【オリキャラ・ダイス】カスの金勘定~ナギサ様専属お椅子運び係~ part1.5

  • 1天音テンリ(名誉美食研)25/02/17(月) 21:52:31

    これまでのあらすじ
    トリニティのお嬢様、天音テンリ
    生まれた時からフィリウス分派に入ることが運命付けられている彼女は令嬢の身分でありながら守銭奴だった

    頑丈さこそあるものの能力は軒並み平均以下
    そんな彼女に対してナギサは椅子運びを命じる

    そして時は次期首長も決まってしばし
    ナギサ、ミカ、セイアの3人で巨大なパフェを食べた、その帰路から・・・

  • 2天音テンリ(名誉美食研)25/02/17(月) 21:56:37
  • 3天音テンリ(名誉美食研)25/02/17(月) 21:58:41

    「待つんだミカ、そっちはどう見ても裏路地だろう?何故そっちに・・・。」
    「いいじゃん近道だよ☆よく通ってるし大丈夫だって。」
    「椅子が通らないので、私はこちらから帰ります。」
    テンリを見送り、ナギサはやや遅れて裏路地に入った
    2人の背中に視線を移し、その目がすっと細くなる
    久しぶりに同じ時間を過ごせる幼馴染
    自分以上に知的で、高めあえる友
    どちらもナギサにとって大事な友人であり、2人との時間はかけがえのないものだ
    ただ気がかりなのはその2人の仲がまだ少しギクシャクしていることである
    主義主張も違えば持ち合わせている知識量も全く違う2人だ
    そもそも会話が噛み合わないことを思えば仲良くできている方かと自身を納得させる

  • 4天音テンリ(名誉美食研)25/02/17(月) 22:01:33

    「う゛ぁ!?」
    なんて、考えながら歩ていたからだろうか
    後ろから拘束されて銃口を突きつけられる
    周囲は完全に包囲されていた
    ナギサは咄嗟にミカにアイコンタクトを送ると無抵抗のポーズをとる
    ミカはセイアを守るように立って周囲に威圧する
    セイアはナギサに負けず劣らず脆いので、現状まともに動けるのはミカだけだ
    愛銃であるサブマシンガンを持って敵を観察する
    包囲しているのは不良生徒と武装したロボ市民による混成部隊だ
    「なんだぁ、やる気か?」
    「そっちこそ、できるんならやってみたら?」
    脅しに煽りで返すとセイアを守るためか、その羽でセイアを抱き寄せるようにして覆い、ミカ本人は無防備になる

  • 5天音テンリ(名誉美食研)25/02/17(月) 22:03:05

    「私から離れちゃダメだよ。」
    「えっ、み、ミカ??」
    ミカはセイアに囁くと笑顔でウインクをした
    「チッ、舐めやがって!」
    いかにも余裕綽々という様子にイライラが限界になったのか、1人の合図に合わせて銃弾が四方八方からミカに襲い掛かる
    生徒というのは頑丈なものだ、これでも倒せない可能性は高いだろうと不良達は分かってる
    だが痛手にはなるはずだと思っていた
    そんな彼女たちの想像に反してミカはほぼ無傷だった
    綺麗に手入れされた透き通るような肌はおろか、羽にすら碌なダメージを与えられていない
    ミカは強者だ
    それも鍛錬など積んでいない、理屈も何もなく生まれつき強い
    ただ天がかくあれと定めたが故の強者であった

  • 6天音テンリ(名誉美食研)25/02/17(月) 22:04:45

    涼しい顔で襲撃者たちを1人、また1人と倒していく
    そうして開いた道を悠々と歩き、ナギサを拘束している不良の方に近づいていく
    「おい、こいつがどうなってもいいのか!?」
    その問いにミカはただ不敵な笑みを浮かべて歩を進める
    「来るな、来るなぁぁああ!」
    銃口を人質から離せば後は容易い
    引き金に指をかけ、照準を合わせる
    その狙い澄まされた一撃が不良の顔面に命中する

  • 7天音テンリ(名誉美食研)25/02/17(月) 22:05:32

    「あがっ」
    呻き、倒れこむ
    その姿はまさしく絶対者
    自分に絶対の自信があり、圧倒的なフィジカルを持ち、有り余る神秘を保有する
    不良の少女は地面に伏して拳を握りこむ
    持つ者にしか許されない戦法、自分には絶対に届かない領域
    その光に焼かれるように、少女は意識を手放した

