- 1二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 23:21:28
やあ諸君、ご機嫌いかがかな? 今日もウマ娘が到達する可能性のその先への探求で大忙しのアグネスタキオンだ。
さて、諸君も知っての通り、もうすぐ長く寒かった冬が終わり、芽吹きの季節がやってくる。それは即ち、新たな才能が開花する時でもある。
可能性と言うものは、どこにでも転がっているものだ。ジュニア級ではデビュー戦・未勝利戦でしか勝ち星を挙げられなかった子が、何かの拍子に殻を破り、突如として心の臓から言い知れないモノを放ち覚醒する……あるいは、どこからともなくやって来た最下位人気が、ターフを、そして世代をあっと言わせる事など、いくらでも起こりうるのだよ。
その可能性も十分考慮した上で、当然ながら既に重賞で結果を残しているウマ娘達のデータは既に解析済み。ここから始まる三冠・ティアラ路線での活躍にも大いに期待が持てる。
目前に迫るクラシックの前哨戦においても、注目のウマ娘達が出るレースは一つたりとも見逃せないねぇ。
そして、桜が咲く頃にはまだ見ぬ可能性を秘めた新芽達がこのトレセン学園の門をくぐる。先日この学園でも入学試験が行われ、大勢の新入生候補達が緊張した面持ちで試験を受けていたよ。
うん? より才能のある子達が受けるであろう推薦入試や地方の学園からの編入試験は見ていないのかって?
君、私を誰だと思っているんだい? そちらも既に入学前の記録から当日の試験での様子まで研究済みさ。 - 2二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 23:23:32
入学前からそこまで踏み込むべきかという意見も聞こえてきそうだが、まあ考えてもみたまえ。この中央トレセン学園の入学試験に挑むということは、即ち多かれ少なかれトゥインクル・シリーズへの想いを携えているということだ。
既に才能の一端が垣間見える推薦入試のウマ娘達は元より、一般入試を受けるウマ娘達も並々ならぬ覚悟を秘めてこの学園にやって来ているのは言うまでもない。
その中に如何なる金の卵が眠っているのか……この学園の生徒数と毎年デビューするウマ娘達の数、そしてトゥインクル・シリーズの盛り上がりを見れば、その可能性は無限大と言える。その中にこそ、私の求める答えがある……少なくとも、私はそう思うよ。
まあ、そうと確信していなければ、入学試験の手伝いなど進んでやったりはしないよ。副会長にはお小言の清算という風に伝えてはいるが、新しい可能性を探るのは、少しでも早い方が良いからね。実技試験ならばその才能を手が届くところで観察できるのだから、これほどの役得は無いだろう?
ざっと優秀そうな人材には目星を付けたが、恐らく何人かはトレーナーとの相性如何で入学早速デビューするだろうと踏んでいる。
先日ホープフルステークスを勝利した子や朝日杯を勝利した子もそろそろ本格的に始動することだし、果たしてどんな逸材が現れるか……いやはや、今年も新たな可能性を生み出すウマ娘達から目が離せないよ! - 3二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 23:25:08
さて、ここまであれこれと話してきたが、この時期において触れていない話題があるのではないか、と言いたげだね? 素晴らしい、君の末は推理小説家といったところかな。
お察しの通り、当然トレセン学園の生徒たちにとっても去る2月14日は特別な日だった。
スカーレット君とウオッカ君もそれぞれチョコを手作りしていたようだし、あのシャカール君もファイン君と何やら親し気にしていたね。あとからちょっかいを掛けてみたが、あの様子から察するに良い事があったようだ。流石にそこから先へは踏み込まなかったがね。
フジキセキ寮長は自分の元へ届く凄まじい量のチョコの扱いと、オーバーヒートしてあちこちでちょっと言えない事をしだす生徒たちに随分困っていたようだ。
