- 1スレ主25/03/21(金) 21:43:21
- 2二次元好きの匿名さん25/03/21(金) 21:44:06
このレスは削除されています
- 3スレ主25/03/21(金) 21:44:41
- 4スレ主25/03/21(金) 21:54:31
綾瀬琉生(アヤセルイ)男 13歳 169㎝
アリス 魔女術
パイロット128 砲手69 操舵手48 メカニック145
オペレーター30 艦長12 空間認識能力91 100を超えるとその世界最高(ノイマンが操舵手100)
[駅前魔法学園]が一番好きなTRPGだった転生者。
魔法を学び始めて以来、事ある毎に事件に巻き込まれ、それを解決してきた。
その為「人生はほんのり刺激がある程度で十分」がモットーの昼行燈を気取っているが、
巻き込まれた際にはいの一番に行動するほど責任感が強い。
総合的に[前衛が務まる回復役]だが、手数が多いので他の分野でもそれなりに活躍できる。
ただし得意分野(治療と調査、BOSS戦)以外は器用貧乏なので、専門家には劣る。
- 5スレ主25/03/21(金) 21:58:09
- 6スレ主25/03/21(金) 22:05:58
綾瀬瑠璃(アヤセルリ)女 13歳 130㎝ Gカップ
ウィザード 召喚術
パイロット58 砲手74 操舵手83 メカニック6 オペレーター31
艦長73 空間認識能力108
琉生の二卵性の姉。産まれた時から妖精や精霊の類を見ることができた。結果魔法を学ぶことになり、
特に召喚術に強い興味を持つようになった。
単独で事件に巻き込まれることが多いが、すぐに味方を作れる人徳故に困ることはなかった。
散歩というより旅行が趣味であり、その土地の文化や名物を楽しむのが生きがい。
料理を含めて家事全般が得意で、世話焼きな面がある。
干支に因んだ12体の召喚獣を、目的に合わせて召喚する。
総合的には[サポート特化]、前線に出るよりも後衛として補助に回るのが一番得意。
砲手に適性があるので、そちらに回ることが多い。
- 7スレ主25/03/21(金) 22:17:27
- 8スレ主25/03/21(金) 22:21:28
前回までのあらすじ
綾瀬姉弟の活躍により、ヘリオポリスの被害は軽減。
キラのメンタルもまだ悪化していない。(ロマンティクスはしていない)
しかしラウ策略で絶体絶命の状態。 - 9スレ主25/03/21(金) 22:22:18
- 10スレ主25/03/21(金) 22:25:14
アスランが乗るXー303イージスは可変機だった。
モビルスーツとモビルアーマー、二つの形態になれる機体である。
高速性に優れるモビルアーマー形態で、足つきに接近をかけている最中だった。
アスラン達の横を、ヴェサリウスからの砲撃が追い抜いていく。
受けた命令は、足つきとモビルスーツの撃破、撃墜だ。
だが、アスランは他に許可をもらっている。
可能であれば、ストライクのパイロットの説得を試みてよいと。
自分はこれから戦場に私情を持ち込もうとしている。
クルーゼに許可をもらえたが……罪悪感からは逃げられなかった。自分は何故ここにいる。
撃つか撃たれるかの戦場で何をするのか。援護か。それとも説得か。
バカな話だ。戦場で友と再会しました、殺したくないので説得します、だから撃ちません。
味方がやられましたが戦いより説得を優先します。それでも出させて下さい。
それは裏切り者のやり方だ。
出るならば戦う義務がある、出た以上は戦う義務があるのだ。自分はザフトなのだ。プラントの守り手だ。
それは志願した時に誓った責任と言うものだ。なのに。 - 11スレ主25/03/21(金) 22:27:22
(キラ……地球軍に志願するなんて、お前もナチュラルに味方するのか……コロニーに核を撃つような連中に)
あるいはそういう作戦に利用されているのか。
クルーゼの言葉が頭をよぎる、その為に近づいて来たのか。自分に近づいて利用しようとしたのか。
あのナチュラル達に協力する、裏切り者のコーディネーター達のように。
皆が父を悪く言う。追い詰めるように批判する。殺戮者、異常者、冷酷非道。
ふざけるな。
母を、レノア・ザラの命を先に奪ったのは連合ではないか。
ナチュラルがコーディネーターを、父を追い詰めたのだ。
食糧の輸入は絞られ、交渉しようとすれば評議員を暗殺される、そんな相手と何を話せと言うのだ?
父の言う通り、戦うしかないではないか。アスランはアカデミーでそう教わったし、周りの大人は皆そう言っていた。
プラントの人々は[皆]そう言っているのだ。 - 12スレ主25/03/21(金) 22:28:42
講義で教わった地球で起きているナチュラルからコーディネーターへの迫害……その内容は、
まだ若いアスランにとって怒りの対象でしかなかった。
プラントの姿勢に反発をするコーディネーターが大量にいるのは知っている、
いや、プラントが少数派なのは知っているのだ。
理解不能だが、地球に済むコーディネーターが圧倒的に多数で、
地球連合に志願するコーディネーターが少なくないのも知っている。
だから……だから、一致団結をしなければいけないのに……。
何故、あんな目に会わされてまで地球に住むのか、ほんとうに理解不能だ。
兵士となれば前線送り、だったらプラントのために戦えばいいのだ。
そう思っていたのに。
再会した友人すら、自分から離れていく。
憎きナチュラル。
母を奪い、父から優しさを奪い、自分から友まで奪う、許せるものではない。
ナチュラル共め。
アスランは未熟ではあるが、義務を果たそうとする人間だった。
ただ、将校ではなく、政治家でもなく、そして、客観的な目を持つ大人でもない。
だから。キラと戦うのか、説得をするのか。
どちらも果たそうとしながら、どちらにも迷っている、中途半端な精神状態だった。 - 13スレ主25/03/21(金) 22:29:47
琉生dice4d100=79 73 96 28 (276)
瑠璃dice4d100=60 68 98 80 (306)
キラdice4d100=92 17 46 66 (221)
アスランdice1d100=5 (5)
イザークdice1d100=2 (2)
ディアッカdice1d100=58 (58)
二コルdice1d100=72 (72)
- 14スレ主25/03/21(金) 22:43:52
不意に。イージスの前方からビームが走ってきた。敵弾だ。
それが二機のジンを爆破し、イザークが乗るデュエルと二コルが乗るブリッツを掠める。
被害は甚大だった。ブリッツは右腕が大破している。武器の大半が集中している
右腕を失うことは、戦闘不能の大差なかった。
「痛い!痛い!痛い!!」
デュエルの頭部が完全に破壊される。
それだけではなく、回線のショートによってコックピット内のモニターが
罅割れ、その破片がイザークの顔に突き刺さる。
その悲鳴で我に返ったディアッカが、助けようとカンヘルに
超高インパルス長射程狙撃ライフルを向ける。
しかしそれよりも早くカンヘルはグレイブを伸ばし、光を纏わせて薙ぎ払う。
嫌な予感がしたディアッカはとっさに横移動を行う。
それにより放たれたビームは直撃しなかった。だが、無傷ではいられなかった。
ディアッカ「嘘……だろ……」
掠めたエネルギーにより、超高インパルス長射程狙撃ライフルは誘爆寸前の状態になっていた。
大慌てでパージし、被害を抑える。凄まじい威力だった、それこそ艦砲すら容易に上回るほどだ。
- 15二次元好きの匿名さん25/03/21(金) 23:35:19
いやJCなら充分デカいから
- 16二次元好きの匿名さん25/03/22(土) 00:15:21
あっという間に半壊させたよ
- 17二次元好きの匿名さん25/03/22(土) 00:35:52
ルリが砲手か
- 18二次元好きの匿名さん25/03/22(土) 01:34:51
第1クールから全力でラスボスマインドなクルーゼ、ヤベェけどオリキャラ(AA)側も戦闘力がヤバい
アデスと馴染みのオペレーターが仕事してくれたけど、アルテミスで拘束という名の休憩が取れなかった事がこの後のスケジュールにどんな影響が出るんだろう - 19二次元好きの匿名さん25/03/22(土) 06:27:29
- 20二次元好きの匿名さん25/03/22(土) 08:08:02
そういや、フレイはどうなった?
- 21スレ主25/03/22(土) 15:41:11
「これだけやれば十分ね」
ランチャーパックを装備したストライクにキラと同乗する瑠璃が呟いた。
「佐介もご苦労様」
彼女は肩に乗る鼠型召喚獣[佐介]を優しく撫でる。
佐介は無数に分身しどこにでも入り込める能力を持つ。
そして召喚獣は召喚者と精神的につながっており、そこに瑠璃が持つ
高い空間認識能力が合わされば高精度な照準用GPSとして機能する。
勿論佐介が瑠璃から離れられる距離には限度があるが、今回は十分だった。
「琉生が心配?」
操縦を担当するキラに声をかける。
「それもあるけど、正直アスランと戦ってほしくない」
キラは心配で顔を曇らせた。恋する相手と大切な幼馴染。そんな二人が殺しあうのは耐えがたかった。
すると瑠璃は優しくキラを抱きしめる。
「大丈夫、アスランを殺さずに何とかして帰って来るなんて、琉生ならやってのけるわよ」
「そうなの?」
「そうよ。琉生は何時だって無理無茶無謀を押し通して望む結果を掴んできたもの。
それができるからこそいつだってちゃんと帰ってきたんだから。信じなさい」
「…そうだね」
「さ、戻りましょ。まだまだやることはあるわよ」 - 22スレ主25/03/22(土) 17:25:44
あっという間に僚機がほぼ戦闘不能状態まで追い込まれたことに、アスランは驚愕する。
それでも妹同然の相手を取り戻すべく、四肢のビームサーベルを展開して斬りかかる。
しかし当たらない。いつの間にか後ろ、気が付けば真横、見失ったと思えば正面。
[人間]であればかかる重圧で潰れてしまうはずのスピードと方向転換で躱してしまう。
必死になって攻撃を続けるが、むしろ新種屈する上に変幻自在に動くグレイブの刃を躱すのが精いっぱいだ。
残って戦う自分達赤服面々ばかり損傷が増え、バッテリーも危険域にまで減っている。
それでも撃墜されないのは彼らが選りすぐりのエリートだからだろう。
更に、アスランに最悪の知らせが届いた。
アスラン「ヴェサリウスが被弾!?」 - 23二次元好きの匿名さん25/03/22(土) 18:11:17
ここの主のしっかり状況説明描写入るスタイル好みなので、スレが続く限りお供します
- 24スレ主25/03/22(土) 21:21:49
- 25二次元好きの匿名さん25/03/22(土) 22:05:14
このレスは削除されています
- 26スレ主25/03/22(土) 22:06:28
いつもは戦闘中でも仮面越しに余裕そうな雰囲気をしているというのに、
今のクルーゼは誰かに話しかけられることすら拒むように、その映像に見入っていた。
副官であるアデスも、驚愕の表情で送られている映像を見ていた。常軌を逸しているのだ。
出撃後すぐに部隊のジンは文字道理全滅、投入したG兵器はたった一機を相手に手玉に取られ、全滅も時間の問題だ。
映像でも、竜騎士をターゲットに捉えることが叶わずに、画面の端から端へ横切っていくだけだ。
逆に竜騎士は的確にこちらを捉え、致命傷足りうる攻撃を繰り出してくる。
残っているのは最早アスランのイージスだけになってしまった。
こんなことができるナチュラルがいるのか?
