- 1作者◆t/sR6m2cmSB022/03/15(火) 22:41:55
- 2作者◆t/sR6m2cmSB022/03/15(火) 22:44:02
俺が担当しているリボンエチュードは一見大人しく賢そうに見えて──大人しくないし、正直バカだ。
そして、彼女が担当しているオイシイパルフェも一見知的な見た目だが──見た目だけだし、正直バカだ。
だって二人の会話は頭が悪い。
「追い込みは素晴らしいです! だって、最後方からごぼう抜きなんて快感じゃないですか!」
と、エチュードが言えば、
「パルパルパルッ! えぇ! えぇ! もはや誰もが諦め、無理だと思っているところから主役に躍り出る姿! 追い込みは素晴らしい!」
パルフェが返す。
この二人は生粋の追い込みバカだ。
幸い適正があったのが幸いしたが、だからと言って脳死で追い込み一筋はどうなのか、とトレーナーとしては思ってしまう。
確かに、追い込みで一流のウマ娘はいる。
三冠ウマ娘のミスターシービーに、皐月賞ウマ娘のナリタタイシン、宝塚連覇のゴールドシップ、女傑と名高いヒシアマゾンなどはスター性も強さも兼ね備えたウマ娘だ。
だが、
「追い込みの育成って難しいですよね……」
そう彼女の言う通り、追い込み戦法は難しい。そもそも追い込みを使うウマ娘はごく少数だ。
故にノウハウが少ない。
それが俺と彼女が、こうして話している理由でもあった。 - 3作者◆t/sR6m2cmSB022/03/15(火) 22:45:40
「来週にはホープフルか」
「回避しませんよ?」
「わかってらぁ」
そうパルフェもエチュードも来週ホープフルステークスに出走するライバルだ。
しかしノウハウ獲得の為、併走せざるを得ない状況にある。
「あなたが同期で助かりました。正直、後輩や先輩には頼みづらいですし」
「そら、こっちも一緒だっつーの」
助かっているのはお互い様だ。しかし、一つ気になっていることもあった。
「あのよ……、パルフェの……」
そこまで言って、つい迷ってしまう。
あまりにもアレな質問であることを理解しているからだ。
「……なんですか? 言いたいことはハッキリ言って下さい」
「いいのかよ?」
「男らしくないですね、あなたは」
そこまで言われては仕方ない。
「パルフェのよ──あの笑い方はなんだ?」
聞くと同時に彼女は頭を抱え込んだ。 - 4作者◆t/sR6m2cmSB022/03/15(火) 22:48:05
「あー……、とある漫画に感化されたらしく。なんと言いましたか、私は詳しくないですが……」
「ワンピースか?」
「あぁ、それですそれ」
「お前、あの漫画のタイトルが出てこないってどうよ?」
「仕方ないでしょう。漫画に興味ないんですから……」
「若いのと話合わねぇだろ。少しは読んどけよ」
そんな雑談をしていると、
「トレーナー! イチャイチャしていないで、次の指示くださいよ!」
「パルパルパルッ! エチュードちゃん、お若い二人の邪魔をしてはいけませんよっ!」
今度は俺が頭を抱えた。
「お前らなぁ……」
「くっ、くだらないこと言ってないでトレーニングに集中してくださいっ! レースは近いんですよっ!」
隣で顔を赤くして叫ぶ彼女に、そこまで否定せんでもと思いつつ、
「そうだぞ。つか、次のメニューは言ってあっただろうが」
「それはそうですけどー。だったらトレーナーもちゃんと見ててくださいよー!」
リスみたいな膨れっ面でエチュードは言った。
「まぁ、それもそうだな……悪りぃ悪りぃ」
頭をかきつつ、謝る。そうして、次のトレーニングに向かう二人の後を追う。 - 5作者◆t/sR6m2cmSB022/03/15(火) 22:49:33
「全く、あの娘たちは……」
横でこめかみを揉む彼女に、俺は半笑いで話しかける。
「まぁ、お年頃だからそういうことに興味あるのはわかるがなぁ」
「…………そういえば、あなたは持ってるんですか」
「あ?」
「い、いえ、先ほど話していた漫画です」
「あー、持ってるぞ?」
「あの、よろしければ貸していただけませんか?」
「別に構わねぇよ」
そういうと、何故かホッとした顔をする。
同期だが、お堅い性格であまり交流のなかった彼女だが、こういう面があるのは知らなかった。
そういう驚きが新鮮で、あの二人には頭が痛くなる事も多いが──まぁ、楽しい日々を送らせて貰っている。
※ - 6作者◆t/sR6m2cmSB022/03/15(火) 22:50:27
前を歩く彼の背中を追いながら、その鈍さに少し憤る。
まったく、私が『ただ同期だがら』という理由であなたを頼る筈がないでしょうに……。
ずっとこの目であなたを追ってきたから、信頼できるというのに……彼は少しも気づいてくれない。
まったく、頭が痛い……。
まぁ、でも漫画を借りる約束もしましたし、一歩前進ですね!
