魔法少女を集めてバトロワするスレ8

  • 1◆xaazwm17IRZa25/02/07(金) 00:30:32

    皆さんから魔法少女を集めてデスゲームに参加させるスレ(8スレ目)です。(本編は1が書きます)


    キャラクターの生死などはダイスで決めますが、安価はあまり取らない(アイデアをお願いすることはちょくちょくあります)ので、そこだけご了承いただけると幸いです。


    詳細はこちらから


    https://w.atwiki.jp/mahousyouzyobr/pages/1.html

  • 2◆xaazwm17IRZa25/02/07(金) 00:33:42

    過去スレ


    魔法少女を集めてバトロワするスレ1|あにまん掲示板様々な個性の魔法少女たちがデスゲームに参加することになった……という体でデスゲーム小説書くのでオリキャラ募集しますデスゲームの内容としてはバトロワベースで特殊ルールを幾つか設定する予定世界観や魔法少女…bbs.animanch.com

    魔法少女を集めてバトロワするスレ2|あにまん掲示板皆さんから魔法少女を集めてデスゲームに参加させるスレです。(本編は1が書きます)キャラクターの生死などはダイスで決めますが、安価はあまり取らない(アイデアをお願いすることはちょくちょくあります)ので、…bbs.animanch.com

    魔法少女を集めてバトロワするスレ3|あにまん掲示板皆さんから魔法少女を集めてデスゲームに参加させるスレ(3スレ目)です。(本編は1が書きます)キャラクターの生死などはダイスで決めますが、安価はあまり取らない(アイデアをお願いすることはちょくちょくあり…bbs.animanch.com

    魔法少女を集めてバトロワするスレ4|あにまん掲示板皆さんから魔法少女を集めてデスゲームに参加させるスレ(3スレ目)です。(本編は1が書きます)キャラクターの生死などはダイスで決めますが、安価はあまり取らない(アイデアをお願いすることはちょくちょくあり…bbs.animanch.com

    魔法少女を集めてバトロワするスレ5|あにまん掲示板皆さんから魔法少女を集めてデスゲームに参加させるスレ(5スレ目)です。(本編は1が書きます)キャラクターの生死などはダイスで決めますが、安価はあまり取らない(アイデアをお願いすることはちょくちょくあり…bbs.animanch.com

    魔法少女を集めてバトロワするスレ6|あにまん掲示板皆さんから魔法少女を集めてデスゲームに参加させるスレ(6スレ目)です。(本編は1が書きます)キャラクターの生死などはダイスで決めますが、安価はあまり取らない(アイデアをお願いすることはちょくちょくあり…bbs.animanch.com

    魔法少女を集めてバトロワするスレ7|あにまん掲示板皆さんから魔法少女を集めてデスゲームに参加させるスレ(7スレ目)です。(本編は1が書きます)キャラクターの生死などはダイスで決めますが、安価はあまり取らない(アイデアをお願いすることはちょくちょくあり…bbs.animanch.com
  • 3◆xaazwm17IRZa25/02/07(金) 00:38:31

    【参加者】

    桐ヶ谷 裂華/ジャック・ザ・リッパーdice1d100=2 (2)

    アルセーヌ(マスコット)dice1d100=39 (39)

    ジェシカ・ロドリゲス/バルバロイdice1d100=93 (93)

    清原 稞美/ウェンディゴdice1d100=86 (86)

    刈屋 伊織/ミストアイdice1d100=16 (16)

    轟 猫耳/ネコサンダーdice1d100=31 (31)

    マク=ハク/ノーブル・サヴェージdice1d100=87 (87)

    天城 千郷dice1d100=56 (56)

    汐沫 夏実/ジェイルフィッシュdice1d100=68 (68)

    犬上 沙美/ハスキーロアdice1d100=92 (92)

    逢魔 愛裏/ナイトメア⭐︎メリィdice1d100=18 (18)

    桐生 ヨシネ/バーストハートdice1d100=89 (89)

    桐崎 香澄/クレアボヤンスdice1d100=90 (90)

    蜂矢 恋蜜/ハニーハントdice1d100=98 (98)

    栗田 柿子/ジャスティスファイアdice1d100=85 (85)

    姚 莉鈴/ハイエンドdice1d100=10 (10)

    王城 姫子/クィーンdice1d100=70 (70)

    槍ヶ崎 舞矢/スピードランサーdice1d100=33 (33)


    【(元)運営陣】

    あ/ああああdice1d100=96 (96)

    勇者/灰江渚dice1d100=23 (23)

    グレンデルdice1d100=92 (92)

    トート・アリアdice1d100=3 (3)

    早瀬 光/クイックローラーdice1d100=71 (71)

  • 4◆xaazwm17IRZa25/02/07(金) 00:41:28

    【追加戦士】(本編登場するかは未定)

    ミネルヴァ・ミストリルdice1d100=78 (78)

    弓ヶ浜 ヒカリ/ランドウdice1d100=91 (91)

    佐神 正(さがみ せい)/ピスケスdice1d100=2 (2)

    アインdice1d100=5 (5)

    機骸の大怨霊(マシンナリー・ゴースト)dice1d100=32 (32)

    柏木 彩/デスグラシアdice1d100=34 (34)

    ヴンダーdice1d100=64 (64)

  • 5◆xaazwm17IRZa25/02/07(金) 00:43:13

    【教師】妃咲希
    【3年生】清原稞美/轟猫耳/桐崎香澄/玉柳水華/山田浅悧/佐々利こぼね
    【2年生】桐ヶ谷裂華/夜祖神髑髏/田中空/
    【1年生】ジェシカ・ロドリゲス/木羽マミ/陣内葉月/蜂矢恋蜜/逝凪 素鈴

    【中学校】
    【3年生】星月夜/刈屋伊織/天城千郷/逢魔愛裏/王城姫子
    【1年生】七海真美

    【小学校】
    【5年生】汐沫夏実
    【4年生】犬上沙美

    【ティターニアの弟子】
    山田浅悧/桐ヶ谷裂華/田中空/ジェシカ・ロドリゲス

    【魔法少女部】
    星月夜/刈屋伊織/天城千郷/逢魔愛裏

    【ブレイズドラゴン一門】
    ブレイズドラゴン/ハイエンド/ヒートハウンド

    【かつての武術交流会】
    王龍明/姚莉鈴/桐生 ヨシネ/陣内 葉月/抜刀 金

    【大人組】
    ティターニア/スピードランサー/ブレイズドラゴン/(デッドマンズ・ハンド)

    【クリックベイトハーレム】
    クリックベイト/ミョルニル/ネコサンダー/抜刀 金/スピードランサー

  • 6◆xaazwm17IRZa25/02/07(金) 00:46:07

    ジェシカ・ロドリゲス/バルバロイ+マギカスキャナー
    刈屋 伊織/ミストアイ+壊れかけの腕時計
    犬上 沙美/ハスキーロア+パンドラの箱
    逢魔 愛裏/ナイトメア⭐︎メリィ+マギカロック
    桐生 ヨシネ/バーストハート+回復促進剤
    桐崎 香澄/クレアボヤンス+強化薬アンプル
    栗田 柿子/ジャスティスファイア+魔草ケムリ
    姚 莉鈴/ハイエンド+アンダーテイカー
    王城 姫子/クィーン+栄養剤…?
    槍ヶ崎 舞矢/スピードランサー+万能解錠キー
    ジャック・ザ・リッパー+インテリジェンスウェポン+魔剣「アロンダイト」

  • 7◆xaazwm17IRZa25/02/07(金) 00:47:21

    【あにまん中央エリア/中心街】
    Aタワー
    あにまん市駅
    女性専用カフェ「リリィ」
    【あにまん市北エリア/山岳地帯】
    茶羽落谷(北端)
    茶羽落谷奥地(最北端)
    腐泥沼地
    虹京共同墓地
    アニマ精神病院
    ネッカーピン資料館(北端)
    【あにまん市東エリア/学生街】
    学生街
    第二あにまん市営団地
    あにまん市立高等学校
    旧アニマン音楽ホール
    【あにまん市西エリア/糧鮴】
    糧鮴(北西部)
    女鹿ヶ浦(南西部)
    アニー・アーマーン邸(南西部)
    阿仁満温泉旅館
    【あにまん市南エリア/歓楽街】
    歓楽街
    姐鎮埠頭(南東端)
    あにまんマンション
    ナイトクラブ〝Man-Man〟
    あにまん大橋
    老いた魔法少女工房
    新電波塔

  • 8◆xaazwm17IRZa25/02/07(金) 00:48:10

    魔法陣の場所

    狂愛の木蔦部屋……中心部
    アニー・アーマーン邸……南部(歓楽街周辺)
    あに高地下防空壕……学生街
    ネッカーピン資料館……山岳部
    地下研究棟(病院地下)……中心部
    掩蔽壕……中心部

  • 9◆xaazwm17IRZa25/02/07(金) 00:49:05

    マスコット

  • 10◆xaazwm17IRZa25/02/07(金) 00:51:05

    それでは8スレ目もよろしくお願い致します……!

  • 11二次元好きの匿名さん25/02/07(金) 00:51:43

    たておつ。こうしてみると壮観だぁ…

  • 12二次元好きの匿名さん25/02/07(金) 00:54:56

    建て乙ですもう1周年なんて信じられないけど最後まで見届けていきたい

  • 13二次元好きの匿名さん25/02/07(金) 00:56:32

    立て乙
    マスコット…

  • 14二次元好きの匿名さん25/02/07(金) 02:16:53

    マスコットかわいい
    そしてまほロワ1周年おめでとう!!
    作者も分からない、誰かが作ったキャラが推しになるのは初めての経験だった

  • 15二次元好きの匿名さん25/02/07(金) 07:47:57

    マ ス コ ッ ト

  • 16二次元好きの匿名さん25/02/07(金) 10:47:14

    魔法陣エリアの中だと地下研究棟の異質感すごい
    バイオでハザードなラストダンジョン感あるし、物語の核心に迫れたりするのかしら

  • 17二次元好きの匿名さん25/02/07(金) 16:08:35

    アリア(二代目)とか作ってるかもしれない

  • 18二次元好きの匿名さん25/02/07(金) 21:32:37

    魔法のアイテムでド定番が意外と無かったので投げるだけ投げます
    前スレのマジックアイテムもwikiに記載しておきますので、スレ主さんはお手隙があれば画像を掲載して頂けると嬉しいです(管理人以外は画像を載せられないようなので……)

    マジックアイテム
    【名称】
    魔銀の弾丸
    【効果】
     ナサリー・ブラウンがお守りとして持ち込み、銃火器と一緒に隠していた二発の弾丸。かつて外国の戦地で怪しい行商人から高値で押し売りされて入手したもの。
     変身できず知識もないナサリーは知る由もなかったが、『不死身の生命体の心臓に撃ち込めば不死を失わせる』効果を持つ極めて強力なマジックアイテム。
     人間の自然法則で相手の魔法則を強制的に上書きするため、どんな相手でも殺せるようになる。
     心臓に直接命中させなければ単なる銃弾に過ぎないため、防がれたり届かなかったりする上に、二発しか存在していない。
     上記の特性ゆえ『死』にまつわる怪物や魔法少女はこの弾丸を見ると本能的に訳も分からず酷く怯え、忌避する。
     ……まったくの偶然でバトロワに持ち込まれた物なので、運営からは完全に意識されていない。

  • 19二次元好きの匿名さん25/02/07(金) 23:51:55

    地下研究棟と言うかあそこは地下帝国並に滅茶苦茶広いものだと予想

  • 20◆xaazwm17IRZa25/02/08(土) 00:17:45

    ジェイルフィッシュの攻略先


    dice1d3=2 (2)


    1愛の木蔦部屋

    2アニー・アーマーン邸

    3病院地下研究棟

  • 21二次元好きの匿名さん25/02/08(土) 05:57:33

    アーマーンか

  • 22二次元好きの匿名さん25/02/08(土) 09:51:18

    なんとなく一番安牌な場所な気がする

  • 23二次元好きの匿名さん25/02/08(土) 16:56:19

    最終回まで生き残った大ボスだしアリアとグレンデルは素の状態でも四強レベルの化け物として派手に大暴れしてくれるかなー

  • 24二次元好きの匿名さん25/02/08(土) 18:18:11

    >>23

    残りのボス級運営は両者共に外付け強化パーツ貰ってるしパラサイトドール戦ばりにデカめの戦闘くるんじゃねえかとワクワクしてる

    魔法陣攻防戦がほぼ初の戦闘になる参加者もボチボチいるからね

  • 25二次元好きの匿名さん25/02/08(土) 22:54:32

    続きがたのしみ

  • 26二次元好きの匿名さん25/02/08(土) 23:14:54

    ホシュ

  • 27◆xaazwm17IRZa25/02/09(日) 03:09:19

    昨日は顔を出せず申し訳ありません……

    wikiの編集もありがとうございます……!

    短いですが、投下します

  • 28◆xaazwm17IRZa25/02/09(日) 03:10:09

     祐樹はバルバロイを睨み——その顔が強張る。

     顔やコスチュームを血で汚し、暴の空気を全身に纏わせた魔法少女。

     悪者、悪役というより不良、アウトロー、乱暴者といった表現が似合いそうな、振るわれる暴力にリアリティを感じさせる、そんな少女だった。

     じっと、バルバロイは祐樹を見下ろす。

    「な、何だよ……俺を、どうするつもりだよ……」

    「プア、仲間か?」

     片言の日本語。祐樹は頷く。

    「家族だよ!」

    「家族」

     バルバロイは膝を曲げ、祐樹と視線を合わせた。

    「プア、死んだ」

    「——え?」

     祐樹の顔が固まる。他の魔法少女も凍りついたように動けなくなった。

    「嘘だ……そんなの嘘だよ! 夏実、お前さっき、探しているって……」

  • 29二次元好きの匿名さん25/02/09(日) 03:10:34

    お疲れ様です
    待ってました!

  • 30◆xaazwm17IRZa25/02/09(日) 03:10:46

     祐樹はバルバロイから視線を逸らし、助けを求めるように夏実を、魔法少女ジェイルフィッシュを見た。ジェイルフィッシュは視線を下げ、叱られた子どものような顔で立ち尽くしていた。

    「死んだ」

     祐樹を追い詰めるかのように、バルバロイは言葉を繰り返した。

    「嘘だ……俺は、信じないぞ……そんなこと……」

     祐樹からすればバルバロイは初対面の魔法少女、それも危険な雰囲気を漂わせる人物だ。

     言動を信用する理由が無い。

     そのはずなのに、祐樹の目から涙が零れた。どうして夏実が嘘をついたのか、プアが死んでいるとしたら全ての辻褄は合うからだ。

     そこまで言語化できたわけではないが、プアが死んだという話の信憑性は限りなく高いと、祐樹は察してしまった。

     祖父母も健在な宮島祐樹は、人の死はテレビや漫画、スマホの中の世界の出来事だ。

     家族同然に暮らしていた人が、死んだのかもしれない。

  • 31◆xaazwm17IRZa25/02/09(日) 03:11:42

     その恐怖は、祐樹の心を引き裂き——。

    「だから——私たちが敵討ちする」

     祐樹は、改めてバルバロイの顔を見た。闘志に溢れた戦士の顔だった。

    「敵討ち?」

     バルバロイは頷いた。

    「プアは——誰にやられたの?」

     殺されたの? とは聞かなかった。聞けなかった。

    「敵」

     と、バルバロイは言った。

     抽象的な言葉だった。だが、祐樹は心のどこかで納得を感じていた。

     プアは自分たちを巻き込まないために一人で戦った。そして、自分たちを巻き込むことなく最期まで戦ったのだと。

    「……俺は、プアが死んだなんて信じない。プアは、絶対に帰ってくる」

     バルバロイは頷いた。

    「俺も一緒に戦う。連れて行ってよ」

  • 32◆xaazwm17IRZa25/02/09(日) 03:12:15

    「駄目。お前、弱い」

     祐樹は、言い返せなかった。プアでも勝てなかった敵に小学生が勝てるはずがない。祐樹にも、それくらいは分かる。

    「お姉ちゃんたちは、勝てるの」

     バルバロイはまた頷いた。鮮血で顔を汚しながらも、惨めさや弱さを感じさせない顔だった。

     魔法少女だと、祐樹は気づいた。今この場に居る少女たちは、プアと同じく悪と相対し、正義を為そうとしている魔法少女(ヒーロー)なのだった。

     そして、夏実が魔法少女であることを隠していたことも、理解できた。それは、プアが家を出て行ったのと同じ理由なのだろう。

     宮島祐樹は決して並外れて聡明な少年ではない。ただ、この種のヒーローの葛藤は、普段から見ているドラマで学習していた。だから、大人以上に理解できる。

     同時に、気づく。

     自分は主人公ではない。傍で見ていることもできない。

     宮島祐樹は無力だと、実感した。非日常の世界に足を踏み込む資格など最初から無かったのだと。

  • 33◆xaazwm17IRZa25/02/09(日) 03:13:12

    「…………分かった。俺は——プアが帰ってくるのを待つよ」

    「……祐樹」

     と、ジェイルフィッシュが絞り出すような声を出した。

    「終わったら、全部説明するの……」

     得意げで、こっちを小ばかにするような態度。それが祐樹の知る汐沫夏実という少女だった。

    「……うん、夏実も気をつけろよ」

     ずっと嘘をつかれていたことは、やっぱり嫌な気分になる。例えそれが祐樹のためだとしても。自分より要領がよく勉強も出来る幼馴染に、「魔法の存在を知っている」という優越感を持っていたことも事実だ。それも、ひっくり返されてしまったが。

     けれど、自分が戦えないと実感して。幼馴染がこれから戦いに行くと知ると。

     祐樹は、不安に駆られた。死んだというのは勘違いで、プアは帰ってくる。その場に夏実も居て欲しい。怪我をせず、怖い思いもせず、いつものように偉そうになのなの言って欲しい。

     ジェイルフィッシュは無理やり笑顔を作った。

    「——祐樹に心配されちゃお終いなの」

  • 34◆xaazwm17IRZa25/02/09(日) 03:13:45



     アマゾン奥地に生息するニマンア族。他の周辺部族からは「悪魔」として恐れられる彼らは、「戦いにおける勝利は最大限の名誉、敗北による死はその次に名誉な事」という生死観を掲げる、生粋の戦闘民族である。

     少女マク=ハクもまた、その価値観に殉じて生きている。先ほどの戦いで自分は本来敗北して死ぬはずだった。

     だが、森を守る戦士たちに助けられ、今も生きている。

     ニマンア族に自死という概念は無い。名誉を失った場合は次の戦いで晴らさねばならない。どれだけ相手が強大でも、逃げることは許されない。

     故に、ニマンア族に老人は居ない。病人も居ない。怪我人も居ない。体力の低下や心身の不調が、戦いから逃げる理由にはならないからだ。

     唯一子どもと、幼子を育てている母親だけが、その掟から外れる。本来、9歳のマク=ハクもまた、掟に従う必要は無い。

     だが、マク=ハクは密林を探索中に出会った謎の生き物から力を貰った。既に村の誰よりも強靭な肉体と神の如き奇跡を扱うことができる。ならば、掟に従わなければならない。

  • 35◆xaazwm17IRZa25/02/09(日) 03:13:58

    投下を終了します

  • 36二次元好きの匿名さん25/02/09(日) 07:57:26

  • 37二次元好きの匿名さん25/02/09(日) 12:13:30

    オオカワウソがいない事で起爆する時限爆弾が設置された気がするなぁ…
    まさかハートプリンセスが絶滅させるとはね

  • 38二次元好きの匿名さん25/02/09(日) 20:05:24

    雲ってるジェイルフィッシュかわいい

  • 39二次元好きの匿名さん25/02/09(日) 23:33:52

    敗北からの2度目や反省とかが無いタイプの戦闘民族かぁ…
    密猟者との戦いはマク=ハクのプロフィール見るかぎり熾烈だし情けをかけられる事自体が珍しいのね

  • 40二次元好きの匿名さん25/02/10(月) 07:09:01

    >>39

    逆では?

    一回負けても名誉挽回の為にまた戦えって話でしょ

  • 41二次元好きの匿名さん25/02/10(月) 15:01:35

    保守

  • 42二次元好きの匿名さん25/02/10(月) 16:25:39

    >>24

    ここまで引っ張ったからにはアリアとグレンデルは強化込みだとパラサイトドールぐらいの格と実力があって欲しいね

    大ボス戦は派手な方が嬉しい

  • 43二次元好きの匿名さん25/02/10(月) 19:26:36

    暫定魔法陣攻略部隊編成

    狂愛の木蔦部屋:
    アニー・アーマーン邸:ジェイルフィッシュ
    あに高地下防空壕:バルバロイ、ウェンディゴ、ハスキーロア(決定)
    ネッカーピン資料館:ノブ子
    地下研究棟(病院地下):
    掩蔽壕:アルセーヌ、ミストアイ、ネコサンダー(決定)

    あに高組は凸凹トリオ感あるね。どんな会話するのか想像つかない

  • 44二次元好きの匿名さん25/02/10(月) 23:20:01

    ホシュ

  • 45二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 00:59:31

    期待

  • 46二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 08:40:09

    嵐の前の静けさって感じでここから連戦続きになるんだろうなぁ…

  • 47二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 15:11:24

    地下研究棟って字面が一番攻略が難しそうに見える

  • 48二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 18:53:58

    グレンデルがマンションの力で覚醒したら十二の栄光的なノリでマンションのギミックを自由に顕現させて操れるようにならないかな。投げられたやつリサイクルする感じで
    創造位階か限定胎界化みたいな感じでマンション再現してくれてもいいぞ

  • 49◆xaazwm17IRZa25/02/11(火) 20:54:27

    ナイトメア★メリィは攻略戦に参加する?


    dice1d2=2 (2)


    1遺言医院で全体に指示を出すのだ☆

    2戦力は一人でも多い方がいいのだ★

  • 50二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 20:57:04

    真マミちゃんが使ってたブラックブレイドの魔法切りは覚醒しなくてもデフォルトで使えるけど、覚醒しないとただの飛ぶ斬撃でしかないから軌道ごと避けられたらそれでお終いなのよね
    ハスキーロアがド素人なのもあって上位陣には何万発撃っても当たらないかも……記憶とか経験とか受け継げません?

  • 51二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 21:02:59

    むしろ足手まといになるのでは?

  • 52二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 21:39:24

    戦力面で役に立たないのはメリィくん本人も認める所だからな
    だからこそ全くの無策なんて事はないはずだが

  • 53◆xaazwm17IRZa25/02/11(火) 21:45:15

    メリィの判断は吉と出るか凶と出るか……


    ナイトメア★メリィの攻略先


    dice1d3=1 (1)


    1愛の木蔦部屋

    2アニー・アーマーン邸

    3病院地下研究棟

  • 54二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 21:51:35

    どこに行くか決定してない残りの魔法少女は誰が残ってるのかな?

  • 55二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 21:54:17

    木蔦部屋…ネット通ってない古城みたいなんスけど いいんスかこれで…

  • 56二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 21:55:52

    地下研究棟なら電子機器干渉でまだなんかやれたかもしれないけどなぁ

  • 57◆xaazwm17IRZa25/02/11(火) 22:00:53

    ……………………。

  • 58二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 22:05:18

    スレ主も困ってて草
    草じゃないが

  • 59◆xaazwm17IRZa25/02/11(火) 22:09:11

    ど、どうして狂愛の木蔦部屋にしたの……? 本当になぜ……?


    dice1d3=3 (3)


    1僕はこの部屋を『識っている』のだ★

    2他の選択肢を選べない事情があるのだ★

    3安価&ダイスで決めるのだ★

  • 60◆xaazwm17IRZa25/02/11(火) 22:14:00

    というわけで、先着3つの意見からダイスで1つを決めます……!

    既に挙がった「この場所行ったことあるから」や「消去法」を挙げてもらっても大丈夫です

    世界観やキャラ設定を大きく逸脱してると判断したものは弾くので、ご了承ください……

  • 61二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 22:17:17

    他の二つの場所が(特に自分の魔法を活かせそうな研究棟が)危険すぎるから消去法なのだ⭐︎

  • 62二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 22:19:46

    狂愛の木蔦部屋に呼ばれている気がしたからなのだ⭐︎(無意識のうちに誘導されているのだ★)

  • 63二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 22:22:21

    なんかこっちの方が魔法を活かせる気がしたのだ⭐︎

  • 64◆xaazwm17IRZa25/02/11(火) 22:22:26

    安価を募集しつつ、バーストハートのダイス振りを……


    バーストハートの攻略先


    dice1d3=2 (2)


    1愛の木蔦部屋

    2アニー・アーマーン邸

    3病院地下研究棟

  • 65二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 22:23:47

    複数ある運営(というよりアリア)の拠点の一つなのだ★
    城の内部はアリアが持ち込んだ監視カメラやらラップトップやらで高度に電子化されていて干渉できれば情報を盗めたり戦闘を優位に運べるのだ★
    研究棟の方を優先したかったけどガードが硬すぎて下手を打てば攻殻機動隊よろしく脳を焼かれるのだ★

  • 66◆xaazwm17IRZa25/02/11(火) 22:26:05

    そして安価を締め切ります……! 皆様ご協力ありがとうございます……!


    面白そうな意見が多くて心苦しいですが、果たしてメリィの真意は……


    dice1d3=3 (3)

    1>>61

    2>>62

    3>>63

  • 67二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 22:26:18

    もしかしてこのまんまだとメリィくん一人でノコノコ木蔦部屋に行くんですかい?

  • 68二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 22:28:09

    なんとなく……?

  • 69二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 22:28:20

    うーむ…これは…間抜けが過ぎないか?
    実は接近戦も行けた設定が後から生えてくるとか?

  • 70◆xaazwm17IRZa25/02/11(火) 22:36:33

    どうやらメリィは狂愛の木蔦部屋がもっとも自分の魔法を活かせると考えている様子……これは一体……?


    dice1d3=3 (3)

    1実はこの場所は>>65のように高度に電子化されているのだ★

    2この場所だからこそ発動できる奥の手があるのだ★

    3安価&ダイスで決めるのだ★

  • 71二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 22:37:01

    もしかして残りで手隙なのクィーンとスピードランサーだけ…?
    ああああはメンバーに入ってる?

  • 72二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 22:38:55

    スピードランサーちゃんいっつもほぼ単騎で戦ってるような気がするのでそろそろ仲間と一緒に戦わせてあげて欲しい…かも
    精神力が限界に近づいてそうだし

  • 73◆xaazwm17IRZa25/02/11(火) 22:40:34

    というわけで、再び先着3つの意見からダイスで決めます……!

    【メリィは狂愛の木蔦部屋がもっとも自分の魔法を活かせると考えている。それは何故?】

    既に挙がった意見や、新設定や新解釈を加えた意見でも大丈夫です……!

  • 74二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 22:42:24

    なんか結構防衛設備配備されてるっぽいのだ⭐︎あとなんかバグってるぽいのだ⭐︎今なら逆利用出来る筈なのだ⭐︎

  • 75二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 22:43:07

    メリィ専用強化フォームに変身出来る試作型マジックアイテムが置いてあるのだ★ 試作型なので「戦闘についていけるようになる」ぐらいには強くなれるのだ★
    部長の仕込みなのだ★

  • 76二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 22:45:43

    マギカロボ的な強化パッチが生えてくるのだ⭐︎

  • 77◆xaazwm17IRZa25/02/11(火) 22:46:31

    >>67

    さすがにメリィ単騎突撃は無謀すぎるので同行者が二人ほど付く予定です



    >>71

    >>72

    「ああああ」はメンバーに入ってます、クレアボヤンスはメリィと同じくダイス次第です

    戦力が乏しくなった場所は①後回し②攻略難易度が低いと調査済み、のどっちかに決めます

  • 78◆xaazwm17IRZa25/02/11(火) 22:48:47

    皆様アイデアありがとうございます~!


    【メリィは狂愛の木蔦部屋がもっとも自分の魔法を活かせると考えている。それは何故?】


    dice1d3=2 (2)

    1>>74

    2>>75

    3>>76

  • 79二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 22:51:42

    強化フォームか…
    VRゴーグルが戦闘用のバイザーに変化しそう

  • 80◆xaazwm17IRZa25/02/11(火) 22:51:45

    どうやらアルセーヌの暗躍により、狂愛の木蔦部屋にはメリィ専用強化フォームに変身出来る試作型マジックアイテムが置いてあるようです……!

  • 81二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 22:53:21

    アルセーヌが用意したとなると、なんとなくアイテム自体に何か仕込まれてそうで信用できないゾ…

  • 82二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 22:55:27

    ゴスロリが動きやすいドレスに変わるのか、それともサイバーチックにボディスーツタイプか

  • 83◆xaazwm17IRZa25/02/11(火) 22:59:18

    どんな専用強化フォームなのかはその時に安価&ダイスで決めたいと思います……!

    まだ待ち受けるボスさえ不明なので……

  • 84二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 23:00:02

    でも(代償が)お高いんでしょう?

  • 85二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 23:01:30

    部長ったら仲間想い!
    でも「戦闘についていけるようになる」くらいなんだよね…

  • 86二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 23:13:19

    飴を見せて誘導してる感もあるけど、どうなるかな

  • 87◆xaazwm17IRZa25/02/11(火) 23:25:06

    とりあえず、昨日今日で書けた範囲を投下します……!

  • 88◆xaazwm17IRZa25/02/11(火) 23:26:19

     森を守る二人の戦士(ジェイルフィッシュとクィーン)と別れた後、マク=ハクは一つの気配を感じ取っていた。

     文明人が家の中に害虫が居ることに感づくときのような、嫌な気配。

     マク=ハクは、気配の元へと走った。戦いの予感があった。ならばニマンア族の戦士として、逃げるわけにはいかない。

     音も無く森を駆け抜けた末に、マク=ハクは自然に人の手が加わった、奇妙な場所に辿り着いた。

     文明人なら「庭園」と形容しただろう。だが、マク=ハクにその語彙は無い。

    (祭壇か?)

     と、マク=ハクは結論を出す。

     庭園の中央に、木造の古びた建物。褪せた桃色をしており、入口には「Zweidimensional-Liebhaber Anonymer」と刻まれている。壁を彩るのは西洋竜をイメージしたアートであり、社会見学に訪れる小学生に大人気だとか。

     明治時代、ドイツから来日したお雇い外国人、リニンカ・ネッカーピン。海辺の寒村に過ぎなかったあにまん村を県内有数の都市にした郷土を代表する偉人である。

     が、明治もドイツも知ったことではないマク=ハクは建物を一瞥すると、そのままずんずんと進んだ。

  • 89◆xaazwm17IRZa25/02/11(火) 23:26:42

     本来ならエントランスにはスタッフが控えており、訪問者を歓迎するのだが、マク=ハクを出迎える人間は居なかった。

     偉人・ネッカーピンの功績を示す展示物の数々。彼が愛用した私物。

     ガラスケースに収まったそれらは、歴史好きを楽しませるものだ。が、やはりマク=ハクは興味を示さなかった。

     邪悪な気配は強くなっている。

     生唾を呑み込んだり、笑みを浮かべたり、拳を握ったり……そういった予備動作を、ニマンア族は必要としない。

     通路を進む。展示物の中でも大きなもの、ネッカーピンが愛用した自動車であったり、等身大ネッカーピンパネルであったり、ネッカーピンが描いた絵画であったり。その中に、奇妙なオブジェが立っていた。

     鋼鉄の騎士。一見、そんな印象を受ける。だが、その体は無数の金属が積み重なって出来ており、小型の化物が集合し無理やり人型を形成したような、そんな歪な印象を見た者に与える。 

  • 90二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 23:27:17

    このレスは削除されています

  • 91◆xaazwm17IRZa25/02/11(火) 23:29:02

     更には体のあちこちから砲塔のようなものが伸びており、不気味さにますます拍車がかかっていた。

     マク=ハクは鋼鉄の騎士を見上げた。

     ニマンア族に騎士の概念は無い。この騎士は、彼女の常識の埒外に位置する者だ。
     その上で、マク=ハクはオブジェに語り掛けた。

    「ボバギボバ?(来ないのか?)」

     ——その声が響くと同時に、鋼鉄の騎士はマク=ハクにタックルしていた。

     鋼鉄の騎士。その正体はエネミー、『スティールソウル』。Aタワーでスピードランサー、パペッタン、アレヰ・スタアが相手取った低級エネミー、その上位種である。

     鈍重な動きを見せていたスラグソウルと違い、スティールソウルの突進速度は自動車に匹敵する。スラグソウルより遥かに重いその躯体でその挙動を行えば、巻き込まれた魔法少女は挽肉へと変化する。

     マク=ハクは、変身すらしていなかった。

     必要なかったからだ。

     突進したスティールソウルは——停止している。

  • 92◆xaazwm17IRZa25/02/11(火) 23:29:59

     その躯体に突き刺さるのは、大樹の幹である。先端が絡み束ねられ、鋭利に尖っている。

     マク=ハクは一瞬で魔法少女ノーブル・サヴェージへと変身していた。巨大葉を外套のように纏い、全身に赤い入れ墨が浮かび上がっている。

     ニマンア族において弱者は子を成す前に死亡する。強者だけが遺伝子を残す。故に、ニマンア族の戦闘遺伝子は代を重ねるごとに濃くなっていく。ジャングルの奥地で、人類種の品種改良が行われていたのだ。

     その潮流に身を置くノーブル・サヴェージにも、当然戦闘民族の形質を強く受け継いでいる。魔法少女になって一年未満の新人でありながら、熟練技術の一つ、瞬間変身を使える。ジャック・ザ・リッパーが突然変異の天才であるならば、ノーブル・サヴェージは養殖の天才だった。

     スティールソウルは動きを封じられている。胴体を串刺しにされながらも、ブリキの玩具の如く手足をぎこちなく動かす。

     キキキキ……と駆動音が鳴った。ノーブル・サヴェージは訝し気に敵を睨み。

     ——スティールソウルの無数の砲塔が、一斉に火を噴いた。

     全方位にばら撒かれた魔弾は展示物を砕き、壁に穴を開け、床を削り取る。

     ネッカーピン資料館と貴重な展示物は、いずれ来る未来を先取りしたかのように、瓦礫の集積へと姿を変えたのだった。

  • 93◆xaazwm17IRZa25/02/11(火) 23:30:47



     天城千郷は静かに体を休めていた。

     ハスキーロアを庇い、デッドマンズ・ハンドに壁に叩きつけられた。変身時ならともかく、生身の状態で受けたため、ダメージは深刻なものだった。

     人間がクマに吹き飛ばされたようなものだ。

     バーストハートに回復促進剤を分けてもらい試しに1錠飲んだが激痛にのたうちまわり、それ以上飲むことは出来なかった。

     鷲掴みにしてぼりぼり貪り、眉一つ動かさないスピードランサーは化け物かよとも思った。

     そういうわけで、天城千郷は絶賛戦力外だった。変身する魔力も残っていないし、たとえ変身できたとしても深夜に貯めた魔力を全て発散、午前に僅かに溜まっていた魔力もアグネアの魔力と同時に発散してしまったので、攻撃手段が残っていない。

     そして変身できない魔法少女、人間天城千郷はただの中学生だ。

  • 94◆xaazwm17IRZa25/02/11(火) 23:31:58

     もはやお留守番くらいしかすることがない。魔法少女たちが魔法陣を破壊し、ゲームを終わらせるのをじっと待っているだけでいい。

     そしてゲームが終われば千郷は再び魔法少女となり、世界の破壊を目指すのだ。

    (本当に……?)

     自分の命がいよいよ脅かされたときに、千郷は死にたくない、消えたくないと思った。世界を破壊すれば当然千郷も死ぬ。今まではそれを受け入れていたのに。

     抜刀金、ティターニア、ハスキーロア。自分を助けるために多くの魔法少女が戦った。彼女たちは当然、世界を破壊してもらいたくて千郷を助けたわけではない。

     即ち、世界を破壊すれば彼女たちを裏切ることにもなる。

    (本当に、それでいいの……?)

     そこまで考え、千郷はふと、思った。

     世界を破壊するために魔法少女になった。

     その夢を捨てるというのなら。

     ——もう天城千郷は魔法少女に変身できないのではないか?

    (……全部終わったら、みんなに相談してみよっと)

     魔法少女部は誰一人欠けていない。死んだと思っていた部長も生きていたと分かった。

     だから、きっと大丈夫だろう。根拠なく、千郷はそう思い込んだ。

  • 95◆xaazwm17IRZa25/02/11(火) 23:32:29



     ハスキーロアは遺言医院の片隅で蹲っていた。

     後悔だけが、彼女の中でぐるぐると渦巻いている。

     スピードランサーがナチス兵士たちを足止めしている間に、ハスキーロアはビルの中の魔法少女を助ける。

     スピードランサーは隠れていろと言った。ハスキーロアには、ヴェンデッタにさえ通用する、強力な魔法がある。その事実を知った上で、修羅場に立つことを認めなかった。

     ハスキーロアはその忠告に従わなかった。少しでも誰かの役に立つために、ビルの中に突っ込んだ。

  • 96◆xaazwm17IRZa25/02/11(火) 23:33:05

     襲いかかる炎から少女を救えたときは、自分もようやく誰かの役に立てたのだと、ジャックへの怒りど同時に、どこか安堵さえ覚えていた。

     だが、戦闘ではジャックに翻弄され、結局ティターニアを死なせる破目になった。

     そしてティターニアを死なせたせいで、デッドマンズ・ハンドは激昂し、スピードランサーは彼女を殺した。二人の間に何らかの繋がりが、それもかなり深い縁があったと部外者のハスキーロアでも分かった。

     自分のせいだ。

     誰かの役に立つどころか、周囲を不幸にしかしていない。

     思えば、自分のせいで、ナサリーブラウンも、ブラックブレイドも死んだ。サンファングも死んでしまった。

     知り合いだったスカイウィッチも死んでいる。

     まるで死神だ。

     ふと、マジックアイテムを思い出した。

     スピードランサーが言うには、ハスキーロアの病室に置かれていた箱だという。

     スピードランサーも「万能解除キー」というアイテムが第一回放送終了時に転送されており、ハスキーロアの部屋にあったものも同じようなものだと考えていた。
     

  • 97◆xaazwm17IRZa25/02/11(火) 23:33:45

     ハスキーロアのマジックアイテムは「パンドラの箱」。所有者の願いを叶える、と一緒に置かれた紙には書かれていた。

     開けるな、とスピードランサーに指示され、ハスキーロアはその指示に従っている。

     パンドラの箱、の逸話は知っている。開けることで、世界中に絶望が振りまかれるかもしれないのだ。何しろこれを送りつけてきたのは、デスゲームを開催した魔法王なのだから。

     ……その判断は正しかったのだろうか。

     分からない。ハスキーロアの姉は、きっとこういうときに迷わなかった。

     迷いの末に、ハスキーロアは高校を選んだ。ゲームが始まった場所。ナサリーブラウンとブラックブレイドが命を落とした場所。

     彼女にとっての、始まりの場所。

  • 98◆xaazwm17IRZa25/02/11(火) 23:34:41



     ナイトメア★メリィはレッドブルを流し込んだ。

    (か、過労死するのだ……★)

     隣ではクレアボヤンスも唸っている。千里眼+ネットワーク掌握により、対運営チームの結成及び魔法陣の場所割り出しを、短時間で行うことが出来た。

     実のところ、魔力にはまだ余裕がある。どちらかというとキャパオーバーしそうなのは頭脳の方だ。

     ナイトメア★メリィはインフルエンサ―兼魔法少女だが、天才児とか頭脳明晰とか名探偵とかそういう設定は無い。学力は平均以上だがトップ層には位置していないし、そもそもまだ中学生だ。

     それでも、後数時間で解決しなければ、呪いを解除しなければ死ぬのだ。

     「勉強なんかしなくていいのだ☆ 好きなことで生きていくのだ☆」なんて舐めたことを言う余裕も無い。頑張らなければ死ぬ。

     それでも、事態は上手く回り始めた。グループラインにそれぞれのメンバーが行く魔法陣の場所を送信している。

    「メリィはどうするんだお?」

     隣のクレアボヤンスに声をかけられる。

    「どうするって何を?」

  • 99◆xaazwm17IRZa25/02/11(火) 23:35:47

    「メリィは行くのかお?」

    「僕は……」

     並の人間よりは強い。だが、魔法少女の中では最弱。前線に立ったところで足手纏いでしかない。

    (ここは行かないのが合理的だよなぁ……)

     ここで結果を待つ方が絶対に良い。

     遺言医院に待機して、オペレーターに専念する。

     それが、本来なら正しい選択のはず。

     だが。

     スマホに目を落とす。グループラインではなく、個人ラインだ。

    『狂愛の木蔦部屋には君専用の強化アイテムが置いてある。私からのプレゼント☆』

     部長からのメッセージ。

    (信用できねぇ~)

     死んだと思ったら生きてたり、明らかに運営目線で語りだしたりと、客観的に部長・アルセーヌの信用は零だ。

  • 100◆xaazwm17IRZa25/02/11(火) 23:36:13

     が、彼女の言葉を思い出したからこそ、始まりの魔法少女を呼びだし、ブレイズドラゴンを倒せた、という結果もある。

     それに、仮にアルセーヌが運営側の一人だったとしても――魔法少女部のメンバーは、誰も死んでいないのだ。奇跡的なことに。

    「僕は、狂愛の木蔦部屋を担当するのだ、ここが一番僕の魔法を活かせる気がするのだ、へけっ!」

    「えぇ……命を粗末にするのは良くないお……」

     クレアボヤンスはドン引きしていたが、メリィは気にしなかった。

  • 101◆xaazwm17IRZa25/02/11(火) 23:37:40

    投下を終了します……!

    ノブ子VSスティールソウルの続きは魔法陣攻略戦が始まってからにします

  • 102二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 23:39:34

    お疲れ様です

  • 103二次元好きの匿名さん25/02/11(火) 23:52:11

    >>(信用できねぇ~)

    それはそう まったくもってそう

  • 104二次元好きの匿名さん25/02/12(水) 07:29:03

    スティールソウルは単騎で防衛させるには心許ないしアリアが手を加えてたりする?

  • 105二次元好きの匿名さん25/02/12(水) 07:48:27

    あくまで回復を促進させるだけだから死ぬほど痛そう…後から超回復が待っているとはいえ

  • 106二次元好きの匿名さん25/02/12(水) 09:17:12

    Zweidimensional(二次元)-Liebhaber(好きの)Anonymer(匿名さん)か 草


    >>104

    ネッカーピンがドイツ人だと判明した以上あの愛国モンスターが一枚噛んでてもおかしくはない

  • 107二次元好きの匿名さん25/02/12(水) 15:29:39

    >>106

    だがネッカーピンがアーリア人とは限らないぞ

  • 108◆xaazwm17IRZa25/02/12(水) 23:06:23

    >>104

    グレンデル「げっげっげ、スティールソウル単騎で大丈夫か?」


    アリア

    dice1d4=3 (3)

    1「猿相手にはこれで十分だ!」

    2「ただのスティールソウルじゃないぞ……」

    3「誰が一体だけと言ったかね?」

    4安価&ダイス

  • 109二次元好きの匿名さん25/02/12(水) 23:07:54

    数で押すのね

  • 110二次元好きの匿名さん25/02/12(水) 23:11:56

    新手が居る?

  • 111二次元好きの匿名さん25/02/12(水) 23:13:31

    囲んで棒で叩く作戦!

  • 112二次元好きの匿名さん25/02/12(水) 23:15:40

    新エネミーか魔法少女追加?

  • 113◆xaazwm17IRZa25/02/12(水) 23:20:12

    dice1d2=2 (2)

    1スティールソウルは複数居るのだ……

    2ボスはスティールソウルだけではないのだ……

  • 114◆xaazwm17IRZa25/02/12(水) 23:23:38

    グレンデル「げっげっげ、そいつは一体誰なんだ?」


    アリア

    dice1d4=4 (4)

    1ドミナートルだっ!

    2エネミーだっ!

    3運営魔法少女だっ!

    4安価&ダイスだっ!

  • 115◆xaazwm17IRZa25/02/12(水) 23:27:09

    というわけで先着3つの意見からダイスで決めます……!

    ※ノブ子単独撃破は決定してるのでいい塩梅のキャラ/エネミーだと助かります

    ※既存のエネミー、運営陣でもOK。新規キャラでもOK

    ※ジャック、ハイエンド、ハニーハント、グレンデル、アリア、勇者は無しでお願いします

  • 116二次元好きの匿名さん25/02/12(水) 23:28:24

    スティールソウルの強化合体パーツ

  • 117二次元好きの匿名さん25/02/12(水) 23:28:35

    吾輩が手ずから制作したボスエネミー、メンシュ・パンツァーの上位種「ドッペルホルン・パンツァー」!
    ドッペルホルン(二本角)の名の如く二本の砲塔で大火力を連続投射してくる上に、四足歩行するので不整地での機動力が格段に向上している強敵!

  • 118二次元好きの匿名さん25/02/12(水) 23:29:23

    新キャラ
    元ゲシュタポの頭脳派魔法少女
    使用魔法は死者蘇生でドミナートルを操る

  • 119◆xaazwm17IRZa25/02/12(水) 23:32:35

    ありがとうございます……!

    絶妙なバランスですね……!

    dice1d3=2 (2)

    1>>116

    2>>117

    3>>118

  • 120◆xaazwm17IRZa25/02/12(水) 23:34:48

    資料館(跡地)ではメンシュ・パンツァーの上位種「ドッペルホルン・パンツァー」がスティールソウルとタッグを組んでノブ子に襲いかかります……!

  • 121二次元好きの匿名さん25/02/12(水) 23:35:58

    ふうんこういうことか

  • 122二次元好きの匿名さん25/02/12(水) 23:36:52

    61式戦車(ガンダム)…?

  • 123◆xaazwm17IRZa25/02/13(木) 01:51:28

    クレアボヤンスは魔法陣戦に参加する?


    dice1d2=1 (1)


    1絶対行かないお!

    2……行くお。

  • 124まあそうなるわな25/02/13(木) 02:31:34

    ①ここで自分まで出たらいよいよバックアップ要員が居なくなる
    ②『気がする』という曖昧な動機で動くメリィは傍から見て明らかにおかしい
    ③協力して役割分担が出来るようになった今、非戦闘員が前線に出向くのは単純にハイリスクローリターン

    クレアボヤンス、お前は正しい

  • 125◆xaazwm17IRZa25/02/13(木) 03:24:11

    投下します

  • 126◆xaazwm17IRZa25/02/13(木) 03:24:55



     声を失ったバーストハートは、静かに瞑想をしていた。

     脳裏に浮かぶのは、とある情景。

    『ヨシネ……お前には使命がある』

    『桐生とは【忌竜】を意味する。我らが始祖は天涯導師さまに導かれ、一つの武術をを創り出した……』

    『我々は名と共に、その武術を継承してきた。桐生孤炉巣、桐生無様、桐生募募班、桐生爪哇茶、桐生一発折、桐生猿……』

    『そして桐生ヨシネ。お前こそ桐生一族のハイエンド。忌竜を継ぐ者なのだ』

     先祖からの悲願、世界を救う使命。そのための虐待じみた訓練。

     ヨシネは辟易し、家を出た。自由の身になった。

     竜が実在し、人々に害を為すのなら退治してやる。そのために拳を握るのもやぶさかではない。

     だが、違ったのだ。

  • 127◆xaazwm17IRZa25/02/13(木) 03:25:54

     ヨシネは、器に過ぎないのだという。重要なのは心臓。何より心臓が大事で、ヨシネの人格も、人生も、武術の腕も重要ではないのだ。

     それが、たまらなく嫌だった。

     そして、ヨシネは製造目的を果たした。心臓を呼び水に始まりの魔法少女を顕現させた。ブレイズドラゴンという怪物を倒し、ネコサンダーという魔法少女を蘇生させた。

     バーストハートとしてはその結果に満足している。もちろん一武道家として、ブレイズドラゴンに自らの力で打ち勝ちたかった、というのはあるが。今の自分では無理だ、と納得も出来てしまう。

     だが、ブレイズドラゴンが一族の宿敵である「竜」だったのかは疑問が残る。何でも、自分が意識を失っている間に学生街でクソでかドラゴンが暴れていたらしいが、それこそが「竜」だったのかもしれない。

     とにかく、今のヨシネは自由だった。

     声を失ったが、自由は失われていない。

    (莉鈴……)

     幼馴染の名を、呼ぶ。メリィの情報収集とクレアボヤンスの報告で「危険人物」と推定され、対運営チームに所属していない彼女。

     ヨシネの意識は無かったとはいえ、莉鈴の師匠は、自分が殺した。

    (私は……)

     二人の拳士。その邂逅の時は近づいていた。

  • 128◆xaazwm17IRZa25/02/13(木) 03:26:30



    (何となくこっち側に着いたけど、本当にこれでいいんだお……?)

