【オリキャラ・ダイス】カスの金勘定~ナギサ様専属お椅子運び係~ part1.5

  • 1天音テンリ(名誉美食研)25/02/17(月) 21:52:31

    これまでのあらすじ
    トリニティのお嬢様、天音テンリ
    生まれた時からフィリウス分派に入ることが運命付けられている彼女は令嬢の身分でありながら守銭奴だった

    頑丈さこそあるものの能力は軒並み平均以下
    そんな彼女に対してナギサは椅子運びを命じる

    そして時は次期首長も決まってしばし
    ナギサ、ミカ、セイアの3人で巨大なパフェを食べた、その帰路から・・・

  • 2天音テンリ(名誉美食研)25/02/17(月) 21:56:37
  • 3天音テンリ(名誉美食研)25/02/17(月) 21:58:41

    「待つんだミカ、そっちはどう見ても裏路地だろう?何故そっちに・・・。」
    「いいじゃん近道だよ☆よく通ってるし大丈夫だって。」
    「椅子が通らないので、私はこちらから帰ります。」
    テンリを見送り、ナギサはやや遅れて裏路地に入った
    2人の背中に視線を移し、その目がすっと細くなる
    久しぶりに同じ時間を過ごせる幼馴染
    自分以上に知的で、高めあえる友
    どちらもナギサにとって大事な友人であり、2人との時間はかけがえのないものだ
    ただ気がかりなのはその2人の仲がまだ少しギクシャクしていることである
    主義主張も違えば持ち合わせている知識量も全く違う2人だ
    そもそも会話が噛み合わないことを思えば仲良くできている方かと自身を納得させる

  • 4天音テンリ(名誉美食研)25/02/17(月) 22:01:33

    「う゛ぁ!?」
    なんて、考えながら歩ていたからだろうか
    後ろから拘束されて銃口を突きつけられる
    周囲は完全に包囲されていた
    ナギサは咄嗟にミカにアイコンタクトを送ると無抵抗のポーズをとる
    ミカはセイアを守るように立って周囲に威圧する
    セイアはナギサに負けず劣らず脆いので、現状まともに動けるのはミカだけだ
    愛銃であるサブマシンガンを持って敵を観察する
    包囲しているのは不良生徒と武装したロボ市民による混成部隊だ
    「なんだぁ、やる気か?」
    「そっちこそ、できるんならやってみたら?」
    脅しに煽りで返すとセイアを守るためか、その羽でセイアを抱き寄せるようにして覆い、ミカ本人は無防備になる

  • 5天音テンリ(名誉美食研)25/02/17(月) 22:03:05

    「私から離れちゃダメだよ。」
    「えっ、み、ミカ??」
    ミカはセイアに囁くと笑顔でウインクをした
    「チッ、舐めやがって!」
    いかにも余裕綽々という様子にイライラが限界になったのか、1人の合図に合わせて銃弾が四方八方からミカに襲い掛かる
    生徒というのは頑丈なものだ、これでも倒せない可能性は高いだろうと不良達は分かってる
    だが痛手にはなるはずだと思っていた
    そんな彼女たちの想像に反してミカはほぼ無傷だった
    綺麗に手入れされた透き通るような肌はおろか、羽にすら碌なダメージを与えられていない
    ミカは強者だ
    それも鍛錬など積んでいない、理屈も何もなく生まれつき強い
    ただ天がかくあれと定めたが故の強者であった

  • 6天音テンリ(名誉美食研)25/02/17(月) 22:04:45

    涼しい顔で襲撃者たちを1人、また1人と倒していく
    そうして開いた道を悠々と歩き、ナギサを拘束している不良の方に近づいていく
    「おい、こいつがどうなってもいいのか!?」
    その問いにミカはただ不敵な笑みを浮かべて歩を進める
    「来るな、来るなぁぁああ!」
    銃口を人質から離せば後は容易い
    引き金に指をかけ、照準を合わせる
    その狙い澄まされた一撃が不良の顔面に命中する

  • 7天音テンリ(名誉美食研)25/02/17(月) 22:05:32

    「あがっ」
    呻き、倒れこむ
    その姿はまさしく絶対者
    自分に絶対の自信があり、圧倒的なフィジカルを持ち、有り余る神秘を保有する
    不良の少女は地面に伏して拳を握りこむ
    持つ者にしか許されない戦法、自分には絶対に届かない領域
    その光に焼かれるように、少女は意識を手放した

  • 8天音テンリ(名誉美食研)25/02/17(月) 22:06:14

    「これで最後かな☆」
    「そう、ですね。他には居なさそうです。」
    あたかもよくあることなのかのように2人は会話する
    セイアが唖然としている間に不良集団を脇によせ、ミカとナギサはそのまま裏路地を進みだした
    「・・・これはよくあることなのか?」
    流石にスルーもできず、ナギサにひっそりと聞く
    それにナギサはそうですね、と一度肯定して一呼吸置くと昔のことを話し出した

  • 9天音テンリ(名誉美食研)25/02/17(月) 22:07:46

    「昔からミカさんはやんちゃと言いますか。何かと無茶しますし、実際にそれを押し通せる力があったんです。」
    門限ギリギリまで遊び尽くして、ミカがナギサを背負って全力で走って帰宅したこと
    身代金目的で誘拐してきた大人を拳一つで全員なぎ倒してそのままショッピングをしたこと
    話せば話すほど昔話が溢れていく
    「仲が、いいんだな。」
    ふと、セイアはそんな言葉を零してしまう
    口に出して漸く自覚した
    2人の、昔馴染み特有の空気感が、どこか羨ましかったのだろう
    あるいは妬ましかったのかもしれない
    「・・・そうですね。」
    一瞬、影が差し、そしてそれを振り払うようにしてナギサはセイアに向き直る

  • 10天音テンリ(名誉美食研)25/02/17(月) 22:08:50

    「あなたもこの輪の中にいるんですよ?セイアさん。」
    その言葉に目をぱちぱちとして見つめるセイアの様子がおかしくて、自然と笑みが浮かんでくる
    「もう2人とも!遅いと置いていくよー!」
    いつの間にかミカは路地を抜けているようで、向こうから笑顔で手を振っている
    ナギサとセイアはお互いに向き合うと、2人して肩をすくめる
    「行きましょうか。」
    「そうだな。」
    そう言って、並んで走り出す

  • 11天音テンリ(名誉美食研)25/02/17(月) 22:09:45

    「案外、なんとかなるものだな。」
    「ん?今何か・・・」
    「独り言だよ、気にする必要はないさ。」
    結局2人に打ち明けることはなかったが、セイアはこの事件を予知していた
    知っていて、話すことはできなかった
    起こることは避けられないから
    だが結末はどうだ?ミカがパワーで全てねじ伏せたではないか
    「エンドロールはまだ未定。なら挽回の余地は残されている、か。」
    今度は聞かれないように、静かに呟く
    来るその日のために、セイアは静かに準備を始めた

  • 12天音テンリ(名誉美食研)25/02/17(月) 22:25:31

    次期首長であることが決まったとはいえ、ナギサの仕事は変わらない

    そもそも、ナギサは進級時点で次期首長であることがほぼ確定していた身である

    当然今日の予定も重要書類サインをし、椅子を運び込んでの話し合いだ


    「本日はdice1d8=7 (7) へ向かいます。」

    1.ミカさんの部屋

    2.フィリウス分派内での会議

    3.パテル分派との会談

    4.サンクトゥス分派との会談

    5.それ以外の分派との会談

    6.正義実現委員会との会談

    7.シスターフッドとの会談

    8.他校との会談


    重要度 高いほど重要で機密性を求められる、行先が1番の場合は高ければ公的なもので低ければ私的なもの

    dice1d100=33 (33)

  • 13天音テンリ(名誉美食研)25/02/17(月) 22:49:02

    「本日はよろしくお願いしますね。ナギサさん。」
    柔和な笑みを浮かべ、お互いに挨拶を行う
    「こちらこそ、よろしくお願いします。サクラコさん」
    今ナギサの前にいるのは歌住サクラコ、シスターフッド内でナギサが注視している人物の1人
    立ち振る舞い、表情、言い回し、声、その1つ1つに意識を惹かれてしまう
    偶然や自然体というには無理があるだろう、既に一部とはいえ部下の中にも彼女の信奉者が現れている
    故にナギサにとって、サクラコは警戒に値する人物であった

  • 14天音テンリ(名誉美食研)25/02/17(月) 23:19:05

    名目上、今回の会談はシスターフッドとフィリウス分派の定期会談だ
    話される内容自体も、そこまで重要性が高いというわけではない
    しかしこの時期の会談は事実上、それぞれの組織の次期リーダーの顔合わせと言っていい
    それは今回も同様であり、この場にサクラコがいるということはつまり、シスターフッドの次期リーダーはサクラコであるということ
    ───やはりですか、来年はシスターフッドとの"調整"にかなり気を遣うことになりそうです
    少なくとも表面上、サクラコに権力欲があるようには見えない
    しかしそのカリスマ性と迂遠な言葉選びから油断禁物なのは明らかだ
    腹の探り合い、裏の読みあい
    同学年でここまで緊張感を持つ相手はそうそういない
    冷や汗を隠すように紅茶を飲み、本音を悟られないよう言葉を選ぶ
    ナギサはサクラコへの警戒レベルを更に引き上げ、ボロが出さないためになるべく早くかつ自然に会談を終わらせた
    ・・・なお、当のサクラコが「お菓子を食べる姿すら気品があって美しいなんて、流石ですね」などという大変平和なことを考えていることにナギサが気付くことはついぞ無かった
    なんならこの時点でサクラコはまさか自分がシスターフッドの次期リーダーとして推されているとは考えてもいなかった

  • 15二次元好きの匿名さん25/02/18(火) 04:16:03

    あ、復活してる!嬉しい

  • 16秋場 エス25/02/18(火) 12:24:59

    おいおい…どうやってアンタと見分けをつけたらいいんだ…

  • 17二次元好きの匿名さん25/02/18(火) 19:15:04

    >>16

    ブルーアーカイブあるあるピンク髪が多すぎます!