デジタル君は何度か自爆したり三途の川を渡りかけたりしていたよ。まあ、いつもの事だし、その都度近くにいた誰かしらが気付けたり、カフェが直接連れ戻したりしていた。これもいつも通りだ。
恋のイベント、楽し気で結構。かく言う私も……自作のチョコをカフェと交換したよ。
私の手作りと言うと、まず疑ってかかるのがカフェの悪い所だが、今回に関して言えばキチンとスカーレット君に教えを乞うたし、誓って余計なモノは何も入れていない。
その証拠として態々スカーレット君に頼んで制作風景の写真まで用意したと言うのに、それを見たカフェと来たらそんなことはすっかりお見通しで、ワザと疑ってかかっていたらしい。
『あなたのことなら、もう手に取るように分かるつもりですので……』とは、カフェもすっかりからかい上手になったものだね。
その後貰ったカフェ特製の珈琲風味のチョコレートは、とても美味しかった。苦みと香りの聞いた、良い味わいだったよ。
……ふむ、ここまで来てまだあの二人に関する情報が飛び出してこない。そう言いたげだね? 素晴らしい、君も大分私の事が分かってきたようだね。
さて、それではお待ちかねのようだし、ちょっと椅子を回して後ろの様子を見てみようじゃないか。 - 4二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 23:28:53
「なあ、ダンツ。そろそろ機嫌直してくれても……」
「……ぷーだ」
「まだ拗ねてんのかよ。いやまあ、確かに貰うモンは貰ったけどよ……」
「ポッケちゃんはモテモテだもんね、私のチョコが無くっても貰うチョコには困らないもんね」
「んな事ねぇよ。俺が貰って一番嬉しいのは……」
「……のは?」
「ダンツのチョコに決まってんだろ?」
「……えへへ♪」
「ったく、何回やるんだよ、この流れ」
「うーん、そうだなぁ……私の気が済むまでかな?」
「なんだそりゃ……ま、そこまで言うなら何度だって言ってやるよ。俺の本命は、ダンツのチョコ一択だってな」
「えへへぇ……♪」
「勿論、ホワイトデーもな。今の俺ができる最強のホワイトデーにしてやっから、残さず受け取れよ?」
「うん……ありがとう、ポッケちゃん」
はいはい、いつも通りの光景だね。いや、バレンタインデー仕様ということもあって多少色が付いていると言うべきだろうか。
事の次第を補足しておくと、2月14日当日にポッケ君とダンツ君は当然お互いにチョコを贈り合っていたし、それがお互い本命チョコだったのは言うまでもない。
照れ隠しか知らないが、少しばかりぶっきらぼうに差し出したポッケ君と頬を赤く染めながらハート型のケースを差し出したダンツ君の様子はまさに青春の一ページと言うに相応しいモノと言えよう。
何故そんなに詳細に把握してるかって? 目の前でハナから終いまで見たからだよ。
まあそれはさておき、ここで一つ問題が起きた。ズバリ、ポッケ君は非常にモテる。
元よりの交友関係の広さもあって友チョコ義理チョコ沢山貰ったようだが、その中に明らかにクオリティの異なるチョコが混じっていたのは然もありなんと言ったところだろう。
同じクラスの子や後輩の子も同様だ。とは言え、誰からチョコを贈られようとポッケ君の本命は決まっているのだがね。 - 5二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 23:30:25
さてしかし、ポッケ君がそうでも、それを見たダンツ君がどう思うかはまた別問題だ。
段ボール箱一杯のチョコ、しかもどう見ても本命まで混じってるそれを抱えたポッケ君を見て、ダンツ君がほっぺを膨らませたのは言うまでもあるまい。
まあ普段からポッケ君はモテるのでこれも見慣れた光景の一つではあるのだが、今回はバレンタインデーという事もあり、ダンツ君もいつもよりチョコっとだけ感情が昂ったようだ。
そういう訳で、拗ねたダンツ君に機嫌を直してもらおうと思ったポッケ君がダンツ君のリクエストで始めたのがこの茶ば……失礼、この青春らしい流れという訳だよ。
