- 1二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 21:07:57
────“甘えん坊フーちゃんデー”の朝は早い。
彼女はこの日を堪能するため、朝5時にはトレーナー寮へとやって来る。
事前に渡した合鍵で部屋へと静かに入り込み、空けておいたベッドへと潜り込み二度寝をするのだ。
特別な一日を最初から最後まで無駄なくきっちりと堪能するため、とのこと。
元々は俺から無理してお願いしていることだというのに、時間も惜しまず全力で臨む姿はまさしくプロそのもの。
俺も全力で応えなければいけない、そう考えながら、寝室へとやって来た。
「……入るよ~?」
軽くノックをして声をかけるものの、反応はない。
念のためもう一度確かめてから、俺はゆっくりと静かに、寝室のドアを開けた。
我ながら飾り気のないベッドの上には、布団にくるまった小さな膨らみとちょこんと出ている顔。
鹿毛の明るいカールボブカット、ピンクと黄色のメッシュ、ボリューム感のあるくっきりとしたまつ毛。
担当ウマ娘のノースフライトは心地良さそうな、あどけない寝顔を晒していた。
思わずそのままにしてあげたくなるが、起こすところから始めて欲しいというのは彼女たっての希望。
心を鬼にして、俺は彼女の身体を優しく揺らしてあげた。 - 2二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 21:08:11
「ほら、フライト、もう朝8時なんだから起きて」
「……」
ぴくんとフライトの耳が反応して、何故か不満気に彼女の表情が少しだけ歪む。
明らかに起きているのだけれど、彼女はきゅっと唇を引き締め、頬を膨らませて、言葉を返そうとしない。
今日はこういう感じか、と思いながら、再び身体を揺さぶる。
「今日は朝から湯船にだって浸かれるし、フライトの好きな入浴剤だって用意しておいたよ」
「……っ、つっ、つーん」
ぴくりと若干気になってそうな様子を見せながらも、フライトは顔を背けるように寝返りを打ってしまう。
なんだか、今日はいつも以上に粘って来るというか、頑なに起きようとしない。
どうしたのだろうかと思考を巡らせてから、ようやく、俺は自分の失策に気づいた。
そうだった、この日には“あの呼び方”をすると約束していたじゃないか。
普段ならば決して呼ぶことはないけれど、今日だけはそう呼んであげなくてはいけない。
何故ならば────今日は『甘えん坊フーちゃんデー』なのだから。
俺は彼女の耳元へと顔を寄せると、小さな声でそっと囁いた。
「…………フーちゃん、起きて?」
ぴん、とフライトの耳が立ち上がる。
そしてゆっくりとこちらへ向けて寝返りを打ち、嬉しそうに頬を緩めたまま、瞼を上げる。
夕暮れを表すかのような美しい瞳がこちらに向けられて、柔らかく細められた。 - 3二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 21:08:25
「えへへ、おはようございます、トレーナーさん」
「うん、おはよう、良く眠れた?」
「はい……ただちょっとだけ、肌寒かったかもしれませんね」
「そう? それだったら暖房をかけてくれても良かったんだけど」
「それほどでは、電気代も勿体ないですし、乾燥も怖いですから、だから、ね?」
「……?」
「……今度は添い寝なんかを、お願いしたいなーって」
微かに頬を染めながら、ちらりと視線を向けて来るフライト。
勿論、本来であれば担当ウマ娘との同衾などは許されないし、俺も許したりはしない。
けれど、今この時の彼女からのお願いを、拒否することなど出来なかった。
何故ならば────今日は“甘えん坊フーちゃんデー”なのだから。
俺は頬を掻きながら、こくりと頷く。
「次回の時には、善処します」
「はぁーい♪」
「ほら、もう起きよう、布団捲るからね?」
「きゃー♪」
ハシャぐような笑みを浮かべるフライトにかかってる布団をめくりあげた。
ふわりと汗の匂いと甘い香りが立ち上り、レース素材の白いネグリジェが露になる。
