- 1スレ主25/03/21(金) 21:43:21
- 2二次元好きの匿名さん25/03/21(金) 21:44:06
このレスは削除されています
- 3スレ主25/03/21(金) 21:44:41
- 4スレ主25/03/21(金) 21:54:31
綾瀬琉生(アヤセルイ)男 13歳 169㎝
アリス 魔女術
パイロット128 砲手69 操舵手48 メカニック145
オペレーター30 艦長12 空間認識能力91 100を超えるとその世界最高(ノイマンが操舵手100)
[駅前魔法学園]が一番好きなTRPGだった転生者。
魔法を学び始めて以来、事ある毎に事件に巻き込まれ、それを解決してきた。
その為「人生はほんのり刺激がある程度で十分」がモットーの昼行燈を気取っているが、
巻き込まれた際にはいの一番に行動するほど責任感が強い。
総合的に[前衛が務まる回復役]だが、手数が多いので他の分野でもそれなりに活躍できる。
ただし得意分野(治療と調査、BOSS戦)以外は器用貧乏なので、専門家には劣る。
- 5スレ主25/03/21(金) 21:58:09
- 6スレ主25/03/21(金) 22:05:58
綾瀬瑠璃(アヤセルリ)女 13歳 130㎝ Gカップ
ウィザード 召喚術
パイロット58 砲手74 操舵手83 メカニック6 オペレーター31
艦長73 空間認識能力108
琉生の二卵性の姉。産まれた時から妖精や精霊の類を見ることができた。結果魔法を学ぶことになり、
特に召喚術に強い興味を持つようになった。
単独で事件に巻き込まれることが多いが、すぐに味方を作れる人徳故に困ることはなかった。
散歩というより旅行が趣味であり、その土地の文化や名物を楽しむのが生きがい。
料理を含めて家事全般が得意で、世話焼きな面がある。
干支に因んだ12体の召喚獣を、目的に合わせて召喚する。
総合的には[サポート特化]、前線に出るよりも後衛として補助に回るのが一番得意。
砲手に適性があるので、そちらに回ることが多い。
- 7スレ主25/03/21(金) 22:17:27
- 8スレ主25/03/21(金) 22:21:28
前回までのあらすじ
綾瀬姉弟の活躍により、ヘリオポリスの被害は軽減。
キラのメンタルもまだ悪化していない。(ロマンティクスはしていない)
しかしラウ策略で絶体絶命の状態。 - 9スレ主25/03/21(金) 22:22:18
- 10スレ主25/03/21(金) 22:25:14
アスランが乗るXー303イージスは可変機だった。
モビルスーツとモビルアーマー、二つの形態になれる機体である。
高速性に優れるモビルアーマー形態で、足つきに接近をかけている最中だった。
アスラン達の横を、ヴェサリウスからの砲撃が追い抜いていく。
受けた命令は、足つきとモビルスーツの撃破、撃墜だ。
だが、アスランは他に許可をもらっている。
可能であれば、ストライクのパイロットの説得を試みてよいと。
自分はこれから戦場に私情を持ち込もうとしている。
クルーゼに許可をもらえたが……罪悪感からは逃げられなかった。自分は何故ここにいる。
撃つか撃たれるかの戦場で何をするのか。援護か。それとも説得か。
バカな話だ。戦場で友と再会しました、殺したくないので説得します、だから撃ちません。
味方がやられましたが戦いより説得を優先します。それでも出させて下さい。
それは裏切り者のやり方だ。
出るならば戦う義務がある、出た以上は戦う義務があるのだ。自分はザフトなのだ。プラントの守り手だ。
それは志願した時に誓った責任と言うものだ。なのに。 - 11スレ主25/03/21(金) 22:27:22
(キラ……地球軍に志願するなんて、お前もナチュラルに味方するのか……コロニーに核を撃つような連中に)
あるいはそういう作戦に利用されているのか。
クルーゼの言葉が頭をよぎる、その為に近づいて来たのか。自分に近づいて利用しようとしたのか。
あのナチュラル達に協力する、裏切り者のコーディネーター達のように。
皆が父を悪く言う。追い詰めるように批判する。殺戮者、異常者、冷酷非道。
ふざけるな。
母を、レノア・ザラの命を先に奪ったのは連合ではないか。
ナチュラルがコーディネーターを、父を追い詰めたのだ。
食糧の輸入は絞られ、交渉しようとすれば評議員を暗殺される、そんな相手と何を話せと言うのだ?
父の言う通り、戦うしかないではないか。アスランはアカデミーでそう教わったし、周りの大人は皆そう言っていた。
プラントの人々は[皆]そう言っているのだ。 - 12スレ主25/03/21(金) 22:28:42
講義で教わった地球で起きているナチュラルからコーディネーターへの迫害……その内容は、
まだ若いアスランにとって怒りの対象でしかなかった。
プラントの姿勢に反発をするコーディネーターが大量にいるのは知っている、
いや、プラントが少数派なのは知っているのだ。
理解不能だが、地球に済むコーディネーターが圧倒的に多数で、
地球連合に志願するコーディネーターが少なくないのも知っている。
だから……だから、一致団結をしなければいけないのに……。
何故、あんな目に会わされてまで地球に住むのか、ほんとうに理解不能だ。
兵士となれば前線送り、だったらプラントのために戦えばいいのだ。
そう思っていたのに。
再会した友人すら、自分から離れていく。
憎きナチュラル。
母を奪い、父から優しさを奪い、自分から友まで奪う、許せるものではない。
ナチュラル共め。
アスランは未熟ではあるが、義務を果たそうとする人間だった。
ただ、将校ではなく、政治家でもなく、そして、客観的な目を持つ大人でもない。
だから。キラと戦うのか、説得をするのか。
どちらも果たそうとしながら、どちらにも迷っている、中途半端な精神状態だった。 - 13スレ主25/03/21(金) 22:29:47
琉生dice4d100=79 73 96 28 (276)
瑠璃dice4d100=60 68 98 80 (306)
キラdice4d100=92 17 46 66 (221)
アスランdice1d100=5 (5)
イザークdice1d100=2 (2)
ディアッカdice1d100=58 (58)
二コルdice1d100=72 (72)
- 14スレ主25/03/21(金) 22:43:52
不意に。イージスの前方からビームが走ってきた。敵弾だ。
それが二機のジンを爆破し、イザークが乗るデュエルと二コルが乗るブリッツを掠める。
被害は甚大だった。ブリッツは右腕が大破している。武器の大半が集中している
右腕を失うことは、戦闘不能の大差なかった。
「痛い!痛い!痛い!!」
デュエルの頭部が完全に破壊される。
それだけではなく、回線のショートによってコックピット内のモニターが
罅割れ、その破片がイザークの顔に突き刺さる。
その悲鳴で我に返ったディアッカが、助けようとカンヘルに
超高インパルス長射程狙撃ライフルを向ける。
しかしそれよりも早くカンヘルはグレイブを伸ばし、光を纏わせて薙ぎ払う。
嫌な予感がしたディアッカはとっさに横移動を行う。
それにより放たれたビームは直撃しなかった。だが、無傷ではいられなかった。
ディアッカ「嘘……だろ……」
掠めたエネルギーにより、超高インパルス長射程狙撃ライフルは誘爆寸前の状態になっていた。
大慌てでパージし、被害を抑える。凄まじい威力だった、それこそ艦砲すら容易に上回るほどだ。
- 15二次元好きの匿名さん25/03/21(金) 23:35:19
いやJCなら充分デカいから
- 16二次元好きの匿名さん25/03/22(土) 00:15:21
あっという間に半壊させたよ
- 17二次元好きの匿名さん25/03/22(土) 00:35:52
ルリが砲手か
- 18二次元好きの匿名さん25/03/22(土) 01:34:51
第1クールから全力でラスボスマインドなクルーゼ、ヤベェけどオリキャラ(AA)側も戦闘力がヤバい
アデスと馴染みのオペレーターが仕事してくれたけど、アルテミスで拘束という名の休憩が取れなかった事がこの後のスケジュールにどんな影響が出るんだろう - 19二次元好きの匿名さん25/03/22(土) 06:27:29
- 20二次元好きの匿名さん25/03/22(土) 08:08:02
そういや、フレイはどうなった?
- 21スレ主25/03/22(土) 15:41:11
「これだけやれば十分ね」
ランチャーパックを装備したストライクにキラと同乗する瑠璃が呟いた。
「佐介もご苦労様」
彼女は肩に乗る鼠型召喚獣[佐介]を優しく撫でる。
佐介は無数に分身しどこにでも入り込める能力を持つ。
そして召喚獣は召喚者と精神的につながっており、そこに瑠璃が持つ
高い空間認識能力が合わされば高精度な照準用GPSとして機能する。
勿論佐介が瑠璃から離れられる距離には限度があるが、今回は十分だった。
「琉生が心配?」
操縦を担当するキラに声をかける。
「それもあるけど、正直アスランと戦ってほしくない」
キラは心配で顔を曇らせた。恋する相手と大切な幼馴染。そんな二人が殺しあうのは耐えがたかった。
すると瑠璃は優しくキラを抱きしめる。
「大丈夫、アスランを殺さずに何とかして帰って来るなんて、琉生ならやってのけるわよ」
「そうなの?」
「そうよ。琉生は何時だって無理無茶無謀を押し通して望む結果を掴んできたもの。
それができるからこそいつだってちゃんと帰ってきたんだから。信じなさい」
「…そうだね」
「さ、戻りましょ。まだまだやることはあるわよ」 - 22スレ主25/03/22(土) 17:25:44
あっという間に僚機がほぼ戦闘不能状態まで追い込まれたことに、アスランは驚愕する。
それでも妹同然の相手を取り戻すべく、四肢のビームサーベルを展開して斬りかかる。
しかし当たらない。いつの間にか後ろ、気が付けば真横、見失ったと思えば正面。
[人間]であればかかる重圧で潰れてしまうはずのスピードと方向転換で躱してしまう。
必死になって攻撃を続けるが、むしろ新種屈する上に変幻自在に動くグレイブの刃を躱すのが精いっぱいだ。
残って戦う自分達赤服面々ばかり損傷が増え、バッテリーも危険域にまで減っている。
それでも撃墜されないのは彼らが選りすぐりのエリートだからだろう。
更に、アスランに最悪の知らせが届いた。
アスラン「ヴェサリウスが被弾!?」 - 23二次元好きの匿名さん25/03/22(土) 18:11:17
ここの主のしっかり状況説明描写入るスタイル好みなので、スレが続く限りお供します
- 24スレ主25/03/22(土) 21:21:49
- 25二次元好きの匿名さん25/03/22(土) 22:05:14
このレスは削除されています
- 26スレ主25/03/22(土) 22:06:28
いつもは戦闘中でも仮面越しに余裕そうな雰囲気をしているというのに、
今のクルーゼは誰かに話しかけられることすら拒むように、その映像に見入っていた。
副官であるアデスも、驚愕の表情で送られている映像を見ていた。常軌を逸しているのだ。
出撃後すぐに部隊のジンは文字道理全滅、投入したG兵器はたった一機を相手に手玉に取られ、全滅も時間の問題だ。
映像でも、竜騎士をターゲットに捉えることが叶わずに、画面の端から端へ横切っていくだけだ。
逆に竜騎士は的確にこちらを捉え、致命傷足りうる攻撃を繰り出してくる。
残っているのは最早アスランのイージスだけになってしまった。
こんなことができるナチュラルがいるのか?
アデスは竜騎士のパイロットがコーディネイターではないかと疑うほどだった。
むしろそう願っている自分もいた。あれがナチュラルの真の力だというなら、
ナチュラルより優れるために人工的に作られたコーディネイターは一体…なんだというのだろうか。
クルーゼはその映像を誰にも見えない仮面の下で歓喜の瞳で眺めていた。
面白い。まるで自分の抱えている物を否定する存在だ。
もっとだ。もっと私に見せてくれ。私の絶望を拭い去るまでどうか落ちてくれるなよ。 - 27二次元好きの匿名さん25/03/23(日) 02:52:58
ラゴゥに先駆けて砲手と操縦手の二人乗りだとぉ…!
キラは女体化で原作より体積が小さくなってるし、砲手も130cmだけど、コックピットの中はどうなってんだ?
ソフトウェア面はキラが何とかするにしても、時間がないから一人分だけの席をどうにかできるとは思えないし…
しかし、パイロット58 砲手74 空間認識能力108の能力があるにしてもチート情報収集能力はマジで強ぇ。
情報というものは正誤が兵を殺してしまう事もあるし、時には正確な情報は万の兵にも勝るものなんだよな
こういう情報面でチートなキャラがSEEDに放り込まれるのは初めて見たけど、ホント正確で質が高くて素早い情報収集能力がどれだけ脅威なのかたった2スレで思い知らされるとは思わなかったぜ!
> 離れられる距離には限度がある
ってのも逆に言えばその範囲内には敵がいない、という情報が得られる事だしマジて強力な能力だなぁ!
- 28スレ主25/03/23(日) 07:27:09
(…捕まえた!)
同時刻、ついにムウは眼前にザフトのナスカ級を捉えた。低出力モードを解除し、
4基のガンバレルからなるエネルギーを全開放し、一気に目標へ迫る。
「うおりゃぁぁ!!」
ムウの接近は直前まで成功していた。だが、彼を感知する者がその船には乗っていた。
琉生の戦いに夢中になっていたクルーゼは、寸前のところで突貫するムゥの気配を察したのだ。
「機関最大!艦首下げ!ピッチ角60!」
「は!?」
「本艦底部より接近する熱源、モビルアーマーです!」
クルーゼの突然の言葉と、オペレーターが報告した情報が完全に一致した。
真下から迫ってくるモビルアーマーと言うなら、
出てないと思い込んでいたオレンジ色のモビルアーマー…メビウス・ゼロだ。 - 29スレ主25/03/23(日) 11:07:41
アデスの顔色が青くなっていく。
「ええい!CU作動!機関最大!艦首下げ!ピッチ角60!」
だが、時は遅かった。ムウの操るガンバレルから放たれた弾頭は、ヴェサリウスのエンジンを完全に捉えた。
感じたことのない強い振動に、ブリッジにいた誰もが何もできずにシートにしがみついた。
「いーよっしゃぁぁ!」
ムウの機体はヴェサリウスの装甲にアンカーを打ち込み、スイングバイで宙域を離脱していく。
「機関損傷大!艦の推力低下!敵モビルアーマー離脱!
第5ナトリウム壁損傷、火災発生、ダメージコントロール、隔壁閉鎖!」
(…ムウめぇ!)
推力を奪われた艦は的に過ぎない。
クルーゼは苦虫を噛み潰しながら、撤退命令を出すのだった。 - 30二次元好きの匿名さん25/03/23(日) 14:05:31
なんか、クルーゼがグラハム化しそう
- 31二次元好きの匿名さん25/03/23(日) 15:16:08
駅魔的に炭酸化もあり得そう
- 32二次元好きの匿名さん25/03/23(日) 21:44:53
炭酸仮面なクルーゼってどうなん?
- 33スレ主25/03/23(日) 21:45:48
「再度確認しました。半径5000に、敵艦の反応は捉えられません。完全にこちらをロストした模様」
逃げる、という作戦はどうやら上手くいったようだった。
あの後合流したムウさんのゼロに掴まってさっさと逃走。アークエンジェルは無事に逃げ切れた。
そこまではいい。俺はパイロットスーツを脱ぎ、溜まった汗を魔法で塩抜きと消毒する。
こんな水でも飲まないといけないくらい、今のアークエンジェルには物資が無いのだ。
とりあえず、異空間から空のペットボトルを取り出して水を入れる。1ℓはあるか。
「よくやった坊主……何やってんだ?」
「溜まった汗を集めたんだよ、こんな水で今は貴重だろ」
「馬鹿野郎!すぐ医務室に行くぞ」
「あ、ちょ…」
俺はムウさんに引きずられながら医務室に運ばれ、ついでに検査を受けて
俺と姉貴が正真正銘のナチュラルだと知られた。序に魔法使いだとも知られた。
「お前みたいなナチュラルが居て堪るか!」
「魔法って実在したの!?」
エネル顔になる士官組と、自分も最初はあんな感じだったなと懐かしむキラ達が印象的だった。 - 34スレ主25/03/23(日) 22:02:51
ヴェサリウスでは、クルー達がダメージコントロールに追われていた。
メビウス・ゼロが砲撃戦とデブリに紛れて接近。奇襲を許し、艦に損傷を負ったのだ。
欲張る事もなく、一撃を与えてさっさと離脱をする動きは憎たらしい物だった。
艦内では火災や有毒ガスが発生し、その対処に追われていた。アデスが状況の報告を行ってきた。
「クルーゼ隊長、火災の方は消火いたしました。右舷側通路にて発生したガスは除去中。
エンジンへの被害は修理可能です、ただし、艦の稼働効率は……」
「どの道戦闘不能だろう?流石にこのまま追跡とはいくまい」
仮面で分かりづらいが、満足げな表情でクルーゼは返す。
「クルーゼ隊長、本国より入電です。中立国の民間人に対しての攻撃は慎重を期する必要あり、
攻撃は待たれたい。速やかに現作戦を終え帰還せよ……以上です」
少しばかり大きめな声での報告だった、ブリッジ全体に不足なく届くような。
聞こえないとの言い訳はできなかった。クルーゼは立ち止まり、微笑を浮かべつつ無言でアデスを見る。
彼はどこ吹く風といった感じだった。実際、アデスは別に何もしていない。
ただ、偶然オペレーターがこっちを見てきたので、頷いてやっただけだ。
そのオペレーターがどちらかと言うと穏健、和平派の考えに近く、頭の回るベテランなのも偶然だった。
連絡をしたのは穏健派の評議員かその辺りだろう。クルーゼは笑みを浮かべたまま、指示を下した。
「……本国へ打電。了解。本艦は現在、損傷により応急修理中。終わり次第帰還する。
以上。……アデス、ガモフに打電だ。ヴェサリウスと合流、周辺警戒に当たれとな。今度は送り先を間違えるなよ?」
アデスはクルーゼの皮肉に生真面目に返事をすると、指示を下し始めた。ベテランらしく揺るぎもしない。 - 35スレ主25/03/23(日) 23:01:19
ブリッジクルーは何が起きたのかを、何となく察している空気だ。クルーゼの微妙な強引さを、アデスが止めた、と。
ここでクルーゼが本国の命令を無視して見せれば、信用が失墜する。それが分かるから、
クルーゼは攻撃中止を当然の如く振る舞った。……まだ、ザフト内での立場を
決定的に崩してしまうのは早かった……正直、迷っているが。
(十分面白い物も見れたし、今回は十分だな。私も急ぎすぎたか)
クルーゼは次の戦局と、評議会への説明を考え直す。
ザフトの将兵が今回のつけを、命で支払う事になってもクルーゼが知った事ではない。
本国からわざわざ命令が来たのだ。ここで止まるのはクルーゼの責任ではない……。
G兵器と、ヘリオポリスで収容した避難ポッドに乗っていた大西洋連合高官の娘という
送り届けなければならない荷物もあることだしな。 - 36二次元好きの匿名さん25/03/24(月) 00:02:52
拾い物の娘ってまさか
- 37二次元好きの匿名さん25/03/24(月) 02:58:22
- 38スレ主25/03/24(月) 08:42:24
「こんなものを造り上げるとは…!ナチュラル共め!」
プラントに帰還したクルーゼとアスランは、荒れ狂う査問会の様子をただ呆然と見つめていた。
クルーゼの説明、そしてアスランが持ち帰ったG兵器の概要を聞いて、
