- 1二次元好きの匿名さん25/03/06(木) 00:26:49
「く…!」
芝に足を取られて転びかけて、慌てて体勢を立て直す。飽きるほど走ったコースのはずなのに、地に足が付かない感覚、走りに入り込めていない。
立ち止まって足の状態を確認していると、トレーナーが走り寄ってきた。
「ヴィルシーナ、どうかしたの?」
「実は……」
「ふーん、しばらく一人なのか」
「えぇ……」
シュヴァルは休養日を利用して、泊まりで海釣りに行っている。
ヴィブロスはトレーナーとドバイ遠征中。
タルマエは地元のイベントに呼ばれ、明日まで里帰りだ。
そんなわけで、珍しく一人になる時間が長いのだった。
「だからといってコンディションを崩すなんて……頂点を目指すウマ娘として相応しくないわよね……」
自嘲気味にそう呟くと、思案顔のトレーナーはややあって得心した表情をした。
「なるほどな、わかった」
「わかった、って?」
何か、この状態を解消する方法があるのだろうか。
期待して耳を傾ける。
「つまり、寂シーナってわけだな!」
「……。」
「なにもそんな顔しなくても」
「あのねトレーナーさん、そういうことを臆面もなく言っちゃうのはおじさ」
「あー、あー、聞こえないなー!!」
大げさに耳をふさぐトレーナーに、苦笑する。呆れはしたが、少し気が紛れたようだった。 - 2二次元好きの匿名さん25/03/06(木) 00:28:46
その夜。まだ9時を回ったところだというのに、私はすることもなくベッドで横になっていた。けれど目が冴えて、眠れそうにない。風が強くて、窓ガラスがかだ、ぴしっと音を立てる。
「ひっ…」
誰が聞いているわけでもないのに、慌てて口を抑えた。
いつも誰か傍にいるのが当たり前だからか、自分がこんなに怖がりの寂しがりになっているなんて思わなかった。昼間のトレーナーの軽口を笑えないなと思いつつ改めて意識を眠るモードに切り替えようとしたとき、枕元のスマホがヴヴっと振動した。
「ひゃっ……もう!」
臆病な自分に小さく舌打ちしてスマホの画面を見た。
「…トレーナーさん?」
「おー、まだ起きてたか」
「どうしたの、こんな時間に」
「いや、ちょっと連絡事項があってな……ところで、こないだのバラエティ番組の…」
それから、なぜか核心に触れようとしないトレーナーに話を振られるまま、取り留めもない話をした。
「……そうね、バウアーが戻ってきたら今年も優勝ね。ところでトレーナーさん?なんのご用だったの?」
問いかけると、あっけらかんとした返事が返ってきた。
「あぁ、明日の屋外トレーニング、コース整備の関係で屋内になったから」
「えっ」
「どうかしたか?」
そんな程度の連絡なら、ふだんは朝のLANEでしていたはずなのに。
「あ、いえ。わかったわ」
「遅くまで悪かったな。それじゃ」
トレーナーは何も言わなかったけど、私のことを心配してくれているのがわかった。
「ねぇ」
「うん?」
「ありがとう」
「勘違いするなよ!別にウマプラで呪怨シリーズ一気見したから怖くて眠れなくて電話したわけじゃないからな!」
「はいはい、おやすみなさい」
「あぁ、おやすみ」
通話を切って電気を消して目を閉じる。
さっきまで通話していたスマホが手放し難くて、胸に抱いたまま寝ることにした。機体がほんのり温かくて、まだ誰かと繋がっている感じがした。
風の音は、もう気にならなかった。 - 3二次元好きの匿名さん25/03/06(木) 00:29:37
目を覚ますと、ちょうど同室のタルマエが大荷物で帰ってきたところだった。
「あ。ごめんなさい、起こしちゃいました?」
「ううん、ちょうど起きたところよ」
「そうですか。これ、お土産です!ハスカップの苗木」
「ありがとう?」
珍奇なお土産を持て余していると、タルマエが不思議そうな顔をしていた。
「いいことあったんですか?」
「どうして?」
「だって…なんか、ニコニコしてるから」
「そう?」
顔に手をやると、心なしか緩んでいるような気がした。
「そうね……嬉シーナ、ってところかしら」 - 4二次元好きの匿名さん25/03/06(木) 00:29:58
おしまい
ちょっと誕生日過ぎちゃってごめんね姉さん - 5二次元好きの匿名さん25/03/06(木) 00:32:08
微笑まシーナ……
- 6二次元好きの匿名さん25/03/06(木) 00:39:40
愛シーナ…
- 7二次元好きの匿名さん25/03/06(木) 00:46:42
いいもの見れて嬉シーナ
- 8二次元好きの匿名さん25/03/06(木) 01:15:37
- 9二次元好きの匿名さん25/03/06(木) 01:17:14
こんなの卑シーナじゃん・・・