- 1◆VLlUGaOg9c25/03/21(金) 22:41:41
- 2◆VLlUGaOg9c25/03/21(金) 22:43:13
アリス「アリスは人を殺しません。それは絶対にダメなことです。
だから、もし、アリスが暴走してしまったら――誰かを傷つける前に殺して下さい」
ナレーション
何時か、カナはアリスが人を殺したらアリスを殺してくれると言ってくれた。
そんなこと、カナは誰よりやりたくなかったのに、アリスを生かす責任を取ると約束してくれた。
何時かの約束があったから、アリスは生まれ持った大いなる力の責任を知ることが出来た。背負う覚悟が出来た。
ユウカ「アリスちゃん、それは「ユウカ」っ!」
ナレーション
たった一言、たった一言名前を呼ばれただけで、ユウカはアリスの瞳に秘めた意思を垣間見た。
強い光だった。まるで星のように輝かしく、あるいは雷のように鮮烈な、見惚れるほどに力強い決意の光だった。
右も左も常識も分からなかったポンコツ機械人形は、何時の間にか、小さくとも立派な勇者に成長していたのだ。
アリス「アリスは死ぬのが怖いです。死んだら、ゲームも、冒険も、クエストも出来ません。
パーティーメンバーと話すことも、学園のみんなと会話することも、街に出て新しい出会い探すことも、
何も出来なくなってしまいます。教会でも、工房でも、命は治せません」
ナレーション
気が付けば、みんなが勇者の言葉に耳を傾けていた。その身に秘めた光を見ていた。
愛を知り、恐怖を知り、それでもと言い続ける意思を・・・勇気を知った小さな少女の精一杯の訴えを聞いていた。
アリス「だから、アリスは勇者としてキヴォトスのみんなを守りたいです!
ミレニアムのみんなと、他の学園のみんなと、先生と一緒にこれからも生きていたいんです!」
アリス「お願いします!アリスたちを船に乗せて下さい!」
ナレーション
だからきっと、この喝采と祝福の拍手は必然だったのだろう。 - 3二次元好きの匿名さん25/03/21(金) 22:49:55
たておつ
- 4◆VLlUGaOg9c25/03/21(金) 23:22:51
ナレーション
さて、勇者アリスと従者ケイが仲間に加わりはしたものの、まだ船員の選定は終らない。
なにしろ、ウトナピシュティムの本船は動かすだけでも10人規模のオペレーターが必要なのだ。
ケイ「現在、キヴォトスに顕現しているアレについて、実のところ私にも詳細は分かりません。
一つだけ言えるのは――アレは本来私たちの所有物である「アトラ・シハースの箱船」の力を有していること」
リン「アトラ・シハースの箱船とは・・・」
ケイ「それについては説明が難しいのですが・・・「アトラ・シハースの箱船」とは決まった形の物質ではありません。
アリスの「名も無き神々の王女」としての権能、『プロトコル:ATRAHASIS』により生み出された聖域。
周囲のデータを収集して分解、再構築、任意の物体を作り出す、変換機構により顕現した存在を指します」
ナレーション
物質変形機構といえば、要するに3Dプリンターのようなモノだが、アリスが持つ権能の力はそれに留まらない。
アリスが利用するのは周囲のデータ。それを組み替えるということは、つまり、世界法則そのものの改竄である。
勿論、大きい力を振えば、それだけ絶大なリソースを有するが、そこさえクリアすれば理論上何でも出来る。
ケイ「虚妄のサンクトゥムに利用されていた膨大なエネルギーを鑑みれば、
相手が有するリソースが莫大であることは想像に難くありません。防衛にも、その力を振っているでしょう」
ユウカ「それをアリスちゃんの『プロトコル:ATRAHASIS』で破壊すると・・・・・・でも本当に大丈夫なの?
アリスちゃんと相手の使っている力が同じなら、純粋なリソース勝負になるわよ?
