- 1二次元好きの匿名さん25/03/02(日) 14:00:10
「『勝負服』って、失礼だと思うのよね」
担当で愛バのアーモンドアイが、急にそんなことを言い出した。
すっかり暖かくなった春の昼下がり。
遠くから、鶯の声がかすかに聞こえてくる。
「なんで?」
先ほどトレーナー寮に遊びに来たアイは、勝手知ったる家とばかりに。
自分とこちらに紅茶を入れ、ソファにて寛いでいる。
時折、呼吸で上下する制服のリボン。
「だって、『勝負』ってことは負けることも考えているじゃない。戦う前に負けることを考えるのはおかしいわ。『勝利服』にすべきよ。少なくともわたしの服については」
ふわりと香る、ダージリン。
それから、彼女のアーモンドのような甘い匂い。
アイは、こちらの胸に身体を預け、上目遣いで見上げている。
「そう言われてもな。勝負の場で着る服なんだから、それで良いんじゃない?」
「そうかしら?」 - 2二次元好きの匿名さん25/03/02(日) 14:00:37
ふらり、と部屋を出て行ってしまう。
……機嫌を損ねてしまっただろうか。
ふと、彼女の読んでいた雑誌を見ると、「勝負下着」の特集が。
「お待たせ」
しばらくして帰ってきたアイは、自らの勝負服を纏っていた。
くるり、と一回転。
スカートの裾のフリルがふわりと浮かび、奥の太ももがチラリ。
「えへへ」
それから、彼女は。
こちらの腰にまたがると腰を下ろす。
目の前の大胆に開いた胸元が眩しい。
「どうしたの?」
そう言うと、少しばかり神妙な顔になる。
ウマ耳が揺れ、尻尾がこちらの脚に巻き付けられた。
壁ドンのように、アイはソファの背もたれに手をついた。
「だって。トレーナー、全然わたしに手を出してくれないし」
「それは――」
反論しようとしたところで、唇をキスでふさがれる。
とろんとしたアイの表情。
鼻先が、触れ合った。 - 3二次元好きの匿名さん25/03/02(日) 14:01:05
「この勝負服、一緒に作ったわよね」
「ああ」
それは、よく覚えている。
現役ウマ娘の勝負服を見にレース場へ行ったり、URAの博物館にレジェンドの勝負服を見に行ったり、過去の勝負服の写真を求めて図書館に行ったり。
あちこち連れまわされたのだから。
「……せっかく、貴方が好きそうな服にしたのに」
「ちょっと待って。その服のデザインの基準って、俺の好みなの?」
きょとん、とした顔を向けられる。
「そうよ? もちろんわたしの趣味も入っているけれど、基本は貴方。ヤマニンゼファー先輩の勝負服を気に入っていたみたいだから、胸元を大胆に出して。エイシンフラッシュ先輩の勝負服に注目していたから、スカートにフリルを入れて。ダイワスカーレット先輩の太ももをまじまじと見ていたから、絶対領域が見えるようにして。メジロアルダン先輩の髪がお気に入りのようだったから、水色を基調にして。みんな、貴方のため」
「そうだったんだ。でも、なんで?」
自分がレースを走るための衣装なのだから、自分の好みの方がよいのではないだろうか。
疑問をぶつけると、呆れたような顔をされる。 - 4二次元好きの匿名さん25/03/02(日) 14:01:27
「ばか……。わたしはどんな服だってレースには勝てるんだから、ほかのために作るに決まっているでしょう? 貴方が好きだから、貴方のために、貴方好みの、貴方が手を出したくなる勝負服を作ったの。……この服を、『勝利服』にしてくれない?」
意外過ぎて、絶句して声が出ない。
すると、彼女は俺の手を取って、妖艶に微笑んだ。
そして、その手を腰のあたりのリボンに導く。
「ねえ、この大きな赤いリボン。なんでここに付けたと思う?」
「えっ?」
「これはね、貴方へのアピールなの。『貴方との子供が、ここにできますよ』って」
頬を桜色に染めて。
真剣な眼差しでこちらに懇願するアイに、答えない理由なんてなかった。
そっと、唇を合わせる。
「あ、今日はわたし、勝負下着、『履・い・て・な・い』から」
さっき一回転したときに、スパッツが見えなかったのはそのせいか。
彼女の背中に手を回し、ゆっくりと抱き寄せる。
――つい、アイを9冠ウマ娘にしてしまった。 - 5二次元好きの匿名さん25/03/02(日) 14:01:49
これで終わりです。
ありがとうございました。
至らない点もあると思いますが、よろしくお願いいたします。 - 6二次元好きの匿名さん25/03/02(日) 14:03:38
9冠バにしただけだから健全だな!ヨシ!
- 7二次元好きの匿名さん25/03/02(日) 14:04:37
アロンズロッドしたんか!?
- 8二次元好きの匿名さん25/03/02(日) 14:44:42