【閲注】相澤先生関連のSSを書いていく・19

  • 1125/02/24(月) 13:11:31

    相澤先生最推しで雑食なスレ主が先生関連のSSを書いていく
    CP無夢クロスBLNL左右非固定何が飛び出てくるかわからねえ 覚悟してくれ
    CP関係はBLは右寄りでNLは左寄りだったはずだが女攻めも普通にあるごめんな

    今は転生ドル澤が佳境!
    完結するまでは他のやつを書かないと思うので実質ここが感想スレになるよ!
    好きなだけ妄想とか感想とか書いてくれると嬉しい!
    平日昼間は来れないので保守がてら雑談してくれると嬉しいぜ

  • 2125/02/24(月) 13:12:37
  • 3125/02/24(月) 13:12:51
  • 4125/02/24(月) 13:13:18
  • 5二次元好きの匿名さん25/02/24(月) 13:14:20

    たておつ

  • 6二次元好きの匿名さん25/02/24(月) 13:14:58

    たて乙です

  • 7125/02/24(月) 13:16:23
  • 8125/02/24(月) 13:19:03

    おつあり!
    19まで来たことよりもガチガチのシリーズものここまで書いてたことに驚く
    本にするわけでもないのに

    みんなもオリキャラ沢山いるこの話ちゃんと読んでくれてありがとやで
    感想とても嬉しい

  • 9125/02/24(月) 13:20:57

    あとこれは笑い話なんだけど
    ドル澤本文が16万字をこえました
    みんな本当によく読んでくれてるよ…有難う…
    絶対完結させるから安心してね…

  • 10二次元好きの匿名さん25/02/24(月) 13:31:47

    たておつ!19スレ目もよろしくスレ主!
    ドル澤16万字も書いてるの!?
    するする読めるから全然分からなかったけどこんなに長編書けるスレ主すごいや

  • 11125/02/24(月) 13:34:58

    保守代わりに小ネタを書くんだけど

    光木の古参ファンお姉さんは十年前に新卒でブラック企業に入って死にかけてたところを光木の演劇を見てめちゃくちゃ救われた人
    推しにどう思われてるとか全然気にせずに貯金とかのやりくりをしながら推し活をしてる
    結婚してもう推し活は良いかなあと思い始めた頃被災地での事件で光木が劇団を追われることを知り最後に会うつもりでファンミに行った

    そこで光木がかなり憔悴しているところ見て「さようなら」の言葉を飲み込んでエールを送る
    それから暫くはタレント活動をするようになった光木をテレビでほどほどに追っていたんだけどあの日の憔悴した光木を忘れられなかった
    この頃子供を産んで彼女もそれどころではなくなっていた
    惰性で入っていたFCからの連絡でアイドル活動することを知り夫の理解もあって何度かライブに訪れる

    キラキラのステージでファンの為に全力で活動する光木をまた好きになった
    家庭を持っているのでそんなに頻繁には来れないけれど節目節目のライブには必ず訪れるように
    次第にどうしてもあの日の憔悴した光木がちらつき「もしかしたら今も無理をしているんじゃ」と思うようになり手紙を送る

    そのあとあの事件が起こり彼女自身も不安定に
    夫の支えと子供に不安な面を見せたくない一心で踏ん張っているとBLACK CASE発足のニュースが目に入る
    怖くて暫くは見ることが出来なかったがショータのデビューを機に復帰
    今はのびのびと活動する光木に安心して声援を送っている

  • 12二次元好きの匿名さん25/02/24(月) 13:41:09

    オリキャラ多くてもスレ主が詳細な設定までちゃんと練り上げてくれるからめっちゃ話に没入してる

    お姉さんも結構波のある人生送ってる……
    どんな状況になってもなんだかんだ光木を応援して見続けてたの愛が深いよお姉さん

  • 13二次元好きの匿名さん25/02/24(月) 13:44:06

    光木ファンのお姉さんマジでアイドル推してる時こういう自分でありたいの人
    光木が心配で支えてるんじゃなくてファンのために全力な光木が好きだから支えてるのファンとアイドルの関係として理想的すぎる

  • 14二次元好きの匿名さん25/02/24(月) 18:09:09

    推しがこんなに穏やかじゃない状況ばっか続いたら疲れて担降りしそうなのにずっと応援し続けられたの凄いな
    そりゃ新規にも優しくなる

  • 15二次元好きの匿名さん25/02/24(月) 22:40:44

    16万字超えで笑ってる
    俺もそんな長い文章読んだの多分初めてだよスレ主…

    完結までついてくし完結してもついてくぜ

  • 16二次元好きの匿名さん25/02/25(火) 06:16:57

    >光木がかなり憔悴しているところ見て「さようなら」の言葉を飲み込んでエールを送る

    すげえいい人

  • 17二次元好きの匿名さん25/02/25(火) 07:49:39

    話ズレるけど
    久々に6年回帰問題の話を見たらめっちゃほっこりした

  • 18二次元好きの匿名さん25/02/25(火) 08:05:05

    わかる
    スレ主の書く全年齢のほっこり話全部好き

  • 19二次元好きの匿名さん25/02/25(火) 12:28:19

    スレ主の書く話みんな好き
    短編だと8年後先生がエリちゃんとクッキー焼く話が特にお気に入り
    ドル澤みたいな長編も読み応えあって嬉しい

  • 20125/02/25(火) 20:25:20

    ただいま〜
    ほんまごめんむり寝る

    多分続きが書けるのは週末かなあ…
    その間小ネタを持ってきてお茶を濁したりするぜ
    みんな待っててくれてありがとな

    六年回帰とかエリちゃんのやつとか前の話覚えててくれてるの嬉しい!
    話題にしてくれてありがとやで

  • 21二次元好きの匿名さん25/02/25(火) 21:12:33

    おかえりスレ主ゆっくり休んでくれ
    俺はフリーレンクロスとホラーを見たよ
    当時は奴隷扱いをされた先生という新概念を見て脳が焼かれたわ
    あとホラー上手いよ背筋が凍ったわ

  • 22二次元好きの匿名さん25/02/25(火) 23:29:41

    スレ主おかえり
    スレ主がホラー上手いのわかる
    ホラー苦手だけど映像じゃないならいけるかと思ってあの交番のやつ読んだらめちゃくちゃ怖くて普通にチビったもんね

  • 23二次元好きの匿名さん25/02/26(水) 07:41:37

    自分は大人気ない先生が好きだからポケモン対戦のやつとマイクにダル絡みするやつ好き
    ちゃんと男子って感じの先生で好き

  • 24二次元好きの匿名さん25/02/26(水) 07:46:28

    女子組に性教育するの好き 続きを待ってる

  • 25二次元好きの匿名さん25/02/26(水) 10:31:08

    スレ主のシリアス系ssとほのぼのエロをずっと反復横跳びしてると温度差で心が整ってくる

  • 26二次元好きの匿名さん25/02/26(水) 17:06:07

    仕事しながらこの量書いてんのやっぱすげえわ
    無理をしないで欲しいけど新作たくさん読みたいジレンマ

  • 27125/02/26(水) 22:18:52

    ただいま〜

    お茶濁しの小ネタなんだけども
    ショータは基本的に自分が炎上するパターンばっかで相手を炎上させることはないんだけど
    一回だけ男好きな女優さん(ほんと◯◯くん可愛いわ〜とセクハラする年配女タイプ)に動物系バラエティを炎上させたことがあって

    今までどんなセクハラを受けても全部流してたショータがその女優さんが家で5匹猫ちゃん飼ってると言った時に「お名前は?」「みんな素敵ですね」「すごく良い」とガンガン絡みに行ってしまい
    それをうけた女優さんが「この子さっきから私見ないでずっと猫見てるんだけど!」って言ってその部分だけ切り抜きされ女優さんが大炎上した

    まあ自業自得だし女優さんは炎上芸で番組呼ばれてるようなもんだから気にしてないんだけど一応メンバー全員で謝罪しに行った

  • 28二次元好きの匿名さん25/02/26(水) 23:08:18

    スレ主おかえり〜
    炎上とは真逆のイメージの番組で炎上引き起こしたの笑える
    相手がそんなに評判良くない人でよかったな
    相変わらず猫好きなショータ可愛いね

  • 29二次元好きの匿名さん25/02/27(木) 06:42:36

    猫ちゃん5匹いたらね…しょうがないね…

  • 30二次元好きの匿名さん25/02/27(木) 08:03:09

    ファン目線その女優にガンガン絡みに行った時めちゃくちゃ肝冷えただろうな
    ただでさえ炎上しやすいメンバーだし

  • 31二次元好きの匿名さん25/02/27(木) 12:25:53

    猫ちゃん5匹いたらしゃーない
    保護猫系のロケに連れ回されるショータ見てえな

  • 32二次元好きの匿名さん25/02/27(木) 20:12:09

    謝罪に行ったらその女優さんから
    猫型のクッキーを受け取ってびっくりするショータがいるんだろうな…

  • 33二次元好きの匿名さん25/02/27(木) 20:19:20

    思ったんだけど光木が設定で服の色に興味ないの仕事以外に興味持てないくらい擦り切れてたからとかなのかな…
    なんか服も適当に買ってるっぽいし趣味らしい趣味も書かれてないしどんどん怖くなってきた

  • 34二次元好きの匿名さん25/02/27(木) 20:25:45

    恋多き男なのも恋愛依存っぽさがあるよな
    アイドルとしての理性が働いてるから一線超えないだけでかなり限界だったんじゃないか…

  • 35二次元好きの匿名さん25/02/27(木) 21:54:32

    そう言われると本当に紙一重でアイドル続けてくれてたのかなって思ってミツキのことがすごい愛しくなってくるな

  • 36125/02/27(木) 21:57:41

    ただいま〜
    猫ちゃんに絆されるショータかわいいよねと思って書いてたから反応ありがとやで!

    光木は既存の障害であればメサイア症候群を一番近いものとして作ったキャラクターだよ
    元々抑圧された環境で虚無気質の強い人だったところに降って湧いたDD9の「自分だけがみんなを助けられる」というやりがいに溺れてしまった
    今は周りみんなが困り事をたくさん抱えてるし自分のアドバイスによってグループが改善されてるから安定してるけどこれがグループがもっといい方向へと行って困り事が減ったら次第に暴走してた

    女性とたくさん付き合ってたのは光木みたいな男に惚れる女は助けてもらいたがるメンヘラが多いから
    ただ本人の完璧主義についていけなくなって彼女たちから別れを切り出していく

    本人がめちゃくちゃ優秀だから人を助け続けること=自分の欲求を満たすことができてしまって今までみんな異常に気づかなかった
    たぶんマネさんも気づいてない

    明後日の夜にはたぶん続き書けるぜ〜
    今日は寝る!おやすみ!

  • 37二次元好きの匿名さん25/02/27(木) 22:27:56

    いつものことではあるがスレ主寝る寸前にとんでもない爆弾を落としていくよな…
    マネさんが気づかなかったの意外
    記憶を見るだけだからなんか爽やかだなくらいに思ってたんかな

  • 38二次元好きの匿名さん25/02/27(木) 22:29:52

    >>37

    誤字

    ×爽やか

    ◯世話焼き

  • 39二次元好きの匿名さん25/02/27(木) 23:12:52

    スレ主おかえり!
    光木が想像以上に爆弾抱えててもはや笑えてきた
    そう思うと今回の揉め事で早めにメンバーに本心ぶちまけられる機会が来たのは悪くなかったのかもな

  • 40二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 07:38:36

    本人の能力•性格と芸能界で置かれた環境が悪魔合体してる………
    ショータも光木も他の3人くらいなんとか前向いて歩けるようになってほしいと切実に思う

  • 41二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 08:01:51

    マネさんとメンバー3人がミツキ連れて新グループで再出発してくれて本当に良かったな
    元の事務所だとミツキのやりがいだけ搾取してブランド力が落ちてきたら放置されそうだし本人の心の問題も表面化することなく終わっていきそう

  • 42二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 12:20:33

    更新明日か〜
    めちゃくちゃ楽しみや

  • 43二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 21:13:48

    ショータが今どうなってるのかも気になるし光木がどう折り合いつけるのかマネージャーがどう動くのかも気になりすぎる

  • 44125/02/28(金) 22:34:02

    ただいま〜クソ労働すぎる

    先生時代はクソ労働でも細切れに寝れればいいと思ってた先生
    アイドルになってからも現場の合間合間でガチ寝をするのでロケバスで快適に寝れるようメンバーから快眠グッズをたくさんもらってると言う小ネタ

    明日の夜には持って来れると思うよ〜
    おやすみ!

  • 45二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 22:53:36

    おかえりスレ主!
    月末の労働は輪をかけてクソになるよな
    仮眠グッズたくさんもらうショータかわいいな
    高校生でまだまだ育ち盛りだし余計いっぱいあげちゃいそう

  • 46二次元好きの匿名さん25/03/01(土) 08:11:00

    ショータが猫型ホットアイマスクとか首枕とか完備してガチ寝してる姿見たら可愛いと面白いで笑っちゃうかもしれない

  • 47125/03/01(土) 14:42:27

    おはよう〜
    保守とか色々いつもありがとう

    多分日付変わる頃には持って来れると思うよ〜
    本当は21時に持ってくるって言いたかったんだけど最近の傾向を見るにまず無理だと思うから余裕を持ったぜ

  • 48二次元好きの匿名さん25/03/01(土) 14:44:59

    了解!
    のんびり待ってる!