     元々、クレアボヤンスはゲームに乗っていた。千里眼を使って情報を操作、同士討ちを誘発させ、優勝を狙う。そういう作戦だった。

     だが、安全策のために夜間は単独行動、夜が明けて他の魔法少女と合流しようとしたところでハイエンドに拷問され、その後は薬でおかしくなっていた。

     午後になってからはメッセンジャ―・ブルーと合流したのもつかの間、ナイナイホテプと再会、そしてハニーハントの襲撃。

     逃げ出したところをメリィたちに拾われ、今ここに居る。

    (クレアボヤンスはただ死にたくないだけだお……)

     良心の呵責なくゲームに乗れる程度には人でなしの自覚もある。

  • 129◆xaazwm17IRZa25/02/13(木) 03:26:43

    投下を終了します

  • 130二次元好きの匿名さん25/02/13(木) 06:59:54

    テンガイの悔恨には同情するよね 同情はね
    しゃあけど…よそ様の一家を子々孫々まで巻き込んでいい理由にはならんわ!

  • 131二次元好きの匿名さん25/02/13(木) 07:52:12

    意外とクレバーな感じだったのね…

  • 132二次元好きの匿名さん25/02/13(木) 08:32:28

    人の名前じゃないの多すぎてマジで使えるものは何でも使うテンガイの武器(アプローチ)の一つでしかないのが透けて見える一族やね
    これ多分二次災害というか竜と同じかそれ以上に方々の人生狂わせてるな…絶対桐生一族以外に『導いた』とこあるでしょ

  • 133二次元好きの匿名さん25/02/13(木) 12:09:23

    改めてたかだか百年ちょっとで到達したアリアの天才っぷりがヤバいね。バトロワの魔力制限を無視できる魔力リアクター作ってるのも先見の明ある…ハーゲンはプロトタイプのようだし

    おとぼけヘイトスピーチ愛国ナチスごっこを辞めたあとどうなるのか、底が見えぬ

  • 134二次元好きの匿名さん25/02/13(木) 20:08:17

    葉月ちゃんも金ちゃんも死んじゃった
    莉鈴ちゃんとヨシネちゃんと葉月ちゃんで仲良くおかず交換してたのに

  • 135二次元好きの匿名さん25/02/13(木) 20:55:32

    才能はそこまでだけど人生の総プレイ時間の経験値と手札で殴るタイプのテンガイ、手札をボロボロにされた上で才能に勝る魔法少女と戦って敗北したと考えると結末としてわりと順当だったんだな…

  • 136二次元好きの匿名さん25/02/13(木) 23:32:22

    テンガイの事だからこれ以外もストック用意してたんだろうなぁ…
    けどまぁブラックブレイド戦から調子が狂い始めたんだけど。それでもあそこまで軌道修正したのは凄いよ

  • 137二次元好きの匿名さん25/02/14(金) 00:28:37

    >>133

    個人的にアリアにはこのまま策謀家ポジで参加者も運営もアルセーヌも全員を利用し、騙し切った上で真の『勇者』…魔法少女の力に負けてくれたら嬉しいかも

    謀略は全て通し切ったのに真正面から負ける方がより無様なので

  • 138二次元好きの匿名さん25/02/14(金) 07:34:38

    ほしゅ

  • 139二次元好きの匿名さん25/02/14(金) 15:51:56

    保守

  • 140二次元好きの匿名さん25/02/14(金) 22:58:07

    保守

  • 141◆xaazwm17IRZa25/02/15(土) 00:16:26

    申し訳ない、本日も投下できないです……!

  • 142二次元好きの匿名さん25/02/15(土) 07:04:51

    そういやクレアボヤンスってゲーム乗ってる勢だったね

  • 143二次元好きの匿名さん25/02/15(土) 13:26:14

    自分の天敵かつゲームに乗らない側であろう二人を初手で殺す配置にしたパラさんの策が今になって効いてきた感じがある
    この展開になってたらスカイウィッチがフライフィアー掴んで飛んで爆撃かませば一箇所ぐらいはそれで魔法陣破壊できそうだし
    そうでなくとも支援爆撃の後で対運営チームが突撃出来るからだいぶ楽

  • 144二次元好きの匿名さん25/02/15(土) 20:04:15

    暫定魔法陣攻略部隊編成

    狂愛の木蔦部屋:メリィ

    アニー・アーマーン邸:ジェイルフィッシュ、バーストハート

    あに高地下防空壕:バルバロイ、ウェンディゴ、ハスキーロア(決定)

    ネッカーピン資料館:ノブ子(決定)

    地下研究棟(病院地下):

    掩蔽壕:アルセーヌ、ミストアイ、ネコサンダー(決定)

    お留守番:クレアボヤンス、ジャスティスファイア、千郷

  • 145二次元好きの匿名さん25/02/15(土) 20:18:56

    木蔦部屋に二人送り込んだらあともう余り一人だけ?
    残ってるのクィーン、スピードランサー、ああああだけだろうし

  • 146二次元好きの匿名さん25/02/15(土) 20:51:24

    やはり地下研究棟はラストダンジョン?

  • 147二次元好きの匿名さん25/02/15(土) 23:24:16

    >>146

    一番負担が掛かりそうな場所な気はするな…

  • 148二次元好きの匿名さん25/02/16(日) 00:42:21

    とりあえずメリィに付き添ううちの片方はスピードランサーであってくれという祈り
    いくら護衛が苦手とはいえ心身共に弱りきってる状態で一人にするのは絶対にまずい

  • 149◆xaazwm17IRZa25/02/16(日) 01:05:23

    投下します……!

  • 150◆xaazwm17IRZa25/02/16(日) 01:05:56

     だが、実際に魔法少女を殺せるのかと問われれば、クレアボヤンスは答えることが出来ない。殺人鬼でもなければ殺し屋でなく、傭兵でもなければ魔王や全知全能でもない。千里眼を持つこと以外は、クレアボヤンスはただの人に過ぎないのだ。

    (クレアボヤンスは……死にたくないお)

     タナトフォビア……死恐怖症だったナイナイホテプは、クレアボヤンスを逃がすためにハニーハントに挑んだ。きっと死んでしまったのだろう。ナイナイホテプの遺志を無駄にしないためにも、クレアボヤンスは死んではならない。無意味な死を遂げることは許されない。

    (魔法陣攻略には……参加しないお。もし、この作戦が失敗したなら)

     メリィに見られよう注意しながら、強化薬アンプルをそっと撫でる。

    (そのときは……やるしかないお)

     未だ見通しは立たない。盤面がどちらに転がっても生き残れるように、クレアボヤンスは必死に頭を働かせていた。

  • 151◆xaazwm17IRZa25/02/16(日) 01:06:31



     人間の記憶とは、複雑怪奇なものだ。雑多に蓄積し、未整理で混ざり合い、都合よく改変される。魔法少女であっても例外ではない。

     ハニーハントは、学生街を歩いている。彷徨っている、と表現も出来る。

     何処に向かうかも固めておらず、現在地すら曖昧だ。

     クレアボヤンスを追う、という目的もとっくに失われている。

     ホッケーマスクを被った『大柄な』女が往来を練り歩くというのは、悪夢じみた光景だ。それでも警官が駆け付けないのは様々な事件によって警察機構が機能不全を起こしているからだろう。

     だが、外見以上にハニーハントの脳内は悪夢じみていた。

     思考が、定まらない。

     ブレイズドラゴンと戦っていた時までは、まるで問題なかった。それが今は、熱病に侵されたかのように、物を考えることが出来ず、思考が支離滅裂に乱れ飛ぶ。

    「クィーン」

     と、ハニーハントは魔法少女の名を口に出した。それだけが、今の彼女を繋ぎtめている楔だった。

    『何の用だ』

     と、金髪の偉丈夫がハニーハントに問いかける。

     いや、違う。これは記憶だ。今の時系列ではない。

  • 152◆xaazwm17IRZa25/02/16(日) 01:07:07

     金髪の男の隣には、白衣を着た金髪の少女。興味深そうにこっちを見ている。二人は、親子だろうか。親子ではないと、ハニーハントは知っている。二人の事は知らないのに。

    『用が無いのに来ちゃ駄目かい?』

     と、ハニーハントは言った。言った? これは誰の言葉だ?

    『我を取り込みに来たか、アザトース』

     金髪の男が唸り声を上げる。遠雷のような、獣のような声だ。怖い、とハニーハントは思った。記憶の中のハニーハントは愉快そうに笑った。

    『まさか。そんなつまらないことはしないさ。ただねぇ、ここ最近、ある疑問が頭から離れなくてね』

    『貴様はいつもそうだろう。無為に思索する愚者め』

    『思索こそが私の活動理由だからね。復讐こそが君の活動理由であるように』

     ハニーハントの活動理由は、徹頭徹尾女王のためだ。思索も復讐も、そんな感情は余分だ。

    『なぁ、パラサイトドール。君は、【冒涜の竜】だったころを覚えているか?』

    『知らんな。さして興味も無い』

  • 153◆xaazwm17IRZa25/02/16(日) 01:07:53

    『君はそうだろね』

     アザトースと呼ばれたハニーハントは可笑しそうに頷いた。

    『私はね、生まれた瞬間からずっと知りたかったんだ。私たちは何者なのかを。冒涜の竜には七つの首があり、七つの感情があったが、意識は一つだった。元々私たちは何だったのか、それを知りたい』

    『くだらん。重要なのは、かつて我らを滅ぼしたのが魔法少女だということ。ならば復讐するのみ。どれだけ時間がかかっても、魔法少女をこの世から根絶する』

    『へぇ。でも、それも魔法少女だろ?』

     そう言って、ハニーハントは金髪の男の隣に座る、白衣の少女を指差す。

    『これも、いずれ滅ぼす。が、今は我にとって有用なため、生かしているに過ぎない』

    『ふーん、ホムンクルスなんて大して珍しくも無いけれど。いや、今の時代ならそうでもないかな。まぁ、私としては君の行く末も興味の対象だからね。頑張ってね、応援してるよ』

     不愉快そうに金髪の男は鼻を鳴らした。

     記憶が途切れる。

  • 154◆xaazwm17IRZa25/02/16(日) 01:08:19

     此処は、何処だ。私は、誰だ?

     ——ハニーハントは、あにまんマンションで【はくちのおう】の成り損ないを殺し、その権能を奪い取った。

     代償は、遅れてやってきた。

     かつて【天上】だった存在、その一部を取り込んだことは、ハニーハントの内部に深刻な影響を与えていたのだ。

    『……ト、聞こえるか? ……い、ハニ………………。役立たずめ……』

     脳内で響いたトート・アリアの通信も、混濁する記憶に塗り潰される。

     クィーン、とハニーハントは呟いた。ホッケーマスクに遮られ、その声は誰にも聞こえなかった。

  • 155◆xaazwm17IRZa25/02/16(日) 01:08:59



     ジャスティスファイアは、魔法陣攻略に参加しなかった。

     既に限界が近いことも理由の一つである。

     もう一つは、彼女は米軍とコネクションがあり、魔法陣破壊後、生存者を米軍に繋げる役割を持っている。魔法陣さえ破壊してしまえば、魔法王を含む運営陣に参加者だけで挑む必要は無くなる。米軍や、日本、世界の魔法少女に協力を仰ぐことが出来る。

     第三に、留守番を選んだ千郷やクレアボヤンスの護衛役という役割。戦闘不能になったわけではない。いざその時がくれば、自壊を覚悟しても戦う。

    (悔しくないと言えば、嘘になりますが……)

     正義に殉じる。そのために栗田柿子は人工魔法少女に志願したのだ。

     だが、同行者は死なせ、協力者も死なせ、死地に一般人を送り出している。

     FBIが、大人が、聞いて呆れる。

     それでも、ジャスティスファイアが自責の念に駆られ無謀な突撃をしたり、意識消沈しないのは、彼女が大人であり、FBIとして訓練されているからとも言えた。

    (今はただ、祈るとしましょう……、正義が必ず勝つということを)

  • 156◆xaazwm17IRZa25/02/16(日) 01:09:33



     姚莉鈴/ハイエンドは、放送を聞き驚愕した。

     麦……ヒートハウンドの名が呼ばれることは、覚悟していた。

     それでもその名を呼ばれた時に、心は狂おしいほどかき乱され、自分が主人であったために巻き込んでしまったという後悔、デスゲームを開いた魔法王及びヒートハウンドを殺した参加者への憎悪。唸り声さえ上げた。

     だが、ブレイズドラゴンの名が呼ばれることは、想定していなかった。

    (師匠が……死んだ?)

     ハイエンドが知る限り、最強の魔法少女。いつか乗り越える壁であり、このゲームでも最大の敵になると目されていたハイエンドが、こんな序盤にあっさりと退場してしまった。

     幸運、と考えるべきなのだろう。ブレイズドラゴンが対運営路線でも、優勝狙い路線でも、ハイエンドにとっては厄介な敵だった。ティターニアを含め自分より強い相手でも殺せる自信があるハイエンドだが、ブレイズドラゴンだけは殺せるビジョンが思い浮かばなかったのだ。

     何しろハイエンドのことをブレイズドラゴンは熟知している。初見殺しは通じない。
     ブレイズドラゴンの退場は、ハイエンドを優勝に大きく近づけた。デスゲームが無くてもいずれ殺し合っていた身。あげるべきは歓喜の声のはずだ。

  • 157◆xaazwm17IRZa25/02/16(日) 01:09:51

    投下を終了します……!

  • 158二次元好きの匿名さん25/02/16(日) 07:53:10

    パラサイトドールの一番近いところで研究してたアリアちゃんの本人ですら知らないとこまで全部知ってそう感
    なんならバトロワ開催の手助けもしてるんだろうし

  • 159二次元好きの匿名さん25/02/16(日) 11:43:00

    パラサイトドールの体を提供したのもアリア一派みたいだし、割と諸悪の根源みたいなとこあるよね

  • 160二次元好きの匿名さん25/02/16(日) 17:52:42

    師匠死んでたらそら驚くわな

  • 161二次元好きの匿名さん25/02/16(日) 23:22:43

    ブレドラ師匠はイレギュラー中のイレギュラーにやられちまったよ…

  • 162二次元好きの匿名さん25/02/16(日) 23:43:22

    もう一方のマンションの存在を取り込んじゃった人もタダではすまなそうね 中核部分ではないとはいえ最悪死んだほうがマシ状態になりそう

  • 163二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 00:02:06

    クィーンの攻略先


    dice1d3=1 (1)


    1愛の木蔦部屋

    2アニー・アーマーン邸

    3病院地下研究棟

  • 164二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 00:19:15

    トリ忘れかな?

  • 165◆xaazwm17IRZa25/02/17(月) 00:19:25

    槍ヶ崎 舞矢/スピードランサーの攻略先


    dice1d3=2 (2)


    1愛の木蔦部屋

    2アニー・アーマーン邸

    3病院地下研究棟

  • 166◆xaazwm17IRZa25/02/17(月) 00:24:52

    >>164

    付け忘れてました……


    これでアニー・アーマン邸はジェイルフィッシュ、バーストハート、スピードランサーと3人揃ったので〆きります


    同時に、ああああも愛の木蔦部屋に向かわせて、研究棟は後回しにしようと思います。

  • 167◆xaazwm17IRZa25/02/17(月) 00:53:04

    投下します

  • 168◆xaazwm17IRZa25/02/17(月) 00:53:45

     そのはずなのに、ハイエンドの喉から漏れたのは、溜息だった。

     ブレイズドラゴンはハイエンドの育ての親でもあった。

     いずれ殺し合っていた間柄とはいえ、その死は彼女の心に傷を残す。

    (たぶん師匠は私が死んでも何も感じないと思うけど)

     人でなしだから。あるいは——。

    (……切り替えるネ。師匠は死んだ。最大の障害は無くなたヨ)

     となれば、生存している魔法少女で最大の脅威はティターニアだろう。

     かつてブレイズドラゴンと引き分けた、ハイエンドより格上の魔法少女。

     他にも、強敵は数多くいるはずだ。それこそドレッドノートにしても薄氷を踏むような勝利だった。この殺し合いにおいて、ハイエンドは一方的な殺戮者には成り得ない。

    『聞こえるか、ハイエンド』

     脳内に、声が響いた。二度の放送と同じだった。

     瞬時に、ハイエンドの殺意が高まる。

  • 169◆xaazwm17IRZa25/02/17(月) 00:54:15

    『情弱チャイナのお前に、吾輩がお役立ち情報を教えてやろう。五体投地しながら訊くといい』

    (魔法王じゃないネ……奴の部下か、それとも……探ってみるヨ)

    『魔法王の使い走りが何の用ネ?』

    『は? 誰が誰の使い走りだと? ラーメンばかり食べて馬鹿になったのか? 吾輩は大総統トート・アリア。この殺し合いの支配者である』

    (へぇ……)

     ハイエンドは微笑を浮かべた。

     アリアの言葉が真実であるかは分からない。だが、アリアはハイエンドに殺し合いの支配者と名乗った。ならば、彼女は復讐対象である。

    『自分の立場がよく分かったようだな』

     そう言って、アリアはジャックにしたように魔法陣の説明を始める。

     ハイエンドは相槌を打たずに黙って聞き、ただ一言、自分が守る魔法陣の場所を伝えた。

     ジャックのように煽り合いにはならなかった。

     その必要は無いのだ。——どうせ始末するのだから。

  • 170◆xaazwm17IRZa25/02/17(月) 00:54:46



     王城姫子、魔法少女名『クィーン』。魔法王を打倒し、新たな女王となることを決意した彼女は、山岳の決戦では凶悪な魔法少女『アリス・イン・ワンダー・オブ・ザ・デッド』に引導を渡した。

     だが、第二回放送の後は目まぐるしく変わる状況に、ついていくのがやっとだ。

     死んだと思っていたアルセーヌは実は生きており。クラスメイトのメリィによって対運営チームが結成された。突然マッチョになって逃げだしたクレアボヤンスもメリィと一緒にいるらしい。

     更には、面識こそ無いがティターニアも死んだのだという。

     女王を目指すといっても、根は普通の女子中学生である姫子は、それでも必死に頭を働かせ、攻略先を『狂愛の木蔦部屋』にした。理由は単純で、メリィがぼっちだったからだ。メリィの魔法少女としてのスペックなど知らないが、何となくあまり強いイメージは無い。それを言えば、魔法少女部の面々に強いイメージなど無いが。

    (魔王ドレッドノートは……死んだのね)

     短い戦闘だったが、アリスとは別のベクトルで強敵だった。アルセーヌの機転が無ければ、クィーンは墓場で死んでいた。

  • 171◆xaazwm17IRZa25/02/17(月) 00:55:10

    (この殺し合いでは、私たちは弱者に分類される。そしてゲームに乗っているのは悉く強者ね)

     恐らく、魔法王はもっと強大な力を持っているのだろう。

     状況は絶望的だ。

     だが、クィーンは絶望しない。殺したアリスを思い出す。

    (見てなさい。貴女が断じたほど、この世界は間違っていないことを証明するわ)

     魔法少女として、女王として。

     クィーンは、ただ己の矜持を貫く。

  • 172◆xaazwm17IRZa25/02/17(月) 00:56:00



     これで良かったのか、とスピードランサーは自問する。

     同時に、考えても仕方ない、とも思う。

     当初は、全ての魔法陣を自分一人で破壊して回るつもりだった。それが一番早い。

     だが、一回り年下の魔法少女たちに説得され、渋々意見を曲げた。運営側の刺客、ヴェンデッタもハーゲンも、かなりの強敵だった。魔法陣の数だけあのレベルの強敵と戦うのは、スピードランサーには不可能だ。

    (だからってガキ共に任せる理由にはならないが……)

     否、案外、彼女たちに任せた方が良い結果に繋がるかもしれない。スピードランサーが動いたところで、裏目に出るだけだ。舞矢は、そう自認する。

    「おお、あれが例の幽霊屋敷か」

     そう言って、スピードランサーは、乗っていた槍から飛び降りる。

     空中をミサイルのように飛んでいた槍。その柄に足裏をつけ、スピードランサーは魔法陣の位置まで移動した。隣にはバーストハートも控えている。

     無言だ。何を考えているのか、スピードランサーには分からない。

     サポートせずとも着地を決めれたあたり、身体能力は及第点に達しているようだ。

     と、アニー・アーマン邸の前に、クラゲ傘のような帽子を被った水着の魔法少女、ジェイルフィッシュがジト目で二人を見ていた。

    「お前がジェイルフィッシュか」

  • 173◆xaazwm17IRZa25/02/17(月) 00:56:25

    「貴女たちがスピードランサーとバーストハート? 私はジェイルフィッシュ、よろしくなの」

     と、言いながらもジェイルフィッシュは微妙そうな顔で二人を見る。

    「どうした? アタシらが信用できないか?」

    「桃白白みたいな登場の仕方する奴、信用できないの」

    (本当ならクィーンと組みたかったの)

     だが、クィーンはクラスメイトのメリィが心配だと言っており、また別の場所の攻略に行ってしまった。

     ジェイルフィッシュも同行しようと考えたが、メリィという魔法少女にこの場所を割り振られてしまった。

     この割り振りが最も合理的だと力説されれば、ジェイルフィッシュも従わざるをえ得ない。

  • 174◆xaazwm17IRZa25/02/17(月) 00:56:37

    投下を終了します

  • 175二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 07:43:45

    このレスは削除されています

  • 176二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 07:51:33

    投下お疲れ様です

  • 177二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 08:01:14

    確かに槍に乗ってくるやつは怪しい

  • 178二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 15:34:59

    保守

  • 179二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 19:17:30

    登場キャラ多くて関係性わかんないよ~!>< って人のための相関図(黒竜関係者ver.)

    あくまで個人の解釈なので間違ってても許してクレアボヤンス

  • 180◆xaazwm17IRZa25/02/17(月) 20:05:58

    >>179

    分かりやすく纏めてくださって、ありがとうございます~!

    こういう表を作っていただけると、凄く嬉しいです……!

  • 181◆xaazwm17IRZa25/02/17(月) 20:33:34

    実際、表にしてもらうと改めて複雑だね、冒涜の竜関係。

    本編も長いし、この辺りで一度、整理した方がいいんじゃないかな?

  • 182◆xaazwm17IRZa25/02/17(月) 20:34:29

    そうですわね、一度時系列ごとに整理してみますわ

  • 183二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 20:40:52

    このレスは削除されています

  • 184◆xaazwm17IRZa25/02/17(月) 20:41:59

    ①【冒涜の竜、妖精郷に出現】

    幾つもの国に分かれていた妖精郷に、突如冒涜の竜が出現。

    竜の呪いによって妖精たちは殺し合わされ、妖精郷は滅びの危機を迎える。

    戦闘職である貴族妖精たちの中から竜討伐隊が何度も結成されたが、何の成果も得られずに同士討ちで死んでいった。

  • 185二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 20:45:33

    やっぱりラスボスは二番煎じになっちゃうし冒涜の竜関係者じゃなさそう
    アリア一派が本命かな、ナチスごっこに隠されて勇者についても肝心なことまだ何も分かってないし

  • 186◆xaazwm17IRZa25/02/17(月) 20:47:19

    ②【魔法少女たち、妖精郷に召喚される】

     始まりの魔法少女「犬上沙美」を皮切りに「メリア・スーザン」、「ランスロット」「ロンギヌス」「ダーマット」「マーリン」などの魔法少女が次々と妖精郷に召喚される。

    人間界のそれぞれ異なる時間から召喚された彼女たちは、妖精から魔法を授かり、「魔法少女」として、竜が暴れさせている怪物や妖精たちと戦っていく。

     

  • 187◆xaazwm17IRZa25/02/17(月) 20:50:42

    ③【冒涜の竜、始まりの魔法少女に討伐される】

    メリアを置いて竜討伐に向かう犬上沙美一行。が、竜の呪いによってランスロット以外は全滅。瀕死の重傷を負った犬上沙美は、【天上】へと覚醒。冒涜の竜を討伐する。

  • 188◆xaazwm17IRZa25/02/17(月) 20:55:06

    ④【三つの首が逃げる】

     七つの首のうち、「復讐心」「好奇心」「無関心」を司る三つの首が逃亡。
     
     復讐心は、パラサイトドールへと姿を変え、宿主を変えながら、魔法少女への復讐/自身の完全復活を企むようになる。

  • 189二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 20:55:41

    天上と天蓋の違いってなんなんです? 誰と誰が天蓋、みたいなのあるの?

    覚醒したブラックブレイドがあのバケモンみたいな魔法で天上でないなら、結局あの子は「パラさんがガチ焦りするレベルの竜とか始まりの魔法少女とか関係なしに無から生えてきた一般クソ強魔法少女」ってことでいいんかいの

  • 190二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 20:56:11

    パラサイトドールだけアリアらナチスドイツの手を借りなきゃ天上になれなかった理由とかあるのかしら

  • 191◆xaazwm17IRZa25/02/17(月) 20:58:55

    ⑤【好奇心、アザトースと名乗る】

    好奇心は始まりの魔法少女へ討伐されることを恐れ、自らの属性を塗り替えるべく、魔物や神の名前を名乗るようになる。
    近年はアザトースという名前をもっぱら好んで使っていた。

    質問は後からお答えさせていただきます~

  • 192◆xaazwm17IRZa25/02/17(月) 21:06:24

    ⑥【アザトース、ティターニアに討伐される】

    好奇心の赴くままにオムネグを魔法国にけしかけたりしていたアザトース。
    オムネグ討伐に現れたティターニアに興味を示し、接触を図る。
    が、『全盛期ティターニアのマジカルストラッシュによってあえなく討伐』。

    アザトースは肉体と頭脳に自らを分離させ、頭脳はアルセーヌに、肉体は成り損ないとなる。

    パラサイトドールはこの事実を知って以来、なるべくティターニアには近づかないようにしていた。万が一でも天上の自分を滅ぼしうると考えたからだ。 

  • 193二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 21:10:01

    ティターニアが討伐できたのってティターニアが主人公的な特別な存在だからなのかな?

  • 194二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 21:11:31

    トート・アリアは別段ティターニアのことは特別視してないのは何故かな?
    見下しているだけでは無いだろうし

  • 195二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 21:13:40

    エネミー欄覗いてみたけど【オムネグ】じゃなくて【オムモグ】じゃないかな
    まぁ重箱だけど

  • 196二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 21:19:46

    ブレイズドラゴンが成りかけたのがティターニアの全盛期モードと同じ状態ってことでOK?

  • 197◆xaazwm17IRZa25/02/17(月) 21:31:33

    >>195

    ごめんなさい、間違えました……


    ※何故ティターニアは【天上】のアザトースを討伐できたのか


    ティターニア「めっちゃ強かったけどめっちゃ頑張ったら勝てた」


    蟹「あの時確信したの。のぞみちゃんは世界の中心で絶対的主人公なんだって」


    スピードランサー「まぐれか相手がわざと負けたんじゃねーの?」


    パラサイトドール「一時的に天上に達した? 警戒せねば」


    アルセーヌ「魔力の急激な上昇……想定を超えた爆発力……それでも、私に刃が届くはずは無かった……あのとき、何故私は……」

  • 198◆xaazwm17IRZa25/02/17(月) 21:34:50

    ⑦【無関心、イクナグンニスススズを名乗る】

    それまで無為に日々を過ごしてきた無関心、素鈴を観察しているうちに感化され、アザトースと同じく邪神の名を自らに課す。

  • 199◆xaazwm17IRZa25/02/17(月) 21:41:04

    ⑧【パラサイトドール、岸村文華に憑りつく】

    色んな肉体を渡り歩いたパラサイトドール、とうとうSSR素体、岸村文華を発見、憑りつく。
    肉体との相性により【天上】へ到達。が、SSR過ぎたのか性格も思いっきり引っ張られる。

    「我はパラサイトドール。魔法少女への復讐、そして黒竜の復活こそ我が悲願」

    「あーしは……パラサイトドール……。復讐と黒竜の復活、頑張らないとね……。はぁ、めんど……」

  • 200◆xaazwm17IRZa25/02/17(月) 21:42:57

    ⑨【バトルロワイアル、開始】

    パラサイトドール、魔法王を乗っ取りバトルロワイアルを開始する。
    此処から本編スタート。

  • 201◆xaazwm17IRZa25/02/17(月) 21:45:28

    ⑩【ハニーハント、成り損ないを吸収】

    マンションでオオカワウソと交戦していたハニーハント。敗北寸前まで追い込まれるが、最深部まで辿り着いた際に成り損ないと合流。『えっちなのは許さないよ』でバラバラにし、その力を取り込んだ。

  • 202◆xaazwm17IRZa25/02/17(月) 21:50:47

    ⑪『イクナグンニスススズ、死亡。パラサイトドール、『天上』一時喪失】

    素鈴を助けるために乗り込んできたイクナグンニスススズ。パラサイトドールによって返り討ちに遭う。が、その際にパラサイトドールを一時的に【天上】から引きずり降ろす。

    なお、『クトゥルフ』と名乗っていたのは、本体を誤認させ、パラサイトドールの不意を突くため。アザトースの前例があったこと、無関心が自らの名を『イクナグンニスススズ』と定めたことを知らなかったため、パラサイトドールは『無関心は自らの名前をクトゥルフと定めた』と誤解した。

  • 203◆xaazwm17IRZa25/02/17(月) 21:52:34

    ⑫【パラサイトドール、討伐される】
    ティターニアを筆頭に、多くの魔法少女の力によってパラサイトドールは討伐された。
    これにより、残った首はアルセーヌのみとなった。
    (正確には成り損ないを吸収したハニーハントも居るが)

  • 204◆xaazwm17IRZa25/02/17(月) 22:03:53

    >>189

    【天上】が何なのかは、まだお答えできないですわ~。

    とりあえず、同じ天上以外からの干渉を防ぐ無敵フィールドみたいなものと思っていただけると良いかもしれないですわ~。

    出力にも影響が出るかもしれないですわね。


    誰が天上だったのかを列挙しますと

    冒涜の竜、犬上沙美/始まりの魔法少女、パラサイトドール(岸村文華)、アザトース、イクナグンニスススズ、12歳のティターニア? 最期のブレイズドラゴン?


    が挙げられますわ~。


    【天蓋】は強いけど天上に届いていない人という感じで使っていまして、作中上位陣はだいたい天蓋ですわ~、【天蓋】とそれ以外で能力に明確な区別があるわけではなく、主にパラサイトドールがテンガイなどを煽る時に使う言葉ですわ~

  • 205◆xaazwm17IRZa25/02/17(月) 22:19:41

    >>189

    ブラックブレイドは「パラさんがガチ焦りするレベルの竜とか始まりの魔法少女とか関係なしに無から生えてきた一般クソ強魔法少女」ですわ。


    設定に『不死も斬れる』と明記されていますので、覚醒した私を殺せる数少ない魔法少女の一人ですわ。恐ろしい子……!


    ただ『無敵』や『拒絶』を斬れるかは不明ですわ……!どちらのテキストが優先されるかは、その時の互いのメンタルや魔力量に左右されそうですの……!


    他にも防御力は並だったり、斬る対象によって魔力の消費が激しくなるので、誰相手でも絶対に勝てるキャラではありませんのよ……


    学生街編にもしいたらパラサイトドールは八つ裂きにされてましたわ。

  • 206二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 22:21:48

    うん?ってことは覚醒ミョルニルって怪我の治りが早い通り越して不死に到達してたの?
    正確に言えば「絶対に損なわれない」か

  • 207二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 22:22:23

    そう言えば支配が効かないだけのフライフィアーやパペッタンを優先的に処理してたのはなんでなの
    ただ単に面倒臭いから?

  • 208二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 22:25:58

    そーいえば前から気になってたけどパラさんが開始前に支配してたのはスピードランサーとクリックベイトだけでいいの? なんか「こんなに支配してる参加者いるんだー」みたいに言ってたアルセーヌが節穴みたいになっちゃってるけど
    目的はスピードランサーに同格で幼馴染のティターニアを始末させるつもりだったとか?

  • 209二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 22:54:44

    不死レベルで斬り殺せるなら高度な治癒持ちであっても問題ないってのはほんまガッツリ攻撃力が最上位クラスで草
    ほんと惜しい存在だった...

  • 210二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 23:02:40

    ハスキーロアが魔法と想いを継いでくれるはず……
    ブラックブレイド、ナサリーブラウン、スカイウィッチはガッツリした戦闘シーンほぼ無しで死んでしまった数少ないキャラなのでなんかあるかもにゃー……という期待

  • 211◆xaazwm17IRZa25/02/17(月) 23:04:04

    >>190

    あーしはさ、『竜』から逃げて邪神の殻を被った他の2人と違って、竜を貫いたの……


    だからさ、他の2人と違って何度も始まりの魔法少女に滅ぼされかけてさ……長い年月のうちに【天上】から脱落しちゃったんだよね……


    岸村文華の肉体を手に入れて、久しぶりに【天上】に返り咲いたわけ……

  • 212◆xaazwm17IRZa25/02/17(月) 23:16:40

    >>206

    本当に【不死】なのかは分からないとして、少なくともドレッドノートにいくら斬られても死ぬことは無かったと思いますわ。【損なわれない】の性質上、マジカルストラッシュも効かなかったはずですの。【魔力を消し飛ばす】は【損なう】に該当するはずですから。


    絶招は……どうなんでしょう? 気(魔力)を狂わせるが【損なう】に定義されるのか曖昧ですわね……。たぶん効かないと思いますわ……。いえ、試したくはないですけど……。


    逆に駄目そうなのは覚醒ブラックブレイドさんの『なんでもぶった斬れるよ』とハニーハントさんの『えっちなのは許さないよ』ですわね……。


    というか、私のコスチューム的に、ハニーハントさん天敵じゃなくて?

  • 213二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 23:19:33

    ハスキーロアちゃんは『今は』覚醒ぶった斬る魔法には至っていない認識でいいのかな?
    ネタバレに触れる感じだったら飛ばしてくだちい

  • 214二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 23:22:29

    なんやトート・アリア関連は全部ネタバレに触れそうやな……
    ほんまなんやねんあのヘイトスピーチウーマン謎すぎるやろ

  • 215◆xaazwm17IRZa25/02/17(月) 23:27:00

    >>207

    支配はできないけどさ……正直竜種のスペックごり押しで勝てるよ、普通に……。

    いや、パペッタンにマギカロボを操作されたり、フライフィアーに空爆されたらかなり面倒くさいけどさ……。

    わざと死にやすいように組んだけど、タイマンならあーしが100パー勝つ……。


    けど、そうだね。そういう面倒なのが徒党を組んで、それこそ1ダースくらいで襲いかかってこられて、かつあーしと同じステージに立たれたら、かなり嫌だったかも。だから優先的に死なせたの……。


    ……それだけだよ。それ以外の理由なんか、無いよ……。

  • 216二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 23:32:09

    かつてアルセーヌにとって「へー昔はよく居たけど今は珍しいねー」程度の存在だった人形(ホムンクルスのアリア)が、これからアルセーヌの好奇心に対するとびっきりのしっぺ返しをプレゼントすることになるかもしれねえな


    そろそろ部長にも盛大に曇ってほしいのだ⭐︎ へけっ!

    >>214

  • 217二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 23:34:38

    ロボ+空爆+マジカルストラッシュとかやられたらこの上なく面倒だろうしブラックブレイドみたいな野生の覚醒強者が出てくる可能性もあった
    しかもあんまりドラゴンの気配させすぎると天敵がエントリーしてきてゲームセットするかもしれない
    ならまあ初手で殺すか

  • 218◆xaazwm17IRZa25/02/17(月) 23:36:32

    >>208

    あの話序盤も序盤なので、ダイス次第では他にも支配されていたキャラを出す予定だったのですわ。元々スピードランサーが洗脳されたのも

    ①パペッタン脱落確定

    ②普通ならゲームに乗らないキャラ3人

    ③エネミーに殺されるとしてそれをスピードランサーがみすみす見逃すというのも戦力的に不自然

    ④じゃあスピードランサーが支配されて(事件を追っていたという設定もあったので)ゲームに乗る→パペッタン死亡にしよう

    という流れでしたのよ。


    実際それ以降の展開では洗脳キャラは出なかったので、アルセーヌさんの台詞が意味不明になってしまいましたわね……

  • 219二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 23:39:25

    あとちょっと気になったんだけどクリックベイトハーレムってメンバー全員面識あったの?
    それともクリックベイトが各々と知り合いってだけ?

  • 220◆xaazwm17IRZa25/02/17(月) 23:40:53

    【アルセーヌの「こんなに支配してる参加者いるんだー」の矛盾を解消】


    dice1d3=3 (3)

    1実はいないよ、アルセーヌはわざと嘘の発言をしたよ

    2実はいたよ、パラサイトドールが退場したので洗脳は解除されたよ

    3安価&ダイス

  • 221二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 23:44:28

    あっ! あと気になってたんすけどアルセーヌがゾロゾロ引き連れてお城に入城したタコ頭魔法使いのミショナリーくん達はその後全く影も形もないですが、アリア一派に全員タコの刺身にされてしまったのですかね?

  • 222◆xaazwm17IRZa25/02/17(月) 23:44:41

    というわけで先着3つの意見からダイスで決めます~

    既に上げた意見OK、新設定や新解釈もOKです

    他にも支配されていた参加者は居たのか居なかったのか
    居ないならどうしてアルセーヌは嘘をついたのか
    居たのならその参加者は誰で、洗脳はどうなったのか

  • 223二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 23:46:44

    ハイエンドとヒートハウンド支配してたよ。ヒートハウンドの忠義もアレな感じに改変されてたよ
    ティターニアと引き分けたブレイズドラゴン処理するつもりだったよ。たぶん弱体化デバフも相まって返り討ちだったろうけど

  • 224二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 23:48:05

    居なかった
    アルセーヌは自分の信奉者達の前で全てを操る大物ゴッコしてただけ

  • 225二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 23:51:12

    運営側はああああ、参加者側は実は当時クリックベイトにくっついてきてたネコサンダー
    ああああはマジカルストラッシュ対策に、ネコサンダーはなんか居たので路傍の石扱いでついでに
    ああああは消えたけど、ネコサンダーは支配効果だけが無くなって竜の魔力が残留している……?(強化フラグ)

  • 226二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 23:52:18

    行けそうな奴片っ端から試してみたよ
    その後で一番コスパが良さそうなクリックベイト&スピードランサーに絞ったよ

  • 227◆xaazwm17IRZa25/02/17(月) 23:52:28

    募集しつつ質問にも答えますわ


    >>213

    今はまだその段階に至ってないですわ

    あくまで【対象の防御力を無視して切断できる】くらいで留まっていますの。

    今のハスキーロアさんならまだ私の方が強いですわ~

  • 228◆xaazwm17IRZa25/02/17(月) 23:54:16

    安価ありがとうございます……!


    dice1d3=3 (3)

    1>>223

    2>>224

    3>>225

  • 229◆xaazwm17IRZa25/02/17(月) 23:56:00

    他にもああああさん、ネコサンダーさんが支配されていたみたですわね……

    ああああさんは消えてしまいましたが、ネコサンダーは竜の魔力が残ってる……強化フラグですわ……! クリックベイトハーレムの一員として頑張って欲しいですわ……!

  • 230二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 23:59:11

    スピードランサー→クリックベイト→ネコサンダー辺りの因果関係を見るに『交友関係を辿る形で支配を広げるのが一番楽』みたいな理由(後付け)はありえそう

  • 231◆xaazwm17IRZa25/02/17(月) 23:59:21

    >>219

    クリックベイトさんは知り合い同士を繋げるタイプでは無いので、互いに面識は無かったと思いますわ……


    これが七海真美さんなら友達同士を引き合わせて皆で一緒に遊ぶんでしょうけど……。コミュ力の性質の違いですわね。

  • 232◆xaazwm17IRZa25/02/18(火) 00:06:15

    >>221

    アルセーヌ様が都落ちした後、勇者の経験値にされました……


    本来なら、ナチス兵士のポジションは我々が担っていたのに……!

  • 233二次元好きの匿名さん25/02/18(火) 00:12:33

    『勇者』ちゃんの初登場時、生存ダイスで10以下叩き出してたらどんな感じの流れになってたんですか…?
    割と頭抱えてましたか?

  • 234◆xaazwm17IRZa25/02/18(火) 00:34:06

    >>233

    その場合はアルセーヌに返り討ちにあって勇者死亡って、流れになったと思います……


    まだ試作品で全然強くなかったよこの子って設定になったかと。


    そういう展開だとアルセーヌは追放されずに黒幕続行だったかなと。

  • 235二次元好きの匿名さん25/02/18(火) 07:51:30

    タコの刺身!踊り食いかな…?

  • 236二次元好きの匿名さん25/02/18(火) 10:18:33

    パトリシアが四強レベルらしいの謎だったけど【天上】に自爆攻撃で多少ダメージ与えられるなら妥当かな?
    【天上】でないなら致命傷になるみたいだし
    あと遠距離から同格を一方的になぶり殺しにできるのも評価点?

  • 237二次元好きの匿名さん25/02/18(火) 17:48:47

    前振り的にバーストハートと戦うであろうハイエンドはアーマーン邸に配置されるんだろうけどスピードランサーいるんだよね
    ジェイルフィッシュと一緒に後ろの方で幼馴染対決を実況解説しててもらうか、それとも追加でアリア配下の魔法少女でも送り込まれるのか

  • 238二次元好きの匿名さん25/02/18(火) 19:42:58

    >>236

    そういえば天上にはダメージ与えられません設定なのに痛がってたね。ガワにダメージ与えただけだったかな?


    流石に自爆攻撃はスーパーマジカルストラッシュより威力高そうだからそこらへんどうなんだろう


    あと四強にしては金とOFOに攻撃凌がれてたイメージしかないけど、爆発する矢を最初に使ってたら二人とも初手で爆殺してたのかな案外

  • 239◆xaazwm17IRZa25/02/18(火) 20:57:00

    >>236

    あれは天上のパラサイトドールが洗脳時に力を分け与えたことで、同じ天上に傷を付けれた感じです……!


    それはそれとして、パトリシアの自爆攻撃はスーパーマジカルストラッシュより火力は高いです……!


    互いに目視できる距離なら四強有利ですが、開始位置が遠くなればなるほど、パトリシア有利になります。なお、頂いた設定によるとパトリシアの有効射程距離は20㎞です。テンガイなら何らかの魔法を持ってるかもしれませんが、他の三人には20㎞先の相手に攻撃を当てる手段が無いです……

  • 240◆xaazwm17IRZa25/02/18(火) 21:10:04

    >>238

    大型対艦ミサイルなどを矢にして打ち込んでれば抜刀金とOFAは殺せたと思います……


    一応、抜刀金は剣で斬れる攻撃なら大抵凌げるので、仮に四強に襲われてもテンガイ以外なら結構凌げます。

  • 241◆xaazwm17IRZa25/02/18(火) 21:17:25

    投下します

  • 242◆xaazwm17IRZa25/02/18(火) 21:18:10

    「アタシはスピードランサー。こっちはバーストハート。よろしくな、ジェイルフィッシュ」

    「よろしくなの……」

     不審そうにこちらを睨むジェイルフィッシュに、スピードランサーは苦笑した。

     ジェイルフィッシュの態度は、何ら間違っていない。

     今は依然、殺し合いの最中であり。スピードランサーは既に参加者を二人、非参加者を含めれば五人殺しているのだ。

    (むしろ、ハスキーロアがおかしいんだよ)

     こんな自分を受け入れ、信用し、傍に居ようとした。

     ——スピードランサーがデッドマンズ・ハンドを、幼馴染の命を奪う破目になったのは、ハスキーロアのせいではない。彼女に一切の責任は無い。むしろ彼女を危険な目に遭わせたのは、スピードランサーの責だ。

     本来なら、ハスキーロアを守るために自分もあに高地下防空壕に向かうべきだったのだろう。

     だが、ハスキーロアの方からスピードランサーと同じ場所を選ぶことを拒否した。

     合わせる顔が無いから、という理由だった。

  • 243◆xaazwm17IRZa25/02/18(火) 21:18:43

     普段のスピードランサーならその言葉を無視して同行したのだろう。だが、スピードランサーも疲弊していた。元々子どもの相手が得意な性分では無いのだ。自責の念に苦しめられている九歳児にどうすれば適切なケアができるのか、まるで分からなかった。

     ただ、今のまま一緒に行動しても、互いに足を引っ張り合うだけだと、戦士として判断できた。

    (……まぁいい。心配ならやることは一つだ)

     魔法陣を最速で破壊する。ゲームを破綻させ、ハスキーロアの余命を残り数時間から数十年に引き延ばす。

     心の傷を治すのには、長い年月が必要なはずだ。

    (……アタシも、人のことは言えないか)

     アニー・アーマン邸の屋根はやや傾き、苔やツタが絡まり、時折風に揺れていた。外壁は、長年の風雨にさらされて色褪せ、ひび割れたレンガや木材が見え隠れする。周囲には絶壁が広がり、海が見下ろせた。

     先陣を切るように、スピードランサーは前に出る。青いウルフカットが風で揺れていた。

  • 244◆xaazwm17IRZa25/02/18(火) 21:19:17



     運営幹部古参組最後の生き残り、ああああは、オオカワウソのことを考えていた。

     観測できた最後のオオカワウソは、ハートプリンセスの爆発で全滅した。

     確定はしていないが、どうやら絶滅してしまったらしい。

    (何だよそれ、ふざけんなよ)

     自分に地獄を見せ、永遠のトラウマを刻んだ悪魔、オオカワウソ。

     復讐とかどうでもいいから、金輪際関わり合いになりたくない。そう考えていた。そしてその願いは叶ったのだ。

     だが、ああああの胸には空しさが広がっていた。

    (マンションもハニーハントとやらに攻略されたって? 私の半生は何だったんだ?)