間違いなく相手の守りを貫けるだけの膨大なリソースの宛てなんて無いわよ?」
ナレーション
ユウカの懸念は当たっていたようで、ケイは少し言葉に詰まった。
いや、宛てはある。あるのだが、それはつまり・・・・・・アリスかケイのどちらかを「リソース」に使うということだ。
それは生徒として、人の生き方を学び始めたケイにとっても、辛く苦しいことに違い無かった。 - 5◆VLlUGaOg9c25/03/22(土) 00:14:25
ナレーション
それでも自らの主である勇者が決意したのだ。責任を背負い、恐怖に立ち向かって、戦って見せた。
ならば、従者である自分が我が身惜しさに臆する訳には行かない。そうケイが自らに言い聞かせていると・・・
・・・それは大丈夫だ。宛てがある。
ナレーション
想定していないところから、助け船がやってきた。
ナギサ「カナさん、それは・・・」
持ったまま怯えて使えないんじゃあ、意味が無い。これは、きっと誰かを守る為に使うモノだ・・・・・・多分!
ナレーション
神子柴カナ。誰よりもアリスを生かす責任を正しく背負い、その姿を以てアリスに少なくない影響を与えた少女。
カナも切札を持つらしいが、それが容易に使って良いモノではないことはナギサとの会話から推測できた。
なのに、カナはそれを振うことを躊躇わなかった。誰かを助けるためだから、臆することなく決断して見せた。
それがケイには何だが眩しくて、少し羨ましかった。
まぁ、そういう訳だからリソースは私が何とかする!詳細は・・・・・・・・・先生に聞いて欲しい。
ナレーション
尚、当のカナはどこまで説明したら良いか悩んで先生に丸投げしていた。
- 6二次元好きの匿名さん25/03/22(土) 00:15:16
たておつ!
- 7二次元好きの匿名さん25/03/22(土) 00:24:12
立て乙!
- 8二次元好きの匿名さん25/03/22(土) 06:08:54
たておつです
- 9二次元好きの匿名さん25/03/22(土) 06:37:50
そう来るのか
- 10二次元好きの匿名さん25/03/22(土) 06:52:37
カナちゃんったらもう…
- 11二次元好きの匿名さん25/03/22(土) 12:57:58
そうか、ここで使うか…
- 12二次元好きの匿名さん25/03/22(土) 13:21:33
- 13二次元好きの匿名さん25/03/22(土) 22:15:32
保守
- 14◆VLlUGaOg9c25/03/23(日) 00:43:32
ナレーション
宇宙戦艦という触れ込みでありながら、何故かウトナピシュティムの本船に搭載されていなかった武装。
その代わりにアトラ・シハースの箱船の守りを突破する主砲役・・・もとい、聖剣担当のアリスとケイが加わり、
アリスたちの力を振うためのリソースを何とか出来るカナも船員として確定した。となると、後必要なのは・・・
リン「ウトナピシュティムの本船を操縦するオペレーター、船に何かあった場合の為の修理屋、
敵拠点での戦いに参戦する戦闘員、敵拠点が巨大であった場合の移動役・・・・・・と言ったところでしょうか?」
ユウカ「そうね。欲を言えば医療班や補給班も欲しいところだけど・・・・・・
・・・定員の問題もあるし、とりあえずは必須の役割から埋めていきましょう」
ナレーション
リンが司会役となり、一同はまず必要そうな役割を次々に書き出していった。
勿論、定員の問題もあるので全ての役割を充分な人数用意することは叶わないかもしれないが・・・・・・
・・・それでも、役職が決まれば必要な能力のイメージが湧く。イメージが湧けば、適役も思いつく。
ユウカ「そうですね。こちらからはオペレーターに超常現象に詳しいヒマリ先輩と記憶力のあるノア、
後は修理役にエンジニア部の3人はどうでしょう?ウチでも最高クラスの技術者ですけ」
マコト「なら、戦闘員には風紀委員長のヒナを出そう。小癪だが、アイツは我がゲヘナで最も強い」
ナギサ「トリニティからはミカさんと正義実現委員会のツルギ委員長、
それから・・・・・・移動役にヒフミさんを推薦します。戦車操縦の実技は満点でしたので適任かと」
ナレーション
次々と名前が挙がっていき、アッという間に暫定ではあるが、ウトナピシュティムの本船の船員が決まっていった。
- 15◆VLlUGaOg9c25/03/23(日) 00:48:03
