【閲覧注意/SS】私はウソでできている

  • 125/03/08(土) 15:58:04

    4月1日
    「やだっ、やめ、て、いや、ゆるして、やめ」
    私は、"わたし"を殺した。
    _____________________

    わたしには、双子の妹、まこがいる。一卵性双生児として生まれ、光の束を集めたような金色の髪にエメラルドのような瞳から、身長、癖まで同じ。俗に言う瓜二つというやつだ。
    見た目で違うのは髪の長さだけ。わたしは、胸と腰の間くらいまで伸ばしたロングの髪。妹は、鎖骨のあたりまであるミディアム。

    でも、性格はまるで違う。
    わたしは活発でムードメーカー気質。妹は、物静かでシャイな性格でそのせいか友達も少ない。
    勉強も運動もわたしの方ができる。人望もわたしの方がある。過去に何回も妹とほしいものが被ったことはある。だけど妹もわたしもほしいと思ったものでわたしが手に入れられなかったものはない。だから妹のことをずっと下に見ていたのに。なのにどうして1番"だいじなもの"は手に入れられないの。

  • 225/03/08(土) 16:13:23

    SSスレです
    主人公→凛
    凛→まこ  に恋愛感情あります
    地雷の方は回れ右してください
    本格的なミステリーにはならない予定
    感想・考察・疑問などあったら気軽にどうぞ

  • 325/03/08(土) 16:20:12

    糸師凛。それはわたしの幼馴染。昔から家族ぐるみで仲良くしていて、よく遊んでいた。
    いつから恋をしていたのかはわからない。でも物心ついたときから凛のことが好きでたまらなかった。
    この人のことを手に入れたい、私だけのものにしたい。
    そう思って子どもながらに必死に頑張った。毎日あいさつしたりとかお花をあげたりとかさりげなくスキンシップしたりとか。凛は思ったよりそっけなくて挫けそうになったけど、凛の顔を思い出すと不思議と頑張れた。その努力の成果か、私は4歳のときに凛と結婚の約束をすることに成功した。2人きりの公園で指切りげんまんをして「約束ね!」『うん、絶対だよ!』なんて笑いあったっけ。あの頃は入り込む隙なんかなかったはずなのに。

  • 425/03/08(土) 17:07:22

    主人公の基本設定
    名前:好きな名前を当てはめてください
    年齢:凛と同じ
    性格:社交的な性格で友達も多く、成績も優秀なので教師からの信頼も厚い。
       妹のまこには優しく接しているが、心の中では妹のことを見下している。
       ほしいものを手に入れるにはどんな手段でも使い、人を陥れることも構わないような残酷さをもちあわせている。
       残忍な手段を使うのは最終手段か主人公にとってよっぽど大事なときだけなので、普段は自分を磨き上げるなど努 
       力している。

    補足:冴とも幼馴染だが、主人公が夢中だったのは凛だけなので別に冴とは仲良くない。
       独占欲が深く、人やものを自分のものにしたいと思いがち。

  • 525/03/08(土) 17:17:46

    まこの基本設定
    名前:まこ
    年齢:凛とおなじ
    性格:内向的でシャイな性格、友達も少ないが凛には心を許している。また運動も勉強も人並みだが、本人はあまり気に
       していない。
       天然&鈍感で主人公が皮肉を言っても気づかないことが多い。また、悪人に騙されることも多くいつも主人公に助
       けられている。

  • 625/03/08(土) 17:31:38

    あれから10年、わたしと凛は14歳になった。何もかも順風満帆の日々。まだ約束は果たされていないけど周りのモブ女子よりも圧倒的に仲はいいし、凛からも懐かれている自覚があるし、毎日一緒に登下校している。それにクリスマスイブに一緒に出かけられるようになったのだ。正直okをもらったとき舞い踊りたいくらい嬉しかったけど、そんなことをしたら変人だと捉えられかねないからやめた。代わりに上機嫌で家のドアを開け、弾む声で「ただいまー!」と叫ぶ。そしてすぐに部屋に行き、課題を早めに終わらせた。我ながらいい時間を過ごしているなぁと緩む頬を抑えながら、おやつに用意されていたモンブランを食べようと部屋のドアを開けると、ちょうど帰ってきたであろうまこと目が合った。笑顔をつくって「おかえり、まこ」と言う。「うん、ただいまお姉ちゃん!」ただいま、と返したまこも何やら上機嫌そうだ。今のわたしは優しいから、話の1つでも聞いてやろう。そう思って「なにかあったの?」と聞いた。
    するとまこは満面の笑顔を浮かべて、「あのね、私凛のこと好きかもしれない!」と言った。その途端、脳に衝撃がきて、頭のブレーカーが落ちた。何も考えられなくなった。
    「お姉ちゃん、お姉ちゃん?」まこの声で我に返る。すぐに頭のブレーカーの電源を入れ直し、「大丈夫だよ、驚いただけ」と大げさな手振りを付けて笑って見せる。本当は今すぐにでも笑っている間抜けな顔を殴ってやりたかったけど、まこからはいいお姉ちゃんとして見られているし、殴ったりしたら凛から嫌われてしまうからやめておいた。

