何かあった未来のイブキ(17) 感想スレ

  • 1二次元好きの匿名さん25/03/12(水) 19:47:06

    【前スレ】

    何かあった未来のイブキ(17)がやってきたが|あにまん掲示板スレンダー高身長、傷んだ金髪ロング、隻眼、傷痕の目立つ顔、ボロボロの万魔殿制服、風紀委員の腕章装備、戦闘スタイルは右手のサーベルと左手の短機関銃(MP5Kみたいなやつ)のコンビネーション、性格は皮肉屋…bbs.animanch.com

    「何か」が起こって終末世界と化したキヴォトスでとんでもない成長を遂げてしまったイブキ(17)スレの続きです

    終末世界の設定のアイデアを出すなりイブキ(17)のこの世界や終末世界の人物との絡みを想像してみるなり色々してみましょう

    スレ画は前スレ108から拝借いたしました

    無断で使う形になったのでダメなら前スレのスレ画で立て直します

    途中で降臨したSS職人、イラスト提供者のみなさんに感謝を

  • 2二次元好きの匿名さん25/03/12(水) 19:51:52

    たておつ

  • 3二次元好きの匿名さん25/03/12(水) 20:34:30

    どうなるんだ

  • 4二次元好きの匿名さん25/03/12(水) 20:47:33

    登場人物
    未来の子ウサギ公園
    イブキ(17)
    かつてゲヘナ学園万魔殿のアイドル的存在だった少女
    大好きな先輩たちを喪った彼女はウサギの皮を被った怪物へと成長した……

    サキ(22)
    子ウサギ公園の「教官」として生きるかつての「RABBIT2」

    ミカ(23)
    子ウサギ公園の「参謀長」
    かつて伝説級と謳われたその力は無二の親友と共に失われてしまった

  • 5二次元好きの匿名さん25/03/12(水) 20:48:46

    このレスは削除されています

  • 6二次元好きの匿名さん25/03/12(水) 20:48:58

    このレスは削除されています

  • 7二次元好きの匿名さん25/03/12(水) 20:49:04

    ブレブレの映像だけでイブキだと認識するマコトは流石だわ

  • 8二次元好きの匿名さん25/03/12(水) 20:49:12

    このレスは削除されています

  • 9二次元好きの匿名さん25/03/12(水) 20:49:27

    このレスは削除されています

  • 10二次元好きの匿名さん25/03/12(水) 20:49:37

    このレスは削除されています

  • 11二次元好きの匿名さん25/03/12(水) 20:49:52

    埋め
    2スレ目扱いでいいのか?

  • 12二次元好きの匿名さん25/03/12(水) 21:05:37
  • 13二次元好きの匿名さん25/03/12(水) 21:18:30

    旧アビドス高校を拠点としてる一団をまとめているのはホシノの奮闘で全員無事生き延びたアビドス勢
    まとめ役のアヤネ、外に行く用事担当のシロコ、キャンプのオカン的存在のノノミ、色々働くセリカ
    しかしホシノは合流せず砂漠で単独行動するようになった
    子ウサギ公園から来たゲヘナ生まれの小娘を担いでシロコたちの所に来る事もあるが、決まってスープとかコーヒーを一杯だけもらってそのまま帰っていく
    あと旧アビドス高校のキャンプには子ウサギ公園のミカやイブキよろしく他校から逃げ延びてきた者もいそう
    便利屋とかアリスクとかそこら辺の奴らが

  • 14二次元好きの匿名さん25/03/12(水) 21:41:37

    黒いロボット犬
    「全知」を名乗る薬売りの白い飛行ドローンとの遭遇後にイブキが出会ったミレニアム製のロボット犬
    どうやらこれの操縦者は要塞都市に避難し外界との連絡をほとんど絶ったミレニアムサイエンススクールの人間で、外界の情報を知りたがっているらしい
    情報を提供すれば暴走するロボット相手によく効くEMPグレネードや旧ミレニアムサイエンススクール敷地内に点在する電磁ロックを解除できるハッキング装置といったガジェットをくれる
    例の白い飛行ドローンの「中の人」とは知り合いらしいのでイブキは「睡眠薬か精神安定剤を取り置いてもらえないか頼んでくれ」とお願いしたが、「ミレニアムの中でもそれは需要が高いの……だから保証はできないわ」とのことであった
    どうやら要塞都市に引き篭もったミレニアム生たちもかなり大変な状況らしい

  • 15二次元好きの匿名さん25/03/12(水) 21:41:56

    なんだかんだで何かあった未来でも生き残ってるであろう信頼がある便利屋
    一流のアウトローになれて良かったね

  • 16二次元好きの匿名さん25/03/12(水) 22:05:22

    アウトローを超越した怪物になってしまったイブキを見て言葉を失うアル社長は普通にいそう

  • 17二次元好きの匿名さん25/03/12(水) 22:24:31

    スレ立ておつです

    前スレの更新、ホシノの背が伸びてるっぽいのがなんか笑った、この歳で伸びるのか……?

  • 18二次元好きの匿名さん25/03/12(水) 22:57:16

    終末世界を生き抜くのに必死でもはやアウトローとか言ってる場合じゃないアル社長
    社員ともどもキャンプの不寝番や防衛から炊事洗濯、赤ん坊の世話までできる事ならなんでもやっている

  • 19二次元好きの匿名さん25/03/13(木) 01:03:42

    保守

  • 20二次元好きの匿名さん25/03/13(木) 03:19:11

    続きはないのですか!?

  • 21二次元好きの匿名さん25/03/13(木) 05:45:56

    続きが見たいです

  • 22二次元好きの匿名さん25/03/13(木) 06:20:42

    (続きをここに書けばええんか?)

  • 23二次元好きの匿名さん25/03/13(木) 06:57:59

    >>22

    書いてくれ頼む

  • 24二次元好きの匿名さん25/03/13(木) 07:31:45

    何日かかけて続きが書かれ続けているし、しばらく更新が絶えてるとかでもないのに『続き』を書くのは待った方がいいんでないか

    連載してくれている本人だったら引き継ぎお願いします毎日楽しみです
    そうじゃない人も自己解釈SSは嬉しいですお願いします(前スレも複数人書いてたよね?)

  • 25二次元好きの匿名さん25/03/13(木) 07:32:57

    ここは感想スレだし続き書くなら新しく次スレ立てた方がいいんじゃない?

  • 26二次元好きの匿名さん25/03/13(木) 07:43:18

    スレ主です
    スレタイは感想スレとしましたがもうpart2扱いにしちゃってください
    スレタイ、最初からpart2にしとけばよかったかな

  • 27二次元好きの匿名さん25/03/13(木) 08:53:08

    このレスは削除されています

  • 28二次元好きの匿名さん25/03/13(木) 12:35:16

    一応続きを書いてみる
    ──────────────

    「あなた達が『私の』先生が面倒見てるウサギさんだよね?野宿なんてしてるんだ。」

    その女は余人が見ればただの私服のトリニティ生だった。
    そこがD.Uシラトリ区の子ウサギ公園内•RABBIT小隊野営地の内側という点を除けばである。
    失礼な女を対面に見据えて銃を構えるサキは素早くその様子を観察する。武器は未所持。服装は制服ではなく至って普通の市販もの。
    顔立ちからして背伸びをしたイメージのパンツにカットソー。その上から大きめのコートを羽織り手首まで捲り上げている。変装用なのか顔には縁が丸型のサングラス。桃色の髪は左右で二つの団子を形造り、もしもそれが団子状ではなくツインテールであればラビットスタイルと呼ばれる結び位置で纏まっていた。
    背中の翼をどう収納しているのかという疑問はさておいて、ファッション誌に載っているような極上の美女がそこには居た。
    「お、あのコートめっちゃ高いブランドのやつ。」
    モエがつぶやく。ファッションに関しては年相応に興味はありつつ疎さが勝るサキであるが、とにかく無駄に金を持ってる場違いな奴が来たという認識で見ることにする。
    「了解ですRABBIT3。…では撃っていいですね。」
    「どういう判断基準だ!?」
    鼻持ちならない女から先生の名前が煽り気味に出た直後、自分達では到底及ばない彼女の資産情報が追加されあっさりと箍が外れるミヤコ。サキはそんな彼女の前に手を伸ばし必死に制する。
    先日からイブキの事で動き回り焦燥を強めるRABBIT小隊。DU外へ捜索範囲を拡大しようにも先の一件から連邦生徒会に睨まれ下手に動けず、先生からもたらされたゲヘナの情報にさらに焦燥感を抱くが身動き取れず…
    指揮をこなしてくれているミヤコにはサキ達からは窺い知れない多大なストレスが掛かっているのは理解している。
    しかし不審者相手とはいえ抑えてほしい。警戒のためとはいえ銃口を他校生に向けているのだ。撃てば先生にも迷惑をかけ状況はより悪化する。

  • 29二次元好きの匿名さん25/03/13(木) 12:35:53

    「わぁこわ〜い⭐︎ ウサギはウサギでも洞窟暮らしのウサギさんなんだね。あの塹壕に住んでるの?毎日お風呂入ってる?」
    「RABBIT1、私が撃とう」
    「あっ、いえ冗談です。冗談でしたサキ。落ち着いて。」
    攻守逆転。
    この女、気に食わん。団子に鉛の串を刺してやろうか。
    一瞬で頭に血が上ったサキと彼女の反転に焦るミヤコの必死の制止。入れ替わり立ち替わるコントのような様子を前にして女は微笑むと告げる。

    「私はトリニティ総合学園ティーパーティー、そのホストの一角『聖園ミカ』」
    名乗った瞬間、胡散臭さの蓋が剥がれ底無しの奈落のようなものが目の前に現れる。
    彼女の足下の影は国家規模の不可侵領域であり、もし一発でも撃とうものならサキ達の方が串刺さされ磔刑に処されるだろう。

    「あなた達に資金と武力と『権限』の提供をしに来たの。」

  • 30二次元好きの匿名さん25/03/13(木) 19:34:16

    前スレから続けてくれてありがたいぜ……

    わちゃわちゃしてるRABBIT小隊で草

  • 31二次元好きの匿名さん25/03/13(木) 20:14:20

    保守

  • 32二次元好きの匿名さん25/03/14(金) 01:06:27

    駆動するエンジンの爆音とキュラキュラゴトゴト鳴る履帯。
    ゲヘナ学園万魔殿所有戦車「超無敵鉄甲虎丸」は今日も快調に敵を探して道を進む。
    当然ながら乗員同士の会話は車輌の音にかき消されるので直には難しく、車内無線用のヘッドホンマイクや骨伝導イヤホンなどによる会話が推奨される。

    『それでね?最近マコト先輩がイブキと遊んでくれなくてね?』

    そんな推奨環境から聴こえるのは幼い少女の声。
    健気に話す声はどこか水気を帯び、今にも泣き出してしまうのではという危機感を感じる。
    「それでイブキはマコト先輩に嫌われたと思ってしまったのですね」
    『……うん』
    ゲヘナ学園万魔殿所属、丹花イブキ。

    ゲヘナを束ねる二巨頭組織である生徒会たる万魔殿と治安維持を担うゲヘナ風紀委員。二者を「暴力と政治」に分けるとするならば「政」に比較的重きを置くのが万魔殿である。
    その中心メンバーの一人にしてしかし何故か何の力をも持たない彼女は、他の万魔殿の皆から守り愛でるマスコットのような立ち位置として受け入れられその座を議長室に収めている。
    弱肉強食の実力主義を是とするゲヘナにおいて彼女の役割が何であるかと訝しがるゲヘナ生は一定数居る。
    まあそうは言っても議長より知名度も人気も圧倒的で風紀委員や他校生ともパイプのある時点で、彼女は万魔殿に坐す権利があるのは自明の理なのだが、今はそれは置いておこう。
    そんな万魔殿のアイドルは今とても傷心中であり、答え方によっては彼女をより傷付けてしまう。
    ここに居ない何処かのバカに心の中で悪態を吐きつつ、大事な後輩の心を踏みつけぬようイロハは我ながら笑うほど少ない手持ちカードから言葉を選び口を開く。

  • 33二次元好きの匿名さん25/03/14(金) 01:06:57

    「マコト先輩は後先考えない少し(かなり)バカな人です。仕事に熱中してしまって我を忘れているのでしょう。今回の仕事が終わったらちゃんとイブキと遊んでくれますし、なんなら私がもっとイブキと遊ぶようにお説教してあげますよ。」
    『ほんと?イロハ先輩…』
    「ホントです。私がイブキに嘘をついた事がありましたか?」
    『……一回もない』
    不人気で知名度が低いくせにイブキから絶対的な信頼と親愛を勝ち得ている我らが議長が、それを差し置いて何かに取り憑かれたように動画に写っていた人物の捜索を始めた事がこの事態を招いている。
    しかもなんとあの暴虐無人の塊が各校区に事情を話した上で少数部隊を送り込み現地調査を行なっているというのだ。
    さすがにトリニティからは全面拒否をされたようだが、エデン条約時に約定を反故にされた事を引き合いに旧アリウス生に接触・脅迫して情報を探らせているという噂も聞く。
    「……まったく大事な人を放ったらかして何やってんですかねあのタヌキは」
    本当に帰ったら虎丸で轢くかライオン丸責めの刑にでも処さなければいけないと強く思うイロハであった。

    「……しかし暑い。」
    比較的ゲヘナから近いのでイブキの気分転換も兼ねて捜索の真似事を引き受けたが、選択をミスったかもしれない。
    案内の生徒との合流地点が近い筈だがこの寂れ具合はどうした事か。虎丸には簡易的な空調はあるし飲料水も燃料も積み込んでるが待ち合わせ場所まで辿り着けるか?
    イロハ達は募る不安を遥かに上回る量の砂が積もる道を征く。


    アビドス校区外縁部
    未来イブキ漂着から19日目

  • 34二次元好きの匿名さん25/03/14(金) 03:34:47

    保守。(やりかた違ったらすいません)

  • 35二次元好きの匿名さん25/03/14(金) 05:09:41

    アビドスで最も身近な先輩、そして憎んでやまない過去の自分との遭遇かあ……
    ヒリついてきたぜ

  • 36二次元好きの匿名さん25/03/14(金) 11:18:13

    ほし

  • 37二次元好きの匿名さん25/03/14(金) 13:22:14

    当番制度というのは早い話が先生の手に負えない業務をカバーする作業の事だ。
    仕事が多ければ臨時で二人になったり三人になったりするし、そういう時は技量を重視するので呼ぶ生徒の組み合わせによっては犬猿の仲だったり竹馬の友だったりする。先生もそういう時は潤滑油に徹し気遣いを細かくして当番後のアフターケアも欠かさない。
    「でも今回はどうかなこれ」
    「心配しすぎじゃないですかユウカちゃん?」
    ミレニアムサイエンススクールのセミナーに所属する早瀬ユウカは、目の前の光景を同じくセミナー所属の生塩ノアと共に眺める。

    「あのさぁ、参謀だかなんだか知らないけどこれもう少し分かりやすく纏まんないの?」
    「チッ…貴女が理解できないだけでしょ。先生ならすぐに理解出来る。元不良には分からないかもしれないけど──」
    「ねえこれデータおかしいって!見てないで細かい直し手伝ってよユウカぁ!」
    「各校から苦情電話が凄いんですけど!お祭りで不発弾が市街地に落ちて破裂した時くらい凄い!どうなってんですかゲヘナの人!」
    「し、知らないわよ偉い人の方針なんか!そもそも私はアウトローで…」
    「あっはっは、まあまあ落ち着いて。モルス飲む?」
    「美味しそうですね、ありがとうございます。ちなみに聞きたいのですがこれのカロリーは…」
    「だっ…ゲェッホッ!誰かその子止めて!飲んじゃダ…ゲホッ!もしかしてお酒じゃないよねそれ!?」

