- 1なぎさの周りを曇らせ隊25/02/20(木) 16:32:52
誰か供給してくれませんか、ナギサ様の周囲が曇っている様子を。失敗しててもいいし成功してもいい!私の想定としては、セーフティーハウスに入りそのまま部屋へ入る許可を誰にも出さず、入った何日目かに、「私がミカさんを友人だと思っていたのも、私がヒフミさんを友人だと思っていたのも、全て独りよがりの妄想だったんですね…」って言いながらら首を吊るんだけどキヴォトス人だから長時間首を吊った状態で苦しみ続けるんだけど、バレないように必死に声を押し殺すんだよね
1スレ目
【閲覧注意】ここだけナギサ様があはは…のあとにショックで自◯未遂をした世界線|あにまん掲示板誰か供給してくれませんか、ナギサ様の周囲が曇っている様子を。失敗しててもいいし成功してもいい!私の想定としては、セーフティーハウスに入りそのまま部屋へ入る許可を誰にも出さず、入った何日目かに、「私がミ…bbs.animanch.com - 2二次元好きの匿名さん25/02/20(木) 16:36:28
かんしゃぁ~
- 3二次元好きの匿名さん25/02/20(木) 16:39:02
たておつ
- 4二次元好きの匿名さん25/02/20(木) 16:48:54
- 5二次元好きの匿名さん25/02/20(木) 16:53:44
――――――
ハナコは思い出していた。
セイアとの茶会、その雑談の中で行われたかつての日の会話を。
『ときにハナコ、君は未必の故意というものを知っているかい?』
『プロバビリティの犯罪のことですよね。』
『そう、蓋然性の犯罪のことだ。例えば、嫌いな相手が通る可能性の高い階段に油を塗って滑りやすくした場合、それで上手く行けば相手は頭を滑って打つ。打ちどころが悪ければ死んでしまうかもしれないね。このような場合、自ら手を下さずとも犯罪を成功させることが可能なわけだ。』
『そうは言っても、蓋然性の犯罪は未必の故意や高い蓋然性の認知、悪意が十分に認められる場合には罪になる可能性が高いですよね。』
『ふむ、そのとおりだ。実際に起こり得ることをすることで相手に害をなそうとするのはそのように判断される。特にこのトリニティでは上手く立ち回りつつ害をなそうとする輩も多い。大抵はうまくいかないが。私が本当に話したかったのはここからだ。未必の故意は犯罪なわけだが、未必の不故意といった場合にはどうなるのだろうか。』
- 6二次元好きの匿名さん25/02/20(木) 16:54:04
『未必の不故意……ですか?それは一体……。』
『悪意はあったが求める結果と違ったとき、果たしてそれは罪になりうるのか。例を挙げると、紅茶の中にいたずらとして悪意を持って塩を加えたとする。勿論、悪意と言っても紅茶の味を崩す程度のそこまで大きな悪意ではない。しかし結果として、相手が死んでしまったとき、例えば塩分を摂ると急激に体調を崩す病にかかっていて、医者に塩分量を管理されていたとしたら。その場合、ちょっとした塩の粒は猛毒に変貌する。勿論これは裁判上では過失になるだろう。病気のことを知らなければこのような結果がもたらされると予想できるはずがないのだから。しかし、罪に対する罰というのは裁きによって与えられるものだけではない。人格破綻者でなければ、罪悪感というものも感じるだろう。罪悪感というのは、裁きによって贖われる。悪意の種を蒔いた結果、思わぬ事態を引き起こした自分自身を許せるか。そうだね、古則のように言うならば……【裁かれざる罪を赦す為には何が必要か】というのはどうだろうか。』
『なるほど、難しく言ってますけど要約すると思ったより悪い結果を引き起こして罪悪感がある時に悪く言われないとかえって罪悪感が起こる。ということですよね。』
『まぁ、端的に言えばそうだね。その言い方は少し無粋だが。』
――――――
【裁かれざる罪を赦す為には何が必要か】
まさに自分のことではないか。最悪の歯車を嵌めて動かしてしまった。しかも、その罪はきっと裁かれない。裁かれないようにできてしまう。許されないのだ。罰によって罪が濯がれるのなら、罰を受けることのない罪人は決して許されない。
罪悪感と恐ろしいほどの自己嫌悪、自己弁護が混ざり合う。もう、何も見たくない。
ハナコは怯えていた。自分自身のその罪悪に身を焼かれることではない。咎人となった自分が清らかな人々との繋がりを失うことをだ。しかもそれは全て身から出た錆なのである。
(私が、全部悪いじゃないですか。)
酷く憔悴した顔は、親から一人はぐれた子供のようにおびえていた。
- 7二次元好きの匿名さん25/02/20(木) 17:02:04
ハナコ、自主退学コースにまた片足突っ込んでそう。
- 8二次元好きの匿名さん25/02/20(木) 17:03:04
あぁ…次々と曇っていく
- 9二次元好きの匿名さん25/02/20(木) 17:23:17
10までとりあえず梅
- 10二次元好きの匿名さん25/02/20(木) 17:30:05
- 11二次元好きの匿名さん25/02/20(木) 17:34:54
- 12二次元好きの匿名さん25/02/20(木) 17:56:08
- 13二次元好きの匿名さん25/02/20(木) 18:02:54
前スレ165より
廃人状態で日々を過ごすようになるのがバッドエンド
過去を全て捨てて誰も知らないところで、全く新しい生活を始めるのがノーマルエンド
復縁するのがトゥルーエンドかな - 14二次元好きの匿名さん25/02/20(木) 18:06:14
- 15二次元好きの匿名さん25/02/20(木) 18:10:16
現在のトリニティ三年生の曇りの確率は50%です
次第に二年生も曇る予報となっております - 16二次元好きの匿名さん25/02/20(木) 18:21:51
- 17二次元好きの匿名さん25/02/20(木) 19:24:29
アズサはあの場所にいたから「あはは~」のやつは聞いてるんだし多分ヒフミもそう伝言を残したって思ってそう
今回の一件ではハナコに「ヒフミから伝言を渡されたから言っただけだろう?」とか言いそうな気配がある - 18二次元好きの匿名さん25/02/20(木) 19:32:48
ハナコに致命傷を入れるアズライール……
- 19二次元好きの匿名さん25/02/20(木) 19:33:51
まぁアズサというかアリウス組ってキヴォトスで禁忌の「死」に一番近かった連中だからなぁ
- 20二次元好きの匿名さん25/02/20(木) 19:41:53
胃の中がぐるぐると回る感覚がする。駆け込んだトイレの個室で嘔吐をする。
胃酸が喉を焼く。込み上げる感覚が止まらない。一通り吐き切って、胃の中も空っぽになってやっと収まった悪心。それでも自分という生き物に対する嫌悪感は拭えなかった。感情的だが理性を保ってしまう、少なくとも今はどうしても感情に自分自身で冷水をかけてしまう。その日は早退してベッドに潜り込んだ。一晩中目が覚めていた。
――――――
翌日、ハナコはシスターフッドの聖堂に来ていた。普段の彼女ならば、マリーやサクラコなどの友人を冷やかしつつ、交流を持つという彼女なりの不器用なコミュニケーションのために訪れていただろうが、その日は違った。
追い詰められた彼女が取った行動は自らの救済を求める行為、あるいは助けを求めたのかもしれない。懺悔室に向かう彼女を受け入れたのは偶然その場に居合わせた彼女であった。
「サクラコ様、どうか私の懺悔を聞いては頂けないでしょうか。」
- 21二次元好きの匿名さん25/02/20(木) 19:49:31
例の顔になるサクラコ様が見える…
ハナコは最適解選べたかなこれ? - 22二次元好きの匿名さん25/02/20(木) 22:43:03
- 23二次元好きの匿名さん25/02/20(木) 22:44:39
サクラコとミネ団長は若干ナギサ寄りになってるけど、ハナコの懺悔次第で傾けるかもしれないね。
- 24二次元好きの匿名さん25/02/20(木) 22:52:47
立場上仕方ないとはいえお労しやサクラコ様……
- 25二次元好きの匿名さん25/02/20(木) 23:13:09
下手すっとまじでハナコ終わりかねんかったからな。
最善手であることを祈る - 26二次元好きの匿名さん25/02/20(木) 23:20:34
救われたいと思えるからこそ救われそうなハナコ
救いを望まない故に他者からの救いの手が届かないミカとナギサ
団長やサクラコ様の無力感かなりのものがあるよなあ…… - 27二次元好きの匿名さん25/02/21(金) 00:46:18
- 28二次元好きの匿名さん25/02/21(金) 00:55:48
多分半々
- 29二次元好きの匿名さん25/02/21(金) 01:15:02
- 30二次元好きの匿名さん25/02/21(金) 02:22:28
ううむ気になる。
- 31二次元好きの匿名さん25/02/21(金) 06:30:58
「おや、ハナコさんが懺悔とは珍しいですね。私でよろしければ聞きましょう。」
サクラコはそう言って快諾し、告解室へとハナコと共に行く。
国会室の中に入り、小窓が開くのを見た。
「父と子と聖霊の御名によって。アーメン。」
「父と子と聖霊の御名によって。アーメン。」
二人がそう唱え、懺悔が始まる。
「回心を呼びかけておられる神の声に心を開いてください。」
「はい。」
「神の慈しみに信頼して、あなたの罪を告白してください。」
そう言うと、ハナコは少し声を震わせながら告解し始めた。
「私は、とても重い罪を犯してしまったと自覚したのです。というのも、自分が発言した言葉で、人を、自殺に追いやった可能性があるのです。幸いなこと、というべきかは分かりませんが、その人は自殺に失敗したようでまだ生きています。しかし、自ら死を望むようにまで心を殺したというのはもはや私が殺したも同然なのです。私はその言葉を悪意を持って放ちました。少し傷つけばいいと思って、それすらも罪ではあるのですが――放った言葉が、彼女を殺す原因となったのです。しかもどうやら私は、彼女が私の罪を暴かなければ全く無罪放免となってしまうのです。私は、今でさえどうすれば良いのか分からず、ここで懺悔することで赦されたような気になって解放されようとしています。これが私の罪です。裁きを受けることすら出来ないままでいる私の罪です。……今日までの主な罪を告白しました。ゆるしをお願いします。」
処刑台に立ったような心でその罪を確かに伝える。彼女自身が一番彼女を許せないのだ。その怒り、悲しみ、絶望が彼女を罪の告解へと導いた。
そしてそれは告解室の小窓を通してサクラコに届く。
- 32二次元好きの匿名さん25/02/21(金) 08:34:02
救えぬものを見せつけられた後にこれをお出しされるとかこのキヴォトスの神様はサクラコ様に地獄を見せる愛情に溢れてない?
- 33二次元好きの匿名さん25/02/21(金) 09:44:14
サクラコ様に対する試練やぞ
- 34二次元好きの匿名さん25/02/21(金) 13:23:50
ハナコへの美しい曇らせすぎる
いいぞもっとやれと言う気持ちと
もうやめてあげてと言う気持ちがある
心が2つある〜 - 35二次元好きの匿名さん25/02/21(金) 16:46:47
――――――
サクラコは動揺していた。彼女とて世間知らずではあれど頭が悪いわけではない。シスターフッドという一つの派閥をまとめているだけあって、ある程度察する能力が高い。そのため……
(どう考えても、これってナギサ様のことですよね!?ハナコさんがナギサ様を追い詰めた!?ナギサ様の遺書にも全くあなたの名前出てませんでしたけど!?)
サクラコは大いに取り乱した。しかし彼女はプロであった。決してそれを表に出さなかった。
(ハナコさんが言っていることが本当であるとして、このまま私が形式通り罪を許すことはできます。しかし、それが本当に正解なのでしょうか。ハナコさんはこのまま告解を終えて満足するのでしょうか。)
ハナコという少女はサクラコの知る限り、とても優秀であり大抵のことは卒なくこなし、そのために人間に対して少し潔癖のきらいがある。彼女のトリニティの醜い派閥争いに対する悪感情の一部はそのために起こっていると。その潔癖は他者だけでなく時折彼女自身にも向く。彼女は自分自身に対しても縛りを課している。自分という人間にも評価をする。
(ハナコさんを真の意味で救うためには……罪を裁くのではいけない。それはきっとその場しのぎにしかならない。そもそもそれは目を反らしているだけで何も解決していない。ここで彼女に私が言うべきことは何ですか。応えてみせなさいサクラコ!)