  • 725/03/08(土) 18:06:07

    「さて、どうしようかな」
    夜の部屋で一人つぶやく。まこなんかにわたしの凛をとられるわけにはいかない。まずは凛とまこが会う機会を徹底的になくすところから始めようか、それよりもわたしが凛と距離を詰めたほうが早いか。しばらく考えた後、後者かな、と1人で呟く。クリスマスにデートの約束もしてるしいっそのことそこで告白してしまおうか。まこのことだからわたしが凛と付き合ったと知ったら、潔く諦めるはずだ。よし、果報は寝て待てっていうし、クリスマスデート当日まで待つか。そう思ってベッドに入り、わたしはすぐ眠りについた。今思えばこんな呑気で楽観的な考えだった自分を殺したいのだけれど。

    クリスマスイブの前日。わたしは凛に呼び出された。サッカーグラウンドに来てほしいとのことで、メッセージアプリで「もちろん!すぐ行くね!」と返信をし、急いで支度をする。何だろう、話って。もしかしてフライング告白!?興奮しながらパジャマから着替え、ヘアセットを済ませる。
    「よし、」ヘアセットは完璧だし、服ともなかなか合ってる。しかもここまでかかった時間は10分。大満足の結果だ。クリスマスの時期によく聞く歌を鼻歌で歌いながら、忘れ物がないか確認しようとリビングに行くと、お昼に食べたポトフが残っていることを思い出した。グラウンドに呼び出すということはまだ練習中だろうか。それなら何かあったまるものとか持っていった方がいいよね。我ながらナイスアイデア、そう思いながらポトフを容器に入れてかばんに詰め、わたしは家を出た。

    10分後、「りーん!」凛の練習が終わるまで待っていたわたしは凛に向かって叫ぶ。すると凛が気づいてこっちに向かってきた。合流したあと、少し歩いてベンチに座る。「寒かったでしょ、ポトフあるから食べて」凛の手にポトフの容器を乗せると、凛は「ありがと」と言ってポトフを食べ始めた。

    _____________________

    「あのさ、話ってなに?」ポトフを食べ終わった凛に聞いてみる。もちろん上目遣いで首を傾げながら。
    4秒のかすかな沈黙の後、凛はわたしと目を合わせずに言った。
    「クリスマスに出かける件、無しにしてくれないか。」

  • 825/03/08(土) 19:03:25

    「え?」
    予想外の発言に思わず笑顔が崩れる。え、どういうことどういうことわたしと行きたくないってことえ、待って嫌なんだけど。それがずっと頭の中をループしていた。声にならない声でずっとやだ、やめてと叫ぶ。でもそんな私の様子には気づかず、凛は言葉を続ける。
    「まこと、行くことになった」
    「ちょっと待っ…」
    「まこが行きたいっていうから、ごめん」
    そう言って頭を下げる凛。そのつむじを見てたら悲しいとか悔しいとか通り越して怒りが出てきた。謝るくらいならわたしと行ってよていうか何デート前日にドタキャンでしかも理由が他の女とかまじでふざけてんのいみわかんないんだけど、そう思ったけどそんなことを凛にぶつけたら嫌われちゃうから、必死で「全然大丈夫だよ、まこと楽しんできてね」と言った。必死で笑顔を取り繕ったけど、声も震えているし隠し通せたかはわからない。でも、凛は「ありがとう」って今度は目を見て言ってきた。なにそれむかつく。

