
待ってくれ…
- 143二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 22:26:24
キツイ…キッツイよ…
- 144125/02/11(火) 22:26:29
‡
相澤は目を見開いて大粒の涙を流し、逃げるように壁に背をつけていた。呼吸は荒く、視界は歪んでいる。
「相澤」
「お前は、俺に、どうなってほしかったんだ?」
「っ……」
マイクは全部知っていた。
相澤が白雲朧の甥に生まれたことも、トラウマから白い髪も青い目も見れなくなってしまったことも。母から話を聞いているのであればあの事故があってから性格が大幅に変わったことも聞いているはずだ。
ならば、相澤が霞を殺したことにだって見当がついていただろう。
「お前俺の母親に会いに行かせたよな。白雲の甥だってわかってて、どうして相澤消太の人生をなぞらせた? あいつに顔向けできないことをさせた!?」
「違う、俺は」
口が止まらない。
全部棚上げな事だとわかっている。それでもマイクを責める口が止められない。
「お前は本当に白雲の甥を預かってると思ってたのか!? この体の幸せとか、そんなものどうでも良くて、自分を理解してくれる昔の友達をよみがえらせようとしたんじゃないのか!?」
「違う! 聞け相澤俺は」
「俺はもう相澤じゃない!」
- 145125/02/11(火) 22:27:27
自分で言って、相澤の口は止まる。
「ぁ、あ。違う、まだ俺は相澤消太なんだ。そのはずなんだ、でも、この、この体は霞の物で。ああでも、霞は、霞はもう」
「落ち着けって! こんな自分がどこにある? なんて言ってるお前に何がどうとか言えるかよ! 今だってもうボロボロじゃねえか!」
マイクの言葉は正論のはずなのに、脳が受け取ることを拒否する。
「ぃ、やだ。頼む、マイク、ひとりにして、くれ」
「今のお前を?」
「お願いだ、頼むよ、頼む」
「できねえって」
「頼むから!」
必死に頭を下げるほど、マイクは首を横に振る。だがどうしても一人になりたい、誰にもいてほしくない。縋るように願えば「……五分だけだぞ」とマイクは部屋から出て行った。
彼の気配が完全に室内から消えたのを確認して、非常口から相澤は飛び出す。室内の時計を確認したがまだ十五分程度しか経っていなかった。マイクは言っていなかったが、きっとみんなは控室に残っているだろう、今日はライムと最後の打ち合わせだったから。
- 146125/02/11(火) 22:28:31
誰でも良い、今の自分を肯定してくれる人に会いたい。それは今の相澤にはあの四人しかいなかった。控室に向かって走っていると、騒がしい声が聞こえてくる。頼む、頼む。俺を否定しないでくれ。
願うよう走って、扉に手をかけた。
「だから! あいつが居たからお前があんな目にあったんじゃないか!」
扉を開けた瞬間、相澤の耳に飛び込んだのは罵声だった。
「やめてくださいライムさん」
「黙ってられるか! あの白い髪、青い目、忘れるもんか! 白雲霞だ、俺らの積んだ瓦礫に突っ込んできて大怪我して、お前の人生めちゃくちゃにしたガキだ!」
「落ち着けってライムさん、そんな人のこと悪く言うの良くねえよ!」
「うるせえ! マネージャーはこのこと知ってんのか!? 光木の過去知ってたら……あの時のお前の状態を知ってたら、こんな人事するはずねえだろ!」
会話が白熱していて、皆相澤の存在に気付いていない。
声を出そうとするが、それすら恐ろしくて目の前がぐらぐらと揺らいでいた。
- 147125/02/11(火) 22:29:49
「お前があの後どんな目にあったと思ってる! 毎日死にそうな顔で慣れないバラエティ出て! ファンは離れて行って、あんなに痩せて、廃人みてえになって……!」
ライムの言葉を相澤はぐらぐらの頭で不思議なくらい冷静に考えていた。そう言えば母は崩落に巻き込まれた、と言っていたがどこでとは頑なに言わなかった。家は災害が終わった後、二次災害で巻き込まれて焼失したので時系列が合わない。近くの建物も丈夫な物が多く、あんな大怪我をするようなモノではなかった。
そうなると、ライムの言葉の意味が分かる。
「俺が、やったん、ですか」
ぴたり、と。
白熱していた室内がしんと静まり返る。あれだけ怒鳴り散らしていたライムが、まるで悪いことをしたあとのように相澤を見ていた。
「SHOTA、くん」
「SHOTA、今のは」
「俺が、光木の人生を、壊したんですね」
心の中に言葉がしっくりくる落ち方をした。
白雲霞は相澤と話しをしすぎたせいで現実を受け止めきれずに暴走した。そして、逃げるように走った先で大切なメンバーの大切な未来を壊した。
「……ごめんなさい」
頭の中は相変わらずぐるぐると回っていた。でも一個だけ確かなことがあった。
- 148125/02/11(火) 22:30:45
- 149二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 22:31:29
待ってくれよ!!!