    今回は特に酷い。
    とりあえずの寄せ集め感全開だ。

  • 38二次元好きの匿名さん25/03/14(金) 13:23:39

    このレスは削除されています

  • 39二次元好きの匿名さん25/03/14(金) 13:25:00

    ここ数日のシャーレは多人数当番時の先生のように各校の潤滑油の役目を全力で果たしている。
    交代制で各校から10人ほどの要員をランダムで呼び集め普段の業務と現在ゲヘナが行っている謎の大規模派兵による各校への影響の調整を行っている。
    そもそもこういうのはゲヘナに苦情を回すべきだが、なぜか先生がシャーレで事態の処理を一手に引き受けて連邦生徒会もこれを容認している現状である。
    ゲヘナ贔屓が過ぎるのではと思いはするが、どうにも何か事情があるらしい。詳細を聞いても“今はちょっと話せないし今後も話せないかもしれない”らしく、胸中にモヤモヤした不安が滞留する。
    「先生、大丈夫かな」
    そして当番生徒を呼び出しておきながら先生はここ数日アビドスとゲヘナを行ったり来たりしている。
    シャーレに居るのは早朝か深夜。いつ寝ているのか分からないが最近は特にやつれている。
    “ハイランダーの列車は揺れが少ないし座席で快眠してるよ”との事だが、最近開通したアビドス校区の路線は彼の言に反しよく揺れるらしい。そんな車内で快眠など出来るのか甚だ怪しいものである。
    「ユウカちゃんの心配は分かりますけどきっと大丈夫ですよ。『あの時』もそうだったじゃないですか。」
    ユウカの心配にノアが答える。
    虚妄のサンクトゥム、アトラ・ハシースの方舟、世界の終焉。
    それを皆の力でなんとか解決して終わらせた。
    あの時のような危機的状況ではないし比べるのも烏滸がましい軽い問題であるのも間違ってはいないだろう。
    ただ、それもユウカ達の働き次第では悪化して行くのかもしれない。
    「…そうね、ありがとうノア。今は目の前のことをやりましょう。」
    決めたならあとは解に向かって進むのみだ。
    各々が持ち込んだ端末にクラウドを同期させ内部の膨大な資料と格闘する少女達の中に分け入る。物理的な書類も山と積まれてる中に自分の作業スペースを確保し、先程泣きそうな顔で助けを懇願していた後輩であるモモイの作業を補助しつつ窓の外に見える晴れ渡ったキヴォトスの風景を横目に眺める。
    遠い昔の出来事のようでまるで昨日のことだったようにも思える戦いの記憶。
    あんな事態にはしたくないと心から願い、ユウカは手元の端末に指を沿わせフォルダを一つ開放した。

  • 40二次元好きの匿名さん25/03/14(金) 13:27:38

    キキョウ、モモイ、シズコ?、アルちゃん、シグレ、ユウカ、ノア
    辺りは分かる、残りが分からないが錚々たる面子だなあ

  • 41二次元好きの匿名さん25/03/14(金) 13:45:23

    あ、最初に発言したのはカズサ(キキョウの元不良発言)で、カロリー云々はハスミか?
    それでも最後の一人が分からないけど

  • 42二次元好きの匿名さん25/03/14(金) 19:08:32

    野良メイド
    ミレニアムの白いドローン、黒いロボット犬がある人物についての話をしてくれる事がある
    「あの事件」が起きてミレニアム生全員が要塞都市への避難を余儀なくされた時、その人物は「負けっぱなしで逃げて引きこもるなんて納得いかねえ」などと言って、同じく避難を拒否した者たちと共に逃げる生徒たちのシンガリを務めたのだとか
    旧ミレニアムサイエンススクール周辺をうろつく人影を追って地下道に入り込んだイブキはメイド服の上にスカジャンを羽織った小柄な女の襲撃を受ける……
    異様なまでに強いその「野良メイド」の攻撃を耐え続ければ「お前なかなか骨があるじゃねえか」と認められ、対話できるようになる
    何度も対話しお互い信頼を積み重ねていけば、子ウサギ公園が窮地に陥った時に彼女が率いるレジスタンスが助けに来てくれるかもしれない
    なお、飛行ドローンやロボット犬の「中の人」の話をすると「あいつらまだ頑張ってんだな……」とちょっと感慨深げな表情をする

  • 43二次元好きの匿名さん25/03/14(金) 23:57:00

    >>41

    猫の喧嘩の雰囲気が感じられて、カズサとキキョウは一読で判別ついちゃった

  • 44二次元好きの匿名さん25/03/15(土) 00:06:10

    このイブキは寝てる時も常にいざという時に起きれる癖をつけてて銃をすぐそばに置いて誰かが近くに来たり銃を向けられたりしたら即座に起きてそのまま相手に銃口を向け返したりしそう

  • 45二次元好きの匿名さん25/03/15(土) 07:16:22

  • 46二次元好きの匿名さん25/03/15(土) 08:22:05

    応援しとるよ

  • 47二次元好きの匿名さん25/03/15(土) 08:33:31

    砂漠を渡る時に考える事はとても多い。
    まず生きるために必要な水の量。これは有ればあるだけ良いが荷物の都合上多過ぎても少な過ぎてもダメで、砂漠をどれくらいの期間で渡るかの予定がなければ分量を決められない。
    そうすると必要になるのが地図とコンパス。これらが無ければ行くべき先も進んだ先の正確性も分からず最悪の場合遭難して干からびて命を落とす。極地では情報が一番重要なのだ。
    そしてこれらを携行するのに身一つでは務まらない。何らかの乗り物に乗らなければ水も積めず予定した距離を確実に進めず足場を取られる砂地でいざという時素早く動けない。これはオフロード車が理想的だろう。
    それらを全てを持っていても遭難する時は遭難するし死ぬ時は死ぬ。
    だから「こちらの世界」でも砂漠に足を踏み入れた時は懐かしさと同時に「死」が意識の上に覆い被さって来た。
    渡れるだろうか、いや必ず渡り切るのだ。
    ブラックマーケットで揃えた一式の物資を積み込んだ車に乗り込む彼女…丹花イブキはそんな気持ちで車を駆る。
    だからこそその声が聞こえた時は場違いな声音に気が抜けた。

    『そこの車の人〜』
    最初はノイズに近い音を鼓膜が捉えた。発信源から有効距離全域に聴こえるようにした無線通信が車内に積み込んだ無線機に割り込み音を鳴らす。
    音割れが酷い。
    車の速度を下げブレーキとクラッチを踏み込みギアをニュートラルへ。エンジンを止めず停車し通信に耳を傾ける。
    『え〜…ここはアビドス高校の校区内なんだけど君ってゲヘナ生だよね?』
    …こちらの姿を捕捉している。音割れは砂嵐の影響だけではなく発信源がそれなりに離れているからだろう。傍らの銃を手繰り寄せ周囲を警戒しつつこちらを観察出来そうな岩場なりを探す。

  • 48二次元好きの匿名さん25/03/15(土) 08:35:24

    「アビドスの学生か?」
    『そうだよ〜』
    質問に応じると間延びした気の抜けた声が返ってきた。
    この頃の正確な在校生数をイブキは知らない。
    未来で交流した旧アビドスの面々は全部で五人。その場のノリで新入生扱いされた自分を含めれば六人だが、今の生徒数はもしかしたらこんな砂漠地帯にまで警備を配置できるほど人材が豊富なのだろうか?
    『君は何の目的でここに居るのかな?』
    砂嵐が強まり同時に大きくなるノイズ音と音割れ。言葉遣いが悠長で少しイラつく。今はこんな奴を気にしてる暇はない。
    「ゲヘナ学園万魔殿の者です。『我々』は無駄な争いを望みません。事後承認になりますがこの砂漠の通行許可を願いたい。」
    イブキの時代ならいざ知らずこの時代のゲヘナの武力と権威は絶対的だと聞く。
    実際に見た洋館での戦闘もそれを証明するに足るものだった。ゆえにこの時代から弱小校であるアビドス相手には力押しが最も有効であるとイブキは考える。
    交渉術としては頭が悪い部類かつ三流で「参謀長」が聞けば呆れ返るだろうが、校区の末端で警備を任された雑魚相手にはこういうのが一番効くに違いない。

    ──結果としてその判断は全て間違っていたわけだが。

    『嘘だね』
    返ってきたのは否定の言葉。ノイズが少ない。前を見るとつい先程まであんなに勢いのあった砂嵐が弱まり見えなかった岩塊が視線の先に現れ始める。
    『さっきウチの子達から連絡があったよ。もう万魔殿の人は学校に到着してる。』
    「え…」
    万魔殿がアビドスに?

  • 49二次元好きの匿名さん25/03/15(土) 08:37:15

    『そもそも武力に訴えるなら風紀委員の名前を出すはずなんだよね。特に風紀委員長。ヒナちゃんって知ってる?知り合いなんだけどさ』
    知ってる。痛いほど知っているとも。胸が締め付けられ苦しくなる。
    あの作戦で遠くから目にして思わず涙が出たがゴーグルのおかげで怪しまれずに済んだのを思い出す。
    しかしなんだこいつは?あのヒナ先輩と知り合い?
    『「ウサギが逃げた」って聞いてたけど君はもしかしてアレかな?ヒナちゃんが言ってたウサギちゃんかな?』

    その時ふいに点が線で繋がった。
    砂漠に慣れたイブキですら視界の効かない中でこちらを見つけ出す優れた視力。
    広大かつ過酷な荒地の警備に回された雑魚…否、「そんな土地を警備するに足る実力者」
    ヒナ先輩と知己ということは相応の地位かあるいは……
    そんな人間は限られる。

    脳内すべてを塗りつぶす恐怖心がイブキの足下から頭の先まで浸透をし始める。
    音声にもうノイズはない。次に飛び出たワードでそれが誰か分からないほどイブキの頭は錆びれていない。
    『「おじさん」って意外とラッキーガールだね〜。君もそう思わない?』
    先ほどの岩塊に向かい目線を上げる。
    人影。
    ピンク色の髪をポニーテールでまとめた可憐で小柄な少女。
    しかし彼女はその身体にあまりに不似合いな重武装のボディアーマーを纏っている。
    片手にはイブキが過去何度も見て今では絶対に見間違うことのない無骨に過ぎる巨大な盾、そしてもう片手にはこれもまた見間違うことのない白と黒のツートンカラーのショットガン。
    左右異なる色の瞳はイブキを見つめ、地獄の門を守る番人のようにこちらを値踏みし睥睨する。

    『迷子の迷子のウサギちゃん』
    アクセルを踏み込み発進。短時間で速度を上げギアチェンジを繰り返しエンジンの消費量を考えない速度で走り出す。この場から逃れることが出来るならもう何でもいい。煙幕代わりに後ろ手でがむしゃらに短機関銃の乱射をかまして撹乱を試みるが、当然ながら当たらないし当たったとしても弾は盾で弾かれる。その陰から覗く顔は────

    笑ってやがる

    『おうちに帰るまで鬼ごっこしよっか?』
    この時代、最盛期の強さを誇る現アビドス高校生徒会長。
    別名を暁のホルスと呼ばれる砂漠の鬼、「小鳥遊ホシノ」との追いかけっこが始まった。

  • 50二次元好きの匿名さん25/03/15(土) 08:42:54

    (描写を書くにあたって色々調べたけど間違ってる部分があったら笑って見逃してほしいと思う)

  • 51二次元好きの匿名さん25/03/15(土) 09:03:17

    「おうちに帰るまで」か…
    どうしたら帰れるんだろうね…

  • 52二次元好きの匿名さん25/03/15(土) 11:03:20

    未来世界の子ウサギ公園の一時の平穏な時にはタンクトップ姿でサーベルを研ぐイブキ、インスタントコーヒー片手にほんの少しくつろいでいるサキ教官、アマチュア無線でアビドスの人たちと近況報告という名のガールズトークをしているミカ参謀長といった普段は見れないようなものが見れる

  • 53二次元好きの匿名さん25/03/15(土) 11:08:47

    あくまで個人的な好みだけど、未来世界のホシノは一人称が「お姉さん」とかに変わってると好き
    過酷な情勢だからこそ『バリバリ現役のやり手です』って態度に切り替えるのは効果ありそうじゃない?

  • 54二次元好きの匿名さん25/03/15(土) 13:41:35

    初っ端から臨戦ホシノなのはなんでかと思ったけど、そりゃいくらテロリストとはいえ、サーベルで切りつけるような危険人物がアビドスに来たってなれば警戒もするわな

  • 55二次元好きの匿名さん25/03/15(土) 19:50:07

    世界のどこにも切り付ける人間が居ない時代だからね
    ”3枚に卸した”は盛大に脚色されてるけど

  • 56二次元好きの匿名さん25/03/15(土) 20:15:35

    このレスは削除されています

  • 57二次元好きの匿名さん25/03/15(土) 20:29:31

    ハッキリ言ってイブキの「人を殺すのに躊躇がない子」って今のこのキヴォトスにいてはいけない存在だからね…
    そしてそれが分かってしまったからこそ自分から離れて元の世界に帰れる方法を探そうとしてて…

  • 58二次元好きの匿名さん25/03/15(土) 20:30:56

    接触すら拒むレベルのトラウマって、未来のホシノは何したんですかね……

  • 59二次元好きの匿名さん25/03/15(土) 20:39:49

    精神的に安定してる状態での臨戦ホシノは手強いぞ~

  • 60二次元好きの匿名さん25/03/15(土) 21:22:18

    保守

  • 61二次元好きの匿名さん25/03/15(土) 21:31:44

    >>57

    改めて未来のキヴォトスは何があったんだろうな…

  • 62二次元好きの匿名さん25/03/15(土) 21:36:14

    スレ画から感じ取れる歴戦王イブキ

  • 63二次元好きの匿名さん25/03/15(土) 21:38:47

    >>57

    マコトもそんなに躊躇してなさそうだけどね

  • 64二次元好きの匿名さん25/03/15(土) 21:41:46

    親の背中を見て子は育つとはよく言ったもんで…… >>63

  • 65二次元好きの匿名さん25/03/15(土) 22:38:12

    >>63

    マコトはどちらかというとエデン条約の時みたいにできるだけ自分の手を汚さない立ち回りをするけど、イブキの場合は自らの手を汚すことを厭わないから目に見える危険性としては圧倒的に高いんじゃないかな

  • 66二次元好きの匿名さん25/03/15(土) 22:56:14

    戦争をゲーム感覚(実際はちょっと違うけど)でやってるのがマコトで戦争そのものに染まってるのがこのイブキだと思う

  • 67二次元好きの匿名さん25/03/16(日) 00:05:45

    マコトはエデン条約編とかでも死者「は」出ないよう計算してやったと思ってる
    雷帝の遺産はヘイロー貫通研究の産物であり、ミサイル直撃をヒナが余裕をもって耐える(致命傷にならないという意味で)所まで計算出来ていたとか
    むしろ他の生徒に当たったらヤバいからヒナに当てて消費させたまであるんじゃないかな
    先生銃撃だけが予想外で

  • 68二次元好きの匿名さん25/03/16(日) 00:38:28

    多分戦闘スキルや能力もヒナやホシノに一歩及ばないくらいで相手が隙を見せたりでもしたら即座に見抜いて的確に攻めてあっという間に逆転するくらいの事は平気でやってきそう
    …そこでも隙を見せないからこその最強なんだろうけど