  • 925/03/08(土) 20:26:59

    クリスマスデート当日、普段よりガーリーなコーデ、内巻きの髪、きれいに塗られた淡いピンクとグレーのネイル、そのすべてがわたしを苛つかせた。
    凛のためにおしゃれしてるまこにいらつく。わたしじゃなくてまこを選んだ凛にもいらつく。全部いらつく。
    まこも両親もいなくなった午後6時30分。部屋に置いてあったぬいぐるみを、クッションを、全部壁に向かって投げつける。
    「なんで、なんでっ、私じゃないのよ…!!!」
    「凛のとなりにいたのはずっとわたしだったのに凛のこと支えてたのもわたしだったのにまこなんかわたしより下の人間のくせになに勝手にわたしから凛のこと奪ってんのよ!!!この間抜け能無しバカアホゴミカㇲ…」視界がぼやける。
    なんで、なんでなんでなんでなんで

    _____________________

    「幸せになってほしくないなぁ」ぬいぐるみとクッションが散乱している部屋に寝転がって呟く。
    まこは絶対に幸せにしない。この先ずっと。わたしの手で引き裂いてやる。
    わたしを泣かせたんだから幸せにならせるわけないじゃん。
    今までは凛に嫌われたくないって思ってまこに優しくしてきたけど、凛がまこを選んだ今はそれももう終わり。まこは絶望に落としてやる。
    それでわたしは凛と幸せに暮らすんだ。
    どうやって不幸にしてやろうかな。近くにあったライオンのぬいぐるみを抱きしめながらほくそ笑んだ。

  • 1025/03/08(土) 21:35:55

    「凛!あけましておめでとう」「おめでと」
    年賀状は送ったけど新学期、凛に新年のあいさつ。
    挨拶したあとに少しの沈黙、凛が口を開く。
    「…クリスマスのこと」「あぁ、全然いいよ!」少しニヤついた顔でおめでと、いつでも相談乗るからねと付け足すと凛の耳が林檎色に染まっていく。
    「お前のおせっかいなんていらねぇよ」そう言って首を触った凛は、それでもまことの関係を否定はしなかった。
    やっぱりそうだったかぁ、自分の仮説は間違っていなかったと革新する。冬休みまこと凛は毎日かというほど頻繁に遊んでいた。やっぱりクリスマスイブの日に付き合っていたのだ。
    まぁそんなこと、今はどうでもいい。どうせまこは地獄に堕ちるんだし。

    わたしがそんなことを思っているとは夢にも知らないなんてかわいそうだなぁ。
    まだ耳が赤い凛をからかって学校に向かいながらわたしは思った。

    まずは"普通"に凛ともまことも接する。凛とはいつも通り登下校して、まこにはいいお姉ちゃんとして接する。わたしの日常をいつも通り、1週間たっぷり。

  • 1125/03/08(土) 22:49:53

    朝、凛といつも通り待ち合わせ。
    いつも通りの時間に家の前に来た凛は、驚いた様子だ。そりゃそうだろう、まこがいるんだから。
    「まこ、なんで」「いや、お姉ちゃんに一緒に登校しようって言われて…」凛の質問にまこはしどろもどろになりながら答える。そりゃそうだもんね、何するか教えてないもの。
    よし、このタイミングかな。そう思い、大きく息を吸って一言。「凛とまこ、これからは一緒に登校したら?」突然の私の提案に驚いたのか、2人とも目を点にし、そのあと嬉しそうに頷いた。
    よかった、2人が仲良くなってくれて。
    忘れ物したと嘘をついて、家に戻ってきたわたしは手を繋いで仲睦まじく登校していく2人が視界から消えるまでずっと見つめていた。

  • 12二次元好きの匿名さん25/03/09(日) 03:15:01

    このレスは削除されています

  • 1325/03/09(日) 08:12:47

    朝、凛とまこが一緒に登校するようになってから1ヶ月がたとうとしている。まこより少し時間を遅らせて家を出るようにしているので、凛とまこが一緒に歩く姿は部屋の窓から見ることができる。毎日毎日恋人繋ぎしていちゃついている。それに一緒に登下校をすることで凛とまこの仲は一層深まったようで、サッカーなんかに興味のなかったまこがサッカーの勉強をするようになったし、凛はまこの好きなかわいい系のアニメを一緒に見たりしている。

    いやぁ、羨ましいなぁ。凛とまこの部屋につけておいた隠しカメラと盗聴器をチェックしながら思う。ここまではだいぶというか、十分すぎるほど、それこそ怖いくらい順調に進んでいる。でもあともう少し熟成させたい。あともう少し熟成できたら喰べ頃___。
    「もっと丸々太ってくれよなぁ」わたしは幸せそうに笑うまこの顔をアップにして呟いた。