  • 49二次元好きの匿名さん25/03/01(土) 18:18:54

    スレ主おはよう!更新楽しみ!
    仕事の合間にガチ寝するショータ見かけたいな
    昔みたいに寝袋で寝ようとしたこともあるんかな

  • 50125/03/01(土) 18:39:50

    ごめんガチ昼寝をしてしまってこんな時間に起きました…
    出せるの多分かなり遅くなるからみんな先に寝てて…

  • 51二次元好きの匿名さん25/03/01(土) 20:44:26

    結構しっかり寝てて笑った
    何時でも待ってるで

  • 52二次元好きの匿名さん25/03/01(土) 22:10:46

    待つからマイペースに書いてくれスレ主
    ショータも合間の仮眠でガチ寝し過ぎてメンバーに叩き起こされたこととかあるんかな

  • 53二次元好きの匿名さん25/03/02(日) 00:04:04

    しばらく勉強しようと思ってこのスレから離れてた。
    見に来ちゃった。受験前なのに。一気に。
    今日一日で数スレ分読んで頭痛い。
    でもそれでも、見なきゃ良かったよりも見て良かったが勝ってるよ。ありがとうスレ主、ふぉーえばースレ主。
    ぜんぶおわったら三次創作かかせてね…

  • 54125/03/02(日) 01:02:38

    書けた書けた
    出していくぜ!

     久しぶりに自分の髪を見てから、『あの頃』のように白雲の夢をよく見るようになった。
     意識してはいけないとずっと封じ込めていた白雲霞と言う事実から目を背け続けた罰だろうか。それにしては夢の中の白雲は良く笑う。
     この日の夜も、白雲は【彼】の夢にいた。あの頃と同じ学生服を着て、超えることのできなかった彩度の低い冬空の下で笑っていた。

    「ショータはさあ、なんになりてえの?」
    「……さあ」

     明晰夢なのか、今日は自分の口を動かす権利があった。けれどとてもヒーローと言うことは出来ず、もごもごと口を動かして誤魔化す。
     それに対して白雲は「そっかあ」と笑った。それだけでこれが夢だと見せつけられる気分だ。本当の白雲であればヒーローと答えない【彼】を見て不審に思わないわけがない。
     なぜまたこの夢なのか。
     もう見たくないから、目を背けたいから、髪を染めた、名前も捨てた。それなのにどうして、今。

    「あのさ、俺はあんまり上手く言えねえんだけど」

     白雲の顔が悲しそうに歪む。それでも口元は笑っていた。白雲はいつも大口を開けて、目を細めて笑っていた。けれど夢の中ではいつも、こうやって笑う。

  • 55125/03/02(日) 01:03:13

    >>54

     夢なのに、喉の奥が渇いた。

     『あの頃』と同じ言葉を、彼は言う。


    「頑張れ、ショータ」


     ああ、またこの言葉だ。【彼】は絶望しながら目を覚ます。自分は絶対に白雲霞になってはいけないのだと忠告する言葉が【彼】を現実に導く。

     オールマイトの別荘という恐らく眠るのならば最高の環境で最悪の目覚めをして、湧かない食欲を押さえつけて用意された朝食を食べた。

     スキンケアと髪のセットをしてから「別に誰に会うわけでもないのに」と染みついた習慣に嫌になる。鏡の向こう側に居る、いつもの姿になった【彼】の顔を見てため息を吐いた。


    「SHOTA……くん! 今日の午後って予定ある?」

    「ないですけど」

    「良かった! じゃあちょっと外でない? 気分転換に!」


     芸能人に敬称をつける習慣がないのか、昨日から『さん』をつける時に若干の間がある灰廻の提案に、【彼】は特段抵抗することなく同意した。

     ここに居ても特にやることはない。心を落ち着けられると思ったがそんなことはなく、時間ごとに焦燥感が増していく。

     明日はステージに立って踊っていなければいけない。被災者としてみんなの涙を誘うコメントをして、寄付金を募る必要がある。今の【彼】に出来るとは思えなかった。

  • 56125/03/02(日) 01:03:38

    >>55

     今頃BLACK CASEのみんなは前日リハーサルをしているだろう。【彼】もそこに居るはずだったし、居なければいけなかった。

     頭の奥がぐらぐらする。目を瞑って深く深呼吸をする。だが瞼の裏に、白い髪の同級生を見て結局は何も変わり映えのない部屋の天井を見上げた。


    「……夏の空だな」


     窓の向こうには彩度の高い青が広がっている。濃い青の色は屋上で四人が見上げた色と同じだった。


     ‡


     灰廻の軽自動車は生活感が溢れていた。汚いわけではなかったが、食べ物や人の形跡があって、恐らくこれは社用車ではないのだろうとわかる。

     手慣れた様子で発信する灰廻に驚きの声を出さずじっと見つめていると、照れたように彼は頭を掻いた。


    「あ、やっぱ気になる? 気になっちゃいます?」

    「……その、まあ、意外だなって、思います」

    「そっか~! まあね、俺のことヴィジランテ時代の動画でしか知らないとそうなるよね! でもこう見えてドライバー歴十五年以上の大ベテランなんだなあ!」

  • 57125/03/02(日) 01:04:10

    >>56

     堂々と免許証を出す灰廻に、【彼】は苦い表情を見せる。


    「……本名見えてますよ」

    「えっ、あ、ウソ!」

    「っていうか青色免許なんですね」

    「う、うう……これは子供がシートベルトしてないのに気付けなくてネズミ捕りに……っていうかSHOTAくん青色免許なんて言葉知ってるんだ!?」

    「……光木が、運転を良くするので」


     実際は相澤消太時代に駐車違反を取られて点数を惹かれた経験があるせいなのだが、ここはグループの最年長者を言い訳に出す。

     灰廻は免許証をしまいつつそっかあと相槌を打った。


    「MITUKIってあれだよね、『恋の花束』で主演してた人! ポップがすっごい好きなんだよね! 運転もするんだ~! SHOTAくんは乗ったことある?」

    「はい、一応は」

    「俺あんま良く知らないんだけどBLACK CASEって普段みんなで出かけたりするの?」

    「普段……今はみんな忙しいのでプライベートはあんまり。でも専用チャンネルの企画でちょっとした遠出とかはします。そういう時に光木に運転してもらうんです」

    「へえ~!」


     灰廻はそのあと光木がどんな車に乗るのだとか、みんなで普段何を話しているのだとか、そういう他愛ない会話を続けた。

  • 58125/03/02(日) 01:04:42

    >>57

     次第に【彼】もその意図を察して居心地が悪くなってくる。灰廻の視線が時々伺うように【彼】を見ていることからも、恐らくは何が地雷になるのかを探っているのだろう。

     この男にそういった気遣いが出来ることに違和感と会わなくなった月日の長さを感じてしまった。


    「……あのさ、言いたくないなら良いんだけど」

    「なんですか」


     ある程度会話が進んでから、そちらの方が余程言いにくそうに灰廻が問いかける。


    「なんで芸名SHOTAなのかなって」

    「……」

    「いや明らかにあんま似合ってないからさあ。きっと芸名なんだろうって思ったんだけど、ごめんもしかして本名?」

    「……いえ、芸名です」


     前言撤回。やはりこの男は気遣いは出来るようになってもデリカシーがない。

     いや、以前のこの男ならば「言いたくないならいい」なんてことも言わなかっただろうか。最後に会ったのが前過ぎるせいで記憶があいまいだ。

     【彼】は少し迷う。

     だが運転席の灰廻は辛抱強く【彼】の返答を待っていた。まるで何かを確信しているかのような態度に、少しだけ腹が立った。

  • 59125/03/02(日) 01:06:19

    >>58

    「……伯父の友人の名前が、消太って言うらしいんですけど」

    「伯父さん?」

    「ええ。俺が産まれてくる随分前に死んだみたいなんですが。事故にあってからと言うもの伯父が夢の中に出てくるようになって」


     困ればいいと思った。その目論見は成功したのか、フロントガラスの向こうを見ている灰廻の表情が少しだけ固くなっている。


    「それで俺のことを『ショータ』って言うんですよ。名前なんて掠りもしてないのに。で、俺も事故直後から自分の容姿が怖くなるようになってたので、そこから遠ざけるためにちょうど良くその名前を利用したんです。親には内緒ですけど」


     嘘は吐いていない。

     普通ならば完全な精神科案件だ。そしてこの男にデリカシーはない。このまま失言をしてもらって、これ以上こちらに踏み込ませないようにできれば【彼】にとっては問題なかった。

     だが、いつまで経っても返事が来なくてちらりと灰廻の方へと視線を動かす。


    「は?」

    「……うっ、ぐす……」

    「え、な、なんで泣いてるんですか」


     予想だにしない反応に助手席から逃げるようにして【彼】は後ずさる。灰廻が泣いている。

  • 60125/03/02(日) 01:06:56

    >>59

     あんな、鈍感と天然を絵にかいたような男が、子供の境遇を聞いて泣いている。そんな繊細な心がこの男にあったとは思いもよらず、気遣いが出来るようになったことよりも衝撃だった。


    「いや、あのさ。俺も子供が出来てからわかるようになったんだけど」

    「は、はあ……」

    「子供ってさ、親に口を挟んでほしくないことを言わないでしょ? 俺も昔変に口挟まれたくなくて母さんに黙ってたことあるんだけど」


     灰廻の場合は口を挟まれたくないというより非合法活動をしているうえで身内に知られるのがまずいと直感していたところもあると思うが。

     【彼】は思っても口にしない、ザ・クロウラーのことを知っていても灰廻航一とはそこまで交友があったわけではなかった。


    「でもそれって大人な子供……えーと、成人した子供? みたいなさあ、いや俺あの頃未成年だったな……ある程度自立してるっていうか、なんとなくやりたい事既に決まってる子供に当てはまることだと思うんだよね」

    「大丈夫、伝わってます」


     一般的な大人ではない生き物の『子供』と娘や息子である『子供』のニュアンスの違いに苦しむ灰廻に頷いてやれば「良かった」と言いつつ彼は続ける。

  • 61125/03/02(日) 01:07:25

    >>60

    「まだ右も左もわかんない子供ってさあ、自分に起こったこと全部親を心配させちゃうと思ってるのか、何でもかんでも黙っちゃうでしょ。なんかその時のSHOTAくんのこと思ったら、絶対辛かっただろうなって」


     右も左もわからないわけではなかった。なんせ中身は三十歳を超えたおじさんなのだから。

     だが、当時の【彼】が相澤消太の時と全く同じ思考が出来ていたかと思えばそうではない。体に精神は引っ張られ、白雲霞が居なくなったことの動揺で常に頭は混乱していた。


    「俺息子が学校で喧嘩して怪我して帰ってきたとき、なんで怪我したか言わなくって怒ったことあるんだ。そしたら逆にポップにめっちゃ怒られてさあ。「アンタだって親に知られたくないことあったでしょ!」って。でも心配なの分かってほしいじゃんって言ってポップとも喧嘩になっちゃって……」

    「そう、ですか」

    「でもよく考えたら俺だってめちゃくちゃ親に隠してたことあるし、その中には洒落にならない活動もあった。大学生の俺がそうだったんだから、もっと小さな子供なら猶更だろうし、俺があの時するべきことは距離を取って話してくれるまで辛抱強く待つことだったんだろうなって今なら思うんだよ」

  • 62125/03/02(日) 01:08:14

    >>61

     車は赤信号で止まった。

     灰廻は涙を流した目を拭う。「泣いてごめん、困るよね」と言われたので「そうですね」と返した。余計に泣かれて少しだけ鬱陶しい。

     ヒーロースーツの袖で拭った涙はしっかりと乾く。目元は少しだけ腫れていた。


    「SHOTAくんのご両親は、そっとしといてくれたんだね」

    「……そうですね、普段使う名前を変えたいと言った時も、髪の色が怖いと言った時も、何も聞かずに分かったと言ってくれました」


     一応カウンセラーを紹介されはしたが、白雲家の特徴である髪や目の色を尋常ではないくらいに怖がるようになったことを母も父も責めなかった。

     母は常に家の中でカツラを付け、父は髪を黒くした自分たちの写真でアルバムを作った。


    「凄いなあ。俺だったらすっごい口出しする」

    「でしょうね」

    「もう絶対になんでそんなこと言うの!? って地雷踏みまくる。ポップに怒られるのが目に浮かぶよ」

    「でしょうね」

    「なんかさっきからちょっと棘強くない?」

    「気のせいですよ」

  • 63125/03/02(日) 01:08:59

    >>62

     素晴らしい両親だ。だがその愛情は【彼】には過ぎたものだった。本当ならば白雲霞が受け取るべきものだった。

     黙っているべきだったのに、少しだけ出来た空白を埋めようと、自分の口が勝手に喋り出す。


    「……クロウラーは、自分が何者なのかわからないって思ったこと、ありますか?」

    「え」


     何を言っているんだという顔をされてすぐに後悔した。そうだ、何を言っているんだろう。この男がどれだけ気遣いが出来るようになっても、繊細な心を持ち合わせるようになっても、結局は灰廻航一でザ・クロウラーだ。


    「いや何でもないです忘れてください」

    「ちょっと! 秒で相談したこと後悔すんのやめてよ! 待って今答えるから」


     信号は歩車分離式の為長い。ハンドルを握りつつ暫く考えていた灰廻は結局長いため息をついた。


    「ごめん、パスで……」

    「まあそうでしょうね」

    「たぶん俺が答えられるタイプの相談じゃないかな」

    「何で答えようとしたんですか」

    「えー……そりゃ」


     信号が青に変わる。

     灰廻はアクセルを踏んで車を発進させた。

  • 64125/03/02(日) 01:09:31

    >>63

    「困ってる人が居たら助けたいのがヒーローだし?」


     少しだけ誇らしげに、それでいて少しだけムカつく顔をしていう男に【彼】は毒気を抜かれる。結局助けられてないじゃないか、というもっともらしい反論はしないでやった。

     車はそこから五分ほど走って漸く目的地に到着する。そこは相澤消太時代に何度か見た、雄英高校のすぐ近くにある商店街の広場だった。

     大きな広場には何やら機材が持ち込まれていて、ステージが建設されていた。


    「これは……」

    「この商店街のお祭り! 年々規模が大きくなっててさあ、明日やるんだってさ」


     中には何の用途かわからない大きな装置やそれを整備する雄英サポート科の制服を着た子供たちもおり、その気合の入り方がわかる。


    「凄いですね……」

    「外からも大勢人が来るからね、雄英サポート科が全面協力して新しい設備なんかを使わせてくれるんだって」


     雄英高校が近くにあるということもあり、この辺りは相澤消太時代から賑わいがあった。祭りの規模自体にそこまで疑問はない。

     だが、この土地はどうにも利便性が悪い。雄英高校からは近いが道が入り組んでいて、駅が遠いのだ。それなのに外部の人も来るというのは【彼】も少し驚いた。

  • 65125/03/02(日) 01:10:02

    >>64

    「こんな立地の悪い場所に人が来るんですか?」

    「駅から専用のバスが出てるんだなあ!」

    「バスが……商店街に」

    「雄英行きのバスが何年か前にできたんだって。『ライトリーラボ』がサポートアイテムの開発研究所を雄英と提携してこの近くに作ったでしょ。そこの社員の人たちが使うからついでに商店街も通るバスを作ったんだって」