直前まで余裕すら醸し出していた議員達が一斉に議論を始めたのだ。
誰かが叫ぶ。ナチュラルごときがモビルスーツなどと。
しかしナチュラルにそんなものを作れるはずがないと。
「でも、まだ、試作機段階でしょ?たった5機のモビルスーツなど脅威には…」
「だが、ここまで来れば量産は目前だ。その時になって慌てればいいとでもおっしゃるか!?」
ほら、またそんな楽観的なことを…そう思ってクルーゼは、心の中であざ笑う。
「これは、はっきりとしたナチュラル共の意志の表れですよ!奴等はまだ戦火を拡大させるつもり…」
「静粛に!議員方、静粛に…」
議長が場を鎮めようとするが、議論のーーいや、議員達の不安が払拭されることは無かった。
認めようが、認めまいが、現に地球軍はモビルスーツを作り出してしまったのだ。
その揺るぎない事実に、誰もが不安を抱いている。 - 39スレ主25/03/24(月) 08:42:56
「戦いたがる者など居らん。我らの誰が、好んで戦場に出たがる?」
議会の喧騒を遮って言葉を放ったのは、最高権限を持つ、パトリック・ザラーーアスランの父親だ。
「平和に、穏やかに、幸せに暮らしたい。我らの願いはそれだけだったのです」
彼は紡ぐ。偽りに満ちた平和の虚像を。
「だがその願いを無惨にも打ち砕いたのは誰です。自分達の都合と欲望の為だけに、
我々コーディネイターを縛り、利用し続けてきたのは!」
彼は語る。その虚像を壊した敵対者の行為を、歴史を。
「我らは忘れない。あの血のバレンタイン、ユニウスセブンの悲劇を!」
デブリベルトに浮かぶ、失われた宇宙の大陸。多くの人に、
悲しみと憎しみをもたらした象徴を、パトリック・ザラは演説に織り込んで、滔々と語った。
「24万3721名…それだけの同胞を喪ったあの忌まわしい事件から1年。それでも我々は、
最低限の要求で戦争を早期に終結すべく、心を砕いてきました。だがナチュラルは、
その努力をことごとく無にしてきたのです」
嘘だな。とクルーゼは一人、心の中で呟く。そもそも、本当に最低限の要求に留めておけば、
ユニウスセブンの悲劇など、端から起こってないのだ。地球からの資源がなければ、
今住む生活圏すら確立できなかったというのに、彼らは自らの優性遺伝子を過信し、
盲信して、戦争の導火線に万雷の拍手の下、火を放ったのだ。
それが如何程の代償を生むのかということを、知りながらだ。 - 40スレ主25/03/24(月) 10:01:46
「我々は、我々を守るために戦う。戦わねば守れないならば、戦うしかないのです!」
クラインとザラの血統の統合。そこから生まれる光を守らねばならない。
詭弁で言っておきながら、自分自身の言葉に鳥肌が立つ。
そんな光、守るつもりもない癖に。そんな光など、自分の手で葬り去りたいほどに、クルーゼは世界を憎んでいる。
しかし、彼の憎しみに一筋の光が差し込んだ。
握りつぶそうと手を伸ばしても、決して消えない光。なんど繰り返しても、なんど試しても消せない光。
その光を何度も見せつけられ、クルーゼは[本物]を見つけた。
今や、彼の興味はその本物にしかない。クラインもザラも、そんなものどうでもいい。
この戦争すらーーいや、戦争はなくてはならない。でなければ、自分が見つけた本物は、
嘘で塗り固められた世界の中に消えてしまうだろう。
逃さない。決して。その光を逃さない。この憎しみを、見つけた本物が消し去るまで、逃すことはない。 - 41スレ主25/03/24(月) 14:07:57
「――それでは、審問会はこれで終了とする」
一人険しい表情をした男性、年齢はパトリックよりも少し上であろう。プラント最高評議会議長、
シーゲル・クラインが閉幕を告げると、議場の扉が開けられ、メンバーがおのおのロビーへと出ていく。
クルーゼ隊もそれに倣い、ロビーへと向かう。ロビーでは評議会メンバーの半分近くが、雑談に興じていたが、
クルーゼ隊隊員が出て来ると、暖かい視線が彼らに向けられ、それぞれ隊員達が呼ばれる。
どう言う因果か、クルーゼ隊の赤服と呼ばれる隊員達は、みな、評議会メンバーの子供で構成されていた。
それは七光りではなく、士官学校で実力で勝ち取った、優秀な者、エリートとしての証明でもある。
親として子供を戦場に送り出し、無事を祈らない親はいまい。やはり無事に帰還したくれたのが、
親としてうれしいのだろう。それぞれ、親子のふれあいが見受けられた。
中でも、普段は憎まれ口ばかり叩いているイザークは、母親に人のいる前で抱きしめられ、
恥ずかしいと言わんばかりに真っ赤な顔をしていた。
アスランは、その光景を見ていると、声をかけられ、反射的に敬礼をした。
「――クライン議長閣下!」
「そう他人行儀な礼をしれくるな。ようやく君が戻ったと思えば、今度はラクスは仕事だ。まったく、
君等はいつ会う時間が取れるのかな。出港までは、多少、時間があったはずだ。出港前にでも、ラクスに会うといい」
「はぁ……、はい」
クラインは自分の娘、ラクス・クラインの許婚でもあるアスランに、苦笑まじりに言った。
アスランは、その言葉に気づき、慌てて敬礼していた手を下ろし苦笑する。
クラインは疲れたように議場の扉に目を向けると、愚痴るように言った。 - 42スレ主25/03/24(月) 15:01:41
「しかし、また大変な事になりそうだ。君の父上の言う事も分かるのだがな……」
クラインの目線の先には、クルーゼと話しながら議場を出てくるパトリックの姿があった。
目線をアスランに戻すと、明らかに事務的な内容を話してきた。
「君がヘリオポリスの救命艇を助けた事は聞いている。その中に連合事務次官のご息女がいたのだ。
しかし、父が軍人と言うだけで、本人は民間人だ。人道的に、いつまでも軍が拘束しているのも問題がある。
そこでなのだが、その、ご息女をアマルフィのところに預けようと思う」
「――ニコルの家にですか!?」
「ああ、それから、艦とモビルスーツの修理が終わるまで、クルーゼ隊には休暇が与えられる事になった。
君とニコル君に、次の出撃まで監視をかねた警護を頼みたい」
「――え!?」
アスランは、クラインの話に驚き、言葉を無くす。クラインはアスランをよそに、話を続ける。
「すでにパトリックには話をしてある。クルーゼからの推薦もあってな。追って、命令があるだろう。
そうだな、なるべく外出でもして、プラントが地球と変わらないのを見せてあげて欲しい」
「それはなぜです?」
女性とは言え、敵である連合事務次官の娘なら、外に出さずに常に監視するのが
ベストだと思ったアスランは、クラインに問いただした。
「地球に戻った時に、プラントがいかに人道的に動いてるかを知らしめる為と、
ナチュラルにコーディネイターへの偏見を無くして欲しいからだ。
人質としては使うつもりはないが、地球とも交渉がしやすくなる可能性を考えれば致し方あるまい。
……これも政治と言う奴だよ。本来なら休暇なのに、すまない」
「……わかりました」
クラインはアスランの問いに、いかにこの件が重要な事かを説くように言った。
アスランは、釈然としながらもプラントの未来になるならと、納得する事にした。 - 43スレ主25/03/24(月) 16:21:07
- 44スレ主25/03/24(月) 17:15:29
アスランは民間船の港に来ていた。ニコルは任務の都合上、
一緒に来たのだが、ラクスに会うアスランに気を使ってか、暇を潰すと言って、港口で別れたのだ。
辺りを見回し、サービスカウンターでラクスの乗る船を尋ねた。ラクスの婚約者である事を知られている為、
すんなりと話が通じる。一言、礼を言うと、ラクスがいるVIP用の部屋へと向かった。
アスランは、今さらながらだが緊張しながら扉を開けた。
淡いピンク色の長い髪のアスランと同年代であろう少女が扉の開く音に気づき、
顔をアスランに向けると、かわいらしい笑顔が咲く。
「こんにちは、アスラン。お久しぶりですわ!」
「ハロ、ハロ、アスラーン!」
「ラクス……」
ラクスは椅子から立ち上がると、ゆっくりと宙に浮かぶようにアスランの方にやってくる。
ラクスの後を追うように、球状の小さなロボット[ハロ]が間抜けな声を上げた。
アスランはラクスの笑顔を見て、さっきまでの理由も分からぬ緊張を解くように息を吐いた。
ラクスは笑顔で、ハロの様子に目を細め、アスランが会いに来てくれたのを喜んだ。
「ハロがはしゃいでいますわ。久しぶりに貴方に会えて嬉しいみたい」
「ハロには、そんな感情のようなものはありませんよ」
アスランは、苦笑しながら答えた。ラクスは将来、自分の妻になる事が約束されているが、今はまだ、実感は無い。
ラクスと一緒にいると、戦っている時のようにギスギスした感じがしないのを実感する。
ラクスの持つ雰囲気だろうか、心が洗われるような感じがする。
それは、とても心地よく、呆けてしましそうになる。
- 45スレ主25/03/24(月) 18:15:51
「あぁ……何か?アスラン?」
「あっ、いえぇ……。あ、ご気分はいかがかと思いまして……」
「えっへ。私は元気ですわ」
「……そうですか……」
微妙な間が空き、取り繕うようにアスランは言うと、ラクスは笑顔で答えた。
アスランは、ラクスをうらやましく思う。いつでも笑顔で楽しそうにしている姿を見ると、
友人と戦う自分の辛さなど、一生、分からないだろうと感じてしまう。
ラクスは、アスランの様子に何かを感じ取ったのか、少し悲しそうな表情をする。
「辛そうな、お顔ですのね……」
「ニコニコ笑って、戦争は出来ませんよ――」
アスランは、ラクスの言葉に、思わす本音を言ってしまう。しかし、その言葉を言った事を、
すぐ後悔をした。ラクスには嫌味に聞こえたのではないかと思った。
何か悪い事をしたかのように感じ、途端に居心地が悪くなり、この部屋を離れる理由を捜し始めた。
「――私は任務があるので、これで……」
「……はい、アスランもお元気で……」
アスランは勝手な罪悪感から、任務を理由に背を向け扉へと向かう。扉の所で一度だけラクスの顔を見ると、
そのまま部屋を出て行った。部屋には、アスランの事を神にでも祈るように、
胸の前で手を組むラクスだけが残された。 - 46スレ主25/03/24(月) 19:50:06
- 47スレ主25/03/24(月) 20:00:46
警備兵が一応の引渡しの説明と始め、フレイの引渡しが終了すると、
アスラン・ザラが先導するようにフレイに言った。
「フレイ・アルスター、こちらへどうぞ」
「あ、……はい」
「手荒な事をする訳ではありませんから、心配しないでください」
硬い口調のアスランに答えるように、フレイはぎこちなく返事をする。表情はとても不安そうだった。
その表情を見て、ニコルは、フレイに安心するように言った。フレイはアスランとニコルに
促されま車の前まで来ると、アスランが後部シートの扉を開き、乗るように促す。
「移動しますから、乗ってください」
「……どこへ行くの?」
フレイがアスランに聞くと、ニコルがアスランに代わって答える。
「僕の家です。あなたが地球に帰るまでの間、預かる事になりました」
「――えっ?」
「――と、言っても面倒見るのは母なんですけどね。変な事をしなければ
拘束される心配もありませんし、安心してください」
ニコルの言葉に頷くと、フレイは後部シートへと座り、アスランはドアを閉めると運転席へを向かう。
それを見てニコルは助手席に座った。 - 48スレ主25/03/24(月) 20:01:11
「ニコル、なんで後ろに座らない?」
「大丈夫ですよ、彼女は何もしないと思います。ここはプラント本国なんですから」
ナチュラルの女性がコーディネイターの軍人に勝てるわけもなく、アスランはニコルの言葉に
納得すると「分かったと」ばかりに頷き、息を吐く。その様子にニコルが声をかけた。
「どうしたんですか、アスラン?イライラしてません?」
「……いや、別になんでもない」
アスランは、ニコルに答えるとアクセルを踏み込み、車を発進させた。 - 49スレ主25/03/24(月) 20:30:35
デブリベルト。コロニー[世界樹]の崩壊をきっかけとして出来た、地球圏の超巨大デブリ帯の通称がそれだった。
それに加えて近隣の惑星・衛星同士の重力が影響して、どこからともなく様々なデブリが集まってくる宙域でもある。
場所によっては高速でデブリが動く空間もあるため、極めて危険な宙域だが、
隠れる先として見た場合、悪くない所だった。
その中でも。比較的には通り易い場所を選びながら、慎重に進む艦艇の姿があった。
地球連合軍所属アークエンジェル。アルテミス要塞に入港拒否をされてから数日が経っていた。
実質戦闘部隊隊長の立ち位置に付いたムウは周囲警戒しながら乗機を進ませた。
しかし、彼が乗っているのは以前の愛機であるメビウス・ゼロではない。
『ムウさん、三時方向に連合艦があるわ。弾薬は使えそうよ』
充電ケーブルに繋がったまま、同型機で周囲警戒をする瑠璃から通信が入る。
「わかった。回収作業に入るぞ坊主二号」
『は、はい』
同じく同型機に乗るトールを連れ、ムウは物資の改修作業に入る。
『早く水を確保しないと稼働機がカンヘルだけになっちゃうわ。
あれ魔力さえあれば万全な状態になるから』
「それはさけたいな」
そう言いながら、ムウは新たな乗機となった改造ジンを動かし続けた。
- 50スレ主25/03/24(月) 20:47:35
ZGMF-1017AA ジンアークエンジェル仕様
琉生がデブリベルトに放棄されていたジンを回収し、アークエンジェルの戦力とすべく改造した機体。
肩部とバックパックを含めた背面部をストライクと同一規格に改造し、識別しやすさの為にトサカを外し、
モノアイはゴーグル型センサーに変更。左はイーゲルシュテルン、右は照準用センサーと弾倉を組み合わせた
バルカンポッドを頭部に装備し、手持ち武器もストライクと同じものを使えるようになっている。
(序に、ストライクとカンヘルもジンの武装が使えるように改良した)
センサー精度と有効範囲は大きく向上し、装備変更による汎用性も向上したが、
本体性能そのものは通常のジンと変わっておらず、G兵器と戦うには心許無い。
それでも現状のアークエンジェルにとっては貴重な戦力であり、予備を含め四機用意された。
画像は、瑠璃が乗ることが多いランチャーパック装備機。
- 51スレ主25/03/24(月) 21:05:28
メビウスストライカー
琉生がデブリベルトで回収した連合軍MAメビウスを利用して作ったストライカーパック。
コックピット等人間が乗る為に必要な部分を排除して小型化。更にジンのMMI-M8A3 76mm重突撃機銃や
ストライクのビームサーベルを装備させた後、操作用コードで繋いでガンバレルにした。
原作のAQM/E-X04ガンバレルストライカーと比較すれば、装備時の火力・機動性は上回る。
しかしかなり大型な為被弾率が高く、後ろに突き出したシルエットのせいで完全な宇宙専用。
現在はムウの専用装備である。 - 52スレ主25/03/24(月) 21:13:44
メビウスF
メビウスストライカーの序に琉生が製作した遠隔操作型無人MA。
早い話メビウスをドラグーンにした物である。
無人である為無茶な機動ができ、無線式なので絡まる心配も無い。
下部にストライカーパック用の接続プラグを装備しており、宇宙用高機動型を兼ねた
充電機になているだけでなく、装備した機体を無人MSとして操作可能。
ただし通常のドラグーンよりも負担が大きくなるため、使用者は
操作に集中して自機の操縦ができないという欠点がある。 - 53スレ主25/03/24(月) 21:39:44
アークエンジェルのブリッジでは、ナタルとノイマンがモビルスーツの訓練風景を見ていた。
「もうあんなに動けるのか……」
「フラガ大尉はともかくとして、あのケーニヒってのが、あそこまで動けるのは驚きですよ
……もたついているとは言え、一応動いてますからね……」
その横ではオペレーターのチャンドラとロメロが、新米ブリッジクルーに仕事を教えながら口を挟んで来た。
「アヤセ弟がナチュラル用のOS、組み上げちゃったんですよね?たしか半日かかってないって……。
ジンのセキュリティも突破して、そっちのOSも弄ったって言うし、どういう頭してんだか」
琉生が今さら放棄されたジンを動かして戻って来たところで誰も驚きはしないが、
ナチュラル用のOSを組み上げた事
……半分ぐらいはキラと共同作業……は、さすがに呆れ半分だった。
「ですが、ちょっとは気が楽になりますよ、これで少しは寝れますから」
チャンドラとロメロは手分けして索敵やら、通信管制を教え込んでいく。
ミリアリア、サイ、カズイの3人が地球連合軍の訓練生服を着て一生懸命に覚え込んでいた。
ミリアリアは頻繁にトールの機体を心配そうに見ている。どことなく膨れ面をしていた。
さらには協力をお願いされたオーブの歩兵小隊から4人程、
選抜された者達が同じくアークエンジェルの性能把握に努めていた。
副操舵手、CIC電子戦、火器管制、索敵。
少々不安そうではあったが、アークエンジェルの運用は基本、コンピューターの指示に従えば何とかなる。 - 54スレ主25/03/24(月) 21:39:59
彼らの所属や交戦規定については、ウズミ代表の黙認と、誰からともなくの暗黙の了解、
更には善意の協力という内容で、知らないふりをする事になっていた。ナタルですら何も言わなかった。
大きな問題だと分かっているが、睡眠欲と過労と、倒れ始めるクルーの前では規則・規定は邪魔だった。
アークエンジェルクルーは、デブリベルトに入ってから民間人やオーブ軍人達の協力を得て、
ようやく交代で休息を取れ始めていたのだ。
ただ、ナタルと正操舵手のノイマンだけはブリッジを離れられず、
ここ3日程、それぞれの席で仮眠を取りつつしのいでいた。
疲れからつい眉間を押さえるナタルに、フラガから通信が入る。
『こちらフラガ機。連合軍艦艇の残骸を発見した、これより物資の捜索に入る』
ナタルは感情を殺して了解と返した。
『こちらトールです。フラガ大尉の援護に行きます、いいですかバジルール少尉』
「ああ。構わない……ケーニヒ准尉。よろしく頼む」
『分かりました、行ってきます』
トールのジンがフラガの後を追っていった。ナタルはそれを見送って思わずため息をつく。
デブリベルト内での物資の探索をしつつ、友軍の勢力圏へ向かっているのである。綾瀬姉弟の発案だった。 - 55二次元好きの匿名さん25/03/24(月) 21:44:35
フレイの扱い、思ってより優しいな
- 56二次元好きの匿名さん25/03/25(火) 01:50:57
スレ主さん、ジョージ・アルスターは大西洋連邦の外務次官です。
wikipediaによると、日本の場合ですが
> 外務省における事務次官ポストであり、事務方において外務本省の最高ポストである[1]。
つまり文官のはずです
原作でキラが少尉と呼ばれるようになったのはハルバートン提督の計らいで志願兵としての書類をでっち上げた後のはずだけど、今回は流石に兵器として認識されているジンを作業のためとはいえ正規軍人と軍艦の指揮下で操縦するから、便宜上トールには准尉の階級を与えた方がいいと判断されたのかな?
ドラグーンって雛形であるメビウスゼロはあるけど、今のAAに技術があるとは思えないし、オリキャラとキラの共同作業で作成したのか?
- 57二次元好きの匿名さん25/03/25(火) 04:30:45
ニコフレかアスフレ目指してるのかな?
