- 1二次元好きの匿名さん25/02/23(日) 20:21:43
- 2二次元好きの匿名さん25/02/23(日) 20:22:26
ホントに何があった!?
- 3二次元好きの匿名さん25/02/23(日) 20:23:13
まあキヴォトスの何かあった未来とかお察しだよね
- 4二次元好きの匿名さん25/02/23(日) 20:23:25
マコトとヒナの二人に抱き付いて静かに涙を流すけど「何でもない」の一点張りなんだよね
- 5二次元好きの匿名さん25/02/23(日) 20:23:59
バラライカみたいなの想像した
- 6二次元好きの匿名さん25/02/23(日) 20:24:20
多分10歳の自分のことが嫌い
- 7二次元好きの匿名さん25/02/23(日) 20:33:19
マコトもガチ泣きしそう
- 8二次元好きの匿名さん25/02/23(日) 20:34:01
イブキ*テラー…
- 9二次元好きの匿名さん25/02/23(日) 20:34:47
テラーは傷が治るから多分テラれてすらないぞ
- 10二次元好きの匿名さん25/02/23(日) 20:35:49
多分自分だけ生き残ったんだろうなぁ
- 11二次元好きの匿名さん25/02/23(日) 20:36:38
「何も出来やしないクソガキの自分の象徴」としてプリンが嫌いになってそう
- 12二次元好きの匿名さん25/02/23(日) 20:38:55
きっと万魔殿メンバーやヒナ、忍術研究会に守られて生き延びたんだろうな
- 13二次元好きの匿名さん25/02/23(日) 20:40:21
一人で生きていかざるを得なくて、仲間と連携するチーム戦は苦手だけど、一人で複数人とやり合う乱戦に以上に慣れてたりしそう。
- 14二次元好きの匿名さん25/02/23(日) 20:42:21
マコトが仕事してる場合じゃない
- 15二次元好きの匿名さん25/02/23(日) 20:57:49
下手なテラー化よりちゃんとテラーやってる
- 16二次元好きの匿名さん25/02/23(日) 20:59:20
この場合イブキがゲヘナに7年滞留してることになるけど、有力者無限留年編があるっぽいことはシュン教官が傍証してるのでうかつに否定できない
- 17二次元好きの匿名さん25/02/23(日) 20:59:22
絵も描かなくなったんだろうな
- 18二次元好きの匿名さん25/02/23(日) 20:59:25
先生を見たら泣き崩れて欲しい
- 19二次元好きの匿名さん25/02/23(日) 21:01:20
- 20二次元好きの匿名さん25/02/23(日) 21:04:53
この時にイブキは今にも泣き出しそうな顔を一瞬だけどするんだ
- 21二次元好きの匿名さん25/02/23(日) 21:05:25
身内には凄い情が厚いけど皮肉屋かつ自虐的な性格に捻じくれちゃってるから、露悪的な言動が目に付くんだろうなって
でも身内判定の人に関するイエス/ノーの閉じた質問になると明確に答えられない
答えられるのは『敵』に関するイエス/ノーだけなんだ…… - 22二次元好きの匿名さん25/02/23(日) 21:06:22
ペロロ様とか子供っぽいとかいうんだろうけど、忍ペロさんの残骸は後生大事に持ってそう
- 23二次元好きの匿名さん25/02/23(日) 21:20:15
- 24二次元好きの匿名さん25/02/23(日) 21:20:18
一回中退して入り直す、停学、休学、そもそも学校が残ってない、昔を忘れられなくて万魔殿の制服着てるだけで学校行ってない。いずれかのパターンかな?
- 25二次元好きの匿名さん25/02/23(日) 21:25:41
たとえ、自らが否定する事だとしても。
彼女――羽沼マコトは、私の言葉に怒りを燃やした。
輝かしい思い出を愚弄するなと彼女は怒る。
――――だからこそ。
変わり果てた私は、無知蒙昧な己を嫌悪する。
この人に守られてばかりな己を拒絶する。
許される日は、訪れない。
- 26二次元好きの匿名さん25/02/23(日) 21:34:58
ボルトみたいになってる…
- 27二次元好きの匿名さん25/02/23(日) 22:09:54
この成長したイブキの容姿はマコトのような黙っていれば美人系でも良いし、クールビューティーなイケメン美人でも良いよね。眼帯しててほしい。
- 28二次元好きの匿名さん25/02/23(日) 22:13:38
笑えなくなったイブキ(17)に笑い方を思い出させてあげてやってくれ…何かあった未来に戻ってキヒヒ笑いしながら絶望に立ち向かうイブキが見たいんじゃ…
- 29二次元好きの匿名さん25/02/23(日) 22:14:18
- 30二次元好きの匿名さん25/02/24(月) 05:09:35
保守
- 31二次元好きの匿名さん25/02/24(月) 06:51:04
歩くときも、武器の整備のときも、食事のときも、マコトやヒナや先生と話すときすら、あるいは縋り付いて涙を頬に流すときすらも、常に静かでただ沈んだように振る舞うんだけど
イロハに優しく抱き締められた時だけは大声を上げて泣きじゃくるんだよね... - 32二次元好きの匿名さん25/02/24(月) 07:12:00
どなたかaiイラストをください…!
- 33二次元好きの匿名さん25/02/24(月) 07:42:03
血を流し、マコト先輩を守れたと呟き……小さなイブキと同じような無邪気な笑顔で気絶する
そんなイブキ(未来)を抱えて「誰か、イブキを助けてくれ!」と涙混じりで叫ぶマコト……
そんなマコトの声を聞きつけ、走り寄ってくるイロハマコトとイブキ(未来)を見てマコトに「早く! セナのところに連れて行きますよっ!」とマコトに怒鳴りつけるイロハ
って感じ?
- 34二次元好きの匿名さん25/02/24(月) 07:46:03
- 35二次元好きの匿名さん25/02/24(月) 10:10:21
現在イブキもビックリだよこんなの
- 36二次元好きの匿名さん25/02/24(月) 16:36:03
眼帯ッ娘っていいよね
- 37二次元好きの匿名さん25/02/24(月) 21:59:15
もう乗ることもないと思っていた虎丸に久々に戦車長と二人でいる時に感傷的な表情になるんだ……
- 38二次元好きの匿名さん25/02/25(火) 06:56:56
保守
- 39二次元好きの匿名さん25/02/25(火) 13:30:48
ほしゅ
- 40二次元好きの匿名さん25/02/25(火) 18:30:06
イブキとバレないように(同じ人物が二人存在する状態にならないように)してるんだけどそのための方法が、自分からは名乗らない、だったんだよね
外見も変わり果ててたし、バレないだろうと思ってたけど親しい人からは秒でバレて涙が止まらなくなる - 41二次元好きの匿名さん25/02/25(火) 22:52:12
保守
- 42二次元好きの匿名さん25/02/25(火) 23:43:40
性格ネジ曲がったトランクスみたいなもんか…
- 43二次元好きの匿名さん25/02/25(火) 23:45:36
- 44二次元好きの匿名さん25/02/25(火) 23:47:30
サーベルぶん回さなきゃいけない時点で相当厄介な情勢になっている
- 45二次元好きの匿名さん25/02/26(水) 00:00:04
物語から退場する死に際に元いた世界の亡くした人達が迎えに来て、そこに向かって駆けて行くのは子供の頃の姿のイブキなんだ…
- 46二次元好きの匿名さん25/02/26(水) 00:33:08
イブキの自室にはほとんど物がないけど先輩たちからのプレゼントとか先輩の私物や銃は念入りに手入れされた状態で保管されてそう
修繕跡がある忍ぺろさんぬいぐるみとか戦車長の手旗とか真新しいレンズに交換された傷だらけのカメラとかマコトのドレスとかヒナのデストロイヤーとか - 47二次元好きの匿名さん25/02/26(水) 08:33:11
ほ
- 48二次元好きの匿名さん25/02/26(水) 18:08:38
なんか味覚もヤバくなってそう
肉料理とかにチリソースや七味唐辛子ドバドバかけてそう - 49二次元好きの匿名さん25/02/26(水) 22:39:38
それを(勝手に)食べて盛大にむせるマコトとそれを見て「先輩は変わらないなぁ」って言いようのない気持ちになるイブキ
- 50二次元好きの匿名さん25/02/26(水) 22:48:06
イブキ(17)が自分をイブキと認めなくてもマコトはお節介を焼きそう
自分はイブキじゃないって頑なになって構わないでって泣きながらキレるんだけど制服を着てる以上お前は万魔殿の後輩だ後輩を可愛がって何が悪いってマコトは笑うんだ
もう未来には自分より年上なんていなかったし修羅場を潜り抜けて背も追い越して追い抜いたつもりだった過去のマコト(18)にまだ追いつけてない年だったことを思い出すんだよね - 51二次元好きの匿名さん25/02/27(木) 08:24:57
ほしゅ〜
- 52二次元好きの匿名さん25/02/27(木) 08:36:57
もうブルアカというかドルフロみたいな絵になってそう
- 53二次元好きの匿名さん25/02/27(木) 18:12:28
逆パターンでヒナとかマコトが何かあった未来に行く展開もありそう
- 54二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 03:30:13
なんだこれ地獄か?
- 55二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 04:23:39
このレスは削除されています
- 56二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 14:22:43
ほ
- 57二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 20:28:10
う
- 58二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 20:40:31
背丈が背丈なので敢えてイブキ(17)をお姫様抱っこして抱き締めるイロハは駄目だろうか?
