(SS注意)あったかキタちゃん

  • 1二次元好きの匿名さん25/02/20(木) 00:33:16

    「うう、寒い……もう一枚持って来れば良かった」

     この日は、色々と悪い偶然が重なっていた。
     一つは寝坊をしかけて、朝の天気予報をちゃんと確認できなかったこと。
     ここの所は暖かかったもので、少し薄着で来たのだが、今日に限って真冬の寒さであった。

    「暖房も壊れるだなんて、ツイてないよなあ」

     そしてもう一つは、トレーナー室の暖房が急に故障してしまったこと。
     普段はあれほど頼れる空調が、今日はうんともすんとも言わない。
     数日後には修理が来てくれるようだが、今日の時点ではこの寒さの中を過ごすしかなかった。

    「そのくせ、やらなきゃいけない仕事はいくつかあるし」

     そんな中でも、今日仕上げなくてはいけない、大切な仕事が残っているのもまた不運といえる。
     しかも、担当の個人情報やこれからのローテが絡む内容なので、あまり外に持ち出したくない内容。
     その辺りの不幸が重なった結果、俺は寒い部屋の中、身を震わせながら仕事をしなくてはいけなかった。

    「……とりあえず、気休めに暖かい飲み物でも買って来るか」

     そう考えて、一旦席を立とうと考えた矢先、こんこんとノックの音が聞こえて来た。
     はて、今日は来客の予定はなかったはずだけれど、と首を傾げながらも返事をする。

  • 2二次元好きの匿名さん25/02/20(木) 00:33:49

    「はい、開いてますよ」
    「失礼しまーすっ! って、わわっ!? なんだかすっごく寒くないですかこの部屋!?」

     入って来たのは、爛漫な笑みを咲かせている一人のウマ娘。
     ふんわりとした鹿毛のボブカット、鮮やかな赤色の瞳、髪には花菱の和紐のリボン。
     担当ウマ娘のキタサンブラックは、部屋に入った瞬間、耳と尻尾をぴんと立てて驚きを表した。
     俺はそんな彼女の様子を微笑ましく思いつつ、苦笑いを浮かべる。

    「あはは、ちょっと色々とあってね、ところで今日はミーティングではなかったはずだけど」
    「トレーナーさんを手伝えることはないかと思って……えっと、何があったのか聞いても良いですか?」

     心配そうな表情で、じっとこちらを見つめて来るキタサン。
     相変わらず優しい子だなあと感じながら、俺は今日の事を話し始めるのであった。

  • 3二次元好きの匿名さん25/02/20(木) 00:34:02

    「それは、なんというか」
    「まあ自業自得も含まれているから、何も言えないんだけどね」

     何とも言えない表情を浮かべるキタサンに対して、冗談めかして、そう話した。
     実際のところ、寝坊さえしなければある程度は問題はなかったのである。
     彼女が淹れてくれた暖かな緑茶で口を湿らせてから、俺は言葉を続けた。

    「俺の方は大丈夫だから、今日は他の子を助けてあげてね、お茶ありがとう」
    「……むう」

     俺の言葉を聞いた瞬間────何故かキタサンは、不満気に唇を尖らせた。
     何か不味いことでも言ってしまっただろうか、と困惑する中、彼女はジトっとした目を向ける。

    「…………そんな寒そうにしながら大丈夫と言われても、説得力がありません」
    「まあ、それは」

     キタサンからのあまりに真っ当すぎる指摘に、俺は言葉を詰まらせてしまう。
     暖かなお茶は有難いものだが、それで全てが解決するようなものでもない。
     俺が答えに窮していると、その間に彼女はそっと近づいて来て、両手をふわりと握ってきた。
     ちょっとだけ小さくて、しっとりと滑らかな感触で────とても、暖かい。
     思わず、ほっと息を吐いてしまいそうなほどだった。 

    「手だって、こんなに冷たくなってます」
    「…………キタサンの手は、暖かいね」

     ぎゅっぎゅっと、マッサージをするように何度も握ってくれるキタサンの手。
     優しい温もりと気遣いに、俺の口からは素直な感想が漏れてしまう。
     その言葉を聞いた彼女は、耳を嬉しそうぴょこんと動かして、目を柔らかく細めた。