肌が透けそうなほどに布地は薄く、彼女のスタイルの良いボディラインがくっきりと浮き出していた。
フリルなどをあしらい少女らしい可愛らしさもアピールしながらも、大人っぽい印象も受ける。
まさしく、彼女にぴったりな服だなと、見惚れてしまうほどだった。 - 4二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 21:08:40
「ふふ」
鼓膜を響かせる、思わせぶりなフライトの小さな笑み。
我に返った俺は誤魔化す咳払いを一つ、彼女が起き上がるのを待つのだが────何故か、彼女は動かない。
捲れ上がった布団の中、ただ両手を広げて、じっと俺のことを見つめているだけだった。
そんな光景にただ困惑するだけの俺へ業を煮やしたのか、両腕を持ち上げる。
そして、ふにゃりとした微笑みを浮かべながら、おねだりをするように言葉を紡いだ。
「…………抱っこ」
一瞬、思考が停止し、すぐに再起動を始めた。
つまるところ、抱きかかえる形で起こして欲しい、ということなのだろう。
常識的に考えれば、手間とリスクを増やしてしまうだけの、無意味な行為。
自分で起き上がるように言うべきなのだが、そんな選択肢は俺の頭の中には存在していなかった。
何故ならば────今日は“甘えん坊フーちゃんデー”なのだから。
「おいで、フーちゃん」
「……♪」
俺は覆いかぶさるようにフライトへ顔を寄せて、そう囁きかける。
すると彼女は耳をぴょこんと跳ね上がらせながら、絡みつくように両腕を俺の背中へと回した。
縛り付けるようにぎゅっと抱き締められて、彼女の匂いと感触と温もりが、より強く密着する。
ほんの僅かな酸味の混じる、優しく清楚な甘い香り。
しっとりと汗ばんではいるものの、マシュマロのように柔らかな身体と肌の感触。
生々しく伝わってくる、ウマ娘特有の少しだで高い体温。
そして、とくんとくんと響く、胸の鼓動。
五感を刺激するような、あまりにも蠱惑的な感覚に、俺の心臓の音が大きくなってしまう。
それに気づかぬふりをしながら、彼女の背中と腰に手を回して、ゆっくりと起き上がらせる。 - 5二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 21:08:56
「んっ……トレーナーさん、暖かくて、良い匂いがします」
そっと零れる言葉とともに、フライトの腕の力がちょっとだけ強まる。
更には縛り付けるように足も絡んできて、四肢でがっちりと拘束される形になってしまった。
この密着ぶりは、あまりにも目に余るだろう。
けれど、俺はそれに対して何も言わずに、微笑みを浮かべながら部屋の外へと運び出す。
何故ならば────今日は“甘えん坊フーちゃんデー”なのだから。 - 6二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 21:09:11
『わたしがそうなりたいと思って、仕立てたわたしを……あなたに見せていたい』
以前、ともに温泉旅行へと出かけたときに、フライトはそう言った。
もっと素の彼女を見せて欲しい、もっとこちらに甘えて欲しい、と伝えた俺に対して。
確かに、普段のフライトの姿は着込んだ姿かもしれない。
しかし、それはたくさんの可能性を磨き上げ、たくさんの大好きを詰め込んだ、理想の装い。
着込んだ自分も自分なのであると、認めて欲しいと、彼女は話してくれた。
俺はもちろんと頷いて、ずっと、彼女を輝かせ続けることを誓うのであった。
────でも、それはそれとして、もっと甘えても良いんじゃないかと思った。
そう思った俺は、そのことに関してだけ、一切退かずに押し続けてみた。
最初こそは遠慮していたが、徐々に折れ始めるフライト。
やがて、彼女は大きなため息をついてから、困ったような、それでいて満更でもなさそうな笑みを浮かべた。
『……じゃあ、一日だけ』
それが、今日まで一年以上続いている、“甘えん坊フーちゃんデー”の始まりであった。
最初の頃は遠慮がちで、言葉や動きも固く、甘え方もどこかたどたどしかったフライト。
お願いを口にする時も顔を真っ赤にして、いざ実践すると固まってしまうことも少なくなかった。