- 59二次元好きの匿名さん25/03/01(土) 00:04:01
なんでその子と接点あるの?って生徒と絡んでほしい
ホシノと会ったら凄い警戒態勢を取るとかサキを教官って呼んだりとかミカに「五体満足だとこんなに強いんだ…」とか言ったり - 60二次元好きの匿名さん25/03/01(土) 01:22:00
生き残りたちのベースキャンプとなった子ウサギ公園で車椅子に乗ったミカがインスタントコーヒーを啜りながら「こんな身体じゃなきゃイブキちゃんやサキ教官だけに苦労させずに済んだのに」とかぼやいたり五体満足だった頃の武勇伝を聞かせてくるのを内心「そんな与太話がマジな訳あるか」と思いつつ聞き流していたイブキ(17)
過去のキヴォトスに飛ばされて、ミカの与太話がマジだったと知るのはそのちょっと後である
- 61二次元好きの匿名さん25/03/01(土) 01:26:18
普通に戦術参謀とかやってたし(後遺症で)病弱だったんであそこまでゴリラだった事に呆然としてるイブキ17歳
- 62二次元好きの匿名さん25/03/01(土) 01:36:31
ミカ参謀長に教えられて美味しい紅茶は淹れられるけど、逆に珈琲は教えてくれる人も淹れてあげたい人もいなくなったから練習していなくて、マコトやヒナに淹れる機会が来たときに困るんだよね
- 63二次元好きの匿名さん25/03/01(土) 01:43:03
先輩たちを喪い笑い方を忘れてしまったイブキ(17)
自慢のフィジカルを失ったミカ参謀長(23)
となるとサキ教官(22)も何か失ってそうだな - 64二次元好きの匿名さん25/03/01(土) 01:53:52
鉄板でいくと失ったのはRABBIT小隊なのかな……
小隊の遺志を継いで戦い続けようとすると、一番求められる役割が「実戦的な知識を広範に有しているので、前線での戦闘より後方での教導」になって、結果的に自分は安全圏に留まり続けることになるとか
- 65二次元好きの匿名さん25/03/01(土) 01:57:05
に場所を探してるのに ねないどころか死地に教え子を送り出すばかりのサキ教官
- 66二次元好きの匿名さん25/03/01(土) 02:08:03
実は話を盛っていたどころかお姫様っぽくないので控えめな内容にしていたミカ…
- 67二次元好きの匿名さん25/03/01(土) 02:17:47
やたら強い第三勢力の女、小鳥遊ホシノ(23)
旧アビドス高校をベースキャンプとしている生き残りたちの集団からは離れてアビドス砂漠周辺で単独行動している
子ウサギ公園の生き残りたちとは場合によって協力したり敵対したりする
イブキ(17)からは何か色々と勘違いをされているらしい - 68二次元好きの匿名さん25/03/01(土) 10:24:21
「何か」があった時にホシノの奮闘でアビドス組全員を守り切れたけど払った代償もそれ相応に大きくて、先生は行方不明だしアビドス高校周辺以外は完全に破壊し尽くされているし時々ゲヘナの生き残りの小娘が侵入してくるし未熟者への訓練付けがてら狩りのように徹底的に追い回す
- 69二次元好きの匿名さん25/03/01(土) 11:30:37
ホシノ(23)がちょっと張り切り過ぎてイブキ(17)が意識失うまでいたぶってしまった時は旧アビドス高校のベースキャンプに運んでいくのでイブキはアビドス組ともちょっと面識があったりする
アビドス組と協力してアビドスキャンプ防衛戦みたいな事もしてそう - 70二次元好きの匿名さん25/03/01(土) 12:18:28
熱い。腕も、足も、もう伸びるも縮むも品切れだと、熱を持って訴えてくる。
お腹の中は、まるで臓器という臓器が別の意志を持った生き物のよう。てんでばらばらに捩れて痛む。
込み上げるものに堪えられずに四つん這ってえづく。吐き出せるものが液体しか残っていないのは不幸中の幸いかもしれない、とぼんやり思ってしまう。
直後、浮ついた考えを叱咤するように鉄板入りの爪先がみぞおちに突き刺さり、与えられた推進力に従ってイブキの……私の身体はゴムまりのようにバウンドしていた。
「ちょ……ちょっと、サキ教官!! いくら何でもやりすぎ! イブキちゃんが死んじゃったらどうするの!?」
「━━本気で言ってるのか、参謀長? 戦場でもその車椅子でしゃしゃり出て『イブキを殺すな』って言ってやるのか?」
明滅する視覚と裏腹に、聴覚は言い争う二人の声を聞き取ってくれる。
子ウサギ公園に身を寄せてから、ミカ先輩はゲヘナらしい私の姿を少なからず疎んでいたし、逆にサキ先輩は何かと私たち避難民に気を配ってくれていた。
それが今この瞬間にはまるであべこべになっていて、他人事のようにおかしく感じてしまう。
「『腕も足も筋肉痛で動けません、見逃してください』」
「『吐くほど苦しいです、日を改めてください』」
「そう言って? 戦場で、敵に? 待ってもらうのか?」 - 71二次元好きの匿名さん25/03/01(土) 12:18:54
「でもっ! イブキちゃんだって、まだ高校生にもなってないんだよ!?」
「高校生にも!? ああ、今のはなかなかいいんじゃないか!? 『イブキはまだ子どもなの、許してください』っておねだりするわけか!!」
━━とりとめない思考を引き締める。思考が定まっていないのは、まだ『私』が甘えているからだ。
すべて、すべて、サキ先輩が……サキ『教官』が正しい。
もう『イブキ』を守ってくれる『先輩』はいない。みんないなくなった。『イブキ』が弱かったから。
『私』は自分で身を守らないといけない。まして、みんなを守りたいのなら強く━━『先輩』たちよりもずっと━━強くならないといけない。
「なあイブキ。もしお前が参謀長と同じ考えなら、『死んじゃったら』なんてひどいことは言わない」
「今、ここで。お前のヘイローを破壊する。その方が、弱いやつを戦場に出すよりはずっといい」
ようやく戻った視覚でサキ教官の顔を捉える。いかめしいその顔に、似ても似つかないのにいつかの万魔殿議長や風紀委員長の……私には滅多に見せることのない表情を思い出す。
その顔も迫る靴底に隠れていく。なおも甘えごとを訴える私の身体に必死で動かす。
衝撃。踏みつける一撃で地を舐めるように転がる中、やっと手をついて上体を起こす。
再び捉えた教官の顔は、少しだけ眉が上がっていた。
「……そのサーベル、飾りじゃなかったのか。いい反応だ、わざわざ足ふきマットを差し出してくれてありがとう」
「それで? もう限界だから今日は終わりにするか、イブキちゃん?」
甘くてひ弱。プリンのような『イブキ』は今日限りにする。
たとえ強くなれなくとも、『先輩』たちのようにあろうとしつづけろ。
サーベルに体重を預けてようやく立ち上り、浅く乱れた息を苦心して吸い込む。
「っは……は……、も……いっかぃ……お願いします、教官……」
どうにか声を絞り出した瞬間、すべての感覚が消えた。
これが━━サキ教官の教えを受けた一日目。ほんの少しだけ、大嫌いな『イブキ』から離れた日だった。 - 72二次元好きの匿名さん25/03/01(土) 13:24:13
何かあった未来のキヴォトス観光ガイド
旧トリニティ編
・放棄されたセーフハウス
旧トリニティ自治区内に複数点在する「ティーパーティー最後のホスト」が使用していたというセーフハウス
参謀長にとっては複雑な思い出のある場所らしく、ここで参謀長に通信を繋ぐとティーパーティー最後のホストやその幼馴染の親友だった「とあるバカな女」の話を聞かせてくれたりする
時々お茶菓子や料理のレシピや参謀長に似た人物の絵を拾えたりもする
旧ゲヘナ編
・万魔殿議事堂跡
今となっては瓦礫の山同然となってしまった廃墟
イブキにとってはもう戻らぬあの頃の思い出と全てを失った最悪の思い出の両方が詰まった場所である
その一角からは温泉が湧き出ているが、周囲は暴走するロボットや追い剥ぎや火事場泥棒の類が大勢いる旧ゲヘナ自治区であるため落ち着いて温泉を楽しむのは難しいと思われる - 73二次元好きの匿名さん25/03/01(土) 13:52:06
───イブキが過去に飛ばされて3日後───
サキ「……3日たったな」
ミカ「…………死んじゃったね」
サキ「……おそらくな」
ミカ「………………悲しいな……流石に6年も一緒にいたから……」
サキ「……悲しんでる暇は無い、早く次の作戦を建てるぞ。」
「………………その前に……まだ前回の物資にタバコは残っていたはずだ……取ってくれ……」
ミカ「はい、どうぞ」
「うわっ……フィルター切ってる……健康に悪いよ……?」
サキ「……イブキは死んだ……もう私の健康を心配する人間なんていない。そんなミカ参謀もタバコが反対だ。物資を無駄にしないでくれ」
ミカ「……あ、本当だ。ごめん」
サキ「……次から気をつけてくれ」 - 74二次元好きの匿名さん25/03/01(土) 14:12:02
- 75二次元好きの匿名さん25/03/01(土) 14:57:31
「何か」が起きず成長した過去のナギサ達やRABBIT小隊から預かった手紙をサキとミカに渡すんだ…
- 76二次元好きの匿名さん25/03/01(土) 15:12:43
ミカ(17)「ねえねえ、未来の私ってどんな感じなの?」
イブキ(17)「こんな感じ……(ミカ(23)の写真を見せる)」
ミカ「うっそぉ!?6年で私老け過ぎじゃない……?」
ミカ「車椅子だし……何があったの……?」 - 77二次元好きの匿名さん25/03/01(土) 16:09:40
ホシノ(17)「ヒナちゃん、遊びに来たよ〜」
ヒナ「あら、いらっしゃい」
イブキ(17)「っ!!」
ホシノ「うへっ?」
イブキ(小鳥遊ホシノ……未来と全く変わらない姿してたからつい身構えてしまった………)
ホシノ(誰だろこの子……見ない子だな) - 78二次元好きの匿名さん25/03/01(土) 16:31:26
学校外の知らない子達と仲良くするイブキ(17)を見て色々あったんだろうと窺い知れないイブキ(17)の人生に自分が居てやれなかった事を悔やみつつ、それはそれとして自分以外がイブキ(17)と交流してるのに大層ジェラってそわそわするマコト
- 79二次元好きの匿名さん25/03/01(土) 16:41:56
- 80二次元好きの匿名さん25/03/01(土) 16:57:21
このレスは削除されています
- 81二次元好きの匿名さん25/03/01(土) 19:26:15
何かあった未来の生き残り
子ウサギ公園
イブキ、サキ、ミカ
旧アビドス高校
シロコ、ノノミ、セリカ、アヤネ
アビドス砂漠
ホシノ
他に生き残ってる奴はいないんだろうか - 82二次元好きの匿名さん25/03/01(土) 19:41:45
ミレニアムは本校を移転したよ
要塞都市エリドゥに全生徒と学校設備を格納している - 83二次元好きの匿名さん25/03/01(土) 20:00:15
イブキが死んだと思って一人で懺悔しているサキ教官のSS消えてるね、残念
元の世界に知人が残っている場合は帰還することが目的になるのかな。あるいは、イブキが激変するようなイベントがこの世界でも起きないように動いていくのか - 84二次元好きの匿名さん25/03/01(土) 20:02:06
このレスは削除されています
- 85二次元好きの匿名さん25/03/01(土) 20:02:12
異変後に全生徒の保護を掲げて全ての情報を遮断したレッドウィンター
校区の境には生徒だったと思われるボロ布を纏った人達の遺骸が定期的に転がっている - 86二次元好きの匿名さん25/03/01(土) 20:20:50
私は教官と呼ばれるような人間じゃない。
戦術を教えるならミヤコがきっと一番適任だ。状況判断と指示が的確で私達は迷わず戦えた。
電子戦や武器の事を教えるならモエがきっと一番だ。その場その場で適切な一手を繰り出せる。
狙撃に関してはミユ以外の適任は一人もいない。彼女の鷹の目は私達を天空から見つめ守ってくれる。
だけど今は誰もいない。
みんな居なくなった、みんな消えた、ウサギは一本脚で立てはしない。
だけど私は兎じゃないから。
私は四人分の事を全て教えなければいけない 『気負いすぎですよ』
そしてその結果を全部一人で背負わなけばいけない 『真面目ちゃんだねぇ』
だから私は私達の全てをこの少女に叩き込む 『でもきっとサキちゃんなら』
「立てイブキ、地獄に落ちたくないならな」 - 87二次元好きの匿名さん25/03/01(土) 22:10:07
イブキに戦術の基本をビシビシスパルタで教えてくれるのがサキ教官
お使いとかでアビドス周辺に来たイブキを追い回しがてら応用編とか実践編の踏み込んだテクニックを教えてくれるのがホシノ
ホシノの場合は「技は見たり食らったりして盗め」というスタイルのスパルタどころじゃないスタイルではあるが - 88二次元好きの匿名さん25/03/01(土) 22:50:58
「万魔殿の制服、風紀委員会の腕章」の謎の生徒があちこちで暗躍している情報が出て、風紀委員会だけでは補足しきれず万魔殿まで動員して包囲網を敷き、(風紀委員会はともかく)万魔殿の風聞に関わる真似をした者を嘲ろうとしたマコトが一目でイブキと見抜けて呆気に取られるマコトとか見たい
結局逃げられた後で「どう見てもイブキだろう!? 節穴かお前たち!!」とか喚いても「何言ってるんですかねこのタヌキ」「そもそもイブキは留守番させてるじゃないですか」と返されて一人だけ混乱しているマコト - 89二次元好きの匿名さん25/03/02(日) 08:42:34
このレスは削除されています
- 90二次元好きの匿名さん25/03/02(日) 08:56:14
先生は…まあ……死んでるんだろうな…とっくに
- 91二次元好きの匿名さん25/03/02(日) 09:19:52
晴天の霹靂という言葉を習ったことがある。
突然空が曇り雨が降るように思いがけない事が起きるという諺だ。実際にそんな事が大昔にあったと教官や参謀長に聞いた事があるが、私の記憶にはもうそんな異変の記憶なんてこれっぽっちも残っていない。
いま私の記憶を占めるのは失った大事な人達の笑顔や、教官達と過ごした険しく厳しい試練を潜るような壮絶な日々の記憶だけ。
そんな私に降り掛かったのは、まさに晴天の霹靂と呼ぶに相応しい事態だった。
その日は旧アビドス砂漠に向かってバイクを走らせていた。DUを出た時点でオフロード車に乗り換えるので参謀長から「いっそ歩いて行った方が運動にもなるくない?」とよく言われるのだが、私はこの風を切る感覚が好きだ。
アクセルを回せば二気筒エンジンが唸りを上げ、私の身体より重い巨体が私の思う通り自在に野を駆けて行く。走ってる時は叫び出したくなるような過去の記憶に蓋が出来る。守られてばかりで何も出来なかった自分を意識の外に置いておける。
だからそんな愛車が突然動きを止めた時、少しの不安と困惑が襲って来た。
無理をさせたか?貴重なガソリンが入っているのに。故障?予備パーツのストックはあるだろうか?