     こんなにもあっさりと攻略され、こんなにもあっさりと絶滅する存在に、ああああは囚われていたのか。

     魔法陣攻略に参加したのは、自分が運営側だったとアルセーヌにばらされたくないから。そして、ナチスよりは正義っぽい魔法少女たちの方が、自分を生かしてくれる可能性が高いからだ。

     ……ただそれだけだ。『狂愛の木蔦部屋』に探検家として興味があったからなんて、そんな理由であるはずがない。

  • 245◆xaazwm17IRZa25/02/18(火) 21:19:50



     灰江渚という少女は、至って普通の中学生だった。目立った特徴もなく、際立った長所や短所も無く、友達も多くも無ければ少なくも無く。

     パラサイトドールがデスゲームを開催する数日前に、渚は寝込んだ。原因不明の高熱だった。

     熱を出して、数日経ち、彼女は忽然と姿を消した。両親は家出と思い捜索願を出した。娘が自分の元に戻って来ることを信じて。

     灰江渚は『勇者』になった。屍を重ね成長する、古式ゆかしい勇者へと。

     聖剣を振る。真っ赤な飛沫が壁に描かれる。

     折り重なっているのは、異形の頭部を持つ宣教師たち。

     アルセーヌが率いていた邪神教の信徒であり、教祖に一切顧みられることのなかった、哀れな雑兵である。

     彼等一人一人にも物語があった。魔法の才に焦がれ、自らを異形に変えても叶えたい宿願があった。

     それらを、勇者は一切顧みない。『雑魚モンスター』に興味など無い。

    「勇者の レベルが あがった」

     一切の感情を感じさせない言葉。

     積み上げた死体の山を前にして、一人勇者は佇んでいた。

  • 246◆xaazwm17IRZa25/02/18(火) 21:20:03

    投下を終了します

  • 247◆xaazwm17IRZa25/02/18(火) 21:26:44

    暫定魔法陣攻略部隊編成

    狂愛の木蔦部屋:挑戦者(メリィ、クィーン、ああああ) ボス(未定)

    アニー・アーマーン邸:挑戦者(ジェイルフィッシュ、バーストハート、スピードランサー) ボス(ハイエンド、???)

    あに高地下防空壕:挑戦者(バルバロイ、ウェンディゴ、ハスキーロア) ボス(グレンデル、???)

    ネッカーピン資料館:挑戦者(ノブ子) ボス(スティールソウル&ドッペルホルン・パンツァー)

    地下研究棟(病院地下):後回し

    掩蔽壕:挑戦者(アルセーヌ、ミストアイ、ネコサンダー) ボス(ジャック)

    お留守番:クレアボヤンス、ジャスティスファイア、千郷

  • 248二次元好きの匿名さん25/02/18(火) 21:28:31

    改めて地下研究棟の字面ヤバいね!
    〝狂愛の木蔦部屋〟ってファンタジーなエリアもあるのに、それよりも悍ましさが漂うのはどうしてかな

  • 249二次元好きの匿名さん25/02/18(火) 21:33:09

    あに高組、グレンデルだけやのーてまだおんのか…
    グレンデルだけでも設定的にマンションの力でどうこうする前段階ですらハスキーロアかウェンディゴのどっちか覚醒してもらわんと勝ち目あらへんぞ…

  • 250◆xaazwm17IRZa25/02/18(火) 21:37:01

    この前頂いた魔法少女たちの処遇(?)も決めていきましょう……!

    生存値によって選択肢が変化しています


    弓ヶ浜ヒカリ/ランドウ

    dice1d100=91 (91)


    dice1d5=4 (4)

    1狂愛の木蔦部屋

    2他の場所

    3待機

    4儀式に参加していない(護身完成)

    5安価&ダイス

  • 251二次元好きの匿名さん25/02/18(火) 21:38:55

    キャイイイイイするの見たかったぜ!

  • 252二次元好きの匿名さん25/02/18(火) 21:43:17

    戦えよ弓ヶ浜

  • 253二次元好きの匿名さん25/02/18(火) 21:43:41

    ううん悲しい

  • 254◆xaazwm17IRZa25/02/18(火) 21:47:18

    回想で登場するはず……


    弓ヶ浜はdice1d3=1 (1)

    1運営幹部の関係者

    2参加者の誰かがかつて戦った相手

    3安価&ダイス

  • 255二次元好きの匿名さん25/02/18(火) 21:48:48

    勇者に技量技全部仕込んでましたとか?
    各流派全部使えるみたいだし

  • 256◆xaazwm17IRZa25/02/18(火) 21:51:08

    佐神 正/ピスケス

    dice1d100=2 (2)


    dice1d5=2 (2)

    1狂愛の木蔦部屋

    2他の場所

    3待機

    4勇者の経験値

    5安価&ダイス

  • 257◆xaazwm17IRZa25/02/18(火) 21:52:51

    どこ?


    dice1d4=3 (3)

    1アニー・アーマーン邸

    2あに高地下防空壕

    3ネッカーピン資料館

    4掩蔽壕

  • 258◆xaazwm17IRZa25/02/18(火) 21:54:50

    アイン

    dice1d100=5 (5)


    dice1d5=4 (4)

    1狂愛の木蔦部屋

    2他の場所

    3待機

    4勇者の経験値

    5安価&ダイス

  • 259二次元好きの匿名さん25/02/18(火) 21:57:07

    〝最終実戦テスト〟か…

  • 260◆xaazwm17IRZa25/02/18(火) 21:57:35

    oh……


    機骸の大怨霊(マシンナリー・ゴースト)

    dice1d100=32 (32)


    dice1d4=3 (3)

    1狂愛の木蔦部屋

    2他の場所

    3待機

    4安価&ダイス

  • 261二次元好きの匿名さん25/02/18(火) 21:59:52

    勇者の戦闘シーン見れるといいな
    ハーゲンと同位置ならまぁまぁ食い下がってくれそうだし

  • 262◆xaazwm17IRZa25/02/18(火) 22:00:03

    柏木 彩/デスグラシア

    dice1d100=34 (34)


    dice1d4=4 (4)

    1狂愛の木蔦部屋

    2他の場所

    3待機

    4安価&ダイス

  • 263◆xaazwm17IRZa25/02/18(火) 22:01:57

    柏木 彩/デスグラシアがどこ配置なのか安価&ダイスで決めます……!

    まだwiki未収録なので、もう一度キャラクター設定張ります……!

  • 264◆xaazwm17IRZa25/02/18(火) 22:02:07

    【名前/魔法少女名】柏木 彩/デスグラシア
    【変身前・変身後の外見】
    変身前:薄緑色の髪をポニーテールにした陰のある美女 服装はブランド物の赤いスーツ
    変身後:白銀のベネチアンマスクをつけた白いタキシード姿で両手にマチェットを持っている
    【年齢】27
    【趣味/魔法少女としての日課】ガーデニング/世の中の理不尽を正すこと
    【好きなもの】人から優しくされること
    【嫌いなもの】理不尽
    【性格】自己顕示欲と自己愛が強いが臆病で引っ込み思案
    【得意な魔法】
    『怒りを魔力に変えるよ』
    自分の怒りの感情を魔力に変換しブーストをかける
    彼女は常に理不尽に対して怒りを感じておりその出力は凄まじい
    あまりにも長時間かけ続ければ自分の肉体を傷つけるが一時的にであれば本来の魔力量以上にも変換できる
    【魔法少女になったきっかけ】世の中の理不尽を正したいから
    【詳細】
    あにまん市ではかなりの力を持つ会社の社長令嬢
    何不自由なく、少なくとも客観的には社会的にも経済的にも家庭的にも恵まれて育った
    だが自己愛と他責思考と減点主義の権化であるため彼女は「もっといい家庭に生まれるはずだった」
    「親の会社がもっと大きいはずだった」「もっと素晴らしい才能を持って生まれるはずだった」と思っている
    そしてそれらは彼女にとって「世の中の理不尽」として変換され「理不尽な仕打ちを受けている可哀想な自分」に酔うための材料となる
    結果としてこの年齢になっても一度も働いたこともなく好きに生きているのに自分を「世界一不幸な悲劇のヒロイン」だと心の底から信じているモンスターと化した
    【備考】
    才能は本物で単純な戦闘力ならあにまん市の魔法少女最上位層となんら遜色ない
    しかし精神が未熟なため実際に戦えばよほど運に恵まれない限り勝利は不可能である
    それを自覚しているが故に「自分より強いなんて理不尽」と最上位層に一方的な憎しみ、特にティターニアは親の仇のように憎んでいる
    同様に自分より恵まれた環境で生まれ育ったミョルニルも同じぐらい憎んでいる

  • 265◆xaazwm17IRZa25/02/18(火) 22:04:36

    いつものように先着3つから安価&ダイスで決めます……!

    守っている魔法陣の場所を指定して頂いても構いませんし、他の選択肢でも大丈夫です……!

  • 266二次元好きの匿名さん25/02/18(火) 22:05:15

    アインと一緒に勇者と対決だ!
    勝てたら解放! がんばれファイト!

  • 267二次元好きの匿名さん25/02/18(火) 22:07:29

    勇者の経験値

  • 268二次元好きの匿名さん25/02/18(火) 22:08:09

    アニー・アーマーン邸

  • 269◆xaazwm17IRZa25/02/18(火) 22:21:02

    回答ありがとうございます~!


    dice1d3=1 (1)

    1>>266

    2>>267

    3>>268

  • 270二次元好きの匿名さん25/02/18(火) 22:22:06

    アリア「頑張れ♡ 頑張れ♡」

  • 271二次元好きの匿名さん25/02/18(火) 22:22:53

    これじゃん

  • 272二次元好きの匿名さん25/02/18(火) 22:23:24

    前作でもあったラスボスのおやつ対決?

  • 273◆xaazwm17IRZa25/02/18(火) 22:25:36

    勇者VSアイン&デスグラシアの試合が組まれることとなりました……!


    ヴンダー

    dice1d100=64 (64)


    dice1d4=2 (2)

    1狂愛の木蔦部屋

    2他の場所

    3待機

    4安価&ダイス


    ちなみに木蔦部屋以外が選ばれた場合は、ヒカルちゃんに木蔦部屋行ってもらいます

  • 274二次元好きの匿名さん25/02/18(火) 22:26:32

    よかったねヒカルちゃん!(よかったのか?)

  • 275◆xaazwm17IRZa25/02/18(火) 22:27:35

    どこ?


    dice1d3=2 (2)

    1アニー・アーマーン邸

    2あに高地下防空壕

    3掩蔽壕

  • 276二次元好きの匿名さん25/02/18(火) 22:28:15

    見てえ〜
    メリィに「お前ティターニアとブレイズドラゴンのライバルぶってるけどどっちも相手にすらされてないのだ😅」って煽られてキャイイイイイするヒカリちゃん見てえ〜

  • 277二次元好きの匿名さん25/02/18(火) 22:30:04

    ヴンダーは脳筋揃いのアリア配下魔法少女の中にあって珍しく頭脳派みたいな設定だったはずだし、アリアからの信任も厚そうやね(アーリア人ド直球な見た目だし)

  • 278◆xaazwm17IRZa25/02/18(火) 22:30:42

    暫定魔法陣攻略部隊編成

    狂愛の木蔦部屋:挑戦者(メリィ、クィーン、ああああ) ボス(弓ヶ浜ヒカリ/ランドウ)

    アニー・アーマーン邸:挑戦者(ジェイルフィッシュ、バーストハート、スピードランサー) ボス(ハイエンド、???)

    あに高地下防空壕:挑戦者(バルバロイ、ウェンディゴ、ハスキーロア) ボス(グレンデル、ヴンダー、???)

    ネッカーピン資料館:挑戦者(ノブ子) ボス(スティールソウル&ドッペルホルン・パンツァー、佐神正/ピスケス)

    地下研究棟(病院地下):後回し

    掩蔽壕:挑戦者(アルセーヌ、ミストアイ、ネコサンダー) ボス(ジャック)

    お留守番:クレアボヤンス、ジャスティスファイア、千郷

  • 279二次元好きの匿名さん25/02/18(火) 22:31:21

    ノブ子の労力が凄まじいことになっている…!

  • 280二次元好きの匿名さん25/02/18(火) 22:31:28

    一般参加者なら生存確定出目だったのにねヒカリちゃん

  • 281◆xaazwm17IRZa25/02/18(火) 22:33:40

    最初の舞台は……!

    dice1d5=5 (5)

    1狂愛の木蔦部屋

    2アニー・アーマーン邸

    3あに高地下防空壕

    4ネッカーピン資料館

    5掩蔽壕

  • 282二次元好きの匿名さん25/02/18(火) 22:33:41

    勇者が順当に勝つるろうけど負けたら負けたでラスボスのおやつがアインとデスグラシアになるだけか

  • 283◆xaazwm17IRZa25/02/18(火) 22:35:32

    明日からは掩蔽壕の戦いを投下していきます~! 

    挑戦者(アルセーヌ、ミストアイ、ネコサンダー) ボス(ジャック)

    それでは、本日もありがとうございました~!

  • 284二次元好きの匿名さん25/02/18(火) 22:37:35

    ヴンダーの悪夢を見せる幻覚魔法がハスキーロアは姉の死を、ウェンディゴは両親の死と、それぞれの覚醒に関わる重要インシデントに繋がりそうやね…

  • 285二次元好きの匿名さん25/02/18(火) 22:40:21

    お疲れ様です

  • 286二次元好きの匿名さん25/02/18(火) 22:42:54

    >>277

    アリアは確かハスキーロアがヴェンデッタ戦で『ぶった斬る魔法』使ってるとこ見て「だいたいわかった」みたいなこと言ってたし、それ関連で自分の配下で一番信用のおける魔法少女を送り込んだ可能性はある?

    パラさんもわざわざ部下送り込んで抹殺しようとするくらいには重要人物だし

  • 287二次元好きの匿名さん25/02/18(火) 22:46:57

  • 288二次元好きの匿名さん25/02/18(火) 22:48:34

    おつ、最初はジャック戦か

  • 289二次元好きの匿名さん25/02/18(火) 22:49:28

    パラさんの置き土産で強化フラグが入ったネコサンダー
    覚醒したら猫竜になるのか?

  • 290二次元好きの匿名さん25/02/18(火) 22:51:50

    そういえば掩蔽壕はマジックアイテム置いてあるよみたいな設定で、wikiのアイテム欄は既出のマジックアイテムばっかだったはずなので戦闘シーンに使えそうなやつ投げさせていただきます

    【アイテム名】
    魔銃〝クリムゾン〟
    【効果】
     掩蔽壕の魔法陣がある司令官室に配置されたマジックアイテムで、所有者を破滅へと導くッ!…と言われる呪われし魔銃。
     魔法『魂を付け狙うよ』により、敵の魂を自動追尾するホーミングレーザーを放つ。障害物で射線が遮られていたとしても問題なし。
     その特性から索敵・追跡能力にも長けるが、『魂を分割する』魔法やマジックアイテムには撹乱されてしまう。

  • 291二次元好きの匿名さん25/02/18(火) 22:53:44

    アロンダイトさん、後出しで出てきた固有魔法アイテムの数々を見るとフル装備ならあれ以上に強くなってたんだろうなぁ…
    あと死後も武器化の魔法が解けてないのは地味にすごいのかも

  • 292二次元好きの匿名さん25/02/18(火) 22:58:20

    ヴンダーの必殺技名はきっと『ヴンダーカンマー(脅威の部屋)』

  • 293二次元好きの匿名さん25/02/18(火) 23:03:38

    参謀は胡散臭さMAXのアルセーヌ!
    屋内じゃ狙撃も活かせないミストアイ!
    対して備え付けの兵器をフル活用してくるジャック!

    ネコサンダー以外がご覧の有り様だから安価で立った強化フラグがまさしく渡りに船

  • 294二次元好きの匿名さん25/02/18(火) 23:04:49

    雷ネコが雷神になる日がついに来たかね

  • 295二次元好きの匿名さん25/02/18(火) 23:05:36

    でっもジャックはジャックで厄ネタ抱えてるのがこわい

  • 296二次元好きの匿名さん25/02/18(火) 23:06:55

    便乗便乗!
    例によってお話の盛り上げに使えそうなやつ考えて投げる会

    【マジックアイテム名】
    活殺針
    【効果】
     アルセーヌも知らない、運営に協力する参加者・および(自分の重要な手駒を除く)運営魔法少女にのみ配布されたトート・アリア謹製の強化アイテム。見た目は真っ黒なゴン太の針。
     心臓に突き刺すと使用者の魔力を吸い上げ、生命力に還元して肉体を強化する。
     ハーゲンに搭載されていた魔力リアクターの試作品であり、魔力の供給先が使用者自身であること以外はほぼ同じ。
     しかし試作品の試作品であることから危険な副作用も多いが「運営に協力する参加者と敵対参加者の共倒れ+あえてアリアの技術力を低く見積らせる」一石三鳥を狙ったものであるので問題視されていない。

  • 297二次元好きの匿名さん25/02/18(火) 23:10:42

    メンダシウムの現在ってどうなってたんだっけ?
    敗北した後放置だったら彼女を素材にしたアロンダイトの杖系アイテムでも考えようかな…

  • 298二次元好きの匿名さん25/02/18(火) 23:20:53

    メンダシウムはもうすでにマジックアイテムになって本編に登場してますね

  • 299二次元好きの匿名さん25/02/19(水) 07:16:25

    このレスは削除されています

  • 300二次元好きの匿名さん25/02/19(水) 07:49:20

    植物園の館長に成れそうにない場所が選ばれたなぁ…

  • 301二次元好きの匿名さん25/02/19(水) 12:54:33

    地下防空壕はハスキーロアが鍵かな
    相手の動き止めるのはバルバロイができそうだし当たれば殺せるならウェンディゴの魔法も作用して来そうだし

  • 302二次元好きの匿名さん25/02/19(水) 14:42:24

    勇者VSアイン&デスグラシア

    スペックは四強に匹敵するアインとデスグラシアを勇者の経験値にしてレベルカンスト

    普通なら【天上】補正で楽勝なところをRPGで言うところの『縛りプレイ』させて敢えて追い込むことで覚醒させる?みたいな狙いがあるのか

  • 303二次元好きの匿名さん25/02/19(水) 18:41:17

    そういえば始まりの魔法少女も死にかけから覚醒してたか
    もともと【天上】らしい『勇者』を追い覚醒したら何が起きるのか

  • 304◆xaazwm17IRZa25/02/19(水) 22:15:59

    投下します……!

  • 305◆xaazwm17IRZa25/02/19(水) 22:16:30

     掩蔽壕の司令官室で、ジャックは奇妙な形状の銃を撫でていた。

     掩蔽壕に安置されたマジックアイテム、魔銃『クリムゾン』。魔法『魂を付け狙うよ』により、相手の魂を自動追尾する。

    「ふーん」

     既に、ジャックの魔法『なんでも武器に変えられるよ』は発動している。本来『クリムゾン』は一射ごとにかなりの魔力を消耗する代物だが、ジャックは自らの魔法で燃費を改良していた。

     司令官室に備えられたモニターからは掩蔽壕及び周囲の地下水道の様子が写されている。

    「来ないわねぇ」

     此処の魔法陣を破壊できなければみんな死ぬのだ。絶対に来るのは間違いない。

     だが、ジャックの期待を裏切って、獲物は姿を見せない。

     ——モニターに光が走った。

     ジャックは目を見開く。人型ではない。光弾、と形容するしかないものが、弾丸のような速さで地下水道を通過する。

     ジャックの反応は素早かった。

  • 306◆xaazwm17IRZa25/02/19(水) 22:17:03

     司令官室に、光弾が到達する。

     鉄製の壁・扉に穴を開け、一切減速することなく飛来した魔弾に対して、ジャックは『クリムゾン』で迎撃した。

     ジャックは銃器の扱いは素人だ。が、天才なので当然早撃ちもできる。今は亡きデッドマンズ・ハンドと比較すれば拙いものではあるが、魔弾到達前に引き金を引くことは出来た。

     クリムゾンの弾丸は、『魂』へと引き寄せられ、魔弾と相殺される。

     自分が何をされているのか、ジャックは瞬時に理解した。

     司令官室から飛び出る。さっき相殺したのとは別の魔弾に狙われるが、再びクリムゾンで相殺。

    (狙撃されてるわね……)

     モニターに下手人は映っていなかった。ならば相手は『透明』か『外部に居る』かだ。

     『透明』の線は無い。もっとジャックに近づいてから攻撃すればいいからだ。

     ならば、相手は『外部からジャックを狙撃』している。

  • 307◆xaazwm17IRZa25/02/19(水) 22:17:35

     目視できない距離・場所に居るジャックに対して、一方的に魔弾を撃ち続けている。

    (そっちがその気なら)

     ジャックは迷いなく駆けた。

     まるで、敵が何処にいるかを理解しているかのように。

     飛来する魔弾を全て相殺し、地下水道を駆け抜ける。

     一度も被弾することなく、ジャックは地上へと帰還し。

    「『ラグナロク』ッ!」

     地下水道の入り口に待ち構えていたネコサンダーは、雷を落とした。

     並の魔法少女なら一撃で戦闘不能にする稲妻の一撃。

     それをジャックは——無造作に剣で切り払った。

    「嘘っ、雷切!?」

    「いや、あれは……なるほど、『アロンダイト』の忘れ形見か」

     ネコサンダーが驚き、アルセーヌは解説する。

     ジャックは、地下水道の入り口に待ち構えていた三人の魔法少女を睨む。

  • 308◆xaazwm17IRZa25/02/19(水) 22:18:11

     一人は知っていた。七海真美とテンガイが戦っていたときに、テンガイに怯えていた奴だ。

     後の二人は知らない。小人みたいな奴と、猫耳を生やした奴。

    「こいつが、ティターニアを殺した……」

     ネコサンダーは、雷を切り落とし、自分たちの作戦を踏破した殺人鬼を睨む。

    「良かった、ちゃんと先生死んでたのね」

     あれで生きてたらどうしようかと思ったわ、とジャックは言った。

     ネコサンダー達の作戦は、失敗している。

     掩蔽壕ではミストアイやネコサンダーは本領を発揮できない。

     それでも、二人が掩蔽壕を選んだのは何故か。

     ——入る必要が無いからだ。

     今のミストアイは、メンダシウム・トランプを使うことで魔弾を自在に操作できる。

     地下水道の入り口から魔弾を撃ち込めば、魂を付随させ視覚共有した魔弾は敵まで最短で届く。

  • 309◆xaazwm17IRZa25/02/19(水) 22:18:39

     仮に相手が魔弾に対応する手段があるとしても、魔法陣を守りながら撃ち合いに徹するより、狙撃手を直接叩きに来るはず。

     出てきたところを、ネコサンダーが雷撃で倒す。

     不用意に近づく必要が無く、相手が反応できないほど速く、かつ相手を戦闘不能に追い込みながらも命を奪わないように調整できる。ネコサンダーの雷撃は、この戦法に合っていた。

     問題を挙げるならば、ジャックがネコサンダーの雷撃に反応できる戦闘センスを持ち、かつ雷撃を無効化する手段を有していたことだ。

    「あれが例の剣か……」

     ミストアイは呟く。ジャックが異様な剣を持っていることは、ああああを通して対運営チームで共有されている。

    (誰がどの魔法陣を守っているかまで把握できたら違う作戦があったんだろうけど、そこまではメリィやクレアボヤンスでも追い切れなかった……)

     だが、これは僥倖だ。とミストアイは覚悟を固める。

     メリィの情報によると、テンガイはこのジャックに殺されたらしい。

     ならば、そのジャックを自分が殺せば、テンガイを克服したことになる。

  • 310◆xaazwm17IRZa25/02/19(水) 22:20:36

     アルセーヌは、興味深そうに魔剣を構えるジャックを眺めている。

     ジャックもまた、三人を値踏みしていた。

    「根が暗そう」

     と、ネコサンダーを指差す。

    「拗らせすぎだし、血生臭すぎ」

     と、ミストアイを指差す。

    「コスプレ」

     と、アルセーヌを指差す。

     七海真美、ハスキーロアのような上玉は居なかった。普段のジャックならこの三人は殺さない。

     が、既にテンガイで最悪の義務的殺人を経験している。ジャックは殺人の嫌悪感に耐性をつけていた。
     

  • 311◆xaazwm17IRZa25/02/19(水) 22:20:53

    投下を終了します

  • 312二次元好きの匿名さん25/02/19(水) 22:28:02

    ジャックの値踏みがシンプルな罵倒で草

  • 313二次元好きの匿名さん25/02/19(水) 22:28:33

    なんとなく、主義を曲げちゃったことが致命傷になりそうな気がするな

  • 314二次元好きの匿名さん25/02/19(水) 22:43:17

    魔法少女の仕組みがわかってきたからジャックが持ってた全能感というか「自分が望んだ通りにいく」
    という主人公感が損なわれたのって確かに致命的っぽい

  • 315二次元好きの匿名さん25/02/20(木) 00:45:04

    『嫌なこと、義務的なことを自分を曲げてできる』のって、それこそテンガイがそうならないよう気を張ってた『大人』じゃんね 

  • 316二次元好きの匿名さん25/02/20(木) 07:22:25

    そのくせ他人を舐め腐ったいつもの態度は健在なので危なっかしい

  • 317二次元好きの匿名さん25/02/20(木) 14:32:43

    保守

  • 318二次元好きの匿名さん25/02/20(木) 21:31:02

    スピードランサーとコンビを組んで魔法国直々の任務に赴いたクリックベイトにこっそりバレないように着いていくネコ→パラサイトドールにもののついでで洗脳される

    みたいな感じかな? スピードランサーとは面識無かったし

  • 319二次元好きの匿名さん25/02/20(木) 21:33:35

    ナチス謹製の強化アイテムの〝副作用〟で何が起きるか楽しみ
    そろそろジャックちゃんも天才殺人鬼ムーブだけじゃなくて泥被んなきゃ! 「悲惨な最期を遂げる」って書かれちゃってるし!

  • 320二次元好きの匿名さん25/02/20(木) 21:33:45

    ぶっちゃけ真美ちゃん死ななかったら今頃ジャックも魔法陣攻略してただろうし、ちゃっかり生還もありえたんよな
    どうも運営側からも殺人鬼バレてないっぽいし

  • 321二次元好きの匿名さん25/02/20(木) 21:36:06

    >>320

    >>3

    ジャックは生存ダイス2なので…残念ながら…

  • 322二次元好きの匿名さん25/02/20(木) 21:37:06

    >>319


    「ワタシ、なちすカラ来タ アリジョーブ博士デース」


    「アタナハ今ノ自分ニ不満デスネ?デモ、モウダイジョーブ!アナタヲぱわーあっぷシテアゲマショー!」


    「科学ノ進歩、発展ニ犠牲ハツキモノデース」


    >>319

  • 323二次元好きの匿名さん25/02/20(木) 21:46:54

    ミョルニルの再生能力が話題になったけど、年末くらいに死んだハーゲンの無尽蔵に近しい魔力供給に支えられた自己再生能力とだったらやっぱりミョルニルの方が上なのかしら

    1秒間に千本の槍爆撃でぐちゃどろミンチにされるとその場から動けないハーゲンと違ってミンチ状態でも抜け出せるとか?

    それとも再生が早すぎてミンチにならずに抜け出せるとかかな?

  • 324二次元好きの匿名さん25/02/20(木) 23:12:14

    ミョルニルとスピードランサーがクリックベイトの取り合いで喧嘩になったら…
    どっちも通常戦闘する分には燃費良いし、ミョルニルの攻撃は一発も当たらなさそうだし、スピードランサーは決定打が無いしで決着つかずにクリックベイトに怒られて終わりそう

  • 325二次元好きの匿名さん25/02/21(金) 06:13:34

    >>323

    本来なら脳と心臓が弱点のミョルニルがガン不利

    ドレッドノート戦時のオーバースペック状態で再生能力では互角、そのうえで本体の魔力を使う(=仮に絶招食らったら終わる)分やっぱりミョルニル微不利かなって

  • 326二次元好きの匿名さん25/02/21(金) 07:47:05

    こいう時、攻撃を避けれるアドバンテージは高いなぁ

  • 327二次元好きの匿名さん25/02/21(金) 10:50:30

    >>323

    ゆっくりになったときボディだけ動かしてたのを見るにミンチ状態でも動けそうな気はする

  • 328二次元好きの匿名さん25/02/21(金) 17:03:24

    保守

  • 329二次元好きの匿名さん25/02/21(金) 20:13:35

    ミョルニル最大の特色は他者治療が可能な点だよね
    今回みたいにチームアップする場合めちゃくちゃ活きてくるし特殊な魔法やアイテム使う相手じゃないならタンクも出来る

  • 330◆lsT7MxWz0625/02/21(金) 21:10:05

    ゆっクリックベイトだよ
    せっかくだから僕もミョルニルに合わせて生首になってみたよ

  • 331◆xaazwm17IRZa25/02/21(金) 21:18:36

    本日も始めさせて頂きます……!




    >>323

    【覚醒ミョルニルはスピードランサーの「千槍」を浴びるとどうなるのか】

    dice1d3=3 (3)

    1ミンチになったまま動き出すよ

    2再生速度が追いつかず何もできなくなるよ、千槍が終わったら再生するよ

    3安価&ダイス

  • 332◆xaazwm17IRZa25/02/21(金) 21:19:57

    ゆっくりが二人!?

  • 333◆xaazwm17IRZa25/02/21(金) 21:23:20

    というわけで先着3つの意見からダイスで決めます~

    テーマ【覚醒ミョルニルはスピードランサーの「千槍」を浴びるとどうなるのか】

    既に挙がった意見でも、新設定&新解釈(更に強くなる、実は死ぬなど)でも大丈夫です……!

  • 334二次元好きの匿名さん25/02/21(金) 21:24:32

    「再生速度が速すぎて人の形は保ってられる」けど「攻撃速度が速すぎてその場から動けない」ゲームのバグみたいな現象が発生するよ

  • 335二次元好きの匿名さん25/02/21(金) 21:25:04

    ミンチ状態でも動けるけど地面が陥没するせいで抜け出せない

  • 336二次元好きの匿名さん25/02/21(金) 21:25:50

    ミンチになるけどなった瞬間に再生する
    再生→またミンチになるまでの間は動けるけどその時間はほとんどないので実質その場から動けない

  • 337二次元好きの匿名さん25/02/21(金) 21:27:21

    ちなみにスレ主さんの解釈的にクリックベイト以外のクリックベイトハーレムメンバーがそれぞれ面識あったら楽しくやれてそうとかありますか?

  • 338◆xaazwm17IRZa25/02/21(金) 21:29:26

    ありがとうございます~

    dice1d3=3 (3)

    1>>334

    2>>335

    3>>336

  • 339◆xaazwm17IRZa25/02/21(金) 21:31:14

    Q【覚醒ミョルニルはスピードランサーの「千槍」を浴びるとどうなるのか】

    A【ミンチになるけどなった瞬間に再生する。再生→またミンチになるまでの間は動けるけどその時間はほとんどないので実質その場から動けない】

    ということになりました……!

  • 340二次元好きの匿名さん25/02/21(金) 21:35:28

    ハーゲンが喰らった時とほぼ同じ感じ?
    魔力供給できるハーゲンと違ってミョルニルは途中で魔力尽きちゃいそうな感じあるけどそこらへんどうなんでしょ?

  • 341◆xaazwm17IRZa25/02/21(金) 21:39:05

    >>337

    【クリックベイトハーレム】

    クリックベイト/ミョルニル/ネコサンダー/抜刀 金/スピードランサー


    私の解釈だと、どの魔法少女も本来は人当たりが良くてそこまで我が強いタイプじゃないので、面識あったら楽しくやれてたと思います……!


    ただ、仮にチームを結成したとしても、悩みや弱みを打ち明けられるのは各メンバーそれぞれクリックベイトだけになるかも……。基本的に自分の弱みを共有したがらない人ばかりなので……。

  • 342二次元好きの匿名さん25/02/21(金) 21:40:46

    >>341

    戦力ならともかく精神面では頼られるぶんには構わないけど頼るタイプのメンバーではなさそうだよね

  • 343二次元好きの匿名さん25/02/21(金) 21:41:29

    金(🎲4)が一周回ってハーレムのメンバーに数えられてるの笑う

  • 344◆xaazwm17IRZa25/02/21(金) 21:43:20

    >>340

    ミョルニルの魔法の本質は【損なわれない】なので、魔力も減らないです。


    戦闘力ならハーゲンが上ですが、純粋な回復力ならミョルニルが上です。

  • 345二次元好きの匿名さん25/02/21(金) 21:45:58

    あと覚醒ミョルニルは他人のダメージは何処まで治せるんだろう
    据え置きなのか覚醒したことでこっちも強化されてるのか

  • 346◆xaazwm17IRZa25/02/21(金) 21:50:32

    >>345

    【覚醒ミョルニルは他者をどこまで治せるのか】

    dice1d3=1 (1)

    1覚醒前と変わらないよ。『手脚の復元は不可能だが繋げる程度までなら可能』

    2覚醒前より性能が上がってるよ。『手足も復元可能』

    3安価&ダイス

  • 347◆xaazwm17IRZa25/02/21(金) 21:51:05

    あくまで『手脚の復元は不可能だが繋げる程度までなら可能』だそうです……!

  • 348二次元好きの匿名さん25/02/21(金) 21:53:20

    ふむ
    ってことは本質的には自分の為の魔法なのかな

  • 349二次元好きの匿名さん25/02/21(金) 21:54:08

    "損なわれない"を文字通りに受け取るなら他人を修復できる方が例外というかおまけ程度の能力なんだろうな

  • 350◆xaazwm17IRZa25/02/21(金) 21:58:32

    >>319

    本編投下始める前にもう一つこれも……!


    【魔銃クリムゾンが使用者にもたらす「破滅」とは?】

    dice1d3=1 (1)

    1精神が狂気に侵される

    2幸運値が異常に下がる

    3安価&ダイス

  • 351二次元好きの匿名さん25/02/21(金) 22:00:39

    狂気の世界の、始まりだぜぇ!

  • 352二次元好きの匿名さん25/02/21(金) 22:00:54

    ジャック元から狂ってない…?

  • 353二次元好きの匿名さん25/02/21(金) 22:01:01

    哀れな殺人鬼よぉ! お前を不幸が襲うッ!

  • 354二次元好きの匿名さん25/02/21(金) 22:02:11

    狂気に侵されて大して好きでもない子を殺しても快楽を覚えるようになっちゃったりとか(主義破壊系)

  • 355二次元好きの匿名さん25/02/21(金) 22:02:42

    ナチス針刺したらどうなるんやろなぁ

  • 356二次元好きの匿名さん25/02/21(金) 22:03:18

    >>349

    ミョルニルの精神性が関係してそうな気はする。お人好しっぽいし

  • 357二次元好きの匿名さん25/02/21(金) 22:04:57

    得体のしれない独自ルールで動くやつからただの狂気に侵された殺人鬼にスケールが落ちちゃう感じね…

  • 358◆xaazwm17IRZa25/02/21(金) 22:05:50

    どうやら魔銃クリムゾンは使う度に正気を失っていく呪われたアイテムのようです……!
    ジャックは自らの魔法でその副作用を抑えていますが、果たしてどれだけ持つのか……
    ジャック?「せっかくだから、私はこの掩蔽壕を選ぶわ!」

  • 359◆xaazwm17IRZa25/02/21(金) 22:06:38

    23時くらいまでちょっとずつ投下していきます

  • 360二次元好きの匿名さん25/02/21(金) 22:06:47

    デ ス ク リ ム ゾ ン

  • 361◆xaazwm17IRZa25/02/21(金) 22:20:32

    (二人……いえ、あの小さいのも魔法少女なのかしら)

     ジャックは冷静に敵を観察していた。好みか好みじゃないかチェックは既に済ませている。全員好みじゃない。殺したくないが、真美のために狩る。

     一人は魔弾使い、一人は雷使い。
     魔弾は魔銃で、雷は魔剣で対応できる。

    (けど、考慮しなきゃいけないのは……)

     この魔法陣防衛戦。実のところ防衛側は『ハンデ』を背負っている。
     攻略側は成功すればこれ以上戦闘の必要は無く、この戦いに余力を全てつぎ込める。
     一方、防衛側はあくまでこの戦いは優勝までの過程の一つであり、防衛に成功した後に改めて優勝者を決めるための殺し合いがある。

     余力を残す必要がある。
     出来るか、と自らに問う――のは凡人である。
     ジャックは天才だ。優勝するのは自分であると、それが当たり前の摂理であると信じきっている。余力を残して勝つなど、出来て当たり前だ。疑うことすらない。

     瞬時にジャックの頭に戦術が構築される。いかに効率よく勝つか、ロードマップが組み立てられていく。

     ジャックは引き金を引き、無造作にレーザーをばら撒いた。精神を浸蝕する狂気を、魔法で抑えつける。

     ただの銃ごときが、自分に逆らうことを許さない。
     強固な自尊心が、副作用という道理を踏みつぶす。
     どこまでも理不尽に、ジャック・ザ・リッパーはキルスコアを増やす準備を始める。

  • 362◆xaazwm17IRZa25/02/21(金) 22:30:23

    (魔銃クリムゾン……できれば先に手にしたかったけども)

     ミストアイの肩に座りながら、マスコット・アルセーヌも思索を巡らせる。
     ネコサンダーの『ラグナロク』で相手を仕留めるのが最高だった。が、現れたのはジャック。著名な盗賊に名をあやかった者としては、ロンドンの殺人鬼を魔法少女名にするジャックには好感さえ持っているが、それはそれ。

    (このメンバーで相手をするには少し荷が重いな。ミストアイもドミナートルからの連戦だし。——うん、だからズルをしよう)

     迫りくるレーザーを魔弾で撃ち落とすミストアイ。死角をカバーしながらも、アルセーヌは笑みを浮かべた。

     何もできない、魔力ももうないと嘯くアルセーヌだが、それは自己申告に過ぎない。
     メンダシウム・トランプで魂を分割し、分身を既に掩蔽壕に放っている。

     ジャックが掩蔽壕の外に出ている間に、掩蔽壕内の魔法陣を破壊する。
     腐っても元運営トップ(2時間程度)。掩蔽壕の内部構造は破壊しており、魔法陣も難なく……。

  • 363◆xaazwm17IRZa25/02/21(金) 22:37:39

    「あれ?」

     アルセーヌは首を傾げた。
     魔法陣が、無い。
     簡単に破壊できないように工夫されているかもとは考えていたが、そもそも無いとは。

    (メリィに騙された? いや、不信感を持っている私だけならともかくミストアイまで危険に晒すようなことはしないはず……)

     ジャックのクリムゾンとミストアイの魔弾がぶつかり合い花火のように弾けるなか、ミストアイは肩の部長が困惑していることを感じ取った。部室でゲームをしていると時々見せる表情。

     何か部長の当てが外れたんだ、とミストアイは思い、即座に射撃戦に集中する。

    「探し物は見つかったかしら」

     ジャックは悪意に満ちた笑顔を浮かべると――コートの中から、魔法陣が刻まれたプレートを取り出した。

  • 364◆xaazwm17IRZa25/02/21(金) 22:45:04

     アルセーヌに遅れて、ミストアイも仮面の下で驚愕する。
     魔法陣は施設に刻まれている。それがメリィと千里眼の魔法少女の出した答えだった。
     だからミストアイは、壁や床に、魔法の儀式のように刻まれているものと思っていた。

    (携帯できるのか)

     実のところ、ジャックの取った手段は裏技である。本来、魔法陣は刻まれた建物に結びついており、魔法陣の箇所だけナイフで削り取って当該施設の外に持ち出せば、当然効力を失う。

     だが、ジャックの魔法は侵食魔法。触れたものを自由に操る。
     これにより、魔法陣を『外部に持ち出しても効力を失わないもの』に改変した。

    (この戦い、ジャックを逃がせば負けか)

     元より、悪を逃がすつもりはないが。——山田浅悧のように。

    (っ……私は)

     

  • 365◆xaazwm17IRZa25/02/21(金) 22:58:19

     集った魔法少女四人。実のところ最も体力・魔力が万全なのはネコサンダーである。連戦続きのジャック、ミストアイと比較し、ネコサンダーはブレイズドラゴンに殺され、蘇生されて以来一度も戦闘をしていない。

    (私が一番頑張らないと、けど難しいわ……いや、ニャ!)

     己を鼓舞するために内心でもキャラ付けを頑張るが、それで事態は好転しない。

     通常の魔法少女なら回避不能、一撃で戦闘不能の雷攻撃『ラグナロク』がジャックには通用しない。放った雷は、全てジャックの持つ禍々しい雰囲気の剣で切り払われる。

     かといって、近づく勇気は持てない。
     ジャックと交戦したああああ(名前を聞いて驚愕した、一世一代の魔法少女名をそんな適当な名前にするなんて……)の証言によると、ジャックの魔剣には相手の魔法を切り裂く効果があるという。

     不用意に突進し、雷を切り捨てられ、無防備になったところを殺される。ブレイズドラゴンに挑み命を奪われてから数時間しか経っていない。
     
     殺された、というトラウマは心に強く根付いている。だからか、足が竦む。
     それは臆病になったからか、それとも盤面を正しく読み取れるようになってきたからか。

     
     

  • 366◆xaazwm17IRZa25/02/21(金) 23:00:39

    短いですが、本日の投下はここまでとさせていただきます……!

  • 367二次元好きの匿名さん25/02/22(土) 02:21:44

    お疲れ様です

  • 368二次元好きの匿名さん25/02/22(土) 04:32:49

    お疲れ様でした〜!!
    そういえば気の早い話だけど、終盤なので次作の予定なども気になってきたな…
    確かもし開催するなら異世界と魔王?みたいな話だったような気がするけど…

  • 369二次元好きの匿名さん25/02/22(土) 08:34:22

  • 370二次元好きの匿名さん25/02/22(土) 14:20:40

    コスト踏み倒しや裏技使用とかルールの範囲で滅茶苦茶しててすき

  • 371二次元好きの匿名さん25/02/22(土) 14:42:50

    魔力は有限のリソースでジャックはすでに色々消耗してる

    そんな中で魔法使ってるのが
    ・魔剣(解除されたらヤバい)
    ・クリムゾン(解除されたらヤバい)
    ・持ち運び魔法陣(解除されたらヤバい)

    一番下のは使ってなきゃ壊されてたし仕方ないとはいえ、今ってアホみたいに重り着けて戦ってるみたいなものだよなぁ…どっかで限界来そう

  • 372二次元好きの匿名さん25/02/22(土) 18:24:54

    本人の意識しないところで急に限界きそう

  • 373二次元好きの匿名さん25/02/22(土) 20:00:37

    ネコサンダーの強化方針は安価ダイスで決定するのかしら

  • 374◆xaazwm17IRZa25/02/22(土) 23:25:13

    本日も始めさせていただきます~



    >>368

    次作はまだちょっと絞り切れてなくて

    ・魔王が開催するバトルロワイアル

    ・異世界から召喚された100人の勇者がどんどん死にながら魔王討伐を目指す話

    ・異修羅イメージのファンタジートーナメント

    ・ファンタジー世界の世界大戦(BASARAやワンピースみたいな、超人が戦況を左右するタイプのやつ)

    と色々考えています……!


    ただ、4月から忙しくなるので、今以上に更新遅くなりそうなんですよね……。


    いっそ金曜夜~日曜夜に終わる規模の企画を月一開催の方が良いのかな、とも思ったり……。

  • 375◆xaazwm17IRZa25/02/22(土) 23:25:47

    投下します

  • 376◆xaazwm17IRZa25/02/22(土) 23:26:19

     闇雲に突っ込めば魔剣に殺される。

     膠着状態が続く中、ジャックは微かに笑った。

     するり、とジャックのコート、その内側から少女が姿を現わす。正確には、少女の姿を模したインテリジェンスウェポン。

     ジャックの両手は塞がっていた。コートの内側が四次元ポケットのようになっていて、武器を収納・自由に取り出せる。ここまでは魔法少女たちは把握していた。

     ——ジャックは、手を使わなくてもコートから武器を取り出せる。その簡単な事実が、戦局を大きく変える。

    「マミちゃん」

     と、ジャックはインテリジェンスウェポンに語り掛けた。

    「今よ」

    「分かったよ、ジャックお姉ちゃん!」

     インテリジェンスウェポンが光り、大爆発を起こした。

  • 377◆xaazwm17IRZa25/02/22(土) 23:26:46



     間近に熱と光が迫った時、ミストアイは咄嗟にアルセーヌを胸に抱えた。

     メンダシウム・トランプで壁を作る時間は無かった。

     思考する時間すらも。アルセーヌを庇ったのは無意識の行動だった。全身を衝撃に晒され、ミストアイは意識を失う。

     部長の戸惑う声が微かに聞こえた。

  • 378◆xaazwm17IRZa25/02/22(土) 23:27:24



     ネコサンダーが目を覚ますと、世界は暗闇だった。

     深い深海の底にいるかのような、宇宙空間にいるような、不思議な世界。

    (もしかして、私死んだの……?)