そこから月日を重ねて今やすっかり、立派に甘えん坊を装えるようになっていた。
俺から無理を言ったというのに、相変わらず、真面目で心優しい子である。
でも、いずれは止めてあげないと、と思いながらも結局、今日まで続いていた。 - 7二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 21:09:26
「フーちゃん、浴室に着いたから降ろすね?」
「あっ…………はい」
フライトを抱きかかえながら浴室に辿り着いた俺は、ゆっくりと彼女を降ろす。
少しだけ名残惜しそうな表情を浮かべたまま、彼女は素直に床へと足を着ける。
ちゃんと彼女が立ったのを確認してから、密着させていた身体を離した。
汗ばむほどの温もりが失われて、少しだけ冷たい空気が頬をなでつける。
そこに僅かな寂しさを感じながらも、浴室から離れようとするのだが。
「……フーちゃん?」
「……」
フライトは俯いたまま、俺の服を掴んで離してくれない。
耳と尻尾が忙しなく動き始めて、彼女の頬が紅潮していく。
やがて、意を決したように顔を上げて、その茜色の瞳でこちらを射抜いて来た。
「あっ、あの、トレーナーさんも、その、いっ、いいいいっ、いっ……!」
「い?」
「一緒に、入りませ────やっ、やっ、やっぱり、まだ無理ですっ!?」
ぼん、と顔を真っ赤に染め上げたフライトは、逃げるように浴室へと駆け込んだ。
何となく、言いたいことは予測出来てはいたが、流石にそこへのフォローは出来ない。
何故ならば────“甘えん坊フーちゃんデー”といえど、出来ないことはあるのだから。 - 8二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 21:09:59
「お風呂、ありがとうございました♪」
「お帰りフーちゃん、湯加減は大丈夫だった」
「はい、ばっちりです。寮のお風呂だと入浴剤は使えませんから、ゆっくり堪能しちゃいました」
ほこほこと湯気を立てながら、フライトはリビングへとやってきた。
シンプルなTシャツと短パン姿なのだけれど、それでもオシャレに見える気がする。
というか、さっきの白のネグリジェはどうしたのだろうか。
そんな疑問が過ぎった瞬間、彼女は何かを察したように言葉を紡いだ。
「気を抜いて過ごすには、こういう格好の方が良いですから」
「なるほど……だったら寝る時もその格好の方が良かったんじゃないか?」
「ふふ、それは、ですね」
フライトはくすりと微笑むと、足早にこちらへと駆け寄って来て、俺の耳元でそっと囁く。
「ちょっとセクシーなわたしを、あなたに見せびらかしたかったから」
「……とても、ステキだったと思うよ」
「はい、じっと見てましたから、よーくわかってますよ♪ …………今度はあの格好で過ごしてあげますね?」
「…………さっ、朝ごはんにしようか」
「はーい♪」
嬉しそうに尻尾を揺らめかせるフライトとともにテーブルを囲む。
食卓に並んでいるのいくつかのおにぎりと玉子焼きにウインナー、そして野菜多めの味噌汁。
普段の朝食よりは手が込んでいるが、他人に食べさせるには質素なメニュー。
それにもかかわらず、フライトは生き生きとした表情をしている。 - 9二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 21:10:17
「キミからのリクエストで作ったけど、もっと手の込んだものでも良かったんだよ?」
「いーえ、トレーナーさんのおにぎりが良かったんです、では、いただきます」
「……いただきます」
まあ、本人が満足そうにしているのなら、それが一番だろう。
何故ならば────今日は“甘えん坊フーちゃんデー”なのだから。 - 10二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 21:10:35
食事を終えて、しばらくの間まったりとした時間を過ごした後。
「……それじゃあトレーナーさん、その、良いですか?」
「もちろん、どうぞフーちゃん」
「でっ、では、失礼します」