そんな些細かつ私が置かれた環境においては深刻な心配がまず脳裏をよぎったが、次に起きた事態に次に続くであろう様々な心配は過去の私よろしく意識の外に文字通り飛んで行って消滅した。
廃墟の群れが溶け出して行く、廃ビルが次第に形を変えて壮麗なものに変わって行く。
アスファルトの裂け目から伸びた植物が引っ込み亀裂が塞がり、かつて目にしていた筈の「舗装された道」に自分が立っている事を認識する。
空を見上げれば曇天と小雨。地に満ちるは道行く人々とその中心でバイクの傍に立つ自分。
そこは───
D.Uシラトリ区、イブキ主観時間より−6年 - 92二次元好きの匿名さん25/03/02(日) 12:32:04
砂漠での行動やバイク運転に備えて防風ゴーグルとか装着しててほしい、元々の風貌にも合うだろうし目が隠れていると正体不明の印象が強くなるし
- 93二次元好きの匿名さん25/03/02(日) 13:48:48
なるほどタイムマシンとかでもなく急に歪みとともに来ちゃった感じか
- 94二次元好きの匿名さん25/03/02(日) 16:41:34
諸々解決した後とかに、イブキ(17)の傷痕が残る頬を撫でて「たくさん頑張ったんだな。えらいぞ、イブキ」と労い褒めるマコトと、その瞬間懐かしい幸せな思い出がよみがえってマコトの胸で泣きじゃくるイブキ(17)とか見たい
因みにGrokに身長が低いキャラに高いキャラの頬を撫でる描写をする場合に身長差はいくつが適当か聞いたけど、20-40cm、30cmが現実的と答えてもらったぜ。でもマコトが169cmだからイブキが大きくなりすぎるな……外見完璧議長がよ…… - 95二次元好きの匿名さん25/03/02(日) 21:38:35
「そういうおかしな話なのですが…」
ヴァルキューレ公安局局長である尾刃カンナの言葉には困惑が混じり、まるで地図の無い道を歩くような不安定さがあった。
本気で困っている時に彼女こういう喋り方をするのを短い付き合いの中ではあるが彼は知っていた。
“それでその子はどうなったの?”
シャーレの「先生」は執務室でカンナの言葉の続きを促す。
曰く
シラトリ区内を縦横無尽に暴れ回った謎の暴徒が居た。
その暴徒は公安局員どころかちょうどシャーレに用事があり来訪していた各校の名うての生徒達を一瞬で叩き伏せた。
最終的に子ウサギ公園に到達した暴徒はRabbit小隊の活躍で拘束、現在は七囚人ワカモをが居た独房に収監している。
元気な生徒で教育のしがいがあるよと彼が肩をすくめて言うと、カンナは顔をしかめて嘆息する。
この「大人」の男性が底抜けにバカがつくほどお人好しの善人だというのを彼女は知っている。
そしておそらく次の言葉で彼がシャーレを飛び出す事も。
「その暴徒…いえ、生徒ですか。彼女は所属組織と名前と一つの質問を私達に投げかけました。」
“……昼食にプリンはいくつ出るのか、とか?”
あまりに彼らしい質問に否を返し、カンナは告げる。
「旧ゲヘナ学園万魔殿所属、現風紀委員会委員長代行・丹花イブキ。『ここは一体何年前だ?』と」
話し終えるのと先生が椅子を蹴って立ち上がり駆け出すのは同時だった。
カンナはその後に続きながら事態の白地図に最初のマーカーが投入された事を安堵する。
しかし地図が何色になるのか、彼女も先生もまだ誰も知らない。 - 96二次元好きの匿名さん25/03/02(日) 23:01:20
相手にもよるけど、サシなら大抵の相手には勝てそうな強さだ…
- 97二次元好きの匿名さん25/03/02(日) 23:26:36
このレスは削除されています
- 98二次元好きの匿名さん25/03/03(月) 01:20:42
おお
- 99二次元好きの匿名さん25/03/03(月) 02:34:17
サツキの催眠が無いと眠れなかったのにマコトが横に居たら半日グッスリ眠っていてその間片時も離れずいてくれた事にお礼も言わず逃げだす罪悪感に悶えるイブキVS成長しても変わらない愛らしい寝顔と反抗期の先取り体験に気を良くするマコトVS仕事を押し付けられるヒナVSダークライ
- 100二次元好きの匿名さん25/03/03(月) 03:31:04
- 101二次元好きの匿名さん25/03/03(月) 04:23:51
売国機関みたいなイメージか
- 102二次元好きの匿名さん25/03/03(月) 08:31:09
- 103二次元好きの匿名さん25/03/03(月) 08:34:27
- 104二次元好きの匿名さん25/03/03(月) 09:30:29
- 105二次元好きの匿名さん25/03/03(月) 09:34:45
- 106二次元好きの匿名さん25/03/03(月) 09:36:21
- 107二次元好きの匿名さん25/03/03(月) 09:36:42
乙! かっこいいなあ
- 108二次元好きの匿名さん25/03/03(月) 09:47:58
- 109二次元好きの匿名さん25/03/03(月) 10:23:08
まず最初の被害に遭ったのはヴァルキューレ生活安全局の善良な生徒だった。
汚れた身なりとボロボロのバイクを見て、何かの事件に巻き込まれたのではと心配から声を掛けたのだ。
これに対する応えは短機関銃の乱射である。
局員はあえなく気絶し、それを見た市民がヴァルキューレ当局に通報を入れる。
次の被害者はちょうどDUを訪れていた数名の生徒達だ。
彼女達は先生の指揮下で戦った経験を持ち他校にも名が知られるようなネームドとも呼ばれる存在だったが、これも今のイブキにとっては烏合の衆。
ほんの1分で全員を叩き伏せるとイブキはバイクに跨り元来た道を引き返し始めた。先ほどとは打って変わりエンジンはいつもと同じ心地よい駆動音を響かせる。
「おかしい、なんで?なんで…!?」
流れて消える風景は幼い彼女が見ていた風景そのもの。遥か昔に喪われた筈の安定した世界。愛車を駆り速度を上げても風景は消えてくれない。それどころか当時の「匂い」や「空気」のようなモノがイブキを包んで決して離そうとしない。
絶叫。
声に乗せて裂帛を吐き出すと、前を見据えさらにアクセルをふかす。
後方から迫るパトランプが増えて行くのがミラー越しに分かる。こうなっては行く先は一つしかない。
子ウサギ公園へ
教官と参謀長がいる筈のイブキの帰るべき場所へ
方針が決まり子ウサギ公園へ続く幹線道路に入る。いくら風景が違うとはいえそこが同じ場所であるなら構造は変わらない筈だ。
一本道、時間は夕刻、傾いた太陽がイブキの正面を明るく照らす。
しかしそれが悪かった。
太陽を背にしたビルの上で瞬いた光にイブキは気付かなかった。
頭部に衝撃を受けバイクごと転倒すると、イブキはそのままハンドルと意識を手放し道路を滑ってガードレールにぶつかり気絶した。
公園まで残り300メートル。
RABBIT4•霞沢ミユの鷹の目にとって、それは目と鼻の先の距離でしかなかった。 - 110二次元好きの匿名さん25/03/03(月) 16:47:39
強い
- 111二次元好きの匿名さん25/03/03(月) 19:26:21
やはりミユは強い
- 112二次元好きの匿名さん25/03/03(月) 19:45:13
このレスは削除されています
- 113二次元好きの匿名さん25/03/03(月) 19:56:44
イブキのサーベルはマコトが生前百鬼夜行の職人に依頼して作らせた特製のサーベルとかでも良いし逃げる時に倒れてた万魔殿の儀仗隊から拝借したものとかでも良いしトリニティ由来の物でも良さそう
なんにせよ悲劇的な出自なのは確か - 114二次元好きの匿名さん25/03/03(月) 21:11:54
- 115二次元好きの匿名さん25/03/03(月) 21:17:36
名もなきゲヘナモブがイブキを逃す時に血まみれになりながら「後はこれで御自身を守って下さい…」と死の間際に言っててほしいな…
- 116二次元好きの匿名さん25/03/03(月) 22:31:42
短機関銃はディスペアーとかドゥームズデイみたいな暗い名前が付いてそう
それか名前すら付けてないか - 117二次元好きの匿名さん25/03/03(月) 23:26:43
- 118二次元好きの匿名さん25/03/04(火) 00:50:30
残酷な現実が目の前にある。
失ったはずのもの、小さな自分を優しさで包んでくれた声。
“君をどう呼ぶべきかな?イブキ?丹花さん?”
「……」
沈黙を貫く。目の前にいるのはシャーレの「先生」。
遥か昔に失われてしまった筈のキヴォトスの要石だった「大人」。幼いイブキが大好きだった人。
────────────────────
矯正局に収監されて三日、数度の尋問と看守の会話でおおよその事態は把握できた。
過去の世界───その事実に正直混乱した。
旧アビドス高校の面々と知己を得た際に目を爛々と輝かせた彼女達によって行われた新入生(仮)歓迎会。そこで後輩との映画鑑賞会をやりたいという提案の流れで見せてもらった古いSF映画みたいな話だった。
タイムリープ、やり直し、バタフライエフェクト。
事態を把握してからというもの、行動次第では未来を変えられるのではないかとイブキは期待を抱いた。
しかし後に分かったのは、この世界ではイブキの居た世界での変事が起きていないという事実だった。
世界はすでに分岐が終わり平和なまま営みが続いて行く。今のイブキに決してこの世界は繋がらない。
かつてイブキが愛した人達も、いずれイブキが愛せた人達も、みんなみんな生きている。
社会は回りゲヘナも他の学園も調和を保ち幼い自分はぬくぬくと愛され育っている。
いずれ大人になったここのイブキはきっと笑顔でみんなと幸せに暮らすのだ。
最初に胸中に巻き起こったのは耐え難い憤怒
ふざけるな。ふざけるなふざけるな巫山戯るなッ!!!!!!!!
何なんだこの茶番劇は?私たちの世界はなぜこの世界に繋がらなかったんだ?
「私の」今の世界を生きる教官や参謀長、私や世界のために世を去った先生やマコト先輩やイロハ先輩やゲヘナのみんなや百鬼夜行の優しい忍者達。その存在はこの世界から見ればまるで失敗したセーブデータみたいなものじゃないか。
目の前にいる大人を見据える。優しい声と顔立ち。きっとこの世界にいる頭が弱くて莫迦で愚かで間抜けな私も、この人のことが大好きなはずだ。
私は私の世界の代表としてこの世界の先生に怒りの涙と共に吐き捨てる。教官に叩き込まれた最大級の侮蔑と共に過去の私が好きだった人を否定する。
「地獄に落ちろ」 - 119二次元好きの匿名さん25/03/04(火) 08:45:32
なんやかんやあって先生に自らの世界で何が起こったか、そしてどうなってしまったかを先生たちに打ち明けるイブキ
だが実はこの世界は「何か」が起きなかったのではなく何らかの要因で起きるタイミングが遅れた世界で、「何か」の火種は今まさに燻っている事が分かるんだよね
半ばヤケクソになってたイブキもそれを知って「もう先輩たちが犠牲になるのは見たくない」とこの世界の為に剣を振るう事を決めるんだ - 120二次元好きの匿名さん25/03/04(火) 17:32:00
ほす。
- 121二次元好きの匿名さん25/03/04(火) 20:45:53
崩壊世界でのミレニアムでは、思考パターンをAI化したリオとヒマリが共同で生き残った生徒を指揮してそう
来るべき勇者が来るまで崩壊に対する新しい道筋を模索し続けてるんだよね - 122二次元好きの匿名さん25/03/04(火) 21:52:00
“ごめんね忙しいのに急に来てもらって”
謝りつつ言う彼に彼女は微笑み首を横に振る
「先生に呼んでもらえるならいくらでも時間を作るわ」
ゲヘナ学園3年、風紀委員会委員長・空崎ヒナ。
この事態を処理するにあたって先生が選んだゲヘナとの橋渡し役である。
既に今回の件で連邦生徒会長代理・七神リンとシロコ*テラーには接触を図り協議を終えていた。結果として件の「イブキ」は連邦生徒会が把握していない在籍不明の生徒の騙りなどではなく、シロコやホシノが至った別のテクスチャ(テラー)でもない、「よく分からない何か」であるという確信が深まるだけになった。
“そういえばヒナはイブキに最近会った?”
少し探るように言うとヒナは考える仕草を取る。
「戦車から顔を覗かせているのを昨日見たわ」
確信。『あの子』は間違いなくこちらのイブキではない。
つまりSFのような話だが、今キヴォトスには生きる時間が異なる二人のイブキが存在するという事になる。
いつか見た古い映画を思い出す。アレはたしか何かの機会にアビドスへ持って行ってそのままだったか。
タイムリープ、やり直し、バタフライエフェクト。
もし二人のイブキが出会ったらどうなってしまうのか。対消滅?世界の崩壊?