- 16二次元好きの匿名さん25/03/23(日) 05:06:13
ヒフミ、戦車の操縦技術実技で満点叩き出したんだ…凄いなぁ
- 17二次元好きの匿名さん25/03/23(日) 05:12:40
おれのかんがえた最強チームだ
- 18二次元好きの匿名さん25/03/23(日) 05:25:16
凄いよね、各校でちゃんと連携取れてたらここまでスムーズに人員の確保に動けるんだから
- 19二次元好きの匿名さん25/03/23(日) 12:00:49
やはり対話と言うのは大事である事だなぁ
- 20二次元好きの匿名さん25/03/23(日) 20:41:34
向こう側はどうするんだろ
- 21◆VLlUGaOg9c25/03/23(日) 22:28:28
ナレーション
その場には居ないとはいえシャーレの先生が関わる案件であったこと、
虚妄のサンクトゥム攻略戦を通じて1連の事件に現実味が増したこと等の理由が重なり、会議はスムーズに進んだ。
過去に類を見ない、各学園同士の円滑な協力連携。それが齎す意味は余りにも大きい。
敵は敵は強大とはいえ、余りの順調さに1部の生徒たちが「あかん、勝ってまう」と油断するほどであった。が・・・
《ウトナピシュティムの本船 船内》
アユム「その・・・・いかがでしょうか?技術調査員のみなさん」
ウタハ「・・・・・・大丈夫。おおむね理解した。・・・この戦艦は私たちには解明できない、ということが判明したよ」
ナレーション
頼りにしていた調査班はウトナピシュティムの本船の構造解析を不可能だと言い出した。
移動手段であり、切札であり、希望でもある船を、その技術力の高さ故に誰も理解出来なかったのである。
・・・つまり、この時点でウトナピシュティムの本船に何か不調が起こっても、誰も治せないことが確定した。
ヒビキ「うん。この戦艦の燃料、推進体、動作原理。エンジン構造、設計に至るまで・・・・・・何から何まで不可解の塊」
コトリ「これは「オーパーツ」ですからね!私たちが理解出来ないのも当然と言えます!」
ナレーション
アユムは絶望した。コトリの理屈は分かるが、何も分かりませんでした。で終っては困るのだ。
何しろ、ウトナピシュティムの本船の代わりとなるような兵器も策も無いのだから、使えなくては非常に困る。
ウタハ「はぁ・・・・・これを解析できたら、私たちの悲願に近づくと思ったのだけど・・・」
ナレーション
心底悔しそうなウタハの表情が、本当に彼女たちにもどうにもならないのだということを嫌でも理解させる。
思わず、アユムは身体から力が抜けそうになるところを寸でで堪えた。
- 22二次元好きの匿名さん25/03/24(月) 03:58:25
草
- 23二次元好きの匿名さん25/03/24(月) 10:08:54
なにも分からない!が分かった!
- 24二次元好きの匿名さん25/03/24(月) 17:28:20
そもそも分からないってのは困るね
- 25◆VLlUGaOg9c25/03/24(月) 23:25:17
代理モブ「何も分からないのは原作通りなので仕様です」
コトリ「あっ、ですがご安心を!動作原理は分かりませんでしたが、操作する程度ならなんとかなりそうですので!
車の構造が分からなくても、エンジンを動かして運転する分には支障が無いのと同じです!」
アユム「ほ、本当ですか!」
ヒビキ「車はアクセルを踏んだら加速、ブレーキを踏んだら減速、ハンドルを回せば方向転換するよね?これも同じ。
どれを操作したら、どう動くのか?それを纏めたら内部構造が分からなくても操作マニュアルを作れる」
ウタハ「まぁ、出来るのは操作マニュアルだから、修理や改修は出来ないけれどね」
ナレーション
落として上げる。絶望により地の底まで墜ちたアユムの心は、小鳥の翼によって引き上げられた。
動くのならば、飛んでくれるのなら、敵本拠地まで攻め入ることが出来る。打つ手無しでは無くなる。
万が一、壊れた場合に治せないのは変わらないので、厳しい状況事態に変わりないが、首の皮1枚繋がった。
リア「そこで、万が一、船が故障した場合に船員の命を救助するサブプランを用意したわ」
アユム「リアさん!ほ、本当に船が壊れても、船員を救助出来るんですか?」
ナレーション
他の場所で調査作業をしていたのか?それともサブプランを用意していたのか?
