- 1二次元好きの匿名さん25/02/16(日) 15:00:17
- 2二次元好きの匿名さん25/02/16(日) 15:10:07
生き残るバンドはただ一つ!
戦わなければ生き残れない! - 3二次元好きの匿名さん25/02/16(日) 15:14:37
学歴最弱
喧嘩最強のトゲナシトゲアリ - 4二次元好きの匿名さん25/02/16(日) 15:25:22
- 5二次元好きの匿名さん25/02/16(日) 15:47:28
ギターヒーローはどの陣営も配信で知ってそう
- 6二次元好きの匿名さん25/02/16(日) 15:47:42
(リアルでの)売り上げ最強の結束にボーカルの吸引力最強のMyGO、ってとこか
- 7二次元好きの匿名さん25/02/16(日) 15:56:52
作中の実力(技術や実績)は
ムジカ→トゲトゲ→結束バンド→MyGOになるのかな - 8二次元好きの匿名さん25/02/16(日) 15:59:25
こんだけ豪華にやるなら飛入りの大物バンドもありそう
- 9二次元好きの匿名さん25/02/16(日) 16:05:41
そんなに知名度もないからバイトしてる謎の五人組として出しやすそうなトゲトゲよ
- 10二次元好きの匿名さん25/02/16(日) 17:06:53
高校生相手だとかっこいいこと言いながら力強く歌う様を見せつけるやべーやつな先輩としてのニナイセリを俺は見たいよ
- 11二次元好きの匿名さん25/02/16(日) 17:22:30
この4バンド絡ませるってどうゆう話の展開になるんだ...
とりあえずフェスとかか? - 12二次元好きの匿名さん25/02/16(日) 17:29:03
ムジカとトゲトゲは当分、或いは二度と大舞台ではやれないくらいの撤退してるしMYGOはまだまだ駆け出しでしかないから結束が一番成功してるという事実。ぶっちゃけフェスで集まるとかどう設定こねくり回しても難しいんだよな
- 13二次元好きの匿名さん25/02/16(日) 17:36:28
トゲトゲが年上組になるの脳がバグる
- 14二次元好きの匿名さん25/02/16(日) 19:17:09
他4人はともかく仁菜は放送終了後で成人してる…
- 15二次元好きの匿名さん25/02/16(日) 19:34:35
結束バンドとトゲトゲはRiNGでライブしますで集まれる
ムジカは着地次第やな - 16二次元好きの匿名さん25/02/16(日) 20:18:03
- 17二次元好きの匿名さん25/02/16(日) 21:10:11
燈、郁代、ニナ、初華
ボーカル勢はあんまり話弾まなさそう - 18二次元好きの匿名さん25/02/16(日) 21:12:43
ギター勢
喜多、桃香、愛音、楽奈、初華、睦
桃香さんの化けの皮はすぐ剥がれて情けない姿を見せてそう - 19二次元好きの匿名さん25/02/16(日) 21:14:45
キーボードとかいう家庭に問題あるやつのポジ
- 20二次元好きの匿名さん25/02/16(日) 21:15:53
対バン発表された時にも散々言われてたけど愛音が地雷踏まないかヒヤヒヤするやつ
- 21二次元好きの匿名さん25/02/16(日) 21:30:58
このメンツなら踏むのはピンクより水虫の人か失言王なんだよなぁ
- 22二次元好きの匿名さん25/02/16(日) 21:49:36
なんとなく書いてみたけど需要ある?
ガルクラの面子しか出てこないヤツだけど - 23二次元好きの匿名さん25/02/16(日) 21:51:21
聞こうじゃないか
- 24二次元好きの匿名さん25/02/16(日) 22:00:06
その日、河原木桃香は少し珍しいものを観た。
いつも練習に使っているのレンタルスタジオのロビーでじっとスマホを見つめる井芹仁菜の姿である。
勿論、仁菜がスマホを観ていること自体は別に珍しい事でも何でもない。ただ、その様子がおかしい、なにかを思いつめているようなそんな面持ちである。
「おい仁菜、なに観てんだ」
「……え、あ、桃香さん」
桃香が声をかけるとワンテンポ遅れて仁菜がイヤホンを外す。
其処から漏れるギターの音色に興味を惹かれて、桃香はスマホを覗き込んだ。
「あぁ、なんだギターヒーローの動画見てたのか」
ネットでは有名な、顔出しもしていないギター奏者。色々なバンドの様々なな楽曲をほぼ完璧に弾いて熟すその技術は二度のメジャーデビューを経験した桃香をして舌を巻くレベルだ。
「ったく、前も言ったろソイツはお前とはレベルが違い過ぎるから参考にならないって」
仁菜がギター上達の為に色々な演奏を参考にしようとしているのを桃香は知っている。
ただ、ギターヒーローはちょっとダメだ。おそらく膨大な練習量に支えられたであろうテクは仁菜とは文字通り次元が違う。人前で演奏できるようになってきたとはいえまだまだ未熟者な仁菜はもっと他にやるべき事が山ほどある。
「いえ、そうじゃなくて」
「ん?」
いつもならここで「わかってますよ」みたいな感じで飛んでくるトゲが一切ない事に桃香は更に訝しむ。
はて、これはどういうことかと改めて動画を確認するが、別になにか変わった事はない。ギターヒーローがいつも通りにカバー曲を流しているだけだ。
演奏している曲は……
「KillKiss……」
それは史上最速で武道館公演を果たしたマスカレードバンド『Ave mujica』の曲。 - 25二次元好きの匿名さん25/02/16(日) 22:01:31
「解散、しちゃったんですよねムジカ」
「まぁ、な」
「武道館にまで行ったのに」
「別に其処は関係ないだろ」
「でも!」
仁菜の泣きそうな声。
仁菜に、いや自分達『トゲナシトゲアリ』にとって武道館は大きな目標だ。
ムジカは、そんな自分達の目標をまるで通過点だとばかりに駆け上がってゆき……そして、一か月前に世間を騒がせた突然の解散劇。
ただでさえ注目されていた武道館公演で仮面を脱ぎ去って注目を集め、多数のメディアで華々しい活躍をしながらも全国ツアーの最中で砕けるように消えてしまった。
それが仁菜の目にどう映るのは桃香には何となくわかる。
「私達も、ああなっちゃうんですかね」
「ムジカとあたしらは違うだろ」
「それは…そう、なんですけど」
『Ave mujica』は仁菜にとって目標を達した後の自分達の姿に見えたのだろう。
武道館にたどり着いたとしてもそこで終わりではない、その後も続きがある。
では、どこまで続く?
