エリナの亡霊?

  • 1二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 01:38:18

    サクラコ「ええ」

    ミネ「初めて聞くお話ですね。サクラコ様?」

    サクラコ「……」コウチャ ノミ-

    ナギサ「この茶会には諍いを決して持ち込まない、という誓約を行っていただきましたね。もし場を乱すというのなら、この場から立ち去っていただくことになりますよ、ミネ団長」

    ミネ「深い意味はないのです。ただ、初めて聞く話だと”感想”を述べたまで」

    サクラコ「ミネ団長が思うようなものではありません。これは戯言――噂話、おとぎ話。シスターの間でささやかれる、可愛らしいお話の一つなのです」ハァ

    セイア「亡霊、とついているのに可愛らしいとはね」モグモグ

  • 2二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 01:41:32
  • 3二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 01:45:20

    サクラコ「シスター・マリーも、このお話は知っているでしょう?」

    マリー「は、はい。存じ上げております」ツキビト

    サクラコ「よろしければ皆様にお話していただけませんか? 皆様も、少々お耳をお借りしてよろしいでしょうか」

    ナギサ「かまいません」ズズッ

    セイア「ナギサに同じ」モグモグ

    ミネ「結構」バァァァン

    ズラァァアア

    マリー「ひぃん……。で、では僭越ながら……」ピェ…

  • 4二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 01:50:21

    こ、こほん。
    むかしむかし。
    トリニティ総合学園が成って間もない頃のお話です。
    時が経った今こそ、主の光は遍く自治区を照らしておりますが、当時は未だあちこちに影の差す……。
    主とは異なる神を信仰している学園も多数、あったのだそうです。
    エリナ様は、そのような学園からやってきた生徒の一人、でした。
    主の教えを学ぶため、シスターとして祈りと勉学に励んでいたエリナ様。けれど、教えの外で過ごした時間が長かったため、とても……それはとても苦労されていたそうです。
    学園になかなか馴染むこともできず、お辛い、試練の日々を過ごされていました。
    当時のシスター長様は、そのような試練の中でも明るく笑顔を絶やさないエリナ様に心を打たれ、慈悲深く、時には厳しく、エリナ様をお側付きにするなどして、早く学園に馴染めるようにとご尽力されました。
    祈りも、勉学も、生活も。シスターたちの模範たるシスター長様のお側で過ごすうちに、お心安らかに過ごせるようになっていきました。

  • 5二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 01:52:18

    ミネ「……」ズズッ

    ナギサ「……」カチャリ

    セイア「……」チュンチュン

    マリー「……」アゥアゥ

    サクラコ「どうされましたシスター・マリー。続きを」

    マリー「は、はい。サクラコ様……。あの、どのあたりまで」

    セイア「最後まで頼むよ。気にしないでくれ。少々空気は重くとも、みな、キミの滔々とした語り口に耳を傾けているだけなんだ」

    マリー「は、はぃ……。では……」

  • 6二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 01:54:59

    ----

    ですが……。ですが、お側にいた時間が長いほど、受けた憐れみが大きくなるほど、エリナ様の胸のうちに一つの気持ちが育っていきました。日に日に大きくなっていくものはやがて、胸を裂くような想いに変わっていきます。
    エリナ様は――シスター長様に、恋をしてしまったのです。
    エリナ様はいつしか抑えきれなくなった情動を、思い切って告白されました。
    しかしシスター長様は自身のお立場とシスターとしての心得を説き、その気持ちはいっときの心の迷いだとして、告白を受けることはしませんでした。
    ですがエリナ様の想いは深く、際限なく大きく育つばかり。何度も、何度も。シスター長様に想いを伝えます。想いは涙に変わり、時には激しい嵐のようになり。それでもシスター長様は、お側付きから解任するような――自らの側から離すことは、決して、致しませんでした。
    そんなある日――。
    あろうことかエリナ様はシスター長様の手を引き、教えの外に出てみよう、と誘ったのです。
    それは甘い言葉。蛇がささやくような、甘い甘い誘惑。決してついて行ってはいけない、破滅への誘い。
    エリナ様の手を取れば、きっと堕落してしまう。シスター長様はひどくお心を乱しました。
    そうです。シスター長もいつしかまた、エリナ様に浅からぬ思いを抱くようになっていたのです!
    だから……だからこそ。張り裂けるような胸の痛みに耐えながら、エリナ様の飴細工のような美しくも脆い手を振りほどき、エリナ様を教会から……いえ。トリニティから追放してしまいました。