     せっかく生き返ったのに、何も為せないまま呆気なく死んでしまった。

    「そんなの、嫌だ……」

    『力が欲しいか?』

     遠雷のような、問いかける声があった。

     反射的に、ネコサンダーは振り返った。

    「ひっ……」

     悲鳴が零れる。

  • 379◆xaazwm17IRZa25/02/22(土) 23:27:58

     竜が、ネコサンダーを見下ろしている。

     ライトノベルでは、ドラゴンなど珍しくもない。どの作品でも強キャラであり、しかし主人公は竜を倒したり、あるいは友人になったり、家族になったりする。

     現実は、違う。竜を前にして、ネコサンダーは腰を抜かした。

     あるいは、ゲームが始まる前のネコサンダーなら自らの強さを頼って竜に形だけでも張り合えたかもしれない。

     だが、今のネコサンダーは、つい数時間前にブレイズドラゴンに殺されたばかりなのだ。

     自分が弱いことも、自分が死ぬことも、理解してしまった。

     竜という、純粋な暴力の象徴が、たまらなく怖い。

    「……っ、お前は、何者ニャ!」

     それでも、なけなしの勇気を振り絞って、ネコサンダーは竜に問いかけた。

    『我が名は、パラサイトドール。その一部。貴様の内に潜みしもの』

    「ま、まさか、私の第二人格!?」

    『違う』

  • 380◆xaazwm17IRZa25/02/22(土) 23:28:49

     ネコサンダーは知る由も無い。自分がパラサイトドールによって『影』を埋め込まれ、殺し合いを促進させる道具にされていたかもしれないなど。

     気を失っている間に本体が倒され、それによって影もまた役割を喪失した。

    『力が欲しいか?』

     と、影は問うた。ネコサンダーは、頷く。自分がもっと強ければ、クリックベイトは死なずに済んだ。

     他にも、助かった人はたくさん居たはずなのだ。

     ライトノベルや漫画でも、「雷」の力は強力だ。不甲斐ないのは、ネコサンダー本人の素質……努力不足のせいだ。ネコサンダーは、そう考える。

     大好きなラノベを読む時間、コスプレイヤ―として活動していた時間、そういった時間を全部修練に使えば、こんな未来は来なかったのかもしれない。

     ブレイズドラゴンをあっさり撃破して、クリックベイトが足止めしたというオオカワウソという魔法少女も返り討ちにして、スマートに時間を解決できたのかもしれない。

    「欲しいよ」

     と、ネコサンダーは呟いた。

  • 381◆xaazwm17IRZa25/02/22(土) 23:30:22

    「今までの私は——間違えていた。私は、変わりたい」

    『ならば我が支配を受け入れろ』

     と、影は言った。

    『そうすれば貴様を高みに連れて行ってやる』

    「……本当に?」

    『我を信じよ、魔法少女』

     ネコサンダーは、ブレイズドラゴンに殺された。もっと強い自分になるには、自分もドラゴンになるしか無いのかもしれない。

     ネコサンダーはゆっくりと立ち上がり、竜へと近づく。

     げら、と竜は嗤った。

     

  • 382◆xaazwm17IRZa25/02/22(土) 23:30:39

     ――次の瞬間、トラックが高速で竜にぶつかった。

    『ぐわああああああああああああああああっ!』

     断末魔を上げ、竜は轢殺された。

     唐突に起きた大事故に、ネコサンダーはぽかんと口を開けた。

    「君は間違えていないよ、ネコサンダー」

     懐かしい声が聞こえた。もう二度と聞けないはずの声だった。

    「クリックベイト……先輩……?」

    「やぁ、しばらくぶりだね、ネコサンダー後輩」

     生前と何ら変わらない姿で、クリックベイトはネコサンダーに笑いかけた。

  • 383◆xaazwm17IRZa25/02/22(土) 23:34:15

    投下を終了します



    >>373

    後のナイトメア★メリィと同じく、ネコサンダーの強化も安価&ダイスで募集します


    先着三つの意見からダイスで決定します

    新解釈、新設定でも大丈夫です

    世界観が壊れそうな意見(一撃で宇宙破壊/版権キャラに変身など)はあらかじめ弾くこともあるので、ご了承ください……

  • 384二次元好きの匿名さん25/02/22(土) 23:36:59

    ブレイズドラゴンに叩き込まれた『気』と竜の魔力が奇跡のフュージョン。ジャックの斬撃がカモに見えるレベルの格闘センスと雷に『気』と竜の魔力を込める必殺技〝猫竜拳〟(ネコ命名)を獲得
    ついでにコスチュームが雷模様の入ったボディスーツに変化してネコサンダーアレンジされたブレイズドラゴンっぽくなる

  • 385二次元好きの匿名さん25/02/22(土) 23:37:20

    パラサイトドール…というより本来の岸村文華の人格(記憶等は失われている)を宿したチビドラゴンがマスコットになる
    また、雷で生成したドラゴンを複数操ってオールレンジ攻撃できるようになる。ネコサンダーの思考処理では操れないが、マスコットが謂わゆる火器管制を熟してくれるのでモーマンタイ

  • 386二次元好きの匿名さん25/02/22(土) 23:40:41

    今までは拡散させるだけだったのが、雷に竜の魔力を混ぜて収束して操れるようになった。魔法少女コスチュームは動きやすい、ドラゴンの装甲をあしらったレオタードスーツに変化(猫耳、尻尾はそのまま)
    近接戦では手甲から発振するビームサーベル、遠距離ではアルセーヌが引くレベルの貫徹力を秘めたバスターライフルめいたビームキャノンになる

  • 387◆xaazwm17IRZa25/02/22(土) 23:53:30

    どれも強そうかつ面白そうで一つに決めるのが勿体ないですね……!


    dice1d3=2 (2)

    1>>384

    2>>385

    3>>386

  • 388◆xaazwm17IRZa25/02/23(日) 00:25:36

    強化されたネコサンダーVSジャックは明日以降になります……!
    本日も感想や安価、ありがとうございました……!

  • 389二次元好きの匿名さん25/02/23(日) 00:29:28

    天才だから12チャンネルで4機バラバラに動かせます、みたいな?

  • 390二次元好きの匿名さん25/02/23(日) 00:29:32

    お疲れ様でした〜!
    強化案はチビパラさんが採用か…
    そして転生勇者ロワ(仮)マジで楽しみすぎるな…キャラクター100人って裁ききれるのか未知数すぎるけど…

  • 391二次元好きの匿名さん25/02/23(日) 00:33:59

    魔剣を振り回せる範囲しか魔法を消せない以上、全方位攻撃されたら無力になるのか
    そしてファンネルを担当してくれるのは記憶喪失のパラさん太鼓判付きのSSR級天才少女か……

    さては強いな?

  • 392二次元好きの匿名さん25/02/23(日) 01:32:20

    チビゴンに任せるばかりでなく、ネコサンダーと連携攻撃もやってくれるかもしれない。電撃ドラゴンを合体させて大火力ビームキャノン的な

    ドラゴンファンネルを魔法を殺す魔剣で切っても本体ノーダメなので、魔力が続く限りパラさんが依代に選ぶレベルの天才少女の布陣で全方位から削り殺される、アロンダイト特攻みてえな強化形態

  • 393二次元好きの匿名さん25/02/23(日) 07:10:53

    突然トラックに轢かれる竜の絵面シュールすぎる


    >>374

    開き直って投下毎にスレ立て→落とす→また立てるを繰り返すとか……いや駄目か

    もしくはキャラ募集+導入だけあにまんでやって後はdiscordなり外部でやる?

  • 394二次元好きの匿名さん25/02/23(日) 11:22:59

    竜殺しトラック拳!… パラさんは死ぬ

  • 395二次元好きの匿名さん25/02/23(日) 14:30:11

    前作のバトロワも最初は1週間で終わるって話だったし…次回作も結局週末の3日では収まらない気もするな
    それに欲を言えば、時間が掛かってもスレ主の書く長編期間がまた見たい
    勿論そちらの都合や体調が最優先ではあるが…

  • 396二次元好きの匿名さん25/02/23(日) 20:55:03

    保守

  • 397二次元好きの匿名さん25/02/23(日) 21:15:01

    次作も楽しみだけどまずは今作の無事な完結を望む
    本来は去年の10月ぐらいまでには完結だったらしいし

  • 398二次元好きの匿名さん25/02/23(日) 21:23:51

    まぁまどマギの映画までって話でもあったし…
    長く見られる分には嬉しいのでこれからも応援させていただきます

  • 399二次元好きの匿名さん25/02/23(日) 23:48:43

    最近落ちがこわいので保守

  • 400二次元好きの匿名さん25/02/23(日) 23:54:33

    こっちとしては完結まで長引いても描写が盛られるぶんには嬉しいしいつも待たせていただくよー

  • 401◆xaazwm17IRZa25/02/24(月) 00:41:38

    本日も始めさせていただきます~



    >>390

    100人勇者の場合は、1投下1殺くらいのノリで進むと思います……!

    「おお勇者たちよ、死んでしまうとは情けない!」

  • 402二次元好きの匿名さん25/02/24(月) 00:45:16

    まってました!

  • 403◆xaazwm17IRZa25/02/24(月) 00:51:39

    暖かい言葉ありがとうございます……!

    4月になったら今より更にスローペースになると思いますが、参加してくださる方がいるなら、続けようと思います……!

    短いですが、投下します

  • 404◆xaazwm17IRZa25/02/24(月) 00:52:17

     轢殺された竜の死体は、液状化し、黒い沼のようになっている。

     そこにクリックベイトは釣り糸を垂らしていた。

     隣に腰を下ろしたネコサンダーは、まじまじと友人を見る。

    「……クリックベイト先輩、実は生きてたニャ?」

     死の瞬間を見たわけではない。あくまで伝聞で聞いただけ。ラノベなら、「本当は生きていた」という展開でも違和感はない。

     クリックベイトは首を横に振った。

    「いいや、僕は死んだよ」

    「じゃあ、今のクリックベイト先輩は……幽霊?」

    「好きに解釈しなよ。幽霊かもしれないし、君が頭の中に創り出した虚像かもしれない。もしかたら敵魔法少女が見せている幻覚かもね」

    「そういう突き放した言い方、本物っぽいニャ……」

     面倒見がいいくせに、言動は冷めている。

    「もう一度言うけど、ネコサンダー、君は何も間違えてない」

     釣り糸を垂らしながら、クリックベイトはのんびりと、されど力強く断言する。

  • 405◆xaazwm17IRZa25/02/24(月) 00:53:05

    「君が読書に耽ったり、コスプレしたり、人生を楽しんだ時間は決して無駄な時間なんかじゃないんだ」

    「でも、もしその時間を全部強くなることに使っていたら……」

    「強くなるってそんな単純な話じゃないよ。あのブレイズドラゴンだって、本業は中華料理屋の店主だ。僕の友人のスピードランサーだって極上の戦士だけど、本業はカメラマンだしね。ティターニアも教師だし」

     修練だけに時間を費やすなんて、逆に効率が悪いんだよ。

     クリックベイトの言葉に、ネコサンダーは苦笑した。

     どうしてクリックベイトがブレイズドラゴンやティターニアのプライベートを知っているのかは、あえて聞かないことにした。幽霊は都合の良い存在なのだろう。

    「相変わらず、クリックベイト先輩は理詰めニャ」

     心配だから、とか。ありのままの君が好きだから、なんて甘やかすことは言わない。

     効率悪いから今の自分を変えようとするな、という身もふたもない、冷たさすら感じる諭し方で。

  • 406◆xaazwm17IRZa25/02/24(月) 00:53:35

     けれどそれをわざわざ伝えるために幽霊として現れるのが、クリックベイトらしいと思えた。

    「まぁでも、強くなりたいって気持ちは、僕にも分かる……お、来た来た」

     クリックベイトはリールを巻き始める。

    「……何してるのニャ? どう考えてもそんな場所に魚は居ないと思うけど」

     竜の死体から変化した沼のような何かだ。魚どころか生物すらいないだろう。

     クリックベイトは素早くリールを回していく。

     糸が張っている。何かが釣れているのだ。

    「ネコサンダー、手伝って!」

     言われて渋々ネコサンダーも竿を持つ。

     確かに引っ張られている感触がある。

    (まさか、ドラゴン釣り?)

     ラノベでもそんな展開は無かった気がする。まだ読んでいないだけであるかもしれないけど。

     やがて、糸が巻き取られ、掛かった獲物が姿を現わした。

  • 407◆xaazwm17IRZa25/02/24(月) 00:54:41

     陸地に打ち上げられたのは——ギャルだった。

    「不条理過ぎる……!」

     思わずネコサンダーは突っ込んでしまった。荒唐無稽を通り越している気がする。

     ギャルは気怠げな顔で、二人を見上げた。

    「ネコサンダー、君は今のままでも十分強いよ。まだ、それに気づいていないだけ」

    「認めてくれるのは嬉しいけど、それとこの人はどう関係してくるの?」

    「彼女は、参加者でこそないけれど、僕らと同じこの儀式の被害者。邪悪な竜に身体を乗っ取られた哀れな少女さ。本当なら僕がサポートしたいけれど、僕にそこまでの力は無い。だから彼女に、ネコサンダーの手助けをお願いしようと思ってね」

    「手助け……」

     クリックベイトはギャルと目を合わせる。

    「一緒に、戦ってくれるのニャ?」

    「…………めんどい」

    「めんどいって言ってるけど!?」

  • 408◆xaazwm17IRZa25/02/24(月) 00:55:17

    「うーん、記憶はサルベージできなかったか……。いや、この子の場合、記憶があっても同じ反応だった気がするな……」

     困ったようにクリックベイトは頬を掻く。

    「……あーしはさ、どうでもいいんだけど……。協力するのも、拒否するのも、どっちも面倒だし……」

     ネコサンダーは面食らう。外見こそネコサンダーが苦手な陽キャ、バリバリのギャルだが、言動はクラスには居なかったタイプだ。ネコサンダーのコミュ力ではどう対応していいのか分からない。

    「ネコサンダーって、言ったっけ……。君はさ、何のために戦うの?」

    「私は……」

     正義感が強い、というわけでもない。クリックベイトを殺した魔法少女への復讐、も少し違う気がする。

     死にたくないから、が一番近いのだろうか。けれど、それなら戦わなければいい。

     自分が率先して魔法陣の攻略に志願したのは……。

    「クリックベイト先輩が、私を庇ってくれた。……私は、その死を無駄にしたくない」

  • 409◆xaazwm17IRZa25/02/24(月) 00:55:42

     別に庇ったわけじゃないよ、とクリックベイトは言った。そういう人だった。

    「ふーん……」

     ギャルの表情は変わらない。やはり自分は主人公じゃないのだろう、とネコサンダーは実感する。

     主人公なら、言葉で人を動かせるはずだから。

    「……確かに、このまま、何もせずに消えたら、今こうやって話している時間が無駄になるね……」

     仕方ないなぁ……といった顔でギャルは立ち上がる。

    「あーしの名前は……ああ、いいや、思い出すの面倒だから名前つけて……」

    「えっと、じゃあ……」

  • 410◆xaazwm17IRZa25/02/24(月) 00:59:21

    投下を終了します

    強化ネコサンダーをサポートする岸村文華(ちびドラゴンマスコット)の名前を募集します

    先着三つの意見からダイスで決めます
    もう1時近いので、ダイスは明日の夜に振ると思います……!

    それでは、本日も感想ありがとうございました~

  • 411二次元好きの匿名さん25/02/24(月) 01:02:52

    キャスパリーグ

  • 412二次元好きの匿名さん25/02/24(月) 01:03:36

    カーバンクル

  • 413二次元好きの匿名さん25/02/24(月) 01:06:17

    メリュジーヌ

  • 414二次元好きの匿名さん25/02/24(月) 01:08:14

    異修羅モチーフのバトロワが一番気になる〜
    個性豊かになりそう

  • 415二次元好きの匿名さん25/02/24(月) 01:13:17

    ちょっと遅れて読みにきたら速攻で3つ集まってて草

  • 416二次元好きの匿名さん25/02/24(月) 01:18:49

    魔王ロワ、参加者は魔王軍幹部とかなのかな
    詳細が気になるという意味では個人的に一番アツい

  • 417二次元好きの匿名さん25/02/24(月) 07:08:43

    乙です、やっぱり強さに気がつく展開は王道でいいですね!
    そしてもし、次回がバトロワ企画でしたら前回も今回も正規参加者募集に間に合わず後追いになってしまったから今度こそ間に合いたいな。

  • 418二次元好きの匿名さん25/02/24(月) 11:22:55

    乙です

  • 419二次元好きの匿名さん25/02/24(月) 17:48:58

    ファンタジーバトロワと異修羅トーナメント面白そう

  • 420二次元好きの匿名さん25/02/24(月) 17:55:19

    本編では実質パラサイトドールだったし、解放された新キャラとして過去に親交のあるクレアボヤンスと絡んでくれたら嬉しい〜

    なんでもできてしまうが故に極度な面倒くさがりになった天才ギャルが一般人感性で頑張るネコサンダーに感化されていく感じだと熱いね

  • 421二次元好きの匿名さん25/02/24(月) 21:16:06

    このレスは削除されています

  • 422二次元好きの匿名さん25/02/24(月) 21:25:24

    拙作ですが、一作目あにまん学園ロワよりドラギモスと、今作魔法少女ロワよりテンガイ様を描かせていただきました

    テンガイは私の確認した限りではイメージ画がなかったので想像ですが…

    これからも引き続き応援させていただきます!!

  • 423二次元好きの匿名さん25/02/24(月) 23:07:07

    ヒャッハーーー!新鮮なファンアートだー!!

  • 424二次元好きの匿名さん25/02/24(月) 23:24:31

    二年ぶりに見た名前にまさかの支援絵まで出てきて横転
    前作ロワはいいぞジョージィ……テンポもよく起承転結がしっかりしてるから読みやすい

  • 425◆xaazwm17IRZa25/02/25(火) 00:21:21

    >>422

    わぁーっ、ありがとうございます……!


    他の方の作品もそうですが、ファンアートを描いていただけるととても嬉しいです……!

    応援していただけて感激です……!


    ドラギモスくんちゃんの少女ちっくな外見からのCV神谷を感じさせるクレバーな顔つき、テンガイの老獪さを感じさせる眼差しが特に最高ですね……!

    互いに中指立てているのも解釈一致です……!


    ちなみにドラギモスの【不明】は全知全能や天上でも突破不可能です。作品を作っている我々でさえ突破できないので。

  • 426◆xaazwm17IRZa25/02/25(火) 00:27:36

    二年経っても前作を評価していだけると嬉しいです……!

    当時より投下頻度は下がってしまったのですが、今作も完結目指して頑張ります……!


    岸村文華(ちびドラゴンマスコット)の名前を決めたいと思います

    dice1d3=2 (2)

    1>>411

    2>>412

    3>>413

  • 427◆xaazwm17IRZa25/02/25(火) 00:29:47

    続きは明日投下します、本日も素敵なイラストや感想を書いていただきありがとうございました……!

  • 428二次元好きの匿名さん25/02/25(火) 00:54:40

    ドラギモスくんちゃんの異能は一部を除いた大概の魔法少女より強そうな廃村の翁にも効いてたからなぁ…
    こういう部を超えた交流みたいな情報もっと見たい

  • 429二次元好きの匿名さん25/02/25(火) 07:51:56

    せっかくだから前作も見に行ってきますね…

  • 430二次元好きの匿名さん25/02/25(火) 11:24:44

    確か1スレ目のどこかにリンクがあったはず

  • 431二次元好きの匿名さん25/02/25(火) 17:05:52

    オリキャラ バトロワ で検索したら出てくるのでそれもオススメしときます。

  • 432二次元好きの匿名さん25/02/25(火) 22:24:02

     Pixai弄ってたらラスボス兼黒幕候補にいつのまにか成り上がっていた全方位ヘイトスピーチナチスことトート・アリアちゃんっぽいものが出来たので、ファンアート代わりにイメージ画像として投げておきます。
     スレ主様はお手隙がありましたら、どうかご査収ください。

     スレ主様のネットミームを交えた軽妙洒脱なセンスでユーモアな(婉曲表現)セリフがポンポン飛び出てくるのが実に素晴らしいキャラ造形。
     また他ラスボス候補が次々と脱落する中しぶとく生き残ってきたのに、よりにもよって最終回でファンブルを叩き出すのが芸術として完璧だったので、ぜひどんな最期を迎えるのか見届けたいキャラの一人ですね……!

  • 433二次元好きの匿名さん25/02/25(火) 22:26:46

    アリアさん、もっと鋭い目つきで軍帽被ってるイメージだったけどこんなかわいい系なのか

  • 434二次元好きの匿名さん25/02/25(火) 22:51:53

    自分も艦これのビスマルク的なの想像してた

  • 435二次元好きの匿名さん25/02/25(火) 23:31:05

    なんだよ…結構可愛いじゃねぇかよ…

  • 436二次元好きの匿名さん25/02/25(火) 23:32:40

    こーいう可愛いロリが毒吐いてるのアリアリアリア
    どうでもいいけどナチ系ってプロンプトにぶち込むと全般アウトなのによく作ったな

  • 437二次元好きの匿名さん25/02/25(火) 23:49:00

    質問会でもネタバレの塊なせいかあんまり触れられないアリアさん
    こんな可愛い顔してやってることがワイヤー振り回して脳味噌クチュクチュするパラさんとマブダチなクソ外道研究者ホムンクルスである

  • 438◆xaazwm17IRZa25/02/26(水) 01:34:58

    >>432

    イラストありがとうございます……! ホムンクルスらしい可愛い外見ですね!


    キャラ造形を褒めていただけて恐縮です、元々の設定が良いからだと思います……!


    せっかくなので設定を一つ開示すると、アーリア人以外を見下しているアリアですが、現在のドイツのことは普通に見下しています。

    「やっぱゆとり世代は駄目だな(笑)」


    また、ナチスがフリー素材として使われていることは寛容です。

    「猿の人間ごっこにいちいち目くじら立てるわけないだろ?」

  • 439◆xaazwm17IRZa25/02/26(水) 01:35:25

    投下します

  • 440◆xaazwm17IRZa25/02/26(水) 01:36:25

    「えっと、じゃあ……カーバンクルで」

     他にもキャスパリーグやメリュジーヌという名前も思い浮かんだが、ネコサンダーは『カーバンクル』という名前をギャルにつけた。

    「りょー」

     名前を気に入ったのかどうかは分からないが、ギャルは返事をする。

     そのやり取りを見守っていたクリックベイトは、よし、と頷いた。

    「じゃあ、僕はもう行くね」

    「クリックベイト先輩……また、会えるよね?」

    「さぁね。でも、後80年くらいは会いたくないな」

     そう言って、クリックベイトはネコサンダーに背を向け、去っていく。

     ライトノベルの主人公なら、こういう時に気の利いたことを言えるのだろう。けれど、ネコサンダーは何も思いつかず。だから、心の底から本心を語った。

    「クリックベイト先輩! 大好き! 毎日とっても楽しかった! 本当に、本当に楽しかったよ! ありがとう!」

     クリックベイトは振り返らなかった。

    「僕も楽しかったよ、ネコサンダー」

     ネコサンダーの視界が、涙で滲んだ。

  • 441◆xaazwm17IRZa25/02/26(水) 01:36:52



     インテリジェンスウェポンの自爆。エネルギー切れが近いこのマジックアイテムをどう活用するか。ジャックは戦闘開始前に準備を終えていた。

     自爆によって生じた爆風はミストアイ、アルセーヌ、ネコサンダーを呑み込んだ。

     同じく至近距離で爆発を浴びたジャックには、殆ど外傷は無かった。事前にジャックを巻き込まないよう自爆するよう、命令している。人間世界の爆弾では不可能な爆発も、魔法国のマジックアイテムなら可能になる。

     全身に火傷を負ったミストアイに、ジャックは魔銃を向ける。

     放っておいても死は免れないだろう。だが、インテリジェンスウェポンや反魂香のような戦局をひっくり返すマジックアイテムが、ミストアイに支給されていないとも限らない。

    「蜂の巣にしてやるわ」

  • 442◆xaazwm17IRZa25/02/26(水) 01:37:22

     ミストアイの全身をレーザーで焼き尽くすことを想像し、ジャックはケヒャヒャと笑った。

     バチリ、と電流が流れるような音が聞こえた。

     魔銃の銃口は、即座にネコサンダーに向いた。瀕死の魔法少女の悪足掻き。それを警戒しての行動だった。

     火花のようなスパーク音が聞こえる。

     撃つべきだ、と思う。煙で視界が晴れない。相手の全身を鑑賞しながらレーザーで焼くべきだ。そっちの方が楽しい。まだ撃ってはいけない。獲物はじっくりと追い込んで……。

     煙の隙間に、ネコサンダーの影が映った。立ち上がっている。ジャックの中で警戒度が上がる。思ったよりダメージが通っていないかもしれない。テンガイのような攻撃回避の魔法を持っていたのか、あるいはティターニアのように異様なタフネスを持っているのか。

    (あるいは、バルバロイみたいな素で頑丈な……いや、これは)

     影は、二つある。

     ネコサンダーの傍らに、小さな、ぬいぐるみのような影がある。

  • 443◆xaazwm17IRZa25/02/26(水) 01:37:54

     パチパチ、と空気を叩く音が聞こえる。

    「っ!」

     ジャックは引き金を引いた。連射した。ティターニアの教え、その一。「相手が何かする前に倒せ」。魔法少女戦の鉄則。どれだけチートな魔法でも、発動する前に本体を倒せば無効化できる。もちろん真の強者になれば例外事項も発生するが。

     ネコサンダーと謎のマスコット、それぞれの魂目掛けてレーザーが走る。先手は討った。相手が何を選択しても、ジャックの勝利は揺るがない。

     本来なら。

     ——稲妻が、レーザーの光を呑み込んだ。魔銃の弾丸は、対象の魂を焼くことなく、霧散する。

     ジャックの顔色が変わった。今起きたことの異常事態に気づいたからだ。

     魔銃からレーザーが放たれた後、相手は魔法を発動した。にも関わらず、レーザーは全て迎撃された。

     考えられることは二つ。相手の魔法の発生及び操作が逸脱した速さなのか。

     あるいは——ジャックの行動が全て読まれていたか。

    (わざと不穏な音を発して、私に速攻を促した……!)

  • 444◆xaazwm17IRZa25/02/26(水) 01:38:31

     ならば、次に来るのは。

     ジャックは反射的に魔剣を抜いていた。一秒にも満たない時間が過ぎ、ジャックの魔剣が背後から強襲した稲妻を切り裂く。

    (これは……竜?)

     稲妻は、竜を模していた。

     魔剣に切り裂かれ、竜は消失する。

      ネコサンダーは、ジャックを見据えた。その傍には、猫ほどの大きさの、ぬいぐるみのようなドラゴンが飛翔している。

    「クリックベイト先輩は、私を強いって言ってくれた。だから私は、あなたには絶対負けないニャ! だよね、カーバンクル!」

    「がおー……」

     決意に満ちたネコサンダーとは裏腹に、カーバンクルの声には覇気が無かった。

  • 445◆xaazwm17IRZa25/02/26(水) 01:38:48

    投下を終了します……!

  • 446二次元好きの匿名さん25/02/26(水) 04:51:30

    お疲れ様でした!!

  • 447二次元好きの匿名さん25/02/26(水) 07:48:17

    投下お疲れ様です…

  • 448二次元好きの匿名さん25/02/26(水) 08:00:44

    どんどん精神がクリムゾンに蝕まれてますね…
    狂気の世界の始まりだぜぇ!

  • 449二次元好きの匿名さん25/02/26(水) 12:25:00

    魔法少女名がコンバット越前・ザ・リッパーなら狂気に飲まれなかったのに…

  • 450二次元好きの匿名さん25/02/26(水) 17:24:41

    いい名前だ

  • 451二次元好きの匿名さん25/02/26(水) 17:34:28

    なんかジャックお構いなしになってきてるな。性癖的な方で。これがクリムゾンのぱわ〜か…

  • 452二次元好きの匿名さん25/02/26(水) 18:17:41

    「相手が何かする前に倒せ」
    何やかんや例外も多いしこの戦法が無敵なのはマジカルストラッシュありきの話ではあるよね

  • 453二次元好きの匿名さん25/02/26(水) 23:32:44

    マジカルストラッシュの殺傷力と先手を取れる判断力ありきだから実践するのは難しそうなのよね

  • 454二次元好きの匿名さん25/02/27(木) 00:16:55

    主人公の戦い方だからねぇ…
    殺人鬼の魔法に相応しいやり方じゃない

  • 455二次元好きの匿名さん25/02/27(木) 00:32:17

    初手マジカルストラッシュ戦法もスピードランサーやフライフィアーのような強者相手だと普通に避けられてほぼ一方的にしばかれる事が明言されているので恐ろしいところ

  • 456◆xaazwm17IRZa25/02/27(木) 02:06:42

    投下します~

  • 457◆xaazwm17IRZa25/02/27(木) 02:07:09

     ジャックは、逆境とは無縁の人生を歩んできた。天賦の才と悪運に恵まれ、魔法少女という奇跡を掴み、地金を晒すことなく最強から教授を受けた。全知全能との戦闘も、師との交錯も、ジャックは窮地に陥ることなく乗り越えている。

     七海真美の死ですら、一時的なものだ。食べようとしたケーキが床に落ちてしまったのと同じだ。悲しいし悔しいが、また買えばいい。

    (だから今も――逆境じゃないわ)

     猫耳の魔法少女と、その使い魔らしきドラゴン。雷を操る魔法少女。

     魔剣を手に入れたジャックにとって、雷はもはや脅威ではない。問題は、そこではないのだ。

     引き金を引く。今までのように、手あたり次第に乱射はしない。魂目掛けて真っ直ぐ飛ぶレーザーは、それだけ軌道を読まれやすいからだ。

     ブラフやフェイント、曲射角さえ計算しながら、ジャックは引き金を引き続ける。手にして一時間も経っていない武器を、ジャックは自在に操ることができる。

     乱れ飛ぶレーザーは、全て迎撃される。

  • 458◆xaazwm17IRZa25/02/27(木) 02:07:45

     何処に打ち込まれるのか全て予測出来ているかのように、ジャックの攻撃は容易く防がれ続ける。

    (読まれてる……この私が?)

     恐らく読み手は猫耳の方ではない。レーザーと雷の撃ち合いを、慌てて目で追っている。

     雷の軌道を操っているのは、使い魔の方だ。

     屈辱だった。魔法少女以下の存在が、ジャックと対等にやり合っているという事実に。

     焦りが思考を鈍らせる。早く殺さなくては。レーザーでこの忌々しい使い魔と、おまけの飼い主を焼き尽くす。

     ——もっと魔力が必要だ。魔銃が変化する。ジャックの魔法は、触れた武器を改変することも出来る。

     魔銃の外殻が溶鉄のように変化し、ジャックの腕に纏わりつく。

     右腕と一体化した魔銃クリムゾンの銃口を、ジャックはカーバンクルに向けた。

     必要なのは手数ではなく、威力。雷の迎撃では消しきれない大火力。

     当然、収束の隙は狙われる。だが、雷は魔剣で防ぐことが出来る。

  • 459◆xaazwm17IRZa25/02/27(木) 02:08:12

     ケヒャ、とジャックは笑い。

     次の瞬間、全身を衝撃が駆け巡った。

    「っ……!?」

     視界が明滅する。

     何をされた? この痛みは、何だ? どうして私がこんな目に遭う?

     無数の疑問が激痛と共に脳内を駆け巡る。

    「私の――勝ちニャ」

     猫耳少女の声が、すぐ近くで聞こえ、それを最後にジャックは意識を手放した。

  • 460◆xaazwm17IRZa25/02/27(木) 02:08:56



     ネコサンダーは、小さく息を吐いた。

     思えば、このゲームにおける、初勝利だ。

     ぷすぷすと煙を上げている、『感電』したジャックを見下ろす。

     ネコサンダーは、カーバンクルという新たな力を手にした。もはやネコサンダーは棒立ちして放心していても、カーバンクルが自動で戦ってくれる。

     クリックベイトが庇った魔法少女は、そんな無責任ではない。あっていいはずがない。

     ネコサンダーが取った手段は簡単だった。カーバンクルに預けている雷を、自分の元に戻す。ネコサンダーは、カーバンクルほど巧みに雷竜を操作できない。

     だが——推進力としてなら、使うことが出来る。

     ネコサンダーは雷を操る魔法少女ではない。『雷ネコに変身できるよ』。それが、ネコサンダーの魔法。

     全身に雷を纏い、突撃。ブレイズドラゴンに披露し失敗した技を、ネコサンダーはジャックに行使した。

     恐怖はあった。迎撃されれば今度こそ死ぬかもしれない。ジャックの持つ禍々しい剣が、あらゆる魔法少女にとって終わりを意味するものであると、ネコサンダーは本能的に感じ取っていた。

     それでも、勇気を振り絞ってネコサンダーは突進した。

     仮に、ジャックが魔銃の狂気に侵されていなければ、ネコサンダーの突進を読み切り、カウンターの魔剣で命を落としていたかもしれない。

     だが、今のジャックは魔銃から魔剣への切り替えにタイムラグがあった。

     結果、ネコサンダーの速さに、間に合わなかった。

  • 461◆xaazwm17IRZa25/02/27(木) 02:09:11

    投下を終了します……!

  • 462二次元好きの匿名さん25/02/27(木) 07:46:32

    強いネコ!ブレイズドラゴン戦の経験が活きたな

  • 463二次元好きの匿名さん25/02/27(木) 10:04:27

    ここでジャックの意識落としたのがどう出るかな
    魔剣もクリムゾンも解き放たれるだろうし…特に魔剣はマズそうな気がする

  • 464二次元好きの匿名さん25/02/27(木) 15:16:36

    アロンダイトがあるから今のジャックにはそのまま気絶って負け方が一番深刻だよね
    いっそマジカルストラッシュで魔力ごと消し飛ばされたりしてれば助かったかも?

  • 465二次元好きの匿名さん25/02/27(木) 16:29:24

    りょ

  • 466二次元好きの匿名さん25/02/27(木) 23:01:13

    保守 今夜もあるかな

  • 467二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 01:30:35

  • 468二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 01:38:07

    ジャックがここで退場した場合、ネコサンダーたちはアロンダイトを御し切れるのかねぇ…
    もし使いこなせれば今後の戦いで大いに活躍しそうだが果たして

  • 469二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 02:34:13

    >>468

    ありえるかもね

    魔法少女を殺.す呪いが込められた剣を握れる人物がジャック以外にいるならの話だけど

  • 470二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 07:44:25

    通常運用ではなく一撃のみでの使用とか工夫が必要かもしれない(魔剣アロンダイト)

  • 471二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 10:50:42

    クリムゾンとの一体化しちゃったのが意識を失ったことで魔銃と魔剣の肉体と精神の侵食が加速度的に進みそう

  • 472二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 16:44:34

    保守

  • 473二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 20:55:28

    ネコの金星でここは攻略できたけど他はどうなるか

  • 474二次元好きの匿名さん25/03/01(土) 00:35:04

    ハイになるっていう致命的過ぎる弱点…当然の敗北である

  • 475二次元好きの匿名さん25/03/01(土) 08:19:59

    保守

  • 476二次元好きの匿名さん25/03/01(土) 14:30:04

    魔銃と魔剣の間でどっちが乗っ取るか揉めたりするんだろうか

  • 477二次元好きの匿名さん25/03/01(土) 20:51:14

    保守

  • 478二次元好きの匿名さん25/03/01(土) 23:59:29

    遥か昔に投げた宣教師(ミショナリー)達が勇者ちゃんに根切りにされてしまったので新たにエネミーを投げるぜ
    魔術師タイプの雑魚です。ネームド運営陣のお供に使い甲斐があればどうぞ

    【エネミー名】
    ヘルゼーエン
    【説明】
    『マシーネン・コマンダンテ』の上位種。魔法国基準でも強力な部類の様々な魔法を使いこなし、雑魚ナチス兵士や既出のエネミーを強化して差し向けたりする。
    立ち位置としては集団でベギラマとかメダパニとかバイキルトとか使ってくるタイプのウザい強モブ。でも身体能力はモヤシ以下なので接近されると何もできない。
    魔法陣防衛や運営陣の護衛として同行し、アリアからの信頼も厚いが、それだけに数は少ない。

  • 479二次元好きの匿名さん25/03/02(日) 01:40:37

    >>478

    めちゃくちゃ強くて悪そうだ

  • 480◆xaazwm17IRZa25/03/02(日) 01:41:50

    二日間顔を出せず、申し訳ありません……!

    体調も戻ったので、本日も投下させていただきます……!



    >>478

    素敵なエネミーありがとうございます……恐らくどこかで使わせていただきます……!

  • 481◆xaazwm17IRZa25/03/02(日) 01:42:33

    「……終わった、みたいね……」

    「ミストアイ……大丈夫?」

     ミストアイは、全身に酷い火傷を負っていた。意識はあり、立ち上がってこそいるが、すぐに病院に行かなければいけない深刻な状況だと、素人のネコサンダーでも分かる。

    「悪い魔法少女を倒した……ネコサンダー、いえ、ネコサンダーさん。あなたは、立派です。私よりずっと立派な、『悪の敵』……」

    「……そんなこと無いニャ。それより、すぐに病院へ……いや、一度他のメンバーに連絡して、治療できるアイテムを融通してもらうニャ!」

    「それならネコサンダー、君に頼みがある」

     カーバンクルと同サイズのマスコット、アルセーヌが深刻な様子で口を開いた。

    「『メンダシウム・トランプ』を使って、ミストアイを治療してくれないか?」

    「さっき使ってたトランプだよね、いいよ、どうやって使うニャ?」

     アルセーヌが差し出したトランプを、ネコサンダーは受け取ろうと手を伸ばす。

    「んー……辞めた方が、いいよと思うよ……」

     それを、カーバンクルが押しとどめた。

  • 482◆xaazwm17IRZa25/03/02(日) 01:43:19

    「え……? どうしてニャ?」

    「……そのアイテムは……使う度に……魔力と……魂を、分割する。使えば使う度に、魂が摩耗するよ……」

     魂の摩耗。ネコサンダーの知らない概念だった。受け取ろうとした手が思わず止まる。

    「……ミストアイは、何枚も使っているけど、心身に大きな影響は出ていない。そんなに危険なアイテムじゃない」

    「だとしても……使うタイミングは……ここじゃないよね……。後五秒で死ぬってわけじゃないんだし……もっと低コストの回復アイテム……あると思うよ……知らんけど」

    「君、無責任だな」

     アルセーヌの言葉に苛立ちが混じる。カーバンクルは面倒くさそうに息を吐いた。

    「泥棒が……責任とか、語らないでほしい……」

    「け、喧嘩は良くないニャ」

     ネコサンダーが慌ててカーバンクルの口を塞ぐ。

    (や……やっぱり、ギャルって怖い生き物だ……)

  • 483◆xaazwm17IRZa25/03/02(日) 01:43:59

     カーバンクル……岸村文華とアルセーヌ……冒涜の竜という因果を知らない身としては、そんな見当違いな推理をするしかない。

    「いいよ……部長……私のミスだし……」

     ミストアイもまた、部長を静止した。

    「ジャックを倒したけど、魔法王が新たな刺客を送って来るかもしれない。その時に唯一の戦力はネコサンダーさんなんだから、彼女の魔力は、温存するべき……」

    「…………無理はしないでね」

    「い、いや、使うニャ! まだ私、魔力残ってるし!」

     ネコサンダーは慌ててアルセーヌからトランプを受け取ろうとする。

    「……何だと?」

     だが、アルセーヌの顔は硬直していた。ネコサンダーがトランプを受け取ろうとしたから……ではない。

     ネコサンダーは背後を振り返る。

     雷撃を浴びせた際に剥がれた、魔銃クリムゾンの破片。

     そして、煙を上げて倒れる感電したジャック・ザ・リッパー。そのはずだった。

  • 484◆xaazwm17IRZa25/03/02(日) 01:44:31

    「居ないっ!」

     思わず、ネコサンダーは叫んだ。

     ジャックは姿を消していた。

     ネコサンダーも、アルセーヌも、ミストアイも、カーバンクルも、決して油断を
    していたわけではない。ジャックが声の一つでも漏らしていたら、否、音の一つでも立てていたら直ちに追撃していた。だが、ジャックは声一つ、音一つも漏らさず、その場から逃走に成功したのだ。

    (そんなの、不可能……ああ、でも)

     現実には不可能だ。物理的に無理だ。……魔法は、そういった常識を超越する。

    「探さないと不味い」

     アルセーヌの声色は硬い。元黒幕の彼女だからこそ、今のジャックの厄介さが理解できていた。

    「私たちは、まだジャックの魔法陣を破壊出来ていない。このまま彼女にゲームオーバーまで逃げ回られたら……それだけじゃない。これから対運営チームは、常にジャックの奇襲に警戒しなきゃいけなくなる」

    「…………もう近くにはいない……探すのは、難しいよ……」

  • 485◆xaazwm17IRZa25/03/02(日) 01:45:08

     周囲に小さい稲妻竜を飛ばし終えていたカーバンクルが、僅かに悔し気な様子で言った。

    「そんな……せっかく倒したのに」

     自分たちは失敗した。

    (私が、ちゃんと殺さなかったから……?)

     戦う覚悟は出来ていた。命を賭ける覚悟も。だが、命を奪う覚悟までは出来ていなかった。

     ネコサンダーは、自らの不甲斐なさを噛み締める。

     ミストアイは、苦笑した。

    「……今なら分かる。どうして私はこんな風に生まれ付いたのか」

    「ミストアイ?」

     アルセーヌは、不思議そうに仲間の名を呼んだ。

    「……部長。魔法少女は自由だって、以前そう言ってたよね」

    「それが、どうかしたのかい?」

    「私も、その通りだと思う。私の引き金は、私が自由に引くべきだ」

  • 486◆xaazwm17IRZa25/03/02(日) 01:46:23

     そう言って、ミストアイは長杖を、虚空へと構えた。

     ミストアイが纏う気配が変わったことに、ネコサンダーは気づいた。彼女は、何か取り返しのつかないことをしようとしている。

    「ま、待って。何しようとしてるの?」

    「早まっちゃ駄目だよ、ミストアイ。君の傷も、君の罪も、取り返しがつくものだ」

     アルセーヌの言葉に、ミストアイは首を横に振った。

    「そう言うのじゃないから、安心して。私はただ、部長の言うように、自由にしているだけ。あの、ジャックとかいう女は、ゲームに乗っている危険人物。それに、二度相対して分かった。あいつは、私と同じ狂気を……いいえ、私以上にどす黒い、邪悪な存在だって。あんなのを野放しにしてたら……部の皆が、危険だ」

     メンダシウムトランプを使った新たな魔法の応用。それによる魂の摩耗。更にゲーム開始から続いた多大なストレス。そして、死の淵に立ったことで。ミストアイの魔法は——一段階進化しようとしていた。

    「フフフ……友達のために引く引き金って、こんなに軽かったんだ……」

     長杖から、魔弾が発射された。発射されると同時に、魔弾は消失した。ミストアイはばったりと後方に倒れ込む。

     ネコサンダーは、ミストアイを慌てて抱き留める。

     既にミストアイは、絶命していた。その顔は、命中を確信した会心の笑みに包まれていた。

    【刈屋 伊織/ミストアイ 死亡】

    【残り 17人】

  • 487◆xaazwm17IRZa25/03/02(日) 01:46:48



     死の淵に立つことで成長するのは、善人だけの特権ではない。敗北することで覚醒するのは、凡人だけの権利ではない。

     ネコサンダーへの敗北は、ジャックにとって初めての敗北だった。そして、ジャックが己の意思とは無関係に意識を手放したこともまた、初めてだった。

     天才は、進化するからこそ天才である。

     雷の直撃による全身のダメージ。荒い息が漏れる。力強く地を蹴り、ジャックは疾走する。

     呼吸音。足音。あらゆる生体反応。

  • 488◆xaazwm17IRZa25/03/02(日) 01:47:21

     その全てが、掻き消されている。

     ジャックの支配の源泉たる黒い靄。それが微粒子レベルまで拡散し、空気に、そして大地や草花に浸透している。

     ジャックの浸蝕魔法は、新たな段階へと進んだ。無機物の武器化及び改良化だけに留まらず、周囲の場そのものを支配できるようになったのだ。

     勿論、制限もある。あくまで用途は『気配の遮断』のみにしか使えない。場の空気を瞬時に真空に変えて敵を即死させる――といったことは出来なかった。

     あくまでジャックの存在を、痕跡を消すための魔法。

    (そうよ……別に私は、最強なんか目指していない……!)

     ただ、自分が思うがまま、好きなように生きているだけだ。

     何故なら、世界の主役は自分なのだから。

    (今までの私は……間違えていた。ああ、いいわ。それは認めてあげる……! 加工する価値も無いゴミを真正面から……なんて馬鹿馬鹿しい。尊敬するジャック様だって、警官と殴り合いなんかしてない。誰にも気づかれずに、未来の私たちにも探られずに、やりたいことをやり通して見せた。私だって、私だって、そうするべきだったのよ……!)

  • 489◆xaazwm17IRZa25/03/02(日) 01:48:03

    「待ってて真美ちゃん! ジャックお姉ちゃん、もう間違えないから! もっとスマートに、もっとクールに、貴女まで辿り着いて、殺してあげるからね!」

     狂気の叫びも、ジャックの魔法によって誰の耳にも届かない。この日、ジャック・ザ・リッパーは正しく怪人となった。あらゆる存在の痕跡を打ち消せる、そんな本物の怪人に。

     ここでも、ジャックは幸運だった。もし彼女が魔剣アロンダイトを握ったまま気を失っていれば、即座に死亡、あるいは無意識でガードしていても心身に深刻なダメージを負っていただろう。

     あるいは、ネコサンダーの攻撃によって魔銃が分離していなければ、今もなお、ジャックの思考は短絡的になっていた。

     恐るべき悪運の強さ。

     連戦の末、いよいよ魔力は底を尽きそうだが、ジャックは頓着しない。交渉次第では、あのクソバカナチスから幾らでも補給が出来るだろう。

     ……気配を遮断できているにも関わらず、どうしてネコサンダーたちに奇襲をかけなかったのか。ジャックは考えない。攻撃する瞬間は気配の遮断が切れる、と本能的に理解しているから。あるいは、ティターニアのように魔剣で斬ってもしばらく動くかもしれないから。そんな言い訳は思い浮かぶが『自分を負かしたネコサンダーが怖いから』という根本的な理由は考えない。

  • 490◆xaazwm17IRZa25/03/02(日) 01:48:45

    「待っててね、真美ちゃん真美ちゃん真美ちゃん——ッ!」

     瞬間、拡散させていた黒い靄が、微かな気配を感じ取った。

     本能的に、天才の直感で、ジャックはコートの内側から魔剣アロンダイトを取り出し、後方に振りかぶった。

     ジャックの背後に、魔弾が出現している。

    「いつの間に!?」

     音も、光も無かった。まるでワープしたかのように、魔弾が突如出現したのだ。

     ジャックでも、10回中9回は気づけない、本当に微かな違和感。だが、ジャックはその1回を引き当て、最適な行動を取った。

     ジャック・ザ・リッパーは悪運が強く、そして、天才である。

     ヒャハ、という声が、微かに聞こえた。

     同時に、魔剣が、魔弾に触れる前に、根本から折れた。

    「——は?」

  • 491◆xaazwm17IRZa25/03/02(日) 01:50:34

     ジャックの顔が固まる。

     それは、偶然なのだろうか。それとも、何らかの魔法の作用なのだろうか。あるいは、貴族妖精の呪いなのか。

    「この、くそ剣が……」

     ジャックが顔を歪めて毒づき——魔弾が、ジャックの肉体を貫き、彼女の五体をバラバラに粉砕した。

     悪運の強さだろうか。あるいは、天才だからか。ジャックの頭部は、空中にまき散らされる自身の内臓を目で追えていた。

     ああ、とジャックは思う。他人は散々見てきたが、自分のを見るのは初めてだった。

    (——気持ち悪い)

     それが、殺人鬼の最期の思考だった。

    【桐ヶ谷 裂華/ジャック・ザ・リッパー 死亡】

    【残り 16人】

     無残な、惨殺死体が、地面に散乱する。直後に、ジャックがコートの内側にため込んでいた火器がそれを圧し潰していく。

     その中に、真正面を正確に貫かれたプレートがあった。かくして、掩蔽壕の魔法陣は破壊されたのだった。

  • 492◆xaazwm17IRZa25/03/02(日) 01:50:52

    投下を終了します……!

  • 493◆xaazwm17IRZa25/03/02(日) 01:53:04

    次の舞台は……!


    dice1d4=4 (4)

    1狂愛の木蔦部屋

    2アニー・アーマーン邸

    3あに高地下防空壕

    4ネッカーピン資料館

  • 494◆xaazwm17IRZa25/03/02(日) 01:57:12

    明日からはネッカーピン資料館が舞台です……!

