- 1二次元好きの匿名さん21/09/13(月) 20:15:42
「凄い」ウマ娘が居る。
新人で、担当する娘を探していた自分はそんな噂を聞いた。
学園に所属している生徒は凄い娘ばかりであるが、その中でも「凄い」と呼ばれる娘の実力は相当なものであるに違いない。
そんな娘であれば、自分よりもっと経験があるトレーナーのスカウトを沢山受けているはずだ。
それでも、その娘の走りを一度見てみたい。
あわよくば自分が担当できれば、という気持ちは否定出来ないが。
その娘が何処で練習しているのか聞き出すと、殆んど使われていないグラウンドでいつも練習しているらしい。
トレセンには多くのグラウンドが存在しているが、大体使われるグラウンドは決まっている。ダートを走る娘、芝を走る娘によって使うグラウンドは変わってくるが、人気なのは校舎から近くて広いグラウンドだ。
そんな中で彼女が練習しているのは校舎から一番遠く、狭いグラウンド。
クールで、誰かと群れるのが嫌いな娘なのだろうか。
そんな風に思いを巡らせながら、自分は例のグラウンドまで向かっていった。
かなり歩き、グラウンドに到着した時には太陽は随分と沈んでいた。
思ったより時間がかかった。もしかしたら彼女は練習を切り上げているかもしれない。そんな恐れを感じながら、グラウンドの方を見ると。
彼女は居た。
一心不乱に汗が滴るのも気にせず、綺麗なフォームで走り続ける。 - 2二次元好きの匿名さん21/09/13(月) 20:16:00
夕陽と影のコントラストの中、その姿はとても綺麗で見とれてしまった。
スピードもかなりのもので、経験の少ない自分でも彼女の実力が相当なものであると一目見て分かった。
そして何よりも……彼女が走る時、とても楽しそうにしているのが印象的だった。
彼女の担当になりたい……心の底からそう思った。つまり自分は彼女の走る姿に一目惚れしてしまったのだ。
暫くの時間、彼女が走る姿を見ていた。
彼女はその間、一度も休憩を取ること無くずっと走り続けていた。
夕陽が殆んど沈み、空が夜の色に染まり始めた頃、彼女は練習を止め、同時に自分の存在に気付いた。
「はぁ……はぁ……すいません、全然気付かなくて……はぁ……はぁ……それで何か私に御用でしょうか?」
「話すのは息を整えてからでいいよ、あとこれドリンク」
「ありがとうございます……ドリンク忘れちゃったので助かります」
「え?」
自分の戸惑いに気付かず、彼女はドリンクを一気に飲み干した。もしかして彼女は少し抜けたところがあるのだろうか、そのように思いながら彼女の方を見ていると。
「改めて何か私に御用でしょうか?」
「単刀直入に言うと、自分を君のトレーナーにして欲しい」
「……え?」
「凄いウマ娘が居るって聞いて、ここに来たんだけど、君の走りを見て、君のトレーナーになりたいと強く思った」
「あの……気持ちはありがたいですけどお断りさせて頂きます……本当にすいません」 - 3二次元好きの匿名さん21/09/13(月) 20:16:28
やっぱりそうか……彼女くらいの素質がある娘に自分みたいな新人トレーナーは不釣り合いなのだろう。
「あー……気を使わせちゃってごめんな、気にしないでくれ」
「こんな風にスカウトされるのは初めてで本当に嬉しいんですけど……」
「え……スカウトされるのが初めて?」
「はい……そうです」
「君みたいな凄い娘が?」
「全然私なんか凄くないです、寧ろ駄目駄目で……もしかしてトレーナーさんは新しく来た方ですか?」
「そうだけど」
「なら私の来週の模擬レースを見れば分かると思います……私が全くスカウトされない理由が」
「スカウトされない理由……」
「そろそろ寮の門限が……ドリンク本当にありがとうございました!」
そう言って、少し寂しそうな顔で去っていく彼女。
「スカウトされない理由……か」
無意識に口から出た独り言は、すっかりと暗くなった空に溶けていった。 - 4二次元好きの匿名さん21/09/13(月) 20:17:13
彼女が出走する模擬レース当日、メンバーからすれば彼女の実力は頭一つ抜けているはずだが、端から見ても彼女の様子はおかしかった。
顔色が悪く、汗の量も尋常じゃない。よく見ると震えてる上に、足取りも怪しい。
体調が悪いのか、レースを止めた方がいいのではないか、そう思って近くの先輩トレーナーに話しかけると。
「あの娘はいつもこんな感じだ……まあ見てろ」
いつもこんな感じ? 怪訝に思いながら暫く待っていると、レースが始まった。 そしてそこには。
明らかに一人だけ違う様子で走る彼女の姿があった。勿論悪い意味で。
右に左にとふらつきながら走り、他の娘にぶつかりそうになる。ペース配分も明らかにおかしい。まるで何かに怯えるように走っている。練習で見せたような、楽しそうに走る姿はそこには無かった。
模擬レースは何とか勝ったが、彼女の有り余る能力が無ければ最下位になってもおかしくないレース内容だった。