    ---

  • 7二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 01:57:09

    セイア「……悲恋の物語だね。確かに。わたしたちが好きそうな物語だ」カチャリ

    サクラコ「シスターたちはこのお話を上級生から聞かされます。一度は心をときめかせ、涙を流し、かつてのシスター長のそのお心の強さに勇気づけられるのです」

    マリー「……あの、これから良いところなんですが」プクー

    セイア「ああ、すまない。てっきり終わりかと思っていた。続きがあるのかい」

    マリー「ええ! ええ! 涙なしには語れない、エリナ様のお話はここからが本番です!」

  • 8二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 01:59:54

    -----

    エリナ様の手を振りほどいてからのシスター長様は一層強く、主へ祈りました。
    どうか。どうか彼女に安寧の日々を。主の情けを、憐れみを、どうか彼女にも、と。
    ……ある朝、一人の女性のご遺体が教会に運び込まれてきました。
    町の片隅で行き倒れて亡くなっていたそうです。
    合併によって揺れ動いていた当時の自治区では、時折あることだったと言います。
    シスター長様はいつものように旅立ちの祝福を授けようと、棺の前に立ち、崩れ落ちます。
    ああ! ああ!
    シスター長様は嗚咽が止まらなくなってしまいました。
    棺の中には――飢えと渇きに変わり果てたエリナ様が、静かに、眠っていたのです。
    お可哀想なエリナ様。お可哀想なシスター長様。お二人に課せられた試練は、あまりに辛いものでした。
    一晩経ち、二晩経ち。
    三日三晩、棺の前で泣き伏せていたシスター長様は涙も、声までも枯れてしまいました。
    お別れの時が訪れます。
    しかし枯れた喉では彼女に、旅立ちの祝福を授けることが出来ません。
    胸元で固く手を組み、シスター長様は静かに、祈ります。
    主よ、どうか、お目こぼしを。
    変わり果ててしまったエリナ様に。その身を呈して愛を教えてくれた、愛しい人に……。
    シスター長様は、祝福の口づけを、授けたのでした。

    -----

  • 9二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 02:04:26

    マリー「……」フンフンッ

    ミネ「……」コウチャ ノミー

    セイア「なんというか……はは、顔が熱いね」パタパタ

    サクラコ「……とまぁ、このようなお話でして。隠す隠さない以前のお話なのです。続く話に、旧い聖堂の裏手にエリナ様が眠っている、なんて話もあります」

    マリー「あの白い御石ですよねっ! わあ、サクラコ様もご存じでしたか!」キャッキャ

    サクラコ「いろいろバリエーションがあるのです、シスター・マリー。木の下とか、池のそばとか、その年初めて咲いた二輪草の下だとか。どうやらあなたは、私と同じパターンに当たったようですね」ニガワライ

    マリー「そうなのですかっ!?」ガーン

    ミネ「なるほど。いかにも若いシスターたちが好みそうなお話です。そんなことになる前にお二方には強度を高めた救護を行うべきでした。当時の騎士団は一体何をしていたのか!」バンッ

    マリー「……」ムゥー

    セイア「まぁまぁ。マリーもありがとう。いいお話を聞かせてもらったよ。なあ、ナギサ」

    ナギサ「……」グスッ

    セイア「あー……。で、その話が、亡霊とどうつながるんだい。話を聞く限りでは成仏していそうだけどね」

  • 10二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 02:08:35

    待ってた
    スレタイで気づけなかったけどリアタイできて嬉しい

  • 11二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 02:08:45

    サクラコ「エリナ様が飢えて亡くなっている、というのが、亡霊話の元なのです」

    セイア「ほう?」

    サクラコ「おとぎ話や噂話にありがちなこと。尾ひれはひれ……。エリナ様のお話の一部分から派生した怪談話が、いつしか生まれました。ね、マリー」

    マリー「私はそのお話、キライです」プイッ

    ナギサ「グスッ……。なるほど。それで、この度の件に関係あるのでは、と」

    サクラコ「きっと元々は小さなものだったかと。隠しておいたお菓子や、置きっぱなしにしてあった果物などが無くなっているなどですね。もちろん誰かが片付けただけ、でしょうが。しかし今では”誰もいないはずの厨房から良い匂いが香ってくる”という話に膨らんでいます。もちろん、扉を開けても誰もいない上、料理がされた形跡もない、といった風に。ああ、自分を追放したシスター長を夜な夜な探し周り、出会った者は呪われる、なんて話もありますね」

    セイア「まったくありがちだね。音楽室のピアノが勝手に鳴るとか、絵画の目が動く、だとか。そのような類の」ズズッ

    サクラコ「状況としては……。ナギサ様、ミカ様、セイア様。ティーパーティたるお三方の寝所に深夜押しかけ、食を共にした、かの女生徒。その正体こそ――」

    ミネ「エリナ様の亡霊ではないか、だと? 私は彼女の治療をしました。亡霊が負傷し、血を流すとでもいうのでしょうか。まったくバカバカしい」

    ナギサ「――とも、言いきれないのです。ミネ団長」

  • 12二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 02:11:16

    >>10

    似たようなスレタイで立てるといいつつこの有様。

    申し訳ねえ。

  • 13二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 02:12:49

    ミネ「と、言いますと?」

    ナギサ「こちらは私の側付きをお願いしている方です。あの夜、部屋の前で警護をお願いしていた方でもあります」

    ティーパーティモブ ペコリ

    ナギサ「説明をお願いできますか?」

    ティーモブ「かしこまりました、ナギサ様」ペコリ

    ティーモブ「私はあの夜、ナギサ様の御寝所の前で、確かに不寝番をしておりました。通常、番には2名付くことになっておりまして、それはセイア様のお部屋も同じです。ミカ様は、現在警護対象から外れていますが――」

    セイア「余計なことは言わないでいい。ただあの日あったことだけを話してくれないかい?」

    ティーモブ「は、はい。失礼いたしました。それで、私たちは状況によっては深夜に一度、交互に休憩を取るのです。私は先にもう一人の子に休憩に行くよう促し、おおよそ30分の間、一人で立哨しておりました」

