(バリトレSS)不屈であれ、醜くあれ。

  • 1◆AaXDbFpS7A25/02/24(月) 23:11:44

    『3冠達成、おめでとうございます!
     あなたは本当に、偉大な王っす!』

    ──何を、言っているんだ……?

     どうして、そんな笑顔で居られるんだ。
     教えてくれ、シオン。なんで君は──

    ──悔しがっていないんだ……?


     けたたましい目覚まし時計の音で、意識が無理やり呼び起こされる。
     夢……だろうか……だとしたら──

    ──だとしたら、相当気分の悪い夢だ。

    (……支度しないと……)

     胸の中に生まれた鈍いモノを抱えながら、学園へと向かった。

  • 2◆AaXDbFpS7A25/02/24(月) 23:19:29

    「お疲れ様っす、トレーナーさん。今日も頑張りましょう!」
    「……あ、あぁ……そうだな……」
    「……? トレーナーさん……?」
    「っ! あぁ、いや、なんでもない。えっと、授業だよな。頑張ってね。また、トレーニングの時に話そう!」
    「あぁ! トレーナーさん! ……。…………」

     ダメだ。妙に落ち着かない。夢一つでうろたえすぎだ。
     ……でも……生々しかった。本当に、夢なのか?
     もしかしたら、本当に、そうなってしまうのではないのか?

    「っ! ダメだ、切り替えよう。仕事しなきゃ……」

     普段通りパソコンを立ち上げ、仕事に取り掛かるが、案の定まったく手につかなかった。

  • 3◆AaXDbFpS7A25/02/24(月) 23:23:21

    「……あ……トレーナーさん……」
    「っ! し、シオン。……ぐ、偶然だね」
    「……あの……なにか、あったんすか……?」

     流石に今日の俺は普通じゃないらしい。自覚はある。これじゃあまるで俺がシオンを避けてるようだ。誤解は招きたくない。
     ……情けないが、正直に話そう。

    「……シオン。話があるんだ。……聞いてほしい」
    「! 分かりました。トレーナー室、行くっすよね?」

     大人である俺がしっかりしなければならない。だが、抱え込んで取り返しのつかないことになる、その前に──。

  • 4◆AaXDbFpS7A25/02/24(月) 23:32:53

    「……と、トレーナーさん……いま、なんて……? ……あ、憧れるのを辞めろ……?」
    「……今の俺たちには、要らないものだ」
    「そ、そんな!? あ、あたしは主役になりたいんす! それを……それを要らないなんて──」

    「それじゃあ叶いすらしないんだ!!」

    「っ!?」

    「憧れるんじゃない、超えなきゃいけないんだ。それを目指すんじゃあダメなんだ。俺達は──俺達の思っているよりも、遥か高い壁に挑もうとしている。思い出してくれ、彼女に抱いた感情を、君の奥底にある気持ちを!」
    「っ……でも……あれは……良くないもので──」
    「シオン。厳しいことを言うかもしれないけど、聞いてくれ。……良い子で居ようとするな。それじゃあ、勝てないどころか──見向きもされない」
    「……。…………。」
    「君の抱いた、どす黒くて、醜い想いを力にしなきゃいけない。……力は使い方次第だ」

  • 5◆AaXDbFpS7A25/02/24(月) 23:42:16

    「……でも……あたしの、この綺麗じゃない感情は……」

    「いいんだ。綺麗じゃないといけないなんて誰が決めた。君は競技者だ。競技者として、主役になりたいのであれば、絶対に折れるな。たとえ折れても、立ち上がるんだ。苦しいはずだ、耐えきれないかもしれない。でも、それでも目指すのなら──やらなきゃいけないんだ。」

    「……トレーナーさん……」

    「……その為に、俺がいる。……頼む、シオン。俺をもっと頼ってくれ。抱え込まないでくれ。今すぐじゃなくてもいい。……でも、忘れないでくれ」

    ──────
    ちょっと即興で書き始めてしまったので時系列は謎ですが、日経賞よりも前にバリトレが覚醒の片鱗を見せるお話……とでも思っていただければ。
    オルフェシナリオのシオンを見てしまった分、シオンにとってのバリトレの存在が大きいなと……。
    拙いSS失礼致しました。