  • 8天音テンリ(名誉美食研)25/02/17(月) 22:06:14

    「これで最後かな☆」
    「そう、ですね。他には居なさそうです。」
    あたかもよくあることなのかのように2人は会話する
    セイアが唖然としている間に不良集団を脇によせ、ミカとナギサはそのまま裏路地を進みだした
    「・・・これはよくあることなのか?」
    流石にスルーもできず、ナギサにひっそりと聞く
    それにナギサはそうですね、と一度肯定して一呼吸置くと昔のことを話し出した

  • 9天音テンリ(名誉美食研)25/02/17(月) 22:07:46

    「昔からミカさんはやんちゃと言いますか。何かと無茶しますし、実際にそれを押し通せる力があったんです。」
    門限ギリギリまで遊び尽くして、ミカがナギサを背負って全力で走って帰宅したこと
    身代金目的で誘拐してきた大人を拳一つで全員なぎ倒してそのままショッピングをしたこと
    話せば話すほど昔話が溢れていく
    「仲が、いいんだな。」
    ふと、セイアはそんな言葉を零してしまう
    口に出して漸く自覚した
    2人の、昔馴染み特有の空気感が、どこか羨ましかったのだろう
    あるいは妬ましかったのかもしれない
    「・・・そうですね。」
    一瞬、影が差し、そしてそれを振り払うようにしてナギサはセイアに向き直る

  • 10天音テンリ(名誉美食研)25/02/17(月) 22:08:50

    「あなたもこの輪の中にいるんですよ?セイアさん。」
    その言葉に目をぱちぱちとして見つめるセイアの様子がおかしくて、自然と笑みが浮かんでくる
    「もう2人とも!遅いと置いていくよー!」
    いつの間にかミカは路地を抜けているようで、向こうから笑顔で手を振っている
    ナギサとセイアはお互いに向き合うと、2人して肩をすくめる
    「行きましょうか。」
    「そうだな。」
    そう言って、並んで走り出す

  • 11天音テンリ(名誉美食研)25/02/17(月) 22:09:45

    「案外、なんとかなるものだな。」
    「ん?今何か・・・」
    「独り言だよ、気にする必要はないさ。」
    結局2人に打ち明けることはなかったが、セイアはこの事件を予知していた
    知っていて、話すことはできなかった
    起こることは避けられないから
    だが結末はどうだ?ミカがパワーで全てねじ伏せたではないか
    「エンドロールはまだ未定。なら挽回の余地は残されている、か。」
    今度は聞かれないように、静かに呟く
    来るその日のために、セイアは静かに準備を始めた

  • 12天音テンリ(名誉美食研)25/02/17(月) 22:25:31

    次期首長であることが決まったとはいえ、ナギサの仕事は変わらない

    そもそも、ナギサは進級時点で次期首長であることがほぼ確定していた身である

    当然今日の予定も重要書類サインをし、椅子を運び込んでの話し合いだ


    「本日はdice1d8=7 (7) へ向かいます。」

    1.ミカさんの部屋

    2.フィリウス分派内での会議

    3.パテル分派との会談

    4.サンクトゥス分派との会談

    5.それ以外の分派との会談

    6.正義実現委員会との会談

    7.シスターフッドとの会談

    8.他校との会談


    重要度 高いほど重要で機密性を求められる、行先が1番の場合は高ければ公的なもので低ければ私的なもの

    dice1d100=33 (33)

  • 13天音テンリ(名誉美食研)25/02/17(月) 22:49:02

    「本日はよろしくお願いしますね。ナギサさん。」
    柔和な笑みを浮かべ、お互いに挨拶を行う
    「こちらこそ、よろしくお願いします。サクラコさん」
    今ナギサの前にいるのは歌住サクラコ、シスターフッド内でナギサが注視している人物の1人
    立ち振る舞い、表情、言い回し、声、その1つ1つに意識を惹かれてしまう
    偶然や自然体というには無理があるだろう、既に一部とはいえ部下の中にも彼女の信奉者が現れている
    故にナギサにとって、サクラコは警戒に値する人物であった

