- 1二次元好きの匿名さん25/02/27(木) 22:01:53
- 2二次元好きの匿名さん25/02/27(木) 22:17:47
- 3二次元好きの匿名さん25/02/27(木) 22:20:56
今日も今日とて変わらない日常。授業を受けて、友人と他愛のない話しをして、家路につく。そんな日常が、私にとっての学校生活、だったはずなのに…。
「真城優さん、ですね。」
今日はそんな日常に、一人の男が入り込んできた。
スーツに身を固め、髪をしっかり整えた長身の男。一瞬、変態に声をかけられたのかと身構えたが、すぐにその正体に感づいたのは胸元の校章のおかげだった。
「そうですけど…。あなたはプロデューサー科の学生さんですよね?私に何か御用でしょうか?」
初星学園プロデューサー科。同じく初星学園の高等部に存在するアイドル科の女生徒たちをプロデュースしながら、プロデューサーとしての経験と学びを得るための機関。
そんな彼らは、普通科の私とは相容れることはないと思っていたのだが…。 - 4二次元好きの匿名さん25/02/27(木) 22:26:08
「…申し遅れました。俺はプロデューサー科のこういうものです。」
しっかりとした作法で名刺を渡しながら、私の目を見据えて自己紹介をしてくる。
プロデューサー科1年〇〇…。名前と役職を見ながら、やはりという気持ちと困惑の気持ちが同時に起こった。
「やっぱりそうですか…。プロデューサー科の方がなぜ私に?こういうのは、アイドル科の方たちにやるものではないのでしょうか。」
困惑と疑問を胸に抱え、まずはその目的を確認する。
「単刀直入に言いましょう。…真城優さん、あなたをプロデュースさせてください。」 - 5二次元好きの匿名さん25/02/27(木) 22:39:22
困惑がさらに膨れ上がる。
プロデュース?私を?何故?アイドル科の方たちではなく?
目を丸くして呆けている私に、続けざまに男は言う。
「あなたの美しい顔立ち、クールな性格、そして放送部でのラジオでのトーク力…。あなたはアイドルにふさわしい。俺が必ず導いて見せます。トップアイドルへの道を。」
話が頭に入ってこない。これは夢か何かだろうか。現実とは信じられないような話だ。普通科で平凡な学生生活を送っているだけの私が、アイドル?それに…トップアイドルへの道?…よく考えても理解しがたい。むしろ、考えれば考えるほど困惑は深まっていく。
「私が…アイドルですか?…人違いではないでしょうか?」
「人違いなどではありませんよ。現に先ほど、名前を確認していますし。」
…どうやら、本当に私のことらしい。実際、放送部のことも知っていた。この男は、本当に私をアイドルとしてプロデュースしたいつもりのようだ。 - 6二次元好きの匿名さん25/02/27(木) 22:42:52
有能おるやん
- 7二次元好きの匿名さん25/02/27(木) 22:49:10
「…お断りします。私はアイドルになれるような器ではありません。それに、普通科ですし、そもそもなりたいとも思っていません。」
私が放送部にゲストとして呼ぶアイドル達、彼女達は皆それぞれ輝ける資質を持っているのが、素人の私にも見て取れた。そんな彼女達と比べて、私にそういう魅力は無いと自分ではっきりと分かっている。
「…真城さんは、必ずアイドルになれる。私が保証します。今はまだ、その才能は眠っているだけだ。」
しぶとく私をスカウトする男に、だんだんと苛立ってきた。私は早く帰ってラジオでのネタを考えたい。ここは、少し強引にでも話を終わらせよう。
「…すみません、今日は帰ってやることがあるので、失礼しますね。」 - 8二次元好きの匿名さん25/02/27(木) 22:49:57
- 9二次元好きの匿名さん25/02/27(木) 22:50:31
自分で気づくのえらい
- 10二次元好きの匿名さん25/02/27(木) 23:01:30
私はふいと背を向けて、家の方角へと歩き出す。
去り際に、声をかけられた。
「俺は諦めませんよ。」
次の日の放課後、私はラジオの準備のために放送室へと向かっていた。今日のゲストは誰か、用意しておいたゲストへの話の順番はどうしようかなどと考えながら歩いていると、見覚えのある―というより、昨日見たばかりの顔が目に入った。
「おや、奇遇ですね真城さん。これから放送の準備ですか?」
「えっ、あ、はい…。どうも。」
何故この男はこんなところにいるのだろうか。奇遇というには、誰かを待っていたというような素振りだった。…まさかまた性懲りもなく?
「丁度良い機会です。あなたのプロデュースについて少しだけおはな「お断りします」…せめて言い切らせてくれませんか?」
やっぱりだ。昨日しっかりと断ったはずだが、全く分かっていない。…分かったうえで言っているのだろうか?ならばことさらたちが悪い。 - 11二次元好きの匿名さん25/02/27(木) 23:14:31
「…昨日はっきりと言いましたよね?アイドルになる気はありませんって。なんでそんなに私に執着するんですか?…アイドル科にいる方たちのほうがよっぽど魅力的です。彼女たちをスカウトするべきじゃないんですか。」
これ以上付きまとわれたらうんざりだと言う気持ちを込めながら、少し語気を強めて突っぱねる。あなたがプロデュースするべき人は他にたくさんいると。
「…俺も昨日言いましたが、あなたのアイドルの才能は眠っているだけです。まずはアイドル科に転向しましょう。そこで基礎を学び、歌やダンス、自分の魅せ方を知ることで、あなたは必ず花開く。」 - 12二次元好きの匿名さん25/02/27(木) 23:28:11
普通科からアイドル科に転入?そんなこと、本当に出来るのだろうか。そんな前例はないし、きっとこれからもだ。
「プロデューサー科の一生徒がそんなことを望んでも、出来ないでしょう。今までそんな話は聞いたことありません。」
「いえ、すでに学園長から許可はとってありますよ。あとは真城さんの意思次第ですぐにでも…。」
「えっ。」
そこまで話が進んでいたのか。私が首を縦に振ればすぐにでも?こんな私のために?…どうしよう、ここまでされて断ったらなんだかすごく気まずい気がする…。だけど、それは私の意思じゃない。そんな気持ちで受ければ、私もこの男も、きっと後悔することになる。…ならばここはひとまず。
「えっ…と、話の衝撃がすごくて、ちょっとついていけてないので、一旦持ち帰りにさせてもらえませんか?これからラジオの準備もあるので…。」
とりあえず、話を先送りにしよう。 - 13二次元好きの匿名さん25/02/27(木) 23:29:18
良いSSだわ 気長に待とう
- 14二次元好きの匿名さん25/02/27(木) 23:41:49
明日早いので、書けるとこまで書きます。変なとこで終わったら規制ぶっかけられたと思ってください。あと即興だから変なとこあったら許してね。
「…!わかりました。また後日お話しましょう。何かあれば昨日の名刺に電話番号が書いてあるのでそちらまでご一報ください。それでは、良い返答を期待して待っています。」
返答を聞いた男はパッと顔を明るくすると、それだけ言って去っていった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
準備も終わり、ラジオの開始時間が始まる。今日のゲストは篠澤広さん、アイドル科1年2組の生徒だ。いつも通り最初は雑談から始めて、そこからアイドルの方に質問…という流れなのだが、始めの雑談中の話題に、私はビクリとしてしまった。
「優は、アイドルにならないの?可愛いのに。」 - 15二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 00:04:44
…タイムリーすぎる話題だ。ついさっき、その話をしていたばかりだと言うのに。私は焦ってしどろもどろに答えた。
「な、なりませんから。というか、アイドルの皆さんと比べたら、私なんか石ころみたいなものですよ…。」
我ながらなんという下手な例えか。しかしまぁ、実際比べたらこんなものだろう。彼女たちは輝ける原石、私は道端の石ころ、天と地ほどの差があるというものだ。
しかし篠澤さんはそれを否定して、続ける。
「そんなことない。これまでのラジオは全部聞いたけど、優のことが好きってコメントはたくさんあったし、リスナーのみんなもそう思ってる。」
それを聞いた私は、顔が赤くなるのが自分で分かった。
私のことが…好き?こんな平凡な私にも…ファンができたの?
そこからの私は、何を言ったか覚えていない。おそらく、すぐにでも篠澤さんへの話題に切り替えていたのだと思う。
そこで生まれた小さな感情を隠しながら…。 - 16二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 00:06:50
- 17二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 00:17:59
>>16ッ!お前の睡眠賭けのSSッ!
僕は敬意を表する!
- 18二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 00:20:04
これをP優学会に届けてくれよ……
これは……いいものだ!! - 19二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 06:41:23
驚きましたよ。書いてくれとはいいましたが、まさか本当に書いてくれるとは…!
- 20二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 08:19:25
珍しいpまし最高だよ
- 21二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 11:09:18
即興でありながらこの完成度っ!
