いつだって、あなたに【バレンタインSS・メジロアルダン】

  • 1125/02/14(金) 23:46:17

    ほう、と手のひらに吐息をひとつ。

    その両手に微かな温もりを与える輝きの白雲は、すぐに消え失せて、私は冬の終わりが近づいているのを実感します。

    目の前には、白梅の小さな蕾ひとつひとつがこの瞬間を待ち望んでいたかのように開きかけようとしていました。

    日曜の午後、雲の合間から顔を出す日差しの温もりは私を暖かく包み込みんでいます。

    私は止めていた足を再び動かし、少しだけ口を開けて静まりかえった校門を通り抜けます。

    学校はお休みですが、今日は、今日だから、今日だからこそ私は学校へ行くのです。

    しんと静まりかえる廊下に、ローファーの向かう先はいつ度となく見知ったトレーナー室。

    煌々とした輝きが漏れ出る扉を見て、私のもつ紙袋は、かさかさと少しだけ大きな音で鳴ってしまいます。

    扉の前で、ノックを3つ。

    返ってきたのは、無言の返答だけ。

    あら、と心の中で呟くと共に、いつもとは違う様子に私はどこか懐かしさを覚えます。

  • 2125/02/14(金) 23:47:41

    「失礼いたしますね………トレーナーさん?」

    資料に埋もれた机の上には、カップラーメンの空がひとつだけで、愛しい人は見つかりません。

    代わりに聞こえてくるのは、すうすうと、穏やかな寝息。

    トレーナーさんはいつもの奥のソファーに寝転がり、読みかけの資料を床に散らばせていました。

    汚れひとつない真っ白な、けれど少しだけくたびれたシャツに、整った顔の、少しだけ緩んだ口元。

    なんだか私はおかしく思ってしまって、彼を起こしてしまわぬよう少しだけ上がってしまった口元を手で抑えました。

    拾い集めた資料を机の上において、ソファーに忍び寄った私は彼の顔を覗き込んでみます。

    長いまつ毛の下の深い隈、日本人離れした高い鼻筋に、半開きの口元には少しだけ髭の剃り残し。

    いつもソファーの隣から見るのとは僅かばかり違う彼の顔を、私はいつまでも眺めていたかったのです。

    いつも私が驚かされてばかりだからというのもあるのでしょうか、そんな中不意に私はちょっとしたいたずら心が湧いてしまったのです。

    浮つく心に思わず表情を変えてしまった私は彼の頭を両手で持ち上げ、空いた間隙に太ももを滑り込ませます。

    ふにっとした太ももに当たる、少しだけごわついた彼の髪の毛の感触。

    ちょっとだけくすぐったくて、けれど幸せな温もりを感じてしまった私はやっぱりどこか上機嫌だったのでしょう。

    眼下の少しばかり乱れた彼の髪型を直してあげながら、心に残っていた懐かしさに思いを馳せます。

  • 3125/02/14(金) 23:48:52

    去年のバレンタインも確かこんな感じで膝枕をしたのでしょうか。

    去年の今日、トレーナー室に入っていった私が見たのは、机に突っ伏して寝息をたてるトレーナーさんでした。

    蓄積に蓄積を重ねた疲労と睡眠不足による彼の姿に、割れたガラス細工を重ねてしまった私は、いてもたってもいられず彼をソファーに運んだのでしたが。

    心配からとっさにしてしまった、やったこともない膝枕は、言いようもない気恥ずかしさと興奮で。

    すぐにトレーナーさんを起こしてしまって。

    だから今度こそ今日は、もうちょっとだけーーーこうやって、

    そんな私のちょっとした決意は、トレーナーさんのうぅん……?といういつもより高めの声でかき消されてしまいました。

    寝不足だったとはいえ、やっぱり眠りが浅かったのかもしれません。

    「んぁ、え⁉︎ アルダン⁉︎」

    「おはようございます、トレーナーさん。なんだか疲れた様子でソファーで眠ってらっしゃったので、つい。」

    「………なんか去年もこんなことがあったような…って、あ。」

    「あら、忘れてしまわれたのですか?トレーナーさんは、あの日も幸せそうな寝顔で……」

    「あ、アルダン、その話思い出すのはその、すごく恥ずかしいからちょっとやめよう?ていうかなんかアルダンちょっと怒って」

    「そうなのでしたか。ですが今日の寝顔も、あの日と全く同じでとってもかわいらしかったですよ?口の端にカップラーメンの切れ端がのこっていらして」

    「本当に申し訳ございませんでしたメジロアルダン様必ず今後の生活習慣を改めさせていただきますのでどうかその話はもうやめていただけないでしょうかどうかお願い致します」

  • 4125/02/14(金) 23:50:07

    ちょっとだけ、本当にちょっとだけ不機嫌だった私はトレーナーさんを揶揄ってしまったのですが、久しぶりに見るすごく慌てた様子の彼は、これ以上なく愛おしくて、思わず吹き出してしまったのです。

    そんな私を見て、彼はぽりぽりと頭を掻きながら身体を起こして照れくさそうに私を見ます。

    彼の目線に微笑む私は、ソファーの横の紙袋に手をかけました。

    やっぱり今日は、トレーナーさんに喜んで欲しくて。

    「あのぅ…それで、今日は、その。」

    「はい、そうです。今日は、あなたに」

    私の輝きであるあなたに

    「ハッピーバレンタイン、ですよ?」

    小さな淡い水色を。

  • 5125/02/14(金) 23:51:23

    バレンタインSSなんとか間に合いました!すごいら危なかった…けど間に合ったからヨシ!やっぱり甘々なアルダンは最高ですね!

  • 6二次元好きの匿名さん25/02/14(金) 23:52:34

    おいおい寝る前だってのに口から砂糖が止まらんのじゃが?

  • 7125/02/14(金) 23:53:28
  • 8125/02/14(金) 23:55:20

    感想ありがとうございます!

    >>6

    やっぱり寝る前の甘いものって最高ですよね!

    私はこれで体重が5キロ増えました!

  • 9二次元好きの匿名さん25/02/15(土) 00:02:57

    このレスは削除されています

  • 10二次元好きの匿名さん25/02/15(土) 00:32:07

    あれ?今俺が飲んでるのブラックコーヒーのはずなんだけどな…
    ただただ甘いなおかしいなぁ…

  • 11二次元好きの匿名さん25/02/15(土) 00:35:10

    くそっ…じれってーな
    俺ちょっとやらしい雰囲気にしてきます!!

  • 12二次元好きの匿名さん25/02/15(土) 00:35:54

    >>11

    バカ野郎!これが良いんだろうがッ!

  • 13125/02/15(土) 00:44:04

    感想ありがとうございます!

    >>10

    甘々のコーヒーも良いですが甘々の紅茶も良いですよ…?(ニヤリ)

    >>11

    >>12

    アルトレ曰くこの後いっぱい肉体関係(膝枕)してもらったそうです()

  • 14二次元好きの匿名さん25/02/15(土) 03:02:20

    膝枕っていいよね…

  • 15二次元好きの匿名さん25/02/15(土) 06:55:47

    感想ありがとうございます!

    >>14

    これを育成シナリオでやってるのびっくりですよね…

  • 16二次元好きの匿名さん25/02/15(土) 16:05:47

    良き…

  • 17二次元好きの匿名さん25/02/16(日) 00:09:42

    感想ありがとうございます!

    >>16

    本当にありがとうございます…!

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