  • 14天音テンリ(名誉美食研)25/02/17(月) 23:19:05

    名目上、今回の会談はシスターフッドとフィリウス分派の定期会談だ
    話される内容自体も、そこまで重要性が高いというわけではない
    しかしこの時期の会談は事実上、それぞれの組織の次期リーダーの顔合わせと言っていい
    それは今回も同様であり、この場にサクラコがいるということはつまり、シスターフッドの次期リーダーはサクラコであるということ
    ───やはりですか、来年はシスターフッドとの"調整"にかなり気を遣うことになりそうです
    少なくとも表面上、サクラコに権力欲があるようには見えない
    しかしそのカリスマ性と迂遠な言葉選びから油断禁物なのは明らかだ
    腹の探り合い、裏の読みあい
    同学年でここまで緊張感を持つ相手はそうそういない
    冷や汗を隠すように紅茶を飲み、本音を悟られないよう言葉を選ぶ
    ナギサはサクラコへの警戒レベルを更に引き上げ、ボロが出さないためになるべく早くかつ自然に会談を終わらせた
    ・・・なお、当のサクラコが「お菓子を食べる姿すら気品があって美しいなんて、流石ですね」などという大変平和なことを考えていることにナギサが気付くことはついぞ無かった
    なんならこの時点でサクラコはまさか自分がシスターフッドの次期リーダーとして推されているとは考えてもいなかった

  • 15二次元好きの匿名さん25/02/18(火) 04:16:03

    あ、復活してる!嬉しい

  • 16秋場 エス25/02/18(火) 12:24:59

    おいおい…どうやってアンタと見分けをつけたらいいんだ…

  • 17二次元好きの匿名さん25/02/18(火) 19:15:04

    >>16

    ブルーアーカイブあるあるピンク髪が多すぎます!

    なので気にしたら負けゾ

  • 18天音テンリ(名誉美食研)25/02/18(火) 21:53:28

    「こんにちは、今日も来ちゃいました。」

    「お待ちしておりました、ヒフミ様。どうぞこちらへ。」

    阿慈谷ヒフミ、彼女は最近ティーパーティーに入り浸っている一般の生徒である

    ティーパーティーの空間にほぼ顔パスで入ってくる生徒が"一般"の括りに入るかは怪しいが、少なくともティーパーティーに所属していないその他大勢の1人であることに変わりない

    ヒフミがナギサと知り合ったのは金や権力などではなく、純然たる偶然だ

    しかしながら今もこうして定期的に会う仲なのは彼女の人柄故だろう

    少々頻繁に会い過ぎている気がするが、業務に支障をきたしているわけではないので特に言うことは無い


    テンリとヒフミは・・・

    dice1d4=2 (2)

    1.知り合いの知り合い、つまり実質他人

    2.プライベートで会えばそれなりに話す

    3.ともにクルセイダーでドライブする仲

    4.3 「ペロロ様いいですよね・・・」「いい・・・」

  • 19天音テンリ(名誉美食研)25/02/18(火) 23:00:39

    とにかく雇用主が良しとしており、実害も無い以上テンリとしては茶会の準備を整えるだけである

    モモフレンズ、特にペロロというキャラクターのことになると熱くなりすぎるのが気掛かりだが

    如何せんナギサはモモフレンズには疎いので、一度そうなると話についていけなくなる

    そうして度々テンリに救援を求める視線を向けるが、無情にも首を横に振られるまでがセットだ

    残念ながら、守銭奴にそんなものへ支払うお金などびた一文と無いのである

    ~~~

    「このままではいけません!」

    「はぁ・・・。」

    ヒフミが帰ると、ナギサが勢いよく立ち上がる

    「私たちはモモフレンズに疎すぎます。いつも話についていけず、ヒフミさんに気を遣わせてばかり。茶会のホストとして早急に対策せねばなりません!」

    ナギサは本気だった

    普段の倍はあろうかという速度で仕事を終わらせ、勉強さえ後回しにしてしまうくらいには───


    モモフレンズ力(?)の成長

    ナギサ dice1d100=38 (38)

    テンリ dice1d100=95 (95)