- 150125/02/11(火) 22:32:00
相澤は背を向けて走り出した。後ろで自分を呼ぶ声がする、ライムも光木も他のメンバーも。心操がくれたスニーカーは軽々と体を運んで全部振り切った。局内を走り抜けて、相澤は、ショータは、霞は、SHOTAは、
「どこ、いけばいいんだ」
外に続く廊下でぼんやりと呟く。
蹲って携帯を握りしめる。そこにはマイクから鬼のような着信がきている。これに折り返せばきっと、彼は心配した顔でショータを迎えに来るだろう。
だが相澤は今帰りたくなかった。今優しい彼らと顔を合わせたくなかった。SHOTAはどこか遠くに逃げたかった。
霞は呆然と携帯を見る。そして、ある人の電話番号を思い出す。
連絡先に登録してあるその名前を、震える指先で押した。これに出てもらえなかったらどうしよう、そんな不安はたったワンコールで掻き消える。
向こうから聞こえた、誰よりも安心するその声に涙が決壊した目をそのままに、『俺』は叫んだ。
「助けてください……!」
何も聞かず、ただ電話口の向こうからOKの返事が来て、また大きな声で泣いた。
- 151二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 22:36:12
年末年始で会えててよかったな…
- 152二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 22:37:19
こんな辛いことってあるのか…
誰も悪意なんてないのに…… - 153二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 22:37:34
なんとなく、そんな予想はしてたけども…してたけども…辛い…
- 154125/02/11(火) 22:37:42
以上です!
後編はこんな感じ
次の話で最終話になる予定だったんだけど今回のを考えると多分前中後の三篇になるかなあと思う
後マジで申し訳ないんだけど今週土日にぎっしり予定が入ってて次書きに来れるのが月曜日です
その間スレが埋まることは気にせずに好きに感想とか書いてくれるととっても嬉しくてワイが喜びます
あとちゃんと書きに来れるのが月曜なだけで定期的に顔出しには来れると思う
その時はBLACK CASEの小ネタとか全然関係ないスケベネタとか持ってくるね
じゃあ寝るぜ!
おやすみ!
- 155125/02/11(火) 22:37:59
- 156二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 22:39:07
誰も悪くないのに最悪の結果になる展開スレ主うますぎない?
待ってくれ次書きにくるの月曜!!??? - 157二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 22:41:11
三馬鹿の縁が因縁なんてレベルじゃないくらい複雑に絡みすぎてないか?
もれなく地獄がついてくるのも辛い
白雲と相澤と山田が何したっていうんだよ…… - 158二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 22:41:46
予想はしてた展開だけど100倍くらい辛さがちげえ
お母さんの「お兄ちゃんが守ってくれた」がもうなんも言えねえよ - 159二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 22:44:11
ずっと黙ってたマイクだって辛かったろうし自分のせいで親友の甥が死んだ先生だって辛かったろうしこんなん天国の白雲だってつれえよ
俺明日仕事行きたくねえよ - 160二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 22:45:50
霞と先生の関係考えるだけで辛いし唯一頼れる居場所も揺らいで不安が押し寄せたのに、最後電話かけたであろう相手の顔と声思い浮かべたらショータと同じですごい安心したんだよ
やっぱすごいなあの人 - 161二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 22:47:36
なんとかバグが起こって明日が月曜になんねえかな
- 162二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 22:49:18
- 163二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 22:56:35
スレ主ってなんでこんなに地獄作成が上手いんや? 誰が悪いわけでもないのになんでみんな苦しい思いしなきゃいけないんだろう ショータのことはあの人が助けてくれると思うけどショータだけじゃなくてみんなが幸せになる未来が来て欲しいよ
- 164二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 23:05:47
もしかして俺このまま寝ないといけないんか?