    「そうなんですか」

    「えっ知らない!?」

    「あんまり……興味がないので」


     ヒーローのことはファンにヒーローが多いのである程度情報を入れているが、サポートアイテムまでは知識が及ばない。そもそも、霞が好きではなかったヒーローの知識を積極的に取り入れることに罪悪感があった。

     ライトリーラボ、と検索欄に入れると雄英サポート科にいた発目と絢爛崎が作った会社というのがわかった。あの二人には大戦時非常に世話になった。大成する器だとは思っていたがまさかここまでとは。

     雄英からも何名か共同研究者として名前があった。懐かしい名であるパワーローダーは現在ここと雄英の兼業をしているらしい。他にもいくつか知った名前がある。

     ライトリーラボの名が付いた記事がAIのアルゴリズムに則って次のお勧めに乗ってくると、その中に気になるものが一つあった。

  • 66125/03/02(日) 01:10:49

    >>65

    「SHOTAくん! こっちこっち!」

    「あ、はい。今行きます」


     見出しをタップする直前に声をかけられて【彼】は携帯をポケットにしまい灰廻のあとをついていく。するとそこは大きな倉庫だった。扉を開けると、明らかに物を出した直後なのか埃っぽく、無駄に空いたスペースがある。

     その空間を埋めるように、大きな音が響いていた。


    「リッちゃん! 音ずれてるよ!」

    「ごめん~!」

    「アキちゃんさっきの良かった! もっかい通しでやろ!」

    「おっけー」


     【彼】は目を見開く。

     空いたスペースを埋める音を出していたのは三人の女性たちだった。倉庫の扉から差し込んだ光に埃が反射して、キラキラと際立たせている。

     ドラムに座っている頭がプリンになった金髪の女性、ギターを構える茶色いボブカットの女性、そしてその中央に居る女性は。


     チカリと脳内の奥でチャンネルが変わるような音がする。あの時、暗闇の中で蹲って泣いていた、“個性”を自分で扱えずに泣いていた可憐な少女が、振り返る。


    「あれっ、コーイチさんだ!」

  • 67125/03/02(日) 01:11:19

    >>66

     真っ白な長い髪にヒイラギの実を宿した赤い目、灰廻を見た瞬間に笑顔になった彼女は、二十三歳に相応しい健康的な体をしていた。【彼】より小さい体を弾ませて、はじけるような笑顔で走り寄ってくる。


    「どうしたんですか? お仕事中ってポップさんに聞いてたんですけど」

    「うーん、ちょっと会わせたい人が居て……」

    「会わせたい人……」


     彼女は……エリは、そう言って視線をさ迷わせて灰廻の隣にいる【彼】を見た。そしてみるみるうちに表情を硬化させ、そして目を見開いて飛びのく。


    「SHOTAだ!」


     顔を赤らめて、口元を抑えて驚きを表現するエリに、【彼】も思わず肩を跳ねさせる。そのままエリは驚いて後退し、他のバンドメンバーを呼びに行った。


    「ヤバイヤバイ! SHOTAいる! SHOTAいる!」

    「えっ、マジ? うわほんとだ!」

    「明日ライブじゃなかった? うわ顔ちっさ~!」

    「肌奇麗~! えっ可愛い~! 今幾つだっけ」

    「十七歳とかじゃなかった?」

    「えっ近い近い! 想像以上に近い!」

  • 68125/03/02(日) 01:11:54

    >>67

     怒涛の会話についていけず、思わず灰廻の後ろに隠れる。すると自分たちのハイテンションに気付いたのか、エリが「ご、ごめんなさい」と頭を下げた。


    「私たちBLACK CASE好きなの! はしゃいじゃってごめんなさい」

    「い、いえ」

    「今日はお仕事ですか?」


     敬語に戻ったことで昔のエリの名残を感じ、【彼】は灰廻の後ろから出て来た。睨むように灰廻を見ると、照れたように首の後ろを掻いていた。


    「本当は昨日のうちに帰るつもりだったんですけど、ちょっと予定が変わってしまって。明日のフェスには戻るんですけど一日空いちゃったんです」

    「そ、そうなんですか~」


     エリがにこにこと笑顔で返事をする。これはアレだ、可愛い小動物を見ているときの女性の顔だ。【彼】は当時のエリを良く知っているからこそ、この表情の豊かさに緊張する。

     灰廻が二人の間に立った。


    「じゃあ紹介しよう! この三人こそ我らが『カナリアプロダクション』の誇る新星! 三人組のガールズバンド『BRAVE』! そのリーダーのエリさんです!」


     大仰に紹介されても、エリは照れた様子もなく胸を張る。

  • 69二次元好きの匿名さん25/03/02(日) 01:12:16

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  • 70125/03/02(日) 01:13:01

    >>68






    「どうも! エリです! パートはベース&ボーカルで……将来はドームを埋められるバンドになる予定です!」






    .

  • 71125/03/02(日) 01:14:01

    >>70

     溌溂と答える彼女にかつての面影はない。顔が同じなだけの別人と言われても納得できた。

     いや、だが、そうだ。相澤が死んでから既に十五年が経過し、彼女は既に二十一歳で十分に成人している。どれだけ人が変わっていてもおかしいことなどなかった。


    「ベース……格好いいですよね」

    「わかりますか! 憧れの人が弾いてた楽器なんです!」

    「それって……イヤホン=ジャック?」

    「! やっぱり知ってるんだ!」


     エリは興奮した様子だった。

     彼女がかつてオーバーホールの面影に囚われていた頃、A組のバンド演奏によって救われたことがある。その経緯から、音楽を好きだと言っていたことは覚えていたが、耳郎のベースを真似るほどとは思わなかった。

     エリの長いけれど皮の厚くなった指先が、優しくベースを撫でた。


    「耳郎さんのベースにすっごい憧れて……私は音楽の道を行こうって決めたんです」

    「そう……なんですか」

    「SHOTA……くんのことは耳郎さんから教えてもらって、CD分けてもらって曲聞いてからBLACK CASEにハマっちゃって!」

    「でもエリの推しってMITUKIじゃん」

    「昔から年上ばっかすきになるよね」

    「ちょっとリッちゃんアキちゃん黙ってて!」

  • 72125/03/02(日) 01:14:40

    >>71

     後ろから飛んで来た野次にエリは大きな声をかける。BLACK CASEのファンの分布は基本的に光木が大きく、そこまで不思議な事ではなかった。


    「こいつ昔年上の人たちに囲まれて過ごしたから大人な相手にしか惚れること出来ないんですよ」

    「それで一回児ポ案件になりかけてデク来たよね」

    「もう! もう! やめてよ!」

    「まあMITUKI格好いいですからね」

    「SHOTAくんのことも好きだよ!」


     わざとちょっと拗ねた感じに振舞えば慌てて訂正を入れられる。こういう子供らしい面を見せるのはSHOTAの仕事でもあった。

     握手を求められてそれに応える。深爪くらいに切られた指先は弦を弾く為に努力した痕だ。離してから、当たり障りない話題を振った。


    「明日のイベントに出られるんですか?」

    「はい! メジャーデビューが決まってから初めての大きなお仕事なんです! 雄英のサポート科の人たちにも協力してもらって……外の大きな装置見ましたか?」


     言われて思い出すと、たしかにそう言う物があった気がする。大きな円形の、ボールのような装置だ。

  • 73125/03/02(日) 01:15:23

    >>72

    「あれ花火なんですよ! 夜に打ち上げるんです」

    「へえ、凄いですね」


     エリは大興奮して「そうなんですよ!」と言い、そのすごさを説明し始めた。どうやら雄英サポート科の生徒が開発した試作品らしい。


    「まだまだ色々試してる段階で、今回が初の敷地外での使用なんです! 私たちが初めての使用者に選ばれたんですよ! 火薬は明日の朝運び込まれるので、それまではまだ実地でテストできないんですけど……でも学校で試射してもらった時は本当に凄くって!」


     それは実験台と言うのではないだろうか。

     だが、雄英生徒がいるのならば装置自体に大きな問題はないだろう。【彼】はヒートアップするエリの説明をとめえる為、意識的に話題を変えた。


    「そういえば、ここを選ばれた理由とかあるんですか?」

    「えっ」

    「商店街って地元の人が出るイメージが強いから、どうしてだろうって思って」


     問われると、エリは眉を少しだけ寄せた。気を悪くしただろうかと焦ったが、彼女は柔らかく微笑み直す。

  • 74125/03/02(日) 01:16:19

    >>73

    「……私にとっては、ここが地元みたいなものだから」


     彼女の声は先ほどとは変わって少し硬くなっていた。あの頃を思い出させる声音に、【彼】の方が強張る。


    「昔、私色んなことがあって自分の家に帰れなくて……雄英で面倒を見てもらってた時期があるんです。その時、凄く凄く大切な時間を過ごさせてもらったの」


     赤い目は今何を映しているのだろうか。彼女の手元を見ると、手首から二の腕にかけては夏なのにアームカバーがつけられて隠れている。

     もしかして、彼女もまだ昔に囚われているのだろうか。握った手が汗ばみ始める。


    「だから」


     けれど、それは打ち砕かれた。

     強い意志を持った赤い目が【彼】を射抜く。置き去りにした影を打ち抜く。


    「ここをどうしても出発点にしたかったの。バンドメンバーの二人にはあんまり縁のない土地なんだけど、絶対に始まりはここが良かった。この場所は私に勇気をくれたから」


     本当は雄英でやりたかったんだけどねと彼女は笑った。


    「雄英でやるのはもっと有名になってから! そうしたら絶対、あの講堂で演奏をするの! 私みたいに進むのを怖がってる人たちの背中を押せるような、そんな演奏をするんだ!」

  • 75125/03/02(日) 01:17:18

    >>74

    「……」

    「って、ごめんね語っちゃった!」


     あっけに取られていると、エリが一方的に謝ってくる。処理しきれていない脳内をどうにか動かした。


    「格好いいですね」

    「そう思う?」

    「はい」


     素直に言えばエリは照れたように顔を赤くして、そして【彼】の知らない顔で笑った。

     そこに既に面影がないこともわかっていてなお、【彼】はその質問せずにはいられなかった。


    「……エリさんは、その」

    「ん?」


     分かり切っていることだ。聞いても意味のないことだ。だが、どうしても彼女の口から答えを聞きたかった。


    「今もお歌、好きですか」


     エリは心底驚いた顔をした。小さく「どうして」と言って言葉を失う。「どうして、そのことを知ってるんだろう」という彼女の気持ちを【彼】は分かっていた。

     こんなことを言えばきっと不審者だ、警戒心だって跳ね上がるはず。それでも【彼】は彼女の口から聞きたかった。

     その気持ちに、最低な思いが含まれていることも、理解していた。

     エリの口が返事を形どる直前、後ろで大きな物音がする。驚いて振り返ると、一人の人物が立っていた。

  • 76125/03/02(日) 01:17:48

    >>75

    「え、え、SHOTA……!? 本物!?」

    「やばっ」


     そこに立っていたのは羽根山和歩だった。毛量の多いピンクの髪を後ろで一つ結びにして、大きな眼鏡をかけている。ピンと伸ばした背筋とパンツスーツはいかにも仕事の出来る女という感じだが、手から取り落された荷物が彼女の変わって無さを表していた。

     灰廻は【彼】を抱えると、羽根山の横を颯爽と通り過ぎていく。後ろで大きな声がした。


    「コーイチ! ちょっとあんた説明しなさい!」

    「ごめんあとで!」


     これは絶対に夫婦喧嘩に発展すると思いつつ、【彼】は大人しく灰廻に運ばれた。その後ろ、エリが同じポーズで固まっているのを見て、ほんの少しの罪悪感を抱きながら。


     ‡


     先ほどから灰廻の携帯がうるさい。結局あの後逃げ回り、帰路に就いたのは夜になってからだった。彼の私用の携帯は震え続け、メッセージが永遠に来ている。


    「出たほうが良いんじゃないですか?」

    「仕事じゃなくなっちゃうから……」

    「そういう分別はついてるのにBLACK CASEファンの前に俺を連れてくことはするんですね」

    「ぐぁっ、バレてた」

  • 77125/03/02(日) 01:18:28

    >>76

     バレないとでも思ったのだろうか。

     灰廻は唇を突き出して拗ねた顔をする。四十近い男のする顔ではなかった。


    「だってさあ、みんな明日のライブすっごい緊張してたんだもん。良い感じに和ませたくって」

    「俺が今何でここにいるのかとかわかってます?」

    「いやそれはほら……ファンの声を聞いたら元気出るかなって」


     絶対に今考えた言葉だな、と【彼】はため息を吐く。

     人通りの少ない道路を、すいすいと車が通っていった。行きもそうだが、バスらしき車体とはすれ違わない。駅に近い方に進んでいるのにおかしいと思い、話題を変えたがっている灰廻に問いかける。


