【SS注意】【トレウマ注意】肉じゃがは難しい

  • 1二次元好きの匿名さん25/02/22(土) 19:00:27

    「あれ? これなんだろう?」

    遅く起きた休日の朝。
    トレーナー寮のポストを見ると、見慣れない大きな封筒が入っていた。
    部屋に戻って開けてみると、中にあったのは『月刊モテ男』。

    「ああ、そうだ。グラビアになったんだっけ」

    担当で愛バのダイワスカーレット。
    先日URAファイナルズも制し、飛ぶ鳥を落とす勢いでムーヴメントを巻き起こしている彼女。
    ウマ娘関係以外の雑誌からも、こうして取材が頻繁に来るようになった。

  • 2二次元好きの匿名さん25/02/22(土) 19:00:54

    「最初は、『週刊トゥインクル』や『週刊ウマ娘Book』の取材だけでガチガチになっていたのになあ」

    リビングに持ち込んで、お茶を飲みながらページをめくる。
    最近はメディア対応もそつなくこなすようになっており、成長を感じるところ。
    バ体も完成の域に近づいており、1人でメディア対応をこなせるなら、「もう自分はいらないかな」と思ったりもする。

    きわどいローライズの赤い水着。
    純白のウェディング・ドレス。
    華やかな刺繍の入った黒の振袖。
    深いスリットのブルー・チャイナ・ドレス。

    どれも、可愛らしくて美人なスカーレットの魅力があますところなく表現されている。
    背景は、彼女の希望もあってこの部屋だった。
    今も部屋の隅に、その時の衣装がかけられたクローゼットがある。

    「あれ、どうするつもりなんだろう?」

    そんなことを思いながら、パラパラと特集を眺める。
    「料理のできる男はモテる」か。
    ……たまにはちょっとやってみるかな。

  • 3二次元好きの匿名さん25/02/22(土) 19:01:35

    キッチンに移動して冷蔵庫を覗く。
    スカーレットがいつも食事を作ってくれるので、冷蔵庫に食材はいっぱい。
    彼女の勧めに従って、新婚サイズの大きめの冷蔵庫を購入して本当に良かったと思う。

    「人参、ジャガイモ、玉ねぎ、牛肉、と。肉じゃがにしてみるか」

    『月刊モテ男』の該当ページを参考にしながら、チャレンジしてみる。
    いつもスカーレットにばかり世話になっているのも、申し訳ないし。
    しかし……。

    「あれ、人参とジャガイモが綺麗に切れないなあ、不揃いだけどいっか」
    「出汁ってどうすれば良いんだ? 鰹節とか使えないし、顆粒出汁でカップっておかしいよね? なくても良いか?」
    「うわあ、油入れすぎた! なんか揚げ焼きになっているし!」
    「最後にお肉と水入れて煮込めば良いのかな。大さじとかないし適当で良いでしょ。醤油と砂糖とみりんと酒……。酒見つからないからビールで良いか」

    日頃からスカーレットに頼りきりのせいか、全然上手くいかない。
    鍋を火にかけたところで、雑誌を持ってリビングに戻る。
    ……ああ、慣れないことをして疲れた。

    ――ぐぅ。

  • 4二次元好きの匿名さん25/02/22(土) 19:02:02

    「ちょっと! 煙がすごいんだけど!」

    スカーレットの甲高い声で目が覚めた。
    慌てて立ち上がってキッチンに向かうと、天井付近にもくもくと黒い煙。
    鍋の中には、すでに水が無くなって焦げている肉じゃがのようなもの。

    「どうしたの?」

    火を消す。
    火事にならなくて本当に良かった。
    合鍵でトレーナー寮の部屋に入ってきていたスカーレットも、後ろから鍋をのぞき込む。

    「……なにやってんのよ」

    「いや、料理してみようかなって」

    「その結果が、これ?」

    「反省しています。はい」

    ため息をつくスカーレット。
    彼女は私服の上から素早くエプロンを着ると、「後はアタシがなんとかするからリビングにでも行ってなさい」と俺を追い出した。
    部屋全体を覆いつくす、焦げた臭い。
    スカーレットに後始末をさせるのは心苦しいが、うちの台所を預かっているのはその彼女。
    自分が手を出しても何の役にも立たなそうなので、大人しくリビングで縮こまっているしかない。
    やがて、キッチンから美味しそうな匂いが漂ってきた。そう言えば、もう昼食の時間。

  • 5二次元好きの匿名さん25/02/22(土) 19:02:34

    「お昼、できたわよ」

    その声に反応して、ダイニングへ向かう。
    テーブルに鎮座するのは、自分が作っていた肉じゃがのできそこないの鍋、ではなく。
    同じ鍋でも、デミグラスソースの匂いをいっぱいに振りまくビーフシチューだった。