エンジニア部の面々とは違う方向から現われた、謎多きアリウスの技術者は自信満々に秘策の存在を明かした。
ウタハ「・・・それは助かるよ。こちらも、船員の安全は懸念していた。何せ、目標は上空75.000メートルだからね」
ナレーション
その傍から見たら分かりにくいクールな表情に見覚えのあるウタハは少し複雑そうに表情を崩したが、
結局は普段通り、人当たりが良く、ロマンと後輩愛に溢れるマイスターの表情《かお》をするのだった。
- 26二次元好きの匿名さん25/03/25(火) 07:32:56
リオが月雪リアであることはわかる人にはわかる公然の秘密なのよね
- 27二次元好きの匿名さん25/03/25(火) 12:28:39
メッチャお化粧してるだけだからね…
- 28二次元好きの匿名さん25/03/25(火) 20:26:44
アバンギャるのかな?
- 29二次元好きの匿名さん25/03/25(火) 21:17:22
ちょっと見なかったうちにドリームチームで来てる…
- 30◆VLlUGaOg9c25/03/25(火) 23:13:03
ヒビキ「でも、本当にどうするの?上空75.000メートルはパラシュートぐらいじゃ、どうにもならないでしょ?」
ナレーション
そんなウタハの普段とは違う様子に気が付かず、コトリとヒビキは純粋に疑問をぶつける。
リンや各校の生徒会長たちにも説明しなければならないのだが、期待と興味に震える心を抑えることは出来ない。
リアにとって二度手間になると分かっていても、好奇心に身を委ねる他に無かったのだ。
リア「ふむ・・・細かい技術的な説明というのは難しいわ。1から10まで全てを解説するには、時間が掛かりすぎる。
だから、分かり易いように端的に何をしたかだけ説明すると・・・・・・再度出現したエネルギー反応を利用したの」
アユム「というと、虚妄のサンクトゥムの・・・?」
リア「ええ。連邦生徒会はあのエネルギー反応の流れを辿ることで上空75.000メートルという位置を特定した。
それはつまり、上空75.000メートルから地上までエネルギーのラインが繋がっているということ。
このラインのエネルギーを利用して、流れを辿ることで、ラインが繋がっている地上に運ぶこと出来るわ。
ナレーション
リアはミレニアムの技術者ではないアユムにも分かるよう、少し考えながら努めて内容を簡単に説明し始める。
その見覚えのある面影を感じる姿に、ウタハを話に耳を傾けながらも、誰にも聞こえないような小さな声で、
「・・・まぁ、何はともあれ、元気ではやれているみたいで一安心・・・でいいのかな?」と漏らしたのだった。
リア「それに戦力面では「機動戦姫アヴァンギャルド・サニー」という新兵器もあるわ。これはね・・・」
ナレーション
自信に満ちた輝かしい瞳で、何とも言いがたいデザインの「アヴァンギャルド」を語るリアの姿には、
流石のウタハも「本当に隠す気があるのか・・・?」と失笑した。
- 31二次元好きの匿名さん25/03/26(水) 08:04:01
逆に気になってきたなアバンギャルドサニー
- 32二次元好きの匿名さん25/03/26(水) 16:55:32
えんちょーほしゅの
- 33二次元好きの匿名さん25/03/26(水) 22:44:54
そういやペロロジラ戦では不発だったな、アヴァンギャルド・サニー…
- 34◆VLlUGaOg9c25/03/26(水) 23:16:17
ナレーション
虚妄のサンクトゥム攻略戦対策本部に使われた会議室。
連邦生徒会長代理のリンとシャーレの先生を司会に、各校の生徒会たちが出席して真剣な面持ちをしている。
何しろ、ウトナピシュティムの本船の調査も大まかな船員の選定も、全てはこの為の準備だったのだから。
ヒフミ「・・・あの、私たちは何で呼ばれたのでしょうか・・・?」
"急に呼び出してごめんね、みんな。そこも含めて説明するから、少し時間を貰えるかな?"