  • 69二次元好きの匿名さん25/03/16(日) 07:14:27

    「クソッ!!なんで未来より脚速いのあの人!!」
    イブキの駆る車の四方の窓はとっくに吹き飛び窓枠だけになっている。かろうじてバックミラーが生き残っているがヒビが蜘蛛の巣のように居住権を主張し決してその場所を譲ろうとはしてくれない。
    前方からは速度を出す事で生み出される叩きつけるような砂塵と暴風。
    現在の速度は90km/h。相当な悪路でありブラックマーケットで入手したボロ車にしてはかなり頑張っていると胸中で叱咤激励を飛ばす。
    『ゲヘナに引き返すのがウサギちゃんのためだと思うけどなぁ。』
    しかしそんな速度を彼女…小鳥遊ホシノは難なく付いて来る。
    無線から聞こえる音がクリアなのは遭遇時から全く距離を離せていないからだ。姿は見えないが左右から上から前から後ろからとショットガンの弾と跳弾による礫の雨が絶え間なく車体に叩きつけられる。
    助手席側のドアに炸裂音。留め具が木っ端微塵に吹き飛んでドアが車体から離れて落ちる。
    しかし決してタイヤを潰したりエンジンを狙ったりといった手法は取って来ない。
    やろうと思えばどうとでも出来るのにねぶるような攻撃を繰り返し引き返す事を推奨するのは、無駄な戦いを避けたいしましてや殺すなんてことは絶対にしたくないと願うからだとイブキは察する。
    彼女の知るホシノであれば初手で脳天に向かって弾を打ち込むか車ではなくイブキの関節を破壊しに掛かっていただろう。人を変える時間の経過のなんと恐ろしい事か。
    だがそろそろ向こうもしびれを切らす。こちらの思惑に気付いていれば──

    『も〜仕方ないなぁ。』
    途端、車体の上に何者かが着地する音が響く。
    『ごめんね〜』という間延びした声の直後、二度三度と車の天井にショットガンの破裂音。四度目で天井を突き破り真っ黒な板…小鳥遊ホシノの盾が運転席と助手席の間に割って入り無線機器を完膚なきまでに叩き壊す。
    しかしイブキはまだ運転を止めない。
    車の方はもうやめてくれと先ほどから火花を散らし断末魔を上げているが、まだ止まるわけにはいかない。

  • 70二次元好きの匿名さん25/03/16(日) 07:15:09

    天井に開いた穴から声が降って来る。
    「最後の警告。ウサギちゃんさぁ、この先に何があるか分かって走ってる?」
    ……気付かれてた。
    まるで駄々をこねる幼子をあやす母親のような優しい声。
    イブキの世界のホシノからは一回も聞いた事ない声音に、ホシノもイブキの知るホシノになるまで教官と同じように長い時間があったのだと実感する。
    たしかに強い。しかし恐れる必要はきっと無かった。事情を話せばきっと今のホシノなら分かってくれるだろう。
    だがイブキも苦労をして揃えた品と行程をメチャクチャにされて正直腹に据えかねている。
    もう予定通りの行程は無理だがここまで来たら一発かましてやらないと気が済まない。

    「知ってるよ。『向こう』の貴女だったらこういうヒリついた時にはきっとヤバい顔して笑ってる。」
    「よく分からんないけど最近の若者は後先考えないね〜。おじさんびっくりしちゃう。」
    にこやかに笑っているが目が一切笑っていない。生意気な小娘をこの後どうやって停めるか算段のついている冷え切った目だ。『命を大事にしない馬鹿』に対する侮蔑も含まれるかもしれない。
    「じゃあここまで。何が目的だったのか知らないけど…」
    「ここからだよッ!」
    「うへぇ!?
    天井の裂け目から手を伸ばしてホシノの脚を掴んで片脚を引き摺り込む。思わぬ行動に素っ頓狂な声を上げるホシノ。
    未来のホシノならここまで小柄ではないし掴んだこちらの手が弾け飛んでただろう。
    もがく猛禽の太ももを横目にアクセルを全開。
    目の前に見えるのは巨大な渓谷。
    否、砂漠に埋もれたビル群が生み出した巨大な奈落。

    二人を乗せた車は最高速度で地を蹴って、砂漠が開いた大口に姿を消した。

  • 71二次元好きの匿名さん25/03/16(日) 11:35:35

    ────────────────

    『そっか、死んだんだあの子』

    努めて冷静……否、今はそういう時代だと受け入れている無機質な響きが通信機器から聴こえる小鳥遊ホシノの声にはあった。
    「わあ、淡白だねえ。」
    『そっちの方がでしょ。第一声が「イブキちゃん死んじゃった⭐︎」はどうかと思うよ。』
    本当にその通りで人のことは何も言えない。一日ほど気持ちが沈んだがその後は普通に次の作戦を考えていたし、昨日今日も食事をしっかり食べて今に至っては残り少ない貴重な紅茶を啜っている。
    さらには「次の在庫探しを頼むの申し訳ないな」とイブキの死後すぐだというのにさっそく次の探索メンバーを脳内で選出し始めているのだから、隠れて大泣きしてたサキ教官の方がまだ人の心を失っていない。そう思う現RABBIT小隊参謀長•聖園ミカであった。

    『死体は確認したの?』
    「向かった先はアビドス砂漠。定時連絡が途絶えて以降もあなた達の所には来ていない。連絡が無くても今まで予定日数内に根性で戻って来てた子が帰って来ない。サキ教官がこっそり探しに行ったけどまるで行方が掴めない。」
    『動けない怪我をしたにしても場所が分からないとどうしようもない。砂漠で見つかってもうちのキャンプまで辿り着けないと医者は居ないし、そもそも動けなくなるような大怪我を治療する設備がない。砂漠の何処かで……って考えるべきだね。』
    改めて二人で状況を突き合わせ検証するが結局はサキと話し合った結論に行き着く。
    イブキ生存の可能性は極めて低い。
    「やっぱり『おじさん』もそう思っちゃうわけだ。」
    『おっと、私の塾生になりたいのかな?』
    勘弁して欲しい。
    ホシノは『狩り』と称してイブキを襲い追い立ててサキですら冷や汗をかくようなシゴキを訓練がてら行っていたと聞いている。
    そこで彼女は自身を「おじさん」と自称し笑顔で痛ぶってくるのだと。
    イブキ曰く「ホシノ塾」。全盛期ならいざ知らず、今のミカなど入れば数秒で死に至るだろう。

  • 72二次元好きの匿名さん25/03/16(日) 11:36:25

    寒気を感じていると口調は明るいが抑揚のない声が続けて問う。
    『それで?そっちは戦力不足で困ってるんじゃない?』
    「あはは、私は子供達を死地に送り出す『魔女』だよ?サキ教官共々そういうのは慣れてるから余裕余裕。」
    今は何処にいるかも分からない想い人から否定された『魔女』という言葉を、ミカは自身で名乗っている。子供を勝手な都合で送り出して儚い命を使い潰して散らさせる。醜悪で唾棄すべき大人に成り果てた悪役はそう呼ばれるのが当然だ。
    『それならいいけど……でもそっか、死んじゃったか。次は谷から飛び降りて生き残る方法を実践で叩き込もうと思ってたんだけどな、残念。』
    「わーお…」
    放っておいてもいつかこの怪物が縊っていたのではと思わなくもないが、それは一応訃報を伝える側の礼儀として控えておく。

    『それで?今日の用事はそれだけ?』
    「うん、聞いてくれてありがとうね。アビドスのみんなにもよろし……あっ!そうだそうだそれから医療品分けてくれないかな?便利屋さんに届けて欲しいなって思ってて。」
    『伊草ちゃんの報酬含めて水と食料10日分。』
    「……ぼったくりすぎじゃない?」
    『命綱を差し出すんだから対価も命綱で。こっちは農耕地だって少ないんだからさ。』
    生き残る事だけに特化し過ぎて情緒や人情というものを表面だけに貼り付けるだけになった戦闘マシンめと内心で悪態を吐きつつ、提示された条件を受け入れて交渉を成立させる。
    数少ない生き残りが集うベースキャンプ同士とはいえ助け合いも命懸け。対価を差し出し合わなければ明日永らえたかもしれない命が消える時代だ。
    ある意味イブキは幸せかもしれない。こんなどうしようもなく先が無い世界から抜け出せたのだから。

  • 73二次元好きの匿名さん25/03/16(日) 11:37:24

    『ああそれから』
    意外にもまだ繋がっていた通信に耳を傾ける。やはりイブキの死はホシノも何か強く感じるところがあるのだろうか。

    『魔女になんか成りきれないくせに自称するのやめとけば?』

    次こそ本当に切れる通信。
    知り合ってから変わらない、心底食えないむかつく女。
    腹立ち紛れに紅茶を一息に煽ると車椅子を押して無線機から離れる。今は失われた片足ともう何本か手の指が残っていたら砂漠まで飛んでって思いっきりぶん殴ってやったのに。
    普段子供達に授業をしている公園の広場に出ると、サキ教官の授業を受けている子供達の何人かが気付きこっそり手を振ってくれる。
    空は曇天。遥か向こうの廃ビル群が白く霞み、ミカにゲリラ豪雨の到来を告げている。
    「セイアちゃんが居たらあの向こう側が見えたのかな」
    先の見えない霞はまるでこの先に続く未来のようだ。もうこの世に居ない友の名を答えのない問いと一緒に呟くと、車椅子を進め雨の到来をサキに伝えに行く。
    サキと子供達が無駄のない動きで教材と洗濯物を回収してテントへ戻ると、時を同じくして前途が見えない今の混迷を表すように公園に土砂降りの雨が降り募った。

  • 74二次元好きの匿名さん25/03/16(日) 11:38:31

    相変わらず未来世界線は地獄のようで・・・・・・

  • 75二次元好きの匿名さん25/03/16(日) 12:38:31

    「お前あんまり似合わない仕草してどうすんの」というブーメランを投げ合うかつて子どもだった大人だらけの未来キヴォトス
    仕方ないんだ、割り切って大人にならなきゃ誰も守れないままだったんだ……

  • 76二次元好きの匿名さん25/03/16(日) 13:12:27

    すでに学園都市としてのテクスチャは剥がれてるんだろうけど、身体性能としては若いってこともあって生徒の時の方が上なのかな?

    それはそうと便利屋として派遣されるのが、1番単独行動に適してないであろうハルカなのってもしかして…

  • 77二次元好きの匿名さん25/03/16(日) 13:30:46

    そりゃこんな先の見えない地獄の中でも生き延びる為になんとか必死に頑張ってた時に
    急に今と繋がらない過去に飛ばされた上に何も苦労もなく楽しそうにしてる姿を見せられたら地獄の生活全てを否定されてるようで堪らないよな…

  • 78二次元好きの匿名さん25/03/16(日) 15:04:35

    今SS連載してくれている方とは別の人だよ

    しかも書きたいところにたどり着けていないよ

    だからおかしいところとか今後おかしい描写になったら砂漠で干乾びるつもりのSSだよ

    参謀長執務室 | Writening「イブキちゃん! 一緒にお風呂入ろっ!!」 「…………。……、……お断りします」 ミカ参謀長の突然の発言は、書類仕事にひと段落がついた夕暮れ時のことだった。 参謀長のこうした我儘が飛び出るのはそれなりに…writening.net
  • 79二次元好きの匿名さん25/03/16(日) 15:05:43

    (ちなみにどうでもいいけど、Writeingっていつの間に直リンクでも規制掛からなくなったのか気になっているよ!)

  • 80二次元好きの匿名さん25/03/16(日) 20:56:14

  • 81二次元好きの匿名さん25/03/16(日) 20:56:21

    >>76

    6年も地獄を生き抜いて成長したハルカっていう可能性もあるぞ

  • 82二次元好きの匿名さん25/03/16(日) 23:46:38

    今のホシノはあのイブキが何でそこまでして砂漠を突っ切ろうとしてたのかって所が分かってなかったな
    まぁそもそもこの子がイブキだって事も知らされてなくただゲヘナの格好した脱走者を捕まえろって言われただけだったんだろうけど

  • 83二次元好きの匿名さん25/03/16(日) 23:54:06

    現状『イブキ』であることを知っているのはカンナ、先生、ヒナ、アコ、RABBIT小隊、アロナ、プラナかクロコくらいだろうしね
    まあマコトもイブキであることは確信しているだろうが……

  • 84二次元好きの匿名さん25/03/17(月) 04:17:40

    原作先生もこの世界線のホシノも意味的には「ミカは魔女じゃない」って同じ事を言ってるはずなのに何故後者の方が虚しいのか…ばにたすばにたす

  • 85二次元好きの匿名さん25/03/17(月) 07:37:50

    これさぁ、未来ホシノもおくびに出さなかっただけで内心かなりダメージ入ってない?
    可愛がってた後輩がユメパイセンと同じ末路をたどったって……

  • 86二次元好きの匿名さん25/03/17(月) 07:38:11

    世界に絶望した生徒たちが「バニタスバニタス…」と唱えながら集団自決したりとかそういうのもありそうだな…

  • 87二次元好きの匿名さん25/03/17(月) 10:04:10

    それなら4thPVでミサキが最終的に選んだのが失血死だし、未来キヴォトスには生徒の血で出来た赤い川とかありそう

  • 88二次元好きの匿名さん25/03/17(月) 10:26:15

    何が原因でキヴォトスがこうなったかは分からんけど、仮に外的要因で惨劇が起きたとしたらワンチャンエリドゥに次に安全なのはアリウス自治区そう
    あそこカタコンベ経由じゃないと行けない天然要塞だし

  • 89二次元好きの匿名さん25/03/17(月) 11:24:51

    アビドス高等学校。
    かつてキヴォトス最大の規模を誇った巨大校であったが現在は砂塵によって全域が砂に埋もれ、唯一残った小さな校舎もいずれ運命を共にするのだと言われて久しい。
    『全校生徒僅か5名のアビドスでは何も出来はすまい』というのが他校と連邦生徒会からの現状の評価である。

    ただし変化はある。
    ハイランダー鉄道学園との提携で新しい路線の開通が進められたことによりアビドスのインフラが大幅に改善。それによってアビドスと他校区を行き来する生徒が増え始めた。
    ストロー化現象も懸念されるがこれによりアビドス内での経済活動が僅かながら活性化しつつある。
    廃校対策委員会改めアビドス高校対策委員会が守り続けた復興の灯火が徐々にその光を広げ始めている。
    アビドスは過去を乗り越え確かな歩みを着実に進めているのだ。

    「ほ、本当に戦車一台で来てる…」

    そんなアビドスの外縁部に戦車一台に乗ってゲヘナの客人が現れたのを搭乗するヘリから確認すると、アビドス高校対策委員会(生徒会)書記・奥空アヤネは大いに困惑した。
    『どうアヤネ!?やっぱすっごい数の兵隊いるの!?』
    『シロコちゃんそれ紙袋ですよね?いつものマスクは…』
    『ん!迎撃準備。マスクの方はもうすぐ来る。』
    「……え〜っと」
    今日ゲヘナの客人が来るというのも戦車で来るというのも万魔殿最高幹部2名と護衛が二人というのももちろん聞いていた。
    しかし常識的に考えればゲヘナの言う「戦車」を本当にただの戦車と捉える人間はいない。