- 36二次元好きの匿名さん25/02/21(金) 16:47:18
「『ハナコさん』、貴方に提案があります。私もその事については『ある程度』知っています。だから、こういうのはどうでしょう。深い絶望の海へと落ちたナギサ様をすくい上げる手伝いをする。そうすることで貴方自身の罪が真に精算され、貴方自身も救われるというのは。どうか私達と一緒に協力していただけないでしょうか。ナギサ様を助ける手伝いを。優しい貴方と彼女のために。」
サクラコはシスターとしての禁じ手、懺悔の場で神の代理人としてではなく。『サクラコ』という一人の人間としてハナコに協力を持ちかけた。
「……。」
数秒、沈黙が場を支配する。
深呼吸の音が小窓を通して聞こえたあと、ハナコが応える。
「分かりました。この罪ある身が役に立つのなら、少しでも自分の失敗を取り返せるのなら。手伝わせてください。」
「本当ですか!それではこのあと、また告解室の外で詳しいお話を致しましょう。……さて、先ほどは私が告解を中断してしまい申し訳ありませんでした。続きをしましょう。貴方はこれから自分の過去に向き合っていくことが大切です。苦難や試練が待っているでしょう。しかしどんな時も主の御心、そして貴方自身を信じてください。きっと誰もが善き人になることが出来ますから。それでは神のゆるしを求め、心から悔い改めの祈りを唱えてください。」
慈悲深く憐れみ深いシスターの言葉によって底なしの絶望にはまった彼女の心が拠り所を得る。
「神よ、慈しみ深く、私を顧み、豊かな憐れみによって、私の咎をゆるしてください。悪に染まった私を洗い、罪深い私を清めてください。」
彼女は少し声を震わせながら、涙声でゆるしを乞うた。
「全能の神、憐れみ深い父は、御子の死と復活によって世をご自分に立ち返らせ罪のゆるしのために聖霊を注がれました神が教会の奉仕の務めを通して、貴方にゆるしと平和を与えてくださいますように。私は父と子と聖霊の御名によって、貴方の罪をゆるします。」
「アーメン。」
「神に立ち返り、罪をゆるされた人は幸せです。ご安心ください。」
かくして彼女たちの懺悔は終わったのであった。
- 37二次元好きの匿名さん25/02/21(金) 18:12:00
さらっと協力者増やしてる…やはりサクラコ様はシスフの長…
- 38二次元好きの匿名さん25/02/21(金) 18:57:48
寄り添い、差し伸べ、共に歩む
サクラコ様から聖職者の本質を優しく、でもと手も強く感じられてこう凄く良い物を見た気分
ハナコもこれは泣くわ、この時点では色々と噂があり世評では怪しく信用できないって宗教組織の長が、一筋の救いを求めて暗闇の中でも手を出せば取ってくれる、贖罪の機会も頂ける、隣で共に歩んでくれるとか感情ぐちゃぐちゃになるわこんなの - 39二次元好きの匿名さん25/02/22(土) 00:18:57
やはりサクラコ様はトリニティの良心やで……(なおその反面言動が怪しいうえに全体的に雰囲気が恐ろしい模様)
- 40二次元好きの匿名さん25/02/22(土) 08:27:17
あとはサクラコ様がハナコをミネ団長に引き合わせるのが先か
ヒフミが突撃してくるのが先か… - 41二次元好きの匿名さん25/02/22(土) 08:51:39
どっちにしろヒフミには知らせないといけないという
- 42二次元好きの匿名さん25/02/22(土) 08:56:02
――――――
「追加の栄養点滴とまとめてある介護用のセットを一通り、あとはできるだけ消化に良いインスタントおかゆも棚にあるはずなのでお願いします。咀嚼不要なものと咀嚼しやすいもの両方ともお願いします。」
『わかりました、ミネ団長。明日の朝の6時頃にセーフハウスに届けに行きます。』
電話をして注文した後、ミネは病室の二人が眠っているのを見ると自室に戻ってノートを取り出し書き込み始めた。
――――――
〔日誌〕
電話越しにセリナに無くなる前に足りなくなりそうなものを一通り頼んでおきました。
病室を覗くと、ナギサ様は本を読んでいました。先生が自分の持っている中で面白いと思う本を十数冊ほど置いていったのをここのところはずっと読んでいました。私がリハビリとして多少体を動かさせるときと食事、睡眠などの生理活動を行うとき以外はもっぱら読書にいそしんでいます。読書をし始めてからは以前のような暴走、自傷行為がほとんど見られなくなりました。ごくまれに夜中に目覚めているようですが、それでも少しずつ良くなっているような気がします。問題がなければ、先生には定期的に訪問を続けてもらうようにしたいです。本日は、インスタントのおかゆの内、咀嚼不要なものを出しましたが着実に食べる量も増えているのでもう少し様子を見てから固形物に移行していきたいです。
セイア様は脈拍、血圧ともに異常はなく、今にも起き上がることができそうであるのにもかかわらず一向に起きません。ナギサ様がここにくる以前からそうではあるのですが、やはりそろそろ起き上がらないと体の筋力も落ちるなどの影響が気になってきます。早く、起きて元気になってくださるとよいのですが。
先生がここ数日の間、ティーパーティーの幹部たちと協力していると聞きます。かなり多忙な様子なので少し体が心配です。というか一日の内でティーパーティーとシスターフッド、正義実現委員会で目撃報告があがっているそうなのですが、いつ休んでいるのでしょうか。場合によっては相当な強度の救護が必要かもしれません。
――――――
ミネは日誌を書き終えると、伸びをしてベッドで眠った。明日もまた早くから準備をしなければならない。先生やサクラコとの協力も得られたため自分がすべき仕事はこの二人の健康を良くすることなのだから。他のことは二人に任せようと考えた。
- 43二次元好きの匿名さん25/02/22(土) 09:19:56
ちょっと、で済ませるんなら、その場で銃床でぶん殴るとかやりようはあったろうに
補修授業部の友達があらぬ罪で退学にされるのが許せないと言いながら、その相手への嫌がらせのためにヒフミを黒幕に仕立て上げる、自分もその友達にあらぬ罪を被せている、という自覚はあったんだろうか
- 44二次元好きの匿名さん25/02/22(土) 13:43:44
前スレではどうすんだこれ感凄かったけど、ハナコの自覚とサクラコの提案でここまでハッピーエンドになんとかたどり着けそう感出るとは
やっぱり原因のハナコが勇気出すしかないよな他のみんなは思うところあれど誠意見せればブルアカ世界観で許してくれそうだし - 45二次元好きの匿名さん25/02/22(土) 14:01:03
- 46二次元好きの匿名さん25/02/22(土) 20:03:37
やっぱサクラコ様は組織の長なんだなって
- 47二次元好きの匿名さん25/02/22(土) 20:37:45
――――――
ナギサ様が思い詰めてから十日が経ちました。エデン条約は事実上のホストの不在となっているのでゲヘナの万魔殿の議長に連絡したところ
『トリニティのホスト全員が体調不良とは……キキキッ、なかなか大変そうだなぁ。延期については構わない。マコト様は寛大な存在だからな!ここで貸しを作っておくとしよう!!ただし、できるだけ急ぐようにしろ。来年まで持ち越すようであればこの話はなしにする。』
との返事が返ってきました。そのため事実上無期限の延期となりました。
ナギサ様の一件が外部に知られつつあります。もちろん、できるだけ制御するようにしてはいますが、恐らく口の軽いものがいるものと思われます。シスターフッドもこの件についてナギサ様のことを隠すのに協力してくださっています。幹部の方たちはシスターフッドの介入について最初の方は警戒していましたが、サクラコ様がホストにはならないということを宣言したこととシャーレの先生の介入、そもそもシャーレの先生の権限を使えばこの状態のホストなど簡単に奪えることを鑑みて、協力してもらうことになった次第です。
会議でパテル分派の幹部がミカ様をホストにすることを提案していましたが、本人が
「ナギちゃんは今体調不良なだけでしょ?じゃあ、治るのを待てばいいじゃん。私は今謹慎中の身分だし、そもそももうホストじゃないんだから。仕事が回らないとかだったらボランティアの一環として雑用とか手伝いはできるけどさ。」
と固辞していました。シスターフッドの介入によって他の分派はナギサ様の現在について知らない人と、知っているけれど表立って言わない人でかなりの差があるようです。どうやらミカ様のお耳には伝わっていないようですが、穏健派の人が抑えていてもどれほど持つかわかりません。いずれ伝わったときに悪いことが起きなければよいのですが。
- 48二次元好きの匿名さん25/02/22(土) 20:37:58
――――――
ナギサ様に送る手紙をここまで書いてから、さすがにこれは今のナギサ様には遅れないと判断しシュレッダーにかけました。今日はティーパーティーの各分派の幹部のうち穏健派な部類のものと、正義実現委員会のトップ、シスターフッドとの情報のすり合わせとこれからについての方針を決めるらしいです。私もフィリウスの一員として選ばれたので行くのですが、既に胃が痛いです。シャーレの先生も立ち会うということで、恐らく本当に問題なく会議自体は終わる……終わりますよね?もう祈るしかありません。ナギサ様、本当に申し訳ありません。無理な相談で自分勝手な願いだとは分かっていますが、早く戻ってきてください。心の中だけでもそう思わせてください。後で、救護騎士団に果物と日用品の差し入れだけしておこう……。
- 49二次元好きの匿名さん25/02/22(土) 21:00:09
フィリウス派モブちゃんもツラいとこよね
敬愛するナギサの代わりにはなれないことを痛いほど自覚しながら職務をこなす日々 - 50シャーレ先生25/02/23(日) 02:13:29
ナギサ…。大丈夫…じゃないよね…どうしよう…
- 51二次元好きの匿名さん25/02/23(日) 07:59:54
ほしゅ
ミカはあんま把握してないのかぁ - 52二次元好きの匿名さん25/02/23(日) 08:04:20
- 53二次元好きの匿名さん25/02/23(日) 10:44:30
会議が始まり、まず情報のすり合わせをしました。
この段階で実のところナギサ様のことをティーパーティーの幹部たちやシスターフッドの今回の会議に参加した一部は知っていましたが、正義実現委員会の人たちは詳しい事情について知らなかったためにかなりの冷静さを取り戻す時間が必要でした。ツルギ委員長は案外冷静というか、実際かなり休む時間が長引いていたことから全く何もないただの体調不良だとは思っていなかったでしょうが、それにしてもすぐに今後の方針を聞く方向に切り替えていました。ハスミ副委員長は少し取り乱していましたがある程度落ち着きを持っていたように思われます。少なくともフィリウス分派でこの情報を共有したときよりかは落ち着いていました。印象に少し残ったのはイチカさんといった人でしょうか、普段見ないほどに目を見開いていて取り繕ってはいましたが相当にはショックを受けていたと思われます。
会議の方針で決まったこととしてはトリニティ外部や一般生徒の方にこの情報が流れれば厄介なことになりかねないということで、その情報の制御をティーパーティーとしては行うこととカバーストーリーの更新、「一時入院」として広めること。そして、正義実現委員会の一部の人たちに共有することで正義実現委員会内の統制ともしもの時に動かせる戦力として確保しておくことを伝えました。概ねの同意を得られ、そこについては会議はつつがなく進行しました。ただ、ツルギ委員長が
「今現在、ここにいるメンバーと救護騎士団の一部はナギサ様の情報について知っているのは分かった。だが、それで言うとここにいない人間は知らないということになる。つまり、前のクーデターを起こしたミカ様は知らないんだな?」
と聞いてきました。その通りなのですが、それを聞くと何か考えるような顔をしてハスミ副委員長と話し合っていました。
- 54二次元好きの匿名さん25/02/23(日) 13:48:36
――――――
「ナギサ様は現在、度重なる問題の対処の連続によるストレスとそれに伴う紅茶の過剰な摂取で胃潰瘍を起こしてミネ団長の救護を受けておられます。ミカ様、ナギサ様とセイア様が入院している現在あなた様がホストを務める必要があります。」
「ふーん、ナギちゃんがねぇ……。まぁ紅茶の飲み過ぎが原因っていうのがナギちゃんらしいけど。私もナギちゃんに迷惑かけたし、そういうことならナギちゃんの言うことには従わなくもないけどナギちゃんはなんて言ってたの?」
「ナギサ様からの言伝では『ミカさん、エデン条約の締結で先方を待たせている状態です。私の代わりにホストとして締結をお願いします。』とのことです。」
「ゲヘナの角付きとの平和条約なんてごめんだけど、ナギちゃんからの頼みだしねぇ。まぁそれなら仕方ないか。ナギちゃんやセイアちゃんが戻ってくるまでの一時的な代行だからね。そこのところは譲らないよ。」
「わかりました。では、よろしくお願いします。」
――――――
「あの女は本当に軽くて大きくて、担ぎやすい神輿ってやつですね。本気であんな嘘に騙されるなんて、まぁこっちとしては扱いやすくて助かるんですけど。」
「あんまり話すんじゃない。一応誰が聞いているかわかんないんだぞ。例の一件だってどこから漏れ出たのかわからないって言われたし。」
「いやぁ、それでもやっぱりね。うん、最高だよ。」
「エデン条約はもともと準備していた分もあったけど、元の日程から二週間後にずれこんだ。まぁ上出来だよ。ゲヘナにデカい顔させるのももう嫌だからね。」
ミカを臨時ホストに据えたことにより、エデン条約もまた動きを取り戻し始めていた。そしてトリニティの悪意、または陰謀は今日もめぐる。
――――――
「ナギサ様が紅茶の飲み過ぎで倒れたって本当ですかハスミ先輩!」
「えぇ、コハル。正確に言えば、ストレス性胃潰瘍だそうですがしばらくの間、ミネ団長が入院させるとのことです。エデン条約は代理としてミカ様が務めるそうです。あくまで代理なのでナギサ様の意向に従うと本人も言っていますが。」
「ナギサ様が……。ヒフミにも伝えとかないと!」
一方その頃、コハルは敬愛する先輩から嘘の情報(カバーストーリー)を教えられていた。
- 55二次元好きの匿名さん25/02/23(日) 14:11:29
>ヒフミにも伝えとかないと!