アデスは竜騎士のパイロットがコーディネイターではないかと疑うほどだった。
むしろそう願っている自分もいた。あれがナチュラルの真の力だというなら、
ナチュラルより優れるために人工的に作られたコーディネイターは一体…なんだというのだろうか。
クルーゼはその映像を誰にも見えない仮面の下で歓喜の瞳で眺めていた。
面白い。まるで自分の抱えている物を否定する存在だ。
もっとだ。もっと私に見せてくれ。私の絶望を拭い去るまでどうか落ちてくれるなよ。 - 27二次元好きの匿名さん25/03/23(日) 02:52:58
ラゴゥに先駆けて砲手と操縦手の二人乗りだとぉ…!
キラは女体化で原作より体積が小さくなってるし、砲手も130cmだけど、コックピットの中はどうなってんだ?
ソフトウェア面はキラが何とかするにしても、時間がないから一人分だけの席をどうにかできるとは思えないし…
しかし、パイロット58 砲手74 空間認識能力108の能力があるにしてもチート情報収集能力はマジで強ぇ。
情報というものは正誤が兵を殺してしまう事もあるし、時には正確な情報は万の兵にも勝るものなんだよな
こういう情報面でチートなキャラがSEEDに放り込まれるのは初めて見たけど、ホント正確で質が高くて素早い情報収集能力がどれだけ脅威なのかたった2スレで思い知らされるとは思わなかったぜ!
> 離れられる距離には限度がある
ってのも逆に言えばその範囲内には敵がいない、という情報が得られる事だしマジて強力な能力だなぁ!
- 28スレ主25/03/23(日) 07:27:09
(…捕まえた!)
同時刻、ついにムウは眼前にザフトのナスカ級を捉えた。低出力モードを解除し、
4基のガンバレルからなるエネルギーを全開放し、一気に目標へ迫る。
「うおりゃぁぁ!!」
ムウの接近は直前まで成功していた。だが、彼を感知する者がその船には乗っていた。
琉生の戦いに夢中になっていたクルーゼは、寸前のところで突貫するムゥの気配を察したのだ。
「機関最大!艦首下げ!ピッチ角60!」
「は!?」
「本艦底部より接近する熱源、モビルアーマーです!」
クルーゼの突然の言葉と、オペレーターが報告した情報が完全に一致した。
真下から迫ってくるモビルアーマーと言うなら、
出てないと思い込んでいたオレンジ色のモビルアーマー…メビウス・ゼロだ。 - 29スレ主25/03/23(日) 11:07:41
アデスの顔色が青くなっていく。
「ええい!CU作動!機関最大!艦首下げ!ピッチ角60!」
だが、時は遅かった。ムウの操るガンバレルから放たれた弾頭は、ヴェサリウスのエンジンを完全に捉えた。
感じたことのない強い振動に、ブリッジにいた誰もが何もできずにシートにしがみついた。
「いーよっしゃぁぁ!」
ムウの機体はヴェサリウスの装甲にアンカーを打ち込み、スイングバイで宙域を離脱していく。
「機関損傷大!艦の推力低下!敵モビルアーマー離脱!
第5ナトリウム壁損傷、火災発生、ダメージコントロール、隔壁閉鎖!」
(…ムウめぇ!)
推力を奪われた艦は的に過ぎない。
クルーゼは苦虫を噛み潰しながら、撤退命令を出すのだった。 - 30二次元好きの匿名さん25/03/23(日) 14:05:31
なんか、クルーゼがグラハム化しそう
- 31二次元好きの匿名さん25/03/23(日) 15:16:08
駅魔的に炭酸化もあり得そう
- 32二次元好きの匿名さん25/03/23(日) 21:44:53
炭酸仮面なクルーゼってどうなん?
- 33スレ主25/03/23(日) 21:45:48
「再度確認しました。半径5000に、敵艦の反応は捉えられません。完全にこちらをロストした模様」
逃げる、という作戦はどうやら上手くいったようだった。
あの後合流したムウさんのゼロに掴まってさっさと逃走。アークエンジェルは無事に逃げ切れた。
そこまではいい。俺はパイロットスーツを脱ぎ、溜まった汗を魔法で塩抜きと消毒する。
こんな水でも飲まないといけないくらい、今のアークエンジェルには物資が無いのだ。
とりあえず、異空間から空のペットボトルを取り出して水を入れる。1ℓはあるか。
「よくやった坊主……何やってんだ?」
「溜まった汗を集めたんだよ、こんな水で今は貴重だろ」
「馬鹿野郎!すぐ医務室に行くぞ」
「あ、ちょ…」
俺はムウさんに引きずられながら医務室に運ばれ、ついでに検査を受けて
俺と姉貴が正真正銘のナチュラルだと知られた。序に魔法使いだとも知られた。
「お前みたいなナチュラルが居て堪るか!」
「魔法って実在したの!?」
エネル顔になる士官組と、自分も最初はあんな感じだったなと懐かしむキラ達が印象的だった。 - 34スレ主25/03/23(日) 22:02:51
ヴェサリウスでは、クルー達がダメージコントロールに追われていた。
メビウス・ゼロが砲撃戦とデブリに紛れて接近。奇襲を許し、艦に損傷を負ったのだ。
欲張る事もなく、一撃を与えてさっさと離脱をする動きは憎たらしい物だった。
艦内では火災や有毒ガスが発生し、その対処に追われていた。アデスが状況の報告を行ってきた。
「クルーゼ隊長、火災の方は消火いたしました。右舷側通路にて発生したガスは除去中。
エンジンへの被害は修理可能です、ただし、艦の稼働効率は……」
「どの道戦闘不能だろう?流石にこのまま追跡とはいくまい」
仮面で分かりづらいが、満足げな表情でクルーゼは返す。
「クルーゼ隊長、本国より入電です。中立国の民間人に対しての攻撃は慎重を期する必要あり、
攻撃は待たれたい。速やかに現作戦を終え帰還せよ……以上です」
少しばかり大きめな声での報告だった、ブリッジ全体に不足なく届くような。
聞こえないとの言い訳はできなかった。クルーゼは立ち止まり、微笑を浮かべつつ無言でアデスを見る。
彼はどこ吹く風といった感じだった。実際、アデスは別に何もしていない。
ただ、偶然オペレーターがこっちを見てきたので、頷いてやっただけだ。
そのオペレーターがどちらかと言うと穏健、和平派の考えに近く、頭の回るベテランなのも偶然だった。
連絡をしたのは穏健派の評議員かその辺りだろう。クルーゼは笑みを浮かべたまま、指示を下した。
「……本国へ打電。了解。本艦は現在、損傷により応急修理中。終わり次第帰還する。
以上。……アデス、ガモフに打電だ。ヴェサリウスと合流、周辺警戒に当たれとな。今度は送り先を間違えるなよ?」
アデスはクルーゼの皮肉に生真面目に返事をすると、指示を下し始めた。ベテランらしく揺るぎもしない。 - 35スレ主25/03/23(日) 23:01:19
ブリッジクルーは何が起きたのかを、何となく察している空気だ。クルーゼの微妙な強引さを、アデスが止めた、と。
ここでクルーゼが本国の命令を無視して見せれば、信用が失墜する。それが分かるから、
クルーゼは攻撃中止を当然の如く振る舞った。……まだ、ザフト内での立場を
決定的に崩してしまうのは早かった……正直、迷っているが。
(十分面白い物も見れたし、今回は十分だな。私も急ぎすぎたか)
クルーゼは次の戦局と、評議会への説明を考え直す。
ザフトの将兵が今回のつけを、命で支払う事になってもクルーゼが知った事ではない。
本国からわざわざ命令が来たのだ。ここで止まるのはクルーゼの責任ではない……。
G兵器と、ヘリオポリスで収容した避難ポッドに乗っていた大西洋連合高官の娘という
送り届けなければならない荷物もあることだしな。 - 36二次元好きの匿名さん25/03/24(月) 00:02:52
拾い物の娘ってまさか
- 37二次元好きの匿名さん25/03/24(月) 02:58:22
- 38スレ主25/03/24(月) 08:42:24
「こんなものを造り上げるとは…!ナチュラル共め!」
プラントに帰還したクルーゼとアスランは、荒れ狂う査問会の様子をただ呆然と見つめていた。
クルーゼの説明、そしてアスランが持ち帰ったG兵器の概要を聞いて、
直前まで余裕すら醸し出していた議員達が一斉に議論を始めたのだ。
誰かが叫ぶ。ナチュラルごときがモビルスーツなどと。
しかしナチュラルにそんなものを作れるはずがないと。
「でも、まだ、試作機段階でしょ?たった5機のモビルスーツなど脅威には…」
「だが、ここまで来れば量産は目前だ。その時になって慌てればいいとでもおっしゃるか!?」
ほら、またそんな楽観的なことを…そう思ってクルーゼは、心の中であざ笑う。
「これは、はっきりとしたナチュラル共の意志の表れですよ!奴等はまだ戦火を拡大させるつもり…」
「静粛に!議員方、静粛に…」
議長が場を鎮めようとするが、議論のーーいや、議員達の不安が払拭されることは無かった。
認めようが、認めまいが、現に地球軍はモビルスーツを作り出してしまったのだ。
その揺るぎない事実に、誰もが不安を抱いている。 - 39スレ主25/03/24(月) 08:42:56
「戦いたがる者など居らん。我らの誰が、好んで戦場に出たがる?」
議会の喧騒を遮って言葉を放ったのは、最高権限を持つ、パトリック・ザラーーアスランの父親だ。
「平和に、穏やかに、幸せに暮らしたい。我らの願いはそれだけだったのです」
彼は紡ぐ。偽りに満ちた平和の虚像を。
「だがその願いを無惨にも打ち砕いたのは誰です。自分達の都合と欲望の為だけに、
我々コーディネイターを縛り、利用し続けてきたのは!」
彼は語る。その虚像を壊した敵対者の行為を、歴史を。
「我らは忘れない。あの血のバレンタイン、ユニウスセブンの悲劇を!」
デブリベルトに浮かぶ、失われた宇宙の大陸。多くの人に、
悲しみと憎しみをもたらした象徴を、パトリック・ザラは演説に織り込んで、滔々と語った。
「24万3721名…それだけの同胞を喪ったあの忌まわしい事件から1年。それでも我々は、
最低限の要求で戦争を早期に終結すべく、心を砕いてきました。だがナチュラルは、
その努力をことごとく無にしてきたのです」
嘘だな。とクルーゼは一人、心の中で呟く。そもそも、本当に最低限の要求に留めておけば、
ユニウスセブンの悲劇など、端から起こってないのだ。地球からの資源がなければ、
今住む生活圏すら確立できなかったというのに、彼らは自らの優性遺伝子を過信し、
盲信して、戦争の導火線に万雷の拍手の下、火を放ったのだ。
それが如何程の代償を生むのかということを、知りながらだ。 - 40スレ主25/03/24(月) 10:01:46
「我々は、我々を守るために戦う。戦わねば守れないならば、戦うしかないのです!」
クラインとザラの血統の統合。そこから生まれる光を守らねばならない。
