メジロアルダン（30）｜あにまん掲示板

1二次元好きの匿名さん22/03/21(月) 23:44:32

「お父様！起きてください！」
耳元から聞こえる快活な声で目を覚ます。
声の主は窓日に照らされながら綺麗な芦毛の尾を揺らし、紫色の目で俺の顔を凝視しながら覚醒を待ち侘びていた。

「おはよう、スティード。相変わらず早いね。」

「お父さまが遅いんですよ！ほら、今日はお父様が朝ご飯作る日なんですから早く早く！」

急かされながら身だしなみを整え、目元に眠気を抱えたままキッチンへと向かった。

「ほら、出来たよ」
嬉々としてこちらに駆けてくる娘を見ながら、テーブルの上にパン、サラダ、目玉焼きにソーセージと朝食を運ぶ。

「…野菜入ってます…」

「それくらい我慢して食べなさい、これでも少なくしたんだから」

「むう…」

娘を宥めながらそれぞれの席の前に皿を並べ、食事の準備を終えた。

2二次元好きの匿名さん22/03/21(月) 23:45:07

「お父様！はやく、早く食べましょう！」

「わかったわかった、少し待ちなさい」

今日は8月15日。俺と、妻のメジロアルダンの娘であるメジロスティードが産まれてから丁度5年が経つ。娘がいつにも増して元気なのは、誕生日という事で行きたい場所に連れて行くと約束していたためだろう。
現に一刻も早く食事を済ませて出かけたいという様子だ。
妻は今、ここにはいない。

「今日は最初にお墓参りに行かないといけないんですから！早く行かないと時間がなくなっちゃいますよ！」

「そんなに急がなくても大丈夫だよ。時間は十分にあるんだから。」

「いいえ！お父さまはのんびりなんですから早くしないとダメです！」

娘の元気な様子を見て、ふと出産直後の事を思い出し感慨深くなる。あの日、未熟児として産まれた娘は一時命の危険に晒され、何とか一命を取り留めた後も一切油断が出来なかった。
アルダン自身も身体が弱かった事もあり、そのために彼女は…

「お父さま！ぼーっとしないでください！」

「ああ…ごめんごめん、ところでスティード、お母さんに挨拶は済ませたかい？」

「あ…！わ、忘れてました！お父さま、少し待っててください！」

かく言う俺も済ませてなかったなと思い、娘の後に続く。忘れていたわけではない、行きづらかったのだ。

3二次元好きの匿名さん22/03/21(月) 23:45:17

おばさん！おばさん！

4二次元好きの匿名さん22/03/21(月) 23:45:43

ウワーッ！出怪文書！？

5二次元好きの匿名さん22/03/21(月) 23:46:25

「お母さま！…おはようございます、もう朝ご飯ですよ！」

「あら…おはようスティード。ふふっ、今日も元気ですね。」

娘の声に反応して、バルコニーの椅子に座っていたアルダンが優しく応えた。

「あなたもおはようございます。今日はいつもより朝ご飯が早いのですね。」

「…アルダン、いつもと同じだよ…」

「え？…あっ…！申し訳ございません…」

見ると椅子の前には綺麗な風景画の描かれたキャンパスがある。ここから見える景色を描いていたのだろう。…彼女が俺や娘が起きるずっと前から絵を描いてたのは見えていたが、その様子があまりに熱心だったので声を難かったのだ。

6二次元好きの匿名さん22/03/21(月) 23:46:33

はははーんさては生きてるな？

7二次元好きの匿名さん22/03/21(月) 23:46:34

こっから全部ウイニングライブか

8二次元好きの匿名さん22/03/21(月) 23:46:59

「お父さま、お母さま！早く行きましょう！」

「今行きますよ。忘れ物はありませんか？」

「あっ…！取ってきます！」

「ふふっ、本当に元気な子…貴方に似たのでしょうね。」

「君の方じゃないか？お茶目で少し天然な所とかは君にそっくりだ。」

「そっ、そんなことはありません。」

アルダンがしかめっ面をしながら頬を膨らませる。歳は重ねているが、不貞腐れた時のスティードにそっくりだ。

「…あの子も5歳か、元気になったよ。」

「ええ、あの時はどうなるかと思いましたが…本当に良かった……」

スティードが産まれた日、アルダンは出産に耐えられず危篤状態に陥った。スティードも同様に助かる可能性は低く、一時は絶望したが…
その後、何の奇跡かアルダンは嘘のように回復し、スティードも数週間経って普通の赤ちゃんと変わらない位にまで大きくなった。
今となっては良…くはないが、忘れられない思い出話だ。

9二次元好きの匿名さん22/03/21(月) 23:47:49

「これから、どんな風に育っていくんだろうな」

「私は…どんな道を選ぶにしてもあの子が元気で、幸せならばそれで充分です。」

「うん…俺もだ。」

これからあの子は色々な事を経験するだろう。そうして瞬く間に成長する。もしかしたら、苦難の多い人生になるかもしれない。だとしてもそれを乗り越え、幸せな人生を送って欲しい。
そのために俺とアルダンはあの子の傍に寄り添って支えてやらなければならない。トレセンで俺達2人が支え合い歩んだように、あの子が巣立つまでの今と未来を描く事が、親としての俺達の使命だ。

「お父さま、お母さま、今日はレースを見に行きたいです！」

「あら…昨日は遊園地に行きたいと言ってませんでしたか？」

「ごめん、俺がアルダンの走ってる動画見せちゃって…」　

「！も、もう…勝手に見せるなんて…」

愛おしき家族と談笑しながら青空の下を歩く。
きっと、この幸せは永遠だろう。