- 58スレ主25/03/25(火) 08:38:47
アルテミス周辺のデブリ帯へ逃げ込んだ当初、アークエンジェルは友軍との連絡を諦めてでも、
さらに奥へ進むしかなかった。宇宙はザフトのテリトリーだった、月の周辺まで行けばそうでもないが、
それ以外はどこかしらザフト艦がうろついている。哨戒網にかかれば終わりだった。
正直、力ずくの突破はできないこともなかったが、弾薬類の欠乏と物資の不足、
ヘリオポリスから全く休めていないクルー達の体調の問題が、それをさせてくれなかった。
戦闘につぐ戦闘でついにダウンする者が出始めたのだ。
民間人は不安を増大させており、どこでもいいから早く降ろしてほしいと声が増え、説明と説得に
マリューとナタルの責任者クラスが出張る事になり、手間が増えた分、艦の方針決定に遅れを出した。
物資の方は特に水の不足が深刻で、ザフトが待ち構えているのを覚悟で、アルテミスに引き返す案まで出た程だ。
しかしそれに伊の一番で反対したのが琉生だ。彼は第三次世界大戦が起こった世界に迷い込んだ時、何をどう
間違えたのか戦争の首謀者を倒すための多国籍合同部隊に参加していた。しかし部隊の最高司令官が
裏切り者の内通者だったために全滅、生き残りは自分を含めた数名のみだった苦い経験から、
派閥争いに神経質なところがある。実際ザフトが居なかったとしても、良い結果になる可能性は低かった。
そこで綾瀬姉弟が、このままデブリ帯からデブリベルトまで進み、
そこで遺棄された艦艇や残骸を捜索、物資の調達をすればどうかと言い出したのだ。
墓荒らしだ。誰もいい顔はしなかったが、ローティーンなうえ一番祟りに縁がありそうな二人が
率先してやり始めたので、結局はそれしかないと今に至っていた。 - 59スレ主25/03/25(火) 09:05:42
方針が決まってから綾瀬姉弟は、正に八面六臂の大活躍だった。
琉生は回収した残骸を基にアークエンジェルの艦載機を充実させ、負傷者の治療に
リラックス効果のある芳香剤の調合で避難人の不安を和らげた。
瑠璃は召喚獣が動物型なのを利用したアニマルセラピーで避難民を癒し、
アラートを鳴らす前に海賊の発見と対処、使える物資の捜索を行った。
さらには別の話で、綾瀬姉弟もさすがに疲れているのを見て、
今度はキラの友人達が艦の仕事を手伝うと言い出したのだ。
特にカズイは申し訳なさそうにしており、対してキラは、気にしないでくれ、
軍属になんてならないでほしい……と念を押して言ったのだが、逆効果だったようだ。
トールはトールで、琉生とキラにくっついてモビルスーツのOSを調整する助手をしていたら、
興味本意でやったシミュレーションで結構な適正を出してしまい、フラガがパイロット候補にしてしまった。
フラガの為に、ナチュラルでも使えるOSを組んでいる最中では、
止めるのは難しかった。何よりトール自身が望んでいた。 - 60スレ主25/03/25(火) 09:22:38
整備班員やモルゲンレーテ技術者達のどよめきが格納庫に響いた。
ムウが、改造ジンを歩かして見せたのだ。組み上げたOSを使って。
「ムウさん!シミュレーションをクリアしたのは分かりますけど。早すぎませんか?いきなり実機なんて」
「我慢ができないのさ。……よーし!歩いたぞ、いい感じだ!どうだ!作動チェックしてくれ、キラ!」
シミュレーションをさっさとクリアしたフラガが、意気揚々と改造ジンに乗って見せて、
そしてそれが、これまでにナチュラルが動かしたどのデータよりも、滑らかな物だと言うのが数字に出ていた。
興奮したのは整備班員よりも、モルゲンレーテ技術者達の方だった。
彼らはオーブ本国から、ナチュラルでも動かせるモビルスーツとOSの開発を命じられて、
ヘリオポリスに居たのだから。地上用は多少の蓄積があるが、宇宙はお手上げだった。
しかし今、アーマー乗りのエースが、という条件付きだが、確かにナチュラルが動かしたのを見たのだ。
中には泣いている者も居る。
それを尻目に、琉生はメビウスの改造を行った。
利用したのはメビウス・ゼロの設計と[F計画]のデータだ。
F(ファントム)計画とはG兵器開発と並行で行われたプロジェクトで、
メビウス・ゼロのガンバレルを無線化してより予測不可能なオールレンジ攻撃ができるようにするという物だ。
しかし無線操作技術の未成熟さが原因で、より高度な空間認識能力と並列思考能力を必要とするため、
機体操縦と同時に運用できる人間がおらず、機動兵器としては失敗と判断されて中止になったのだ。
だが母艦の護衛砲台としてなら使えるだろうと判断した琉生がメビウスを基に完成させたのだ。
序にメビウス・ゼロとストライクの予備部品で新たなストライカーパックを完成させた。 - 61スレ主25/03/25(火) 09:40:31
民間人が軍事兵器を動かした件も、志願兵ということにすればごまかしは効く。
そうして、ナタルとフラガ、マリューの責任の下で、現地徴用の野戦任官を受けたのが先日の事だった。
問題の大部分が解決して負担が減ったせいだろう。瑠璃の召喚獣である狼型の[不知火]と
羊型の[呑兵衛]に抱き着いたまま眠りこけるマリューとナタルの目撃情報は聞かないことにした。
しかし一番の問題はまだ解決していなかった。水不足だ。
綾瀬姉弟が魔法で水を作り出すことはできる。だが二人だけな上にそう言った魔法は専門外な
二人では飲料水分を生産するのが精いっぱいだ。無論無いよりはマシだが人間が生活するには
より多くの水を必要とする上に、機械整備にも大量の水を必要とする。
このままではアークエンジェルが戦闘艦として機能しなくなるのは明白だった。 - 62スレ主25/03/25(火) 10:41:38
アスランは車を止め、青ざめているフレイの傍に立っていた。
ニコルは乗り物酔いをしたフレイの為に飲み物を買いに車を離れていた。
「すまない、運転が乱暴過ぎたみたいで……立てるか?」
道端でうずくまっているフレイに手を差し伸べると、手をに払われる。
「――あ……、ご、ごめんなさい!」
フレイは、とっさにしてしまったとは言え、相手は軍人なのだ。自分のした事にさらに青ざめる。
アスランはフレイに対して、首を振り謝罪をした。
「いや、俺が悪かったんだ。本当にすまない」
フレイはアスランの謝罪に安心したのか、顔色は少しだけ戻る。
再び、アスランが手を差し伸べると、少し迷い、その手を取って立ち上がる。
「横になっていた方が気分も落ち着く。直にニコルも戻るから、シートに寝ててくれ。」
フレイは頷くと、車の後部シートに横になった。アスランは目の前の公園に走って行き、
ハンカチを取り出すと水で濡らしてすぐに車に戻った。ハンカチをフレイの額に置くと、運転席に戻り頭を抱える。
――俺は何をやってるんだ!? - 63スレ主25/03/25(火) 11:02:52
「あ、……ありがとう」
「あ、いや、気にしないでくれ。それよりも、大丈夫か?」
フレイは後部シートから頭を抱えるアスランを見つめると、お礼の言葉を言った。
アスランは、うな垂れるように聞き返す。まだ青い顔をしながらも、フレイは軽く頷いた。
「そうか……、最近、色々あって苛立っていて……、君には本当に悪い事をした」
アスランはフレイが頷くのを確認すると再び謝罪をし、言葉を続ける。
「君はヘリオポリスのカレッジにいたんだろ?友達は?」
「……脱出の時にはぐれちゃって……」
「……そうか。きっと、その友達も無事だと思う……」
「あなた達が攻めて来なければ、こんな事にならなかったのに……」
フレイは間を空けるように答えると、アスランは言った。
フレイには、その言葉が気休めに聞こえたのか、怒りと共に、涙がこぼれる。
「……俺たちにも非はあるが、あれは、地球軍が……あんな物を造るから…………」
アスランは、それ以上言うのを止めた。所詮は敵軍に所属している父を持つ娘なのだ。
何を言っても無駄なんじゃないかと思えた。今のアスランは、ニコルが早く戻るのを願うのみであった。 - 64二次元好きの匿名さん25/03/25(火) 11:42:42
双方苦労してるのがなんとも
- 65二次元好きの匿名さん25/03/25(火) 15:44:14
微笑ましいが、問題が解決してないなら笑えないな
- 66スレ主25/03/25(火) 16:23:33
フレイがアマルフィ家に身を寄せ、二日が経った。フレイは一人、
自分に宛がわれた部屋の窓辺で外を眺めていた。監禁される訳でもなく、窮屈な思いはしていなかった。
「……なんで、ナチュラルの私に優しく出来るの……?」
幼少の頃に母を亡くし母親と言う存在に触れる事の少なかったフレイに対して、
ニコルの母は優しく接したのだった。例え相手がコーディネイターでも、母は母なのだ。
その今まで実感する事が少なかった存在と厚意に、フレイの心の中は逆に申し訳なさと心苦しさが募るばかりだった。
丘の下に広がる街を見つめる。コロニーの中は戦時中にも関わらず活気があり、ヘリオポリスなどと変わらなかった。
プラント本国だから何かが違う訳でもなく、そこには地球と同じように、そこには幾万もの親子がいた。違うのは、
その人達のDNAに手が入ってるか入ってないかだけだった。
触れたガラスにフレイの顔が薄っすらと映る。すると、扉をノックする音がした。
「――あ、はい!」
「フレイ、朝食ですよ。下りてきてください」
フレイが答えると、ニコルが扉を開け顔を覗かせる。
「どうかしました?」
「ううん」
フレイの様子にニコルは声をかけると、フレイは首を振り食事の為に部屋を出る。
ニコルは半歩前を歩き、階段を下りてゆく。 - 67スレ主25/03/25(火) 16:25:40
ニコルは思い出したように、階段半ばで振り向き、午後の行動を伝える。
「あ、そうだ。午後には買い物に行きますから、昼食が終わってゆっくりしたら出かける準備をしてください」
「買い物?」
「ええ、あなたの身の回りの物を買いに出かけるんです。今のある服だけでは足らないでしょう?」
フレイは聞き返すと、ニコルは頷き言葉を続けた。今、着ている服はニコルの母の物で、
フレイの年齢では上品過ぎるくらいで、まだ若すぎるフレイには正直、似合う物ではない。
ニコルの言葉にフレイは驚き、聞き返した。
「――え!?……いいの?」
「ええ、気にしないでください」
「ありがとう!」
フレイはニコルの快い返答に、さっきまでの心苦しさも吹っ飛んだかのように、機嫌よく感謝の言葉を伝えた。
二人はリビングを通りダイニングルームへと入ると、テーブルにはアスランがコーヒーを飲みながら
ニュース映像を見ていた。
「アスラン、お待たせしました」
「ああ。……フレイ・アルスター、午前中は何かしていたのかい?」
「え!?……ええ、外を眺めていたの」
ニコルの声にアスランは答えるとフレイを気にするかのように声をかけた。
フレイはアスランからの声が予想外だったのか、少し戸惑いながらも答え席に着く。 - 68スレ主25/03/25(火) 16:25:53
様子からして、アスランもフレイも、お互いを苦手としている感じだった。
厨房から料理をトレイに載せて中年の横幅のある人の良さそうな家政婦が出てきて、
テーブルに手際良く昼食を並べてゆく。
「……あの、ニコルのお母様は?」
「はい、お嬢様。奥様なら旦那様とお出かけになられました」
フレイはニコルの母が見当たらないのを聞くと、家政婦は微笑みを湛えながら答え、リビングルームを後にする。
「それでは、いただきましょうか」
ニコルの声で、三人でのゆっくりとした昼食が始まった。 - 69スレ主25/03/25(火) 17:28:00
ザフト軍基地内のハンガーでは整備兵達が奪取したGATの修理に追われていた。
イージスは見た目は問題無さそうだが関節部の摩耗が酷く、細かい傷で塗れている。
残りの三機はすべて中破状態で完全再生をしなければならかった為に、さらに時間を要するようだった。
休暇にも拘らず、修理が行われている機体を見上げるイザークとディアッカの姿があった。
「あと、どのくらいかかるんだかな?」
ディアッカはバスターを見上げながら、ぼそりと言う。
「俺が知るか」
「イザーク、なに怒ってんだよ?」
「これが怒らずにいられるか!あれだけ情けないやられ方をしたんだぞ!」
イザークは修理されている機体を見て、先日の戦闘を思い出し機嫌を悪くしていた。
その態度にディアッカは呆れるように言う。
「仕方ないだろ……。相手が予想以上に強かったんだから」
「ディアッカ!貴様――」
「ったく、それだけ、かっかしてて、よく頭の血管が切れないよな」
ディアッカのサバサバした言葉にイザークは険しい顔をする。そこに涼しい顔をしたままでディアッカは
言葉を続けた。馬鹿にするような言葉にイザークの顔が赤鬼のように変わってゆく。
その表情に、一瞬、ディアッカの背中を冷たい物が流れた。
「――き、きさまーっ!」
怒りを爆発させたイザークの背後に、ディアッカは炎を見た気がした。――やべっ!俺、殺されるかも……。
ディアッカは、脂汗を浮かべながらイザークの見えない炎を消す事に必死になる。
腰が引け気味に、誤魔化しながら早口で捲くし立てた。 - 70スレ主25/03/25(火) 18:14:51
「――イザーク、冗談だ、冗談!そ、それよかさ、イザーク、
お前、家に帰ったんじゃなかったか?お袋さん、きっと寂しがってるんじゃないか?」
「い、家には帰った――」
イザークはディアッカの言葉に固まったように動きを止めると、慌てたように口を開き、
違う意味で顔を赤らめ、目線を外す。ディアッカはイザークの母、エザリア・ジュールの息子への
可愛がりぷっリを良く知っていた。火消しの第一段階に成功したことを確信して、言葉を続けた。
「……もしかして、お袋さんがベッタリ過ぎて逃げてきたのか?」
「……」
イザークは、さらに顔を赤らめると、黙ったまま視線を合わせようとしなかった。
「息子想いの、いいお袋さんじゃないか。正直、うらやましいぜ」
ディアッカは、冗談抜きに言った。両親が口うるさい上、忙しいのもあるが、
ディアッカ自身の性格からか親離れが早く、イーザクほど可愛がられた事は記憶になかった。
たまには、ああ言う風に可愛がられてみたいとも思う。
イザークは予想外に大好きな母を褒められ、さらに赤くなり、誤魔化すように言う。
「……ああ、そう言うディアッカは、どうしてここにいるんだ?」
「いや、帰ってはみたんだけど、うちの親父、俺が軍に入るの反対してただろ。どうも落ち着かなくてさ……」
頭の後ろを掻きながらディアッカは答え、審問会の後に正式に自分専用の機体になったバスターを再び見上げる。
「俺の機体、早く直らねえかな……」
ディアッカは、まるで恋人の帰りを待ちわびるかのように呟いた。 - 71スレ主25/03/25(火) 20:21:13
辺りの景色は夕方らしく、空はオレンジ色に染め上げられたいた。
車の後部座席の半分を、フレイの服や生活雑貨が詰まった買い物袋が占領している。
その隣には、満足いく買い物を出来たのか、上機嫌なフレイの姿があった。
「ニコル、帰りに寄りたい所があるんだ。この辺りで俺を下ろしてくれないか?」
助手席に座るアスランが、ハンドルを握るニコルへと言った。
「どうしたんですか、アスラン?時間がかからないなら、僕は待ってますよ。フレイ、いいですか?」
「ええ」
「それじゃ、決まりですね」
ニコルは聞き返すと、フレイに了承を得ようと問いかける。
フレイが頷くのを確認すると、アスランに多数決で決まったと言わんばかりに告げた。
「……ニコル、たまに強引になるな、お前……」
アスランは呆れて、思い切り溜息を吐いた。
「たまの休みに、せっかく一緒にいるんですから、もったいないじゃないですか」
「……ん、楽しい場所じゃないぞ。それでもいいなら頼む」
ニコルの言葉に、アスランは、本当に友達思いの奴だと思った。自分が行く場所を考えれば気が引けるが、
ここは甘える事にした。アスランは行き先を伝えると、車は小高い丘の方へと向かう。
その先には、アスランの母が眠る墓地があった。
墓標が並ぶ脇の整地された道端に車を止めると、アスランはドアを開け車を降りる。 - 72スレ主25/03/25(火) 20:22:09
「アスラン、つきあいますよ。フレイ、待っててください」
「えっ!……私一人で?」
ニコルは車の外にいるアスランに言うと、フレイに告げる。
フレイは墓地と言う場所柄、一人取り残されるのが嫌なのか、不安そうな表情だった。
「一緒について来ますか?」
「……ええ」
ニコルが表情を見ながら聞くと、フレイは頷き、車を降りた。
アスランは二人がついて来ると思いもせず、驚くように二人を見た。その表情にニコルが真面目な顔で言う。
「いいじゃないですか。僕にもアスランのお母さんに祈りを捧げさせてください」
「……わかった」
アスランは諦めたかのように頷くと母の墓標のある方へと歩き出す。
ニコルとフレイもアスランを追うように歩き始めた。
フレイは前を歩くアスランの背中を見つめながら、ニコルの言葉を思い出し、
アスランと初めて共通する事がある事に気づいた。――この人もママがいないんだ……。
そう思うと、車酔いをした時に、アスランが濡らしたハンカチを額にのせてくれたの事を思い出した。
フレイの嫌うコーディネイターだが、アスランが優しいのはわかる。なんとなくだが、声をかけた。
「……ねえ、……あなたのママも死んじゃったの?」
「ああ。君もか?」
「……うん。……私がまだ小さな頃に……」
アスランはフレイに歩調を合わせると頷き、聞き返すと、フレイは目線を落としながら答えた。
「……そうか。君に嫌な事を思い出させるような場所につれて来てしまったな
……それに、この前の事もある。君には、本当にすまないと思っている」 - 73スレ主25/03/25(火) 21:34:16
アスランは申し訳なさそうに言うと、フレイは首を横に振り、
「気にしていない」と答え、改めてアスランに躊躇いがちに聞き直した。
「あなたのママ、……どうして……死んだの?」
「……母は……ユニウスセブンにいたんだ……」
「――あ……、ご、ごめんなさい!」
「……いや、ナチュラルは憎いが、君が母を殺したわけじゃないんだ。気にする事はない」
フレイはアスランの死因を聞いてしまったのを後悔し、思わず謝罪をした。
その言葉はナチュラルとして謝罪をしたわけではない。
しかし、アスランはフレイの言葉を「ナチュラルの一個人としてからの謝罪」と受け取ったようで、
小さな誤解があったのをお互いに気づく事はなかった。
アスランは母の墓標の前に来ると、方膝をつき祈りを捧げ、立ち上がる。
するとニコルが「僕もいいですか?」と聞き、アスランと同じように祈りを捧げる。
フレイは「三人で来て自分だけ祈らないのは、おかしいかな?」と思い、アスランに聞く。
「……ねえ、私も……いいかな?」
「え!?……ああ、ありがとう。母にはナチュラルの友人が多くいたようだし、きっと喜ぶと思う」
アスランは、フレイの申し出に驚きながらも、母の為に祈ってくれると言うフレイに感謝をした。
フレイはニコルに続き、アスランの母、そして、自らの母にも祈るのだった。 - 74スレ主25/03/25(火) 21:34:45
その姿に、連合事務次官の娘であるフレイを偏見で見ていたのではないかと、
アスランは思った。フレイが祈りを終え、立ち上がるとアスランは口を開く。
「俺は、君が連合事務次官の娘と言うだけで誤解をしていたようだ……」
「……え?」
「お互いに話をして理解しあえれば……俺も、母を見習わないとな……。
前は、手を取って貰えなかったが、出来る事なら……」
アスランの意外な言葉と差し出された握手の手に、フレイは驚きの表情を浮かべ、
少し迷い、躊躇いがちにアスランの手を取り握手をする。アスランの手はナチュラルと同じように暖かい。
「無理やりだったら、すまない……ありがとう」
「……ううん」
アスランは、フレイに対して初めての微笑んだ。
フレイも、ぎこちなくだが微笑む。フレイの中でコーディネイターへの偏見は消えてはいないが、
アスランやニコルなら信頼できるのではないかと言う思いが芽生え創めていた。
その二人を見ていたニコルが、少し拗ねたようにブーイングを上げる。
「アスラン、フレイ、ずるいですよー」
「ニコル……」
アスランもフレイもニコルの子供っぽい表情に目を丸くすると、お互いに目を合わせて笑う。
「なにが可笑しいんですかー?フレイ、僕とも握手をしましょう!」
三人のそれぞれの胸の中に違いはあるであろうが、少しだけ明るい未来が見えた気がした。 - 75二次元好きの匿名さん25/03/25(火) 22:47:23
アスフレの匂いがします
- 76二次元好きの匿名さん25/03/26(水) 02:38:31
綾瀬兄妹のチートっぷりで戦闘の難易度は下がり、G3機は中破で復帰まで時間がかかる。
クルーゼかやりすぎたのでアデス艦長が警戒してこれからより強くストッパー役をしそうだし、戦闘はイージーっぽいのに、AAが原作よりハードモードっぽいのはなんでじゃ!?
兄妹の超常現象っぷりがデコイになってる事とフレイがいない事でキラの負担は軽減してるはずなのに、オーブ軍人の協力が得られているのに原作よりハードモードを突き進むAAよ
ナタルさんですら何も言わないってのが端的にヤバさを表してるし、兄妹が八面六臂の活躍をするってのはしなくてはいけないってことだし、よく考えればローティーンが軍艦で活躍ってまずい構図だし、後で合流するハルバートン提督がでっち上げたMSやストライカーの扱い共々頭抱えるやつだコレ… - 77二次元好きの匿名さん25/03/26(水) 04:36:59
主さんアスフレ目指してるだろ
- 78スレ主25/03/26(水) 10:47:14
メビウスストライカーを装備したムウのジンが、カンヘルとメビウスFと共に周囲散策をしていた。
出撃してデータを持ち帰るたびに、琉生とキラがOSを改良して使い易くなっているはずだが、
ここ最近は動きが悪くなってきている。
弾薬・補修部品・食料・医薬品・衣類等の生活物資は皆の協力で上限まで備蓄できた。
しかし相変わらず水はほとんど確保できてないため、応急的な整備しかできていないのだ。
琉生は「ジンを使い捨てにしていいなら何とかなる」と言ったが、負担を増やす真似はしたくなかった。
(まいったね、俺は不可能を可能にするんじゃなかったのかよ)
そう思いながら、琉生から貰った非常食を胃に流し込む。
食感と喉越しは硬めのプリンを砕いた物。味は濃い抹茶と蜂蜜を混ぜた感じだ。
栄養価と保存性だけを考えた軍用携帯食(レーション)に比べたら十分すぎるほど食える味だし、
仮にこれが不味い代物だったとしても
『しっかし、デブリベルト。人類が宇宙に進出して以来、撒き散らしてきたゴミの山か…』
通信モニター越しの琉生が、イモリの黒焼きにかじりついている光景を見れば文句も引っ込む。
魔法を使うエネルギーの補充薬らしいが、最近綾瀬姉弟は暇さえあればそれを口にしている。
それだけ二人に掛かる負担が大きいという事なのだろう。
『矛盾だね。人は新たなフロンティアを宇宙に見出したというのに、誰にも汚されてない場所を
人は自らの手で汚していく。これじゃ、害虫と何が違うんだろうな……』
言い過ぎではないかと思ったムウだが、目前に見覚えのあるものが現れ、考えを改めた。
「はは…確かにな。俺達は害虫かもしれん」
人類の業。人が生きていけない世界に浮かぶ、人が住まうために作られた大陸。死んだ大地。巨大な墓場。
それにすがる自分達は、紛れもなく害虫だ。しかし、ムウはあえて視線を逸らさずにいた。
その業を背負って、自分たちは生きているのだからーー。 - 79スレ主25/03/26(水) 11:04:56
俺達の目の前には大陸と見間違う程に巨大な建造物の残骸……ユニウスセブンがあった。
ナチュラルとコーディネーターが本格的戦争を始めたきっかけとも言える悲劇[血のバレンタイン]。
唯の農業用のプラントだったユニウスセブンに地球軍が放ったと思わしき核ミサイルが全てを滅ぼした。
推定死者数、24万3721名。これはC.E.の歴史を語る上で決して忘れ去られる事はないだろう。
当時プラント理事国はプラントの食料の独自生産や自給自足を禁じてた。
つまり、ユニウスセブン自体は条約違反の違法建築だった。
(だからってな…軍事施設でもない場所に核撃つか?)
必要な物がないか探して扉を開けたその先には……
「「キャァァァァァァー!!」」
ミリアリアとキラの悲鳴が響く。幼い子供を抱いて宇宙の冷たさに凍りつき、
ミイラになって物言わぬ身体となった女性の死体があったのだから。
トールがこれ以上見せない様にミリアリアを抱きしめる。
「うっうっ……ルイ……」
「…ッ…」
キラも耐えられないのか俺に寄ってくる。
俺の視界には幼い子供の物と思わしき千切れたテディベアが浮かんでいた。
探せばレノア・ザラという女性の亡骸もあるのかもしれないな。気が滅入るから探す気は無いが。 - 80スレ主25/03/26(水) 11:14:53
この時のキラのメンタルdice1d3=3 (3)
1.こんなの酷すぎる
2.ルイの体温、えへへ~(涎)
3.錯覚だけどルイのオイニー(涎)
- 81二次元好きの匿名さん25/03/26(水) 12:44:24
おい!キラがヒドインになってるぞ!
- 82スレ主25/03/26(水) 13:03:14
「あそこの水を!?本気なんですか!?」
キラが怒気を込めて言うのは、そこで見た光景に由来していた。戦争のせいで、
復興や遺体の回収すら行われなかったユニウスセブンには、多くの被災者の遺体があった。
大人に子供、老人も含めて、ありとあらゆる無関係な一般市民が、宇宙の冷たさに凍りつき、
ミイラとなってユニウスセブンに漂っている。
同行したミリアリアも、あまりの衝撃でしばらく部屋に閉じこもってしまったほどだ。
「ーーあそこには、一億トン近い水が凍り付いているんだ」
ナタルの言葉は、あまりにも合理的だった。ユニウスセブンはもともと農業用のプラント。
牧草地帯や田園地帯を維持するための莫大な水が、氷となって埋まっている。その氷から水を補給しようと言うのだ。
「でも!…ナタルさんだって見たでしょ?あのプラントは何十万人もの人が亡くなった場所で…それを…」
「水は、あれしか見つかっていないの」
キラの言葉を、マリューが無慈悲に遮る。水は、あそこにしかない。その現実が、重くのしかかる。
広いデブリベルトを探せば、他にも水はあるだろうが、近場で見つかる保証も無いし、量がある保証も無い。
キラは陰鬱そうに項垂れる。彼女が感じてる気持ちは正しい。だが、その正しさでどうにかなるほど現実は甘くない。
「誰も、大喜びしてる訳じゃない。水が見つかった!ってよ…」
「フラガ大尉…」
「誰だって、できればあそこに踏み込みたくはないさ。けどしょうがねぇだろ。
俺達は生きてるんだ!ってことは、生きなきゃなんねぇってことなんだよ。
今までやってきたことと比べたら何が違うって言われたら黙るしかないしな」 - 83スレ主25/03/26(水) 14:13:09
その言葉が、今の全てだった。自分達が呼吸をし、生きている以上、ユニウスセブンから
取り出さなきゃならない物資がある。それを、道徳的な感情を優先して無視すれば、今度はこちらが死に直面する。
生きるためには、必要なことだ。そう、言い聞かせるしかないんだと、誰もが言った。
俺はテキパキと準備を進める。姉貴もだ。
キラ「ルイは、なにも…なにも感じないの?」
気がつくと、キラはそんなことを俺に問うていた。サイやトール、カズィも同じような眼差しで、俺を見つめる。
「魔法使い(ファンタジー側)の身でいうのもなんだけどさ、向き合わないといけない現実って奴は
いくらでもあるんだ。その時の感傷なんて一切お構いなしに」
脳裏にこれまでの事が浮かび上がる。4の運命を先延ばしにすることしかできなかった恩人。
結局救えなかった初恋の相手。都合よく時間を巻き戻すことはできない。
向き合い、背負っていくことしかできなかったことが多々ある。魔法も所詮万能の力ではないのだから。
「そんな経験何度もしてるから、薄れちまってるんだよ。死を悲しむ、っていう気持ちがさ」
それに、キラ達は何も言わなかった。 - 84スレ主25/03/26(水) 14:15:24
- 85二次元好きの匿名さん25/03/26(水) 14:19:51
- 86スレ主25/03/26(水) 15:30:19
地球側が支援で作ろうとした工業用コロニーを、プラントは自国の自給自足のために農業用に違法に改造した。
ユニウスセブンに住む科学者や住人も、ブルーコスモスシンパから見れば全てがテロリストに近い存在。
そのコロニーを攻撃の目標にするのは必然でもあっただろう。
だが結果はどうだ?