フライトは、少しばかり緊張した表情で、ソファーに腰かける俺の前へと立つ。
そして大きく深呼吸をしてから、くるりと背中を向けた。
その後もちらちらとこちらを見ながら、もじもじとしていたが、やがて。
「えいっ」
可愛らしい掛け声とともに、ふわりと俺の膝の上に飛び乗った。
引き締まっていながらもハリのある尻肉の感触と温もりが、太腿を包み込んでくる。
フライトが位置を調整するように腰を動かすと、尻の感触も生々しく変化していった。
しばらくして、ポジショニングに満足したのか、ぴんと背筋を立てる。
尻尾をわさわさと、忙しなく俺へと擦りつけながら。
「そっ、それじゃあ、耳のマッサージをお願いします」
「うん、了解」
前もって、俺はフライトから耳のマッサージをお願いされていた。
彼女は普段から、自らの手で耳へとマッサージを行っている。
故に、俺なんかがやるよりも自分でやった方が効果はあると思うのだが、どうしても、とのことだった。
本人から色々と本を見せてもらったり、自分でも調べたりはしたが、やはり不安はある。
しかし、今日という日に託された、彼女たってのお願いなのだ。
必ず、やり遂げなければいけない。
何故ならば────今日は“甘えん坊フーちゃんデー”なのだから。 - 11二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 21:10:50
「じゃ、触るよフーちゃん」
「……」
返事をするように、フライトの耳がぴこりと小さく動く。
大きいというよりは長いという印象を受ける、毛並みを良く整えられた耳。
俺は手にマッサージオイルを馴染ませて、そっと、慎重に、両耳の先を柔らかく摘まんだ。
「ん……っ!」
フライトの身体が、ぴくんと跳ねる。
そのまま、まずは耳の先端を優しく、それでいて丁寧にくにくにと揉み込んでいく。
彼女の耳の先端はとても柔らかく、そして毛並みはふわふわとしていた。
「はっ……あっ……ふっ……んん……」
口元を両手で塞いで、何とか声を出さないようにしているフライト。
けれどくすぐったいのか、小さな吐息混じりの声はどうしても漏れ出してしまう。
身体もぴくぴくと震えているので、少しだけ心配になって声をかけた。
「フーちゃん、大丈夫?」
「だい、じょうぶ、です、もっとつよくして、も、いい、です、よ?」
「……そう?」
もしかしたら、中途半端な力加減が逆にくすぐったかったのかもしれない。
見れば、どこかもどかしそうに太腿をすりすりと擦り合わせていた。
ならばと俺は意を決し、ぎゅっぎゅっと指先に力を込めていく。
刹那、フライトの背筋がぴんと伸びて、甘い声が飛び出した。 - 12二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 21:11:12
「ふあっ! あっ、やっ、ひゃ、ん…………っ!」
「……! ごめんフーちゃん、強すぎたか!?」
「……いえ、とっても、きもち、いーので、もっと、してくだ、さい」
更に俺の太腿の奥へと尻を押し込めながら、フライトは乱れた呼吸でそう懇願する。
なんだか、とても宜しくない気がするのだけれど、ここで手を止めることは出来なかった。
何故ならば────今日は“甘えん坊フーちゃんデー”なのだから。
「根元の方も、やっていくからね」
「ひぅ……! とれーなーさんの、んんっ、おっきな……ゆびが、あぅ……はいって、きて……!」
「言い方」
「もっと……んあ……つよく、して…………ふっ……ほしい……ひあ、ん……っ!」
「わかったよ、フーちゃん」
「やぁ……! みみ、びんかんで……なまえ、ささやかれると……ぞくぞく、って……!」
「…………フーちゃん、力加減は平気? フーちゃん、痛かったらすぐ言ってね? フーちゃん、可愛いね?」
「……っ! いじ、わる……っ!」
徐々にしっとりと汗ばんでいくフライトの耳。
彼女の頬は次第に赤らんでいき、目はとろんと蕩けて、呼吸はどんどん熱くなっていく。
そんな姿を見ていると、心の奥底から良くない感情が湧き出て、ついつい、意地悪をしてしまった。