キヴォトスで何度も体験したフィクションのような出来事に急に対処しなければならなくなった時の感覚。
あの黒衣の男がこの様を見たら何と評するだろうか。
「それで?今回はそれと何か関係があるの?またマコトがなにかやらかした?」
行動次第では何かやらかす事になるかもしれないという先生らしからぬ言葉を飲み込み告げる。
“…実はこれからヒナに凄く難しいことを頼もうと思ってて”
「分かったわ」
“そうだよね、急に……え”
思わず聞き返す。気持ちいいほどの即答に気が抜ける。
「先生の頼みなら私は喜んで聞く、頼ってくれるなら全力で応える。それだけよ。」
…ここまでの信頼を得る程のことを自分はしただろうかと正直思うが、そう言ってくれることに強い安心と信頼を感じる。ならば自分も彼女を信頼してその胸を借りるとしよう。
“ありがとう、じゃあお願いするんだけど──”
それから一週間。キヴォトスで万魔殿の制服を着た謎の生徒の活動が記録され始めた。
風紀委員と万魔殿はこれを追跡するが、まるで内通者がいるかのように捜索の裏をかかれ続ける事となる。 - 123二次元好きの匿名さん25/03/04(火) 21:59:48
ノリで連発でss書いてみてたけどそもそも書いて良いのか分からんなと思うしオチも見えんしこの辺で止めようと思うやで
- 124二次元好きの匿名さん25/03/04(火) 23:26:34
- 125二次元好きの匿名さん25/03/04(火) 23:36:51
ワクワクしながら読んでいたので惜しい反面、オチを考える難しさも分かるので強くお願い出来ないぜ……
自分たちのようにならなかった幸せな世界に憎悪マシマシだけど、マコトやイロハ、ヒナを前にしてもその憎悪が向けられるのだろうか - 126二次元好きの匿名さん25/03/04(火) 23:57:09
イブキ繋がりで子ウサギ公園勢と旧アビドス勢の間に物資を融通し合ったりアマチュア無線的なので連絡取り合ったりするような協力関係も出来てたりするかも
物資の受け渡しは子ウサギ公園にシロコが自転車で来たりイブキがバイクとかオフロードバギーでアビドス行ったりする形でやってそう
まあイブキがアビドス行くと95%ぐらいの確率でホシノ先生の超スパルタ戦闘塾に巻き込まれるんだけどね - 127二次元好きの匿名さん25/03/05(水) 08:00:58
保守
- 128二次元好きの匿名さん25/03/05(水) 17:34:39
保守
- 129二次元好きの匿名さん25/03/05(水) 18:07:57
このレスは削除されています
- 130二次元好きの匿名さん25/03/05(水) 18:11:53
飽きるか落ちるか怒られるかまでは書いてみる
──────────────────────
目を開ける。
まばたき、口腔内の確認、周囲の音を聴き鼻から息を吸い込む。頭部に異常なし。
胴体。肺に空気を入れ横隔膜を上下させる。肋骨や内臓に痛みはなし。咽頭と腹部に少しの痛みを感じるが、拘束中に力を入れてしまった部分だ。
最後に手足。動かしながら感覚の確認を末端から行なっていく。昨日まで手首にあった手錠の感覚を除けば手足も正常。
目線を前に向けるとテントの天井。
ポケットから型落ちの折り畳み携帯を取り出して時間を確認すると、午前5時55分。
6時まで寝ていると教官に叩き起こされるので、ギリギリまで睡眠時間を確保するためイブキの体内時計はこの時間で固定されている。
上体を起こし寝具を畳む。先日まで使っていた物と同じだが新品の素材に面食らいつつ畳み終えると、同じタイミングで就寝していたテントの前に誰かが立った。
歩く音でそこから予測される身長体重と装備を予測し、昨日顔合わせした人々の中から対象を絞り込む。
『彼女』が誰で今から何をしようとしているのかを悟り、イブキは内心でほくそ笑んだ。
「こんな昔からやってたんだ」
次の瞬間、勢いよくテントの入口が開き半長靴の音が押し入って来る。
「起床!起床!!ここはRABBIT小隊だ!!客人でも同じテントで寝食を共にするからには──」
と、そこまで言ってその口上は途絶えた。
呆気に取られる彼女…元SRT、RABBIT小隊のポイントマン、RABBIT2•空井サキはテント内で既に起床し敬礼する少女を目に留め固まっている。
イブキは思わず吹き出しそうになるのを堪え、師であり教官である「あちらの空井サキ」にするように返答を返す。
「おはようございますサキ教官!本日からこちらの小隊でお世話になる丹花イブキです!!何卒ご指導ご鞭撻の程よろしくお願い致します!!!」
公園全体に響くような大声と共に「教官」から何度も叩き込まれた敬礼を再生すると、気圧されたサキは少しよろめいたが赤面しつつ姿勢を正し咳払いの後に同じく敬礼を返してくれた。
「初めて貴女から一本取りました…サキ教官」
そう言うとなんとも言えない顔をより真っ赤にしてサキがつぶやく。
「そ、それなんか変な感じだからやめろ…!」
D.Uシラトリ区、子ウサギ公園
イブキ漂着から6日経過 - 131二次元好きの匿名さん25/03/05(水) 20:44:26
何かあった未来の子ウサギ公園では「例の出来事」のせいで身寄りをなくした孤児たちを保護してたりするんだ
炊事洗濯といった日常のお仕事の合間に参謀長先生が勉強を教えてくれるんだ
飯盒炊爨やテントの立て方はサキ教官が厳しく教えてくれる
イブキ先輩は「子どもは苦手なんだ」とか言いつつも孤児たちが風邪ひいたりしたらバイクで街まで行って薬を探したり他所のベースキャンプにいる医者の所まで連れて行ったりしてくれる - 132二次元好きの匿名さん25/03/06(木) 00:11:33
保守
- 133二次元好きの匿名さん25/03/06(木) 00:35:23
突然覚えもないけど理想的な教え子(年上)が出来たサキ教官はかわいいね
- 134二次元好きの匿名さん25/03/06(木) 08:38:48
やっと少しは平和な生活を送れてよかったな。それはそれとしてトラウマやらなんやらで苦しんでほしい。
- 135二次元好きの匿名さん25/03/06(木) 08:59:25
珍しく酔っぱらって泣いてるサキ教官からかつてのRABBIT小隊の話を聞いた事があるので「これが教官のかつての仲間か……」「教官のあの発言の元ネタはこの人か…」とちょっと感慨深くなってるイブキ
- 136二次元好きの匿名さん25/03/06(木) 14:48:45
「以上が丹花イブキ…仮称『RABBIT5』の現状です」
“うん、ありがとうミヤコ”
報告をくれたのはイブキを受け入れてくれたRABBIT小隊の小隊長にしてタンク、コールサインRABBIT1・月雪ミヤコである。
何だか懐かしい罵倒を喰らってから数日間、未来イブキ(仮)の受け入れ先を巡り方々を駆け回ったが決め手がなく無為に時間を過ごしていた。
何せ彼女があの姿になるまでの経緯がまるで分からない。どこで暮らし誰と過ごしてどう生きてきたのか?押しても引いても出てくるのは情報ではなく強烈な敵意のみ。
そんな状態で何処かの学校に預ければどうなるか。
もし他生徒にも敵意を持ってたらトラブルになる。さらに悪い因縁があったら目も当てられない。
ゲヘナはイブキの同時存在がネックになるので真っ先に候補から外された。連邦生徒会は中立性の観点から受け入れを拒否され、シャーレに置いておくのも上記の観点から却下された。
シロコにも打診をしたが「もしもあちらの世界の生き残りだったら顔向けが出来ない」との事で判断を保留し、アビドス・トリニティ・ミレニアム・百鬼夜行など十数ヶ所の学校も受け入れ先として検討したが決め手に欠けた。
そこで浮上したのがイブキ拘束の実行者となったRABBIT小隊である。
彼女達は子ウサギ公園に常駐し、シャーレとも距離が近い位置にいて様子を見に行きやすい。組織として小さくまとまり実力者が入り込んでも大きな政治的影響力を持たず、いざとなれば4人でイブキの安全を確保出来る。因縁の有無は賭けだったが…
“そっか、サキが教官か”
そういう事らしかった。どういう経緯かは知らないが向こうでは良い縁があったらしい。
「ですが折角入った隊員がサキだけに懐いて私達に懐いてくれないというのは不満です」
少し不貞腐れて言うミヤコに苦笑する。
いつまでになるかは分からないが、これ以上ない結果となったようだった。
あの子が本当にイブキなら廃棄弁当を受け入れてくれるかどうかは心配だが、とりあえず今この時は第一歩を踏み出し終える事が出来たという安堵が胸中を満たしていた。 - 137二次元好きの匿名さん25/03/06(木) 20:03:46
ほしゅ
- 138二次元好きの匿名さん25/03/06(木) 21:53:32
未来の難民キャンプめいた状態の子ウサギ公園とこちらの一般社会の子ウサギ公園を比較して、物や人がいない分広く感じるのもいいし、逆に見通しがいいことで狭く感じるのもいい
どこかで『違う』と感じ続けしまうのがいいよね - 139二次元好きの匿名さん25/03/06(木) 22:51:19
謎の白いミレニアム製飛行ドローン
未来世界で放棄された旧ミレニアムサイエンススクール周辺をイブキが探索していると「そこのお嬢さん、全知印のよく効くお薬は要りませんか?」と少々シリアスみに欠ける口調で喋りかけてくるドローン
ジャンク品の機械部品や植物のサンプルを渡すと薬をくれるが、くれる薬というのは「肩こりや関節痛に効くハーブの香りの軟膏」とか「ヒビやあかぎれによく効く薬用ハンドクリーム」とか「ホッと落ち着くハーブティー」といったものばかりである
イブキは「睡眠薬とか精神安定剤は無いのか?」とよく言っているが、大抵「申し訳ありませんが、それは品切れです」と返される - 140二次元好きの匿名さん25/03/07(金) 01:38:30
バッチャ…
- 141二次元好きの匿名さん25/03/07(金) 06:32:41
多分未来イブキは過酷な環境で戦い抜くためにありとあらゆる武器を使いこなせるようになってる
きっとCQCもサキ教官から教えてもらってる
イブキは強くなったのではなく「強くなるしか生きる道がなかった」のである - 142二次元好きの匿名さん25/03/07(金) 10:42:39
たぶんこのイブキ(17)の戦闘力はサオリ級だな。フィジカルギフテッドなホシノやミカ達には劣るし、経験年数的にゲリラ戦術もサオリに劣るけど、真っ向勝負でならサオリに食い下がれると思う
おそらく研ぎ澄まされた精神性と技術で相手に反撃の隙を与えず制圧する戦い方だ
サーベルで四肢を斬り裂くくらいは躊躇が無いし命を奪う事も躊躇わない。平和な世界線だからやらないだけで、相当容赦がないだろう - 143二次元好きの匿名さん25/03/07(金) 10:49:34
むしろ戦いではなく死ぬか殺すかの殺し合いを長いことやってたからなんでもありなら『例外』を除いて勝つことは出来そう。
それに6年経ってるから11の時点で飛び級できてるから熟練度はともかく、戦術や戦略の理解度も高そうではある。
狡猾な手段とかも躊躇いなく使うだろうし - 144二次元好きの匿名さん25/03/07(金) 12:31:59
ゲヘナにテロリストが侵入したとの報がヒナに伝わったのはその日の午前中だった。
どうやら先日の「赤い空」の時にD.U内で何がしかの犯罪を犯した連中が、流れに流れて他自治区でも暴れ回った挙句ゲヘナまで辿り着いたという事らしい。
まともな治安と治安維持機構が存在する他自治区ならいざ知らず、ゲヘナは学区内全域が無法地帯のようなものだ。
木を隠すには森の中、数個の砂粒を砂浜から見つけ出すようなもの。きっと彼らはそう考えたに違いない。
ただ、一つの大きな誤解していたわけだが。
「…私が行く。もし他校区との管轄問題になっても責任が明確な方が面倒じゃなくていい。」
ゲヘナ最強。風紀委員委員長・空崎ヒナ。
彼女は森を吹き飛ばし砂浜の砂を大波で洗い流す。逃げようが隠れようが犯罪者の結末は変わらない。
「よろしいのですかヒナ委員長、今日は万魔殿に行く用事が…」