ナレーション
そんな中、何故呼ばれたかも分からず、手持ち無沙汰にそわそわしていた少女たちが居た。
彼女たちだって、これから始まる会議が重要なことは分かっている。分かっているからこそ、困惑するのだ。
だって、少女たちは一般生徒なのだから。
"さて、作戦計画書はみんなに行き届いたかな?」
アユム「は、はい!出席した生徒の皆さんに配布できました!」
リン「・・・では、始めましょう。
作戦名は「アトラ・シハースの箱船攻略戦」。・・・おそらく、これが最後となるでしょう」
アヤネ「さ、最後・・・」
ナレーション
アヤネが漏らした言葉を、周囲の生徒たちも重く受け止める。
長い、戦いだった。カイザーから先生を奪還し、虚妄のサンクトゥムを攻略し、砂漠から宇宙戦艦を掘り出した。
それらの長い長い戦いも、次で最後。この作戦の成否で全てが決まるのと考えると、自然に緊張が走る。
リン「・・・では、作戦の説明に入ります。
私たちの目標は、キヴォトス上空にある「アトラ・シハースの箱船を破壊する」こと」
- 35二次元好きの匿名さん25/03/27(木) 07:55:19
いよいよか…
- 36二次元好きの匿名さん25/03/27(木) 11:58:19
一般生徒(ファウスト)
- 37二次元好きの匿名さん25/03/27(木) 19:35:56
一般であることと技能は別だからね
- 38二次元好きの匿名さん25/03/27(木) 23:26:31
大丈夫かねぇ
- 39◆VLlUGaOg9c25/03/28(金) 06:29:48
ナレーション
リンの宣言と同時に、その場の出席者たち全員が手元の資料へと視線を移す。
最初は何が何やらと困惑していた一般生徒たちも、まずは話に集中するべく他の出席者たちに続いた。
リン「我々は虚妄のサンクトゥムのエネルギーの源泉である「アトラ・シハースの箱船」こそが敵の本拠地。
つまり、この1連の事件の黒幕が拠点としている場所だと推察しています」
モモカ「もし仮に推察が間違っていたとしても、エネルギーの源泉である箱船を叩けば、
少なくとも「虚妄のサンクトゥム」を出現させるのは阻止出来るからね」
ホシノ「なぁるほど~。そのアトラ・シハースの箱船に行く為に、ウトナピシュティムの本船が必要なんだ?」
ナレーション
ホシノの素朴な疑問に先生が首肯したことで、事情を深く把握していなかった一般生徒たちも情報を共有する。
単調な説明にならないように、良いところで良い質問を投げる。廃校対策委員長の経験が光るファインプレーだ。
リン「その通りです。「アトラ・シハースの箱船」の座標は上空75.000メートル、通常のヘリでは届きません。
ですので、シャーレとアビドス高校が共同して確保して下さった「ウトナピシュティム」の本船を使います」
モモカ「で、生徒会とかに入ってない子のに呼ばれた子たちは、各校の生徒会長たちが推薦した船員候補ってわけ」
ヒフミ「そ、それって、もしかしなくても凄く重大な役目じゃないですか・・・?」
リン「はい。ですので、所属する学園や組織の縛りを設けず、各校で特に優秀と思われる生徒を選出しました」
ナレーション
実際のところは兎も角、本人としては平凡な普通の1生徒を自称するヒフミは余りの大任に身を震わせた。
船員候補の生徒たちの反応は様々。ヒフミのように緊張と驚愕に震える者もいれば、落ち着いたままの者も居る。
ただ確実に言えるのは、彼女たちが何かしらの分野において突出した実力を持つエキスパートだということだ。
- 40二次元好きの匿名さん25/03/28(金) 13:31:23
緊張するね
- 41二次元好きの匿名さん25/03/28(金) 22:39:51
これで準備完了か
- 42◆VLlUGaOg9c25/03/29(土) 00:30:09
モモカ「そんな緊張せずに気楽にやったらいいと思うよ?