  • 1425/03/09(日) 08:40:20

    あれからまた1週間がたった。先週末、まこは凛と付き合ってからはじめてのデートに行ったらしく、初キスしちゃった!と初々しい笑顔でわたしに話した。
    いい機会だし、いろいろ聞き出そうかな。
    「まこ、どんな感じだった?」
    「えとね、とろけちゃいそうな感じで…」
    「キスの感じじゃなくて、凛とのデートのことだよ笑」
    「あぁ、そっちか。えっとね、まず映画見に行ったの。ホラー映画だったんだけど、私以外といけてねすごく面白かったんだ!お姉ちゃんも見てみて!えっと、タイトルは「〇〇の復讐」だから忘れないでね!そこから美味しいスイーツ屋さんに行ってね…」

    まこは凛との初デートの詳細を詳しく具体的に教えてくれた。わたしが隣にいてそれを見ていたんじゃないかってくらい鮮明に想像できるくらい。
    いいなぁ。純粋にそう思った。まこが私だったら、どんなに幸せなんだろう。あぁ、もう早くそうなりたい。
    それに凛のことを話していたまこのあの嬉しそうな幸せそうな笑顔。あれを壊したくて、ぐちゃぐちゃにしたくて、仕方なかった。我慢できなかった。
    だから
    「そろそろ喰べ頃かな…」
    ついに作戦のphase.3に踏み込むことにした。
    「待っててね、凛」
    「凛はわたしだけのものだから…」
    凛に模した人形にキスを落として、わたしは今日も眠りについた。

  • 1525/03/09(日) 09:14:31

    「お姉ちゃん私の手袋知らない?」
    どこで失くしたか分かんないんだよね、と学校に行く10分前くらいにまこが声をかけてきた。
    いつもよりまばたきの回数が多いし、かなり焦っている様子だ。
    うん、作戦通り。溢れ出しそうなニヤ付きとガッツポーズを抑えながら、わたしは
    「ごめん分かんないや。帰ってきたら家の中探してみるからまこは学校探してみな。」と返した。
    そんなありきたりな答えでもまこは納得したみたいで
    「ありがとう、行ってくるね」と家を出ていった。


    「…ほんとにばかなやつだな」
    わたしはベッドの下に隠しておいたまこの手袋を取り出して言った。

    _____________________

    さっきのはまこがどれだけわたしのことを信頼しているかをはかるための実証実験といったところだ。
    もっとひどい嫌がらせをしてあげたいけど、焦りは失敗を引き寄せる。
    だから慎重に、慎重に、じわじわと痛みを与えていく。

    あぁ、楽しみだなぁ。

  • 1625/03/09(日) 10:13:17

    「あのね、お姉ちゃん、最近誰かに嫌がらせされてて…」

    まこが学校に行かなくなったのはあれから2週間たった日のことだった。
    母親からは「学校に行きたくないっていって聞かないのよ」と聞かされたので、作戦は大成功で幕を開けたと思う。
    自分には何も話してくれないので、わたしにも話を聞いてみてほしいと頼まれたので、
    家に帰って課題を終わらせるとまこの部屋に向かう。
    コンコン、「まこ、入っていい?」
    いいよ、とか細くて鼻が詰まったような声がしたのでドアを開けるとそこには
    目を真っ赤に腫らしたまこがいた。
    泣いたのだろうか、部屋にはティッシュペーパーが散乱しているし、頬にはまだ涙のあとが残っている。
    よしよし、いい感じ。次は

    まこの気持ちに寄り添うように声をかける。
    「そんなに泣いて辛かったよね。わたしもまこの力になりたいから、何があったか教えてくれない?」
    もちろんまこを優しく抱きしめながら。

    そうするとまこは堰が溢れ出したのかまた泣き始め、わたしに話し始めた。
    靴を隠されてそれがゴミ箱の中に入っていたり、教科書に悪口を書かれたりしたこと、凛にも言いたいけど心配させたくなくて言えないこと、やめてほしいけどエスカレートするのが怖くて先生にも言えなかったこと。