あっ……
- 56二次元好きの匿名さん25/02/23(日) 15:15:06
お見舞いしに行こうとして止められるやつだこれ
- 57二次元好きの匿名さん25/02/23(日) 15:39:29
ヒフミが意図しない爆弾化してしまう
- 58二次元好きの匿名さん25/02/23(日) 16:01:22
ハナコとサクラコ様でさあハッピーエンドへのペイバックタイムだと思ったら凄くやばそうな降雨弾が仕込まれた
- 59二次元好きの匿名さん25/02/23(日) 17:01:45
ミカにも知られてる推定ブルアカ宣言後√と
ミカには知られてない調印式前√
ができてしまった…… - 60二次元好きの匿名さん25/02/23(日) 17:51:04
――――――
退学騒動以降、また同じように補習授業部入りとなった部の面々だが、ここのところはエデン条約も近いことがあり、特にコハルとハナコが欠席することが多く全員が集まることはほとんどなかったが、久々に全員が集まる機会がやってきた。
「先生は……今日も来られないそうです。」
「最近は全然来ないな。」
「まぁまぁ、先生もご多忙な方ですし、埋め合わせをすると言ってくれてますし。」
先生不在の中その勉強会は始まった。
「そういえばヒフミは知ってる?」
「何をですか?」
「ナギサ様が、最近」
ハナコは思わずコハルの方に目を向ける。
「なんかストレスで胃潰瘍になって入院したって話。」
ほっと息をつくハナコ。コハルはどうやら一般に広がっている話しか知らないようであった。
「そうなんですか!?そういえば、確かに最近はお茶会にも誘われませんでした。お見舞いにでも行ったほうが良いですかね。」
「そうしたら良いんじゃない?きっとナギサ様も喜ぶわよ。」
「待ってください、ヒフミちゃん。あれですよ、えっと、ナギサ様は今面会する人を制限していたはずです。たくさんの人が押しかけるとまたストレスがかかってしまうので。多分、最低限の人しか面会出来ないはずですよ。」
ハナコはその灰色の脳細胞を必死に回転させ何とか面会謝絶をヒフミが食らうことを阻止した。
「なるほど……。では、ペロロ様折り紙で鶴でも折って送るのだけでもしましょう!」
「なるほど、じゃあ私はスカルマンの折り紙で鶴を折るとしよう。」
「またそのキャラ……ちょっと待って、なんで二人ともこのタイミングで当然のようにその折り紙をカバンから出せるの!?」
当然のようにモモフレンズの折り紙を取り出す二人に驚愕するコハル。二人は不思議そうな顔でコハルに対し首を傾げる。そして当然のように予備の折り紙を取り出し、ハナコやコハルに渡す。
「流石に四人で千羽は辛いですから、妥協して百羽程に」
「いやいや、百羽でも十分多いから!多分置くスペースとかも限られてるし、あんまり多く送ったら困るでしょ!?」
「では一人一羽にしますか、ただし渾身の一羽にしましょう!」
「なんか極端な気がしますが、まあ良いでしょう。きっとナギサさんも喜ぶでしょうね。」
ペロロを鶴状に折るのは冒涜ではないのだろうか。そんな疑念を抱えながら、ハナコも他の三人に続いて鶴を折り始めた。
- 61二次元好きの匿名さん25/02/23(日) 18:52:05
ここまで来たら全員1回ずつくらい曇らされそう
- 62二次元好きの匿名さん25/02/23(日) 21:44:38
あれ前スレでナギサが自殺未遂したことミカは知ってなかったっけ
- 63二次元好きの匿名さん25/02/23(日) 21:49:48
- 64二次元好きの匿名さん25/02/23(日) 22:12:37
ハンドルネーム設定したほうが良いですかね?
- 65二次元好きの匿名さん25/02/23(日) 22:18:24
コテより酉のほうが良いかも
- 66二次元好きの匿名さん25/02/23(日) 22:27:41
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- 67前スレでミカ書いたアホ25/02/23(日) 22:34:24
…なんか混乱させて申し訳ねぇ
- 68二次元好きの匿名さん25/02/23(日) 22:50:23
全員に過失があるからお手手つないで皆で飛ぼう
- 69二次元好きの匿名さん25/02/23(日) 22:51:40
みんなで縄着けてジャンプだ
- 70二次元好きの匿名さん25/02/23(日) 22:57:29
おう、その縄はなんだ言ってみろ
- 71◆2rKpMml/3qqF25/02/23(日) 22:58:43
前スレ16、18から追えると思うので一旦それでよろしくお願いします。それより前の部分は一応受け継いではいますが別の作者です。
こっちもすまんかった。そもそもスレ全体誰が書いて大丈夫なはず、勝手にやってるのはこっちも一緒。上手いので自信を持って続きとか出してほしい。
――――――
ノックをしてから声をかける。
”ナギサ、入っても大丈夫?”
「ええ、良いですよ。」
本を閉じながら応対するナギサに先生はにこやかに話しかける。
”本、読んでくれて嬉しいよ。”
「まだ、半分ほどしか読めていませんが、なかなか良いものですね。最近は、読書する時間も取れなかったのでこんなに本を読んだのは久々ですね。」
”何か気に入ったのはあった?”
「そうですね……。」
と本をいくつか漁り、目当てのものを見つけて取り出す。
「この本はあらすじだけは知っていたのですが、きちんと読んでみるとなかなか……やはり名作と呼ばれるものには名作たる所以があるのだなと感じました。終盤の展開には引き込まれましたね。愛する者のために命をかけられると豪語する主人公が最終盤、恋人が自分を庇って命を落としそうになった瞬間に本当に愛する者のことを思うのなら愛する者のために死ぬのではなく、愛する者のために生きることが大切なのだと気づく場面は少し感動しました。」
”……。ナギサがしっかり読み込んでくれて嬉しいよ!その本は私も気に入ってるんだ。”
そうしてその日は面会がミネに中断されるまで本の話をした。
- 72二次元好きの匿名さん25/02/23(日) 23:02:14
>本当に愛する者のことを思うのなら愛する者のために死ぬのではなく、愛する者のために生きることが大切なのだと気づく
ナギサ…
- 73二次元好きの匿名さん25/02/24(月) 02:06:38
おいたわしや
- 74二次元好きの匿名さん25/02/24(月) 02:19:27
これ、ナギサ本人も周囲ももう大丈夫と思ってヒフミ達と会わせて見たらトラウマフラッシュバックで全部台無しもあり得るから、あんまり楽観視もできないよな。
- 75二次元好きの匿名さん25/02/24(月) 10:12:25
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- 76二次元好きの匿名さん25/02/24(月) 10:14:38
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- 77◆2rKpMml/3qqF25/02/24(月) 10:17:14
驚異のトリップ連続2ミス。すまぬ。
――――――
ノックの音がまたなった後、ナギサは入室を促す。
「失礼します。夕食をお持ちいたしました。もう、固形物もそれなりに食べれる程度には体の方は回復してきているので今日は普通の料理です。これからは食事の方で栄養を取っていただくので点滴も外します。」
そういって久々の料理と呼べるだけのものを食べるナギサ。まともな食事が久々のためか薄味の病院食でも十分に味わい深く感じられた。
それから、と食事を終えたナギサに対して、ミネがいくつか段ボールなどを持ってきた。
「こちらが、お付きをしていらした方からの日用品の差し入れ、こちらは果物類なので食事の際に添えさせていただきます。それと、こちらは……、名前は書いてありません。匿名ですかね。折り鶴なので、そこの机の上に飾っておきます。」
そうして、奇妙な鳥型生命体やデフォルメされたかわいらしいドクロのような絵柄が書かれた折り紙で作られた折り鶴が飾られた。
「これは確か……。」
何かに気づいた様子のナギサがつぶやくのに気づかないまま、ミネは続ける。
「こちらは先生からの新しい本と、日記帳ですね。えっと、”何か思ったこととかを書き綴ることもいいものだよ☆”とメモしてありますね。あとはスケッチブックと鉛筆もありますね。”絵を集めてるって聞いたから自分で描くのかはわからないけど暇つぶしなればいいかな”とのことです。」
「先生には感謝を伝えなければいけませんね。ずっともらってばかりですから。」
「まずは少しずつでも体調を良くしていくことが一番だと思いますよ。」
その晩、ナギサはいつもより少し遅くに寝た。病室の中は殺風景というべきか必要最低限の物だけを置いて、清潔さを保つことを最優先にしている。そんな風景に少しく似合わないというべきか異質感を放つ差し入れの品。それらをどうにか表現したいと、なんとなくそう思えたからその晩、一時間だけ絵を描いた。殺風景な病室は少し温かみのある画調で描かれた。
- 78◆2rKpMml/3qqF25/02/24(月) 14:23:46
――――――
「明日はエデン条約が締結される日です。ゲヘナ学園の生徒達もやってきます。何かしらのトラブルが起きた際に対処できるように配置してありますのできちんと自分の定位置を確認するように!」
ハスミが大勢の正義実現委員たちに呼びかけ、それに対して応える。
条約締結を前にして緊張感が高まっていた。
期待、不安、憎悪、様々な思惑の中、エデン条約当日は刻一刻と近づいていた。
――――――
『先生、聞いてよ。明日、エデン条約の締結するんだけどさ。私、ホスト辞めさせられてるのに動かなきゃダメなんだって。おかしな話だよね。』
”大変だね。当日は参加するから頑張ってね。”
『はぁ、ナギちゃんが体調良ければ私がこんなことしなくても良かったのになぁ、ストレスで体調崩したのは私のせいでもあるんだろうけど。』
『ナギちゃんも律儀だよね。病室にいるときでさえ、次のホストを指名するんだから。まぁ責任取れってことだよね。それじゃ明日は立ち合いよろしくね☆』
”……ん!?ちょっと待って、ミカ!”
ツーツーツー
”切れた……。”
”ナギサは病室で仕事とは無縁の状態のはず。もしかしてミカは周りに嘘の情報で持ち上げられている?”
明日に対する不安が少し背を撫でて、不穏な気配が広がりつつあった。
- 79二次元好きの匿名さん25/02/24(月) 19:29:30
あれ?ミカに本当の話が伝わってない時はただのカバーストーリーかとおもってたんだけど…
これトリカスに持ち上げられてんな? - 80二次元好きの匿名さん25/02/24(月) 19:41:57
- 81◆2rKpMml/3qqF25/02/24(月) 20:16:49
息をつく間もなく、電話がかかってきた。
”もしもし。”
『先生、夜中にごめんなさい。一応、明日のエデン条約の前に軽く話をしておこうと思って。』
電話をかけてきたのはゲヘナの風紀委員長、空崎ヒナだった。
『……それで、先生。トリニティの件は落ち着いた?噂では、ホストを務めていた人物が体調不良で別のホストに変わったらしいけど。』
”正直に言うと、まだ私自身も不安があるんだ。こんなことを言うのは情けないけどね。”
『不安?先生がそう言うのは珍しいような気がする。また何か、私の知らないことを色々と抱えてるってわけね。あの時、私に言ったことが全部ならもうそんなに悩むことはないはずだもの。』
”……はは、参るね。”
先生は聡い少女に苦笑する。
『……別に「どうして全部言わなかったの」って責めてるわけじゃないアビドスならまだしも、トリニティのことだし。多分、ホストの変更も何か出回っている情報と真実が異なるんでしょうね。』
”まあ……でも水着パーティーの件は全部前に説明したとおりだよ。”
『そっ、そういうのはいいの!……ああもう……。……まあ、とにかく。色んな観点があって、見方によって真実は変わるかもしれない……あの時先生はそう言っていたけれど。例え「トリニティの裏切り者」が見つかったとしても、それは特定の観点からの真実に過ぎない……それだけですべてを判断するのは難しい。情報だけを鵜呑みにせず、色んな観点から他の真実をも探しつつ、自分にできる努力をし続ける。なぜならそれは……。』
”補習授業部のみんなは前を向き始めているから。”
『……。……その子たちは、先生に信じられているのね。』
”ヒナのことも信じてるよ。”
『っ!急に何を……!あと、それは前にも聞いた!全くもう……。長話してごめんなさいね。そろそろ切る。』
”……もしかしてだけど、まだアコに引退のこと話してない?”
『……そうね。先生以外はまだ誰も知らない。アコはなんとなく気づいてるかもしれないけど。引退と言ったって、そんなに大げさなことじゃない。少し疲れたから休みたいってだけで……。』
”休みたいときに休むのは大事だよね。”
『……この話はやめよう。そんなに大事なことでもないし。……じゃあまた、調印式で。』
”ありがとう、ヒナ。またね。”
そうして電話は切られた。
”うまくいくといいけどなぁ”
- 82◆2rKpMml/3qqF25/02/24(月) 20:27:53
ぶっちゃけここからしばらく原作なぞるのでセリフをそのまま流用したりします。手抜きじゃないので許してほしい。正直に言うと確認する分、今までより場合によっては時間はかかるんじゃ。ちゃんと改変しないと変な感じになるところは頑張って直します。
- 83二次元好きの匿名さん25/02/24(月) 21:09:38
……なぁ、ミカが知らず調印式前√だと調印式襲撃の報聞いたら
『自分がこんな有様だからミカだけじゃなく他の皆を危険な目に会わせてしまった』
で症状悪化するんじゃ… - 84二次元好きの匿名さん25/02/24(月) 23:11:18
大丈夫です、書きたいように書いてくだされ
- 85二次元好きの匿名さん25/02/25(火) 01:14:29
完結祈願の保守
- 86二次元好きの匿名さん25/02/25(火) 07:23:03
保守
- 87◆2rKpMml/3qqF25/02/25(火) 12:29:18
まじかよ。補習授業部に入りなおした時期ミスってた。脳内で適当に補正しといてください。
――――――
それから、また時間は流れて……。エデン条約調印式、当日を迎える。
『今この動画をご覧の皆さん、こんにちは!』
元気な声が画面から聞こえる。
『クロノススクール報道部のアイドルレポーター、川流シノンです!本日はついに締結される――』
すらすらと流暢に台本を読み上げるのはやはりプロの技だと言えるだろう。
『それでは次に、このエデン条約に参加する各学園の主要人物につきまして――』
「……騒がしいな。」
とアズサがつぶやく。補習授業部の面々は補習授業部からの卒業パーティーを開いていた。
「今日はついにあのエデン条約が締結される日ですからね!特別に学校も休日扱いですし、街も人でいっぱいです。クロノス放送の方もいましたし、なんだかお祭りっぽいですね!」
「そうですね。せっかくのお祭り騒ぎなので先生も一緒ならよかったのですが、どうやら条約の方でお忙しそうです。」
談笑する補習授業部たちは今日も個性豊かな会話を繰り広げる。たいていの場合は、ハナコがおどけてコハルが怒り、ヒフミやアズサがいさめつつ多少おかしな発言をして、そんないつも通りの会話だった。
「私はそういうのはちょっと辛くって……やっぱりみんなで幸せになれるハッピーエンドが好きです。」
「まぁ、人の好みはそれぞれですからね。ちなみに私はヒロインが目を蕩けさせて、涎を垂らしながら許しを請うタイプのエンディングが好きです。」
「ばっ、バカじゃないの⁉そんなエンディングあるの⁉」
「うーん、結構あると思いますが……。」
「とはいえ、ヒフミが好きならそんな幸せな結末も悪くはないのかもな。」
うれしそうな顔でヒフミは振り向き抱き着く。
「アズサちゃーーーーーん!」
ひと段落つき、話はエデン条約についてに戻る。
「今日の調印式が終わったら先生とゆっくり話したいですね。」
そうハナコがつぶやく。
「……うん、私も。」
「……先生、ここにいれば良かったのに。」
「そうですね……今先生は、古聖堂にいらっしゃるのでしょうか。多分忙しくされているんでしょうね?」
補習授業部は先生に思いをはせつつ、少ししんみりとした雰囲気で時間を過ごしていた。
- 88二次元好きの匿名さん25/02/25(火) 16:55:03
保守
- 89◆2rKpMml/3qqF25/02/25(火) 17:54:17
――――――
一方その頃、先生は古聖堂で時間を持て余し、とりあえずそのあたりを見て回ることにしていた。
多少、いがみ合いというかトラブルが起こりかけたが、ツルギの尽力によって銃撃戦にまでは発展しなかった。
あわや、条約直前に大問題が起きるかとハラハラしていたシスターフッドに所属する少女、ヒナタはふぅ……と胸を撫でおろしていた。
”やっぱりツルギは優しい……。”
と普段誤解されがちな少女の優しい一面に思わずつぶやく。
「はい……えっ!?」
シスターフッドがハナコの協力によってミカを制圧したときに会ったきりだったこともあり、久々の顔合わせだったが当然のように距離を詰め、話しかける。
”今日は他のシスターもここにいるのはサクラコの指示で?”