素晴らしい! - 22二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 15:07:10
ありがたい
- 23二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 21:48:45
放送終了後、私は篠澤さんに言われたことを反芻していた。
私のことを好いてくれている人がたくさん居る…。その言葉には半信半疑ながらも、どこかこそばゆいような気持ちがあった。
…もし、私がアイドルを始めたら、その人たちは応援してくれるのだろうか。それとも、放送のファンなだけで、私自身の活動には目もくれないのだろうか…。
そんなことを考えていた途端、私はハッと気づく。
いつの間にか、自分でアイドルになった時のことを考えていた。
私はアイドルになる気は無いはず…なのに、何故そんなことを考えてしまっていたのだろうか。 - 24二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 22:06:18
…きっと立て続けにそんな話をされたからなだけだろう。あのプロデューサーには話を先送りにしたが、上手い言い訳を考えているだけだ。気持ちは変わっていない…はず。
そんなふうに結論づけ、考えるのをやめた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
翌日の昼休み、5時間目は数学か…などと呑気に考えながら窓の外を見ていると、友人が見たこともないような笑顔で走り寄ってきた。
「優!何かイケメンに呼ばれてるよ!?もしかして彼氏!?」 - 25二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 22:13:17
「え?え?何、どういうこと…?」
困惑しながら廊下の方に目を向けると、…居た。あの男が。まさかこんなところまで来るとは。というか、連絡を待つのではなかったのか。
男もこちらを見つけたようで、目が合った瞬間に顔をほころばせた。
「いやー、優も隅に置けないねぇー!まさか私たちにもバレずに付き合ってる人がいたなんてさー♪」
「ねー!教えてくれても良かったのにー!いつから!?いつからなの!?」
まずい、友人達に変な誤解をされてしまっている。まずはそれについて伝えなければ。 - 26二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 22:34:46
「あーいや、そんなんじゃなくて…なんていうか、あの人が何故か私をプロデュースしたいとかなんとか…。断ったんだけど、諦めてくれなくて…。」
それを聞いた友人達はざわつき始めた。まずい、ストレートに言い過ぎたか…。
「え、プロデュースって…優をアイドルとしてってこと?」
「ていうか、よく見たらあの校章プロデュース科の学生さんのじゃない!?マジ!?マジのやつ!?」
「優すごいじゃん!私応援するよ!」
私の周りに人だかりができ、口々に囃し立てる。なんとか否定しようとするが、声を遮られてしまって釈明の隙すら与えられない。
…まずいことになった。ひとまずこの場から離れよう。騒ぎが落ち着いたら詳しく説明すれば良い。
そう思った矢先、男がこちらに向かって歩いてくるのが見えた。
皆もそれに気づいたようで、喧騒がピタリと静まる。彼が何をしようかというのかと、固唾をのんで見守った。
男は手を差し出し、私の手をとった。
「ここではあまり落ち着いて話せない、場所を変えましょう。」
そのままエスコートされるかのように私は連れられ、気づけばどこかの空き教室に居た。 - 27二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 22:51:05
「ここなら邪魔は入らないでしょう。ようやく話ができますね。」
男はそういいながら、椅子を引いて私に座るように促す。
それをぼーっと見つめていた私は、急に我に返った。
…なんだ今のは!?急に手をとったと思えば、いきなり連れ出すって…。乙女ゲームか何かか!?というか私、それをされたの!?
(恥ずかしすぎる!?)
顔に体全体から熱が集まってっていくのを感じる。これほどの羞恥心生まれて初めてだった。
「は、話がしたいからって急すぎませんか!?それにあんな連れて行き方、誤解が広まりそうなんですけど!?」
柄にもなく私は早口でまくし立てる。冷静さを欠いているのが自分でもよく分かるくらいに。 - 28二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 23:20:47
それを少し驚いたような顔で男は見つめている。私がこんな感情を出しているところを見るのが意外だったのだろうか。
私が言い終わったのを確認すると、おもむろに口を開いた。
「感情的になっている真城さんも、ギャップがあって可愛らしいですね。」
…この男!どれだけ人を羞恥に駆り立てれば気が済むのだろうか。
大声で言い返したい気分だが、それをすればまたからかわれるだろう。ぐっと気持ちを抑えて、私は黙って椅子に座った。
「…あの、連絡を待つって言ってましたよね。いきなり会いに来られるとのはちょっと…。特に友人のいる前では。」
「それについては申し訳ありません。はやる気持ちを抑えきれませんでした。一刻も早く真城さんに会いたかったので。」
そう言って男は頭を下げた。その姿はなかなか堂に入っている。プロデューサー科とは謝罪の仕方も学ぶのだろうか。そんなことを考えていると、男は「ですが、」と前置きし、にやりと笑って続けた。
「また後日会いましょうと言ったはずですよ。それに、何かあれば連絡をとは言いましたが、連絡がなければ会わないとも言っていません。」
…それは確かにそうだが、『後日』がいくらなんでも早すぎる。昨日の今日で考えがまとまると思っていたのだろうか。 - 29二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 23:21:47
ちょっとWi-Fi規制かかってるので、今日はここまでですすみません…。
- 30二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 23:30:46
- 31二次元好きの匿名さん25/03/01(土) 04:52:32
保守
- 32二次元好きの匿名さん25/03/01(土) 08:20:11
保守
- 33二次元好きの匿名さん25/03/01(土) 09:10:26
保守
- 34二次元好きの匿名さん25/03/01(土) 15:59:16
ワクワク
- 35二次元好きの匿名さん25/03/01(土) 16:07:44
- 36二次元好きの匿名さん25/03/01(土) 16:13:51
是非!
- 37二次元好きの匿名さん25/03/01(土) 16:26:47
このスレで優の創作を咎めるものは居ません。私(スレ主)が保証しましょう。
- 38二次元好きの匿名さん25/03/01(土) 17:13:03
人生において、悩みというのは得てして尽きない物だという。それ自体は別にいい。人生において悩みないのは有り得ないというものだ。けれど……
「……げぇ」
……問題は、その悩みを取り払う方法がどうにも見つからないということだ。
普通科という普通の人間しかいない廊下に、場違いな人間が1人。
黒いスーツに黒縁メガネ、爽やかな笑顔に類まれなる長駆。如何にも芸能関係ですって風体のその男は、普通科の生徒と談笑している中、私の声を聞いてか聞かずか、こちらを向いて早足で向かってくる。
「奇遇ですね真城さん。訝しんだ顔も、怪訝な声も全てが素敵だ。どうです、俺とお茶でも」
……相変わらず、言葉と一挙手一投足が胡散臭い人。
「……ここ、普通科の校舎なんですけど。プロデューサー科はあっちですよ」
「知っています。真城さんに会いに来たんですから」
「なら奇遇でもなんでもないじゃないですか……」
眼鏡、髪型、格好、話し方、そして笑顔。全部が全部胡散臭さしか無い、ペテン科か詐欺科に転入した方が良さそうなこの人は、プロデューサー科の生徒。名前は……いや、関係無いか。
きっかけが何かは忘れたが、少し前から私の目の前に現れては、アイドルにならないかと執拗に迫ってくる。周りの友人も、最初こそ普通科に来る彼に不信感を抱いていたが、今ではもうすっかり普通科の生徒とも顔馴染みだ。それこそ、さっきみたいに談笑するようには。
「さぁ、今日こそ契約しましょう。俺の手を取ってください」
どこから出したんだその契約書……しかももう名前書いてるし……
差し出されたペンと紙を押し返し、今日こそ諦めてもらうように、きっぱりと彼の瞳を見つめる。
「……お断りします。絶対になりません」
「理由を聞いても?」
「今からアイドルなんて無理だからです。これ百回は言いましたよ」
そう、この人の思惑は知らないが、私は既に高校二年生。アイドルのアの字も知らず、歌もダンスもやったことがない。そんな人間がアイドルをやろうだなんて、荒唐無稽にも程がある。他の人にも失礼というものだ。
毎度毎度の断り文句ではあるが、この人はいつもこれで一時的に契約を取り下げてくれる。だからきっと今回も────
「分かりました。じゃあこの契約書にサインを」
「話聞いてました??」
絶対に聞いてないでしょ。
「聞いていました」 - 39二次元好きの匿名さん25/03/01(土) 17:13:35
「聞いてて尚契約結ばせようとしてるとか悪魔かなんかですか? あといつもこれで止めてますよね?」
「たまには俺も意地を張ろうかと」
なんなんだこの人は。
「……真城さん、貴女が無理だと思っても、俺は無理だと思いません。貴女の声は美しく、その愛らしさは人を釘付けにし、全人類が貴女に夢中になる素質がある。現に俺は、今貴女に首ったけなんですから。……貴女以外、目に入らない程」
「んぐっ……!?」
「真城さん……さぁ、この契約書にサインを。そうすれば、俺は一生かけて貴女をトップに導いてみせる。俺を、信じてください」
「────そ、そんな風に言われても、貴方の言うことなんて聞けませんから!! さようなら!!」
「あ! 真城さん!!」
勢いそのままに、私はその場から逃げ出した。
ムカつく……ムカつくムカつくムカつく!! 何が美しさだ、何が愛らしさだ!! あれは単なる実績稼ぎ。ただ担当が欲しいってだけ、ただ自分が課題をクリアしたいだけ!! 成績が欲しいだけ!! そうだ、勘違いするな真城優。あれは詐欺師と同じ、ペテン師の類。声を聞いてはいけない悪魔!! どうせ私がアイドルになっても、絶対釣った魚に餌やらないタイプ!! 顔と声色がもうそうだもん!!
