- 1◆wYUuBm6d7Q25/02/18(火) 06:02:17
- 2◆wYUuBm6d7Q25/02/18(火) 06:03:21
結局この景色と暑さだけは変わらなかったな、と雲ひとつない青の下、パラソルの陰で私はぼんやりと考える。
学校から支給された水着は大部分が既に渇き、じんわりと生ぬるい汗が素肌を伝う。
私、メジロパーマーはこの夏特有の蒸し暑さが、好きだけどちょっと嫌いだ。
北海道で生まれ育ったこの身には照りつける日差しは慣れ難く、ビーチで少しだけ休ませてもらっているのだ。
波打ち際では、この照りつける日差しにも劣らぬ眩しさのギャルウマ娘と、すっかり見慣れた、トレセン学園では見ないラフな格好の私のトレーナーが、無邪気に波を荒らす。
そんな楽しそうな2人を見ていると、無性に私は動きたくなって、パラソルの陰から飛び出していく。
向かってくる私にすぐに気づいたトレーナーは、驚いた顔をしながらも微笑んでくれた。
「あれ、パーマー?暑さもう大丈夫なの?あんまり無理すると熱中症にーーーうぉおっ、あっぶっ…ってヘリオス今のはずるいって!」
「ひっひっひ〜⭐︎トレぴ隙見せたら……っておよ?パマちんじゃ〜ん!もうえぶりしんぐOKな感じ〜?」
そう言って私の親友にしてライバル、ダイタクヘリオスは目を細める。
「うん!もう大丈夫!今日is最終日だし?私たち3人でうぇいうぇええええい!みたいな?」
「そマ⁉︎パマちんセッキョクテキじゃーん!テンアゲなってきたしここは3人でセルフィ撮ってバイブスあげみざわでしょ!ほら寄って寄って〜」
「せーの、」
「「「うえええええええい⭐︎」」」 - 3◆wYUuBm6d7Q25/02/18(火) 06:04:39
今日は夏の強化合宿の最終日。
この日だけはみんなトレーニングはお休み。
それぞれが自らの目的のために、思い思いに過ごしている。
日は傾きかけて今、私とヘリオスは海の家で向かい合わせにかき氷パフェとかいうのを食べている。
どうやら有名なインフルエンサーが宣伝しているらしく、色んな味のかき氷シロップで自分色のトクベツができちゃうそうで。
ついいつもの癖で、ヘリオスと二人していろんなフレーバーをかけすぎてしまった。
私のトレーナーはどうやら同僚トレーナーに屋台の手伝いを泣きつかれたらしく、手慣れた手つきで焼きそばを作ってる。
ここまで来て大変だなぁと眺めていると、突然かき氷が主張してきた脳を刺す痛みに私は頭を抑える。
少し欲張りすぎてしまったかもしれない。
「いたぁ〜、ソッコー食べすぎて頭痛すぎまじぴえん」
「そう言いながら全然食べるのやめざりけりじゃんパマちーん、ってウチも痛ぁ!?」
キィン、と頭に響き渡る痛みに私は涙目になりながら、同じく口を開けて悶えるズッ友を見る。
イチゴやブルーハワイにメロン、レモン味。
ありとあらゆる色がぐちゃぐちゃに混ぜ合わさって、彼女の舌は何が何だかわからない色をしていた。
それがやっぱりちょっと面白くて、私は吹き出してしまって。 - 4◆wYUuBm6d7Q25/02/18(火) 06:05:50
「ちょっとヘリオスさぁ〜舌の色すごいことなってっからね?」
「え、マ⁉︎やばたにえん!てかやっぱパマちんチョイスの味えぐちなんだけどー!」
「えー、いいじゃん別にそんなことないって!てかおもろいしセルフィ撮ってウマスタあげよ!」
「あはっ!それありよりのありっしょ!バイブスブチアゲ!うぇええいぴすぴーす‼︎」
きっと私のも同じ色をしている。
その後もやっぱり酷い味のかき氷パフェと悪戦苦闘していると、既に完食を放棄していたヘリオスが口を開いた。
「そーいえばパマちんはさ、もう怖いもんないの?」
「うンむ?」
「食べながら喋るなし。ほら飲み込む飲み込む。」
「んむ、ふぅ。えと、それで?」
「えーとさ、この前の宝塚記念とかは、ウチとコンビで出てテンアゲ〜⭐︎みたいな感じだったじゃん?」
「うん、確かに」
「でも、今度の天皇賞はぁ、パマちんのおばあさまもとーぜん出席するわけじゃん?パマちんまたテンサゲありえんてぃ、リアリィパマちんおけ丸水産?とかぁ…」 - 5◆wYUuBm6d7Q25/02/18(火) 06:06:37
天皇賞。
メジロ家にとって最も格式の高いレース。
このレースには一族の多くの血縁者が試合を観戦しに来る。
だからこそ、失態を、恥を晒すことなどできない。
でも、今の私だけでは、私なんかじゃーーーー
「うーん、なんとかなるっしょ!この前みたいに私とヘリオスでさ、特大の超逃げ?爆逃げ?神逃げ?ぶちかまして?そのままみなさまランナウェイ⭐︎みたいな?」
私はありのままの本心を言う。