ずっと続ける、一生やる、おばあちゃんになってもバンドをやろう。そういう希望と願いを抱いて走り続けて……けど、それを果たせる者はほんの一握りだ。
仁菜はもう子供ではない、現実の苦さを知りつつある。ならばこそ、あり得るかもしれない姿を観れば己の中にトゲを刺してしまうのは当然の事だった。
「あのなぁ、仁菜」
「へ? へうっ!?」
桃香は溜息を吐きながら仁菜の髪をおもっきりわしゃわしゃを掻き乱す。
「ちょ、ちょっと桃香さん!」
「お前、そーゆーのを悩む段階じゃないだろ。この前のライブだってなんとかなったばっかりだってのに」 - 26二次元好きの匿名さん25/02/16(日) 22:03:00
『トゲナシトゲアリ』の現状は芳しくない。自分たちの意志と意地でメジャーの舞台から降りたとはいえ、世間的にはそれはデビューに失敗したと映っている。
その悪評を払拭する為に目一杯藻掻いてる段階だ。
「で、でもあそこの店長さん褒めてくれましたよ!」
「そりゃあ、星歌さんはそう言ってくれたけどさ」
下北沢でスタジオを経営する古い知り合いの顔を思い浮かべて、桃香は苦い顔をする。
『ダイヤモンドダスト』の頃に知り合って色々と……ほんっとぉーに色々とあって未だに苦手意識が抜けていない相手だが音楽に関しては信頼が置ける為、あの人に褒められたというのは良い傾向だ。
「いいか、武道館に行くには今のあたしらには何にも足りてない。知名度も実力も、資金だって空っけつだ」
逆を言えば『Ave mujica』はどれほどの手段を駆使してあそこまで上り詰めたのだろう。
運でどうにかなる程甘い場所じゃない、実力さえあればいいという場所でもない。今の『トゲナシトゲアリ』では全員の命を砕いても尚、『Ave mujica』には届かない。
「未来を見るな仁菜、今に集中しろ」
「桃香さん」
「未来を見て、ああしなきゃいけない、こうなったらどうしようななんて考えだしたらそれに潰されちまうぞ」
それはかつての桃香だ。
仲間達と一緒に夢を見て、その夢に向かって走り出して、これが叶わなかったらどうしよう、皆の人生を壊してしまったらどうしようと恐怖と不安に溺れていたあの時。
桃香はそれに負けてしまった、自分の「間違っていない」を貫けなかった。
誰が何と言おうと『ダイヤモンドダスト』を一度壊してしまったのは自分だ。その痛みはきっとこの先もずっと残り続けるのだろう。
だからこそ、桃香は仁菜に一つだけ教える事が出来る。
「仁菜、歌い続けろ。喜びも悲しみも怒りも、なにもかもぶち込んで歌え。あたしたちにはそれしかできないし、それ以外を考える必要なんかない」
それが全てを解決する訳じゃないのは解っている。
未来は何時だって不明瞭なのが当たり前で、どうしようもない事が沢山あるのだから。
けど、桃香には一つだけ確信を持って言える事がある。 - 27二次元好きの匿名さん25/02/16(日) 22:05:00
「仁菜があたしに人生を賭けるっていうなら、あたしは残りの人生全部仁菜にやる」
運命を共にすると誓った仲間も、帰る家も捨てて迷子になった桃香の前に現れた燈。
それを見失わない限り、桃香は奏で続ける事が出来る。何があっても、それを手放す事も絶やす事もない。
きっと『トゲナシトゲアリ』の皆も同じだ。そうでなければしょっちゅう喧嘩と煽りが飛び交うこのロクデナシ共が今も続くものか。
今の自分達は間違っていない事を積み重ねればそれがいずれ未来になる、なら未来なんて見る必要はない。 - 28二次元好きの匿名さん25/02/16(日) 22:05:19
「……はい!」
仁菜の声に熱が戻る。色々と面倒なヤツだが、こういう風に火が付きやすいのは長所の一つだ。
桃香も釣られて笑い、火が付いたついでにちょっとケツを叩いてやる事にする。
「ま、どうしても未来を見据えるって言うなら、まずはこいつを目指さないとな」
仁菜のスマホに映ったギターヒーローを指さす。
「え、ええええ!? だって桃香さん、私とこの人じゃレベルが違うって!」
「なんだよ、武道館行くんだろ? だったらギターもっと上手くならなきゃ」
「それはそうですけど!」
ころころと変わる仁菜の表情に桃香は加羅加羅と笑う。
完全にいつもの調子に戻ってきたところで、なじみの声が聞こえてきた。
「おーい、ニーナー桃香さーん!」
「すいません、ちょっとおくれました」
「だからあそこで近道すればよかったのよ」
面子が揃った事で仁菜と桃香は互いに視線を合わせる。
「よしっ、じゃあ始めるか」
「はい!」
いつかの今が祝福の歌-Ave mujica-として高く届くように、彼女たちは今日も叫び続ける-GIRLS BAND CRY-のだった。 - 29二次元好きの匿名さん25/02/16(日) 22:05:49
とりあえずこれでお終い
- 30二次元好きの匿名さん25/02/16(日) 22:14:39
いい出来だが、一か所仁菜と燈を取り違えてる箇所がないか?w
- 31二次元好きの匿名さん25/02/16(日) 22:18:04
- 32二次元好きの匿名さん25/02/16(日) 22:19:15
- 33二次元好きの匿名さん25/02/16(日) 22:20:31
井芹仁菜もとい理名さんの歌うKillKissも聴いてみたいな
- 34二次元好きの匿名さん25/02/16(日) 22:36:23
なるほど、了解
- 35二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 06:46:43
- 36二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 12:16:12
- 37二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 12:41:19
ss良かったですわ
改めて考えると傍目に見たらムジカはとんでもないムーブしてんな… - 38二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 14:01:52
- 39二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 14:29:28
格なら唯一プロデビューしてない、まだまだ駆け出しでしかないmygoがダントツ下。ついでに言えばお爺様に尻拭いしてもらったこと含めてトゲトゲなんか比じゃないくらいムジカはやらかしてるよ
- 40二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 14:42:26
このレスは削除されています