今日で既に何回目か、数えてないので分からないが、少なくともこれをするとダンツ君はご機嫌になるし、普段より増し増しで甘えてくるそうなので、間違いなくポッケ君は気に入っている。
「ポーッケちゃん♪」
「ん? どうした?」
「えへへ……呼んだだけー♪」
「なんだよ、それ……ほら、こっち来いよ」
「うんっ」
「こうやってギュってするの、好きだろ?」
「うん、好き……ね、ポッケちゃん……いい?」
「こら、そういうのは寮で、二人きりの時って決めたろ?」
「あう……で、でも……」
「……ったく、しょうがねぇな」
「へっ……んっ……!」
「今はここまで、な?」
「……うんっ♪」
念のため断っておくが、私は今この研究室に(勝手に)作られたポッケ君とダンツ君のスペースに置かれた炬燵で繰り広げられている光景を別室から監視カメラで覗いたりしている訳ではない。すべて私の目の前、リアルタイム生中継でお送りされている。
前からこの二人は私の事など気にせずイチャイチャしているのだが、まあバレンタインデー効果でここ数日間は特に糖度が高いと言って良いだろう。
いつもの事とは言え、ここからホワイトデーとその余韻が終わるくらいまでずっとこの状況が続くのは正直物凄く困る。なので、どうにかできないモノかと糖分の切れた頭を回しているところだ。 - 6二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 23:31:46
こういう時、色んな意味で頼りになるのがカフェなのだが、間の悪い事に今日は何やらイベントでユキノ君と外出しているらしい。
例の茶屋娘風の新しい勝負服を持っていった辺り、恐らくは何かのキャンペーンの仕事だろう。そうなると今日は遅くなるだろうし、ティータイムでこの空気をひっくり返すいつものパターンを繰り出すのは絶望的と言える。
いっそのことデジタル君を呼び出てあの二人を見せてだいばくはつして貰おうかとも考えたが、それは流石の私でも申し訳ない気持ちが勝る。
仕方なしに重い腰を上げ、一人でティータイムのセッティングでもしようか、とアールグレイの瓶に手を伸ばそうとした、その時だった。
「只今戻りました……」
「おや、今日は仕事じゃなかったのかい?」
「つい先ほど終わった所です。それで、先方からこちらを頂きましたので……良い時間ですし、いかがですか。一服」
茶屋娘をモチーフにした勝負服姿のままやってきたカフェの手元には、恐らく仕事先で頂いたであろう菓子折りがあった。名の知れた和菓子屋の詰め合わせ、買えばそれなりに高価なモノだろう。
カフェが貰ったモノだろうに、私達で貰っても良いのか、と本来聞くべきであったが、私はそれ以上にこの部屋に流れる空気を入れ替えたくて仕方がなかった。
なので、カフェにアレコレ確認するよりも早く口が動いてしまっていたよ。
「是非とも頂こうじゃないか! ほらほらポッケ君にダンツ君、聞こえたろう? 早くお茶の準備を手伝いたまえ!」
普段よりややボリュームを上げて掌を拍手の如く叩くと、炬燵の中でじゃれ合っていた二人が慌てて這い出してきた。若干服が乱れているような気がするが、私は一切見なかったことにする。 - 7二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 23:32:57
「カフェ、来てたなら言ってくれよな」
「わ、カフェちゃん勝負服だ」
「ユキノさんと少し宣伝の仕事をしていたもので……こちら、頂きものです。一緒にいかがですか?」
「おっ、良いのかよ! サンキューな、カフェ!」
「じゃあ、私達からは、特製チョコパフェのお返し! 一緒に食べよ?」
「それはありがたいのですが……お二人が一緒に食べるために用意されたのでは……?」
「ああ、そのことなら心配いらないよカフェ。パフェが一つになればお互い『あーん』してパフェを食べさせあうスタイルがとれるからね」
「成る程……」