「構わない。優先度の低い用事だしむしろ行かないで済むならその方がいい。」
風紀委員の生徒の意見を一蹴する。
『キキキッ!イブキがかっこいい女の人を描きたい!と言うのでな、我ら万魔殿を参考にするのもいいが、もっと色んな参考が欲しいとねだって聞かないのだ。そこで心の優しい私は断腸の思いだが貴様を呼んでやる事にした。雑魚よりは格があるからな。そしてなんとこの依頼に応えれば褒美としてイブキの絵を貰える!どうだ!この機会を逃すなどあってはならな(以下略
以上が昨日万魔殿議長羽沼マコトから送られて来た内容だ。イブキにはとても申し訳ないが付き合っている暇がない。
今は目の前の事態を片付けねば面倒事がさらに増えていってしまう。
それは必然ヒナの睡眠時間を減らす。もし自身が倒れればアコやイオリやチナツに自分の仕事を押し付けることとなり、そうするとさらにリカバリが必要になり仕事が山積する。
学生という言葉の意味に思いを馳せ遠い目をしつつ、ふとある人物の件を思い出す。
「そういえばもう一人のイブキの件はどうなったのかしら」
先生の相談から数日。彼女の存在を明かされ万魔殿からそれを隠すという頼みをされ聞き入れた。あれ以降どうなったか聞いておらず、音沙汰もない。
「……今はそれどころじゃないか」
考えるのは面倒だしとりあえずは問題を片付けてから考えよう。
そう思い立ち上がると、扉が勢いよく開け放たれ息せき切った声が部屋に飛び込んで来た。 - 145二次元好きの匿名さん25/03/07(金) 19:18:41
「何か」が起こった後のキヴォトスでもブラックマーケットはしぶとく生き残っている
廃墟探索とかクラフトではもうどうしようもない時は最終手段としてイブキがブラックマーケットまでお使いに行ったりするんだ
ブラックマーケットの少々お行儀の悪い住人に絡まれたとしても鉛玉とサーベルと数多の修羅場を潜り抜けた者特有の眼光で普通に切り抜けてしまうんだイブキは - 146二次元好きの匿名さん25/03/07(金) 20:44:42
「先生頭抱えてたね〜」
ロープをカラビナに通しリペリングの準備をしていると、ヘッドホンを通しRABBIT3・風倉モエの半笑いの声が聞こえて来た。
それにサキ教官が答える。
「事件の発生元が連邦生徒会のお膝元だ。連中としては解決に手を貸したっていう実績が欲しいんだろ。イブキを隠したかった先生は少しかわいそうだけどな。」
「げ、ゲヘナで作戦なんて大丈夫なんでしょうか…」
不安そうな声はRABBIT4・ミユのもの。しかしこの声はヘッドホンと同時に真横から聞こえ思わず身を竦める。隣に居るのに気付かなかった。
「問題ありません。私たちは私たちの任務を遂行するまでです。」
力強い声はRABBIT1・月雪ミヤコ小隊長。
「モエ、ゲヘナの風紀委員に連絡を取りましたか?」
「あ〜、さっきシャーレ名義で作戦参加するって連絡取ったら慌ててたよ」
「…いいんですかそれ」
「いーんじゃない?知んないけど」
RABBIT小隊はシャーレの私兵ではなく誇り高いSRTの特殊部隊だと教官は誇らしげに語っていた。厳格な組織を想像していたがまるで違う。自由で柔軟、作戦遂行のため使える物は何でも使うという空気が感じられる。
「降下後は散開。RABBIT4は狙撃ポイントに移動、RABBIT3は上空に待機してサポートを、現地は私とRABBIT2、そして…行けますね?」
確認をしてくる小隊長。受け入れにあたって彼女達に詳細ではないがイブキの素性は明かしてある。そんなイブキを快く受け入れてくれた事に感謝を抱き力強く応える。
「いつでも」
「了解です『RABBIT5』。ヘリからの降下は初だそうですが、ウサギの眼にならないように」
小隊長がヘリの縁を蹴り地上へ降下して行く。
「上官ぶってるなあいつ。つまり『怖くて泣くなら置いてくぞ』ってことだ」
意味を解しかねていると降下準備を終えた教官が笑いながら教えてくれた。
確かにヘリからの降下は初めてだが降下訓練は積んでいる。意外と小隊長はいじわるだ。
教官に続きヘリの縁に立つ。
イブキにとって6年前に喪われた場所。遥か過去の記憶に沈んだ世界。
それがあの日のままの姿で眼下一面に広がっている。
不快感と吐き気が上ってくるが、気合いで押さえ降下準備を終える。吐きでもしたら文字通り下にいる教官の顔に泥を塗る。
離れる脚、訓練とは異なる本物の浮遊感。
「RABBIT5、降下!」 - 147二次元好きの匿名さん25/03/08(土) 00:49:52
保守
- 148二次元好きの匿名さん25/03/08(土) 08:26:08
ブラックマーケットはなんかどの世界でもしぶとく生き残ってそうな安心感がある
- 149二次元好きの匿名さん25/03/08(土) 09:49:43
連邦生徒会からシャーレを経由し出動依頼を受けたRABBIT小隊とゲヘナ学園風紀委員会の混成部隊は、洋館に立て篭もるテロリスト集団を早々に追い詰めていった。
何せ味方側は戦闘のエキスパート集団であり空崎ヒナまでも出張って来ている。テロリストとは名ばかりの烏合の衆でしかない武装集団に敗北する要素が一つとして存在しない。
RABBIT小隊の面々はゲヘナ風紀委員の統率された動きと無駄のない組織運用に舌を巻く。
作戦に無駄はなくRABBIT小隊を適材適所に組み込んだ上で指揮統括する天雨アコの実力が窺い知れる。
時折発生する負傷者は後方に下がってすぐ前線に復帰する。施された治療は的確で「戦闘可能領域まで人体を補助する処置」としか言いようがなく、火宮チナツという救護要員が如何に医療に精通しているか実感する。
銀鏡イオリは数人まとまった敵を瞬時に叩き伏せ、テロリスト集団が占拠する建物の一部屋一部屋に殴り込み確実に勢力を浸透させて行く暴風雨だ。その圧倒的な戦闘力には驚嘆する。
後方でアコと共に待機するヒナはそれを静かに見つめる。部下の実力を疑わず佇む風紀の象徴としての姿こそ、ゲヘナ風紀委員が組織として統率を保っている一番の要因だろう。
逆に風紀委員の生徒達はRABBIT小隊の小回りの効く動きに目を見張る。
派手で賑やかに建物を突き進むイオリ達がいる本館とは離れた別棟を担当するRABBIT小隊は、ハンドサインによる意思疎通と必要最小限の攻撃によって各部屋を制圧して行く。
閃光手榴弾を投げ込み部屋に音もなく忍び込むと潜んでいた敵を一人残さず制圧、風紀委員に捕虜の拘束を任せすぐに次の部屋へ。
イオリが担当する敵主力が居た本館から逃げ出す敵は、どこからともなく飛んで来た弾丸によって撃ち倒される。屋上に居た敵スナイパーも作戦開始時にとっくに撃破されていた。
そもそも敵側の通信機器が部隊突入前から一切機能していなかった。電波をジャックされたのか大音響で民間放送の子供番組の音声が流れて来て耳を潰されテロリスト側はろくな連携も取れず壊滅して行く。
そして何より目を引くのが砂漠などを走る時に装着するゴーグルとボロボロのマントを身に付け、その下に万魔殿の制服に酷似した衣装を纏ったゲヘナの特徴を持つ金髪の生徒だった。 - 150二次元好きの匿名さん25/03/08(土) 10:03:41
目立つだろうなあ、一人だけ装備や雰囲気に統一感ないだろうし
でも基礎叩き込まれているから連携とか除けば澱みなさそう - 151二次元好きの匿名さん25/03/08(土) 10:11:33
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- 152二次元好きの匿名さん25/03/08(土) 10:45:23
「…逆に目立ってませんかこれ?」
『先生の意向に最大限配慮した結果です』
イブキの質問に対しての小隊長の答えはもっともだった。
受け入れ直後に揃いの戦闘服など用意出来るわけもなく、かといって他の服をすぐ用意出来るような経済的余裕は今のRABBIT小隊には無い。ならば本人が最も慣れ親しむ戦闘服で、ということだ。
着慣れた制服に旧アビドス砂漠を行く時の極地用ゴーグルとマントを羽織った姿は着込んで逆に目立っているが仕方ない。もし顔でも晒そうものならどうなるかは火を見るより明らかで、先生が必死に回避しようとしていたイブキの同時存在が露見し騒ぎになってしまう。それだけで済むなら御の字でそれ以上の何かが起きてもおかしくない。
『おいウサギ小隊!こっちは制圧完了だ!そっちはどうだ?』
「一階と二階の敵は制圧しましたイオリ先……地下にこれから向かいます」
通信機器からイオリの声が聴こえ思わず返答を返すが、当時の呼び方が出そうになる。
『ああ、お前あのゲヘナっぽい奴か。私とも会ったことがあるのか?』
「……ッ」
フラッシュバック。
多くはないが遊んでもらった事がある。頭を撫でてもらった事もある。再び不快感と嘔吐感が迫り上がってくる。
『ん?おいどうしたゲヘナっ子?』
「何でもない。手傷を受けてたから今応急処置に回した。本館制圧了解。」
『そ、そうか?』
こちらの不調を感じて教官が代わりに応答する。心配そうな小隊長に目で大丈夫だと合図を送り、迫り上がって来たものを無理やり飲み込んだ。
大丈夫、わたしは大丈夫───
「地下の制圧、私が先行していいですか」
「大丈夫なのですか?」
小隊長の言葉に頷く。敵戦力は殆ど壊滅し残っているのはほんの数人だろう。それを一掃するなんて今のイブキなら簡単だ。
「…入団試験のようなものですね」
「おお!いいんじゃないか?先輩達みたいにはいかないけど丁度いいだろ」
「ただし先ほどの事もありますから先行するにあたって最初に私とRABBIT2が先に降ります。そこからを頼めますか?」
そういうものがあるのかは知らないが、教官の声が弾み小隊長の笑顔がちょっと怖い。しかし任されたなら応えてみせる。
「はい!」
──答えるべきではなかった。
この世界に一度憎悪を抱いた時点で全てを拒絶すべきだった。
失敗した世界の人間は、正しい世界では異物なのだから。 - 153二次元好きの匿名さん25/03/08(土) 10:51:11
ふ、不穏……
馴染みかけたところで弾かれるのは反動でつらそう - 154二次元好きの匿名さん25/03/08(土) 15:41:09
「動かないでくださいRABBIT5」
まるで排除対象に向けるような小隊長の険しい声と鋭い視線。彼女とサキ教官の銃口がこちらを向いている
「え…?」
頭が混乱する。なぜ?なぜ?なぜ?私はただ敵を排除した『だけ』なのに。
足下に広がる血溜まり、咽せ返るような鉄臭さ。地面に転がるテロリスト達の身体。
奥でフルフェイスヘルメットを被ったテロリストの少女達が血まみれで折り重なり倒れている。ただし当然死んではいない。
サーベルは使ったけど太い動脈は避けたし小隊長の言いつけ通り一人も命を奪っていない。
ただ血を多く失っているし内臓へのダメージも強めに与えたから早めの救護は必要だろう。先程見た医療担当者の技を頼るのが良いかもしれない。
「なんだこれは…!なんでこんな事をしたイブキ!!」
教官の怒声が耳朶を打ち、私にさらなる混乱を与える。
「えっ…だ、だって命令通り誰も殺してませんよ?」
そうだ、誰も殺していない。あっ、もしかして「斬り取る」方が良かった?それとももう少し「障りが残る」ようにすれば良かったかな。加減が難しいんだけどな。
教官はいつも言っていた。
〔戦場では殺される前に殺せ、敵は命乞いを聞いてはくれない〕
今回の作戦はまるで想像していたのと違っていた。
隊の空気もそうだが制圧手順も見知った教官のやり方よりかなり優しい方だと思った。誰も殺さないし気絶させて放っておく。呼吸の有無を確認しないしとどめも刺さない。だから先行を任された時は少しだけ張り切って褒めてもらおうと思った。過去の教官に彼女が作り上げた『兵士』がどうなったか、誇らしく思ってもらおうと考えた。
だからいつものやり方でやっつけたのに。
「お前は一体何なんだ!!」
化け物を守るような教官の視線と怒気を孕んだ声に目の前が霞んで上手く呼吸が出来ない。なんで?教官は何を言っているの?なんで私をあんな目で見てくるの?