- 41二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 17:07:35
- 42二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 18:33:25
- 43二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 18:35:15
ロックというか事故でしょ
- 44二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 18:57:46
ムジカは最終回までにもうちょっと上向くかもしれないから…
- 45二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 19:14:24
- 46二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 19:18:09
- 47二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 19:22:06
トゲトゲがプロを辞めたのは仁菜の思想、考えに共感して自分たちのやり方を最後まで貫き通すって意味だから、ムジカの解散と同列に考えることはできないんじゃあないかな
- 48二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 19:26:49
解散とメジャー落ちはかなり違うだろ
- 49二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 19:27:48
このレスは削除されています
- 50二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 19:29:50
歌詞や曲調の方向性が結構違う感じはするね
それぞれの作曲・作詞担当が集まったらどんな会話になるかちょっと面白そうだ - 51二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 19:38:39
その辺一切公表せずの急な解散で当日のライブやツアー、今後のスケジュール全てをぶっちしたのがムジカだからな
- 52二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 19:49:47
- 53二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 19:55:19
結束バンドは面白いことに他の三つを混ぜて三で割った感じなんだよな。ほどほどに厨二でほどほどに真っ直ぐでほどほどに尖ってる
- 54二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 19:58:05
ポジションとしては初期衝動満載のバリバリインディーバンドだしな
- 55二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 20:00:04
他世界のバンドをクロスさせても気になるな
- 56二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 20:13:55
このレスは削除されています
- 57二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 20:21:18
このレスは削除されています
- 585625/02/17(月) 20:25:42
すまんガールズ縛りっぽいの忘れてレスしちったわ
- 59二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 20:29:17
そうやなそうだったはすまん
- 60二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 20:34:12
北高軽音部
放課後ティータイム
Girls Dead Monster
プラスマジカ
Poppin'Party
Baby's breath
結束バンド
MyGo!!!!!
トゲナシトゲアリ
SSGIRLS
Ave Mujica
これでフェスやってほしい - 61二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 20:53:05
- 62二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 21:22:36
- 63二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 21:50:30
- 64二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 23:02:06
どっちも歌詞の中の一人称が僕って所まで一緒だしかなりシンパシー感じそう
- 65二次元好きの匿名さん25/02/18(火) 07:03:14
- 66二次元好きの匿名さん25/02/18(火) 07:29:43
- 67二次元好きの匿名さん25/02/18(火) 08:49:27
- 68二次元好きの匿名さん25/02/18(火) 10:34:45
ぼざろはけいおんとかの方が近そう
- 69二次元好きの匿名さん25/02/18(火) 12:25:10
脱退といえばモモカンだが、ルパ智も9話みると、ハードルが高すぎて「お前とバンドするの苦しいよ」状態で何度かバンド組んでは解散してるっぽいんだよな
だからこそ新川崎と組んで自分たちの居場所であるトゲナシトゲアリを結成した
ムジカの8話のあらすじだと海鈴も”居場所”を求めていると考えられるねぇ
Story | TVアニメ「BanG Dream! Ave Mujica」公式サイトTVアニメ「BanG Dream! Ave Mujica」公式サイトのストーリーページです。「BanG Dream!(バンドリ!)」プロジェクトのTVアニメ新シリーズが2025年1月2日(木)放送開始。anime.bang-dream.com - 70二次元好きの匿名さん25/02/18(火) 19:00:30
- 71二次元好きの匿名さん25/02/18(火) 20:17:53
ボーカル組が天才ばかりだから
喜多ちゃん劣等感でるかもしれん - 72二次元好きの匿名さん25/02/18(火) 22:31:31
ロックは淑女の嗜みでして組参戦したらどうなるんだろ?
