- 1◆0CQ58f2SFMUP25/03/19(水) 18:32:42
- 2◆0CQ58f2SFMUP25/03/19(水) 18:33:20
- 3◆0CQ58f2SFMUP25/03/19(水) 18:34:58
前スレのクリスマス回の加筆って感じで、直前のところから投下していきます!
↓↓↓以下連投↓↓↓ - 4◆0CQ58f2SFMUP25/03/19(水) 18:35:15
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夜。
時間は、もう深夜の2時を過ぎている。
ソファに二人で。離れるのは寂しいから、彼の肩に頭を乗せて座っていた。
すっかり酔いは覚めてしまって、先ほどまでの自分の痴態を思い出しては苦悩する。
…本当に、どうかしていた。
はしたないとか、みっともないとか、そんなレベルのことではなくって。
もう少しで私たちは、"どうにか"なっていた。ということを、嫌と言うほど実感していて。
もう、恥ずかしと情けなさで、頭はぐるぐると回り続けている。
清らかなクリスマスデートのつもりが、どうしてこんなことに…。
「申し訳ございません、調子に乗ってしまいました」
涼しい顔で私に謝罪している彼も、先ほどより赤みは引いていて。
彼も、少し酔っていたのであろうことは推察できた。
じっと睨んでみると、少しだけ申し訳無さそうに頭を掻いたりしているけれど。
もう、本当に怖かったんだから!
ふと、彼が私の手に触れた。
温かい手。さっきまでのことがあったから、ちょっとだけどきっとしたけれど。
なに?なんて、まんまと安心させられた私が彼の顔を見ると、少しだけ心配そうな顔をした彼が居た。
「どうしたら、許して頂けますか?」
…そんなの。別に、怒ってはいないわよ。
でも、ちょっとだけこわかったから。
もし、次があるなら…。もっと、優しいほうが良いなって、思っただけだもの。 - 5◆0CQ58f2SFMUP25/03/19(水) 18:35:31
でも、私のこと意地悪とか言った彼を、そのまま許しちゃうのはちょっと癪な気がして。
だから、とっておきの罰を思いついた。
私は彼の手から自分の手を抜き取ると、もう一度握り返した。
一瞬、呆気に取られた彼の隙をついて、彼の耳元に滑り込む。
「もっと、たくさん好きって言って」
ほんの少しだけ、いやらしくないように、吐息を浴びせた。
彼の口から、えっ、と少しだけ声が漏れたのが聞こえる。
咄嗟に彼から身を離した私は、彼の顔を覗き込んだ。
さっきまでの涼しい顔はどこへやら。ほんのり赤らんで、照れている様子だった。
その顔を見ることができた私は、今日一番の仕返しができた喜びに胸を躍らせ。
彼の意地悪のことなんて、もうすっかり許してしまっていた。
彼は軽く咳払いをして、難しい顔をせず はにかむ。
「…わかりました、何度でも言いましょう」
照れ隠しもせずそう言う彼は、他の誰も見たことがないその姿は、私だけの特権で。
こんなにも素敵な彼を独り占めできることは、とってもとっても特別なことで。
私は、あの日あの時の決断は間違いではなかったと、何度目かも分からない確信を得ていた。
ーーー - 6◆0CQ58f2SFMUP25/03/19(水) 18:36:05
彼に愛を伝えてもらうために、私はまた彼の肩にもたれかかった。
彼が、私の髪を撫でる。
いやらしい手つきではない。愛でるように、慈しむように指を通していく。
少しだけそわそわと刺激されることが、くすぐったくて、心地よかった。
「星南さん、あなたが好きです」
ひとしきり愛でた彼は、私の頭上で、優しく浴びせかけるように言葉にし始めた。
「今も、あなたの体温が、肩から伝わってきて…。 少し、どきどきしています」
少しだけ言葉に詰まりながら、けれど穏やかに言葉を続ける彼は、どんな顔をしているだろう。
彼が、私にどきどきしてくれている。 それが本当なら、とってもうれしい。
私はずっと、彼にどきどきしているけれど。それは彼のことが大好きな証拠だから。
うれしいけれど、ちょっとだけ、意地悪を言ってみたくなった。
「本当? ちゃんと、私にどきどきしている?」
いつもあなたにどきどきさせられてばかりだから、ときどき不安になるのよ?なんて
いじけてみたくもなったけれど、それはちょっと可哀想。
「毎日しています。 時々、自分を抑えられないくらいには」
けれど、そんなふうに答えてしまえるあなたには…遠慮なんて、いらなかったかしら?