    ミネ「それで?」

    ティーモブ「交代もつつがなく終え、夜明けを迎えました」

    ミネ「……それで?」

    ティーモブ「わ、私からは以上です……」

    ミネ「わけがわからないのですが……。つまり、なすべきことをなした、という報告ですか? これが亡霊話とどんなつながりが?」

  • 14二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 02:16:04

    セイア「おかしいことなんだよ。だろう? ナギサ」

    ナギサ「ええ。私は確かにあの夜、扉を出て旧校舎の厨房で、彼女と共にアップルパイを調理し、舌鼓を打ちました。生地から捏ねることに絶句し、羽に小麦粉すらつけたままに部屋に戻り、朝を迎えたのです」

    ミネ「お話は伺っております。セイア様やミカ様との状況と同じ――」ハッ

    セイア「おかしいだろう? この子が立哨していた扉から外に出ているんだから。なのに、彼女は異常を報告していない」

    ティーモブ「はい。あの夜、ナギサ様はお部屋から出ることなく、お休みになられていたはずです。それは……あの、日報に書いた通りで……。決してサボっていたわけではなく……」

    ナギサ「大丈夫です。私はあなたのことを信頼しているからこそ、お部屋の警備をお任せしているんです」ニコッ

    ティーモブ「あ、ありがとうございます!」パァァァア

    セイア「彼女は夜中に見知らぬ生徒に手を引かれ、扉を出るナギサを認識していない。しかし、監視カメラにはたしかに、警護の脇を、誰かに手を引かれるように片手を前に出して歩いていく、ナギサが映っていた」

    ミネ「……なんと」ブルルッ

  • 15二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 02:20:38

    セイア「ミカの時も同じだ。そうだね、サクラコ?」

    サクラコ「はい。朝の礼拝の準備をしているとき、今では使用されていない旧い聖堂から歌声が聞こえてきたのです。シスターの誰かが喉を慣らしているのかと覗きに行ってみたら、いらっしゃったのはミカ様でした。歌っている歌も、どうやら古い歌で……」

    ナギサ「Parsley, Sage, Rosemary, and thyme、ですか」

    サクラコ「いいえ。Parsley, laurel, Rosemary , and thyme、でした」

    ミネ「有名ではありますが、とても古い歌ですね。しかし、教会で歌うようなものかと問われれば……」

    サクラコ「いわゆる俗謡。叶わぬ恋の詩。成すことのできない難題を成せたのならば結ばれるだろうという、悲恋の詩。ミネ団長のおっしゃる通り、讃美歌として歌うには、少々……。それに、気に掛かることも」

    ミネ「……まるで、エリナ様とシスター長のお心の、ような」

  • 16二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 02:25:03

    サクラコ「歌われていらっしゃったのは問題ないのです。こちらでは使っていない場所でしたので。ですが、その時のご様子が……」チラッ

    ナギサ「お気になさらず。ありのままを話してください」ズズッ

    サクラコ「……まるで隣に誰かがいるかのように、楽し気で。つい聴き入ってしまい、歌い終わりに拍手をしてしまったのですが……。急に、その……」

    セイア「はは。土下座か。聞いたよ、亡霊さんに」ズズッ

    サクラコ「笑いごとではありません。が、その通りです。急に頭を下げられ戸惑う私に『この子がどうしてもわたしの歌を聞きたいと言って』と……」

    ナギサ「ですが、その場には……」

    サクラコ「ええ。いらっしゃったのは、ミカ様おひとりでした。『大聖堂で私の歌を聞きたかったとこの子に手を引かれ、思わず』とも。かの聖堂が大聖堂として使われていたのは、もう、ずっとずっと昔の話なのですが……。あの歌にはカンティクルと言われる――旧い聖歌のように声を重ねる形態も存在します。後になって気付いてみれば、反響のせい、かもしれませんが……。お声が重なって聞こえたような。そんな気がします」

    ミネ「そ、そういえば、ミカ様はいかがされたのでしょう。パテル分派の代表が決まるまでの間は、会議の場には暫定的にミカ様がご出席なされるはずですが」

    セイア「彼女は……少し混乱していてね。まあ、これは公的なものではない、ただのお茶会だ。多めに見てやってくれないかな」

  • 17二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 02:27:39

    ミネ「にしても、その事実はすぐに共有されるべきでは? ただでさえミカ様はお心がお疲れになられているのですから、大事になる前にわれわれに一報ぐらい……」

    サクラコ「……」イラッ

    マリー「!」ハッ

    マリー「ミネ団長! わたしたちは皆様のプライバシーを尊重し、救いと赦しを与え、心身ともに健全な学園生活を送っていただくという――」

    サクラコ「マリー」

    マリー「はい!」プンスコ

    サクラコ「下がりなさい」

    マリー「……はい」シュン

    サクラコ「……」

    セイア「……」ハァ

  • 18二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 02:30:07

    サクラコ「……ミネ団長。確かに我々は多くの秘密を抱えていると疑われても仕方ありません。ですが、”教会の中の出来事は決して外に漏らさない”。この約束事を固く守っているからこそ、一人では抱えきれない罪の意識を曝け出せる信用が生まれているのです。救護騎士団も、患者のプライバシーは守るでしょう? 同じことではありませんか?」