    なので気にしたら負けゾ

  • 18天音テンリ(名誉美食研)25/02/18(火) 21:53:28

    「こんにちは、今日も来ちゃいました。」

    「お待ちしておりました、ヒフミ様。どうぞこちらへ。」

    阿慈谷ヒフミ、彼女は最近ティーパーティーに入り浸っている一般の生徒である

    ティーパーティーの空間にほぼ顔パスで入ってくる生徒が"一般"の括りに入るかは怪しいが、少なくともティーパーティーに所属していないその他大勢の1人であることに変わりない

    ヒフミがナギサと知り合ったのは金や権力などではなく、純然たる偶然だ

    しかしながら今もこうして定期的に会う仲なのは彼女の人柄故だろう

    少々頻繁に会い過ぎている気がするが、業務に支障をきたしているわけではないので特に言うことは無い


    テンリとヒフミは・・・

    dice1d4=2 (2)

    1.知り合いの知り合い、つまり実質他人

    2.プライベートで会えばそれなりに話す

    3.ともにクルセイダーでドライブする仲

    4.3 「ペロロ様いいですよね・・・」「いい・・・」

  • 19天音テンリ(名誉美食研)25/02/18(火) 23:00:39

    とにかく雇用主が良しとしており、実害も無い以上テンリとしては茶会の準備を整えるだけである

    モモフレンズ、特にペロロというキャラクターのことになると熱くなりすぎるのが気掛かりだが

    如何せんナギサはモモフレンズには疎いので、一度そうなると話についていけなくなる

    そうして度々テンリに救援を求める視線を向けるが、無情にも首を横に振られるまでがセットだ

    残念ながら、守銭奴にそんなものへ支払うお金などびた一文と無いのである

    ~~~

    「このままではいけません!」

    「はぁ・・・。」

    ヒフミが帰ると、ナギサが勢いよく立ち上がる

    「私たちはモモフレンズに疎すぎます。いつも話についていけず、ヒフミさんに気を遣わせてばかり。茶会のホストとして早急に対策せねばなりません!」

    ナギサは本気だった

    普段の倍はあろうかという速度で仕事を終わらせ、勉強さえ後回しにしてしまうくらいには───


    モモフレンズ力(?)の成長

    ナギサ dice1d100=38 (38)

    テンリ dice1d100=95 (95)

  • 20天音テンリ(名誉美食研)25/02/19(水) 00:11:35

    「見てくださいナギサ様!」
    「あら、また新しいぬいぐるみですか?」
    紅茶を一口、その間にぬいぐるみの特徴を分析し、それがどのペロロなのかを推測する
    ───星柄のボールに片足で乗っているペロロのぬいぐるみ、これは・・・
    「確か、ワイルドハント芸術学院の方がデザインしたものでしたね。」
    「ナギサ様もご存じなんですね!」
    ナギサは成長していた、少なくともその辺の道を歩く人よりは詳しいくらいには成長していた
    「恐れながらナギサ様、正確にはそのうちのゲヘナの一部地域で初期に生産された個体かと。ボールの星のうち青が3つ多く、赤が1つ、そして黒が2つ少ないので。」
    「そうなんです!!これを手に入れるのに本当に苦労しまして・・・。というかテンリさん、よくわかりましたね!?」
    ・・・何故かテンリがもっと成長していた
    おかしい、自分がヒフミと仲良くなるためにしたはずなのに実際に仲を深めているのはテンリだ・・・ナギサは考えるのをやめた

  • 21二次元好きの匿名さん25/02/19(水) 04:12:52

    面白いダイス結果だな

  • 22二次元好きの匿名さん25/02/19(水) 12:30:07

    まーたナギサ様の脳が破壊されておられる

  • 23二次元好きの匿名さん25/02/19(水) 12:32:40

    >>22

    いうほどか?

  • 24二次元好きの匿名さん25/02/19(水) 12:51:06

    >>23

    >>22はそう思ってるんだそっとしといて差し上げろ

  • 25秋場エス25/02/19(水) 20:05:33

    どうどう、そう騒ぐんじゃない

  • 26天音テンリ(名誉美食研)25/02/19(水) 20:51:45

    ここは公平に、ダイス神に決めてもらいましょう

    ナギサ様の脳へのダメージ(1でまあそんなこともある、50で普通にショック、100でトラウマ、120があはは・・・)

    dice1d100=38 (38)

  • 27天音テンリ(名誉美食研)25/02/19(水) 21:12:19

    その日は、表面上平穏な日だった
    不良が騒いで正義実現委員会に連行され、紅茶と珈琲のどちらが素晴らしいかで銃撃戦が始まるようなありふれた日だ

    セイア、死亡

    その知らせは凪いだ水面に一滴の雫が落ちてできた波のように、トリニティ総合学園の上層部を伝播した

  • 28天音テンリ(名誉美食研)25/02/19(水) 21:48:53

    ナギサはここ1年でも特に焦っていた
    自分にとって身近な存在が死んでしまったというのが、想像を絶するショックだったのだ
    「こんな時にすら、協力体制を気付けないなんて・・・。」
    三大派閥の次期首長の1人が死んだというのに、連携どころか足の引っ張り合いすら発生していた
    ことはトリニティ全体、下手するとキヴォトス全体をも揺るがしかねないというのにだ
    「失礼いたします。ナギサ様、報告書を持ってまいりました。」
    「・・・ええ、ありがとうございます。受け取りますね。」
    頭を振って怒りを冷ます
    今すべきことは情報を集めて、精査すること
    いつも通り紅茶を飲み、資料を読み込んでいく

  • 29天音テンリ(名誉美食研)25/02/19(水) 22:34:54

    「これは・・・やはり、そうですか。」
    救護騎士団からの報告によれば、部屋から見つかった遺体は百合園セイアのものであり、その死因となった凶器は爆発物で間違いないらしい
    キヴォトスの生徒の体はかなり頑丈だ
    セイアがいくら脆弱な部類とは言え、生半可な威力の爆弾では死にきれない
    自殺をするなら、首吊りなり薬物なりを選ぶだろう
    となれば、この件は他殺と考えて間違いないだろう
    救護騎士団が虚偽報告をしている可能性は・・・それをするメリットが思いつかないので取り敢えず無いものとしておく
    「しかし、いったい誰が。」
    犯行時刻は深夜3時頃、アリバイらしいアリバイを持つ者は残念ながら居ない
    凶器と思われる爆弾も、あまりに特殊すぎて製造元すら特定に至らない
    誰が犯人か分からない、否、誰もが犯人足りえる状況だった

  • 30天音テンリ(名誉美食研)25/02/19(水) 22:52:06

    次期首長を狙っての犯行であることを踏まえると、犯人は来年を見据えたプランで動いていると考えていい
    そして幼馴染の政治力はアレなので、次に狙われるなら自分だろうとナギサは推測する
    ミカが天真爛漫であった分、ナギサはやや疑心暗鬼な性格に育っていた
    これ自体は幼馴染を守りたいが故のものだったが、如何せん今回ばかりは何もかも悪い方向に噛み合っている
    ───一体誰が?セイアさん以外で有力候補だった誰か?それとも私の部下の独断専行?パテル分派の方々は血の気の多い方が沢山いらっしゃいますし・・・なんだったら他校の可能性も・・・
    全てが、そう全てが疑わしい
    加速し続ける疑心暗鬼と、次に狙わるのは自分かもしれないというストレスがナギサの心を締め付けた

  • 31天音テンリ(名誉美食研)25/02/19(水) 23:09:53

    日に日に窶れていき、周囲からの心配の視線にすら怯えるようになり、ついには業務も投げ捨ててセーフティハウスに籠り始める
    食事をしようとすれば毒殺が怖くなり、かといって毒見を頼もうと思っても毒見役に直接手を下されるのを恐れた
    もしや月光が有害物質で汚染されたのではないかという荒唐無稽な考えすら頭を過りだし、カーテンも閉め切った
    いつ爆発するかも分からない部屋の中、心もとない薄さの天蓋の庇護下でうずくまる
    次はお前の番だと、室温が囁く
    お前のヘイローを破壊する手筈は整っていると、星々が騒く
    私を独りにさせるのかい?と、セイアが語り掛ける
    顔を隠した修道女に絞め殺される夢を見て目を覚ませば、首を絞めていたのは自分の手であることに気が付く
    空っぽの胃が何度もひっくり返り、ゴミ箱には赤っぽい液体が溜まっている
    幼い頃に聞かされた、着た人を呪う死のドレスの話を思い出せば手当たり次第に服を破り捨て
    百鬼夜行では、隙間から怪異が現れるという噂を思い出せば隙間という隙間をテープで埋めた

  • 32天音テンリ(名誉美食研)25/02/20(木) 00:46:18

    「ナギサ・・・。」
    夢の中、セイアはナギサの様子を見ていた
    セイア死亡という情報は安全を確保するためのデマであり、セイアはしっかり生きていた
    そして、それによって引き起こされたナギサの発狂
    その夢を見たのは、セイアが身を隠したのを見計らったかのようなタイミングであった
    もっと早く見ていればと、ついそんなことを思ってしまう
    知っていたところで行動は変わらなかっただろうが、だからってこのタイミングはないだろう
    「すまない・・・」
    意味なんて無いはずなのに、横たわるナギサへ向けて手を伸ばす
    偶然か、あるいは祈りが届いたのか
    ナギサの腕が、ふらりと動き出した

  • 33二次元好きの匿名さん25/02/20(木) 08:05:03

    色々可哀想

  • 34二次元好きの匿名さん25/02/20(木) 13:15:00

    お労しやナギ上……

  • 35二次元好きの匿名さん25/02/20(木) 20:49:31

    うーん酷い

  • 36天音テンリ(名誉美食研)25/02/20(木) 21:21:47

    どれほど時間が経っただろう、時計は爆発すると怖いのでとうの昔に投げ捨てた
    何か行動をする気力も失って、やっと今の自分がまともじゃないことに思い至る
    着るものが無くなって、瘦せこけた自分の体をじっと見つめた
    今まさに、桐藤ナギサは他ならぬナギサ自身の手によって死に近づいている
    これでは向こうの思う壺ではないか!
    それに気付くと、今までの行いが途端に馬鹿馬鹿しく思えてくる
    あんなに必死になって、やっと手が届きそうなのが自分の死とは笑えない
    今のままではいけないと、ゆっくりとふらつきながら
    それでも確かに、ナギサは自分の足で立ち上がった

  • 37天音テンリ(名誉美食研)25/02/20(木) 22:06:23

    何か無いか、探すように部屋を歩き回る
    犯人を特定できる名推理である必要は無い
    殺人を未然に防げる防御手段である必要も無い
    もっと単純に、信用できる何か
    何か、何か・・・
    やはり何も、見つからない
    一握の気力さえも焼べて、それでも状況は変わらない
    心身ともに疲れ果てて椅子にへたり込んだ

  • 38天音テンリ(名誉美食研)25/02/20(木) 22:25:23

    人の脳は不思議なもので、一見関係なさそうなことを関連付ける
    椅子に座る、あまりにもありふれた行為
    そんなつまらない現象が、ある記憶を呼び起こす
    それはある少女のことだ
    金にがめつくて、金に誠実な側仕え
    記憶が正しければ次の命令を出すまで待機していろと命じていた
    彼女はまだそこに居るだろうか?
    心配だ・・・でも何もしないよりはマシなはず
    意を決して、乾燥した口を開いた

  • 39天音テンリ(名誉美食研)25/02/20(木) 22:56:13

    「テンリさん・・・まだ、居ますか。」
    掠れた、酷い声だと自嘲する
    「はい、ここに。」
    それにテンリは、僅かな間も開けることなく答えた
    「私が籠ってからどれくらい経ちましたか。」
    「3日です。」
    随分と引き籠もったものだ
    3日も飲まず食わずの雇用主に心配の一言も無いのが彼女らしい
    テンリの全てを信用するのは難しいかもしれない、でも彼女の、金銭への態度へならあるいは
    そう思い、隠し棚に入れてあった箱を取り出して部屋の扉を開けた

  • 40天音テンリ(名誉美食研)25/02/20(木) 23:14:34

    扉の先には、いつも通りの微笑みを崩すことなく直立不動のテンリがいる
    しかしその顔には隈があり、どこか痩せ細ったように見えてしまう
    「あなた・・・睡眠は?食事は?」
    「ここで待機しろと命じられたので、それに従ったまで。それが私の仕事であり、私とナギサ様との契約ですから。」
    事もなげに言うが、待てと言われて3日間もただ待つなど尋常ではない
    今のナギサに笑ったり拳を握りこんだりするようなことはできないが、辛うじて一筋の涙が頬を伝う
    「・・・私の格好には何も言わないんですね。」
    「そんなに言ってほしいなら別途費用を請求します。」
    体力は限界ギリギリなので、心の中だけで肩をすくめる
    やはりテンリの価値観を真に理解するのは、到底できない
    しかし、その価値観を信じてナギサは一歩踏み出す