  • 20天音テンリ(名誉美食研)25/02/19(水) 00:11:35

    「見てくださいナギサ様!」
    「あら、また新しいぬいぐるみですか?」
    紅茶を一口、その間にぬいぐるみの特徴を分析し、それがどのペロロなのかを推測する
    ───星柄のボールに片足で乗っているペロロのぬいぐるみ、これは・・・
    「確か、ワイルドハント芸術学院の方がデザインしたものでしたね。」
    「ナギサ様もご存じなんですね!」
    ナギサは成長していた、少なくともその辺の道を歩く人よりは詳しいくらいには成長していた
    「恐れながらナギサ様、正確にはそのうちのゲヘナの一部地域で初期に生産された個体かと。ボールの星のうち青が3つ多く、赤が1つ、そして黒が2つ少ないので。」
    「そうなんです!!これを手に入れるのに本当に苦労しまして・・・。というかテンリさん、よくわかりましたね!?」
    ・・・何故かテンリがもっと成長していた
    おかしい、自分がヒフミと仲良くなるためにしたはずなのに実際に仲を深めているのはテンリだ・・・ナギサは考えるのをやめた

  • 21二次元好きの匿名さん25/02/19(水) 04:12:52

    面白いダイス結果だな

  • 22二次元好きの匿名さん25/02/19(水) 12:30:07

    まーたナギサ様の脳が破壊されておられる

  • 23二次元好きの匿名さん25/02/19(水) 12:32:40

    >>22

    いうほどか?

  • 24二次元好きの匿名さん25/02/19(水) 12:51:06

    >>23

    >>22はそう思ってるんだそっとしといて差し上げろ

  • 25秋場エス25/02/19(水) 20:05:33

    どうどう、そう騒ぐんじゃない

  • 26天音テンリ(名誉美食研)25/02/19(水) 20:51:45

    ここは公平に、ダイス神に決めてもらいましょう

    ナギサ様の脳へのダメージ(1でまあそんなこともある、50で普通にショック、100でトラウマ、120があはは・・・)

    dice1d100=38 (38)

  • 27天音テンリ(名誉美食研)25/02/19(水) 21:12:19

    その日は、表面上平穏な日だった
    不良が騒いで正義実現委員会に連行され、紅茶と珈琲のどちらが素晴らしいかで銃撃戦が始まるようなありふれた日だ

    セイア、死亡

    その知らせは凪いだ水面に一滴の雫が落ちてできた波のように、トリニティ総合学園の上層部を伝播した

  • 28天音テンリ(名誉美食研)25/02/19(水) 21:48:53

    ナギサはここ1年でも特に焦っていた
    自分にとって身近な存在が死んでしまったというのが、想像を絶するショックだったのだ
    「こんな時にすら、協力体制を気付けないなんて・・・。」
    三大派閥の次期首長の1人が死んだというのに、連携どころか足の引っ張り合いすら発生していた
    ことはトリニティ全体、下手するとキヴォトス全体をも揺るがしかねないというのにだ
    「失礼いたします。ナギサ様、報告書を持ってまいりました。」
    「・・・ええ、ありがとうございます。受け取りますね。」
    頭を振って怒りを冷ます
    今すべきことは情報を集めて、精査すること
    いつも通り紅茶を飲み、資料を読み込んでいく

  • 29天音テンリ(名誉美食研)25/02/19(水) 22:34:54

    「これは・・・やはり、そうですか。」
    救護騎士団からの報告によれば、部屋から見つかった遺体は百合園セイアのものであり、その死因となった凶器は爆発物で間違いないらしい
    キヴォトスの生徒の体はかなり頑丈だ
    セイアがいくら脆弱な部類とは言え、生半可な威力の爆弾では死にきれない
    自殺をするなら、首吊りなり薬物なりを選ぶだろう
    となれば、この件は他殺と考えて間違いないだろう
    救護騎士団が虚偽報告をしている可能性は・・・それをするメリットが思いつかないので取り敢えず無いものとしておく
    「しかし、いったい誰が。」
    犯行時刻は深夜3時頃、アリバイらしいアリバイを持つ者は残念ながら居ない
    凶器と思われる爆弾も、あまりに特殊すぎて製造元すら特定に至らない
    誰が犯人か分からない、否、誰もが犯人足りえる状況だった