    ミネ「……申し訳ありません。その通りです」シュン

    セイア「はあ。なんでこう、仲良くできないものかね。政治の話は政治の場でしようじゃないか。今ここは、仲良しグループのただのお茶会、そう言っただろう?」

    ミネ「おっしゃる通りです。……少々、頭を冷やします」

    ナギサ「でしたら、そちらのバナナマフィンをどうぞ。特製のクロテッドクリームをたっぷりつけて召し上がってください。糖はお疲れの脳に良いそうです」

    ミネ「いただきます、ナギサ様」カチャカチャ

    ナギサ「皆様もぜひどうぞ。今日のため、腕によりをかけて作ったお菓子です」フンスッ

    サクラコ「(マリー、ありがとうございます)」ヒソヒソ ウインクッ

    マリー「(!)」パァァァア

  • 19二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 02:33:53

    セイア「かの女生徒はカメラに映らず、他人の目からは見えない。いや、認識を変えるのかもしれないね。ナギサという”人”が警護の横を通り過ぎたことを気付けなかったのと、声が聞こえる可能性はあるのだから。そうなると例外なのが……」モグモグ

    ジ-ッ

    ミネ「むぐむぐ……。わ、私ですか?」

    セイア「私が負傷した彼女の救護を頼みに行ったとき、キミは私より一足先に厨房へとたどり着いた。なにか変わったことはあったかい?」

    ミネ「いえ。調理中にケガをした場合一般的にそうするように、絆創膏とゴム手袋をして、魚を捌いていましたが……」

    ナギサ「あの方なら、お一人でも賑やかにしていそうですね」クスッ

  • 20二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 02:38:57

    ミネ「強いて言うなら、音楽がかかっていた、ですかね」

    ナギサ「そういえば私の時も歌っていましたね。歌うことがお好きなのでしょうか」

    セイア「ミネが聞いた歌はもしかして ”~♪” こんな感じものかい?」

    ミネ「確か……。すみません。深夜だったもので記憶がおぼろげです。少なくとも、聞き馴染みのない民謡のような歌でした」カチャリ

    サクラコ「セイア様、その曲は……」

    コクリ

    セイア「”John Barleycorn”さ。この辺りのものではないね。もっと遠くの、トリニティの自治区でもとりわけはずれの方の唄。ナギサ、キミの時にはどんな歌を?」

    ナギサ「”~♪” このような旋律でした。歌詞は……すみません、あまりこの場にはふさわしくないものと言いますか」ダラダラ

    サクラコ「”Nancy Whiskey”……。これも、とても古い民謡です。当代の子たちはとても知らないような、古い古い……」

    セイア「”Scarborough Fair”。”John Barleycorn”。”Nancy Whiskey”。どれもとても古い歌だね。単に古謡が好きなだけという可能性を否めるわけではないが、どうも気にかかる。というわけで、古き事の専門家を呼んでみた。入ってくれたまえ」パキン

    ウイ「し、失礼します……」ノソノソ

  • 21二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 02:42:19

    サクラコ「あら、ウイさん。ごきげんよう」ニコッ

    ウイ「あ、どうもどうも……。なんでこんな真昼間からテラスに呼ばれなきゃいけないんですか……。アタマ痛いんですけど……」

    セイア「穴倉から引っ張り出してしまってすまないね。魔術師と呼ばれているキミの知識が欲しいんだ。今の話は聞いていただろう?」

    ウイ「ええ、はい、まぁ……。でもサクラコ様は大体わかってるみたいなんで……。セイア様だってわかってるくせに……」ブツブツ……

    セイア「確証が欲しいんだよ。キミの知識は、今この場にいる誰よりも説得力を持つ。われわれが動くには少し、理由が必要なんだ」ニコッ

    ウイ「……はぁ」

    ナギサ「どうぞお掛け下さい。お紅茶は?」

    ウイ「あ、アメリカーノがあればそっちの方が……」

    ナギサ「かしこまりました。すぐに準備いたしましょう」クイッ 

    ティーモブ コクリ パタパタ

  • 22二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 02:49:31

    サクラコ「それで……件の話ですが」

    ウイ「ああ、はい……。まず、スカーバラ・フェアですね……」

    サクラコ「スカ―バラ。スカーボロ、では?」

    ウイ「なんでもいいんですよ。発音が違っても示す歌は変わりません……。サクラコ様、貴女が持つ違和感をまず、言葉にしていただけますか。注釈を付ける形の方が、話し始めが楽なので」メガネ カチャ

    サクラコ「違和感、というよりも、歌詞の改変というのが気になります。歌われた4つのハーブは魔よけの意味だと伺っていますから、これを変じるのは、よくないことだと」

    ウイ「――サクラコ様の考えは正しいんじゃないかと。円を繋げない。辺をずらし頂点を途切れさせる。完璧なものを損なうというのはまじないの破壊、古典的な呪いの一種、です。とはいえ、ハーブを詠唱するまじないはもともと、歌のために生まれたわけではないんです。そもそも詩の原型はいまより数百年前のおとぎ話でして、そちらにハーブは出てきません」