怒りをそのままに、先生の制止する声も振り払って走り続けて、校舎裏の誰もいない場所で座り込む。
「はぁ……はぁ……はぁ…………あーっ……もう……!!」
……人生は悩みが尽きないもの。あのプロデューサーことペテン師をどうするか、何をしたら諦めるのか、ずっとずっと考え続けている。それでも、解決策は見つからなくて、ここまできてしまった。
けれど、私の悩みについての一番の問題は、解決策が見つからないことじゃなくて。
「なんで、なんでこんなに嬉しくなってんの私……!!」
今も褒められた嬉しさでニヤケ面が戻らなく、彼のことを憎からず思ってしまっていることだろう。
真城優、初星学園高等部普通科二年生。
なにかする訳でもなく、なにか夢があるわけでもなく、ただなんとなく惰性に過ごしていた人生ですが。
────ほんの少しだけ、アイドルになる未来を想像してしまっています。 - 40二次元好きの匿名さん25/03/01(土) 17:14:44
あとは>>3さんの更新を待ちます……出力させてくれてありがとうございます……!!
- 41二次元好きの匿名さん25/03/01(土) 21:53:41
「そ、それはそうでしたけど、連日で会いに来るとは思ってなかったので…。答えが出せるまで、1週間くらいは待っていてくれませんか?」
それを聞いた男はひどく残念そうな顔をして答える。
「…わかりました。そう言われては仕方ありません。返事は1週間後ですね。楽しみに待っています。」
…話せば意外と分かってくれる人なのだろうか?そんなにすんなりと受け入れてくれるのなら、最初に断った時に諦めてほしかったが…。まあ、なにはともあれ時間ができた。その間に上手い言い訳を考えよう。
「ありがとうございます。それでは私はこれで失礼しますね。」
そう言って立ち上がろうとした私に待ったがかかる。…話は終わりではなかったのか。
「1つ、俺から提案があります。今日はそれを伝えに来たのです。」
「初星アイドルのライブを、一緒に観に行きませんか?」 - 42二次元好きの匿名さん25/03/01(土) 21:58:57
SSが凄え ニヤニヤするし
- 43二次元好きの匿名さん25/03/01(土) 22:12:08
「ライブ…ですか?」
「はい、確かにいきなりアイドルになれというのは、俺が早急すぎました。アイドルとはどんな存在か、真城さんはあまりご存じないにも関わらずです。そこで、実際にステージの上で歌って踊るアイドルを観ることで、真城さんのアイドル観を深めていただこう、というのが目論見です。」
確かに、私はまだアイドルへの知見は深くない。ラジオで実際に対談してはいるが、それはステージの上で輝く彼女たちとはまた別の顔だ。
…興味はある。ただ、聞き間違いでなければこの男は今「一緒に」と言ったはずだ。
…それは男女2人で出かける、いわゆるデートのような絵面になってしまわないだろうか?
そう考えてしまった途端、何故かさっき連れてこられた時のような顔の熱を感じた。 - 44二次元好きの匿名さん25/03/01(土) 23:32:51
保守
- 45二次元好きの匿名さん25/03/02(日) 06:35:03
P優はやはり至高
- 46二次元好きの匿名さん25/03/02(日) 11:16:42
いいよね
- 47二次元好きの匿名さん25/03/02(日) 11:58:20
保守
- 48二次元好きの匿名さん25/03/02(日) 12:19:18
「…あまり気乗りしませんか?真城さんにとっても悪い話ではないでしょう。例えアイドルにならないと決断したとしても、ラジオの話のタネにはなりますよ。」
急に俯いて黙った私に、男はメリットを提示して来る。
…こうなっているのはそんな理由じゃない。私は目を逸らしたたまま顔を上げ、小さな声で言葉を紡ぐ。
「…えっと、ライブには興味がありましたし、一度観てみたいとは思っていました。で、ですけど別に2人で行くことはないんじゃないでしょうか…?あっいえ、貴方と行くのが嫌なわけじゃないんですけど…。」
そこまで言い切ってからチラリと男の顔を見てみると、
ものを取り上げられた子供のような悲哀の表情をしていた。
「…俺と行くのが嫌だったのですね。オブラートに包んで言っていただいて助かります。…チケットを渡しておくので、是非行ってみてくださいね。」
虚勢のような作り笑顔で、チケットを差し出してくる。
うぐ、そんな表情で言われると、なんだか罪悪感が襲ってきてしまう。いや、私は悪くないはずなんだけど…。
そうして私は逡巡しながらも、…男の雰囲気に負けてしまった。
「〜っ!あーもう!わかりましたよ!…一緒に行きますよ!」
いきなり声を張った私にいささか驚いた様子だったが、男はパッと顔を明るくした。
「本当ですか!いやぁ、本当に嬉しい。真城さんと一緒に出かけられるんですね!」
…この変わり身の早さ、さっきのは演技だったか。きっとこうなるのを計算に入れていたのだろう。「ペテン師め!」と叫びたくなったが、今にも歌い出しそうな男の表情に、私はやれやれと息を吐いた。 - 49二次元好きの匿名さん25/03/02(日) 12:53:49
渡されたチケットを見てみると、ライブは5日後の祝日だった。…私に予定はないと思われてるんだろうか。いや、実際無いのだが、暇な生活を見通されているようで少し悔しい。
「いやぁ、隣同士のチケットをとるのに結構苦労しましてね。俺がプロデューサー科でなければとれなかったでしょう。」
男は褒めてくれとでも言うかのように自信満々に言い放つ。
…それは職権濫用ではないのか?どうやったのかは知らないが、もし誰かに迷惑がかかるようなやり口だったのならやめていただきたい。
「これも」と渡されたパンフレットに、出演アイドル達の名が並んでいる。そこには、ラジオで対談した方々の名前が何人か載っていた。 - 50二次元好きの匿名さん25/03/02(日) 13:51:36
まだ担当アイドルじゃなければ私になると思う
- 51二次元好きの匿名さん25/03/02(日) 20:26:05
このレスは削除されています
- 52二次元好きの匿名さん25/03/02(日) 20:26:50
「…私とよく共演して頂いている方々が出演されるんですね。だからこの日取りを?」
「えぇ、その方が興味を持ちやすいかと。勿論、面識のない方々のライブも楽しみにしておいてください。名前も顔も知らないアイドルのライブを観てから、大ファンになってしまった、という人も大勢いますよ。」
「お気遣いくださってありがとうございます。…貴方にもそんなアイドルがいるんですか?」
「真城さんです。」
「ふぇっ!?」
葉に衣着せぬ即答に、思わず変な声をあげてしまった。
私は『アイドル』と聞いたはずだったが…。」 - 53二次元好きの匿名さん25/03/03(月) 00:32:33
保守
- 54二次元好きの匿名さん25/03/03(月) 07:28:19
最高やね
- 55二次元好きの匿名さん25/03/03(月) 12:28:16
P優助かる
- 56二次元好きの匿名さん25/03/03(月) 15:36:20
P優はなんぼあっても良いですからね
- 57二次元好きの匿名さん25/03/03(月) 20:55:32
保守
- 58二次元好きの匿名さん25/03/03(月) 22:17:48
「わ、私はアイドルじゃないですって!…そうやってハッキリ言われるの、ちょっと恥ずかしいんですよ…。」
「…俺は思うんです。自身の魅力で一人でもファンになってくれる人がいたのなら、それはもうアイドルなのだと。そして既に真城さんにはラジオのリスナーや俺というファンが居ます。だからこそ、あとは真城さんの意思次第です。ライブを通して、ステージへの憧れを抱いてくれたのなら本望です。」
真剣に語る男の目には、静かに炎が揺らめいているようだった。 - 59二次元好きの匿名さん25/03/03(月) 22:31:52
「…名残惜しいですが、今日はここまでにしましょうか。もうすぐ昼休みが終わってしまいますね。」
「え。」
そう言われて時計を見ると、5時間目まではあと5分を切っていた。まずい、次の数学は教室移動だ。すぐに戻って準備をしなければ。
「じ、時間ないので私行きます!それでは!」
私座っていた椅子を直すのも忘れて、戸を開けて廊下に出る。そこでハッと気づき、男に振り返った。
「ライブ、お誘いして頂いてありがとうございました。…楽しみにしてます。」
男はにこやかに笑っていた。 - 60二次元好きの匿名さん25/03/03(月) 22:38:26
すみません、学Pが集合時間と場所について話してませんが、チケットを渡した時に話したと思ってください。彼がそれを伝え忘れるような男では無いので…。
それと、亀レス本当に申し訳ありません。言い訳がましいですがなかなか執筆時間が取れなくて…。そこでスレ主様や保守して頂いている皆様に聞きたいのですが、こことは別でスレ立てたほうが良いでしょうか?特にスレ主様に管理の責任を長々と持たせるのもいかがなものかと思いまして…。 - 61二次元好きの匿名さん25/03/03(月) 23:50:23
俺はスレ主じゃねえからわかんねえけどよぉ……アンタの作品をずっと待てるってことは確かだぜ
- 62二次元好きの匿名さん25/03/03(月) 23:59:07
スレ主じゃないけど。
3,4日以内で続きを投下できる目途があるならこのままで、それよりかかるなら書けた時に新しくスレ立てるでいいんじゃない?
最終的にはスレ主が決めることだし、それ以前にこのスレが落ちたりするかもだけど。
- 63二次元好きの匿名さん25/03/04(火) 06:49:01
スレ主にございますの!