それに対して、彼女は怒ったような言葉を発するが、瞳はどこか物欲しそうに潤んでいる。。
だったら、彼女の期待に応えて、続けてあげないと。
何故ならば────今日は“甘えん坊フーちゃんデー”なのだから。
「……フーちゃん、耳の中を少しカリカリするね?」
「えっ、ひあっ、あん……っ!」
身体をくねらせながら、嬌声を上げて悶えるフライト。
耳のマッサージは、約一時間ほど、じっくりと、丹念に行われた。 - 13二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 21:11:29
その後、昼食を摂ったり、膝枕でお昼寝タイムをしたり、尻尾の手入れをしてあげたり。
とても有意義な時間を過ごし続けて、気が付けば、空は茜色に染まり始めている。
そんな中、俺とフライトは少しだけ遅いおやつタイムを過ごしていた。
「フーちゃん、今日はチョコレートを用意したんだ」
「……あーん♪」
チョコの封を開けるや否や、フライトは俺の方を向いて、口を開けた。
てらてらと生々しく照り返す、真っ赤で健康的な、美しい彼女の咥内。
少しだけドキリとしながらも、俺はチョコを一つ摘まんで、その中に向けて運び入れる。
「あむっ」
指先をフライトの口の中に入れた途端、ぱくりと彼女の口が閉ざされた。
ふっくらとした唇に包まれて、直後に、少しだけざらついた感触が指先に絡みつく。
湿っていて、熱くて、柔らかい、彼女の舌先はチョコを器用に拾い上げる。
そして、ちゅぽ、と小さな音を響かせながら、唇を離した。
「んっ……ふふ、とっても、とっても甘くて、美味しいです」
頬に手を当てながら、少しだけのぼせたような様子で、感想を口にするフライト。
俺は彼女の唾液で塗れた指先を見ないようにしながら、再び、チョコを摘まみ上げる。
すると彼女はぴょこぴょこと耳を動かし、ぶんぶん尻尾を震わせながら、またしても口を開いた。 - 14二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 21:11:48
「……あーん」
一つ、また一つと、チョコをフライトへ食べさせていく。
そして最後の一つを食べさせた時、ピピッ、と時計のアラームが鳴り響いた。
時刻は17時ジャスト。
それは────“甘えん坊フーちゃんデー”の終わりを示す時刻。
“甘えん坊フーちゃんデー”は8時から17時までの8時間限定(休憩込み)。
故に、今回の“甘えん坊フーちゃんデー”は、これでおしまいなのであった。
「……フーちゃん、それを食べ終わったら、終わりだよ?」
「……むぅ」
フライトはどこか恨めしそうに、じいっと見つめて来る。
けれど、これはお互いに節度をもってやりましょうという、彼女自身からの提案でもあった。
時間はしっかりと区切って、また明日からの生活に備える。
だからこそ、ちゃんとしなければいけなかった。
指先に残っていたチョコは、あっという間に融けて、なくなってしまう。
しかし彼女は口を放そうとしないどころか、手首を両手で掴んだ。 - 15二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 21:12:06
「ちゅ……はむ…………ちゅぱ……ちゅー……あむ…………ちゅう……」
「フッ、フーちゃん!?」
あろうことか、フライトは俺の指先を、音を立ててしゃぶり始めた。
ぬめった温もりが這いまわり、背筋にぞくぞくとしたものが走りだしていく。
すでになくなった残り香を探り出すように、彼女は夢中で指先を吸い続けた。
とんでもない行為な気もするが、俺はそれを止めることが出来ない。
何故ならば────今日はまだ“甘えん坊フーちゃんデー”なのだから。
「ぷは……ん……っ」
5分ほどして、フライトはようやく唇を離した。
すっかりとふやけてしまった指先、けれど彼女の手は未だ離れてはいない。
沈みゆく夕日のような瞳は、おねだりをするように、じっと俺のことを捉え続けていた。
そして、消え入るような小さな声で、彼女は言葉を紡ぐ。
「…………最後に、ぎゅーっと、してくれませんか?」
恥ずかしげに放たれる、最後のお願い。