心がずっとざわついてるし苦しいんやが… - 165二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 23:11:01
一気にすごい地獄を摂取したから夢に出そうだよ
転生先も辛ければ2度も白雲家の人間の死に関わるのも辛すぎるだろ……しかも同じ死因って…………
それがメンバーの辛い過去に繋がるのも辛い…… - 166二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 23:50:32
なんか…AFOみたいに「こいつが悪い!全部こいつが悪い!」ってできる敵って必要なんだなあ…って思ったよね…
この遣る瀬無い思いどうすればいいんだ - 167二次元好きの匿名さん25/02/12(水) 00:10:02
別アニメで申し訳ないんだけど鋼錬のイズミ先生は錬金術で実子を二回も殺したわけではないけど(語彙が無いので誤解を招いたらごめん)SHOTAの場合、白雲朧は前世でAFOにに狙われた相澤先生の巻き添えで白雲霞も魂?を相澤が殺してしまったから、相澤目線だと結局2人の死は自分が原因だから2人とも自分が殺してしまったことになるのが辛い。
- 168二次元好きの匿名さん25/02/12(水) 00:15:58
俺(凡人)の考える先生の地獄「んほ〜生徒が死んで曇る先生たまんねえ〜」
スレ主(天才)の考える先生の地獄「転生させて二度白雲家の人間を自分が原因で死なせます」
人の心無いんか? - 169二次元好きの匿名さん25/02/12(水) 00:19:34
マイクにもメンバーにも頼れなくなってから名前がショータだったり相澤だったり霞だったりで揺れまくってるのグラグラな状態が伝わって辛くなる
でもそれが電話した直後俺に収まるのが一息つけたんだなって気がしてすごい安心した - 170二次元好きの匿名さん25/02/12(水) 00:29:47
幸せな話をするんだけどファンのみんなから復帰を望まれてるSHOTA本当にここが居場所になってたんだなって思えて良かった
今までちょっと影の薄かった光木もすごい頼りになるお兄さんなんだなあって思えたしこのグループの日常パート本当に可愛い
ダメだすぐあとの地獄が感想書いてる間ずっとチラつく - 171二次元好きの匿名さん25/02/12(水) 08:04:43
前半心操にダル絡みするショータ可愛い、拓哉の嫉妬可愛いで呑気にしてたらこれだよ
ショータにもマイクにもBLACK CASEにもただただ幸せになってほしいよ - 172二次元好きの匿名さん25/02/12(水) 12:20:35
読み返してはどちゃくそダメージを受けてる
誰も何も悪くないのに致命的に全部が噛み合わなくてこんなひどいことに…
霞って名前じゃなくてショータって名前で活動してるの絶対罪悪感から名乗れなくなったとかじゃないのか
お母さん芸能活動よく許してくれたな - 173二次元好きの匿名さん25/02/12(水) 14:36:18
真面目に感想スレ欲しくなってくる……
- 174二次元好きの匿名さん25/02/12(水) 17:27:27
- 175二次元好きの匿名さん25/02/12(水) 18:29:38
ワイは逆に欲しい派だけど完結してからがええかなと思う
BLACK CASEの日常とか霞くんが生きてたらのif妄想とかファンミの内容とかをみんなでワイワイ話したいから
今はちょっと…ほら…そういうの話す雰囲気じゃないし… - 176二次元好きの匿名さん25/02/12(水) 19:25:52
霞くん生存if話てえ〜
白雲の甥と同じ体共有して思春期とかめちゃくちゃ反発されてて欲しい - 177二次元好きの匿名さん25/02/12(水) 19:30:30
個人的にはスレ主に感想も届けたいからここで感想妄想でワイワイしたいけどスレの埋まるスピードが加速するのとか気になるなら別の場所作るのもいいと思う
ワイはスレ主の判断に任せるで - 178二次元好きの匿名さん25/02/12(水) 19:33:21
後半が辛すぎて霞んでたけど心操くんプレゼントで100万以上のスニーカーはいかつすぎる
がっつり貢ぎオタクになってて笑った - 179二次元好きの匿名さん25/02/12(水) 20:14:06
TAKUYAがショータで抜いてるか気になってる
スレ主もし抜いてるか設定決めてたらおかずも教えてくれ - 180125/02/12(水) 20:26:48
ただいま〜
感想スレは完結するまではここを感想スレ代わりに使ってもらって完結したあとまだ熱が残ってたらスレを立てようと思うよ
しばらくはドル澤の更新だけになると思うから好きに感想スレとして使ってくれ〜埋まりそうになったら新スレ立てるので
拓哉はバリバリショータで抜いてる
定番のおかずは猫カフェロケに行った時に「すごい猫好きです」って言った声が甘すぎて「好きです」部分を切り取ったやつ
最近一番濃いのが出たのは仕事が遅くなってショータが家に泊まりにきてくれた時ベッドが一つしかなくて同じベッドで密着して寝た時の思い出
- 181二次元好きの匿名さん25/02/12(水) 20:47:42
なんかすごい爆弾が投げ込まれたな…
- 182125/02/12(水) 20:47:46
これは小ネタなんだけど
DD9は元々実家極太組(2世組とか)の5人をデビューさせるために作られたグループ
ぶっちゃけ世間舐め腐ってる5人を大御所達のご機嫌を取るために形だけでも活動させる必要があって他のやる気あるオーディションメンバーで固めてデビューさせた
だから最初はそんなに有名になるはずではなかったんだけど
いわゆる異形枠で採用した拓哉が歌うますぎてSNSでバズったり
バカで扱いやすいと思ってとった蓮がバチバチラップで良いアクセントになったり
無個性の話題のためだけにとった彰が他の芸能人に可愛がられたり
拾い物の光木が想像以上にブレイクしたりして実力以上の人気が出てしまった
勿論人気としてはメディア露出もあってか光木>>>舐め腐った5人>他3人みたいな感じだけど熱のあるファンは3人についててしっかり支え続けてた
なので3人のファンはDD9で3人に光が当たると思っていなかったので独立してくれて良かったと思ってるしショータがいい感じに自分の担当と絡んでバズってくれて嬉しいと思ってる
- 183二次元好きの匿名さん25/02/12(水) 21:01:48
TAKUYA想像以上にガチでビビったし元は異形枠での採用なのか…なんかヒロアカ世界だと普通にありそうで嫌だな異形枠…
蓮ラップ担当なの!?