詭弁で言っておきながら、自分自身の言葉に鳥肌が立つ。
そんな光、守るつもりもない癖に。そんな光など、自分の手で葬り去りたいほどに、クルーゼは世界を憎んでいる。
しかし、彼の憎しみに一筋の光が差し込んだ。
握りつぶそうと手を伸ばしても、決して消えない光。なんど繰り返しても、なんど試しても消せない光。
その光を何度も見せつけられ、クルーゼは[本物]を見つけた。
今や、彼の興味はその本物にしかない。クラインもザラも、そんなものどうでもいい。
この戦争すらーーいや、戦争はなくてはならない。でなければ、自分が見つけた本物は、
嘘で塗り固められた世界の中に消えてしまうだろう。
逃さない。決して。その光を逃さない。この憎しみを、見つけた本物が消し去るまで、逃すことはない。 - 41スレ主25/03/24(月) 14:07:57
「――それでは、審問会はこれで終了とする」
一人険しい表情をした男性、年齢はパトリックよりも少し上であろう。プラント最高評議会議長、
シーゲル・クラインが閉幕を告げると、議場の扉が開けられ、メンバーがおのおのロビーへと出ていく。
クルーゼ隊もそれに倣い、ロビーへと向かう。ロビーでは評議会メンバーの半分近くが、雑談に興じていたが、
クルーゼ隊隊員が出て来ると、暖かい視線が彼らに向けられ、それぞれ隊員達が呼ばれる。
どう言う因果か、クルーゼ隊の赤服と呼ばれる隊員達は、みな、評議会メンバーの子供で構成されていた。
それは七光りではなく、士官学校で実力で勝ち取った、優秀な者、エリートとしての証明でもある。
親として子供を戦場に送り出し、無事を祈らない親はいまい。やはり無事に帰還したくれたのが、
親としてうれしいのだろう。それぞれ、親子のふれあいが見受けられた。
中でも、普段は憎まれ口ばかり叩いているイザークは、母親に人のいる前で抱きしめられ、
恥ずかしいと言わんばかりに真っ赤な顔をしていた。
アスランは、その光景を見ていると、声をかけられ、反射的に敬礼をした。
「――クライン議長閣下!」
「そう他人行儀な礼をしれくるな。ようやく君が戻ったと思えば、今度はラクスは仕事だ。まったく、
君等はいつ会う時間が取れるのかな。出港までは、多少、時間があったはずだ。出港前にでも、ラクスに会うといい」
「はぁ……、はい」
クラインは自分の娘、ラクス・クラインの許婚でもあるアスランに、苦笑まじりに言った。
アスランは、その言葉に気づき、慌てて敬礼していた手を下ろし苦笑する。
クラインは疲れたように議場の扉に目を向けると、愚痴るように言った。 - 42スレ主25/03/24(月) 15:01:41
「しかし、また大変な事になりそうだ。君の父上の言う事も分かるのだがな……」
クラインの目線の先には、クルーゼと話しながら議場を出てくるパトリックの姿があった。
目線をアスランに戻すと、明らかに事務的な内容を話してきた。
「君がヘリオポリスの救命艇を助けた事は聞いている。その中に連合事務次官のご息女がいたのだ。
しかし、父が軍人と言うだけで、本人は民間人だ。人道的に、いつまでも軍が拘束しているのも問題がある。
そこでなのだが、その、ご息女をアマルフィのところに預けようと思う」
「――ニコルの家にですか!?」
「ああ、それから、艦とモビルスーツの修理が終わるまで、クルーゼ隊には休暇が与えられる事になった。
君とニコル君に、次の出撃まで監視をかねた警護を頼みたい」
「――え!?」
アスランは、クラインの話に驚き、言葉を無くす。クラインはアスランをよそに、話を続ける。
「すでにパトリックには話をしてある。クルーゼからの推薦もあってな。追って、命令があるだろう。
そうだな、なるべく外出でもして、プラントが地球と変わらないのを見せてあげて欲しい」
「それはなぜです?」
女性とは言え、敵である連合事務次官の娘なら、外に出さずに常に監視するのが
ベストだと思ったアスランは、クラインに問いただした。
「地球に戻った時に、プラントがいかに人道的に動いてるかを知らしめる為と、
ナチュラルにコーディネイターへの偏見を無くして欲しいからだ。
人質としては使うつもりはないが、地球とも交渉がしやすくなる可能性を考えれば致し方あるまい。
……これも政治と言う奴だよ。本来なら休暇なのに、すまない」
「……わかりました」
クラインはアスランの問いに、いかにこの件が重要な事かを説くように言った。
アスランは、釈然としながらもプラントの未来になるならと、納得する事にした。 - 43スレ主25/03/24(月) 16:21:07
- 44スレ主25/03/24(月) 17:15:29
アスランは民間船の港に来ていた。ニコルは任務の都合上、
一緒に来たのだが、ラクスに会うアスランに気を使ってか、暇を潰すと言って、港口で別れたのだ。
辺りを見回し、サービスカウンターでラクスの乗る船を尋ねた。ラクスの婚約者である事を知られている為、
すんなりと話が通じる。一言、礼を言うと、ラクスがいるVIP用の部屋へと向かった。
アスランは、今さらながらだが緊張しながら扉を開けた。
淡いピンク色の長い髪のアスランと同年代であろう少女が扉の開く音に気づき、
顔をアスランに向けると、かわいらしい笑顔が咲く。
「こんにちは、アスラン。お久しぶりですわ!」
「ハロ、ハロ、アスラーン!」
「ラクス……」
ラクスは椅子から立ち上がると、ゆっくりと宙に浮かぶようにアスランの方にやってくる。
ラクスの後を追うように、球状の小さなロボット[ハロ]が間抜けな声を上げた。
アスランはラクスの笑顔を見て、さっきまでの理由も分からぬ緊張を解くように息を吐いた。
ラクスは笑顔で、ハロの様子に目を細め、アスランが会いに来てくれたのを喜んだ。
「ハロがはしゃいでいますわ。久しぶりに貴方に会えて嬉しいみたい」
「ハロには、そんな感情のようなものはありませんよ」
アスランは、苦笑しながら答えた。ラクスは将来、自分の妻になる事が約束されているが、今はまだ、実感は無い。
ラクスと一緒にいると、戦っている時のようにギスギスした感じがしないのを実感する。
ラクスの持つ雰囲気だろうか、心が洗われるような感じがする。
それは、とても心地よく、呆けてしましそうになる。
- 45スレ主25/03/24(月) 18:15:51
「あぁ……何か?アスラン?」
「あっ、いえぇ……。あ、ご気分はいかがかと思いまして……」
「えっへ。私は元気ですわ」
「……そうですか……」
微妙な間が空き、取り繕うようにアスランは言うと、ラクスは笑顔で答えた。
アスランは、ラクスをうらやましく思う。いつでも笑顔で楽しそうにしている姿を見ると、
友人と戦う自分の辛さなど、一生、分からないだろうと感じてしまう。
ラクスは、アスランの様子に何かを感じ取ったのか、少し悲しそうな表情をする。
「辛そうな、お顔ですのね……」
「ニコニコ笑って、戦争は出来ませんよ――」
アスランは、ラクスの言葉に、思わす本音を言ってしまう。しかし、その言葉を言った事を、
すぐ後悔をした。ラクスには嫌味に聞こえたのではないかと思った。
何か悪い事をしたかのように感じ、途端に居心地が悪くなり、この部屋を離れる理由を捜し始めた。
「――私は任務があるので、これで……」
「……はい、アスランもお元気で……」
アスランは勝手な罪悪感から、任務を理由に背を向け扉へと向かう。扉の所で一度だけラクスの顔を見ると、
そのまま部屋を出て行った。部屋には、アスランの事を神にでも祈るように、
胸の前で手を組むラクスだけが残された。 - 46スレ主25/03/24(月) 19:50:06
- 47スレ主25/03/24(月) 20:00:46
警備兵が一応の引渡しの説明と始め、フレイの引渡しが終了すると、
アスラン・ザラが先導するようにフレイに言った。
「フレイ・アルスター、こちらへどうぞ」
「あ、……はい」
「手荒な事をする訳ではありませんから、心配しないでください」
硬い口調のアスランに答えるように、フレイはぎこちなく返事をする。表情はとても不安そうだった。
その表情を見て、ニコルは、フレイに安心するように言った。フレイはアスランとニコルに
促されま車の前まで来ると、アスランが後部シートの扉を開き、乗るように促す。
「移動しますから、乗ってください」
「……どこへ行くの?」
フレイがアスランに聞くと、ニコルがアスランに代わって答える。
「僕の家です。あなたが地球に帰るまでの間、預かる事になりました」
「――えっ?」
「――と、言っても面倒見るのは母なんですけどね。変な事をしなければ
拘束される心配もありませんし、安心してください」
ニコルの言葉に頷くと、フレイは後部シートへと座り、アスランはドアを閉めると運転席へを向かう。
それを見てニコルは助手席に座った。 - 48スレ主25/03/24(月) 20:01:11
「ニコル、なんで後ろに座らない?」
「大丈夫ですよ、彼女は何もしないと思います。ここはプラント本国なんですから」
ナチュラルの女性がコーディネイターの軍人に勝てるわけもなく、アスランはニコルの言葉に
納得すると「分かったと」ばかりに頷き、息を吐く。その様子にニコルが声をかけた。
「どうしたんですか、アスラン?イライラしてません?」
「……いや、別になんでもない」
アスランは、ニコルに答えるとアクセルを踏み込み、車を発進させた。 - 49スレ主25/03/24(月) 20:30:35
デブリベルト。コロニー[世界樹]の崩壊をきっかけとして出来た、地球圏の超巨大デブリ帯の通称がそれだった。
それに加えて近隣の惑星・衛星同士の重力が影響して、どこからともなく様々なデブリが集まってくる宙域でもある。
場所によっては高速でデブリが動く空間もあるため、極めて危険な宙域だが、
隠れる先として見た場合、悪くない所だった。
その中でも。比較的には通り易い場所を選びながら、慎重に進む艦艇の姿があった。
地球連合軍所属アークエンジェル。アルテミス要塞に入港拒否をされてから数日が経っていた。
実質戦闘部隊隊長の立ち位置に付いたムウは周囲警戒しながら乗機を進ませた。
しかし、彼が乗っているのは以前の愛機であるメビウス・ゼロではない。
『ムウさん、三時方向に連合艦があるわ。弾薬は使えそうよ』
充電ケーブルに繋がったまま、同型機で周囲警戒をする瑠璃から通信が入る。
「わかった。回収作業に入るぞ坊主二号」
『は、はい』
同じく同型機に乗るトールを連れ、ムウは物資の改修作業に入る。
『早く水を確保しないと稼働機がカンヘルだけになっちゃうわ。
あれ魔力さえあれば万全な状態になるから』