頬を染め、微かに視線を彷徨わせながら言うその姿は、とても可愛らしい。
今すぐにでも駆け寄って、彼女の願いを叶えてあげたいくらいであった。 - 16二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 21:12:32
「ダメだよ、フライト」
でも、それは出来ない。
何故ならば────今日はもう“甘えん坊フーちゃんデー”ではないのだから。
フライトはびくんと震えて、縋るような目をして、やがて、ぷくっと頬を膨らませた。
「…………意地悪」
「さっきも聞いたなそれ」
「……っ、でも、約束は約束ですからね、今日のところはわたしも諦めます」
少しだけ肩を落としながらも、フライトは引き下がり、寝室へと向かっていく。
そして30分後、再び現れた彼女は、もう甘えん坊ではなかった。
ばっちりと決めたメイクにコーデ、ピンと伸びた背筋、きらきらと輝く双眸。
そこにいたのはファッショニスタウマ娘────ノースフライト、その人であった。
「ではトレーナーさん、また明日から宜しくお願いします!」
「うん、こちらこそ宜しくね、フライト」
「……あっ、最後に一つだけ♪」
玄関先の別れ際、フライトは何かを思い出したようにぴこんと耳を立てる。
そして、口元に手を当てて、ちょいちょいと手招きをした。
俺はそんな彼女の行動に何の疑問を持たずに近づいて、耳を近づける。
すると、甘い息吹とともに小さな囁きが、耳の中へと入り込んで来た。
「────次回は、もっと甘えちゃうので、覚悟しておいてくださいね?」
どこか悪戯っぽい微笑みを浮かべるフライト。
そんな彼女に対して、俺は望むところだよ、と笑顔で頷いてみせた。
何故ならば────それが“甘えん坊フーちゃんデー”というものなのだから。 - 17二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 21:13:53
お わ り
下記のスレを参考にして書いたのですが何だか内容がズレたのでスレを立てました
半分くらいの文字数になる予定だったんだけどなあ・・・
(確かに気を許した相手には甘えたになるみたいだが…)|あにまん掲示板練習疲れたあトレーナーさんおんぶ〜(なりすぎでは…?)bbs.animanch.com - 18二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 21:36:20
くくく…甘えすぎてあまりに甘くてたまらねえよ…乙
このシチュ、いつか同室で参考にさせてもらうぜ… - 19二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 21:39:38
- 20二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 21:39:42
乙!叡智なこと一つもしてないんだけど
ないんだけどなんなのだ…?このドキドキは… - 21二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 22:07:45
うおすっご...あっま...いややべぇわこれ甘々で好きだわ
- 22二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 22:22:46
脳内フーちゃんボイス余裕だった
普段はしっかり者だからこそ甘えん坊なフーちゃんも良きかな - 23二次元好きの匿名さん25/02/17(月) 23:38:42
マーちゃんのは出てた気が… 何でもない
- 24125/02/18(火) 07:11:14
- 25二次元好きの匿名さん25/02/18(火) 16:28:00
甘〜い!
このスレを見つけられて良かった - 26125/02/19(水) 00:02:37
甘々フーちゃんは癌に効く
- 27二次元好きの匿名さん25/02/19(水) 00:04:35
こういう特別な時だけの呼び方好き
- 28125/02/19(水) 06:32:04
色々と想像が膨らみますよね