エイプリルフールクライシスが起こった。約24万人を殺した結果は、より多くの犠牲をもたらす報復が、
地球を深刻な危機に陥れるものとして返ってきた。世界情勢は互いを憎しみ合う根絶戦争へと転がり落ちたのだ。
(ほんと、ばかばかしい話だよな)
命の危険に晒されてきたコーディネーターが新天地を求めるのも、自力で生きていける
環境を作ろうとするのも必然だったはずだ。望んでコーディネーターに生まれた奴など一人もいない。
仮にコーディネーターが産まれてきてはいけない存在だったとしても、
産み出したナチュラルには同等以上の責任があるはずだ。
[背負わされた]当事者達にだけ、ありもしない[責任]を取って死に絶えろ?ナチスの亡霊かと言いたくなる。
そんなことを考えながら、俺達は折り紙で折った花をユニウスセブンに撒いた。
自己満足かもしれないけど、無断で行うのではなく、今自分達ができるせめてのもの葬いをしたい。
キラやミリアリアの言葉で、アークエンジェルクルーや避難民達総出で折り紙の花を作る事にした。
墓荒らしをするのだからこれぐらいはしたかった。
(どうか、安らかに) - 87スレ主25/03/26(水) 17:38:52
アークエンジェルから出た作業用モビルアーマー、ミストラルは氷の回収作業をしていた。
サイやカズィも、作業に当たっている。
俺達はその護衛をしつつ、同じく回収作業をしていた。
瓦礫に紛れて敵が近づいて来れば、気がつく前にミストラルが撃墜される危険性がある。
「…民間船?」
その中に浮かぶ民間船を見つけた。デブリの多くが撃沈してから時間が経っていたものが多かったが、
見つけた民間船は真新しく、受けている傷も古びた様子が無かった。
(エンジンの熱も残ってる、大して時間は経ってないな)
海賊か別の武装組織かは知らないが撃沈されたらしい。酷い真似をするものだ。
合掌で悼み、作業に戻ろうとしたその時
(救命ポッド?)
酸素は残ってるみたいだが、こんな場所に来る人間なんてそうそういない。
ほっといたらどうなるか分かったものではない。しかたないから回収しよう。 - 88スレ主25/03/26(水) 20:51:20
「つくづくこの船は、避難民と縁があるらしい」
ナタルさんの声に、諦めと苦々しさが混じる。これ以上避難民を増やされるのは困るわな。
俺としては頭を下げるしかない。ユニウスセブンでの作業を終えた俺達は、
艦橋で待機をしていた士官組も加わって格納庫へ集まっていた。
俺達の目の前には、俺が回収した救命ポッドが横たわっている。
マードックさんがロックを操作し、やがて「開けますぜ」と言った。
ハッチが微かな音を立てて開く。周囲に待機した兵士達が銃を構える。
「ハロ!ハロ!テヤンデー!」
開いたハッチから、ピンク色をした球型の物体が飛び出してきた。
ぱたぱたと耳が羽ばたくように動き、球の真ん中にはつぶらな目が二つ光っている。
何者が出てくるのかと身構えていた俺達が、その姿に毒気を抜けていくのが見てとれた。
「ありがとう。ご苦労様です」
今度はかわいらしい声が響く。俺達が慌てて視線を向け直し、その先でふわりと淡いピンクが漂った。
柔らかく揺れるピンクの髪と長いスカートの裾。出て来たのは、キラとそう歳が変わらなく見える一人の少女。
顔立ちと雰囲気から、童話の世界の姫を連想した。長いスカートの裾をなびかせて宙を漂う彼女は、
呆気にとられて誰も受け止めてくれないので、慣性で飛んでいってしまう。
俺が丁度いい位置に居たので、彼女を抱きとめる。
「ありがとう」
微笑みながら礼を言った少女だったが、俺が来ている制服を見てすぐに困ったような表情になった。
「まあ、これはザフトの船ではありませんのね?」
どうやら、俺は厄介事の種を拾ってしまったらしい。
- 89二次元好きの匿名さん25/03/26(水) 21:15:50
確かに厄介だけど、後々必要になる出会いだから困るよな
- 90スレ主25/03/26(水) 21:21:01
「ポットを拾っていただいて、ありがとうございました。私はラクス・クラインですわ」
「ハロ!ラクス、ハロー」
「これは友達のハロです」
「ハロハロ。オモエモナー。ハロハロ?」
ラクスと名乗る少女はニコニコと自己紹介を済ますと、手に載せたピンク色のハロを、
目の前のマリュー達に紹介した。その緊張感のないラクスの姿に、マリュー達三人は気が抜けるような思いだった。
拾った責任者として同席した俺達姉弟もこめかみを抑える。
「……ハァ」
「……やれやれ。クラインねぇー。彼のプラント現最高評議会議長も、シーゲル・クラインといったが……」
「……あっ……」
マリューが溜息を吐くと、ムウも呆れながら思い出したように口を開いた。
ムウの言葉に、マリューも思い出したように驚いたような顔をすると、
ラクスも同様に父の名が出て来た事を驚いているようだった。
「あら~?シーゲル・クラインは父ですわぁ。御存知ですの?」
「……おっ!……ハァ……」
「……」
「……あっ!……ハァ……。そんな方が、どうしてこんなところに?」
マジモンのプラントの姫だ。特大の爆弾である。ラクスののほほんとした口調に、ムウもナタルも
「この少女は状況を読めないのか」とばかりにも呆れ返る。 - 91スレ主25/03/26(水) 21:23:00
マリューもムウ達と同様に溜息を吐き、ラクスに聞き返すと、
ラクスは民間船がユニウスセブン宙域に来ていた理由を話し始めた。
「私、ユニウスセブンの追悼慰霊の為の事前調査に来ておりましたの。そうしましたら、地球軍の船と、
私共の船が出会ってしまいまして……。臨検するとおっしゃるので、お請けしたのですが……」
ラクスは、そこで一度言葉を止めると、悲しそうな表情を浮かべ、再び口を開く。
「地球軍の方々には、私共の船の目的が、どうやらお気に障られたようで……些細ないさかいから、
船内は酷い揉め事になってしまいましたの。そうしましたら、私は周りの者達にポットで脱出させられたのですわ」
「なんてことを……」
「そう言う事だったのか……」
要約すると地球軍が民間船をムカつくから、叩き落としたというわけだ。絶対ブルーコスモスだろ。
倫理観も引き金も軽すぎると改めて思うぞこの世界。
「あの後どうなったのでしょう……。皆も無事だと良いのですが……」
「残念だが、無事なポッドはあんたの分だけだったよ」
下手に希望を持たせてもな。地に付くような深いため息が出た。 - 92スレ主25/03/26(水) 21:56:25
「しっかしまぁ、水の問題が解決したと思ったら、今度はプラントのお姫様か。
悩みの種が尽きませんなぁ。艦長殿!」
「……あの子もこのまま、月本部へ連れて行くしかないでしょうね……」
苦しそうに言うマリューに、ムウが頷く。
「……仕方ないだろうな。月以外に帰港予定がある訳でもないんだ。どこかで降ろす訳にもいかないだろう」
マリューはラクスを憐れんでか、沈んだ顔になる。月の本部に連れて行ったとしたら、
彼女の身柄は取引材料として扱われることになるだろう。ラクスの意思を完全に無視した形で。
「……出来れば、そんな目には遭わせたくないんです。民間人の、まだあんな少女を……」
「そう、おっしゃる事は分かりますが、彼らは?こうして操艦に協力し、
戦場で戦ってきた彼らだって、まだ子供の民間人ですよ」
「バジルール少尉、それは……」
ナタルが少し現実を見るようにと、少しきつい感じで言うと、マリューは戸惑うが、ナタルはそのまま言葉を続けた。
「アヤセ姉弟や彼らを、やむを得ぬとはいえ戦争に参加させておいて、
あの少女だけは巻き込みたくない、とでもおっしゃるのですか?」
「……」
「……彼女はクラインの娘です。と言うことは、その時点で既に、ただの民間人ではない、と言う事ですよ……」
「……」
ナタルの言葉に、元々俺達をアークエンジェルに乗せたのはマリュー自身だったのを思い出すと、
何も言えなくなり、さらに表情を暗くした。仕方ない、助け船を出すか。 - 93二次元好きの匿名さん25/03/27(木) 04:34:41
ルイって実質何歳なんだろ
- 94スレ主25/03/27(木) 08:44:52
「ナタルさんは彼女を軍事利用すべきだと?」
「…軍人として、全うすべき事はあるはずだ」
「そりゃそれは修羅道だ。貴女の言うことを客観的に見れば、兵士は単なる駒であるべきだってなる。
そんなことが許されるのはSFに出てくるロボット兵軍団だけですよ」
たしかにその考えは、戦場を生き抜く指導者として必要ではあるだろう。
しかし、それはあくまで正規部隊での話である。ナタルは一つ大きな間違いをしている。
今のアークエンジェルは、経験豊富な正規軍人で運用されているわけでない。
不慣れな下士官たちと、それに協力してくれている民間人の力で成り立っている。
その中で厳格な軍人思考を持ち込むのは、ナンセンスだ。
「少なくとも俺達は貴女方の手助けをするために協力してる。
俺達と、今回保護した彼女を同列視はしてはならないと思うぜ」
戦闘になれば、非情に徹する必要があるのが軍人だ。
しかし、非戦闘時も非情になるというなら、それは軍人ではない。
「戦略に感情を含めれば負ける。しかし、向かう指針に道徳心を欠くようになっては最早殺戮者と大差ない。
ナタルさん、堅物の貴女には難しいかもしれないけど、そこを忘れてはいけないと思いますよ」
魔法使いは自他関係無く心と向き合わなければならない。
そうしないと簡単に悪い方に転ぶ。
「マリューさん。とにかく、彼女をどうすることもできない。今は友軍との合流が優先だ。
それが終わってから改めて話し合いをしましょう」 - 95スレ主25/03/27(木) 08:46:10
琉生の実際の年齢13+dice1d100=88 (88)
- 96スレ主25/03/27(木) 09:59:09
握手をした日から、また数日が経ち、アスラン達はフレイと過ごす事に慣れ始めていた。
いつも通り共に食事を取り、食後のお茶を楽しんでいた。
アスランは食事を終えフォークを置くと、フレイに声をかける。
「すまない、ポットを取ってもらえるか」
「うん、はい」
「ありがとう」
紅茶を飲んでいたフレイがポットを差し出すと、アスランは礼を言って受け取った。
「アスラン、砂糖かミルクは要りますか?レモンもありますけど?」
「いや、俺はストレートでいただくよ」
ニコルがアスランに何か入れるかを聞いて来ると、アスランはそれを断り、一口、紅茶を口に含んだ。
アスランとニコルは、軍人になってからは、こんなにゆっくりとした過ごす日々など、
ここ最近ではあまり無かった。実感するようにニコルが口を開く。
「それにしても本当にのんびりしてますね」
「そうだな」
「こんなに纏まった休暇は、なかなか取れないですからね」
アスランが頷くのを見ると、ニコルはニコニコしながら言った。
プラントでは十五で成人となるが、戦争さえ起こらなければ、まだまだ遊んでいたい年頃なのだから仕方がない。
プラントとザフト軍の事情を詳しく知らないフレイは二人に聞く。
「どのくらい、お休み貰ったの?」
「……ん、とりあえずはモビルスーツの修理が終わるまでだな」
「だから、いつ休暇が終わるのか分からないんですよ」 - 97スレ主25/03/27(木) 09:59:54
「……お休みが終わったら、また……地球と戦うの?」
二人の言葉をを聞くとフレイは俯き加減に言葉尻を濁しながら言った。
「……そう言う事になるな……」
「そうですね……」
アスランとニコルは気まずそうに答えと少しの沈黙が支配する。
アスランが真剣な表情でフレイを見つめながら、沈黙を破るように口を開いた。
「……フレイ。頼みがある」
「……なに?」
「君が地球に戻ったら……軍には入らないでほしい」
アスランの言葉にニコルもフレイも驚きながらも、その表情に見入った。
アスランはそのまま言葉を続ける。
「こうして、知り合った……友達、なのか、な?……俺は、そんな人達と戦いたくないんだ」 - 98スレ主25/03/27(木) 10:00:16
アスランは途中、自分の言った事に照れる素振りをしながらも、最後には、真剣な表情で言い終える。
その心の中では、キラの顔が浮かんでいた。ニコルもアスランと同じ気持ちだったのか、フレイに向き直り口を開く。
「僕からもお願いします。フレイ、地球に戻ったら、絶対に軍には入らないでください。
僕もフレイと戦いたくありませんから……」
フレイは二人の真剣さに優しさを感じた。――アスラン、ニコル……。
「……うん」
元より軍に志願するつもりの無いフレイは真剣な表情で頷く。
「……フレイ、ありがとう……」
「ありがとうございます!フレイ!」
アスランもニコルも、フレイの返答に表情が緩み、うれしそうに礼を言った。
それぞれが笑みを浮かべ、この約束が破られる日が来ない事を願った。 - 99二次元好きの匿名さん25/03/27(木) 11:18:18
まさかの精神年齢百歳越え
- 100二次元好きの匿名さん25/03/27(木) 12:27:46
なんかルイが仙人に思えてきた
- 101スレ主25/03/27(木) 18:17:42
アークエンジェルの中ではラクスを救助してから一晩が明けた。艦内は穏やかな物だった。
物資の問題は解決し、非番だった私達とヤマト家、友人達は食堂に集まっていた。
琉生は水問題が解決したので、気兼ね無くコーヒーを飲んでいる。ずっと飲めなかったからいい顔してるわ。
皆シャワーを浴びれない状態だったのに、芳香剤調合のせいで琉生だけいい匂いがしてたから、
女性陣から白い目で見られてたのよね。私も含めて。
後サイ・トール・カズィはルイのコーヒーを飲んで顔を顰め、カフェオレにして飲み直してる。
琉生の好きなブレンドは漢、というより雄の味ってかんじだから、香りはいいけど苦味とコクがすごいのよね。
ハルマさんは口に合うらしく一緒に飲んでるけど。カリダさんは専用のブレンド渡してるみたいね。
「あのぉー」
「?」
どこからか、かけられた声に全員が不思議そうな表情をになる。
「ハーロー。ゲンキ!オマエモナ!」
「――あっ!」
「……驚かせてしまったのならすみません。私、喉が渇いて……それに笑わないで下さいね。大分、
お腹も空いてしまいましたの。こちらは食堂ですか?なにか頂けると嬉しいのですけど……」
全員が食堂の入り口に視線を向けると一様に驚いた。
ラクスは、みんなを驚かせてしまったのを悪いと思ってか、
謝ると食堂に出向いた理由に恥ずかしそうな表情をしながら伝えた。
その側では、ハロがピョンピョンと楽しそうに飛び跳ねている。 - 102スレ主25/03/27(木) 21:26:27
キラが慌てるように口を開く。
「――っで、ってちょっと待って!」
「鍵とかってしてないわけ……?」
「あら?勝手にではありませんわ。私、ちゃんとお部屋で聞きましたのよ。
出かけても良いですかー?って。それも三度も……」
「そう言う問題じゃないと思うけど……」
カズイが艦内の警備が行き届いてないのに不安そうな表情をすると、ラクスは空気が読めないのか、
ニコニコとしながら言った。ラクスの言葉にカズイが呆れたようだった。
「いや、そもそも鍵掛かってただろ」
「それならピンクちゃんにお願いしましたわ」
「テヤンデイ!」
いや軍艦のセキュリティ突破できるペットロボってなに!?
久し振りのコーヒーブレイクに水を差され、琉生が目に見えて不機嫌になる。
「姫さんよ、ここは連合の船だ。ブルーコスモスに賛同する馬鹿もいるだろうから、出歩かない方がいいぞ」
それに対して、ラクスはふくれっ面になる。
「また、お部屋に戻らなくてはなりませんの?わたくしもみなさんと、お話しながら頂きたいですわ」
「本気で言ってんのか?」
「え?」
いわゆる壁ドンで、琉生はラクスを隅に追い込む。 - 103二次元好きの匿名さん25/03/27(木) 21:27:30
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- 104二次元好きの匿名さん25/03/27(木) 21:28:11
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- 105スレ主25/03/27(木) 21:59:35
「この艦には、ザフトに攻撃されてコロニーが壊れたから乗っている人も多い。ここに居る俺達もそうだ」
「それは……」
ラクスが息を呑んだ。表面上は変わらないように見えるが、よくよく見れば、少し顔色が悪くなっているし、
呼吸も少し浅く、目も若干揺れている。
「そんな状況で若い女が1人。どうなるかなんて簡単にわかるだろ」
この天然さが演技かどうか確かめたいらしく、琉生が凄む。
その時だった。ラクスのお腹から可愛らしい音が響いた。途端に、ラクスの顔が真っ赤になる。
「ブフッ」
琉生は堪えきれずに、体を震わせるとラクスから離れた。見れば私も含め一同揃って笑っている。
ホントに毒気の抜けるお姫様だこと。
「だよな。腹減ったよな」
「ち、違いますわ!い、いきなりなんなのです!?」
まあ、緊張とストレスがお腹にいったのだろう。タイミングは完璧だったが。
なんか、あれこれ考えてるのがバカらしいわね。その後、しばらくわちゃわちゃしてから食事となった。
ラクスは恨みがましい目で、琉生を見ている。恥をかかされたので当然だけど。
「貴女プラントのお姫様なんでしょ、ナチュラルが怖くないの?」
一応私も聞いてみる。パタパタと、ラクスが持つハロの羽のようなパーツが揺れる。
しばらく、ラクスは私を見つめてから、にこりと優しく微笑む。
そこには少女のようなあどけなさはなく、どこか慈愛に満ちた表情であった。 - 106スレ主25/03/27(木) 22:00:00
「わたくしは、コーディネーターである前に、ひとりの人間ですもの。
助けてくださった方々と仲良くしたいと思う気持ちは、間違ってるのでしょうか?」
「ま、それが普通なんじゃないの?俺だって、戦争なんてテレビの向こう側で起こってて、
自分達には関係ないと思えたら、その国の人間とも仲良くできるもんだ。
ヘリオポリスで暮らしてたら何となく理解できるんじゃない?」
そうね、現代日本で暮らしてるとわかるわ。
「戦争ってのは、憎しみを人の心に植え付ける力を持ってる。それも根深くな。
けどそれをどうにかしない限り、このくっだらねぇ戦争も終わらないんだよ」
撃たれたから撃ち返し、殺されたから殺し返す。その連鎖の積み重ねが今のこの世界だ。
ラクスも悲しげに視線を落とした。
「悲しい日々が続きますもの。私も、こんな戦争は嫌いです」
彼女の本心に判断はつかないけど、この破滅的な戦争に悲しみ嘆いてるのは確かみたい。
「あなたは意地悪ですけど、優しいんですのね」
だいぶ年相応の表情になってきた。最初のゆるふわ笑顔固定より好感持てるわ。
ラクス「お名前を教えていただけますか?」
ウィル「琉生。ルイ・アヤセ」
名前を聞いたラクスは、年相応の軽やかな笑顔を浮かべた。なんかずいぶんいい雰囲気になってるわね - 107スレ主25/03/27(木) 22:00:34
ラクス>琉生 20+dice1d100=97 (97)
琉生>ラクス 20+dice1d100=56 (56)
50以下で仲のいい姉弟
60以下で自覚は無いけど異性として見てる
70以下で自覚ありで異性として見てる
80以下で夜のおかずにしてる
それ以上だと二人きりの時に押し倒しそうになる
- 108二次元好きの匿名さん25/03/28(金) 03:38:49
一目惚れですわ・・・?
- 109スレ主25/03/28(金) 08:02:49
すると不機嫌そうな顔をしたキラが、わざとらしく咳払いをする。
「それじゃ、部屋に戻るか」
「もうすこし、この船を見て回りたいのですが…」
「許可が下りねぇよ」
その様子を、キラがますます不機嫌そうに見送る。
「あらあら、強力なライバル出現ね」
カリダさんが微笑ましそうに見てる。
「キラ、貴女ならわかるでしょ。琉生は付き合いが濃くなるほど良さに気付いて惚れられちゃうタイプよ。
おまけに惚れられた相手に好意を持つタイプだから、うかうかしてると取られちゃうわよ」 - 110二次元好きの匿名さん25/03/28(金) 12:31:15
ほぼ最大値引きやがった
- 111二次元好きの匿名さん25/03/28(金) 14:02:57
キラが本編の性格なら身を引きそうだけどどうなるかね
- 112二次元好きの匿名さん25/03/28(金) 14:54:34
好感度131が簡単に引き下がるとは思えないけど
- 113二次元好きの匿名さん25/03/28(金) 17:14:35
好感度関係なく争うくらいなら自分が引こうってなるのが本編じゃないか?