    「……バスはこっち通ってないんですか?」

    「そうだよ、すごい遠回りになっちゃうんだよね。まあ行けるっちゃ行けるけど三倍くらいかかるんだ」

    「へえ」


     会話が終わる。【彼】にとって沈黙は痛くないが、灰廻はそうではなかった。この男は自分のせいで会話が途切れることをやけに嫌う。

     首を左右に伸ばして動かし、何かを堪えるように口元を引き結ぶ。そして結んだ口を何度か揺らして、開いた。

  • 78125/03/02(日) 01:19:19

    >>77

    「あ、あのさあ」

    「なんです」

    「昼間に「自分が何者なのか」って話をしたでしょ?」


     まさか自分からあの話を盛り返すとは思っていなかったので、【彼】は驚いて灰廻を見た。まるで凶悪敵と対峙しているかのような緊張感でフロントガラスを睨みつけて灰廻は言葉を絞り出す。


    「あれ、俺なりに考えたことが、その、ありまして」

    「……まあ、聞きましょう」

    「相談したの君なのに態度デカいな」


     どうしても灰廻相手だと舐めた態度になってしまうがそれを改める気もなかった。少し灰廻は不機嫌になるが、それで言葉をとめるほど子供でもない。


    「俺は鳴羽田でヴィジランテをしてた頃、大きな敵騒動に巻き込まれて……恥ずかしい話だけど、すごい額の借金とすごい数の裁判を抱えることになって海外に行ったんだよね」

    「逃げたんですよね」

    「違う違う! ヒーローになって周りに許してもらう作戦!」


     それを暗に人は逃げたというのではないだろうか。実態は多少違うことを【彼】は知っていたが、灰廻が必死に訂正するのが面白くて「そうなんですか?」と意地悪く尋ねた。

  • 79125/03/02(日) 01:20:04

    >>78

    「そうだよ! ヒーローになって、世論を味方につけて……ってこう言ってると逃げてる感あるな……まあ逃げはしたんだけどもね」

    「認めないでくださいよ」

    「まあとにかく! 俺は海外でC・C(キャプテン・セレブリティ)っていうヒーローの事務所に所属するヒーローになったんだけどさ、その頃ちょっと苦しくて」

    「苦しい?」


     訴訟問題を多く抱えていたことだろうか。

     灰廻は「お金の問題とかじゃなくって」と断りを入れた。ますますこの男らしくはなかった。


    「……多分SHOTAくんみたいに、ヴィジランテ活動から俺を知った人にはあんまり想像できないと思うんだけど、俺海外に居る時ずっと『ヒーロー』になれなくって」

    「ヒーローだったんでしょう?」

    「ああえっと、免許の問題じゃなくて。なんだろ、心構え? みたいなやつ」


     人通りが少なくなったからか、灰廻は走る速度を落とした。会話に集中したいと視線が少し横に揺れる。そのあと路肩に車を停めた。


    「好きな飲み物ある?」

    「お茶で」

    「はいよ」


     近くの自販機でお茶とコーラを買い戻ってくると、よく冷えた百二十ミリリットルのそれを【彼】に手渡す。自分は手に持ったコーラのプルタブをあげて、一口飲んだ。

  • 80125/03/02(日) 01:20:57

    >>79

    「さっきの続きなんだけど、俺はヴィジランテをやってた時大体の最終目標が「他のヒーローが来るまで時間を稼ぐ」だったんだ。勿論、自分で出来る限りのことはしたけど結局最後はヒーローが来るまで粘る、っていうことが大事だった」


     でも、と彼は続けた。


    「ヒーローになったら俺がその最終目標になった。みんなは俺が解決することを望んでて、それが出来ないとヒーローとして認めてもらえない。まあ当たり前だよね、最後に問題丸投げするヒーローなんて支持されるわけないし」


     コーラを一口飲み、良く冷房が効いた車内で背もたれに体を預けた。灰廻はぼんやりと上を見上げる。


    「結構俺って楽観的なところがあるってみんなから言われることが多くって、自分でもそう思う事結構あったんだけど。あの頃はそう思うことも出来なくて、明日が来るのが怖い! って思う日もあった」

    「……クロウラーが?」

    「やっぱそういう反応になる? なるよね! うーん、これ色んな人に言ってもポップ以外誰も信じてくれない」


     灰廻航一と言う人間を知っているほど、信じられなくもあるだろう。それくらい彼の人物像と乖離している。


    「夜寝る時いつも思った。鳴羽田に帰りたい。ヴィジランテをやっていた頃に戻りたいって」

  • 81125/03/02(日) 01:21:55

    >>80

     動画の中で見たザ・クロウラーは、そんな姿を見せなかった。頼りない姿で現場に現れてはなんだかんだ事件を解決して、片言の英語で「はい! 全力で!」と現地のインタビュアーに答える姿ばかりが映っていた。

     彼の瞳が、車の天井からフロントガラスの向こう側へと移る。真っ暗な道が続いていて、まばらな電灯がその道を示していた。


    「その度に、思い出す言葉があったんだ」


     口元がわずかに笑みを形作る。まるで誇らしいことを言うように、彼の口元が大きく開く。



    「『お前のいるべき場所は、ここじゃないだろう』」



     【彼】は目を見開いた。

     その言葉には覚えがあった、敵に囲まれた乱戦の中、一人の少年を少女を助ける為に背を押したその言葉。


    「俺が日本に居られなくなった原因の事件で、ある人が言ってくれた言葉でさ。あの言葉があったから俺はあの時大切な人を守るために走り出せた。夜を翔けることが出来た。いるべき場所に行くために、頑張ることが出来た」


     灰廻はコーラをまた一口飲む。もう炭酸が抜け始めているのか、口元からしゅわりという音は聞こえなかった。


    「別にその人が特別ってわけじゃないんだよね、俺があの頃お世話になった人は沢山いて、みんなが居たおかげで戦うことが出来た。元気がない時に思い出したのはなるフェスのメンバーだったし、戦闘で上手くいかない時に思い出すのはソーガさんや師匠たちだ」

  • 82125/03/02(日) 01:22:59

    >>81

     一口、二口とコーラを合間合間に飲む。

     照れを隠すように口元を見せないよう飲んでいるのだとようやくわかった。


    「でも、一番逃げたいときに思い出すのはあの人の言葉だった。鳴羽田に逃げたい俺を、そこはお前のいるべき場所じゃないだろうって叱ってくれる声は、あの人の言葉だけだった」


     なんでだろうね、先生やってるって言ってたからかな。と彼は寂しそうに笑った。コーラを少し傾けて飲んでから、ドリンクホルダーに置く。

     【彼】は話を聞くあまり手に握ったお茶を開封することが出来なかった。


    「その頃真面目に、いるべき場所を考えるようになった。そうしたら、今目の前にいる人たちを助ける為にヒーローって職に向き合えるようになったんだ」


     彼はぽつりぽつりと、当時のことを話した。

     敵を取り押さえられなくて怒られたこと、時間稼ぎばかりをすることが敵組織にバレて不意をつかれたこと、そのあと自分の技を進化させて捕縛する術を身に付けたこと。

     一つ一つを丁寧に話す彼の言葉を聞いて、【彼】は目を細める。

  • 83125/03/02(日) 01:23:36

    >>82

     ここに居るのは、かつての灰廻航一でも、【彼】の知っているザ・クロウラーでもない。ヒーローだと。

     その自認の中で彼の胸に去来するのは先ほどエリにしてしまった仕打ちだ。まるで過去を思い出させるようなことを聞いた。彼女に過去のことを覚えていてほしかった、まだ昔の思い出に居てほしかった。



     相澤消太と共に過ごした日々に居てほしかった。



     けれど、そんな願いは間違いなのだ。生きている人は死んだ人間を置いて前に進んでいくし、死んだ人間は忘れられていく。

     ……だが、それでも。こうして誰かの心には残っている。かかわった全ての人の記憶を人生の糧にして、人は今を生きている。


    「……わかってたはずなのにな」


     彼女に酷いことをしてしまった。謝らなければいけない。思わず口から出た言葉に灰廻はきょとんとした顔を見せる。


    「えっ、今何か言った?」

    「いえ、何も。続けてくれますか?」

    「ああうん、ええっと、あのさ」

  • 84125/03/02(日) 01:24:35

    >>83

     灰廻は一度深呼吸をした。手元のコーラは全部飲み干されている。


    「君は自分が何者なのかわからないって言ったけど、それはまず自分がいるべき場所を考えてからでも遅くないんじゃないかな」

    「いるべき場所……」


     オウム返しをした言葉に灰廻は力強く頷く。

     いるべき場所、そう言われて思いつくのは沢山ある。雄英高校、相澤消太の実家がある鳴羽田、居候しているマイクの家。……そのどれもが、違うと本能が告げている。脳裏に浮かぶのは四人の男と、一人の女性。


    「まずはそこに帰ってみよう。そうしたらさ、自然と自分がいま何者なのかって考えられるんじゃない?」

    「……」

    「ってごめん、偉そうだったかな」

    「……いえ」


     【彼】は初めて茶の蓋を開ける。

     パキリという音を立ててペットボトルが開けられた。


    「有難うございます」


     一度礼をして茶に口をつけた。どこにでもある自販機の味が、やけに心を落ち着かせる。

     【彼】が落ち着いたのを見計らって、車が発進した。行く先を示すように街灯が灯す道を進んでいく。茶を飲みながらその道の向こうをぼんやりと見ていると、次第に森に入りそして視界が開けてオールマイトの別荘が見えてきた。

  • 85125/03/02(日) 01:29:18

    >>84

    「……っ」


     警備システムの為かやけに明るい庭先に、見知った車がある。その車から出て来ただろう四人組の男が、玄関の前で呼び鈴を鳴らしていた。


    「……どうして」


     口から出た疑問の声に、灰廻は応えない。

     代わりに、車を駐車場に入れる前に停めた。


    「行って」

    「え」

    「行った方が良い」


     至極真剣な顔で言われて、【彼】は躊躇う。【彼】はメンバーの過去をぐちゃぐちゃにした張本人だ。しかも弁明をすることもなく、この大事な時期に逃げ出している。それなのに、今出て行って良いわけがない。

     灰廻は携帯を取り出して画面を見せて来た。私用携帯の鬼着信で気配が薄れていたが、どうやら仕事用にも連絡が来ていたらしい。

     オールマイトからのメッセージを見せ、灰廻は【彼】の目を見る。


    「なんでこの場所が割れたのかはわからないけど……オールマイトから来客があるって連絡来てた。あの人たちは正規の方法で場所を知った人たちだよ」

    「でも」

    「たぶん、あそこが君のいるべき場所なんでしょ」

  • 86125/03/02(日) 01:29:52

    >>85

     灰廻の手がシートベルトを外した。体が解放され、急に心細くなる。

    「俺、俺はあいつらを」

    「あんまり事情は良くわかんないけどさ、君に会いにあの四人はここに来たんだよ、東京からここまで車に乗って!」


     【彼】に、会いに。

     心臓がバクバクと音を立てる。こちらのライトに気が付いた四人が軽自動車を指さしていた。彰らしき影が走ってこちらに向かってくる。

     【彼】は震える手で助手席の扉を開けた。夏の夜の暑い空気が頬を撫でる。それなのに、血の気は引いていて少し寒かった。

     出て来た【彼】を見て、四人は心底安心したような顔を見せる。


    「あの、俺」


     四人が声をかける前にまず謝らなければ。

     仕事を前に逃げ出したこと、昔光木を傷つけたこと、倒れて心配をかけたこと。沢山ある。どうにか口を動かして声に出そうとした瞬間、体が暖かな何かに包まれた。


    「え……」

  • 87125/03/02(日) 01:30:16

    >>86

     それが、光木の大きな体に抱きしめられていると気付いたのは、彼の使う香水が鼻を掠めたからだ。


    「無事でよかった……!」

    「みつ、き」

    「心配したんです、していたんですよ。真面目な君に仕事を投げ出させてしまうくらい追いつめてしまったと、どこかで酷い目に合っていないかと」


     ぎゅう、と痛いくらいに抱きしめられる。こんな力強く人に抱きしめられるのはいつ以来だろうか。光木の声は涙声だった。

     彼は暫く抱きしめてから、体を離す。サングラス越しの瞳が、目線の高さを合わせて【彼】を見ていた。


    「ショータ、話したいことがあるんです」


     真剣な声は、何か吹っ切れたように真っ直ぐ【彼】の耳に届いた。

  • 88125/03/02(日) 01:36:55

    >>87

    ここまで!

    あと一話で完結予定です!

    続きは明日持ってこれれば持ってくるけどちょっと予定入ってるから難しいかもしれん


    一気読みurlはこちら

    11話【中編】 | Writening 久しぶりに自分の髪を見てから、『あの頃』のように白雲の夢をよく見るようになった。  意識してはいけないとずっと封じ込めていた白雲霞と言う事実から目を背け続けた罰だろうか。それにしては夢の中の白…writening.net

    朝来てどこから始まりかわからない人へ>>54がスタートです

    ここまで読んでくれてるスレ民に感謝

    寝るぜ

  • 89二次元好きの匿名さん25/03/02(日) 07:59:14

    予想外にコーチイがいい事言うから感動しちゃった
    エリちゃんが前に進めたのもミツキが踏ん切りついたようなのもすごい安心した
    あとはショータだな!続き楽しみ!

  • 90二次元好きの匿名さん25/03/02(日) 08:03:20

    ヴワー!!
    解決に向かってるし終わりも見えてきたのにまだなんか一波乱ありそうで怖い!!!
    でもハッピーエンドならどんな地獄を経由してもOKです

  • 91二次元好きの匿名さん25/03/02(日) 08:20:52

    凄いよスレ主…
    航一の口調って難しいのに違和感なく書けるの凄すぎる
    そしてエリちゃんの決意とか航一の自分が何者なのかに対する返答が凄い学びになる…
    この話って道徳の教科書とかに載ってたっけ???