「あ、はい。そうなんです。前回の事件をきっかけに、方針が少し変わったこともありまして。これまでの無干渉主義がこの前の事態を招いた……そう考えたのかもしれません。これからはもっと積極的に、対外的な活動をされていくとのことで。シスターサクラコも、もうすぐ到着されるかと思います。私たちも基本的には色々と調印式の手伝いと言いますか、色んな方の案内や警備のお手伝いなどを……。あ、よろしければ先生に、古聖堂をご案内いたしましょうか?」
”良かったら、お願いしても良い?”
「はい、今はまだ時間もありますので。それでは、こちらへ……。」
そう言われ、ヒナタに案内してもらうことになった。
- 90二次元好きの匿名さん25/02/25(火) 22:10:57
保守
- 91◆2rKpMml/3qqF25/02/25(火) 22:32:17
”すごいところだね。”
「はい、この『通功の古聖堂』は長い間、廃墟として放置されていましたが……今回ここで調印式を締結することが決まり、大々的な修理が行われたそうです。その決定についてはトリニティのナギサ様とゲヘナのマコトさんとが、少し前に合意したものだと聞きましたが……。それでも全体が修理されたというわけではなく、調印が行われる場所だけのようです。下はまだ廃墟の状態で……。あくまで噂ですが、この古聖堂の地下には大規模なカタコンベが存在するそうです。――『第一回公会議』の際にもその大きさについて記述があります。」
”色んな歴史がある場所なんだね。”
「はい、何せ第一回公会議が開かれた場所ですから。公会議において締結される戒律というのは、神聖なものです……その神聖さと言いますか、戒律の守護者たちのその名残のような『何か』が、まだここに残っているような感じすらします。」
”守護者?”
「はい、それについては何といえばよいのでしょう?『約束』というのはそれを破ったときのルールも同時に課されることが多いですよね?そうでなければ、誰も約束を守らないということもありますし……。そのルール、『制約』の役割を持つ人たちを戒律の守護者と呼んだんです。約束を破る者たちに対処するトリニティの武装集団……。それが、『ユスティナ聖徒会』です。」
”今の正義実現委員会みたいな?”
「はい、歴史的には今のシスターフッドの前身でして……。あ、サクラコ様が到着されたようですね、ミカさんの到着もそろそろだそうです。中途半端になって申し訳ありませんが、そろそろ行きましょうか。」
そうしてにこやかに笑うヒナタと一緒に古聖堂の方に戻っていった。
- 92二次元好きの匿名さん25/02/25(火) 23:49:57
保守
- 93二次元好きの匿名さん25/02/26(水) 01:31:13
これは一体、どうなっちゃうんだ……
- 94二次元好きの匿名さん25/02/26(水) 09:59:50
このレスは削除されています
- 95二次元好きの匿名さん25/02/26(水) 18:00:27
この辺りでナギサは一旦退場になるから、むしろミカがいる事で戦力的には楽になる?
- 96◆2rKpMml/3qqF25/02/26(水) 22:03:52
――――――
「準備はできた?」
そうアコに話しかけるのは風紀委員長のヒナであった。
「……はい、大丈夫です。ああ、そういえば万魔殿から、古聖堂へ行くまでの車を貸してもらいました。」
「……車?どうして?」
「自分たちは今回、最新の飛行船を購入したようで……『空を飛ぶ私たちと綺麗に比較できるように、お前たちは地べたを這って来い。』とマコト議長が。」
「……。またそういうところに予算を……まあ、今更か。これまでずっと調印式への出席をさせまいと邪魔しておいて、最後はこうして用意というのも変な話だと思うけれど……。イオリやチナツたちも待ってる、急ごう。」
そうヒナが促すが、アコは少しの間沈黙する。
「はあ、気に食わないのは分かるけれど……言ったでしょう。アコ。別に風紀委員会が解散するわけじゃない、これはただエデン条約機構という足かせを万魔殿に嵌めるためのもの。」
「……はい、分かってはいるんです。風紀委員会はほとんど変わらないでしょう。そして、マコトには制約がつく。ですが、その時委員長は……。」
「……。とりあえず今は、式に向かうのが先。……その話は調印式が終わってから、ゆっくりね。」
「……はい。」
不満げにそれでも、とりあえずは頷くことにした。
- 97二次元好きの匿名さん25/02/27(木) 02:56:01
ねえどっかに対空砲ない?
- 98二次元好きの匿名さん25/02/27(木) 03:15:45
ここで唐突に「ナギサ卒業後に突然自○概念」というのを思い付いた
色々あって限界を超えたナギサ様だけど、その場で衝動的に自○するには背負った責任が重すぎる
ので、卒業して全ての引継ぎが終わってから自○しよう、と決意してしまったナギサ様
自分自身で自分の「ゴール」を定めちゃった結果、ふっと心が軽くなって、表面上は精神が完全回復したようにしか見えない
その後は寧ろ今までよりも元気になったように見えて心配してた周囲の人々を安心させるけど、消える前の蝋燭の最後の灯火みたいなもの
常にゴールが見えているからか吹っ切れて笑顔も(不自然な程に)増えて、理想の為政者として友人や親しい人たちのために精力的に活動する
そうして誰からも惜しまれながら任期を終えて引退し、次代にトリニティを託して卒業していくんだ
……その前に「何故か誰もナギサ様の進学先を知らないこと」「かといって就職するわけでも無さそうなこと」「なのにニートになる気配すら無いこと」を周囲の人間が気付けなかった場合、身軽になったナギサ様は遂に待ち焦がれた「ゴール」に辿り着いちゃう訳だ
それはもう爽やかな笑顔でウキウキしながら、誰にも迷惑がかからないように人知れずこの世にさよならするんだ
このエンドを回避するなら他の誰よりもナギサの変化に気付き易いだろうミカが頑張るか、或いはハナコが目敏く違和感に気付いて全力で推理するかしかないね
頑張れ二人共、君達が始めた物語だ! - 99二次元好きの匿名さん25/02/27(木) 11:45:14
保守
- 100二次元好きの匿名さん25/02/27(木) 16:08:57
>>98二人が止めた後にナギサが「せっかく死ぬために頑張ったのに何で止めるんですか?」って泣きながら発狂して欲しい
- 101二次元好きの匿名さん25/02/27(木) 16:12:54
そもそもの話、加害者が死んで逃げるとか許されないですよね?
- 102二次元好きの匿名さん25/02/27(木) 17:43:50
- 103二次元好きの匿名さん25/02/27(木) 18:48:26
ここからまずヒフミとミカがナギサが自殺未遂したという事実を知ることが大前提でハッピーエンドに向かわなきゃいけないのよね
行けるかこれ……? - 104◆2rKpMml/3qqF25/02/27(木) 18:57:21
――――――
シノンの元気な声が続く。
『おっと、噂をすれば影!ゲヘナの万魔殿が、新型飛行船に乗ってやってきたようです!ゲヘナ学園の議長、すなわち生徒会長の羽沼マコトです!さすがと言いますか、ものすごいカリスマです!多分!あれがゲヘナの生徒会長としての威厳!』
雰囲気で行われる報道だが、いつものことなので気にする人はいない。
『キキッ……。』
『そしてトリニティ総合学園における現在のティーパーティーのホスト、聖園ミカも古聖堂に到着したようです!両学園の主要人物が、次々と集まってきています!そろそろゲヘナの風紀委員長も到着とのことで、周囲の雰囲気はますますヒートアップする一方!皆さん、引き続きこの様子をご覧ください!』
熱烈な報道によって、多くの生徒たちは盛り上がりを見せていた。
- 105二次元好きの匿名さん25/02/27(木) 18:57:29
- 106◆2rKpMml/3qqF25/02/27(木) 22:06:59
- 107◆2rKpMml/3qqF25/02/27(木) 22:07:33
「巡航ミサイルは?」
「すでに発射済み。これから五分後に、ターゲット地点に着弾する。」
「チームⅡとチームⅢは?」
「つ、通路の前で待機中です……時間に合わせて、作戦地域に突入する予定ですね。」
次々と素早く確認がおこなわれる。
「古聖堂の崩壊と同時に突入。ミサキとチームⅡはトリニティを、ヒヨリとチームⅢはゲヘナの方を頼む。」
「了解。」
「チームⅡの方はツルギを警戒しろ。チームⅢの方はヒナに気を付けて動け。」
「は、はい!分かりました!ひ、ヒナさんですね……!」
「チームⅠとチームⅤは……」
アツコが手話で答える。
「ああ、通路に沿って地下へ。知っての通り、一番重要な任務だ。」
「……。」
少しの沈黙の後、また手話で何かを伝える。
「姫……分かってる。気分は悪いだろうけど、もう少し我慢してほしい。」
アツコはその言葉に頷く。
「えっと、サオリさんは……?」
ヒヨリが疑問を呈すとそれにこたえる。
「私は他に用事がある。それが終わり次第チームⅤに合流予定だ。……では、散開。」
――――――
無垢の人々は今こそ知る。歴史による悪意を。逸脱の民からの反逆を。
無知は罪。無意味に今を享受し続ける者たちへ罰を。制裁によってこそ罪は贖われる。
諸々の民よ。ここに我らが名を刻まん。
この時をもって我々は告げる。
お前たちを絶対に赦さないと。
- 108二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 04:15:03
保守
- 109二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 11:21:48
続き待ってる
- 110◆2rKpMml/3qqF25/02/28(金) 19:43:58
――――――
「……っ!?」
一人、何かに気づいた様子のアズサは突然飛び出していった。
「あれ、アズサちゃん……?どこへ行くんですか?」
「聞かなくても良いでしょ、トイレよ!」
「えっと、ですがトイレはあちらではなく……。」
ハナコがそう告げると、ヒフミは窓の外を見て何かを発見し、思わずつぶやく。
「……え?」
――――――
ヒュオオオオオオォォォン!!
街なかに鳴り響いた奇妙な音に気づいた人々は辺りを見回す。
「今、何か変な音が……。」
「な、なに!?」
「何かが、飛んで……!?」
「きゃあああっ!?」
(まだ、終わってなかった?いや、これから始まる……?サオリ、まさか……!?)
アズサは一人、無力にも迫りくるその未来に気づきつつあった。
――――――
両校の生徒たちが旗を揚げる。
そして、握手をしようとする。
それぞれの思惑の中で条約が締結の瞬間を迎えるその瞬間
ドカアアァァァァァン!!!
炸裂音とともに会場周辺は火と灰に染まった。
- 111◆2rKpMml/3qqF25/02/28(金) 20:27:53
会場周辺が炎に包まれ、生徒たちは錯乱する。
悲鳴が上がり、狂乱の渦は広がる。
――――――
『緊急事態です!古聖堂が、正体不明の爆発によって炎に包まれ……!これは一体……せっ、尖塔が崩れています!』
中継から音が流れる。
「これは……。」
ミネはその映像を見て、何かまずい事態が起こっていることに気づき顔をしかめた。
そのドアの近くで病室で本を読んでいたはずのナギサが聞き耳を立てていると気づかずに。
――――――
混乱が渦巻く景色を見て、一般的な感性を持っていると自負するヒフミはうろたえる。
「な、何ですか、これは……。」
そして、先ほど店を出てきた理由を思い出す。
「あっ、アズサちゃんはどこに……!?」
横のコハルは気づく
「せ、先輩たちが……っ!」
今日、正義実現委員会は調印式の治安維持のために全体に広がっている。多くの仲間たち、そして尊敬するハスミや委員長のツルギなどもその中にいるのだ。
「コハルちゃん、ヒフミちゃん!待ってください!状況が把握できるまで動くのは得策ではありません!」
思わず飛び出していこうとする二人を止めるハナコだったが、ヒフミやコハルはその言葉に納得できない。
「で、ですがアズサちゃんが……!」
「アズサちゃんも正義実現委員会も、少なくとも自分の身は守れます!今はそれよりバラバラに散らばることの方が危険です!」
「で、でも……!」
「ハナコちゃん、コハルちゃん……私たち、どうすれば……。」
悲劇はまだ序章を迎えたばかりだった。
- 112二次元好きの匿名さん25/03/01(土) 00:51:41
ひ、ひえぇええぇぇ
- 113◆2rKpMml/3qqF25/03/01(土) 08:12:01
――――――
(……何が起きた?爆発……攻撃された?状況は?さっきの、何かが高速で飛んでくるような音……それにこの被害状況……。巡航ミサイル……それも、対空防御システムが迎撃できないほどの速さで?……ラムジェットエンジン?キヴォトスで、そこまでの技術を持っているところは……。いや、それだけじゃこの規模の爆発にはならないはず……初めから古聖堂に爆薬が……?一体、どこからが罠だった?それに、誰が……トリニティ、シスターフッド……?)