    サクラコ「はあ……」

    ウイ「民謡というのは土地土地で歌われることによって形を変えます。このおとぎ話は長い年月を旅して……いつしか”スカーバラの市へ赴く旅人を誘う悪魔”を退ける謎掛けに変化した。そこに古くからあったまじないがくっつけられ、定着したのがこの歌だと、私は解釈しています」

    ミネ「ということは、元々は悲恋の詩ではない、ということでしょうか?」

    ウイ「いいえ。先に挙げたおとぎ話もまた、悲恋の物語です。恋人を願った少女に、無理難題を吹っかけて振る、といったような」

    セイア「なんともまあ。かわいそうな乙女だね」フフッ

  • 23二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 02:52:57

    ウイ「古い古いお話です……。それこそ、トリニティが成立するよりもずっと前の」

    ティーモブ「どうぞ、アメリカーノです」

    ウイ「あ、へへ。ありがとうございます……」

    サクラコ「……」ヨッツ……ノロイ……マジナイ……

    ウイ「その疑問は後ほど。そして次ですね。”John Barleycorn”。もしくは”John Barleycorn Must Die”。これは、おそらく、セイア様とサクラコ様のお考えの通りです」

    セイア「……やはりね」

    サクラコ「そう、ですか」

    ナギサ「ど、どういうことでしょうか」

    ウイ「この歌は麦の擬人化なんですよ。麦を殺し、麦を埋め、麦が生え、麦が収穫され、麦が加工され、パンや酒になる。麦の一生をバーリーコーンという人に見たて、歌ったもの。つまり――」

    サクラコ「――セイアさま」チラッ

    セイア「……わかった」

  • 24二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 02:55:25

    サクラコ「シスター・マリー。申し訳ありませんが、一度退室を」

    マリー「はい」ペコリ カツコツ

    セイア「ナギサ」

    ナギサ「わかりました。……あなたたちも、席を外していただけますか?」

    ティーモブ ペコリ コッコッコッコッ

    マリーサマ オハナシ ノ ツヅキ ヲ ゼヒ! ワタクシ トテモ カンドウ シマシタッ
    エエッ ! デ、デハ ソノゴノ シスター長様 ノ オハナシヲ……
    バタン

    サクラコ「ありがとうございます」

    セイア「いやいや。ここから先は、根幹だからね」

    ナギサ「……まったくお話に入って行けないのですが」ズズッ

    ミネ「私もです」クッ……

  • 25二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 02:58:25

    ウイ「……よろしいですか?」

    セイア「ああ、話を止めてしまってすまない。バーリーコーンの、その歌の意味だね」

    ナギサ「ひと払いをするほどのことなのですか?」

    セイア「アリウスの一件と一緒さ。我々の、我々たる所以なんだよ。この歌は」

    ウイ「サクラコ様……」

    サクラコ「かまいません。ここは仲良しグループのお茶会。話すことのすべては戯言……ですよ」

    ウイ「わかりました……。この歌は、主の威光にまつろわぬ民の詩を捻じ曲げたもの。そう言われています」

  • 26二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 03:02:30

    ナギサ「……なるほど」

    セイア「サクラコが知っているのには驚いたね。さすがはシスターフッド、といったところだ」

    サクラコ「やめてください……。セイアさまこそ、よくこんな歌をご存じで」

    セイア「私は勉強が好きなんだ。前は日がな一日ベッドの上ですることがなかったからね。シミコには世話になったものだよ」

    ウイ「正確には利用した、というべきですね。詩の原型は、もはや歴史に消されてしまって久しいので、定かではないんですが……。詩の随所に改変されたであろう跡がある、と研究された方がいまして。麦を称える歌が、いつしかその身を犠牲にし他人を生かすという寓話的な解釈に代わった、というように」

    ミネ「確かに、主の献身と見紛うような……。にしても歌一つに、そんな意味が……?」

    ウイ「歌は道具です。そして同時に、形を持たない書でもある。私からすれば似たようなものです、つまりこの歌は――」

    サクラコ「異教の流れを汲む、歌」

  • 27二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 03:07:11

    ミネ「お待ちください。これではまるで――」

    ウイ「最後、です。Nancy Whiskeyですね。こちらは詩、そのものよりも歴史を見るべきです。一息に説明しちゃいますけど、これは土地を追われた人の唄。仕事を奪われ、遠き地に赴いた職人たちのざれ唄であるとされています」

    ミネ「遠き地に……。土地を、追われた……?」

    ウイ「最後の疑問にお答えしましょう。サクラコ様。スカ―バラの話の最後につぶやいたことを、どうぞ」

    サクラコ「――4つ。おまじないのハーブが4つ、というのが、気にかかった……のですが」

    ウイ「我らが教えにおいて、完全を表す数というものがありますね。トリニティという言葉にも、校章にもなっている。――3、です。フィリウス、パテル、サンクトゥス。父、子、精霊。三位一体。4つのハーブは主の教えが広まる以前の、異教徒のまじないなんですよ。そして、セージの効能は?」

    サクラコ「浄化の……!」

    ウイ「完全に一つ足すのもまた、私たちが持つまじないの破壊と解釈すれば。ただでさえそうなのに、わざわざセージが抜かれたのはなぜでしょうねえ。パセリ、ローレル、ローズマリー、それとタイム、でしたっけ? ……これを儀式として見るならば、なんというか、まじないを利用した呪いの一種であると見れるんじゃないでしょうか」