    ネッカーピン資料館:挑戦者(ノブ子) ボス(スティールソウル&ドッペルホルン・パンツァー、佐神正/ピスケス)

    ノブ子のボスラッシュが始まります

    それでは本日もありがとうございました~

  • 495二次元好きの匿名さん25/03/02(日) 08:25:03

    今日も面白かった…
    ノブ子の負担がデカ過ぎる

  • 496二次元好きの匿名さん25/03/02(日) 08:42:17


    ジャックがここで退場か

  • 497二次元好きの匿名さん25/03/02(日) 10:39:00

    ジャック、死んだか。無様な死に方だなぁ…でも死体の場所がわかるだけマシか

  • 498二次元好きの匿名さん25/03/02(日) 16:12:56

    最後にミストアイが大切なものを取り戻せてそれだけは良かった
    アルセーヌは何を思うのか

  • 499二次元好きの匿名さん25/03/02(日) 17:16:22

    ジャック、この主さんの企画には珍しく一切フォローや救いが入ることなく逝ったな…
    まぁやってきたことを思えば全く同情もできないんだけど…

  • 500二次元好きの匿名さん25/03/02(日) 17:47:57

    あのティターニアやテンガイをあっさり始末したジャックがこれまた割とあっさりやられたの少しモヤモヤするけど、
    まぁジャックは精神的にも実力的にも奇跡を起こしたりはできないよなっていう納得感もある
    ミストアイの覚悟が上回ったな

  • 501二次元好きの匿名さん25/03/02(日) 19:41:08

    4強に勝てたのも連戦のデバフ+アイテムありきだからねジャックちゃんは

  • 502二次元好きの匿名さん25/03/02(日) 20:16:35

    ノブ子は単独でこれだけ相手するのか…

  • 503二次元好きの匿名さん25/03/02(日) 20:22:15

    これがノブ子が相手をするエネミー達の大まかなイメージ


    そこそこタフな鎧全方位砲台スライムと大砲連射高機動四足獣


    そしてここにベルトの魔法少女がついてくる


  • 504二次元好きの匿名さん25/03/02(日) 23:48:06

    相手は物量メインの配役だから型に嵌めれば案外いけそうにも見えてくる…

  • 505◆xaazwm17IRZa25/03/03(月) 03:17:18

    大遅刻してすいません、本日の分を投下します……

  • 506◆xaazwm17IRZa25/03/03(月) 03:17:48

     エネミー・スティールソウルの砲撃によって、市民から愛されたネッカーピン資料館は倒壊した。

     かつて社会見学で訪れた魔法少女ならば、資料館の倒壊に何か思う所があったかもしれない。だが、その場に居た二人の存在、ジャングル育ちのノーブル・サヴェージと意思なき怪物、スティールソウルは、施設の破壊に感慨は無かった。単に、フィールドが変化しただけのことだ。

     スティールソウルは異形だ。一見、鋼鉄の鎧を纏った人型だが、鎧の各部からは砲塔が生えている。

     だが、ノーブル・サヴェージの姿もまた異様。全身に赤い入れ墨が走り、巨大な葉を外套のように纏う。

     互いに文化圏(ジャンル)が違う二人の相対。それは、異種格闘技戦の様相を見せる。

     ノーブル・サヴェージが唸った。先ほど、砲塔からの砲撃、その何発かをノーブル・サヴェージは浴びている。

     並の魔法少女なら一撃で絶命する威力。ノーブル・サヴェージの肉体には、深刻な火傷の痕が見て取れた。

  • 507◆xaazwm17IRZa25/03/03(月) 03:18:28

     ——砲撃を浴びて、その程度のダメージである。

     異常な現象を、しかし指摘する者はその場に居ない。

     砲撃による火力では対象を殺せなかった。スティールソウルはシンプルにそう理解した。

     ——ならば必要なのは、更なる火力である。

     スティールソウルの躯体が紅く輝いた。自身の秘める、最大火力を叩き込む。

     貯蔵していた魔力を爆発へと変換させる、スティールソウルの大技。

     資料館を吹き飛ばした砲撃の嵐を超える大破壊。

     スティールソウルの躯体が点滅する。

     そのまま鉄人は、地に伏せた。極彩色の魔法陣から伸びた蔦が、スティールソウルを大地に縛り付けている。更に上から何重にも、文明を覆い尽くすかのように蔦が伸びていく。

     とうとうスティールソウルは繭のような形になった。

     大爆発が、発生する。重低音が、周囲に響いた。

    (無駄だ)

  • 508◆xaazwm17IRZa25/03/03(月) 03:19:03

     と、ノーブル・サヴェージは思う。

    (これ以上、お前たちに自然は壊させない)

     スティールソウルの自爆は、全て蔦によって吸収された。

     先刻の砲撃も、ノーブル・サヴェージは自身に蔦を巻くことによって防いでいたのだ。

    (これ以上、私は敗北しない)

     野生に生きる者は、文明に生きる者より優れた五感を得る。故に、其の敵の奇襲も、ノーブル・サヴェージは見えていた。

     瓦礫の死角から放たれた砲撃。第二の敵の攻撃。極彩色の魔法陣が展開され、巨大な蜘蛛の巣が張られる。

     放たれた砲弾は糸に絡めとられ、運動エネルギーを零にされる。

    (足りない)

     と、思う。

     ノーブル・サヴェージは先刻、敗北した。森を守る同志達のおかげで悪を打倒することは出来たが、ノーブル・サヴェージ本人は途中で戦闘不能に陥っている。

     戦士としてあるまじき失態を拭うには、この二人の敵は足りない。

  • 509◆xaazwm17IRZa25/03/03(月) 03:19:33

     瓦礫の影に隠れていた敵から、無数の砲撃が飛んでくる。その全てを、ノーブル・サヴェージは蜘蛛糸と蔦で対処する。

     当然、そんなことをすれば魔力を消費していく。当たり前だ。ノーブル・サヴェージには「魔力」という概念は無いが、自然の力を振るう力の源が、自身から失われていくのは感じ取った。

     森を燃やしていた奴との戦いでは、其処を疎かにして敗北した。

     ノーブル・サヴェージは反省した。

     足裏に意識を集中させる。すると、大地を通して、新たな力が自分の中に流れ込んでくる。

     ——魔法少女の世界ではあり得ないことを、ノーブル・サヴェージはごく自然に行使する。魔法少女という概念を知らない彼女の想像力は、あらゆる枷に縛られない。

     痺れを切らしたのか、そんな感情も無く単にプログラミングされた通りなのか。

     死角から、砲弾の射手が飛び出してくる。

     獣のように四肢で瓦礫を掻き分け、乗用車に匹敵する速度でノーブル・サヴェージに迫る。

     その疾走が、突如停止する。

  • 510◆xaazwm17IRZa25/03/03(月) 03:20:00

     瓦礫の中から生えた顎のような植物が、敵の右足に絡みついている。

     蜘蛛糸と蔦を行使しながら、ノーブル・サヴェージは瓦礫の中に罠を仕込んでいた。
     ニマンア族の価値観は独特である。彼らは、『事前に』罠を仕込むことを良しとしない。戦闘という過程を得ずに勝利を得ることは無意味だからだ。だが、戦闘中に罠を仕込むことは奨励されている。純粋な肉体性能だけでなく、知能や手先の器用さもまた、戦闘に還元されるべきだからだ。

     ノーブル・サヴェージの手元に槍が召喚される。

     勢いよく槍は罠に掛かった獲物へと向かい――空を切った。

    (……何?)

     異変は、それだけではない。蔦で拘束していた鉄の人型もまた、蔦の中で消失している。

    「ルールを説明する」

     くぐもった声がノーブル・サヴェージの耳を打った。ノーブル・サヴェージの顔が驚きで歪む。

  • 511◆xaazwm17IRZa25/03/03(月) 03:20:42

     この地に飛ばされて十時間以上が経過した。その間、ノーブル・サヴェージは、一度も自身と言語を共有している存在と遭遇していない。異邦の地である以上当たり前のことだが。

     だが、耳を打ったその声は、ノーブル・サヴェージは理解できていた。

     ニマンアの言葉ではない。にも関わらず、理解できてしまう。

    「私の魔法は、『同化魔法』。現代風に言うなら『あなたとわたしで一心同体だよ』。詳細に語るなら、ベルトを巻きつけた相手とあらゆるものを共有、交換できる。今、私とあなたは言語を共有した」

    「ベルト、とは何だ?」

    「革製の紐のようなものだ。説明を続ける。ベルトを外せば、私の魔法の範囲からは外れる」

     ノーブル・サヴェージは周囲を窺う。声の主は何処に潜んでいるのか。ニマンア族は五感に優れるが、しかし周囲に気配は無い。それどころか、今しがた戦っていた二体の敵の気配も消えている。

     ノーブル・サヴェージは自身の身体を見下ろした。

     ベルト、なるものの具体的な姿は分からないが、少なくとも紐のようなものは自分に付いていない。

    (同族、ではない)

     ニマンア族なら姿を隠して声だけ伝えることはしない。

     不気味だ。実に不気味な相手だ。

  • 512◆xaazwm17IRZa25/03/03(月) 03:22:20

    投下を終了します

  • 513二次元好きの匿名さん25/03/03(月) 07:47:32

    投下お疲れ様です!

  • 514二次元好きの匿名さん25/03/03(月) 08:37:35

    乙でした〜!!

  • 515二次元好きの匿名さん25/03/03(月) 08:39:09

    倒した敵から魔力回収するビームがあるなら地面から魔力を吸い上げる魔法少女がいる位はごく"自然"なことだな

  • 516二次元好きの匿名さん25/03/03(月) 10:53:54

    >>478

    ヘルゼーエン…ベギラマ…ウッアタマガ


    >>480

    読み逃してた…

    お体にお気をつけて ご自愛ください

  • 517二次元好きの匿名さん25/03/03(月) 16:29:14

    分からん殺しせずにわざわざルール説明してくれる良い人
    それとも呪術廻戦で言うところの縛りなのか

  • 518二次元好きの匿名さん25/03/03(月) 16:36:06

  • 519二次元好きの匿名さん25/03/03(月) 18:58:54

    そういえばカーバンクルは記憶喪失の人間人格だけどパラサイトドールに乗っ取られていた時の記憶はあるんでしょうか?
    逆にアルセーヌ側は描写的に元パラサイトドールだと認知してる感じ?

  • 520◆xaazwm17IRZa25/03/03(月) 23:28:41

    >>519

    今のところ無いと思います(後々思い出すかも……?)

    アルセーヌ側も薄っすら理解してる感じかと(話し方+ドラゴンで)

  • 521二次元好きの匿名さん25/03/04(火) 07:29:42

    ホシュ

  • 522二次元好きの匿名さん25/03/04(火) 15:13:29

    >>515

    むしろ自然からエネルギー吸い上げる方が自然というかまだ無法度合いは少ないというか…

  • 523◆xaazwm17IRZa25/03/04(火) 21:51:54

    書けた範囲で一旦投下します~!

  • 524◆xaazwm17IRZa25/03/04(火) 21:52:32

     上手く進んでいる、と佐神正、魔法少女名『ピスケス』は思った。

     43年間の人生で上手くいったことなど数えるほどしかないが、今回は上手くいった。

     野生児、ノーブル・サヴェージはピスケスの「説明」に集中している。

     それが「罠」だと気づけない。

    (「ベルト」とは、物質的なものだけじゃない)

     ピスケスのコスチュームには、沢山の赤いベルトが巻かれている。それらのベルトを他者に巻き付けることで、ピスケスと他者は同化する。

     それが、第一の能力。ピスケスの魔法は、より深い。

    (ベルトとは、己を縛るもの。自由を奪い、行動に制限をかけるもの)

     ピスケスは、ノーブル・サヴェージに自身の魔法を説明した。これにより、ピスケスは「相手に自分の魔法を気づかれないよう、立ち回らなくてはいけない」という縛りから解放された。精神的なベルトを、一つ外したのだ。

     同時に、ノーブル・サヴェージは「ベルトを巻かれると不都合な状態になる」という意識を植え付けられてしまった。今後彼女は、常にベルトを意識して行動しなければならない。ピスケスによって、彼女の精神にベルトが巻かれたのだ。

  • 525◆xaazwm17IRZa25/03/04(火) 21:53:06

     かくして、「ピスケスはベルトを外し、ノーブル・サヴェージが付けた」という状況が成立した。

     あまりにも強引な解釈だが、物理法則と違い、魔法の定義は緩い。

     ノーブル・サヴェージは、ピスケスと同化した。

    (我ながら、理不尽。何しろ、私の魔法は僅かな時間であれば、時系列を無視できる)

     ピスケスがノーブル・サヴェージに「ルールを説明=ベルトの巻きつけ」が出来たのは、二人の間で言語が共通されていたからだ。本来なら、その時はベルトの巻きつけが出来ていないため、言語の共通も不可能なはずである。

     だが、ピスケスは「これからノーブル・サヴェージにベルトを巻きつける」と決定したことで、結果を先取りした。もし、その後のルール説明が失敗に終わり、ベルトの巻きつけが出来ていなければ、直ちに同化は解除され、ピスケスはペナルティを負っていた。

     結果は、そうならなかった。ノーブル・サヴェージは素直にルール説明を聞き、意味を理解し、注意しなければと警戒した。

     ベルトは巻かれたのだ。

  • 526◆xaazwm17IRZa25/03/04(火) 21:54:19

     事態は、ピスケスの思惑通りに進んでいる。

     ノーブル・サヴェージは周囲を探っている。ピスケスが何処に居るか分からないのだ。

    「マク=ハク、私はあなたと同じ場所に居る」

    「どこだ!」

    「同じ場所、同じ座標、同じ空間だ。既に私とあなたは——同化している」

     ノーブル・サヴェージは首を傾げている。野生児には、九歳児には理解しがたい概念なのだろう。

    (ベルトを巻かれると不利になる、と理解してくれて助かったな。最悪の場合、説明してもベルトの脅威が伝わらない可能性もあった)

     同化、というものが実際にどういう状態なのかまでは、恐らく伝わっていない。

     だからピスケスは、大人として教えることにした。

     ノーブル・サヴェージの手から爪が伸びた。彼女がぎょっとした顔を作る。きっと自分の意図していない行動だったからだろう。

     爪が引っ込む。今度は足元に極彩色の魔法陣が展開し、シダのような植物がにょろりと生えた。

  • 527◆xaazwm17IRZa25/03/04(火) 21:56:00

    「理解したか? 私はあなたの中に溶け込み、あなたを自在に操ることが出来る。私はあなた(マク=ハク)で、あなたはわたし(ピスケス)だ」

     ノーブル・サヴェージの顔が青ざめる。ようやく、事の重大さを理解できたらしい。

    「さて。このまま二人で励まし合いながら二重人格系魔法少女を目指してもいいんだが。生憎、私は仕事を頼まれていてね。それを遂行させてもらおう」

     ノーブル・サヴェージの右腕が、首に伸びる。

     そして、魔法少女の剛力で、ぎゅうと締め上げた。

    「悪いが私と心中してもらう。好き好き大好き超愛してる」

    (まぁ嘘なんだが。せっかく死ぬんだったら愛されながら死ぬのが幸せだろう)

  • 528◆xaazwm17IRZa25/03/04(火) 21:56:51

    投下を終了します~

  • 529二次元好きの匿名さん25/03/04(火) 22:38:19

    嵌まれば勝ちみたいな魔法ですね!

  • 530二次元好きの匿名さん25/03/04(火) 22:49:41


    頭脳系魔法は何気に珍しい気がする。魔法少女の基本はシンプルな理不尽押し付けゲーだし

  • 531二次元好きの匿名さん25/03/04(火) 22:59:10

    乙です、投げたキャラが動かしてもらえるのはとても嬉しいですね~!
    そしてここからマク=ハクがどう逆転するか?

  • 532二次元好きの匿名さん25/03/05(水) 07:17:06

    保守

  • 533二次元好きの匿名さん25/03/05(水) 07:48:34

    好き好き大好き超愛してる

    ざ、雑ぅ!けどダウナーっぽくて良いな…

  • 534二次元好きの匿名さん25/03/05(水) 13:24:59

    ノブ子の魔法だと打開策がなさそうだがはたしてどうなるか

  • 535二次元好きの匿名さん25/03/05(水) 20:19:08

    この世界観における魔法ってプラシーボ効果の極致みたいなもんだからな
    自分じゃなく相手側にそう思い込ませることで強くなるパターンもありますよ、と

  • 536二次元好きの匿名さん25/03/05(水) 23:55:23

    基本自分だけど誰かしらが「できる」と思うことが魔法の根幹なのかもね
    だから「できる」と思ってる夢見る少女が上振れした時一番強い

  • 537二次元好きの匿名さん25/03/06(木) 00:01:08

    思い込みが魔法を強くするなら逆もあるってことだぜ(精神的成長に伴う弱体化)

  • 538◆xaazwm17IRZa25/03/06(木) 00:57:51

    実際、20代、30代の魔法少女が全然居ないのはその辺りが理由だったり……

    というわけで、投下します~

  • 539◆xaazwm17IRZa25/03/06(木) 00:58:42

     9歳のある日、マク=ハクは独りで村を出た。

     一人で村の外に出たのは初めてだった。マク=ハクは幼く、女であり、村の中では心優しい性格をしていた。成人の儀を受けることは同世代でも後の方になると周囲から思われていたし、ニマンア族の数少ない非戦闘職「シャーマン」になるかもしれないと思われていた。

     実際は、同世代で誰よりも早く、マク=ハクは村を出て、一人で密林の奥地へ踏み込んだ。

     戦闘を神々に捧げる必要があった。それが為せるのは、マク=ハクだけだった。

     ある日を境に、村を死が覆った。

     【疫病】である。感染経路がどうなっていたかを、把握できた者は居ない。そもそも文明から隔絶したニマンア族に、それらの知識は無い。

     ニマンア族は、文明人を遥かに超える身体能力を備え、恐るべき勇猛さを発揮し、卓越した戦闘センスを継承する。だが、文明人が当たり前に享受する『抗生物質』や『ワクチン』を持ち合わせておらず、科学的な知見を持っていない。

     一人、また一人とニマンア族は命を落としていった。

     死人の数が増える度に、生存している者の負担は増していった。

  • 540◆xaazwm17IRZa25/03/06(木) 00:59:46

     病を治すには、儀式が必要である。より強力な病に打ち勝つには、より強力な相手が必要なのだ。

     素手でジャガーを12匹倒す。これを不眠で行う。

     光る矢(銃)を持った密猟者を六人狩る。探し出すまで食事を禁ずる。

     噛みつきのみで鰐を倒す。あらかじめ挑戦者の四肢は折っておく。

     達成するのが奇跡な、つまるところ絶対に達成は不可能な儀式(ゲゲル)を行い、感染していなかった戦士たちは死んでいった。村が始まって以来の危機を乗り越えるには、村が始まって以来の難題をこなすしかなかった。

     実のところ、それらは集団パニックでしか無かった。戦闘で命を落とすことを至上とするニマンア族にとって、病での大量死は恐怖でしかなかった。

     病で死ぬくらいなら、獣に喰われる方がマシ。口にこそ出さないが、誰もがそう思っていたのだろう。

     そして、病で加速度的に死に、それに伴い儀式で大量死して、ニマンア族は瞬く間にその数を減らしていった。

     そして、とうとう儀式を行える体力のある者は、9歳の少女、マク=ハクしかいなくなったのである。

  • 541◆xaazwm17IRZa25/03/06(木) 01:00:24

     密林を進めながら、マク=ハクは未だ、儀式の内容を決めきれていなかった。

     村を救うには、達成不可能なことを為さねばならない。だが、マク=ハクはまだ幼いので、大人の戦士ほどの難題をこなす必要は無いのだろう、と思う。

     何と戦えばいいのか、分からない。それがジャガーであれ、鰐であれ、密猟者であれ、9歳の少女が一人で狩るのは無理難題だ。

     文明人と比べれば異常な身体能力を持つマク=ハクだが、それでも野生動物に素手で勝てる道理は無い。だがマク=ハクは、槍や弓矢、投石などの技術は習得していなかった。

     何日間も、マク=ハクは密林を彷徨った。草木や昆虫、小動物を狩って生き延び、川で喉を潤しては、マク=ハクはまだ見ぬ儀式の相手を求めて、歩き続けた。

     密林に入って十三日目。

     探索の末に、マク=ハクは謎の生き物を発見した。

     今まで見てきた生物とは明らかに違う気配を感じ、マク=ハクはこれが儀式の相手と理解した。

     唸り声を上げ、彼女は獲物に飛び掛かった。

     そして、マク=ハクは、魔法少女『ノーブル・サヴェージ』となった。

  • 542◆xaazwm17IRZa25/03/06(木) 01:00:50



     ピスケスは今の状況に満足していた。ノーブル・サヴェージと同化し、自死を迫る。本来、ここまで上手く嵌ることはない。

     実のところ、存在の完全同化には多大な魔力を消費する。同化した相手が並の魔法少女ならば、同化し続ける魔力を維持できず、すぐに同化は解除されてしまう。よって普段の戦闘では武器や立ち位置、あるいは記憶の一部を同化したり、交換するにとどめている。

     しかし、ノーブル・サヴェージは足裏を通して自然から魔力を供給されている。完全同化を維持できる魔力を、用意できている。

    (幸運なのは、それだけじゃない)

     同化しているのは、ピスケスとノーブル・サヴェージ、だけではない。ノーブル・サヴェージがさっきまで戦っていた二体のエネミー、スティールソウルとドッペルホルン・パンツァーもまた、ピスケスによってベルトを巻かれ、同化されている。

  • 543◆xaazwm17IRZa25/03/06(木) 01:01:24

     つまり今、四つの存在が一つになっているのだ。そして、二体のエネミーはピスケスの命令に絶対服従であり、ノーブル・サヴェージは実質三対一で命令を強制されている。

     ピスケスは、ノーブル・サヴェージと心中するつもりはない。

     ノーブル・サヴェージを死ぬギリギリまで追い込んだ後にダメージを全て彼女に押し付けて分離し、二体のエネミーでトドメを刺す。

    「心中しよう、マク=ハク」

     と、心にもないことを言いながら、ピスケスはノーブル・サヴェージの首を絞め続ける。

    「私は……何を、されている」

     首を絞められながらも、ノーブル・サヴェージは言葉を発した。彼女は未だに、自分が何をされているのか、理解できていない。同化も心中も、彼女の価値観には存在しない概念だ。

    「これは……戦い、なのか?」

    「そうさ。私はあなたの首を絞めていて、あなたは私の首を絞めている。さぁ、共に死のう、マク=ハク」

  • 544◆xaazwm17IRZa25/03/06(木) 01:02:04

    「そうか……これは、戦いか……」

     ノーブル・サヴェージの顔に、安堵が浮かんだ。ピスケスは困惑する。

     次の瞬間、ノーブル・サヴェージは自らの首をへし折った。

    「っ!?」

     ピスケスは直ちに同化を解除した。死ぬ、という確信があった。ノーブル・サヴェージの周囲に、三体の存在が出現する。

     全身にベルトを巻きつけた怪人物――魔法少女ピスケス。

     鉄の人型巨人――スティールソウル。

     四つ足の機械獣――ドッペルホルン・パンツァー。

     ピスケスは自らの首を摩る。折れていない。本当に危ないところだった。

    「死んだらどうする!?」

     首を歪な方向に捻じ曲げた少女に、ピスケスは叫んだ。

    (……いや、いい! これでいいんだ! 目的は果たした! 後はこの馬鹿を殺せば)

     スティールソウルが鉄の拳を叩きつける。

  • 545◆xaazwm17IRZa25/03/06(木) 01:02:38

     それより速く、ノーブル・サヴェージの蹴りがスティールソウルを吹き飛ばしていた。

    「何を言っている?」

     ドッペルホルン・パンツァーが突撃する――上から降って来た岩石によって、その躯体は押しつぶされる。

    「戦いで死ぬのは名誉なことだ」

     首を歪に曲げたまま、ノーブル・サヴェージはピスケスに向き合う。そして、自らの首を掴むと強引に矯正した。

     ピスケスは、唖然とするしかなかった。

     雇い主のナチス少女から、ノーブル・サヴェージの情報は入手していた。

     ジャングル育ちの魔法少女。自然の力を借りて戦う。アリス・イン・ワンダー・オブ・ザ・デッド戦の映像も確認していた。

     なるほど、強い。九歳という年齢を考えれば末恐ろしい。しかし、参加者の上位陣と比較すれば見劣りする。

     足裏から魔力を吸収することで、自然さえあれば魔力不足にならない。

     致命傷に近い負傷も、瞬時に再生できる。

  • 546◆xaazwm17IRZa25/03/06(木) 01:03:15

     何なのだ、それは。

     そんなスペック、数時間前まで無かっただろ。

    (成長している……この短期間で……)

     ノーブル・サヴェージは特異な経歴の魔法少女である。魔法少女という概念の無い世界に生まれ、周囲に他の魔法少女は無く、自らが魔法少女という認識も無かった。

     参加者に近い経歴を持った者が一人居る。魔法少女という概念が無い時代に生まれ、妖精の国に呼ばれるまで他の魔法少女との交流も無く、当然一定の年齢になるまで自身が魔法少女であるという認識が無かった。

     全知全能。今、それに最も近い場所に立っているのは。

    「お前の身体に巻かれているもの……そうか、それがベルトか。
     それにしても、さっきの奇妙な攻撃は危なかった。うん、お前との戦いを、神に捧げよう」

     ノーブル・サヴェージの手元に槍が具現化していく。

    「みんなも、きっと喜ぶ」

  • 547◆xaazwm17IRZa25/03/06(木) 01:03:35

    投下を終了します……!

  • 548二次元好きの匿名さん25/03/06(木) 01:52:17

    乙です、あーあ戦士の為の贄になってしまいましたね…。

  • 549二次元好きの匿名さん25/03/06(木) 07:45:51

    まだこれから伸び代がある子に限って無茶をしてしまう…無茶をしたから強くなったと思うとこれまた複雑

  • 550二次元好きの匿名さん25/03/06(木) 08:29:10

    今際の際に『何ができるか理解した』から強くなったのがブラックブレイドやミョルニル
    大人になって『何ができないか理解してしまった』から弱くなったのがティターニア
    全知全能を騙って『理解することを拒んできた』から天上に届かなかったのがテンガイ

    そして『何も理解していない』から強さに"天蓋"がないのがノーブル・サヴェージ

  • 551二次元好きの匿名さん25/03/06(木) 10:22:59

    その観点で行くとスカイウィッチが不利な配置されたのって相性以上に「どこまでも飛べる」
    「物理的にも精神的にも上昇限界はない」みたいな境地に至りやすい魔法持ってたからかもね

  • 552二次元好きの匿名さん25/03/06(木) 16:12:45

    スカイウィッチ、どこまでも"飛ぶ"概念で全ての攻撃が当たらなくなったりとか天上に至るのも早そうよね

    あそこで死なずにティターニアと合流してれば色々変わったかも…

  • 553二次元好きの匿名さん25/03/06(木) 18:24:30

    『理屈こねなくても強い奴が鍛えれば強いんじゃい』なのに大人になっても魔法少女として成長できるブレイズドラゴンとスピードランサーには参るね

  • 554二次元好きの匿名さん25/03/06(木) 21:04:22

    生き残りでその系統なのはバルバロイかね>強いやつが鍛えれば

  • 555二次元好きの匿名さん25/03/06(木) 23:36:35

    >>553

    この2人は魔法少女として安定感が高すぎる…

  • 556◆xaazwm17IRZa25/03/07(金) 00:35:09

    >>551

    >>552

    実際、ティターニアの弟子で一番「魔法少女の常識から逸脱」していたのはスカイウィッチだったり……

    空飛べる魔法少女がそもそも希少な世界で、魔力消費ほぼ0で飛行可能はけっこうチート

    身体能力は人間の10倍なので、皆さんの想像通り、魔法少女を抱えて飛ぶくらいは楽に出来ます


    投下します

  • 557◆xaazwm17IRZa25/03/07(金) 00:36:08

     佐神正が車と共に身を投げたのは、40歳のときだった。

     末期癌。余命半年。ニマンア族にとって40歳は老境だが、文明人にとっては早すぎる終わりだ。

     正は絶望した。希薄な人生だった。長けたことも、秀でたこともなく、誰にでも交換が可能な、そんな一生だった。

     自棄になって身投げしたのは、せめてもの自己実現だったのか。

     結局、正は死ななかった。彼女は魔法少女に覚醒し、夜の海から帰還した。

     通常、魔法少女の覚醒は9歳~15歳で行われる。魔法少女としては恐らく前例の無い、唯一無二の個性だった。

     魔法少女ピスケスが真っ先に行ったことは、末期癌を他人に押し付けることだった。

     その後、押し付けた罪悪感も、また別の他者に押し付けた。

     ピスケスはそうやって生きてきた。恐らく、無個性ながらも善良に生きていた、佐神正という女は、車と共に死んだのだろう。

     此処にいるのは、他者を害することを何とも思わず、ただ自分の利益だけを優先する怪物、魔法少女ピスケスだけだ。

     ——そして怪物は、いつだって英雄に討伐される。

  • 558◆xaazwm17IRZa25/03/07(金) 00:36:38



     ノーブル・サヴェージが突き出した槍は、スティールソウルの中心核を真っすぐに貫いた。

     ノーブル・サヴェージは不思議そうに穂先を見る。

     ピスケスに向けて突き出した槍だったはずだ。

    (これも、奴の攻撃か)

     不可思議な技を使う相手だ。ジャングルには、こんな技を持つ敵は居なかった。

     さっきまでスティールソウルが居た場所に、ピスケスは移動している。

     その手からベルトが放たれ——その前に木の杭が貫いている。

     ピスケスの口から血が漏れた。

     串刺しにされたスティールソウル。岩石で押しつぶされたドッペルホルン・パンツァー。どちらと位置を交換しても、待っているのは破滅だけ。

     ピスケスに、白兵戦の心得は無い。同化が解除された時点で、ピスケスの勝ち筋は失われていたのだ。

     あるいは、彼女が本気でノーブル・サヴェージと心中する気があれば、共倒れに持ち込むことは出来たのかもしれない。

  • 559◆xaazwm17IRZa25/03/07(金) 00:37:25

    「マク=ハク……」

     ピスケスは、己を殺した少女の名を呼んだ。

    「何のために、戦う? 故郷に、帰るためか?
    ――そこにはもう、誰も居ないのに?」

    同化したから分かる。マク=ハクの過去を、ピスケスは全て知っている。

    「私は戦士だ。戦士は最期まで戦う」

     マク=ハクは力強く、そう宣言する。

    「お前もまた戦士だった。冥界で誇るといい」

    「何それ、くっだらねぇ……」

     魔法少女ピスケスはあらゆるものと同化し、都合の悪いものは押し付け、交換して生きてきた。そして最期に手にしたものは。

    (名誉だなんて、ほんと、馬鹿馬鹿しい……)

    【佐神正/ピスケス 死亡】

     戦いを終えたノーブル・サヴェージは休む間もなく魔法陣を探した。

  • 560◆xaazwm17IRZa25/03/07(金) 00:37:48

     邪悪な気配を感じて、この資料館までやって来た。だが、ノーブル・サヴェージは今、魔法陣の仕組みやこのゲームについて正しい知識を持ち合わせていた。

     ピスケスとの同化により、彼女はあらゆる知識を習得し、成長していた。

     見つけた魔法陣を、素手で砕く。

     次は、どう動くか。共に森を守った同志、ジェイルフィッシュやクィーンとの合流を、ノーブル・サヴェージは考える。

     ノーブル・サヴェージの幼年期の終わりは近づいている。

     魔法少女の全盛期は、短い。

  • 561◆xaazwm17IRZa25/03/07(金) 00:39:15

    投下を終了します


    次の魔法陣攻略戦は

    dice1d3=3 (3)

    1狂愛の木蔦部屋

    2アニー・アーマーン邸

    3あに高地下防空壕

  • 562◆xaazwm17IRZa25/03/07(金) 00:42:14

    あに高地下防空壕:挑戦者(バルバロイ、ウェンディゴ、ハスキーロア) ボス(グレンデル、ヴンダー、???)

    明日からは防空壕の戦いを投下していきます~

  • 563二次元好きの匿名さん25/03/07(金) 00:55:34

    お疲れ様でした!!
    グレンデルはいよいよヤバそうだ…今までとは戦いの規模が違ってきそう

  • 564二次元好きの匿名さん25/03/07(金) 01:01:13

    グレンデル、何気に回収されてない伏線が多かった気がするので気になるなぁ…

  • 565二次元好きの匿名さん25/03/07(金) 01:25:30

    謎の敵も含め敵ネームド3体と最多で、アーマーン邸と同じか、それ以上に長丁場が予想される防空壕攻防戦

    判明している敵キャラだけでももはや最古参の運営幹部グレンデルをはじめ、ノブ子対戦相手募集の魔法少女の中では一番強いというかヤバそうな何気に今まで居なかった幻術使いヴンダーと強敵揃い

    攻略組も今まで戦闘シーンや掘り下げが極端に恵まれなかった参加者ばかりなのでド派手に期待が高まる

  • 566二次元好きの匿名さん25/03/07(金) 01:34:13

    グレンデルさん、前作の突然変異の心臓オマージュをそこはかとなく感じさせるキャラ設計だけど何か関わりがあったりしないかな

  • 567前スレ85625/03/07(金) 02:50:22

    前スレで投げさせて頂いたヴンダーのキャラシです……ご参考までに。
    また、投げた者の自己満としてイメージ画像を投げさせて頂きます。スレ主様の執筆のイメージを膨らませる一助となりますれば幸いです……

    【魔法少女名】ヴンダー
    【変身後の外見】モスグリーンの軍用コートを羽織り、枯れ果てた薔薇の髪飾りを付けた金髪碧眼の少女軍人。
    死んだ魚のような眼に深い隈が出来ている。
    【年齢】80歳以上(見た目は14歳)
    【趣味/魔法少女としての日課】草花を愛でること/拷問
    【好きなもの】夢、綺麗な花
    【嫌いなもの】夢
    【性格】機械のように任務を遂行する。他者を傷つけることに何の感慨も抱かない。
    【得意な魔法】『夢を見るよ』
    精神に干渉して虚像を見せる幻覚魔法。
    相手が最も恐れる記憶を探り、見せ続ければ精神を完全に破壊してしまうほどに強力。
    本来は美しい夢を見せることもできたが、大人に強制されて戦い続ける内に悪夢以外を作り出せなくなった。
    【魔法少女になったきっかけ】戦火に見舞われる家族を想い、助けになりたいと感じたことで発現した
    【詳細】アリア配下の魔法少女。第二次世界大戦時は敵に悪夢を見せる拷問執行人だった。
    戦闘力は低いため、敵に幻覚を見せながら味方と連携したり、地雷原やトラップ地帯に誘い込むなどの戦術を取る。
    【備考】
    幼い頃は植物園の館長になって家族や友人を招くことが夢だったが、現在は悪夢以外は見れなくなった。
    「きっと死ぬ時も悪夢を見ながら死ぬのだろう」と諦観を抱いている。

  • 568二次元好きの匿名さん25/03/07(金) 07:45:24

    あらかわいい

  • 569二次元好きの匿名さん25/03/07(金) 12:11:47

    ????の正体とウェンディゴの魔法がどう作用するかが鍵になりそう
    あとはハスキーロアの覚醒がどこまで進むか

  • 570二次元好きの匿名さん25/03/07(金) 20:31:37

    保守

  • 571◆xaazwm17IRZa25/03/07(金) 23:12:09

    短いですが、一旦投下します~

  • 572◆xaazwm17IRZa25/03/07(金) 23:12:45

    「え、今日はムケッカ(ブラジルの煮込み料理)食べていいのか!?」

    「ああ、いいぞ。たくさん食べろ……」

    「ありがとうじいちゃん!」

     普段は厳しい祖父が、今日は聖人のような表情を浮かべている。

     バルバロイ一人がすっぽり入れそうな大きな鍋に、祖父はレードルを入れ、ゆっくりとかき混ぜている。香辛料の匂いがバルバロイの嗅覚を刺激した。

     皿一杯に山盛りになったムケッカを、バルバロイは素早く口に運ぶ。頬が落ちそうになるほど美味しい。至福の時間。

    「やっぱりじいちゃんのムケッカは最高だな!」

    「おかわりもいいぞ……」

    「わーい!」

     レードルを手渡され、バルバロイは溢れそうになるほどムケッカを注ぐ。ふと、どうして祖父が居るのか不思議に思った。バルバロイは今、日本に居るはず。なのにここはブラジルの、実家の柔術道場である。

    (…………まぁ、いっか)

     そんなことよりムケッカを食べよう。

  • 573◆xaazwm17IRZa25/03/07(金) 23:13:28

     二皿目もぺろりと平らげ、三皿目を食べようと鍋に近づく。

    「これより上昇訓練を始める!」

    「へ?」

     突如、祖父の顔が柔和な聖人スマイルから、厳しい武術家のそれへと変わった。

     そして、祖父の背後から魔女のように陰険な笑みを浮かべた、この世で最も邪悪な存在が姿を現わした。

    「バルバロイちゃん、飛ぼうか♪」

    「ぎゃー!? スカイウィッチ!?」

     以前刻まれた恐怖を思い出し、バルバロイは魔法を全力で発揮してその場から逃走を図る。しかし、一瞬で距離を詰められ、スカイウィッチに抱えられる。

    「じ、じいちゃん、助け――」

     て、と言う前に道場の屋根はどんどん小さくなっていく。全身で感じる外気の冷たさ、肌を震わせる風。

    「降ろせ! 今すぐ私を降ろせ!」

     恐怖を噛み殺し、バルバロイはスカイウィッチに叫んだ。

  • 574◆xaazwm17IRZa25/03/07(金) 23:14:03

    「分かった」

    「え――きゃあああああああ!」

     刹那の浮遊感。そして感じる、重力。今度こそバルバロイは涙を流して悲鳴を挙げた。

     それを、地上から見上げる少女が居た。モスグリーンの軍用コートを羽織り、枯れ果てた薔薇の髪飾りを付けた金髪碧眼の少女だった。

     眠たげな瞳で少女はバルバロイの落下を見届けると、指で空間を撫でた。すると、その場に少女が一人潜れる程度の穴が開く。慣れた様子で、少女はその穴にするりと侵入した。

  • 575◆xaazwm17IRZa25/03/07(金) 23:14:57



     ヴンダー。それが、少女の名前だ。外見年齢は14歳で、精神年齢もその程度だが、人間としての実年齢は80歳を超えている。かつてナチスドイツに徴用された魔法少女であり、今は大総統「トート・アリア」の忠実な部下である。

     固有魔法は『夢を見るよ』。相手の精神に干渉して虚像を見せる幻覚魔法である。

     この魔法でヴンダーは数多の精神を破壊してきた。そのことに、罪悪感は無い。かつては幼気な少女だったヴンダーは長い年月の末に、機械めいた情動しか持ち合わせなくなった。

     魔法陣を破壊するためにあにまん高校、地下防空壕に潜入した三人の魔法少女に、ヴンダーは先制攻撃を加えた。

     相手の精神に潜り込み、トラウマを引き摺りだす。

    (ムニャ……バルバロイは、駄目ですね……)

     本人は泣き叫んでいるが、トラウマの強度が低すぎる。ある程度の精神ダメージを与えることは出来るだろうが、精神の破壊や、戦闘不能に追い込むことは出来ないだろう。

     内部ではある程度の時間経過があるが、外部では一瞬だ。恐らく外の者からみれば、バルバロイは一瞬ぐらついたようにしか見えないだろう。

     こればかりは仕方ない。頭頂部などに直に手を当て、一定時間幻覚を脳に送り込み続ければ精神破壊を狙えるかもしれないが、直接的な戦闘を苦手とするヴンダーは、近接戦闘の権化であるバルバロイに近づきたくない。変身を解除してても嫌だ。

  • 576◆xaazwm17IRZa25/03/07(金) 23:18:00

    投下を終了します


    >>567

    可愛いイラストありがとうございます……!

    拷問担当ということでグレンデルと話が合いそうですが、仕事でやってる人と趣味でやってる人なのでまったく話は噛み合わないと思います……!

  • 577二次元好きの匿名さん25/03/07(金) 23:20:43

    ナチスで幻覚使いはヘルシングでもみじおろしにされた人を思い出すぜ!

  • 578二次元好きの匿名さん25/03/07(金) 23:25:33

    遠距離からだと表層意識にしか触れられず、直接接触できる距離なら深層心理やロックされた記憶にも干渉できる…みたいなイメージかしら
    撹乱して味方と連携する戦術は遠距離型っぽいわね

  • 579二次元好きの匿名さん25/03/08(土) 08:16:46

    ピスケスといい頭脳派タイプ魔法少女が活躍してくれるのいいゾー

  • 580二次元好きの匿名さん25/03/08(土) 12:03:30

    本当にスカイウィッチの超高度飛行はトラウマだったんだな…

  • 581二次元好きの匿名さん25/03/08(土) 17:36:02

    バルバロイちゃんの悲鳴が女の子らしくて可愛い

    ヴンダーちゃんは意外と唯一無二の幻術固有魔法持ちなのでその系統なら最強とかかな

  • 582二次元好きの匿名さん25/03/08(土) 22:11:43

    高校編だし、スカイウィッチと同じくほぼ戦闘シーン無しで亡くなってしまった数少ない参加者のブラックブレイドとナサリーブラウンに何かの形で救いがあってくれたら嬉しいね〜
    仕方ないとはいえ参加者でなく唐突に出てきたパラさんとエネミーに殺されてしまったからね

  • 583二次元好きの匿名さん25/03/09(日) 00:32:38

    まだ素の状態の手の内すら全部見せてないグレンデルがいるのに謎の敵も控えてるのがなぁ…
    グレンデルがバルバロイと最初に戦った時はキャラシに記載されてる鉤爪や顎を使わずわざわざ殴る蹴るしてたあたりお遊びっぽいし

  • 584◆xaazwm17IRZa25/03/09(日) 01:30:14

    投下します

  • 585◆xaazwm17IRZa25/03/09(日) 01:31:31

    (それに比べて、ハスキーロアは……)

     響く砲撃音。

     ナサリーブラウンの五体が飛び散る。恐慌状態になったハスキーロアを庇うように、ブラックブレイドが前に出る。

     再び砲撃音。ナサリーブラウンと同じように、ブラックブレイドもまた人の形を留めない死体へと変わる。

     ハスキーロアは絶叫した。腰を抜かし、その場から逃げようとする。

     懸命に四肢を振り回すハスキーロアの背中に、ジャック・ザ・リッパーが刀を振り下ろす。

     それを庇うようにティターニアが前に出て、膾切りにされる。

     他者の血で全身を染め上げたハスキーロアは、呻きながら身を屈め、前髪を掴まれ無理やり顔を挙げさせられる。

     憎悪で顔を醜悪に歪めたデッドマンズ・ハンドが、ハスキーロアの額に銃口を突きつける。

    「全部お前のせいだ」

     銃弾が放たれる前にデッドマンズ・ハンドの顔が、柘榴のように弾ける。

     全てに疲れ切った顔で、スピードランサーは肉片がこびりついた槍を振るった。

    「友達だったんだけどなぁ……」

  • 586◆xaazwm17IRZa25/03/09(日) 01:31:43

    「ご、ごめんなさい……私のせいで……私が、私が……」

     ハスキーロアの世界は、血で覆われている。魔法少女だったものの肉と骨と臓物と脳髄と衣装の一部が散らばった世界で、ハスキーロアは懺悔した。

    「私が、あの時、死んでいれば……こんなことに、ならなかったのに」

     誰かに庇われ続け、誰かに守られ続ける。自分の『罪』をハスキーロアは自覚し、狂ったように、『死んでいないこと』を謝り続けた。

    (ムニャ……うん、この子は再起不能ですね……)

     80年前のヴンダーなら心を痛めていたかもしれない。だが、悪夢の中を生き続けたナチスの拷問担当人は、この程度のことで感情が動かされたりはしない。

    (初撃で一人落とせたのは……幸先が良いですね……バルバロイの相手は、グレンデルさんに任せればいいですし……)

     自分とハスキーロアの相性は最高だった。どこまでが大総統の狙いだったのかは分からないが、仕事が想定より楽に済んだと、ヴンダーは思う。

  • 587◆xaazwm17IRZa25/03/09(日) 01:32:21

    (最後の一人は、未知数ですが……)

     ヴンダーは、ハスキーロアの精神からウェンディゴの精神に移動する。

     瞬間、ヴンダーの視界に広がったのは——無数の十字架だった。

    (……何ですか、これは?)

     その世界は、どこまでも荒涼としていた。

     地平線の彼方まで続く広い荒野。そこに、整然と十字架が並んでいる。

     墓場、である。

    (これが、ウェンディゴのトラウマ……ムニャ、お墓が怖いというのも、何だか随分可愛らしいですね……)

     そうではない、とヴンダーの本能が告げている。此処は、どこかおかしい。

    「殺風景だろ」

     と、ヴンダーは声を掛けられた。

     魔法の仕様上、そんなことはあり得ないはずだった。

     振り返る。ペストマスクを被った少女が、幽鬼のように立っている。

    「ムニャ……どうして、私を認識できるんですか」

    「……君が疑問に思うのは、其処じゃないよ」

  • 588◆xaazwm17IRZa25/03/09(日) 01:33:00

     謎めいたウェンディゴの言葉に、ヴンダーは沈黙する。

     さっさと移動すればいい。ウェンディゴにとっての悪夢は墓場だった。いまいち効きが悪いので、後はグレンデルに丸投げする。

     それだけの話だ。別に自分の魔法が万能であるとも最強であるとも思っていない。遠距離で発動するならこんなものだ。ハスキーロアのように元から限界寸前で無いのなら、大した魔法ではない。

     だから、動揺しなくていいはずなのに。

    「お墓が、多いんですね」

     気づけば、ヴンダーは口を開いていた。どうでもいいはずの話を、何故か縋るようにウェンディゴへ語る。

    「他人の死が、怖いんですか」

    「死が、怖くない人なんか居ない。それが他人だろうと、大切な人だろうと、自分だろうと、死はいつだって怖いものだ。……だから、私の魔法は最低なんだ」

    「ムニャ……そうでしょうか。本当に怖いものは、永遠に続く悪夢ですよ……」

    (どうして、そんなことを語っているんでしょうか……)

     何かが致命的に狂い始めている。

  • 589◆xaazwm17IRZa25/03/09(日) 01:33:14

    投下を終了します

  • 590二次元好きの匿名さん25/03/09(日) 01:41:37

    描写的にウェンディゴ本体は自分の魔法についてほぼ何も分かってないも同然なのでこれは『ウェンディゴの中の人』かね

  • 591二次元好きの匿名さん25/03/09(日) 09:16:23

    眠れる存在を呼び覚ましてしまったか…?

  • 592二次元好きの匿名さん25/03/09(日) 15:36:57

    接触したことで明らかに干渉を受けている…

  • 593二次元好きの匿名さん25/03/09(日) 21:36:15

    ウェンディゴは本来は活発な性格だったらしいので、自分の魔法に向き合って想いを取り戻すことが覚醒への条件だと思われる

    死に翻弄される女の子から死を司る魔法少女に成長しなければ、死を弄ぶ怪物グレンデルには恐らく勝てぬのだろう

  • 594二次元好きの匿名さん25/03/09(日) 22:45:34

    ウェンディゴの潜在意識を刺激してくれる今の状況は実はかなり美味しい?

  • 595◆xaazwm17IRZa25/03/10(月) 01:33:14

    投下します……!

