【トレウマSS】宇宙を貫く雄叫びよ遥かなる時を遡り銀河の源より蘇れ!顕現せよそして我を勝利へと導け!No.107銀河眼の時空竜!

  • 1◆AvDR49khXo25/02/19(水) 21:02:00

    略。トレーナー君と恋仲というモノになった。そこまでには紆余曲折あったのだが、今更取り立てて説明するようなものでもないので『全』略させてもらう。別に思い出すと何故か気恥ずかしくなるなんて事ではないのであしからず。
    …事実だとも。

     まあ、別に私たちの間柄に新たな名称が生まれたからといって大きな変化があるわけではない。モルモットとして実験データを取り、助手として研究の手助けをしてもらい、トレーナーとして私の日常の面倒を見る。そこに恋人という新たな繋がりが出来ただけ。
    そう、考えていた。



    「君たち。『愛』とは何だろうね?」

    「『愛とは何なのか』、だあ?
    何訳分かんねぇ事言ってんだタキオン。お前、悪ぃものでも食ったのか?」

    「フ、心外だねェポッケ君。今日もいつも通りトレーナー君お手製弁当だったとも。
    もちろんキッチリ完食してからは何も口にしていないが?」

    「そういうことを言っているのではありません…。
    それに、アナタ自身が変なことは…いつも通りですから…」

    放課後、私とカフェのシェア教室にて集う4人。なお本日は1名欠席。
    最近は何故かこうして集まり、話すことが多くなった。
    トレーニングやレースに関しての真面目な話題や、自身の趣味に関しての話題など議題は様々。以前の私なら歯牙にもかけず、研究を続けていたのだが。
    まぁ、時にはこういう事に時間を費やすのも悪くはなく思えてきている。

    そして、私のこの思いをトレーナー君に伝えるために彼女たちには色々と相談に乗ってもらった。その件に関しては本当に感謝してもしきれない。是非ともこの恩を返そうと実験を準備しているのに如何せん誰も首を縦に振らない。
    まったく、困ったものだ。

  • 2◆AvDR49khXo25/02/19(水) 21:02:21

    「それで、先ほどの質問は一体?
    『愛とは何なのか』とは…?」

    「お前、まさか!?あんだけ散々俺らに世話焼かせやがって、うまくいってねぇとか言うんじゃねえだろうな!?」

    「いやいや、至って順調だとも!だがまぁ、その、なんだ。最近ふと考えてしまうんだが。
    果たして本当に私の事を愛してくれているのか分からなくてね」

    「…なぜ、そう思ったのです?どう見ても、愛されているでしょう…」

    「じゃなきゃこんだけメチャクチャなお前のトレーナーになってないだろ」

    「…そうじゃない。二人きりになっても『そういう』雰囲気にならない」

    「「ああ…」」

    空しく響く同情の声。

    世のカップルと呼ばれるつがい全てが全てという訳ではないのだろうが、恋人が出来たのであれば少しはいわゆる「イチャイチャ」だの、「ベタベタ」だの、を経験してみたいと思い始めた。よもや自分にこんな欲望があったとは。
    そう気付いたのがつい先日。
    それからは二人きりになると少しアピールしてみるが、どれも不発に終わり。
    いよいよ私一人きりの力では限界があるので、参考までに彼女らの意見を頂戴しようと思ったのだ。

  • 3◆AvDR49khXo25/02/19(水) 21:02:42

    沈黙が響く部屋。ああ、本当に今日に限ってダンツ君が来ていないのが悔やまれる。
    如何せんどこかしら尖った面々の中でこういう「ザ・女子」系統の話題に頼りになるのだが、いないものは仕方がない。目の前にいる彼女らで我慢しよう。
    見たまえ、カフェは悠長に淹れたコーヒーの味を堪能している。
    方やポッケ君はスマホの画面をボーっと眺めて時々スワイプ。
    …フム。

    「…一つ聞くが。君たち、私の悩みについて考えてくれているのかい?」

    「えぇ、微塵も考えていませんが?」

    「イヤ興味ねぇし」

    「この薄情者共め!」

    科学者は激怒した。



    「わりーわりー嘘だって。流石にからかいすぎたわ」

    「ええ、すみません。
    まさか、そこまで本気で悩んでいらっしゃられるとは…」

    あまりの取り乱し様に謝罪をしてくる彼女たち。
    自分に素直でいられるくらいの関係にはなれてきているのだろうが、最近このようにからかわれる事も増えてきた。
    まァいい。今度の実験のターゲットにしてやる。新しく出来た「ドンがパッしてチーするエキス」の被験体だ。
    頭の中でそんな仕返しを企てていると。

  • 4◆AvDR49khXo25/02/19(水) 21:04:35

    「しかし、困りましたね…。アピールをしても、反応が…薄いとは…。
    ……?」

    そういって何かに気付いた顔のカフェ。

    「あの、タキオンさん。
    今日のお昼のお弁当、どうやって食べましたか?」

    「何だい藪から棒に。どうっていつも通りトレーナー君に食べさせてもらったが?」

    「Oh…」

    何だいカフェ。その君に似つかわしくない返事は。
    そんなことを思うと続けてポッケ君が口を開く。

    「タキオン。たまにお前のトレーナーに抱えてもらって移動してるとか言ってたよな。
    どんな感じでだ?」

    「君もか。基本おんぶ、時々は俗にいう『お姫様抱っこ』だ」

    「Oh…」

    何だ揃いも揃って同じ反応をして。最近の流行なのかい?