でもここのキラは性別も経験も違うからな - 114スレ主25/03/28(金) 21:50:46
約束をした後もアスラン達は、お茶を和やかに楽しんでいた。そこに家政婦がアスラン宛ての
電話が掛かって来ているのを伝えると、コードレスの受話器を渡して退室していった。
アスランは受話器に耳を押し当てると、口を開いた。
「はい、アスラン・ザラです」
「アスランか。お前、ニュースは見ていないのか?」
「――えっ、父上!?どうしたんですか、父上自ら電話なんて……」
滅多に電話などして来ない父が連絡をして来ているのに驚いた。
「アスラン、とにかくニュースを見ろ」
「あ、はい!」
パトリックは、驚きを隠せないアスランを気にしていないようで、ニュースを見ろと促す。
アスランは慌てたようにTVモニターのリモコンスイッチを入れる。ニコルもフレイもアスランの
様子を気にしながらも、同じようにTVモニターに目を向けた。
TVモニターの中では、ニュースキャスターが、その内容を淡々と伝えていた。
「――この船には、今回の追悼式代表を務める、ラクス・クライン嬢も乗っており――」
「――えっ!?」
アスランは、ラクスの名前が出て来たのに何事かと驚くが、
ニュースキャスターはアスランの驚きなど気にする訳が無く、伝える事を淡々と口にしていく。
「――安否が気遣われています。――繰り返しお伝えします。追悼一年式典の慰霊団派遣準備のため、
ユニウスセブンへ向かっていた視察船、シルバーウインドが、昨夜、消息を絶ちました」
「……な!あぁ……ラクス……」 - 115スレ主25/03/28(金) 22:01:23
アスランはニュースの内容に思わず椅子から腰を上げていた。顔色は、段々青くなってゆく。
ニコルはアスランのように青くはなってはいないが、驚きようはアスランに負けない物だった。
プラントの事情に詳しくないフレイだけが、何事があったのかと、二人を心配するように見つめていた。
電話の向こうにいるパトリックが察したのか、アスランに命令口調で言った。
「事情は飲み込めたな。のんびりしている暇はないぞ。お前は、すぐに軍本部に出頭しろ!」
「――はっ!」
アスランはパトリックが電話の向こうにも関わらず、
背筋を伸ばし返答をすると、電話を切り、ニコルに向かって言った。
「ニコル!正面に車を回してくれ!」
「軍本部からですか?!僕も――」
「いや、呼ばれているのは俺だけだ。ニコルはフレイの警護を頼む!」
「分かりました!」
ニコルは頷くと、慌てながら部屋を出て行く。アスランも同様に、二階の自分に宛てがわれた部屋へと駆けて行く。
その場にはフレイのみが残され、どうすればいいのか分からず、とりあえずアスランの部屋へと向かう。
半開きの扉を開けると、アスランは軍服に着替え終えて、扉に背を向け、アルミ鞄の中を整理しているようだった。
フレイは躊躇いがちに声をかける。
「……ねえ、アスラン……」
「ん?フレイ……どうしたんだ?」
アスランは顔だけ向けると、再び整理を続ける。
ニュースの内容から大事故が起こったのはフレイにも分かったが、
なぜアスランやニコルが、そこまで慌てているのか分からなかった。
「さっきのニュース見て、慌ててたけど……」
「ああ……あの船にはラクスが……婚約者が乗っているんだ……」 - 116スレ主25/03/28(金) 22:05:27
フレイはアスランの言葉に、どう言っていいのか分からず言葉を返す事が出来なかった。ただ、
二人の慌てぶりやニュースからして、ラクスと言う子がアスランやプラントに取って、とても重要なのは感じ取れた。
アスランは鞄を閉じると立ち上がり、フレイヘと向き直る。
「突然の事ですまないが、俺は軍に呼ばれている。恐らく、このままラクスの捜索に向かう事になると思う」
アスランは一度、言葉を区切ると、フレイに右手を差し出した。
「……短い間だったが、君と話せて良かったと思っている……ありがとう、フレイ」
「……うん。……ラクス、さん、無事に見つかるといいわね……」
「ああ」
フレイはアスランの右手を取り、握手をすると頷きながら微笑む。
アスランも同じ様に頷き、握手をしたまま、真剣な表情になる。
「……フレイ、さっきした約束を忘れないでほしい……」
「……うん……約束する」
フレイの言葉を聞くと、お互いに握手をしていた手を解く。
アスランは鞄を手に持つと、思い出したように口を開いた。
「それから、一つ聞きたい事があるんだ……。君の通っていたカレッジに、キラ・ヤマトと言う学生がいたはずなんだが、知っているか?」
「……キラ・ヤマト……。カトーゼミにいる、あのボーっとした感じ女の子でしょ?何回か話した事があるから……」
「……あまり変わらないんだな、キラは……」
フレイはアスランの問いに思い出しながら、答える。フレイの言い様に、アスランは少し苦笑する。
そんなアスランの表情にフレイは不思議そうに聞き返した。 - 117スレ主25/03/28(金) 22:06:48
「知り合いなの?」
「ああ、友達なんだ……。もしも、キラに会う事があれば伝えてほしい。頼まれてくれるか?」
「……うん。もしも、会えたらだけれど……それで良ければ……」
フレイは、地球に帰っても、キラに会う事があるとは思えなかったが、
アスランの頼み事を無下に断る事はできなかった。
アスランは真剣な表情で頷くと、キラへの伝言を口にする。
「キラとは……お前とは戦いたくない。って……伝えてほしいんだ」
「――えっ!?……戦いたくないって……どう言う事……?」
フレイはアスランの口から吐き出される言葉に驚き、聞き返した。
アスランは悲しそうな表情をしながら、理由を言う。
「キラは、何故だか知らないが、地球軍のモビルスーツに乗っている。多分、いいように使われているんだと思う」
「モビルスーツって……地球には……」
「地球軍も開発したんだ。事情聴取で君も聞いたと思ってたが……。キラは戦う事が嫌いなのに
……そのモビルスーツにキラが乗っているんだ……」
「……友達……同士で……戦ってるの……?」
「……そう……なる……な……」
地球軍のモビルスーツの存在を信じられなかったフレイは反論しようとしたが、
アスランは、あった事をそのまま伝える。苦しそうな表情で話す、アスランの言葉に愕然としながらも、
フレイは聞き返す。アスランは事実を認めたくないと言わんばかりだが、
悔しそうに途切れながらも肯定の言葉を繋ぐしかなかった。
フレイは、友達同士が戦うなんて認めたくなかったし、仲の良い者同士が殺し合いをする事を願いたくもなかった。 - 118スレ主25/03/28(金) 22:07:36
「そんなのおかしい……おかしいわよ……。友達なんでしょう……どうして戦わなくちゃいけないのよ!?」
フレイの口から自然と感情むき出しの言葉が漏れるた。その目は微かに潤んでいた。
アスランもフレイにつられて、涙目になりながら、感情的に言葉を吐き出す。
「……俺も戦いたくないさ!だから、君に伝言を頼むんだ……頼む、キラに伝えて欲しい」
「……うん……必ず伝える」
フレイは、そんなアスランの姿から想いを感じ取ったのか、キラにこの伝言を絶対に伝えなければと思い頷いた。
「……ありがとう。……それじゃ、元気で……。次に会う時には、戦争が終わっている事を願うよ」
「……うん、アスランも元気で……」
アスランはフレイの言葉に心から感謝すると、微笑みながら別れの言葉を言うと、
フレイも潤んだ瞳を擦りながら、アスランがキラと戦う事がないよう、祈る想いで別れの言葉を送った。
フレイの別れを済ませたアスランは、部屋を後にする。
丁度、扉を出た所にニコルが苦々しい表情で立っていた。
「――ニコル!……もしかして、今の話、聞いていたのか?」
「――!……いいえ、今、来たとこですから。それよりも車の準備が出来ていますから急いでください!」
アスランは驚き、強ばった表情になる。明らかにニコルはフレイとの会話を聞いていたような表情だった。
ニコルもアスランが出て来たのに驚いたのか、誤魔化しながらも真剣な面持ちで、アスランを急かした。
「……分かった」
アスランは仕方なく頷き、階段を駆け下りて行った。 - 119スレ主25/03/28(金) 22:09:57
アスラン>フレイ 50+dice1d100=23 (23)
フレイ>アスラン 50+dice1d100=91 (91)
50以下で仲のいい友人
60以下で自覚は無いけど異性として見てる
70以下で自覚ありで異性として見てる
80以下で夜のおかずにしてる
それ以上だと二人きりの時に押し倒しそうになる
- 120二次元好きの匿名さん25/03/29(土) 03:28:02
アスフレ確定
- 121スレ主25/03/29(土) 08:24:05
アスランは本部に向かった後に、命令で軍港にある待機所の一室にいた。
今は、こうして待つしかないアスランは焦る気持ちを抑えながらも、
ラクスとの別れ間際の事を思い出し、後悔をしていた。
扉が開く音がすると、パトリックとクルーゼが入って来た。
「あっ」
父が息子を見送るような人ではないのを知っている。アスランは驚きを隠せなかった。
パトリックは、アスランの前まで来ると口を開く。
「アスラン、ラクス嬢のことは聞いておろうな」
「はい!しかし隊長……まさかヴェサリウスが?」
「いや、ヴェサリウスは出ない。我々も、彼女の捜索に向かいたい処だが、
生憎とモビルスーツの予備パーツ造りと修理に手間取っていてな」
アスランは頷くと、クルーゼに視線を向けた。クルーゼは首を振り、
仕方ないとばかりの様子で答えると、パトリックが再び口を開く。
「公表はされてないが、既に捜索に向かった、
ユン・ロー隊の偵察型ジンを出しているが、未だに発見されておらんのだ」
「ユニウスセブンは地球の引力に引かれ、今はデブリ帯の中にある。嫌な位置なのだよ。
ガモフはアルテミス付近で足つきをロストしたままだ」
「まさか、あの戦艦ですか?」
クルーゼはパトリックが言い終えると、続ける言葉を続けた。
アスランは、クルーゼの言葉にアークエンジェルとキラの姿を思い出す。
ユニウスセブンが地球に近い位置にあるとは言え、余程の事がない限り民間船に攻撃するとは思えなかった。
アスランの思考を遮るようにパトリックが口を開く。 - 122スレ主25/03/29(土) 09:01:56
「ラクス嬢とお前が、定められた者同士ということは、プラント中が知っておる。だが、
お前の居るクルーゼ隊は出られんと来た。そこで、お前は一時、クルーゼ隊を離れ、捜索隊に加わってもらう」
「――あ……、です……が……」
「婚約者のお前を出さん訳にはいかんからな。彼女はアイドルなんだ。頼むぞ、アスラン」
「――は!」
下された命令にアスランは敬礼をすると、パトリックは踵を返し、部屋を後にする。
パトリックに取ってはラクスの事など、さして関係はないのだろう。体面さえ取り繕えれば良いように感じ、
残されたアスランは、クルーゼに父の言葉の意味を嫌悪を込めて聞いた。
「彼女を助けてヒーローの様に戻れと言うことですか?」
「もしくはその亡骸を号泣しながら抱いて戻れ、かな」
「……」
クルーゼは無神経にも、アスランの心を皮肉るように言うと、
アスランは、信じられないと言うように、無言になった。クルーゼは冷淡に微笑みながら、言葉を続ける。
「どちらにしろ、君が行かなくては話にならないとお考えなのさ、ザラ委員長はな――。
モビルスーツの修理が終わり次第、私も追いかける事になる。その間、君にはジンを使ってもらう事になる。
いいか?」
「――はい!」
アスランは敬礼をすると踵を返し、捜索隊の船に乗艦する為に部屋を後にした。 - 123スレ主25/03/29(土) 10:01:53
戦艦の中で一番忙しい部署は厨房だろう。戦いに明け暮れる兵士と言えど、食わなければ死んでしまうのから。
アークエンジェルは、乗り込んだ人員に比例するように、厨房を支える者達も少なかった。代わる代わる食事を
取りに来る者たちがやって来る。休みなども他のクルーに比べれば、少なく多忙さを極めていた。
いつもの如く、数人のスタッフによって食事の仕込が進められていたが、今日は少し違っている。
理由は、地球軍の士官用のスカートと少年兵用の制服、そしてエプロンを身に纏い、
淡いピンク色の長い髪をポニーテールにしたラクスの姿がある事だった。
「いかがでしょうか?」
ラクスは煮込んでいたスープをカップに注ぐと、年配の男性に両手で差し出す。
男性は片手で受け取り、スープを軽く口に含む。数回に分けて飲み干すと感心したような顔つきになる。
「ああ、上出来だ」
「ありがとうございますぅ!」
「ね、私にも貰える?」 - 124スレ主25/03/29(土) 10:02:27
ラクスが褒められた事に顔を綻ばせると、二十代半くらいの女性が興味有りげに言った。
ラクスは女性にもスープを勧めると、カップに口を付けると驚いたような表情をした。
「本当に本格的な料理初めてなの?」
「お菓子やお茶意外は、簡単な物しか作った事がありませんの。でも、スープは家で、たまに作っていましたから」
ラクスは、柔らかい微笑を称えながら答えると、女性はラクス自身に興味を持ったのか、思った事を口にする。
「へぇー、素人にしても器用な物ね。もしかしてコーディネイターだからか?」
「違いますわ。コーディネイターも人間ですから、何でも器用にこなせる訳ではありませんわ」
「そうか」
女性も嫌味で言った訳ではないと分かっているのか、ラクスは一度首を振り、
微笑を絶やさないまま、キッパリと言うと、感心したような言葉が男性の口から出て来た。
ラクスは男性の言葉を耳にすると、満足するように両手を合わせながら微笑む。 - 125スレ主25/03/29(土) 10:02:37
「それにしても、お料理って本当に楽しいですわ」
「ま、ここは軍艦の中だから、出来合えの物に手を加えるだけだが、乗ってる連中にすれば楽しみの一つでもある訳だし、喜んでもらいたいからな。期待は裏切れんさ」
「はい!美味しい物を食べると、人は笑顔になりますもの。それは、私も同じですわ!」
「本当、あなた、楽しそうねぇ」
男性は、料理が楽しいと言ったラクスの言葉が嬉しかったのか、満足げに口を開く。
ラクスは、男性の言葉に瞳を輝かせると、嬉しそうに同調した。
そのラクスの姿に、女性は少し可笑しそうに笑う。
「ハハハッ!そうか!もたもたしてると腹を空かせた連中が来るからな。とっととやっちまうか」
男性はラクスの子供のような目の輝きと言葉に、満足げに笑うと厨房のスタッフを見据えながら、口を開いた。
「――はい!」
ラクスを含む、他のスタッフも男性の言葉に頷くと、各々の持ち場で仕込み再開されたのだった。 - 126二次元好きの匿名さん25/03/29(土) 13:37:13
早速好き勝手してやがる
- 127二次元好きの匿名さん25/03/29(土) 16:21:55
ラクスかなり家庭的だからな
- 128スレ主25/03/29(土) 21:00:15
アークエンジェルのブリッジでは、マリューが少し渋い顔をしていた。
マリューが渋い表情をしている理由は、ラクスの申し出にあった。
「あのお姫様、調べたら人気も影響力を絶大だぞ」
「じゃあ殺したり傷つけたり……いえ一発殴るだけでも」
「大軍が攻めてくるな、敵討ちだー!ってさ」
「やっぱり呪われてないこの船?」
「あるいは今頃祟りが来たのかもな」
綾瀬姉弟の会話を聞いて変に機嫌を損ねるのは不味いと判断し、ラクスは居住区を自由に歩く事が
出来るようになると、散歩して回ったのだが、結局の処、話相手はハロ以外は忙しい身しかおらず、
暇を持て余す事となった。そんな時に手伝いをしている少年達を見て、
何か思いついたのか、ラクスは自ら手伝いを申し出たのだ。マリューからすれば、大変有り難い申し出だったのだが、ラクスの立場を考えれば受け入れる訳にもいかず、一度は断ったのだが、
再度の申し出に条件を付ける事としたが、迷ったのが、ラクスに何をさせるかだった。
一人で掃除をさせたり、ブリッジの手伝いをさせる訳にもいかず、結局、厨房で刃物を使わない事と、
艦内の風紀も考慮して制服を着用する事を条件にラクスに了承してもらう事となった。
そんな事があり、マリューは今更ながら後悔をしていた。 - 129スレ主25/03/29(土) 21:01:05
「それにしても、本当に良かったのかしら……」
「いいんじゃないの。人手も足らないし、手伝ってくれるって言ってんだからさ」
「それはそうですが……」
「これで基地に着いたら何されるか分からないんだ。少しは楽しませてやってもいいだろ?
艦長だって、そう思って許可をだしたんだろ?」
ムウが気楽な表情で口を開くと、ナタルはマリューと同様の表情を見せた。
実際の処、マリューの心中ではムウの言うように、ラクスが本部に到着した後に受ける仕打ちに、
後ろめたさがあったのは言うまでもなかった。
「……ええ」
「……でも、何かあってからでは……」
マリューは、ムウの言葉に迷ったように答えると、
自らの進言が事の切っ掛けではないかと悩むナタルは、言葉尻を濁す。
「おいおい。厨房の連中だって銃くらいは携帯してるんだ。何かあっても女子供くらい、
どうにか出来るさ。まぁ、最も、あのお姫さんが何かやるようには見えないけどな」
ムウは、煮え切らない二人に呆れたように口を開くと、マリューは頷く。
「……とりあえず、様子を見ましょう」
「……そう……ですね」
艦長のマリューが同意した事で、ナタルは頷く他なかった。 - 130スレ主25/03/29(土) 22:01:49
「そんじゃ、俺は格納庫に行くわ。後、ヨロシクー!」
「あ、はい」
「は!」
その場の意見が決まった事で、ムウは笑いながら軽い感じでブリッジを後にする。
気後れするようにマリューが返事をすると、ナタルと共にムウを見送った。
「はぁ……。フラガ大尉、整備にでも?」
ムウが出て行くと、マリューは溜息を吐き、ナタルに聞いた。
ナタルはマリューの問いに真剣な表情で答える。
「いいえ。ヤマト少尉の訓練ですよ。彼女が自ら申し出たんです」
「キラさんが!?」
「はい」
ナタルは先の戦闘で自らの覚悟を決める切っ掛けとなったキラに対して、
覚悟を決めた者同士としての仲間意識が多少なりとも芽生えたのか、少し微笑むように頷く。
「……そう」
元々は自分がストライクに乗せてしまったが為に、戦う事となったキラを想うとマリューの心は苦しくなった。
――あの子達を戦争に巻き込んでおいて、私は……。彼等が死ぬ事があれば、私の責任ね……。 - 131二次元好きの匿名さん25/03/30(日) 02:48:27
ラクスいつまでいるんだろうな?
- 132二次元好きの匿名さん25/03/30(日) 08:47:00
このレスは削除されています
- 133二次元好きの匿名さん25/03/30(日) 15:54:03
無事に月までいけるのか?
- 134スレ主25/03/30(日) 20:43:08
アスラン達、訓練校時代の教官でもあったレイ・ユウキを隊長とした捜索隊は、
ユン・ロー隊と連携して、捜索が行われていない宙域の捜索を行っていた。
元来、ザフト軍特務隊FAITHの隊長であるユウキが出て来る事など、
非常に稀な事で、それ程、逼迫した事態だと表している。
数機のジンが間を空けながら、宇宙のゴミが漂う中、何かを捜すように飛んで行く。
ジンのコックピットで、アスランは焦りながらも見落としが無いように、
モニターの隅々まで食い入る。しかし、目的の物は見つからない。
「――くっ!どこにいるんだ!」
アスランは苛立ちながら、他の場所にメインカメラを向ける。
既に、この宙域で捜索に入って六時間近くが経過していた。
――ラクスが乗っていたのは民間船とは言え、それなりに大型の船だったはずだ!いったいどこに?