  • 41二次元好きの匿名さん25/02/20(木) 23:31:32

    今のナギサは金銭という担保でテンリを信用するんだろうけど実際テンリ側の忠誠が半端ないからそうしていたんだろうと気付けなそうだな

  • 42天音テンリ(名誉美食研)25/02/20(木) 23:32:14

    「これで、貴方の忠誠を買わせてください。」
    そう言って、持ってきた箱をテンリに差し出す
    箱の中身は貴金属や宝石類
    もしかしたら、口座が使えないような事態に陥るかもしれない
    そんな時でもまとまった資金を確保できるようにとセーフティハウスに配置していたものだ
    テンリはその箱の中を一瞥すると、慇懃な態度で膝をついて箱を受け取る
    「貴方様に、永遠の忠誠を誓いましょう。我が主様。」
    カーテン越しに、日の出の光が入ってくる
    所詮はまだ地雷原の中、道が分かったわけでも地雷が取り除かれたわけでもない
    それでも大切な、大きな一歩

  • 43天音テンリ(名誉美食研)25/02/21(金) 00:10:53

    「まずは服を着ましょう。そして食事を。着替えは手伝った方がいいですか?」
    「いえ、それには及びません。・・・というより、ここに服がもうありません。」
    安心して呼吸ができるのはいつ以来だろう
    何か食べたいと思えたのも久しぶりだ
    「そうでしたか。では一先ずこれを。」
    テンリはどこからともなく上着を取り出し、ナギサに羽織らせる
    「ありがとうございます。」
    他人の気遣いを素直に受け入れられるのが、ナギサには新鮮なことのように思えた
    「一応言っておきますが、豪勢な食事は求めないでくださいよ?今日のメニューはドライトーストです。」
    「わかってますよ、それくらい。」
    確かにいつもの食事とは程遠い
    でも内容がなんであれ、こんなにも晴れやかな気持ちで食べる食事は、きっと美味いだろう

    注釈 ドライトーストとはただトーストしただけの食パンのこと。英国での病人食の1つ。

  • 44秋場 エス25/02/21(金) 07:44:51

    1年前にこんなことがあったとはな…

  • 45秋場エス25/02/21(金) 16:55:54

    念の為保守だ

  • 46天音テンリ(名誉美食研)25/02/21(金) 22:34:30

    時は遡り、3日前
    「次の指示を出すまでここで待機してください。」
    それは、非常に疑問が残る指示だった
    現在夕方、ナギサは寝室に入っていく
    仮眠のつもりなら、特定の時刻に起こすように言うだろう
    熟睡するつもりなら、もう帰っていいとか、最後の仕事を伝えるかするはずだ
    かと言って寝る気が無いのに寝室に入るのもおかしな話である
    内心首を捻るが、テンリは理由を聞く気にはなれなかった
    そしてお金を受け取っている以上、命令に背くわけにはいかない
    故に待つ、ひたすら待つ
    1時間、2時間・・・日付が変わっても、ナギサは部屋から出てこなかった

  • 47天音テンリ(名誉美食研)25/02/21(金) 22:50:41

    時折、ナギサの悲鳴や物が壊れる音が部屋から聞こえる
    ナギサの精神状態が良くないのは薄々察してはいた
    しかしテンリの業務の範囲内に「ナギサのメンタルケア」は含まれていない
    尤も、周りからの心配にすら怯えるような状態で何を言っても響くとは思えないが
    ただまあ、そうは言ってもこの状況は流石に心が痛む
    しかし出された命令は「待て」なのだ
    そろそろ24時間経ちそうだが、期間が「次の指示を出すまで」である以上テンリには待つことしか出来ない
    お金には誠実であれと、心で3回唱える
    奇声と破壊音を聞きながら、テンリは待ち続けた

  • 48天音テンリ(名誉美食研)25/02/21(金) 23:36:14

    意識が少しぼんやりとしてくる
    ナギサが部屋に籠って、2日
    テンリの脚は限界を超えている
    当然だろう、座るどころか1歩も動いていのだ
    なんせ「ここで」待機しろと言われたから
    睡眠も食事も取らず、じっと待ち続ける
    今になって、テンリは自分が「待つ」以外の選択を持っていないことを自覚する
    お金に誠実であるだけなら、返金して去ればいいだけの話だ
    もっと言えば2日間飲まず食わずで待機は給料に見合っているはずがない
    しかしそれを実行してしまうほど、テンリはナギサへ仕え甲斐を感じていた

  • 49天音テンリ(名誉美食研)25/02/22(土) 00:10:58

    テンリにとって、天音家はあまり居心地のいい場所ではなかった
    屋敷の中を見ればそれまで先祖が築き上げた財に胡坐を掻いて遊んでばかりの実家の人とその財を横領することに腐心して仕事を真面目にやらない侍従
    外から来るのはその財力にあやかろうとする者や騙して金を毟り取ろうとする者ばかり
    金から離れようと貧民街のような場所に行っても、金の無心やカツアゲをしてくる不良のなんと多いことか
    そんな中出会ったナギサは、理想的とすら言える存在だった
    仕事をさせればきちんと報酬を出すし、金の話をする彼女の顔は常に真剣そのものだった
    あまつさえ賄賂を「貴方のお金でしょう」などと真顔で言ってのけるのだから面白い
    勉強だとか自由時間だとか、そんなものは今はどうでもいい
    ただただ、ナギサのことを心待ちにしていた

  • 50天音テンリ(名誉美食研)25/02/22(土) 00:17:34

    「テンリさん・・・まだ、居ますか。」
    掠れていても、声の主はすぐにわかった
    「はい、ここに。」
    ずっとずっと待っていたから
    「私が籠ってどれくらい経ちましたか。」
    「3日です。」
    正確には、3日半だろうか
    食事や体調の心配は仕事ではないので聞かないでおく
    少し物音がある中で、テンリはじっと待つ

  • 51天音テンリ(名誉美食研)25/02/22(土) 00:25:54

    扉を開けたナギサは、それはそれは酷いあり様だった
    服を着ていないせいで痩せ細った病的な肢体が露になっており、顔も籠る前より明らかに隈が濃くなっている
    肌と髪の荒れ様がそのままナギサの心を形にしたようで、思わず拳をぎゅっと握りこむ
    「あなた・・・睡眠は?食事は?」
    「ここで待機しろと命じられたので、それに従ったまで。それが私の仕事であり、私とナギサ様との契約ですから。」
    正直に言えば心身ともに限界などとっくに超えており、今こうしてまともに受け答えができているのはナギサが扉を開けてくれたからだ
    「・・・私の格好には何も言わないんですね。」
    「そんなに言ってほしいなら別途費用を請求します。」
    これは本心だ、同時に自分のことを「買って」ほしいという思いの裏返しでもあった

  • 52天音テンリ(名誉美食研)25/02/22(土) 00:31:24

    「これで、貴方の忠誠を買わせてください。」
    この3日で体が震えたのは数え切れない
    だが、心までも震えたのはこれが1回目だ
    差し出されたのは貴金属や宝石類
    それぞれがいくらかを鑑定する時間さえ惜しい
    封印が解かれたように体が動き出し、膝をついて箱を受け取る
    「貴方様に、永遠の忠誠を誓いましょう。我が主様。」
    薄っすらとナギサの影が視界に入る
    面を上げるよう言われて見上げた先には、後光が差している主の姿があった

  • 53秋場 エス25/02/22(土) 08:33:37

    カネ…どっかの会長とおんなじだな全く

  • 54秋場 エス25/02/22(土) 15:00:32

    念の為の保守だ

  • 55天音テンリ(名誉美食研)25/02/22(土) 22:20:19

    時間経過というのは非常に主観的なもので、3日が恐ろしく長いこともあれば1年があっという間のこともある
    テンリがトリニティに入学して1年、気付けば進級が目前まで迫っていた
    意外にもセイアが襲撃されて以降大きな事件は特に無く、一応トリニティは平和を享受していた
    ・・・紅茶にミルクを注ぐかミルクに紅茶を注ぐかで銃撃戦が起こる状態を平和と言うならの話だが
    「取り敢えず、これで後のことは心配ないですかね。」
    「実際に首長になる前に自分がいなくてもなんとかなる体制を作る人初めて見ましたよ。」
    ナギサは連邦生徒会から提案されたエデン条約の準備と同時進行で行っていたのが自分がいなくなった場合への備えだった
    当然ナギサもただで死ぬつもりは無いが、長期間雲隠れする必要性は出るかもしれない
    セーフティハウスを筆頭に自分が生き延びる策はそれなりに講じていたが、フィリウス分派のことは考慮していなかったのだ

  • 56天音テンリ(名誉美食研)25/02/22(土) 23:01:33

    「ええまあ、3日空けただけであのような惨状になってしまったのを見るとどうしても不安で。」
    苦笑しながらそう言うナギサに対し、テンリは肩をすくめた
    確かにあの時、ナギサが戻った直後のフィリウス分派は中々に酷い状態だった
    セイアに続いてナギサが居なくなったことによりパニックが起こったり、幹部同士で争いが起きて内部分裂しかけたりと統制がとれていなかった
    現首長が居たおかげで業務は回せていたし内部分裂の方も辛うじて抑えられていたが、来年同じ状況になったらフィリウス分派は崩壊するだろう
    故にナギサは「首長無しで業務を回せる体制」を作ったのである
    その体制案を見せられたときの現首長の顔が、最早悟りの境地に踏み入れたような表情だったのをテンリは未だに思い出せる
    「エデン条約、成功しますかね。」
    「させるだけです。」
    テンリの呟きに、ナギサははっきりと強い意志を宿した瞳で答える
    「それに、彼女がいれば心配無用でしょう。」
    彼女、それはエデン条約の発案者であり超人とも呼ばれる人物
    テンリも確かにあの人がいれば何とでもなるかと納得する
    ・・・その前提が、まさか根本的にひっくり返るとは誰も予想することはできなかった

  • 57天音テンリ(名誉美食研)25/02/23(日) 00:23:25

    ナギサは絶賛修羅場であった
    それもそのはず、エデン条約の発案者がまさかの失踪を遂げたのだ
    単純な治安の悪化とエデン条約関係のダブルパンチ、ナギサの胃はボロボロである
    幼馴染は反対の立場だが、ナギサとしてはなんとしてもエデン条約は成功させたかった
    今年のトリニティの上層部はゲヘナに対し比較的穏健な態度を示す人物が多い
    元々エデン条約は雷帝への対策として発案されたものであり、当時のトリニティとしては是が非でも結びたいものだった
    そのためそもそも穏健派の生徒が重用されたし、エデン条約への準備で"まともな"ゲヘナ生と触れ合うことも多かったからその傾向は一入である
    しかし雷帝が去った今、来年以降もその傾向が続くとは限らない
    だからナギサは自身のコネ、権力、財力、実務能力の全てを使ってエデン条約を推し進めていた
    「ナギサ様、急ぎ報告したい情報が。」
    「手短にお願いします。」
    既に限界という余力も無いが、唯一信頼する部下にそう言われては聞くしかない
    「本日連邦生徒会の直轄機関、独立連邦捜査部又の名をシャーレなる機関に先生と呼称される人物が赴任したのですが、そのシャーレというのが『あらゆる規約や法律による規制や罰則を免れる超法規的機関』とのことで・・・ナギサ様?ナギサ様!?」
    一瞬でその意味を理解してしまったナギサの意識は遠のいた