    「原因わーったかもしんねぇ…」

    「なんだって、それは本当かい!?」

    「ええ…。シンプルな理由です。たった…ひとつの、シンプルな理由ですよ…。
    『慣れ』です。『あーん』や『密着したスキンシップ』のような…ドキドキするようなアクションに、すっかり慣れてしまっているんです」

  • 5◆AvDR49khXo25/02/19(水) 21:04:52

     原因がわかればそれに対する方法を用意すればいいのだが、今回ばかりはそうもいかない。なんだ「慣れ」って。私のトレーナー君の過ごした大事な時間が逆にこんな危機を生むとかわかるモノか。
    などと頭をより一層抱え込む私を尻目に解決したといわんばかりに再び各々の行動に戻る彼女たち。

    「ちょ、ちょっと待っておくれよ!?私はこれからどうすればいいんだい?
    何『解決しましたね』みたいな雰囲気出しているんだ!?」

    「いえ、タキオンさん。既にほぼ…解決したようなものです」

    「だな、簡単なこった」

    スマホから顔を上げ、目を合わせながら言うポッケ君。

    「タキオン。ようは切り替えりゃいいんだよ。慣れたんなら『いつも通り』か『意識してほしい時』かで分けりゃいい」

    「気軽に言ってくれるね…。で、具体的に?
    どうやってその切り替えを行うんだい?」

    「それこそアタックするだけだろ!恋愛なんてモン、頭で色々考えてもどうせ本番迎えりゃどうしても感情が出ちまうんだから、そのままつっ走りゃいい」

    「ええ。まずは…行動あるのみです。
    それでもうまくいかないときは…また相談してください。微力ですが…お手伝いはしますよ」



    「…助言感謝するよ。わずかながら方針は決まった。
    少々準備するので、今日はこれで失礼するよ」

    行動あるのみ、か。
    ある程度の計画を組みながら、部屋をあとにする。

  • 6◆AvDR49khXo25/02/19(水) 21:05:05

     休日。トレーナー君の部屋。
    あの後、ある実験を行いたいので部屋にお邪魔すると約束をしておいた。
    切り替え、という点ではいいヒントを頂いた。場所、条件、時間。要は実験の環境を変化させればいい。なんだ、いつも行っていることじゃあないか。
    まあ、あと一つ付け加えるものがあるのなら「感情」とやら、らしいが。

    「いやー、貴重な休日も実験に付き合わせてしまってすまないねェ」

    「気にしないでよ、むしろここで実験なんて出来るの?」

    「ああ、可能だ。なにせ今回の実験対象は私と君なのだから。
    時にトレーナー君。お昼前だが既に昼食を済ませたかい?」

    「え?いや、食べてないけど…。
    あ、そういうこと?分かった今から何か作るね!」

    そういってエプロンをかけようとするトレーナー君。その勤勉さには感心するが、今日ばかりはそうもいかない。

    「いーや必要ない。安心したまえ、既に作ってきているよ。君の昼食は」

    「…はい?」

    それはそれは不安そうな目をされた。これも調きょ…実験の成果か。

  • 7◆AvDR49khXo25/02/19(水) 21:05:31

     トレーナー君を座らせ、目の前には弁当箱を準備。

    「さぁ、どうぞ。お手製お弁当だ。味の保証はしかねるが、是非とも堪能してくれたまえ」

    「それは…どうも…」

    なんだ普段からいつもモルモットになっているくせに、今日はなんだか反応が芳しくない。
    彼女からのお手製だぞ、普通は喜び勇んで芝2200m駆け回るものだろう。

    なんて言えないのも仕方がない。なにせ普段の行動が積み重なってしまっている。
    まあこれも一種の「慣れ」なのだろう。ではどうするか。
    …答えは簡単。条件を変えてみよう。

    いよいよ蓋を開けてご対面。お弁当の中身は──

    「…あれ?普通?」

    「何をそんなに不安になっているんだい!
    正真正銘、何の変哲もない昼食さ。召し上がれ」

    「あ、ああ…。じゃあ、いただきます。
    …あれ?タキオン、これお箸は?」

    「ああ、ここにあるとも。だが今回は君が持つものではない。
    さぁ、モルモット君。口を開けたまえ。わ、私が『あーん』をしてあげよう」

    「え…?」

    今回変えるのは能動者側と受動者側。
    後は、感情の赴くままに。

  • 8◆AvDR49khXo25/02/19(水) 21:05:44

    「さぁ、ではまずは何から食べたいんだい?」

    「…卵焼き、お願いしてもいいかな?」

    「了解した。…さぁ、モルモット君。『あーん。』」

    「あ、あーん」

    少し震える手で口元へ。なんだこれ思ったより緊張するじゃあないか。
    五、六回咀嚼していると段々と顔色が明るくなるトレーナー君。

    「美味しい!タキオン、これ美味しいよ!俺の好きなちょっと甘辛い味!」

    知っているとも。君が、私に語ってくれていたじゃあないか。

    「そうかい、お口にあったかい。それで、次は何をご所望かな?」

    「じゃあ次は…唐揚げ!」

    「ああ、では『あーん。』」

    食べやすいように一口サイズにしていた唐揚げもお気に召したのだろう。何も言わずとも顔に表れている。
    当然だ。これも、君の好きな味付けなんだろう?いつか君が話してくれたことだよ。