ばか、なんて悪態をついてしまうけれど、私のことを欲しがってくれるのは、とってもうれしい。
そして彼は、何度も何度も私の髪を愛で、そのたびに私の好きなところを教えてくれた。
私の髪、私の顔、体も、生き様も、在り方も。
ありとあらゆるものを、くすぐったい言葉で、けれど心からの言葉で教えてくれた。
…けれど。 - 7◆0CQ58f2SFMUP25/03/19(水) 18:36:28
「本当に、本当に大好きなんです」
少しだけ、彼の声色が変わるのが分かった。
愛を伝えているのに。
「星南さんに出会ったときからずっと、星南さんしか見えないほどに」
とってもうれしい言葉で、私に心からの愛を伝えてくれているのに。
「これまでも、これからも、ずっと最愛の人なんです」
どうして、そんなに不安で、震えた声を出しているの?
彼の肩から頭を離し、彼と向き合った。
とても不安そうな、私にすがるような、珍しい顔。
けれど知っている。プロデューサーの仮面を外した、あなた自身の弱い心を。
「…星南さんと、本当は一日中、こんな時間を過ごしたい」
そんな顔で、私に気持ちを吐露する彼を、支えてあげたい、と強く思った。
どんな不安でも、私が受け止めてあげるから、と。
「星南さんは、いつもたくさんのファンに囲まれて」
彼は、訥々とその感情を言葉にしていく。
「それに応える星南さんの姿は、とても綺麗で可愛らしい、尊い姿で」
私から目を逸らした彼は、それでも言葉を止めないでくれている。
私に、聞いて欲しいのね。
彼の手を取る。彼に勇気を与えるために。
隠して欲しくないから。 あなたの不安を、恐怖を。
「共に目指した姿なのに…プロデューサーではない俺が…俺だけに、見せて欲しいと。 ずっと、そう言うんです」
私にそうしてくれたように。 臆病な私を、ずっと支えてきてくれたように。
だって。
「俺だけの、十王星南で居て欲しい、と」
あなたの嫉妬は、私への愛情そのものなのだから。 - 8◆0CQ58f2SFMUP25/03/19(水) 18:37:15
彼を、そっと抱きしめる。
「大丈夫、大丈夫よ」
彼の、さらさらとした黒髪を、やさしく撫でる。
さっきまで、あなたがしてくれたように。
「ステージを降りた私は…。 この部屋にいる私は、あなた一人のもの」
安心させてあげたいから。 私はあなたにすべてをあげるからって、何度でも伝えてあげるから。
彼は、私の服をきゅっと掴んだ。
それは、普段の彼からは想像もできないほど弱々しい力で。
彼の、優しく繊細な心が表れているようだった。
「…星南さん」
私の腕に抱かれた彼が、小さな声で口を開く。
「ええ、なぁに?」
優しく、優しく聞き返す。
彼がなんの遠慮もしないように。彼をとびきりの慈しみで包み込むように。
すると彼は、弱々しく掴んだ手を私の体に回し、私の体に顔を埋めた。
「愛しています」
顔を埋めたまま、私の心に直接投げかけるように、言葉にする。
「伝わっているでしょうか」
迷い、怖がっているように、震えながら。
私にしか見せない、彼の生身の心を露わにしながら。
「ええ、もちろん。 たくさん、伝わっているわ」
だから私は、その心をひたすらに、やさしく愛でてあげる。
彼の頭を撫でながら。
彼の心が、決して傷つかないように。 - 9◆0CQ58f2SFMUP25/03/19(水) 18:37:31
彼の震えが少しずつ止まり始めると、彼はまた言葉にし始めた。
「不安、なんです。 何度も、何度もあなたに、間違った愛情を伝えようとして…」
先程よりもしっかりとした、けれどまだ、不安は拭いきれない臆病な声。
…でも、それは違う。
「間違ってなんかいないわ」
断言できる。
あなたの愛情は、間違ってなんかいない。
「どれも、あなたが私を愛してくれているからなのでしょう?」
彼を抱く腕に力が入る。
安心させるように、強く伝えるように。
「だから…戸惑いは、するけれど」
だって私は、あなたと恋人になってこの数週間。
あなたの愛情が嫌だったことなんて、一度もないから。
たったの一瞬も、幸せじゃない時間なんてなかったから。
「あなたになら、どんな愛を向けられても、幸せなの」
――数秒、沈黙が流れた。
彼が、私にすがりつく手を緩め、ゆっくりと体を離す。
久しぶりに見た彼の顔は、まだ不安を拭いきれていない様子だけれど。
でも、あのときと同じ。 想いを伝えあったあの日と同じ、決意を固めた顔だった。
「星南さん」
彼が、真っ直ぐに私の目を見て、はっきりとした声で言った。
