- 1二次元好きの匿名さん21/09/13(月) 22:40:44
ナリタブライアンがトレーナー室に入ると、彼女のトレーナーは机の上に突っ伏して寝ていた。
「はあ…まったく、いつも口煩く体調管理は厳密にしてくれと言うくせにな…」
そうつぶやくと、ブライアンは机の向かい側へと座った。
普段通りであればこの後は一通り翌日の予定を組んだうえで解散するのだが、先にトレーナー室に戻っていたトレーナーは疲れがたまっていたのか、しっかりと寝てしまっていた。
(そうか、最近私はアンタに頼ってばかりだったな…)
URA優勝後、ブライアンは海外のレースにも参加するようになった。
参加のための手続きその他はトレーナーが行っていたため、ブライアンはトレーニングに集中して取り組んでいた。
ブライアンはブライアンの、トレーナーはトレーナーのやるべきことをやる。そのための分業とも言ってよい関係だった。
(………)
トレーナーの顔を見つめる。
時計の針の音だけが響く。
いつもなら会話が続く部屋で、静寂に包まれる。 - 2二次元好きの匿名さん21/09/13(月) 22:42:25
物思いに耽る。トレーナーと出会った時のことを思い返す。
(思えばアンタはとんでもなくしつこかった。あれだけ断って尚構ってきたのはアンタだけだった)
そして、本心を語った相手も、姉貴以外では初めてだったのかもしれない。
思えば、もう3年以上の付き合いとなっている。
ナリタブライアンの中ではもはやトレーナーのいない生活は想像しにくくなりつつある。
(私はアンタに何を見ているんだ?)
強者と戦うことを至上としてきたブライアンだが、最近ふとした時に思うことがある。
頂を目指すのはよい。しかし頂にたどり着いたとき、私はどうなるのか。
マヤノトップガンのことを思えば、追う立場から追われる立場になるのだろうとはわかるのだが、それだけではない。
ふと、終わりのことを考えてしまうのだ。
走り終えたとき、私は何をしているのだろうか。燃え尽きるのだろうか。
その時私の渇きは、潤い、満たされているだろうか。
わからない。 - 3二次元好きの匿名さん21/09/13(月) 22:43:23
ふと顔を見続けていたトレーナーがうなり始めた。
「うう…ブライアン…行かないでくれ…」
(トレーナー…)
ブライアンは自分でもわからないうちにトレーナーのそばへと近寄った。
「ブライアン…」
そんなトレーナーの横顔を見るうちに、顔が緩む。
「何、アンタのそばを勝手に離れることはしないさ。これでもアンタの側は楽しいんだ…」
静かな時が流れる。 - 4二次元好きの匿名さん21/09/13(月) 22:44:17
「肉を…」
「…?」
「ブライアン…もう…肉を食べすぎるんじゃない…」
「…あ?」
「ブライアン…海外の肉がおいしいのは分かった…1週間連続の店食いはやめてくれ…行かないでくれ…ハヤヒデさんに正座させられる…ブライア、ンガァ!?」
つい手刀が出てしまった。 - 5二次元好きの匿名さん21/09/13(月) 22:44:54
時計の針が鳴る。しかしもう静寂は過ぎ去った。
「んんんん…あっ、すまないブライアン」
寝ぼけ眼を擦ってトレーナーが起き上がる。いつもは整えている髪に変な形がついている。
あと、押し付けて寝たせいか額が若干へこんでいる。
「いい夢は見れたか?トレーナー…」
「ん?あ、ああそうだな。んー、ちょっと…そうだな!」
若干しどろもどろになるトレーナーをみて、つい顔がほころぶが、いつもの調子を取り戻す。
「おい、もういい時間だから夕食を食べるぞ」
「ああ…何を食べるんだ?」
「たまには…たまにはだが、野菜が食べたくなった。料理してくれ」
(今は、この関係でいい。いずれわかるだろう)
後日姉貴がやたらニヤつきながら話しかけてきたが、野菜のことだろうな。 - 6二次元好きの匿名さん21/09/13(月) 22:47:19
いぃ...