  • 90二次元好きの匿名さん25/03/17(月) 11:28:15

    戦車とは歩兵の直掩であり単独で動くということはまずない。前面に必ず歩兵部隊が存在するはずだ。
    指揮するのが最高幹部2名なら「護衛」も並の人物ではない。伴う部隊も中隊•大隊規模で抑えが効くとは思えない。
    つまり機甲部隊と機械化された諸科混成の師団規模兵力による一大攻勢。おそらく目的は武力による鉄道網の奪取と利権確保。そして先日判明した砂漠に眠る稀少金属の残存鉱脈。
    まさかこんな強引な方法を取るとは!と対策委員会では蜂の巣を突いた騒ぎとなった。
    生徒会長であるホシノだけが「ヒナちゃんや先生からただの視察って聞いてるし絶対違うよ〜?」と冷静で、今日も「絶対無いから変な気は起こさないでね」と念入りに言い含め砂漠の方へ偵察に出掛けている。
    しかし一度ゲヘナ風紀委員の侵攻を受けた他メンバーは完全に浮き足立ってしまった。
    かく言うアヤネも例に漏れず、武装した虎の子のヘリを持ち出しいざとなれば先制攻撃も辞さない覚悟だったのだ。
    ほぼ丸腰の相手に完全武装の大兵力。予想通りの構図だが奇妙な逆転現象が発生してしまった形である。

  • 91二次元好きの匿名さん25/03/17(月) 11:30:43

    そもそも常識的に考えれば移動には新しい鉄道を使うだろう。
    まさか言葉通りの光景が目の前に現れようとは思わない。
    ゲヘナからハイランダーを経由するので少し遠回りになるが、ゲヘナの資金力なら良い席を取って暑くも遅くもない快適な旅が約束されていた筈だ。

    対策委員会の誤解が解けてヘリを降ろし「全力で皆さんのお出迎えに来ました!」という体でゲヘナ万魔殿の幹部たちを迎え上記の疑問を問うと、赤髪の少女が護衛と思しき生徒の方を振り返る。下調べ不足。護衛の生徒は慌てて携帯端末を操作しアビドスに関する情報を改めようとするが見事に圏外で電波を探し右往左往。それを見かねた全員が同じ行動と動きをするものだから、実に奇妙な光景がアヤネの眼前で繰り広げられた。

  • 92二次元好きの匿名さん25/03/17(月) 13:22:59

    そして現在

    虎丸を一時的に市街地に駐車し厳重に迷彩を施すと、彼女達はアヤネの乗って来たヘリに乗り込みアビドス上空を戦乙女の如く駆けて行く。
    『…本当に砂だらけなんですね』
    万魔殿戦車長の棗イロハは愛車の身を案じつつ、今は上空から見るアビドスの惨状を見て取り素直な驚愕を口にする。
    『私達が子供の頃はとっくにこうでした。成長して進学して高校生になってからもずっと。ですけど借金で首が回らなくなった時に先生が来てくれて、あれからゆっくりアビドスが良くなっていって…』
    それに対してアヤネがヘッドホン越しの音質でも分かる遠い日を思うような声音で話すと、それを聞くイロハは「ああ、相変わらずあの人は色んな人を助けているのだな」と思い心が暖かくなる。
    ただし彼は今ゲヘナが動き始めて以降各地を飛び回らせてしまっている。
    マコトの動きで生じた問題を処理し、各校とゲヘナの間に火種を作らないようにするためだろう。あまりにも申し訳ない。さっさと件の生徒を見付けてこの騒動を終わらせたいと強く思う。
    アビドスの協力を得る事で捜索範囲も大きく広がる。早々に見つけ出せればあの議長の奇行も収まるだろう。
    そして終わったならまた先生の所にサボりに行って大いに労うのだ。
    うん、それがいい。

    『ねえ、イロハ先輩あれ!すごいすごい!』
    そんな折に聴こえるイブキの無邪気な声。思考の海から身を起こす。
    隣に座る彼女の視線の先を追うとイロハ達のヘリの対角線上、低高度をヘリが凄い速度で飛んで行くのが見えた。
    向かう先は砂漠だろうか?アビドス高校にはヘリが他にも数機あるというがその一機か?

  • 93二次元好きの匿名さん25/03/17(月) 13:25:51

    『あれはアビドス高校の所有機ですか?』
    アヤネに問うと操縦席で首を横に振るのが見える。
    『ここの空域管制は把握してるでしょうが私達アビドス高校は感知していません。今このアビドス校区は企業がその権益の多くを握ってるんです。かく言う私達の学校も債権を地元由来の企業に握られているので、もしかしたらそこの機かもしれませんね。』
    ……企業機という一言でいいのに。
    もしゲヘナが同じ状況に陥ったと仮定するならマコトが発狂するような話がショットガンの弾のようにイロハ達に情報として叩き付けられる。護衛の生徒達などは何を言われているのか状況が掴めず顔を見合わている。
    本来自治区の権利は制空権含め全て校区を自治する学校が握るもの。しかしアビドスは先の話を鵜呑みにするなら校区の実効支配すら夢のまた夢。イロハ達が身を任せる機が征くこの空はアビドス高校の方がお客様なのだ。
    借金まみれの学校、少ない生徒、砂漠に犯される街並み。何処にもまるで未来が見えやしない。
    ……こんな寂れた場所にあの動画の人物を探すような能力と人員があるとは思えない。
    目的を果たすどころか行動するための土台すら危ういと分かった以上、途端にイロハのやる気は空気を抜いた風船のように萎んで行った。
    おそらく今回の出張は無駄に終わる。イブキの気分転換の小旅行程度に終始していいかもしれない。まあ、次の捜索部隊が何とかしてくれるだろう。
    困っている先生の顔が浮かび罪悪感が芽生えるが、仕事にすらならない仕事のために足を運んだという徒労感に気分は完全にサボりモードに突入してしまった。
    彼女は窓から目線を外し持ち込んだ本を読み始める。サボりに徹し始めた彼女にとって窓の外にある物…たとえば先程のヘリなどはもはや興味の対象になり得なかった。

    光で乱反射する側面に「RABBIT」の文字とウサギ印が記されたそのヘリは、先程と同様迷う事なくアビドス砂漠へ向かって直進していた。

  • 94二次元好きの匿名さん25/03/17(月) 13:43:38

    あぁ…同じ子を探してる二組がお互い気づく事なくニアミスしていった…

  • 95二次元好きの匿名さん25/03/17(月) 21:22:53

  • 96二次元好きの匿名さん25/03/17(月) 21:30:36

    RABBIT小隊にミカが同行していれば、万全の参謀長とのご対面になるね……

  • 97二次元好きの匿名さん25/03/17(月) 22:09:19

    ……正直この未来イブキに先生が出来る事なんて何もないというかこれ以上の干渉はやめるべきなんじゃないか?
    クロコの場合プレ先に頼まれたって理由があるけど未来イブキにとっての先生は既にいない訳だし。
    この流れで未来イブキが元の世界に帰らないってのはあり得なさそうな以上何を言っても彼女にとって呪いにしかならないんじゃ……

  • 98二次元好きの匿名さん25/03/17(月) 23:30:57

    >>97

    別の世界の人で別人だし頼まれたわけでもない、だから無関係ですねお元気で、と放り投げるほどの割り切りはそう持てまいよ。まして先生の知るイブキとは一変した様子だし


    その辺は差し出がましいお節介としても、既にこのキヴォトスで事件を起こしちゃってるから、放置するのはそれはそれで無責任になるしね。

    読者視点では未来イブキはこちらのキヴォトスに干渉しないように帰還したい(と思われる)ことは分かるけど、作中ではそれを誰にも伝えてないし具体的な目処もない。当初みたいな無差別な攻撃に出ることも十分想定されるし

  • 99二次元好きの匿名さん25/03/18(火) 03:39:43

    ssのクオリティ高くてほんと好き。

  • 100二次元好きの匿名さん25/03/18(火) 08:23:09

    未来イブキは戦いになって自分の敵であると分かったら例えマコトやイロハやサキ相手でも躊躇なく撃ちそうな気がする
    でも撃つ瞬間はもの凄く哀しそうな表情をするし倒すかどちらかが退却して戦闘が終了したら誰にも見えない所で1人泣いてそうな気がする

  • 101二次元好きの匿名さん25/03/18(火) 09:03:53

    >>100

    イブキを守って死んだマコトやイロハ、イブキに戦う術を与えてくれたサキという恩人を彼女達が守った命が彼女から教わった技術で殺そうとするのか

    これがVanitas vanitatum, et omnia vanitas.

    美しいな…

  • 102二次元好きの匿名さん25/03/18(火) 10:32:34

    「それではRABBIT小隊の臨時作戦会議を始めます。まずはサキ、現在の状況を。」

    イロハのアビドス来訪から数日前
    AM09:00
    D.U.シラトリ区 : 子ウサギ公園。
    この日、RABBIT小隊のベースキャンプである子ウサギ公園では大きく状況が動き始めようとしていた。
    その始まりを告げるようにミヤコがサキに状況の確認を促す。
    サキは立ち上がり黒板に貼られた模造紙を指すと、そこに書き込まれた事態の推移を話し始める。
    「おおよそ16日前、RABBIT5ことイブキが我々の小隊に加入した。」
    それがサキ達にとって白地図の最初のマーカー。
    本来なら地図は塗り進められ物語によりカラフルな色を生み出していくが、この地図は突然色を失い灰色となる。
    「その2日後。ゲヘナ領内でのテロリスト殲滅に参加…イブキは不祥事を起こし姿を消した。」
    「たったそれだけしか一緒に居なかったのに熱心だね〜」
    「……続けるぞ」
    横から掛かるこの場に似つかわしくない能天気な声を受け流す。
    そう、たった2日。加入から失踪までたった2日だ。
    本来なら情の湧きようもない交流日数。市民を守る任務を持つRABBIT小隊がいちいちこだわって本分を疎かにする価値なんて微塵もない存在のはずだ。
    しかし彼女達はあれ以来イブキへの糸口を必死に探し足掻いている。

    「私達の捜査ではイブキがシラトリ区を出た所までは把握している。悲しいが我々ではそこまでが限界だった。抜けた方向からして向かったのはおそらくゲヘナだろう。ただ、そこで何をするつもりだったのか、その後移動したのか否か、それが分からなかったんだが……」
    目線を送る。
    先程の発言者は薄く微笑み何処かで買ってきたドリンクを飲んでいる。
    いや、あれシャーレの近くにあるすごいオシャレなバーガー屋のドリンクと紙袋だ。セット料金が三千円くらいするやつの。ということはあの中身は高級和牛とオーガニックだかアボカドだか何だか言うバーガーか?なんだ?作戦前に脳天に一発欲しいのか?
    「…………食べる?」
    「たっ……た、食べないッ!!それよりさっきのはお前に話を振ったんだ!!」
    甘い餌付けの誘惑を振り払う。

  • 103二次元好きの匿名さん25/03/18(火) 10:38:28

    仕方ないなぁと座っていた椅子から立ち上がった女──聖園ミカはサキの言葉を引き継ぐ。
    トリニティの才媛にして美しき怪物。飛び立つべき母校を雛の身で滅ぼしかけたティーパーティの一柱。
    数日前、彼女はトリニティの特使としてRABBIT小隊に接触を図って来た。
    そこで齎されたのは資源及び情報面での援助と、トリニティ総合学園の権限を用いた全面的なバックアップだ。
    表向き「業務提携」という形で行われたそれは、「トリニティの権益を毀損しないこと」という一文のみの小隊に殆どデメリットの無い契約だった。
    武器弾薬の無償供与、イブキ捜索にあたっての人材提供、捜索にあたって校区に入る際の連邦生徒会及び各校との折衝。
    三大校と無闇に事を構えたい学校など居ない。今回の事件でなぜトリニティがこのような厚遇を行うのか分からなかったが、あまりに破格の話に小隊メンバーは歓喜した。
    ただ、派遣されて来た人物との相性に少々難があったわけだが…

    「ゲヘナ外縁のブラックマーケットで物資を調達したのは確か。その後にミレニアムで三日間潜伏。それでまたゲヘナのブラックマーケットに戻って物資を再補給してる。ここまで大丈夫?」
    「ああ」
    「そっか、一応勉強出来るんだ!でも面白いよね〜この子、ゲヘナと他所を行ったり来たり。ツノ付きはウサギさんの仲間が嫌だったのかな。」
    「……」
    「そいつの口が無自覚で悪いの分かってるっしょ、落ち着けサキ〜」「さ、サキちゃんその人たぶん本当に悪気とかないです…」「サキ、彼女が昨夜使ったシャンプーは私達以上に水で薄めた粗悪品ですので気をしっかり持って」
    へぁ!?と素っ頓狂な声を上げる女への怒りを無言で抑えていると仲間達が応援してくれる。持つべきは良き戦友だ。
    そうだ、イブキもそんな大事な戦友の一人。まだ何の交流も出来てないし何の事情も聞けてない。新人の入団試験だってやれてないのだ。
    必ず見つけてやらねばならない。
    ……数日前から寝食を共にしてる文句ばかりのトリニティ生?知らん。廃棄弁当でも食わせとけ。

    ちなみに先ほどのミカの言葉は全て「硬い空気だし皆んなを和やかにしてあげよう⭐︎」と思い発したトリニティジョークである。
    思いやりを無自覚に自身と周囲へ向かう刃へと変える。
    過去を教訓に今まさにミカが必死に治そうとしている悪癖は、その意思に反してまだまだ健在のようだった。

  • 104二次元好きの匿名さん25/03/18(火) 12:36:40

    あの未来では無自覚に煽る方のミカが他人を止める側で部隊の為に抑えてた方のサキが抑えなくなる側って真逆の立場になるのは運命の悪戯だよな…

  • 105二次元好きの匿名さん25/03/18(火) 12:52:03

    今思ったけどこうやってミカが別行動を取ってる時にトリニティの方で何か起きて全滅して生き延びる事になったのかもね…

  • 106二次元好きの匿名さん25/03/18(火) 14:16:49

    どのタイミングで不具になったのかは分からないけど、ナギサはほとんどミカのためだけに命懸けでエデン条約締結を推進してたし、トリニティではミカを守りきれないってことがわかったなら権限フル活用してでも逃がそうとするだろうからね

  • 107通りすがりの先生25/03/18(火) 17:58:48

    17歳イブキ時空のサキとミカがやって来たとき、ミヤコとナギサはたまげるだろうな。

  • 108二次元好きの匿名さん25/03/18(火) 18:35:31

    確か原作でもまだミカとイブキって接触ないんだっけ? 
    現イブキと未来イブキに別々に邂逅しても絶対に同一人物とは思えないだろうな……

  • 109二次元好きの匿名さん25/03/18(火) 22:33:03

    交流したわけではないけど、SS世界は最終編通貨済みっぽいから「同じシーンにいた」程度の関係はある >ミカとイブキ


    逆に未来イブキが万全のミカを知らないから、未来世界は最終編に類するイベントが起きてないのかも?(起きててもミカが実際に戦うところを見ないと強さは分からないけど)

  • 110二次元好きの匿名さん25/03/19(水) 07:35:51

    朝保守

  • 111二次元好きの匿名さん25/03/19(水) 08:20:40

    ミカの昔の頃は誰にも手がつけられないくらいに強かったって昔話を聞いてて
    参謀長の今の姿と雰囲気を見ているとそんな感じは全然しないんだけど騒動があった時の指揮参謀の姿は才能と過去の経験量を思わせるくらいに堂に入ってて
    イブキも心のどこかで(この人の本当に強かった頃を見てみたい)と思っていたとか良いよね…

  • 112二次元好きの匿名さん25/03/19(水) 09:53:07

    「んで、そのあとは?」
    横からモエが話を催促するとミカは髪を気にしつつ続ける。
    「買い込んだのはごっつい無線機を詰んだ車と水と食糧。きっとアビドスの砂漠に向かったんじゃないかな。そこからは全然分からないんだけど…」
    「なんだ、トリニティの密偵も大したことないじゃん。」
    「うちのは基本デスクワークなの!これ掴むのめちゃくちゃ大変だったんだよ?なんだか欺瞞情報がやたら散布されてたっぽいし。」