わたくしとしては貴方のやりやすい書き方でやって頂ければ幸いですわ! - 64二次元好きの匿名さん25/03/04(火) 13:27:25
保守
- 65二次元好きの匿名さん25/03/04(火) 19:22:16
それからライブまでの5日間、男は約束通り会いに来ることはなかった。初めて会ってから3日程しか無かったが、平和な日常はなんだか久しぶりな気がした。
…なんだろう、いつもの日常を享受出来ているはずなのに、どこかもやもやとしている。
以前の私は、こんなにも退屈だっただろうか。
そして、そう思う度に何故か男のことを思い出すのだ。
「…ふぅ。」
なんとなく溜息をつく。それは安心感によるものか、はたまた別の何かなのかは、私にもよく分からなかった。 - 66二次元好きの匿名さん25/03/04(火) 19:23:06
スレ主様のお言葉に甘えまして、こちらのスレで書かせていただきます。
毎日投下出来るように努めます。 - 67二次元好きの匿名さん25/03/04(火) 21:30:55
(服装、どうしようかな)
ライブの前日、私はぼんやりと考えていた。
普段出かける用事があれば、目に入った服を適当に選んで着るだけだったが、今日は考えこんでしまっている。
いつも通り動きやすい服装でいいかとも思ったが、せっかくだし見られても恥ずかしくないようなものを着よう。そう決めてクローゼットをかき分け、服を取り出した。
友人の買い物に付き合っていたとき、「これ優にめっちゃ似合う!」とグイグイ勧められ、半ば無理矢理買わされたものだ。
「着ないのも勿体ないし…ね。」
誰に言うでもない独り言を呟き、服を畳んで床につく。
目を瞑り、睡眠の体制を整えたところで、
(いや、見られても恥ずかしくないって…誰に?)
そんな疑問が思い浮かんできたが、答えが出る前にいつの間にか眠ってしまっていた。 - 68二次元好きの匿名さん25/03/04(火) 22:31:06
当日、私は集合場所に15分前には着いていた。遅刻して迷惑をかけるくらいなら、早めに着いて待っている方が気が楽だ。
まだ流石に着いていないかと辺りを見回すと、近くのベンチにスーツを着てパソコンを叩く男の姿があった。あの人はあれが私服なのか…と若干引きつつ、あいさつをかけにいこうと私はベンチまで歩いた。
「おはようございます。もう来てたんですね。」
「おはようございます。真城さ…」
「ん」と言いかけたところで何故か男は口を止める。どうしたのかと私が怪訝な顔になった瞬間、
「真城さん、今日は一段と可愛いですね。」
火の玉ストレートの褒め言葉が直撃した。 - 69二次元好きの匿名さん25/03/04(火) 22:52:31
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- 70二次元好きの匿名さん25/03/04(火) 22:53:30
「えぅっ!?」
急すぎる発言に、またもや私は変な声を出してしまった。
会って一言目からそれか!ただでさえ褒められ慣れてないのに、こんなに直球で言われたらどう反応すればいいか分からない。というか、周りの人に聞かれていたらどうするつもりだ!ノロケカップルかと思われてしまうじゃないか!
「なな、なんなんですかいつもいきなり褒めてきて!びっ、びっくりするんですよ!」
「いえ、私服の真城さんは見たことがなかったので、つい。…こういうのが真城さんは似合うんですね。『その時』が来た時のためにも記録しなくては…。」
どこからともなく取り出したメモとペンになにやら書き殴っている。手が止まりそれらを片付けると今度はスマホをを取り出してこちらに向けてきた。
「真城さん、1枚でいいので写真撮らせてください。」
「いやなんでですか!?ていうか『その時』ってもしかして…!」
「勿論、真城さんをプロデュースした時ですよ。」
あっけらかんと放たれた言葉に、私はもう何も言い返せず大きなため息をつくだけだった。
そんな漫才のようなやりとりをするうちに、いつの間にか時間は集合時間まで過ぎていた。 - 71二次元好きの匿名さん25/03/04(火) 23:07:14
最高かな
- 72二次元好きの匿名さん25/03/05(水) 06:33:10
保守らねばならぬ
- 73二次元好きの匿名さん25/03/05(水) 08:22:43
くぁわいい
- 74二次元好きの匿名さん25/03/05(水) 11:56:07
どんな服になるだろ
- 75二次元好きの匿名さん25/03/05(水) 19:32:33
ほ
- 76二次元好きの匿名さん25/03/05(水) 20:04:09
保守
- 77二次元好きの匿名さん25/03/05(水) 22:16:40
「おっと、いつの間にか丁度良い時間になりましたね。そろそろ向かいましょうか。」
男に促され、私は隣について歩く。ここから会場の初星学園までは5分もかからない距離だ。見慣れた街並みが広がっているが、1つだけ見慣れない光景がある。
いつもならそこへ向かうのは学び舎へ向かう学生のみだが、今日はこのライブのために老若男女大勢の人々が集まってきている。
デビュー前の駆け出しアイドルが多いにも関わらず、ここまでの人気だとは思わなかった。流石は初星のネームバリューといったところだろうか。
普通に登校するよりも少し時間をかけて門の前に着くと、
そこにはチケット確認の行列ができていた。 - 78二次元好きの匿名さん25/03/05(水) 22:32:33
「えっ、これに並ぶんですか?」
思わず声に出してしまう。多少は並ぶだろうと思っていたが、予想の3倍は超える長さの列だったからだ。
でもまぁ仕方ないか…と潔く最後尾の並ぼうとしたところ、を制止される。
「違いますよ、我々はこちらです」
「えっ!?ちょっ…!」
いきなり手を引かれたかと思うと、何故か校舎の裏手に連れて行かれた。
そこには顔と名前だけはギリギリ分かるアイドル科やプロデュース科の先生たちが数人並んでいた。
「い、今みたいな連れて行きかたやめてって前言ったじゃないですか!…それで、ここは何です?なんか関係者入口みたいですけど…。」
「?当たり前でしょう、関係者用の入場口ですから。」 - 79二次元好きの匿名さん25/03/05(水) 22:45:09
「…もしかして、チケット確認してませんでしたか?取り出して見てみて下さい。」
私はポカンとしたままチケットを取り出す。そこには小さいがハッキリと「関係者用」と書かれていた。
「さ、先に言って下さいよ!いや、そりゃよく確認してなかった私が悪いですけど!」
「ハハ、慌ててる真城さんも可愛いですよ。」
少しからかうような笑いに少しムッとしてしまった。でもここで言い返したらもっと恥ずかしいだろう。
それにしても、プロデュース科でなかったら取れなかったとはこういうことだったのか。…しかしまぁ、一般席に隣同士よりはまだだ良かったかもしれない…。 - 80二次元好きの匿名さん25/03/06(木) 02:06:31
あったけぇスレだ…絆が深まるんだ
- 81二次元好きの匿名さん25/03/06(木) 06:52:59
学Pが完全なスケコマシだけどそれがまたいい!