  • 596◆xaazwm17IRZa25/03/10(月) 01:33:47

     無限に広がっていると錯覚させるほど、その墓場は広かった。

     ヴンダーは、ウェンディゴを睨みつける。眠気は、すっかり覚めていた。

    「どういう意図で私に干渉できるのか、あえて聞きません。
     これはむしろ、好都合です」

     そう言って、ヴンダーはウェンディゴの前まで歩み寄る。

     恐怖は、無い。バルバロイのような近接戦闘スキルを、ウェンディゴは有していない。

    「直は——効きますよ」

     そう言って、ヴンダーはウェンディゴに手を伸ばす。

     ウェンディゴは避けることなく、その手を迎え入れた。

     ヴンダーの右腕はペストマスク越しにウェンディゴの頭頂部に触れ――そのまま、すり抜けた。

    「…………え?」

     ヴンダーは呆然と右腕を見た。そして、さっきより焦りを込めて、ウェンディゴの身体に触れようとする。

  • 597◆xaazwm17IRZa25/03/10(月) 01:34:39

     蜃気楼のように、触れることが出来ない。

    「こ、これがあなたの魔法ですか……!」

    「違う」

     ウェンディゴの声には、感情が乗っていなかった。作戦が上手く嵌ったという高揚、敵を動揺させたという嗜虐心。そういったものが一切抜け落ちている。

     虚無の響きだった。

    「君は、其処に居る」

     そう言って、ウェンディゴはヴンダーの背後を指差す。

     思わず、ヴンダーは振り返った。

     無数の十字架が並んでいる。視界いっぱいに広がっている。地平線の彼方まで、無限かと錯覚させるほど、たくさんの十字架が。

     そんなはずはない。そんな、唐突で理不尽がことが、起きるはずがない。

     ヴンダーは、吸い寄せられるように一つの十字架に向けて歩きだした。

     ここは墓場だ。十字架の下には、死者が眠っている。

     墓標に、一つの名前が刻まれている。

  • 598◆xaazwm17IRZa25/03/10(月) 01:35:30

    「あ……ああ……」

     刻まれた名前に、見覚えがあった。ヴンダーが、魔法少女になる前の名前。

     80年以上前に、親から与えられた名前。

    「私の名前……何で……」

    「君は——もう死んでいる」

     と、ウェンディゴは断言した。

    「そんな……いつの間に……」

    「私の精神に干渉した瞬間、つまりは魔法を発動した瞬間に、君は即死していたんだ」

    「嘘……そんなの、おかしいよ……」

    「言ったはずだ。君が疑問に思うところは、私に話しかけられたことじゃない。もう死んでいるのに、まだ君が残っていることを疑問に思うべきだったんだ」

    「死んだ……私が、違う、これは幻覚……そんなの嘘……」

  • 599◆xaazwm17IRZa25/03/10(月) 01:36:18

     ヴンダーは精神世界に穴を開け、現実世界に帰還しようとした。しかし、いくら試みても出来なかった。

    「嫌……嫌……なんで、何で……!?」

    「死とは、そういうものだ。理不尽で、唐突で、交渉が不可能なもの。それが死」

    「違う、違う、違う……! これは、幻覚! 悪夢! 私は、信じない。だいたい、此処にある十字架は私だけじゃない! こけおどしのために、こんなにたくさんの……!」

     そこまで叫んで、ヴンダーは唐突に口を噤んだ。

     ある、恐ろしい可能性に思い当たったからだ。

     突拍子もない、妄想に過ぎない。そう思っても、その悪夢が脳髄にこびりついたヴンダーは、走り出すしかなかった。

     無数の十字架、その墓標に目を通していく。ヴンダーの顔は、どんどん青ざめていた。

    「ああ、嘘……そんな……」

     喉から悲鳴が漏れる。

     知っている名前が、墓標に刻まれている。

  • 600◆xaazwm17IRZa25/03/10(月) 01:37:02

    投下を終了します。

    【ヴンダー 死亡】

  • 601二次元好きの匿名さん25/03/10(月) 05:24:37

    お疲れ様でした〜!!

  • 602二次元好きの匿名さん25/03/10(月) 07:45:06

    かわいそカワイイ最期であった…

  • 603二次元好きの匿名さん25/03/10(月) 08:00:29

    ワンダー・オブ・Uだこれ!

  • 604二次元好きの匿名さん25/03/10(月) 12:03:31

    死の事実を突きつけて殺す別路線の不死者キラー誕生?

  • 605二次元好きの匿名さん25/03/10(月) 13:15:35

    死の運命を押し付ける=確定死という結果を持ってくるみたいなことかな

  • 606二次元好きの匿名さん25/03/10(月) 20:17:29

    保守

  • 607二次元好きの匿名さん25/03/10(月) 22:24:11

    今までの描写やマジックアイテムの強化薬アンプルの説明を見るにウェンディゴとグレンデルの力の大元は恐らく同じで、
    グレンデルは大元の血に適合して人間から進化した怪物、ウェンディゴは大元そのものが中に入り込んでいるので力を制御できずにいる…みたいなイメージかな?

  • 608二次元好きの匿名さん25/03/11(火) 01:37:27

    >>607

    賢いなぁ

  • 609二次元好きの匿名さん25/03/11(火) 06:25:03

    本物の小並感を見た

  • 610二次元好きの匿名さん25/03/11(火) 07:45:17

    ヴンダーの魔法はある意味無理やり制御しようとするやつだから制御不能と相性最悪なんだよね…

  • 611二次元好きの匿名さん25/03/11(火) 08:08:56

    ウェンディゴの中にいるのか、そのものに成り代わっているのかは不明だけどガチ死神かそれっぽい何かであることは確定みたいね

  • 612二次元好きの匿名さん25/03/11(火) 08:47:26

    扱いを間違うと「敵に勝てた(殺せた)のは全部ウェンディゴの魔法で死の運命に導いたおかげです」みたいな茶番になりそうだし、どうスレ主さんが捌くのか楽しみ

  • 613二次元好きの匿名さん25/03/11(火) 13:50:04

    保守

  • 614二次元好きの匿名さん25/03/11(火) 18:13:25

    グレンデルは悪党として良いキャラしてるので、うしおととらの紅蓮よろしくクソ強い抜け目ないクソ野郎として大暴れしてからくたばってくれ

  • 615二次元好きの匿名さん25/03/11(火) 22:44:49

    保守

  • 616二次元好きの匿名さん25/03/11(火) 23:32:43

    ヴンダーが地雷原に自ら飛び込む形になったけど…この理不尽さこそウェンディゴの真骨頂だねぇ
    自覚症状無いのがかなり強い

  • 617二次元好きの匿名さん25/03/12(水) 02:16:00

    あげ

  • 618二次元好きの匿名さん25/03/12(水) 07:50:52

    精神世界…?ヴンダーが即死してたからかもしれないけどそれとは別の世界に入り込んでしまってたのか…?

  • 619二次元好きの匿名さん25/03/12(水) 13:53:51

    覗いた瞬間即死してウェンディゴのフィールドに連れて行かれたように見える

  • 620二次元好きの匿名さん25/03/12(水) 21:21:20

    「きっと死ぬ時も悪夢を見ながら死ぬのだろう」

    む、無慈悲…

  • 621二次元好きの匿名さん25/03/12(水) 23:52:52

    直どころじゃなかったヴンダーちゃん…案の定、効き過ぎた模様

  • 622◆xaazwm17IRZa25/03/13(木) 00:01:10

    二日ほど顔を出せず申し訳ありません、投下します……!

  • 623◆xaazwm17IRZa25/03/13(木) 00:01:49

     その名前は、かつて肩を並べた戦友のものだ。

     ヴンダーは生前には見せなかった俊敏さで墓場を駆けまわった。

     墓標には、幾つもの見知った名前が刻まれている。

     家族。幼馴染。戦友。敵。敵。敵。とっくの昔に死んだ者の名前が、この墓場には刻まれている。

     埋葬されることの無かった者も、墓として在る。

    「ここは……冥界。ああ、私は……」

     死んだ。ヴンダーはようやく、その事実を受け入れた。

    (これが死……)

     受け入れてしまえば、思ったより悪くないものだと思えた。もっと苦しみ抜いて死ぬ者もいる。幻覚を直に浴びせ、精神を完全に破壊して狂い死にした者もたくさん知っている。

     それに比べて、今の自分のなんと穏やかで幸福なものか。

     肩の荷が、降りた。冷めない悪夢がようやく終わった。

    「ここはあの世だとして……これから私はどうなるんですか、ウェンディゴ」

  • 624二次元好きの匿名さん25/03/13(木) 00:02:39

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  • 625◆xaazwm17IRZa25/03/13(木) 00:03:53

     天国に行くのか、はたまた地獄か、それとも消滅するのか。

     かつての仲間と共に、植物園を見てのんびりと過ごす。そんな絵に描いたような幸福な夢は、自分には訪れないだろう。

     たくさんの人を苦しめてきた。たくさんの人を殺してきた。その中には魔法少女になる前のヴンダーより、もっと幼い者だって居た。戦争行為には無関係の、無辜の人々だって大勢居たのだ。

    「……ウェンディゴ?」

     呼びかける。そして、ふと気づいた。

     ここはウェンディゴの精神世界――では、無いのだろう。ウェンディゴの精神に、ヴンダーやヴンダーの昔の仲間の墓標があるわけ無いのだから。

     それこそ、『全人類の死を内包した精神』でもない限り、そんな可能性はあり得ない。

     ならば。

    (この子は……誰?)

     ペストマスクは、じっとこちらを見ている。

     ……どうして今まで気づかなかったのだろうか。

  • 626◆xaazwm17IRZa25/03/13(木) 00:04:33

     ペストマスクの少女からは——獣の臭いがする。

    「あなたは……誰なんですか」

     怖い。恐怖が、ヴンダーを浸蝕する。

     原初の本能だった。捕食者に出遭ってしまった、という人類は忘れてしまった感覚。
     人間の恐ろしさを、魔法の恐ろしさを、戦争の恐ろしさを、ヴンダーは知っている。精通している。

     少女は、ゆっくりとペストマスクに手を伸ばした。

     駄目だ、と確信する。中を見てしまえば、きっと自分は。

     それでも、ヴンダーの身体は動かず、視線を外すことは出来ない。

     ペストマスクは徐々に剥がれていく。それに合わせて獣臭も増していく。

     ヴンダーは悲鳴をあげた。

     それは唐突に途切れ、咀嚼音だけが墓場に響いた。

  • 627◆xaazwm17IRZa25/03/13(木) 00:05:03



     時は僅かに遡る。

     あにまん高校に到着したバルバロイ、ハスキーロア、ウェンディゴ。魔法陣は地下防空壕にあるとナイトメア★メリィから事前に指示を受けていた三人は、容易にその入り口を発見できた。

     休校のため生徒の数は見えないのは当たり前だが、教員も誰一人来ていない。街が滅茶苦茶になっている状況下、既に市外へ避難したのか、あるいは自宅で閉じ籠っているのか。それとも――消されたのか。

     そのことを考えると、ハスキーロアは不安になった。深夜の戦闘で壊れた校舎はそのままだ。——ナサリーブラウンの遺体は、無くなっていた。午前中のうちに警察が運び出したのだろう。

    (アンチマテリアルライフルも見つからなかった……)

     ナサリーが話していた隠し場所を訪れたが、何も無かった。警察や学校関係者が持って行ったのか、敵の手に渡ったのか。

     残念だが、時間制限がある以上、捜索に時間はかけられない。

     悔しさを感じつつ、三人は防空壕に向かい。

    「げっげっげ、待ってたぜ~」

     入口で待機していたグレンデルと遭遇した。

  • 628◆xaazwm17IRZa25/03/13(木) 00:06:46

     バルバロイは弾かれたように飛び出した。喧嘩の続きができる。彼女は笑みさえ浮かべていた。

     ハスキーロアもまた、決意を込めて向かっていった。グレンデルの情報は既に共有されている。昨日までのハスキーロアでは逆立ちしたって敵わない相手だが、それでも勇気を振り絞って走り出す。

     ウェンディゴは手持無沙汰に突っ立っていた。流されるまま来てみたが、共有されているグレンデルの情報を考慮すると、ウェンディゴが殴りかかっても返り討ちに遭うだけだ。単純な身体能力ならあの化物――ブレイズドラゴンに匹敵するかもしれないと、ウェンディゴはそう予想していた。それは余りにも甘い予想であったが、ウェンディゴの認知ではこれが限界だった。

    「げっげっげ」

     グレンデルもまた、迎え撃つように駈け出す。嗜虐に顔を歪め、少女らに暴力を行使しようとする。

    「ガチバトルだぜ! なーんてな♪」

     瞬間、グレンデルの背後に隠れていたヴンダーが魔法を行使する。

     遠距離からの幻覚攻撃。

  • 629◆xaazwm17IRZa25/03/13(木) 00:07:49

     夢から醒めれば何も覚えていないように、ヴンダーの魔法は直でなければ直ちに精神を崩壊させるものではない。

     事実、バルバロイは足を止めず、僅かに顔を歪めた程度だった。

     ハスキーロアは涙を浮かべ、膝をついた。グレンデルの想定以上の成果。

     ウェンディゴは、ペストマスクで顔を隠しているし、最初から動いていないので、効いているのかは分からない。

     時間にすれば、およそ0.1秒。

     これで勝敗は決しないが、デバフであることは間違いない。

    (まぁこんなものが無くても俺っちは圧倒できるが——)

     背後で、ヴンダーが倒れた。

    「あ……?」

     グレンデルは振り返る。

     ヴンダーに初撃を任せた理由。それは、ウェンディゴの存在にあった。

     ゲルニカが語った「ウェンディゴ」という言葉。どうして儀式に選ばれたのか分からない不明瞭なスペック。

  • 630◆xaazwm17IRZa25/03/13(木) 00:09:40

     ヴンダーはウェンディゴの毒見役だった。

     ただの雑魚か、あるいは毒を含んでいるのか。

     その結果に関心があったからこそグレンデルは振り返った。

     ヴンダーは顔を恐怖で固まらせ倒れていた。傭兵としての経験が告げている。

     死んだ。即死だ。

     ——ウェンディゴに魔法を行使しただけで、即死した。

    「猛毒じゃねぇか!?」

     ヴンダーの仕掛けた幻覚魔法。それによる精神へのデバフ。

     だが、グレンデルもまた想像以上のウェンディゴの危険性に気を取られた。

     故に、届く。

    「Eu te peguei!(捕まえたぞ!)」

     バルバロイの右手が、グレンデルの左手首を掴んだ。

     ウェンディゴの存在が、グレンデルの対処を遅らせる。そして、バルバロイの動きは、初戦より鋭さを増していた。

     グレンデルの巨体が宙を舞う。

  • 631◆xaazwm17IRZa25/03/13(木) 00:10:40

     両足が大地を離れ、次の瞬間には背中から叩きつけられていた。

     衝撃が、グレンデルの全身に響く。

     バルバロイはすかさず次の技に移行しようとする。一度掴んだら戦闘不能になるまで逃げる。それがバルバロイの喧嘩。

    「調子乗るなよ、クソガキッ!」

     ぶわり、とグレンデルの両足がバルバロイに襲いかかる。

     ただの獣の悪足掻きではない。バルバロイは一流の柔術家であるがゆえに、グレンデルの狙いに気づき——咄嗟に手を離し、距離をとった。

     舌打ちをして、グレンデルは起き上がる。

    (今のは……関節技の入りだった)

     バルバロイの顔に冷や汗が流れた。

    (こいつは……格闘技を齧ってる……!)

     にぃ、とバルバロイは笑みを浮かべる。まったく、なんという強敵なのか。

    「関節をへし折ってやろうと思ったんだがなぁ……」

     グレンデルは忌々しそうに吐き捨てた。

  • 632◆xaazwm17IRZa25/03/13(木) 00:11:47

     ウェンディゴは、ハスキーロアの手を取った。

    「立って。バルバロイが戦っている間に、魔法陣を破壊しよう」

    「で、でも、バルバロイさん一人じゃ……」

    「私たちには時間が無い。バルバロイが心配なら、魔法陣を破壊してすぐに戻ってくればいい」

     バルバロイは二人に向かい、ジェスチャーをした。行け、という合図。

    「私たちじゃ足手纏いだ。さぁ、行こう」

     ハスキーロアはふらふらと立ち上がり、心配そうにバルバロイを見た。だが、涙を拭うと防空壕の中に突入する。

    (私たちは私たちの出来る事。それに、たぶんバルバロイは——ブレイズドラゴンと同じ人種だ。戦いの邪魔をすると、どれだけ怒るか分からない)

     ウェンディゴもまた、バルバロイに背を向け、防空壕に入る。

     それを、グレンデルは目で追い、げっげっげと笑った。

    「Vamos começar!(さぁ、始めるぞ!)」

     バルバロイの言葉に、グレンデルは肩を竦める。

    「Não se empolgue, seu pirralho.(はしゃぐな、クソガキ)」

     グレンデルから発せられた母国の言葉に、バルバロイは驚愕した。

     グレンデルは、その野卑な言動や、獣じみた外見とは裏腹に、傭兵として世界を飛び回り、一定以上の教養を有している。当然ブラジルの言語も習得している。

  • 633◆xaazwm17IRZa25/03/13(木) 00:12:55

    本日の投下はここまでとさせていただきます~!

    二日間感想や保守をありがとうございます……!

  • 634二次元好きの匿名さん25/03/13(木) 00:40:01

    これでまだ強制スタン&魔法無効咆哮と再生能力が控えてるからお遊びの域なの怖いわぁ
    タイマンイベントだとバルバロイはハイエンドやヒートハウンドと同じランク帯だったし、ヒートハウンドvsクライオニクスを見るに一つランクが上の相手だとある程度は足掻けても根本的な勝ち目が全く無いのよね

  • 635二次元好きの匿名さん25/03/13(木) 02:20:05

    暴力・魔法・知力・社会性とあらゆる面でバルバロイを圧倒する相手に武術でどう対抗するのか…
    そして新運営3幹部がこのスペックならグレンデルやアリア、パトリシアなどが序盤であにまん市に降りてきたifルートも見てみたかったな…

  • 636二次元好きの匿名さん25/03/13(木) 07:52:03

    知恵のある猛獣だからね。相手として厄介極まりない

  • 637二次元好きの匿名さん25/03/13(木) 15:48:02

    格上には通常得意分野の一点突破で対抗するしかないけど今回は上位互換タイプの格上だからかなり厳しい

  • 638二次元好きの匿名さん25/03/13(木) 19:47:46

    ダイス値的にもここでグレンデルは殺せないだろうし、決着はお預けかな?

  • 639◆xaazwm17IRZa25/03/13(木) 23:19:41

    投下します~

  • 640◆xaazwm17IRZa25/03/13(木) 23:20:40



     バルバロイを置いて行くことに不安が無いかといえば嘘になる。

     また、間違えたのかもしれない。また、私が弱いせいで犠牲が出るのかもしれない。

     そんな恐怖に心を乱されながら、それでもハスキーロアが駆けたのは、勇気や確信によるものではなく、自分の判断を信用できないからだった。

     周囲の指示を無視して行動し、最悪な結果になったらどうしよう。

     そんな風に考えてしまい、ハスキーロアは駆けざるを得なかった。

     少しでも早く魔法陣を見つけ、壊さなければならない。

     そしてバルバロイの元へ駆けつけ、グレンデルを倒す。

     出来るだろうか。間に合うだろうか。

     違う、できるはずだ。間に合うはずだ。

     そうじゃない、出来ないといけないし、絶対に間に合わせるのだ。

     九歳の少女の心はぐちゃぐちゃにかき乱されている。

    「落ち着きなよ、ハスキーロア」

  • 641◆xaazwm17IRZa25/03/13(木) 23:21:20

     後方から声が聞こえ、ハスキーロアは立ち止まる。

     ペストマスクの少女——ウェンディゴが駆け足で向かってくる。

    「一人で先行するのは危険だ。何かあったときにフォローできない」

     まぁ、何かあってもフォローできないけどね、とウェンディゴは言った。

     それが冗談なのか警告なのか弱音なのか、ペストマスクの上からは判別できない。

    「あ、あの、ごめんなさい」

     ハスキーロアは頭を下げた。ハスキーロアは犬系の魔法少女。普通の魔法少女より俊敏だ。ハスキーロアが本気で駆ければウェンディゴは追いつけない。

     せっかくナイトメア★メリィが一つの魔法陣に三人体勢で臨めるようにしたのに、先行して一人になっていては本末転倒だ。

     ハスキーロア一人では――何も為せないのだから。

    「こちらこそ足が遅くてごめんね。不登校だから運動不足なんだ」

    「え、あ、あの……」

    「……そんなに気まずそうにされるとこっちが申し訳なくなる」

     どうやら自分を落ち着かせようとしているのだと、ハスキーロアは気づいた。

  • 642◆xaazwm17IRZa25/03/13(木) 23:22:39

     すぐに気づかないくらい自分は視野が狭くなっていたのだと、猛省する。

     実際ウェンディゴのコミュ力は褒められたものではなく(ここ最近の話し相手は殺人鬼くらいだった)ハスキーロアに落ち度は無いのだが、それを指摘できる者はこの場に居ない。

     二人は速度を合わせ、共に駈け出す。

    「君、九歳なんだっけ」

    「あ、はい、そうです」

    「なるほどね……。私の半分程度か……」

     申し訳ないなぁ……とウェンディゴは呟いた。その真意は、ハスキーロアには分からない。

     下降するにつれ、湿気が強くなっていく。

    「これはまた、難儀だね」

    「浸水、してる……」

     深夜に起こった、ブラックブレイドとメンシュ・パンツァーの戦い。その余波で、防空壕の一部は倒壊し、浸水していた。

  • 643◆xaazwm17IRZa25/03/13(木) 23:23:29

     それでも、足首が水に浸かる程度だ。切羽詰まった状況でその程度の不快感を口に出すのはどこぞのギャルドラゴンくらいである。

     二人は躊躇うことなく浸水エリアに入っていく。

    「落盤には注意してね、ハスキーロア。特に、今は私が居るんだから」

    「……? はい、注意します」

     もし魔法陣を設置するのなら、できるだけ奥に用意するだろう。

     そう考えた二人は周囲を注意深く観察しながら奥に進んでいく。

     焦燥する頭を必死に冷やし、探索に集中する。今この瞬間にも、バルバロイは殺されているかもしれない。

     そのことを考えると、ハスキーロアは気が狂いそうになる。今すぐ駈け出してバルバロイを助けに行きたくなる。

     面識など、殆ど無い。つい1時間前に名前を知った程度の間柄だ。

     けれど、彼女は仲間で、ハスキーロアのために、そして全ての参加者のために戦っている。

     第一、その前提が外れても、――失われていい命なんか無い。

     ハスキーロアはそう信じている。

  • 644◆xaazwm17IRZa25/03/13(木) 23:24:16

     と、振動音をハスキーロアの耳が捕らえた。

    「嘘……落盤!?」

    「うわ、そういう風に発動するんだ……」

     呆れた口調のウェンディゴを疑問に思いながらも、ハスキーロアは事態に対応するべく周囲に目を向ける。

     そして、落盤ではないと気づいた。天井が落下しているわけではない。

     ただ、天上の上、防空壕と地上の隙間を、何かが掘り進んでいる。

     モグラ、ではない。この機動音は。

    「ドリル……?」

     工具の音だ。ハスキーロアは、ドリルを連想した。

     轟音と共に、ハスキーロアの真上に大穴が空いた。

     慌ててハスキーロアはウェンディゴを庇いならが後ろに下がる。

     大穴から見えたのは、メタリックなブレード。

     ああ、あれは。

    「チェーンソー?」

  • 645◆xaazwm17IRZa25/03/13(木) 23:24:54

     ハスキーロアが呟いた瞬間、大穴から怪人が落ちてきた。

     ホッケーマスクを被り、2m近い巨躯の、悪夢が具現化したような存在。

     それが、巨大なチェーンソーを振り上げて、ハスキーロアとウェンディゴを狙い、落下してくる。

    「ひっ」

     怯えながらハスキーロアはウェンディゴを引っ張り、ブレードの範囲外に逃げた。

    「あ、あなたは……」

    「ハニーハント……」

     ハスキーロアの呟きに応えたのは、ウェンディゴだった。

     ブレイズドラゴン戦では同じ陣営――一切言葉を交わすことは無かったが——に居た二人の魔法少女、ペストマスクとホッケーマスクの魔法少女は視線を交わし合う。

    「お前は——あの子の敵だっ!」

     ハニーハントの喉から、獣じみた叫びが漏れた。

     ウェンディゴは言った。

    「うん、私は皆の敵だよ。……ごめんね」

  • 646◆xaazwm17IRZa25/03/13(木) 23:25:09

    投下を終了します

  • 647二次元好きの匿名さん25/03/13(木) 23:32:40


    そういえばハニーハントのことをすっかり忘れてた…

  • 648二次元好きの匿名さん25/03/14(金) 02:13:24

    おつした

  • 649二次元好きの匿名さん25/03/14(金) 07:54:49

    キルスコアが割とエゲツないハニーハント…

  • 650二次元好きの匿名さん25/03/14(金) 12:40:59

    オオカワウソでだいぶ稼いだし会話も何もなくいきなり殺しに来るタイプだからね

  • 651二次元好きの匿名さん25/03/14(金) 14:31:35

    精神デバフ食らったハスキーロアとウェンディゴで勝てるのか

  • 652◆xaazwm17IRZa25/03/14(金) 20:33:07

    投下します

  • 653◆xaazwm17IRZa25/03/14(金) 20:48:51

     バルバロイが魔法少女になってから、自分よりフィジカルに優れた相手と戦ったことは無かった。

     だが、魔法少女になる前。ただのジェシカ・ロドリゲスであった頃ならば、ある。

     女では、男に体格では敵わない。ましてや少女ならばなおのこと。

     ブラジルの裏路地で、チンピラやジャンキーを相手に、自分を上回る筋量を敵に回し、それでもジェシカは勝ち続けてきた。

     師匠から習った柔術は、実戦的だった。日本で習えるブラジリアン柔術とは境界(ジャンル)が異なる、喧嘩や闘争を想定した技術。

     それは、奇しくも日本で出会った魔法少女、ティターニアの教えと共通点が多かった。

    『相手が何かする前に倒せ』

     ブラジルの裏路地では、いつ刃物が、銃器が姿を現わすか分からない。

     それらが闘争の場に出現する前に、相手を戦闘不能にする。


     

  • 654◆xaazwm17IRZa25/03/14(金) 20:49:01

     師匠の教えは、ジェシカにはつまらなかった。刃物で刺されれば、銃で撃たれれば死ぬ。それくらいのことは分かる。

     けれど、戦闘をなるべく早く済ませるというのは酷く味気ない。

     互いに技を出し合い、疲労困憊になるまで戦いたい。そう主張したジェシカに、師匠は優しく語り掛けた。

     ジェシカは、スポーツの方が向いているのかもしれないな。

     そう言われるのは不本意だった。そのすぐ後に日本へ留学が決まった。
     
     蟠りを感じながらも、バルバロイは素直に日本へ渡った。

  • 655二次元好きの匿名さん25/03/14(金) 20:57:47

    このレスは削除されています

  • 656◆xaazwm17IRZa25/03/14(金) 20:58:43

     今、相対している敵は強い。
     自分よりフィジカルに優れ、恐らく自分より闘争慣れしており、自分と違って命を奪うつもりで戦っている。
     技術だけなら自分の方が上だが、向こうも素人ではない。

    「面白い」

     と、バルバロイは言った。

    「私はこういう戦いを求めていたんだ」

    「げっげっげ。お前みたいなことを言う奴、俺っちはたくさん見て来たぜ。どうして魔法少女はどいつもこいつもロールプレイしたがるのかねぇ。ちょっと拷問しただけで小娘に戻るんだが」

     二人の会話はブラジル語、より正確にはブラジルの公用語、ポルトガル語で行われている。この場にハスキーロアやウェンディゴが残っていても、二人の交す言葉は理解できなかっただろう。

     グレンデルは、その巨躯を生かし、ストレートを繰り出す。その速さ、その破壊力。並の魔法少女ならば避ける間もなく頭部が粉砕される一撃。

     風圧でバルバロイの帽子が吹き飛ぶ。だが、バルバロイの目はしっかりとグレンデルの拳を見極め、触れられない距離までバックステップする。

    (あー? 掴みに来ねぇなあ)

     掴まない限り、バルバロイに勝機は無い。にも変わらず、バルバロイは掴みに行かない。

  • 657◆xaazwm17IRZa25/03/14(金) 21:09:39

    (仲間のために時間稼ぎか? それに乗ってやってもいいが)

    「ガキの思惑潰すことほど楽しいもんはねぇよなぁ!」

     攻撃を回避しようとしたバルバロイ。その胴に、グレンデルは「尾」を巻きつけた。
     結果的にバルバロイは想定していた場所まで避け切れず――。

    「はっはァ!」

     哄笑と共に、腹部にグレンデルの拳が突き刺さる。並の魔法少女なら背中まで貫通する威力。参加者でも上位に位置する頑丈さのバルバロイだからこそ。

    「かはっ……!」

     血を吐きながら廊下を吹き飛び、壁にクレーターを作る。程度で済む。

    「げっげっげっげ! さぁ、闘争はここからだぜ~! 求めるものが闘争から死になるまで甚振ってやるから……あぁ?」

     グレンデルは不機嫌そうに殴った手首を見た。
     折られている。

     壁に叩きつけられたバルバロイは、勝気な笑みを浮かべながら立ち上がる。

    「いい、戦いだな……!」

     殴り抜いた瞬間、バルバロイの柔術によってグレンデルの手首は折られた。言葉にすると単純な、されど人間には不可能な神業。

     魔法少女の近接戦闘は、例えビームや雷や炎が飛び交わなくても、容易に道理を捻じ曲げる。

     

  • 658◆xaazwm17IRZa25/03/14(金) 21:26:31

    「手首折ったくらいで勝ち誇ってんじゃねぇよ、馬鹿ガキ」

     ぽきぽきと、グレンデルは折れた手首を元に戻す。
     ただそれだけの応急処置で、バルバロイが必死の思いでつけた傷は、完治する。

     一方、バルバロイのダメージは蓄積され続ける。

    「分かるか? これが俺っちとお前の性能差だよ。頑張って練習したブジュツは体育の時間にでも披露するんだな。まぁ、お前に待っているのは体育じゃなくて人体解剖の実演授業かもしれねえがな~」

    「……分からない。どうしてそんなに喋るんだ?」

    「テメェだって喋ってるだろガキ」

    「私は、楽しいから口に出す。けど、お前はまるで追い詰められたチンピラみたいに……何故だ、そんなに強いのに?」

     

  • 659◆xaazwm17IRZa25/03/14(金) 21:26:58

     不思議そうにバルバロイは首を傾げた。

    「何を、そんなに怖がっている?」

    「——テメェ」

     グレンデルの顔から嗜虐心が消えた。
     獰猛な猟犬の、数多の戦場を渡り歩いた傭兵の殺意が表に出る。

    「女子どもが、調子になるなよ」

    「喧嘩に、年齢も性別も関係ない。楽しいか、楽しくないかだ」

    「それが、舐めてるって言ってんだよ。……はぁ、もういいや。作戦変更だ」

     言い訳考えるの面倒だな、とグレンデルは忌々しそうに呟いた。

  • 660二次元好きの匿名さん25/03/14(金) 21:38:45

    このレスは削除されています

  • 661◆xaazwm17IRZa25/03/14(金) 21:47:21

     グレンデルが選んだのは、タックルだった。

     異常な身体能力から繰り出される突進は、大型トラックすらひっくり返し、バズーカ砲の威力すら凌駕するだろう。

     回避も、防御も、不可能。

     しかし、相対する魔法少女バルバロイもまた、強者に属する魔法少女。

     タックルの勢いを利用して、投げる。柔道でいう空気投げを仕掛けるために、その場にじっと留まり、笑みさえ浮かべて構えを取る。

     そして、二人の距離は瞬時に零に近づき。

     グレンデルは、吼えた。

     狼の咆哮を聞くと、人々は例え堅牢な小屋の中に居ても不安に駆られたという。
     グレンデルの咆哮は、精神干渉の作用がある。一般人ならば恐慌状態に。

     そして、魔法少女でも至近で喰らえば、精神と魔法が一時的に麻痺する。

     バルバロイの、魔法は解けた。

     変身が解除されたわけではない。ただ、発動していた『体を自在に鍛えられるよ』……自身のフィジカルを通常の魔法少女の、更に数倍にあげていた作用が消失する。

     更には精神さえも麻痺し、グレンデルのタックルを意識することなく受ける破目になる。

     それが意味するものは、死。
     並の魔法少女と同等のフィジカル、そして並の魔法少女が持ち合わせている意識さえも失ったバルバロイは……。

  • 662◆xaazwm17IRZa25/03/14(金) 21:59:09

     『無我』の状態に入った。

    (…………あ?)

     グレンデルは、疑問を感じた。
     あにまん高校の天井が、グレンデルを見下ろしている。

    (どういうことだ……俺っちは、確かにタックルをしたはず……)

     ならば今頃はグレンデルは立っていて、足元にはバルバロイの轢殺死体が転がっているべきだ。

     結果が、そうなっていない。

     倒れているのは、グレンデルだ。

     バルバロイの姿は、見えない。

     ふと、首に手を当てる。

     折れている。
     脊椎ごと、へし折られている。
     それに気づいた瞬間、グレンデルは戦慄した。

     

  • 663◆xaazwm17IRZa25/03/14(金) 21:59:31

     回復力には自信がある。だが、ここまでの損傷を受けたことは、無い。
     本当に回復するのだろうか。修練や自らの技術の研鑽の果てではない、他者からの人体実験によって得た肉体。カタログスペック以上のことは、グレンデルには分からない。

     緩慢に起き上がり、慎重に首に触れる。そして、手首と同じくごきごきと骨を鳴らした。
     ——治った。

    「げ……げっげっげ! テクノロジーってすげぇ!」

    (いや……それともあの山羊女を喰った作用か……?)

     一体自分に何が起こったのだろうか。
     無力になったバルバロイにタックルをした。グレンデルの狙いが正しければ、それで勝敗は決したはずだった。

     元々、終わらそうと思えばいつでも終わらせられる戦いだった。それをだらだらと引き延ばしたのは——ウェンディゴとの接触を避けるためでもあった。

  • 664◆xaazwm17IRZa25/03/14(金) 22:11:24

     バルバロイをさっさと倒してしまうと、魔法陣の防衛を任された身として、ウェンディゴの後を追わなければならない。

     だが、魔法を行使しただけで即死させる疑惑のあるウェンディゴの相手を、グレンデルはしたくなかった。

     殺さないように加減する、としてもどの程度の干渉で即死が発動するのかまるで見当もつかないのだ。
     ウェンディゴを始末するのは他の参加者、あるいはトート・アリアやナチスのトンチキ軍団に任せたい。

     そのためグレンデルは、すぐにでも終わらせられるバルバロイとの戦いをあえて長引かせ、「魔法陣の防衛が失敗」するのを待っていたのだった。

     仕事の達成よりも自己の安全を優先させる。

     同じ傭兵であるブレイズドラゴンがウェンディゴの危険性を知った上で連れまわしたのとは対称的に、グレンデルは自己の安全を優先させたのだった。

     そのはずだった。

    「一体、何が起こった……クソッ」

  • 665◆xaazwm17IRZa25/03/14(金) 22:21:05

     バルバロイの精神も、魔法も、一時的に封じたはずだった。

     咆哮が無くても爪や顎を使えば、あるいは武器を解禁すれば、いくらでも嬲り殺しにでいた。

     にも拘らずタックル&咆哮という即死コンボを仕掛けたのは、バルバロイの言動が勘に障ったからだ。

     見下されていると、そう感じた。

     あの時のように。
     
     単身で基地に乗り込まれ、仕掛けていた罠を全て解除され、数多の戦場を共に渡り歩いた同好の士を一方的に殺され、調教し従順になった魔法少女すら無力化され。

     グレンデルの全てを見透かし、叩き潰したあの女。
     
     炎上する基地。積み上げられた仲間の死体。夜空に浮かぶ月。
     こちらを見下ろす、女の冷たい瞳。

     人類最強の傭兵、ナサリーブラウン。



     

  • 666二次元好きの匿名さん25/03/14(金) 22:23:35

    マジかよ

  • 667◆xaazwm17IRZa25/03/14(金) 23:04:38

    (もう俺っちはあの頃の俺っちじゃねぇ! 人体改造で無敵の肉体を手に入れた! 今ならあの糞女を素手で解体できる! 事実、あの女はこの場所で、たかがエネミーにぶっ殺された! 俺っちなら絶対に負けない雑魚エネミーに殺されたんだ! 既に格付けは完了している!)

     怒りと焦りが、グレンデルの脳を焦がしていく。
     参加者に、未成年のガキに、素手の魔法少女に。四強にすら数えられていない、運営内でもクライオニクスやハイエンドほど評価されておらず、暗黒金持ちたちも優勝候補に加えていなかった雑魚に。

     脊椎を折られた。

     殺された、とは考えなかった。考えられなかった。

     自分は超人になったはずなのに。怪物になったはずなのに。

     グレンデルは咆哮した。

  • 668◆xaazwm17IRZa25/03/14(金) 23:23:59

     実のところ、グレンデルはバルバロイより強い。
     バルバロイはティターニアの弟子では最強と目されており、掴んでしまえばそのティターニアとて倒せる猛者だが、グレンデルもまた純粋な肉体性能では、ティターニアを圧倒している。

     咆哮により、相手の魔法を一時的に解除し、同時に精神を麻痺させる。

     バルバロイ相手にはオーバーキルともいえる、グレンデルの戦法。

     バルバロイは魔法を解除され、意識さえ一時的に喪失した。

     極限状況の中で起こった突然の脱力。そして無我。

     バルバロイの肉体は刻まれた技術を発揮した。

     師匠に教え込まれた超・実戦柔術。ストリートファイトで銃火器が発射される可能性がある国の「実戦レベルの武術」、それは即ち「殺人術」である。

     相手に何かさせる前に一撃で葬る柔術。普段のバルバロイは、これを戦闘不能に追い込む程度の技として使っている。相手を殺したいわけではない。共に全てを出し切った気持ちの良い喧嘩がしたいからだ。

     

     

  • 669◆xaazwm17IRZa25/03/14(金) 23:24:11

     もっとも、バルバロイが心変わりして、意図的に技で殺そうとしても、グレンデルには歯が立たなかっただろう。バルバロイは既に一流の武術家だが、超一流ではない。

     しかし、あの瞬間。グレンデルの咆哮によって生じた、「脱力」と「無我」。精神を超越したあの一瞬に、バルバロイは超一流レベルの技を発動できた。

     武を習った数多の参加者でも、抜刀金しか達していなかった域に、バルバロイは一瞬だけ辿り着いたのだ。

     かくして、グレンデルはタックルの勢いをそのまま利用され、自分が投げられたことに気づかぬまま頭から地面に叩きつけられた。

     そして、奇跡を為したバルバロイは、その場に倒れた。

     超一流の技術を持ってしても、グレンデルのタックルは受け流しきれるものでは無かった。

     バルバロイのダメージは閾値を超え、彼女は意識を手放した。
     

  • 670◆xaazwm17IRZa25/03/14(金) 23:36:20

     グレンデルがバルバロイを見失ったのは僅かな間だけだ。
     タックルと空気投げの余波で廊下や教室が破砕していたこと。
     グレンデルが冷静ではないこと。

     すぐにグレンデルは倒れているバルバロイを発見するだろう。
     そこで起きるのは強者への賞賛や、互いに健闘を称え合う感想戦……なはずがない。

     蹂躙と拷問と虐殺。グレンデルはバルバロイを嬲り尽くすだろう。

     だが——そうならなかった。

     聞こえたのは、エンジン音に似た音である。

     ドゥルルルルルルル……と、その音はグレンデルの聴覚を刺激し、彼女を冷静に戻した。

    (この音は……)

     該当する魔法少女は、只一人。

  • 671◆xaazwm17IRZa25/03/14(金) 23:36:33

    「いつの間に潜ってやがったんだ?」

     意識が混濁していたため、アリアも存在を無視した、チェーンソー使いの魔法少女。

     防空壕の入り口から、ホッケーマスクが姿を現わす。
     全身を「返り血」で濡らした怪人は、怪物にブレードを向けた。

     普段のグレンデルならば、見逃していただろう。
     ハニーハントは、儀式の進行に寄与する魔法少女。
     運営に立てつく雑魚を皆殺しにするまでは、放置しておいて良い存在。

     だが。

    「悪いなぁ、俺っちは今、虫の居所が悪いんだよ」

     殺意を向けられ、グレンデルは獰猛に帰した。

     折られた首は、とっくに完治している。
     人体改造によるものなのか、あるいは黒贄を取り込んだ結果なのか。

     共にマンションに連なる者を取り込んだ同士。怪人と怪物は、互いを滅ぼすべく戦闘を開始した。

  • 672◆xaazwm17IRZa25/03/14(金) 23:36:52

    投下を終了します……!

  • 673二次元好きの匿名さん25/03/14(金) 23:42:14

    お疲れ様でした
    バルバロイ、ティターニアの弟子で最強なのか…
    先生が主人公補正マシマシだった割に弟子たちはあまり強キャラ感がなかったから生き延びてもっと活躍して欲しいな

  • 674二次元好きの匿名さん25/03/15(土) 00:10:05

    実際補正というか、ジャックの悪運みたいな、そういう設定はあったんかねぇ

    全盛期の頃はありそうだけど、大人になってからは補正切れてて鍛えた実力と魔法性能でゴリ押ししてたイメージ

  • 675二次元好きの匿名さん25/03/15(土) 00:15:01

    実際本編開始以前に補正は切れてるはずなんだけど、
    敵「ティターニアは全盛期を過ぎているから恐るるに足らん」→グワー!!
    のパターンを何度も見てきたから疑わしくなるんだよね

  • 676二次元好きの匿名さん25/03/15(土) 00:31:30

    そしてここでナサリーブラウンの名前が出てきたか…
    彼女は変身しないタイプの魔法少女だったけど、もしフィジカルが魔法で強化されてたら四強クラスかその一歩手前まで上り詰めてたかもね

  • 677二次元好きの匿名さん25/03/15(土) 06:25:51

    メタ的にグレンデルにトドメ刺すのは一巡目二巡目続けて活躍したハニーハントよりもハスキーロアウェンディゴバルバロイの誰かになると思うけどどうなるかな

  • 678二次元好きの匿名さん25/03/15(土) 08:27:37

    >>677

    出番の公平さだけが面白い脚本の条件ではないとだけ言っておく

  • 679二次元好きの匿名さん25/03/15(土) 08:47:02

    ハニーハントはエッチな事にこじつければ不死や神にも勝てる可能性があるのに今は邪神のカケラパワーで暴れ回る怪物に成り下がってしまったのでグレンデルの相手はきっついぜ

  • 680二次元好きの匿名さん25/03/15(土) 09:35:40

    >>673

    戦闘力ならバルバロイってのは前に言われてた ただ弟子はそれぞれ特化してる方向性が違うらしい

    才能ならジャックで技術は浅悧、魔法の性能ならアレヰ・スタア

    でスカイウィッチは上でも言われてるように魔法少女の常識から逸脱してる(飛ぶだけでもレアなのに高度と魔力消費量がおかしい)

    だから魔法性能と戦闘経験と技術のトータルで単純に戦闘能力を測るならバルバロイってことじゃないかな

  • 681二次元好きの匿名さん25/03/15(土) 09:53:11

    グレンデルは元ネタを考えると「死力を尽くして死ぬのならそれもまた善し」ではなく「7割8割の力を発揮して勝てる戦いが好き」なタイプの戦争狂なのが厄介な点であり、同時に弱点にもなるのね

  • 682二次元好きの匿名さん25/03/15(土) 12:26:36

    >>676

    透視以外は美しいくらいの清々しい一般人ステータスだからこその人類最強の称号だろうし下手に強化スキル与えたら不純物になってしまうのではないかしら



    それはそうと「魔法少女なんて初めて見た」みたいなこと言ってたよーな気がするけど過去には魔法少女を普通に制圧してるのね

    「これが強化人間ってやつか…」みたいな勘違いをしてたのかしら

  • 683二次元好きの匿名さん25/03/15(土) 13:04:57

    >>681

    全てのリソースを費やしたり時間を掛けて、骨折り損になるのが心底嫌いなんだろうなぁ

    気持ちの良い勝利が好きであって生死を分けるような死闘が嫌で、飢えは徹底的に嫌ってそう感

  • 684二次元好きの匿名さん25/03/15(土) 13:24:08

    バルバロイは闘争本能はともかく考え方は健全なアマチュアスポーツウーマンだなあ

  • 685二次元好きの匿名さん25/03/15(土) 19:24:06

    保守

  • 686二次元好きの匿名さん25/03/15(土) 20:46:57

    今まで出てきた情報合算するとみんな魔法少女育成計画やってる最中でナサリーブラウンだけ地球防衛軍のストーム1みたいな事してる別ゲー感ある

  • 687◆xaazwm17IRZa25/03/15(土) 21:17:50

    投下します

  • 688◆xaazwm17IRZa25/03/15(土) 21:28:34

     ハニーハントと相対したハスキーロアは、小さく息を吐いた。

     チェーンソーを鳴らすホッケーマスクの怪人――九才の少女にとって、否、どの年齢層の人間にとっても恐怖の象徴ともいえる存在。

     それでも、ハスキーロアが取った手段は——対話だった。

    「私たちは、魔法陣を破壊するために此処に来ました。魔法陣を破壊すると、魔法王の呪いから解放されるんです!」

     拙いが、要点を捉えた説明。

    「呪いさえ無ければ殺し合いなんか、やらなくて済みます! どうか、協力してください!」

     この説得が通用する相手は限られている。
     他者の言葉を一切信用しない者。あるいは、優勝によって願いを叶えようとする者。
     それらの存在は、ハスキーロアの言葉で止まる理由は無い。

     そしてハニーハントは、上記に該当しない魔法少女だ。
     彼女はあくまでクィーンの生存を最優先としているため、ゲームを終わらせる確証があるのなら、ハスキーロアと殺し合う理由は無い。

     既に優勝する覚悟を固めたハイエンドとは違い、ハニーハントは十分説得の余地がある魔法少女である。

     本来ならば。

     激昂するかのように、ハニーハントは吠えた。人間とは思えない、怪獣じみた声だった。

     マンションの核を、つまるところ冒涜の竜のパーツを取り込んだ今のハニーハントに、ハスキーロアの言葉は届かない。

     まともな思考力すら喪失している。

     戦意を一切衰えさせないハニーハントに、ハスキーロアは説得が失敗したと悟る。

  • 689◆xaazwm17IRZa25/03/15(土) 21:42:29

     ハニーハントはチェーンソーを振り上げた。

    (怖い……けど、遅い!)