  • 6二次元好きの匿名さん25/02/24(月) 23:44:33



    ちょっと心が抉れてたから助かる

  • 7二次元好きの匿名さん25/02/24(月) 23:48:35

    乙ばり!
    綺麗じゃなくたって、少しずつだっていいんだよね
    オルフェストーリー未読だけどすんなり入って来る構成いいよいいよ

  • 8◆AaXDbFpS7A25/02/24(月) 23:59:58

    ちょっとしんどくて今も上手いこと消化しきれてないけど、ひとつ確実に言えることは
    バリトレ本当にありがとう……。
    ですかね……

  • 9二次元好きの匿名さん25/02/25(火) 00:21:29

    他キャラシナリオの出番を見た後に本人シナリオでのトレーナーの存在がいかに重要かわかるよね…
    アースシナリオに出てきた時もツンツンしてたしバリちゃん本当はかなり不安定な子なんだよな…バリトレいると穏やかなこと多くて推せる〜

  • 10◆AaXDbFpS7A25/02/25(火) 00:33:08

    自分が好きだから、っていうのもあるんすけど、どうしてもシオンには幸せで居て欲しいので
    バリトレが居る、他の世界線より比較的安定してるシオン
    でお話を書きがち……余計トレバリしか書けねぇ身体になっちまった……

  • 11◆AaXDbFpS7A25/02/25(火) 01:05:13

    即興で書き始めたから即興で続きを書くこともある。
    ─────────
     届かない──。脚も、全然動かない──。

    『オルフェーヴル! 3冠達成!!』

    ──くっそ……っ! でも、まだだ……まだあたしは諦めな──
    『3冠達成、おめでとうございます! あなたは本当に、偉大な王っす!』


    ──は……? あたし、今……なんて言った──?

     なんで……顔が、笑ってるんだ……!?
     ふ、ふざけるな……!! 違うだろ!?
     悔しがれ! 憎しめよ! なんで──

     なんで笑っていられるんだよ!?
     違う! こんなのあたしじゃない!
     なんでトレーナーさんも見てるだけで──


    ──……え……? トレーナー……さん……?


     なんで、どこにも居ないんだ……?

     もしかして、この夢のあたしって……── 

     あたし、だけ……?

  • 12◆AaXDbFpS7A25/02/25(火) 01:06:59

     けたたましい目覚まし時計の音で、意識が無理やり呼び起こされる。
     「──ぅぶっ……!」

    ──あまりの気分の悪さに吐き気がする。急いで部屋を飛び出し、トイレへと駆け込んだ。
     もどしはしなかったが、あまりにも酷い気分だ。

     部屋に戻ると、シュヴァルさんの朝練に行く旨を記した書き置きを見つける。普段は目覚ましはバイブ音で十分だが、万が一の時のため設定しておいた、遅刻ギリギリのアラームが鳴ったらしい。

    (……支度しないと……)

     胸の中に生まれた鈍いモノを抱えながら、学園へと向かった。

  • 13◆AaXDbFpS7A25/02/25(火) 01:19:03

    『憧れるのを辞めよう。』『今の俺たちには必要ないものだ。』
    『憧れるんじゃない。超えるんだ。』

     少し前、トレーナーさんの言った言葉が何度も思考に往来する。

    『綺麗じゃないといけないなんて誰が決めた。』
    『たとえ折れても、立ち上がるんだ。』
    『苦しいはずだ、耐えきれないかもしれない。でも、それでも目指すのなら──やらなきゃいけないんだ。』

    「……あたしの、この……どす黒くて……醜くて……ちっとも綺麗じゃない……そんなあたしでも……目指していいの……?」

    ──あたし"独り"じゃ……進めやしない……そんな情けないあたしでも……トレーナーさんは……──
     貴方は、あたしを導いてくれるの……?


    【『打開策』のヒントLvが1上がった】

  • 14◆AaXDbFpS7A25/02/25(火) 01:22:16

    ──────
    シオンの育成シナリオで【打開策】のヒントLvが上がるのマジで好きなポイントです。

スレッドは2/25 11:22頃に落ちます

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