- 82二次元好きの匿名さん25/03/06(木) 07:53:27
これは稀に見る良スレ
- 83二次元好きの匿名さん25/03/06(木) 08:43:39
からかわれ上手の真城さん
- 84二次元好きの匿名さん25/03/06(木) 14:58:54
からかわれてるの可愛い
- 85二次元好きの匿名さん25/03/06(木) 21:10:26
ほほほ
- 86二次元好きの匿名さん25/03/06(木) 22:23:26
私達が関係者列に並ぶと、見覚えのある女性に声をかけられた。この人は確かプロデューサー科の…。
「あら、貴方が噂の真城優さんですね。初めまして、根緒亜沙里です。プロデューサー君がご迷惑をおかけしてませんか?」
「はじめまして、根緒先生。私のこと知ってらっしゃるんですか?」
「勿論ですよ!初星学園放送部、私も毎週楽しみにしていますから。」
プロデューサー科の先生も聞いてくれているのか。放送部が有名になっていて少し鼻が高くなってしまう。 - 87二次元好きの匿名さん25/03/07(金) 07:36:49
ほしゅ
- 88二次元好きの匿名さん25/03/07(金) 10:53:06
P優良すぎる
- 89二次元好きの匿名さん25/03/07(金) 18:52:54
保守
- 90二次元好きの匿名さん25/03/07(金) 19:13:09
普段は褒められなれてない女の子が急に褒められて照れて反論しちゃうのかわいくて好き
- 91二次元好きの匿名さん25/03/07(金) 20:03:24
保守
- 92二次元好きの匿名さん25/03/07(金) 20:40:32
「あ、ありがとうございます…。色々な方に聞いてほしいと思っているので、とても嬉しいです。」
「ふふ、それにプロデューサー君がいつも言っているんですよ?『俺の真城さんがいつも可愛くてしょうがない』って。」
「はっ!?」
何だそれは!?先生にすらそんなノロケ話しているのかこの男は!?くるりと振り返って男を見れば、腕を組んでうんうんと頷いていた。
「何を後方腕組みプロデューサー面してるんですか!?まさか学園の知り合い中に言ってまわってませんよね!?」
「…あさり先生、分かっていただけましたか?真城さんの魅力を。」
「なんではぐらかしてるんですか!」 - 93二次元好きの匿名さん25/03/07(金) 20:59:44
「ふふ、微笑ましいですね。だけどプロデューサーくん?あまり真城さんを困らせちゃいけませんよ?それと仲が良いのは良いことですが、距離感が近すぎるのもプロデューサーとしては考えものですよ?」
やりとりを見ていたあさり先生が困ったような笑顔で注意すると、「…自省します。」と男はすこし方をすぼめた。
先生ありがとうございます。上の立場からそう言われては、少しはマシになるだろう。
「では、私は先に入場しています。真城さんも楽しんでいってくださいね。」
そう言ってあさり先生は通路へと消えていった。列に残るは私達2人だけ、「私達も行きましょうか」とチケット確認をしてもらい、中に入っていく。 - 94二次元好きの匿名さん25/03/07(金) 21:38:56
通路をどんどんと進んでいくと、遠目に明るい光が見え、がやがやとたくさんの人々が動く音も聞こえてくる。
少しづつそれらは大きくなっていき、ついに通路を抜けると
「…!すごい、ですね。」
「俺も初めてみた時は驚きました。1つの学校がこれほどのステージを持っているとは。」
外から見たよりも中はずっと広く見えた。ステージは豪奢な彩飾がなされていて、たくさんのライトが照らしている。観客席はまだ入場時間になったばかりだと言うのに、人々で溢れかえっていた。
「ここはすべての初星アイドルが目指す夢の場所です。」
そこまで言い切ってから、男は言い直した。
「いえ…目標、と言ったほうが正しいでしょうね。皆、夢物語で終わらせる気はないでしょうから。」 - 95二次元好きの匿名さん25/03/08(土) 03:40:52
保守
- 96二次元好きの匿名さん25/03/08(土) 11:00:45
保守
- 97二次元好きの匿名さん25/03/08(土) 17:04:21
日本保守党
- 98二次元好きの匿名さん25/03/08(土) 22:44:11
「そして俺はいずれここに真城さんも立ってもらうつもりです。光り輝くステージで歌い踊る、その姿を見てみたい。」
いつも私をスカウトするときとは違う神妙な横顔に、少しどきりとする。…いつもそんな感じなら、私も逃げたりしないのに。
「…おっと、ライブ前にこんなしんみりとしていてはいけないですね。真城さん、これを。」
渡されたのはのスイッチのついた透明な棒、ペンライトというものだろうか。
「ありがとうございます。用意がいいんですね。」
「アイドルのライブには必須ですよ。予備の電池もあるのでご心配なく。」 - 99二次元好きの匿名さん25/03/09(日) 03:23:57
保守
- 100二次元好きの匿名さん25/03/09(日) 11:41:25
完結までは保守(まも)り抜くさ
- 101二次元好きの匿名さん25/03/09(日) 13:46:56
保守
- 102二次元好きの匿名さん25/03/09(日) 20:53:54
よきかな
- 103二次元好きの匿名さん25/03/09(日) 23:01:16
開演までおとなしく座ってパンフレットを読んで待つ。
出演アイドルの紹介欄に、一人一人のコメントが添えられていた。
『私にとって最高のパフォーマンスをしてみせる!』
『憧れの舞台に立てました。』
『ファンの皆に最高の時間を届ける!』
各々の思いが込められたコメントに、彼女たちの血の滲むような努力を想像した。それが続けられる理由、きっとそれは辛くて逃げたいものではなく、楽しくて夢中になれるものだからなのだろう。
アイドルを目指せばそうなれるのだろうか。今までの人生で、夢中になれることがなかった私にも。 - 104二次元好きの匿名さん25/03/09(日) 23:20:19
ペラリ、ペラリとページを捲っていると、パッと明かりが消えた。開始時間ピッタリ、始まりの合図のようだ。
ブーッとサイレンが鳴り、カーテンが開く。暗闇をスポットライトが照らした先には学園長が立っていた。
最初のプログラムは学園長挨拶…か。これは聞き流してもいいかな。全校朝礼があるときも、どうでもいい話ばっかりだし…。
――――――――――――――――――――――――――
長いので学園長挨拶カット
――――――――――――――――――――――――――
「そこでワシはこう言ってやったのじゃ!お前が目指すプロデューサーとしてのあり方は…ん?なんじゃ?え、もう時間?ここからがいいところじゃったのに…。…オホン、皆様長らくお待たせ致しました。これより初星学園主催ライブ、星屑(スターダスト)の開演でございます!1人目のアイドルは…この娘じゃ!」 - 105二次元好きの匿名さん25/03/10(月) 03:05:34
早めの保守
- 106二次元好きの匿名さん25/03/10(月) 11:08:42
保守
- 107二次元好きの匿名さん25/03/10(月) 20:16:50
保守
- 108二次元好きの匿名さん25/03/10(月) 20:53:22
保守
- 109二次元好きの匿名さん25/03/10(月) 21:49:46
――――――――――――――――――――――――――
ついに始まったライブは、初っ端から大盛りあがりだった。
それもそのはず、トップバッターは現一番星の十王星南会長だったからだ。
彼女のパフォーマンスはどこをとっても完成されていて、歌声、ダンス、美貌に目を奪われた。ただ…
(このあとのアイドル達は大丈夫だろうか。)
そんな考えが頭をよぎる。あれほどのパフォーマンスを見たら、高いハードルになってしまうのではないだろうか。
「心配はいりませんよ。彼女達はむしろ、やる気に満ち満ちているでしょう。」
私の脳内を見透かすように男が言う。テレパシーでも出来るのかこの人は…。
「今のパフォーマンスを超えれば、一番星にだってなれる、と。勝ちたいという思いは、それだけで力になるものです。真城さんもアイドルになればきっとわかりますよよ。」 - 110二次元好きの匿名さん25/03/11(火) 01:51:33
保守
- 111二次元好きの匿名さん25/03/11(火) 05:05:52
保守
- 112二次元好きの匿名さん25/03/11(火) 12:52:19
保守
- 113二次元好きの匿名さん25/03/11(火) 18:23:12
ほっしゅ
- 114二次元好きの匿名さん25/03/11(火) 20:33:51
「そう、なんですね。」
もしかすると、十王会長が一番手だったのはそれを見越してのことなのかもしれない、アイドル達の闘志を更に引き出すために。
「おや、締めの言葉への否定が無いですね。もしややる気になってくださったのですか?」
「ひ、一言余計です!」
そんなやりとりをしていると、次のステージがもう始まるようだ。男のにやけ顔を無視して、舞台に注目する。
次はどんなアイドルだろうか、まだ始まったばかりだというのに、期待に胸を膨らませている私がいた。 - 115二次元好きの匿名さん25/03/11(火) 20:58:20
アイドル一人一人の描写をすると、ちょっと長くなってしまいそうなので省きます。遅筆&展開下手で申し訳ないです…。
――――――――――――――――――――――――――
全員のステージを見届けた。
圧巻、その一言だった。
息をするのも忘れるほど、食い入るように見入っていたと思う。
これが「アイドル」なのか。見る人を惹きつけ、魅了する。
知らなかった世界。…いや、私がスカウトされていなければ知ることがなかった世界かもしれない。
