- 1二次元好きの匿名さん25/02/15(土) 19:49:59
St.Valentine‘s Day。
たとえ貴方に何があろうとも、この日だけは譲るわけにはいきません。
そう、貴方に嫌われても。
「スティルインラブちゃん、おはよう。今日も精が出るね」
「おはようございます。ええ、今日は特別な日ですから」
「ああ、バレンタインデーだもんね」
雪かきをしているトレーナー寮の守衛さんと、いつものように挨拶を交わします。
いくら、トレーナー寮に入るのは自由とは言っても、各トレーナーの部屋に入るのが自由なわけではありません。
そう、私のような合鍵を貰っている担当ウマ娘を除いては。
吐く息が白く空にほどけていく。
さもありなん、今はまだ午前4時半。
トレーナー寮の周りには、合鍵を貰っていないウマ娘たちが、目当てのトレーナーにチョコレートを渡そうと黒山の人だかり。 - 2二次元好きの匿名さん25/02/15(土) 19:50:19
その中を通って、トレーナー寮に入っていくのは快感以外の何物でもない。
自分に注がれる、羨望と嫉妬の眼差し。
それから、ものものしい雰囲気。
それは、今日がコースと器具の点検日で練習できない日であることと、かかわりがあると聞きます。
かつてバレンタインデーは、各ウマ娘が浮ついた気持ちになってしまい、怪我が続出したとか。
そのため、学園側はバレンタインデーとホワイトデーは理由を付けて練習禁止日にしたとのこと。
かと言って、浮ついた気持ちが収まるわけではないのです。
チョコレートを貰ってもらった娘は、歓喜と恋慕のあまりトレーナーをそのまま食べてしまうことも珍しくない、と。
受け取り拒否された娘は、そのままトレーナーを襲ってしまうことも珍しくない、と。 - 3二次元好きの匿名さん25/02/15(土) 19:50:59
そんなことをつらつらと考えているうちに、トレーナーさんの部屋に着きました。
合鍵を回して入ると、まだ薄暗い室内。
トレーナーさんの匂いで、肺がいっぱいになります。
リビングに荷物を置いてから覗いた寝室には、愛しい人の穏やかな寝息。
電気を点けてそっと頬をなぞるが、起きる気配はない。
いつものように制服を脱いで、靴下にライムグリーンの下着姿になると、トレーナーさんの隣へ潜り込む。
「おじゃまします」
トレーナーさんは、トレーニングが休みの日には6時まで起きないので、あと1時間は堪能できます。
彼のパジャマのボタンを外し、その鋼のような胸に顔を埋める。
身体を寄せれば、その手が自動的に抱き締めて包み込んでくれる。
いつの間にか、5時45分。
名残惜しいですが、そろそろ起きなければなりません。
身体を起こすと、尻尾の毛を一筋抜いて、彼の左手薬指に巻き付けます。
「愛してます、トレーナーさん。……今日は、ずっと私と一緒にいてくれますか?」
「うーん」
言質は取りました。
いつものように、キッチンに向かいながら下着の上からエプロンを着けます。
和食の方が好きなトレーナーさんのために、準備は怠りません。 - 4二次元好きの匿名さん25/02/15(土) 19:51:26
冷蔵庫からアジの開きを取り出し、焼き網へ。
ホウレンソウはさっと湯がいてお浸しに。
卵を割って、フライパンで玉子焼きを焼き始めます。
昨日のタイマー通りに炊飯器が動き、御飯が炊きあがるにおいがしてきます。
鍋を火にかけて、今日のお味噌汁は葱とお豆腐。
朝食の準備ができあがると同時に、愛しいあの人が起床します。
朝の挨拶を交わすと、ダイニングに並んで座って朝食。
ちょっと少なめにして、朝食後にはリビングに移動して2人きりのバレンタイン。 - 5二次元好きの匿名さん25/02/15(土) 19:51:56
「はい、どうぞ。ハッピーバレンタイン」
トレーナーさんには、ブランデーを数滴入れた、大人のミルクティー。
自分のは、お砂糖少なめミルク多めのミルクティー。
今朝方焼き上げた、チョコレートマフィンをお茶菓子に取り出す。
「ありがとう。……学校は?」
「体調不良でお休みです♪」
「……そんなことだろうと思ったよ。しょうがないなあ」
苦笑しながら、トレーナーさんはミルクティーを口に含み、マフィンを頬張る。
いつものように、幸せそうな笑顔。それを見ていると、こちらも幸せになります。
気が付けば、10個もあったマフィンがペロリ。
「御馳走様。美味しかったよ」
「御粗末様でした」
トレーナーさんに褒められたので、機嫌は鰻上り。
今なら、天皇賞春だって大差勝ちできそうです。
そこに、予想さえしなかった嬉しいお返しが。 - 6二次元好きの匿名さん25/02/15(土) 19:52:25
「いつもスティルにはお世話になっているからね。お礼になんでも1つ、お願いごとがあればかなえてあげるよ」
「なんでも、ですか?」
「そう、なんでも。と言っても、俺にできないことはダメだけど。あと、『お願い10個かなえて』とかもダメ」
微笑みながら、そんなことを言ってくれるトレーナーさん。
……そう言えば、一度やってみたかったことがあったのでした。
エプロンを脱ぎ捨てると、立ち上がってそのままトレーナーさんの正面へ。
「スティル?」
そのまま、トレーナーさんの正面から太ももにまたがり、ゆっくりと腰を下ろします。
当然、両手はトレーナーさんの背中に回して抱き締めて。
その鎖骨を、そっと一舐め。
……たくましくて頼りがいのある身体。
……天井の美味さえも凌駕する、肌の味。
……何よりも芳しい男性の香り。
……誰よりも愛おしいかんばせ。
……耳朶を打つ、素敵なささやき。 - 7二次元好きの匿名さん25/02/15(土) 19:52:52