- 7二次元好きの匿名さん21/09/13(月) 22:47:45
いいぞ
- 8二次元好きの匿名さん21/09/13(月) 22:48:25
グッド
- 9二次元好きの匿名さん21/09/13(月) 22:48:47
良いものを見れた
- 10二次元好きの匿名さん21/09/13(月) 22:49:52
浄化されて何も残らなかったわ
- 11二次元好きの匿名さん21/09/13(月) 22:50:28
初SSってわけじゃないけどスレ建てして投げたのは初でござんす
ちなみにこのブライアンさんは無意識にトレーナーさんを止まり木としてみています
いずれ立ち止まった時、その身を寄せるための止まり木としてみてる節があります - 12二次元好きの匿名さん21/09/13(月) 23:11:35
- 13121/09/14(火) 06:45:01
あの後どこから聞きつけたのか、マヤノトップガンとカレンチャンが揃って練習中の私に突撃してきた。マヤノはともかくカレンは本当にどこから聞きつけたんだ。
本当にトレーナーの(愛の籠っただのなんだの言ってた気がする)手料理を食べたのかと聞かれたが、練習の時間だったので素直に答えた。
黄色い声が上がった。
そのあと何かあったかを聞かれたが、特に何もなかったといった。
信じられない者を見る目をされた。何故だ。
会長にもその件について色々と聞き込みをされた。
妙に生暖かい目をされた気がする。何故だ。 - 14二次元好きの匿名さん21/09/14(火) 07:28:51
天然たらしブライアンはいいぞ
- 15二次元好きの匿名さん21/09/14(火) 10:12:33
(気が強目の美人さんが言い放つ「普段食べられないものでもあんたの作った料理だったら食える」って壮絶な殺し文句なのでは?)
- 16二次元好きの匿名さん21/09/14(火) 10:34:02
そんなこと言われたら3食全部手料理作ってあげたくなっちまうな…
- 17二次元好きの匿名さん21/09/14(火) 10:54:23
いいね…いい…
よし
料理作れるようになってくる - 18121/09/14(火) 20:53:37
また思いついたから投げます。某ウララ(21)へのリスペクトを込めて…
- 19121/09/14(火) 20:54:42
「あー!ブライちゃんだー!」
夕暮れ時のトレセン校舎内をブライアンとトレーナーが歩いていると、廊下の向こう側からぶんぶんと手を振りながら走ってくるウマが一人。
「走っちゃだめだぞーウララ!おや、久しぶりですね。アオハル以来かな?」
遅れてウララのトレーナーもやってきた。ウララはそのままブライアンの胸元へと突っ込み抱き着いた。
「おっとっと!えへへ、久しぶりだねー!海外どうだった?楽しかった?」
「ああ、楽しかったぞ」
口数は少なくとも、表情からは久しぶりの友人との再会を喜んでいるようだ。
「ここで会ったのも何かの縁、久しぶりに夕食でも一緒にどうでしょう?」
ウララトレが提案してくる。
「ええ、良いですよ。ブライアン、問題ないな?」
「ああ。それとウララ、そろそろ離れてくれ」
ギューッと抱き着いたままのウララがブライアンから離れた。いつも通りのまぶしい笑顔だ。
「ブライちゃんが元気で私もうれしいよ!何食べる?にんじん?お肉?」
「…久しぶりに肉を山ほど食べたいな」
「ほどほどにしてくれよー…」
こうして、ふたりとふたりが四人になって食事に出かけることになった。 - 20121/09/14(火) 20:56:13
「ウララねー、最近ピーマン食べれるようになったよ!ブライちゃんはお野菜食べられるようになった?」
「あー…そうだな。ちょっとは食べるな」
「えらい!ブライちゃんもお野菜食べるともっと強くなるってみんな言ってたよ!」
「…そうだな。善処しよう」
コミュニケーションが取りにくいことで有名な(あまり有名になってほしくはないが)ブライアンも、ウララの勢いには負けてしまうようだ。
「いやはや、ウララちゃんには敵わんなあ、ブライアン」
「…うるさいぞ」
そっぽを向かれた。
今日の夕食はステーキ屋。目の前に分厚いステーキが到着し、皆静かに手を合わせて食べ始めた。 - 21二次元好きの匿名さん21/09/14(火) 20:56:29
- 22121/09/14(火) 20:58:06
「ハハハ、そちらも相変わらずですね。聞けば海外遠征でも上々の結果を残しているそうじゃないですか」
ウララトレは相変わらずウララのトレーニングを続けているそうだ。秋月理事長からの評価も高い。