  • 58秋場 エス25/02/23(日) 07:50:24

    保守だ

  • 59二次元好きの匿名さん25/02/23(日) 07:50:31

    おいたわしやナギ上

  • 60二次元好きの匿名さん25/02/23(日) 15:44:22

    お労しやナギ上…

  • 61天音テンリ(名誉美食研)25/02/23(日) 22:17:56

    放課後、銃撃や爆発の音をBGM代わりにテンリとハナコはスイーツを味わっている
    「最近はすっかり治安が悪くなってしまいましたね・・・。」
    「犯罪が急増したのはもちろん、違法な兵器の流通も増える一方だ。」
    仕える主が過労と心労で倒れたために久しぶりの休暇を得たテンリはその空いた時間をハナコに費やすことにした
    なにせ現在のテンリは常にナギサに奉仕しているからハナコとは暫く時間を共に過ごせていなかったのだ
    「先生でしたっけ、どんな人なんでしょうか・・・。」
    「当たり前のように知ってるじゃん、今日来たばっかの人だぞ。」
    三大派閥と同等の情報網を持つ一般生徒ってなんだと心から思うが、もう慣れたことである

  • 62秋場エス25/02/23(日) 22:20:56

    保守だ

  • 63天音テンリ(名誉美食研)25/02/23(日) 23:09:58

    「ま、シャーレのことを考えると極端に良い奴か極端に悪い奴かだろうよ。前者であってほしいものだ。」
    ショートケーキの苺を一口、甘酸っぱい果汁が口の中に沁み渡る
    「一緒に教会でお祈りします?」
    「おめー今週教会出禁だろ。」
    教会の中をスクール水着で歩くという絶妙にショボい露出行為をしたハナコは一時的に教会を出禁になっていた
    学校指定の水着だから校内でこの恰好になるのは問題ないはずという言い訳を用意しているのが実にハナコらしい
    ちなみにテンリとしてはハナコの露出行為に関しては「ハナコは顔も良いしスタイルも良いしまあいいか」である
    テンリはあの3日で奇行の基準がアレになっていた
    「ったく・・・。」
    先生がまともであることを祈るついでに友人の穏やかな日常くらいは祈っておくことにしたテンリであった

  • 64天音テンリ(名誉美食研)25/02/23(日) 23:32:23

    一度はバラバラになりかけたものの、ギリギリの所で繋ぎ止めたエデン条約
    その締結日が近づいてきた中、ナギサは3人の生徒の情報をまとめた資料を見ていた
    白洲アズサ、浦和ハナコ、そして阿慈谷ヒフミ
    セイア襲撃以降、様々な角度から情報を収集した結果、ナギサがトリニティに叛意を持っている可能性が極めて高いと断じた生徒達だ
    「ナギサ様、あまり思いつめないでください。」
    「いえ、大丈夫です。代理とはいえ、ティーパーティーのホストとして必要なことをしているだけですから。」
    ───それに、それは貴方も同じでしょうに
    以前から目をかけていたヒフミを裏切者として疑うのが辛いのは確かだがテンリだって親しい友人であるハナコを疑うのは辛いはずだ

  • 65天音テンリ(名誉美食研)25/02/24(月) 00:00:10

    白洲アズサ、転校する時期がもう怪しいし価値観の違いか、過激な行動が目立つ
    浦和ハナコ、言わずと知れた才媛だが今年に入ってから奇行に走ることが増え、成績が異常に低くなっている
    阿慈谷ヒフミ、普通の生徒のはずだがブラックマーケットに行っている可能性が極めて高い他、犯罪組織のリーダーではないかという疑惑もある
    「あとは正義実現委員会の方から1人・・・ああ、この子が適任でしょうか。」
    「見事に成績不振者の集まりですね。」
    下江コハル、2年生のテストを受けて不合格、押収品管理係だがハスミから期待されているらしい
    「シスターフッドは・・・まあ、トリニティに仇なすことは無いでしょう、流石に。」
    「我々が経典の教えに従っているなら、そうでしょうね。」
    宗教色が強いシスターフッドはいくら怪しいことこの上ないとはいえ、表立って敵対することはないと思いたい

  • 66天音テンリ(名誉美食研)25/02/24(月) 00:51:19

    「しかしまあ、よく思いつきましたね。成績不振を理由に退学させるなんて。」

    「ええ、彼女たちを退学させることができればトリニティは"何があっても"安泰でしょう。」

    何があっても、それはつまり"もしもその中に裏切者がいなくても"ということ

    彼女たちもまた、備えなのだ

    卓越した戦闘技能を持つアズサ、トリニティで最も優れた頭脳を持つハナコ、並外れた運転技能を持つヒフミ

    ナギサが裏切りを警戒するほどに優れた個人の集まりということは、彼女たちが集まれば学籍が無くてもなんとかなる可能性が高い

    トリニティが崩壊する前に脱出してもらい、それまでを上手いこと凌いでもらいつつ焦土と化したトリニティを立て直せるに足る集団

    それが、補習授業部

    なおコハルは単純な成績不振もあるが・・・正義実現委員の枠はトリニティ崩壊後に立て直しを提案してくれるだろう人物が基準だった

    ヒフミが本当は血も涙もないアウトローという可能性がある以上、もう1人積極的にトリニティのために動きそうな人がほしかったのだ

    「ところでナギサ様、この方なのですが。」

    「多少は怪しいですが際立ってという程ではないですが・・・なるほど、確かに彼女もいたほうが都合がいいですね。」

    そうしてナギサは補習授業部の名簿に1人加える

    崇宮ヒメリ、と

    ~~~

    崇宮ヒメリ・・・名誉美食研の部員 彼女のスレはこちら

    ピッカピカのトリニティ総合学園一年生です|あにまん掲示板はじめまして、トリニティ総合学園一年生の崇宮 ヒメリと申します。ピッカピカの一年生とありますが本当にピカピカと発光しているわけではないのでご安心ください。こちらのスレでオリキャラスレを立てる事と私の名…bbs.animanch.com
  • 67二次元好きの匿名さん25/02/24(月) 08:02:04

    改めて見るとヒフミアズサハナコは疑われてもしゃーないな

  • 68秋場 エス25/02/24(月) 16:48:54

    まあ疑わしい点が多すぎるからな…

  • 69二次元好きの匿名さん25/02/24(月) 21:55:34

    メインストーリー始まったな

  • 70二次元好きの匿名さん25/02/24(月) 22:30:11

    コハル完全にとばっちりなんよね

  • 71天音テンリ(名誉美食研)25/02/24(月) 23:22:09

    「・・・お気持ちは重々お察ししますが、片付けの邪魔です。どいてください。」
    補習授業部が結成され、そして当然のように第1次特別学力試験を不合格となった日の夜
    ナギサは先生を呼び出し、補習授業部の中にいる(はずの)トリニティの裏切者探しに協力するよう求め・・・あえなく断られた
    ヒフミにもお願いしていたことだが、彼女自身が裏切者だったらどうしようもないし騙される可能性も捨てきれない
    この時期に先生をトリニティに常駐させるリスクから当初は呼ばない予定だった
    しかし呼んだからには協力を要請しないのは損だし騙している感じが申し訳ないしということでのカミングアウトだったわけだが結果は御覧の通り
    それで今ナギサが何をしているかと言えば空のティーカップを死守して茶会を引き伸ばしていた

  • 72天音テンリ(名誉美食研)25/02/24(月) 23:40:08

    忠誠を誓ってから知ったことだが、ナギサは失敗したあとの行動がなんとも不器用というか幼稚なところがある
    「先生は・・・その、一時的に退席しているだけです。まだ終わったわけじゃありません。」
    話し合いの一部始終を見ていた忠臣を相手に何を言っているのか
    「先生を見送ったのが誰だと思っているんですか。」
    「くっ、・・・いくら握らせれば物忘れを起こせますか。」
    とうとう不都合な真実を抹消しにきてしまった
    これくらいで忠義が揺らぐのではないかと不安になる彼女のメンタルが心配である

  • 73天音テンリ(名誉美食研)25/02/24(月) 23:48:26

    「あの、ナギサ様が失敗したくらいでは見限りませんから・・・。」
    「では他のことで見限る可能性はあると!?」
    ナギサの疑心暗鬼はとどまる所を知らない
    「そうですねー見苦しい言い訳をしていつになっても帰らないような場合は見限ることを検討するかもしれませんねー。」
    「わかりました、もう帰りの支度をしますからどうか・・・。その、ごめんなさい、夜遅くまで付き合わせてしまって。」
    なんだかんだ言いつつ、最後にはちゃんと謝れるのがナギサだ
    「私もわざとナギサ様の不安を煽るような発言をしたこと、お詫びいたします。申し訳ありません。これでおあいこですね。」
    ナギサが向ける若干不満気な視線を華麗にスルーしティーカップを片付ける
    せめてこのカップ1杯分くらいは負担が軽くなっているといいのだが、そんなことを考えながらテンリは今日の仕事を終えた

  • 74二次元好きの匿名さん25/02/25(火) 01:48:13

    >>72

    往生際が悪い……!

  • 75二次元好きの匿名さん25/02/25(火) 06:27:13

    名誉美食研シリーズだから問題児が更に倍増するけどナギサ様ガンバエ〜

  • 76二次元好きの匿名さん25/02/25(火) 12:02:18

    保守

  • 77秋場エス25/02/25(火) 20:25:17

    こんなことがあったなんてな…

  • 78二次元好きの匿名さん25/02/25(火) 22:22:14

    ナギちゃん…

  • 79天音テンリ(名誉美食研)25/02/26(水) 00:41:48

    第2次特別学力試験、答案用紙紛失により全員不合格
    試験会場(ゲヘナの廃墟)を温泉開発部が発破したのが原因だが、当然これはナギサによる裏工作である
    テンリは妨害のし過ぎが原因で彼女たちがトリニティに反旗を翻すのではないかと内心ヒヤヒヤしていた
    しかもご丁寧にメッセージを残して実質自白しているようなもので、つつかれたら言い逃れはできない
    ナギサは変なところで真面目であった
    「しかし、2回目にして会場爆破のゴリ押しですか。これ3回目大丈夫なんですか?」
    「そうですね・・・正義実現委員会を動員しましょうか。」
    そう言うとすぐにナギサは動員する理由や根回しの方に思考を割き始める
    向こうが当初の合格ラインまで成績を伸ばしてきたから計画はやや破綻しかけていた
    まああの補習授業部、実際に補習が必要なのは2人だけだし仕方ない
    裏切者の方も見つかっていないし、「詰み」がにじり寄って来ているような気がしてくる

  • 80天音テンリ(名誉美食研)25/02/26(水) 01:10:50

    ───あとはミカ様がどう動くか、か
    ナギサはあの中に裏切者がいるという想定で動いていたが、テンリは自分の裁量で動かせる僅かなリソースをミカの動きだけに注いでいた
    これは様々な状況証拠からミカを怪しんだ・・・というわけではない
    単純にナギサが最も疑えないであろう人物だからそうしただけである
    結果として合宿が始まってからミカはナギサに内緒で先生に会いに行っていたようだし、ここ最近も少々きな臭いらしいから当たりの可能性はある
    テンリが動かせる範囲ではその核心には迫れていないが注意するに越したことはない
    ───ハナコに知らせる必要は・・・無いだろうな、どうせ察してるだろ
    直接会ったら共有するかくらいで留めておく、会えないだろうけど
    テンリが試験前日の夜に届いたメッセージに度肝を抜かれるまで、もう暫し・・・