「すごいですね…アイドルって。」
思わず口に出してしまうが、それに対する返答は無く、代わりに男は静かに頷いている。彼も余韻に浸っているのだろうか。
しかし、そろそろ退場時刻だ。私達は興奮冷めやらぬまま席を立ち、出口へと進む。
歩く途中、誰も立っていないあのステージに、立つ私を夢想してみた。
先程のライブのように、観客の心を動かし、会場を沸かせ、視線を一点に受けている。
…悪くない、な。
そう思ってしまった。 - 116二次元好きの匿名さん25/03/12(水) 01:07:36
保守
- 117二次元好きの匿名さん25/03/12(水) 08:12:28
ええんやで
- 118二次元好きの匿名さん25/03/12(水) 13:58:45
保守
- 119二次元好きの匿名さん25/03/12(水) 18:29:44
保守
- 120二次元好きの匿名さん25/03/12(水) 22:41:22
帰宅前にカフェに誘われた。インドア派な私はすぐに帰るつもりだったが、「奢りますから」と泣きつかれて渋々ながら行くことにした。
…やっぱり私は押しに弱い。
「今日はご一緒して頂いてありがとうございます。真城さんは楽しめましたか?」
「私も楽しかったです。…こんなに楽しめるとは思ってませんでした。」
男はブラックコーヒー、私はミルクティーを飲みながら今日のライブの感想を話す。
あの娘の歌声が綺麗だったとか、あの娘はダンスがキレていたとか、細かな魅せ方に至るまで語る。
…まぁ大体は男が話していて、私は相槌をうつだけだったのだが…。
一通り話をしたあと、男は一口コーヒーをすすってから訊いてきた。
「さて、本題ですが…。今日のライブを通して、真城さんのアイドル観の変化はありましたか?」 - 121二次元好きの匿名さん25/03/12(水) 23:47:23
「…そうですね。」
しばしの黙考のあと、私は答える。
「…かっこいい、と思いました。」
「ほう?」
「ステージに立っていたアイドル達全員が、闘志というか、熱意というか…。心の中に強い意志を秘めていた、気がします。」
「…なるほど。彼女達が背負う気持ちに、感銘を受けたと。」
「うーん…?うまく言い表せないんですけど、そんな感じ、ですかね…?」
言葉にするには足りない気がする。だが、私はハッキリと「それ」を感じることができた。
私ミルクティーを飲みながら思考をまとめようとする。
お互いにカップを置く音だけが聞こえる沈黙、破ったのは思案顔をしていた男からだった。
「…感じ取るだけでも十分だと思いますよ。無理に言葉にする必要はありません。彼女達の心の中の思いが見えたなら、こちらも心で理解すれば良い。」
自身の胸をトントンとたたきながら、冗談めかして言う彼に思考を乱され「まぁそういうものですかね。」と適当に返した。
…またしても沈黙が訪れ、とりあえずミルクティーを飲んで間をもたすか。そう思ってカップを手に取ると
「それより真城さん。かっこいいと思ったということは、アイドルに憧れたということですよね?どうです?興味は出てきましたか?」
男が急にぶっ込んできた。 - 122二次元好きの匿名さん25/03/13(木) 06:51:37
保守
- 123二次元好きの匿名さん25/03/13(木) 14:35:28
保守派
- 124二次元好きの匿名さん25/03/13(木) 21:51:48
保守
- 125二次元好きの匿名さん25/03/13(木) 22:27:48
「やっぱり聞いてきた…。…アイドルになるかどうか、それについてはまだハッキリ言いません。ただ…。」
ソーサーにカップを置き、一呼吸して男の目を見つめる。真剣に、誤魔化す気などないと。
「そんな未来も良いな、なんて…。そう思ったのは、認め、ます。」
「! 本当ですか!それならば話が早い、契約書を持って来ていますのでここにサインを…!」
「だ、だからなるかどうかはまだ決めてないですって!」
ガタリと立ち上がった男はどこから取り出したのか、書類とボールペンを押しつけてくる。この人、用意が良いというか図々しいというか…。
「まだあと2日、結論まで待ってるって言ってたじゃないですか!…人生に関わることかもしれないので、深く考えたいんです。」
契約書を押し返しながら真面目な声音で言うと、男は流石に引き下がる。
「…俺は真城さんをプロデュース出来るなら、いつまででも待てます。ただ、改めて理由を聞いても?」
「それは、その…」
――――――――――――――――――――――――――
私が悩む理由を話し終わり、そろそろ解散しようと席を立ってレジに向かったところ、会計は既にを済ませてまあった。
「ごちそうさまでした。…本当に良いんですか?お金。」
「いえいえ、むしろ俺はありがたいくらいですよ。まさか真城さんとお茶をご一緒出来るなんて。そのために払うお金など些事にもすぎません。」 - 126二次元好きの匿名さん25/03/14(金) 02:23:42
ほ
- 127二次元好きの匿名さん25/03/14(金) 08:27:23
こっからアイドルに目覚めるかな 頑張れ
- 128二次元好きの匿名さん25/03/14(金) 12:42:17
保守
- 129二次元好きの匿名さん25/03/14(金) 19:17:03
保守
- 130二次元好きの匿名さん25/03/14(金) 21:47:59
保守
- 131二次元好きの匿名さん25/03/14(金) 22:54:30
「…それでは、お言葉に甘えます。ありがとうございます。」
「こちらこそ。…そろそろ帰宅しましょうか。空ももう暗くなってきていますし、親御さんも心配するでしょう。…せっかくですし家まで送りましょうか?」
「せ、せっかくって何ですか!大丈夫です!一人で帰れますから!さ、さよなら!」
流石に家まで一緒に帰るのは恥ずかしすぎる。逃げるようにその場を後にして家へと向かう。
家に着いた頃にはもう陽光は日は完全に落ちていた。
「ただいま。」
「おかえりなさい。ライブどうだった?」
ひょこりと廊下に顔を出して母が出迎えてくれる。家の中には美味しそうな匂いが漂っていた。
――――――――――――――――――――――――――
「ごちそうさま、美味しかった。」
「お粗末様。…ねぇ優、何か悩みごと?」
「えっ。…ないけど。」
「隠してもわかるよ?優は顔に出やすいから。」
…母にはお見通しか。このまま隠していても不安がらせるだけだし、ちゃんと相談することにした。
アイドルとしてスカウトされていること、ライブを通して私が少し興味を持ち始めていること。
それらを話し終わると、黙って聞いてくれていた母が怪訝そうな顔で意外な発言をした。
「…その話、優はまだ悩んでたの?」 - 132二次元好きの匿名さん25/03/15(土) 02:05:40
保守
- 133二次元好きの匿名さん25/03/15(土) 12:09:17
お母さんなんだか訳知り風だな…
- 134二次元好きの匿名さん25/03/15(土) 12:33:52
興味を持ち始めて嬉しいのう
- 135二次元好きの匿名さん25/03/15(土) 20:59:18
保守
- 136二次元好きの匿名さん25/03/15(土) 21:27:35
「まだって…お母さん、知ってたの?」
「知ってるも何も、この前優のプロデューサーさんが来てくれたんだよ?真城さんをアイドルとしてプロデュースさせて下さいって。親御さんの了承は必要ですからって。」
「来たって、家まで!?」
何で家知ってるの!?というか、お母さんに会ってる!?全然聞いてないんだけど!?
「お、お母さん!何で言ってくれなかったの!?知らなかったよそんなこと!」
「えー、だって優は知ってるって思ってたから。…それにしても、あの人すっごくイケメンだよねー。優、好きになっちゃうんじゃない?」
「はあ!?ならないよ!」
何を能天気なことを言ってるんだこの母親は!?好きになんてなるわけ…ないよね?
…そ、そんなことより母のこの反応だ。この感じだと、私がアイドルになることが前提のように思える。
「ていうかお母さん?もし私がアイドルになるって言ったら、賛成なの?」
「賛成も何も、なるものだと思ってたよ?優がアイドルやってる姿、見てみたいからね。お父さんもそうだって。」
「そ、そうだったんだ…。」
まさか母のみならず父までそのつもりだったのか。家族で話し合いもなく納得しているとは…。 - 137二次元好きの匿名さん25/03/15(土) 21:50:24
「でも、まだ悩んでるなら、お母さんは優が出した結論を尊重するよ。あなたの人生だからね。」
――――――――――――――――――――――――――
母たの相談が終わって数時間、私は寝る準備を整えてベッドに入っていた。
目を閉じてライブを振り返れば、アイドル達の華やかな姿を鮮明に思い出せる。ステージ上で歌い踊り、オーラを放ちながら輝いていた。
…今になって改めて思う、私もああなりたい。アイドルとして、ステージに立ちたい。
「でも、な…。」
決断できない理由は2つ…あったのだが、今はもう1つになっている。両親が何というかが気がかりだったが、二人とも何故かノリノリだったので、そっちについてはもう問題ない。
ではもう1つは何か?それはズバリ、「アイドルとして成功できなかった場合」だ。 - 138二次元好きの匿名さん25/03/15(土) 22:27:09
『必ずトップアイドルになれる』
男はそう言っているが、この世の中に必ずなんて無いことは分かっている。
私に才能があると言われるのは正直嬉しかった。しかし、それが本当かはわからないし、本当だったとしても花開くかはわからない。まさに茨の道だ。
…少なくとも、今日観ていたアイドル達を超えることができなくてはいけない。それが私に出来るだろうか?