- 73二次元好きの匿名さん25/02/18(火) 22:32:51
- 74二次元好きの匿名さん25/02/18(火) 22:33:50
人間関係で頼りにされそうじゃね?
- 75二次元好きの匿名さん25/02/19(水) 01:00:40
えーっと……
ぼっちちゃんと燈ちゃんで書いてるんだけど
途中だけど投下していい? - 76二次元好きの匿名さん25/02/19(水) 04:42:27
どうぞ
- 77二次元好きの匿名さん25/02/19(水) 06:19:32
よろしくお願いします!
- 78二次元好きの匿名さん25/02/19(水) 07:51:24
ごめん、仕事の時間なんで投下は終わってからになる
- 79二次元好きの匿名さん25/02/19(水) 12:13:23
ご自分のタイミングで大丈夫ですので!
- 80二次元好きの匿名さん25/02/19(水) 20:34:12
ようやっと解放されたので前半だけ投下します
- 81二次元好きの匿名さん25/02/19(水) 20:35:01
最初はただの偶然と好奇心だった。
いつも通りに売れ線バンドの曲のカバー動画を上げて、そうしたらコメントでその曲の別Verがある事を知った。
別Verというよりはオリジナルと言った方が適切で、今の曲はそのオリジナルから一部の歌詞を削り曲調も変えてあるらしい。なんでもメンバーの一人が抜けちゃって新しいボーカルが入ってから変わったとか、そんな話だった。
どんな曲なんだろうと軽い気持ちで元メンバーの名前で検索をかけて、出てきたのは知らないバンドの名前。
とりあえずそのバンドが上げてた動画を開いて、そして……
私が観たのは、目を開ける事もできないような赤黒い嵐。
心の中に深い爪痕を残すようなその叫びにやられて、熱に当てられてフラフラと酔っぱらって。
「あっ」
「ご、ごごごごご、ごめんなさい!!」
そして、大切なものを取り違えてしまった。 - 82二次元好きの匿名さん25/02/19(水) 20:37:24
「おはよー」
羽丘女学園にい声が響く。眩しい朝に相応しい明るい声だ。
声の主、千早愛音は擦れ違う級友たちと軽い挨拶を交わしつつ自分の席へと向かう。勿論、一番声を掛けなければいけない相手の事は忘れない。
「おはよ、ともりん」
「おはよう、愛音ちゃん」
同じバンドの仲間としてクラスメイトとして、もうすっかり馴染んだ日常。そのまま席に着こうとして、愛音はあるモノに気が付いた。
「あ、それ新曲の歌詞? 見せて見せて」
「あ…」
愛音は声を弾ませながら、燈が開いていたノートを手に取る。練習は大変だけれど、やはり新曲は楽しみだ。
そうして、ノートに書かれていた歌詞を読んでいた愛音だが「あれ?」と首をかしげることになる。
なんというか、燈の歌らしくない。
燈の歌はバンド名の『MYGO!!!!!』のその通りに迷いながら、迷いを抱いて何かを探し出そうとする歌だ。けど、この歌詞はなんていうか自分の中のコンプレックスを後ろ向き全力で叫んでるようなそんな印象を受ける。
タイトルも「ギターと孤独と青い星」とか「星座になれたら」とか「あのバンド」とかの判りやすい奴ばかりである。
「うーん?」
どのページを捲ってもそんな感じの歌ばかりだ。というか、自分たちが演奏した曲が一つもない。
最初の方はなんていうかテキトーなフレーズを四苦八苦しながらただ並べてるだけで、途中から一転して暗い歌詞になる。
それが幾つか続いたと思ったらな最後の方はもうゴチャゴチャぐちゃぐちゃの書き殴りばかりで、全然歌詞になってないのだ。どういうことなのかと表紙を見て見ると、燈がいつも使っているノートと違う事に気が付く。
「……Bochhi……ぼっち?」
簡素に書かれた歌詞ノートという表題と、なんていうかこう……子供っぽいサイン。
ぼっち、というのがこのノートの持ち主の名前だろうか? 勿論、本名という訳では無いのだろうがそれにしたって「ぼっち」なんてペンネームはどうかと思う。 - 83二次元好きの匿名さん25/02/19(水) 20:39:11
「ねぇ、ともりん、このノートどうしたの?」
「昨日、下北沢に行った時に拾った」
「え、拾った???」
いろいろ集めるのが好きな燈だが、ノートまで拾って集めてるのだろうか?