    欺瞞情報。
    ミカ曰くトリニティの諜報員はゲヘナ万魔殿情報部内でスパイ活動を行っている。
    敵地で疑われずに情報を送り続け露見させることもない優秀な密偵。そんな人材が苦戦するほど今回の事態は情報が錯綜している。
    たとえば先日ミレニアムで行われた大捕物。
    ミレニアムの特殊部隊を交えてイブキを追い詰める一歩手前まで行ったのだが、情報が歪められていた結果全く違う場所をアジトとして急襲してしまいターゲットを見失ったのだそうだ。
    まるで狸や狐に化かされたような状況で、万魔殿も風紀委員も各校区で情報が使い物にならず徒手空拳で駆け付けなければならなくなり、出動する端から空振りに終わるという悪循環に陥っている。
    ただその中で風紀委員は委員長と行政官の指示で必要最低限の人員で回すようにしたとも聞く。流石は現場運用を熟知する空崎ヒナといったところか。
    しかしここまで来るとイブキの事を隠したい「誰か」の意思が動いているとしか考えられない。
    イブキの正体を知り、それだけの各方面へのパイプを持ち、学校の情報部程度では太刀打ち出来ない何者か。

  • 113二次元好きの匿名さん25/03/19(水) 09:53:56

    「先生の働きかけです。イブキとゲヘナの接触を避けるように動いていましたから。」
    「なるほどなぁ〜〜先生の優しさが裏目に出ちゃったかぁ…。うん、でもゲヘナなんかに先に見つかったら新人ちゃんが何されるか分かんないしかわいそうって思った結果なら仕方ないよね。」
    「…………そうですね」
    ミヤコはその反応に言葉少なく返す。ミカにはイブキの事をただの「不祥事を起こした新人」とだけ伝えている。
    これはトリニティとの契約の条文にある「トリニティの権益の毀損」の拡大解釈を恐れたミヤコがあえて黙っている事を選んだためである。
    もしイブキの正体をトリニティが知ればどうなるか。キヴォトスの行先を知る未来人、ゲヘナの丹花イブキの成長した姿、現代のイブキでなくともゲヘナが動き探し回るという事態を引き起こす稀有な存在。

    捕まえた途端トリニティの『権益』として回収され、ゲヘナとの交渉材料として使い潰され骨の髄まで利用されるに決まっている。

    イブキ発見のため組みはしたがもしもに備えて逃げ道は多い方がいい。
    トリニティを利用してゲヘナを出し抜きイブキを見つけて回収する。
    達成条件の厳しい賭けだがやる価値はある。

    「そ、それで今からどうするんですか…?」
    ミユの問いにミヤコが黒板に近寄り貼られた模造紙の横にチョークで点と線を描き始める。

    「もちろんアビドスへ。」
    D.U.シラトリ区を示す点から線が伸びアビドスを示す点へ向かう。
    「先も触れたようにおそらくイブキの向かう先はアビドス砂漠でしょう。なぜそこに向かうのかは分かりませんが、私達は彼女に会わなければなりません。」
    サキ含め小隊全員が頷き返す。
    「おそらく彼女はまだアビドスとゲヘナの外縁部にいるでしょう。ヘリなら追い付ける可能性があります。彼女を見つけ次第回収し拘束。連れ帰り尋問と懲罰ののち原隊復帰を促します。」
    なんか物騒なワードが飛び出したなと内心で思いつつ、都合のいい大味な計画ではないかとサキは訝しむ。

  • 114二次元好きの匿名さん25/03/19(水) 09:54:52

    ミヤコの指揮や戦術に関して全幅の信頼を置くサキだが、どうにも小隊規模での作戦を練り慣れているせいかスケールが大きくなると行き当たりばったりな感が否めなくなる印象を受ける。
    まず広大な砂漠の中で目印もないのに一人の人間をどう見付けるのか。
    ヘリで上空から車を探せばいいという考えもあるが、たとえ発見しても人間の目では捉えるのには限界があり気付かないこともある。たとえば車の轍を探したとしてそんな物は残っていても同色の砂に紛れて見えないし、1日立たずに消えるだろう。
    ミユの鷹の目をもってすればどうにか…とも思うがなんといっても範囲が広い。日中の太陽光を反射する砂漠をスコープで長時間見つめる事が目にダメージを与えて作戦に響くかもしれない。
    「それさぁ、人員めっちゃいないと無理じゃない?うちら5人じゃ無理でしょ。」
    「わ、私も見つけられる自信がないです…」
    同じく思っていたらしいモエとミユの不安が出る。
    しかしそれに対するミヤコは我が意を得たりと言うかのように微笑みながらこちらを向いた。
    「捜索の困難さは理解しています。しかし実は昨日『参謀長』から提案があったのでそれを組み込もうと思いまして」
    「な、なに?参謀長?」
    困惑が生まれ加速する。そんな役職を持った人間がこの小隊に居ただろうか?
    「はいはーい⭐︎私だよ!」
    勢いよく振り向くと満面の笑顔でにこやか笑顔を華咲かせ大きく挙手をする聖園ミカ。
    こいつが参謀長?いやいや待て待て
    「正気を捨てたのか、RABBIT1!」
    「ええ、私も昨日そう思ってました。しかし彼女の提案は現状最もデメリットが少ない名案ですRABBIT2。」
    ミヤコはそう答えるとミカに作戦内容の開示を促す。

  • 115二次元好きの匿名さん25/03/19(水) 09:55:41

    「問題点は捜索人員が少ないって事だったよね」
    そうだとサキが応えると黒板に近寄りゲヘナとトリニティを表す二つの点を描くミカ。
    「まずゲヘナに協力は仰げない。私もその新人ちゃんならギリ大丈夫だけどゲヘナとのお付き合いはちょっと勘弁。」
    ゲヘナに大きくバツ印を描くとトリニティにもバツ印を付ける。
    「うちも人員を貸し出すって言ってるけど軍とか呼ばれる規模までは流石に無理。下手にゲヘナを刺激したら戦争でも起きちゃうんじゃないかな?もうそういうのはこりごり。」
    こりごりというのは先頃のエデン条約締結に関する騒動を差すのだろう。ミカとしても事件の発端としてこれ以上の問題は避けたいと見える。
    「おい、候補を潰し切っただけじゃないのかこれ」
    「まあまあ」
    小隊に突然生まれた参謀長は相変わらずにこにこと笑顔を絶やさず黒板にさらなる点を付け加える。
    「数千人規模の人員で、一人一人が超有能。動いても資金面でちょちょっと話を通せば誰もが不思議に思わず外交問題にも発展しない。…まあアビドスには迷惑掛かるかもしんないけど、弱小校だし大丈夫じゃないかな、やり方次第では見返しも渡せるだろうし。」

    アビドスの犠牲を横に置いて話される夢物語。
    髪に付いた安物のシャンプーから毒が回ったか?
    「あー…聖園参謀長?お前は一体何を言ってるんだ?兵力を生み出す魔法の小槌でも持ってるって言うのか?」
    「魔法と言えば魔法かな?」
    黒板に向かい合ったミカの手で先ほどの点の下に勢力名が書き込まれる。
    「そうそう、あなた達が食べる筈だったコンビニのお弁当美味しかったって」
    「は?」
    言っている意味が分からず返すと彼女は今回の作戦を可能にする功労者を思い悪戯っぽい笑みを浮かべる。

    「サキ教官はやんちゃな狐に化かされた事はある?」

    ──その日からキヴォトス各地において未確認飛行物体の目撃情報が相次いだ。
    各校区の生徒会が対応に動いたがそれは特に害を与えてくるということもなく、下手に撃墜すると市街地への影響が懸念されたため空を見上げて見送るほか術はなかった。
    はるか彼方まで晴れ渡った空を数えきれない数の物体が断続して飛翔して行き、その全てがアビドス砂漠の方向へと向かって空中に溶けるように霞んで消えた。

  • 116二次元好きの匿名さん25/03/19(水) 18:06:16

    このレスは削除されています

  • 117二次元好きの匿名さん25/03/19(水) 18:08:12

    ??????

  • 118二次元好きの匿名さん25/03/19(水) 18:57:19

    単純にセイア経由でミレニアム(またはリオ個人)に話通して、ドローンによるローラー作戦を実施したものと思われる
    トリニティは直接干渉してないからシラを切れるし、ミレニアムも「ちょっとドローンの大規模運用を試したかっただけですね、迷惑かかっていたらお詫びします」で比較的収まりが付くという算段かと
    まあキレたナイフみたいなところがある対策委員会が食って掛かる可能性もなくはないけど

  • 119二次元好きの匿名さん25/03/19(水) 20:48:01

    >>118

    合点がいった。それなら人員が少なくても広範囲を探索出来る。

  • 120二次元好きの匿名さん25/03/20(木) 04:51:12

    保守するホシノ
    ホシュノ

  • 121二次元好きの匿名さん25/03/20(木) 10:07:37

    「なにぃィイ!?イブキがアビドスに行ったァ!?」

    万魔殿議長室に響いた声は万雷の如く大音声を発し、それを聞く者の鼓膜を大いに震わせた。
    「仕方ないじゃない。見せた私が言うのもなんだけどマコトちゃんったらあの動画を見てから『あれは絶対イブキだー!』っておかしくなっちゃってあっちこっち動き回って当のイブキちゃんを放置してたし。」
    「んぐぅ!!」
    ゲヘナ学園万魔殿議長・羽沼マコトの絶叫に対し、同じくゲヘナ学園万魔殿所属の情報部長・京極サツキが耳を指で押さえて呆れ気味に応える。
    ことの発端は約10日と少し前、風紀委員の失態を万魔殿一同と楽しく聞いていたマコトがサツキの持ち込んだ情報を目にした時から始まった。
    ほんの15秒、ブロックノイズ混じりのとある生徒の戦闘動画。
    万魔殿の制服に酷似したボロボロの服を身に纏い、その上からこれまたボロボロのマントとゴーグルを羽織って目にも止まらぬ動きを見せるその動画は、本来話のネタ程度で終わる筈だった。
    ところがそれをマコトがすぐ横に居るイブキを差し置いて「これはイブキだ!」と騒ぎ立て、何言ってんですかとイロハ達に否定されると「なぜ分からんのだお前達!」とムキになり部屋から飛び出し急に大規模捜索の動員を始め…
    「あの後『イブキはここにいるのに』って泣いてるイブキちゃんを宥めるの大変だったんだから。それで傷心のあの子をイロハちゃんが気分転換に連れ出してくれたのよ?情報部としてたくさん手伝った共犯者の立ち位置だけど、私マコトちゃんに怒ってるんだから」
    「んぁぁぁああアアア!!!すまないイブキィィィいい!!!!」

    議長室の床をゴロゴロと転がり万魔殿一同に滅多に見せない号泣をしながらイブキの名を呼ぶマコト。
    長い付き合いからこれは本気で反省してると判断し、念のため催眠グッズを使いつつお小言を添えてから解放する。
    「イブキちゃんがグレて『ブッ◯されてえかぁ!』とか言い出したら嫌でしょ?だから帰ってきたらいーーーーーーーーっぱい構って甘やかしてあげること!」
    床下で丸まってカタツムリのような状態になっていたマコトは力無く「ああ…」と応えると、幽鬼のような足取りで議長席まで歩いて行き身体を椅子に沈めた。
    あれ?もしかして効いた!?
    サツキがついに開花したかに思われた自身の能力に慄いていると、マコトが天井を見つめながら口を開いた。

  • 122二次元好きの匿名さん25/03/20(木) 10:09:28

    「やはりアレはどう考えてもイブキだ」
    「……でもよく似た生徒なんて沢山いるでしょ?そもそもイブキちゃんはまだ子供で──」
    「いいや、イブキだ。」
    頑なにイブキ説を推してくるマコト。一体何が彼女をそこまで突き動かすのか?
    「証拠はあるの?」
    「逆になぜお前達は分からん。あの動画で言えば容姿もそうだが走り出す時の癖がそのままだ。」
    ……えぇ、そんなの見てるんだ
    「情報部から上がってくる断片情報もそうだ。前髪が煩わしい時の仕草はいつも見てるものだし振り返る仕草がいつも名前を呼んで振り返る時のものだ。角をいじる時の動きもどちらの手で触るかよく知ってる。ふと何かを思う時にイブキは顔を…」
    うんうん、わかった、わかったから。愛が重いわねぇ。
    「だが一番似てるのはな」
    ふとマコトの顔の変化に気付く。
    読み取れる感情は、『怒り』

    「あのイブキはずっと寂しい時や泣くのを我慢する時の顔をしていた。あれはイブキだ。私がそうさせまいといつも誓う絶対に見たくないイブキの顔だ。どういうことだ?あれがイブキなら何があった?なぜイブキがもう一人いる!?あの傷付いた姿はなんだ!?もしアレがイブキなら私は今それを放置して何をやっている!!?」

    吐き出し終わるとマコトは帽子を目の下まで下ろして顔を隠した。
    普段見せない姿にサツキは気押されたが、しかし同時になるほどそうかと理解する。
    「理由や事情は知らないけどあれがなぜか二人に増えたイブキちゃんだとして、あの子が泣きそうな顔をしてたから今すぐにでも駆け付けたかったってことね。」
    合点が行った。
    傲慢で不遜で権力者らしいポーズを欠かさない彼女だが陰謀や策略を巡らせるくせに本質的に考え方が短絡で直線的で大雑把なのだ。
    だから「イブキを守らねばならない」というただそれだけで走り出したのだろう。

    「……側で泣いてる本物のイブキちゃんを放っておいて」
    「うわああああああああ!!!ごめんイブキぃぃいいいいいいいいい!!!!!」
    再び号泣。

    とりあえずメンバーの多くは不在だが万魔殿は相変わらずの賑やかさだ。

  • 123二次元好きの匿名さん25/03/20(木) 10:10:39

    (前回のラスト諸々は次の書き込みで繋げる予定です。わかりにくくてごめんやで。)

  • 124二次元好きの匿名さん25/03/20(木) 10:13:26

    マコトの愛が重…重…まあ今回はええか
    台詞バグでワロタ

  • 125二次元好きの匿名さん25/03/20(木) 11:02:35

    グレる程度ならよかったけど、そのイブキ『ブッ◯されてえかぁ!』なんて言わず、実行後に淡々と〇したと報告するんだよ

  • 126二次元好きの匿名さん25/03/20(木) 11:30:18

    そういえば
    「角・尻尾・羽がすべてあるゲヘナ生徒はイブキのみ」ってのは
    ・そんなことはない(ストーリー含めて出てきていないだけでいなくはない)
    ・認識しているのは先生のみ
    ・認識自体は誰でもできるが誰もそこまで把握していない(風紀委員も万魔殿も生徒全員について把握するのは無理だろうし)
    のどれなんだろなぁ……

  • 127二次元好きの匿名さん25/03/20(木) 11:34:49

    1番か3番じゃない
    プレイヤー視点だとどれも普通は存在しない部位だから目につくけど、キヴォトス基準なら「意識的に見れば学区ごとの身体的特徴・傾向として上げられるけど、目を引くほどではないしいくつ満たしているかまじまじ眺めることでもない」ぐらいだと思っている(ワンピースで角が生えているくらいは流されがちな感じ)

  • 128二次元好きの匿名さん25/03/20(木) 12:03:42

    泣いても何も変わらない世界だったからね
    だから彼女は泣くのをやめて歩くようになったんだよね

    でもあのイブキがちゃんと1人で歩けるようになったんだよね…

  • 129二次元好きの匿名さん25/03/20(木) 12:11:19

    >>128

    歩かないと死ぬし、死んだらイブキを守って命を賭した先輩たちが無駄死になるからね……

  • 130二次元好きの匿名さん25/03/20(木) 12:58:45

    >>125

    「◯すのが一番妥当かと思われましたので◯しました

    問題がありましたら規律違反として処罰をお願いします」(凄く綺麗な敬礼)

