- 1二次元好きの匿名さん25/03/01(土) 00:14:45
サクラコ様の下には屍体が埋まっている!
これは信じていいことなんだよ。何故って、サクラコ様の笑顔があんなにも見事に弧を描くなんて信じられないことじゃないか。私はあの美しさが信じられないので、この二三日不安だった。しかしいま、やっとわかるときが来た。サクラコの下には屍体が埋まっている。これは信じていいことだ。
どうして私が毎晩家へ帰って来る道で、私の部屋の数ある道具のうちの、選よりに選ってちっぽけな薄っぺらいもの、ロザリオナイフの刃なんぞが、千里眼のように思い浮かんで来るのか――あなたはそれがわからないと言ったが――そして私にもやはりそれがわからないのだが――それもこれもやっぱり同じようなことにちがいない。
いったいどんなサクラコ様でも、いわゆる真っ盛りという状態に達すると、あたりの空気のなかへ一種神秘な雰囲気を撒き散らすものだ。それは、よく廻った独楽が完全な静止に澄むように、また、音楽の上手な演奏がきまってなにかの幻覚を伴うように、灼熱した生殖の幻覚させる後光のようなものだ。それは人の心を撲うたずにはおかない、不思議な、生き生きとした、美しさだ。
しかし、昨日、一昨日、私の心をひどく陰気にしたものもそれなのだ。私にはその美しさがなにか信じられないもののような気がした。私は反対に不安になり、憂鬱になり、空虚な気持になった。しかし、私はいまやっとわかった。
おまえ、この爛漫と笑っているサクラコ様の下へ、一つ一つ屍体が埋まっていると想像してみるがいい。何が私をそんなに不安にしていたかがあなたには納得がいくだろう。 - 2二次元好きの匿名さん25/03/01(土) 00:15:34
馬のような屍体、犬猫のような屍体、そして人間のような屍体、屍体はみな腐爛して蛆が湧き、堪たまらなく臭い。それでいて水晶のような液をたらたらとたらしている。サクラコ様は貪婪な蛸のように、それを抱きかかえ、いそぎんちゃくの食糸のような毛根を聚めて、その液体を吸っている。
何があんな鋭角な笑みを作り、何があんな胡散臭さを作っているのか、私は毛根の吸いあげる水晶のような液が、静かな行列を作って、シスターフッドのなかを夢のようにあがってゆくのが見えるようだ。 - 3二次元好きの匿名さん25/03/01(土) 00:15:44
――あなたは何をそう苦しそうな顔をしているのだ。美しい透視術じゃないか。私はいまようやく瞳を据えてサクラコ様が見られるようになったのだ。昨日、一昨日、私を不安がらせた神秘から自由になったのだ。
二三日前、私は、ここの溪へ下りて、石の上を伝い歩きしていた。水のしぶきのなかからは、あちらからもこちらからも、薄羽がアフロディットのように生まれて来て、溪の空をめがけて舞い上がってゆくのが見えた。あなたも知っているとおり、彼らはそこで美しい結婚をするのだ。しばらく歩いていると、私は変なものに出喰した。それは溪の水が乾いた磧へ、小さい水溜を残している、その水のなかだった。思いがけない石油を流したような光彩が、一面に浮いているのだ。あなたはそれを何だったと思う。それは何万匹とも数の知れない、薄羽の屍体だったのだ。隙間なく水の面を被っている、彼らのかさなりあった翅が、光にちぢれて油のような光彩を流しているのだ。そこが、産卵を終わった彼らの墓場だったのだ。
私はそれを見たとき、胸が衝かれるような気がした。墓場を発いて屍体を嗜む変質者のような残忍なよろこびを私は味わった。
この溪間ではなにも私をよろこばすものはない。鶯や四十雀からも、白い日光をさ青に煙らせている木の若芽も、ただそれだけでは、もうろうとした心象に過ぎない。私には惨劇が必要なんだ。その平衡があって、はじめて私の心象は明確になって来る。私の心は悪鬼のように憂鬱に渇いている。私の心に憂鬱が完成するときにばかり、私の心は和んでくる。
――あなたは腋の下を拭いているね。冷汗が出るのか。それは私も同じことだ。何もそれを不愉快がることはない。べたべたとまるでペロロ厄介ファンのようだと思ってごらん。それで私達の憂鬱は完成するのだ。
ああ、サクラコ様の下には屍体が埋まっている!
いったいどこから浮かんで来た空想かさっぱり見当のつかない屍体が、いまはまるでサクラコ様と一つになって、どんなに頭を振っても離れてゆこうとはしない。
今こそ私は、あのサクラコ様の下で茶会をひらいているシスターたちと同じ権利で、花見の紅茶が呑のめそうな気がする。 - 4二次元好きの匿名さん25/03/01(土) 00:16:01
- 5二次元好きの匿名さん25/03/01(土) 00:17:24
Ever Readyと刻印された銃を持ってそう
- 6二次元好きの匿名さん25/03/01(土) 00:29:06
サクラコ様は貪婪な蛸のように、それを抱きかかえ、いそぎんちゃくの食糸のような毛根を聚めて、その液体を吸っている。
タコのようなサクラコ様!?