「それはさけたいな」
そう言いながら、ムウは新たな乗機となった改造ジンを動かし続けた。
- 50スレ主25/03/24(月) 20:47:35
ZGMF-1017AA ジンアークエンジェル仕様
琉生がデブリベルトに放棄されていたジンを回収し、アークエンジェルの戦力とすべく改造した機体。
肩部とバックパックを含めた背面部をストライクと同一規格に改造し、識別しやすさの為にトサカを外し、
モノアイはゴーグル型センサーに変更。左はイーゲルシュテルン、右は照準用センサーと弾倉を組み合わせた
バルカンポッドを頭部に装備し、手持ち武器もストライクと同じものを使えるようになっている。
(序に、ストライクとカンヘルもジンの武装が使えるように改良した)
センサー精度と有効範囲は大きく向上し、装備変更による汎用性も向上したが、
本体性能そのものは通常のジンと変わっておらず、G兵器と戦うには心許無い。
それでも現状のアークエンジェルにとっては貴重な戦力であり、予備を含め四機用意された。
画像は、瑠璃が乗ることが多いランチャーパック装備機。
- 51スレ主25/03/24(月) 21:05:28
メビウスストライカー
琉生がデブリベルトで回収した連合軍MAメビウスを利用して作ったストライカーパック。
コックピット等人間が乗る為に必要な部分を排除して小型化。更にジンのMMI-M8A3 76mm重突撃機銃や
ストライクのビームサーベルを装備させた後、操作用コードで繋いでガンバレルにした。
原作のAQM/E-X04ガンバレルストライカーと比較すれば、装備時の火力・機動性は上回る。
しかしかなり大型な為被弾率が高く、後ろに突き出したシルエットのせいで完全な宇宙専用。
現在はムウの専用装備である。 - 52スレ主25/03/24(月) 21:13:44
メビウスF
メビウスストライカーの序に琉生が製作した遠隔操作型無人MA。
早い話メビウスをドラグーンにした物である。
無人である為無茶な機動ができ、無線式なので絡まる心配も無い。
下部にストライカーパック用の接続プラグを装備しており、宇宙用高機動型を兼ねた
充電機になているだけでなく、装備した機体を無人MSとして操作可能。
ただし通常のドラグーンよりも負担が大きくなるため、使用者は
操作に集中して自機の操縦ができないという欠点がある。 - 53スレ主25/03/24(月) 21:39:44
アークエンジェルのブリッジでは、ナタルとノイマンがモビルスーツの訓練風景を見ていた。
「もうあんなに動けるのか……」
「フラガ大尉はともかくとして、あのケーニヒってのが、あそこまで動けるのは驚きですよ
……もたついているとは言え、一応動いてますからね……」
その横ではオペレーターのチャンドラとロメロが、新米ブリッジクルーに仕事を教えながら口を挟んで来た。
「アヤセ弟がナチュラル用のOS、組み上げちゃったんですよね?たしか半日かかってないって……。
ジンのセキュリティも突破して、そっちのOSも弄ったって言うし、どういう頭してんだか」
琉生が今さら放棄されたジンを動かして戻って来たところで誰も驚きはしないが、
ナチュラル用のOSを組み上げた事
……半分ぐらいはキラと共同作業……は、さすがに呆れ半分だった。
「ですが、ちょっとは気が楽になりますよ、これで少しは寝れますから」
チャンドラとロメロは手分けして索敵やら、通信管制を教え込んでいく。
ミリアリア、サイ、カズイの3人が地球連合軍の訓練生服を着て一生懸命に覚え込んでいた。
ミリアリアは頻繁にトールの機体を心配そうに見ている。どことなく膨れ面をしていた。
さらには協力をお願いされたオーブの歩兵小隊から4人程、
選抜された者達が同じくアークエンジェルの性能把握に努めていた。
副操舵手、CIC電子戦、火器管制、索敵。
少々不安そうではあったが、アークエンジェルの運用は基本、コンピューターの指示に従えば何とかなる。 - 54スレ主25/03/24(月) 21:39:59
彼らの所属や交戦規定については、ウズミ代表の黙認と、誰からともなくの暗黙の了解、
更には善意の協力という内容で、知らないふりをする事になっていた。ナタルですら何も言わなかった。
大きな問題だと分かっているが、睡眠欲と過労と、倒れ始めるクルーの前では規則・規定は邪魔だった。
アークエンジェルクルーは、デブリベルトに入ってから民間人やオーブ軍人達の協力を得て、
ようやく交代で休息を取れ始めていたのだ。
ただ、ナタルと正操舵手のノイマンだけはブリッジを離れられず、
ここ3日程、それぞれの席で仮眠を取りつつしのいでいた。
疲れからつい眉間を押さえるナタルに、フラガから通信が入る。
『こちらフラガ機。連合軍艦艇の残骸を発見した、これより物資の捜索に入る』
ナタルは感情を殺して了解と返した。
『こちらトールです。フラガ大尉の援護に行きます、いいですかバジルール少尉』
「ああ。構わない……ケーニヒ准尉。よろしく頼む」
『分かりました、行ってきます』
トールのジンがフラガの後を追っていった。ナタルはそれを見送って思わずため息をつく。
デブリベルト内での物資の探索をしつつ、友軍の勢力圏へ向かっているのである。綾瀬姉弟の発案だった。 - 55二次元好きの匿名さん25/03/24(月) 21:44:35
フレイの扱い、思ってより優しいな
- 56二次元好きの匿名さん25/03/25(火) 01:50:57
スレ主さん、ジョージ・アルスターは大西洋連邦の外務次官です。
wikipediaによると、日本の場合ですが
> 外務省における事務次官ポストであり、事務方において外務本省の最高ポストである[1]。
つまり文官のはずです
原作でキラが少尉と呼ばれるようになったのはハルバートン提督の計らいで志願兵としての書類をでっち上げた後のはずだけど、今回は流石に兵器として認識されているジンを作業のためとはいえ正規軍人と軍艦の指揮下で操縦するから、便宜上トールには准尉の階級を与えた方がいいと判断されたのかな?
ドラグーンって雛形であるメビウスゼロはあるけど、今のAAに技術があるとは思えないし、オリキャラとキラの共同作業で作成したのか?
- 57二次元好きの匿名さん25/03/25(火) 04:30:45
ニコフレかアスフレ目指してるのかな?
- 58スレ主25/03/25(火) 08:38:47
アルテミス周辺のデブリ帯へ逃げ込んだ当初、アークエンジェルは友軍との連絡を諦めてでも、
さらに奥へ進むしかなかった。宇宙はザフトのテリトリーだった、月の周辺まで行けばそうでもないが、
それ以外はどこかしらザフト艦がうろついている。哨戒網にかかれば終わりだった。
正直、力ずくの突破はできないこともなかったが、弾薬類の欠乏と物資の不足、
ヘリオポリスから全く休めていないクルー達の体調の問題が、それをさせてくれなかった。
戦闘につぐ戦闘でついにダウンする者が出始めたのだ。
民間人は不安を増大させており、どこでもいいから早く降ろしてほしいと声が増え、説明と説得に
マリューとナタルの責任者クラスが出張る事になり、手間が増えた分、艦の方針決定に遅れを出した。
物資の方は特に水の不足が深刻で、ザフトが待ち構えているのを覚悟で、アルテミスに引き返す案まで出た程だ。
しかしそれに伊の一番で反対したのが琉生だ。彼は第三次世界大戦が起こった世界に迷い込んだ時、何をどう
間違えたのか戦争の首謀者を倒すための多国籍合同部隊に参加していた。しかし部隊の最高司令官が
裏切り者の内通者だったために全滅、生き残りは自分を含めた数名のみだった苦い経験から、
派閥争いに神経質なところがある。実際ザフトが居なかったとしても、良い結果になる可能性は低かった。
そこで綾瀬姉弟が、このままデブリ帯からデブリベルトまで進み、
そこで遺棄された艦艇や残骸を捜索、物資の調達をすればどうかと言い出したのだ。
墓荒らしだ。誰もいい顔はしなかったが、ローティーンなうえ一番祟りに縁がありそうな二人が
率先してやり始めたので、結局はそれしかないと今に至っていた。 - 59スレ主25/03/25(火) 09:05:42
方針が決まってから綾瀬姉弟は、正に八面六臂の大活躍だった。
琉生は回収した残骸を基にアークエンジェルの艦載機を充実させ、負傷者の治療に
リラックス効果のある芳香剤の調合で避難人の不安を和らげた。
瑠璃は召喚獣が動物型なのを利用したアニマルセラピーで避難民を癒し、
アラートを鳴らす前に海賊の発見と対処、使える物資の捜索を行った。
さらには別の話で、綾瀬姉弟もさすがに疲れているのを見て、
今度はキラの友人達が艦の仕事を手伝うと言い出したのだ。
特にカズイは申し訳なさそうにしており、対してキラは、気にしないでくれ、
軍属になんてならないでほしい……と念を押して言ったのだが、逆効果だったようだ。
トールはトールで、琉生とキラにくっついてモビルスーツのOSを調整する助手をしていたら、
興味本意でやったシミュレーションで結構な適正を出してしまい、フラガがパイロット候補にしてしまった。
フラガの為に、ナチュラルでも使えるOSを組んでいる最中では、
止めるのは難しかった。何よりトール自身が望んでいた。 - 60スレ主25/03/25(火) 09:22:38
整備班員やモルゲンレーテ技術者達のどよめきが格納庫に響いた。
ムウが、改造ジンを歩かして見せたのだ。組み上げたOSを使って。
「ムウさん!シミュレーションをクリアしたのは分かりますけど。早すぎませんか?いきなり実機なんて」
「我慢ができないのさ。……よーし!歩いたぞ、いい感じだ!どうだ!作動チェックしてくれ、キラ!」
シミュレーションをさっさとクリアしたフラガが、意気揚々と改造ジンに乗って見せて、
そしてそれが、これまでにナチュラルが動かしたどのデータよりも、滑らかな物だと言うのが数字に出ていた。
興奮したのは整備班員よりも、モルゲンレーテ技術者達の方だった。
彼らはオーブ本国から、ナチュラルでも動かせるモビルスーツとOSの開発を命じられて、
ヘリオポリスに居たのだから。地上用は多少の蓄積があるが、宇宙はお手上げだった。
しかし今、アーマー乗りのエースが、という条件付きだが、確かにナチュラルが動かしたのを見たのだ。
中には泣いている者も居る。
それを尻目に、琉生はメビウスの改造を行った。
利用したのはメビウス・ゼロの設計と[F計画]のデータだ。
F(ファントム)計画とはG兵器開発と並行で行われたプロジェクトで、
メビウス・ゼロのガンバレルを無線化してより予測不可能なオールレンジ攻撃ができるようにするという物だ。