  • 30天音テンリ(名誉美食研)25/02/19(水) 22:52:06

    次期首長を狙っての犯行であることを踏まえると、犯人は来年を見据えたプランで動いていると考えていい
    そして幼馴染の政治力はアレなので、次に狙われるなら自分だろうとナギサは推測する
    ミカが天真爛漫であった分、ナギサはやや疑心暗鬼な性格に育っていた
    これ自体は幼馴染を守りたいが故のものだったが、如何せん今回ばかりは何もかも悪い方向に噛み合っている
    ───一体誰が?セイアさん以外で有力候補だった誰か?それとも私の部下の独断専行?パテル分派の方々は血の気の多い方が沢山いらっしゃいますし・・・なんだったら他校の可能性も・・・
    全てが、そう全てが疑わしい
    加速し続ける疑心暗鬼と、次に狙わるのは自分かもしれないというストレスがナギサの心を締め付けた

  • 31天音テンリ(名誉美食研)25/02/19(水) 23:09:53

    日に日に窶れていき、周囲からの心配の視線にすら怯えるようになり、ついには業務も投げ捨ててセーフティハウスに籠り始める
    食事をしようとすれば毒殺が怖くなり、かといって毒見を頼もうと思っても毒見役に直接手を下されるのを恐れた
    もしや月光が有害物質で汚染されたのではないかという荒唐無稽な考えすら頭を過りだし、カーテンも閉め切った
    いつ爆発するかも分からない部屋の中、心もとない薄さの天蓋の庇護下でうずくまる
    次はお前の番だと、室温が囁く
    お前のヘイローを破壊する手筈は整っていると、星々が騒く
    私を独りにさせるのかい?と、セイアが語り掛ける
    顔を隠した修道女に絞め殺される夢を見て目を覚ませば、首を絞めていたのは自分の手であることに気が付く
    空っぽの胃が何度もひっくり返り、ゴミ箱には赤っぽい液体が溜まっている
    幼い頃に聞かされた、着た人を呪う死のドレスの話を思い出せば手当たり次第に服を破り捨て
    百鬼夜行では、隙間から怪異が現れるという噂を思い出せば隙間という隙間をテープで埋めた

  • 32天音テンリ(名誉美食研)25/02/20(木) 00:46:18

    「ナギサ・・・。」
    夢の中、セイアはナギサの様子を見ていた
    セイア死亡という情報は安全を確保するためのデマであり、セイアはしっかり生きていた
    そして、それによって引き起こされたナギサの発狂
    その夢を見たのは、セイアが身を隠したのを見計らったかのようなタイミングであった
    もっと早く見ていればと、ついそんなことを思ってしまう
    知っていたところで行動は変わらなかっただろうが、だからってこのタイミングはないだろう
    「すまない・・・」
    意味なんて無いはずなのに、横たわるナギサへ向けて手を伸ばす
    偶然か、あるいは祈りが届いたのか
    ナギサの腕が、ふらりと動き出した

  • 33二次元好きの匿名さん25/02/20(木) 08:05:03

    色々可哀想

  • 34二次元好きの匿名さん25/02/20(木) 13:15:00

    お労しやナギ上……

  • 35二次元好きの匿名さん25/02/20(木) 20:49:31

    うーん酷い

  • 36天音テンリ(名誉美食研)25/02/20(木) 21:21:47

    どれほど時間が経っただろう、時計は爆発すると怖いのでとうの昔に投げ捨てた
    何か行動をする気力も失って、やっと今の自分がまともじゃないことに思い至る
    着るものが無くなって、瘦せこけた自分の体をじっと見つめた
    今まさに、桐藤ナギサは他ならぬナギサ自身の手によって死に近づいている
    これでは向こうの思う壺ではないか!
    それに気付くと、今までの行いが途端に馬鹿馬鹿しく思えてくる
    あんなに必死になって、やっと手が届きそうなのが自分の死とは笑えない
    今のままではいけないと、ゆっくりとふらつきながら
    それでも確かに、ナギサは自分の足で立ち上がった

  • 37天音テンリ(名誉美食研)25/02/20(木) 22:06:23

    何か無いか、探すように部屋を歩き回る
    犯人を特定できる名推理である必要は無い
    殺人を未然に防げる防御手段である必要も無い
    もっと単純に、信用できる何か
    何か、何か・・・
    やはり何も、見つからない
    一握の気力さえも焼べて、それでも状況は変わらない
    心身ともに疲れ果てて椅子にへたり込んだ