「ええまあ。海外の気候と日本の気候、バ場の癖など色々と違いがある分調整には苦戦していますがね」
「いえいえ、それでも結果を残しているというのは凄いことです。ウララもダートレースで良い結果を残していますが、やはり担当の子がしっかり結果を出せているというのはトレーナーとして喜ばしい限りですね」
そう言うと、ウララトレはウララへと目を向ける。ウララは美味しそうにちょっと薄めのステーキをほおばる。
対してブライアンはトレーナーたちの倍ほどあるステーキに手際よくナイフを入れては口へと運んでいく。
「むぐむぐ…そういえばブライちゃんのトレーナー、最近ブライちゃんにお料理作ってるんだって?」
流石トレセン、うわさが広まるのが早い。
「いいなー、私もおいしいにんじん料理食べてみたいなー」と、言いながらちらりとウララトレを見る。
「り、料理は頑張って覚えるから…もうちょっと待ってね」
「わーい!やくそくだよ!」
まぶしい笑顔。さながらタキトレの貌の如く。いや彼女はちょっと違うか。
ともかくあまりの眩しさに焼かれそうだ。 - 23121/09/14(火) 20:58:56
「トレーナーの料理は…美味いぞ」
肉を食べながら付け合わせの野菜をにんじん以外悉くトレーナーの皿にスライドさせていくブライアン。
そんなところに手際の良さを発動させないでいただきたい。
「なれたら他所の店の野菜も食べてほしいんだが…」
「…………善処する」
やはりそっぽを向かれた。まだ野菜は苦手なのだろうか。
「…ふうん。まあ仲がよさそうで何よりです」
心なしかウララトレが温かい目をしている気がする。
「ウララー、おなかいっぱいー。美味しかったねー」
ウララが食べ終わる。それを見て残り3人もペースを上げて食べ始める。
一番量が多いのに一番早く食べ終わるブライアン。いつもの光景である。 - 24121/09/14(火) 21:00:48
日もだいぶ傾いて空に星が瞬き始める時間、公園を通っているとウララが突然ブライアンの手を握って走りだした。
「ちょっと秘密のおはなししてくるー!」
「早く戻ってきなよー」
二人のトレーナーは近くのベンチで待つことにした。
ちょっとだけ離れた場所で、ウララはブライアンに話しかける。
「ねえねえ、ブライちゃんって夢はある?」
「夢…目標…?強い者たちと戦うことは今でも求めているな」
「んー、それもそうだけどねー」
ウララは草むらに座った。ブライアンもその隣に座った。
風が吹く。少し花の香りがする。 - 25121/09/14(火) 21:03:10
「ウララね、先生になりたいんだ。トレセンでいろんな子に出会って、助けてもらって。今度は私が恩返ししたいんだ」
遠くを見つめるウララの瞳は決意に満ちている。
「そんな感じの夢、ブライちゃんはある?」
「…夢、か…」
トレセンに所属することになり、様々な人と出会った。再会した姉貴、アマさん、マヤノ、チケット、タイシン、アオハルで共に戦った者たち。ウララ。
そして、トレーナー。
「…まだわからん。わからんが…」
一息つく。
「走り続けて、立ち止まったときに…その時にわかるだろうな」
「そっかー。ウララ、ブライちゃんを応援するね!」
風が吹く。夏の終わりが近づいている。
「ああ、私もウララを応援する」
風が吹く。二人のウマ娘の未来へ向かって。 - 26121/09/14(火) 21:14:02
「お、戻ってきた。おーい、どんな話してたんだー?」
ウララとブライアンが並んで戻ってくる。
「内緒だ」
「ひみつー!」
「そっか。じゃ、帰るとするかー!」
「おー!」
こうして何気ない日常が過ぎていく。戦いを続けるブライアンにとっての束の間の休息。 - 27121/09/14(火) 21:36:18
- 28二次元好きの匿名さん21/09/14(火) 21:39:26
- 29121/09/14(火) 21:41:13
あとはブライアンさんの良さがちょっとでも伝わればいい…それだけなんだ…
ブライアンさんはカッコよくてぶっきらぼうだけど優しくて可愛いぞ… - 30二次元好きの匿名さん21/09/15(水) 07:37:51
- 31二次元好きの匿名さん21/09/15(水) 11:25:59
(ブライさんって呼ぶんだ・・・初めて知った・・・)
- 32二次元好きの匿名さん21/09/15(水) 11:41:37
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