では逆に、アイドルにならなかったとしたら?きっと普通に高校を卒業して、それなりの大学に行き、そこそこの企業に就職する――。…それはそれは平穏で退屈な人生だろう。
正解なんて無い選択肢。どちらを選ぶにも、なるようになれとこの身を投じるしかないのだ。
「ふわぁ…。眠…。」
ずっと考えていると、途端に眠くなってきた。インドアな私にしては長く活動していたので、知らぬ間に体が疲れ果てていたのだろう。
今日はもう寝よう、明日は普通に学校だ。
(明後日までに結論出せるかな…。)
その思考を最後に、いつの間にか私は眠っていた。
その日見た夢は、ライブステージに上がる私と『プロデューサー』だった。 - 139二次元好きの匿名さん25/03/16(日) 02:06:33
ほしゅ
- 140二次元好きの匿名さん25/03/16(日) 10:28:17
守護
- 141二次元好きの匿名さん25/03/16(日) 15:02:12
ほ
- 142二次元好きの匿名さん25/03/16(日) 20:41:06
保守
- 143二次元好きの匿名さん25/03/16(日) 21:26:55
このレスは削除されています
- 144二次元好きの匿名さん25/03/16(日) 21:37:45
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- 145二次元好きの匿名さん25/03/16(日) 21:42:19
2回も途中送信しちゃいました…。本当にすみません、再再投稿です。
―――――――――――――――――――――――――
翌日の昼休み、自席に座って転科について悩んでいるところ、友人から遊びの誘いがあった。
「優ー!久々に放課後カラオケ行こーよ!どーせ暇してるでしょー?」
「言い方…。まぁ予定はない、けど…。」
うーん、今日か。いまだに結論に迷っているのに、遊びに行ってる暇はあるのだろうか。
返答に迷っていると、友人が心配そうな顔で聞いてくる。
「…優、なんかあった?いつもよりもっと顔暗くなってるよ?もしかして体調悪い?」
「いやだから言い方!いつも顔色良くないみたいな感じになってるけど!?…体調に問題は無いから大丈夫、心配ありがとう。」
「あはは、ツッコミはいつも通りだ。その調子でパーっと歌って元気出せないかなって思って誘ったんだけど、どーかな?」
私を心配してくれてのことか。断るのも悪いし、それに思い切り歌って頭をスッキリさせれば、答えも出しやすいかもしれない。
「…それじゃ、行こうかな。他に人は来るの?」
「うん、優と私含めて四人かなー。みんな優の歌聞きたがってるよ。アイドルの歌、いやー楽しみ!」
「まだ決めてないって!」
いつも通りのやりとりを終え、授業の準備を始める。
…心配して、遊んでくれる友人がいる、私はこのクラスが好きだな、と思いながら。 - 146二次元好きの匿名さん25/03/17(月) 03:03:18
保守
- 147二次元好きの匿名さん25/03/17(月) 07:54:37
っしゅ
- 148二次元好きの匿名さん25/03/17(月) 08:24:45
どうゆう系の歌歌うんだろ
- 149二次元好きの匿名さん25/03/17(月) 13:21:07
カッコいい系の歌歌って欲しい
- 150二次元好きの匿名さん25/03/17(月) 15:43:49
カッコいい系ならストリートファッションしてほしい
- 151二次元好きの匿名さん25/03/17(月) 21:37:06
しゅ
- 152二次元好きの匿名さん25/03/17(月) 23:09:24
「来たぞカラオケ〜!とりあえず採点入れて…、じゃ、私が一番乗り〜!」
意気揚々と一人がマイクを手に取り、歌い始める。何度も聞いた友人の歌声は、とてもかわいらしく元気で、それでいて音程も外さない。気になる得点は…91点。
「うんうん、いい感じ!私を超えるのは誰だ〜?」
「はいはーい!うちの番だよ!」
2人目歌声はとても美麗で淑やかで、聴き入らせられるものだった。得点は90点。
「ほいじゃ、次あたしね〜。」
3人目は情熱的に、感情のこもった歌声。得点は91。
(3人共、やっぱり歌上手いな。いっつも最後の私はプレッシャーあるんだけど…。)
そんなことを考えながら私は曲を選んだ。
いい得点はでなくても、気持ちよく歌えればいい。元々そのために来てるわけだし。
「ほらほら優の番だよ!いつものまじで期待してるから!」
「あの、あんまり期待はしないでほしいんだけど…。」
マイクを手に取り、画面をまっすぐ見つめ、私は歌い出す。曲名は…『小さな野望』 - 153二次元好きの匿名さん25/03/17(月) 23:21:47
「! これって星南会長のだよね?優歌ってた事あったっけ?」
「ないと思う…。ちょっと意外かも。」
友人たちの話を横目に、私は歌い始める。静かに、厳かに。
普段はアイドルの歌は歌わないが、今日は最初からこれを歌おうと決めていた。選んだ理由は無論、昨日のライブで歌われていたからだ。
一番手の重圧にも負けず、この歌を堂々と歌っていたのがとても印象に残った。
歌がサビに入る頃、友人たちが無言で、真剣な表情で私を見ているのに気づいた。…音程間違ってたかな?
ちょっと恥ずかしいが、今訊くのも野暮なので歌い続けた。
その視線は歌い終わるまで消えなかった。
「ふぅ…何でジッと見て『めちゃくちゃ上手いじゃん!?え!?え!?マジでアイドルなれるって!!』な!?」 - 154二次元好きの匿名さん25/03/17(月) 23:30:28
私が言い終わる前に、食い気味に友人達がずいと言葉を浴びせてきた。なんか圧が強い!?
「絶対なれるって!今まで聴いてた優の歌もいいけど、それよりもっといいよこういう系!」
「ね!?クールなのと、儚げっていうか…?それでも優の魅力めっちゃ出てるって!」
「私、会長の歌声よりも好きかも〜。」
口々に勝手を言う友人達にちょっと引きながら、とりあえずと得点を見る。
…96点。私史上最高点だった。 - 155二次元好きの匿名さん25/03/18(火) 01:10:39
保守
- 156二次元好きの匿名さん25/03/18(火) 08:22:23
すぐ行けるな
- 157二次元好きの匿名さん25/03/18(火) 14:52:25
保科
- 158二次元好きの匿名さん25/03/18(火) 21:01:44
保守
- 159二次元好きの匿名さん25/03/19(水) 01:55:16
保守
- 160二次元好きの匿名さん25/03/19(水) 02:01:00
保守本流
- 161二次元好きの匿名さん25/03/19(水) 07:53:47
っしゅ
- 162二次元好きの匿名さん25/03/19(水) 08:19:40
可愛いぞ〜〜
- 163二次元好きの匿名さん25/03/19(水) 12:59:12
ガンバ
- 164二次元好きの匿名さん25/03/19(水) 19:28:59
しゅ
- 165二次元好きの匿名さん25/03/19(水) 22:51:58
「えっ…。こんなに?」
自分でもびっくりだ。一応何度か聞いてはみたが、歌ったことはないのにこの点数とは。良く歌うものでも94点が最高だったのに。
「やっば!マジでいけてんじゃん!さてはこっそり練習してたなー?」
そんな疑いがかかるのも無理はないが、ホントに歌ったことは無いのだ。
「いや、初めてだって。私もこんなに歌えたの不思議なんだけど…。」
友人は考えるような表情をしてから、ニヤッと笑ってから問うてきた。
「…優さ、この歌どんな気持ちで歌ってた?」
「どんな気持ち、って…。」 - 166二次元好きの匿名さん25/03/19(水) 23:25:58
「今まで優って、初めての曲とか歌ってなかったっしょ?いつも当たり障りないやつばっかだったし、雰囲気読んだ感じだったじゃん?勿論それも上手かったんだけど、今のってそうじゃなくてさ、そういうの無しに、これ歌いたいっ!て歌ったんだよね?」
他二人もうんうんと頷いている。どういうことなのだろうか、私だけが分かってない感じなのか。
「分かって無いな〜?つまり!皆にこれを聴いて欲しいって気持ちだよ!誰かのために歌うって、そんだけ実力にも影響するんじゃないかな?」
…なるほど、そういうことか。今までの私は確かに、とりあえず歌えるやつを適当に選んでいた。その分上手く歌ってみせるというのはあまり意識していなかったかもしれない。
しかし、今のはそうじゃない。これを歌いたいと最初から決めて、出来る限り会長に寄せるように、綺麗な声で歌えるように、何より皆に聴いてもらうために歌おうと思っていた。
「…やっぱりさ。優はアイドル向いてると思う。実はね、今まではちょっとからかってた気持ちもあったんだけど、今の聞いて割とマジで思ってる。」
「うちもそー思うな。…優はどうして迷ってんの?」
「それは…。」
どうやら3人とも本当に私にアイドルを勧めてくれているようだ。ここで適当なことを言えば、彼女達を裏切るような気がする。
「…やっぱり不安でさ、もし成功しなかったらって思うと気が引けるっていうか…。でも、はっきり言って、なりたいとは思ってる。」
ポツリポツリと話す私に、3人とも静かに耳を傾けてくれている。
「それと…。」
チラリと3人の目を見てから、私は口ごもる。…流石にこれを面と向かって言うのは恥ずかしかった。
「えー、何ー?なんか顔赤くなってるよー?」
「…みんなと、離れることになるかなって。」 - 167二次元好きの匿名さん25/03/19(水) 23:48:47
「…なるほどね〜、クラス変わるから寂しいんだ〜?」
「優ってば私達の事好きすぎか〜?」
「優のツンデレマジで可愛い!」
「ちょ、からかわないでよっ!恥ずかしいから!…言わなきゃ良かっ!?」
3人ともニヤニヤしながら私に抱きついてきた。く、苦し…!