これから距離を縮めていけばいいだけですっ!
がんばりますよ!!
※ - 7二次元好きの匿名さん22/03/15(火) 22:51:20
なんか時々パルキア混じってない?
- 8作者◆t/sR6m2cmSB022/03/15(火) 22:51:51
後ろからついてくる二人をチラリと見て、アタシはタメ息をつく。
「あんなに分かりやすいのに気づかないうちのトレーナーも大概鈍感ですけど……、パルフェちゃんのトレーナーさんもアレでアプローチしてるつもりなんですかね?」
後ろの二人の会話はこっちに筒抜けだ。ウマ娘の聴力をナメちゃいけない。
「パルパルパルッ! うちのトレーナーは奥ゆかしいですからねぇ!」
そう大笑いするパルフェちゃんにクスりと笑ってしまう。
「そのキャラ、まだ続けるです?」
「いやぁ、トレーナーのアシストのつもりだったんですけどね! 意外にしっくり来てしまいましたよ、パルパルパルッ!」
「確かに……似合ってはいますけどね?」
思わず、苦笑が漏れてしまう。
「あの二人、三年間でくっつくといいですけどね……頭が痛いですよ」
「パルパルパルッ! 全くです!」
「それはそれとして、ホープフルは負けませよ? 今年の追い込みスターは私が貰いますからっ!」
「それは、こちらのセリフですよっ!」
この四人の『頭が痛い』が、いつ解放されるかは──まだ誰もわからない。 - 9二次元好きの匿名さん22/03/15(火) 22:52:05
- 10作者◆t/sR6m2cmSB022/03/15(火) 22:53:03
さっき重い奴書いたから、軽めのを。
お読みいただきありがとうございました。 - 11二次元好きの匿名さん22/03/15(火) 22:57:46
お疲れさん。
パルフェのトレーナーがクソザコすぎて笑った。 - 12二次元好きの匿名さん22/03/15(火) 22:59:33
エチュードもパルフェも賢さGであらせられた!
- 13二次元好きの匿名さん22/03/15(火) 23:05:46
- 14二次元好きの匿名さん22/03/15(火) 23:08:38
気ぶれるねぇ
- 15二次元好きの匿名さん22/03/15(火) 23:13:49
乙!
面白かった! - 16二次元好きの匿名さん22/03/15(火) 23:14:51
- 17二次元好きの匿名さん22/03/15(火) 23:18:47
- 18二次元好きの匿名さん22/03/15(火) 23:28:34
- 19二次元好きの匿名さん22/03/15(火) 23:45:17
- 20二次元好きの匿名さん22/03/15(火) 23:58:39
ごめん待って追い込みスターって何?
- 21二次元好きの匿名さん22/03/16(水) 07:28:52
温度差で風邪引くわ
- 22二次元好きの匿名さん22/03/16(水) 07:30:30
パルトレも追い込み型っぽい