どこか含みのある笑みを浮かべたカフェと私に、ダンツ君は一気に顔を真っ赤にして頬を膨らませ、ポッケ君も同じく頬を染めながら抗議していたが、私もカフェもどこ吹く風だ。
こっちのことは少しも気にせず今日も随分見せつけてくれた事だし、このくらいのお返しは許されるだろう。
さて、カフェも戻ってきたし美味しいお茶菓子も揃ったので、今日はこの辺で暇乞いとさせてもらおう。私にとって、今やこのティータイムは甘く澱んだ空気を入れ替え頭をすっきりさせる上で非常に重要な時間だからね。すまないがここは正しく糖分を摂取しつつゆっくり過ごさせて貰うよ。
これが終わったらこの部屋の、と言うよりポッケ君達の空気もリセットされるだろうし、そうしたら今度は入試のデータ解析といこうじゃないか。可能性の探求はまだまだこれからさ。 - 8二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 23:34:02
「さあ、タキオンさん……口を開けて……」
「か、カフェ……私はそういうのはまだ」
「ほら、あーん……」
「……ッ」
「いかがですか?」
「……うん、美味しい。流石は名の知れた和菓子屋だね、餡子の甘さが絶妙で大変美味だ」
「ふふ、良かった……」
……ティータイムが始まってほんの数分でポッケ君達がお互い『あーん』をしだしたまでは良かったが、何故かカフェがそれに対抗(?)して私に擦り寄って『あーん』をし始めた。
カフェはあまりそういう事にスイッチが入る方ではないのだが、その分一度スイッチが入ると結構な勢いで迫ってくる。
今日に限って言えば、茶屋娘風の勝負服による相乗効果がかなり効果的に作用している。それが証拠に、私の身体は一気に熱を持ち、剰え脈拍も速度を上げている。
「さあ、もう一ついかがですか……?」
「……今日は随分と積極的だね」
「一歩部屋に入って分かりました。また随分と甘い空気を吸っていたようですね……?」
「ああ、成る程。その空気に、君も当てられてしまったという訳だね」
「そうかもしれません。ですが、案外悪い気はしませんよ……そんな風に恥ずかしそうに頬を染めながら、私の指先に乗せた甘味を含むあなたを、独り占めするというのは」
そうしてふふ、と笑みを含んだカフェは小さな和菓子を指に乗せ、そっとこちらに差し出した。全く、こうなってはもう致し方ない。私もカフェが満足するまでこの流れに身を任せるとしよう。
研究は多少、具体的には、来月の14日くらいまで遅れる可能性が高くなったが……まあ、こんな理由で遅れるのなら、満更でもない。
目の前の二人から放たれる甘い空気に酔うのはともかく、カフェが側に居てそうなるのなら、私は素直にそれを受け入れられるからだ。
そう思えるようになった自分を喜ばしく思いつつ、私はカフェの差し出した和菓子をまた一つ口に含むのだった。 - 9二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 23:36:07
以上です、ありがとうございました。
盛大に遅刻しましたが、バレンタインで八作目を書かせて頂きました。少しずつタキオンの憂鬱に新しい方向性を加えつつダンポケとタキカフェを摂取できるよう精進したいと思います。
前回の憂鬱はこちら。
アグネスタキオンの憂鬱(こたつ編)【タキカフェ+ダンポケ・SS】|あにまん掲示板 やぁ諸君、厳冬の候ご機嫌いかがかな? 今日も今日とてウマ娘の挑む限界の果てへの探求で大忙しのアグネスタキオンだ。 さて、諸君も知っての通り季節はすっかり冬だ。右を見れば有馬記念、左を見ればクリスマス…bbs.animanch.com - 10二次元好きの匿名さん25/02/28(金) 23:46:00
乙、グイグイ来るカフェに押し切られるタキオンは寒い日の活力になるぜ
- 11二次元好きの匿名さん25/03/01(土) 06:57:46
新作助かる、タキオンもすっかりイチャイチャする側になったな……
- 12125/03/01(土) 11:46:29