     チェーンソーを振り下ろすより前に、ハスキーロアの切断魔法がチェーンソーを両断する。

     ゲーム開始前の知り合い、抜刀金。
     ゲーム開始直後にチームを組んだ、ブラックブレイド。
     意識が戻った後共に行動したスピードランサー。
     力及ばず敗北するしかなかった、ジャック。

     彼女らと比べ、ハニーハントの武器の取り回しは拙いものだった。
     昨日までのハスキーロアなら翻弄されていたかもしれないが、二度も修羅場を経験した今のハスキーロアは、ハニーハントの武器だけを狙って切断することが出来る。

    「た、戦いを止めないなら、次は体のどこかを斬ります! 降参してください!」

     

  • 690◆xaazwm17IRZa25/03/15(土) 21:57:59

     武器の具現化にはある程度の魔力を要する。一般的な魔法少女は、戦闘で武器を破壊されると、再具現化する前にそのまま敗北してしまうことが多い。

     仮にハニーハントが武器具現化に熟達していたとしても、その前にハスキーロアの切断魔法が命中する。

    (これ以上犠牲を出しちゃ駄目だ……早くバルバロイさんのところに戻らないと……だから)

     四肢の一本は奪う。そう、覚悟を決める。

     ハニーハントは呻いた。
     そして、地を蹴る。

     ハスキーロアは表情を歪め、切断魔法を発動した。
     
     ハニーハントの右足が、切断される。
     体勢が崩れる。もしゲームの敵モンスターであったなら、滑稽さすら感じたのかしれない。仮にこの場にジャック・ザ・リッパーが居たら無様だと嘲笑しただろう。

     だが、ハスキーロアにそんな感性は無く、ただ罪悪感だけが精神を蝕んだ。


     

  • 691◆xaazwm17IRZa25/03/15(土) 22:09:55

    「ごめんなさい……」

     と、小声で呟く。

     転倒しながら、ハニーハントは右手を伸ばす。「鱗」に覆われた、怪人めいた腕を。

     右腕が、チェーンソーに変化した。

    「え」

     ブレードが伸びる。
     虚を突かれたハスキーロアは、切断魔法を放つ余裕が無く。

     どん、と横からの衝撃にも対応できなかった。

     割り込むように入った、ペストマスクの少女の胴を、ブレードが撫でる。

     それだけの動作で水の入った袋が破けるかのように、ウェンディゴの身体からは血が噴き出した。

  • 692◆xaazwm17IRZa25/03/15(土) 23:00:52

    「あ、ああ……!」

     悲鳴をあげながら、ハスキーロアは切断魔法を発動する。
     ハニーハントの右腕が、肩から切断され、地に落ちる。

     ハニーハントは、意に介した様子を見せなかった。
     
     ただ、再び態勢が崩れたのか、ウェンディゴから流れ出た血の中に身を沈める。

    「ウェンディゴ、さん……っ」

     また、庇われた。
     また、私のせいで。
     私が、弱いから。私が、生きているから。

    「まだ、だ。ハスキーロア……」

     ペストマスクから息も絶え絶えといった声が漏れる。

     ハニーハントの背中が歪に膨らんでいた。
     そして、喰い破るように幾つものチェーンソーブレードが姿を現わす。

     駆動音の不協和音が、防空壕の中を満たしていく。

  • 693◆xaazwm17IRZa25/03/15(土) 23:14:17

    「ははは……怪物だね」

     ウェンディゴは、力無く笑う。

    「だけど……こっちは、疫病神だ」

     そう言って、ウェンディゴはペストマスクを外した。
     特徴のない、けれど確かに整った顔立ちの素顔が外気に晒される。

     ウェンディゴはハニーハントを睨み、右腕を翳した。
     瀕死の少女の、無意味な挙動。

     ウェンディゴから流れ出た血液が、ハスキーロアには何か別のモノに見えた。得体の知れない、恐ろしい、考えることすら拒絶したくなる、されど絶対に逃げられない、まるで■のように。

     ハニーハントは、獣のように飛び退いた。
     切断したはずの四肢が、再生している。否、あれは本当に四肢なのだろうか。チェーンソーの刃を無理やり手足に加工したような、そんな歪なフォルム。

     ウェンディゴは、超然とした表情で右手を翳し続ける。
     ハニーハントはウェンディゴから距離を取り、威嚇するようにブレードを回転させたが、とうとう防空壕の出口に向かって駆けだした。

     それを見届けると、ウェンディゴは疲れ切った表情で、自身から零れた血溜まりの中に身を横たえる。

     

  • 694◆xaazwm17IRZa25/03/15(土) 23:25:38

    「ウェンディゴさん!」

     ハスキーロアはウェンディゴの身体を抱えた。恐ろしさすら感じた彼女の血液を浴びることに、何の躊躇いも無かった。

    「また、私のせいで……」

    「違うよ、ハスキーロア……。全部、私のせいなんだ……。君は、悪くない」

     そんなはずはないのだ。
     切断したのはハニーハントの足ではなく、首だったなら。ウェンディゴは死なずに済んだ。ハスキーロアは己を責める。判断ミスだ。どうして愚かな判断をしたのか。それは、相手を終わらせる覚悟が無かったからだ。取返しのつかないことをする覚悟を持てなかった。

    「むしろね……君には感謝しているんだ、ハスキーロア。疫病神の、生まれてきたことが間違いだった、全人類にとっての敵でしかない最低の私が……君みたいな、こんな地獄でも優しさを捨てない子供を守って死ぬ……こんな幸せなことってないだろう……」

     どうすれば助けられるのだろう。
     急いで病院まで運べば。あるいは、他の魔法少女の魔法やマジックアイテムを使えば。他者を回復させるアイテムも、きっとあるはずだ。あったはずだ。思い出せないだけだ。まだ、ウェンディゴは助けられる。

    「最初から……こうするべきだったんだ……。何となく死ぬのが嫌で先延ばしにしていたけれど……初めから、こうしていれば……。
     ふふふ、初めて能動的に魔法を行使できた……最悪の気分だね、あれは。『判定』に失敗したのは、むしろ幸運だったのかもしれない……」

     言葉に脈絡が無くなっている。意識の混濁。危険な状態。防空壕の外に向かったハニーハントも追わなければならない。

     ウェンディゴが死ぬ。その事実を、ハスキーロアは必至に否定する。

     ウェンディゴは、どこか満たされた表情で防空壕の天井を見上げ。

    「……………………………………ひっ」

     恐怖で、顔を歪めた。

  • 695◆xaazwm17IRZa25/03/16(日) 00:03:34

    「ウェンディゴ……さん……?」

    「そんな……どうして……何で……あああ……!」

     ウェンディゴは、縋るようにハスキーロアを見た。
     悟ったような雰囲気は、霧散していた。彼女は、恐怖している。心の底から。

    「ずっと……死にたくないと、思っていた……。ただ漠然と、死にたくないと……。
     死ぬのが怖いから、ただの未練だと、そう思っていたのに……」

     違った、とウェンディゴは掠れた声を出した。

    「私だけは……私だけは、絶対に死んだら駄目だったんだ……! それだけは、避けなきゃ駄目だったのに……!」

     ハスキーロアの服を掴み、涙を流しながらウェンディゴは訴えた。

    「嫌だ……嫌だ……私は、死にたくない……! これ以上、私のせいで、人を……!」

    「ウェンディゴさん……」

     尋常ではない怯え方を見せるウェンディゴに対して、ハスキーロアが出来ることは何も無かった。ただ彼女は必死の思いでウェンディゴを抱きしめた。

    「ハスキーロア…………」

     ウェンディゴは、魔法少女にしがみつく。

    「助けて……」

  • 696二次元好きの匿名さん25/03/16(日) 00:07:30

    死後暴走するやつかな?
    でもそれだといずれ事故や老衰でアウトだよな…

  • 697◆xaazwm17IRZa25/03/16(日) 00:13:43

     それが、魔法少女『ウェンディゴ』の断末魔だった。

     身体から流れ出た血が、広がっていく。
     明らかに少女一人の肉体には収まりきらない程の血液が、肉体から流れ続ける。

     ハスキーロアは一心にウェンディゴを抱きしめ続けた。
     悲鳴をあげたくなるほどの恐怖が、彼女を縛り付けている。

     何か、とてつもなく恐ろしいものが出現しようとしている。

     倒す。逃げる。そんな能動的な考えを一切起こさせない程の、絶対的な存在が、浮上しようとしている。

     防空壕が金切り音を出している。
     違う、とハスキーロアは気づいた。これは——悲鳴だ。悲鳴をあげているのは私だ。

     悪夢が、やって来る。
     

  • 698◆xaazwm17IRZa25/03/16(日) 00:20:19

    一旦ここで区切って、ウェンディゴの「中の人」のスペックや外見を安価&ダイスで募集します

    先着3つの意見から。
    新解釈や新設定でも大丈夫です。

    採用させていただいたアイデアを話の都合で強化or弱体化したり、外見が徐々に変化する可能性もありますが、ご了承いただけると幸いです……

    「一般人のおっさんが出てくる」とか「何も出てこずにそのままウェンディゴが死ぬ」といったちょっとそれは困るぞ……ってアイデアはあらかじめ弾く場合があります。こちらもご了承いただけると幸いです……

    日付も変わったことですし、ダイスは明日振りたいと思います。

    本日もお付き合いいただき、ありがとうございました……!

  • 699二次元好きの匿名さん25/03/16(日) 00:25:00

    彼女に親しかったもの、一緒に居た時間が長いものがごちゃ混ぜになった異形ヒトガタ、見た目は一言でいうならつぎはぎでできた悪魔

  • 700二次元好きの匿名さん25/03/16(日) 00:26:14

    おつです
    安価は『“それ”は意識を持ち、“それ”は死そのものであり触れることは死を意味し、死そのものであるがゆえ“それ”は死なない。その正体は溢れ出す血の奔流そのもの。ごく一部の魔法少女以外は触れている間常に即死判定を行い続ける。死ぬことはないがどうにかする方法はあるらしいが…』

  • 701二次元好きの匿名さん25/03/16(日) 00:31:39

    見た目は悍ましい、まるで流動の液体で形作られた巨大な人狼

    妖精達が現れるよりも更に古き時代、全ての魂を刈り取っていた死の王

    時代が経るにつれて遥かに弱体化を重ねたが、それでもなお強力無比な〝葬る力〟を操ることができる(指を向けて黒い弾丸を発射、命中した箇所から〝死〟が徐々に広がり、全て覆い尽くされると死が確定する。覚醒したぶった斬る魔法のような因果律そのものに干渉する魔法でなければ排除できない)

    また、その神獣の死は神獣自身だけの物であるため、自ら死を認めない限り、一部の手段を除いて殺すことが絶対にできない(「認めぬ」と口に出すことで死を無効化する)

  • 702二次元好きの匿名さん25/03/16(日) 00:35:55

    能力的にも見た目的にもダイス振らんでも全部引っくるめても問題なさげに見えるわね
    もちろんスレ主様にお任せしますが

  • 703二次元好きの匿名さん25/03/16(日) 00:45:26

    徹頭徹尾いい娘なのに作中トップクラスに生き地獄の渦中にいるハスキーロアとスピードランサーの中心街コンビ
    二人とも最後には盛大に報われて欲しいが果たして

  • 704二次元好きの匿名さん25/03/16(日) 06:03:50

    保守

  • 705二次元好きの匿名さん25/03/16(日) 11:16:43

    このレスは削除されています

  • 706二次元好きの匿名さん25/03/16(日) 12:32:08

    どこか満たされた表情って事は内心、解放された事でホッとしている?
    もしくは「中の人」の表情かもしれない…?

  • 707二次元好きの匿名さん25/03/16(日) 17:26:33

    このレスは削除されています

  • 708◆xaazwm17IRZa25/03/16(日) 17:46:08

    >>702

    ダイスでベースを決めつつ、他の案も盛り込んでいく形にしようと思います……!


    dice1d3=3 (3)


    1>>699

    2>>700

    3>>701

  • 709◆xaazwm17IRZa25/03/16(日) 17:47:42

    >>696

    ウェンディゴの中の人改め『死の王』はウェンディゴが事故死しても老衰しても顕現します、たち悪いよね

  • 710二次元好きの匿名さん25/03/16(日) 17:56:48

    ウェンディゴちゃんはもともと活発で優しい子だったんだなって垣間見えるくらい荒み切った今なお自己犠牲精神の強い良い子でいっぱい悲しみ
    ハスキーロアちゃんも咄嗟に抱きしめる良い子や

  • 711二次元好きの匿名さん25/03/16(日) 18:00:39

    『お前達の死も自分自身の死もぜーんぶ死の王が決めるので殺せませーん』ってコト?
    どんなチートだっ

  • 712二次元好きの匿名さん25/03/16(日) 18:33:12

    他の案も盛り込む感じだったら「絶えず流動する血液で出来た巨大な狼人間の姿が本来の姿で、不定形なので相対した相手の近しい人物を歪に模倣して精神的に追い詰めることもできる」みたいな?

  • 713二次元好きの匿名さん25/03/16(日) 23:12:21

    保守

  • 714二次元好きの匿名さん25/03/17(月) 00:19:20

    《プーパッポン》というカレーが大好きな魔法少女が出てもいいと思う
    見た目は幼女で記憶力皆無のおバカな魔法少女だけど《1時間だけ相手制限なしで一部の記憶を消す魔法》とか強そうですし

  • 715二次元好きの匿名さん25/03/17(月) 00:22:16

    《花粉を自由自在に操る魔法》で相手を脱水症状にさせる魔法少女とかもありですか?

  • 716二次元好きの匿名さん25/03/17(月) 00:33:01

    >>714 >>715

    違う魔法少女スレの話ですかなこれ?

  • 717二次元好きの匿名さん25/03/17(月) 00:49:34

    >>716

    デスゲーム の魔法少女世界でもギャグよりな魔法少女がいてもいいと思いますよ?

  • 718二次元好きの匿名さん25/03/17(月) 01:32:07

    ???まぁ多分間違って書き込んじゃったんだろうな
    魔法少女スレは多いし…

  • 719二次元好きの匿名さん25/03/17(月) 07:47:10

    保守

  • 720二次元好きの匿名さん25/03/17(月) 11:16:46

    このレスは削除されています

  • 721二次元好きの匿名さん25/03/17(月) 15:05:36

    >>714

    >>720

    魔法少女の名前が《プーパッポン》ですよ?

  • 722二次元好きの匿名さん25/03/17(月) 15:06:52

    >>714

    修正

    《1時間だけ多くの相手の記憶を制限なしで一部の記憶を消す魔法》とか強そうですし

  • 723二次元好きの匿名さん25/03/17(月) 16:16:46

    なんか変なの湧いてるな

  • 724二次元好きの匿名さん25/03/17(月) 16:55:49

    どこかのスレと間違えてるにしても指摘されてるし見直せば気付きそうんだけどなあ

  • 725二次元好きの匿名さん25/03/17(月) 19:01:18

    >>723

    >>724

    申し訳ございません。

    投稿の仕方を間違えていました

    出直してきます

  • 726二次元好きの匿名さん25/03/17(月) 22:52:06

    投稿の仕方以前にそもそものスレ自体を間違ってることに気付いてないらしいあたりマジモンのアレって感じだ…怖…

  • 727二次元好きの匿名さん25/03/17(月) 23:53:48

    口に出さなければいけない制約が思いの外、重いかもしれない
    コイツのメンタルがどれほど硬くて捻くれているかで難易度が変わるが果たして…

  • 728◆xaazwm17IRZa25/03/18(火) 02:14:50

    すいません、今日明日と引っ越しで忙しいので、投下は難しいです……

  • 729二次元好きの匿名さん25/03/18(火) 05:33:32

    連日の投下と引越しお疲れ様です!
    気長に待たせていただきます〜

  • 730二次元好きの匿名さん25/03/18(火) 07:42:29

    了解しました!怪我のないように祈ります

  • 731二次元好きの匿名さん25/03/18(火) 12:56:52

    保守

  • 732二次元好きの匿名さん25/03/18(火) 19:27:05

    引っ越しとなると色々大変でしょうしお身体にお気をつけて

  • 733二次元好きの匿名さん25/03/18(火) 23:50:38

    死の王も既に弱体化済みである事に焦っているのかな…

  • 734二次元好きの匿名さん25/03/19(水) 06:07:06

    このレスは削除されています

  • 735二次元好きの匿名さん25/03/19(水) 07:50:24

    無事に終えると良いなぁ…

  • 736二次元好きの匿名さん25/03/19(水) 15:08:09

    引っ越した直後は疲れもあるだろうし数日は待つつもりでいよう

  • 737二次元好きの匿名さん25/03/19(水) 17:13:28

    >>703

    逆に言えばどちらも魔法少女の爆発的な成長を促すと作中で明示されているストレスをトップクラスに受け続けているということ

    加えてハスキーロアは『始まりの魔法少女』と同姓同名、スピードランサーはトート・アリアが望む概念としての勇者に近しい存在と示唆されている……と覚醒フラグたっぷりなんですよね

  • 738二次元好きの匿名さん25/03/19(水) 23:37:26

    保守

  • 739125/03/20(木) 00:22:20

    申し訳ない、色々想定外のことがあり…
    本日は投下できないです…

  • 740二次元好きの匿名さん25/03/20(木) 00:32:50

    引越しお疲れ様です〜
    過去の分でも読み返しながら気長に待たせていただきます!

  • 741二次元好きの匿名さん25/03/20(木) 08:01:06

    保守

  • 742二次元好きの匿名さん25/03/20(木) 15:34:10

    体調にだけお気をつけて

  • 743125/03/20(木) 16:56:39

    申し訳ありません

    まだ新居にWi-Fi引いてないので、同居人のポケットWi-Fi、近くのファミレスのフリーWi-Fiで投稿しようと思ったのですが、どちらもホスト規制の対象になっており投稿できず…

    明日には新居にWi-Fi引くのでもうしばらくお待ちいただけると幸いです

    何らかの事情で明日も投下できない場合はいつ投下できるか見通しが立たなくなるので、一旦スレを落としていただけると助かります

  • 744二次元好きの匿名さん25/03/20(木) 17:23:25

    了解しました!

  • 745二次元好きの匿名さん25/03/20(木) 17:26:25

    了解です〜
    無事に投下できると良いなぁ…

  • 746二次元好きの匿名さん25/03/20(木) 22:57:57

    外のWi-Fiって結構な確率で繋がらない記憶がある…報告したら何か解除された記憶

  • 747◆xaazwm17IRZa25/03/20(木) 23:22:11

    テスト

  • 748◆xaazwm17IRZa25/03/20(木) 23:23:17

    昨日繋がらなかったんですけど、今日はいけたので(何故?)投下します~
    お待たせしてしまい申し訳ありませんでした……

  • 749二次元好きの匿名さん25/03/20(木) 23:23:59

    うわぁい

  • 750◆xaazwm17IRZa25/03/20(木) 23:24:15

     狼、とハスキーロアは思った。

     家で飼っているハスキー犬は、狼に似ている部分がある。だから、本物の狼にも、猛獣の側面はあれど、どこか親しみやすさを感じていた。

     そんなものは、勘違いに過ぎなかった。

     今、目の前に顕れた「狼」を前にして、ハスキーロアは己の無邪気さを呪った。

     存在するだけで、息が詰まる。脳髄が焦りで満ちて、身体がガタガタと震え出す。

     こんなにも「怖い」と思ったことは、今まで無かった。今日一日で何度も恐怖を感じてきたのに、今ほど怖いと思ったことは無かった。

     大きいから、ではない。防空壕の通路を埋め尽くす程の巨体は確かに脅威だが、その程度の大きさの怪物は、魔法少女の敵ではない。

     異形だから、でもない。狼を形作っているのは固体ではなく液体、血のように赤い、けれど血とは思えないほどおぞましい何かによって形作られている。紛れもなく怪物だ。この世のものではない。が、魔法とは何でもアリの世界なのだ。こういった化け物を作ることだって、できるはず。

     怖くない理由はいくらでも思いつける。

     なのに、駄目なのだ。

  • 751◆xaazwm17IRZa25/03/20(木) 23:24:55

     理屈では無いのだ。

     人がどれだけ宗教やスピリチュアル、オカルトに縋ろうと。

     自己啓発や精神修養、遺伝子の存続やミームなどで乗り越えようと。

     死の恐怖から、絶対に逃れられないように。

     それは、怖い。

     死の王。

     それは、移動を開始した。足音は無かった。四足を動かす獣に準じた動きをしながらも、獣には見えず、されど機械にも見えず、ただ現象は進行した。

     ハスキーロアは、声が出せない。

     抱きかかえていたはずのウェンディゴが、消失している。確かに感じていたはずのぬくもりも、重さも、ウェンディゴという魔法少女が此処に居たという痕跡が、何もかも消えてなくなっている。

     死の王は、ハスキーロアを一瞥もしなかった。最初から居ない者として扱うかのように、ゆっくりと防空壕の出口に向かって進んでいく。

  • 752◆xaazwm17IRZa25/03/20(木) 23:26:33



    「『死の王』?」

     ベッドに首まで潜らせながら、貴族妖精の少女は母親に問いかけた。

    「なぁに、それ?」

    「ずっと昔に居た、怖い王さまよ」

    「王さま……妖精王さまみたいな?」

    「『死の王』は妖精じゃないのよ」

     じゃあ何なのだろう、と少女は思ったが、母親からの答えに続きは無かった。

     眠気をこらえながら、少女は疑問を口にする。

    「『死の王』はもういないの?」

  • 753◆xaazwm17IRZa25/03/20(木) 23:27:18

    「ずっと昔にいなくなったとも、まだどこかを彷徨っているとも言われているわ。……悪いことをすると、『死の王』が来ちゃうかも」

     ぶるり、と少女は全身を震わせる。

    「まだ起きているザマスか。夜更かししていては、ミーみたいな立派な貴族妖精になれないザマスよ」

     部屋を覗いた父親に促され、アロンダイトは目を瞑る。『死の王』は怖い。けれど、アロンダイトは悪人では無く、父や母のような立派な貴族妖精になるのだし、『死の王』とは無縁だ。何も、悪いことは起こらない。

     そこまで考えて、アロンダイトは眠りの世界に誘われた。

     ——妖精郷に冒涜の竜が飛来するのは、その一月後の話である。

  • 754◆xaazwm17IRZa25/03/20(木) 23:27:59



    「げっげっげ!」

     哄笑と共に、グレンデルはハニーハントを殴り飛ばした。

     2m近い体躯のハニーハントが、吹き飛ばされ、毬のように転がっていく。

     グレンデルの拳から血が流れる。ハニーハントを殴った際に、出来たものだ。

     硬い、のではない。無論、魔法少女基準で考えても今のハニーハントの頑丈さは平均を大きく逸脱しているが、それだけでグレンデルの拳に傷はつかない。

     生じた理由は、チェーンソー。殴った瞬間、ハニーハントの皮膚からブレードが突き出してきたのだ。

     身体はチェーンソーで出来ている。

     ステゴロ主体の魔法少女ならば絶望する状況だが、グレンデルは気にも止めない。

     脊椎損傷すら瞬時に回復する今のグレンデルにとって、この程度のダメージはダメージにならない。

  • 755◆xaazwm17IRZa25/03/20(木) 23:28:42

     殴られ転がりながらも、ハニーハントは何事も無かったかのように立ち上がる。

     変身したグレンデルの一撃は、並の魔法少女……否、身体能力を武器に戦う魔法少女でも一撃で破壊する威力を持っている。

     例えハニーハントの骨が全てブレードに置き換わって居ようと、その程度の硬度は無意味だ。

     だが、ハニーハントは立っている。一切戦意を失うことなく、機械じみた視線をグレンデルに向け続ける。

    「げっげっげ、どういう絡繰りかは、わかるぜ」

     傭兵としての経験からではなく。

     もっと根本的な感覚で、グレンデルはハニーハントを捉えていた。

    「テメェは、俺っちと『同じ』だな」

     実のところ、あにまんマンション内部は、運営陣にとってもブラックボックスである。

     ハニーハント、ビリーバー、オオカワウソの三名が、あにまんマンションでどんな死闘を繰り広げたのか、今となってはその全貌を知る者は居ない。

  • 756◆xaazwm17IRZa25/03/20(木) 23:30:17

     ただ、外部から観測した事象を持って恐らくビリーバー及びオオカワウソの一部が、ハニーハントに殺された。そして、あにまんマンションの核であった白〇の王――ヨグ=ソートスの肉体が消失し、マンションが攻略された、という推測を立てただけだ。

     運営陣でも魔法少女の知識が浅い側であるグレンデルに至っては、それらの情報を又聞きしただけだ。

     だが、分かる。

    「お前、取り込んだな」

     グレンデルが黒贄山羊を取り込んだように。ハニーハントもまた、マンションに連なる超常存在を取り込んでいる。

     それを、グレンデルは感じ取っている。

    「それはつまりよぉ……」

     グレンデルの口が、耳まで裂けた。その顎は、少女を食べるため。その牙は、少女をかみ砕くため。己の快不快だけを頼りに、他者を虐殺する怪物。

     その身を改造する前から、グレンデルは平和の敵(エネミー)だ。

    「お前を喰えば、俺っちはますます不死身になるってことじゃねぇか!」

     憂さ晴らしのために始めた戦闘に、目的が生まれる。

     

  • 757◆xaazwm17IRZa25/03/20(木) 23:30:30

     捕食欲という最悪の欲求を向けられてもなお、ハニーハントに動揺は見られなかった。

     チェーンソーに、感情は無い。機械に感情は無いのだから。

     グレンデルは獣のようにハニーハントに飛び掛かる。ハニーハントもまた、迎撃するかのようにブレードを伸ばす。

     ——静寂。

     恐るべき体躯、おぞましき外観を有していながら、二者はその存在に気づかなかった。

     巨躯の狼。赤い液体で象られたエネミー。一目見れば強い印象を残すはずの存在に、チェーンソーの化物と、狼の化物は感知できなかった。

     彼我の距離が5m――その場の誰にとっても一撃で殺傷攻撃を放てる距離にあって、ようやく理解した。

  • 758◆xaazwm17IRZa25/03/20(木) 23:31:08

     死の存在を唐突に思い出すかのように。

     二人の怪物は、王に意識を向けた。

     ハニーハントは無言でブレードを伸ばした。

     グレンデルは謎の存在を疑問に感じながらも、冷静に距離をとった。

     死の王は、一声、吼えた。

     うぉん。

     その声は確かに獣のそれだった。にも関わらず、鐘を鳴らしたかのように空間に響き渡った。

    (げっげっげ、新手か。俺っちはどう動――)

     そこで、意識が途切れる。

     グレンデルは地に伏せた。

     ハニーハントも同様だった。

     それが当然であるかのように、死の王はただ悠然と立っていた。

  • 759◆xaazwm17IRZa25/03/20(木) 23:31:24

    投下を終了します……!

  • 760二次元好きの匿名さん25/03/20(木) 23:38:35

    乙です
    絶対に殺せない、指を向けるだけで不死不滅の存在でも問答無用で死の運命を押し付けられる巨体の怪物
    これは死ぬぜ!

  • 761二次元好きの匿名さん25/03/21(金) 07:35:05

    前々からチート魔法の押し付け合いではあったがとうとう"""死"""まで出てきたな
    まあでもこの物語の佳境に相応しいといえば相応しいか……

  • 762二次元好きの匿名さん25/03/21(金) 12:31:10

    シンプルにやべーやつ

  • 763二次元好きの匿名さん25/03/21(金) 12:49:19

    覚醒した〝ぶった斬る魔法〟でも殺せないよなぁ。ミョルニルのように魔法による不死ではなくただ『死なない』から
    ぶつけられた死の運命は切れるからそこは回避できるが、その時点でスタートラインでしかないんだよなぁ…

  • 764二次元好きの匿名さん25/03/21(金) 20:01:40

    妖精貴族のザマスって男もなんだ…

  • 765二次元好きの匿名さん25/03/21(金) 20:24:26

    グレンデルちゃん経歴的に眷属ぅみたいなもんだけど絶対服従させられちゃうのかな

  • 766二次元好きの匿名さん25/03/22(土) 01:52:18

    このレスは削除されています

  • 767二次元好きの匿名さん25/03/22(土) 08:33:36

    所詮はマンションの力も邪神も全て冒涜の竜の一部のそのまた一部でしかないから、ヒエラルキー的に〝死の王〟の方が遥かに上なのよね

  • 768二次元好きの匿名さん25/03/22(土) 14:17:12

    厄災そのものじゃないか…

  • 769二次元好きの匿名さん25/03/22(土) 16:57:18

    問題はこの化け物を超えたとしても恐らくラスボスの一歩手前の大ボスになるであろうアリア&勇者は更に上を行く強さだろうと言うことか
    本編で倒されたパラサイトドールは天上を失った上で儀式の維持で本気を出せなかったイレギュラーな状態でしかなく、アリアが『本気の天上パラサイトドール』を倒すことを想定した手駒を用意してないわけがないので

  • 770二次元好きの匿名さん25/03/22(土) 19:30:54

    スレ主さん曰く今までで一番規模が大きい戦いになるらしいラスボスもなぁ…
    ヘイトスピーチナチスの夢が「始まりの魔法少女」でも「天上の魔法少女」でもなく『「魔法少女を超えた存在」に至ること』なあたりガチでヤバそうなんよなぁ
    「冒涜の竜本体」や「始まりの魔法少女」について仔細を竜ご本人の口から聞いてるアリアの言う魔法少女を超えた存在ってなんなのよ

  • 771二次元好きの匿名さん25/03/23(日) 01:08:10

    どうやって倒すんや……

  • 772◆xaazwm17IRZa25/03/23(日) 02:05:35

    投下します

  • 773◆xaazwm17IRZa25/03/23(日) 02:06:33



     地下研究棟では大勢の男たちの、悲鳴じみた声が飛び交っていた。

     白の軍服を身に纏い、顔にガスマスクを付けた異様な集団。

    『ヘルゼーエン』。『マシーネン・コマンダンテ』の上位種であり、複数で掛かれば上位の魔法少女さえ仕留めることが出来る、新生第三帝国の精鋭集団。

     『マシーネン・コマンダンテ』に生じていた知能・精神の劣化も殆ど観測されていない、アリア陣営の要とも言える存在。

     異変は唐突に起った。

     あにまん高校をモニターしていたヘルゼーエンの一人が、倒れた。

     悲鳴や前兆は無かった。最初から定まっていたかのように、椅子から転げ落ち、ガスマスクを天井に向けた。

    「おい、どうした?」

    「何があった?」

     動揺がヘルゼーエンに広がる。それでも彼らは優秀な軍人である。何らかの魔法攻撃を受けたものだと瞬時に看破し、危険を承知で死亡したヘルゼーエンのモニターを調べる。

  • 774◆xaazwm17IRZa25/03/23(日) 02:07:20

     次の瞬間、調査に動いたヘルゼーエン全てが、瞬時に絶命した。

    「映像記録を破棄しろ、中身は一切確認するな」

     アリアの命令を受け、ヘルゼーエンの内数名が、あにまん高校の映像記録を消去しようとする。だがその作業が完了するより速く、実行しようとしたヘルゼーエンは絶命した。

     アリアは舌打ちと共にワイヤーを飛ばす。

     ソフト面ではなくハード面。

     モニターと内蔵メモリを粉微塵になるまで斬り刻む。

     そこでようやく、ヘルゼーエンの死の連鎖が収まった。

    「大総統……これはいったい?」

     生き残ったヘルゼーエンの一人に疑問を投げかけられ、アリアは記憶の中から関連する情報を引き出す。

     妖精郷に古くから伝わる怪談。伝説。御伽噺(フェアリーテイル)。

     むかし、むかし、「しのおう」がいました。「しのおう」はようせいがふえすぎたために、ようせいとおまえに、しをめいじま――。

     一瞬の判断だった。アリアのワイヤーは、自身の脳髄の一部を削り取っていた。

  • 775◆xaazwm17IRZa25/03/23(日) 02:08:08

     他者の脳を操れるトート・アリアが、自身の脳を操れないわけがない。

     情報を知った時点で死亡する。そういう類の魔法、否、『呪い』は実在する。

     だからこそ、アリアはヘルゼーエンの問いに自信を持って答えた。

    「わからん」

  • 776◆xaazwm17IRZa25/03/23(日) 02:08:43



     二人の怪物をたった一声で殺した「死の王」は、勝利に震えることも、死体を損壊することもなく、ただじっと存在していた。

    「——げ」

     と、声が響いた。

    「ここに来て、とんでもないインチキがやってきたなぁオイ」

     むくり、とグレンデルは上体を起こす。

     そして、「死の王」を見上げた。

    「昨日までの俺っちなら今ので死んでいた。だが——今の俺っちは殺せない」

     マンションさまさまだぜ、こりゃ家賃でも払うべきかねぇと、冗談を言いながらグレンデルは立ち上がる。

  • 777◆xaazwm17IRZa25/03/23(日) 02:10:31

    「ハニーハントだけでも十分と思ったが。いいなぁ、お前。お前の力さえ手に入ったら、このゲームは、もう出来レースだぜ」

     喰うぜ、とグレンデルは宣言する。

    「お前が狼なら、俺っちは猟師だ。その異能、余すところなく使ってやるぜ」

     死の王は、驚愕も悲嘆もしなかった。意志の感じられない、流動する顔を緩慢にグレンデルに向けただけだった。

     例え死の王であろうと、不死身の怪物は殺せないのか。

     あるいは————。

     エンジン音が鳴り響く。

     ブレードが回転し、もう一人の不死身の化物が起き上がる。

     ハニーハントは、グレンデルのように意思を表明しなかった。

     ただ戦意を滾らせ、両手の先から生えたチェーンソーブレードを回転させる。

  • 778◆xaazwm17IRZa25/03/23(日) 02:11:18



     ハスキーロアは、その場から動けなかった。コスチュームを汚していたはずのウェンディゴの血は、すっかり消え去っている。

     最初から、そんな女の子など居なかったかのように。

     ハスキーロアの頭の中では様々な思いがぐるぐると渦巻いていた。

     何人もの魔法少女の顔が、現れては消えていく。呆けていた、と言ってもいいのかもしれない。

     あるいは、心が折れたとも。

    「お姉ちゃん……」

     ぽつりと、言葉が漏れる。

    「助けて……」

     答えは無い。今この場に、犬上沙美の姉は居ない。この世には、初代ハスキーロアは存在しない。

     防空壕の中で、ハスキーロアは震え続けた。

     助けて。心の中で何度も呟く。

     そして——気づいた。

     この言葉は、ハスキーロアが姉に向けたもの、だけではない。

     あの時。狼の化物が姿を現わす直前に。確かにウェンディゴは言ったのだ。

  • 779◆xaazwm17IRZa25/03/23(日) 02:12:44

     助けて、と。

     ウェンディゴの姿は無い。死体も残さず消失した……本当にそうだろうか。

    「まだ、助けられる……?」

     ハスキーロアには知識も無い。力も無い。積み上げた経験も無ければ、常軌を逸する精神力も持ち合わせていない。友達だって多いわけではないし、勉強も普通だ。

     ハスキーロアは、普通の女の子だ。

     『仲間』が助けを求めていた。普通の女の子が立ち上がる理由は、これだけでいい。

     震えながら、ハスキーロアは再起する。

     足りない。力が足りない。どうすればウェンディゴを救えるのか。道筋も分からなければ、その手段が自分にあるのかも分からない。

     強くなりたい、とハスキーロアは願った。『留学』した姉に押し付けられた。ハスキーロアが魔法少女になったきっかけは、たったそれだけだ。受け身のまま、彼女は超人になった。

     今は違う。殺し合いを経て、ハスキーロアは願った。「仲間を助ける力が欲しい」「誰かを救える力が欲しい」「みんなを守れる力が欲しい」。

  • 780◆xaazwm17IRZa25/03/23(日) 02:13:52

     想いだけでは、人は強くなれない。

     故に、それは『出現』した。

    「……え?」

     足元に置かれた物に、ハスキーロアは視線を向ける。

     箱だ。

     古びた木製の箱。

     マジックアイテム『パンドラの箱』。

    「……どうして? 医院に置いてきたはずなのに」

     持っていても邪魔になる。戦闘の拍子に開けてしまうかもしれない。……医院に残った魔法少女がピンチになった時に、使用するかもしれない。

     そう考え、ハスキーロアはパンドラの箱を残して、魔法陣攻略に出発した。

     

  • 781◆xaazwm17IRZa25/03/23(日) 02:14:02

     それが今、此処にある。

     不気味だと、思った。けれどそれは、躊躇う理由にはならなかった。

    「私は——力が欲しい。みんなを救える、そんな力が」

     念じて、箱を開ける。

     パンドラの箱の逸話は知っている。最後に残ったのは希望という話も。

     箱から光が溢れ、ハスキーロアを呑み込んだ。

  • 782◆xaazwm17IRZa25/03/23(日) 02:14:53



     応接間で、中年の男が怒りを見せている。

     客として訪れたであろう男は、すっかり委縮している。

     その傍らで、抜刀金は能面のように表情を固めていた。

     謝れ、と犯してもいない罪を糾弾される。

     道場を守るため、抜刀金は素直に従った。覗き見している少女の心を斬り捨てる行為だと理解した上で、悲壮な決意を固め、抜刀金はその場で跪き……。

    「駄目だよ」

     と、傍らで声がした。

    「そんなことしちゃ駄目」

     犬耳の、小柄な少女だ。

    「ズルしてないんでしょ。だったら、謝る必要なんかない!」

     抜刀金は顔を歪めた。

  • 783◆xaazwm17IRZa25/03/23(日) 02:15:52

    「——それは、子供の理屈で御座るよ。大人の世界は、綺麗事では廻っていないで御座る」

    「そんなの――どうでもいいよ、だって私たちは、まだ子供なんだから」

     抜刀金は目を見開いた。

    「だ、だが……」

     一度固めていた決意が、揺らぐ。

     その時、襖が開いた。

    「お父さん……! やめてよ……!」

     涙を浮かべながら覗き見していた少女、陣内葉月が応接間に身を乗り出す。

    「私……こんなのやだよ! 抜刀さんの方が強かっただけ! もっともっと強くなって、追いつくから! だから、こ、こんな、みっともないこと……!」

     青筋を立てて激昂する道場主。振り上げた拳を抑えたのは、抜刀金の父親だった。

     融資の件は、無かったことにして欲しい。道場を畳むことになっても、娘の誇りを汚したくはない。

     それは——貴方だって同じはずだ。

  • 784◆xaazwm17IRZa25/03/23(日) 02:16:20

     その言葉に、道場主は視線を下げた。

     帰り際に、抜刀金と陣内葉月の視線が交じり合う。

    「次は——負けない!」

    「……受けて立つで御座るよ」

     それからしばらくも経たない内に。抜刀道場は街から姿を消した。

     そして、陣内道場に門下生が一人増えた。

     其れは、陣内道場二枚看板となる、二人の天才剣士の始まりの物語。

     ――そうはならなかった、虚構の物語。

  • 785◆xaazwm17IRZa25/03/23(日) 02:17:13

    投下を終了します……!

  • 786二次元好きの匿名さん25/03/23(日) 02:51:22

    お疲れ様でした…!!
    グレンデルやハニーハントの格も下がらなくて嬉しい

  • 787二次元好きの匿名さん25/03/23(日) 08:05:36

    乙です、おそらく何かが動いたに違いない(後方腕組み)

  • 788二次元好きの匿名さん25/03/23(日) 08:46:03

    過去の幻想に干渉してるのはハスキーロアなのか、それとも

  • 789二次元好きの匿名さん25/03/23(日) 13:41:23

    ミームや呪い系統の攻撃にはアリアの記憶操作が役に立つなぁ…それでも後一歩遅れてたら即死していたのだが

  • 790二次元好きの匿名さん25/03/23(日) 20:17:20

    保守

  • 791二次元好きの匿名さん25/03/23(日) 20:30:04

    「IFの世界線」を垣間見ているのはハスキーロアだけか、それとも他にも見ている娘がいるのか……

  • 792二次元好きの匿名さん25/03/23(日) 20:49:56

    怒らせると怖いらしいハスキーロア、暴君だったお姉ちゃんも怒った沙美ちゃんには逆らえなかったとかかしら
    そういえばプロローグで真っ先に魔法王に反抗してたのもハスキーロアか

  • 793二次元好きの匿名さん25/03/23(日) 23:06:37

    このタイミングでパンドラの箱か〜っっ

  • 794二次元好きの匿名さん25/03/24(月) 00:35:43

    でもそうはならなかった ならなかったんだよロック

  • 795二次元好きの匿名さん25/03/24(月) 03:11:35

    このレスは削除されています

  • 796二次元好きの匿名さん25/03/24(月) 07:50:48

    死の王もグレンデルの不死身対策してきそうだがこの状況では心強いな
    想いだけでは強くなれない、なのでキッカケを与えますは粋だぜパンドラの箱よ

  • 797二次元好きの匿名さん25/03/24(月) 15:06:10

    死の王に冒涜の竜の一部を取り込んだ二人にパンドラの箱と厄ネタが揃い過ぎている
    バルバロイは気絶しておいてよかったもしれん

  • 798二次元好きの匿名さん25/03/24(月) 22:32:06

    保守

  • 799二次元好きの匿名さん25/03/24(月) 23:38:21

    ハスキーロアの魔法の本質が『関わった魔法少女の魔法を受け継ぐ魔法』なら抜刀金の黄金魔法で刀身を自在に伸ばしてブラックブレイドのぶった斬る魔法の射程や威力を強化するみたいな超シナジーが生まれる…?

  • 800二次元好きの匿名さん25/03/25(火) 07:42:42

    保守

  • 801二次元好きの匿名さん25/03/25(火) 10:26:14

    このレスは削除されています

  • 802二次元好きの匿名さん25/03/25(火) 17:56:31

    このレスは削除されています

  • 803二次元好きの匿名さん25/03/25(火) 19:06:29

    有り得た世界線と思わせてそうはならなかった物語… 虚構だから今が埋まってるもんな…

  • 804二次元好きの匿名さん25/03/25(火) 22:17:02

    覚醒したブラックブレイドの魔法が学生街編の弱体化パラサイトドールを八つ裂きに瞬殺する超性能…なのでまぁ地下研究棟攻略は本家パラサイトドール以上の化け物が出てくるんだよな。アリアにしろ勇者にしろ

    ラスボスは冒涜の竜本体はおろか始まりの魔法少女を上回る存在になってくれるかな…最終回だし、インフレ極まってて楽しい!

  • 805二次元好きの匿名さん25/03/25(火) 23:36:12

    皆んなが壊れ性能になってきて楽しいよね
    一周してバランスが良いまであるのバトロワらしくてすき

  • 806◆xaazwm17IRZa25/03/26(水) 00:29:00

    申し訳ない、本日も投下できないです……
    仕事変わって日付変わる前には寝ないといけなくなったので、更新頻度落ちると思います……

  • 807二次元好きの匿名さん25/03/26(水) 00:43:08

    お疲れ様でした…
    本当に、続けていただけるだけでも嬉しいのでお気になさらないでください…

  • 808二次元好きの匿名さん25/03/26(水) 07:46:36

    急ぎすぎてソードマスターヤマトみたいな話の畳み方されるよりはずっといいよ

  • 809二次元好きの匿名さん25/03/26(水) 07:50:33

    しばらくはリズムが変わって大変だと思いますのでごゆっくり…

  • 810二次元好きの匿名さん25/03/26(水) 14:42:41

    ハスキーロアとスピードランサーは今まで守りたかった人、救いたかった人を全員を失ってるので、せめてラスボスをぶっ倒すことで多くの人を救わせてあげて下さい…!という願い

  • 811二次元好きの匿名さん25/03/26(水) 18:41:51

    またヘイトナチスが死にかけてる…
    オートクチュールの時といい、先に黒幕の座を降りて行ったパラさんやアルセーヌと違って大物どころか小物&外道染みてるムーブばっかしてるのに知恵と機転と幸運で全部切り抜けてるのマジおもしれーヤツ

  • 812二次元好きの匿名さん25/03/26(水) 21:01:59

    トート・アリアがデッドマンズ・ハンドに対してコメディアンとして心底尊敬していたのは普段の言動は全て道化の仮面を被っているからか?

    「理知的で穏やか且つ非常に仲間想いだが、それ以外には冷酷そのもの。」な性格らしいのに本編ではまっっったくそんな感じがしないのは、つまりそういう事なのか?

    100年来の付き合いのパラサイトドールや、ナチスそのものに対しても本心では何の感慨も抱いてなさそうなアリアが言う「仲間」とは誰か?

    アリアのこれからに期待値が上がりますね……

  • 813二次元好きの匿名さん25/03/26(水) 23:14:33

    記憶改変とプラシーボ効果で死なせるってエグい事しますな死の王…

  • 814二次元好きの匿名さん25/03/27(木) 00:54:43

    >>813

    ヴンダーのことなら多分思い込みの力とかじゃなくガチの過去改変で死んだことにされてる

  • 815二次元好きの匿名さん25/03/27(木) 07:49:09

    御伽噺はアリアの記憶の中にあるけど情報は知らないってことは意識しないと呪いは発動しない?

  • 816二次元好きの匿名さん25/03/27(木) 15:05:59

    保守

  • 817二次元好きの匿名さん25/03/27(木) 22:20:39

    >>810

    『天上』や『始まりの魔法少女』より更に上のステージあるとして、そこに到達できそうなのは伏線的にハスキーロアとスピードランサーなのよね。

    加えて二人とも他のキャラに『脇役』と断じられてる共通点があるから、『物語の主人公』では『天上の魔法少女』止まりにしかなれない、みたいな展開がある?