  • 4二次元好きの匿名さん25/02/20(木) 00:34:15

    「はい! あたしは冬でも手がぽかぽかで────そうだ!」

     突然、キタサンの両目が大きく見開き、きらきらと輝きを放ち始める。
     それは、彼女の中の『お助け大将』の気持ちが昂り始めた時と、同じ瞳の輝き。
     彼女はにっこりとした笑みを浮かべて、俺の手を握ったまま両手を合わせながら、言葉を紡いだ。

    「今日はあたしの身体で、トレーナーさんを温めてあげちゃいますっ!」
    「……えっ」

  • 5二次元好きの匿名さん25/02/20(木) 00:34:32

    「どう、ですか? 湯たんぽみたいで、ぽかぽかになりませんか?」
    「あっ、ああ、暖かいことは、暖かいんだけど」

     確かに、キタサンの身体はとても暖かかった。
     元々ウマ娘の体温はヒトの平均よりも高いものなのだが、彼女の場合はそれよりも高めだと思う。
     極寒と化したトレーナー室の中では、この温もりはストーブのように頼りになる、のだが。

    「それは良かったんです、でもちょっとバランスが難しいですね、よっ、ほっ」
    「……うん」

     嬉しそうに微笑んだキタサンは、くいくいと腰を振る。
     すると尻尾がふりふりと動いて────俺の太腿の上の感触が、生々しく変化していく。
     今もなお成長している、がっしりと大き目で、それでいてふんわりと柔らかなキタサンの尻。
     それが今、ずっしりとした重量感を伴って、俺の脚の上に乗っかっていた。
     視線の下には、揺れる彼女の髪と微かに香り立つ、白檀の優しげな香り。
     感覚全てを彼女に満たされる、そんな錯覚を起こしそうになってしまう。

    「えっ、えっと、キタサン、その体勢キツくない? 大変そうなら降りてもらっても……」
    「いえいえ! いつものトレーナーさんの尽力に比べたら何のこれしき! エイヤ、ソイヤ!」

     やんわりと降りるように伝えたつもりが、逆に火をつけてしまったようである。
     キタサンは少しだけ腰を浮かすと、俺の方へ向けて、ぐいぐいと深く座っていった。
     必然的に彼女の尻も深く押し付けられる形となり、温もりが、感触が、匂いが、更に濃厚なものへと変わって行く。
     お尻の割れ目すらわかってしまう密着具合、すりすりと触れ合うハリのある太腿。
     こしょこしょとくすぐるように動く尻尾の毛先、ちらちらと見え隠れする美しいうなじ、汗混じりの甘い匂い。
     思わず、心臓の動きが早くなって、身体が熱くなってしまいそうになる。

  • 6二次元好きの匿名さん25/02/20(木) 00:34:46

    「……うん?」

     ふと、キタサンの動きがぴたりと止まった。
     何かを気にするように後ろをちらりと見て、次いで俺の顔を上目遣いて見る。
     そして、確かめるように更に深くお尻を動かして、ぴたりと身体をを合わせてきた。
     彼女の尻尾を間に挟んで、合わさった俺の胸から、どくんどくんという響きが彼女の背中へと伝わる。

    「トレーナーさん、もしかして、ドキドキしてますか?」

     ────心臓が、一際、大きく跳ねる。
     息を詰まらせるものの、その鼓動は何よりも雄弁に、正直に事実を語ってしまっていた。
     恐る恐る、俺はキタサンの様子を窺う。

    「そっか、そうなんだ……えへへ」

     キタサンは、だらしなく口元を緩ませていた。
     耳をぴこぴことさせながら、尻尾をわしゃわしゃと小刻みに震えさせて。
     そして、わざとらしくお尻をすりすりと擦りつけるように動かしながら、悪戯っぽい表情を浮かべた。

    「もっと、もっと、暖かく、してあげますからね?」
    「……っ」

     これは、まずい。
     何がまずいのか良く分からないが、このままではまずいと、理性と本能が想いを一つにしていた。
     しかし、キタサンの尻に優しく、それでいて丹念に刺激されている状況では思考は回らない。
     まずは、さっさと仕事を終わらせるべきか────と考えた瞬間、天啓が舞い降りた。