  • 81二次元好きの匿名さん25/02/26(水) 06:34:15

    保守

  • 82二次元好きの匿名さん25/02/26(水) 12:33:45

    盛り上がってまいりました

  • 83二次元好きの匿名さん25/02/26(水) 21:14:36

    楽しみだな

  • 84天音テンリ(名誉美食研)25/02/26(水) 21:41:09

    第3次特別学力試験前日、夜になって届いたメッセージを2度見した後落ち着くための深呼吸を挟んでもう1度見る
    その内容を簡潔に言えば今アズサと共にナギサのセーフティハウスに向かっているから部屋に通してほしいということ
    少なくとも遊びに行くみたいなものではない、もしそうなら試験前日なんだから寝ろという話だ
    ハナコは徹夜しても文句なしの満点合格だろうがアズサの方は確実に合格できる保証はない
    あの根は他人思いな彼女が余程の理由なしにこんなことをするとは思えない、つまり余程の何かがあったのだろう
    そして目的地がナギサのセーフティハウスということは・・・
    ───まさか、ついにナギサ様が襲撃されるのか?
    事態は急を要する案件なのは間違いない
    今どこでどんなことが起きているのかテンリが得られる情報は極僅かであり、分かっているのはミカの現在地が不明ということくらいだ
    なら合理的に考えれば彼女に従った方がいいだろう
    むしろ従わない理由が無い・・・精神面を考慮しないなら

  • 85天音テンリ(名誉美食研)25/02/26(水) 21:58:33

    ナギサが今テンリに与えている命令は「誰も通すな」
    この際命令違反だとしても通すのはいい、その方が最終的な利益が上回るはずだ
    ただここでテンリが平然と2人ことをナギサの部屋に通したらどうなるか
    きっとナギサは裏切られたと思うに違いない
    そしてそれは彼女の精神に多大なダメージを齎すだろう
    忠臣として、それを良しとすることは不可能だ
    それを回避しつつ2人を通すには戦って倒されるくらいしかテンリには思いつかない
    そして尚且つ負けた理由を問われても納得可能な敗因も用意する必要が有って・・・
    ───めんどくせえ!
    忠義と忠義に挟まれながらテンリは心の中で叫んだ

  • 86天音テンリ(名誉美食研)25/02/26(水) 22:30:18

    「静かだな・・・。ここで合ってるのか?」
    「はい、間違いありません。」
    現在地はナギサの数あるセーフティハウスの玄関
    「何か・・・気になることでも?」
    アズサが慣れた手つきで錠を破りつつもどこか腑に落ちないという様子なのが気になりハナコは問うた
    「要人を守っているにしては人気が無さ過ぎる。それに、途中で距離感がちょっと狂った。」
    それにハナコは一瞬だけ顔を綻ばせ、すぐに真面目な顔に戻って返答する
    「距離感のズレ・・・それこそ彼女がここに居る証左です。人気が無いのは正義実現委員会を向こうに回しているのと、彼女への信頼でしょうね。」
    ハナコとしては本当に一安心であった
    彼女、つまりはテンリがあのお願いに気付いてくれるかは完全に賭けだった
    ダメだったら途方もない距離を歩かされていただろう、彼女はそういうことができる人だから
    テンリがここに居て、尚且つ辿り着けたということは彼女はメッセージを見たのだ
    2人は音も無く内部へと、招かれるように入った

  • 87天音テンリ(名誉美食研)25/02/26(水) 23:02:35

    「一応、クリアリングしながら進もう。罠があったら大変だ。」
    アズサはハナコから聞いた天音テンリという人物についての情報を反芻する
    まず、すごくお金にがめついらしい
    国語の勉強中に出てきた「守銭奴」という単語についてハナコに聞いたら咄嗟に「テンリちゃんみたいな人ですね」と答えてしまうくらいだから相当なのだろう
    次に、ナギサに忠誠を誓っているとのことだ
    アズサの中で誰かに忠誠を誓っている人としてぱっと思いつくのは生徒会長親衛隊だ
    もし彼女も同じ感じだとすると素直に通してもらえるとは思えない
    最後に、ちょっと不思議な事ができるらしい
    ハナコは説明すると難しいから、体験することになったら説明すると言っていた
    あの一瞬距離が縮まってなかったような感じがそれらしいが、詳しい説明は聞いてなかった
    「ハナコ、そういえばテンリができる不思議なことって・・・。」
    そう言って振り向き、ハナコがいないことを確認するとすぐに口を閉じる
    滑らかに厳戒態勢へ移行し、周囲の警戒をするが人の気配は無い
    ───闇討ちなら気付く自信がある。まさか、これがハナコの言っていた"不思議なこと"か?
    既に敵の本拠地の中、逃げ出すのはむしろ悪手と考えたアズサは先に進むことにした

  • 88天音テンリ(名誉美食研)25/02/26(水) 23:25:19

    アリウス自治区より静かな廊下を1人で歩く
    屋根裏部屋が具体的に何処かは知らないが・・・最上階なのは間違いないのでとにかく上を目指す
    「この先だな。」
    そして今、階段の先に1人分の気配があるのをアズサは感じた
    ハナコが先に行っていたとは考えにくいし、ナギサは部屋の中にいるはず、つまりそこにいるのは消去法で・・・
    「お待ちしてりました、白洲アズサさん。貴方のことはハナコからよく聞いております。」
    「お前がテンリか、どういうつもりだ。」
    微笑を張り付けた少女に銃口を向ける
    それにテンリは肩をすくめ、銀色の銃を取り出す
    シリンダーに溝がある、変わった拳銃だ
    「『誰も通すな』、それが私に与えれた命令です。悪いですが、これも仕事なので。」
    静かな廊下で、戦いの火蓋が切られた───

  • 89天音テンリ(名誉美食研)25/02/27(木) 00:05:41

    障害物も何も無い廊下で互いに銃口を向けたまま沈黙する
    その中でアズサは冷静に、相手を分析していた
    立ち振る舞いからして強いようには見えない、むしろ隙だらけでずっとずっと弱そうですらある
    あるいは逆に全部ブラフで、実力の隠匿ができるくらい上か
    拳銃の装弾数は8発、右手だけで構えている
    先に動いたのは、テンリだった
    まず2発、さらに続けて2発、計4発の銃弾が放たれる
    それをアズサは軽やかなステップで回避し、先に相手が弾丸を半分消費したことからリロードの隙を狙う方針に決める
    今度は4発続けざまに放たれるも、やはり難なく躱す
    同時にテンリの左手が腰のあたりに伸びているの確認し、いつでも前後に動けるよう備える
    「・・・なるほど、そうきたか。」
    テンリが取り出したのは、全く同じ拳銃
    後先を考えているとは思えない勢いでテンリは連射し、アズサは8発の弾丸を潜り抜ける
    「でも、これで終わり。」
    向こうは両手が塞がり、リロードは出来ない
    勝利を確信しつつも、油断せずアズサは引き金を引いた

  • 90天音テンリ(名誉美食研)25/02/27(木) 00:24:47

    「!?」
    引き金が、動かない
    完全な想定外ではあるがこれだけなら対処可能だった、だが想定外はまだあった
    テンリの拳銃から、弾が出た
    確かに8発カウントをして、リロードをしていないか目を離してないはず
    それにも関わらず、さっきの一瞬の動揺を突くようにテンリは銃を乱れ撃つ
    8発どころではない、明らかに異常な量の弾丸に咄嗟にバックステップを繰り返す
    「しまっ・・・!?」
    そして自分が階段の方に追い詰められていることに気付いて思わず後ろを振り返り・・・3つ目
    階段など無く、延々と廊下が続いている
    冷や汗が垂れて、息を吞む
    心拍数が上がっているのを感じる
    「では、そろそろ本番を始めましょう。」
    不気味な笑みを崩すことなく、テンリは言う
    アズサの目の前に突如として現れた手榴弾が、開始の合図になった

  • 91二次元好きの匿名さん25/02/27(木) 06:20:38

    なんのなんの何!?と言うか一体何が起こっているんですか!?

  • 92二次元好きの匿名さん25/02/27(木) 13:06:50

    怖いねぇ~

  • 93天音テンリ(名誉美食研)25/02/27(木) 21:57:06

    一瞬視界がぼやけるのを、バットプレートを押し付ける力で耐える
    汗が垂れてくるがそれを拭う余裕などアズサには無かった
    相手はリロード無しに乱射してくるのに対しこちらは引き金が動かない
    CQCに持ち込もうと距離を詰めても気づいたら離されている
    何の前触れもなく手榴弾が現れ爆撃される
    銃が使い物にならなくなったときの戦い方も閉所での戦い方も習ったし、距離が詰めれないときの対応も爆弾が降り注ぐときの切り抜け方だって習いはしたが、こんな異常な環境での戦い方は学習範囲になかった
    しかし不測の事態も分解すれば既知のものの組み合わせだから落ち着いて1つ1つ対処すればいいと教わった、だからこそ辛うじて取り乱すことなく落ち着いていられた

  • 94天音テンリ(名誉美食研)25/02/27(木) 22:22:20

    まず武器が動かないのは1度分解しないと原因を特定できないだろうから後回し
    そして距離が詰められないのとリロード無しの銃は、実現している方法が分からないと対処できない
    残ったのは、手榴弾だ
    これは突然現れて爆発するが、僅かに確認してから爆発するまでが長い
    最初はそれが逆に戸惑いを誘っていたが、冷静に観察すればそれは自分がピンを抜いてから投げて爆発するまでの時間に近い
    手段は分からないが、おそらくピンを抜いた直後の状態で出現している
    それなら回避できるはずだ
    小刻みなステップで、手榴弾が無い方へ移動を繰り返す
    焦って大股になってはいけない、着地する先に手榴弾を送りつけられるから
    ついでに前進はしているがやはり近づいている気はしない
    いや数ミリくらいは近づいたかな・・・?
    気のせいと言われればそれまでのものだ

  • 95天音テンリ(名誉美食研)25/02/27(木) 22:32:37

    1歩のミスが危険に繋がる極限状態
    慎重に、かつ迅速に次の場所へ───
    「なっ!?」
    アズサは何かを踏んだことで転倒する
    後方から爆発音が聞こえて、踏んだのが手榴弾だと理解する
    手榴弾で爆破ではなく転ばせるというのは完全に盲点だった
    手榴弾を投げることなく直接出せる彼女ならではの応用だと舌を巻く
    急いで立ち上がるが時すでに遅し、目の前にはいくつも手榴弾がある
    アズサは後方へと吹き飛んだ

  • 96天音テンリ(名誉美食研)25/02/27(木) 22:50:17

    「アズサちゃん、大丈夫でしょうか。」
    無響室のように静かな廊下を独りで歩く
    テンリがメッセージに気付かずシャットアウトする可能性は考えていたが、内部に招き入れて分断しにかかるとは
    自分なら素直に通してくれると信じていたので結構ショックであった
    ハナコの精神は普通の少女なのだから仕方ない
    だが頭の回転は普通ではない
    故にテンリが自分たちの侵入を許したその意図を推察する
    ───中に入れたということはおそらくメッセージには気付いてくれているはず、でも肝心な屋根裏部屋には行かせてくれない。・・・ただでは通せない?