    ナギサ「……」アングリ

    ミネ「……」アングリ

    セイア「答えは、限りなく黒に近づいたようだね」ハハハッ

  • 28二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 03:10:27

    ウイ「歌だけで見ますと、ですね。悲恋の詩、異教の流れを汲む歌に、土地を追われる歌。そして呪い……。そのすべてが――」

    ミネ「そんな、バカげています! 亡霊が実在するとでもっ!」バンッ

    ウイ「……」カタスクメ

    ミネ「じゃあっ、わ、私が治療したのはっ……」ブルブル

    ウイ「その亡霊さん、認識を弄れるんですよね? ミネさん、ほんとに治療したんですか?」

    ”主とは異なる神を信仰している学園も多数、あったのだそうです。”
    ”エリナ様は、そのような学園からやってきた生徒の一人、でした。”
    ”エリナ様を教会から……いえ。トリニティから追放してしまいました。”
    ”自分を追放したシスター長を夜な夜な探し周り、出会った者を呪う、なんて話も――”

    ミネ「うっ……」クラッ

    ナギサ「ミネさんっ!?」

    セイア「こら。言葉が過ぎるよ。まったく」

    ウイ「うへへ……すみません。あの、私の役割は終わり、で、いいですか……?」カエリタイ

    セイア「もう少し待ってくれ。せっかくだ、最後まで茶会を楽しんでくれたまえよ。ナギサ特製のお菓子をたんまり食べてやって欲しいね」ニコニコ

    ウイ「……」ゲンナリ

  • 29二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 03:12:40

    シバラクシテ

    ナギサ「……つまり、どうするべきなのでしょうか」

    セイア「どうするもこうするもないだろう。彼女の素性を知ることが目的だったんだから。ひとまずはこれで、胸のつかえは取れたとおもわないかい?」ノビー

    サクラコ「亡霊の存在をみとめろ、と?」

    ミネ「! あの……そもそも、なのですが……」

    セイア「?」

    ミネ「この話は作り話なのでしょう? サクラコ様ははじめにおっしゃいました。”これは戯言――噂話、おとぎ話。”と」

    ナギサ「……」ズルッ

    セイア「……」

    ……。

    ナギサ「――今までの小難しい話は一体何だったと言うのですか!」

  • 30二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 03:15:45

    ミネ「ではこういうことですか。深夜の暴食魔人はエリナ様の亡霊を模した”愉快犯”だと!」

    ナギサ「それではカメラに映らなかった理由にならないではありませんか!」

    セイア「見ろ! このアカウントはなんだい! こんな奇妙奇天烈な登録名、しかも連絡は一切つかない! これはどう説明つけるんだ!」

    ナギサ「単にあまり端末をいじらない方なのでは!? というか登録名なんていくらでも変えられるでしょう!」

    セイア「……確かに!」

    ナギサ「もう! もう! セイアさん! わたし達を混乱させるのはいい加減に――」

    ワーワーギャーギャー!!

    サクラコ「――実在、するのです」

  • 31二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 03:18:02

    キョロキョロ
    ズイッ

    サクラコ「シスターたちの間では、おとぎ話ということになっておりますが……。エリナ様は。いえ。シスター・エリナは、かつて実在した人物です」

    ミネ「そっ……それは……また話が変わってきますね」ヒキッ

    サクラコ「ミカ様が歌われていた、過去に大聖堂として使われていた場所にですね。祭壇を正面に見て右側の三本目の柱。人目につかない位置に小さく……。彫られているんです。エリナ様のお名前と、かつてのシスター長のお名前が」

    ミネ「どうせ誰かのいたずらでしょう! 有名な話なようですし!? 誰かがかわいらしいいたずらをしたっておかしくはない!」ワナワナ

    サクラコ「ウイさんならご存じでしょう。なんせ禁書にすら手の届く、古書館の魔術師なのですから……」

    ウイ「もぐもぐ……。シスター・エリナですね。確かに記録に残ってます。しかも毒殺されてます。そのシスター長に」

    ミネ「……」ガタン

    セイア「おいおい……。心ときめく恋のお話は、一体どこに行ったんだい?」

  • 32二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 03:20:34

    ウイ「禁書指定の223番です。読みます? 歴代のシスター長が片っ端から閲覧許可求めて来てたみたいで、資料整理していると、嫌でも目に付くんですよね、この数字。この場にいらっしゃるのは首脳陣ですし、どなたでも閲覧可能ですが?」

