【SS注意】受け取った花束を

11◆IgydwJjnlQ25/02/22(土) 23:22:55

『――――いつか花束を。…勝利の花束を、貴方に。』

ゴシックな外側に包まれつつ、カラフルな裏地の勝負服は文字通り"ブーケ"の名を表した華やかな色合いで僕を魅せてくれた。
―――
――
「カレン。準備は出来たかな」
「ええ。トレーナーさん」
その髪のようにゆるり、ふわりと柔らかい顔を見せる彼女からは
もはや幻覚ではない花の香りすらしてくる。

「…ふふ」
「どうかいたしましたか…？」
「まだトレーナー、なんだなって」
「！」
何倍速で花びらがパッと開くように驚いた顔を咲かせる。
この子はこういうところもかわいい。

「あ、あああのっ　こ、こういう雰囲気は…初めてなので…」
「大丈夫。だって」

―――俺も初めてだから。
そう囁いて、胸の前で指先同士を合わせる彼女の片手を解いて優しく握る。

躊躇いがちな指先を撫で…
欲しいものはわかっているけど、あえて焦らす。

21◆IgydwJjnlQ25/02/22(土) 23:23:31

―――
「"○○さん"…」
「…カレン」
どこかのカワイイ方も、柔らかくて儚い君には敵わないだろう。
"ナンバーワン"ではなく"オンリーワン"の花だ。

「君にもらったたくさんの勝利（はなたば）…　今度は俺が欲しいだけあげるよ」
「……そうしたら今度こそ…私は貴方に根付きます。いくら掘っても…抜けないくらいに」

いつの間にか頬に手を添えられていたので、俺も彼女に手を添える。
「離れたくない、離れられないのは知ってる…」
「……ふふ」

既にカウントダウンはもう始まっているんだ。
今更やり直すなんて無駄だよ…そんなの自明だろ？

「愛してる」
「…私もです…」

儚く、強い花に…口づけを一つ。