    _____________________

    まこが話し終わり、とりあえず感謝の言葉を述べる。ずっと泣いて疲れたでしょ、とベッドに寝かせ、自分の部屋に入る。

    途端に笑みがこぼれた。

  • 1725/03/09(日) 10:49:10

    まこはあの後両親にも嫌がらせのことを話して、それは両親から教師に伝わり、
    「本当に申し訳ございませんでした。」
    とまこの担任が家に上がってきて謝罪する事態となった。
    わたしは自分の部屋にいなさいと言われたので詳細はわからないが、
    まこは月曜日から学校へ行くことになったらしい。

    「…なら月曜日から開始かな」

    phase.4

    まこをじわじわと地獄に堕とすために絶対に失敗してはならない最重要課題。
    これが失敗したらわたしの人生は終わる。絶対に。
    でも成功したらわたしの人生は変わる。凛が隣にいる人生に。

    絶対、成功させてやる。

  • 1825/03/09(日) 11:28:39

    教師に付き添われて教室にやってきたまこを見つめる56個の瞳。
    そのせいか、まこは緊張しているようだった。

    教師が教卓に上がり、クラスの生徒を順番に見つめていく。
    そして息を吸って言う。
    「まこさんは、誰かからものを隠されたり教科書に悪口を書かれたりなどの嫌がらせを受けています。どのような理由があろうと、人を貶めていじめる行為は許されるものではありません。心当たりのある者は先生に申し出るように。」
    教師が句点で言葉を止めた瞬間、ざわめきがクラスに広がった。
    「え、やばくない?」「まこさん、大丈夫かな」「これからはもっと仲良くしてやろうぜ」「まこさん、あんまり社交的じゃないけどいい子だよね」「逆恨みとか?」「え、まこさんに限ってそんなことある?」「だよね〜」「まじで誰だよ」「ありえねぇんだけど」

    クラスメイトたちが発する言葉はまこを心配したり、犯人を非難するような言葉だけだった。
    犯人が分かった暁にはそいつは、このクラス、いや学年中から締め出されるかもしれない。
    そう思うと、わたしは身の毛立ち、興奮してくるのだった。

    _____________________

  • 1925/03/09(日) 11:46:53

    「お姉ちゃん、今日一緒に帰らない?」
    まこに声をかけられたのは部活も終わり、帰路につこうと下駄箱の中から靴を取り出しているときだった。
    話を聞くと、凛に嫌がらせのことを自分の口から伝えたいけど緊張するからついてきてほしいということらしく、

    チャンスだ

    わたしはそう思い、まこについていくことにした。

    _____________________

    凛くんにはさっきのこと言わないでね、と念を押される。分かった、と適当に返事をしておくとまこは満足したのか、靴を履いた。

    そして
    「凛くん!」
    まこが声をかけると、凛が振り向く。と、同時にまこに駆け寄り、抱きついた。
    バランスを崩しそうになりながらもまこは凛を受け止める。
    「なんで教えなかったんだよ、…心配した」
    仔犬のような顔でまこを見上げる顔
    「ごめんね、心配かけたくなかったんだけど、言ったほうがよかったよね、ごめん」
    凛の頭を撫で、愛おしそうに瞳を伏せる顔

    いらつくなぁ。

    「まこ、いちゃいちゃするのも大概にして」
    いつもより声のトーンを下げてわたしが言うと、まこは慌てたように凛から離れた。
    「凛に改めて話したいけど緊張するからって言われてついてきたけどその様子ならもう帰っていいよね、あとはおふたりでお幸せに邪魔してごめんね」
    早口でまくしたてると、じゃ、と手を挙げて2人から離れる。
    「待って、お姉ちゃん」まこが手を掴んできたけど、その手も振り切って進む。
    わたしが今日最後に聞いた凛の声は、「まこ、大丈夫か」とまこを心配する言葉だった。
    何それむかつくんだが。

  • 2025/03/09(日) 13:45:28

    あの日からわたしは凛の見えるところ、気づくところでまこに嫌がらせを始めた。
    もちろん前からやっていた嫌がらせ___
    靴を隠したり、教科書に落書きしたりするのもやめてはいない。

    まぁ、凛の見えるところでと言っても、"絶対にバレる"ようにはしない。"ぎりぎりばれるかも"くらいのラインを攻める。例えば、凛とまこが2人で歩いてるところにすれ違ったら、こっそりまこに「別れろ」とか「釣り合ってねぇよ」とか。そうやったあと、まこは必ず歩くスピードが遅くなる。だから凛はまこがなにかされたことに気づくし、わたしにも疑念を抱くけど、まこが「大丈夫だよ」と言っているから問い詰めることはしない。