  • 97天音テンリ(名誉美食研)25/02/27(木) 23:03:13

    彼女の恵まれた思考力はテンリの思考を読み取り、その最終的な決断へと近似する
    ナギサに忠誠を誓うテンリは2人を素通りさせることはできなかった
    ナギサは今、「裏切り」というのに過敏な状態なのは確かに想像できる
    しかし同時にナギサを真に想うからこそ合流もしたかった
    だから「最後まで頑張ったけれど無理でした」と言える状況にする
    司令塔を機能不全にして戦闘員を叩くのはよくある手法だ、「頑張った」と言い張れる
    その上でアズサと戦闘をして、負ければ「無理でした」が達成できる
    もしもアズサを普通に倒せてしまったらそれはそれで、頼るに値しなかっただけになる
    建前の用意であり試験といったところか
    メッセージを送ってからここに到着するまでの短時間でよく思いついたものだと素直に感心してしまう

  • 98天音テンリ(名誉美食研)25/02/27(木) 23:54:01

    ハナコは、少なくとも補習授業部の中では唯一種も仕掛けも知っている
    テンリの特技、それを分かりやすく言い表すなら「空間内部の複製と改竄」といったところか
    まず彼女は指定した空間の内部だけを複製して見かけ上はそのままに距離が広がったかのようにすることができる
    本人曰く「意味が同じ文章でもトリニティのお嬢様みたいに迂遠な表現を重ねまくると長々しくなるようなもの」らしい
    そして改竄、さっきの例えに倣うと「その文章の文字を書き換える」行為
    それによって本来無いものを有ることにしたり、あるいはその逆をしたりできる
    頑張れば念力のようなことも可能だが改竄の方は燃費が悪いから維持が大変とのこと
    これを戦闘に利用するなら、テンリは自分の理想となる距離を維持し続けられて気力があるかぎり無限に物資を得られる存在と言える
    そんな相手、心底戦いたくないからこそハナコは攻略ではなく味方に引き入れる方向で動いたのだ
    結果は残念ながら、彼女の用意した無限の廊下に独りぼっちである

  • 99天音テンリ(名誉美食研)25/02/28(金) 00:07:52

    何度歩く足を止めたくなったか分からない
    やろうと思えばいくらでも、アズサとハナコの"距離感"を引き伸ばせるのだ
    100歩歩いても、現実では数ミリしか進んでないような芸当が可能な相手
    ハナコの頭脳なら深入りする前に撤退すべきだとすぐに判断できる
    ・・・少し前のハナコなら
    『たとえ全てが虚しいことだとしても、それは今日最善を尽くさない理由にはならない。』
    『たとえ虚しいことであっても、抵抗し続けることを止めるべきじゃない。』
    もしここにアズサがここに居たら、こう言ったに違いない
    「たとえテンリがこの道のりをどれだけ長いものにしていたとしても、それは今歩みを止める理由にはならない」、と

  • 100雀田チエミ(名誉美食研)25/02/28(金) 06:38:29

    厄介極まりない力持ちですわ〜!?

  • 101二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 12:51:10

    逸般人であらせられたか

  • 102天音テンリ(名誉美食研)25/02/28(金) 21:33:51

    爆発の衝撃でアズサは空を舞った
    本来なら10秒とかからず地に落ちるはずだが、今回はとてもゆっくりと落ちている
    いや、落ちる速度だけではなく何もかもが揺蕩うようにゆったりと動いている
    人が危機的な状況に陥ったとき、時間の流れが遅くなったように感じるとどこかで聞いたことがある気がする
    アリウスでは、習わなかったことだ
    意識が白んで過去の思い出が呼び起こされていく
    確かそれを、百鬼夜行では昔から走馬灯と呼んでいるんだっけと、冷静な部分を残しながら

  • 103天音テンリ(名誉美食研)25/02/28(金) 21:52:57

    『そうですね、この問題を解くにはまず接弦定理を理解する必要があります。』
    目に入るのは補習授業部での一幕
    ハナコの説明は学習が大幅に遅れていたアズサにも分かりやすく、彼女の助けのおかげで分かった問題は多い
    『場所は全然違うのに、角度は同じなのか。何だか不思議だな。』
    そうやって自分が勉強している様子を俯瞰視点で見つめている
    補習授業部では知らなかったことを沢山知った
    ハナコは優しくて、分からないことを分かるまで教えてくれた
    そっと手を伸ばすが、それは届くことのない幻影
    景色が波打ち、映像が切り替わる

  • 104天音テンリ(名誉美食研)25/02/28(金) 22:28:43

    『いいかアズサ。私たちより強い奴はいくらでもいる。だが、相手の方が強くてもに絶対に勝てないというわけじゃない。』
    『そうなのか?』
    目に入るのはアリウススクワッドでの一幕
    今のアズサの戦闘技術は、サオリから習ったものが多い
    『相手を、周囲を、よく観察しろ。どんなに強くても弱点が無いわけじゃない、強さを発揮できなければ意味が無い。相手と対等以上に渡り合える状態を引き寄せるんだ。』
    昔はサオリと戦って勝つどころか攻撃を凌ぐのにも四苦八苦したものだ
    アリウスで学んだものは苦いものだけじゃない、大切なものもいっぱいある
    サオリは厳しくて、できないことができるようになるまで何度も付き合ってくれた
    駆け寄ろうにも遠ざかっていく、戻ることはできない過去
    身体に衝撃が走り、意識が現実に引き戻される

  • 105天音テンリ(名誉美食研)25/02/28(金) 22:45:36

    視界が現在を捉える
    こんなところで倒れていたら、アリウス全体を相手取ることはできない
    考えろ、思い出せ、見つけろ、彼女を攻略する糸口を
    彼女はどんな時に銃を撃ってきた?
    そしてどんな時に手榴弾を振らせた?
    距離を詰めることはできないのに彼女の銃弾が届いたのは何故?
    あの距離感のズレとの関係は?
    仮定に仮定を重ねた、正解だとは自信を持てない回答
    『テストなんだから分からない部分があるのは当たり前でしょ!?何も書かなかったら点数にならないけど、何か書いてたらもしかしたら当たるかもしれないじゃない。』
    分からないまま分からないなりに答えを出すなんて、アリウスに居た頃の自分に聞かせたらきっと驚くだろう
    アズサは立ち上がり、そっと引き金に指をかけた

  • 106天音テンリ(名誉美食研)25/02/28(金) 22:52:11

    建物に、一瞬近づけない
    距離を詰めたはずが、元の間合いのまま
    もしも彼女が到達までの時間を延ばすことができるとしたら?
    引き金を引くのにかかる時間も延ばせるかもしれない
    それなら、やるべきことは簡単だ
    引き金を引ききるまで、引き続ければいい
    そこでふと、足元に手榴弾が落ちる
    それをアズサは、蹴とばした

  • 107天音テンリ(名誉美食研)25/02/28(金) 23:14:32

    テンリに向かって綺麗な放物線を描いた手榴弾は、その軌跡の途中で忽然と姿を消す
    反撃にならなかったが、下手に手榴弾を落とせば自分に飛んでくると思わせればそれでいい
    1歩ずつ、後ろに下がる
    物を踏むことがないようなるべく足を地面から離さないようにして
    手榴弾というダメージソースに頼り切れないテンリは、拳銃の射程内から逃さぬよう同じペースでアズサを追う
    代わりに銃を乱射、アズサは弾避けくらいにはなるだろうと左側の羽を前に出す
    アズサが前進しているときに、テンリが拳銃を撃ったことはない
    もしかするとテンリは、アズサと距離を置いているときに自分から銃弾を届かせることはできないのではないだろうか
    ブラフなら終わりだが事実なら攻撃のチャンス
    賭ける価値は、ある

  • 108天音テンリ(名誉美食研)25/02/28(金) 23:30:43

    銃弾の嵐が降り注ぐ
    当然羽では受け止めきれないし、体を覆いきれない
    だが下手に動けばさっきの繰り返しだ
    今はただ引き金を引いていればいい
    引き金が動いてる実感は無い
    焦燥感が湧出して、つい力んでしまう
    一呼吸、余分な力を抜いていく
    引き金を引く指が動かせないことに気付く
    間違いない、少しずつでも引き金は動いていた

  • 109天音テンリ(名誉美食研)25/02/28(金) 23:48:02

    何歩後ろに下がったかは数えていない
    たまに来る手榴弾は足で蹴ったり、羽で受け流したり、あるいは羽で扇いで吹き飛ばす
    銃弾にさらされ続けて全身傷だらけだ
    立てているのは、気力を振り絞っているだけ
    身体が熱い、手が震える、焦点が合わない
    でも諦めるのはお断りだ
    それに、アリウスでの訓練の日々と比べれば痛くも痒くもない
    「𝓥𝓪𝓷𝓲𝓽𝓪𝓼 𝓥𝓪𝓷𝓲𝓽𝓪𝓽𝓾𝓶」
    たとえこれまでの全てが演技で、この銃弾が届かないのだとしても
    「𝓮𝓽𝓸 𝓶𝓷𝓲𝓪 𝓥𝓪𝓷𝓲𝓽𝓪𝓼」
    それは、戦うのを止める理由にはならないから

    その強い意志が、銃弾に火を付ける───

  • 110天音テンリ(名誉美食研)25/02/28(金) 23:59:11

    決意が込められた弾丸は薬莢から飛び出し、バレルを通り抜ける
    ライフリングによって弾丸は、回る、回る、回る
    真っ直ぐと、標的に向かって飛んでいく
    シルバーブレットなどではない、ただの弾丸
    それでも、誰にも止めることはできやしない
    「お見事・・・」
    弾丸は、確かに届いた

  • 111二次元好きの匿名さん25/03/01(土) 06:35:12

    やったか!?

  • 112二次元好きの匿名さん25/03/01(土) 07:15:24

    やったな

  • 113二次元好きの匿名さん25/03/01(土) 14:25:42

    やったぜ

  • 114天音テンリ(名誉美食研)25/03/01(土) 23:00:42

    ナギサを保護、といいつつ実質誘拐する作戦は屋根裏部屋に辿り着くまでこそ大変であったものの、中に入ればあっさりとナギサを確保できた
    ハナコの口撃で動揺させてアズサの攻撃で意識を刈り取る、完璧なコンビネーションである
    アズサは現在、アリウス勢を攪乱するために単独行動中だった
    一方のハナコはテンリと共にナギサを運んでいた
    ・・・テンリに耳を引っ張られながら
    ナギサの精神衛生にすごく気を遣っていただけに、ハナコの言葉のナイフにテンリは結構怒っていた
    「あまり、私のご主人様を傷付けないでくれ。お前の気持ちは察せるが・・・この人だってずっと前からボロボロなんだ。」
    「はい・・・。」
    ハナコも猛省していた
    ハナコはそもそも気遣いの人だ、ナギサがずっと無理をしているのも分かってはいた
    同時に友達が傷付けられたら黙っていられない普通の女の子で、それでつい飛び出してしまう言葉は普通の女の子が振るうには鋭すぎた
    ただそれだけのことなのだ
    ハナコのシュンとした様子を見て、テンリはため息を吐きながら耳から手を放した

  • 115天音テンリ(名誉美食研)25/03/01(土) 23:28:35

    「ま、お前の成長に免じて今回はこれくらいで勘弁しとく。」
    「そんなに変わりました?」
    ナギサを両手で背負い直し、テンリは変わらぬ仏頂面で語る
    「アズサはどこかで距離を詰めるか引き金を引くかするだろうと思ってた。が、お前の方は早々にリタイアすると思ってたね。それが蓋を開ければ、アズサから一発喰らうときにお前の姿を見れるとはね。」
    やるじゃねえかと、テンリは口角を上げてみせた
    「アズサちゃんなら、きっと諦めないだろうなって思いまして。」
    「良い友達をもったな。」
    ハナコはなんだか頬が熱くなり、後ろ髪を押さえる
    「アズサちゃんも、ヒフミちゃんも、それにコハルちゃんも。みんな、私には勿体ないくらい良い友達です。」
    そうハナコが口に出せばテンリは見るからに上機嫌になる
    「そうかそうか!・・・さ、そろそろ真面目に行こうか。」
    ナギサを隠す建物に辿り着いた
    自分の主の今後を左右するだけに、テンリは人一倍真剣であった

  • 116天音テンリ(名誉美食研)25/03/01(土) 23:55:57

    「こっちじゃミカの足取りを追えてないんだ。お前は何か知ってるか?」

    「正確な位置は流石に・・・。ですが首謀者は彼女で間違いないでしょう。」

    ハナコの案内でナギサを隠す部屋へと移動する

    しれっと1年以上ナギサの側で働いていた自分でも把握していない隠し通路を通されておいおい・・・と思うがハナコなら仕方ないと飲み込む

    それにナギサの身の安全が高まるならそれに越したことはない

    「テンリちゃんはこの後どうします?」

    「寝る。後は任せた。」

    そう言うと流れるような勢いでテンリは入眠する

    「はい、後のことは任せてください。」

    その手をそっと撫でて、ハナコは部屋を後にした

    ~~~

    追記:>>115

    ハナコが後ろ髪を押さえた後の台詞は「アズサちゃんも、ヒフミちゃんも、ヒメリちゃんも、それにコハルちゃんも。みんな、私には勿体ないくらい良い友達です。」です

    素で書き忘れました

    それもこれもヒメリがこの作戦中ぐっすりすやすやだったのが悪い(責任転嫁)

  • 117二次元好きの匿名さん25/03/02(日) 07:42:16

    保守

  • 118二次元好きの匿名さん25/03/02(日) 14:19:39

    そろそろ3章入りかな?