しかし無線操作技術の未成熟さが原因で、より高度な空間認識能力と並列思考能力を必要とするため、
機体操縦と同時に運用できる人間がおらず、機動兵器としては失敗と判断されて中止になったのだ。
だが母艦の護衛砲台としてなら使えるだろうと判断した琉生がメビウスを基に完成させたのだ。
序にメビウス・ゼロとストライクの予備部品で新たなストライカーパックを完成させた。 - 61スレ主25/03/25(火) 09:40:31
民間人が軍事兵器を動かした件も、志願兵ということにすればごまかしは効く。
そうして、ナタルとフラガ、マリューの責任の下で、現地徴用の野戦任官を受けたのが先日の事だった。
問題の大部分が解決して負担が減ったせいだろう。瑠璃の召喚獣である狼型の[不知火]と
羊型の[呑兵衛]に抱き着いたまま眠りこけるマリューとナタルの目撃情報は聞かないことにした。
しかし一番の問題はまだ解決していなかった。水不足だ。
綾瀬姉弟が魔法で水を作り出すことはできる。だが二人だけな上にそう言った魔法は専門外な
二人では飲料水分を生産するのが精いっぱいだ。無論無いよりはマシだが人間が生活するには
より多くの水を必要とする上に、機械整備にも大量の水を必要とする。
このままではアークエンジェルが戦闘艦として機能しなくなるのは明白だった。 - 62スレ主25/03/25(火) 10:41:38
アスランは車を止め、青ざめているフレイの傍に立っていた。
ニコルは乗り物酔いをしたフレイの為に飲み物を買いに車を離れていた。
「すまない、運転が乱暴過ぎたみたいで……立てるか?」
道端でうずくまっているフレイに手を差し伸べると、手をに払われる。
「――あ……、ご、ごめんなさい!」
フレイは、とっさにしてしまったとは言え、相手は軍人なのだ。自分のした事にさらに青ざめる。
アスランはフレイに対して、首を振り謝罪をした。
「いや、俺が悪かったんだ。本当にすまない」
フレイはアスランの謝罪に安心したのか、顔色は少しだけ戻る。
再び、アスランが手を差し伸べると、少し迷い、その手を取って立ち上がる。
「横になっていた方が気分も落ち着く。直にニコルも戻るから、シートに寝ててくれ。」
フレイは頷くと、車の後部シートに横になった。アスランは目の前の公園に走って行き、
ハンカチを取り出すと水で濡らしてすぐに車に戻った。ハンカチをフレイの額に置くと、運転席に戻り頭を抱える。
――俺は何をやってるんだ!? - 63スレ主25/03/25(火) 11:02:52
「あ、……ありがとう」
「あ、いや、気にしないでくれ。それよりも、大丈夫か?」
フレイは後部シートから頭を抱えるアスランを見つめると、お礼の言葉を言った。
アスランは、うな垂れるように聞き返す。まだ青い顔をしながらも、フレイは軽く頷いた。
「そうか……、最近、色々あって苛立っていて……、君には本当に悪い事をした」
アスランはフレイが頷くのを確認すると再び謝罪をし、言葉を続ける。
「君はヘリオポリスのカレッジにいたんだろ?友達は?」
「……脱出の時にはぐれちゃって……」
「……そうか。きっと、その友達も無事だと思う……」
「あなた達が攻めて来なければ、こんな事にならなかったのに……」
フレイは間を空けるように答えると、アスランは言った。
フレイには、その言葉が気休めに聞こえたのか、怒りと共に、涙がこぼれる。
「……俺たちにも非はあるが、あれは、地球軍が……あんな物を造るから…………」
アスランは、それ以上言うのを止めた。所詮は敵軍に所属している父を持つ娘なのだ。
何を言っても無駄なんじゃないかと思えた。今のアスランは、ニコルが早く戻るのを願うのみであった。 - 64二次元好きの匿名さん25/03/25(火) 11:42:42
双方苦労してるのがなんとも
- 65二次元好きの匿名さん25/03/25(火) 15:44:14
微笑ましいが、問題が解決してないなら笑えないな
- 66スレ主25/03/25(火) 16:23:33
フレイがアマルフィ家に身を寄せ、二日が経った。フレイは一人、
自分に宛がわれた部屋の窓辺で外を眺めていた。監禁される訳でもなく、窮屈な思いはしていなかった。
「……なんで、ナチュラルの私に優しく出来るの……?」
幼少の頃に母を亡くし母親と言う存在に触れる事の少なかったフレイに対して、
ニコルの母は優しく接したのだった。例え相手がコーディネイターでも、母は母なのだ。
その今まで実感する事が少なかった存在と厚意に、フレイの心の中は逆に申し訳なさと心苦しさが募るばかりだった。
丘の下に広がる街を見つめる。コロニーの中は戦時中にも関わらず活気があり、ヘリオポリスなどと変わらなかった。
プラント本国だから何かが違う訳でもなく、そこには地球と同じように、そこには幾万もの親子がいた。違うのは、
その人達のDNAに手が入ってるか入ってないかだけだった。
触れたガラスにフレイの顔が薄っすらと映る。すると、扉をノックする音がした。
「――あ、はい!」
「フレイ、朝食ですよ。下りてきてください」
フレイが答えると、ニコルが扉を開け顔を覗かせる。
「どうかしました?」
「ううん」
フレイの様子にニコルは声をかけると、フレイは首を振り食事の為に部屋を出る。
ニコルは半歩前を歩き、階段を下りてゆく。 - 67スレ主25/03/25(火) 16:25:40
ニコルは思い出したように、階段半ばで振り向き、午後の行動を伝える。
「あ、そうだ。午後には買い物に行きますから、昼食が終わってゆっくりしたら出かける準備をしてください」
「買い物?」
「ええ、あなたの身の回りの物を買いに出かけるんです。今のある服だけでは足らないでしょう?」
フレイは聞き返すと、ニコルは頷き言葉を続けた。今、着ている服はニコルの母の物で、
フレイの年齢では上品過ぎるくらいで、まだ若すぎるフレイには正直、似合う物ではない。
ニコルの言葉にフレイは驚き、聞き返した。
「――え!?……いいの?」
「ええ、気にしないでください」
「ありがとう!」
フレイはニコルの快い返答に、さっきまでの心苦しさも吹っ飛んだかのように、機嫌よく感謝の言葉を伝えた。
二人はリビングを通りダイニングルームへと入ると、テーブルにはアスランがコーヒーを飲みながら
ニュース映像を見ていた。
「アスラン、お待たせしました」
「ああ。……フレイ・アルスター、午前中は何かしていたのかい?」
「え!?……ええ、外を眺めていたの」
ニコルの声にアスランは答えるとフレイを気にするかのように声をかけた。
フレイはアスランからの声が予想外だったのか、少し戸惑いながらも答え席に着く。 - 68スレ主25/03/25(火) 16:25:53
様子からして、アスランもフレイも、お互いを苦手としている感じだった。
厨房から料理をトレイに載せて中年の横幅のある人の良さそうな家政婦が出てきて、
テーブルに手際良く昼食を並べてゆく。
「……あの、ニコルのお母様は?」
「はい、お嬢様。奥様なら旦那様とお出かけになられました」
フレイはニコルの母が見当たらないのを聞くと、家政婦は微笑みを湛えながら答え、リビングルームを後にする。
「それでは、いただきましょうか」
ニコルの声で、三人でのゆっくりとした昼食が始まった。 - 69スレ主25/03/25(火) 17:28:00
ザフト軍基地内のハンガーでは整備兵達が奪取したGATの修理に追われていた。
イージスは見た目は問題無さそうだが関節部の摩耗が酷く、細かい傷で塗れている。
残りの三機はすべて中破状態で完全再生をしなければならかった為に、さらに時間を要するようだった。
休暇にも拘らず、修理が行われている機体を見上げるイザークとディアッカの姿があった。
「あと、どのくらいかかるんだかな?」
ディアッカはバスターを見上げながら、ぼそりと言う。
「俺が知るか」
「イザーク、なに怒ってんだよ?」
「これが怒らずにいられるか!あれだけ情けないやられ方をしたんだぞ!」
イザークは修理されている機体を見て、先日の戦闘を思い出し機嫌を悪くしていた。
その態度にディアッカは呆れるように言う。
「仕方ないだろ……。相手が予想以上に強かったんだから」
「ディアッカ!貴様――」
「ったく、それだけ、かっかしてて、よく頭の血管が切れないよな」
ディアッカのサバサバした言葉にイザークは険しい顔をする。そこに涼しい顔をしたままでディアッカは
言葉を続けた。馬鹿にするような言葉にイザークの顔が赤鬼のように変わってゆく。
その表情に、一瞬、ディアッカの背中を冷たい物が流れた。
「――き、きさまーっ!」
怒りを爆発させたイザークの背後に、ディアッカは炎を見た気がした。――やべっ!俺、殺されるかも……。
ディアッカは、脂汗を浮かべながらイザークの見えない炎を消す事に必死になる。
腰が引け気味に、誤魔化しながら早口で捲くし立てた。 - 70スレ主25/03/25(火) 18:14:51
「――イザーク、冗談だ、冗談!そ、それよかさ、イザーク、
お前、家に帰ったんじゃなかったか?お袋さん、きっと寂しがってるんじゃないか?」
「い、家には帰った――」
イザークはディアッカの言葉に固まったように動きを止めると、慌てたように口を開き、
違う意味で顔を赤らめ、目線を外す。ディアッカはイザークの母、エザリア・ジュールの息子への
可愛がりぷっリを良く知っていた。火消しの第一段階に成功したことを確信して、言葉を続けた。
「……もしかして、お袋さんがベッタリ過ぎて逃げてきたのか?」
「……」
イザークは、さらに顔を赤らめると、黙ったまま視線を合わせようとしなかった。
「息子想いの、いいお袋さんじゃないか。正直、うらやましいぜ」
ディアッカは、冗談抜きに言った。両親が口うるさい上、忙しいのもあるが、
ディアッカ自身の性格からか親離れが早く、イーザクほど可愛がられた事は記憶になかった。
たまには、ああ言う風に可愛がられてみたいとも思う。
イザークは予想外に大好きな母を褒められ、さらに赤くなり、誤魔化すように言う。
「……ああ、そう言うディアッカは、どうしてここにいるんだ?」
「いや、帰ってはみたんだけど、うちの親父、俺が軍に入るの反対してただろ。どうも落ち着かなくてさ……」
頭の後ろを掻きながらディアッカは答え、審問会の後に正式に自分専用の機体になったバスターを再び見上げる。
「俺の機体、早く直らねえかな……」
ディアッカは、まるで恋人の帰りを待ちわびるかのように呟いた。 - 71スレ主25/03/25(火) 20:21:13