目の前の風景が歪んで溶け出す。これは先日のような異変ではなく意識が落ちる時の兆候だ。訓練で教官の踵が意識を削った時によく見た風景。
『あーあ》
前のめりに倒れて意識を手放す直前、幼い笑い声が聴こえた。
ブラックアウトする視界の端。真っ黒で顔のない6年前の「丹花イブキ」がこちらを見て影を歪ませ笑っていた。 - 155二次元好きの匿名さん25/03/08(土) 15:47:16
死を見過ぎたか…
- 156二次元好きの匿名さん25/03/08(土) 17:03:12
ゲヘナでの出来事は緘口令が敷かれたが、熱心なクロノスの記者によって事実が暴かれ大々的に報道された。
曰く、ゲヘナにテロリスト集団が侵入。シャーレの極秘私兵部隊がこの討伐に参加して戦果を上げたが隊員の一人が暴走。なんとヘイローの守りをものともしない刃物でテロリストを3枚におろして現場は阿鼻叫喚!
当たらずとも遠からずなそれはキヴォトスの耳目を集める筈だった。
しかしクロノス報道部の日頃の面白おかしい誇大報道や陰謀論や大誤報に親しむ人々は、今回もまたゴシップとしてこれに接した。
ゲヘナ風紀委員及びRABBIT小隊も好奇の目に晒されるどころか少しばかり事情を知る人々から「大変だったね」と気を遣われる始末であった。
しかし、報道の後半は殆どが真実である事は本人達が一番よく知っている。
時は遡り事件当日。
報せに接して先生は錯乱してタブレットと会話を始め、ヒナは帰還後の始末書の山との格闘を想像して頭を抱える。RABBIT小隊は現場を風紀委員に任せ、抗議の声を上げるイオリやアコを躱しつつ気絶したイブキを保護して帰途に就いた。
たった一夜で凄まじい規模の外交問題を起こしてしまったが、小隊の面々はそれどころではなかった。
「こいつはなんでこうなって、私は一体何を教えたんだ?」
乗り込んだヘリの上、ストレッチャーに載せられたイブキを見つめるサキの疲れ切った呟きに誰も何も返せない。
一体このイブキの世界で何があったのか、どう生きればあの血の海の中に平然とした顔で立って居られるのか。
なぜサキは兵士ではなく恐ろしい兵器を作り出すに至ったのか。
「今考えても仕方ありません」
ミヤコの同じく憔悴した声。彼女達は戦いの事を多く学んだがあんな凄惨な光景を見るという経験はまだしていなかった。
「今は帰って、寝て、そして明日話しましょう。そして彼女に全部聞くんです」
日は完全に沈み地上には光が満ちる。
ヘリがゲヘナ上空を抜ける。次の校区の光が眼下に広がり再び視界一杯に光の濁流が迸る。
「私達の世界はまだ続いて行くんですから」 - 157二次元好きの匿名さん25/03/08(土) 17:17:06
イブキの中では『教官』は出会った時から『教官』で、自分のように激変したなんて思いもしなかったんだなって
教えを受けて慕っていた『教官』に敵意を向けられたイブキも、逆に新入りの常軌を逸した暴走を目の当たりにしたRABBIT小隊もかわいそ…… - 158二次元好きの匿名さん25/03/08(土) 20:19:53
ベースキャンプである子ウサギ公園を出てしばらく歩くと、傾いた廃ビル群とその中心に鎮座する巨大な大穴を認めることが出来る。
かつてそこには駅があり、その深度地下において炸裂したサーモバリック弾頭が甚大な被害と数え切れない犠牲者を生み出した後に出来た消えない爪痕である。
空井サキは大穴の淵を歩きつつ、貴重品である酒瓶の蓋を開けてその中に酒を流し入れる。
「また一人いなくなったよ、ミヤコ」
大穴の中心で塵も残さず消えたかつての戦友に告げる。
「あいつには私の全部をやったんだ。技術も心構えも覚悟も。…まあ結局死んじゃったんだけどな。」
空になった酒瓶を投げ入れる。
どこかに当たって、割れて弾けて消える音。まるで死んでいったイブキみたいだ。
また見送った。また救えなかった。ポイントマンとして前に出るどころか卑怯にも後ろで眺めて若者の死を見送る。
「あいつ、私なんかを教官って呼んでくれてたんだ」
死神。
そう、本来はそう呼ぶのが相応しい。
「なにが教官だ…」
私に相応しくない呼び方だ。お前なんかがなにがRABBIT2だ。なにが誇り高いSRTだ。ダムのように溜まっていた感情が荒れ狂い目から水滴となって溢れ落ちる。
「なにが教官だ!!空井サキ!!!!なにがッ…!!!」
ごめんミヤコ、ごめんモエ、ごめんミユ、ごめんなさいごめんなさい!!
「ごめんなさい!ごめんなさい先生…ッ!!!」
もう目の前は歪んでろくに見えはしない。いっそこのまま見えなくなって死んで行けたらどれだけいいか。
─────────────
「あの子ほんとに不器用なとこ貴女にそっくりだよ」
サキの姿を物陰から見つつ現RABBIT小隊参謀長はつぶやく。
車椅子の音もつぶやく声も聴こえないようにひそやかに、空に向かって問い掛ける。
「そう思うでしょ、ナギちゃん?」 - 159二次元好きの匿名さん25/03/08(土) 20:55:39
これは・・・イブキ17歳の世界線ではナギサがお亡くなりになってる?
- 160二次元好きの匿名さん25/03/08(土) 21:39:32
追い詰められているときのナギちゃんも自分の悲鳴は飲み込んで役割に準じるからね
学園があらかた消えるような騒動の中でオタッシャしてもおかしくない - 161二次元好きの匿名さん25/03/09(日) 00:03:52
「キキキッ!それで風紀委員の連中が何かやらかしたというのは本当か?」
ゲヘナ学園万魔殿議長室。
議長席でふんぞりかえるのは万魔殿議長•羽沼マコト。今日も威厳ある制服に身を包み世界を睥睨するような不敵な視線を巡らせている。
「うふふ、風紀委員に忍ばせたスパイからの報告だから間違いはないわよ」
答えたのは万魔殿所属情報部長•京極サツキ。妖艶な姿に甘い声から紡がれるのはそれに反して物騒な文言だった。
「キキキ!ご苦労だったなサツキ。お前にも褒美をやらねばならないな」
「いいわよそんなの、私はやるべき事をやっただけだもの」
まるで悪の組織の幹部達のような会話。彼女達を知らない人々が見ればあまりの威圧感に近寄り難く見えるだろう。
しかしそれを見つめる万魔殿所属の戦車長•棗イロハは呆れて物も言えないというような視線を向ける。
「スパイというか、サツキ先輩の友達ですよねソレ。お茶飲みに行ってたまたま聞いたって言ってたじゃないですか。それにマコト先輩もその格好で言っても威厳もクソも無いのでは」
「あっはは!イロハちゃん辛辣〜!」
イロハの言葉に万魔殿書記•元宮チアキの笑いが入る。
「なんだとイロハ!いいか?このマコト様はだな──」
「マコトせんぱ〜い、動いたらめっ!だよ〜」
「おーおー!ごめんなぁイブキ!ほらほら私を描くといい!イブキの絵のモデルになれるなら本望だ!!それで風紀委員はどうなんだ話すだけ話せサツキ!!今から私はイブキの絵にならねばならないから動けん!!イロハ!どうだこのポーズは!これならキマってるか!?」
弛緩した空気がさらに垂れ下がりもはや威厳も何もあったものではない。
才媛のガワだけ纏った万魔殿議長は現在、溺愛する後輩であるところの丹花イブキの絵のモデルを務めている。
椅子に足を掛けスカート生地が破れないかと心配になるポーズをキメつつ部下達から風紀委員の失態を聞く姿勢をとっている現状だ。
おそらくこんな日々がこの人の卒業まで続いて行くのだろうと思うと頭が痛くなるイロハである。
「はあ……それでサツキ先輩、どうなのでしょうか」
深く考えたら負けだろうなと思い直し、サツキのスパイ改め友人経由の風紀委員の話を聞こうと向き直る。
マコトを相手にするよりは何倍も有意義な時間だと思い意識をマコトから外したのと、マコトのスカート生地が破れる音がしたのは同時だった。 - 162二次元好きの匿名さん25/03/09(日) 00:17:59
サツキの友人の情報はクロノスで報道された情報とほぼ相違のないものだった。
あそこってちゃんとした報道してたんだな…と妙な感慨を得る。
「それでそれで?そのツノ付きの金髪ちゃんは何者なの?」
チアキが記事に起こすためのメモを取りながら先を促す。
「ゲヘナ生らしき凶悪な生徒を擁する独立特殊部隊、ですか。うちの組織よりよっぽどインパクトがありますね」
破れたスカートを脱ぎちょっと涙目のマコトと慰めるイブキ、チクチクとスカートを縫いつつ話をするサツキを横目にイロハは率直な意見を述べる。
もういっそシャーレに転職とか出来ないかな。
「それがね、実はその子ったら動画撮ってたみたいでね」
「ほう」
ただ聞くのと映像を見るのとでは情報量が段違いだ。それにイロハもなんだかんだで人並みにミーハーな面はある。噂話の真実を見れるなら是非見てみたい。
サツキがスマホを操作して動画を表示する。
「ほらこれ。私も見せてもらったんだけどすっごいブレブレなの!」
「あははおもしろーい!」
「……」
つられて爆笑するサツキとチアキ。
グッダグダだ。本当にここはゲヘナの全てを司る権威の場なのだろうか。
映像はたったの15秒。ある生徒が凄まじい速さで敵を撃ち倒して行くのが写っている。
「手練ですね…」
先生の指揮下に居る時に色んな生徒と共に戦ったが、ここまでの技量を持つ生徒がどれだけ居ただろうか。ヒナはこれ以上だが、それに迫る勢いのようにも見える。
動きに見惚れているとマコトが横入りスマホの画面を覗き込む。しかも無言で食い入るように。
「マコト先輩?」
15秒。巻き戻しもう一度。そしてまたもう一周。なんだ?どうしたんだこの人は?
不審に思いふと目を移す。するとなんとイブキが放って置かれて頬を膨らませているではないか。
マコト先輩がイブキを放置!?