先ほどまでの、震えた姿はそこにはなくて。
弱く臆病な生身の、それでも決意を固めた彼の姿だった。
「まだ、酔っていますか?」
ーーー - 10◆0CQ58f2SFMUP25/03/19(水) 18:38:09
とっくに、酔ってなんかいない。
そんなこと、私も彼も分かっている。
だからこれは、そういうことじゃない。
"次の一歩"を、私と一緒に。ということだ。
直接応えるのが怖くて、うつむいてしまう。
けれど、彼の勇気に応えたくて。
私も、何もかもさらけ出してくれた彼の愛情を、生身の愛情をもっともっと受け取りたくて。
そう思うと、いつもよりほんの少しだけ勇気が出て…彼の片手を、ぎゅっと握りしめた。
彼の手を、強く強く、握りしめる。
私が、彼を止めてしまわないように。
私が、怯えてしまわないように。
彼の空いた手が、優しく包み込むように私の横髪に添えられた。
一瞬、体が固まってしまいそうになるけれど、ほんの一瞬だけだ。
彼の手を、しっかりと握っているから。勇気を出すとき、いつも握っているこの手を。 - 11◆0CQ58f2SFMUP25/03/19(水) 18:38:23
もう、怖くない。 こわいけど、怖くない。
たぶん、本当はずっとそうだったんだ。
彼が怖いんじゃなくって、どきどきしていた。
どきどきし過ぎて、心がどうにかなってしまうんじゃないかって。 それが、こわかった。
けれどもう分かったから。
私も"したい"って、分かっているから。
だから、私にちょうだい。
あなたの、ファーストキス。
心を決めた私は、目を瞑って、ほんの少し顎を上げた。
彼の、衣擦れの音がする。
息遣いが近づく。
どきどきと、大きな鼓動は聴覚を奪い。
こわばる心は、彼の手を握りしめ。
私の顔に優しく添えられた、彼の手のあたたかさに支えられながら。
私は、彼の愛を受け取った。
ーーー - 12◆0CQ58f2SFMUP25/03/19(水) 18:38:38
唇に、彼の温度を感じる。
少しだけしっとりとした、柔らかな感触。
彼の息遣いを感じる。熱い吐息が、私の吐息と混ざり合っている。
私を感じ取るように、彼の唇は何度もその距離を変えて。
私も、彼を感じたくて、固く閉じてしまっていた口から少しだけ力を抜いた。
ああ、好き。 あなたが好き。 ほんとうに、愛しているの。
ねえ、つたわっている? 私の、好きな気持ち。
私はね、わかるの。
あなたが私のこと、大好きって。
今までで、いちばんわかるのよ。
お互いを堪能するように、唇と唇がやわらかく絡み合う。
彼の、上唇の柔らかさを、私が唇でやさしく挟んで味わう間に。
彼は私の、下の唇を、やさしく抱きしめるように味わっている。
うれしい。もっと、私を感じて欲しい。
私も、もっとあなたを感じていたい。
彼の唇が、愛おしい。
ずっと触れていたい。私の唇で、つながっていたい。
一度も離れず、何度も、何度も繰り返す。
私たちにはもう、それしかないみたいに。 - 13◆0CQ58f2SFMUP25/03/19(水) 18:38:58
どうして、こんなにも伝わるんだろう。
大好きって、伝わってしまうのだろう。
きっと、言葉にされて削ぎ落とされてきた愛情が、ずっとここに残っていて。
今までずっと取りこぼしてきたかもしれない、大切な愛情を。
唇のつながりを通して、今ようやく、受け取ることができたのかもしれない。
気がつくと、私は彼の手を握っていた手を離し、彼の頬に添えていた。
やめたくない。
幸せが流れ込んだ頭の中は、とっくに真っ白で。
ぴりぴりとした背筋の感覚は、溢れた幸せが体に流れ込んでいるようで。
この時間が永遠であれと、強く願った。
ーーー - 14◆0CQ58f2SFMUP25/03/19(水) 18:39:30
どれほどの時間、彼と唇を合わせていたのかも分からない。
永遠とも一瞬とも思える時間。ただひたすらに幸福だけが流れる時間。
けれど、姿勢が苦しくなったのか、彼がとうとう唇を離し…私たちのファーストキスは、終わりを迎えた。
私は、瞑っていた目を緩やかに開く。
名残惜しさと、嬉しさの余韻で、ぽーっとしたまま彼の顔を見つめた。
頬を赤く染め、涙をにじませ、息を少し荒くした彼の顔は。
今までに見た彼の姿で、もっとも尊く愛おしいものだった。
不意に、私も涙がにじみ…あふれ出した。
戸惑いなんてない。 理由なんて、分かりきった涙だから。
幸せと、よろこびと、愛おしさが流れる。