心は焦るばかりで、嫌な汗が出てくる。――辛そうな、お顔ですのね……。
シルバーウインドが出港する前にラクスと交わした会話が思い出される。
「……俺は……君の言う通り、きっと……辛そうな顔をしているんだろうな……。だから……ラクス――」
アスランは、ヘルメットのバイザーを上げ、汗を拭うと自然と口が開く。表情は言葉通りの物だった。
アスランが言いかけた、その時、スピーカーから通信が流れ込んで来る。 - 135スレ主25/03/30(日) 21:10:07
「――入電!ユン・ロー隊が、シルバーウインド号を発見した。
現在、船内を捜索中との事。各機、至急、向かわれたし!場所は、ポイント――」
「見つかった……のか!?」
シルバーウインドが発見の報に気が緩んだのか、しばし、呆然と耳を傾けてしまうが、
まだラクスの無事を確認した分けではない。――ラクス、さん、無事に見つかるといいわね……。
フレイとの別れの際の言葉が、頭の片隅でアスランの今の願いと重なる。
「――ラクス、無事でいてくれ!」
アスランはジンのバーニアを最大まで吹かすと、シルバーウインドの見つかったポイントまで向かう。
その間も、祈るような想いで操縦桿を強く握っていた。
やがて、モニターの中央に小さくだが、シルバーウインドの船体が映る。
移動しつつも、メインカメラで最大まで拡大する。
「――なっ!?」
ボロ雑巾のように破壊されたのシルバーウインドの姿にアスランは絶句する他なかった。
ブリッジは撃ち抜かれたような穴が開いていた。船体の所々もかなりの攻撃を受けたのか、
原型を留めているのが不思議なくらいだった。
「……いったい誰が!……どうしてなんだ!?何故、罪も無い人達が攻撃を受けなければならないんだ!?」
操縦桿を握る手が怒りで震える。誰がこんな酷い事をしたのかと、心の中では色々な感情が渦巻いた。 - 136スレ主25/03/30(日) 21:10:47
「――くっ!……ラクスは……、ラクスは無事……なのか?」
アスランは、無理やり感情を押さえ込むように、気持ちを切り替える。
そう簡単に変わる訳ではないが、そうでもしなければ、自分自身が爆発してしまうような気がしていた。
ラクスの名を呼びながら、シルバーウインドへと取り付こうとすると、アスラン達、
捜索隊の母艦であるナスカ級戦艦から通信が入る。
「――船内探索は、ユン・ロー隊が行っています。休息と補給の為に帰艦してください」
「――こちら、アスラン・ザラ!酸素もエネルギーも充分残っている。そのまま捜索を続行する!」
「――アスラン・ザラ!帰艦してください!」
アスランは帰艦指示を無視し、シルバーウインドに取り付こうとすると、再度、指示が来る。
帰艦した処で、落ち着かないのは分かっていた。それなら捜索をしていた方がマシだし、
ラクスを見つけない事には、気が落ち着くとは思えず、指示を無視をした。
「――アスラン、艦に戻れ!」
「――しかし!」
捜索隊の隊長であるユウキの声がジンのコックピットに響く。
アスランは戸惑いながらも反抗するような声を上げるが、ユウキの諌めるような声がスピーカーから響いて来る。
「君は、ここに着いてから良くやっている。モビルスーツに乗り続けて、休みも取ってないだろう」
「――まだラクスが……ラクスが見つかってないんです!お願いします!」
「……分かった。好きにするといい」
「――はい!」 - 137スレ主25/03/30(日) 22:01:32
ユウキも、ラクスがアスランの婚約者なのは当たり前のように知っている。
婚約者がこのような事態に巻き込まれているのだ。懇願するアスランに同情し、頷いた。
アスランは返事をすると、シルバーウインドに取り付き、ジンを離れ、船内へと入って行く。
船内も酷い状況で、所々で生きていた者の亡骸やその一部だった物が漂っていて、
アスランは、あまりの光景に目を背けそうになるが、吐き気を堪えながらもラクスを必死に探す。
そうしてる間に、先に船内の捜索を行っていたユン・ロー隊のパイロットのオープン通信が入ってきた。
「――駄目だ、全員死んでる!――生存者ゼロだ!」
「――なっ!」
そのパイロットの言葉は、ラクスを必死に探すアスランを絶望の淵に追いやる物だった。
アスランは崩れるように両膝を着いた。
「――了解!乗船していた人数と合っているか?」
「――いや、この有様だ。そこまでの確認は無理だ。……外に放り出されてたり、
体が無くなっててもおかしくないからな……」
「――脱出した形跡は?」
「――荷物用のハッチも酷くやられていて確認は不可能だ」
パイロットと船とのやり取りは、そんなアスランを更に打ちのめす物だった。
「――そ、そんな……ラ……クス……うっ、うう……」
アスランは両膝を着いたまま、両手を着き泣き崩れる。涙の粒が珠になり、
ラクスの記念日ごとにプレゼントしたハロのようにヘルメットの中を漂っていた。 - 138二次元好きの匿名さん25/03/31(月) 05:08:29
⭐️
- 139スレ主25/03/31(月) 07:06:44
プラントにあるザフト軍本部の一室。照明は薄暗く、不気味な程だった。
革張りに椅子に腰を掛けたパトリックは、アークエンジェルを見失い、
アルテミスの周辺宙域を探索していたガモフと捜索隊からの報告を聞いていた。
「捜索隊ですが、シルバーウインド号は何者かの攻撃を受けた模様で、生存者は今のところ……ゼロとの事です」
「そうか。捜索隊は引き続き、生存者の捜索と遺体の収容に当たらせろ。で、ガモフは何と言って来てるのだ?」
「ユニウスセブン宙域より離脱した地球連合軍ユーラシア連邦所属のドレイク級艦二隻を拿捕したとの事です。
もう一つなんですが、地球軍艦艇が新型艦を捜索している模様との報告が入っています」
「…それで?」
「現在、ガモフは敵艦のデータの洗い出しを行っているとの事です」
「分かった、下がれ」
パトリックは一通り報告を聞くと少し考えるような仕草をすると、壁に目線を向けた。
「攻撃を受けたと言うが……どう思うクルーゼ?」
「当てがあるとすれば、ロストした新造戦艦か、ガモフが拿捕した地球軍艦艇のどちらかかと思いますが」 - 140スレ主25/03/31(月) 10:05:35
目線の先にはクルーゼが直立不動で立っていた。不気味にも、暗闇に白い仮面が際立って見える。
パトリックはクルーゼの意見が、自分の考えと同じだったのか、頷くと、理由を聞く為に口を開く。
「……どうして、そう思う?」
「アルテミスが近い事を考えれば、巡視艇などがいてもおかしくはありません。
新造戦艦にしても機密保持の名目で攻撃した可能性も考えられます」
「やはりそう考えるか。貴様なら、この事態をどう乗り切る?」
「シルバーウインドが攻撃を受けてから、大分時間が経過しています。
もしも、攻撃を行ったのが、あの新造戦艦ならば、今から追撃した処で、捕捉するのは不可能です」
「……かと言って、見す見す逃がす訳には行くまい」
クルーゼの言葉に、パトリックは何かを考えながらも、良いアイデアが浮かばないようだった。
突き刺すような視線がクルーゼに向けられる。クルーゼは二歩程、前に出ると口を開いた。
「それならば、帰るべき箱を壊してしまえばいいだけの事です」
「……どう言う意味だ?」
「向かう先は月基地」
パトリックがクルーゼを睨みつけるが、臆する事無く攻撃目標を口にした。
クルーゼが示した攻撃目標に一瞬、絶句するが、あまりにも馬鹿げた話に声を荒げる。
「攻めろと言うのか!?今は、それだけの部隊が展開してはおらんではないか!」
「足つきの追撃に失敗したガモフ、地球周辺に展開している巡視艇及び捜索隊を衛星軌道上に囮として集結させ、
敵艦隊を引っ張り出し、手薄になった月基地を足の早いナスカ級とモビルスーツ叩く形となりましょう」 - 141スレ主25/03/31(月) 11:06:00
クルーゼは淡々と自らの考えを言ってのけた。その言葉は、自信に満ち溢れた物だった。
パトリックは疑うような目つきで、厳しい視線を投げた。
「……貴様、本気で言っておるのか?」
「既に、シルバーウインドが攻撃を受けた事で、名目は立ったと思いますが?」
「……勝算は?」
「……我らがアイドルと兵士の士気……次第かと」
「……」
クルーゼは口を歪ませるように微笑む。パトリックはクルーゼの意図する事が理解出来たのか、無言で考える。
――危険な賭けにはなるが、確かに、それならば兵士や国民に戦意高揚を謳う事が出来る……。
「……パトリック・ザラだ。最高評議会議長に繋いでくれ」
パトリックは緊急で最高評議会のメンバーを招集させる為にシーゲル・クラインに電話をしたのだった。 - 142スレ主25/03/31(月) 12:06:12
キラはストライクのコックピットの中で、懸命にジンを追っていた。
攻撃しても、そう簡単にビームは当たらず、四苦八苦する。
マーカーがジンを捕捉すると、間髪入れずトリガーを引く。
「――当たれ!」
ビームが当たるとジンは爆発を起こす。キラは、すぐにストライクの方向を次のジンへと向ける。
その時、スピーカーを通じて、琉生の声が響いた。
『いい感じだ。欲を言えば、相手の攻撃に対処するだけではなく、相手の攻撃を読んで回避しつつ、
攻撃を仕掛けるんだ。出来るだけ視野を広く持て。キラ、出来るか?』
「わかった!やってみる」
琉生のアドバイスに頷くと、ストライクのコンソールを弄り、シミュレーターを再起動させる。
モニターが一度、ブラックアウトすると、再び宇宙空間が映し出され、ジンが、襲い掛かってくる。
キラは牽制でビームを撃つと、ジンは左右に振りながら回避する。単調な回避行動を繰り返すジンに、
本命のビームを撃つと、今度は違う回避行動に入り、意図も容易くビームを避けて行った。
「――避けられた!?」
キラは自らも大きく回避行動に入り、相手の動きのパターンを読み取りながら、マーカーがジンを補足するのを待つ。
「――そこ!」
マーカーがジンを捉えると、タイミングを見定め、ジンに向かってトリガーを引いた。 - 143スレ主25/03/31(月) 12:07:17
「――あ、当たった!」
敵機が爆発するとモニターが消え、ストライクのコックピットカバーが開くと琉生が顔を覗かせる。
琉生の顔を見たキラは、大きく息を吐いた。
「ハァ……。こんな感じ……?」
「まだまだだが、初めてなら上出来だ。こう言う事は経験が物を言うからな。今は仕方がないさ」
「経験……」
琉生は時折、笑顔を見せる。身を乗り出すようにして、上半身をコックピットの中に流し込んだ。
キラはそんな琉生を見ながら、汗を拭った。キラに巧く伝わるようにと、
琉生は少し考えると、言葉を選んで、感覚的な物を伝える。
「ああ。そうだな……感覚的には、装甲ごしに殺気や気配を感じるような物だな」
「……装甲ごしに?そんな事、出来るんですか?」
キラは想像が出来ないのか、不思議そうな顔をした。
「ムウのおっさんも出来るから、生き残っているんだろう。キラも経験を積めば分かるようになるさ」
「……はぁ。……私なんて、まだまだね」
「キラは、まだ経験も浅い。訓練も受けてなかったんだ。そう焦る必要はないさ。
キラ次第ではあるが、ストライクの特性を巧く生かせれば、今以上の戦い方が可能になる」
「私次第……?」 - 144スレ主25/03/31(月) 12:07:40
改造ジンで自分を超える結果を出して見せる琉生(OSはキラと同じ)やムウと比べる事自体、
間違っているのだろうが、キラは自分が未熟なのを実感する。
そんなキラを見て、琉生は気を落とすなとばかりに、肩を叩くと身を乗り出した状態で、
コンソールのスイッチを押し、ストライクの機体データをモニターに表示させる。
「ああ。PS装甲は実弾を無効化出来る優れ物ではあるが、
反面、エネルギーの消費が激しい。被弾率を下げればエネルギーの節約にも繋がる」
「要は当たらなければいいって事ね」
今度はストライクの戦闘データを表示させると、キラはモニターを見ながら琉生の言いたい事を理解する。
琉生は頷くと、ストライクのキーボードを引き出すと、器用にも逆さの位置でキーを叩く。
「そうだ。戦闘に慣れれば、被弾しそうな時だけPS装甲を展開させる事も可能だろう」
「はぁ……自信がないよ」
「実際、出来るかは俺も分からないが、要は慣れだ」
「慣れ……」
キラは大きく溜息を吐き、少し肩を落とす。 - 145二次元好きの匿名さん25/03/31(月) 13:23:27
クルーゼがラスボスムーブをエンジョイしている
- 146二次元好きの匿名さん25/03/31(月) 17:11:25
もしかしてルイ、パイロットとしてはアムロ並?
- 147スレ主25/03/31(月) 21:24:07
「……無駄な動きは命取りになる。今は、狙いも全てオートにしているだろうが、
細かい狙いはマニュアルでコントロール出来るようになるのが理想だな」
「マニュアルで!?」
琉生の言葉に反応するように、今度はキラがキーボードを凄いスピードで叩き、
射撃プログラムを開いて内容を確認する。モニターにプログラムが表示され、琉生も確認する。
琉生は少し考え込むとキラを見据えながら言うと、キラは驚きの表情を見せた。
「そうだ。オートでは避けた相手を追う事しか出来ないが、細かい射撃が出来るようになれば、
相手の動きを予測した箇所にピンポイントで撃ち込める。分かるか?」
「無駄弾を使わなくて済むね。やってみていい?」
キラは琉生の言う事に頷くと、気分を切り替え、再度、シミュレータープログラムを起動させる。
「相手を捕らえてトリガーを引く前までは、オートで構わないからな。……キラ、気負い過ぎるな」
「うん!ありがとう」
琉生はアドバイスをすると、気負いすぎてると感じたのか、心配そうな表情をしながら、コックピットから離れた。
キラは心配してくれる琉生に礼を言うと、コックピットカバーを閉じ、シミュレーターをスタートさせた。
琉生がストライクの足元に降り立つとムウがやって来る。
「どんな調子?」
「まだ、始めたばかりだからな……」
琉生とムウは、キラが乗るストライクを優しげな目で見上げた。微笑みながら琉生は口を開く。
「素質は十分過ぎるくらいだ。そのうち物にするだろう。いい事じゃないんだろうけどさ」
「そりゃ、俺達もうかうかしてらんねえなぁ」
琉生の言葉にムウは、茶化すように笑う。二人は、教えを請う弟子に色々と戦う術を伝授していくのだった。 - 148スレ主25/03/31(月) 22:00:36
プラントのアプリリウス・ワンでは、パトリックの要求により、緊急で最高評議会のメンバーが呼び出され、
シルバーウインドに関する報告と話し合いが執り行われていた。
「なんて酷い……」
「……許せん!」
「……」
議員達は報告を聞き、眉間に皺を作りながら、口々に何者かが、民間船であるシルバーウインドを攻撃した事。
そして、船内には誰も生存者が居なかった事に、怒りと落胆を隠せなかった。
議長である、クラインも己の愛娘が乗った船の報告に青ざめていた。
「……軍としては、現在も捜索を続けていますが、問題は、何者が攻撃をしたかです」
間を見て、パトリックは厳しい表情をしながら、口を開いた。
言い終えると、そこにいる全ての人を見回し、再び、口を開く。
「……シルバーウインドの報告とは別に、ガモフがユニウスセブン宙域より
離脱した地球連合軍ユーラシア連邦所属のドレイク級艦艇二隻を拿捕しました」
「……拿捕ですと!?」
「拿捕した艦艇のデータは、現在、解析を行っております。ユニウスセブン宙域を
航行していた敵艦艇は、此れのみだったので恐らくは……」
パトリックはガモフからの情報を元にした推測を口にする。
今の段階では事実ではないが、それ以外は考えられなかった。
「……やはり、地球軍か!」
「……だからと言って、まだ決まった分けでは……」
「軍としては、事が事だけに公にするのを控えておりますが、報道や民衆は知りたがっている様子です」 - 149スレ主25/03/31(月) 22:01:18
議員の一部から地球軍への非難と、冷静な判断を求める意見が分かれて出て来た。
パトリックは、厳しい顔つきで、報道関係者や民間人から多数の問い合わせがあった事を伝えると、
しばしの静寂が支配した。それを破るようにクラインが、パトリックに向かって質問をした。
やはり娘を心配しているのか、あまり落ち着かない様子だった。
「……脱出した者は誰もいないのか?」
「……報告通り、今の処は。被害からして脱出すら不可能だったのではないでしょうか」
「……ラクス……」
パトリックは、落胆をしたかのように振舞い、同情の視線で向けながら答えると、クラインは俯きながら、
娘の名前を呟いた。その時、扉が開かれ、軍の制服を来た男性が、パトリックの傍にやって来た。
「何だ?」
軍人はパトリックに耳打ちして立ち去って行く。パトリックは、口を歪ませると、一瞬、
引きつるように微笑むが、すぐに険しい表情をすると口を開き、議会場にあるモニターのスイッチを押した。
「……どうやら、報道が嗅ぎ付けたようです」
「――続報です。非公式ではありますが情報によりますと、追悼一年式典の慰霊団派遣準備の為、
ユニウスセブンへ向かっていた視察船、シルバーウインドは地球軍の攻撃を受けた模様です――」
議員全員がモニターに釘付けになった。どこから情報が漏れたのか?と、各々、驚きの表情をしていた。
「もう、一つですが……、拿捕した艦艇の解析報告が入りました。やはり敵艦が攻撃した事が判明しました。
この事実、どういたしますか?」 - 150スレ主25/03/31(月) 22:01:31
そこに追い討ちをかけるように、再びパトリックが静かに声を上げ、クラインを見つめた。
「――!」
「――地球軍め!」
パトリックの言葉に全員が絶句し、口を揃えたように地球軍の卑劣な行為に怒りを露にした。
クラインは頭の中で、情報の流出と地球軍が攻撃した事実を、どう処理すればいいのかと悩む。
――事実を公表すれば、世論は戦争推進に傾く……。かと言って、戦闘行為を避ける為に隠蔽する訳にも行かぬ。
どうすればいいのだ……。クラインに追い討ちをかけるように、議員達はクラインに公表を迫る。
「――議長!」
「……事実の公表を……行う」
苦しむような声でクラインは決断を下した。その表情は、苦汁に満ちた物だった。
パトリックは頷くと、全員を見回しながら己の方針を口にする。
「分かりました。では、もう一つ。軍としましては、報復も止む無しと考えております」
「――報復だと!?」
クラインはパトリックの言葉に驚きを隠せず、声を上げた。
「発表で抗議声明を出した処で、民衆の怒りは収まりますまい。
事を、どう収めるつもりですかな?お聞かせ願いたい!」
「――!」
パトリックは、淡々とクラインの目を見据えながら言うと、クラインは机の上で拳を固めるだけで、
反論すら出来ずにいた。――どう言う形であれ、事実を隠す事など出来ないのだよ。
議場から出てくるパトリックの表情は、冷たい笑みを湛えているようだった。 - 151二次元好きの匿名さん25/04/01(火) 02:12:41
開戦理由ができてパトリックとしては万歳だもんな
- 152スレ主25/04/01(火) 08:47:32
アマルフィ家のリビングでフレイは、二時間程前に最高評議会から発表された
シルバーウインドに関する報道番組を見ていた。
発表された事実は、同じナチュラルであるフレイですら、地球軍の行為に怒りを覚えた程だった。
悲惨な事に、生存者は今の処ナシ。時間が経つにつれ、更に助かる確率が下がって行く。
その中、フレイが気がかりだったのは、アスランと、その婚約者の事だった。
軍の見解では婚約者は死んだ可能性が非常に高く、既に絶望視されていた。
婚約者の事も、そして、捜しに行ったアスランの事も心配になる。
そうしてると、ザフト軍の赤い軍服に着替えたニコルがアルミ鞄を持って入って来た。
お茶を飲みながら、TVモニターを見ていたフレイはニコルの姿に戸惑いながら立ち上がる。
「フレイ……僕にも出撃命令が出ました」
ニコルはフレイの前に立ち、鞄を床に置くと、軍人らしい真剣な表情で言った。
フレイは突然の事に驚きながら、寂しそうな顔をする。
「えっ!?……行っちゃうの?」
「……はい。後の事は母が面倒見てくれます。評議会や軍も、
フレイの事をどうにかしようとは思ってないようですから、安心してください」
「……私……」
ニコルの言葉に、フレイは自分が何も出来ない事に不甲斐なさと申し訳なさを感じて、それ以上、言葉が続かない。
そんなフレイを見て、ニコルは口を開く。 - 153スレ主25/04/01(火) 09:17:59
「発表、聞きましたよね?」
「……ええ」
「僕も軍人なんです……。もしも、あなたの友達やお父さんを……殺す事になったら……ごめんなさい」
「……ニコル」
ニコルは悲しそうな表情で言った。
フレイには、ニコルがそんな事をしたがってるようには見えず、どう答えたいいか分からなかった。
ニコルは鞄を持つと、悲しそうな表情をしながらも、フレイに微笑みかける。
「約束、忘れないでくださいね」
「……うん」
「……また、会いましょう。お元気で……」
フレイが頷くと、ニコルが軍人らしく敬礼をしてリビングを出ていった。
その後姿は、悲壮な決意をしたようにも感じられる。
「……うっ……うっ……」
フレイは、知り合った人達が、戦場に向かうのを見送る事しか出来なかった。
アスランやニコル、カレッジの友達、そして、アスランの友達であるキラの顔が頭の中で過ぎった。
――知ってる人達が……友達同士が戦うなんて……。
フレイは泣きながらも、何が出来る事を探そうと思い始めるのだった。 - 154二次元好きの匿名さん25/04/01(火) 12:47:32
フレイが成長している
- 155スレ主25/04/01(火) 20:21:18
船に戻ったアスランは、ユウキに呼ばれ隊長室に来ていた。
捜索中の命令無視で怒られるのかと思っていたが、話された事は全く違って、
アスランは、あまりの内容に怒りすら隠せない程だった。
アスランが両手で、机を叩き、身を乗り出しながらユウキに迫る。
「――捜索中止!?そんな!まだ、ラクスが……生きている人が脱出しているかもしれないのに、何故です!?」
「……軍本部からの命令だからな」
「――しかし!」
捜索時間が短いのはユウキにも解せない話だった。ユウキ自身、軍本部に捜索を続けるよう抗議もしたが、
地球軍艦艇のデータと軍の見解を理由に、すぐに突っ返され、新しい命令を伝えられたのだった。
不本意であろうとも、軍人である以上、命令は遂行しなければならない。
ユウキはアスランの目を見ながら、真剣な表情で口を開いた。
「――アスラン・ザラ!自分の目で、船の中の状況は見たのだろ?……
君の気持ちは痛い程分かるつもりだが、これは命令だ。君も軍人なら分かるだろう」
ユウキの見せる表情と言葉に、アスランは息を飲んだ。それは、
まだ正式に軍に入る前にも見た事無い程、厳しい物だった。
アスランは自分が軍人である事を思い出す。それ程、頭に血が昇っていたのだった。
「――!……りょ、了解……」
アスランは自分に戸惑いながらも、踵を返し隊長室を後にすると、
一人部屋に閉じこもり、婚約者を探し出し、助ける事が出来なかった自分の不甲斐なさに涙した。 - 156スレ主25/04/01(火) 21:01:08
軍港に停泊中のヴェサリウスのブリッジでは、モビルスーツ隊を中心とした、ミーティングが行われていた。
クルーゼは、全員の前に立ち厳しい表情ながらも、淡々とした口調で話していた。
「作戦の概要は把握したな。要はラクス・クライン嬢の弔い合戦だ。国民も我々が勝つ事を望んでいる。
負けられない戦いだ。分かるな?」
「は!」
全員が気合が入った声で返事をすると、クルーゼはマスクの下で微笑み、言葉を続ける。
「それでは、我々がどう動くかだが、隊を二手に分ける。イザークはアスランと合流してガモフに移り、
敵艦隊を衛星軌道上で叩け。ディアッカとニコルは私と共に地球軍月本部に強襲を掛ける」
「えっ!?」
ニコルが思わず驚いたような声を上げると、クルーゼは冷笑を湛えながら言う。
「どうしたニコル?作戦に不満があるのか、それともアスランの事が心配か?」
「あ……いいえ」
「ニコル、怖くなったのか?」
「……違いますよ、ディアッカ!」
ニコルは、クルーゼに図星を衝かれ、不味いと思ったのか濁しながらも返事をすると、ディアッカが冷やかす。
イザークはニコルの様子がおかしい事に疑問を持ち、厳しい目を向ける。 - 157スレ主25/04/01(火) 22:00:57
「ニコル、アスランが心配なのか?」
「イザークまで……」
ニコルの表情は冴えた物では無く、明らかにアスランを心配しているように見えた。
イザークはイラつくように表情をすると、一歩前に出て、クルーゼに告げた。
「隊長、私が月へ向かいます。ニコルがあれでは、作戦が失敗してしまいます!」
「しかしな……。正確には機体の特性で配置を決めたのだ。乗り換えをする事になるが、いいか?」
クルーゼは渋い表情をすると、イザークに聞き返した。
イザークはニコルを見ると、反論は許さんと言わんばかりの強い口調で言う。
「……ニコル、貴様の機体を使わせて貰うぞ。いいな!」
「イザーク……!」
「俺の機体を壊すなよ」
「はい!ありがとうございます!」
「決まったようだな。各員の奮起に期待する!準備を急げ!」
ニコル嬉しそうに答えると、クルーゼは苦笑を漏らしつつも全員に激を飛ばした。
プラント、そしてザフト軍の報復のシナリオが、今、静かに幕を開けようとしていた - 158二次元好きの匿名さん25/04/02(水) 03:41:01
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- 159スレ主25/04/02(水) 08:08:16
月の地球連合軍プトレマイオス基地の第八艦隊司令官用の一室では、
小太りの男性、ホフマン大佐が椅子に座り、上官を待っていた。
扉が開くと、ホフマンは立ち上がり、敬礼をする。入って来た男性は、軍人としては結構な年齢だろうが、
それを感じさせない引き締まった体をしていた。何よりも蓄えた髭と、その堂々した態度には貫禄を感じられた。
「ホフマン、おはよう。アークエンジェルからの連絡はあったかね?」
「閣下、おはようございます。アークエンジェルはおろか、先遣隊、捜索隊からも発見の報はありません」
「未だ連絡はなしか……」
ホフマンの上官である地球連合軍第八艦隊司令官デュエイン・ハルバートン准将は挨拶をすると、
自ら推し進めたG兵器開発計画の母艦であるアークエンジェルの行方を気に掛ける。
しかし、返って来たのは、彼の望むような朗報ではなかった。
呟くハルバートンに、ホフマンが一歩前に出て口を開く。
「……閣下、申しにくい事ではありますが、この度の事で閣下に対して良く思わない者達が不満を上げております」
「……だが、モビルスーツと艦が無事あれば、いずれ必ず、我ら地球軍の利となる」
「アラスカは、そうは思ってないようですが……」
ハルバートンの力強い声に対して、やや冷めたようにホフマンは答える。
「ふん!奴等に宇宙での戦いの何が分かる!地上から見上げているだけの連中には、何も理解など出来ぬのだよ。
モビルスーツと艦が無事あれば、問題にせねばならぬことは何もない」
「……閣下……」
ハルバートンの言葉は、多少、怒りを含んでいながらも自信に満ち溢れたものだった為、
それ以上、ホフマンは何も言えなくなる。その時、扉が開き、下士官が入って来た。 - 160スレ主25/04/02(水) 13:44:58
「失礼します。地球衛星軌道上にザフト軍と思われる艦艇が集結している模様です」
「ザフト軍がか!?」
「ふむ……。規模はどのくらいなのだ?」
ホフマンが驚くと、ハルバートンは顔色を変えず、冷静に状況報告を求めた。
「数は多くはないようですが、巡回中の艦艇が多数、報告をしてきております」
「そうか……。変化があれば報告せよ」
「は!」
ハルバートンは頷くと、下士官を下がらせ席へと腰を落とした。
ホフマンが、席に座るハルバートンを見すえながら質問をするように口を開いた。
「どう言う事でしょうか?」
「分からぬよ。位置からすれば地球降下でも企んでいるのであろう。かと言って、数は少ない。
今、我々が自ら、赴く程でもなかろう。何かあれば、アラスカが喚きおるだろうがな」
「それでは、その時の為に出撃体制を整えるよう、伝えておきます」
アラスカで机上の空論しか展開出来ない将校達を皮肉るようにハルバートンは言うと、
ホフマンは頷き、自ら進んで対応の準備を口にする。
考えの違いは有れど、ハルバートンに取っては、ホフマンは有能たる部下だった。
「うむ。アークエンジェルが先遣隊と合流出来ていない以上、万が一、
現れた場合の為に補給が出来るよう、物資を積み込んでおけ」
「はい。分かりました」
ハルバートンは、行方知れずのアークエンジェルが帰還するのを信じて望みを掛けていた。
ホフマンとしては、アークエンジェルが生き残っているとは思えなかったが、尊敬する上官であるハルバートンの
命令であり、拒否するような内容でも無かった。ホフマンは敬礼をすると踵を返し、司令室へと向かうのであった。 - 161二次元好きの匿名さん25/04/02(水) 19:48:13
これ、合流出来るのか?