  • 92二次元好きの匿名さん25/03/02(日) 09:23:15

    コーイチがイレイザーからかけられた言葉からの流れあまりにも美しすぎる
    エリちゃんの成長も眩しいし話が面白すぎて終わって欲しくないけど続きが楽しみ
    最終話リアタイしてえ

  • 93二次元好きの匿名さん25/03/02(日) 13:24:21

    今日このスレ見つけて一気読みしました!文才がありすぎてビックリしました凄く面白かった!で、まじで場違い過ぎる事言って申し訳ないですけど完結したらでもifでもいいからマジで貝のオファーを受けちゃったショータが見たすぎる・・・バドエンifもすごい良かったですけどそれとはまた違う受けちゃった奴も見てみたいな〜と思いましたワガママ言ってすいません💦

  • 94二次元好きの匿名さん25/03/02(日) 16:19:28

    コーイチってヒーロー精神は持ち合わせてても最終決戦で「テレビが来た!これでヒーローが来てくれる!」って感じだったよね
    そこ拾って先生の言葉を合わせて今に繋げてくるのすげえわ
    なんか読むたびにこれ本当にこんな場末の掲示板に載せててええんか?ってなるな

  • 95二次元好きの匿名さん25/03/02(日) 16:40:35

    正直全作品のまとめが即売会とかで出たら
    言い値で買うレベル

  • 96二次元好きの匿名さん25/03/02(日) 17:13:37

    スレ主って某支部に小説投稿したことある?
    なんかとても既視感があるんだ
    文量多い完結済のやつ…丁寧な曇らせの後のちゃんとしたハッピーエンド
    ドルパロの設定とかなり境遇とか似てるし(だからと言って飽きる訳ではないが)
    色々ぼかしたけど聞かれるの嫌だったり勘違いだったらごめんなさい

  • 97125/03/02(日) 18:07:48

    ただいま~

    やっぱ今日無理だわまた今度書くね


    >>89>>90>>91>>92>>93>>94>>95

    褒めてくれたり感想くれたりありがとうやで!

    もうすぐ完結するから最後まで見てくれると嬉しい!


    >>96

    あるで!とだけ言っておく

    ただジャンルも垢も基本何度も渡り歩いてるからどれのこと言ってるかはわからん

    if物でシリーズ合わせて30万字こえてて全年齢ならたぶんワイ

    まあ答え合わせはしないでこうや



    みんなピンときた作品を見ても「あにまんで今作品書いてますか!?」とか凸すんのはやめてくれな

    あとこのスレに「この垢もしかしてスレ主!?」って持ってくんのもやめてな

    当たってても当たってなくてもワイは全部「いや知らねっすね」としか言えんので

  • 98二次元好きの匿名さん25/03/02(日) 18:19:13

    ぅわ確信できる当たってるやつだ嬉しい…
    そんな無礼なことをしようとは考えもしませんでしたが了解です
    わざわざありがとうございました

  • 99二次元好きの匿名さん25/03/02(日) 18:23:20

    >if物でシリーズ合わせて30万字こえてて全年齢ならたぶんワイ

    凄すぎない…?

  • 100二次元好きの匿名さん25/03/02(日) 18:28:12

    そっかあ〜もうそこまできてんのかドル澤…後編+一話くらいで完結かな??どちらにしろ楽しみ

    別界隈(多分)でも数十万文字超えの小説書いてるスレ主ガチですげぇな
    こんな所で上質な相澤先生沢山提供してくれるのガチで感謝しかない

  • 101125/03/02(日) 18:44:57

    たぶん後編+1話くらいになると思うんだけどもしかしたら筆が乗って一回で書ききるかもしれない
    もしそうなったらみんなに見てほしいので予め投稿始める日を事前告知するね
    ここまで来たらスレ民には最後まで付き合ってほしいので

  • 102二次元好きの匿名さん25/03/02(日) 19:38:41

    絶対最後までスレ主についていくぞ!
    早く続き読みたいけど終わりがくるのは悲しいジレンマ……

  • 103二次元好きの匿名さん25/03/02(日) 20:16:21

    ドル澤完結楽しみと寂しいが入り交じっておる
    けどドル澤完結後もスレ主がここから去るまではどこまでもついて行きます

  • 104二次元好きの匿名さん25/03/02(日) 22:10:18

    > 強い意志を持った赤い目が【彼】を射抜く。置き去りにした影を打ち抜く。

    この言い回し死ぬほど好き

    エリちゃんが意志のつええ女になってて大歓喜ですよ

  • 105二次元好きの匿名さん25/03/02(日) 23:59:32

    ドル澤もだしスレ主にも最後までついてくよ
    ちょくちょく光木の時に香水の描写が出てくるのが大人の男って感じでドキッとするな

  • 106二次元好きの匿名さん25/03/03(月) 06:44:23

    コーイチは先生やミッナイが死んだこと知ってんだろうにそういうの表に出さないの大人を感じるわ

  • 107二次元好きの匿名さん25/03/03(月) 07:58:37

    コーイチが最後背中押してあげてるのいいな
    気遣いがヘタだからこそストレートに言えるの強い

  • 108二次元好きの匿名さん25/03/03(月) 12:28:13

    すごい大円団に向かって進んでる感あってワクワクする
    もう完結したら本にして欲しい

  • 109125/03/03(月) 19:55:12

    ただいま〜
    今週平日は来るの難しそう
    土曜の夜に来れると思う
    木曜には投稿開始の時間お知らせにくるぜ

  • 110二次元好きの匿名さん25/03/03(月) 19:57:13

    やった!
    週末が楽しみ

  • 111二次元好きの匿名さん25/03/03(月) 19:59:41

    もうその言葉だけで1週間頑張れる
    週末が楽しみ

  • 112二次元好きの匿名さん25/03/03(月) 20:23:17

    スレ主って何をモチベにして話書いてる…?
    ワイは支部に投稿した時のハートの数とかTwitterに流した時の反応の数に一喜一憂してしまうんやけど
    支部とかよりも見てもらう機会の少ないここでどうやってモチベ維持してんのか知りたくて

  • 113二次元好きの匿名さん25/03/03(月) 21:46:52

    うおおおお!楽しみ!
    まじで労働の励みになってるスレ主のss

  • 114二次元好きの匿名さん25/03/03(月) 22:22:56

    このレスは削除されています

  • 115二次元好きの匿名さん25/03/03(月) 22:23:46

    このレスは削除されています

  • 116125/03/03(月) 22:39:26

    >>112

    前にあった「どうやって書いてる?」って質問の時も思って言えなかったんだけどここを二次創作の相談窓口にするのはできればやめて欲しい

    ここはあくまで相澤先生のssを書いたり先生のことを語るスレなので

    創作系ならその他カテで立てると人も来てくれると思うよ


    ただ112は今までのスレを見て有り難くも私に相談したいと思ってくれたんだとも思うから今回は私も真面目に答えるね


    私は基本自分を貶す人が居なければジャンル移動するまで無尽蔵にモチベが沸いてくるタイプ

    ただ貶す人が現れた瞬間に全部やめて二度とそのジャンルで二次創作しないまである

    その嫌いな人の目に自分の文が触れるのが嫌すぎるので

    あと単純にあんまりブクマやいいねの数字にあんまり興味がない

    増えるのは嬉しいけどその為に頑張ろう!とはなれない


    あにまんで書いてる理由はここなら逆CP書いてとか人気キャラの話書いてとか私の推しキャラ書いてとかこのCP以外書かないでとかマイナー推しならこのCPもいけますよねとかそれ◯◯さんのネタですよね?パクリですか?とかクソ面倒なことを言う人がいないしいたとしても削除して無かったことにして良いから


    何より書くたびにみんなが必ず感想をくれたり褒めたりしてくれるからだよみんなありがとな


    112はモチベを維持するのが出来ないなら自分のやる気がどこから出てくるかを考えたほうが良いかもしれない

    もしかしたら私みたいに数字にあんまり興味が無くて一人分の反応さえあればいいタイプかもしれないし

    そもそもなんで二次創作をしたいかとかどうして反応がないと落ち込むのかとかを分析すると良いんじゃないかな

    そうしたらそれにあった対策が出来ると思うよ

    偉そうでごめんね

    この場で聞くのも勇気が必要だっただろうに相談してくれてありがとう

  • 117二次元好きの匿名さん25/03/03(月) 22:48:27

    凄い真面目で素敵な回答だなと思うのに途中で挟まった尋常ではない怨嗟に笑うとこじゃないのに笑ってしまう

  • 118二次元好きの匿名さん25/03/03(月) 22:58:45

    完全匿名じゃないと感想投げれんスーパーチキンやからスレ主がこの板来てくれて嬉しいやで
    相澤先生にハマって神SSまで書いてくれてほんまにありがとうやで

  • 119二次元好きの匿名さん25/03/03(月) 23:13:24

    初代スレから追ってきてるけど本当にスレ主のおかげで毎日が生きがいになってる

  • 120二次元好きの匿名さん25/03/03(月) 23:18:09

    >>116

    スレチなのに答えてくれて有難う

    もらったアドバイスを一回考えてみる!

  • 121二次元好きの匿名さん25/03/04(火) 06:18:45

    やっぱ二次創作する人も大変なんやなあ
    ここで書いてくれてありがとやでスレ主

  • 122二次元好きの匿名さん25/03/04(火) 08:02:07

    いるべき場所でショータがなんだかんだ思い浮かべたのがメンバーの元だったの嬉しい
    最後駆けつけたとこもみんな必死な感じが伝わるし更に良いグループになっていきそうでワクワクするな

  • 123二次元好きの匿名さん25/03/04(火) 12:31:31

    ショータはもう相澤先生じゃないんだよっていうのを本当に丁寧に書いてくれてやっと受け入れられてきた
    先生も周りも前に進んでるけどその中にはちゃんと先生と過ごした思い出も残ってるって言うのあったかくて良いなあ
    完結したら思う存分語りてえぜ

  • 124二次元好きの匿名さん25/03/04(火) 18:55:10

    スレ主の書く話が丁寧なのわかる
    展開も読んでてスって入ってくるしわかりやすい

    話で一番気になるのはマイクとショータが和解できるかなんだよなあ
    こっからどうやって2人の蟠りを無くすんだろう

  • 125二次元好きの匿名さん25/03/04(火) 19:51:21

    >>119

    ほんとそれ

    私も初代から追ってたけど

    このスレが立った時から毎日楽しみながら読んでる

    スレ主いつもありがとう


    ここから個人的な話になるけど

    スレ主の言い回しとかがほんとに好き

  • 126二次元好きの匿名さん25/03/04(火) 21:02:15

    スレ主の言い回しだとこう言うのが好き
    セリフの後に単語とか言い切りの形がくるやつ
    こういう形ってなんか名前ついてんのかな

  • 127二次元好きの匿名さん25/03/04(火) 22:17:54

    最近だとショータが自分見失った時の主語の変わり具合が本当にグチャグチャな気持ちとマッチしててすごいのめり込んじゃったな
    あとミツキの香水の描写!
    なんかムスク系の香りしそうだなとか近付いた時に香るの本当モテる男って感じだなとか想像できて普通に大興奮した

  • 128125/03/04(火) 22:53:04

    みんな文章褒めてくれてありがとう
    とっても嬉しいぜ

    クソ労働のためもう寝るんですが何度か光木の香水について話が出てるので奴が使ってる香水のっけときます
    ガチガチのレディースもんだけど男が女物の香水使ってると男臭さが消えてエロいのと自分のキャラに合っていると発見してからずっと使ってると言う設定

    寝るぜ

  • 129二次元好きの匿名さん25/03/04(火) 23:12:41

    身長187cmでサングラスに無精髭生やした男がレディースの重めの香水つけて敬語使ってんの沼すぎてやばい
    いや冷静に考えてめちゃくちゃ好きだが…
    スレ主良ければ光木のイメージの髪型とか出してくれると嬉しい…出来ればBLACK CASE全員分あるととっても嬉しい…

  • 130二次元好きの匿名さん25/03/04(火) 23:54:02

    優男風バチクソイケメンからこんな香りしたら狂う
    しかもちゃんとふんわり香る程度につけてるんだろ
    そりゃモテるわ

  • 131二次元好きの匿名さん25/03/05(水) 07:57:56

    これは大人のモテる男だしなんか恋多き男のイメージにピッタリやな
    香水情報来たから光木の色気が凄いことになってる

  • 132二次元好きの匿名さん25/03/05(水) 12:19:36

    光木愛用の香水がわかってから「絶対女いるじゃん…」ってダメージを受けるファンになってしまった
    元から恋多き男って言われてたのになんでこんなダメージ受けてるんだろう

    全員分のイメージ画像みたいなの欲しくなってくる
    儚げミステリアス男子(見た目だけ)なショータも気になるし

  • 133二次元好きの匿名さん25/03/05(水) 18:48:22

    光木イメージだとムスクだったんだけどレディース香水か
    ピンと来なかったけど良い女の匂いさせてるグループ最年長を考えたらめちゃくちゃ最高だった
    新しい扉をありがとうスレ主

  • 134二次元好きの匿名さん25/03/05(水) 22:15:21

    オリキャラなのにここまで人気になるのは本当にスレ主の技量の高さが分かる

  • 135二次元好きの匿名さん25/03/06(木) 07:25:46

    保守

  • 136二次元好きの匿名さん25/03/06(木) 08:10:15

    他のメンバーにあんまり香水とかのイメージがないからこういう細部に気を遣ってる光木が一段と大人に見えるな

  • 137二次元好きの匿名さん25/03/06(木) 12:27:54

    ファンミに来るヒーローたち錚々たる面々すぎるからそのうち「SHOTAのファンミにいくとヒーローとしての御利益がある」みたいな噂とか広まってそう
    参拝に来るヒーローたちに「自分の力で這い上がれよ…」って相澤消太が出てきちゃうショータ見たい

  • 138125/03/06(木) 21:29:09

    ただいま〜

    クソ労働すぎる
    最終話投下時間のお知らせにきたよ
    日曜日の昼12時から投稿し始めるから見にきてくれると嬉しい

    またこれるまで日が空くから保守をお願いします…!

  • 139二次元好きの匿名さん25/03/06(木) 21:29:45

    やった!
    終末が楽しみ!