「えっと、そうじゃなくて。駅で女の子とぶつかっちゃって」
「うん」
「その時、お互いの持ち物散らばっちゃって」
「あー、その時に間違って拾っちゃったパターン?」
「……多分」
自分の鞄の中に見知らぬノートが入っていたのに気が付いたは帰宅した後だったらしい。
学校に持ってきたのは、持ち主に返す為に放課後再び下北沢に行く為だという。
「えー……でも見つかるかなぁ」
ノートを燈に返しながら、愛音は難しい顔をする。
衝突が偶然であるならば、また会える可能性はそう高くはない。0とは言わないが、些かに難しいのではないだろうか。
「でも、返さなきゃ」
「……燈ちゃん?」
「このノート、沢山いろんな事書いてあって、色々考えて悩んでそれで大切な事を歌にしてて……それに……」 - 84二次元好きの匿名さん25/02/19(水) 20:39:24
燈は真剣な眼差しでノートに触れる。
知らない人の、知らない歌詞、そして形になってない黒の羅列。そこに燈は何かを感じている。
愛音にもなんとなくわかる。自分の中のマイナスを叫ぶような歌詞、燈とノートの持ち主はどこか通じるものがあるのかもしれない。
そう思うと、なんというか興味を惹かれる。
「判った。私も手伝う」
「え……でも」
「いいって、一人より二人の方が探しやすいでしょ。それにともりん、こういう時は絶対譲らないし諦めないから一人で探そうとしたら何日かかるか解らないよ」
MYGO!!!!!随一の頑固者。こうなったら梃子でも動かない。いや、誰にも止められないの方が正しいだろうか。
愛音は燈のそういう所に引き込まれて本気になったのだ、だったらこの件にも関わらせてもらう。
「うん、ありがとう」
燈の安心したような笑み。最近は時折だけど見せてくれるようになった。
苦手な事色々あるし、割と興味ない事には淡白で深刻に考えすぎな……だからこそ、そんな燈の笑顔は心からの表れで確かに相手に届くようなそれが愛音は好きだ。
「あと、私のノートも返してもらわないと」
「えっ!? もしかして新曲のノート無くしちゃったの!?」
「うん、多分、あの子が持ってると思う」
「取り返さなきゃじゃん!!」
輝く朝に相応しい姦しい声に合わせてチャイムが鳴り響くのであった。 - 85二次元好きの匿名さん25/02/19(水) 20:40:55
そうして恙無く午前が終わりいつも通りの昼食を過ごし、なんでもない午後を経て放課後がやってくる。
薄紫の空の下、電車に揺られながら千早愛音と高松燈は下北沢駅にたどり着いていた。
世田谷の繁華街とだけあって、この駅の利用者は非常に多い。なるほど、これではうっかりしていたら人とぶつかるのも仕方なの無い事なのかもしれない。
「たしか私よりも濃いピンクの髪に、同じ色のジャージだっけ?」
「うん、あとギター」
来る前に聞いた特徴を改めて確認する。
中々に目立つ特徴だ。一つ一つは珍しくないかもしれないが、それが纏まっているとなるとそうはない。もしかしたら割とすぐ見つかるかもしれないと希望が持てる。
「それにしても下北かぁ。私、こっちなかなか来ないんだよね」
「そうなの?」
「うん、色々ある事は知ってるんだけどさ」
今となってはMYGO!!!!!の活動が主軸になってきて、ライブハウスRINGにいる時間が多くなった。
必然的に行動範囲もその周辺になってきて、こういう所に足を延ばすのは久しぶりな気がする。
「そう言えば、凛々子さんの友達が下北でライブハウス開いたって言ってた」
「へぇ……そう言えば、ここってライブハウス結構あるんだっけ」
歌詞ノートの持ち主も、そうしたライブハウスで活動するバンドマンなのだろう。ギターまで持ってるとなればそれ以外に考えられない。
「どんな子なんだろうね」
「わからない、けど……きっと、何かに悩んでるんだと思う」
「どうし……あ」
愛音の視線がある場所に注がれる。
なにかと思い燈が視線を追えば、そこにいたのは駅の片隅、絶妙に人目に付きにくい場所で蹲って暗鬱の塊どころか暗鬱の化身の様な空気を醸し出してる一人の少女だ。
どんよりと、視覚化できそうなレベルの空気で一瞬見間違えそうになるが、確かにピンクの髪をしてギターを抱えている。 - 86二次元好きの匿名さん25/02/19(水) 20:41:54
「もしかして……」
「うん、間違いないと思う」
直接会った燈が言うのだ、まず間違いあるまい。以外に早く見つかったのは僥倖だ、もしかしたら向こうもノートを探しに来てたのかもしれない。
燈と愛音はお互いに頷いて少女の下へと向かう。