君たちは自分とこの生徒会長に実力を認められてここに居るんだし、どーんと構えててよ」
ヒフミ「「構えててよ」と言われましても・・・」
ナレーション
ヒフミを始め納得していない生徒たちもいるようだが、モモカの言う通り彼女たちはもっと自信を持って良い。
学園の長たちが「最適」と太鼓判を押した。その事実だけで、この場に出席する資格は足りているのだ。
リン「・・・そろそろ良いでしょうか?色々思うところはあるでしょうが、まずは作戦の説明を聞いて下さい」
ナレーション
リンの言葉に耳を傾けるべく、しんと静まり返った会議室の静寂を確かめてから、リンは再び話しはじめた。
リン「私たちの目標である「アトラ・シハースの箱船」には物理的な干渉を無効化する防壁に保護されています。
この防壁が存在する以上、箱船に対する物理的アプローチは不可能とされていました。
――ーですが、この防壁を突破する策が「二つ」あります」
ノドカ「策を2つも!?」
ナレーション
リンは静かに首肯を返す。
ミレニアムのビッグシスターが残した遺産すら通さなかった、触れることすら叶わない不可思議のバリア。
その存在ぐらいは一般生徒のノドカも(盗撮で)知っていたが、その突破に苦悩していたことも承知していた。
その無理難題の答えが、この短時間で2つも見つかったというのだから、流石のノドカも驚愕であった。
リン「一つ演算機能を利用して「ウトナピシュティムの本船」を防壁と同様の状態にすること。
そして、もう一つ。ミレニアムのアリスさんとケイさんが「防壁を破壊する」こと」
- 43二次元好きの匿名さん25/03/29(土) 10:08:11
保守
突入までの問題はクリアした、問題は突入した後、になるのかな? - 44二次元好きの匿名さん25/03/29(土) 12:38:12
確か本編の方ではアトラ・ハシースの本船のシステムをハッキングして自爆シーケンスを作動させるってのをヒマリ、リオ、ヴェリタス総出でやったんだよね
- 45二次元好きの匿名さん25/03/29(土) 21:27:26
この世界ではどうなるかね
- 46◆VLlUGaOg9c25/03/30(日) 00:26:57
《夜 シャーレの宿泊部屋》
ナレーション
アトラ・シハースの箱船占領戦に備えた最後の会議が終った後、
会議に出席した生徒たちは翌日の出航に備え、何人かの生徒たちはシャーレの部屋に宿泊することになった
これまでは家に帰る時間も無い先生が時折ベッドだけ借りるだけだった空き部屋は次々と埋まっていき、
シャーレ全体がこれまでにない賑やかさに包まれる中、生徒たちは思い思いの時間を過ごしていた。
ユウカ「そういうことなので、よろしくお願いします。チヒロ先輩」
チヒロ(通信)『私はセミナーじゃなくて、ヴェリタスなんだけどね。
・・・・・・まぁ、コユキ1人に任せる訳にはいかないのは分かるけど』
ノア「とはいえ、ウトナピシュティムの本船の操作はマニュアルの「暗記」なので私の得意分野ですし、
ユウカちゃんもアリスちゃんやケイちゃんが心配で側に居たくて仕方ない見たいですから・・・」
ユウカ「ちょ、ちょっと、ノアっ!?わ、私は別に心配とかじゃあ・・・」
チヒロ(通信)『別に引き受けないとは言ってないよ。
2人が留守にする以上、誰かがミレニアムを守らないといけないのは私も分かってる。
ただ一つだけ約束して、アリスとケイを連れて、2人もちゃんと無事に帰って来るって』
ユウカ「チヒロ先輩・・・。はい。言われなくても、ちゃんとキヴォトスを救って帰ってきます!」
ナレーション
多くの生徒たちが、大任務の前に自らの学園へと連絡を取り、学友と互いに心を交わすことで決意を新たにした。
ウトナピシュティムの本船に乗って、アトラ・シハースの箱船を攻略し、キヴォトスを滅亡から救う。
そして、無事に学園へ・・・元の日常に帰るのだ。その為に、自分たちはここに居るのだと再確認した。
遠足と同じ、生きて帰るまでが冒険なのだから。
- 47◆VLlUGaOg9c25/03/30(日) 00:39:23
- 48二次元好きの匿名さん25/03/30(日) 06:48:01
それはそう
- 49二次元好きの匿名さん25/03/30(日) 15:44:56
ちゃんと帰れるように頑張らないとね
- 50二次元好きの匿名さん25/03/30(日) 23:13:45
せやね
- 51◆VLlUGaOg9c25/03/30(日) 23:26:49
イチカ「いやぁ、何だか大変なことになっちゃったっすね」
サオリ「そうだな。だが、まだ負けたわけではない。抗うための手札もある。そう絶望することはないさ」
ナレーション
サオリはカードを持つ関係で船に乗ることになったカナに代わり、ホスト代理として業務の引継ぎをする為、
イチカはツルギから「他校の生徒たちと共同作戦となる今回、お前の仲裁能力が必要になる」と船員に推薦され、
それぞれの理由でシャーレに残っていた2人は時間を余らせ、休憩室で鉢合わせていた。
イチカ「まぁ、それもそうっすね。ツルギ先輩は言わずもがな、他の学校からも凄く強い人たちが来てくれてますし、
蓋を開けてみたら結構簡単に終るんじゃないっすか?」
サオリ「蓋を開ける・・・?良く分からない例えだが、油断は禁物だ。
・・・・・・あの日、連邦生徒会の会議室に襲撃を仕掛けてきた女に、私は何も出来なかった」
ナレーション
サオリの名誉の為に言わせて貰うが、彼女は決して弱くない。
アリウス分校は長い内戦とベアトリーチェの支配により、生徒全員が死線を越えてきた兵士として鍛えられていた。
そんなアリウス分校・・・今のアリウス分派において、サオリは最強の候補に入るほどの実力者だ。
だからこそ、自分が奇襲されたとはいえ、為す術もなく一瞬にして無力化されたことがサオリにはショックだった。
イチカ「あー・・・まぁ、それはそうっすけど、でも、あんまり悲観のし過ぎも良くないんじゃないっすか?」
サオリ「分かっている。私も、わざわざ士気を下げるようなことを言うつもりは無い。が・・・・・・・・・」
ナレーション
そこまで口にすると、サオリは俯いて、少しの間静かに考え込む。
憂いの影を帯びた瞳が妙に美しく、しかし、どこか儚げにも見える。そんな表情をしていた。
サオリ「・・・イチカ、カナのことを頼めるだろうか?