あまりの事態に驚いていると、マコトの口からさらに驚くべき言葉が飛び出した。
「なんでイブキがもう一人いるんだ?」 - 163二次元好きの匿名さん25/03/09(日) 00:37:19
ついに1のシーンを回収かあ……
- 164二次元好きの匿名さん25/03/09(日) 09:09:44
キヴォトスって壊滅ルートは沢山あるのに
全滅ルートは少ないよね - 165二次元好きの匿名さん25/03/09(日) 12:16:24
ブレブレの動画で確信するのは凄すぎる
- 166二次元好きの匿名さん25/03/09(日) 16:38:26
- 167二次元好きの匿名さん25/03/09(日) 17:47:05
目を開ける。
まばたき、口腔内の確認、周囲の音を聴き鼻から息を吸い込む。動作全てが重く感じる。
胴体。肺に空気を入れ横隔膜を上下させる。肋骨や内臓に痛みはなし。あの程度の戦闘で負う手傷などない。だけど胸の辺りがずっと痛い。
最後に手足。動かしながら感覚の確認を末端から行なっていく。久しぶりに感じた人体を破壊する感覚を思い出す。
なにも「異常」はない。
目線を前に向けるとテントの天井。
ポケットから型落ちの折り畳み携帯を取り出して時間を確認すると、午前5時55分。
体内時計は正確。身を起こし寝具を畳むが今日はテントに教官が訪ねてくる気配は無い。おそらく昨日の事を気にしているのだろうとイブキは気付く。自分の親しんだ教官なら自身や周囲に何があろうと時間を厳守しイブキを叩き起こしに来ていたが、この世界の空井サキは私を気遣いやって来ない。
深呼吸。昨日までの事を反芻する。
突然やって来た過去の世界とその世界に感じた怒りや理不尽さ。飽きるほど何度も聞いた教官とその仲間達に迎えられ感じた充実感と幸福感。そして何もかもを無遠慮にぶち壊した自分の幼さと身勝手さ。
「……」
ナイフを取り出して腕に押し当てる。浅くゆっくり引くと一筋血が溢れて地面に落ちた。
脳内に思い浮かべるのは幼くバカで愚かなあの頃の自分。喉元を切り裂くとイブキは痛がり血泡を吐いて死に至る。
「この失敗を忘れない」痛みと共に記憶する。
「もう間違ったりしない」昨日羽織ったマントを少し破り決意と共に腕に巻く。
少ない荷物をまとめてテントを少し開けると、ミユが欠伸をしつつ立哨を行っているのが見えた。少し隙を突けばきっと簡単に殺せてしまうザル警備。
公園もここ数日の様子と違い静まり返っている。昨日の惨劇が響いたのかもしれない。
「…ごめんなさい教官」
あなたの優しい過去に私みたいな化け物が土足で踏み入ってしまって。
タイミングを見て音を立てずに駆け出し公園内を風のように越え、公道に接する場所まで辿り着く。一息つくとイブキは振り返って公園を眺めた。
ほんの数日だったけど、夢にまで見たウサギ達の仲間になることができた。だけどここからは本来の居場所に帰るため動かないといけない。
それがきっと一番いい。
「ありがとうございました」
その朝群れから逸れた一匹のウサギは、シラトリ区の入り組んだ小径に入り込み姿を消した。 - 168二次元好きの匿名さん25/03/09(日) 22:06:36
ここのイブキがマコトに会ったら泣きながらずっと謝り続けるんだよね…そんなイブキの姿を見て優しく抱きしめるマコト議長……
- 169二次元好きの匿名さん25/03/09(日) 22:15:13
シロコとプラナが残ってただろ
- 170二次元好きの匿名さん25/03/09(日) 23:58:32
色んな感情を抱きながらも「自分が異物」と結論を出して去るの、物分かりはいいけど寂しいね
まあシャーレもそのまま放置するわけにはいかないし万魔殿も出張ってきそうなので混迷しそうだが - 171二次元好きの匿名さん25/03/10(月) 00:07:58
こうなると今回ばかりはマコト様がいっちゃん頼りになるな
- 172二次元好きの匿名さん25/03/10(月) 08:16:09
”先生は錯乱してタブレットと会話を始め”
アロナもどう答えればいいのか困るだろうな - 173二次元好きの匿名さん25/03/10(月) 09:31:50
「先生は最近忙しいようですねミカさん」
翼を持つ少女が言う。カップに這わす指すら芸術品のような美しさを持つ彼女だが、この場にはもう二人ほどその美しさを脅かす人間がいた。
「そうなのナギちゃん!昨日会いに行ったら居なくてさ。つまんないからシャーレのコンビニで爆買いしちゃった⭐︎ ほら、セイアちゃんが見てたやつ」
桃色の髪を持つ少女は天使のような笑顔を華咲かせながら似つかわしくない自身の行為を懺悔すると、対面に座る小柄な少女に話を向ける。
「ダンボールが山積みになっているから何かと思ったよ。きっと店の人も困っただろうに。」
諫言ではあるがその声は弾んでおり、可憐な容姿に反して好奇心旺盛な彼女が『今度やってみよう』と考えていることが他の二人には透けて見えた。
トリニティ総合学園・ティーパーティー。
桐藤ナギサ、聖園ミカ、百合園セイアから構成されるトリニティ各派閥による三頭政治の集会の名称である。
ただし正確に言えばその状況は瓦解している。
先頃のトリニティ全体を巻き込んだ騒動の処理においてパテル分派筆頭であるミカがその権限を取り上げられ、後任候補の選定を行うことが決定された。
しかし後任の選出までは権限が維持されるため、未だに三巨頭による「お茶会」は継続して行われている。
「報告によるとゲヘナの動きが活発になっているようです。先生が目をかけている生徒達が問題を起こし、ゲヘナの生徒会である万魔殿がこれの対応に動いているとか。」
「なにそれ…ゲヘナが絡んでるの?じゃあ私達も──」
「ミカ。続けてくれナギサ。」
ナギサが掴んでいる情報を話す。ゲヘナの名を出した途端に一瞬で剣呑さを増すミカの声と、それを諌め本題に戻すセイア。
このバランスこそ三人がいかに噛み合う関係かを示している。
「それによって先生も最近はゲヘナに掛かりきり。こちらの用事が通らず私も少し困っています。」
紅茶を二度三度と啜るナギサ。
ああこれは、実は先生に会えなくて不貞腐れているな?と思うミカとセイアだが友の名誉のため口には出さない。
「そこで提案なのですが。」
「先生に『もっと私に構って』って言いに行っちゃう?」
「ミカ!!」
否、あっさり言った。
決めるべきタイミングを決して逃さないパテル分派の長(暫定)の勇姿がそこにはあった。 - 174二次元好きの匿名さん25/03/10(月) 10:50:58
咽せる喉を今一度潤すと、ナギサは仕切り直し提案の前に次の情報を開示する。
「問題を起こした彼女達の名は『RABBIT小隊』。旧SRT特殊学園の生き残りにして現存する唯一の特殊部隊です。」
「SRT…あれ?旧?晄輪大祭に参加して最下位になってなかったっけ?」
それに対して記憶力の良さを見せるミカ。
「事情は分かりませんが参加は認められていたようですね。空が赤く染まった騒動の時も先生指揮下の最前線で戦闘を行ったとか。」
その後に続く彼女達の状況を聞くとたしかに「目をかけている」という表現がしっくりくる。
シャーレ直近の子ウサギ公園で野営をし、先生の提案でコンビニから配給を受け取ったり差し入れを貰ったり、ある時は先生の危機を救ったり。かいつまんで聞くと何やら特別扱いされている彼女達に胸中がざわつくが、ナギサは構わず先を続ける。
「その彼女達の部隊に新しく入った隊員がゲヘナで『粗相』をしたようです。そしてその翌日にはなんと公園から逃げ出し姿を消した。」
大きな失点。自分達が言えた義理ではないが一転して組織としてまとまっていない印象を受ける。
「本来独立している筈のSRTがシャーレと連邦生徒会の名代で他校の戦闘に参加。ターゲットは各校を荒らした犯罪者。余所者のSRT…しかもゲヘナ出身と思われる新入りが風紀委員の管轄する現場で下手人に事情聴取も困難な死傷手前の深傷を負わる。SRTは制止を振り切り拠点に帰還。新人は事態を掻き乱した挙句翌日に姿を消す。…何らかの外交問題は避けられない。しかも現状責任の所在が何処にあるのかも分からず収拾がつかない。」
セイアが一息に状況を整理するが穏便に収まる要素が見当たらない。むしろ事を荒立てに行ったとしか思えない。 - 175二次元好きの匿名さん25/03/10(月) 10:51:15
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- 176二次元好きの匿名さん25/03/10(月) 10:55:39
「わあ〜…すごい事するねぇ」
ミカが呑気に言う。それをスルーする二人は貴女が(君が)それを言うのはどうなのかと思わなくもないが、言い出せば丸く収まった過去を掘り返すことになる。
過去は変えられないし、もう三人は過去を未来に活かすために歩を進めている。
……まあ後でお説教をしなければとも思うが。
「それで?そのウサギさんを私達がどうするの?」
そんなミカだがやはり勘所を外さない。
ナギサは微笑むと先ほど言いかけた提案を口にする。
「RABBIT小隊に裏側から支援の手を回し問題を解決させ、シャーレの先生と連邦生徒会に恩を売ります」
「…少し投機的じゃないか?わざわざ首を突っ込まなくても待っていれば事は収まるだろう?」
今この状況で動くのは得策ではないとナギサの提案にセイアの冷静な指摘が飛ぶが、ナギサはそれに対して反論する。
「今だからこそです。これを成功させればより先生とのパイプが太くなり、もしも今後SRTが再興すればトリニティにとって心強い『盾』が生まれる。」
「それはそうだが…」
何かナギサが暴走しかけている気がする。セイアの心配が杞憂ならいいのだがこういう流れはとても良くない。こういう時に予知がまだ生きていればとつくづくセイアは思う。
そして気付く。
そういえばナギサは先生と出掛ける予定を先々週嬉しそうに話していた。しかし記憶する限り彼女はあれからトリニティから出ていない筈だし先生と会ったという話をした記憶はない。そもそも先生が直近でトリニティを訪れたと聞いた覚えがない。
まさかと思うが先生会いたさに歯止めが掛かっていない?
……いやまさか。あのナギサともあろう人が。トリニティフィリウス分派の長ともあろう才媛が。
「とりあえずやるとして表立って動くのは良くないだろうナギサ。傷を極力負わず手を引ける安全マージンを確保しなければただの無謀だ。」
「そうだね、まずはどうするのナギちゃん?」
とりあえずミカもセイアの調子に乗ってくれる。一人の極端な提案に二人が各々の立場から冷静な意見を返す。三頭政治の最も優れた点と言えるだろう。
「ミカさん」
「ん?」
ナギサの唇が動く。
「RABBIT小隊のメンバーになってくれませんか?」 - 177二次元好きの匿名さん25/03/10(月) 11:13:29
繋がらない世界のように思わせておいて何故かどんどん未来イブキ世界に近い配置になってきたな…
未来イブキが転移してきたことでテクストが変わったか? - 178二次元好きの匿名さん25/03/10(月) 13:26:57
ミカ、参戦!
というか顔ぶりだけじゃなくて、何気に各校が対立する火種が出来つつあるよね……
未来イブキ世界の流れをなぞらされそうになっているのかもしれない。やったねイブキ、自論が正解になるよ! - 179二次元好きの匿名さん25/03/10(月) 18:43:28
世界の修正力的な何かだろうかね…
- 180二次元好きの匿名さん25/03/10(月) 18:59:56
そろそろ次スレも見えてきたな
- 181二次元好きの匿名さん25/03/10(月) 23:13:43
寝る前に保守
- 182二次元好きの匿名さん25/03/11(火) 02:12:15
- 183二次元好きの匿名さん25/03/11(火) 02:22:46
- 184二次元好きの匿名さん25/03/11(火) 04:27:12
ナイスSS
- 185二次元好きの匿名さん25/03/11(火) 07:40:30
ゲヘナ学園風紀委員会•風紀委員長執務室
「お待たせしました先生」
“やあアコ”
シャーレの先生を出迎えたのはゲヘナ学園風紀委員行政官•天雨アコ。
ヒナの右腕で情報処理プロ。服装と性格に少々癖があるが非常に優秀な生徒である。
「アポを取られるのは結構です。ですけど委員長に頼み込んで予定をねじ込んでくるなんて何を考えてるんですか。私達も先の一件で上へ下へと駆け回っているんですよ?今日はまだしも委員長との協議なんて捩じ込まれた日には事前レクをする時間も作らないといけないし本当に困ります!ただでさえ多忙で(以下略」
つまり『超忙しいから配慮してくれ』と彼女は言っている。
各方面から上がってくる情報を取り纏めるためアコは日々多忙だ。本当なら今すぐに自身の領分を果たすため職務に戻りたいところだろう。
しかしそんな時にキヴォトスの重鎮とも言える人間の電撃来訪。他の幹部が出払ってる以上役職上無碍には出来ない。
申し訳ない事をしてしまった。お詫びに今度暇な時にもっと構ってあげよう。
“ごめんね、でも今日はどうしてもアコに会いたいって思って”
途端黙り込み急になりをひそめるアコの悪態。どうしたのだろうか。
「そ、そういう事をどうせ委員長だけじゃなく色んな子に言っているんでしょうけど私は騙されませんから」
当然だが言う。これまでもこれからも言う。
生徒達に向き合うにあたり正面から誠実に挑むことが大事だと常に思っているし、生徒を悪意を持って騙すなんてとんでもない。むしろ生徒がこちらに向き合ってくれるなら騙されても貶されても構わない気構えでいる。
───あの子とはまだ向き合ってあげる事が出来ていないけど
ところでアコの顔がやたら赤い。体調は大丈夫だろうか。
「この唐変木!」
いつもの調子で叱られたので一安心し、早速だが本題に入る。
“それでその後どうなってるかな”
「主語を入れて下さい主語を。…一昨日から捕捉してますよ。当然ながら書類も『存在しない』ようにしてます。」
“ありがとう、足跡が分かるだけでも安心出来るよ”
「万魔殿にバレたらどうなる事か…」
手渡された分厚い報告書を確認する。
血と、硝煙と、もはや「生徒」の行状と呼んでいいのか分からない行動の数々の記録。さらにページを捲ると写真が一枚。
そこには先日まで笑顔でウサギ達の巣で暮らしていた少女──丹花イブキの姿があった。 - 186二次元好きの匿名さん25/03/11(火) 10:28:32
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- 187二次元好きの匿名さん25/03/11(火) 10:29:50
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- 188二次元好きの匿名さん25/03/11(火) 10:37:56
「それがあのイブキちゃんの行き着いた姿とか信じたくないんですけど、ただの人違いとかではないのですか?」
アコが半信半疑という風につぶやく。ここにも新たに事情を明かされた者が一人。
“確証は無いんだ。でも『有識者』が言うにはこの時間軸の誰かではないってさ”
「どんな有識者ですかそれ」
“……”
あの方舟を先に脱出したアコは『彼女』の生存を知らない。
正確に言えば全員退去した後に退去した『彼女』は、ごく一部の生徒達を除きその存在自体を捕捉できない筈だ。ドン底を這い出てこれからきっと幸せになって行く彼女には、そうであってほしい。
資料をさらに捲る。
ブラックマーケット、カイザーとの何らかの取引現場、不良や荒くれ者を血祭りに上げる姿。
彼女はもしかしてもう誰かを殺めてしまっただろうか。向こうの世界ならいざ知らず、こちらの世界においては救えない存在に自らを追いやってしまっただろうか。
“私も正直信じたくはないね。…これは預かっても?“
「存在しない資料ですから」
ありがたく資料を鞄に詰めると席を立つ。
“アコ、ゲヘナで事情を知るのは君とヒナだけだ。虫のいいお願いだけど──“
「私達は何食わぬ顔で彼女を追い、場合によっては万魔殿とも協力をし、その上で彼女が上手く難を逃れるように仕向ける…ですか。委員長はこれを一人で?」
“そ、そうする前に先日の一件があってさ…“
非難する目に思わずたじろぎ答えるとアコは溜息と共に不満を吐き出し、決意したような目でこちらを見る。
「先生と委員長が困るのは本意ではありません。ですからお二人を助けますとも、私は風紀委員の行政官で、ヒナ委員長の右腕ですから」
用事が終わり風紀委員の建物を出る。
去り際にアコから昼食を一緒にどうかとの誘いもあったが、あの日から必死に逸れた仲間を探しているRABBIT小隊の面々に急いでこの情報を持って帰らねばならない。
丁重に辞退し用意された車に乗り込むと、風紀委員の生徒が運転する車はエンジンを吹かしながら駅に向かって滑るように走り出す。
車窓から見える空の向こう、その遥か先に眠る「彼」を幻視する。
引き受けたからには「役目」を絶対に放り出さない
イブキ漂着から15日目の昼。
空には薄雲が掛かり始め、午後には雷雨が来ると車載ラジオが告げていた。 - 189二次元好きの匿名さん25/03/11(火) 14:27:53
- 190二次元好きの匿名さん25/03/11(火) 16:51:47
わかる
- 191二次元好きの匿名さん25/03/11(火) 19:50:37
スレの消費が早い訳じゃないから、次スレ建てるにしてもタイミングが悩ましいね(あんまり開始と終了が埋める形になるのもねえ)
"これは預かっても?“
「存在しない資料ですから」
↑このやり取りラコニズムめいてかっこよくて好き - 192二次元好きの匿名さん25/03/11(火) 19:56:30
そのシーンが目に浮かびすぎて楽しみすぎる
- 193二次元好きの匿名さん25/03/12(水) 01:03:42
SS内では触れなかったイメージの話だよ
キャンプ・リトルラビット:キャンプ座間とか何かいいよねってノリ、難民キャンプと駐屯地としてのキャンプの意味合いを込めて。キャンプ・アビドスとかもあるんでしょうか?