「終わった……私のノート……へ、へへへ……失くした……なにもかも……」
まるでこの世の終わりのような有様で、ぶつぶつと呟く少女に、真っ先に声をかけたのは燈の方だった。
「あのっ、すいません!」
「へっ?」
「昨日、このノート」
「わっ、私の作詞ノート!」
蒼い瞳を揺らして、少女が燈が差し出したノートに飛びつく。
「あ、あああ、ありがとうございます!!」
「よかった、ちゃんと返せた」
よほど大切なものだったのだろう少女はヘッドバンキングかと思う程に頭を下げまくる。
……ちょっと過剰すぎると思うが、この子はいつもこんな感じなのだろうか。
何はともあれ、この歌詞ノートがこの少女のものだというなら、燈のノートを持っている可能性も高い訳で、愛音は一言を切り出した。
「あ、ねぇちょっと聞きたいんだけど」
「はい」
「燈ちゃんのノート、持ってないかな。ぶつかった時に入違ったんじゃないかって言ってたんだけど」
「……もしかして、このノートですか?」 - 87二次元好きの匿名さん25/02/19(水) 20:42:41
そう言って取り出されたのは、燈がいつも使っている花の写真が飾られたノート。
「あ、これこれ!よかったねともりん」
「うん」
「……あ、あ、あ、あの、もしかしてこのノートに書かれた歌詞書いたのって」
少女の震える声に戸惑いつつも、燈は首を縦に振る。
それを切欠に、少女からピシリとなにか罅が入るような音がした。
明らかに人が出す音じゃないそれに、愛音が訝しんだその瞬間である。
「う、ううあああああああああ!!!」
少女が、崩れた。
比喩表現ではない、本当に難解な現代アートかと思う程に少女の形が崩れてなんていうか色彩もクレヨンを塗りたくったような奴になったのだ。
予想だにしない……というか予想できるわけの無い大惨事に愛音は悲鳴を上げる。
「ええええええええ!!!?」
「あっあのっ、だ、大丈夫ですか?」
「いやこれ、どう見ても大丈夫じゃないでしょ!?」
もはや崩壊としか形容しようがない程に人の形をとどめない少女に心配して手を差し伸べる燈。
ツッ込みながら、意外と燈ちゃんって度胸があるんだなとどこか冷静になる愛音。
薄紫から闇に差し掛かろうとする下北沢駅で三人の声が轟くのであった。 - 88二次元好きの匿名さん25/02/19(水) 20:43:42
前半ここまで
後編は急いで書き上げます…… - 89二次元好きの匿名さん25/02/19(水) 23:23:01
後半お待ちしてます
- 90二次元好きの匿名さん25/02/19(水) 23:55:51
燈ならバラバラになったぼっちもせっせと拾い集めてくれそうw
凄く良いSSなだけに揚げ足とりになってしまって申し訳ないんだけどMyGOとRiNGの表記と愛音がともりん呼びなのに燈があのちゃん呼びじゃないところだけ気になってしまったかな
後編も楽しみにしてます! - 91二次元好きの匿名さん25/02/20(木) 00:05:13
これと繋がりありそうで好き
- 92二次元好きの匿名さん25/02/20(木) 00:58:32
後編行きます
表記と呼び方間違えたのは許して許して…… - 93二次元好きの匿名さん25/02/20(木) 01:01:24
「はい、どうぞ」
「あ、ありがとうございます」
千早愛音から差し出された缶コーヒーを受け取り、ノートの少女、後藤ひとりは小さく礼を言う。
昨日の事と言い今日の事と言い、二人には大分迷惑をかけてしまい申し訳なく思う。ただでさえ低い自己肯定感はさらに落ち込んで低くなり……まぁ、それが底辺になっているのはいつも通りなのだけれど。
なんとか形を取り戻せたのは僥倖としか言いようがない、仲間達が居ない所であそこまでいくのも中々に久しぶりだったし、高松燈が後藤ひとりの欠片を全部見つけて集めてくれたのもありがたかった。
「あの……後藤さんもバンドやってるの?」
「え、あ、はい、その……『結束バンド』ってバンドで」
高松燈からの問いに、ひとりは萎みながら答える。
昨日ぶつかって、ノートを入れ違えて、いけないなぁとおもいつつ中身を観たのだ。其処に書かれた、自分の中の息苦しさを精一杯に形にしたような歌詞。
とても引き込まれた。どんな音に乗ってどんな歌になるんだろうと、想像して心躍らせたりもした。そしてなにより……
この歌詞を書いた人は自分と同じ陰キャだと確信した!
人と話すがめちゃくちゃ苦手で!流行りのものにあんまり(当社比)乗れなくて!自分に自信が無い、そりゃあもう絵にかいたような陰キャだと!