  • 9◆AvDR49khXo25/02/19(水) 21:06:03

    あっという間の完食。

    「ごちそうさまでした。すごく美味しかったよ、ありがとう!」

    「お粗末様。ご堪能いただけたのなら何よりだ」

    しばしの沈黙。やがて目の前でしきりと身体全体を見渡したり、ニオイをかぎ始めるトレーナー君。

    「…何をしているんだい?」

    「え?いや、効能が出始めるならそろそろかなぁって思って…」

    「ハァー…。安心したまえ、今日のお弁当には本当に、何も入れてないよ。
    ただ純粋に、食べてほしかっただけさ」

    「そ、そうなのか。それはゴメン。ついいつも通り何か入れているものだと…」

    「フッ、気にしてないよ」

    嘘だ。本当は少し、胸が痛い。
    普段の振る舞いが振る舞いなので、何も言えないが。


    なんだか変な空気になりつつある部屋の中、

    「なあ、タキオン。今日の実験って一体何なんだ?」

    口を開くトレーナー君。

    「さァ、何だろうねえ?ではその気になる実験の続きを始めようか」

  • 10◆AvDR49khXo25/02/19(水) 21:06:28

     ベッドに腰掛けるトレーナー君。その上に乗り、向かい合うように座る。
    はたから見ればなんともまあ破廉恥極まりない体制だ。事実彼が口を出してきたが、恋人だのなんだの言うと簡単に折れてくれた。

    「あのー、タキオンさん。今回は何をするのでしょうか…?」

    頭の中では疑問符と緊張が手を取り合っているのだろうか。そんな表情を見せている。

    「これはアレだ、ボディタッチにおける感情の変化というものだ。
    君も聞いたことぐらいあるだろう、エンドルフィンという物質がある。
    多好感をもたらすもので、主にハグなどでも分泌されるものだ。
    だから、こう、実際にやってみようという訳だが!?」

    なんだかんだ言いながら私も半ば自棄が入ってきている。自分が何を言ったのかも定かではないが、どうやら納得をしてはくれたようで。

    「じゃあ…どうぞ?」

    両手をおずおずと広げるトレーナー君。

    「ああ…。で、では失礼するよ…」

    体勢のせいもあり、胸に寄りかかるような変なハグ。
    うるさいくらいに心音が聞こえるがこれは彼のか、私のか。

    そのままどれくらい時間が過ぎたのだろうか。
    段々とフワフワした心地になってきた。
    それでも。いやここまでしてもなお理性が、頭が一つの疑問に囚われている。

    「…愛って、何だろうね?」

    「…タキオン?」

  • 11◆AvDR49khXo25/02/19(水) 21:06:47

     「…気にするな、というのも土台無理な話だろう。そのままでいい、聞いてくれ。
    まァ端的に言うのならば、不安になったんだよ。君と恋仲になれたものの思うようにいかず、もしかしたら私だけ。私だけが恋をしていて、君はただ尽くしてくれているだけ。
    そう、思ってしまったんだ」

    ああ、違う。こうじゃない。こういうことを言いたいんじゃないんだ。本当はちょっと君に意識してほしいだけなのだ。
    ただ、素直に甘えることのできない私が悪いのだ。


    「タキオン」

    静かすぎる部屋の中で、ふとギュッと。少し強く抱きしめられる。

    「…意識しない訳、ないだろ。聞こえる?この心臓の音。
    滅茶苦茶に我慢してるよ。そりゃ普段はそう見えないかもしれないけれど。
    形は様々だけれども。…愛してるよ。顔、上げてくれるかい?」

    ゆっくりと抱擁をとき、目と目が合った瞬間。

    ──唇に当たる感触。


    互いの距離がゼロからまた離れて。

    「これで、分かってくれるかい?」

    「…。まだ分からないな。あと少し…。
    いや、違うな。もっとだ。もっと君の愛を、私にくれ」

    再び重なり、一つになる影。

  • 12◆AvDR49khXo25/02/19(水) 21:06:57

    愛というモノには様々な形がある。友愛、親愛、献愛。
    君がくれる愛の種類は色々あるけれども。
    今ここで愛は、きっと私が望むものだろうね。

  • 13謝意っ☆25/02/19(水) 21:08:30
  • 14二次元好きの匿名さん25/02/19(水) 21:09:27

    書き乙、タキオンドラゴン好き

  • 15二次元好きの匿名さん25/02/20(木) 03:42:20

    不器用なタキオン、そしてノリ良く適当に対応するカフェポケが良き

オススメ

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