  • 131二次元好きの匿名さん25/03/20(木) 17:23:09

    保守

  • 132二次元好きの匿名さん25/03/20(木) 18:51:05

    感想スレあったのか…
    結局あの後大きいイブキがどうなったのか気になってたから助かる

  • 133二次元好きの匿名さん25/03/20(木) 18:57:42

    >>129

    やっぱり風紀委員長「代行」を名乗ってるのも自分じゃ相応しくないと一番解っていながらも他に残ってるゲヘナ生が自分しかいないからなんだろうね……

    万魔殿所属でも生徒会長名乗らないのはホシノにとってのユメと同じく未来イブキにとってゲヘナ生徒会長はマコトしかいないからなんだろうし

  • 134二次元好きの匿名さん25/03/20(木) 20:41:41

    マコトと再会してるシーン想像するだけで涙出そう

  • 135二次元好きの匿名さん25/03/20(木) 23:24:25

    この世界では想像つかないような世界ではあるんだけど
    それでも他の生き残ってる人達と力を会わせて涙を堪えて頑張ってきたんだもんなぁ…

  • 136二次元好きの匿名さん25/03/21(金) 00:22:34

    涙とか堪えようと目を眇めて口を真一文字に締めたりすると、現在イブキでは泣き顔だけど未来イブキでは不機嫌そうな印象、になるとかだったりするのかねえ
    どちらも眉は下がっているので実は未来イブキも辛い感情の表情、みたいな見抜けるポイントがあると個人的な好み

  • 137二次元好きの匿名さん25/03/21(金) 05:12:07

    保守

  • 138二次元好きの匿名さん25/03/21(金) 10:08:33

    「それでまだ続けるの?」
    「…キシッ、答えはお前が一番よく分かってるだろうサツキ」
    問いに答えるマコトの力ない自嘲を横目に、サツキは来客対応用の長机の上に置かれた型落ちも甚だしいスタンドアローン環境下のラップトップにUSBを接続。これまでの状況を記したデータを開く。
    本来ならクラウド上で全ての情報を管理し情報部内で手早く共有をしたいが、キヴォトスにはゲヘナのセキュリティなど赤子の手を捻るように開錠するハッカーが幾人か居る。それ故に情報部ともなればその管理は慎重を極め、いざという時のために奪われ難い方法で資料を残すことにしているのだ。
    ただしこのやり方は「USBは容量少ないし古いPCはクラッシュ怖いし紙にしときましょうよ!?」と部下から口酸っぱく言われている。言われているがサツキ的になんかスパイっぽくてワクワクする手法の一つだ。飽きるまでしばらく続けたい。

    静かな部屋にPCが立ち上がる音が響き、ファイルを開くとここ数日情報部が生み出した惨憺たる調査結果がディスプレイに表示される。
    曰く、件の生徒をトリニティで見た、いいやミレニアムに逃げた、違う違うオデュッセイアで豪遊してた、◯日前に山海経で時計塔から落ちてるのを見た、なんかワイルドハントで美術学校にも落ちてた。そしてそれらを追い掛けてみたら全て空振りで無駄足だった。
    ……意味のわからない誤情報のオンパレードだ。これでは捜索が進む道理がない。

    「何なのかしらねこの偽情報の山。絶対なにか撹乱が行われてると思うんだけど…」
    攻めるも引くも出来ず、届きそうに思えて手を伸ばせば途端に消える。まるで霞んで見えない未来を掴もうとするかのような空虚さのみが残る今回の捜索。
    マコトはこれ見て今どうしたいのだろうか。
    正直分からない。しかしマコトの事だから『ここまで来てやめられるか!!』とか言って続けるんだろうと半ば諦めつつ視線を向ける。
    『分かってくれたか』というように彼女が微笑むのが見え、今のところ私1mmも分かんないんだけどなと申し訳なく思う。そして告げられるマコトの方針。

  • 139二次元好きの匿名さん25/03/21(金) 10:09:25

    「捜索をやめる」
    「うんそうよね、そういうと思ってた。じゃあ早速部下達に次の動員……を…」

    なに?やめる?嘘でしょマコトちゃん。
    「いくらあの動画のイブキが気になっても、現実のイブキを泣かせてしまっては何の意味もない。」
    どうやらそういう事らしかった。
    マコトの直感はあれをもう一人のイブキと認識するが、本物のイブキを放置してまで追い求める愚を今さら悟ったのだ。
    サツキの催眠が効いたというわけではないが、お説教は本気で効いたらしい。
    「すまなかったサツキ、今回皆には目的は達せられたと伝えて十分に労ってくれ。現実は無駄足ではあったが、そう思わせてしまう事は士気を下げるし為政者として最も恥ずべき事だからな。もちろんお前にも相応の償いはする。」
    議長席を立って窓に近寄るマコトの顔は何か憑き物が落ちたような晴れやかさだ。
    何だかんだ毎回振り回されはするが、為政者として間違いを素直に認め正しくあろうとするこの姿勢こそ万魔殿の皆がマコトを慕う理由とも言えた。
    過去に未練はあるがそれを振り払い次へ進む。指導者として得難い資質だ。
    「キキッ、今回得られた教訓をこのマコト様は無駄にはしないぞ?今回の獲物は逃したが次はこうはいかん。またヒナ達のミスが分かった時に備えてより強固な態勢を築くのだ!」
    ……まあ、マコトは前に進み過ぎるきらいがあるので今後も振り回されるのは決まっているけれど。

    サツキはとりあえずの落着を見たと判断し、部下に捜索の終了を告げようとスマホを手に取りメッセージを打ち込む。
    「あァ…?」
    そんな時だった。
    間の抜けたマコトの声が聞こえ顔を上げる。
    すると目の前に硬質な光の乱反射が飛び込んできた。
    「なにあれ…」

  • 140二次元好きの匿名さん25/03/21(金) 10:11:01

    ゲヘナの権威の象徴たる万魔殿議事堂議長室は最もよく下界の景色見下ろせる位置に設けられている。
    とある事情で一度破壊された議事堂が再建された際、さらに権威が出るようにと以前と同じ作りなれど僅かに高い位置にギリ予算が許す範囲でというマコトの要望でこの位置に設置された。
    その議長室の窓の外の先、窓に張り付いたマコトの向こうにいくつもの白い物体が編隊を組んで飛んで行くのが見える。
    あまりに現実味のない光景に絶句していると議長室の扉が勢いよく開く。
    「ちょ、ちょっちょっと見えてるアレ!?ここから見え…るねヨシッ!?風紀委員の本部なら絶対もっとよく見えるよね!?いいなぁ〜!!」
    入ってきた賑やかな声は万魔殿書記・元宮チアキである。窓に近寄りマコトの横に陣取るとカメラを構え何枚も写真を激写して行く。

    「な、何だあれは!?ゆーえふぉーか!?」
    「わあ…マコト先輩の口からその単語出たの意外…」
    チアキはそう言うとカメラを被写体から外し撮影した画像を表示して拡大して行く。
    「ドローンだよ。ほらこれ見える?学校の校章見えるでしょ?」
    「これは…ミレニアム?」

    ミレニアムサイエンススクール。
    一校のみでキヴォトス全体の科学技術水準の底上げを成し遂げてしまっているマンモス校であり三大校の一角。先に述べたサツキ率いる情報部が最も恐れるハッカー集団までをも要する叡智の牙城。
    ミレニアムを敵に回すということはキヴォトスに浸透する「科学技術そのもの」を敵に回すのと同義であり、たとえばチアキの手の中にあるカメラやサツキが今しがた驚きで地面に落として画面の割れたスマートフォンなども敵の攻撃手段となり得る獅子身中の虫だ。

    そんな勢力の有するドローン群がなぜかゲヘナ上空を飛んでいる。
    「先輩達は情報入ってないの?」
    「私は何も知らんぞ!?」
    「私もよ」
    明らかな越権行為。一体何が起こっている?
    全員が困惑からいま一度窓の外を見遣ったのとサツキのスマホに部下から緊急連絡が入ったのは同時だった


    アビドス高校がゲヘナ万魔殿に宣戦を布告。
    万魔殿の丹花イブキ、棗イロハ両名を人質として拘束中の模様。

  • 141二次元好きの匿名さん25/03/21(金) 12:04:19

    とんでもない事に

  • 142二次元好きの匿名さん25/03/21(金) 12:06:47

    ホシノが行方不明になったので残ったメンバーが「やっぱり侵攻作戦だ!」ってなっちゃったかな
    ただミレニアムのドローン編隊がゲヘナに飛ばされた意図が、誰のどういうものか分からないが

  • 143二次元好きの匿名さん25/03/21(金) 12:26:09

    谷底には絶望の未来から来たイブキ
    そして小鳥遊ホシノ
    奇しくも大切な人を失い変わってしまった者同士だ
    腹を割って話し合えば何かが起こるかもしれない
    おそらく未来イブキはホシノの過去を知らないだろうし

  • 144二次元好きの匿名さん25/03/21(金) 12:31:13

    現実さんがイブキのいる「最悪な未来」につながるように全力で辻褄合わせにきてる感

    頼むからバッドエンドは辞めてくれよ………

  • 145二次元好きの匿名さん25/03/21(金) 13:25:51

    ──────────────

    『おい、さっき上を飛んで行ったのアビドス高校のヘリじゃなかったか?』
    『えー?ヘリなんていた?見てなかったわ』
    『管制との交信を絶ってるから有視界頼りなんだぞ!?ちゃんと気を付けて……あッお前まさかわざとやったな!?』
    マイクを通してサキの怒声とモエの悦び混じりの荒い息遣いが聴こえる。
    どうやらモエの悪癖を刺激する何かがあったようだ。

    現在地はアビドス砂漠上空。
    眼下には果てしなく続く砂の海が広がり、その下に人の生み出した建築物の死骸が横たわっているのが見て取れる。
    はるか昔に放棄された廃ビル群の上に想像を絶する量の砂が山のように降り積り、間接的にだが人と自然の共同作品として人工の巨大な渓谷を形成している。凄まじい光景だ。
    『小隊単独で見つけるなんて絶対に無理でしたね』
    [ええ、賢明な判断だったと思うわ]
    ヘリから下界を見下ろすミヤコの横から聴こえる機械音声。ミヤコ達より少し歳上の印象を受けるその声は、完全自立AI搭載のドローンを自称するミレニアムより借り受けた品だった。
    『やー⭐︎今回は本当に協力してくれてありがとね!さっすがセイアちゃん!色んな人脈もってるよね〜』
    身体ごと割って入るミカにミヤコは少し迷惑そうな顔をしつつ、続くように礼を言う。
    [構わないわ。彼女…百合園セイアに私達は借りがあるもの]

    ミカが提案したのはティーパーティーホストの一人、百合園セイアを介してミレニアムのドローンを大量にレンタルする事だった。
    表向きはミレニアムの「砂漠でのドローン耐久実験」に協力するという体を取り、数百機のドローンをアビドス砂漠に導入してイブキの足跡を追う。
    当然ドローンはミレニアム製で一機につき人間10人分の働きをするような様々な能力を持つ超高性能型だ。
    窓の外を見るとRABBIT小隊のヘリに続いて飛ぶ大量の銀色の粒…ドローンの群が追い縋ってくる。
    それらは気まぐれに上下左右し、それによって生じた光の波がヘリの機体に打ち寄せキラキラと乱反射を起こしている。

  • 146二次元好きの匿名さん25/03/21(金) 13:26:44

    本当に凄い技術だとミヤコは驚きを通り越して感動を抱く。
    さらに先程から会話をするAIの知能の高さも舌を巻くものがある。最近の人工知能というのはここまで発達しているのか…
    百合園セイアなる人物をミヤコは名前でしか知らないが、こんな凄いものを簡単に提供してもらえるのだからよほど人徳のある人物であるに違いない。
    『お前の人徳とは雲泥の差だな参謀長』
    『本気で言ってるのサキ教官?セイアちゃんと友達の私も充分凄いんですけど?』
    [仲が良いのね]
    『はあ…』
    即席チームで組まれたメンバーは今や謎の連帯感が生まれ育まれこういう形となっている。
    無事に事が終わればこの関係も解消されるだろうが、今は少し寂しくも感じる。

    『で、でも凄い砂嵐来てますよね…ドローンちゃん達大丈夫でしょうか…』
    発せられたミユの問いに彼方を見やるとそれらしい砂煙の壁が立ち上がり始めている。
    強烈な砂嵐は通信の不調を引き起こし精密機器類に致命的な損傷を与える。
    ミレニアムのドローンが簡単にそうなるとは思えないが万が一ということもあるだろう。
    [一時的なものなら。もし二日三日と続くなら収まるまで待たないといけないわ]
    『そうならない事を祈りましょう。』
    『もうすぐ降下地点だよー』
    ミヤコが言うのと同時にモエの声が聞こえ、一同が作戦準備に入る。
    ヘリは砂漠に聳える一際高い廃ビルに向かいそこを小隊の拠点とする。

    きっとRABBIT5…イブキは近い所にいる。
    条件が揃った今しか事態を収めるタイミングは無い。

    機内で各々がヘリの辿り着くべき地点を見据えつつ、全員が直感的にそう感じていた。

  • 147二次元好きの匿名さん25/03/21(金) 13:30:53

    そして同時刻、ささやかながら致命的なボタンの掛け違いが最悪のタイミングでもってアビドス高校別館で発生する。

    アヤネから詳細の連絡が入りアビドス在校生一同がそれを迎えようと屋上へ移動した時、対策委員会の部屋に設置された固定電話に一本の電話が入った。
    当然ながらそれに応える者はいない筈だったが、受話器を取った人物がその場には居た。
    正確に言えば、ちょうどその奇跡的かつ絶望的なタイミングでその人物は“到着してしまった”。

    「……もしもし?」
    『アビドス高等学校の生徒会か?こちらはゲヘナ学園万魔殿だ。』
    受話器を取った人物はゲヘナの名を聞き得心する。“あの子”が言ってた通りだ。
    「そちらに棗イロハと丹花イブキは到着したか?搭乗した戦車と連絡が取れずに困っている。もしや何かトラブルが起こったのでは……」
    仔細はよく分からないが事情を飲み込んだ“彼女”は、低く落ち着いた美しい声でそれに返事を返す。
    「あなた達の目論見は“あの子”から聞いてる」
    『は?』
    受話器の向こうの困惑
    この女は何を言っているのだ?という当然の疑問だが、続く言葉でさらなる混乱が追い打ちをかける。
    「その二人は私達が人質にする。交渉材料として最適。なんで『こんな事を』始めたのか知らないけど全力で相手になる。」
    『お、おい何を言ってる!?さすがに笑えない!下手な冗談はやめろ!!それではまるで…』

    「ん、これは宣戦布告」

    一言告げると乱暴に受話器を置く。

  • 148二次元好きの匿名さん25/03/21(金) 13:31:35

    通話元を着信拒否対象に突っ込むと、シロコに呼ばれてアビドス高校へやって来た彼女───シロコ*テラーは目鼻の部分が空いたマスクを深く被り戦闘準備を整える。
    「アビドスは私が必ず守る」

    シロコから「ゲヘナがアビドスに攻め入ってくる」と聞いたシロコ*テラー。
    かつての恩師と仲間達が必死に守ろうとして守り切れず自らが壊してしまった大切な場所。
    そこを再び守る機会を与えられた以上、彼女はもう何も躊躇わない。
    シロコ*テラーは蒼穹の向こうに眠る恩師を想い、変えられない過去を変えられた過去とするため一歩を踏み出す。
    「安心して見ててね、先生」
    もしも空の向こうの彼女の恩師がそれを見たなら“ああ…やっちゃった……”と仮面に隠れた動かないはずの表情筋を盛大に顰めて天を仰いだだろうが、仰がれる身で地を歩む彼女に届く声も無かったろう。

    この日ゲヘナはイブキイロハ両名の救出のためアビドスへの出兵を決め、大兵力がアビドス砂漠に向かい進発する。
    砂嵐が砂漠を歩む者達の視界を奪い先行きの見えない未来のように覆い隠す。
    アビドスへ向かい集う人々に何が待ち受けるのか?
    それを予見できる者は誰も居なかった。

  • 149二次元好きの匿名さん25/03/21(金) 13:34:07

    ………コレも私のミスですか?