「あのね、優?クラス違うくらいで友達辞めると思ってる?なんならアイドル科に顔出しに行くから!」
「うちらの優好き舐めんなよ〜?」
「そうだそうだ〜!」
3人共私を離す気配が全くない。…この苦しさも親愛ゆえと思えば、とても温かくかんじた。
―――――――――――――――――――――――――
「はぁー!歌ったー!いや~気分ソーカイだねー!」
「あはは、声潰れてんじゃん。」
「そっちこそ〜!」
3時間ほどでカラオケを終え、今は店の外を歩いている。
私含め、全員声がかすれるくらいだった。
「そんじゃ、そろそろ解散にするー?」
その一言に2人と私は頷く。そのまま解散しようとする前に、私は一言まったをかける。
「みんな!…背中押してくれてありがとう。みんなのおかげで、私決断できた。」 - 168二次元好きの匿名さん25/03/20(木) 06:50:57
これはいい友情
- 169二次元好きの匿名さん25/03/20(木) 15:48:10
ほ
- 170二次元好きの匿名さん25/03/20(木) 22:01:11
しゅ
- 171二次元好きの匿名さん25/03/20(木) 22:06:35
「あはは、固いこと言うなってー!」
「優のやりたいことなら、私達全力で支えるつもりだからさ!」
「これで優のファンクラブ123番はうちらで決まりかなー?」
「…ふふ、そうだね。…それじゃ、私こっちだから。またね。」
私は手を振って3人と別れ、家路についた。照れくさいけど、とても晴れやかな気分だった。
―――――――――――――――――――――――――
「…はぁ。」
「あららー?ちょっとさみしがってなーい?」
「…そりゃそうでしょ。学校同じでも、会える頻度減るんだからさ。2人だってそうなクセに〜。」
「まぁ…そりゃね。でもその分、優の応援には熱入れてこーぜ!友達の夢だもん!」
「「「おー!」」」 - 172二次元好きの匿名さん25/03/20(木) 22:46:47
夜、寝床で私は明日のことを考えていた。返答はもう決めている。ただ、今までのらりくらりと先延ばしにしていたので、今さら言うのは少し気後れしてしまう。
(でも、ちゃんと伝えなきゃ。私の新しい世界への、一歩目だから。)
―――――――――――――――――――――――――
翌日の放課後、私は渡された連絡先から電話をかける。
ワンコールも終わらないうちに繋がった。
「もしもし、真城さんですね。今日この時を今か今かと待っていましたよ。」
「それにしたって出るの早すぎませんか…?…普通科の屋上で待ってます。」
「承知しました、すぐに向かいますね。他には何かありますか?」
「いえ、特には…。それじゃあ、一旦切りますね。」
「ええ、また後で。」
プツリと音声が途切れ、私も通話ボタンを押す。
…なんだか今になって緊張してきた。いざ言うとなったら尻込みしてしまう。 - 173二次元好きの匿名さん25/03/20(木) 22:47:02
ベンチに座りながら、心を落ち着けるために一度深呼吸をする。
「すぅ…は「お待たせしました」ひゅっ!?」
突然の声に呼吸がつまり、変な音が出てしまう。驚いて振り返ると、待ち人はもう到着していた。
「は、早すぎませんか!?えっ、下の階居ました!?」
「いえ、プロデューサー棟から来ました。すぐにでも真城さんに会いたい一心だったので、早く着きました。」
「それでも5分はかかると思うんですけど!」
「人を待たせないのはプロデューサーとして当然でしょう。」
私のツッコミに、さも常識かのように謎の理由で説明される。…プロデューサー科とは瞬間移動でも学ぶのだろうか…? - 174二次元好きの匿名さん25/03/21(金) 03:05:27
ほ
- 175二次元好きの匿名さん25/03/21(金) 07:39:18
しゅ
- 176二次元好きの匿名さん25/03/21(金) 08:26:25
サバイバルもできるしそんぐらい出来るよ
- 177二次元好きの匿名さん25/03/21(金) 18:17:25
保守
- 178二次元好きの匿名さん25/03/21(金) 22:50:06
「い、いや、そんなことどうでもよかったですね…。…今まで待たせてしまってすみません。答え、出せました。」
目を見据えて、迷いなく話す。今まで逃げるようだったことを詫びるように、自分の本心であると伝えるように。
「…最初にスカウトされた時、正直すごく胡散臭いと思ってたんです。その後何回も会いに来る度、強まって行きましたし。」
「…俺はそんなふうに思われてたんですか…。ちょっと心外ですね。」
「やっぱり気づいてなかったんですか…。――でも、それと同時に思ってたんです。悪い人じゃないなって。」
すこし微笑んで言う私に、男は嬉しいのかそうでないのか、良くわからない表情で顔を掻いた。
…この人のこんな表情、初めて見たかもしれない。なんだか勝った気分だった。 - 179二次元好きの匿名さん25/03/22(土) 03:01:05
保守
- 180二次元好きの匿名さん25/03/22(土) 10:23:10
保
- 181二次元好きの匿名さん25/03/22(土) 18:17:36
さてどうなる…
- 182二次元好きの匿名さん25/03/22(土) 21:46:26
「私をアイドルにしたいって気持ちに嘘は見えなくて…、その思いは信じてもいいのかなって思ったんです。でも、アイドルに憧れとかはなくて、ずっと雲の上の存在だと思っていました。…そんなときにライブに連れて行ってもらって、ステージで輝くアイドル達を見てから、初めて私思ったんです。」
「――私も、あのステージに立ってみたいって。」
自分の中で変わっていったアイドル観。観て、聴いて、触れることで、今まで関わることの無いものだろうと思っていたものが、憧れとなっていた。
「それでも、アイドルになる覚悟が足りなくて、決断しきれなくて。――そんな私の背中を押してくれた人達がいいました。」
「母と父が、私の決めた道なら尊重すると言ってくれました。アイドルという不確かな道を、肯定してくれました。」
「友人達が、私のことを全力で応援すると言ってくれました。友達だから当然だって、一番のファンになるって。」
全員の顔を思い浮かべる。悩む私に、手を取ってくれた。寄り添ってくれた。彼女達がいなければ、今も逃げたままだったかもしれない。 - 183二次元好きの匿名さん25/03/22(土) 22:11:04
「…人に恵まれたと。しかし真城さん、それはあなたの人柄あってこそです。」
いままで黙って聞いていた男が口を開いた。…はて、どういう意味だろうか。私が何だというのだろう。ただ迷っていただけなのに?
「真城さんは真面目で、丁寧で、時折可愛らしい一面を覗かせて、人に好かれる要素しかありませんので。真城さん自身が信頼されているからこそ、周囲にも信頼できる人が増えるというものですよ。」
「なっ、そ、そんな急に褒められて、も…!」
私はこれで何度目かという赤面を晒す。
あぁ、やっぱりストレートに褒められるのは照れくさい。特に、何故かこの人に言われると尚更だ。
…いや、薄々自分でも気づいている。私はこの人に――。
「わ、分かりましたから!というかまだ、もう1人いるので!背中を押してくれた人!」
取り繕うように声を上げ、もう一度目を見据えた。もう目を逸らすことは無いように、迷わないように。
「貴方が私を信じてくれていたから。私に夢を持たせてくれたから。それだけでも、後押しになったんです。」 - 184二次元好きの匿名さん25/03/23(日) 03:08:31
保守
- 185二次元好きの匿名さん25/03/23(日) 11:53:36
保守
- 186二次元好きの匿名さん25/03/23(日) 18:40:58
保守
- 187二次元好きの匿名さん25/03/23(日) 21:12:20
言えた。謝りたかったことも、感謝したかったことも。
あとは1つ、ちゃんと言葉にしたいことを、ハッキリと。
そのためにここにいるのだから。
「だから、私を「真城さん!」…え?」
それは直前で遮られてしまった。せっかく決心していたのに、こんな時に何を…。
しかし、雰囲気を壊すようなことはしないだろう。そういう人だと分かっている。
「それを真城さんに言わせるのは野暮というものです。俺が言います。いや、言わせて欲しいんです。」
目をつぶって一呼吸置き、もう一度私と目をを合わせる。
その真剣な表情は、私の心臓を跳ねさせた。
「真城さん、貴方をプロデュースさせて下さい。」
「…ずるいです。私から言おうと思ってたのに。」
「――はい。これからお願いします。プロデューサー。」 - 188二次元好きの匿名さん25/03/24(月) 01:14:41
やったー
本編も早く実装しろ - 189二次元好きの匿名さん25/03/24(月) 07:40:57
運営何してんだ早く実装を!
- 190二次元好きの匿名さん25/03/24(月) 17:01:39
保守
- 191二次元好きの匿名さん25/03/24(月) 20:40:52
半年後――――――――――――――――――――――
「いよいよ出番ですね。準備は万端ですか?」
いつものスーツに身を固めたプロデューサーが、いつも以上に真剣な雰囲気で聞いてくる。それもそのはず、今日の舞台はこれからのアイドル人生に関わるほどの、大事なステージだ。
N.I.A――新人アイドルの新星を発掘する、大規模の大会。
それもステージはFINALE、優勝決定戦だ。
そんな大一番の舞台に私は立つ。
「はい。私の持っている全て、ここで注ぎ込むつもりです。」
「なら良かった。では、行きましょうか。ファンの皆さんが貴方を待っています。」
激励を受け、ステージへの階段を登り始める。一歩、一歩と進み、客席が見える手前度で振り返る。
「だから、見ていてください。今の私の全部、ファンと貴方に届けて見せますから!」
『初星学園からの超新星!2年時に普通科からアイドル科への転向という異色の経歴!たった半年でのFINALEへと上り詰めた彼女は、どんな輝きを我々に見せてくれるのか!真城優ー!』
ナレーションを受けながら、私は階段を駆け上がる。
それはトップアイドルという夢を駆け上がる、私とプロデューサーとの第一歩目だ。
――――――――――――――――――――――――完 - 192二次元好きの匿名さん25/03/24(月) 20:43:19
ありがとう、最高だった
- 193二次元好きの匿名さん25/03/24(月) 20:47:32
今まで読んでくださった方、保守してくださった方、何よりも素晴らしい概念を提供してくださったスレ主様、ありがとうございます。
駄文、亀レスと至らない点が多くあったかと思いますが、それでも楽しんでくださったのであれば幸いです。
本当に、本当にありがとうございました。 - 194二次元好きの匿名さん25/03/24(月) 21:12:34
P真城という概念は本当に少ないから最後まで見れてよかったです。
約一ヶ月お疲れ様でした。 - 195二次元好きの匿名さん25/03/24(月) 21:43:36
乙。P優概念をここからはやらせていけ
- 196二次元好きの匿名さん25/03/24(月) 22:05:30
ここで出た文とか概念って自分が書くときに参考にさせてもらっていいですかね?
ここでは出せないと思うけど - 197二次元好きの匿名さん25/03/24(月) 22:15:46
最高のSSをありがとう
良い概念を見せてもらった - 198二次元好きの匿名さん25/03/25(火) 07:36:20
ところで本編真城実装は?