- 162スレ主25/04/02(水) 21:50:14
プラント本国を数隻の戦艦と共に、攻撃の第一陣として出港したヴェサリウスは、
奇襲を掛ける敵に気取られないように静かに地球連合軍基地へと向かっていた。
イザークとディアッカは、自分達の母艦であるヴェサリウスの通路で移動していた。
「なあ、イザーク。作戦、うまくいくと思うか?」
「成功させるのが俺達の仕事だ」
「だとしても、宇宙での敵の重要拠点だぜ?早々、落とせるとは思えないんだけどさ」
「そんな弱気でどうする!隊長も負けられない戦いだと言っていただろう!」
淡々と答えるイザークに対し、ディアッカは作戦に疑問があったのか、否定的な言葉を吐いた。
イザークは、ディアッカの言葉を弱気と捉えたのか、怒ったように睨みつける。
ディアッカは、分かっているとばかりに、うんざりとした表情をしながらも、自らの思いを口にする。
「そりゃ、そうなんだろうけどさ。いくらなんでも無謀だろ?」
「だとしても、成功させるんだ!」
イザークもディアッカに近い考えを持っていたのか、そんな言葉が吐き出されたが、口調は、
赤服のプライドなのか、怒りを含んだ物だった。丁度、曲がり角の所で、隊長室へと向かうクルーゼが姿を現した。
「どうした、二人とも?」
「あ、隊長!……いいえ、なんでもありません!」
イザークとディアッカは、クルーゼが現れた事に慌てながらも、今の会話を聞かれていまいかと、
内心焦りながら敬礼で誤魔化す。クルーゼは、二人を見透かしたかのように、不適な笑みを湛えながら口を開く。 - 163スレ主25/04/02(水) 22:00:30
「作戦が無謀だとか聞こえたが?」
「――やべっ!」
「――!け、決して、そんなことは!」
クルーゼの言葉に、ディアッカはバツの悪そうな表情をすると、イザークは慌てながら、否定しようとした。
そんな二人を見てか、クルーゼは苦笑しながらも本音を言う。
「まあ、いい。私も、完全に潰せるとは思ってはいない。泡良くば、基地としての機能を停止させればと思っている」
イザークとディアッカは目を丸くすると、クルーゼの口調は重みのある物へと変わる。
「だが、これだけの作戦だ。出来る事なら成功させたい。今回は、その為にブリッツをここに投入する
事を決めたのだ。慣れない機体だろうが、イザーク、君に作戦の成否は懸かってると思ってほしい」
「――は!全力を尽くします!」
クルーゼの話に自分の役割の重さを感じたのか、イザークは背筋を伸ばし、敬礼で返した。
クルーゼは頷くと、今度はディアッカを見据えながら言う。
「ディアッカ、もちろん君にも期待をしている」
「――は!」
ディアッカも、イザークと同じように敬礼で返すと、クルーゼは、その場を離れた。
「どの道、囮がうまく立ち回ってくれなければ、どうしようもないのだがな」
一人、移動するクルーゼは、自らが提案した作戦を皮肉るように、仮面の下で微笑んだ。 - 164スレ主25/04/02(水) 22:47:04
ニコルを乗せた戦艦は、ヴェサリウスよりも早く出港し、多数の艦と共に地球衛星軌道上に向かっていた。
兵士達の士気は、ラクス・クラインの暫定的な死亡報道で、異常な程に高く、艦内は熱気に溢れ返っていた。
そんな中、デュエルのコックピットでは、イザークに合わせられた設定を変更する為、
ニコルが自らキーボードを叩いていた。
「設定はブリッツと同じで大丈夫みたいだ。壊さないようにしないと」
独り言を呟きながら、ニコルはキーボードを叩き続ける。そんな中、ブリーフィング時のイザークを思い出す。
ニコルは、イザークの事が嫌いではない。イザークは口が悪いけど、
そんな処が不器用なだけで、イザークなりの優しさがあると分かっていた。
「イザークが気を使ってくれたんです。絶対に勝たないと……」
ニコルはイザークに感謝しつつ、キーボードを叩く。こうしてると、色々な事を思い出す。
家族や、仲間。そして、フレイとアスランと過ごした数日間。本当に色々あったと思った。
その中、思い出すのは、アスランとフレイの最後の会話だった。
『キラとは……お前とは戦いたくない。って……伝えてほしいんだ』
『――えっ!?……戦いたくないって……どう言う事……?』
『キラは戦う事が嫌いなのに……そのモビルスーツにキラが乗っているんだ……』
『……友達……同士で……戦ってるの……?』
『……そう……なる……な……』
『そんなのおかしい……おかしいわよ……。友達なんでしょう……どうして戦わなくちゃいけないのよ!』
『……俺も戦いたくないさ!だから、君に伝言を頼むんだ……頼む、キラに伝えて欲しい』
『……うん……必ず伝える』
『……ありがとう。……それじゃ、元気で……。次に会う時には、戦争が終わっている事を願うよ』
『……うん、アスランも元気で……』 - 165スレ主25/04/02(水) 22:54:41
キラがアスランにとって、とても大切な友人であるのが理解出来た。で、なければいつも冷静なアスランの様子が
おかしいなんてないのだから。キラに対して、自分よりも大切にされている事への嫉妬なのかもしれない。
もしも、キラではなく、ニコルがアスランの敵になっていたら、アスランはあそこまで、
思ってくれたのだろうかと少しだけ考えてみた。アスランは、掛け値無く、友達を大切にするのが分かっている。
そこで考える事を切り替え、友達となったフレイの事を考える。アスランの婚約者であるラクスも好きだが、
話した事がほとんど無い為、あまり身近には思えなかった。ナチュラルとコーディネイターの壁はあっても、
遥かにフレイの方が身近に思えた。ラクスには悪いが、アスランとフレイは美男美女の組み合わせだし、
何よりも、ナチュラルとコーディネイターの壁を取り払えるような気がしたのも事実だった。
出来る事なら、フレイにアスランとの約束を守ってほしいし、キラとアスランが戦わなくて済む
近道なのかもしれないと思った。しかし、知ってしまった以上、悠長な事は言ってられなかった。
「アスラン……あなたとキラさんは戦わせません」
ニコルは、アスランの顔を思い浮かべた。戦場でキラに会う事があれば、まずは、キラを説得してみようと思った。
それでも駄目なら仕方がない。アスランとフレイには、悪いとは思うが、守るべきは自らの友達なのだから。
「キラさんが、アスランと戦うと言うのであれば――!」
ニコルは決意も新たにすると、OSの認証キーを押し、デュエルの調整を終了させたのだった。 - 166二次元好きの匿名さん25/04/03(木) 04:44:22
クルーゼのラスボスムーブ絶好調
- 167スレ主25/04/03(木) 08:10:07
アマルフィ家にリビングでは、フレイとニコルの母の
ロミナ・アマルフィがソファに座って、
モニターを見つめていた。ロミナ・アマルフィを一目見れば、
ニコルが母親似と分かる程、可愛らしい女性だった。
しかし、その可愛らしい顔は、微かに眉を顰めていた。
原因はモニターから流れて来る、ニュースが原因だった。
内容は地球軍批判の放送だった。ロミナとて、今回の事件で怒りは有れど、
戦争を長期化させるような
事をすべきでは無いと、自らの伴侶が言う事と同じ考えを持っていた。
それに息子のニコルが軍人でもあるのだから、心配なのだ。フレイは、
そんなロミナの表情を見て、ニコルの心配をしているのを感じたのか、
気を使うように声を掛けた。
「おばさま……」
「フレイさん、何?」
ロミナは、フレイの方に顔を向けると微笑んだ。
フレイにはロミナの表情が痛々しく感じられた。そして、そんな心配をしてもらえるニコルが羨ましく思える。
「……ニコルもアスランも行っちゃいました……。このままじゃ、みんな……」
「……あなたは心配しなくてもいいのよ」
フレイの悲しげな表情に、ロミナは母親の貫禄なのか、彼女を勇気付けるように気丈にも微笑んだ。
しかし、フレイにもロミナの優しい心遣いが感じ取れるのか、薄っすらと瞳を潤ませながら言葉を続ける。 - 168スレ主25/04/03(木) 08:10:21
「……でも、二人とも私の事、ナチュラルの私を友達って言ってくれたんです。私だけ、何も出来ないなんて……」
「……そう」
「私、地球に戻ったら、パパに戦争を止めるようにって、言います」
「……ええ」
フレイの言葉に、大人の世界はそんな甘い物ではないと知りつつも、ロミナは自らの息子と、
その友達を心配してくれるナチュラルの少女の想いを知り、フレイを抱きしめた。
「約束したんです……。それから、戦争が終わったら、また会おうって……。こんなの間違ってる……」
「……早く戦争が終わって、平和な時代が来ればいいのにね……」
自分の胸で頬を濡らすフレイの呟きに、ロミナも瞳を潤ませた。
母の言葉は、戦場に赴く者の家族や恋人の願いその物だった。 - 169スレ主25/04/03(木) 12:43:30
軍本部の命令により、生存者の捜索を打ち切った、レイ・ユウキ率いる捜索隊とユン・ロー隊は、
ユニウスセブン宙域を離れ、一路、地球衛星軌道上を目指していた。
部屋で泣くだけ泣いたアスランは、そのまま眠りに落ちていた。目を覚ますと、
艦は既にユニウスセブン宙域を離れていた事に気付き、ブリッジにやって来たのだった。
「ユウキ隊長、我々は、どこに向かっているのですか?」
「アスランか。我々は地球衛星軌道上を目指している。補給と敵将兵の移し替えの為に
遅れているガモフと、じきに合流する手筈だ」
「……敵将兵?……ガモフと合流?」
ユウキはアスランの姿に、一先ず安心したのか、少し安心したようだった。
何も知らないアスランは、ユウキの言葉に困惑した表情になると、ユウキが躊躇いがちに事実を告げる。
「……君は知らないだろうが、ガモフが拿捕した地球軍艦艇がシルバーウインドを攻撃したと言う事だ」
「――!」
アスランはユウキの言葉に愕然としながらも、地球軍に対して、どす黒い程の憎しみが湧いて来る。
拳を硬く握り締め、怒りに肩を震わせながら口を開く。
「……それで……命令の内容は、そのような物なのですか?」
「我々に下されたのは、衛星軌道上での敵艦隊、迎撃の命令だ」
「……敵艦隊の迎撃!?……父上は、なぜ、このタイミングで?」
アスランも、地球軍が衛星軌道に展開していない事は知っている。何故、このような作戦を取るのか、
父の真意が分からなく、困惑する他無かった。
ユウキは作戦の内容を把握している為、アスランのような事は無かったが、渋い表情を見せる。
「些か、事を焦り過ぎている気がするが、今回の一件で、プラントでは地球軍に対して、
感情が爆発してとの対応らしい」
「……」 - 170スレ主25/04/03(木) 16:23:05
プラントの人民達が、このような行為に及ぶ地球軍に対して、アスランと同様の感情を持つのは納得するしかなく、
アスランは言葉も無く頷いた。そんなアスランの様子を見てか、ユウキは心配するように声をかけた。
「……大丈夫か?」
「……はい。ご迷惑をおかけしました……」
アスランは、ユウキの心遣いに、改めて探索中の命令無視を詫びた。
ユウキもそれを受け入れ、アスランを勇気付けるように言う。
「……そうか。……辛いだろうが、自分を見失わぬようにな」
「……はい」
アスランはユウキの心からの言葉に感謝の想いを抱きつつ、神妙な面持ちで頷いた。
ユウキは、この話は此処までと区切るように表情を切り替えると、モニターにマップを映し出す。
マップには集結ポイントと思われる箇所が赤く点滅していた。ユウキは点滅している箇所を指差すと口を開く。
「衛星上集結ポイントで、君のモビルスーツを持ってニコルも合流するそうだ」
「ニコルが?ヴェサリウスも来るのですか?」
「いや、クルーゼ隊は、二手に別れてヴェサリウスは、他の隊と共に月に向かう」
「月!?地球軍月基地ですか!?」
予想以上の作戦の規模に、アスランは驚愕の表情に変わった。
父が最高評議会のメンバーであり、自身がザフト軍の赤服と言う立場で、
少しは他の兵士よりは核心に近い場所に居ると思っていたが、自分か末端の兵士でしかない事を改めて感じる。
自分の知らない処で、何かか大きく動いている事に恐ろしいと思った。
「互いに引く事の出来ない戦いになるな……」
ユウキは苦渋を含んだような感じで言葉を吐いた。
アスランはユウキの言葉から、この戦いで予想以上に多くの戦死者が出るのを感じ取るのだった。 - 171二次元好きの匿名さん25/04/03(木) 18:42:06
激戦の予感
- 172スレ主25/04/03(木) 21:13:01
地球連合軍プトレマイオス基地は数分前から慌しく動いていた。
第八艦隊司令官用室に扉をノックする音が響く。
「うむ、入れ」
ハルバートンが返事をすると扉が開く。案の定、ホフマンだった。
ホフマンは敬礼をすると、部屋に入り扉を閉め、ハルバートンの前までやって来る。
「失礼します。閣下、アラスカから出撃要請が出ております」
「やはり、泣きついてきおったか。準備は済んでおろうな?」
「は!抜かり無く」
ハルバートンは地上の将校達に呆れながらも、ホフマンに聞き返すと、ホフマンは力強く答える。
「うむ。では、乗員が乗り込み次第、出撃する」
ハルバートンは頷くと立ち上がり、命令を発するのだった。 - 173スレ主25/04/03(木) 22:08:08
アークエンジェルのブリッジでは、マリューとナタル、キラの指導を終えたムウが席に着いていた。
ムウは手持無沙汰からか、マリューの方にやって来て、穏やかな表情で声を掛けた。
「なんかさ、静かだな」
「そうですね」
マリューも微笑みながら、頷く。実際、ユニウスセブン以降、
艦内ではラクスの事以外では、大事に至るような出来事は無かった。
「なあ、いい感じで艦内が纏まって来たと思わないか?」
「ええ」
ムウの言葉に、マリューとナタルは以前から考えていたことを思い出す。
彼女達の微妙な表情の変化を見抜いたムウは、二人を正面に見据えると口を開く。
「その割には、まだ問題山積み。って、感じの顔してるぜ?」
マリューは、顔に出てしまったのかと、手で少し頬を撫でると、溜息を吐いて頷いた。
「おいおい、溜息吐いてると、幸せ逃げちまうぜ」
そんなマリューの姿に、ムウは茶化しながらも微笑む。
マリューは、少しでも肩の荷を下ろそうとしてくれる、ムウに感謝しながらも苦笑いを浮かべた。 - 174スレ主25/04/03(木) 22:08:38
――彼なら綾瀬姉弟の事も知ってるし、相談しても構わないかしら……。
「……ちょっと、いいですか?」
マリューは、耳打ちでナタルと同じ心配事を打ち明けた。
「……ああ、そう言う事か……。俺も忘れてたぜ……」
ムウは苦々しい表情に変わると吐くように呟いた。このまま基地に着けば、魔法の事も有り、姉弟は確実に拘束され、尋問を受ける事になる。会得方法を知る為に自白剤や拷問紛いの行為も考えられる。
あるいは、コーディネーターに対する優位性の象徴として祭り上げるか。
いくらアークエンジェルを守ったからと言って、軍は甘い場所では無い。ましてや、
損得勘定をしている連中が多い軍上層部が、姉弟のような存在をそのままに置くのは有り得なかった。
数週間前にこの世界に来た以上公人情報など無い。利用するのにこれほど都合のいい人間もいないだろう。
マリューは、目を伏せながら、困ったように口を開く。
「……あれだけ助けて貰ってますから、どうすればいいのか、分からなくて……」
「……ああ。俺も、ここまで世話になって、あいつらを裏切る真似はしたくねえよ。
……もしかしたら、お姫さんよりも厄介な問題かもしれないな……」
ムウも同じ戦場で共に戦った事で、姉弟の事を仲間だと思っていた。
出来る事なら助けたいと心から思い、マリュー達と共に、思案を廻らすのだった。 - 175二次元好きの匿名さん25/04/04(金) 03:20:11
まあ、あり得る展開か
- 176二次元好きの匿名さん25/04/04(金) 08:01:25
大人しくするとは思えないけど、どこまで抗えるか
- 177スレ主25/04/04(金) 10:50:49
プラント本国を出撃したヴェサリウスを中心とする艦隊は、一路、
月の地球連合軍プトレマイオス基地へと向かっていた。静かな船旅だが、地球軍のシルバーウインドへの
不当な攻撃と、その事件で犠牲になったアイドル、ラクス・クラインの報復と相まって、士気は高かった。
ヴェサリウスのブリッジでは、この作戦の指揮官を任されているクルーゼが、今回の攻撃目標である、
月のプトレマイオス基地から衛星軌道上に向かって、敵の艦隊が出撃した事の報告を受けていた。
椅子に座り、報告を受けたクルーゼは、その仮面の下に笑みを湛えていた。
「敵艦隊が巣を出てくれたか」
「ええ。これで襲撃しやすくなります」
「と言っても、地球軍の宇宙での拠点なのだ。守備隊も残っていよう。強固な事には変わらんがな」
ヴェサリウス艦長のアデスの言葉に、皮肉を言うかのようにクルーゼは水を差した。
アデスは少し表情を強張らせながらも、慎重に口を開く。
「しかし、もしも本当に落とす事が出来れば、後の戦いが楽になります」
「落とせなくとも、ダメージを与えれば楽にはなるさ」
クルーゼは、アデスの言葉から、彼が心の一部で作戦に懐疑的に思っていた事を見抜きながらも、
更々、腹を立てる気にはならなかった。クルーゼ自身が、この作戦を自ら立案しなければ、
アデスと同じ考えをしていたかもしれない。
しかし、計画通り事が進んでいる事に、成功への予感を感じ取ったのか、続けるように言葉を繋ぐ。
「艦隊基地としての機能を徹底的に叩けば、当分の間は使い物にならなくなる。分からないか、アデス?」
「……敵艦が修理、補給が受けられなくなると?」
「それは、副産物でしかない」
「と、言うと?」
アデスは、クルーゼの狙いが解らず、尋ねるように聞き返すと、クルーゼの笑みが消え、真剣な表情へと変わる。
クルーゼは、立ち上がりモニターに映る宙域図を見据えると、低い声で言う。 - 178二次元好きの匿名さん25/04/04(金) 15:07:55
知将の本領発揮か
- 179スレ主25/04/04(金) 20:20:22
「地球衛星軌道上から月までの制空権だ」
「……なるほど!我々が、自由に動き回る事が出来ると言う事ですか」
「そうだ。月へのパイプラインは我々が押さえたも同前になる。月に工場はあっても、
いつまでも補給無しでは、いずれは限界が来る」
喜々とした表情のアデスに、クルーゼは頷きながら答えると、
思う処があったのか、アデスは感じた疑問をぶつけてみた。
「しかし、長期戦では我々が不利ですが?」
「長期戦にならぬようにするのが、我々の役目だろう。今回は、
港と修理用ドック、迎撃兵器を攻撃目標にし、徹底的に破壊する」
クルーゼは、モニターから視線を外すと、顔をアデスの方に向け細かい攻撃目標を伝えた。
アデスもクルーゼに視線を合わせると、進言も兼ねて自分の考えを伝える。
「それならば、修理資材が集まる工場区画も破壊しておいた方が良いのでは?」
「早々、工場区画まで入り込めると思うか?」
「……いや、しかし……」
クルーゼは表情を変えぬまま答える。基地の中でも、工場区は深い位置にあると思われ、
そこを強襲するのは現実的に難しい考えだった。アデスも、クルーゼの言う事は解ってはいるが、
長期戦を望めぬザフト軍には不利になる要素を少しでも
減らそうと思い進言をしたのだが、クルーゼは違う考えを口にする。
「その後は、数週間に一度、どこかの隊に襲わさせれば、修理など滞るだろう」
「……な、なるほど」