    「あまり焦げてなくて助かったわ。ちょっと焦げた分、香ばしさも出たしね。リメイク成功。どう?」

    「大したことはしていない」という顔で、隣の席にスカーレットが身体を寄せて座る。
    やわらかい感触と、苺色の風。
    だが、自分にとってみれば。

    「ありがとう。すごいな。さすがスカーレットだ。こういうお嫁さんが欲しいよ」

    「うふふ。いつでもお嫁さんにしてくれて良いわよ」

    得意げなスカーレット。
    添えられたバゲットに付けて食べると、コクと味のバランスも申し分ない。
    夢中で食べてしまう。

  • 6二次元好きの匿名さん25/02/22(土) 19:03:20

    「もう、そんなにがっつかなくても良いのに。でも、なんで急に料理をし始めたの?」

    一息を入れたところで、冷たい烏龍茶を差し出しながらこちらに疑問を呈するスカーレット。
    受け取って一口飲むと、じんわりと冷たさが身体にしみわたってくる。
    無言で、手元の『月刊モテ男』を指さす。

    「なに、これ?」

    「こないだ、スカーレットがグラビア撮影した雑誌」

    「ああ、あれ。で、これがどうかしたの?」

    該当ページを見せると、目が厳しくなった。

    「ふーん。『料理のできる男はモテる』ねえ。アンタこんなモノ信じているの?」

    「わからないけど、できないよりできた方が良いかな、って」

    そう言うと、身体をより密着させてきた。
    吐息が、頬にかかる。

  • 7二次元好きの匿名さん25/02/22(土) 19:03:58

    「アンタは、モテなくて良いの! アタシだけにモテてなさい! 料理は全部アタシがやるから!」

    「でもスカーレットに、もっとモテたいから」

    「へっ!?」

    予想外の答えだったのか、固まるスカーレット。
    と……。
    彼女の口の端から、ポトリとその胸元にビーフシチューが落ちた。

    「しょうがないな。もう」

    スカーレットの胸に落ちたそれを、そっと舐めとる。
    苺の匂いが、さらに強く鼻腔に入ってくる。
    それから、きめ細かな柔らかい餅肌の感触。

    「ちょっと、なにしてるの!?」

    再起動したスカーレットが、大声を上げる。

    「なにって、スカーレットがこぼしたのを取っただけだよ?」

    「やり方ってモノがあるでしょう! 指でするとか! ……とにかく禁止!」

    「えー」

    「『えー』じゃないわ! アンタ、どこでもこぼれたら舐めるつもりなの!?」

    「スカーレットの身体が汚いわけないし」

  • 8二次元好きの匿名さん25/02/22(土) 19:04:26

    「そ、それなら――」と不穏なつぶやき。
    そして彼女は、スプーンでシチューを掬うと、自らの唇を濡らした。
    そのあとに、こちらへ振り向く。

    「ど、どう――」

    その言葉が終わらないうちに、スカーレットの後頭部を強引に引き寄せて唇を奪う。
    舌を絡め、歯茎を舐めあげ、歯を弄び、息で揶揄う。
    ぺろぺろ、じゅるじゅる、じゅぽじゅぽ、ぐちゅぐちゅ、じゅぱじゅぱ、ぐっぽぐっぽ、ぐっちょぐっちょ。

    「ん……」

    吐息を漏らしたのは、どちらだったか。
    水音が響くたびに、彼女の目が蕩け、頬が紅潮し、肌が熱を帯びる。
    苺の甘酸っぱい匂いとは違う、雌の甘くて淫靡な香りがふわり。

  • 9二次元好きの匿名さん25/02/22(土) 19:05:03

    「ねえ」

    「ん?」

    どちらからともなく唇を離す。
    婀娜な仕草で、こちらを誘うスカーレット。
    肩紐はすでにずり落ち、今にもまろび出そうな胸。

    「ビーフシチューを塗ったら、どこでも舐めてくれるの?」

    「塗らなくてもなんでもしてあげるよ。作ってくれたお礼に、ね」

    「な、なら……」

    彼女の視線が、ちらりちらりとリビングのクローゼットへと向く。
    その細い腰を抱き寄せ、そっと唇にもう一度キスをした。

    ――三連休は、始まったばかり。

  • 10二次元好きの匿名さん25/02/22(土) 19:05:22

    これで終わりです。
    ありがとうございました。

    至らない点もあると思いますが、よろしくお願いいたします。

  • 11二次元好きの匿名さん25/02/22(土) 19:37:32

    ありがとう(何も具体的な感想が言えず済まぬ…)

  • 12二次元好きの匿名さん25/02/22(土) 23:54:15

    >>11

    ありがとうございます。コメントいただけただけでもうれしいです。

  • 13二次元好きの匿名さん25/02/22(土) 23:55:54

    あっぶねえぱかライブの衝撃がやばすぎて感想忘れるとこだった…

    乙!
    …三連休連続で出走(意味深)するんですか!?
    酸素だ、酸素をもってこい!!!

  • 14二次元好きの匿名さん25/02/22(土) 23:56:30

    あとすんごいいい作品なのでトリップ今からでもつけてネ

  • 15二次元好きの匿名さん25/02/22(土) 23:58:28

    っぱダスカよ

  • 16二次元好きの匿名さん25/02/23(日) 00:00:03

    スカーレットしか勝たん

スレッドは2/23 10:00頃に落ちます

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