  • 7二次元好きの匿名さん25/02/20(木) 00:35:02

    「キッ、キタサン!」
    「……ふふ、どうしましたか、トレーナーさん?」
    「…………ごめん、この体勢じゃ仕事が出来ない」
    「あ」

     何で最初から思いつかなかったのだろうか。

  • 8二次元好きの匿名さん25/02/20(木) 00:35:20

    「…………むうう」
    「ごっ、ごめんね、気持ちだけは受け取って、早めに終わらせるからさ」

     キタサンは頬を膨らませながらも、それ以上の行動は起こそうとしない。
     いかに俺のためとはいえ、仕事の邪魔になってしまっては意味がないと考えているのだろう。
     幸い、彼女が離れた後でも、その温もりは微かながら残っている。
     ……まあ、感触やら匂いやらは、それ以上に神経に刻まれてしまっているのだけれども。
     この温かさが残っている間に、仕事を進めてしまおう、そう考えた矢先であった。

    「……これなら、邪魔にはなりません、よね?」

     そっと────背後から腕が回された。
     背中に押し付けられる、丸みを帯びた二つの膨らみ。
     じんわりとした温もりが伝わって来て、熱のこもった吐息が、首筋へとかかる。
     ぞくりと、背筋が震えそうになる中、キタサンの小さな微笑みが聞こえて来た。

    「ふふっ、暖かいですか?」
    「……そりゃあ、暖かい、けども」
    「それじゃあもっと暖かくして、もっとドキドキさせて、あげますからね?」

     少しだけ甘えるような声色になったキタサンは、耳元でそう囁きながら身体を押し付ける。
     次第に彼女の手が俺の胸板を撫で回すように滑り落ちて来て、やがて、心臓の辺りへと辿り着いた。

  • 9二次元好きの匿名さん25/02/20(木) 00:35:36

    「……あれ?」

     そして、どこか間の抜けた声が鼓膜を揺らした。
     キタサンは少し慌てた様子で、何かを確かめるように、すりすりと俺の胸元を撫でてくる。
     しばらくして、何だか不満そうに、ぽつりと呟いた。

    「…………さっきより、ドキドキしてないです」

     それは、まあ。
     言葉には出さないものの、先ほどに比べれば少しばかりの余裕があった。
     別に胸よりも尻派とかそういうわけではない────単純に、感触の生々しさの差なのである。
     キタサンはどちらも魅力的なプロポーションをしているものの、とある明確な差があるのだった。
     だから、先ほどよりも心臓は落ち着きを取り戻している。
     出来ることならば、このままで仕事を進めて行きたいところなのだけれど。

    「………………トレーナーさん、絶対に、後ろを振り向かないでくださいね?」

     ふと、キタサンはそんなことを言って、身体をそっと離した。
     どうしたのだろう、と疑問を覚えながらも、俺は決して振り向かずに仕事へと集中する。
     やがて、背後からごそごそと、衣擦れの音が聞こえて来た。

    「……キタサン?」
    「見ちゃ、ダメです」

     ぷちっと何かが外れるような音に、しゅるりと布地が引き抜かれるような音。
     そして、再びキタサンの気配が近づいて来て、そっと背後から手が回される。

  • 10二次元好きの匿名さん25/02/20(木) 00:35:49

     直後────むにっと、マシュマロのような感触が、背中へと押し付けられた。

     先ほどよりも遥かに柔らかくて、暖かくて、艶やかな感触。
     それはまるで、先刻まであった一枚の隔たりを抜き去ったかのようであった。 
     ふにふにと、彼女の身体が悶えるように小さく動くごとに、二つの膨らみは生々しく形を変えていく。
     あまりにも魅惑的な触感に、俺の心臓は、再び暴れ始めてしまう。
     そして次の瞬間、それを掴み取るかのように、彼女の小さな手のひらがそっと重なった。

    「えへへ……今度は、ドキドキ、してくれてますね?」

     妖艶な声色が、鼓膜を優しく揺らす。
     背中越しには、ぱたぱたと忙しなくはためく尻尾の音と、とくんとくんと響くキタサンの心臓の音。
     それに気づいているのかいないのか、彼女はぎゅっと身体を密着させて、耳元で囁き続けた。

    「トレーナーさん……お仕事がんばれー……わーっしょい、わーっしょい……」

     いつも元気なキタサンからは想像できないほどの、甘ったるいウィスパーボイス。
     小さな囁きは、熱い吐息とともに耳の中から入り込んで、俺の精神をひたすらかき乱していく。
     それでも何とか目の前の仕事に意識を向けようとするものの、それを嘲笑うかのように、くすりとした微笑みが聞こえて来た。