「その間に、我々は地球に向けて降下部隊を降ろせばいい。……まあ、ここまでが、一先ずのシナリオだ」
クルーゼは、言い終えると不敵に微笑むと、アデスはクルーゼを静かに見据えた。 - 180スレ主25/04/04(金) 21:01:07
クルーゼとアデスの関係は決して短くはないが、アデスには上官であるクルーゼが何を考えているか
理解が出来ない事が多々あった。アデス自身、クルーゼの事を信頼はしているが、表情は仮面に隠れ、
見えない事も含め、謎が多すぎた。その、謎多き上官であるクルーゼが椅子に腰を落とすと、再び口を開く。
「だが、私としては、予測される以上の戦果を上げたいと思っている」
「……壊滅ですか?」
「そうだ。うまくいけば、我々は英雄として称えられる事になるな」
クルーゼは、英雄などに興味も無いが、自らを茶化すように微笑んだ。
「しかし、どうやって……?」
アデスは思考を廻らすが、守りも固いであろう敵の重要拠点であるプトレマイオス基地を
壊滅に追い込めるのか、想像もつかなかった。困惑するアデスを尻目に、
クルーゼは口を歪ませるように静かな笑みを湛えた。
「港と修理用ドックには、破壊兵器に変わる物があるだろう。解らないか?」
「破壊兵器に変わる物……?」
「その為には、港口を塞ぐ必要がある。一隻でも多く、敵艦を基地内に封じ込めなければならない」
淡々と話すクルーゼの言葉に、アデスは呆気に取られるが、すぐに頭を働かせた。
――戦艦を封じ込めならなけえばならない理由……。破壊兵器に変わる物……。
確かに無い訳ではない。ただ、基地を壊滅させる程の物となると、かなり限定される。
アデスは、脳内を働かせると考えを導き出す。 - 181スレ主25/04/04(金) 21:01:23
――まさか、戦艦に搭載している核融合エンジンを
基地内部で爆発させ、誘爆を誘発させようと言うのか……。敵基地を破壊できる物は、これ以外ありえない。
それを実際に作戦としてやった人間は、恐らくいないだろう。ましてや、
敵軍の戦艦を爆弾代わりに使おうと言うのだ。
改めてクルーゼを見つめると、その考えに恐怖を感じた。確認するように、躊躇いがちに口を開く。
「……まさか」
「恐らく想像通りだ。その為のブリッツ投入なのだからな」
クルーゼは笑みを讃える。その姿に、アデスは自分がコーディネイターである事と、
クルーゼが味方である事に感謝した。しかし、未だ机上の空論で事がうまく運ぶとは限らない。
成功した処で、他の地球軍基地が動き出す可能性も高い。アデスはその事が気に掛かり、クルーゼに問いかけてみた。
「そうなれば、他の地球軍基地が黙っているとは思えませんが……」
「地球軍組織が一枚岩ではないのが救いだな。奴らが危険を冒してまで出て来るとは思えんし、
出てきた処で間に合わんよ。いずれは相手にしなければならないが、まだ先の話しだ」
クルーゼは頷きながらも、淡々と答える。アデスは、クルーゼの考えに被っていた帽子を取ると額の脂汗を擦った。
「……これは、思ってた以上に意義深い戦いになりそうですな」
「ああ。クライン議長閣下とアスランには悪いが、我々は、この機会を与えてくれたラクス嬢に感謝せねばな」
クルーゼは、アデスの言葉に頷くと、眼前に広がった暗い宇宙空間を見つめた。 - 182二次元好きの匿名さん25/04/05(土) 05:14:24
厄介クルーゼラスボスだわ
- 183二次元好きの匿名さん25/04/05(土) 12:06:28
本気のクルーゼこえー
- 184スレ主25/04/05(土) 20:04:30
「ふぅ……流石に疲れた……。私にアムロさんみたいな戦い方が出来るのかな……」
キラの口から溜息と共に言葉が零れ落ちた。いつもは訓練自体はシュミュレーターが軸だが、今日は実機を使った
訓練を行い、琉生のジンの動きに着いて行く事が出来ずに四苦八苦するしかなかった。
改めて、師事した琉生の実力が遥か雲の上にある物だと実感してしまった。
――いつになったら追い付く事が出来るのかな……。そんな事を思っていると、後ろから声が掛けられた。
「あら、キラ様。訓練が終わりましたの?ご苦労様です」
キラは振り向くと、ラクスが入り口から体を浮かせながら流れて来た。
ラクスは、キラの前まで来ると、足を少し前へと振って慣性の動きを止めるようとする。
キラは手を差し伸べると、ラクスは微笑みながら、その手を取り動きを止めた。
「ありがとうございます」
「――あ、うん。ラクスさんも終わったの?」
「はい」
ラクスは厨房での手伝いを終えた後らしく、始めて出会った時のように髪を結ってなかった。
アークエンジェルでの生活に満足しているのか、表情は生き生きとして美しい物だった。
キラは、ラクスに労いの言葉を掛ける。
「……お疲れ様、ラクスさん」
「キラ様もお疲れ様です……フフフ」
「……ハハハ」 - 185スレ主25/04/05(土) 20:04:51
キラは、ラクスの微笑みに心が暖かくなる感じがして、釣られるように笑みが零れた。
二人は笑い終えると、視線は自然と窓の外へと向いた。人類の歴史が始まる前から輝く、
幾多の輝きが見える。この宇宙空間に二人だけしか存在していないような気にも思えた。
「……星が綺麗ですね」
「うん」
「……」
ラクスの言葉にキラは頷くと、静かに暗闇に輝く星を見つめ続けた。
暖かな沈黙が支配する中、キラは、ラクスの境遇を思い出し、聞いてみた。
「……ねえ、家、帰りたい?」
「……はい。でも、この船の皆さんは、とても良い方々ばかりで……」
星を見つめ続けるラクスの横顔が、少し寂しそうな感じに見えた。ラクスは民間人とは言え、
プラント最高評議会議長の娘で、地球軍基地に着けば囚われの身になるかもしれない。
キラは、何でこんな事を聞いてしまったのかと、深く後悔をした。
「……ごめん」
「キラ様の所為ではありませんから、お気になさらないでください」
謝罪の言葉に、ラクスは視線をキラへと向け、優しく語りかけた。キラは、それでも居た堪れないのか、言葉を濁す。
「……でも」
「この船の方々の所為でもありませんから。私は助けて頂いて、大変感謝しています。それに、皆さんに良くして頂いて、楽しいです」
ラクスは顔をゆっくりと横に振ると、優しくキラに微笑む。キラは、ラクスの優しさに心から感謝をした。 - 186スレ主25/04/05(土) 20:07:04
- 187スレ主25/04/05(土) 21:25:51
「……ありがとう」
「いいえ。私の事で、キラ様が辛そうなお顔をしているのは、私も辛いですから」
「――あ、あり……がと……」
キラは、ラクスの優しさが自分に向けられた事に嬉しく感じたが、こそばゆく感じ、顔を赤らめた。
ラクスは、そんなキラを見て不思議そうに首を傾げる。
「キラ様?」
「――あ、あの……」
キラは赤面した顔で、あたふたと取り繕うと口を開くが、何を言ったら言い物かと、
言葉が続かずに微妙な沈黙が支配する。そんなキラの表情を伺いながらも、ラクスは優しげに返事をする。
「……はい?なんでしょうか?」
「……えっと、あ、あの……キラ様って、恥ずかしいから……」
「お嫌ですか?」
キラは言葉に詰まりながらも恥ずかしそうに伝えると、ラクスは少し寂しそうな顔を見せる。
キラ自身、『キラ様』と呼ばれ、嫌な訳では無く、逆に騎士になったようで誇らしい位の気持ちなのだが、
照れが先に来てしまう。ラクスの少し寂しそうな表情を見たキラは、更に困ったのか、取り繕うとする。 - 188スレ主25/04/05(土) 22:03:01
「そ、そうじゃなくて、あの、恥ずかしいって言うか、こうやって知り合えたんだし
……みんなが呼ぶみたいにキ、キラで……いいですよ」
「まぁ!……それでは、私の事はラクスとお呼びください」
「――え!?……う、うん」
ラクスは胸の所で両手を組むと、嬉しそうな表情を見せた。
キラは、ラクスの言葉とその微笑ましい表情に、首をカクカクと縦に振ると、ラクスの名前を口にする。
「――ラ、ラクスさん」
ラクスは、キラの呼んだ自分の名前に、不満そうに頬を少し膨らます。
「キラ、それでは前と変わりませんわ。ラクスさんではなく、ラ・ク・ス、ですわ」
「う、うん!……ラ、ラクス」
「はい!」
キラが慌てながらも、恥ずかしそうにラクスの名を口にすると、ラクスは嬉しそうに微笑みながら返事をした。
キラは嬉しそうに微笑むラクスを見て、恥ずかしさを誤魔化す為か、片手で頭を掻いた。 - 189二次元好きの匿名さん25/04/06(日) 04:54:15
結構いいライバルってところか
- 190スレ主25/04/06(日) 12:39:40
「ずいぶん仲良くなったみたいだな」
そこに作業を終えた琉生が流れてくる。コーヒーを淹れる為に重力区画に向かうところだった。
(これで後のことが無ければな)
ラクスの微笑が少しだけ崩れるのを見逃さなかった。宇宙で敵に襲われ、助かったと思えば、
敵艦の中なのだから、普通なら希望など有りはしない。
「すまん、顔に出たか」
「……ありがとうございます。……私の事をお気に掛けて頂いて、うれしいですわ……」
ラクスは微笑を保ちながらも、少しだけ瞳を潤ませる。
少女なりに抑えていた感情が少しづつ零れ始めたのか、俯くと肩を震わせた。
俯くラクスの肩にそっと手を伸ばすと、ラクスの体は琉生の腕の中に流れ込み、抱きしめるよう形になった。
ラクスは顔を伏したまま、琉生の胸に額を預けた。
「……ごめんなさい……少しの……少しの間だけ……泣かせて……ください……」
それを見たキラは不機嫌になり、自分の胸を押し付ける様に琉生の背中に抱き着く。
(ホント、自分の無力さを痛感するぜ)
この程度の事しかできない自分に、琉生は溜息を零した。 - 191スレ主25/04/06(日) 15:28:46
ブリッジを後にしたミリアリアは、次の交代までの間休息の時間となったので、
トールと共に自分達の部屋へと向かっていた。ミリアリアが歩きながら思い切り体を伸ばした。
「んー!流石に同じ姿勢で居ると、体が固まるわね」
「ああ、なんせ、デスクワークだもんな」
トールが、肩をグルグルと回しながら苦笑いを浮かべると、ミリアリアは微笑みながら頷く。
「でも、これでキラとルイが助かる事が出来るなら安い物ね」
「ああ。だけど、本当は一緒に戦えるか不安だけどな」
「トール……」
誰も自分の好きな人が危険な戦場で戦うなど、喜びはしない。ミリアリアもそれは同じで、
トールにモビルスーツに乗って欲しくはないと思っている。トールの言葉を聞いて、
ミリアリアの表情が不安を含んだ物へと変わり、自分の隣を歩く、彼氏へと目線を向けた。
「――ん?なに?」
「……ううん。なんでもない……」
トールは、ミリアリアの思いに気付く事など無く、ミリアリアは寂しそうに俯くと、首を横に振った。
ミリアリアの素振りに気まずく感じたのか、トールは話題を変えようと口を開く。
「……そう言えば、アークエンジェルに乗って、二人きりになるの久しぶりだよな……」
「う、うん……そうね」
「……ミリィ」 - 192スレ主25/04/06(日) 18:39:06
ミリアリアの頭の中ではトールへの心配事が渦巻いていたが、突拍子も無く話を振られた為、
少し慌てながらも内容が内容な為、頬を赤く染める。トールは、ミリアリアの肩に触れると体を引き寄せ、
キスをすると、ミリアリアも瞳を閉じて受け入れる。
「……う……ん……トール……」
長いようで、短い時間だったのかもしれない。ミリアリアは、トールの唇が離れると頬を染めた。
「必ず、生きて帰ろうな」
「……うん」
「……行こうか」
「……うん」
トールの言葉に頷くと、彼の手を取りくっ付くように歩いて行く。その姿は、とても幸せそうな物だった。
二人は並んで、右手に曲がる通路を通り過ぎて少しすると、後ろから男性の声が聞こえた。
「……いやぁ、若い若い!若いって、いいねぇ」
「……フラガ大尉……悪趣味ですよ」
「「……えっ!?」」
トールとミリアリアが驚いて振り返ると、ムウとマリューが立っていた。マリューは、ムウに対して呆れている
様子で、ムウは、「見つかっちまったか」と、でも言う表情で頭を首の後ろの辺りを摩っていた。 - 193スレ主25/04/06(日) 18:39:55
- 194スレ主25/04/06(日) 21:09:38
ザフト軍の臨時に編成された艦隊が地球衛星軌道上に続々と終結しつつあった。その中には、
レイ・ユウキ率いる捜索隊とユン・ロー隊、合流したガモフの船体も見受けられた。
合流した処です、艦隊の責任者にザフト軍特務隊FAITHの隊長であるユウキが任命され、すぐに編成が行われた。
GATシリーズはプラント本国から来た艦隊により、ガモフに移された。
それに伴い、アスランもガモフへと移動する事となった。目の前には、ジンと共にGATシリーズの機体が
二機並んでいた。奥にある一機は見慣れた自分の機体、
イージスだった。しかし、もう一機が聞いた話とは違っていた。
「これは……追加装甲か?追加装甲装備のデュエル!?ニコルではなく、イザークが来たのか!?」
アスランは、デュエルを見上げる。前に見た時は、デュエルはもっとスマートな印象があったが、
明らかに鎧のような装甲を着け純重そうに見えた。いつの間にこんな物を造ったのかと思ったが、
データなども揃っていた事や、自分が休んでいた時間を考えれば、不思議では無いと思えた。
そんな事を思っていると、キャットウォークの方から声が聞こえたような気がした。
「アスラーン!」
「ニコル!?」
ユウキの話通りニコルが来ては居るが、専用機のブリッツが見受けられなかった。アスランは謎に思いながらも、
キャットウォークから軽い引力に任せて、宙をゆっくりと降りてくるニコルに目を向けた。
ニコルは優雅に着地すると、笑顔を見せた。 - 195二次元好きの匿名さん25/04/06(日) 22:13:35
アークエンジェルは平和だけと ど、激戦の気配が
- 196二次元好きの匿名さん25/04/07(月) 03:53:12
ニコルがデュエル、どうなるか
- 197スレ主25/04/07(月) 10:12:08
「お疲れ様です、アスラン」
「ニコル、デュエルがあると言う事は、イザークもこっちに来ているのか?」
「違いますよ。イザークは月に向かってます。ブリッツとデュエルを交換したんです」
「えっ!?」
アスランは、イザークが機体を交換した事に素直に驚いた。
ニコルもアスランが驚くのは予測済みだったのか、少し楽しそうな顔をしていた。
「イザークが自分から申し出たんですよ」
「イザークがか!?……良くイザークが申し出たな……」
「……ええ。イザークからは、壊すなって言われてますから、傷を付けるにはいきませんよ」
ニコルの言葉に、アスランは「信じられない」と、言わんばかりの表情になった。
アスランが持っているイザークのイメージからすると、大抵、自分の機体を誰かに貸すなど、考えられない事だった。
イザークに対して、見方を変えた方がいいのかも。と、少し思った。
そんなアスランを他所に、ニコルは交換する原因が自分にあった事を伏せておいたのは言うまでもなかった
「それよりも、使えるのか?」
「問題無いですよ。基本的に変わりませんし、デュエルはベーシックな機体ですから」
「……そうか」
「分かっているとは思いますけど、イージスも直ってますよ」
「……ああ」
アスランはニコルに言われるがままに、視線を奥にあるイージスへと向け、少し悲しげに頷いた。
イージスを見て、あの機体でキラと戦ってしまったんだと思うと、辛かった。それに、
イージスに乗ってからと言う物、ラクスの事も含め、色々と嫌な事ばかりが多かった気がしてない。
そう言う意味では、自分の専用機であるイージスには悪いが、余り好きになれそうもなかった。
ニコルは、アスランの浮かない顔色を見て、遣る瀬無さそうな表情になる。 - 198スレ主25/04/07(月) 10:22:00
「……アスラン、今回の事で辛いとは思いますが……」
「ニコル、その事は何も言わないでくれ……」
「……はい」
悲壮な表情を浮かべるアスランに、ニコルは黙る他無く、
回りのメカニックマン達の話し声や機械の音などが、耳に響いた。
「……父上やクライン議長は、どうして、このような判断をしたんだ……。
こんな事をしても、ラクスが喜ぶとも思えないのに……」
どのくらいの沈黙だったのか、アスランが口を開く。
悲壮な表情には変わらないのだが、吐き出される言葉には、悔しさや悲しみが含まれていた。
ニコルは、そんなアスランの言葉を聞いて、誰かの為に一生懸命になれる彼は、やっぱり優しいと感じる。
しかし、軍人である以上、命令は絶対なのだ。あえて、事務的に答える事にした。
「……仕方ないですよ。プラント市民の反応が凄い物でしたから」
「それは俺も同じだが、これでは無駄に犠牲者を増やすだけだ。こんな事をしても、ラクスを悲しませるだけだ!」
「……でも、僕達は軍人で、これが仕事なんです」
「――それは……分かっているが……」
淡々と話すニコルの言う事は、軍人として正しかった。しかし、アスランは何かが間違っていると
言いたかったのだが、その確信に自信が持てず、言葉を続ける事が出来ずに口を閉ざす他無かった。
ニコルは、真っ直ぐアスランの目を見つめる。その表情には、言い知れぬ迫力があった。
「アスランは……ラクスさんを殺されて、地球軍が許せないんですよね?」
「――!ラクスは、まだ――」
「――アスラン、現実を見てください!ラクスさんが脱出ポットで発見さたとしても
既に酸素も尽きている時間なんですよ!もう、間に合わないんです!」
「――!」 - 199スレ主25/04/07(月) 10:22:12
ニコルの悲痛な叫びに、アスランは息を飲んだ。ニコルが言う通り、無事に脱出ポッドで逃げていたとしても、
既に酸素が切れている時間は、当の昔に過ぎているのだ。アスランは体が固まったように動けなくなり、
見開いた目から涙が零れ落ちた。ニコルは俯き加減に視線をアスランから床へと移し、
自らの目からは、今にも涙が溢れんばかりだった。
「……アスランは、大切な人を奪われて、憎くないんですか?」
「……お、俺だって……だけど――」
「……僕はナチュラルが……憎い訳じゃありません。……それに……僕だって、
本当はこんな事、言いたくないんです……」
固まったまま、涙を流すアスランは、搾り出すように声を出すが、ニコルが遮るように言葉を吐いた。
その表情は苦しんでいるかのようだった。ニコルは、そのまま言葉を吐き続ける。
「……でも、同じコーディネイターで……敵になってる人がいるくらいなんですよ……。
言って分からない相手なら、倒すしかないじゃないですか!」
「――ニコル、お前!」
アスランは、ニコルの言葉にプラントでフレイとの別れ際に、扉の所でニコルと鉢合わせをしたのをの事を
思い出した。ニコルの言う、コーディネイターはキラの事を指しているのを確信し、
アスランは固まった姿のまま、右手の拳を握り締めた。ニコルは、視線を再びアスランへと戻し、真っ直ぐ見つめる。
「僕が信頼出来る地球側の人間は、今の処、フレイだけです。分かって貰えない相手なら、
僕の大切な人達を守る為に、誰であろうと倒しますよ」
ニコルは、普段は見せない強い意思を剥き出しで、告げると、踵を返してアスランの元を去って行った。
アスランの握り締めた拳は行く宛など無く、アスラン自身、
どこに向けていいのかも分からず、ただ立ち尽くす他無かった。 - 200スレ主25/04/07(月) 10:27:29