どんな子なんだろうなって想像して(どんな想像だったのかは他人には絶対言えない)ちょっと(またも当社比)ニヤニヤして(ちなみに皆に気持ち悪いと言われた)いた今日の自分。
なのに現れたのは儚げで神秘ささえ感じさせる超美少女! しかもなんかキラキラしてるこれまた美少女まで引き連れていて、受けたる衝撃と劣等感は如何なるものか。
「ちょっとちょっと、大丈夫?後藤さん、また崩れてるよ?」
「へっ? はっ す、すいません」
愛音に指摘され、ひとりは慌てて平常心を取り戻そうとする。
仲間内ではすっかり慣れて、直してもらう事も多々あるがそうではない人の前で何回も崩れてはいけない。その程度の良識はさすがにあった。
「結束バンド……」
「一応聞きますけど、知ってたりは……」
「ごめんなさい」
「ですよねぇー」 - 94二次元好きの匿名さん25/02/20(木) 01:03:16
それはそうだろう。活動してまだ数か月、チケットのノルマがようやく捌けるようになってきたバンドの知名度などそんなものだ。
「まぁ、知名度で言ったら私達『MyGO!!!!!』も似たようなもんだし」
「MyGO!!!!!……」
「知ってる?」
「ご、ごめんな…さい……知らないです」
だよねーと笑う愛音を視て、ひとりは逆に安心する。
何故なら互いに無名のバンドだと知れたから、これで向こうが名の知れたバンドだったら散々に無礼を働いた自分は比喩でもなく死んでしまう所だった。
「結束バンドって、下北で活動してるの?」
「はい、主にSTARRYっていうライブハウスで色々と」
「へぇー他には?」
「あの、学園祭でライブやったり……あとは、こんど未確認ライオットに出る予定で」
「未確認ライオット!? 凄いじゃん!」
その一言に愛音が目を輝かせて食いつく。
ちょっと、止めてほしい。そのキラキラは本当に毒だ、喜多ちゃんのような輝きを十秒浴びると寿命が100年縮むような心持である。
一方でなんのこと何かわからないのか、燈は首をかしげていた。
「未確認ライオット?」
「10代アーティスト限定のロックフェスだよ。ここでグランプリ獲ってメジャーデビューしたバンドもあって、うちの学校だとあふぐろーとかでてるし、後はポピパやパスパレなんかも出た事あるんだって」
「……後藤さんは、メジャーデビューするの?」
空気が、変わる。明るい、女子学生同士の会話から高松燈が後藤ひとりという人間の在り様を問う形に。
静かな、それでもどこかに真剣さを含ませる燈にひとりは息をのみながら一つづつ応えてゆく。 - 95二次元好きの匿名さん25/02/20(木) 01:04:48
「いずれは、したいと思ってるんです。けど……今度の未確認ライオットはそれだけじゃなくて、私たちの力を証明したくて」
「どうして?」
「言われちゃったんです。結束バンドはガチじゃない、プロを目指すようには見えないって」
言われた事は全部事実だ。人前で演奏するのも皆と一緒に演奏するのもまだまだ不慣れで、そこを克服しようとしてたけどどこか結束バンドの現状に甘えていたのは否定できない。
否定できないからこそ、余計に悔しい。
ちやほやされたくて始めたギター、流されるままに始まったバンド、わりとちぐはぐな仲間達。けれど、ひとりはこのバンドで皆と一緒に輝きたいと思っていて、それを証明したくてこの大舞台に挑むことにした。
だけれど……
「わからなく、なっちゃった?」
「えっ!?」
「後藤さんのノート、沢山沢山色んな事書いてあるけど、書きたい事ってすごくよくわかる。なのに、最後のページだけ、何を書きたいのか判らない感じがして」
「……」
嗚呼、この人には判るんだ。
私と似たような、けれども全然違う歌詞を書く人。自分の迷いをそのまま肯定する様な強い歌詞を書くこの人には。
「あるバンドの動画を見たんです。『トゲナシトゲアリ』っていうバンドの」
『ダイヤモンドダスト』の「ETERNAL FLAME 〜空の箱〜」をカバーした動画を上げた時に知ったバンド。
元ダイダスメンバーである河原木桃香という人が結成した5ピースのガールズバンド。その歌を興味本位で観た時の衝撃を、ひとりは振り払う事が出来ない。
「本気って、こういう事を言うんだなって」
スマホを取りだして、履歴から動画を引きずり出して二人に見せる。
イヤホンから鳴り響くその音を聞いた瞬間、燈と愛音の表情が変わるのが解った。 - 96二次元好きの匿名さん25/02/20(木) 01:09:28
高難易度の曲を軽々と弾きこなす繊細なギター、音の厚みをこれでもかという程に増すキーボード、曲を常にまとめるドラムに、それらを支える確かなベース。
そして、あの小さな体から信じられないぐらいの圧倒的歌唱力を叩きつけるボーカル。
余りにも暗い、悲壮感すら漂わせる程に行き詰まった人間の事を歌っているのに決して絶望なんかしていない。
自分の全てをぶちまけ曝け出して、無数の怒りと悲しみの棘をまき散らしながら、それでも歌う喜びに満ち溢れたあの姿。
卑しさなんか一切ない、ただ胸を張って生きてゆく勇ましさを魅せつけられた。
「この人たち、殆ど中卒で音楽やる為にそこまで覚悟決めてるんだって」
『トゲナシトゲアリ』に比べて、自分はなんて半端なんだろう。
未だに人前で演奏するのが苦手で、何をするにも及び腰で、妄想ばっかり逞しくて。この人達みたいに、全てを投げ捨てでも戦おうとするような勇気を持つ事が出来ない。
そうなると、何も書けなくなってしまったのだ。
ただのバンドだったらこうはならない。ただ暗い後ろ向きなだけな歌なら共感して終わりだろう。けど、トゲナシトゲアリは後藤ひとりが抱えている色々な鬱屈のさらにその先を行って音楽として昇華している。