  • 140二次元好きの匿名さん25/03/06(木) 21:32:11

    定期的に楽しみにされる終末草

    保守任せろ〜!

  • 141二次元好きの匿名さん25/03/06(木) 22:53:46

    スレ主お疲れ様
    日曜12時からか!めちゃくちゃ楽しみ!
    メンバー達の話し合いがどう進むのか生まれ変わりにどう折り合いがつくのか想像するだけでワクワクする

  • 142二次元好きの匿名さん25/03/07(金) 06:42:38

    曜日了解〜
    これでもう少し頑張れるぜ

  • 143二次元好きの匿名さん25/03/07(金) 08:03:10

    ついにきちゃうのか最終話
    みんな幸せ大団円になってくれ〜

  • 144二次元好きの匿名さん25/03/07(金) 17:45:55

    あぶねえ保守!!

  • 145二次元好きの匿名さん25/03/07(金) 22:49:32

    最終話どうなるんだろうな…
    めちゃくちゃ楽しみすぎて日曜が遠い

  • 146二次元好きの匿名さん25/03/08(土) 01:29:08

    あんなかっこいいこと言いつつちゃんと公私混同しちゃうコーイチのダメさ加減すごい好き
    スレ主がここら辺の雰囲気上手く出せるのすごい

  • 147二次元好きの匿名さん25/03/08(土) 08:07:44

    わかる結局公私混同するんかい!ってなった
    原作キャラだと出せない味だよな

  • 148二次元好きの匿名さん25/03/08(土) 17:12:28

    ついに明日か…
    どうなるのかドキドキしてきた

  • 149125/03/08(土) 21:10:16

    途中経過なんですけどちょっと馬鹿の文字数になりそう
    具体的に言うと光木過去編より長くなるのがほぼ確定した
    明日は昼12時に流したら一回休憩とって21時にもっかい流しに来るね

    投稿の休憩って何……?

  • 150二次元好きの匿名さん25/03/08(土) 21:39:48

    長編自分はめちゃくちゃ嬉しいドンと来いやで
    1日かけて最終話リアタイできるの最高や
    投稿の休憩面白すぎる
    スポーツの大会みたいやな

  • 151二次元好きの匿名さん25/03/09(日) 00:49:50

    ほぼ半日かけてss読めるの嬉しい
    ていうかファッキン労働もあったのに長編書き上げられるスレ主の体力すげえな

  • 152二次元好きの匿名さん25/03/09(日) 02:38:38

    光木の過去編が確か2万字オーバーだったよね…?それ以上…?
    スレ主筆が早すぎるいつ書いていつ寝てるんだ…

  • 153二次元好きの匿名さん25/03/09(日) 11:35:19

    あとちょっとで読めると思うとワクワクしてきた

  • 154125/03/09(日) 12:00:02

     マネージャーは普段、滅多に感情を表に出したりはしない。どんなことがあっても飄々と立ち回りまだ未熟なBLACK CASEたちの基盤となっている。
     だが、そんな彼女でも緊張することと言う物はあった。ビリビリと目の前から伝わる威圧感を浴び、隠しきれない焦燥を身から滲みださせた。知らずの内に手が震えそうになるのを堪え、青い瞳を見つめる。

    「お越しくださり誠にありがとうございます、オールマイト」
    「いやいや、私の方こそ連絡が遅くなってしまって申し訳ない。マネージャー殿、と呼べばいいかな」

     偽名すら名乗れないことを恥じる。深く頭を下げればかつてのナンバーワンヒーローはその気配を納めぬまま朗らかに笑った。
     彼に気付かれぬよう息を吐き、マネージャーは上ずる声を業務の仮面で押しつぶす。

    「弊社所属タレントのSHOTAが今どこにいるのか、教えていただけませんか」
    「それは難しい」

     オールマイトは穏やかながらも取り付く島もなく断った。人を馬鹿にしている仕草もなく、対等な相手として見られているに違いないのに、たった一言を受けただけでマネージャーは心がおられそうになる。

  • 155125/03/09(日) 12:00:52

    >>154

     こんなことは初めてだった。だが、彼と対峙すると決めた時からこうなることは分かっていた。


    「明日はフェスの本番です、彼らと他のメンバーに亀裂が入ったまま仕事に臨ませたくはないのです」

    「君の言いたいこともわかる。だが今彼には一人になる時間が必要だ。今までずっと周りも見ずに走り続けてきた少年に、これ以上多くのことを背負わせるべきではない」

    「いかにもオールマイトらしいお答えだ」

    「そうとも。私はそうとしか生きられない」


     今はストライプ柄のスーツに身を包んでいるが、マネージャーにはあの頃のヒーロースーツが幻視されていた。服を押し上げる筋肉も、全てをなぎ倒す超パワーも存在しないけれど、この人は間違いなく『オールマイト』だ。

     それがどうしようもなく、嬉しい。

     だが今は郷愁に耽っている場合ではない。マネージャーは視線をあげ、再度その青い瞳に立ち向かう。


    「……こういう噂を聞いたことはありますか?」

    「噂?」


     この話をすれば自分は破滅するかもしれない。

     もうBLACK CASEには戻ってこれないかもしれない。それでも、この英雄から情報を聞き出すために不誠実なことは何一つ残したくはなかった。

  • 156125/03/09(日) 12:01:31

    >>155

     それがマネージャーに出来る、唯一の懇願だった。


    「もう三十年近く前……貴方が全盛期だった頃、海外で国を滅ぼすほど大きな敵騒動が起きそうになると、必ずどこからか情報が漏れてたちまちのうちに現地ヒーローに伝わり鎮圧されてしまう、ということが立て続けに起きたでしょう」

    「……『フェアリーレコード』か。確か、まるで妖精がどこかで聞き耳を立てているかのように不自然に情報が漏れ出ると、聞いたことがあるよ。神の導きのようだった、ってあるヒーローも言っていたな」


     胸が熱くなる、涙が出そうになった。マネージャーと視線の合ったオールマイトが、目を見開く。


    「まさか」


     マネージャーは呆然とするオールマイトの手を握る。死線を幾つも超えて来たヒーローの手だ。節くれ立って皴だらけで、全てを包み込めそうな程に大きい。

     力強くぎゅう、と握った。


    「妖精はまだ十歳程度の小さな子供でした。触れた人や物の記憶を見ることの出来る“個性”を見抜かれ、国にスパイとして利用された。妖精にとって日々の癒しはテレビの中で活躍するキラキラした異国のアイドルだけだった」

  • 157125/03/09(日) 12:02:20

    >>156

     オールマイトは一瞬手に力を籠めたが、それを緩める。

     彼の目には一体今何が映っているだろうか。眼鏡をかけた気の強い女だろうか、薄汚れた施設で一人寂しく眠っている少女だろうか。


    「ある日灰色の施設に閉じ込められていた妖精は青空を知った。どこからともなく現れた、神様みたいなヒーローがその屋根を奪っていったから」

    「……君は」


     あの日の青空をよく覚えている。

     宇宙の青まで見えるような深い空の色。地平線にかけて水色に薄まる空は、今まで見てきたどんな物よりも美しかった。

     その空の下、妖精たちの頭上で太陽みたいな髪を持った男が笑っていた。


    「『私が来た』と言う貴方の声にどれだけ妖精が励まされたことか」


     誰でも良かった。

     あの地獄から救ってくれるなら、どんな人でも良かった。そう思っていたのに、現れたあの人を見た瞬間「私はこの人に助けてもらうために今日まで生き延びたのだ」と、そう思った。

     オールマイトが、手を強く握り返した。

  • 158125/03/09(日) 12:03:15

    >>157

    「そのあと、妖精はどうしたんだい」

    「時間がかかったけれど国籍を偽造して日本へ。大戦が終わった直後くらいだったでしょうか」


     救われた妖精の人生はそのあとも過酷な物だった。あえて話すほどではないけれど、やっと自由に生きられるようになった頃には、あの時テレビの中に居たキラキラしたアイドルたちの年齢をとっくに追い越していた。

     知らないうちにオールマイトが引退し、太陽が陰っていたことも知った。それでも、あの時見た衝動を抑えたまま生きることなんて出来なくて、顔を変えて日本まで来た。


    「……マネージャーになって、アイドルと触れて、彼らもまたかつての妖精のように雁字搦めな生き方をしているのだとわかった。ここは食べ物が十全にあるだけの牢獄と変わりはしなかった」


     芸能界という場所はきっとキラキラしていて、みんなが幸せなのだろうと思っていた。けれど強者を際立たせるためのおまけとして消費される彼らを見て、今まで得た名声を搾り取られる彼を見て、自分の考えが間違っていることを知った。

     違法だと知っていても、この“個性”を使おうと決断するまでそう時間はかからなかった。

  • 159125/03/09(日) 12:04:17

    >>158

    「……そうか、ずっと引っ掛かっていた。幾ら君が優秀だと言っても、それだけで事務所の後ろ盾が無くなったアイドルがテレビに出られるほど世間は甘くない。だというのに、彼らは今まで以上に活躍が出来ていることを」

    「芸能界にお詳しいんですね」

    「テレビに出れば多くの人が見てくれるからね、これも一つの広報活動さ」


     彼から手を痛いほど握られる。その目は、憐れみを含んでいてもなお、敵に向けるそれだった。


    「“個性”を使用して、人々を貶めたか?」

    「……いいえ。少々脅す為に利用はしましたが、誓って人を傷つけたことはありません」


     この人はどこまでもヒーローだ。

     その事実が嬉しい。あの日救ってくれたヒーローは確かにここにある。きっとこのヒーローが言うのならば今するべきはショータを一人にすることなのだろう。

     一人にしてやって、考える時間を与えて、フェスが終わったら少し休養をして……そうすることが一番大事なのだろう。

     マネージャーも、それは分かっていた。わかっていてもなお、彼女はメンバーを焚きつけた。

     心臓をバクバクと鳴らして、オールマイトを睨みつける。痛いほど手を握るのはこちらの番だった。

  • 160125/03/09(日) 12:05:12

    >>159

    「SHOTAの今の居場所は、ここなんです」


     ショータの記憶を見た時驚いた。

     責任感と罪悪感に雁字搦めになっていて、執着にも近い感情で芸能界を目指していた。誰よりも切実にこの場に拘る彼を見て、誰もが惹かれた。

     その執着を眩しさだと勘違いして、カリスマ性を見出す者もいた。

     彼を救えるのはこの業界と名声だけで、彼に前を向かせることができるのは信頼できる仲間だけだった。


    「彼は不安定な状態で、たしかに一人でいたほうが落ち着けるかもしれない。けど、彼が求める物は一人では絶対に得ることができない。仲間の力が必要なんです」

    「だからと言って」

    「これから先ずっと、過去に苛まれる彼を見るたびに仲間から遠ざけるつもりですか」


     きっとオールマイトの考えは正しい。

     そもそもショータはアイドルに向いていない、一人で心を落ち着けて考えを整理し心の傷をいやす時間が必要だった。だがその為には彼は夢を諦めなければいけない。

     そんなこと、ショータが一番よくわかっていたはずだ。それでも彼は、この虚飾煌めく芸能界で傷つきながらも進む道を選んだ。

  • 161125/03/09(日) 12:06:13

    >>160

    「彼は貴方の懸念を全部わかっていてなお、この世界に飛び込んできたんです。ならば、同じ志を持つ仲間たちと共に痛みの中で前に進ませてやることが、今一番大事なのではないですか」


     同じくらい芸能界に執着を持ち、同じ歩幅で歩める四人のアイドル。それは、昔一人で何もかもを解決しようとしていた彼にはきっと想像しがたい仲間だ。

     手を握る力が強くなる。


    「……あの子が一番心を傷つけた時、助けてくださった貴方に頭は上がらない。きっとそうでなければ彼の心は壊れてしまっていただろうから」


     それでも。


    「それでも譲れないのです、オールマイト。偉大な貴方の優しい心を踏みにじることになって申し訳ないが、我々は彼の居場所として、共に歩まなければいけない。それは決して先延ばしに出来ないことなのです」


     フェスくらいまで一人にしてやりたい。

     考える時間をあげたい、無理に心の傷をかさぶたにしようとしないでやりたい。

     幾らでも彼に対する同情の言葉は出てくる。この芸能界から遠ざけてやりたいという愛情すら湧いてくる。

     それら全てを無視しなければ、この痛みの中彼が前を向くチャンスは逃げてしまう。

  • 162125/03/09(日) 12:07:32

    >>161

    「今でなければいけないのです」


     オールマイトは、ひどく悲しそうな顔をする。手に強く力を入れたが、それが脱力した。


    「……それが、彼の心の傷を癒す時間を奪うとしても?」

    「はい」

    「一人の少年として健全に生きる機会を逃すとしても?」

    「はい」

    「彼に、アイドルとして生きそして死 ねと、君は言うのかい」


     露悪的な言葉を使われてもなお、首を横には触れない。


    「はい」


     オールマイトは目を伏せた。

     そして、全ての記憶を渡した手をゆっくりと離していく。浅いため息が漏れていた。


    「……私は彼に、幸せに生きてほしいんだ」


     独り言のように呟かれた言葉は、空気の中に溶けていく。オールマイトの記憶を見て、その優しさの根幹にある感情に気付きながらも、マネージャーは言葉にはしない。それをきっとオールマイトも望んでいた。