  • 38天音テンリ(名誉美食研)25/02/20(木) 22:25:23

    人の脳は不思議なもので、一見関係なさそうなことを関連付ける
    椅子に座る、あまりにもありふれた行為
    そんなつまらない現象が、ある記憶を呼び起こす
    それはある少女のことだ
    金にがめつくて、金に誠実な側仕え
    記憶が正しければ次の命令を出すまで待機していろと命じていた
    彼女はまだそこに居るだろうか?
    心配だ・・・でも何もしないよりはマシなはず
    意を決して、乾燥した口を開いた

  • 39天音テンリ(名誉美食研)25/02/20(木) 22:56:13

    「テンリさん・・・まだ、居ますか。」
    掠れた、酷い声だと自嘲する
    「はい、ここに。」
    それにテンリは、僅かな間も開けることなく答えた
    「私が籠ってからどれくらい経ちましたか。」
    「3日です。」
    随分と引き籠もったものだ
    3日も飲まず食わずの雇用主に心配の一言も無いのが彼女らしい
    テンリの全てを信用するのは難しいかもしれない、でも彼女の、金銭への態度へならあるいは
    そう思い、隠し棚に入れてあった箱を取り出して部屋の扉を開けた

  • 40天音テンリ(名誉美食研)25/02/20(木) 23:14:34

    扉の先には、いつも通りの微笑みを崩すことなく直立不動のテンリがいる
    しかしその顔には隈があり、どこか痩せ細ったように見えてしまう
    「あなた・・・睡眠は?食事は?」
    「ここで待機しろと命じられたので、それに従ったまで。それが私の仕事であり、私とナギサ様との契約ですから。」
    事もなげに言うが、待てと言われて3日間もただ待つなど尋常ではない
    今のナギサに笑ったり拳を握りこんだりするようなことはできないが、辛うじて一筋の涙が頬を伝う
    「・・・私の格好には何も言わないんですね。」
    「そんなに言ってほしいなら別途費用を請求します。」
    体力は限界ギリギリなので、心の中だけで肩をすくめる
    やはりテンリの価値観を真に理解するのは、到底できない
    しかし、その価値観を信じてナギサは一歩踏み出す

  • 41二次元好きの匿名さん25/02/20(木) 23:31:32

    今のナギサは金銭という担保でテンリを信用するんだろうけど実際テンリ側の忠誠が半端ないからそうしていたんだろうと気付けなそうだな

  • 42天音テンリ(名誉美食研)25/02/20(木) 23:32:14

    「これで、貴方の忠誠を買わせてください。」
    そう言って、持ってきた箱をテンリに差し出す
    箱の中身は貴金属や宝石類
    もしかしたら、口座が使えないような事態に陥るかもしれない
    そんな時でもまとまった資金を確保できるようにとセーフティハウスに配置していたものだ
    テンリはその箱の中を一瞥すると、慇懃な態度で膝をついて箱を受け取る
    「貴方様に、永遠の忠誠を誓いましょう。我が主様。」
    カーテン越しに、日の出の光が入ってくる
    所詮はまだ地雷原の中、道が分かったわけでも地雷が取り除かれたわけでもない
    それでも大切な、大きな一歩

  • 43天音テンリ(名誉美食研)25/02/21(金) 00:10:53

    「まずは服を着ましょう。そして食事を。着替えは手伝った方がいいですか?」
    「いえ、それには及びません。・・・というより、ここに服がもうありません。」
    安心して呼吸ができるのはいつ以来だろう
    何か食べたいと思えたのも久しぶりだ
    「そうでしたか。では一先ずこれを。」
    テンリはどこからともなく上着を取り出し、ナギサに羽織らせる
    「ありがとうございます。」
    他人の気遣いを素直に受け入れられるのが、ナギサには新鮮なことのように思えた
    「一応言っておきますが、豪勢な食事は求めないでくださいよ?今日のメニューはドライトーストです。」
    「わかってますよ、それくらい。」
    確かにいつもの食事とは程遠い
    でも内容がなんであれ、こんなにも晴れやかな気持ちで食べる食事は、きっと美味いだろう

    注釈 ドライトーストとはただトーストしただけの食パンのこと。英国での病人食の1つ。

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