だから沢山書きたい事があったのに、何を書いてもトゲナシトゲアリに比べるとちっぽけでつまらない事に思えてしまう。
未確認ライオットに向けて最高の曲を作らなきゃいけないのに、焦燥感と劣等感ばかりが募って。いつもならそれが自分の力になる筈のに今となっては完全に敵だ。
「わたし、なんてちっぽけなんだろう」
小さく震えるような悲鳴。心の中に棘が刺さったようで、上手く動いてくれない。
そんな、迷って竦んでしまった後藤ひとりに、静かに語りかける者がいる。
「そんな事、無い」
「高松さん……?」
「後藤さんの歌詞、ちっぽけなんかじゃない。だって、こんなに輝きたいって、何かになりたって、皆と一緒に頑張りたいって伝わってくるから、後藤さんの本気がここに、あるから」
一生懸命に紡がれる言葉にひとりは目を丸くする。
見ず知らずの相手に、優しい言葉をかけてもらうなんて思っても見なかった。しかもぶつかってノートを取り違えてしまった相手だ。 - 97二次元好きの匿名さん25/02/20(木) 01:10:41
「あ、ありがとうございます」
慰めてもらえば、ほんのちょっとだけ気持ちが軽くなる。
いや待て、よく考えたらなんで自分はこの人達に愚痴っていたんだろう、まったくのお門違いだ。
気が付いてしまうと羞恥心が湧きたってきて、丁度電車の時間が近づいてきたのが救いだった。
「あの、私、そろそろ電車来るんで」
「そうなの?」
「はい、これ乗り過ごすと帰りだいぶ遅くなっちゃうんで」
「え? 家何処?」
「あの……横浜です」
「横浜!?」
「……あっあの、歌詞ノートありがとうございました」
最後を当たり障りのない会話で締めて、ひとりはその場を立ち去ろうとして……
「ひとりちゃん!!!!!」
その声に強引に引き留められた。
「えっ」
振り返り、高松燈と視線が合う。
先程までの静かなそれとはまるで違う、強く強く輝いて自分を捕らえるその瞳。
「私、一生バンドやるから! あのちゃんと、立希ちゃんと、そよちゃんと、楽奈ちゃんと……5人でずっとMyGO!!!!!続けていくから!」
「え、あのっ」
「だから、ひとりちゃんもずっとバンドやってほしい!」
「え、えええ?」 - 98二次元好きの匿名さん25/02/20(木) 01:12:03
なんで、そういう話になるんだろう。別に、バンドを辞めるとかそういう事じゃなくて……
「だって、ひとりちゃんにはなりたいものがあるんでしょ!? 結束バンドの皆と一緒に星になりたいって! それは本気だって判るから!」
「!!」
本気……自分の、本気……
「ひとりちゃんの気持ち、伝わったから! 私と同じで、バンドの皆を大事にしたいって、その気持ちは……絶対に間違ってない!!」
あったばかりで一言二言会話しただけの女の子、自分と同じバンドマンで歌詞を書いてるぐらいしか知らない女の子。
それでも、一つだけ判る事がある。
この子は本気で叫んでいる。夕暮れ時を切裂いて空の頂点を顕にできそうなぐらい、本気で後藤ひとりに向き合っている。
そして、この子を突き動かしたのは後藤ひとりの書いた歌なのだ。
「あ……」
大事な事を思い出す。自分が結束バンドを続けているその理由を。 - 99二次元好きの匿名さん25/02/20(木) 01:14:07
-皆ぼっちが良いとおもったから頼んでるんだ-
-でも私、確信したのぼっちちゃんがいたら夢をかなえられるって-
-皆に見せてよ…後藤さんは凄くかっこいいんだってところ!-
そうだ、結束バンドの皆が自分を選んでくれたから、自分は今ここにいる。
そうして、皆の為に本気になってがむしゃらにギターを弾いて来た。それは間違いなんかじゃない。
本気ってそう言う事なんだ。正しいとか上だとか下だとかそんな事を比べるんじゃなくて、自分がどれだけ胸を張れるかってそう言う事で、それが高松燈っていう女の子に届いている。
きっとこの子も本気なんだ、本気でMyGO!!!!!を一生続ける気でいる。
聞いたら誰もが笑うような事でも、恥じる事も臆する事も無く堂々とただ一人でもその本気の愛を叫び続けてゆくのだろう。
「……!」
内側から熱くこみあげてくる何かを、ひとりは飲み込む。
言葉にしてしまったら途端に陳腐になりそうで、だからこそこの全てを歌にぶつけたい。
刺さっていた棘にも負けないぐらいに荒ぶる心に突き動かされて、ひとりは燈に向かって深く頭を下げる。
そうして、再び互いに瞳を合わせ伝えたい事を確かめてから弾かれるように改札口へと走り去ってゆくのであった。 - 100二次元好きの匿名さん25/02/20(木) 01:15:29
「行っちゃったね」
残された燈の隣にならんで、愛音が呟く。
「大丈夫、ともりんの本気、後藤さんに伝わったよ」
なにせ愛音自身が燈の本気にやられた口なのだ、間違いない。
「それにしても結束バンドってどんなバンドなんだろう」
「判らない、けど……きっと名前の通りのバンドなんだと思う」
どんな人たちが集まって、どんな音楽をやるのか何も知らない、どういう仲なのかどうかも良く解らない。
けど、バラバラな個性の皆を音楽で括って一つにする。そんなバンドなのは何となくわかる。
「未確認ライオット、出られると良いね」
「大丈夫、きっと出られる」
「……うん!」
沢山の本気が集まる場所。きっと困難で険しい道だけど、結束バンドはその道を昇って行ける。そんな確信がある。
「あのちゃん」
「ん?」
「私も、新曲頑張る」
「うん! 楽しみにしてるね!」
今日の事で火が付いたのは後藤ひとりだけではないらしい。
きっと次の新曲は凄い事になる。そんな確信を抱いて、二人は晴れやかなる夜の中で帰路に就いたのであった。 - 101二次元好きの匿名さん25/02/20(木) 01:16:15
終わり
また表記間違いあったら許して…許して…