爆発に直撃したヒナであったが、いち早く状況を把握して思考を逡巡できる状態になっていた。
(……違う。今考えるべきことは……!)
そして、犯人の推理が無駄だと悟ると現在の被害状況と対処の詳しい把握に思考を切り替える。
(アコは……無事。だとすると……。次に動くべきは……。)
そこで思い出す。この場で最も貧弱で、爆発によって死ぬ可能性が高い人物のことを。
「……っ!先生……!?」
「ひ、ヒナさん、まだ立ってますねぇ……。」
その様子を見ているものがいた。アリウススクワッドのヒヨリだ。
「ど、どうしましょう……あれを受けてまだ立っているなんて、すごいですねぇ、強いですねぇ……まだまだ戦うだなんて、どうして……痛いはずなのに、苦しいはずなのに……。」
その報告を受けたサオリが言い放つ。
『やれ、特にヒナだけは逃すな。』
「は、はいっ!」
そして、爆発により普段とは違い自分の血で汚れたヒナの目の前に現れて話しかける。
「そ、そういうことみたいでして……すみませんね、えへへっ……。」
そして、そのガスマスクをつけた生徒たちの姿を見て、自分の最近聞いた集団と情報が一致することにヒナは気づく。
(……アリウス、分校。)
「あ、あなたを先に行かせないように言われてるので……すみませんが、これも命令でして……。」
「……。……どきなさい。」
一瞬の沈黙のあと、戦いになることが確定した。
「やっぱり、辛いことばかりですねぇ……。」
- 114◆2rKpMml/3qqF25/03/01(土) 11:31:49
――――――
「キキキキキッ!!」
邪悪な笑い声をあげるものがいた。万魔殿の議長、マコトのことだ。
「成功だ!これぞ計画通りっ!キヒャヒャヒャヒャッ!!」
この異常な惨状に対して、喜びの声を上げる議長に呆れつつ、イロハは一応確認する。
「マコト先輩、一体何を……?」
「これで邪魔者はすべて消える。ティーパーティーも、あの目障りだったヒナも!分かるかイロハ、これが一石二鳥というものだ。何を隠そうこのマコト様は、トリニティを恨んでいるアリウスと前々から結託していたのさ!ティーパーティーの内紛も、クーデターも、私は最初から知っていた。全ては今日の計画のために!」
「クーデター……?いつの間にそんなことを……つまり先輩は、最初からエデン条約を結ぶ気はなかったと?」
「ああ、そんなことこれっぽっちも興味無いね!私の関心はずっと、邪魔ものどもを片付けることだけ!いつまでたっても姿を現さないティーパーティーの奴らをおびき出すため、あくまでそのために条約へ同意する振りをしていたのさ。そのついでにヒナまで片付いた、こんなにラッキーなことはない!キキキッ!そのために、アリウスは多大なサポートをしてくれた。この飛行船だって私たちの友好の証としての贈り物……敵の敵は味方ということだよ、キキキキッ!!さあ、アリウスに連絡を。本格的にトリニティの壊滅戦を始めようじゃないか。ヒナに、ナギサにミカにセイア、私の邪魔者は全員消えた!今こそトリニティを、キヴォトスの地図から消し去るときだ!」
話をすべて聞くと大体の内容を把握し、イロハは嘆息した。
「マコト先輩……そのアリウスが下手したらトリニティ以上に憎んでいるのが、私たちゲヘナなんですよ。どうして私たちと手を組むと思ったんですか?」
その言葉を聞いて、マコトは沈黙し一瞬のうちにその灰色の脳細胞を使い、思考を逡巡する。
「……何ぃっ!?」
そうしているところに、万魔殿のマスコット、アイドル的な立ち位置にいる品行方正な少女、イブキが近づいてきていた。
「ねえねえ、このたくさん置いてある箱って何?「取扱注意」「可燃性」って書いてあるけど……。」
推測は確信に変わった。
「まあ、つまりは……またマコト先輩が騙された、と。」
船は一瞬のうちに爆発し、墜落した。
- 115◆2rKpMml/3qqF25/03/01(土) 11:32:33
- 116◆2rKpMml/3qqF25/03/01(土) 16:17:55
――――――
『……い!』
『先生、目を覚ましてください!』
”アロナ……?”
『先生、大丈夫ですか!?気を確かに……!』
”いったい何が……。”
状況を把握しきれないままに尋ねる。
『古聖堂が爆破させられて……何とか先生を守ろうとしたのですが……。もう、これ以上は……しっかり……力が……。』
”アロナ……!?”
アロナがサーバーダウンしたことにより、かなりの危機感を覚えあたりを見渡すとそこには「双頭のデッサン人形を模した出で立ちの何か』が歩いていた。
”(今のは……!)”
そう考えていると、どこからか聞いたことのある声がした。
「……先生!」
それはヒナタだと気づいた。
「せ、先生……けほっ、こほっ……ご無事でしたか!」
そう語りかけられるも身動きが取れないことに気づく。
「良かったです。辛うじて瓦礫の隙間に……。待っててください、すぐに私が……。」
そういうと、ヒナタは瓦礫を注意しながら崩し、先生を引きずり出す。
「これだけの力があることに、感謝します……先生、立てますか?」
そういわれると先生は起き上がり、ヒナタに感謝を伝える。
「お怪我は……無さそうですね。あの爆発に巻き込まれてほとんど傷一つないだなんて、本当に奇跡のようです……。」
アロナのおかげで身に一つも傷がついていない先生、もっともアロナがサーバーダウンした以上それもいつまでもつか怪しいものだったが。
- 117◆2rKpMml/3qqF25/03/01(土) 16:21:14
「先生!ご無事でしたか!」
「せ、先生……!」
「正義実現委員会の皆さん……!」
ハスミやツルギも重要人物たちの警護に当たっていたためにこの場にいたが爆発を受けたことで怪我を負っていた。
”みんな、すごい怪我……。”
「これくらい大したことはありません。ですが先ほどの爆発で、正義実現委員のほとんどは尖塔不能になってしまいました。それにミカさんやサクラコさん……それ以外にも多くの方が見当たらなくって……。……ゲヘナ側も、ほとんど見当たりませんね。これは一体どういう……。」
「っ!!」
ツルギが突然何かに気づいたように振り向いた。
そこにはガスマスクの舞台を率いた黒いマスクをつけたロケットランチャーを持った少女がいた。
「作戦地域に到着、正義実現委員会の残党を発見。……いや、訂正。残党じゃなく、正義実現委員会の真髄だ。ツルギにハスミか……兵力をこっちに回して。これより交戦に入る。」
「アリウス分校……!ど、どこからこれほどの兵力が……!?どうやって、周辺は全域警戒態勢だったのに……。」
そこでヒナタは先ほど先生に教えた情報を思い出す。
「まっ、まさか……!!まさか、地下から……?古聖堂の地下にある、あのカタコンベから……!?」
「……。……なるほど。つまりこの状況、あなたたちアリウスの仕業だと考えて良いでしょうか?……許しません。その代償、今ここで……っ!」
「……ハスミ。」
「……!」
「落ち着け。」
「……はい、そうですね。ありがとうございます、ツルギ。今は先生の安全が最優先……先生を連れて、ここから離脱します。」
「ああ……暴れるのは、私の役目だ。くひひひひっ……さぁ。相手してやるぜ、虫けらども!かかってきなぁっ!!!」
そう言ってツルギが飛び出そうとした瞬間
- 118◆2rKpMml/3qqF25/03/01(土) 16:21:26
「ねぇ、これってどういうことかな。私聞いてないんだけど?もしかして、また私の知らないことをしでかすつもりなのかな。せっかくナギちゃんが頑張った調印式がボロボロじゃん。この落とし前、どうつけてくれるのかな☆」
高くかわいらしい、それでいて恐ろしく底冷えするような声が聞こえた。怒りつつも冷静な態度を崩さないこの調印式の場に出席したミカであった。
「っ!?……追加の連絡、ホストのミカも交戦することになる。場合によっては早期の撤退も強いられるかもしれない。少なくとも想定以上の数の実力者を相手にすることになる。できれば戦力をこっち側に回してほしい。」
「あのさぁ、人が話してるときに他の人に話しかけるなって習わなかったの?ごっめーん、習うだけの場所がなかったね。」
ミカを相手にせず、ミサキはガスマスクと黒タイツを全身にまとった青白い兵士たちを呼び出す。
「作戦目標は続行。できるだけツルギとハスミ、ミカは分断させるように。総員準備。」
そうして戦闘は始まった。
- 119二次元好きの匿名さん25/03/01(土) 16:50:20
……ミサキ何秒持つかな
- 120二次元好きの匿名さん25/03/01(土) 17:06:35
ストーリー分岐来たな
- 121二次元好きの匿名さん25/03/01(土) 20:20:34
やっぱすげえよ、ミカは……
- 122◆2rKpMml/3qqF25/03/01(土) 20:33:04
「くっ!一体何ですか、あれは……!?」
先生を逃がしつつ戦うさなかハスミは違和感を持ち始めていた。ツルギも声には出さないものの異常さは感じ取っていた。
「あの威力……そして、いくら戦っても手ごたえのない、この不思議な感覚……。あれは、本当に『人』……?それとも……。」
何かわけを知っているようなヒナタに気づいてハスミは声をかける。
「あの姿、本で見たことがあります……あれは『聖徒会』の服装。」
「……『聖徒会』?」
「……!」
「『ユスティナ聖徒会』……数百年前に消えたはずの『戒律の守護者たち』が、どうして今ここに……!?……尋常ではない数です。周りに数十……いえ、数百人規模の……。」
そして、倒されたはずの聖徒会たちはまたどこからか現れる。
「……追いついた。聖徒会のミメシスも確認。条約に調印がなされた……それに、人形との取引もうまくいったみたいだね。アツコ。」
「待ってよ。そろそろ私の相手をするべきじゃないかな!」
「本当にっ、しつこい!ああっもう!くそっ。あの女のせいで結構な味方が使い物にならなくなった!計画をとことん手間取らせて!」
アリウススクワッドのミサキは先生を追う一方で、ミカのことは振り切る必要があり、それには通常以上に手間がかかっていた。
「ミメシスたちはもっとミカの方を動けなくして!できるかぎり動きを止めるように!」
「じゃまだよ!」
素早く複製達を消し去るミカであったが、さすがに多勢に無勢といった様子ではあった。実際、他の方に回すはずだった複製を多くこちら側に回しているのだから、傷だらけなうえにこれで止まらない方がおかしいのだ。
「くそくそくそくそくそ!どいつもこいつも邪魔ばかりして!」
しかし、計画に支障を大いに来たす存在への対応に追われ続けることはミサキにとって非常にストレスとなった。
- 123◆2rKpMml/3qqF25/03/01(土) 20:33:59
「きええええぇぇっっ!!!」
奇声をあげながら、複製達を屠るツルギ。しかし瞬く間に、複製達は出現する。
「……きりがありませんね。この者たちは、一体……。」
「ま、マズいですね……せめて、先生だけでも緊急脱出を……!?」
そうして一同があたふたしているところに一人の生徒が現れた。
「こっち!」
”ヒナ……!”
「ゲヘナの風紀委員長……!?」
「……ヒヨリ。もしかしてヒナを止められなかった?」
『げほっ、けほっ……す、すみません、ダメでした……聖徒会が顕現するよりも先に、全員なぎ倒されて……。』
「正義実現委員会、先生をこっちに!今は時間がない!」
「……。分かりました。先生、ここで私たちが敵を止めます。後はあの風紀委員長が何とかしますから、急いでください!」
”ハスミたちは!?”
「先生、今トリニティの首脳陣は壊滅状態です。唯一、あそこで戦っているミカさんがいますが、どうみても冷静な状態ではありません。先生にまで何かあっては、本当に収拾がつかなくなってしまいます!」
”……。”
「……先生の無事を祈ります。その道は、私たちが守ってみせますから!」
「先生、急いで!」
「……先生!」
「お、お願いします。今は行ってください、先生……!」
”……。”
少しためらった後、先生はヒナの方へと駆け出した。
「風紀委員長……!先生を、よろしくお願いします!」
- 124二次元好きの匿名さん25/03/01(土) 21:09:58
保守
- 125二次元好きの匿名さん25/03/02(日) 01:46:38
楽しみ。
- 126◆2rKpMml/3qqF25/03/02(日) 08:08:15
「……任せて。先生、今あの怪物たちをまともに相手取れる方法は無い。今は包囲網を抜けて脱出することが、っ……!」
”ヒナ、傷が……!”
「これくらい大したことない……先生、私から離れないで。退路は、私がこじ開ける。」
ヒナが一斉掃射する。そしてその道をともに走り抜け続ける。
市街地まで走り抜けた。ここもまた被害に遭っている。それなりに走り続けて疲労もたまってきた。ヒナの状態も不安を覚える。
「はぁっ、はぁっ。先生、もう少し耐えて。ここを抜ければ……。」
「ひ、ヒナさん、また会いましたね……!」
「リーダー、ちょっとあんまり戦えないかも。あの女が来るのは想定外……。」
ヒヨリが行く手をふさいできた。そして、そこには他にもサオリやアツコ、ミサキもいた。
「っ、性懲りもなく……!」
ヒナは全霊をもって相手を吹き飛ばそうとする。
「はぁ、はぁ……はぁ……。」
しかしえんえんと続く戦闘とミサイルのダメージを前にヒナの体は限界を迎えようとしていた。
「くっ……。」
”ヒナっ!!”
空崎ヒナが膝をついた。
「ゲヘナの風紀委員長、ようやく倒れた。」
「や、やっとですか……痛かったですよねぇ、よくあの傷でここまで……。」
「……。」
「トリニティとゲヘナの主要人物は概ね片付いた。残りはもう貴様だけだ、シャーレの先生。」
”君たちがアリウススクワッド?”
「……。」
「ふぅ……。」
「えへへ……。」
「……。」
沈黙が答えを表していた。
「……ああ、そうだ。私たちが『アリウススクワッド』。ようやく会えたな、先生。」
”……!”
