(SS)俺はお前が俺を見たのを見たぞ

1◆Wgv23nee2r5Y25/02/17(月) 20:32:00

今日も物陰から貴女の姿を盗み見る。8つの単眼で。
ああ、ヴィルシーナ様。今日も美しい。我らが女神、ヴィルシーナ。
貴女に近づきたい、貴女に触れたい。なれど、それは叶わぬ夢。

今の私は8つの眼に8本の足、そして毛むくじゃらの醜い姿。
今の私に出来ることは物陰から貴女を盗み見ること、そして忌々しい害虫どもを駆逐すること。

ただそれだけ。

標的を確認。我、突入せり。

君たちは足も速いし、翼もある。私も足は速いが、飛ぶことはできない。
だが、それは足枷にもならない。

標的を補足。我、奇襲に成功せり。

首元にざっくりと牙を突き刺し、消化液を注入する。
悪く思うな、これは自然の摂理である。君は私の糧となる。

新たな標的を確認。我、摂食を中断す。
標的を補足。我、奇襲に成功せり。

ただ本能に従い、駆逐し糧とする。種の誕生から続く習わしである。
本能のままに蹂躙し、その醜い姿を白日の下に晒す。
ああ、女神様。この卑しき御魂をお許しください。
女神の振るう箒が視界に入る。

我、戦線を離脱す。

我らが女神、ヴィルシーナ。お許しください我が御魂。

2◆Wgv23nee2r5Y25/02/17(月) 20:32:19

「ヴィ、ヴィルシーナさん……！　助けて！」
ルームメイトの声に目をやると、そこには手のひらほどもある蜘蛛が一匹

それは、"アシダカグモ"

害虫を食べてくれる益虫だけれど、その姿はなかなか悍ましい。
箒を手に取り、その訪問者に退室を促す。

「悪いけれど、帰って下さらない？」
伝わることは無いけれど、そう言いながら箒で追い払う。
こちらを察知し音もなく、その来訪者は開けた窓から退出する。

「ヴィルシーナさん！　ありがとう！」
「私、虫は苦手で……あの大きさの蜘蛛は苫小牧じゃほとんど見ないから」
あの蜘蛛は北の大地にはいない。無理もないわ。

「向こうにはいないものね……私は平気だから、お気になさらず」
「ありがとう……頼りにしてるね、ヴィルシーナさん」
「どういたしまして、あのぐらい、訳ないわ」
いくら益虫でも、流石に目の前に出てくると少し心臓に悪いわね。
何か対策しようかしら。

3◆Wgv23nee2r5Y25/02/17(月) 20:32:31

以上
益虫とはいえ人によってはたまげるでしょうね

4◆Wgv23nee2r5Y25/02/17(月) 20:32:42

参考：アシダカグモについて(苦手な人も多いのでワンクッション)

アシダカグモ | Writeningwiki： https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%B7%E3%83%80%E3%82%AB%E3%82%B0%E3%83%A2?variant=zh-cn 詳しい説明： https://ameblo.jp/hikimarufrog/entry-12479933901.htmlwritening.net