  • 119二次元好きの匿名さん25/03/02(日) 22:06:19

    保守です

  • 120天音テンリ(名誉美食研)25/03/02(日) 22:48:52

    第3次特別学力試験、全員合格───
    正実を動員し、ハードルを90点まであげて行われたそれは文句のつけようもなく真正面から突波された
    絶対に不合格にさせる雰囲気を醸し出しておきながら合格ラインは満点ではなく90点という微妙に良心のあるところが実にナギサであった
    そして信じた幼馴染に裏切られた挙句それから守ってくれたのは裏切者と疑った者たちという邪気眼系も真っ青な黒歴史を作ってしまったナギサはその事実をテンリから聞かされ・・・即座に寝込んだ
    目をかけていた後輩が裏切者だったかと思えば、後のことを全て託すつもりだった幼馴染が真の裏切者とか、胃がハチの巣になるまで秒読みの事態である
    ついには「穴があったら入りたい・・・ああ、きっと私の胃に丁度いい穴がありそうですね。」などという意味不明な発言が飛び出る始末
    テンリは有無を言わさずナギサを救護騎士団の方へぶち込んだ

  • 121天音テンリ(名誉美食研)25/03/02(日) 23:24:57

    救護騎士団の皆様による「大変強度の高い救護」により辛うじて安定を取り戻したナギサが最初に行ったのは謝罪行脚だった
    トリニティを守るためとはいえナギサが多方面に迷惑をかけてしまったのは事実
    とくに補習授業部の面々は冤罪で退学させられかけていたのだから、個人ごとに直接会って頭を下げた
    そしてヒフミとの会話でトラウマが甦りその場は一応切り抜けたものの・・・再び救護騎士団のお世話になることになった
    想定の遥か上を行く被害が出たためテンリの独断によりハナコはピコピコハンマーの刑に処され、美味しいスイーツを食べて仲直りした
    幸いナギサは1晩寝込んだら復活した、というかエデン条約が近いので復活するしかなかった
    毎秒ナギサのメンタルを不安に思うテンリであったが、ナギサはまだ止まらない
    「今度はミカさんと会います!」
    何故見て見ぬふりをせず茨の道に突貫するのか
    テンリは予め用意しておいた、ミカの好物も載せたティートローリーを運搬する指示を出すと黙って椅子を運んだ

  • 122天音テンリ(名誉美食研)25/03/02(日) 23:53:06

    トリニティの監獄という、割と快適な空間に収容されているミカは現在それほど簡単には会えない状況だ
    既に先生は何度も会おうとしているし、ナギサは会いたいの一言で会いに行けるし、この後ハナコがシスターフッドの伝手でさり気なく会いに行くが
    とにかくテンリはその場に立ち会うことはできず、扉の前で待機となった
    ───会話丸聞こえなんだよな・・・
    だが申し訳ないとかそういう感情は一切無い、奇声を3日も聞き続けたのだから今更というもの
    最初はちょっとギクシャクしている幼馴染同士という会話だったが、すぐに雲行きが怪しくなる
    アリウスがどうとか、爪を剥ぐとか
    たった一夜で、幼馴染であることこそ変わってはいないが、2人の関係には目を覆いたくなるような傷がついていた

  • 123天音テンリ(名誉美食研)25/03/03(月) 00:20:35

    ここのところ、より正確に言うならセイアが襲われたあの日からずっと
    ナギサの精神はダメージを受けてばかりだった
    死という不可逆の現象が何歩先に待ち構えているか分からない暗がりの中を歩き続ける日々
    同じ闇の中を幼馴染に歩かせたくない一心で、途中拾った1個の懐中電灯を頼りにして
    その闇を作っていたのが他ならぬ幼馴染だったなんて、そんなものバッドエンドでしかない
    剰え、当の幼馴染は「ハッピーエンド」などと言うのだ、とんだ三文芝居である
    これでエンドロールが始まるなら、ナギサは観客席にジュースをぶちまけながら脚本家を全力でこき下ろした
    「何も良くありません・・・。」
    それが今目の前にある現実なのだから救いようがない
    「何が良かったんですか、この状態で・・・ミカさんが、裏切り者で・・・。」
    どれだけ言葉を尽くし、理由を問うても、目の前の幼馴染は真実を答えてくれない
    ただゲヘナが嫌いで、たったそれだけの理由で幼馴染にすら手をかけようとしたのだと
    人殺しとしての顔を、他人同士だから気付けなかっただけなのだと
    「・・・今日は、帰ります。」
    また来るかのような言い回しで、そんな解釈の余地を残しておいて、「また明日」と言うことができない
    そんな自分が堪らなく惨めで、悔しかった

  • 124二次元好きの匿名さん25/03/03(月) 05:25:15

    >>116でさらっとミカ呼びしてるしテンリも自分ではそう思ってなくとも苛立ってるんじゃないかと思った

    その上丸聞こえのこの会話で顔に出なくともキレてたりするんじゃないか

  • 125二次元好きの匿名さん25/03/03(月) 07:34:59

    ままならないね

  • 126二次元好きの匿名さん25/03/03(月) 12:52:51

    悲しいなぁ

  • 127二次元好きの匿名さん25/03/03(月) 21:10:16

    保守

  • 128天音テンリ(名誉美食研)25/03/03(月) 22:48:15

    エデン条約の調印式、その当日がついにやってきた
    もしも雷帝が現れるより前に戻ってその時代のティーパーティーにこのことを教えたら泡を吹いて倒れたことだろう
    それぐらい、歴史的な瞬間である
    とはいえテンリがすることは然程変わらない
    椅子を運び、ナギサを守る
    トリニティとゲヘナの要人が一堂に会するのだ、やらかす奴が何処にいるかもわからない
    それに万魔殿は新型飛行船に乗ってくるらしいが、それが落ちてくる可能性もある
    ここはまさに火薬庫、いつ何があってもいいように、最大限の備えをして臨む
    臨んだ、はずだった───

  • 129天音テンリ(名誉美食研)25/03/03(月) 23:20:16

    「ケホッ、ケホッ!」
    ───私の防御をぶち抜いたってことはただの爆弾じゃねぇ・・・とにかく、今はナギサ様だ
    空間操作によるテンリの防護壁、それは決して無敵ではない
    極端な話、テンリが認識するより早く本体に攻撃を到達させれば有効打になる
    最優先事項のナギサは、そもそもすぐ傍に居たことが幸いしてあっさり見つかった
    ただ問題は気を失っていること
    どうにかして彼女を安全な場所に連れていく必要が有る
    まず手始めに、虚空から取り出したC4で瓦礫を吹き飛ばした

  • 130天音テンリ(名誉美食研)25/03/03(月) 23:51:20

    セイアが襲撃されてから年度が替わるまでの期間、ナギサが最も心血を注いだのはフィリウス分派の組織改革であった
    ナギサが理想としたのはトップ不在でもなんとかなる組織である
    そのため上からは最小限の指示を出し、現場で勝手に上手く調整することを求めた
    これは打算とかを抜きに、現場レベルの細かい部分まで調整するようなことが人間のキャパシティでは無理いう事情はあった
    それにトップが強いワンマンの体制でそのトップが消えたらどうなるかは今の連邦生徒会を見れば一目瞭然である
    故にナギサは、自分がいなくなって指示系統が機能不全になっても、最低限方向性を一致させて組織として動ける状態を作った
    そしてこの調印式にてナギサが示した最低限一致させるべき方向性、それは「有事の際、最大の警戒対象はトリニティ内部、次いでトリニティとゲヘナ以外の第三陣営」
    校舎にて待機していたフィリウス分派の幹部たちに「トリニティ内部」の脅威が差し迫っていた

  • 131天音テンリ(名誉美食研)25/03/04(火) 00:32:35

    「クソァ!!」
    「落ち着いてくださいまし!?」
    情報が錯綜し、トリニティは大混乱に陥っていた
    正義実現委員会は飛び交う要請に右往左往しており、現状使い物にならない
    ナギサは消息不明、セイアは意識不明、ミカは監獄の中とティーパーティーのトップが誰もその席についておらず、ティーパーティーも機能不全であった
    そんな中フィリウス分派は辛うじて統制のとれた動きが取れる状態だった
    何せ疑心暗鬼を拗らせまくったあのナギサが有事の際にと残しておいた面々だ、面構えが違う
    そんな彼女たちだからこそ・・・現状がいかに悪いかを理解し、お嬢様らしからぬワードが飛び出る程には怒り心頭だった
    まずまともに指示が通らない正義実現委員会に怒り、次にこの状態で戦争を始めようとするパテル分派の過激派に怒り、ゲヘナのとはいえ救急車を妨害するような民度の低い一般生徒に怒り・・・この状況をどうにもできない自分たちにも怒った
    「・・・シスターフッド、いえハナコさんに連絡を!今やなりふり構わってはいられません。彼女を全力でバックアップし、事態の打開を目指します。」
    最大の敵は内部分裂だ、そう判断を下し、完全にその指揮系統に加わることを決定する
    そこに文句を言う者はいない
    ・・・彼女たちは「最大の警戒対象がトリニティ内部」と言われて全く反感を持たないような、トリニティではなくナギサ個人へ忠誠を持っているような連中
    テンリが自分の裁量で動かせる範囲に居た、テンリと共に狂信と言える程ナギサに篤い忠誠を誓う少女たちはエリートとしての誇りを投げ捨て、事態の収拾へと走り出した

  • 132異次元好きの匿名さん25/03/04(火) 00:55:06

    Q.こいつら何の?怖すぎ・・・
    A.テンリ派 テンリによる厳選と教育によりナギサエリートとなった集団。イメージとしては阿慈谷ヒフミの「ペロロ様」を「ナギサ様」に置き換えた奴が群れを成している。つまりフィリウス分派内で1番頭がおかしいグループ。

  • 133二次元好きの匿名さん25/03/04(火) 08:03:17

    ??「稀にトリニティのノリに着いていけなくなる……」

  • 134二次元好きの匿名さん25/03/04(火) 10:53:42

    やだ、アリウスと事構えてるのにアリウスと同等かそれ以上の狂信.者が一定数トリニティにいる…
    ここが現状最大戦力ってマジ?

