(トレウマSS)貴方が居たから

  • 1◆AaXDbFpS7A25/02/25(火) 07:42:35

    昨日の深夜に即興で書き始めたお話の続きになります。

    (バリトレSS)不屈であれ、醜くあれ。|あにまん掲示板『3冠達成、おめでとうございます! あなたは本当に、偉大な王っす!』──何を、言っているんだ……? どうして、そんな笑顔で居られるんだ。 教えてくれ、シオン。なんで君は────悔しがっていないんだ………bbs.animanch.com

    ──────

     届かない──。脚も、全く動かない──。


    『オルフェーヴル! 3冠達成!!』


    ──くっそ……っ! でも、まだだ……!

     まだあたしは諦め──

    『3冠達成、おめでとうございます! あなたは本当に、偉大な王っす!』


    ──……は……? あたし今……なんて言った──?


     な……なんで……笑ってるんだ……!?

     ふ、ふざけるなッッッ!! 違うだろ!?

     悔しがれ! 憎しめよ! なんで──

     なんで笑っていられるんだよッッッ!?

     違うッ! こんなのあたしじゃない!

     なんでトレーナーさんも見てるだけで──



    ──……え……? トレーナー……さん……?



     なんで……どこにも居ないんだ……?


     もしかして……このあたしって……── 


     あたし……だけ……?

  • 2◆AaXDbFpS7A25/02/25(火) 07:43:58

     けたたましい目覚まし時計の音で、意識が無理やり呼び起こされる。
     「──ぅぶっ……!」

    ──あまりの気分の悪さに吐き気がする。急いで部屋を飛び出し、トイレへと駆け込んだ。
     もどしはしなかったが、あまりにも酷い気分だ。

     部屋に戻ると、シュヴァルさんの朝練に行く旨を記した書き置きを見つける。普段は目覚ましはバイブ音で十分だが、万が一の時のため設定しておいた、遅刻ギリギリのアラームが鳴ったらしい。

    (……し、支度しないと……)

     胸の中に生まれた鈍いモノを抱えながら、学園へと向かった。

  • 3◆AaXDbFpS7A25/02/25(火) 07:46:55

    『憧れるのを辞めよう。』『今の俺たちには必要ないものだ。』
    『憧れるんじゃない。超えるんだ。』

     少し前に、トレーナーさんの言った言葉が何度も脳に往来する。

    『綺麗じゃないといけないなんて誰が決めた。』
    『たとえ折れても、立ち上がるんだ。』
    『苦しいはずだ、耐えきれないかもしれない。でも、それでも目指すのなら──やらなきゃいけないんだ。』

    「……あたしの、この……どす黒くて……醜くて……ちっとも綺麗じゃない……そんなあたしでも……目指していいの……?」

    ──"あたし1人"じゃ……進めやしない……。
     そんな情けないあたしでも……トレーナーさんは……──
     貴方は……あたしを導いてくれるの……?

  • 4◆AaXDbFpS7A25/02/25(火) 07:59:22

     皐月賞は急ピッチで仕上げた。トレーニングも、もしかしたら自主トレもした分オーバーワークかもしれない。
     でも──それでも足りないかもしれない。

     憧れを、越えるためには──。

    「……シオン……大丈夫か……? トレーニングから休めてないだろう……?」
    「大丈夫です! 行けます! 行かせてください!!」
    「……無事に帰ってきてくれ」

    ──無事に、か……。どうだろう……。


     ゲートが開いた。流石G1、レベルが段違いだ。正直、場違いかなって思ってしまう程に……でも──
     そんなことはどうでもいい。あたしは──

    ──1人になりたくない……ッッッ!

    『1着! ウインバリアシオン! 1番人気の──』

     安心なんて、出来やしない。
     あたしは越えるんだ、越えなきゃいけないんだ。
     ともなれば、これはただの通過点。

    「……もっと……もっと、強く……ならなきゃ……」

  • 5◆AaXDbFpS7A25/02/25(火) 08:08:40

     ダービーに菊花賞。
     結果だけを見れば1着を獲った。でも────

     体の震えが止まらない。でも、これは喜びからじゃない。

    「──ッ! 何故、この手にない……! 何故──」

    「越えるんだ……なら……これも……通過点……」

     3冠だった。名誉なことのはずだ。それなのに──

     それなのに、どうして勝ったと言い切れないんだ。

    「……次も……勝たなきゃ……次……つ、ぎ……も……」


    ──どこまで走れば────

  • 6二次元好きの匿名さん25/02/25(火) 08:09:43

    このレスは削除されています

  • 7◆AaXDbFpS7A25/02/25(火) 08:24:14

     身体が──保たないかもしれない──。

    『ジャパンカップを制したのは! かの暴君をも退けた3冠ウマ娘! ────』

     こんなにも、苦しいのか。こんなにも辛いのか。

    ──あたしには……無理なんじゃないか……?

     い、いや……! ま、まだ……まだ大丈夫だ。
     少し休めば、走れる。きっと、話題にもなる。


    ──そう、思っていたけど。


    12月 有マ記念
    『オルフェー!!』『オルフェ様ー!!!!』

    「……。…………。」

     アイツは"全て"を掻っ攫っていった。

  • 8二次元好きの匿名さん25/02/25(火) 08:45:53

    このレスは削除されています

  • 9◆AaXDbFpS7A25/02/25(火) 08:52:17

     もう、ダメそう──。

     3冠獲れたんだ。それだけでも出来過ぎだろう。
     いいでしょ? もう止まっても──いいだろ。

     なのに……どうして……──

    「どうしても俺は、君を諦めきれないんだ」

     どうしてトレーナーさんは、あたしを──

    「俺の『プリンシパル』は、君なんだ」

     あたしはあたしを否定しているのに、貴方はあたしを認めてくれるの……?

    ──まだ、走っていいって……言ってくれるの……?

  • 10◆AaXDbFpS7A25/02/25(火) 09:02:43

    ──シオンの目つきが変わった。

     ファン感謝祭のエキシビションレースで彼女はオルフェーヴルに1着を奪われた。
     本当は心が完全に折れてしまわないか不安だった。でも、彼女は再び立ち上がってくれた。


     これは、一つの可能性。その可能性を俺達は──
     ウインバリアシオンは掴み取ったのだ。

    「ありがとうございます、トレーナーさん。貴方があたしを認めてくれたから、走り続けられました」
    「不甲斐ないトレーナーで、迷惑もかけたけどね」
    「いいえ。貴方は、あたしに欠かせない存在っす。……貴方が居なきゃ、この景色も見られなかった」

    ──覚えてるっすか? あの時の約束。

     彼女は振り向き、俺に告げる。


    「あたしがプリンシパルとして輝くところ、特等席で見せてあげる、って言ったっすよね。……約束、果たせたっすか?」

     主役の──彼女の名は──
     『不屈のプリンシパル』ウインバリアシオン

  • 11◆AaXDbFpS7A25/02/25(火) 09:06:31

    ──────
    以上です! ちょっとしんどかったんで衝動的に書きましたが、即興で書くもんじゃないな!

  • 12二次元好きの匿名さん25/02/25(火) 14:50:02

    サラッと全勝してる…

スレッドは2/26 00:50頃に落ちます

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