  • 818二次元好きの匿名さん25/03/28(金) 00:28:56

    >>811

    実力だけでなく運も用いて戦うのが歴戦の強者感あるな…しかし生存ダイス的には中々厳しいものがある

  • 819二次元好きの匿名さん25/03/28(金) 07:47:28

    今生き残ってる中で主人公っぽい子といえばネコサンダーだけど強化方法が外付け式のオプションだからな
    そういう強さの方向性も踏まえた上で一番天上に近いのが偶々"脇役っぽい"二人だったってだけな気も

  • 820二次元好きの匿名さん25/03/28(金) 07:49:33

    狂人のフリをしているようにも見えるけどそこの線引きで染まり切らないように色々意識してそうなアリアちゃん

  • 821二次元好きの匿名さん25/03/28(金) 09:31:03

    このレスは削除されています

  • 822二次元好きの匿名さん25/03/28(金) 17:38:55

    保守

  • 823◆xaazwm17IRZa25/03/28(金) 19:54:38

    お久しぶりです、もう少し書き溜めようかと思いましたが、生存報告もかねて投下します

  • 824◆xaazwm17IRZa25/03/28(金) 19:55:37

     暴虐の嵐が三つ、校庭に吹き荒れている。

     と言っても、その場所を「校庭」と認識できる者が何人居るだろうか。通う生徒たちですら、怪しいものだ。

     掘り返されている、わけではない。汚されている、わけでもない。

     その場に居た三つの存在は、校庭などまるで意識していないのだから。

     ただ、戦う。ただ、殴る。ただ、切り裂く。ただ、駆ける。

     どこまでも原始的な動作。それだけで――校庭の土は捲れ上がり、大穴が空き、倉庫やフェンスが、瓦礫の山と化す。

     グレンデル。ハニーハント。死の王。最も小柄なハニーハントにしても、既に体躯は2mを超えている。

     だが、秘めたるエネルギーはその程度ではない。

     人間の十倍の身体能力を持つ魔法少女。それを一方的に蹂躙できるグレンデル。そのグレンデルと互角に渡り合えるハニーハントと、死の王。

     もはや、怪人、怪物の範疇では語れる存在ではない。

     もし仮に、校舎からこの戦いを目にした者がいれば、その人物はこう語るだろう。

     三匹の怪獣が暴れていると。

  • 825◆xaazwm17IRZa25/03/28(金) 19:56:32

    「げっげっげ!」

     獣のように、グレンデルはハニーハントに飛び掛かる。

     ハニーハントの振るうチェーンソーブレードを、一切恐れていない。

     ハニーハントの両腕から伸びるブレードは瞬時に巨大化し、グレンデルを真っ二つにせんと迫る。

     高速で振動するブレードに、グレンデルは手を伸ばした。

     ——ブレードが、塵へと変化する。

     黒贄山羊を通して手に入れた、怪異の力。

     元々、魔法少女を握りつぶせる握力を持っていたが、今のグレンデルは、握る必要すら無い。

    「いただきまーす! って、あらら?」

     大口を開けハニーハントへ噛みつこうとするが、それよりも早く、ハニーハントは上空へと退避していた。

     飛翔している。ハニーハントの背からは、黒い翼が生えている。

     虫でも鳥でもなく、天使や悪魔のものでもない。

  • 826◆xaazwm17IRZa25/03/28(金) 19:57:21

     それはまるで、ドラゴンのような。

     がばり、とハニーハントは口を開けた。

     竜種の基本にして最大の攻撃。ドラゴンブレス。

     炎が、あにまん高校校庭を駆け巡った。

     その炎は、パラサイトドールと比較すれば乏しい火力であった。

     ジャスティスファイア、あるいはヒートハウンドにも届かない。それでも、魔法少女やエネミーに致命傷を与えるには十分な火力だった。

    「げっげっげ、温いぜ、ハニーハントォ!」

     炎に一切臆さず、グレンデルは獣のように身を屈め、空中のハニーハントを見上げる。

     獣のジャンプ力は、人間を遥かに凌駕する。空中という優位を、グレンデルは無視できる。

     だが、グレンデルが跳んだのは上ではなく、横だった。

     真っ黒な、高速で迫る泥のような塊を、避けるためだ。

     限りなく不死身に近いグレンデルが、本能的に回避を選ぶ攻撃。

  • 827◆xaazwm17IRZa25/03/28(金) 19:58:09

    「なんだ、無視されて怒ったか?」

     内心の警戒を表に出さず、グレンデルは攻撃を放った怪物――死の王を挑発する。

     死の王の外観は、巨大な狼である。今、その背から人間の腕が伸びていた。

     二本の手は、グレンデルとハニーハントを指差している。

     次の瞬間、二人に向けて、黒い泥が射出された。

     グレンデルは地を蹴り、ハニーハントは翼をはためかせ、攻撃を回避する。

    うぉん、と死の王は吠えた。

     グレンデルも、ハニーハントも、死なない。既に耐性を獲得したのか。

     イレギュラーを前にして、死の王は苛立ちも焦りも見せなかった。

     ただ、ぞわりと全身を流動させる。

     ——その背から、幾つもの腕が生える。

     色も細さも長さもバラバラの、数多の人間の腕。

     そこから放たれるのは、死の呪い。

     その全てを、グレンデルとハニーハントは回避する。

     受けても、平気なのかもしれない。だが、グレンデルは回避を選択する。

  • 828◆xaazwm17IRZa25/03/28(金) 19:58:52

     リスクと快楽を天秤に賭ける。捕虜をガス室で始末するような、味気ない真似は嫌いだ。完全に拘束された捕虜を射殺するのも、あまり好きではない。

     縄を解き、勝てれば逃がしてやると囁き、一縷の望みを賭けて向かってきた相手を、拳で、脚で、牙で蹂躙する。絶命するギリギリを見定め、より長く、より丁寧に、より派手に壊す。

     死の呪いを躱しながら、グレンデルは息を吐いた。

     ハニーハントも、この狼の化物も、決してグレンデルの好みではない。

     意思疎通の取れない獣をハントしても、あまり楽しくない。

     それでもグレンデルがこの場に留まるのは。

    (こいつらを――喰う)

     より高みへ。

     より強く。

     そのために、グレンデルはその場に留まり続ける。

     性格の僅かな変質に、グレンデルは気づかない。

    「げっげっげ! 何だそのキモイのは!」

  • 829◆xaazwm17IRZa25/03/28(金) 19:59:35

     死の王を取り囲むように、人間の腕が咲き誇る花園が出現する。

    「そーいうのは、俺っちの趣味じゃねぇなぁ!
     生きている奴で遊ぶから、楽しいんだぜぇ~?」

     嘲笑しながらも、グレンデルの心中で焦りが生まれる。

     思考をなぞるかのように、弾幕じみた死の呪いが放たれた。

     回避は——不可能。

     当たるとどうなる? 蘇生できるのか。それとも。

     ……分からない。グレンデルに、未知を追求する好奇心など存在しない。

     グレンデルは顎を広げた。喰うためではない。獣の顎は、食事のためだけにあるのではない。

     ——咆哮が、学校内に響き渡る。

     グレンデルの咆哮は、一時的に魔法を麻痺させる。

     魔法少女誕生以前の怪物である死の王の呪いであっても、その権能は広義の魔法に該当するのだろう。

     放たれた呪いは、勢いを失い、減衰する。

  • 830◆xaazwm17IRZa25/03/28(金) 20:00:11

     グレンデルまで辿り着けた呪いは、放たれた呪いの十分の一にも満たなかった。

     隙間だらけの弾幕を難なく躱し、グレンデルは裂くような笑みを浮かべる。

     上空のハニーハントもまた、健在である。

     グレンデルの咆哮が結果的に助ける形になったのだろう。

    (俺っちが喰う前に死なれても困るしなぁ)

     だがこれで、この狼の化物の底も見えた。

     どうやって殺せばいいかは見当もつかないが——あの流体を全て丸呑みし、取り込んでしまえば、グレンデルは更なる怪物へと進化できる。

    (げっげっげ、それこそ『天上』とやらに至れるんじゃねぇか?
     いいねぇ、夢が広がるねぇ)

     死の王は、グレンデルを見据えている。未だ、この怪物の感情は読めない。

     つまらない相手だ。喰うときに最後まで頭を残してやろうか。怯えた声の一つでもあげてくれるといいのだが。

     死の王は、僅かに顎を開いた。

     最初の絶命攻撃だろうか。

  • 831◆xaazwm17IRZa25/03/28(金) 20:09:52

     あれでは死なないと、グレンデルは知っている。

     恐らく、次は意識さえ失わない。

    (俺っちはもう、そういうステージに居ないのさ)

     死の王は——吼えた。遠吠えのような、細く、寂しい声だった。



     死の王による「呪い」。その対処を終えたアリアは、他の場所のモニターを見ていた。

    「ふん、所詮はイギリスの娼婦殺しのフォロワーか」

    「ほう、あの野生児。中々面白い。実に研究のしがいがあるじゃないか」

     そうは思わんかね、とアリアはヘルゼーネンの一人に声をかける。
     理知的で穏やかかつ非情に仲間想いのアリアは、大総統と部下という絶対的上下関係があろうと気安く声をかけるのだ。
     
     だが、声をかけられたヘルゼーエンは返事を返さなかった。
     理知的で穏やかかつ非情に仲間想いのアリアは、即座にワイヤーを展開する。

     ムカついたから部下を処刑する。そんな非効率的なことはしない。

     何らかの魔法攻撃を受けていると、理知的で穏やかかつ非情に仲間想いのアリアは看破したのだ。

  • 832◆xaazwm17IRZa25/03/28(金) 20:18:16

     ばたり、とヘルゼーエンが倒れる。
     死んでいる――わけではない。
     ワイヤーを脳に刺せば、微かに反応を示している。

    (だが、何が切っ掛けだ?)

     次々と、ヘルゼーエンが倒れていく。
     昏倒し、糸の切れた人形のように倒れる。

    (即死、ではない……さっきとは違う攻撃だ)

    「大総統……これは一体!?」

    「我々は、どうすれば……」

    「狼狽えるな、凡夫ども」

     異変は——収まっている。
     数人のヘルゼーエンは倒れ、他の者は無事だ。

    (倒れた者と無事だった者、何が違う? とりあえず解剖してみるか?
     いや、待て、これは……)

    「10人に1人か……?」

     トート・アリアは自らの所有する知識から、この魔法の特性と対策を導こうとした。

    (……分からん)

     死の王に関する知識は、既にトート・アリアから失われている。

  • 833◆xaazwm17IRZa25/03/28(金) 20:31:27



     魔法少女名、「クイックローラー」。本名、早瀬光。

     彼女は今、警察署に居た。
     変身はしていない。普通の女子高生として、大人に保護を求めに来たのだ。

     解説王を目指していた。人間の解説者と違い、魔法少女なら自分の身をある程度守ることが出来る。動体視力も強化されているし、何よりクイックローラーの「把握魔法」は、事前知識が無くても、相手の情報を正確に把握できる。

     この力さえあれば、解説王になれる。
     そう信じていたのに。

     裏の世界。本当の殺し合い。
     漫画やアニメだとありふれたシチュエーション。実のところ、そういう場でも的確に解説し、場を盛り上げる妄想を、したことがないとはいえない。

     現実は違った。強い、かっこいい、興奮。そんな風には思えなかった。身体を炎に変える魔法少女は、本当に死んだ。あんなに強く、最後まで戦い抜いた、立派なファイターが、無惨な死を遂げた。

     怖い。思い出すだけで吐きそうになる。自分は、殺し合いの実況をしていた。殺人ゲームを盛り上げていたのだ。
     それはつまり、早瀬光は殺人ショーの協力者ということだ。

     その事実に気づいた瞬間、光は罪悪感と恐怖と後悔で叫んだのだ。

     そして、アリアを糾弾し、把握できてしまった彼女の異常性に心が折れ、リングから逃げ出した。

     そこからひたすら彼女は逃げ続けていた。
     竜とロボの戦いにも背を向け、観察も観戦も解説もすることなく。

     魔法少女クイックローラーではなく、ただの一般人早瀬光として。悲鳴をあげながら逃げ続けた。

  • 834◆xaazwm17IRZa25/03/28(金) 20:40:20

     逃げた果てに辿り着いたのが、警察署だった。

     何らかの武装組織(外聞を聞く限り、恐らく魔法少女……あのアリアの仲間だろうか)に既に襲撃を受けた後らしいが、それでも警官は署内に残っており、アリアは一般人として警察に保護を求めた。

     あにまん市内には、同じような人物が多く居た。

     街中で起こる異常な現象に対して、家に篭るのではなく、市外に逃げるのでもなく、暴徒化したり、奇行に走るわけでもなく。警察に助けを求める、というそんな人々が。

     警察署のロビーは、避難所めいていた。
     光は知っている。此処に居ても意味は無い。魔法少女が襲撃に来れば、受付の警官程度では相手にもならない。

     だが、どこに行けばいいのだろうか。
     光は、市内の住民ではない。
     市外まで逃げるのも一つの手だ。けれど、それも怖い。

     光の暮らす街に、有力な魔法少女は居ない。何なら自分が一番強いかもしれない、とすら思う、色んな格闘技の試合を見ているし、相手の情報をある程度把握できるし。

     だが、あにまん市には、あのティターニアが居る。
     彼女なら、トート・アリアという悪を倒してくれるかもしれない。

    (トート・アリア。少しだけ一緒に居たから分かる……アレは、人間じゃない)

     人でなしの性格とか、そういう意味じゃ無く。
     種族的な意味で。

     クイックローラーの魔法は、相手の情報をカタログを読むかのように把握できる。

    (ホムンクルス……)

     本物の、人外。

  • 835◆xaazwm17IRZa25/03/28(金) 21:06:09

    (早く、ティターニアが倒してくれたらいいのに……)

     ここで蹲っている間に、全てが終わってくれればいい。
     少し前の光なら、「その戦い、ぜひこのクイックローラーに実況させてください!」と意気込んでいただろう。

     今はもう、駄目だ。
     怖い。

     と、警官の一団が新たに入って来た。

     ロビーに集まっていた市民たちは期待の目で彼らを見る。

    「きっと、他の県から応援に来たんだ」

    「きっと何とかなるのよ」

     安堵の声が、あちこちで漏れ。

     ——警官の一人が、唐突に倒れた。

     動揺が、ロビー全体に広がる。
     次の瞬間、光の隣に座っていたお婆さんが倒れ込んできた。慌てて光は抱きかかえる。

  • 836◆xaazwm17IRZa25/03/28(金) 21:06:54

    (死んだ……? 違う、息はしてる……けど、これは……)

     次々と、人が倒れていく。
     あっという間にロビー内はパニックに包まれた。

     その中で瞬時に変身を果たしたクイックローラーは、自らの魔法を行使する。

      短時間では、そう情報は見えてこない。だが、不幸なことに、サンプルは大量にあるのだ。

     クイックローラーは今発動している魔法の情報を、掴んだ。

     【この魔法は、範囲内の知的存在全てを対象とする。対象は判定を行い、10分の1の確率で贄となる。贄となった者は瞬時に生命エネルギーを吸い取られ、魔法発動者のエネルギーへと変換される】

     恐ろしい魔法だ。この世にあってはいけない魔法だ。
     今、クイックローラーがこうして思考が出来るのは、10分の9を掴めたからに他ならない。

     把握するうちに、クイックローラーは悲鳴をあげた。
     知らなければ良かった。

    「ただの悪辣な魔法少女が、警察署を狙って悪辣な魔法を仕掛けた」

     そう思っていられれば、どれだけ幸福だっただろう。

     この魔法は、警察署を狙ったものではない。

  • 837◆xaazwm17IRZa25/03/28(金) 21:08:03

    【この魔法の効果範囲は、地球全域である】

    「こんなの、もうどうしようも……」

     クイックローラーは魔法の行使を止めようとした。
     だが、魔法は止まらなかった。

    【この魔法を把握したクイックローラーは、死亡する】

    「あ……」

     死が、地球を覆おうとしていた。

  • 838◆xaazwm17IRZa25/03/28(金) 21:08:22

    投下を終了します

  • 839二次元好きの匿名さん25/03/28(金) 21:12:52

    .

  • 840二次元好きの匿名さん25/03/28(金) 21:24:45

    一度に魔力を吸収できるのは10分の1なので十回使えば全人類皆殺しにできま〜す、みたいな畳み掛けるオチ…?

  • 841二次元好きの匿名さん25/03/28(金) 21:56:09

    この規模感正に王ですね!クイック・ローラーも知りさえしなければなとは思うけど性分的には仕方ないですね。
    投げたキャラには1レス分でも多く生きて欲しい気持ちもあるが…どうなるだろうか

  • 842二次元好きの匿名さん25/03/28(金) 23:59:01

    対処法を考えようにも情報源にはウィルスバスター(死)が仕込まれててどうしよう…
    知れば即死、そうでなければジワジワと死を待つだけ…

  • 843二次元好きの匿名さん25/03/29(土) 08:21:10

    破壊規模で言えばもう作中最大になっとる!

    ウェンディゴの意識がまだあるなら、仲間が呼びかけることもできるんじゃが

  • 844二次元好きの匿名さん25/03/29(土) 12:48:28

    対策防止まであるのは恐ろしいな

  • 845二次元好きの匿名さん25/03/29(土) 20:22:59

    こんなのどうすれば無効化できるのか、あるいはあと9回発動される前に倒すしかないのか…
    鳴き声、つまり音速の攻撃だからグレンデルの咆哮やマジカルストラッシュでも防げないのかな…

  • 846二次元好きの匿名さん25/03/30(日) 00:53:31

    情報に深入りし過ぎないようにすればまだ引き返せたな。アリアも知り過ぎる前に脳髄の一部を削り取って回避したし(結果的に覚えていないから免れただけかもしれないけど)

  • 847二次元好きの匿名さん25/03/30(日) 08:05:48

    どうにかして止めないと死ぬけど仕組みを知ると死ぬ
    本当にどうすんだこれ

  • 848二次元好きの匿名さん25/03/30(日) 13:46:17

    うん、祈ろう!

  • 849◆xaazwm17IRZa25/03/30(日) 18:21:04

    投下します

  • 850◆xaazwm17IRZa25/03/30(日) 18:21:51

     あにまん市で起こっている異常な事態。盟友リサ・バードンの突然死。

     テリー・J・パワーズは不介入の原則を固めた。

     勿論、放置していい問題ではない。

     調査だけで死ぬという。裏を返せば、調査しなければ安全だ。

     潜入したジャスティスファイアを信じ、テリーは対魔法国に向けた準備を進めていた。

     といっても、米軍をそのまま派遣するわけではない。

     近代兵器の火力は、魔法少女を圧倒する。そうテリーは信じている。魔法少女の身体能力がどれだけ優れていようと、所詮は獣に毛が生えた程度。マシンガンでもあれば一方的に虐殺できる。

     だが、恐るべきは一人一人が持つ魔法だ。人間の個性など兵器の前では誤差にもならないが、魔法少女の個性は作戦すら台無しにしかねない。

     ある者は身体を水や炎に変えられるだろうし、ある者は瞬間移動するだろうし、ある者は攻撃を跳ね返すだろう。

     魔法少女を兵器で始末するなら、一人ずつ魔法を調べ上げ、それぞれ異なった方法で対処しなければならない。

  • 851◆xaazwm17IRZa25/03/30(日) 18:22:34

     それはつまり、魔法少女一人につき、特殊部隊が一つ居るということになる。

     あまりにもコストがかかりすぎる。

     故に派遣するのは、同じ魔法少女だ。

     ジャスティスファイアからの新たな報告が出次第、米軍が全米から集めた魔法少女チーム、(テリーはジャスティス・リーグと名付けたが、部下から却下された)をあにまん市に派遣する。

     アメリカの強力な支援を受けながら、彼女たちは魔法国の尖兵を殲滅するだろう。

     その後は、国連を動かして世界各地の強豪魔法少女を結集、魔法国に直に攻め入り、この戦争を終わらせるのだ。

     そんなUSAドリームを脳裏に描いていたのが、つい十五分前。

     今のテリーに、そんな夢想の時間は無い。

     あにまん市の魔法少女騒動。それを遥かに超える異常事態が、全米で起きたからだ。

     集団昏倒。およそ3000万人のアメリカ国民が一斉に意識を喪失し、衰弱状態に入った。

     それによって発生した「二次被害」で、全米は大混乱に陥っているのだ。

  • 852◆xaazwm17IRZa25/03/30(日) 18:23:47

    (いや、アメリカだけではない)

     情報はすぐに集められる。努力の必要すら無かった。

     この異変は、世界規模で起きている。

     アメリカが攻撃されているわけではない。攻撃されているのは、人類だ。

     人類社会の全てが、魔法によって攻撃されている。

    (本当に戦争を始めたのか、魔法王……!)

     顔すら知らぬ、魔法の国のトップに対して、テリーは怒りを募らせる。

    「すぐに魔法少女を招集しろ。もはや一刻の猶予も無い。魔法国に潜入し、魔法王を暗殺するのだ」

     段階をすっ飛ばし、テリーは部下に命令を下す。

    「そ、それが……集めていた魔法少女たちと連絡が取れず……」

  • 853◆xaazwm17IRZa25/03/30(日) 18:24:02

    「何だと……?」

     ブレイズドラゴンと比べれば見劣りするが、それでもアメリカの各州でトップの実力者たちばかりのはず……。

    「魔法国に寝返ったのか、それとも……」

     もう、死んでいるのか?

     テリーは息を吐いた。

    「……我々は、無力だ」

  • 854◆xaazwm17IRZa25/03/30(日) 18:24:44



     死の王に、とてつもないエネルギーが集まっていることに、グレンデルとハニーハントは気づいた。

     死ぬ。

     今ここで止めねば、自分たちは死ぬ。

     グレンデルは死の王に向けて咆哮する。魔法を麻痺させるグレンデルの咆哮は、死の王にも通じる。

     だが、死の王はグレンデルに一瞥も送らなかった。人間を致命させる雀蜂の毒を、鯨に刺しても効果は薄い。

     グレンデルの咆哮は、魔法ならば量・質問わず絶対的に麻痺させる――そこまで出鱈目な代物ではない。死の王の「小技」ならばともかく、「大技」を麻痺させるにはエネルギーが足りない。

  • 855◆xaazwm17IRZa25/03/30(日) 18:25:18

     ハニーハントもまた、ブレードで死の王を斬り刻む。だが、流動する死の王をいくら斬り刻んだところで、意味は無い。水面に向かってどれだけ刃を振り下ろしても、徒労に終わる。

    (クソッたれが……!)

     体内で、胎動を感じた。

     間近に迫る脅威を前に、自身が変質していくのを感じる。

     ハニーハントは、ブレードを振り回し続ける。

     人としての思考を失ったハニーハントは、それでも死の王を危険だと判断できた。

     女王に害を為す存在だと。

     徒労を、ハニーハントは行い続ける。

  • 856◆xaazwm17IRZa25/03/30(日) 18:26:17



     誰かに抱かれていると、バルバロイは気づいた。

     目を開ける。

     犬耳の魔法少女が、其処に居る。

    「ハスキーロア……」

     全身が酷く痛い。筋肉痛を何倍にも増幅したような、そんな痛み。

     周囲を見渡せば、高校から何十メートルか離れた住宅地の裏庭に自分が居ると分かった。

    「ここに居てください。後は、私が何とかします」

     

  • 857◆xaazwm17IRZa25/03/30(日) 18:26:46

     一緒に行く、と言おうとしたが既にハスキーロアは背を向けていた。

     なんだか雰囲気が変わった気がする。立ち方が堂に入っている。何年も武術に触れてきた者のそれだ。

     その腰には、日本刀。

    (闘いたいなぁ……)

     今のハスキーロアは、楽しそうだ。

     キン、と納刀音が響く。既にハスキーロアはその場から姿を消していた。

     後を追うために四肢に力を入れて見たが、痛みばかりが返ってくる。

     バルバロイは舌打ちをした。闘争は少しだけお預けのようだ。

  • 858◆xaazwm17IRZa25/03/30(日) 18:27:45



     その少女の出現を、グレンデルも、ハニーハントも感知できなかった。

     唐突に、まるで「空間を切り裂いたかのように」、犬耳の魔法少女は死の王の眼前に出現した。

     死の王の虚ろな瞳が、ハスキーロアを捉える。

     無数に伸びた腕が、一斉に幼き魔法少女を指差し。

     ——納刀音だけが、響いた。

    「何だ……そりゃあ?」

     グレンデルは、間の抜けた声を出す。

     死の王に感じていた脅威――何らかの攻撃の予兆が、消失している。

     この現象を、グレンデルは知っていた。観ていたのだ。

     リングで行われたテンガイと七海真美の死闘。そこで七海真美がテンガイに対して発動していた魔法。

     魔法を斬る魔法。

     一度斬られた魔法は、二度と発動できない。

    (何でハスキーロアまで同じ魔法を使える……!?
     いや、問題はそれだけじゃねぇ……)

  • 859◆xaazwm17IRZa25/03/30(日) 18:28:32

     グレンデルは七海真美の魔法を一定以上評価しながらも、そこに恐怖は感じていなかった。行使者の七海真美が死んだから、というのも理由の一つだが。

     あの魔法は、遅い。

     テンガイのフィジカルが魔法少女の平均程度だったからこそ、ああも良いように斬られていたが、グレンデルのフィジカルならば一度も斬られる前に、仕留めることができる。それこそ、抜刀の隙すら与えない。

     そんな自信があったのだ。むしろ多種多様な手札を持つテンガイにこそ、戦う際のやり辛さを感じていた。

     何でも斬る魔法は、斬られる前に殺せばいい。

     それが、あの魔法の弱点。

     そう、目算を立てていたのに。

    (刀身が――見えなかった)

     グレンデルの動体視力、反射神経を持ってしても、今しがたのハスキーロアの一閃は目視できなかった。

     神速の抜刀術。

     万物を切断する魔法を、万人が目視できない速度で振るう。

  • 860◆xaazwm17IRZa25/03/30(日) 18:29:27

     死の王が、吼えた。

     この存在が地上に出現し、初めて見せた「怒り」だった。

     再び、納刀音が響く。

     死の王の咆哮は、他者を即死させる力を持つ。それは「音」であり、つまるところ音速の攻撃である。

     ——その程度ならば、抜刀金の居合術は追いつける。

     そして、斬られた以上、もはや死の王の咆哮に「即死」の効果は無い。

     死の王は、唸った。

     生まれながらに最強の存在だった。妖精郷に生れ落ちた存在の中で、王だけが一方的な絶対殺戮権を有していた。

     誰かの思惑があったわけではない。偶然出現した、突然変異。

     死の王が妖精郷から姿を消したのも、他者に敗北したのではなく、自らの死の力が数十億年かけて死の王自身に作用し衰弱させただけのことだ。

     それでも死の王は死なず、影のように世界を彷徨ったのだ。

     「通常攻撃」で殺せない者は居た。

  • 861◆xaazwm17IRZa25/03/30(日) 18:30:19

     特殊な手段で死の王に傷を与えた者も居た。

     復活を阻止し、封印した少女も居た。

     だが、死の王の権能を「殺した」のは、彼女が初めてだった。

     ハスキーロアは、真っ直ぐ死の王を見据えた。

     あるいは彼女もまた、死の王に相応しいのかもしれない。

     だが、彼女の目的は誰かの命を奪うことではない。

    「待ってて、ウェンディゴさん……」

     取るのは、抜刀術の構え。

    「そこから貴女を、助けてみせる……!」

     校庭に現れた四人目の嵐は、怪獣ではなく魔法少女だった。

  • 862◆xaazwm17IRZa25/03/30(日) 18:30:32

    投下を終了します

  • 863二次元好きの匿名さん25/03/30(日) 18:32:50

    失い続けたハスキーロアの反撃ターンがやって来た!
    カタルシスよ!

  • 864二次元好きの匿名さん25/03/30(日) 18:33:53

    覚醒した万物切断と、万物切断の領域に到達した技術の組み合わせは強いぞ!

  • 865二次元好きの匿名さん25/03/30(日) 18:37:59

    ぶった斬る魔法の弱点は使い手が知覚した概念にしか効果を及ぼせないことか
    パラサイトドールやテンガイのような魔法やフィジカルに偏重した相手なら八つ裂きにできるが、スピード自慢には躱されてしまうんですね

    「なので神速の抜刀術で補います」は強いよ!

  • 866二次元好きの匿名さん25/03/30(日) 18:49:10

    真っ向勝負で戦える…だと…

  • 867二次元好きの匿名さん25/03/30(日) 21:17:03

    まさかの正面戦闘

  • 868二次元好きの匿名さん25/03/30(日) 23:31:16

    これ程までに噛み合った魔法とフィジカルのコラボレーションは果たしてあるだろうか

  • 869二次元好きの匿名さん25/03/31(月) 06:45:45

    保守

  • 870二次元好きの匿名さん25/03/31(月) 07:44:09

    魔法の弱点を本人の技能で補う事は多々あったが今回のは特に規模がデカい…

  • 871二次元好きの匿名さん25/03/31(月) 13:20:48

    ハスキーロアの魔法の本質が関わった魔法少女の魔法や記憶を受け継ぐ魔法なら、サンファングのレーザー魔法も使えるようになる…?

  • 872二次元好きの匿名さん25/03/31(月) 17:31:22

    初代ハスキーロアと相棒だったサンファングの魔法が完全な状態で擬似的にでも並び立つ激アツ展開が?
    見返したらレーザービームの板野サーカスできるらしくて強いぞ

  • 873二次元好きの匿名さん25/03/31(月) 23:41:33

    保守

  • 874二次元好きの匿名さん25/03/31(月) 23:47:06

    概念を潰す概念魔法は死の王にも効果有りと
    アンチ魔法として滅茶苦茶強くてロマンがあるな…

  • 875二次元好きの匿名さん25/04/01(火) 07:47:36

    このレスは削除されています

  • 876二次元好きの匿名さん25/04/01(火) 07:48:20

    裏で名無しの強者が音もなく倒れてる無常感がすき
    下手したらそいつらとぶつかってたかもしれないと思うとこれで良かったのかなぁ…

  • 877二次元好きの匿名さん25/04/01(火) 16:25:25

    >>876

    持ってる魔法によっては有力な助っ人になってたかもしれないし

    勇者の経験値にされたりヘイトナチスのワイヤーで手駒にされてたかもしれないしでどちらが良いとも言い切れないねえ

  • 878二次元好きの匿名さん25/04/01(火) 22:26:52

    保守

  • 879二次元好きの匿名さん25/04/02(水) 06:37:37

    保守

  • 880二次元好きの匿名さん25/04/02(水) 07:47:36

    軍視点での対魔法少女対策が結局、魔法少女に行き着くのすき。魔法が魔法少女自体の安全や抑止力としても働いているんだなって…

  • 881二次元好きの匿名さん25/04/02(水) 12:26:41

    魔法の割れてない魔法少女が1人いるだけで相手は軽々しく動けなくなるからな
    条件満たしたら即死系の魔法持ちかもしれないし

  • 882二次元好きの匿名さん25/04/02(水) 19:57:08

    デスゲームという概念を斬るのは、序盤なら出来たけど終盤の現在はデスゲームを経て充填された魔力が膨大すぎて無理、みたいな感じか他の理由で出来なさそう

  • 883◆xaazwm17IRZa25/04/02(水) 22:55:36

    本日も投下できないです……明日は投下できると思います

  • 884二次元好きの匿名さん25/04/02(水) 23:52:43

    分かりましたー
    さて…どうなりますかな…

  • 885二次元好きの匿名さん25/04/03(木) 07:48:01

    初見殺しには初見殺しで対応すれば良いのはそうなんだけど絵面的にはシュール

  • 886二次元好きの匿名さん25/04/03(木) 14:56:50

    学生街編に居たらパラサイトドールを八つ裂きにしていたというブラックブレイドの魔法、そして抜刀金の神速の抜刀術
    一気にハスキーロアが作中最強の一角にのし上がったな…

  • 887二次元好きの匿名さん25/04/03(木) 23:05:01

    このレスは削除されています

  • 888◆xaazwm17IRZa25/04/04(金) 00:08:27

    もう少し書きたかったのですが、明日も早いので、この辺りで投下させていただきます……

  • 889◆xaazwm17IRZa25/04/04(金) 00:09:48

     野犬だと、九歳の清原稞美は認識した。

     母親から聞いたことがある。昔は、街に野犬が居たのだという。

     運が悪いと、追いかけまわされる。もっと運が悪いと、噛まれてしまう。更に運が悪いと、噛み傷が元で死んでしまう。

     幼い稞美は、怖いと思った。運が悪いと死ぬ。そんな悪魔のような存在が、街に居たのだ。

     おばけと同じくらい怖い。

     稞美にとってのおばけとは、ペストマスクを着けた黒衣の怪人だ。

     父の書斎にあった分厚い大人向けの本、その表紙に書かれていたのだ。ペストという言葉さえ知らない稞美には、ペストマスクを着けた医師たちは、非常に怖いものに思えた。

     けれど、やはり野犬の方が怖い。

     震えるほど、怖い。

     稞美は、飛行機の窓から「野犬」を見上げた。

     天を突くほど巨大な野犬が、空港を圧し潰している。

     よくよく観察してみると、野犬の表面は波打っていた。

  • 890◆xaazwm17IRZa25/04/04(金) 00:10:39

     スライムみたいだと、そんな風に思った。

     別の者が見れば、血の化物と形容したかもしれない。

     飛行機は、静止している。

     尾翼から中央にかけて、野犬の牙が圧し潰している。

     稞美は飛行機の飛ぶ原理は分からないが、こんな風に噛み潰されると飛べなくなることは分かっていた。

     どうして野犬は現れたのだろう、と稞美は考えた。

     きっと、運が悪かった。ただ、それだけなのだ。

     ……それとも、おやつのクッキーをお母さんが居ない間に二つも食べた、罰が当たったのだろうか。

    「お母さん……ごめんね」

     隣に座っていた母に、謝る。

     返事は帰って来ない。

     飛行機の中は静寂だけだ。

     もう、生きているのは稞美しか居ない。

  • 891◆xaazwm17IRZa25/04/04(金) 00:11:19

     どうして自分だけ生き残ったのか。稞美には分からなかった。

     幸運、では無いのだろう。むしろ、誰かが自分に罰を与えるために生かしたのだと、そんな風に思った。

     まだ、生きている。けれど、もう死ぬ。稞美は幼いが、今の状況が絶体絶命であることくらいは分かる。自分が乗った飛行機は「野犬」に噛み潰され、乗客は皆死んでいる。自分ももうすぐ、牙に潰されるのか、呑まれて胃酸に溶かされるのか、どちらにせよ死は免れない。

    (ああ……死にたくないな)

     何となく、そう思った。死が免れない状況で、少女は願った。

     一人の人間が何を願ったところで、現実は変わらない。願いの強さと起る事象に因果関係は無い。古今東西の人間が死にたくないと願っても人類が死を克服できないように、願うことに意味は無いのだ。

     ——そんな常識は、いとも容易く魔法で覆される。

     がくん、と飛行機……否、飛行機の残骸が揺れた。そして、緩やかに下降していく。稞美がイメージしたのは、2.3年前に家族で乗った気球の降下だった。

     窓の外に目をやる。

  • 892◆xaazwm17IRZa25/04/04(金) 00:12:19

     野犬は、どろどろと溶け始めていた。

     稞美の乗った飛行機は、そのどどろどろに合わせて地上へと帰り始めていたのだ。

    (助かった……の?)

     稞美は、わけの分からないまま、微かに安堵する。

    【愚かよな】

     声が響いた。しわがれた、枯木のような声だった。

    【結んだ契約の滑稽さにも気づかぬか】

    「貴女は……誰?」

     返答は無かった。さっきの野犬だろうか、と稞美は思った。

    【お前は、後々この契約を後悔するだろう。生など願わなければ、道連れはせいぜい100万程度で済んだだろうに……】

    「どういうこと?」

    【貴様の中で力を蓄える。次に現われるとき、道連れは100万程度では済まんぞ】

     怖い、と思った。声は、大きかった。声量ではない。声から感じるプレッシャーをとてつもなく巨大に感じたのだ。

  • 893◆xaazwm17IRZa25/04/04(金) 00:13:05

     人では無く、獣でもなく、森や山や海、そういった巨大なものと話している気分だった。

    (けど、それだけじゃない)

     この声には——明確な悪意があった。

     そのことが何よりも怖い。

    【このことを思い出すのは、お前の死の意味を理解するのは、お前が死に瀕したときだ。お前の人生に、祝福を……】

     そして。

     清原稞美は、悲惨な飛行機事故の唯一の生き残りとなった。乗客250人の犠牲。それは、彼女が築く屍の山に比べれば、そう大した数では無かった。

  • 894◆xaazwm17IRZa25/04/04(金) 00:14:10



     死の王。白〇の王を取り込みしハニーハント。抜刀金とブラックブレイドの魔法を継承したハスキーロア。

     いずれも魔法少女を逸脱した、ジョーカーばかりである。

     この錚々たる面子を前にして、グレンデルは獰猛に笑った。

     -(げっげっげ、ハスキーロア。想像以上だぜ。ぜひとも、俺様の糧にしてぇなぁ)

     本来のグレンデルは、そこまで食人に興味を示さなかった。好奇心のままに行ったことはあったが、それほど楽しい経験ではない。拷問の一環として踊り食いを行うのはまだ楽しかったが……。

     今のグレンデルは、黒贄山羊を取り込んだ影響なのか、他者を捕食する欲求が強まっている。

     ならばグレンデルは理性を失い、弱体化したのか。黒贄山羊を喰らったことは、悪手なのか。

     

  • 895◆xaazwm17IRZa25/04/04(金) 00:14:21

     そうはならなかった。

     もはや何度目になるか分からない、獣じみた飛び掛かり。

     狙うは、ハスキーロア。

     不死身になったとはいえ、今のハスキーロアは強敵。それこそグレンデルが反応するより速く、斬首することだって出来る。

     納刀音が響く。

     同時に、グレンデルの首が落ちた。

     遅い。

     もはやハスキーロアは知覚と同時に対象を切断できる。

  • 896◆xaazwm17IRZa25/04/04(金) 00:15:10

     万物切断と神速の抜刀術は、あらゆる道理を切り捨てる。

     ——それは裏を返せば、「斬る」と決める前より速く、斬ることはできない。

     意思より速くは、刀を振れない。

     グレンデルの動きに対し、「何」を斬るべきか、ハスキーロアは思案した。

     四肢か、首か。あるいは、グレンデルが繰り出す攻撃か。

     思案は一瞬であり、グレンデルの首は落ちる。

     だが、斬首されるより前に、グレンデルは胃袋からそれを取りだしていた。

     そして、首を失った胴体は、それの引き金を引く。

     アンチマテリアルライフル。

     ナサリーブラウンが学校に隠していた、遺品である。

     大口径の弾丸が発射される。

     納刀音と共に、弾丸は切断され、一切の破壊は起こらない。

     その様を見て、グレンデルの首はげっげっげと哄笑した。

    「チンケな兵器だなぁ! こんなもんでどうにかなると思っていたナサリーブラウンはお笑いだぜ!」

  • 897◆xaazwm17IRZa25/04/04(金) 00:15:57

     ハスキーロアの顔が怒気で歪む。

    (それでいい)

     と、グレンデルは嗤った。

     どんなものでも斬る。誰よりも速く斬る。

     なるほど、そいつは凄い。大したものだ。

     だが——振るうのは九歳のガキだ。

     クライオニクスの氷の翼や、ドレッドノートの無敵のように、自動的ではない。

     どれだけチートじみた能力を持とうと、少女であるならばグレンデルは手玉に取れる。狼(グレンデル)は、赤ずきん(ハスキーロア)を喰らう。

     ハスキーロアはグレンデルに視線を向け、再度斬撃を放つ。

     グレンデルの身体は七等分される。それでも狼は嗤い続けた。

     ——グレンデルに注意を向ければ、他は疎かになる。

     死の王の身体から放たれた矢が、ハスキーロアを襲った。

     黒い瘴気を纏った矢は、掠っただけでも絶命は免れない劇物である。

  • 898◆xaazwm17IRZa25/04/04(金) 00:16:38

     隙を晒したハスキーロアを包囲するかのように、矢は曲射し、全方位から襲来する。

    「……遅い」

     と、ハスキーロアは呟いた。

     ——納刀音が響く。

     全ての矢が、縦に切断される。

     ミストアイならば、命中するという因果を発生させる絶対必中の魔弾を撃てた。

     パトリシアならば、万物切断が追いつかぬ程の多種多様な属性の入り乱れた連射を放つことが出来た。

     死の王は怪物であり、かつて命を奪った者の能力を再現できる。

     ——真の射手で無いのならば、今のハスキーロアには届かない。

    (チッ、敵にすると恐ろしいが味方にすると頼りない奴だな)

     本来遥か格上の怪物に対して辛辣に批評するグレンデル。既に七等分された肉体は再生している。

     また殺された。もはや悔しさや怒りは感じない。

  • 899◆xaazwm17IRZa25/04/04(金) 00:17:24

     むしろ、殺される度に、また一つ、新たな力に目覚めていく。そんな予感があった。

    「例えば、これだ」

    「——っ!?」

     ハスキーロアの視界が、赤で塞がれる。

     『アイアムアフール』。そう書かれた赤いカラーコーンが、突如ハスキーロアの顔に被せられたのだ。

     上から降ってきたわけではない。コマとコマの間で書き込まれたように、前兆なくそれは出現した。

     ただのカラーコーンだ。

     魔法少女どころか一般少女に対しても嫌がらせ程度の効果しかない。

     ——ここに、多種多様な即死技を持つ死の王さえ居なければ。

     死の王の額から、槍が放たれる。

     カラーコーンを断ち切ったときには槍はハスキーロアの寸前まで届いている。

     ハスキーロアは、槍を斬った。

  • 900◆xaazwm17IRZa25/04/04(金) 00:17:57

     斬られた槍の穂先から、無数の礫が出現する。

     かつてこんな武器を使った者が居たのだろう。妖精なのか、人間なのか、魔法少女なのか。

     いずれにせよ、今は死の王が振るう権能の一つに成り下がっている。

     納刀音が響いた。

     死の礫は校舎の壁に突き刺さる。

     ハスキーロアは、上空に居た。空間の切断。これにより、ハスキーロアは瞬間移動じみた魔法を行使できる。

     もはや何度目になるか分からない納刀音が響く。

     瞬間、グレンデルと死の王は体勢を崩した。

     破壊し尽くされ、荒野めいた場所になっていた校庭。

     ——それは言い換えれば、「場所」としては存在していたことを意味する。

     万物切断。対象は——大地そのもの。

     校庭を構成していた「地面」が、バラバラに切断される。必然的に発生するものは——落下である。

  • 901◆xaazwm17IRZa25/04/04(金) 00:19:37

    投下を終了します、今後はこれくらいの更新ペースになるかと思いますが、もしお付き合いいただけるのでしたら幸いです

  • 902二次元好きの匿名さん25/04/04(金) 00:43:15

    万物切断が思ったより万物切断だった…

  • 903二次元好きの匿名さん25/04/04(金) 00:45:00

    概念攻撃をぶつけ合う戦闘シーンすっごい良かった…
    ハスキーロアが何らかの変化を起こしても、根っこが9歳の善良な女の子なままなのが弱点にも長所にもどっちにもなり得るのが好き

  • 904二次元好きの匿名さん25/04/04(金) 07:41:21

    投下お疲れ様です…
    空間を切断するとぉ〜瞬間移動ってやつだぜぇ

  • 905二次元好きの匿名さん25/04/04(金) 11:41:28

    ホライゾンの蜻蛉切と同じで「ぶった斬られてもさほど問題がない」敵に対しては効力を発揮し得ないのが弱点か

  • 906二次元好きの匿名さん25/04/04(金) 12:13:16

    遅くまでお疲れ様です〜
    1年以上追い続けた大好きな作品なので、完結を楽しみに待ってます!!
    そして死の王、前作の翁と同じで喋り始めてしまったということは多少なりとも底が見えてきたのかな…?

  • 907二次元好きの匿名さん25/04/04(金) 17:58:40

    このレスは削除されています

  • 908二次元好きの匿名さん25/04/04(金) 17:59:10

    >>905

    「なんでもぶった斬れるよ」ということは裏を返せば「斬ることしかできない」ということでもあるか

    魔法による不死ではなく「斬られても死にませ〜ん」なタイプは天敵か

  • 909二次元好きの匿名さん25/04/04(金) 22:40:37

    あとバラバラの身的な「斬られたんじゃなくて分離しただけです」みたいな能力も相性悪い

  • 910二次元好きの匿名さん25/04/05(土) 00:36:53

    ハスキーロアには『この時代における始まりの魔法少女・犬上沙美』ではなく、魔法少女達の縁と力を受け継いで戦う『犬上沙美/ハスキーロア』として戦い抜いて欲しいところ

    恐らくそれがハスキーロアの事を『始まりの魔法少女の素体』としてしか見ていないであろうアリアやまだ見ぬラスボスへの最大の特攻になるかもしれない

  • 911二次元好きの匿名さん25/04/05(土) 06:47:13

    保守

  • 912二次元好きの匿名さん25/04/05(土) 10:44:39

    支援

  • 913二次元好きの匿名さん25/04/05(土) 12:00:50

    邪神とは言うが所詮は滅ぼされた竜の首が逃げるための殻でしかなく(しかも逃げずに竜を貫いたパラサイトドールの方が邪神の殻を被るより圧倒的に格上と過去に明記されている。しかもそのパラサイトドールも成れの果て扱い)
    更にそれが滅ぼされた後の出涸らしを超えた出涸らしのそのまた出涸らしみたいな力でグレンデルはようやっとる

    あるいはグレンデルを改造した力の元と邪神の力が融合して、とんでもない化け物に昇華されていく可能性もあるか?

  • 914二次元好きの匿名さん25/04/05(土) 18:17:11

    二巡目に特に動きがなかったキャラにフォーカスが当たるのめっちゃ嬉しい!
    そういうキャラがもっと活躍してくれると嬉しい!という期待を込めて支援!

  • 915二次元好きの匿名さん25/04/05(土) 23:58:45

    終盤戦らしいインフレ具合だ

  • 916二次元好きの匿名さん25/04/05(土) 23:59:29

    段々と強い奴を食う方が主目的に替わってそうで怖いな グレンデルは

  • 917二次元好きの匿名さん25/04/06(日) 08:16:43

    保守

  • 918二次元好きの匿名さん25/04/06(日) 17:01:13

    保守

  • 919二次元好きの匿名さん25/04/06(日) 22:26:29

    夜保守

  • 920二次元好きの匿名さん25/04/06(日) 22:50:51

    このレスは削除されています

  • 921二次元好きの匿名さん25/04/06(日) 22:58:02

    最終回でインフレしまくるのめっちゃ好きだからどんどんそういうの下さい! お願いします!

    というかハスキーロア以外の参加者にガンガン覚醒してもらわないと敵のボスキャラが強すぎて勝ち目皆無なんだよね今まで描写された設定的に

  • 922二次元好きの匿名さん25/04/06(日) 23:53:10

    本来なら付け焼き刃もいいとこなんだけど今までの経験値のおかげか、すんなり使いこなしてて強いね…ハスキーロア

  • 923二次元好きの匿名さん25/04/07(月) 00:40:22

    >>921

    天上を失った瀕死のパラサイトドールですら儀式を放棄した瞬間にティターニアを邪魔だ糞ゴミできる。

    しかもそのパラサイトドールも冒涜の竜の成れの果てなんだよね。

    これから戦うであろう『勇者』はその冒涜の竜をタイマンで倒した『始まりの魔法少女』と同質の存在と…


    パラサイトドールに施した弱体化は全くの偶然と幸運が重なった結果だし、バックについてるアリアは今までの謀略家っぷりを見るにそんなの許してくれるほど甘くないだろうし…


    頼むからハスキーロア以外も覚醒しまくってくれ〜!

  • 924二次元好きの匿名さん25/04/07(月) 06:42:52

    保守

  • 925二次元好きの匿名さん25/04/07(月) 07:52:54

    斬られる事が痛手にならないタイプだと流石にハスキーロアが劣勢か…
    って所で足場を破壊して重力に従わせるのは流石

  • 926二次元好きの匿名さん25/04/07(月) 14:42:51

    色んな能力に目覚めていくけどそのせいでどんどん撤退タイミングを逃がしていくグレンデル…

  • 927二次元好きの匿名さん25/04/07(月) 22:05:15

    ノーマルグレンデルと比べて強くはなってるけど弱くなってるよね
    規格の合わない大出力のエンジン乗せてる車みたいなイメージ

  • 928二次元好きの匿名さん25/04/07(月) 23:29:30

    確かに力を試してる感じがする。遊びと言うか試運転かな…?

  • 929二次元好きの匿名さん25/04/08(火) 07:44:49

    保守

  • 930二次元好きの匿名さん25/04/08(火) 07:51:17

    善良な子が割を食うのはバトロワではよくあるけど
    それが巡り巡って武器になるのは解放のカタルシス冥利に尽きるね

  • 931二次元好きの匿名さん25/04/08(火) 16:08:30

    保守

  • 932二次元好きの匿名さん25/04/08(火) 22:49:19

    >>927

    単純なパワーは上がってるけど使い方が大雑把で技巧面で総合的には弱くなってるな

    本人がハイになってるからそこは仕方ないかも

  • 933二次元好きの匿名さん25/04/08(火) 23:00:15

     今のグレンデルは、黒贄山羊を取り込んだ影響なのか、他者を捕食する欲求が強まっている。

     ならばグレンデルは理性を失い、弱体化したのか。黒贄山羊を喰らったことは、悪手なのか。

     そうはならなかった。


    って書いてあるので特に弱体化してるとかではないですね
    むしろカラーコーン置き攻めとか能力上手く使ってる描写じゃないですか?

  • 934二次元好きの匿名さん25/04/08(火) 23:12:39

    精神攻撃して隙を作るとか、格上の死の王に攻撃を誘発させるとか傭兵ならではの技巧派してる描写しかないね

    吸血鬼と化したディオみたいな『能力を楽しみ、限界を知りたがる』癖が生まれているのが隙か? しかしそれも濁さず敢えてハッキリと『隙』と書かれているあたり、より強大な怪物に成長していく前フリな気がする…

  • 935二次元好きの匿名さん25/04/09(水) 07:32:46

    保守

  • 936二次元好きの匿名さん25/04/09(水) 14:36:40

    保守

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