「で、スティルの望みはこんな風に抱いて欲しい、って?」
「いいえ。この姿勢で今日一日ずっと一緒にいてください。離れませんから」
「それだと、外に出られないよ。下着姿のスティルをこうして抱き締めているんだから」
「出なくて結構です。ずっとこの部屋にいましょう?」
「しょうがないな」と苦笑しながら、穏やかに頭を撫でてくれるのが心地よい。
……ああ、好き、すき、スキ。
熱い吐息が、唇から溢れ出す。
「でも、トイレのときはダメだからね」
「えっ、ダメですか? 未来の妻に隠すところも隠されるところもないと思うのですが」
「掛かりすぎ」 - 8二次元好きの匿名さん25/02/15(土) 19:53:29
額に軽くデコピンをお見舞いされる。
それから、その部分を撫でてキスしてくれた。
……だから、トレーナーさん大好き。
「でも、こうしてまで外には出したくないってことだよね」
トレーナーさんが窓の外を見る。
微かに聞こえてくる、黄色い声。
おそらく、寮の前に陣取っていたウマ娘たちが、恋しているトレーナーに嬌声を上げているのだろう。
「はい」
「じゃあ良いよ。スティルのしたいようにしてあげる」
やさしい笑顔。
どちらからともなく唇が近づき、口づけを交わす。
ミルクティーの、恋の味。
「では、シャワーでも浴びに参りましょうか?」
「……それが狙いだった?」
「ええ」
イタズラっぽく微笑すると、つられてトレーナーさんも笑った。
それから、私をしっかりと抱き上げて立ち上がる彼。
トレーナーさんがバランスを取りやすいように、脚を腰に回し、その首に腕を回し直した。 - 9二次元好きの匿名さん25/02/15(土) 19:53:48
愛しています、トレーナーさん。
誰よりも。
何よりも。
今までも。
これからも。
翌日の朝まで、トレーナーさんにずっと密着して至福の時を過ごしました。
外泊届の提出が遅れた理由は以上です。 - 10二次元好きの匿名さん25/02/15(土) 19:54:04
- 11二次元好きの匿名さん25/02/15(土) 19:56:25
- 12二次元好きの匿名さん25/02/15(土) 19:59:28
- 13二次元好きの匿名さん25/02/15(土) 20:02:41
ほう、裸エプロンならぬ下着エプロンですか...
- 14二次元好きの匿名さん25/02/15(土) 20:04:44
>>チョコレートを貰ってもらった娘は、歓喜と恋慕のあまりトレーナーをそのまま食べてしまうことも珍しくない、と。
>>受け取り拒否された娘は、そのままトレーナーを襲ってしまうことも珍しくない、と。
なんて…なんて爛れた学園なんだ…
スティルはスティルで下着姿で添い寝するわ下着エプロンで料理し始めるわ一日中ひっつく宣言するわ挙げ句の果てにだいしゅきほーるどみたいな体勢でシャワーにテイクアウトさせるわなんて…(以下略)
- 15二次元好きの匿名さん25/02/15(土) 20:13:10
とても よかった
- 16二次元好きの匿名さん25/02/15(土) 20:13:47
- 17二次元好きの匿名さん25/02/15(土) 20:15:27
- 18二次元好きの匿名さん25/02/15(土) 20:18:35
- 19二次元好きの匿名さん25/02/15(土) 20:21:28
うーんすんごい甘いんだけどなんか食べたら戻れない系のチョコを食べてしまった気分
- 20二次元好きの匿名さん25/02/15(土) 20:32:59
- 21二次元好きの匿名さん25/02/15(土) 23:49:51
ほしゅ
- 22二次元好きの匿名さん25/02/16(日) 08:32:49
ありがとうございます。これでもかなり表現控えめにしているのですがえっちでしょうか。
ありがとうございます。今後ともよろしくお願いいたします。
ありがとうございます。エプロンは良い文明だと思うのです。
ありがとうございます。トレセン学園が爛れていないわけがないのです。
ありがとうございます。今後も精進しますね。
ありがとうございます。「いつものように」ですから。
ありがとうございます。ちょっと判定厳しくないですか? せめてワンストライクくらいになりませんでしょうか。
ありがとうございます。もちろん、日常の一部なのです。ちょっとマンネリ気味。
ありがとうございます。そんなスティルがクトゥルフな皆さんの仲間みたいな。
ありがとうございます。スティルが合鍵を貰ったら通い妻をしていないわけがないと思うのです。
- 23二次元好きの匿名さん25/02/16(日) 12:00:30
- 24二次元好きの匿名さん25/02/16(日) 18:50:59
これは独占欲発動してますわ
- 25二次元好きの匿名さん25/02/16(日) 23:05:08
- 26二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 08:38:46
もうほぼ結婚済では
- 27二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 18:21:08
通い妻というか半同棲
- 28二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 21:07:44
- 29二次元好きの匿名さん25/02/18(火) 02:13:10
もしユニちゃんと同室なら、お互い触発されてそう
- 30二次元好きの匿名さん25/02/18(火) 08:06:00
ありがとうございます。ユニちゃんはあれで純粋乙女のイメージがあるので、スティルに染められてそうな気もします。