    まこの言葉なんかに従っていることに腹が立つけど、今はそちらの方が好都合だ。ま、忍耐が大事ってことだよねぇ。


    恋愛も。

    人を地獄に堕とすのも。

  • 2125/03/09(日) 13:54:07

    時は飛んで3月20日月曜日、午前5時9分。
    「…緊張してきたな」
    ベッドに寝転がったまま、暗闇に手を伸ばして呟く。
    今日はphase.4の中でも1番大事な過程を決行する日。
    これが失敗すれば今までの努力が全部水の泡だし、社会的に抹殺されるのは確実だ。
    自分の人生がかかっている日。柄にもなく緊張している。
    でも不思議と自信があった。多分、今までの凛とまこのいちゃいちゃぶりを見ているからだろうか。
    多分そうだなぁ、うん。
    凛が正常な判断をすれば、わたしの作戦はうまくいく。
    この作戦の成功は凛にかかっている。


    だからお願いね、凛。
    お願いだから、まこを選んで。

  • 2225/03/09(日) 14:17:37

    3月20日の昼休み。

    「何の用…?」
    まこを校舎裏に呼び出した。
    いつも違うわたしに怯えた様子で一歩後退りするまこ。そんなに怯えなくてもいいのになぁ。悲しくなっちゃうじゃん。
    まぁ、いいかと割り切って話を切り出す。
    「あのさ、まこ」
    「わたし、あんたが気に入らないんだよね」
    「え?」まこもそんなことを言われるのは想定外だったらしく、驚きを通り越して無表情になっている。おもろ。
    「まこが凛と付き合ったときさ、思ったの。凛の隣にいたのはずっとわたしだったのに。凛のこと1番近くで支えてたのもわたしだったのに。わたしより下の人間のまこになんで凛のこと取られなきゃなのかなって。」
    「何言ってるの、おね」
    「だからさ、わたしのために堕ちてよ」
    地獄の果てまで。

    そう言って隠し持っていたカッターで自分の腕を深々と切る。
    そして
    「きゃああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」

  • 2325/03/09(日) 15:02:54

    裏校舎にわたしの声が響き渡る。5秒後、急いで駆けてくる1つの靴音。
    ガラガラッ!! 勢いよく建付けの悪いドアを開けたのは、
    「凛」
    やっぱり君だった。

    _____________________

    「おい、何やってんだよ」
    凛が睨みつける。
    「まこがわたしのことうざいって、下の人間なのに出しゃばんなって言って、カッターで切」
    「嘘つくんじゃねぇよ」
    凛がありったけの蔑みをこめてわたしに言う。
    「…え?」
    「まこがそんなことするわけねぇだろ。今までの嫌がらせもてめぇだったのかよ。」
    「ちょ」
    「もう俺らに近づいてくんじゃねぇ。」

    それだけ言い終わると、
    大丈夫かまこ
    と凛はまこの肩を抱いて空き教室を出ていった。


    空き教室に1人取り残されたわたし。
    凛とまこはこれから職員室に行くはずだ。そうすればこのことは教師たちにも知れ渡り、そして生徒まで…





    めっちゃ、最高じゃん。

  • 2425/03/09(日) 15:40:31

    あの後噂はすぐに広まり、家でも
    「あなたがそんなことする子だとは思わなかったわ」
    「どうしてそんな人間になったんだ」
    と親に失望され、学校でも
    「実の妹陥れるとか最悪じゃん」
    「まじいいやつだと思ってたのに、仲良くしてた自分が気持ち悪りぃわ」
    「もう近づかないようにしよ」
    わたしに近づく人は誰もいなかった。

    中でも酷いのが凛で、わたしとすれ違うたびに暴言を直接浴びせてくる。近づいてくんな、とか虫けらが、とか。
    正直に言うと心に刺さらなかったわけじゃない。
    でもあぁ、なんかこういうのも興奮するかも。そう思うようになってしまった。あはは、重症だね。
    まぁでも満足はしてない。
    他の誰かに罵られるのはいい。たとえそれが凛でも。だから今の状況でも耐えられる。
    だけど、まこが幸せになるのだけは嫌だ。耐えられない。死んじゃう。




    だから最後までやり遂げるんだ。

  • 25二次元好きの匿名さん25/03/09(日) 16:38:35

    このレスは削除されています

  • 2625/03/09(日) 16:41:01

    3月24日金曜日。学校の終業式。

    校長の身も蓋もないようなくだらない話を聞いて下校する。
    先学期の終業式と変わったことなんて、
    凛が隣にいないこととクラスメイトたちから避けられていることだけ。