辺りの景色は夕方らしく、空はオレンジ色に染め上げられたいた。
車の後部座席の半分を、フレイの服や生活雑貨が詰まった買い物袋が占領している。
その隣には、満足いく買い物を出来たのか、上機嫌なフレイの姿があった。
「ニコル、帰りに寄りたい所があるんだ。この辺りで俺を下ろしてくれないか?」
助手席に座るアスランが、ハンドルを握るニコルへと言った。
「どうしたんですか、アスラン?時間がかからないなら、僕は待ってますよ。フレイ、いいですか?」
「ええ」
「それじゃ、決まりですね」
ニコルは聞き返すと、フレイに了承を得ようと問いかける。
フレイが頷くのを確認すると、アスランに多数決で決まったと言わんばかりに告げた。
「……ニコル、たまに強引になるな、お前……」
アスランは呆れて、思い切り溜息を吐いた。
「たまの休みに、せっかく一緒にいるんですから、もったいないじゃないですか」
「……ん、楽しい場所じゃないぞ。それでもいいなら頼む」
ニコルの言葉に、アスランは、本当に友達思いの奴だと思った。自分が行く場所を考えれば気が引けるが、
ここは甘える事にした。アスランは行き先を伝えると、車は小高い丘の方へと向かう。
その先には、アスランの母が眠る墓地があった。
墓標が並ぶ脇の整地された道端に車を止めると、アスランはドアを開け車を降りる。 - 72スレ主25/03/25(火) 20:22:09
「アスラン、つきあいますよ。フレイ、待っててください」
「えっ!……私一人で?」
ニコルは車の外にいるアスランに言うと、フレイに告げる。
フレイは墓地と言う場所柄、一人取り残されるのが嫌なのか、不安そうな表情だった。
「一緒について来ますか?」
「……ええ」
ニコルが表情を見ながら聞くと、フレイは頷き、車を降りた。
アスランは二人がついて来ると思いもせず、驚くように二人を見た。その表情にニコルが真面目な顔で言う。
「いいじゃないですか。僕にもアスランのお母さんに祈りを捧げさせてください」
「……わかった」
アスランは諦めたかのように頷くと母の墓標のある方へと歩き出す。
ニコルとフレイもアスランを追うように歩き始めた。
フレイは前を歩くアスランの背中を見つめながら、ニコルの言葉を思い出し、
アスランと初めて共通する事がある事に気づいた。――この人もママがいないんだ……。
そう思うと、車酔いをした時に、アスランが濡らしたハンカチを額にのせてくれたの事を思い出した。
フレイの嫌うコーディネイターだが、アスランが優しいのはわかる。なんとなくだが、声をかけた。
「……ねえ、……あなたのママも死んじゃったの?」
「ああ。君もか?」
「……うん。……私がまだ小さな頃に……」
アスランはフレイに歩調を合わせると頷き、聞き返すと、フレイは目線を落としながら答えた。
「……そうか。君に嫌な事を思い出させるような場所につれて来てしまったな
……それに、この前の事もある。君には、本当にすまないと思っている」 - 73スレ主25/03/25(火) 21:34:16
アスランは申し訳なさそうに言うと、フレイは首を横に振り、
「気にしていない」と答え、改めてアスランに躊躇いがちに聞き直した。
「あなたのママ、……どうして……死んだの?」
「……母は……ユニウスセブンにいたんだ……」
「――あ……、ご、ごめんなさい!」
「……いや、ナチュラルは憎いが、君が母を殺したわけじゃないんだ。気にする事はない」
フレイはアスランの死因を聞いてしまったのを後悔し、思わず謝罪をした。
その言葉はナチュラルとして謝罪をしたわけではない。
しかし、アスランはフレイの言葉を「ナチュラルの一個人としてからの謝罪」と受け取ったようで、
小さな誤解があったのをお互いに気づく事はなかった。
アスランは母の墓標の前に来ると、方膝をつき祈りを捧げ、立ち上がる。
するとニコルが「僕もいいですか?」と聞き、アスランと同じように祈りを捧げる。
フレイは「三人で来て自分だけ祈らないのは、おかしいかな?」と思い、アスランに聞く。
「……ねえ、私も……いいかな?」
「え!?……ああ、ありがとう。母にはナチュラルの友人が多くいたようだし、きっと喜ぶと思う」
アスランは、フレイの申し出に驚きながらも、母の為に祈ってくれると言うフレイに感謝をした。
フレイはニコルに続き、アスランの母、そして、自らの母にも祈るのだった。 - 74スレ主25/03/25(火) 21:34:45
その姿に、連合事務次官の娘であるフレイを偏見で見ていたのではないかと、
アスランは思った。フレイが祈りを終え、立ち上がるとアスランは口を開く。
「俺は、君が連合事務次官の娘と言うだけで誤解をしていたようだ……」
「……え?」
「お互いに話をして理解しあえれば……俺も、母を見習わないとな……。
前は、手を取って貰えなかったが、出来る事なら……」
アスランの意外な言葉と差し出された握手の手に、フレイは驚きの表情を浮かべ、
少し迷い、躊躇いがちにアスランの手を取り握手をする。アスランの手はナチュラルと同じように暖かい。
「無理やりだったら、すまない……ありがとう」
「……ううん」
アスランは、フレイに対して初めての微笑んだ。
フレイも、ぎこちなくだが微笑む。フレイの中でコーディネイターへの偏見は消えてはいないが、
アスランやニコルなら信頼できるのではないかと言う思いが芽生え創めていた。
その二人を見ていたニコルが、少し拗ねたようにブーイングを上げる。
「アスラン、フレイ、ずるいですよー」
「ニコル……」
アスランもフレイもニコルの子供っぽい表情に目を丸くすると、お互いに目を合わせて笑う。
「なにが可笑しいんですかー?フレイ、僕とも握手をしましょう!」
三人のそれぞれの胸の中に違いはあるであろうが、少しだけ明るい未来が見えた気がした。 - 75二次元好きの匿名さん25/03/25(火) 22:47:23
アスフレの匂いがします
- 76二次元好きの匿名さん25/03/26(水) 02:38:31
綾瀬兄妹のチートっぷりで戦闘の難易度は下がり、G3機は中破で復帰まで時間がかかる。
クルーゼかやりすぎたのでアデス艦長が警戒してこれからより強くストッパー役をしそうだし、戦闘はイージーっぽいのに、AAが原作よりハードモードっぽいのはなんでじゃ!?
兄妹の超常現象っぷりがデコイになってる事とフレイがいない事でキラの負担は軽減してるはずなのに、オーブ軍人の協力が得られているのに原作よりハードモードを突き進むAAよ
ナタルさんですら何も言わないってのが端的にヤバさを表してるし、兄妹が八面六臂の活躍をするってのはしなくてはいけないってことだし、よく考えればローティーンが軍艦で活躍ってまずい構図だし、後で合流するハルバートン提督がでっち上げたMSやストライカーの扱い共々頭抱えるやつだコレ… - 77二次元好きの匿名さん25/03/26(水) 04:36:59
主さんアスフレ目指してるだろ
- 78スレ主25/03/26(水) 10:47:14
メビウスストライカーを装備したムウのジンが、カンヘルとメビウスFと共に周囲散策をしていた。
出撃してデータを持ち帰るたびに、琉生とキラがOSを改良して使い易くなっているはずだが、
ここ最近は動きが悪くなってきている。
弾薬・補修部品・食料・医薬品・衣類等の生活物資は皆の協力で上限まで備蓄できた。
しかし相変わらず水はほとんど確保できてないため、応急的な整備しかできていないのだ。
琉生は「ジンを使い捨てにしていいなら何とかなる」と言ったが、負担を増やす真似はしたくなかった。
(まいったね、俺は不可能を可能にするんじゃなかったのかよ)
そう思いながら、琉生から貰った非常食を胃に流し込む。
食感と喉越しは硬めのプリンを砕いた物。味は濃い抹茶と蜂蜜を混ぜた感じだ。
栄養価と保存性だけを考えた軍用携帯食(レーション)に比べたら十分すぎるほど食える味だし、
仮にこれが不味い代物だったとしても
『しっかし、デブリベルト。人類が宇宙に進出して以来、撒き散らしてきたゴミの山か…』
通信モニター越しの琉生が、イモリの黒焼きにかじりついている光景を見れば文句も引っ込む。
魔法を使うエネルギーの補充薬らしいが、最近綾瀬姉弟は暇さえあればそれを口にしている。
それだけ二人に掛かる負担が大きいという事なのだろう。
『矛盾だね。人は新たなフロンティアを宇宙に見出したというのに、誰にも汚されてない場所を
人は自らの手で汚していく。これじゃ、害虫と何が違うんだろうな……』
言い過ぎではないかと思ったムウだが、目前に見覚えのあるものが現れ、考えを改めた。
「はは…確かにな。俺達は害虫かもしれん」
人類の業。人が生きていけない世界に浮かぶ、人が住まうために作られた大陸。死んだ大地。巨大な墓場。
それにすがる自分達は、紛れもなく害虫だ。しかし、ムウはあえて視線を逸らさずにいた。
その業を背負って、自分たちは生きているのだからーー。 - 79スレ主25/03/26(水) 11:04:56
俺達の目の前には大陸と見間違う程に巨大な建造物の残骸……ユニウスセブンがあった。
ナチュラルとコーディネーターが本格的戦争を始めたきっかけとも言える悲劇[血のバレンタイン]。
唯の農業用のプラントだったユニウスセブンに地球軍が放ったと思わしき核ミサイルが全てを滅ぼした。
推定死者数、24万3721名。これはC.E.の歴史を語る上で決して忘れ去られる事はないだろう。
当時プラント理事国はプラントの食料の独自生産や自給自足を禁じてた。
つまり、ユニウスセブン自体は条約違反の違法建築だった。
(だからってな…軍事施設でもない場所に核撃つか?)
必要な物がないか探して扉を開けたその先には……
「「キャァァァァァァー!!」」
ミリアリアとキラの悲鳴が響く。幼い子供を抱いて宇宙の冷たさに凍りつき、
ミイラになって物言わぬ身体となった女性の死体があったのだから。
トールがこれ以上見せない様にミリアリアを抱きしめる。
「うっうっ……ルイ……」
「…ッ…」
キラも耐えられないのか俺に寄ってくる。
俺の視界には幼い子供の物と思わしき千切れたテディベアが浮かんでいた。
探せばレノア・ザラという女性の亡骸もあるのかもしれないな。気が滅入るから探す気は無いが。 - 80スレ主25/03/26(水) 11:14:53
この時のキラのメンタルdice1d3=3 (3)
1.こんなの酷すぎる
2.ルイの体温、えへへ~(涎)
3.錯覚だけどルイのオイニー(涎)
- 81二次元好きの匿名さん25/03/26(水) 12:44:24
おい!キラがヒドインになってるぞ!