  • 150二次元好きの匿名さん25/03/21(金) 13:38:27

    ――やらかしと後悔と勘違いを動力に物語は転がり落ちる
    さぁさぁ頑張れ頑張れ! 軟着陸に失敗したら終わった世界が終着点だぞ?

  • 151二次元好きの匿名さん25/03/21(金) 15:14:42

    あの子ってのはやっぱりイブキのことなんかな?
    未来で起きた「何か」が最終編後ならクロコの存在も知ってる可能性があるわけで、それなら基本単独行動してるクロコへの接触が1番しやすいか

  • 152二次元好きの匿名さん25/03/21(金) 15:31:08

    まあ現実でも戦争は些細な勘違いやきっかけで勃発してたからなぁ……
    大丈夫? これクロコ自分の勘違いで戦争起こしたって解ったら今度こそ自殺しかねないんじゃ?

  • 153二次元好きの匿名さん25/03/21(金) 15:42:13

    シロコ同士の致命的な情報伝達ミス……

  • 154二次元好きの匿名さん25/03/21(金) 18:30:33

    >>151

    弱い方のシロコがイロハ・イブキの来訪前に『ゲヘナがアビドスに侵攻する』とクロコに伝えて、その情報が更新されないまま全員出払ったアビドス校舎でクロコが電話を受けてしまった、という流れかと


    ……トラウマに触れるような内容だから微妙に怒りにくいなあ!!

  • 155二次元好きの匿名さん25/03/21(金) 19:28:41

    そもそもみんなそれぞれの考えがあって独自行動してるような状態な上に偽情報まで飛び交うくらいに情報が錯綜してるから
    不審が生まれる土壌そのものはみんなで作ってしまってるからな…

  • 156二次元好きの匿名さん25/03/21(金) 23:06:07

    先生ー!早く間を取り持ってくれー!

  • 157二次元好きの匿名さん25/03/21(金) 23:09:13

    オゥ…

  • 158二次元好きの匿名さん25/03/22(土) 01:09:26

    保守

  • 159二次元好きの匿名さん25/03/22(土) 09:10:08

    残酷な夢を見ていた。

    あの日の出来事。全てが終わってしまった事を受け入れられずそれに関わった人々の顔と声だけを残して記憶に蓋をした日。
    キヴォトスに何が起こったのかは参謀長の授業で理解しているし、自慢ではなく記憶力と要領はいいのでその内容を一字一句諳んじることがイブキにはできる。
    しかし自身の体験だけはどうしても詳細を思い出せない。
    最初から最後まで全部訳が分からず始まり終わってイブキが着の身着のままで世界に放り出されたあの日。「テクスチャ」が書き変わって固定されてしまったあの日。
    だから目覚めたとしてもイブキは今見ている夢の前半を一つも覚えていられない。覚えていられるのはこうして何もない廃校舎で足を抱えて座っている自分と……

    聞き覚えのある足音に顔を上げる。
    いつものように目の前に顔のない、顔のあるべき場所に真っ黒な闇を湛えた小さいイブキが立っている。

  • 160二次元好きの匿名さん25/03/22(土) 09:10:56

    『まだ生きてたんだ。しぶといね。』
    黙れ
    『でもそろそろかな。居なくなってくれると助かるんだけど』
    黙れ、化け物
    『あなた自身に化け物は酷いんじゃないかな?』

    毎日毎日、何年も飽きずに夢に出てくる小さい自分に辟易する。
    起きてもこいつとの会話だけやけにはっきり覚えてる。サキ教官に鍛えられて生活リズムが反固定化されてからも気付けば夢に出てくる自分。
    もう私は強くなったし泣かなくなったし人間を簡単に解体する事もできるようになった。昔の弱くて愚かで馬鹿でノロマで吐き気がするような甘ちゃんで踏み潰したくなるような、そんなクソガキの自分とは違う。
    だからもう勘弁しろ。ここはもうお前の出てくる場所じゃない。

    「(『違わないよ】〕》
    ……なに?
    真っ黒な顔のイブキが答える。
    (【{あなたは弱いままのイブキだよ』》」
    滲み出す風景。目覚めの兆候。
    小さい自分から夥しい闇が二人のイブキの足元を覆い隠し次第に身体の上まで迫ってくる。
    「『“《忘れちゃダメだからねイブキ」】)》
    何をだ。お前はまた逃げるのか?お前はまた───

    “忘れないでイブキ”

    闇に沈み夢から浮かび上がる直前に聴こえたのは、かつてイブキを見守ってくれた優しく弱くとても強い大人の声だった。

  • 161二次元好きの匿名さん25/03/22(土) 16:48:06

    目が覚めて最初に見えたのは炎。

    ……焚き火だろうか?
    近くにはバラバラになった木製椅子とぐしゃぐしゃに丸められたコピー紙の残骸が転がっており、それらを使って焚き火を起こしているのだと推察出来る。
    火元は…ああそうか弾丸をバラして火薬を取り出せば…
    次第に明瞭さを取り戻す五感と意識。
    「…え…ここ……、…ぁ……!!!」
    刹那、警戒心が猛烈なアラートをがなり立て「動け!」と脳から身体に命令を吐き出す。
    力を入れて起き上がろうとした途端に今度は脳の命令に反旗を翻した身体中が悲鳴を上げ、彼女──丹花イブキは力なく倒れ伏す。
    「ぅ゛ぎゅむッ!?」
    顔から行った。
    衝撃で肺から呼気がせり上がり気管を通り喉と声帯を震わすと、潰れたカエルのような汚い声がイブキの口から飛び出した。
    鍛え抜かれ戦士となった後に僅かに残った乙女心と呼ぶべき何かが「他者には絶対に聞かれたくない」と判断を下すような余韻を残す切ない声だった。

    「うへぇ、派手にやったね?大丈夫そ?」

    そんな心を無遠慮に突き破る幼い少女の声。
    否。幼く見えるがイブキより遥かに歳上で、今は同い年で、自分が先程のような声を上げる遠因になった小さな巨人。
    「……相変わらずなんで傷一つ無いんですか小鳥遊さん」
    「やっぱり面識あるの?記憶にないなぁ…。」
    彼女はそう言うと倒れたイブキに歩み寄り手を伸ばす。
    「罪作りなおじさんでごめんね?」

    小鳥遊ホシノ。
    イブキが未来世界で恐怖しつつも尊敬できる大人の一人。
    その過去の姿がそこにはあった。

  • 162二次元好きの匿名さん25/03/22(土) 17:38:30

    イブキにとっては何も出来なかった昔と変わってない部分がある事を許せなくて
    人を守る事も頃す事も簡単に出来るくらいに強く変われてるのにそれでも落ち着けないんだろうな…

  • 163二次元好きの匿名さん25/03/22(土) 17:52:13

    イブキパートだァァァァァァァァァ

  • 164二次元好きの匿名さん25/03/22(土) 20:18:04

    >>162

    まあ未来イブキにとっては死ぬ気でやっと守れる力や戦う力を手に入れたのに既に大切な物が全てこぼれ落ちてる状態だしなぁ……

    そしてこれでも未来サキや未来ホシノには全く歯が立たないという

  • 165二次元好きの匿名さん25/03/23(日) 03:03:46

  • 166二次元好きの匿名さん25/03/23(日) 09:36:21

    アビドス砂漠、旧アビドス校区内ビル群跡。
    アビドスの最盛期に海抜の低い土地に建設されたビル群は、度重なる砂嵐と地震などによる地盤沈下によって今は砂漠に埋もれその姿を地上に認めることは出来ない。
    何処に何が埋まっているのかも古代遺跡を探すような手間と時間が掛かり、繁栄華やかなりしアビドスを知る者が見たとしてもそこはただの砂漠でしかあり得ないだろう。

    ただし例外はある。

    たとえば砂に埋もれようとその中から突き出した高層ビル。山や大きな河川のあった場所に出来るうっすらとした砂の起伏。
    あるいはビルの上から膨大な砂が積もり、その隙間が擬似的な渓谷になった砂漠に開いた巨大な大口。

    自身が立っているそんな谷底に転がる大破炎上した車を見て、どうやって生き延びたのだとイブキは心底疑問に思う。
    ホシノに聞くと、イブキのよく知る表面に笑顔を貼り付けただけの機械的で血の通っていない声音のホシノとはまるで違いふにゃっとした微笑みを浮かべて「ナイショ」と口元に人差し指を立てるばかりだ。
    あの小さい身体で自身とイブキをどうやって救ったのか。そんな術が本当にあるのか。もし元の世界に帰れたなら聞いてみるのもいいだろう。
    「とりあえず何にしてもここから出ないとな…」
    呟くと廃ビルの中から集めた物を抱えて外に出る。
    手元には焚き火に使える木製製品、火種になるコピー紙や冊子の類、ナイフやペンチなど何かに使えそうな工具類。
    頭上には砂に埋もれ岩塊と化し谷底を形成するに至ったビルとビル。そしてその隙間から覗く透き通った高く遠く青い空。
    この谷間から抜けなければ二人は死ぬ。
    2日分の水と食料はホシノが車内から持ち出してくれていたので一応の猶予がある。だがそれが尽きればあとは何十時間耐えれるか。
    ……しかし車ごと落ちてから彼女が何をどうやったのか本当に分からない。小鳥遊ホシノという時代を隔絶する超人に改めて畏怖を抱くイブキである。

  • 167二次元好きの匿名さん25/03/23(日) 09:37:02

    「おーい、ご飯できたよー」
    そんな思考に浸っていると件の人物から声が掛かる。
    近寄るとホシノは焚き火に鍋をかけ、その中でイブキの持ち込んだコーンスープを煮込んでいる。
    「鍋なんてあったんだ。私はいいけど錆とか大丈夫ですか?」
    「うん、これからできるかもねぇ。」
    「…?」
    何か引っ掛かる答えだがとりあえずは流しておく。
    ホシノの対面に座り込みスープを受け取ると、膨らんだ湯気が鼻腔をくすぐる。
    少し皿と距離を置いて手の平を動かし二、三度仰いで再び匂いを確かめる。
    スープを指先で数回舐め、しばらくしてから匙を入れて腹に入れる。
    「…美味しい。」
    「そうだよねえ〜こういう時のご飯は生きてるって感じがするよ。」
    ホシノが千切って投げたパンを受け取ると浸して口に入れる。買い込んだ食糧はろくに確認してはいなかったが、こんな良いパンが入っていたのか。当たりの商人だったようだ。
    ブラックマーケットは無法を絵に描いたような危険な場所だが、だからこそ金品に見合う商品を用意しなければ無法地帯ゆえの手酷いしっぺ返しが来る。買う側にも審美眼が必要になるが、バレた場合の売った側の負債の重さは秤が壊れるほどの重量を持つのだ。
    たとえ粗悪品を用意して金だけ頂戴して逃げ出しても地の果てまで追われ身体中の体毛を引き抜き毟り取られるまで報復される。
    イブキの時代にも「目利きには良い商品を、悪い商品には良いカモを」という不文律は存在したが、同時に悪どい輩も多かったし報復はもっと過激なものだった。イブキ自身も何人かの首を刎ねた記憶がある。
    いつの時代も見えない道を歩く商人達との付き合い方は難しいが、噛み締めるパンの味を見るにこの時代はその質がもっと良いように思われた。

  • 168二次元好きの匿名さん25/03/23(日) 14:02:51

    ブラックマーケットの商品、単純に全体的な品質が未来より上なのもありそう

    そういえば(ケチをつけるとかではないけど)未来イブキはブラックマーケットでの買い物をどう支払ったのだろうか
    適当な日雇い仕事を行ったか、未来でもまだクレジットが息をしていて手持ちにあったのか

  • 169二次元好きの匿名さん25/03/23(日) 20:56:25

    イブキの強さなら適当な賞金首捕まえられそうとは思ったけど、よく考えたら今は本人が賞金首みたいなもんだった

  • 170二次元好きの匿名さん25/03/24(月) 00:10:48

    『カード』
    自らの責任を理解し、全うする事のできる大人にのみ行使が許されるカード
    かつての持ち主は未来世界ではその消息を完全に経ってしまったが、何の因果かイブキの元に風が運んできた
    カードには兜を被った人物が描かれている
    ぱっと見『あの人』と似ている気がするがよく見るとそんな事は全くない
    イブキたちが辛い状況にある時はどこか悲しげな表情をしているように見える気がするし、たまに何か言いたげに淡く光ってるように見える気がする事もある
    こういうカードは本人しか使えないものであるがゆえに、残された者たちにはただのプラスチックの板っ切れでしかない
    しかしこれは同時に「形見」でもある
    教官と参謀長は外に出て数多の危険に晒されるイブキにこれを託した
    何かあった時に『あの人』が守ってくれるように、そう願いを込めて……

  • 171二次元好きの匿名さん25/03/24(月) 07:50:00

    先生…

  • 172名無しの先生25/03/24(月) 08:17:15

    17歳イブキ時空のサキとミカが何かの拍子に本編時空のキヴォトスに現れた時の、ナギちゃんとミヤコ達の反応が気になる

  • 173二次元好きの匿名さん25/03/24(月) 08:23:20

    >>172

    その2人が転移した場合、未来世界のキャンプがかなり大変なことになりそう

  • 174二次元好きの匿名さん25/03/24(月) 09:06:36

    いっそ2人が転移した10分後の時間に帰れば良いのでは?
    3人とも無事に送り返すなら多少の事は問題無いと思います

  • 175二次元好きの匿名さん25/03/24(月) 10:01:45

    >>167

    ホシノとイブキの食事は無言のうちに進んだ。

    焚き火の火が爆ぜる音、スープを啜りパンを咀嚼し喉の奥へと飲み込む音。

    そんな本来小さい音がまるで大音響に聴こえるような砂漠の静寂。

    小鳥遊ホシノと食事を共にした事など数えるほどしかない。食事中に会話をするということも無かった。未来のホシノは口から出る言葉の全てが空虚で機械的で散文的で、「アビドスの仲間以外は全て信用しないし君は客人だけど敵なのは変わらない」という姿勢が露骨に過ぎて食事時に何かを話そうという気が一切起きなかった。