    でもそれもあともう少しで終わり。

    「待っててね、凛」

    まこと並んで歩く凛を見つめながら言った。

  • 27二次元好きの匿名さん25/03/09(日) 17:05:30

    このレスは削除されています

  • 2825/03/09(日) 17:34:14

    4月1日土曜日午前9時。
    そろそろか、とベッドから体を起こす。
    今日で最後。今日が最期。
    だから頑張らなきゃ。
    眠いと言っているからだを伸ばしながら
    「がんばれ、わたし」
    と自分にエールを送る。

    昨日小道具と生活用品を入れておいたスーツケースを引きずって、隣の部屋に向かい、ノックをする。
    「はい」
    返事が聞こえたので、ドアを開ける。
    「行こうか、まこ」
    「うん」


    震える手で差し出した手をとったまこと私は家を出た。

    _____________________

    自分でも、まこと話し合う時間が欲しいからしばらく2人で過ごす時間が欲しいという案は微妙かと思ったけど、両親がちょろくて助かった。
    横須賀線に揺られながら思う。
    計画はとてつもないほど順調に進んでいる。
    あとはまこと______。

    「次で降りるんじゃない、お姉ちゃん?」
    気づけばもう新橋駅まで来ていた。
    「そうだね」

  • 2925/03/09(日) 17:50:18

    東京で降り、電車とバスを使い3時間半ほど。
    わたしとまこは「しろつめ荘」という旅館に来ていた。
    優しい女将さんが出迎えてくれて、部屋に向かう。
    襖を開けると、部屋はTHE・和という感じで畳の良い匂いで満たされていた。
    まこは自然が好きだ。連れてきて正解だったなぁ。
    荷物を置く、満足そうなまこの姿を見て思う。

    「あのさ」
    「…なに」
    こっちを見向きもせずに答える。まぁ、怖いよね。
    これも想定内だから大丈夫だけど、
    「ごめんね」
    「わたし、おかしかった。まこのこと邪魔とか下の人間とか馬鹿げてた。こんなこと言うわたしのがよっぽどバカで愚かしい人間だった。本当にごめん。また仲良くしたい。」
    頭を下げると、まこは間を置いて
    「…もうしないでね」とわたしの方を見て言った。

    「よし、仲直りだ!」
    わたしがまこに抱きつくと、まこも優しく抱きしめ返してくれる。
    ここからが本番。腕の見せ所だ。
    「ねぇ、まこデジタルデトックスで近くにある山に登らない?」

  • 3025/03/09(日) 20:16:11

    まことデジタルデトックスのため、まこを殺すために山にやってきて1時間。
    ずっと歩いていたけど、2人とも最低限の荷物しか持たずに山に入ったので身軽なのかあまり疲れは感じなかった。
    アドレナリンが出ているのかもしれないなぁ。

    「お姉ちゃん、見て」
    少し先を進むまこの声でバッグを漁る手を止め、前を見る。
    かなり山奥まで来ていて、一面木木木。木しかない。
    「かなり山奥まで来たね」
    「そうだね、でも落ち着く」
    へへへと笑いながら前に進むまこ。
    死体も埋めやすそうだしここに来るまでにすれ違った人は誰もいない。
    よし、大丈夫かな。
    バッグから1.5mほどのロープを取り出し、まこのすぐ後ろに進む。

    そして
    「まこ」
    「なぁに、おねぇ」












    首を絞めた。

  • 3125/03/09(日) 20:30:30

    首を絞めると苦しそうに眉間にしわを寄せる。
    苦しそうに息を吸う仕草をするが、気道は完全に塞いでいるから息なんて吸えるはずない。
    残った息で
    「やだっ、やめ、て、いや、ゆるして、やめ」
    やめて、と言いかけて力尽きたまこを受け止める。
    やった、やっと、やっと凛はわたしのものだ。
    「これでやっと…」
    声に出したところで我に返る。まだ終わりじゃない。
    自分を抑えて、地面にブルーシートを敷くとまこをそこに寝かせた。
    そして

    まこにはわたしの服を、私はまこが着ていた服をというふうに服を交換する。
    そして、まこの死骸をブルーシートに包んで埋める。
    折りたたみスコップを使ったからかなり時間はかかったけどここまでは完璧。