- 82スレ主25/03/26(水) 13:03:14
「あそこの水を!?本気なんですか!?」
キラが怒気を込めて言うのは、そこで見た光景に由来していた。戦争のせいで、
復興や遺体の回収すら行われなかったユニウスセブンには、多くの被災者の遺体があった。
大人に子供、老人も含めて、ありとあらゆる無関係な一般市民が、宇宙の冷たさに凍りつき、
ミイラとなってユニウスセブンに漂っている。
同行したミリアリアも、あまりの衝撃でしばらく部屋に閉じこもってしまったほどだ。
「ーーあそこには、一億トン近い水が凍り付いているんだ」
ナタルの言葉は、あまりにも合理的だった。ユニウスセブンはもともと農業用のプラント。
牧草地帯や田園地帯を維持するための莫大な水が、氷となって埋まっている。その氷から水を補給しようと言うのだ。
「でも!…ナタルさんだって見たでしょ?あのプラントは何十万人もの人が亡くなった場所で…それを…」
「水は、あれしか見つかっていないの」
キラの言葉を、マリューが無慈悲に遮る。水は、あそこにしかない。その現実が、重くのしかかる。
広いデブリベルトを探せば、他にも水はあるだろうが、近場で見つかる保証も無いし、量がある保証も無い。
キラは陰鬱そうに項垂れる。彼女が感じてる気持ちは正しい。だが、その正しさでどうにかなるほど現実は甘くない。
「誰も、大喜びしてる訳じゃない。水が見つかった!ってよ…」
「フラガ大尉…」
「誰だって、できればあそこに踏み込みたくはないさ。けどしょうがねぇだろ。
俺達は生きてるんだ!ってことは、生きなきゃなんねぇってことなんだよ。
今までやってきたことと比べたら何が違うって言われたら黙るしかないしな」 - 83スレ主25/03/26(水) 14:13:09
その言葉が、今の全てだった。自分達が呼吸をし、生きている以上、ユニウスセブンから
取り出さなきゃならない物資がある。それを、道徳的な感情を優先して無視すれば、今度はこちらが死に直面する。
生きるためには、必要なことだ。そう、言い聞かせるしかないんだと、誰もが言った。
俺はテキパキと準備を進める。姉貴もだ。
キラ「ルイは、なにも…なにも感じないの?」
気がつくと、キラはそんなことを俺に問うていた。サイやトール、カズィも同じような眼差しで、俺を見つめる。
「魔法使い(ファンタジー側)の身でいうのもなんだけどさ、向き合わないといけない現実って奴は
いくらでもあるんだ。その時の感傷なんて一切お構いなしに」
脳裏にこれまでの事が浮かび上がる。4の運命を先延ばしにすることしかできなかった恩人。
結局救えなかった初恋の相手。都合よく時間を巻き戻すことはできない。
向き合い、背負っていくことしかできなかったことが多々ある。魔法も所詮万能の力ではないのだから。
「そんな経験何度もしてるから、薄れちまってるんだよ。死を悲しむ、っていう気持ちがさ」
それに、キラ達は何も言わなかった。 - 84スレ主25/03/26(水) 14:15:24
- 85二次元好きの匿名さん25/03/26(水) 14:19:51
- 86スレ主25/03/26(水) 15:30:19
地球側が支援で作ろうとした工業用コロニーを、プラントは自国の自給自足のために農業用に違法に改造した。
ユニウスセブンに住む科学者や住人も、ブルーコスモスシンパから見れば全てがテロリストに近い存在。
そのコロニーを攻撃の目標にするのは必然でもあっただろう。
だが結果はどうだ?
エイプリルフールクライシスが起こった。約24万人を殺した結果は、より多くの犠牲をもたらす報復が、
地球を深刻な危機に陥れるものとして返ってきた。世界情勢は互いを憎しみ合う根絶戦争へと転がり落ちたのだ。
(ほんと、ばかばかしい話だよな)
命の危険に晒されてきたコーディネーターが新天地を求めるのも、自力で生きていける
環境を作ろうとするのも必然だったはずだ。望んでコーディネーターに生まれた奴など一人もいない。
仮にコーディネーターが産まれてきてはいけない存在だったとしても、
産み出したナチュラルには同等以上の責任があるはずだ。
[背負わされた]当事者達にだけ、ありもしない[責任]を取って死に絶えろ?ナチスの亡霊かと言いたくなる。
そんなことを考えながら、俺達は折り紙で折った花をユニウスセブンに撒いた。
自己満足かもしれないけど、無断で行うのではなく、今自分達ができるせめてのもの葬いをしたい。
キラやミリアリアの言葉で、アークエンジェルクルーや避難民達総出で折り紙の花を作る事にした。
墓荒らしをするのだからこれぐらいはしたかった。
(どうか、安らかに) - 87スレ主25/03/26(水) 17:38:52
アークエンジェルから出た作業用モビルアーマー、ミストラルは氷の回収作業をしていた。
サイやカズィも、作業に当たっている。
俺達はその護衛をしつつ、同じく回収作業をしていた。
瓦礫に紛れて敵が近づいて来れば、気がつく前にミストラルが撃墜される危険性がある。
「…民間船?」
その中に浮かぶ民間船を見つけた。デブリの多くが撃沈してから時間が経っていたものが多かったが、
見つけた民間船は真新しく、受けている傷も古びた様子が無かった。
(エンジンの熱も残ってる、大して時間は経ってないな)
海賊か別の武装組織かは知らないが撃沈されたらしい。酷い真似をするものだ。
合掌で悼み、作業に戻ろうとしたその時
(救命ポッド?)
酸素は残ってるみたいだが、こんな場所に来る人間なんてそうそういない。
ほっといたらどうなるか分かったものではない。しかたないから回収しよう。 - 88スレ主25/03/26(水) 20:51:20
「つくづくこの船は、避難民と縁があるらしい」
ナタルさんの声に、諦めと苦々しさが混じる。これ以上避難民を増やされるのは困るわな。
俺としては頭を下げるしかない。ユニウスセブンでの作業を終えた俺達は、
艦橋で待機をしていた士官組も加わって格納庫へ集まっていた。
俺達の目の前には、俺が回収した救命ポッドが横たわっている。
マードックさんがロックを操作し、やがて「開けますぜ」と言った。
ハッチが微かな音を立てて開く。周囲に待機した兵士達が銃を構える。
「ハロ!ハロ!テヤンデー!」
開いたハッチから、ピンク色をした球型の物体が飛び出してきた。
ぱたぱたと耳が羽ばたくように動き、球の真ん中にはつぶらな目が二つ光っている。
何者が出てくるのかと身構えていた俺達が、その姿に毒気を抜けていくのが見てとれた。
「ありがとう。ご苦労様です」
今度はかわいらしい声が響く。俺達が慌てて視線を向け直し、その先でふわりと淡いピンクが漂った。
柔らかく揺れるピンクの髪と長いスカートの裾。出て来たのは、キラとそう歳が変わらなく見える一人の少女。
顔立ちと雰囲気から、童話の世界の姫を連想した。長いスカートの裾をなびかせて宙を漂う彼女は、
呆気にとられて誰も受け止めてくれないので、慣性で飛んでいってしまう。
俺が丁度いい位置に居たので、彼女を抱きとめる。
「ありがとう」
微笑みながら礼を言った少女だったが、俺が来ている制服を見てすぐに困ったような表情になった。
「まあ、これはザフトの船ではありませんのね?」
どうやら、俺は厄介事の種を拾ってしまったらしい。
- 89二次元好きの匿名さん25/03/26(水) 21:15:50
確かに厄介だけど、後々必要になる出会いだから困るよな
- 90スレ主25/03/26(水) 21:21:01
「ポットを拾っていただいて、ありがとうございました。私はラクス・クラインですわ」
「ハロ!ラクス、ハロー」
「これは友達のハロです」
「ハロハロ。オモエモナー。ハロハロ?」
ラクスと名乗る少女はニコニコと自己紹介を済ますと、手に載せたピンク色のハロを、
目の前のマリュー達に紹介した。その緊張感のないラクスの姿に、マリュー達三人は気が抜けるような思いだった。
拾った責任者として同席した俺達姉弟もこめかみを抑える。
「……ハァ」
「……やれやれ。クラインねぇー。彼のプラント現最高評議会議長も、シーゲル・クラインといったが……」
「……あっ……」
マリューが溜息を吐くと、ムウも呆れながら思い出したように口を開いた。
ムウの言葉に、マリューも思い出したように驚いたような顔をすると、
ラクスも同様に父の名が出て来た事を驚いているようだった。
「あら~?シーゲル・クラインは父ですわぁ。御存知ですの?」
「……おっ!……ハァ……」
「……」
「……あっ!……ハァ……。そんな方が、どうしてこんなところに?」
マジモンのプラントの姫だ。特大の爆弾である。ラクスののほほんとした口調に、ムウもナタルも
「この少女は状況を読めないのか」とばかりにも呆れ返る。 - 91スレ主25/03/26(水) 21:23:00
マリューもムウ達と同様に溜息を吐き、ラクスに聞き返すと、
ラクスは民間船がユニウスセブン宙域に来ていた理由を話し始めた。
「私、ユニウスセブンの追悼慰霊の為の事前調査に来ておりましたの。そうしましたら、地球軍の船と、
私共の船が出会ってしまいまして……。臨検するとおっしゃるので、お請けしたのですが……」
ラクスは、そこで一度言葉を止めると、悲しそうな表情を浮かべ、再び口を開く。
「地球軍の方々には、私共の船の目的が、どうやらお気に障られたようで……些細ないさかいから、
船内は酷い揉め事になってしまいましたの。そうしましたら、私は周りの者達にポットで脱出させられたのですわ」
「なんてことを……」
「そう言う事だったのか……」
要約すると地球軍が民間船をムカつくから、叩き落としたというわけだ。絶対ブルーコスモスだろ。
倫理観も引き金も軽すぎると改めて思うぞこの世界。
「あの後どうなったのでしょう……。皆も無事だと良いのですが……」
「残念だが、無事なポッドはあんたの分だけだったよ」
下手に希望を持たせてもな。地に付くような深いため息が出た。 - 92スレ主25/03/26(水) 21:56:25
「しっかしまぁ、水の問題が解決したと思ったら、今度はプラントのお姫様か。
悩みの種が尽きませんなぁ。艦長殿!」
「……あの子もこのまま、月本部へ連れて行くしかないでしょうね……」
苦しそうに言うマリューに、ムウが頷く。
「……仕方ないだろうな。月以外に帰港予定がある訳でもないんだ。どこかで降ろす訳にもいかないだろう」
マリューはラクスを憐れんでか、沈んだ顔になる。月の本部に連れて行ったとしたら、
彼女の身柄は取引材料として扱われることになるだろう。ラクスの意思を完全に無視した形で。
「……出来れば、そんな目には遭わせたくないんです。民間人の、まだあんな少女を……」
「そう、おっしゃる事は分かりますが、彼らは?こうして操艦に協力し、
戦場で戦ってきた彼らだって、まだ子供の民間人ですよ」
「バジルール少尉、それは……」
ナタルが少し現実を見るようにと、少しきつい感じで言うと、マリューは戸惑うが、ナタルはそのまま言葉を続けた。
「アヤセ姉弟や彼らを、やむを得ぬとはいえ戦争に参加させておいて、
あの少女だけは巻き込みたくない、とでもおっしゃるのですか?」
「……」
「……彼女はクラインの娘です。と言うことは、その時点で既に、ただの民間人ではない、と言う事ですよ……」
「……」
ナタルの言葉に、元々俺達をアークエンジェルに乗せたのはマリュー自身だったのを思い出すと、
何も言えなくなり、さらに表情を暗くした。仕方ない、助け船を出すか。 - 93二次元好きの匿名さん25/03/27(木) 04:34:41
ルイって実質何歳なんだろ
- 94スレ主25/03/27(木) 08:44:52
「ナタルさんは彼女を軍事利用すべきだと?」
「…軍人として、全うすべき事はあるはずだ」
「そりゃそれは修羅道だ。貴女の言うことを客観的に見れば、兵士は単なる駒であるべきだってなる。