    だからそのように倣ったが、視線はどうしても『今』のホシノに向かう。

    純粋に警戒心があったというのもあるが、ああなる前のホシノというのをじっくり見ておきたかった。


    「そんなにおじさんが気になるの〜?困ったなぁ、そんなにセクシーで魅力的だった?」

    「自分で言うんですかそれ」

    そんな視線に気付いたホシノが照れちゃったという風に明るく話し出す。やはり未来の彼女とは全然違う。

    その中でおじさん呼びだけが声音以外変わらない。

    「警戒心です。道連れにしようとした敵を助けて、その上にこやかに喋ろうとしてる変わり者に対しての。」

    「…たしかに追いかけ回しはしたけど、おじさんは敵っていう認識とはちょっと違うかなぁ」

    「違いません。私は侵入者であなたは追跡者。今は一時的にこうしているけど警戒はするべきです」

    先日の小隊との件もあるので極力突き放すような態度を取る。下手な交流はお互いの不和を引き起こし得る。

  • 176二次元好きの匿名さん25/03/24(月) 10:05:37

    ホシノは首を傾げると、何故か妙に納得した顔で頷き一口スープを啜る。その顔には穏やかな水面のような笑顔が揺蕩っている。
    「そういえば特殊部隊の子だったっけ。色々大変なんだねえ。」
    「……」
    的外れな感慨をつぶやくホシノ。それを聞き流し無言で一口スープを啜る。
    「でもさ、折角こんな所で二人きりなんだから話の一つ二つでもしないと気が紛れないでしょ。修学旅行先で同じ部屋になったと思ってさ。」
    「……修学旅行」
    「そ。友達やクラス人と普段あまり話さない事をお互い話して、こういう絶景を見てワイワイキャーキャー賑やかして色んなことを知ったりして。…まあおじさんはそういうのやってないんだけど」
    そう言うと彼女はうへへと恥ずかしそうに頬を掻く

    修学旅行。
    日常から離れ遠くへ行き歴史や文化を学び、そしてまた自身の暮らす場を振り返る時間。
    小さかった頃に百鬼夜行に行った記憶が蘇ってくる。あの忍者達はどうしているだろうか。
    「だから楽しくとは言わないけどお互いを知るためトークしようトーク。恋バナでもする?」
    「こ…ッ!し、しません」

  • 177二次元好きの匿名さん25/03/24(月) 10:06:14

    調子が狂う。
    なんだこの人は。なんでこんなに話しかけてくる。
    「ほ、放っておいて下さい。ここを抜ける協力はします。だけど慣れ合う気はないです。」
    「ありゃりゃ、そうなの?」
    残念そうな声に膨らむ罪罪悪感。振り払うように食事の片付けを始める。
    先ほどまで恋バナだなんだと言っていたホシノも「おぉ早いね〜」などと笑い、続くように片付けを始めてあっという間に焚き火の周りから他の物が消えてなくなる。
    手際がいい。知っても詮ない事だが、やはり今のこの人も野営に慣れているのだろうか。
    「じゃあ寝よっか。体力を使いすぎるのも嫌だしね。」
    「はい。」
    各々寝転びやすい場所を選び身体を横たえる。
    「修学旅行はこういう時間が一番楽しいんだろうね〜」
    ……まだ言ってる
    「そうですか」
    そっけなく返す。そういうものなのだろうか、よく分からない。イブキが百鬼夜行に行った時は、夜の時間は夢の世界へと続く階だったから。

    忘れないでねイブキ

    眠りに落ちる中、誰のものでもない優しく懐かしい声が聴こえた気がした

  • 178二次元好きの匿名さん25/03/24(月) 16:22:21

    >>173

    もう開き直って生存したネームドキャラを全員呼べば良いのでは?

    細かい問題は帰ってから考えれば良し!

  • 179二次元好きの匿名さん25/03/24(月) 19:50:51

    未来のホシノ、交渉の時も戦闘の時もニコニコしてそうだね、怖いね

  • 180二次元好きの匿名さん25/03/24(月) 20:23:23

    このレスは削除されています

  • 181二次元好きの匿名さん25/03/24(月) 23:42:26

    「虎丸」
    かつてゲヘナの万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)に籍を置いていた重戦車
    ゲヘナ学園瓦解後の今では子ウサギ公園のバリケードの奥に鎮座している
    不測の事態に備えてサキ教官や日々の「おつとめ」で来た子どもたちによって定期的に整備されているおかげで燃料を入れれば余裕で駆動するとの事だが、なけなしの燃料を注ぎ込むにはあまりにも大食らいが過ぎるので固定砲台としての運用が関の山だろう
    威容を誇る虎丸の巨体の陰には、「あの日」自らも重傷の身でありながら1人の少女を守り、単騎でゲヘナから逃げ延びて来た「戦車長」の簡素な墓碑が佇んでいる
    それに刻まれた歪な墓誌名は、まだ「教官」になる前の彼女が彫った4つ目の墓誌名であった
    そしてこの墓を掘り、姉のように慕った先輩を送る事、それが「少女」にとっての子ウサギ公園での最初の「おつとめ」であった

  • 182二次元好きの匿名さん25/03/25(火) 00:35:52

    このレスは削除されています

  • 183二次元好きの匿名さん25/03/25(火) 08:38:15

  • 184二次元好きの匿名さん25/03/25(火) 09:13:01

    空は曇天。
    地平の向こうまで低く分厚い雲が垂れ込め、向かう先に大雨が降っている事を白く霞んだ雨の幕が示している。
    「バイクでの仕事じゃなくてよかった…」
    そんな事を呟く運転手…伊草ハルカを乗せトラックは速度を変えずひた走る。
    幌の中には大量の補充物資と医療器具。
    先日ハルカの所属するベースキャンプの長、小鳥遊ホシノが旧シラトリ区のキャンプに届けるよう便利屋である彼女に言付けたものだった。
    「いいのかなぁ…医療器具だけじゃなくてこんな…」
    補充物資とはつまり武器と弾薬。
    先日戦闘員が欠員したシラトリ区のキャンプでは必然的に戦力が減ってしまった。
    今あそこにいる戦力は旧RABBIT小隊の空井サキと旧トリニティティーパーティーの聖園ミカ。そしてスペアの銃器を使い回している他十数人の元生徒と市民と少し戦闘訓練を齧った子供達。
    戦力としてあまりに心許ない。
    だからホシノは食料をぼったくった分追加で武器弾薬をハルカに持たせて送り出した。
    ハルカはいつも気を張って周りを警戒しているホシノがあまり好きではない。一緒に居ると息が詰まるし近寄り難いしアビドス高校の人達としか仲良くしないし。
    けどなんだかんだ人のために戦い傷付き自身の事は後回しで動く姿は、不本意だがハルカが最も尊敬するあの人の姿が重なって見える時がある。
    胸元に下げたペンダントを優しく握り込み、今はもう何処にもいない仲間達を思い目を閉じる。
    「私は上手くやれているんでしょうか…アル様…」

    当然だが余所見で運転は上手く出来ない。

    ハルカのトラックはとっくの昔に放棄された信号機に低速で突っ込んだ。
    遥かな昔に「俺の指示に従って進め」と人々に指図していた信号機は長い時を経てついに待たされに待たされた「ハルカの車にぶつかる」という役目を果たし生涯を終える。

  • 185二次元好きの匿名さん25/03/25(火) 09:14:17

    「も…もうダメだ…おしまいだぁ…!」
    信号機が天に召されて数分。
    運転席から転がり落ちたハルカはタイヤの横でのたうちまわり自身のヘイローのある位置を思うままに掻きむしり空を切った。
    だがしばらくして自身の命が繋がってる事を確認すると、安堵し、ついで心配が襲って来てそれを口にする。
    「これ…もし動かせなかったら絶対ホシノさんに転がされるし絶対叱られる……どうせなら今ので逝きたかった……」
    弱気な言葉。しかし勿論彼女は絶対に勝手に逝けない身の上を自分に課している。逝くならいつでも逝けるが今はキャンプに運ぶ物資の安否の方が大事である。
    かつて自身の存在を否定し、しかし今は生き残るため、誰かのためと強いバイタリティで希死念慮をコーティングした戦士「伊草ハルカ」がそこには居た。

    「荷物大丈夫かなぁ…」
    そんな彼女は車体の後ろに回り荷物を確かめる。
    荷台の中は箱がズレたりしていたが外見上は僅かに荒れた程度の状態だった。悪路を予想して頑丈に梱包したのが功を奏したらしい。
    しかし中身はどうなっている事か……
    ダメだったらこの命でお詫びしようと思いつつ、荷台から降りて何気なく砂漠の方角を見る。
    「え」

    砂嵐がまるで意思を持った生物であるかのようにうねり、その中に何かが見える。
    蜃気楼?あるいは幻覚?
    砂漠を進む人々。
    目を凝らすとそれはかつてゲヘナ万魔殿で用いられていた制服に酷似している。
    それが隊列を組み砂漠へ向かう。

    何かは分からない。しかし自分が有り得ないおかしな物を見ているのは分かる。
    しばらくそれ見ていたがやがて砂嵐はいつもの不規則な動きに戻り、ハルカの見た幻は夢のように掻き消えた。

  • 186二次元好きの匿名さん25/03/25(火) 10:30:46

    わぁ……まさか便利屋すらハルカ一人か……
    あの四人は何だかんだでどんな世界線でも元気にやってるもんだとばかり
    しかしこの未来ハルカは未来イブキとの面識はないのかしらん?

  • 187二次元好きの匿名さん25/03/25(火) 10:47:39

    便利屋の中だとハルカが1番殿で他のメンバーが逃げる時間を稼いで死ぬか、それが許されずに1人また1人とやられていく中で生き恥を晒すかしてるイメージがある。
    尊敬してるアル様が守った命だからこそ今までみたいに簡単に捨てようと出来ないんだよね

  • 188二次元好きの匿名さん25/03/25(火) 17:49:14

    保守

  • 189二次元好きの匿名さん25/03/25(火) 22:01:50

    なんか未来世界とどんどん近づきかかっていて不穏ですよ……!

  • 190二次元好きの匿名さん25/03/26(水) 01:39:05

    何気にハルカはアビドスのキャンプ所属と明言されてるね
    アビドスはキャンプの規模は大きくなさそうだけど立地やホシノの存在で外的な危険は少なそうなイメージ

  • 191二次元好きの匿名さん25/03/26(水) 08:15:02

    >>172

    未来イブキがマコトをかばって重症を負った直後にでも呼びませんか?

  • 192二次元好きの匿名さん25/03/26(水) 10:17:44

    教室内に並べられた画用紙にはクレヨンや色鉛筆で色鮮やかな絵が描かれ、部屋の一隅に見る者の心を穏やかにする華やかな色を添えている。
    「これが私……ま、まあ良いんじゃない?」
    その一枚を手に取って猫耳の少女、アビドス高校一年生・黒見セリカは嬉しさを誤魔化すように言う。
    それに対するのは同じくアビドス高校の在校生であり生徒会長を抜いた四名。
    「セリカちゃ〜ん?こういう時は素直に感想を言わなきゃダメですよ?」
    「ん、セリカはすごく照れてる」
    「顔真っ赤ですねセリカちゃん」
    めっ!と子供を叱るような口調で窘めたのはアビドス高校二年生・十六夜ノノミ。それに続いてセリカの心情を言い当てたのは同じく二年で狼耳を持つ砂狼シロコ。最後に彼女の表情を指摘したのはセリカの同級である奥空アヤネであった。
    彼女達からの指摘に言葉にならない叫びを上げるセリカだったが、本来のセリカならばここで「別に嬉しくないわよ!」などと照れ隠しに憎まれ口の一つでも叩くものだが、今はそういうわけにはいかない。
    まさか自身を描いてくれた人物…しかも幼い子供を前にしてそのような事を口が裂けても言えるわけもなく、言葉を発さず手足をバタバタと動かすに留めた。

  • 193二次元好きの匿名さん25/03/26(水) 10:18:54

    「これがメガネのおねえちゃん!」
    今はクレヨンを片手に絵を描く少女、丹花イブキはアヤネに描いた絵を渡す。
    途端にアヤネは相合を崩し嬉しそうに絵を抱きしめると感謝の言葉をイブキに告げる
    「ありがとうイブキちゃん!大事にするね」
    「えへへ〜」
    和気藹々という言葉がこれ以上似つかわしい場所もない。
    シロコが『次は自分も描いてほしい』と瞳を輝かせながらジェスチャーで示し、ノノミがあらあらと微笑む。
    それを見つつのんびりと出されたお茶を啜るのは棗イロハである。
    「目的完全にどっか行っちゃいましたね…」
    着いた途端に第一声で元気な挨拶をしたイブキをアビドス高校の面々は大いに気に入り受け入れ、『名誉後輩』というような称号を与えるに至った。
    普通はもう少し警戒しそうなものだとイロハは思うがイブキの効果は絶大だった。さすがは関わる人全てを魅了し愛されるゲヘナのアイドル。
    突然「お姉ちゃん達を描きたい!」と言い出したイブキに付き合って和気藹々の空気を生み出し骨抜きにしてしまった。
    現地に着いて改めてアビドスに捜索能力が乏しいのは理解できた。とりあえず協力してくれるという事は確約したがはなから期待はしていない。
    「イブキの愛らしさを喧伝出来ただけでも満足すべきですかね」
    そういう事にした。
    もしもいつかゲヘナに事があればイブキを思って彼女達も参戦してくれるだろう。数は少ないが少数精鋭と聞くし、今回のような捜索ではなく戦闘なら大きな助けになるはずだ。

  • 194二次元好きの匿名さん25/03/26(水) 10:21:40

    「そういえば捜索の件なんですが…」
    発せられたのは十六夜ノノミの声。話の先を理解しつつ先を促す。
    「私達だけでは支援に限界があります。」
    「ですよね…」
    当然の帰結だろう。向こうとしては突然やって来たマンモス校が慇懃無礼に『協力しろ』と言って来ているようなものなのだ。
    やって来た使者は子供と護衛とやる気のない不良生徒の4名。
    交渉の余地ありと見られるに余りある。
    「分かりました、こちらとしては…」
    「ですので」
    「ん?」
    なんだ?アビドス観光コースでも紹介してくれるのだろうか。

    「ハイランダー鉄道学園とセイント・ネフティスに協力を要請します」

    イブキを起点に始まった一連の嵐に、また一つ大きな砂嵐が合流した瞬間だった。

  • 195二次元好きの匿名さん25/03/26(水) 12:03:05

    ハイランダーまで関わってきたら……絵面のロリ成分が高まりすぎちまうーッ

  • 196二次元好きの匿名さん25/03/26(水) 15:51:01

    そろそろ次スレかな

  • 197二次元好きの匿名さん25/03/26(水) 21:10:08

    クロコはさっさと状況を共有しろッ!間に合わなくなっても知らんぞーーーっ!!!

  • 198二次元好きの匿名さん25/03/26(水) 21:59:11

    >>185

    未来との境界が曖昧になってきてるのかな?

    現場が混乱してる最中にいずれかもしくは両方の一部が未来に転移、消息を絶って泥沼化しそう…

  • 199二次元好きの匿名さん25/03/27(木) 00:16:16

    『繋がった』
    彼女は確信する。
    二度三度と繰り返すが間違いなく繋がった。
    “あの人”を取りこぼしてしまった時に抱いた失望と恐怖と焦燥感は、彼女の僅かに残った精神を削り苛み破壊する一歩手前まで迫っていた。
    しかし、次こそたしかに繋がった。

    アビドス砂漠に開いた「窓」を繰り返し開閉する。
    繋がったとはいえ慎重に。
    決して双方を掻き乱さないように慎重に…

    幸いにして幾度となく繰り返したものの、二点は交わる事なく境を侵すことなく並存している。こちらが下手なことをしない限り二点がこれ以上交わる事はない。
    これで全ての準備が整った。
    『待ってて』
    境界に触れると、彼女の指が「あちら」に突き抜けて次第に身体ごと沈んで行く。
    それはまるで先の見えない雨のベールを突き進むような感覚。まだ見ぬ未来へ進んで行くような高揚感。
    『今行くから』
    彼女はさらに進む。取りこぼした希望を探して手を伸ばす。


    『忘れないで◼️◼️◼️◼️』

    ─────────────────

  • 200二次元好きの匿名さん25/03/27(木) 01:01:27

オススメ

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