- 127◆2rKpMml/3qqF25/03/02(日) 08:13:21
「アズサが世話になったと聞いた。あいつには今から会いに行く予定だ。……我々はトリニティに代わり、この『通功の古聖堂』で条約に調印した。」
”……どういう意味?”
「私たち『アリウススクワッド』が、楽園の名の下に条約を守護する武力集団……『エデン条約機構』になったということだ。」
”!?”
「これは元々、私たちの義務だった。本来ならば第一回公会議の時点で、私たちが行使すべき当然の権利。だがそれを、トリニティが踏みにじった。私たちを紛争の原因、すなわち『鎮圧対象』と定義し、徹底的に弾圧を行った。……これからは『アリウススクワッド』がエデン条約機構としての権限を行使し、『鎮圧対象』を定義しなおす。ゲヘナ、そしてトリニティ。この両校こそが条約に反する紛争要素であり、排除すべき鎮圧対象だ。」
”それは、つまり。”
「トリニティとゲヘナを、キヴォトスから消し去る。文字通りにな。……この条約の戒律、その守護者と共に。貴様らは第一回公会議以来、数百年に渡って積み上げられてきた恨み……私たちの憎悪を確認することになるだろう。……だが、その前に貴様を処理しておくとしようか。」
ガチャリ。短く銃が向けられる音が鳴った。
”(銃口が……。)”
「シャーレの先生……貴様が計画の一番の障害になりそうだと、彼女は言っていたからな。」
銃口が爆ぜる。
「ああぁあぁぁっ!!!」
しかしヒナはそれを良しとしなかった。先生が撃たれることはどうしようもなかった。それでも彼女は決してその身を動かすのをあきらめなかった。
「……っ!まだ動けるのか、空崎ヒナ!」
「セナっ!こっち!!」
激しいドリフト音が鳴る。
「救急車……!?」
腹部を貫かれ、倒れながらもその音の方向を向く。
「先生!手を!」
先生が最後の力を振り絞り、上げた手をセナは掴み救急車の中へと引きずり込む。
「逃すかっ!!」
「ま、まだそんな力が……。」
炸裂弾を地面にたたきつけ、煙幕のようにして救急車は逃げていった。
- 128◆2rKpMml/3qqF25/03/02(日) 08:15:03
「……逃げられた。」
「まぁ良い。空崎ヒナに妨害はされたが銃弾は当たっている。あれはキヴォトスの外の者だ。ヘイローは壊れ……いや、死ぬはずだ。しかし、あの様子……先生が、そんなに大事な存在なのか。」
アツコが手話で何かを伝える。
「『あの人がいなかったら、全て計画通りになったはず』……?そ、そうなんですか姫ちゃん?え、『それにアズサもきっと……』?」
「……。」
――――――
腹部は熱を持っていた。何かが流れるような感覚が止まらず、指先が少しずつ冷たくなってきた。
「よく聞いてください先生、あなたは銃で撃たれました。奇跡的に急所は避けていますが、この出血は放っておけません。これより応急処置に移ります。痛かったら悲鳴を上げてください。死なせはしません。私は、救急医学部ですから。」
遠くなる意識の中、そんなセナの言葉が聞こえた。
”(無茶だって。)”
――――――
「……。」
「……ここでお前がでてくるのか。」
「まさか姿を現すとはね……そのまま逃げだしてもよかったのに。」
「えへへ、お久しぶりですね……。」
先生が撤退した後、アリウススクワッド一同からアズサは視線を向けられていた。
「はぁ、はぁ、はぁ……。」
「……どうだ、アズサ。」
「どうして、どうして……。」
「私の言った通りだっただろう。トリニティにも、シャーレにも、お前の居場所は無い。私たちみたいな『人殺し』を受け入れてくれる場所なんて、この世界には無いんだよ。」
「どうして、先生を……!」
怒りに満ち溢れ、そのまなざしを向ける。
「そんな場所があるように見えても、全ては儚く消える……さっきの『先生』とやらのようにな。……全ては無駄だ。それなのにどうして足掻くんだ、白洲アズサ。」
「サオリいぃぃぃぃっ!!!!」
「まだ甘い夢に酔っているのか……仕方ない、手伝ってやろう。何度でも、その夢から目を覚まさせてやる。来い。」
- 129二次元好きの匿名さん25/03/02(日) 08:24:01
このレスは削除されています
- 130◆2rKpMml/3qqF25/03/02(日) 08:56:13
ここからセイアの会話パートを続けていきます。しばらくの間生徒の会話は飛ばします。ハナコが指揮系統まとめたり、ヒフミがアズサ探したり、コハルが押収品を管理したりするのはそんなに変わらないです。唯一、ミカが結構動けるようになったことで自暴自棄になって、ミメシスをしばきまわしていますがそこまで極端な影響はありません。なので飛ばします。まぁ割とパッションでやってるので多少のガバは許してくれ、こっちもその場その場で対応してるんだ。
- 131◆2rKpMml/3qqF25/03/02(日) 14:09:05
- 132◆2rKpMml/3qqF25/03/02(日) 14:11:02
「先生、君はキヴォトスの外部から来たものであり大人だ。となれば、契約、取引……そういった『約束事』の持つ重要性について、よく知っていることだろう。たとえば『悪魔と契約する』、という言い回しがあるだろう?昔話においても『驚異的な存在が何か不注意な約束をしてしまったがために敗北する』、或いは逆に『そういった約束によって打ち勝つ』というお話は幾つもある。そこからは、こうも読み取れないかい?単純な紙切れ、或いは口約束に過ぎないとしても……『約束』というものは時に何かを強く拘束し、定義づけることもある。契約、戒律、約束……こういったものはそれら昔話と同様に、キヴォトスにおいても重要な概念だ。例えばトリニティの経典には太古の始まりの『神性』、それとその間に締結された十の戒名が描かれている。その他にも、私たちは原初において『約束』を破ったから楽園を追放されたのだ……そう書き伝えられている。今更な話かな。なにせ実際に君は、そういう概念を利用した誰かを救ったことがあったはずだ。思い出してほしい。『ゲマトリア』はアビドスの生徒に何かを強いることはできず、ただ『契約』を要求していた。その契約が成立しないとなれば、ゲマトリアは退くしかなかっただろう。この事件もまた、そういうこと。『エデン条約』、これ自体が学園間で行われる約束事であることは確かだ。しかし、この条約が行われる『特別な場所』……。そして条約締結のために集まった、代表者たちの資格。こういう要素により、これは大きな意味を持つ『約束』となった。歪曲されつつもこれは明らかに『公会議』の再現。そしてその約束である『戒律』を守護するユスティナ聖徒会を、特別な方法で『複製』として顕現させた。つまるところ、契約を曲解し、歪曲し、自分たちの望む結果を捏造した……そうまとめても良いだろう。これがゲマトリアの言う、『大人のやり方』。……ああ。念のために言っておくが、私はこれらのことを事前に全て知っていたわけではないよ。あくまで君の夢を通じて、観測しただけだ。あれらは私の基本的な理解を超えた、不可解な存在だからね。形式的な話から離れると、つまるところアリウスの背後には『ゲマトリア』がいて。アリウスは倒れることも死ぬことも無い、強大な軍隊を手に入れた。これが現在の状況。私たちがかつて追放された楽園……『エデン』、その名を関する条約のもとに。」
- 133◆2rKpMml/3qqF25/03/02(日) 14:11:45
そうして外を指さすセイア、そこにはたくさんの生徒たちが慌てふためきつつも自分のなすべきことをなそうとする姿が見えた。ハナコは混乱にできるだけ収拾をつけようと、ヒフミはアズサを探し回ろうと、コハルは自分の持ち場について仕事をしようと、そしてセナや救護騎士団のみんなは先生の命をつなごうとしている。ハナコはこの事態の目標について気づき始めているようだ。
「……。ハナコは賢い。盤面に落ちている情報だけでも、確かに彼女なら真実のすぐ傍まで至れるだろう。今こうして繰り広げられている状況、その原因、そして自分にはこれを防ぐ方法がないということまで理解しただろうね。ようやく好きになれたトリニティ総合学園……その終わりを為す術なく見守るというのは、ハナコにとって残酷な話だ。……そして、そこに至ろうとしているのは、一人ではないみたいだね。まあここでの『一人ではない』というのは、決して希望のある話を意味しないのだが。アズサを探して奔走していたヒフミ……彼女もまた、同じような結論に到達しつつあるようだ。一通のメッセージ。座標と時間、そして動物の名を用いた隠語。そんなメッセージを送ってくるのが誰か、気づかないような彼女ではない。」
- 134◆2rKpMml/3qqF25/03/02(日) 14:13:55
つづいて、外の景色を指さす。そこにはアズサとヒフミの姿があった。アズサはヒフミに感謝の言葉を伝えつつもその手を振り払った。自分とは生きる世界が違うと言って。何というやさしさ。自らの犠牲に友人を巻き込まないようにしたのだ。うずくまり自分の無力さを嘆くヒフミ。そして続く先には、アリウススクワッドの本拠地に向かうアズサの姿。激しい戦闘がアリウスたちの間で繰り広げられる。そして、アズサは敗北した。しかし、その後また逃走に成功する。ペロロの人形を置いていく姿を見て、必ず戻ることを確信しかけたサオリだったが、ペロロの中に入っていたヘイロー破壊爆弾を見つける。そして、アズサは自分の『人殺し』の咎を背負い、ついに今までの仲間たちと分断される。
「……これが全ての、無意味な足掻きの終着点……。私はアズサに警告をしていた。何度も何度も、このような結末になるだろうということを。それでもアズサは、希望を抱いてしまった。淡い希望を。……だから言っただろう?これが物語の結末。何もかもが虚しく、全てが破局に至るエンディング。ここから先を見たところで、無意味な苦痛が連なっていくだけだ。これはつまるところ各位が追い詰められ、結局誰かが誰かを殺める物語。誰かが人殺しにならざるを得ない物語。実際そうだっただろう?」
- 135◆2rKpMml/3qqF25/03/02(日) 14:14:24
セイアは続けて言う。
「あの補習授業部でさえ、ナギサを追い詰める原因の一つとなった。アズサはアリウスを殺した。アリウスは先生、君を殺そうとした。うん、つまりはそういうことなんだ。そしてナギサもその一人である。彼女は補習授業部を殺そうとしたのではない。自分を殺そうとしたのだ。自分自身の大切なものを守るために自分の心を殺した結果、本当に自分のことを殺しかけた、そうだろう?先生もこのことについては私と同じように咎を背負っているのかもしれないね。最初から知っておいて諦めていた私と最初から何も知らなかった先生だと立場が違うかもしれないがね。ああ、まぁ不快で、不愉快で、忌まわしく、眉を顰めたくなるお話だ。悲しくて、苦しくて、憂鬱になるような。それでいて、ただただ後味だけが苦いお話……そうは思わないかい?しかしまぎれもなく、真実の物語でもある……。これが、この物語の正体だ。……君は以前、五つ目の古則に対してこう言っていたね。『ただ楽園があると信じるしかない』、と。然して、信じた結果がこれだ。元より不可能なことだったのだよ。エデン条約、お互いに『もう憎み合うのはやめよう』という約束。そんなこと、できるはずが無いというのに……。その上に、条約の名前が『エデン』と来た。ここで楽園の名前だなんて、相変わらず連邦生徒会長の不愉快な冗談は皮肉にもほどがある。下手をすれば悪意すら感じてしまいそうなほどだ。このプロセスを経て、確認できたものはあるだろう。それは不信から降り積もった、ゲヘナとトリニティの互いへの恨み。そしてアリウスたちが持つ恨み。それらを通じてこの条約は、いびつな形で完成されてしまった。何よりも皮肉なことに、どこにも存在しない、照明すらできない……楽園の名を携えて。まさに、楽園から追放されてしまった私たちにふさわしい結末かもしれないね。」
- 136◆2rKpMml/3qqF25/03/02(日) 19:55:16
”……分かったよ、セイア。”
先生の不可解な発言に首をかしげるセイアに対して、先生は続ける。
”……君も、その後はどうなったのか見ていないんだね?”