  • 135二次元好きの匿名さん25/03/04(火) 12:54:20

    保守です

  • 136二次元好きの匿名さん25/03/04(火) 21:05:12

    根っこは百鬼夜行な某先輩はこのノリに引いてそう

  • 137天音テンリ(名誉美食研)25/03/04(火) 23:14:41

    フィリウス分派内でテンリの派閥があるのは知っていたし、その人たちは結構頭のネジが外れているのも知っていた
    「この状況を収めるためなら、貴方がシスターフッドと画策していたという全裸登校なるものの法案が可決されたことにすることもお約束いたします!たった今ティーパーティーが正式に認可した印の偽造が済んだところです!」
    「・・・今、なんと???」
    ただ、ハナコも自分の処理能力がパンクを起こすレベルでおかしい集団とは思ってもいなかった
    声が冗談でも脅しでもなく本気も本気の大真面目なのだ、ハナコはドン引きした
    議題に挙げるとかではなく既に可決済み??ティーパーティーの印を偽造??
    この人たち自分の学籍が惜しくないのだろうか
    「あの・・・そこまでしなくていいですから。あれはそう、アイスブレイクみたいなものでして・・・。」
    「そうでしたか!流石にナギサ様に全裸で登校することを強いるのは恐れ多かったのでありがたいです。」
    違う、そうじゃない
    扱いを間違ったら自分の首も飛んでいきそうで、ハナコは大変肝が冷えた

  • 138天音テンリ(名誉美食研)25/03/04(火) 23:44:08

    「まずはサンクトゥス分派の方と合流してください。そして今最も危惧すべきはパテル分派がミカさんを解放し、宣戦布告を行うことです。」
    「最大の警戒対象はトリニティ内部・・・ナギサ様の言う通りですか。分かりました、サンクトゥス分派と合流しパテル分派を押さえ・・・すみません、向こうが一足早かったようです!」
    銃撃音が鳴り、連絡が途絶える
    「正義実現委員会のツルギ委員長が重症!ハスミ副院長の方は重体とのこと!」
    「サクラコ様も重体です!救護騎士団の救護室は現在満床とのことで、古書館の寝室の方へ搬送中!」
    その報告を聞き、マリーは祈るようにサクラコの名を呟く
    「・・・ナギサさんは?」
    ティーパーティー、その権限が必要な状況だった
    「彼女については、まだ捜索中・・・」
    「たった今意識不明の重体で運ばれたとのこと!」
    「・・・っ!一部の過激派が、もうすぐゲヘナに宣戦布告するとの情報が!!」
    圧倒的に手札が足りない
    もう内部から崩壊が始まっている
    トリニティ生同士での戦闘が発生しており、事態はユスティナやアリウスに対抗するなどという次元ではない
    とにかく宣戦布告を阻止するために、ハナコは駆けだしていた

  • 139天音テンリ(名誉美食研)25/03/05(水) 00:27:12

    「急患!急患!今すぐ緊急手術の用意を!」
    パテル分派の方で宣戦布告の準備が進められていた頃
    ナギサを救護騎士団へ送り届けたテンリはそのまま倒れ込み、急患として搬送されていた
    地上に出た直後、周囲がガスマスクを付けたシスターだらけという四面楚歌であったテンリは強行突破を試みた
    取り出した装甲車にナギサを乗せ、襲い掛かるシスターの足元に地雷を片っ端から設置して吹き飛ばし、血反吐が出るのも構わずアクセルをベタ踏みした
    空間に対する改竄、それは燃費が悪い
    連続使用と長時間使用により体に負荷がかかり、それすら「無い」ことにして健康を前借りする
    校舎に辿り着いてナギサを受け渡した瞬間、膝が開放骨折を起こしながら倒れ込んだテンリも漏れなく患者となった
    担架で運ばれるテンリの視界に1人の人物が映る
    ───せん、せい?
    テンリには現状がよく分かっていなかったし、ナギサが動けない今、どうにもならない気すらしていた
    でも、あの補習授業部を導いた先生なら、あるいは
    そう思えて漸く、テンリは目を閉じることができた

  • 140二次元好きの匿名さん25/03/05(水) 08:00:40

    装甲車を取り出す…?
    これもうわかんねえな()

  • 141二次元好きの匿名さん25/03/05(水) 12:59:21

    逸般人……

  • 142二次元好きの匿名さん25/03/05(水) 22:01:40

    保守です!

  • 143天音テンリ(名誉美食研)25/03/05(水) 22:03:12

    テンリが目を覚ますと、病室の天井が視界に広がっていた
    右手と両足が固定されており、辛うじて左手が動かせる状態
    ───仕事に復帰するのはもう少しかかりそうだな・・・
    「あら、目が覚めましたか。」
    丁度よく、救護騎士団の団員が中に入ってくる
    「ナギサ様は無事か?」
    テンリが何より気になるのはそこだ
    エデン条約とか自分の容態とかはどうでもいいから、とにかく彼女のことが気になっていた
    「貴方と比べれば軽傷です。それより自分の心配をしてください。」
    団員の少女はやれやれといった様子で絶対安静でいるよう注意した

  • 144天音テンリ(名誉美食研)25/03/05(水) 22:16:51

    テンリが目覚めてから最初に見舞いに来たのはハナコであった
    連絡を受け、半ば飛び出す勢いで駆けつけたのだ
    「本当に、心配したんですから・・・。」
    「悪かったって。」
    どうやら2日も気を失っていたようで、数の少ない友人たちには随分心配をかけたみたいだ
    「結局、あの後どうなったんだ?というか、爆破された後逃げてそのまま気絶して今に至るだから何が何だかさっぱり分からん。あのガスマスクシスターも謎だし。」
    「それは・・・どう説明しましょうか。」
    テンリの視点では誰かから攻撃をされたらしいこと以外ほとんど情報が無い
    精々、外の様子から取り敢えず解決はしたんだろうな・・・ということを察せるくらいだ

  • 145天音テンリ(名誉美食研)25/03/05(水) 22:46:59

    潤んでいた瞳をハンカチで拭ったハナコは順を追って説明していく
    「まず、攻撃を行ったのはアリウス。試験の日にナギサさんを襲撃しようとしたあの集団です。」
    それから、会場には巡航ミサイルが撃たれたこと
    あのシスターたちはユスティナ聖徒会であること
    目を覚ました先生が解決したこと
    ヒフミがアリウスの精鋭に向けた言った宣言のことも事細かに語られたが・・・テンリは9割くらい聞き流した
    「ああそれと、今のうちに覚悟しておいた方がいいですよ。」
    「覚悟?」
    そう言われてテンリは首を傾げる
    しかしそれにハナコが答えることはなくニコニコとした表情で去っていった

  • 146天音テンリ(名誉美食研)25/03/05(水) 23:10:10

    その後はアズサや先生、派閥内の何人かが来たくらいで、一旦の落ち着きを見せる
    そもそも入学以来ずっとナギサの側使えをしていたテンリには友人が少ない
    そのためこれくらいで打ち止めかな?と思っていた
    だが、これで終わりなはずがなかった
    「ナギサ様!?」
    ナギサは思わず起き上がろうとするテンリを手で制止させ、いつもの椅子ではなく部屋にあったトリニティ基準では安い椅子に腰かける
    「その、病み上がりでしょうし、安静にしていた方がいいのでは・・・。」
    これは本気の心配だった
    テンリにとって自分の怪我は些事であった
    そんなテンリの言葉をかき消すように、そんな言葉を聞きたいのではないとナギサは口を開く

  • 147天音テンリ(名誉美食研)25/03/05(水) 23:17:11

    「テンリさん!!」
    それは絶叫に近い声だ
    あまりのことにテンリは口を閉じることさえ忘れて、ただじっと彼女を見つめる
    「どうして、どうしてそんな無茶をするんですか。」
    ナギサは堰を切ったように大粒を涙を流し、スカートの裾を掴む
    「目が覚めて、貴方が重体だと聞かされて、私がどんな気持ちになったか。」
    そこにいるのは、フィリウス分派の首長などではなかった
    「セイアさんは目覚めるかも分からず、ミカさんは牢獄の中で、貴方まで失ってしまうのかと思うと、私は、私は・・・。」
    その手から色んなものを零してきた、1人の少女だ
    「ナギサ様・・・。」
    テンリは左手を伸ばすが、何かに届くことはなく空を切る
    「貴方がいて、私はとても救われました。右も左も仮想敵だらけの中で、隣を任せられたのは貴方だけでした。貴方がいたことで、どれだけ安心できたか!」
    そこまで言って、自分を落ち着けるように深呼吸を数回する
    「次私を心配させるようなことになったら許しませんからね。今回は貴方の忠義に免じて大目に見ますが、次があったら減給ですよ?減給。」
    しっかりと目を見て、伝える
    それにテンリは参ったとばかりに口を開く
    「分かりました。これからはナギサ様の信用に応えられるよう無理はしませんから。」
    「それだけですか?」
    じとっとした目で見つけるナギサに、どこか気恥ずかしそうに答えた
    「その、無理をして、心配をかけて、申し訳ありませんでした。」
    その答えに満足したのか、ナギサはやっと笑顔を見せた

  • 148天音テンリ(名誉美食研)25/03/05(水) 23:23:53

    テンリの物語はこれにて終了です

    正直予定よりも長引きました

    このスレの分はこの1/3くらいのボリュームのはずでした(私は基本1キャラ1スレを目安にしています)

    質問あれば受け付けます

    特に無ければ落としてもらって構いません


    スレを終えての一言

    これ主人公ナギサでは?


    最終編でのテンリの活躍はこちらから

    【オリキャラ・🎲・⚓️注意】食は『芸術』足り得るのだろうか。|あにまん掲示板まだ答えは出ていませんわ〜このスレは下記のスレで制作が決まった作品ですわ〜https://bbs.animanch.com/board/3563546/何かと迷惑をおかけすると思いますけどよろしくお願…bbs.animanch.com
  • 149二次元好きの匿名さん25/03/06(木) 09:14:32

    >>148

    乙ですー

    続き来てたの気づかず今追いつきました

    特殊能力持ってても大筋は変えられないジレンマやら

    ナギサに忠実すぎる腹心がいて本編よりも精神安定したなぁと思いつつ……ナギサの衰弱が本編で有り得たかも

    (自分が倒れてはいけないから起こんないかも)

    しれないって思いました


    質問……というか要望なのですが

    美食研との絡みが見てみたいです!

  • 150二次元好きの匿名さん25/03/06(木) 16:23:35

    保守

  • 151天音テンリ(名誉美食研)25/03/06(木) 17:06:26

    >>149

    ナギサ(あのセイアさんと親しかったゲヘナの生徒が補習授業部の合宿所に侵入?まさか彼女はゲヘナのスパイなのでは?)

    ナギサ「ということで調査を。」

    テンリ「ただの肉屋さんですねー。」

    ナギサ「そんな馬鹿な!?もっと詳細な調査を!」

    多分これが原因だと思います(というかこれ以外でテンリが美食研に関わりに行く理由が思いつかなかった)


    名誉美食研任命、多分こんな感じダイジェスト

    テンリ「おかげさまでトリニティの悪徳料理人がボコボコにされています。いいぞもっとやれ。いっそ感謝を込めて手料理を振る舞いましょう。」

    美食研「・・・君、今日から名誉美食研。」

    テンリ「えっ。」

    美食研「拒否権はありません。」

    テンリ「・・・。」

  • 152二次元好きの匿名さん25/03/07(金) 00:21:55

    美食研からは逃げられない

  • 153二次元好きの匿名さん25/03/07(金) 08:56:32

    乙です
    面白かった

オススメ

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