    ナギサ「それは、やっぱりサクラコさんも……?」

    サクラコ「だ、だって……。噂の真相が記されている本があるとなれば、読みたくなるに決まっているではありませんかっ」プイッ

  • 33二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 03:23:04

    ナギサ「……実物は各々確かめていただくとして。かいつまんでその内容を教えていただくことは可能ですか?」ワクワク

    セイア「もはやキミが聞きたいだけだろう……」ハァ

    ナギサ「いいえ。本日の議題の核心だと判断したまでです。……セイアさんはご興味がないのでしょうか」キリッ

    セイア「とは、一言も言ってないね」

    ウイ「あー……。まあ、かまいませんけど、あんま気持ちのいい話じゃないですよ? ね、サクラコ様」

    サクラコ「……はい。見なければよかった。知らなければよかった。そういった気持ちになる、暗い……手記でした」

    ミネ「しかし、そこまで話したのならばもう、明かすのが筋というものでは」

    ウイ「うーん……。では、あくまでここだけの話と言うことで。一応禁書の内容に触れますからね……。それだけは絶対にお守りいただくと、誓っていただけますか?」

    ナギサ「誓います!」

    セイア「……いいだろう。誓うよ」ハァーァ

    ミネ「誓いましょう。救護騎士団の団旗に!」バァァァアン

    ウイ「サクラコ様はいかがされます? ……また、聞きます?」

    サクラコ「わたしだけ席を外すのも変ですから」

    ウイ「わかりました。では――」

  • 34二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 03:25:58

    ~♪

    セイア「――おっとすまない。わたしの通知だ」ポチポチ

    ナギサ「セイアさん! 今良いところなんですよ!」

    セイア「……」ジトー

    ポチポチ

    セイア「……おお? ナギサ。ちょっと」

    スマホミセ

    ナギサ「はあ……。ミカさん? 『ナギちゃんその場にいる?』……って。なぜセイアさんの方に連絡がいくんですか?」

    セイア「ナギサ。キミの通知を見てみてくれないか? どうせサイレントに……いや、まだるっこしいな。ちょっと失礼するよ」ポチポチ

    セイア「――もしもし。ああ、ミカ。ああ、今例の茶会の最中でね。ナギサに代わるよ。……ああ、キミがそれでよければ。――いいかな。ミカがスピーカーにして、みなに繋いでほしいとのことだ」

    サクラコ「ええ、ぜひ」

    ミネ「かまいませんよ」

    セイア「では」

    ポチッ

    セイア「繋いだよ、ミカ」

  • 35二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 03:28:08

    ミカ『――もしもし。サクラコ様、ミネ団長。このような形でのご挨拶になってしまい、どうか無精をお許しください』

    サクラコ「いいえ。これは公的な集まりではありませんよ、ミカ様」

    ミネ「どうかお堅くなられずに」

    ウイ「もぐもぐ……」

    ミカ『ほんとに? おっけー☆ てゆかナギちゃん、そこにいるよね!?』

    ナギサ「かといって砕けすぎもいただけませんね、ミカさん……」ピキピキ

  • 36二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 03:29:43

    ミカ『お説教はあとで! あのね、今晩までにサイッコーのロールケーキって焼ける?』

    ナギサ「はぁ、最高かどうかはわかりませんが、焼けと言われればできますけれど……。というか、今テーブルに並べているものでよければあとで届けますよ」

    ミカ『じゃあ、今すぐ焼いて! 材料とか必要なものあれば、全部私が用意するから!』

    セイア「ミカ。急に言われても、ということもある。まさか腹が減ったからというわけではないね?」

    ミカ『人を食いしん坊みたいに言わないでよー。あのね、あのね!』

    あの子が今晩一緒にお料理しようって!

  • 37二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 03:31:42

    ザワッ

    セイア「あの子、とはつまり」

    ミカ『あの子だよあの子! 夜食ちゃん! いまさっき、連絡が返って来たんだ!』

    サクラコ「今まさにその方について話し合っていたところですよ。ミカ様、よろしければこちらにいらっしゃいませんか?」

    ミカ『行く行く……と言いたいところだけど、それより買い出しがあったら教えて、ナギちゃん! ――料理の代わりに、ナギちゃんのサイッコーなロールケーキをみんなで食べようってお返事しちゃったから!』

    ナギサ「ミカ……さん。そういうことは事前に相談してくださいと再三言っていますよね……?」ビッキビキ

    ミカ『ごめんってー。でもこの子いつ連絡とれるのか全然わかんないじゃん? とりあえず、今晩はロールケーキ食べるって話で落ち着いてるから! とにかくよろしく! それじゃ――』

    ナギサ「お待ち下さい! ……でしたら」

    ミカ『――っとっと、なんか言った?』

    ナギサ「でしたら、今から言うものをすべて揃えていただけますか? ……瑕疵のない、私の持てるすべてを注いだロールケーキを、作ってみせましょう」

    ミカ『おっけい! 任せてー! メモるからちょい待ってねー!』

  • 38二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 03:35:27

    ポチッ

    ナギサ「――まったく。ミカさんはいっつもいっつも!」

    セイア「ミカらしいじゃないか。ここ数日の落ち込みっぷりを考えたら、元気になってくれて良かったと前向きにとらえよう」コウチャー

    サクラコ「すみません。私がもっと気を利かせていれば……」

    セイア「サクラコが悪いわけじゃない。キミは見たままを言っただけなのだから。そんな状況を見れば、芝居をしているのかと尋ねたくなるのも不思議じゃない」

    ミネ「そ、その。今ミカ様がおっしゃっていた”夜食ちゃん”というのが」

    セイア「今夜は答え合わせだね。愉快犯か、それとも堕ちた悲恋の亡霊か……」

    ミネ「急患を思い出しました! 私は失礼いたします!」ガタンッ

    セイア「……先ほどから気になっていたんだが。ミネはこういった怪談が苦手なのかい?」

    ウイ「おやおや。救護騎士団長ともあろう方が、そのようなかわいらしい一面をお持ちとは」ヌッフッフ

    ミネ「そんなことはありません! しかし亡霊は救護できませんからね! 我々の無力さを思い知らされるだけではありませんか!」

    サクラコ「(……救護バカ)」ボソッ

  • 39二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 03:40:46

    セイア「仮に本物の亡霊だとしても、ミネは一度救護しているじゃないか。ミカは『みんなで』と言ったらしい。せっかくだからここにいる全員で、ナギサの至高のロールケーキをいただくとしようじゃないか。いけるかな? ナギサ」

