- 1◆.WdEZ219IoI025/03/12(水) 22:45:54
「トレーナーさーん。ちょっとソファーでごろごろさせてもらってもいいですか~?」
「いいけど」
「ちょっと棚のお菓子ももらってもいいですか~?」
「……いいけど」
ある昼下がり、トレーナー室にやってきたヒシミラクルの開口一番だらけ宣言。
とはいえ、たまさかの休養日くらいはトレーナー室でも好きにだらけさせてやろうという情けはあった。
錦の御旗を得た彼女は早速お菓子を取り出し、クッションを集め、ソファーの上にごろごろし始める。
右手にお菓子、左手にはスマホの動画。ご機嫌な鼻歌も始まった。フルアーマーなOFFミラクルの完成だ。
別にONになったからといって特別パリっとするわけではないが。
彼女は常識的であるからなんだかんだ度を越した事はしないし、今の事務仕事の邪魔をするような子でもない。
そのうち飽きるなり何なりするんじゃないかと思い、しばらく仕事の方に集中することにした。 - 2◆.WdEZ219IoI025/03/12(水) 22:46:16
◇◇◇
ひとつ作業に区切りが付いたので息を入れるか、と思うと妙に静かなことに気づく。
そういえば、動画の音も鼻歌も聞こえない。
視線を巡らせると、ヒシミラクルはソファーでそのまま昼寝に移行していた。
野生を忘れた姿だ。いやウマ娘に野生も何もないが、いつもの生存本能はどこにいったのか?
せめていびきをかいてないくらいが今のところ、唯一の救いであった。情けのおかわりで毛布はかけておく。
バオバブの木のごとくどっしりした図太さは彼女の美点ではあるが、この様はふつ~のウマ娘として正直どうなんだ。
半ば呆れながら眺めていると気づく。
今のヒシミラクルは、恐ろしいまでの癒しのオーラを纏っているように見える。
普段どれだけの癒しを摂取しているのか、それともヒシミラクルに潜む怪物的才能によるものなのか、あるいは両方か。
そういうウマ娘とは見聞きしていたし大物だとは思っていた。
ずっと見ていたはずなのに、今になってその巨大さにようやく気づかされるとは。
これほどまでのものか。地動説のような衝撃だ。
思わず、拝みかける。 - 3◆.WdEZ219IoI025/03/12(水) 22:46:32
ふと、昼寝中のヒシミラクルがおもむろに首をもたげた。
寝ぼけまなこで右、左と周りを見たかと思うと、頭を戻して昼寝に戻った。起きたわけではないようだ。
いつだったか動画で見た、昼寝中のアザラシを思い出す。まったく同じ動きをしていた事に少し笑いがこみ上げる。
毛布の色合いが彼女の髪色に近いものだったばかりに、上下の一体感が余計にアザラシを彷彿とさせた。
たしかあれは周囲を警戒する動きだったはず。少し野生を取り戻したのかもしれない。
そうだ、機会があったら水族館に連れていってやろうか。
とりとめのない思考がいくつも頭の中を流れていく。
思っていたひと休みとは違っていたが、不思議と頭の中が随分すっきりした気がした。
さて、もう少しこのかわいい愛バのために働くとしようか。 - 4◆.WdEZ219IoI025/03/12(水) 22:46:48
◇◇◇
「…………ふがっ!はっ!今何時ですかトレーナーさん!!」
「あと30分くらいで寮の食堂閉まるよ」
「わー!わー!!なんで起こしてくれなかったんですか~!!」
日も沈んでしばらくした頃に起きたヒシミラクルは、言葉の慌てぶりに似合わないのそのそとした移動を始めた。
まあ出だしがズブいのはいつものこと、動き出しさえすれば徐々に加速してなんとか間に合わせるだろう。
一応、後で同室のダンツフレームにでも大丈夫だったか聞き込みしておこうか。
少しして、ようやくバタバタとした動きくらいにまで速度を増したヒシミラクルが危なっかしく扉を閉める音がした。 - 5◆.WdEZ219IoI025/03/12(水) 22:46:59
おわり
なんて寝相……してやがる…… ミラ子ォ! - 6二次元好きの匿名さん25/03/12(水) 22:47:38
たまさかって滅多にない偶然って意味であって予定されてる休養日には使わないのでは?
- 7◆.WdEZ219IoI025/03/12(水) 22:54:10
- 8二次元好きの匿名さん25/03/12(水) 22:59:40
ずぶとくてあざといなミラ子流石ミラ子
- 9◆.WdEZ219IoI025/03/13(木) 01:23:55
ふてぶてしいミラ子からしか摂れない必須栄養素がこの世にはあるのです……
- 10二次元好きの匿名さん25/03/13(木) 06:10:56
愛玩動物かな
- 11◆.WdEZ219IoI025/03/13(木) 10:09:31
- 12二次元好きの匿名さん25/03/13(木) 19:47:03
レース引退後はずっとこうなりそう