私とヘリオスなら、どこへでもいける。
どこまでだって、逃げていける。
全部嘘偽りない真実だ。
「おおー!やっぱりパマちんラビュ♪でもさでもさ、パマちんさ、ーーーーーーそれだけじゃないっしょ?」
瞬間、真夏の空気が、冷える。
彼女は私を視線で刺して、試すようにニコリと笑いかけた。
落ちこぼれの私でも、そこの空間だけには、引き下がってはいけない何かが、逃げてはいけない何かがある気がした。
器の上の、最後の一欠片がどろり、と溶ける。 - 6◆wYUuBm6d7Q25/02/18(火) 06:07:23
「パマちん本当はさ、ーーーーでしょ?」
彼女の言葉は、勢いよく立ち上がる蒸気の音にかき消されてよく聞こえなかった。
見ると、ちょうどトレーナーが器用にも、大量の焼きそばを作り始めたようだった。
並んでいる客は、突然のショーにわぁっ、とにわかに沸き立つ。
そんな客には目もくれず焼きそばを作り続ける彼の長いまつ毛を、私は知っている。
勢いよく麺と具材を混ぜ合わせる彼のパフォーマンスは豪快で、見ているこちらまでじっとりと汗が出てきそうだ。
想像以上に暑いのか、トレーナーは胸元を開けて袖をまくり、その鍛えた腕で黙々とヘラを動かし続ける。
私たちは、しばらくその様子を眺めていた。
やがて、私の方が少し先に口を開く。
「私とヘリオスならさ、誰が相手だってどこまでも逃げていけるよ。私たちの爆逃げなら、最&強に眩しいと思う。」 - 7◆wYUuBm6d7Q25/02/18(火) 06:07:51
「でもね。」
「レースでは、ハナは譲らないよ」
それを聞いた彼女は、やはり私にニコリと笑いかけた。
「でしょー!ウチパマちんがレースしゅきしゅきなのわかってっし!パマちんのことウチが一番わかってっから!そっかそっか!でもさ、ウチもーーー」
「まんまと、逃げ切っちゃうかもね?」
そう言って私たちはどちらともなくお互いに笑い合う。
やっぱり、ヘリオスは私の親友だ。
近すぎても遠すぎてもキケンな、私の大事なシンユウ。
とても厄介な親友とひとしきり笑い終えた後、私たちは立ち上がる。
「さてと、じゃあ私もトレーナーの手伝い行ってきますか。私くらいの手伝いでもちょっとは役に立つでしょ」
「うぇーい⭐︎ウチもトレぴ手伝う〜⭐︎」
「ヘリオスこの前焼きそば焦がしてたっしょ⁉︎」
夏はもう少しだけ、続きそうだ。 - 8◆wYUuBm6d7Q25/02/18(火) 06:11:11
いやーヘリオスのJK語マジわかんなすぎてぴえんでしたねー。
やっぱパーマーとヘリオスってほんといいコンビですね!
あ、前作の方もどうぞ読んでいただければ幸いです。楽しんでいただけたならとても良かったです!
いつだって、あなたに【バレンタインSS・メジロアルダン】|あにまん掲示板ほう、と手のひらに吐息をひとつ。その両手に微かな温もりを与える輝きの白雲は、すぐに消え失せて、私は冬の終わりが近づいているのを実感します。目の前には、白梅の小さな蕾ひとつひとつがこの瞬間を待ち望んでい…bbs.animanch.com - 9◆wYUuBm6d7Q25/02/18(火) 06:23:20
スレタイにSS注意の文字を忘れていました…
ほんまにすみません… - 10二次元好きの匿名さん25/02/18(火) 06:54:14
ここジメジメしすぎじゃない?
夏だから?そっかぁ… - 11二次元好きの匿名さん25/02/18(火) 08:29:50
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- 12◆wYUuBm6d7Q25/02/18(火) 08:31:55
- 13二次元好きの匿名さん25/02/18(火) 10:10:41
女子コワイヨー
- 14二次元好きの匿名さん25/02/18(火) 12:06:22
感想ありがとうございます!
女子同士の仲って一筋縄では行かなそうできつそうだな、と男目線から見ていても思います
男なんてみんなで馬鹿騒ぎしてピャーとか言ってるだけですからね
男子学生とか集団でいる時IQ3程度だった記憶しかないです
- 15二次元好きの匿名さん25/02/18(火) 20:40:21
パマちんもヘリオスも真っ黒黒…
- 16二次元好きの匿名さん25/02/18(火) 23:05:33
- 17二次元好きの匿名さん25/02/19(水) 08:46:39
保守です
- 18二次元好きの匿名さん25/02/19(水) 16:38:59
語彙が不足して申し訳ないがとてもいいです…
- 19二次元好きの匿名さん25/02/19(水) 20:02:09