    「ふふ……だーいすき……♪」

  • 11二次元好きの匿名さん25/02/20(木) 00:36:08

     ────それからの記憶はあまり残っていない。

     残っていたのは、以前、桐生院さんから見せてもらったトレーナー白書の記述と完了した仕事のみ。
     まあ、あと、残念なことにキタサンの感触と温もりと匂いと声色も、色濃く刻まれてしまっていた。
     翌日の朝、俺はいまいち寝付けず、重い頭のまま、学園へと向かう。
     その途中、見知った後ろ姿を見つけた。
     鹿毛のエアリーボブ、見間違うはずもない、自らの担当ウマ娘であるキタサンブラックの姿である。

    「……はあ」

     キタサンは、小さなため息をつき、妙に重そうな足取りでとぼとぼと歩みを進めていた。
     昨日は元気そうだったけれど、体調が良くないのだろうか。
     ……トレーナー室の一件もあり声はかけづらいが、担当トレーナーとしてそういうわけにもいかない。
     俺は早歩きで彼女へと追い付いて、声をかけた。

    「おはようキタサン、えっと、昨日はありがとうね」

     ────それがとんでもない地雷であったことに、まるで気づかずに。
     俺の声を聞いて、キタサンの身体がびくんと跳ねる。
     やがて、油の切れた機械のような鈍い動きで、ゆっくりとこちらへと顔を向けた。

    「……っ」

     キタサンは、俺の顔を見た瞬間にぼんと顔を真っ赤に染め、目を熱っぽく潤ませる。
     ピンと尻尾と耳を逆立てながら、あたふたと忙しなく手を動かし始めた。

  • 12二次元好きの匿名さん25/02/20(木) 00:36:59

    「あっ、あの、昨日のは、その、ちょっと調子に乗っちゃったというか、ですね……っ!」

     ぐるぐると回り始める、キタサンの瞳。
     いかに言葉を費やしたとしても、昨日の行動が消え去ることはない。
     次第にそれを認識した彼女は、口を噤み、顔を伏せて、ぷるぷると震え始める。
     そして────くるりと、俺へと背中を向けた、

    「あああああっ! ぜっ、全部、忘れてくださぁーいっ!!」
    「あっ、キタサン……」

     弾けるように駆け出していくキタサン。
     その逃げ足は凄まじく、こんな状況でもなければ見惚れてしまっていたことだろう。
     ……どうも、家に帰った後に冷静になって、恥ずかしさが一気に襲い掛かってしまったようだ。
     そんな彼女の姿を見ていると、昨日の記憶が、むしろ明確に蘇ってきてしまう。

    「……参ったな」

     俺は頬を掻きながら、その場で立ち尽くす他なかった。

  • 13二次元好きの匿名さん25/02/20(木) 00:37:38
  • 14二次元好きの匿名さん25/02/20(木) 00:40:32

    ふう…一線を超えたのかと思ってドキドキしちゃったぜ

  • 15二次元好きの匿名さん25/02/20(木) 00:50:53

    あぁ^〜すき

  • 16二次元好きの匿名さん25/02/20(木) 00:59:44

    甘ーい!

  • 17二次元好きの匿名さん25/02/20(木) 01:37:10

    寝る前に良いものを見た

  • 18二次元好きの匿名さん25/02/20(木) 01:37:59

    快活激重ウマ娘が自爆する時にしか得られない栄養をたくさん摂取できたありがとう

  • 19125/02/20(木) 07:41:58

    >>14

    暖めているだけですからね

    >>15

    キタちゃんはいいよね・・・

    >>16

    キタちゃんにはこういう話が合う

    >>17

    そう言っていただけると幸いです

    >>18

    こういうシチュがぴったりなんですよねえ

  • 20二次元好きの匿名さん25/02/20(木) 07:46:13

    距離感バグった子の豊満な肉体使ったボディランゲージは麻薬ですね

  • 21二次元好きの匿名さん25/02/20(木) 13:56:21

    キタちゃんかわいいね・・・

  • 22125/02/20(木) 20:12:43

    >>20

    自覚して真っ赤になるのも良いよね……

    >>21

    キタちゃんは可愛いが真理

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