「……?……見る必要が、あるのかい?悲しいエンディングの後、そこに続くエピローグを見たところで悲哀が増すだけ。苦しみが連なるだけだ。……それで、何が『分かった』と言うんだい?」
”……この後の話を確認するのは、怖かったよね。”
「何を……。」
”だから夢の中に隠れて起きられず、ずっと彷徨っていたんだね。”
「わ、私は……。先生……君は一体、何を……?」
”セイアに会えてよかった。少し待ってて。私はやらなきゃいけないことがあるから、戻らないと。”
「戻る……?待ちたまえ。私と違って、君の身体はまだ治ってすらいない。そして何より、君が起きたからと言って何も変わるわけではない。これは私の未来予知で判明している……。いや、『七つの古則』から既に導かれていた、この世界の真実だ……!」
”実のところ、楽園の証明にも『七つの古則』みたいな言葉遊びには興味無くて。”
「……。……七つの古則を、否定するつもりかい?楽園の存否は、全ての人たちにとっての宿題だろう?それの存在を証明できなければ、何も……。……先生。君は未だに、楽園の存在を信じているのかい?照明すらできないまま、ただ盲目的に信じていると?『楽園に辿り着きし者の真実を、証明することはできるのか』……。つまりこれは楽園照明の話ではなく、ただそれを信じられるかという話だとでも……?」
”……ごめんね、今は生徒たちを助けに行かなきゃ。また後でね、セイア。”
「……待ちたまえ先生。まだ一つ、聞いておきたいことがある。ただ信じたところで、何も変わりはしない。信じたところで、そこには何の意味も無いだろう……!?」
そこで、あの少女の言葉が頭をよぎる。
”水着じゃなくて下着だと思えば、それは下着だから。”
「……は?……え、下着?い、一体何を……水着、下着……?それはどこの古則を、いやそんなことは聞いたことが……。」
”待ってて、セイア。”
- 137◆2rKpMml/3qqF25/03/02(日) 19:55:57
「……行ったか。君は、この先のエピローグへと向かうんだね。私は……私は……。……。ふぅ……。……確かに、そうだったのかもしれないな。この先の話……。たとえ怖くても、私は最後まで確認しなければならない。これは私の義務、か……。……仕方あるまい。憂鬱で、悲しくて、苦しくて……たとえ、最後まで後味の苦い話であったとしても……。……私もこの目で、最後まで見届けるとしよう。」
セイアの目に奔走する人々のいくつかの欠片が映る。
アズサのうずくまる姿、サオリの激怒する姿、救急医学部の医療風景、姿を消した風紀委員長を探し続ける風紀委員、シスターフッドを取りまとめ、そして宣戦布告を止めようとするハナコ、そしてティーパーティーの幹部たちに捕まり、ミカによって宣戦布告をさせると言う……
「ねぇ、なんで私抜きで勝手にそんなことが決まろうとしてるのかな?」
そこに現れた。ハナコは驚いた顔をしたが、何も言わなかった。
(ミカ!?なぜ、ここに。いや、戦いの後に確か救護を受けて今はもう動ける状態だったのかしかし、いや……。)
「ミカ様!どうか私たちで宣戦布告をして、あのゲヘナたちを倒しましょう!今こそゲヘナの奴らを消し去るチャンスかと!あなた様が望んでいた通り、ゲヘナとの全面戦争を!」
「……あはっ。みんな記憶力いいね。確かに私はゲヘナのことが大嫌い。でもね、言ったよね。私は今、ホストじゃない。ホスト代理。ナギちゃんが正当な権利を持つべきだよね。だって、ナギちゃんは今病院にいるだけでじきに退院するじゃん。他のところを抑えたって言ってもそもそもナギちゃんがいるからそっちのほうに許可をもらいに行くのが道理だよね?」
それは正論だった。真実を知らないミカからすれば。しかし、ほとんどの人間が知っていた。彼女の持ちえない情報を。
「それは……。」
ハナコは思わずつぶやく。
「……あなたは本当に頭がお花畑みたいですね。そんなの嘘に決まっているでしょう?情報をもっと集めておくんだな。あのですねぇ!桐藤ナギサは自殺しました!……幸か不幸か命拾いだけはしたみたいですけどね!もうホストとしてはあの女は使い物にはならない!あなたが!今ここで決めてください!」
そして、寝た子を起こした。
- 138二次元好きの匿名さん25/03/02(日) 21:09:02
(アカン)
- 139二次元好きの匿名さん25/03/02(日) 21:12:13
撃鉄は今勢いよく下ろされた
- 140二次元好きの匿名さん25/03/02(日) 21:12:24
ミカ、暴走するだろこれ…
- 141二次元好きの匿名さん25/03/02(日) 21:27:09
これはナギサが「あなたは魔女じゃない」って言うしかない。
- 142二次元好きの匿名さん25/03/02(日) 21:43:01
地獄の釜を開いてしまったハナコ
もう戻れんぞ - 143二次元好きの匿名さん25/03/02(日) 23:14:14
ひ、開いたのはパテルのトリカスモブだから……
- 144二次元好きの匿名さん25/03/03(月) 01:45:36
開いたのはトリカスのモブだが、作ったのはハナコなんだよなあ
- 145二次元好きの匿名さん25/03/03(月) 02:17:14
ナギちゃん直接来ないとどうにもならない状況やんこれ・・・
- 146二次元好きの匿名さん25/03/03(月) 11:24:20
ほしゅしゅ
- 147二次元好きの匿名さん25/03/03(月) 13:38:41
割とガチでミカが反転する危機
- 148二次元好きの匿名さん25/03/03(月) 13:56:16
セイアが倒れただけでも原作のアレなのに、ナギちゃんまで自殺未遂したってなったらどうなっちゃうん。
●<ミカ、大丈夫?反転しちゃう? - 149◆2rKpMml/3qqF25/03/03(月) 17:55:25
「……は?ねえ、それってどういうこと?」
「何度も聞かないでください。言葉通り、桐藤ナギサはぐちゃぐちゃの自室で首を吊っていました。もう誰もが知ってることです。」
「……ナギちゃんは入院しているはず、紅茶の飲み過ぎで胃潰瘍だって……。うん、そっかそっか。つまり私をみんな騙して笑ってたんだね?」
「被害妄想も甚だしい。そんなことを言う暇があったらゲヘナを攻める準備をしてください。」
「今すぐ勝手に突っ込んでいけば?わざわざ私が命令する理由がないでしょ。」
「ミカ様?何を……。」
「あはは、気に障ったらごめんね。でももうそんな気分じゃないんだ。あなたたちに指示を出してあげるような、そんな気分じゃ、ね。私がゲヘナが嫌いなのは気分、そんな一時の感情で変わってしまうものなんだ!やりたいなら勝手にやればいいんじゃない?一人で最前線につっこんでさ!」
「今がどれだけ重要なタイミングなのか、分かっていらっしゃるのですか?それをたかが、気分の問題で……。」
「このっ、言わせておけばっ……!」
一人、頭を出したものから順に撃たれていく。しかし、それでも反撃の手は止まない。
「総員かかれ!ミカ様はご乱心だ!自分の立場を理解させろ、この解任直前の世間知らずのお嬢様に!」
「何をしてるんですか!ここで戦闘を行うのは……」
「お前もうるさいぞ。」
ハナコは静かにこめかみを撃たれ、気絶させられる。
「痛いね……。さすがにこれだけの人数を相手にするとなるとまだ傷が治りきってないと厄介だなぁ……。いや、もういいや。このまま牢屋に戻るほうがいいね。うん、もうどうでもいいんだ。結局、こういう風にしかできないんだなぁ……。」
何度かの銃撃戦の後、ミカは突然銃を放りおとなしく投降した。
(ミカは諦観に満ちて……やっぱりこうなるじゃないか……。)
「これは……ナギサ様を早く連れてこないと……。」
- 150二次元好きの匿名さん25/03/03(月) 21:35:20
保守
- 151二次元好きの匿名さん25/03/03(月) 22:54:18
ティーパーティの残り二人が反転しかねないすごくやばい事態
- 152二次元好きの匿名さん25/03/04(火) 03:05:23
どうすんだこれ……
まあ、ハナコならなんとかするよね? - 153二次元好きの匿名さん25/03/04(火) 03:19:15
気絶してますねぇ……
- 154◆2rKpMml/3qqF25/03/04(火) 06:48:20
――――――
景色が切り替わる。
(ここは……ミネがいる。つまり、ナギサのいるセーフハウスか……。)
「ナギサ様!ナギサ様!」
入口でドアを激しくノックし、侵入する。
「なんですかあなたたちは!今ここには病人がいるのですよ!」
ミネが応対するもその人数を全員食い止めることはできず、病室に侵入する。パーテーションの内側で読書をするナギサに向かって叫ぶ。
「ナギサ様!あなたが必要なんです!今のトリニティは混乱が起きています。あなたが収めないといけません!パテル派が暴走してゲヘナとの全面戦争になりかねないのです!」
「あなたたち、今のナギサ様の病状がどういうものかきちんと分かっていてそれをしているのですか!」
怒気に満ちたミネの声が響く。
「……分かりました。私も責任から逃げてはいけないということですね。行きましょう。」
「ナギサ様……。いくら、こんな状況とはいえ、あなたが行く必要は。……放しなさい!!」
「行かなければなりません。」
「……ナギサ様!!」
ナギサが連れていかれてしまうのを何とか食い止めようとするものの本人が向かってしまうので食い止めるべきか否かもはや分からなかった。とても安心できるような状態ではないが、この緊急状況でそれで助けることができるのはどれだけの人数だろうか。ナギサが取りまとめれば少しは混乱が落ち着き、より多くの人が助けられるかもしれない。そういった一瞬の躊躇が彼女を止めた。普段の彼女ならそうではなかったかもしれない。しかし、度重なる疲弊が彼女の判断を崩し、不安の種を育て、信念を揺るがしたのだ。
- 155二次元好きの匿名さん25/03/04(火) 06:59:03
(アカン)
- 156二次元好きの匿名さん25/03/04(火) 07:08:08
アリウスとしては指揮系統は真っ先に潰す対象だし、暴走始めてるパテルにも狙われるよね…
- 157二次元好きの匿名さん25/03/04(火) 08:46:20
心壊れたトップとか、まさしく傀儡として使い潰されるヤツですよ。
やめさせろ!こんな蛮行! - 158二次元好きの匿名さん25/03/04(火) 12:54:02
イエーイ、ミカ見てる〜?
お前の大好きなナギちゃんをこれから政治劇のお人形として使い潰しちゃいまーす!
ごめん、やっぱつれぇわ…… - 159二次元好きの匿名さん25/03/04(火) 13:32:56
いやな覚悟のきまりかたしててきつい・・・
- 160◆2rKpMml/3qqF25/03/04(火) 20:09:37
――――――
夜になり、また景色が切り替わる。
先生が体を起こしているのが見えた。
「先生!?目を覚ましたんですね……!!」
セリナが話しかけるのが見える。先生はすぐに外に行こうとした。
「まだ動いちゃだめです!先生、どこへ向かうつもりなんですか……!?」
未だ意識がもうろうとする中、セイアの声が頭に響く。
(「……先生、君はあくまで立ち向かうつもりなのかい?生徒たちが他の何でもなく、ただ生徒であるために?」)
(”私がそうあるべきだって信じているから。”)
(「……だが、先生。君の前に立ちふさがるのは憎悪と不信。長きにわたって久遠に近い集積を経た、それらの具現だ。」)
病室に意識が戻る。
”じゃあ、まずはそれと相対してくるよ。”
そう、ここにはいない茶会の主に話しかけた。
- 161◆2rKpMml/3qqF25/03/04(火) 20:24:34
―――――――
私は、そうですね。ずっと幸せな夢の中で居続けられたのです。あの日から。でも、それは誰かの犠牲の上に成り立っていて、ずっと目を逸らし続けていたんです。つまりは、調印式がめちゃくちゃになったのも、代理をしていたミカさんが捕まったのも、全部私が逃げ続けたのが悪いんです。
「すべての指揮系統を私に。情報も逐一報告するようにして下さい。」
だから、これを収めることが私の責任です。
「正義実現委員会は書類に書かれた場所の全域を巡回、奇妙な敵、ガスマスクのものを見つけた場合は交戦。それ以外はできるだけ戦わないように。もちろんゲヘナ生でも、です。避難誘導も必要な場合するように伝えなさい。」
だから、ここで終わってしまってもいいんです。
「医療物資をありったけ救護騎士団に送りなさい。」
私の身がどうなろうと、周りの人が助かるならそれでいいじゃないですか。
「ナギサ様!もう十二時間以上ずっと書類を裁いていますよね!もう休まないとだめです!」
「静かにしてください!……早く、報告をしなさい。もらっているはずですよ?十分な人員交代もしているはずですよね?」
「しかし!お食事もとらずに続けるのは……!」
「いいから!!これは命令です!」
「……分かりました。こちらの資料は現在、警戒区域内で捕まえたアリウスの生徒たちの数と捕まえた位置です。こちらは尋問についての書類で、こちらはそれらから推察できる配置内容と作戦の方向性、それと現在足りていない物資について正義実現委員会、現在協力してもらっている自警団からの陳情です。」
「分かりました。あなたはこちらの方の書類を確認後、正義実現委員会の配置についての調整を連絡してください。」
「……はい。」
両手を強く握りしめながらその生徒は部屋を去った。
- 162二次元好きの匿名さん25/03/04(火) 21:40:15
ミネ団長は回復しきってない患者を出してしまったことに曇るし
フィリウスモブは引っ張り出してきたナギサ様が心身をガリガリ削っていく様を見て曇る
……これ本当に本編みたいにいい感じに決着つけられるんです??? - 163二次元好きの匿名さん25/03/04(火) 21:48:53
なおもふて寝し続けるセイアと全部投げ出したミカも、休養を逃げと断じて自分を勘定に入れることをやめたナギサを比べて曇る
- 164二次元好きの匿名さん25/03/04(火) 22:00:23
病室に押しかけた茶会モブ心底後悔してそう。しててくれ……
- 165二次元好きの匿名さん25/03/04(火) 22:03:02
先生はこの残酷な世界にどう挑むのか…この時はまだ主人公テクストが強固だったはずだからそれに賭けるか
- 166二次元好きの匿名さん25/03/04(火) 22:30:13
ナギサ…命燃やしてない?もちろん悪い意味で
- 167二次元好きの匿名さん25/03/04(火) 22:33:02
- 168◆2rKpMml/3qqF25/03/04(火) 22:41:57
感想や評価をしてくださっている皆様、いつも励みになっています。感想とかもらいたい系なので本当に皆さんが苦しんでいる様子のおかげで筆がなんとなく進むような気がします。少なくともモチベは上がっている。結構行き当たりばったりでやっていますが、なんとなくの結末というか方向性は定まってきているので頑張ります。
明日は用事で多分投稿できません。なのでその間に盛り上がってもらいたいので嘘次回予告を置いておきます。多分使わないセリフ集でもあります。
『おや、ここで会うとは奇遇なことですね。預言の天使よ。』
「お前が、お前が全部悪いんだろ!!!」
『先生、分かりますか。テクストによって縛られたあなたは誰もかれもを救わなければならない。故に、ただ一人を救うことはできない。それでも、立ち向かうというのですね。』
”畜生、デカフェ紅茶でも飲んで眠っとけ!!”
「セクシーセイアを呼んだかい?」
「この魔女め!磔がお似合いだよ!」
「それでも私は、好きなものが好きなままいられるようにしたいんです!」
次回、ナギサ死す。みんなもレッツブルアカ! - 169二次元好きの匿名さん25/03/05(水) 04:05:22
ナギちゃんが身を削るほどに責任から逃げられなくなっていくハナコがかわいそうでかわいい
- 170二次元好きの匿名さん25/03/05(水) 11:32:24
ほしゅ
- 171二次元好きの匿名さん25/03/05(水) 17:50:43
ここまでナギちゃんが追い詰められるとミカが「ナギちゃんが苦しんでるのにあいつらが苦しんでないなんておかしい」って感じでアリウスと自分含めたトリニティの二つに対しての報復として大暴れしそう
- 172二次元好きの匿名さん25/03/05(水) 22:42:58
ナギサ「…私が消えても、代わりはいますもの」
- 173二次元好きの匿名さん25/03/05(水) 23:02:23
本当かー?本当にいるかー?