  • 163二次元好きの匿名さん25/03/09(日) 12:07:51

    >同じ歩幅で歩める

    うわあ…わあ…

    黒デクの時の…

  • 164125/03/09(日) 12:08:31

    >>162

    「彼はヒーローではないのだから」


     眠るショータの口からうめき声や悲鳴を聞いたこと。

     ショータの両親から過去の全てを聞いたこと。

     そして、白い病室で相澤消太を見送ったこと。

     どこまでも優しいこの人に、これだけ苦しむ子供の姿を見せてそれでもなお、自分は「ショータを見捨てろ」と言っている。


    「貴方のこの決断を、私は絶対に後悔させない」


     脳裏に浮かぶのはレッスンルームで自主練に励むショータの姿だ。そして、それを取り囲む他のメンバー性質がそこには居る。


    「彼の目指す場所に必要な事だったのだと、明日のフェスで証明します」


     青い瞳が一度力なく萎れてから目を瞑り、もう一度あの強いエネルギーを感じさせる眼力でマネージャーの目を見つめる。


    「そうか、期待してるぜ」


     その言葉に恥じぬ行いをしよう。

     受け取った記憶を手に、マネージャーは部屋を出て行った。

  • 165125/03/09(日) 12:09:34

    >>164

     ‡


     何をどうやったのかは知らないが、マネさんがショータの居場所を突き止めた。フェスのリハを終えた頃にはすっかり夜になっていたけれど、まだ余力のあった僕らは車に乗り込んで静岡までの道を急ぐ。

     マネさんは仕事があるからと現地に残った。彼女には本当に頭が上がらない。

     下りのルートは空いていて、そう時間もかからずにつけそうだった。道中車内はずっと無言だった。僕は一人で考えを纏めたいからと助手席に誰も乗せず、一人進行方向を見つめて自分の考えを纏めていた。

     だが車を走らせている時、簡単に思考は纏まってくれなかった。沢山の感情がどうしようもなく渦巻いて、自分の考えを邪魔してしまう。


    「僕は……」


     口に出せば少しは纏まるかと思ったが、そもそも出せる感情が思いつかない。

     反対に不安は大きくなっていった。もし、ショータを目の前にして僕の怒りが爆発してしまったらどうしようとか。彼に酷い言葉を浴びせてしまったらどうしようとか。そんなことばかりが胸の中を駆け巡った。

  • 166125/03/09(日) 12:10:34

    >>165

     指定された住所に付いたとき、家が暗くなっててほっとした。彼はまだ帰ってきていないのだ。

     車から降りて、オールマイトの家の敷地を踏みしめる。一見無造作に見えるけれど整備されている草木の感触に緊張が一層高まった。


    「もーしもーし! 誰かいませんかー!」

    「オールマイトさーん!」

    「ショータ! 聞こえる? 助けに来たよー!」

    「だからオールマイトは誘拐犯じゃねえって」


     各々が玄関に向かって叫ぶ光景をどこか遠くのことのように見つめる。もし、ここで彼が出てきたらどうすればいいのだろうか。なんと言えばいいのだろうか。

     自分の中にある浅ましい怒りの感情が、彼に向ってはしまわないだろうか。

     恐れと怯えを押さえつけて「三人共一回落ち着きましょう」と声をかけようとしたときだった。


    「……あれ、ショータじゃね?」


     振り返った彰がそう言う。

     同じように振り返ると、庭先を照らすライトに紛れて気が付かなかったが、余り見た目の良くない軽自動車に乗った二人組がこちらを見ていることが分かった。

     その片方には確かに、彼が居る。

     心臓がどくりと音を立てた。今まで動いていなかったのかと思うくらいにうるさくて、耳元までその音が聞こえている。

  • 167二次元好きの匿名さん25/03/09(日) 12:11:17

    リアタイして感想も言っていくぞー!
    って思ってたのに雰囲気に飲まれて「わ、わぁ...」しか出てこない
    ちいかわ化不可避

  • 168125/03/09(日) 12:11:40

    >>166

     三人の声が遠く聞こえた。唇が震えている。

     車に駆け寄る三人のあとをどうにか追うと、観念したようにショータが軽自動車から降りて来た。


    「ぁ……」


     この情けない声は彼に聞こえていなかっただろうか。

     怯えがありありとわかる表情で、それでも目をそらしてはいけないとこちらを見る少年の姿が、僕の中にあるすべての感情を吹き飛ばした。


    「あの、俺」


     きっと自分を責める言葉を言うだろう彼に真っ直ぐに駆け寄って、背中に腕を回して力の限りに抱きしめる。彼の細い体が少し軋んで、どうしようもないくらい心臓が痛んだ。


    「無事でよかった……!」

    「みつ、き」


     心からの言葉だった。

     こんなにも小さな子供が、どれだけ不安だっただろう。自分のトラウマだけでも大変なのに、人を傷つけた罪悪感と戦って、一人で抱え込んで、どれほど辛かっただろう。


    「心配したんです、していたんですよ。真面目な君に仕事を投げ出させてしまうくらい追いつめてしまったと、どこかで酷い目に合っていないかと」

  • 169二次元好きの匿名さん25/03/09(日) 12:12:01

    >>167

    わかる

    圧倒的語彙力と表現力に殴られてる感覚

  • 170125/03/09(日) 12:12:50

    >>168

     形の良い頭を撫でる。言い聞かせるように言えば強張った体から徐々に力が抜けていくのが分かった。

     僕は何を考えていたんだろう。

     どれだけ辛かったことがあっても、今目の前にいる大切な仲間を投げ捨てる理由にはならないというのに。


    「ショータ、話したいことがあるんです」


     目を見て告げる僕の言葉に、彼が頷いたのを見て漸く笑うことが出来た。

     三人を振り返り、頭を下げる。


    「申し訳ありません、一度ショータと二人で話をしたいので席を外してもらえませんか」

    「席なくね?」

    「慣用句と言います、所謂比喩です。ちょっと話聞こえないところに行っててもらえませんかってことですよ」


     蓮に説明をすると彼は「ほーん」と言って頷いたが、遠ざかる様子はない。おかしいと思いあとの二人に目配せをするが、彰が逆に近づいてきた。


    「え、彰」


     そして、驚く暇もなく、頭をひっぱたかれる。


    「な、何するんですか彰」


     まあまあな力で叩かれて、思わず涙目になった。だが、肝心の彰は怒り心頭と言った様子でこちらに気を向ける様子はない。

  • 171二次元好きの匿名さん25/03/09(日) 12:13:11

    きゃーショータくん泣いて〜!!泣きわめいて!
    そんな姿が大好き

  • 172125/03/09(日) 12:13:49

    >>170

     何を怒っているのか困惑しているうちに、彼が大声で怒鳴り始める。


    「うるせー! ストレス無痛覚野郎と不眠症情緒ガタガタ野郎二人で話したところで解決できる分けねえだろうが! 第三者を挟め第三者を!」

    「え……」


     活火山のような怒り方をする彼に驚いて拓哉に助けを求めるが、目を伏せて首を横に振られる。ストレス夢痛覚野郎は酷くないだろうか。

     横で聞いていたショータが呆れたように口を挟む。


    「光木そうなのか? ヤバいだろ」


     君に言われたくない。

     口に出さず視線だけで訴えていると、黙っていた拓哉から否定が飛んで来た。


    「言っとくけどヤバさでいったらショータもどっこいどっこいだよ」

    「不眠症だって一時的だったしちゃんと仕事に戻れる、俺はそんなにヤバくない」

    「フェスのリハ飛ばしてんのは十分やべえんだわ」


     即座に飛んで来た彰の追撃にショータも黙る。

     ヤバさ具合で言えば年少である彼の方がずっと上だろうし、と僕も頷くが「お前はマジで人のこと言えねえからな?」と彰に釘を刺され体の自由が奪われた。

  • 173125/03/09(日) 12:15:20

    >>172

     一人能天気な蓮だけが救いだ。


    「なあダイサンシャってなに?」

    「話し合う本人以外の人のことですよ」


     彼はへえ、と言ったけれどそれ以上口を挟もうとはしない。ここに居ようとする姿勢は他の二人と全く変わらなかった。

     なにがどうなっているのか分からなくて目を白黒させていると、拓哉が助け舟を出してくれる。


    「俺たち三人で話し合ったんだよ」

    「三人で……いつ……?」


     ショータが居なくなってからずっと四人一緒に居たと思う。僕がライムさんとの口論に耐えられなくなって出て行ったときを除いて、そんな長時間離れたことはなかった。

     何より今日はリハもあったのだから、そんな話す時間なんてあるわけもない。

     そう思っていると、拓哉が三人だけで作られたグループチャットのルームを見せて来た。メッセージが投下されていた時間を見るに、運転をしていた時間帯に話し合われたらしい。


    「ひ、人が運転してる時に」

    「お前が心有らずで助手席開けてくれって言われた時はラッキーって思ったわ」


     実際後部座席に意識を向ける余裕すらなかった。三時間以上の間かなりの文量で話されており、自分の節穴さを呪った。

  • 174125/03/09(日) 12:16:27

    >>173

     隣のショータの視線が痛い。


    「結果、今二人を二人だけにするのはやめたほうがいいってことになった。これは俺たち五人全員の問題だと思うから」

    「……いや、関係ねえだろ、お前らには」

    「もっかいいうけどな、お前フェスのリハ飛ばしてんだわ。まじめなお前が」


     事実を指摘されて、ショータの口が尖る。下唇を出す彼の癖は相変わらず治らなかった。彰の最もな指摘はさらに続く。


    「俺たちは仕事で芸能人をやってて、お前だってそのことをわかってる。……っていうか、この中で一番仕事に責任感を持ってるのはお前だと俺は思ってる。そのお前が、パニックになって仕事を投げ出してんだぞ」


     そのあとを引き取るように拓哉が続けた。


    「二人ってすごい真面目っていうか、全部自分に責任があるって考えるタイプでしょ? なのに二人で話をさせたら絶対悪化するって」


     完全に劣勢になったと悟ったのか、ショータが一歩引いて三人を睨みつける。人に弱みを悟られたくないのだろう、出来れば僕と二人で内々に話を終わらせたいと思っているのが手に取るようにわかる。

  • 175125/03/09(日) 12:17:21

    >>174

    「……俺はともかく、光木は何話すんだよ。今回は俺が昔自分でやったことにビビッてパニクって逃げたんだから俺が悪いけど、光木は別に何もしてないだろ」

    「なんか謝りたいんだって」


     僕が言葉を出すよりも先に、脊髄販社のような勢いで蓮がいう。嫌な予感がするが、二人をとめられない。


    「なにを」

    「ショータのことをめちゃ強スーパーアイドルと勘違いしててごめんって言ってた」

    「は?」

    「いや違う違う違う、違いますちょっと黙ってください蓮」


     いろいろと語弊のある言い方にストップをかける。案の定ショータは目を白黒させていて、僕も心臓がぎゅうと痛んだ。

     三人はどこにも行く様子はないし、僕もこんなところで変に誤解を生んだまま終わらせたくはない。全く持って不本意だが、渋々口を開く。

  • 176二次元好きの匿名さん25/03/09(日) 12:17:35

    3人ともいけ!

  • 177二次元好きの匿名さん25/03/09(日) 12:18:13

    お、お...?思ったより真っ直ぐ大団円ルート...?

  • 178125/03/09(日) 12:18:22

    >>175

     今まで自分はこの三人をトップアイドルにするためにアイドル活動をしてきたこと。

     そしてDD9の一件で自分では力不足であると悟ったこと。

     より強いアイドルとしての指標が必要だと思い、マネージャーが主導したオーディションでその原石を探していたこと。

     ショータが僕の考える最高のアイドルであると思い、彼に沢山の仕事を押し付けたこと。

     全部を話している間、ショータはこちらをじっと見つめて大人しく聴いていた。どう思われているのかわからないリアクションに心臓がぎゅうと締め付けられる。


    「……僕は君に期待をかけ、結果としてそれが大きな負担となりました」


     一番言いたいことを告げれば、ショータはため息を吐く。


    「蓮に言われました、別にショータはアイドルが向いているわけではないと。僕が君に理想を向けて……そして今回のような、オーバーワークを引き起こしました」


     今でもショータは理想のアイドルだと思っている。

     真面目で、礼儀正しくて人に受けやすい。笑顔や愛嬌には難点があるけれど、それすらも魅力に変えられる、アイドルがもつべき不思議な力を持っていると。

     だがそれは勝手な理想だ。自分の中で押しとどめるべき物であって人に押し付けるものではない。頭を下げると、上からまたため息が降ってきた。

  • 179125/03/09(日) 12:19:22

    >>178

    「お前ちょっと考えすぎだろ」


     蓮に言われたようなことを言われて、思わず顔をあげる。


    「……俺のアイドルとしての適性と、かけられている期待の大きさに乖離があったことは自分でも自覚している」


     だけど、と彼はつづけた。


    「俺は仕事をくれるお前や周りの人間を恨んだことは一度もない」

    「ショータ……」


     彼は下唇を突き出し、少しばかり何かを考えてから、吐露するようにしゃべり始めた。


    「俺にはアイドルにならないといけない理由があった。ファンに愛されていろんな人を笑顔にするアイドルになる理由が。お前は仕事を押し付けたって思っているみたいだが、そのプレッシャーが俺を想定よりもずっと早くこの景色まで連れてきてくれた」


     真っ直ぐと僕を見る。カラーコンタクト越しの青空の瞳が今、僕を見ていた。


    「感謝してる、これは皮肉じゃない。お前が信じて仕事を任せてくれたから、俺は俺の夢に近づくことができた」

    「ぼ、僕はただ……」


     自分のやったことが過大評価されているようで落ち着かなくて言い募ろうとするけど、彼はそれを鼻で笑う。


    「お前の夢を叶えるために俺が必要だと思ってくれたのは、俺を信じていたってことと同じじゃないのか?」

    「そんな、そんな奇麗な言葉を使ってもらえるようなことはしていないです」

    「じゃあこういえばいいか? お前のバカみたいな計画は俺が逆に利用させてもらったぜって」

  • 180125/03/09(日) 12:20:21

    >>179

     ふっと気の抜けた笑みを見せられて、僕は言葉を失った。そんな露悪的な言い方をされたら、僕には言い返す言葉なんて見つからない。

     それを知っているのか、ショータは意地悪く笑った。


    「……な? 有難く感謝だけ受け取っとけばいい」

    「っ……ショータ、僕は」

    「それにな、お前仕事や理想を押し付けたって言っても無理があるんだよ」


     彼は肩を竦めた。


    「ライブが炎上したとき真っ先に助けてくれたのはお前だし、仕事の相談に乗ってくれたのはお前だ。利用していたっていうには手厚すぎる」


     彼の手が僕の肩を叩いた。

     かつてお世話になった先輩方みたいな貫禄ある姿で彼は笑う。


    「お前に敵は向いてない、おとなしくアイドルやっとけ」


     弾丸に頭を打ち抜かれたような衝撃だった。

     僕は、アイドルに向いていないと思っていた。ずっと、ずっと。こんな職業になって恥ずかしいとすら思ったことがある。

     多分そう思っているのはきっと僕だけなのだろう。あの時声をあげてくれた拓哉、異論をはさまなかった彰、堂々と目標だと言ってくれた蓮、そしてショータ。彼らの言葉が、視線が、態度が、僕をアイドルだと言ってくれる。