「あの走りじゃこれ以上は無理だろうなあ」
「能力は高いんだろうけどね。レースでは勝てないだろうな」
他の先輩トレーナーからの彼女に対する評価が耳に入る。
能力は凄いが、実戦のレースでは脆い。それが「凄い」ウマ娘と呼ばれた彼女だったのだ。だけどそれでも。 - 5二次元好きの匿名さん21/09/13(月) 20:17:43
彼女は建物の裏で体育座りをしながら、涙を流していた。 自分が来たことに気付くと、此方を向き
「この前のトレーナーさん……私の走り見ましたか?」
「ああ」
「がっかりしたでしょ?」
「全然?」
「嘘を言わないで下さい!!」
大きな声が静寂に響き渡る。
「いつもそうなんです……レースに出ると頭が真っ白になって、自分が自分じゃなくなっちゃって」
「私が走ると周りの走っている娘の迷惑になるし、お客さんもがっかりさせちゃう」
「本番も力を出せるようにいっぱい練習もしたし、緊張を解す方法も出来るだけ試しました……それでも」
「全然良くならなくて、寧ろ悪くなっていく一方で、段々と走ることやお客さんの事が怖くなって」
「最低ですよね……私が全部悪いのに勝手に応援しているお客さんを怖がって」
「だから…………私は一人で走るのが丁度いいんです……スカウトして頂いたのはとても嬉しいですが本当にごめんなさい……もっといい娘がきっと見つかるはずです」
そう言葉を連ねて、再び泣き出す彼女……ああこの子は本当に。
「君は優しい娘だね」
「私が……優しい?」
「一番辛いのは君のはずなのに、ずっと他の人の事を考えている」
「それは違……」
「いや君は優しい娘だ……でも」
「一番大事なのは君自身だ……君が辛くても走ろうとする理由は何?」
「私の走りでお客さんを笑顔にしたいから……今のところは全然駄目だけど」 - 6二次元好きの匿名さん21/09/13(月) 20:18:28
「それなら君が一番楽しんで走らなきゃ」
「確かに……でも」
「君がどんな走りをしても自分はずっと側にいる、側に居て応援し続ける」
才能があるのにそれが出しきれないとか関係ない、自分はあの練習の時に見せた、楽しそうな顔を守りたい。
「だから……君の笑顔をずっと守らせてくれ」
「……ふぇっ?」
「だ……駄目か?」
「いや……そんなことはなくて……だけど突然でびっくりして」
「じゃあ君の担当にしてくれるのか?」
「えっ……担当? あ……そ、そのことですね、そうですよね……えーと……いいですよ」
「良かった……じゃあ自分の名前は◯◯だ、トレーナーって呼んでくれればいいよ」
「分かりましたトレーナーさん、私はメイケイエールって言います、これから沢山迷惑をかけると思いますがどうかよろしくお願いします」
「メイケイエール、こちらこそ宜しくな」
「はい! トレーナーさん」
こうして自分とメイケイエールはコンビを組むことになった。 - 7二次元好きの匿名さん21/09/13(月) 20:19:06
ikze…
- 8二次元好きの匿名さん21/09/13(月) 20:19:14
っていう感じでメイケイエールちゃんがウマ娘化したらこんな感じになるかなと思って書いちゃいました。
初スレ立て&久しぶりのSSなので至らないところもあるかもしれません。怖いです。
メイケイエールちゃんは何時もは真面目で周り想いの良い娘だけど、極度の緊張しいでレースでは実力を出せないって解釈しました。あと真面目だけどどこか抜けているって感じです。
この世界線のソダシちゃんはトレセンの中でもナンバーワンの美少女で、高嶺の花だけど、もっとみんなと絡みたいと思っている娘、ユーバーレーベンちゃんは普段は真面目な学級委員長タイプだけど時折、白いの譲りのお茶目さを見せるとかそんな感じですかね? - 9二次元好きの匿名さん21/09/13(月) 20:20:27
ゲート入るまでは大丈夫なんよ
- 10二次元好きの匿名さん21/09/13(月) 20:22:27
対気性難ウマ娘最終兵器トレーナーきたな
- 11二次元好きの匿名さん21/09/13(月) 20:27:20
スプリンターズステークス、ikzeはメイケイエールちゃんを乗りこなして欲しい……。
- 12二次元好きの匿名さん21/09/13(月) 20:28:37
- 13二次元好きの匿名さん21/09/13(月) 20:32:47
- 14二次元好きの匿名さん21/09/13(月) 20:53:58
- 15二次元好きの匿名さん21/09/13(月) 20:57:12
ikzeがキメた最近の番狂わせって、大阪杯でのモズベッロによるコントレイル撃破と、ソングラインでのルメールとの一騎打ちか
そろそろまた度肝抜いてほしい - 16二次元好きの匿名さん21/09/13(月) 21:06:46
しかしだねぇ、コントレイルは虎戦車とか三式戦闘機とかそういう前提条件さえ整えば強いので決して弱い訳では無いのだから...本当はモズベッロごときに遅れをとる程弱くは無いのだから...