そんなことが許されるのはSFに出てくるロボット兵軍団だけですよ」
たしかにその考えは、戦場を生き抜く指導者として必要ではあるだろう。
しかし、それはあくまで正規部隊での話である。ナタルは一つ大きな間違いをしている。
今のアークエンジェルは、経験豊富な正規軍人で運用されているわけでない。
不慣れな下士官たちと、それに協力してくれている民間人の力で成り立っている。
その中で厳格な軍人思考を持ち込むのは、ナンセンスだ。
「少なくとも俺達は貴女方の手助けをするために協力してる。
俺達と、今回保護した彼女を同列視はしてはならないと思うぜ」
戦闘になれば、非情に徹する必要があるのが軍人だ。
しかし、非戦闘時も非情になるというなら、それは軍人ではない。
「戦略に感情を含めれば負ける。しかし、向かう指針に道徳心を欠くようになっては最早殺戮者と大差ない。
ナタルさん、堅物の貴女には難しいかもしれないけど、そこを忘れてはいけないと思いますよ」
魔法使いは自他関係無く心と向き合わなければならない。
そうしないと簡単に悪い方に転ぶ。
「マリューさん。とにかく、彼女をどうすることもできない。今は友軍との合流が優先だ。
それが終わってから改めて話し合いをしましょう」 - 95スレ主25/03/27(木) 08:46:10
琉生の実際の年齢13+dice1d100=88 (88)
- 96スレ主25/03/27(木) 09:59:09
握手をした日から、また数日が経ち、アスラン達はフレイと過ごす事に慣れ始めていた。
いつも通り共に食事を取り、食後のお茶を楽しんでいた。
アスランは食事を終えフォークを置くと、フレイに声をかける。
「すまない、ポットを取ってもらえるか」
「うん、はい」
「ありがとう」
紅茶を飲んでいたフレイがポットを差し出すと、アスランは礼を言って受け取った。
「アスラン、砂糖かミルクは要りますか?レモンもありますけど?」
「いや、俺はストレートでいただくよ」
ニコルがアスランに何か入れるかを聞いて来ると、アスランはそれを断り、一口、紅茶を口に含んだ。
アスランとニコルは、軍人になってからは、こんなにゆっくりとした過ごす日々など、
ここ最近ではあまり無かった。実感するようにニコルが口を開く。
「それにしても本当にのんびりしてますね」
「そうだな」
「こんなに纏まった休暇は、なかなか取れないですからね」
アスランが頷くのを見ると、ニコルはニコニコしながら言った。
プラントでは十五で成人となるが、戦争さえ起こらなければ、まだまだ遊んでいたい年頃なのだから仕方がない。
プラントとザフト軍の事情を詳しく知らないフレイは二人に聞く。
「どのくらい、お休み貰ったの?」
「……ん、とりあえずはモビルスーツの修理が終わるまでだな」
「だから、いつ休暇が終わるのか分からないんですよ」 - 97スレ主25/03/27(木) 09:59:54
「……お休みが終わったら、また……地球と戦うの?」
二人の言葉をを聞くとフレイは俯き加減に言葉尻を濁しながら言った。
「……そう言う事になるな……」
「そうですね……」
アスランとニコルは気まずそうに答えと少しの沈黙が支配する。
アスランが真剣な表情でフレイを見つめながら、沈黙を破るように口を開いた。
「……フレイ。頼みがある」
「……なに?」
「君が地球に戻ったら……軍には入らないでほしい」
アスランの言葉にニコルもフレイも驚きながらも、その表情に見入った。
アスランはそのまま言葉を続ける。
「こうして、知り合った……友達、なのか、な?……俺は、そんな人達と戦いたくないんだ」 - 98スレ主25/03/27(木) 10:00:16
アスランは途中、自分の言った事に照れる素振りをしながらも、最後には、真剣な表情で言い終える。
その心の中では、キラの顔が浮かんでいた。ニコルもアスランと同じ気持ちだったのか、フレイに向き直り口を開く。
「僕からもお願いします。フレイ、地球に戻ったら、絶対に軍には入らないでください。
僕もフレイと戦いたくありませんから……」
フレイは二人の真剣さに優しさを感じた。――アスラン、ニコル……。
「……うん」
元より軍に志願するつもりの無いフレイは真剣な表情で頷く。
「……フレイ、ありがとう……」
「ありがとうございます!フレイ!」
アスランもニコルも、フレイの返答に表情が緩み、うれしそうに礼を言った。
それぞれが笑みを浮かべ、この約束が破られる日が来ない事を願った。 - 99二次元好きの匿名さん25/03/27(木) 11:18:18
まさかの精神年齢百歳越え
- 100二次元好きの匿名さん25/03/27(木) 12:27:46
なんかルイが仙人に思えてきた
- 101スレ主25/03/27(木) 18:17:42
アークエンジェルの中ではラクスを救助してから一晩が明けた。艦内は穏やかな物だった。
物資の問題は解決し、非番だった私達とヤマト家、友人達は食堂に集まっていた。
琉生は水問題が解決したので、気兼ね無くコーヒーを飲んでいる。ずっと飲めなかったからいい顔してるわ。
皆シャワーを浴びれない状態だったのに、芳香剤調合のせいで琉生だけいい匂いがしてたから、
女性陣から白い目で見られてたのよね。私も含めて。
後サイ・トール・カズィはルイのコーヒーを飲んで顔を顰め、カフェオレにして飲み直してる。
琉生の好きなブレンドは漢、というより雄の味ってかんじだから、香りはいいけど苦味とコクがすごいのよね。
ハルマさんは口に合うらしく一緒に飲んでるけど。カリダさんは専用のブレンド渡してるみたいね。
「あのぉー」
「?」
どこからか、かけられた声に全員が不思議そうな表情をになる。
「ハーロー。ゲンキ!オマエモナ!」
「――あっ!」
「……驚かせてしまったのならすみません。私、喉が渇いて……それに笑わないで下さいね。大分、
お腹も空いてしまいましたの。こちらは食堂ですか?なにか頂けると嬉しいのですけど……」
全員が食堂の入り口に視線を向けると一様に驚いた。
ラクスは、みんなを驚かせてしまったのを悪いと思ってか、
謝ると食堂に出向いた理由に恥ずかしそうな表情をしながら伝えた。
その側では、ハロがピョンピョンと楽しそうに飛び跳ねている。 - 102スレ主25/03/27(木) 21:26:27
キラが慌てるように口を開く。
「――っで、ってちょっと待って!」
「鍵とかってしてないわけ……?」
「あら?勝手にではありませんわ。私、ちゃんとお部屋で聞きましたのよ。
出かけても良いですかー?って。それも三度も……」
「そう言う問題じゃないと思うけど……」
カズイが艦内の警備が行き届いてないのに不安そうな表情をすると、ラクスは空気が読めないのか、
ニコニコとしながら言った。ラクスの言葉にカズイが呆れたようだった。
「いや、そもそも鍵掛かってただろ」
「それならピンクちゃんにお願いしましたわ」
「テヤンデイ!」
いや軍艦のセキュリティ突破できるペットロボってなに!?
久し振りのコーヒーブレイクに水を差され、琉生が目に見えて不機嫌になる。
「姫さんよ、ここは連合の船だ。ブルーコスモスに賛同する馬鹿もいるだろうから、出歩かない方がいいぞ」
それに対して、ラクスはふくれっ面になる。
「また、お部屋に戻らなくてはなりませんの?わたくしもみなさんと、お話しながら頂きたいですわ」
「本気で言ってんのか?」
「え?」
いわゆる壁ドンで、琉生はラクスを隅に追い込む。 - 103二次元好きの匿名さん25/03/27(木) 21:27:30
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- 104二次元好きの匿名さん25/03/27(木) 21:28:11
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- 105スレ主25/03/27(木) 21:59:35
「この艦には、ザフトに攻撃されてコロニーが壊れたから乗っている人も多い。ここに居る俺達もそうだ」
「それは……」
ラクスが息を呑んだ。表面上は変わらないように見えるが、よくよく見れば、少し顔色が悪くなっているし、
呼吸も少し浅く、目も若干揺れている。
「そんな状況で若い女が1人。どうなるかなんて簡単にわかるだろ」
この天然さが演技かどうか確かめたいらしく、琉生が凄む。
その時だった。ラクスのお腹から可愛らしい音が響いた。途端に、ラクスの顔が真っ赤になる。
「ブフッ」
琉生は堪えきれずに、体を震わせるとラクスから離れた。見れば私も含め一同揃って笑っている。
ホントに毒気の抜けるお姫様だこと。
「だよな。腹減ったよな」
「ち、違いますわ!い、いきなりなんなのです!?」
まあ、緊張とストレスがお腹にいったのだろう。タイミングは完璧だったが。
なんか、あれこれ考えてるのがバカらしいわね。その後、しばらくわちゃわちゃしてから食事となった。
ラクスは恨みがましい目で、琉生を見ている。恥をかかされたので当然だけど。
「貴女プラントのお姫様なんでしょ、ナチュラルが怖くないの?」
一応私も聞いてみる。パタパタと、ラクスが持つハロの羽のようなパーツが揺れる。
しばらく、ラクスは私を見つめてから、にこりと優しく微笑む。
そこには少女のようなあどけなさはなく、どこか慈愛に満ちた表情であった。 - 106スレ主25/03/27(木) 22:00:00
「わたくしは、コーディネーターである前に、ひとりの人間ですもの。
助けてくださった方々と仲良くしたいと思う気持ちは、間違ってるのでしょうか?」
「ま、それが普通なんじゃないの?俺だって、戦争なんてテレビの向こう側で起こってて、
自分達には関係ないと思えたら、その国の人間とも仲良くできるもんだ。
ヘリオポリスで暮らしてたら何となく理解できるんじゃない?」
そうね、現代日本で暮らしてるとわかるわ。
「戦争ってのは、憎しみを人の心に植え付ける力を持ってる。それも根深くな。
けどそれをどうにかしない限り、このくっだらねぇ戦争も終わらないんだよ」
撃たれたから撃ち返し、殺されたから殺し返す。その連鎖の積み重ねが今のこの世界だ。
ラクスも悲しげに視線を落とした。
「悲しい日々が続きますもの。私も、こんな戦争は嫌いです」
彼女の本心に判断はつかないけど、この破滅的な戦争に悲しみ嘆いてるのは確かみたい。
「あなたは意地悪ですけど、優しいんですのね」
だいぶ年相応の表情になってきた。最初のゆるふわ笑顔固定より好感持てるわ。
ラクス「お名前を教えていただけますか?」
ウィル「琉生。ルイ・アヤセ」
名前を聞いたラクスは、年相応の軽やかな笑顔を浮かべた。なんかずいぶんいい雰囲気になってるわね - 107スレ主25/03/27(木) 22:00:34
ラクス>琉生 20+dice1d100=97 (97)
琉生>ラクス 20+dice1d100=56 (56)
50以下で仲のいい姉弟
60以下で自覚は無いけど異性として見てる
70以下で自覚ありで異性として見てる
80以下で夜のおかずにしてる
それ以上だと二人きりの時に押し倒しそうになる
- 108二次元好きの匿名さん25/03/28(金) 03:38:49
一目惚れですわ・・・?
- 109スレ主25/03/28(金) 08:02:49
すると不機嫌そうな顔をしたキラが、わざとらしく咳払いをする。
「それじゃ、部屋に戻るか」
「もうすこし、この船を見て回りたいのですが…」
「許可が下りねぇよ」
その様子を、キラがますます不機嫌そうに見送る。
「あらあら、強力なライバル出現ね」
カリダさんが微笑ましそうに見てる。
「キラ、貴女ならわかるでしょ。琉生は付き合いが濃くなるほど良さに気付いて惚れられちゃうタイプよ。
おまけに惚れられた相手に好意を持つタイプだから、うかうかしてると取られちゃうわよ」