バカなツラした男がバチイケラップするの好き過ぎる - 184二次元好きの匿名さん25/02/12(水) 21:43:15
ここまでガチやとファンミでの心操とのやり取りとかマイクとのお泊まりエピソード聞いてる時はちゃめちゃに脳破壊されてたやろな拓哉
DD9のバカ息子達本来おまけ扱いだったメンバーの方が成功してるの本当腹立ってそうだし火付け役になったショータのこと本気で逆恨みしてそう - 185二次元好きの匿名さん25/02/12(水) 22:02:30
どんどんショータがDD9ファンに恨まれる理由が生まれていくな…
マイクにお姫様抱っこでベッドに運ばれるエピソードをどんな気持ちできいてたんだTAKUYA…
「マイク迎えにくるから大丈夫」みたいなことを言われるたびに「俺の家に来てよ!」とか思ってたんかな… - 186125/02/12(水) 22:18:18
心操の懐事情を書いておくんだけど
心操は老後のためにしていた資産運用が大成功してしまって所謂FIRE済みなのでお金に頓着する必要がなくなってしまった
本人はお金に対する執着がほぼゼロで物欲も少ない
ヒーロー活動はヒーローという職に誇りを持ってやっているだけで金銭関係のことはあまり気にしておらず他の人がやりたがらない低報酬で激務のところに志願したりしてる
FIREはしたけど利益が生まれ続けているので折角だし推しがほしいものをあげたいなあと貢いでる感じ
ショータに対して恋愛感情とかはなんもないんだけどなんか知らんが幸せになって欲しいなあと漠然と思っててファンとしてできる活動がプレゼントだった
親戚のおじさんが沢山お小遣いをあげてる心境に近い
寝るぜ - 187二次元好きの匿名さん25/02/12(水) 23:45:47
心操めちゃくちゃ人生勝ちレールに乗ってて笑った
そりゃ100万越えスニーカーぽんと渡せますわ
あと金に頓着する必要ないから皆んなやりたがらない低賃金の激務受けるのかっこよすぎるな - 188二次元好きの匿名さん25/02/13(木) 06:10:55
親戚のおじさんがファンサされて喜ぶか?って思ったけど可愛い親戚の子が「おじさんありがとう♡」って媚び媚びで言ってくれたらそりゃめちゃくちゃ嬉しいよな…で納得した
- 189二次元好きの匿名さん25/02/13(木) 07:37:10
急遽ショータが泊まりにくることになった時の拓哉の話が気になってしょうがない…
めちゃくちゃ焦りながら部屋掃除とかしたのかな - 190二次元好きの匿名さん25/02/13(木) 08:06:25
思ったんだけどTAKUYAって頭のツノが邪魔して仰向けにしかなれないんじゃなかったっけ
ショータが横で寝こけてる間天を向く息子に鎮まれ…!って祈ってたんかな - 191二次元好きの匿名さん25/02/13(木) 12:31:50
メンカラ白なショータ好き過ぎる
俺に似合うわけねえだろ…って相澤先生の顔が出てめちゃくちゃ嫌がって欲しいけど白の絨毯が広がる会場見て悪くねえなってなって欲しい - 192二次元好きの匿名さん25/02/13(木) 19:01:07
BLACK CASEの公式チャンネルで誰かが運転した車でドライブする5人とか見てえな
永遠に雑談しててほしい
疲れた心によく効くってヒーローにも評判 - 193125/02/13(木) 19:48:07
ただいま~なんかすごい勢いで埋まりそうだな
次スレ立てるねえ - 194二次元好きの匿名さん25/02/13(木) 19:54:35
スレ主おかえり〜
次スレありがとう - 195125/02/13(木) 19:56:17
- 196125/02/13(木) 19:56:33
こっちは埋めちゃう
- 197二次元好きの匿名さん25/02/13(木) 19:57:15
埋めるぜ
- 198125/02/13(木) 19:57:28
埋めよう埋めよう
- 199二次元好きの匿名さん25/02/13(木) 19:57:54
うめ
- 200二次元好きの匿名さん25/02/13(木) 19:58:14
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