止まらないのは、その気持ちが止まないからだ。
止める必要なんて、ないからだ。
「星南さん」
彼の顔に不安が浮かぶ。
そう、そうよね。あなたはきっと、とっても不安よね。
でも、大丈夫よ。私がちゃんと伝えてあげるから。 - 15◆0CQ58f2SFMUP25/03/19(水) 18:39:57
「よかった、って、思って」
かすれた声が出る。涙が出て、軽い嗚咽が言葉を遮るけれど、大丈夫。
だって、伝えないと。…教えて、あげないと。
「わたしの、ファーストキス。 あなたが、もらってくれたから」
とびきりの笑顔で。
私は、幸せだって。
「――いま、とってもうれしいの」
涙が止まらないまま、それでも、最高の笑顔で彼に伝える。
悲しさなんて、怖さなんて、これっぽっちもない。
生まれてきてよかったと、心から感じているもの。
あなたと結ばれるために生まれてきた、この唇が。
あなたのものとなれて、ほんとうに幸せなの。
私の答えを聞いた彼も、涙を流した。
でも、私は不安なんてどこにもない。
だって、あなた…とっても、幸せそうな顔をしているもの。 - 16◆0CQ58f2SFMUP25/03/19(水) 18:40:24
彼はゆっくりと私の手を取ると、今度はとても優しく、優しく私の肩を押した。
導かれるようにソファに沈み込む私に、彼がゆっくりと覆いかぶさっていく。
よこしまな感情はなく、あいまいな感情もない。
ただ、彼と私の聖なる時間のために、私たちは重なり合う。
そして私たちは、何度も、何度も何度も、キスをした。
今まで伝えきれなかった愛情を、いま、取り戻すように。
決して放さないと、私の頭に手を添える彼の首に。
今度こそ終わって欲しくないという気持ちを隠さずに、腕を回して。
ずっと、ずっとキスをしていた。
ーーー - 17◆0CQ58f2SFMUP25/03/19(水) 18:42:57
↑↑↑以上↑↑↑
あとはおおよそ、朝チュンに続きます…。
拙い描写でお目汚し失礼しました!
書いてしまいたくてしょうがなかった…。 - 18二次元好きの匿名さん25/03/19(水) 21:51:06
毎度いいものを読ませてもらってます…
幸せになれ… - 19◆0CQ58f2SFMUP25/03/19(水) 22:19:47
はむはむするキスするP星南が好き…
次話から沢山ちゅっちゅすると思う… - 20二次元好きの匿名さん25/03/19(水) 22:29:44
ありがとう……ブラックコーヒーがマックスコーヒーになりました……
愛を伝え合う(物理)はpixivで見れますか……? - 21◆0CQ58f2SFMUP25/03/19(水) 22:32:40
- 22二次元好きの匿名さん25/03/19(水) 23:32:23
甘ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!!!!
説明不要!!!!
素晴らしい!!!!! - 23二次元好きの匿名さん25/03/20(木) 08:17:13
深煎りコーヒーをくれ
ボトルで - 24二次元好きの匿名さん25/03/20(木) 09:07:09
濃いエスプレッソを頼む
砂糖は足りてる - 25◆0CQ58f2SFMUP25/03/20(木) 09:26:51
- 26二次元好きの匿名さん25/03/20(木) 11:23:43
ずっとイチャイチャしててくれ
たのむ - 27二次元好きの匿名さん25/03/20(木) 19:26:24
いいね…
- 28二次元好きの匿名さん25/03/21(金) 02:11:08
ありがとう……ありがとう……
- 29二次元好きの匿名さん25/03/21(金) 02:25:35
最高だ…最高だよ!
- 30二次元好きの匿名さん25/03/21(金) 07:24:48
- 31◆0CQ58f2SFMUP25/03/21(金) 08:23:09
現役アイドルのあいだはえっちなことしないから…(震え声)
- 32二次元好きの匿名さん25/03/21(金) 08:25:45
お父様にこびへつらう学Pを見る十王さんも美しそう
- 33◆0CQ58f2SFMUP25/03/21(金) 14:07:53
再々構成したねちょねちょの甘々を渋のほうにアップしたので、クリスマスデートとキスシーンの砂糖が物足りなかった人はぜひ。
キス解禁されたし、そろそろ二人が事務所でこそこそする話とか
思い出の生徒会室で二人がこそこそする話とか
甘いやつ書きたい