    ナギサ「問題ありません。その分、セイアさんにもお手伝いいただきますが」

    セイア「任せろ。わたしだって卵は割れるし、揚げ物だって教えてもらったんだよ。みんなはどうだい?」

    サクラコ「私は喜んで参加させていただきたく思いますが、ロールケーキに揚げ物要素はない、ですよね?」

    セイア「野暮なことを言わないでくれ。ウイも来てくれるだろう? 深夜だし、キミが溶けることもないはずだよ」

    ウイ「ええ~……。まあ、セイア様直々のお誘いなら、私は断れませんね……。かまいませんよ」イヤダケド

    セイア「ふふ。ありがとう。ミネは?」

    ミネ「うっ……」

  • 40二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 03:45:48

    セイア「無理にとは言わない。来れたら、でいいんだ。各々仕事を持つ身だからね」

    ミネ「……もちろん、ご一緒させていただきましょう。ええ、ええ。亡霊とはいえ、私は一度救護しているのですから。そうです。多少強度を高めれば、亡霊だとしても」ブツブツ

    セイア「……意外な一面だね」

    サクラコ「では、私はそろそろ夕方の礼拝がありますので……。雑務が終わりましたら、ナギサ様のお手伝いに参じます。美味しいお茶とお菓子、ご馳走様でした。ホストのこまやかなお心遣いに感謝いたします」スッ

    ウイ「あ、じゃあわたしも……。ごちそうさまでした。このクロテッドクリーム、とても美味しかったです……。作業がひと段落したら、私も手伝いに来ます……」カタン

    ナギサ「皆様、ありがとうございます。のちほど迎えを出しますね」

    ミネ「私も、引き継ぎが終わり次第お手伝いしましょう。ロールケーキだけではテーブルが寂しいでしょうし。クッキーでも作ります」タップリ マヨケ ノ マジナイ ヲ……

    サクラコ「でしたら私も何か作りましょう。そうですね。シスターフッドの畑で穫れたお野菜を使ったタルトなど……。甘いものだけではなく、どうせなら食事のように……」

    ウイ「……なんか買ってきます」

    サクラコ「一緒に作りましょうよ、ウイさん。そうだ、せっかくなので秘蔵の蜂蜜漬けも……」

  • 41二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 03:50:16

    セイア「では、各々方。後ほどナギサのキッチンで。体を休めることも忘れないでくれよ」

    ナギサ「時間は追って。お待ちしております。――まさか、かの方々と共にお菓子つくりをすることになるなんて、思ってもみませんでした」

    セイア「そうかい? 私はなんとなく、いつかこんな日がくるのではと思っていたよ」

    ナギサ「勘、ですか?」

    セイア「勘だね」フフフ

    ナギサ「お元気になられて、私もミカさんも、きっと皆さまも、とても喜んでいるんです。――おかえりなさい、セイアさん」

    セイア「ああ。キミたちには、いろいろ迷惑をかけたからね……。変革には、痛みが伴う。われわれは、共に痛みを分かち合った。もちろん、まだまだ問題は山のようにあるし、普通の女学生のように肩を組み笑い合う、ということはできるはずもないが」

    ナギサ「……そうですね。癒えないものも、ありますから」

  • 42二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 03:51:38

    セイア「忘れないためにかさぶたを剥がし、傷をえぐりつづけることも必要ということさ。――さて! ナギサ。ミカが帰ってくるまで、下準備といこうじゃないか」

    ナギサ「ふふ。セイアさんと一緒にお菓子作りをするのも久しぶりですね。……邪魔はしないでくださいよ?」チョンッ

    セイア「言うじゃないか。わたしの卵割り捌きをみて恐れおののくといい――いや、キミにはさすがに適わないね。どうか私をこき使ってやってくれ」ハッハッハッ

    ナギサ「ええ。これは、私が他人に譲れるはずもない特技ですから。では。あのかわいらしい亡霊さんとの約束を、果たしましょう」

    セイア「ああ。……そうだね」

    ~PartA Fin~

  • 43二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 03:59:22

    今夜は! 終わり! です!
    次回のPart Bで終わる予定です!
    わたしのお話なのに、まだ一回も出てないんですけど!?

    まさかの二部構成!
    書き溜めしてたの投稿するだけでパイ生地できちゃいますよ!

    こんな遅くまで読んでくださった方ありがとうございました!
    しかも長いのに!

    できるだけ日にちを空けないうちに投稿しますね!
    スレが残ってればこちらで、残ってなければ、今度こそわかりやすいスレタイにします!
    ノープランですみません! そもそもの発端がノープランなので許してください!

    どうぞごゆっくりお休みくださいませ!
    では!

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