- 174二次元好きの匿名さん25/03/06(木) 04:56:31
フィリウス分派代表としてなら後釜はいるかもしれないが、ナギサ個人の代わりは存在しない
- 175◆2rKpMml/3qqF25/03/06(木) 08:05:50
――――――
イスに縄で縛り付けられたミカをパテルの一部の生徒たちは囲む。
「クソっ、お前のせいで計画は台無しだ!最後までいい加減で中途半端にして……。分かりますか?あなたはただ、前に立ってゲヘナの奴らを打ち倒すように指示を出せばいいだけなんです。そんなことは馬鹿でも分かりますよね?」
「……だからさ、もうどうでもいいんだよ。そんなこと。全部何もかも失敗した。私もあなたたちも。もういいんだよ。」
「勝手に一人で納得しないでくださいよ?とことん自分の立場が分かっていないようですね。銃も没収したから撃ち返すこともできない状態で減らず口をよく叩く……。こうなれば、理解するまで徹底的にやってあげましょう?それがあなたの望みなのだから。」
殴る、蹴るなどの暴行を加える。ミカは暴れて縄をほどこうともしない。
「……あー、もう。痛いな。」
そこに一人の小さな影が通りかかった。
「な、何してんのっ!?」
正義を背負う少女がミカとその集団の間に割って入る。
「な、なんだお前は!」
「い、いじめはダメっ!なんでこんな大勢で寄ってたかって……!こんなの……私が許さないんだからっ!!」
「……!」
「どきなさい。今の状況が分からないのですか?」
「緊急の事態なのよ!?」
少女がその様子を一喝すると、反抗に対し弾圧をしようと動き出した。
「で、でも私は……!」
「どけっ!!」
「……い、嫌っ!わ、私はバカだから、何がどうなってるのか全然分かんないけど……でも、これは違う!絶対にダメ!!」
「聞かないやつだ、それなら……。」
「ま、待って。この子、どこかで……。」
「よく見ると、なんだか見覚えが……。」
戸惑っているうちにまた人影が現れた。
”コハルは補習授業部の、私の生徒だよ。”
「せ、先生っ!?」
「……!」
「シャーレの……!?」
「そんな、意識不明の重体だったはず……?」
「せ、先生が、どうしてここに……。」
- 176◆2rKpMml/3qqF25/03/06(木) 08:11:02
混乱する一同、本来先生はここにいないはずだ。実際、体は動くべきでないくらいに悪い。しかし、動かなければいけないほどに状況も悪いのだ。
”お願いだから、まず暴力はやめてほしい。”
先生は極めて冷静そうな様子で、しかし見たことのない表情で彼女たちのことを止める。
「そ、それは……。」
「……。」
「か、帰ろう。あの先生の表情、絶対にマズいって……。」
「……ああ、行こう。」
そうして、パテル分派の生徒たちは帰っていった。そして、緊張の糸が途切れたようにコハルは先生にしがみつく。
「せ、先生……先生……。」
”コハル、かっこよかったよ。流石は正義実現委員会のエリート。”
「先生……!」
そうコハルのことを褒める先生を呆気にとられた表情でミカは見る。
「先生……。」
”ミカ、大丈夫?”
「えっと……うん……。何ていうか、久しぶり……だね?」”そうだね。ミカ……ミカは、どうしてさっき……ゲヘナを攻める方に動かなかったのかな。”
「え、あー、それは……。……何でだろ。絶好のチャンスだし、今立ち上がればって分かってはいるんだけど……。今でも、嫌いなんだけどさ……。うん、ナギちゃんのこともあるかもしれない。先生は知ってた?ナギちゃんが自分から死のうとしてたこと?」
”……!”
「え……、ナギサ様が……!?」
「でもやっぱり、それも完全な理由じゃないと思うんだ。結局私にも、よく分かんないな……。あれ、ちょ、ちょっと待って……。私……。」
- 177◆2rKpMml/3qqF25/03/06(木) 08:11:15
(ミカ……。その憎しみは……、君が先陣に立っていた、その憎悪は……。君は、どうして……。)
小窓から預言者が静かに思いを馳せる。
(君は自分勝手だ。考えなしで、衝動的で、欲張りで、時に自傷的な。そんな君のことが、私はあまり好きではなかったかもしれない。)
少女は回顧する。これまでの自分の道のりを。
「わ、私は……。……ごめん、セイアちゃん……ナギちゃん。どうして、こうなったのかな……。ごめん……ごめんね……。こんなにバカで、ごめん……。」
”ミカ……。”
「先生……私、セイアちゃんにもナギちゃんにも会いたい。こんな私じゃ、もうダメかもしれないけど……。」
(……。ミカ、君は……。そうか、理由を求めていたのか。嫌いであることに何かしっかりしたものが必要ではと、どこかで合理化しようと……。そうして間違いが合わさって……相変わらず、馬鹿なことを……。)
静かに、天を仰ぎながらセイアは想う。
(私は君のことを、分かったつもりでいた。きっとまだこれだけじゃない……君の抱えていたものを、幼気な感情を、考えていたことを、その状況を……それらを知ろうとする努力を、私は怠っていた。……そうか。私はまだ、君のことをあまりにも知らない……。そして、気が付いたときには君も私と同じように。間違った物語の真ん中に置かれていたのか。殺人、死、裏切り、抗争……。君のような少女が身を置くには、あまりにも残酷な話だった。本来であれば許されるべき我儘が、君を……。……ミカ。君も、ずっと……。とにかく私は、君を許そう。そして私もまた、君に許しを乞わなくてはならないのかもしれない。私たちはもう一度お互いに伝えあって、それで……もしかしたらその先は……。)
- 178二次元好きの匿名さん25/03/06(木) 15:50:57
ほしゅ
- 179二次元好きの匿名さん25/03/06(木) 15:55:40
幸か不幸か、この世界のミカだとミカの喪失感のダメージがデカすぎて4章で「許さんぞ、錠前サオリ」ってならなさそうな印象ある。
- 180二次元好きの匿名さん25/03/06(木) 16:56:31
自分のせいで幼馴染が自殺未遂とか聞いたら・・・喪失感しかないよなあ
それで一生自分を責めかねない・・・ - 181◆2rKpMml/3qqF25/03/06(木) 22:42:27
――――――
翌日、トリニティのティーパーティー、その本部に先生は足を運び入れた。
「先生……!?」
先生の存在に気づいたハナコは急いで駆け寄る。
「先生!!お願いします。あのままではナギサ様が!!」
普段の彼女とは全く合わないほどに、大きく焦りを含んだ声で先生にお願いをしてきた。
”ハナコ、何があったのか教えてくれる?”
「ナギサさんが、昨日のお昼にフィリウスの分派の人たちによって連れられてきて、それからずっと働き続けています!それもどれだけ休むように言っても、20分ほど仮眠をとるとすぐに続きを始めてしまうのです。仮眠を取ったときもちゃんと寝れているかすら怪しいんです!食事もほとんど紅茶とゼリー飲料だけで、このままだとナギサさんが死んでしまいます!それにナギサさんはなんだか雰囲気が鬼気迫るというか、今にも命の炎を燃やし尽くそうとする感じで、私たちでは止められないんです。お願いします、先生……。」
”……!?なんてことだ……ナギサが……。教えてくれてありがとう、ハナコ。ここからは私が何とかして見せる。”
「先生、お願いします。私もできる限りのことをして協力するので……。」
先生はそのまま幹部の生徒にお願いし、ナギサの執務室へと向かった。
- 182二次元好きの匿名さん25/03/06(木) 22:43:52
もしかしてハナコが気絶させられたのって相当ファンブル?
- 183二次元好きの匿名さん25/03/06(木) 22:47:22
先生も撃たれて意識不明から戻ってすぐに休みなく活動してるからあまり強く言えんよな
大人の責任という大義名分があるとはいえ - 184二次元好きの匿名さん25/03/07(金) 00:04:16
先生でもとめれるんか?ってくらい心配になる…
でもここままじゃみんな不幸になるどころじゃない - 185二次元好きの匿名さん25/03/07(金) 01:05:34
意固地になるとめんどくさいタイプだよなあナギサって
- 186◆2rKpMml/3qqF25/03/07(金) 07:27:23
――――――
ノックの音が鳴る。
「……定時連絡とは違いますね。誰ですか、所属と来た理由について答えなさい。」
”シャーレの先生です!ナギサが働き過ぎなので止めに来ました!”
「……入ってください。」
綺麗にまとめられた紙の束と、たくさんの書類に囲まれたナギサが机を前に座っていた。
”やぁナギサ。そろそろ休んでもらうよ。昨日からずっと働きづめだと聞いたよ。このままだと倒れちゃうよ?”
「先生こそ、まだ入院した方が良いのではないですか?重症を負って、起きたばかりにしては動き過ぎですよ?」
お互いに牽制しあう。入ってくるときに気づいたが、ナギサの様子はやはり聞いていた以上におかしなものを感じた。
”ナギサ、私はもう大丈夫だからいいんだ。それよりナギサはちゃんとご飯は食べられている?仕事とはいえ、そんなに背負い込む必要はないよ。私も手伝うし、他の人だって協力するようにするからさ。”
「これは私の責任なんです。調印式をすすめたのも、その結果騙されたのも、他の組織から介入があったのも。分かりますか。だから、しかるべきところに責任が戻っただけなんです。」
”なら、私にも責任を負わせてくれないかい?”
「先生、これは私の責任なんです。」
”私も、一人の子供にたくさんのことを背負わせ過ぎないっていうのが大人の責任だからね。”
「……やはりいつでも、先生は正しいですね。……しかし、私はこの責任を渡すわけにはいかないのです。この責任は私のものなのです。先生は私から責任までも奪ってしまうんですか?」
”……っ。”
マズい、そう思った。踏み込み過ぎた。これでは……。
「先生、帰ってください。これは私の意地です。プライドです。私から責任と共にプライドまで取り上げるのですか?それならなおさら、先生にこれを渡すわけにはいきません。今日は帰ってください。」
”ナギサ!”
「帰ってください!」
拒絶、明確な失敗をしてしまった。
ナギサのお付の生徒も首を横に振り、部屋の外に出されてしまった。
”ナギサ……。”
部屋の外で顔を両手で覆い上を向く。
- 187二次元好きの匿名さん25/03/07(金) 07:46:58
焦ったな先生…
らしくもないミスを最悪のタイミングでやっちまった
拠り所を取り上げるのは代替が無ければ暴走を招く - 188二次元好きの匿名さん25/03/07(金) 07:56:47
先生の考え方、悪い見方をすれば子供らしさを押し付けてくるので、こうあるべきと言う真面目なタイプには相性最悪。
- 189二次元好きの匿名さん25/03/07(金) 08:30:31
ノブレス・オブリージュを掲げ、トリニティを率いていた様な者に責任どうこうで踏み込める訳がないでしょうね。
生徒を「子供」としか認識していなかったあなたにとって、それはありえないことだったのでしょう。
ですが、それは少々烏滸がましいというものでは?
救世主は傲慢とはよく言いますが…随分と落ちたものですね、先生よ。
- 190二次元好きの匿名さん25/03/07(金) 15:46:37
保守
- 191二次元好きの匿名さん25/03/07(金) 18:43:03
ルート分岐あるかな……?
- 192◆2rKpMml/3qqF25/03/07(金) 21:54:55
――――――
セイアはその様子を小窓から眺めて一人つぶやく。
「ナギサ……。君は……もしかして、自分が独裁者としてすべての責任を負うことで、自分の命を代償に解決しようとしているのか……!?」
セイアは自分の能力を使う都合上、断片的な情報に対する推察能力が高くなっていた。そしてその結果不運にも、或いは幸運にも、推理(アイデアロール)に成功してしまった。
「君は自分を犠牲にすれば、本当に他の人間が幸福になると思っているのか!?周りの顔が見えていないのか!?君の自己犠牲でどれだけの人が心を痛めているのか……。どうしてこうなってしまったんだ……。先生、あなたですら失敗するのならだれが彼女を助けることができるんだ……。私に見せてくれるのではなかったのか、この物語のその先を……これならば見なければ……。」
そう言いかけたその時
『”私一人の力じゃ足りないのなら、私以外の力も借りてナギサを救いあげないと、絶望の檻の中に入ったあの子を。”』
元々、先生は単体の力としては弱い。それは本人自身も分かっていたことだった。頭の良さが抜群に優れているわけではない。ある程度教えることができるが、突出した才能にはかなわないほどには。しかし、矜持。正しい責任感という一点においては、先生は自分の中に揺るがない基準がある。そして、できないことを自分以外の人に頼るという点においては先生は優れていた。
「先生……君は。……最後まで見届けようじゃないか。約束したことだからな。」
- 193二次元好きの匿名さん25/03/08(土) 00:43:12
続きは次スレかな?
- 194二次元好きの匿名さん25/03/08(土) 08:12:37
人の本質の一つである群れとしての強さか
- 195ナギサの周りを曇らせ隊25/03/08(土) 13:03:10
- 196二次元好きの匿名さん25/03/08(土) 14:07:55
うめ
- 197二次元好きの匿名さん25/03/08(土) 15:39:46
梅
- 198二次元好きの匿名さん25/03/08(土) 15:40:49
うめうめ…見せてみろ先生の力を
- 199二次元好きの匿名さん25/03/08(土) 15:42:30
そもそもトラウマとか心因性のものは時間かけて寛解させていくしか無いだろ…
- 200二次元好きの匿名さん25/03/08(土) 15:43:28
200ならビターエンドでナギサはキヴォトスの外に治療に行く。
先生の主人公補正消失。