  • 181125/03/09(日) 12:21:14

    >>180

     小さく頭を下げて「すみません」と言えば、頭を撫でられた。頭を撫でる掌に目を瞑っていると、それが離れていく。


    「次は俺の番だ、光木」


     目線をあげると、至極真面目な顔をしたショータがそこにいた。

     緊張感の伝わる口元が、唇を潤わせるために一度舌で舐める。つばを飲み込む音が聞こえた。


    「お前は俺を白雲霞だと知ってもなお、まだ俺のことをショータだと思って信じてくれるか?」


     湿度の高い夏の夜は、音が響きにくい。

     それなのにまるで客を入れる前の劇場のように声は大きく響いた。僕にだけ、そう聞こえたのかもしれない。

     不安そうな目が僕を見ている。懇願するような視線が僕の過去を貫いている。


    「僕は……」


     言葉に迷った。

     夜と言っても暑く、早くみんなをクーラーの効いた室内へと連れて行きたいのに、それでも言葉が上手く出てこない。

     湿気を含んだ土と緑の匂いが鼻を掠める。非日常から自分の意識を連れ戻して、彼の言葉に答えた。


    「僕は、あの時怪我をしたのが白雲霞という人だったことすら知りませんでした」

  • 182二次元好きの匿名さん25/03/09(日) 12:21:34

    本っ当にかっこいいぜイレイザー

  • 183125/03/09(日) 12:22:11

    >>181

     正直に全てを話す。

     彼の本名も、あの時の少年が彼だったことも、本当に知らなかった。ライムさんは少年の名前を知っていたのだろう、恐らくは話を聞けない僕の為に色々調べたはずだ。

     真っ赤に染まった瓦礫を今でも思い出す。小さな掌が動かなくなっている姿を何度も夢に見る。


    「あの日瓦礫に突っ込んできた少年を恨んだことなら何度もあります。彼さえいなければバラエティーなんていう低俗なものに出る必要もなかったのにと心の底から考えたこともあるくらいです」


     本心を告げれば、ショータの肩が酷く跳ねた。

     怯えを隠せない彼に、とても申し訳ない気持ちになる。だが、あの傷ついてがむしゃらだった日々が無ければMITUKIは生まれなかった。


    「あの日の憎悪が、アイドルMITUKIを作り上げました。どこに向けたわけでもない怒りと屈辱が、何もなかった僕の心を埋めてここまで連れて来た」


     決してマイナスな事ばかりではなかった。プライドと自尊心が折られた僕の人生は屈辱にまみれていたけれど、それでもアイドルとなった日々全てが痛ましい思い出なわけではない。

     ただこの感情を肯定しないことにはMITUKIというアイドルそのものを否定してしまう。

  • 184125/03/09(日) 12:23:20

    >>183

    「ここに来るまで、もし君を見たら僕は怒ってしまうのではないかと不安になっていたくらいです」

    「そう……なのか」

    「ええ」


     素直に肯定すると、ショータは逆に落ち着いていく。

     ふつうここまで言われたら怒るものではないだろうか、とも思ったが僕自身誰かに責められると楽になるタイプでもあるので共感もあった。

     けれど、そこで終わるわけにはいかない。

     僕はあの日の少年を助けるチャンスを得た。


    「でも、この前君がその時の少年だったと知って、傷ついてここまで逃げてきた君を見て……そうしたら、なんというか胸がいっぱいになってしまって」


     ショータの目が見開かれた。それだけで気分が良くなって微笑んでしまう。瓦礫に埋まった小さな手を握りしめる。今は血にまみれていないそれが、頼りなく震えた。


    「本当に、君が生きていてよかったと心から思ったんです。ここにいてくれて、失うことがなくて本当に本当に良かったと、安心したんです」


     僕の手も震える。声が上ずる。

     自分の心をさらけ出す言葉が怖くて、本当に言っても良いのかわからない。けれどこの言葉がショータに前を向かせる力があると信じて、発する。

  • 185125/03/09(日) 12:24:21

    >>184

    「信じられるか、なんて。野暮なことを聞かないでくださいよ。信じてなければここまで君を追いかけに来ません」


     手を握りしめた。

     汗が流れるのは暑さのせいだけではないだろう。頭が茹だるようだった。興奮した感覚器官が熱を体中に伝えている。


    「君じゃなきゃダメなんです。これから先、アイドルとして活躍していくうえで僕らはたくさんの困難や苦しいことを経験するでしょう。そこにいるのはこの五人じゃないとダメなんです」


     まるで告白だ。

     一人のいたいけな少年を一生アイドルという呪縛に縛り付ける、最悪な告白だ。


    「僕らはみんなアイドルでい続ける理由があります。そしてそれはこの場所に執着する理由でもある。同じ熱量を持って、同じ光景を目指す人が、同じ場所に集まる奇跡はきっと、これから先起こり得ない」


     君がどうしてそこまでアイドルに固執するのかはわからない。けれど誰もが「向いていない」と思うにもかかわらずアイドルを目指すというのは並々ならぬ決意があるからだ。

  • 186二次元好きの匿名さん25/03/09(日) 12:24:28

    これは地雷か微妙な気がする…
    上手く回避してくれ…!

  • 187125/03/09(日) 12:25:28

    >>185

     きっとその決意を捨てれば君はもっと普通に、幸せに、今回のように誰かの悪意によってトラウマにうなされることもなく生きて行けるだろうけれど。僕はそうあってほしくない。

     君に同じ景色を見せたい。



    「ここが君のいるべき場所です。帰ってきてくださいショータ」



     最悪でも良い。

     この五人でステージに立てるなら、最高のアイドルになれるなら、僕はそれが良い。君にもそう望んでほしい。

     願いを込めて彼を見ると、まるでもうすぐ泣きそうな目で彼は笑っていた。


    「……お前にそう言ってもらえることが、俺にとっては何よりも価値があるよ」


     ゆっくりと手が握り返されて、初めて血が通ったような気持ちになった。感極まってまた彼を抱きしめる。

  • 188125/03/09(日) 12:26:28

    >>187

    「光木、苦しい」

    「す、すみません。嬉しくなってしまって」


     胸を叩かれて慌てて離すと、胸に押し付けられたせいで少し彼の前髪が歪んでいた。手で直してやっていると後ろから声がかかる。


    「じゃ、帰ろうぜ」

    「彰……」

    「まだお互い話すこともあるだろうし、あとは帰りの道中で聞けばいいだろ。明日の仕事が本番だしさっさと帰って……」

    「いや、お前それはダメだろ」


     彰の言葉を遮ったのは真顔のショータだった。


    「え」

    「お前らどうせここに来るまでだって交代なしで光木に運転させてたんだろ、運転って疲れんだぞ。帰りも同じ道運転させる気か?」

    「車置いて新幹線で帰るのは? また今度取りに来れば良いじゃん」

    「ッチ、これだから普段運転しねえ奴らは。車持ってる奴は車あること前提の生活してんだから手元になかったら不便に決まってんだろ。それにコイツ忙しすぎて簡単に取りに来れねえよ」

    「俺一応免許持ってるし俺が運転すれば良くね?」

    「お前長距離運転の経験ないどころか飾りゴールドのペーパードライバーだろ。夏は免許とれたてで浮かれたガキも多いしいきなり長距離デビューはやめた方が良い」

  • 189二次元好きの匿名さん25/03/09(日) 12:26:35

    >>お前に敵は向いてない

    あ゛ぁ゛ーッ!!!

    スレ主が前に死者は黙って忘れられてろ じゃなきゃいつか報いが来るぞ(曲解)

    みたいな持論を言ってたけどさ

    マネージャーさんが記憶読み取れたのは魂が一緒だからでしょ?報いなんて来なかったりする?それとももう今精算終わった...?

  • 190125/03/09(日) 12:27:49

    >>188

     時々、ショータはやけに運転者に対して理解がありすぎるところがある。本人はまだ年齢の関係上免許も取れないのに。

     そう言えば彼が助手席に座って案内をすると凄くスムーズに運転ができるし、もしかしたらマイクにそういうことを教えてもらってるのかもしれない。


    「じゃあどうすんの?」

    「俺らのフェス登場は夜だし、他の仕事が入ってるわけじゃねえんだから明日帰ればいい。道中は三時間以上かかるんだ、しっかり光木は寝かせたい」


     あまりにも手厚いフォローに思わず「有難うございます」と言えば「運転者に睡眠取らせんのは当然の義務だ」とこれまた子供らしくない返事が来た。

     前に前世がどうという話をしていたけれど、もしかしたら本当に前世の記憶があるのかもしれない。


    「寝かせるったって……」

    「オールマイトさんに今確認する、ゲスト用の部屋があるから使っても良いかって」

    「家主居ねえのにそんなことして良いの?」

    「だから聞くんだろうが」


     ショータが手早くスマホを取り出して文字を打ち込み始める。もう夜の十時を回っているのに、いきなり連絡をして失礼にならないだろうか。

  • 191二次元好きの匿名さん25/03/09(日) 12:28:42

    なんかいつもの空気感だからすごい肩の力が抜けた…

  • 192125/03/09(日) 12:28:44

    >>190

     文字を打っている最中、周りから彼の画面を囲い込んで「なんかすげービジネスっぽい言い回し」「もっと子供らしい文の方が反応良いんじゃね?」「絵文字使おう絵文字」と好き勝手三人が言うのをショータは片手で追い払っていた。

     文字を打っている途中、車の物陰から「お~い」と声が聞こえた。


    「え、何幽霊?」

    「違う違う! ヒーロー ザ・クロウラー!」

    「誰」

    「不審者?」

    「ショータ知り合い?」

    「申し訳ありません名刺いただけますか?」

    「こっ、この反応……! 予測は出来てたけどさあ!」


     クロウラーと名乗った男性は僕らより年上の壮年といった感じの方だった。ショータに聞けばオールマイトが雇ったヒーローらしく、失礼ながら彼の顔とショータを二度見する。


    「……申し訳ありません、存じ上げなくて。うちのショータがお世話になったようで、有難うございます」

    「いやいやいやいや! そんな! うわあナマMITUKIだ! 確かにSHOTAくん生意気なところありましたけど本当に良い子で」

    「生意気は余計だろ苦労マン」

    「クロウラー!」

  • 193125/03/09(日) 12:29:38

    >>192

     小気味いいテンポで話されると、少し置いて行かれる感覚があった。これはあれだ、マイクとショータが話している光景を見ているソレに似ている。

     以前から薄々思っていたが、もしかしてショータはヒーローの感性が合うのだろうが。ショータが一頻りクロウラーを揶揄い終えると、彼はゴホンと咳払いをする。


    「ええとですね、オールマイトから皆さんに好きに部屋を使ってほしいって連絡が来てて」

    「えっ、オールマイトから?」

    「そう! きっと疲れてるだろうし、明日は大事なライブだから好きに部屋を使って体を癒してくれ~って言ってたよ!」


     至れり尽くせりだな。

     あまりの好条件に「良いんですか」と言うがクロウラーはサムズアップをして笑っている。流石は元ナンバーワンヒーロー、器のデカさからして違うという事だろうか。


    「えっ、マジ!? この家泊まれんの!? やったー!」

    「撮影とかしても良いっすか?」

    「撮影はねえ、外観映んなきゃ良いって!」

    「おっしゃ内装撮りまくろうぜ!」

    「ここでMV撮りてえ~!」

    「あ、ちょっと待ちなさい二人とも!」

  • 194125/03/09(日) 12:30:26

    >>193

     どちらにせよショータかクロウラーが居なければ入れないのにスキップで駆けていく二人を呼び止めようとするが全く話を聞かない。

     既に彼らは玄関の扉で「早く開けてくれよ~」とショータたちを呼んでいた。二人がそのあとに続き、僕は一人残される。


    「大変だね」

    「拓哉……そうですね、大変です」

    「でも、良かったね」


     隣から声をかけてきたのは拓哉だった。ぎざぎざの溝がある角に視線が被らないようにして、体を傾けてこちらを見ている。

     良かったね、とはどのことを言っているのか。

     色々と考えて、考えて……結論を出すことをやめた。


    「ええ、良かったです。全部」


     これから先もっともっと大変なことは起こるだろう。苦しいことも、ここで終わっておいた方が良かったと思うことも、少年の未来を捻じ曲げたことを後悔する日も来るだろう。

     それでもこれで良かったと思える。

     いつかこのエゴと憎悪で始まった道にも終わりが来るだろうけれど、その道程がここで良かったと、心から思うのだ。

  • 195125/03/09(日) 12:30:41

    次スレ立ててくるね~

  • 196二次元好きの匿名さん25/03/09(日) 12:32:14

    >>色々と考えて、考えて……結論を出すことをやめた。

    いい変化だ...!そうだよあんまり考え過ぎるな

  • 197二次元好きの匿名さん25/03/09(日) 12:33:07

    とりあえずグループ内の問題が平和に終わって安心したけどあまりにも順調すぎて逆に怖い気持ちがある

  • 198125/03/09(日) 12:33:52
  • 199二次元好きの匿名さん25/03/09(日) 12:34:00

    たておつ
    …なんだこの文字数は!?

  • 200二次元好きの匿名さん25/03/09(日) 12:34:15

    200なら大団円

オススメ

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