なんかおかしい設立経緯:サキが大っぴらに語ったりしなかった結果、時系列が前後したり断片的な話が美化されてこうなっちゃった。もはや真実を語っても「貴様ーッ RABBIT小隊を愚弄する気かぁっ」みたいな反応になると思われる
語り部ちゃん:年齢のイメージは中等部~高等部1年くらいまで。脇の甘さからして実戦経験は乏しそう。空井隊長のことは尊敬しているけどイブキには若干反発気味、態度が悪いよ態度が
聖園参謀長:ベタだけどミカがかつての先生に倣って少しでも元のキヴォトスを取り戻して生徒の力になろうとしていたりするのが好き
子ども自爆テロ:それってYO!! ランボー1作目のネタじゃんか(手懐けられている間に人質にする奴や他の子のために指示を聞くやつを選別していた感じ)
指示した大人たち:火よりも早く攻め込んだイブキによって西へ旅立ちました。ごあんしんください
好き勝手書いているのでみんなも好きに語ってね
- 194二次元好きの匿名さん25/03/12(水) 02:53:02
SS的に遅かれ早かれ次スレいりそう
- 195二次元好きの匿名さん25/03/12(水) 11:03:12
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- 196二次元好きの匿名さん25/03/12(水) 18:11:38
万魔殿の廊下を走り抜ける。
イブキの足にとって長大な廊下には、嵌め込みされた大きな装飾付きの窓ガラスから明るい昼時の陽光が差し込んでいる。廊下に一定間隔で配置されているゲヘナ生達は、イブキが笑顔を見せて挨拶すると微笑み返し手を振ってくれる。
またしばらく走ると廊下の向こうに議長室が見えてきた。
仕事を終えた先輩達がいつも議長室に集まっていろんな難しい話をしているのをイブキは知っている。そんな姿を見るたびにイブキは自分にももっと色んな事が分かったり色んな事を一緒に出来たらいいなと思う。
その事をイロハ先輩に話すと「イブキは今のままでいいんですよ」と優しく頭を撫でてくれるが、彼女は早く大人になりたいのだ。
そうすればマコト先輩ももっとたくさん褒めてくれるし、みんなの役に立てる。先生もきっと「よくやったねイブキ」と喜んでくれるに違いない。
早くかっこいい大人になって脚もスラっと綺麗になって、この長い長い廊下を早く渡れるようになりたい。大人になったら世界はどんな風に見えるだろう。マコト先輩達が見ている景色がイブキにも見えるかな?
前途には長い廊下と同じく長い長い未来が待っている。その未来が陽の光で明るく照らされる事を彼女を知る人々は祈念し願うだろう。
廊下を渡り切り扉の前に立つ。
いつも通りのみんなの会話。賑やかで楽しそうで、それが今のイブキにはとてもとても懐かしい。
懐かしい?
そして扉は勢いよく解き放たれる。 - 197二次元好きの匿名さん25/03/12(水) 18:11:52
扉の向こうには「●●●」が立っていた。
『ダメだよ」
部屋の中に溢れ返る真っ黒な闇がイブキの足下へ迫って来る。
【あなたはもうこっちに来れないよ〕
まるで音程の合っていないピアノのような声音に全身が総毛立つ。腰のサーベルに手を伸ばすがそれは虚しく空を切る。仕方なく短機関銃を探すがそれすら何処にも存在しない。
イブキの今の姿は何も出来ない馬鹿で愚かでどうしようもなく役立たずなあの頃の自分。
「──あ」
部屋の中の先輩達が泥人形に変じ音もなく崩れて行く。『斬り取られ方』も『挽き潰され方』も『千切れ飛び方』も、全部ぜんぶあの日イブキが見たままに。
「あ…ぁぁあああああああああアアアアアアアアアアアア!!!!!!」
●●●がぽっかり空いた目も鼻も口もない真っ黒な顔を歪ませ笑う
「[【『わすれちゃだめだからねイブキ〉}〕』
意識が闇に飲まれる。
塗りつぶされる世界の向こうで「あの日」のマコト先輩の声が聞こえた気がした。 - 198二次元好きの匿名さん25/03/12(水) 18:12:26
目を開ける。時刻は5時55分。
身体の確認を省略し、周囲を見回して身に付けたままの装備に異常がないか確認する。
人が去って久しい廃屋の一室。少し前から根城にしている雨風を凌げるだけのただの寝床。
窓に近寄り経年で汚れたブラインドの一部分を指で広げる。外の風景は何も変わらない。昨日と自然に帰りつつある舗装路と廃墟ビル群、空は曇天で時折小雨が降り募る。
こういう風景の方が自分には親しく感じられ、先日までの生活の方が幻だったのだと言い聞かせるようにブラインドから指を引き抜いた。
「私なんかにはこれで十分だ」
独り言ちると携帯食で手早く朝食を取りつつ今後の行動指針を考える。
DUからゲヘナ校区の境に移動しブラックマーケットで物資を補給したのが3日前。未来で交流のあった「全智」なるミレニアム製ドローンとの会話の記憶を頼りにミレニアムの廃墟群に侵入し、そこに潜伏を始めたのが3日前。
市街地に出て幾度かの「物資補給」を行ったが、さすがはこの当時技術開発を極めていたミレニアムである。
「補給」のたびに警備ドローンが何処からともなく飛び出して来てこれでもかというほどしつこく追跡された。子供だった頃に何度か目にして「すごい!」と思っていたが、こんな厄介な物だったとは。
そしてなぜか奇怪な巨大ロボに追われるわ途中でメイド服を着た妙なちびっ子にも絡まれるわ…
これだけ騒動を起こした以上ミレニアムに滞在していても得はないし移動が最善だろう。カメラにも散々撮られただろうしいつ見つかっても不思議はない。 - 199二次元好きの匿名さん25/03/12(水) 18:12:38
タブレットを開く。
店頭試用品だったものを拝借し教官仕込みの技で自分用に作り変えたものである。足が付かないよう機能を制限して使っているが地図を見れれば事足りる。
極彩色に学園ひしめくキヴォトスの地図を指でなぞる。
DU、ゲヘナ、ミレニアムにはしばらく近寄れない。
百鬼夜行や山海経やトリニティ、あるいは足を伸ばしてオデュッセイアやワイルドハントなども候補としてはある。しかしミレニアム滞在で思い知ったがそれなりの規模があると治安維持機構の働きが顕著になるためろくに動けはしない。
レッドウィンターという手もあるがあそこは「異変」後に国境を閉ざし人を消耗品として扱う恐怖政治を敷いたと聞いている。今もきっと似たようなものだろうし近寄る気にはなれない。
「となると……」
行動の自由度を考えるなら程よく過疎で人が少なく小さい学校が管轄する校区がいい。
自然環境は厳しいが身体がいうことを効かないような寒さがなく、環境を逆手に取り身を隠せる場所。たとえば「砂塵」とかがあればこの上ない。さらに言えばイブキは「そういう所」で散々戦った経験を持つのでむしろそういう環境が一番力を発揮出来る。
以上のことから現状最適解と言える学校を導き出すが、その学校のことを考えるだけで本能が「接近するな」と大音響でけたたましい警報音をがなり立てる。
そこに向かう途上で時間跳躍に巻き込まれたのもあり行く必要を強く感じるが、どうしてもイブキの記憶の蓋が無遠慮に押し開けられて地獄の釜の底から悪魔のような存在が立ち上がって来る。
燻んだ桃色のショートヘアを携えた常軌を逸した怪物。
暴力機関としての機能美に特化しつつ女性として完成されたスレンダー美超人。
笑顔を絶やさず自らを「おじさん」と名乗りイブキの知る限り最も効率のよい人体破壊を極めたスーパーソルジャー兼人間兵器兼頼れる大人。
旧アビドス高校生徒会長•小鳥遊ホシノの存在が。 - 200二次元好きの匿名さん25/03/12(水) 18:41:19
何処かの部屋
ブラインドが半分下ろされ薄暗く、無機質な質感のデスクに腰掛ける男の顔を闇が覆い隠している。
しかしその影はひび割れ、燃えるような燐光が男の輪郭を形作る。
「さて先生、この物語のテクストは今まさに書き換えられている最中です。」
慇懃無礼な声は、しかし何処か相手を弄ぶような色を含んでいた。
「青春の物語はかつて一度分岐し、破綻し、分解し、そしてまた正しく繋ぎ合わされた。しかし正しく繋ぎ合わされた線は本当にそっくりそのまま『元通り』になったのでしょうか?」
答えはない。彼は虚空に語りかけている。
「ほつれたて本線から弾かれた細かい線の一本一本は互いに影響し合い収束する。いずれ本線に障り、犯し、物語をもう一度書き換えようとするのです。かつて惑星が衝突し合い月という新しい舞台装置を生み出し、それが『本来自らが在るべき世界』にその引力で干渉を始めたように。」
降りて行くブラインドから一瞬見えた夜空にも月が輝く。
ウサギ達から逸れた一匹も、きっと今あの月を眺めているのだろう。
「お忘れなきように…。この物語は本線から逸れた支線。しかし今まさに奇跡を紡ぐ本線を侵すあり得可ざる死線。あなたが今いるのは本来存在してはいけない線の上なのです。」
ブラインドが落ち切り部屋が闇に沈む。
男の燐光も遠去かり声だけが聞こえる。
「またいずれ何処かで先生、できるなら…」
“うん、またいずれ。同じ世界の上で”
返事はない。
目を閉じると目覚めが近づくのが分かる。
夜は深く、しかしきっとそれが明けた朝は明るい。
夢の世界から手放す寸前、イブキの笑い声が聞こえた気がした。