    あと髪を切るだけ。
    髪を切れば私は完全に"まこ"だ。

  • 3225/03/09(日) 22:06:30

    持ってきていたはさみで髪を切り、死骸と少し離れた場所にそれを埋める。
    そして身分証などが入った財布、バッグ、全てを交換し、それも埋める。
    「よし」
    全てを終え、鏡で自分の姿を確認した私は満足げに笑う。
    これで私はまこになった。
    _____________________

    旅館に戻ってくると、女将さんに姉の居場所を聞かれたが、
    「体調が悪いというので、先に帰しました」と答えると、納得したようで何も咎められることはなかった。

    部屋に戻ると緊張が解けたのか、へなへなと座り込む。
    「よかったぁ」
    本当に良かった。これで作戦はほぼ成功だ。あとは気づかれなければよいだけ。
    両親は今でも双子のことを間違えることが多々あるのでバレる心配はない。
    問題は凛だけ。
    あぁ、だめだめ。もう、先のこと考えない。
    今は喜んで舞い上がってもいいよね。
    _____________________

    スマホで、メッセージアプリのトーク画面を開き、親に連絡する。

                        「お姉ちゃんと仲直りできたよ!」
    母『心配してたけど仲直りできたなら
      よかった』
    父『また何かあったらすぐに言うんだぞ』
                        「でもお姉ちゃん、具合が悪くて
                         帰っちゃって。今頃そっちに着
                         いてると思うんだけど。」
    母『まだ帰ってきてないわよ』
                        「そっか、帰ってきたら教えて!」

  • 3325/03/09(日) 22:15:08

    4月3日月曜日。

    「凛くん!」
    私が駆け寄ると、凛くんは優しく抱きしめてくれる。
    「行くか」
    「うん!」
    凛くんと手を繋いで歩く私。
    これが理想の私。
    やっとなれた。
    嬉しさが顔に出ていたのか、凛くんは
    「なんかあったか?」と聞いてくる。

    「凛くんの隣にいられて嬉しいなぁ〜って!」
    私は満面の笑みで答えた。

  • 3425/03/09(日) 22:26:25

    「次のニュースです。
     〇〇県✕✕市で当時14歳の女子中学生が山中で首を絞められ◯害された事件で、殺人などの罪に問われている当時14歳の女の裁判で、東京高裁は懲役15年の判決を言い渡しました。 鎌倉市の当時14歳だった被告は、20△△年4月、〇〇市内の山中で当時14歳の妹を後ろからロープで絞め◯害したとして、殺人などの容疑に問われました。
    裁判で検察が懲役15年を求刑したのに対し、弁護側は、被告が未成年だったこと、精神的不安定状態に陥っていたことなどを理由に懲役10年が妥当だと主張していました。7日の判決で、東京高等裁判所の□□◎◎裁判長は、「自分の欲望という身勝手な理由で1人の人間の命を奪った罪は重い。また、殺◯後被害者として人生を過ごしていた点でも酌量の余地はない」と指摘しました。なお、弁護側は「彼女の意思を尊重して、控訴しない」とコメントしており、このまま判決が下される予定と見られます。」

  • 3525/03/09(日) 22:35:53

    「20△▼年4月2日、はじめのニュースです。〇〇県女子中学生絞殺事件で服役中だった▶️▶ 〇〇受刑者が獄中死しました。▶▶受刑者は〇〇県女子中学生絞殺事件で懲役15年が確定し、5年前から服役中でした。」

    20△▼年4月1日、事件の全容を自身の言葉で初めて綴ったブログ『獄中手記』が約1年ぶりに更新された。

    「凛、ずっと愛してる」

    獄中で果ててもなお、彼女は凛のことを愛していた。

    いや、愛さなければいけなかったのかもしれない。

  • 3625/03/09(日) 22:36:12

    これにて完結

スレッドは3/10 08:36頃に落ちます

オススメ

レス投稿

1.アンカーはレス番号をクリックで自動入力できます。
2.誹謗中傷・暴言・煽り・スレッドと無関係な投稿は削除・規制対象です。
 他サイト・特定個人への中傷・暴言は禁止です。
※規約違反は各レスの『報告』からお知らせください。削除依頼は『お問い合わせ』からお願いします。
3.二次創作画像は、作者本人でない場合は必ずURLで貼ってください。サムネとリンク先が表示されます。
4.巻き添え規制を受けている方や荒らしを反省した方はお問い合わせから連絡をください。