- 52二次元好きの匿名さん25/03/31(月) 08:05:54
サオリ…
- 53二次元好きの匿名さん25/03/31(月) 14:47:07
大変よなぁ
- 54二次元好きの匿名さん25/03/31(月) 22:26:21
あんまり落ち込みすぎないで
- 55◆VLlUGaOg9c25/03/31(月) 23:00:00
ナレーション
茶化せるような雰囲気ではないことが、イチカには考えなくても良く分った。
サオリ「・・・分かってる。ウトナピシュティムの本船にはミカ様もツルギ先輩も乗るし、カナだって弱くはない。
私が1人心配したところで、どうにも分からないのは分かっている。だが・・・・・・っ!」
ナレーション
ようは、心配なのだ。カナが空に行くのが、自分が護れない場所で、強大な相手と戦いに行くことが不安なのだ。
サオリもカナのことを信頼していない訳では無い。他の頼もしい生徒たちが一緒に行くことも分かっている。
それでも、信じて見送ることは・・・・・・・・・時に自らが死地に向かうよりも苦しい。
サオリ「もう失いたくないんだ。・・・あの日、地下聖堂で見た血塗れの姿を・・・思い出してしまう」
ナレーション
だって、自分の護れないところで、お別れも言えないところで、大切な誰かを失うかも知れないから。
それがサオリにはどうしようもなく寂しくて、怖くて、苦しかった。
イチカ「あー・・・まぁ、大丈夫ですよ!何しろ、今回はツルギ先輩もミカ様も居ますからね。楽勝っす。
・・って、それで安心出来たらいいっすけど、きっと、そういうことじゃあないんですよね・・・」
ナレーション
そんなサオリに何て声を掛けたら良いのか?イチカは頭を悩ませることになった。
- 56二次元好きの匿名さん25/04/01(火) 03:18:33
じれったい
- 57二次元好きの匿名さん25/04/01(火) 09:12:27
最初の処刑されそうになった時の事か
あの時はサオリも助けに行けたけど、今回はそうじゃないもんな… - 58二次元好きの匿名さん25/04/01(火) 16:29:28
保守
- 59◆VLlUGaOg9c25/04/01(火) 22:41:14
ナレーション
キヴォトス人は頑丈であるが故に、どこか死を遠い存在として捉えている節がある。
それでも、あの日、イチカやサオリたちが地下聖堂で見たカナの姿は「死」を感じさせるには十分なモノだった。
血に、肉に、骨に、掠れた弱々しい声に、無意識の内に遠ざけていた「死」が本当にあるものだと理解させられた。
・・・・・・あんなものを見たことがある身としては、イチカだってカナのことが心配になる。だから・・・
イチカ「分かった。それじゃあ、約束しましょう」
サオリ「・・・っ!ありがとう、恩に着る!」
ナレーション
表情が明るく晴れて、サオリは身を乗り出してイチカに近づき感謝した。
頼もしい仲間が、仲間を守ってくれる。たったそれだけのことが、今は何より頼もしかった。
言葉にしなくても、イチカもツルギもミカも守ってくれるだろう。
それでも言葉にして約束してくれたことが、サオリの心にイチカの思いを届かせた。頼もしくて、嬉しかった。
イチカ「でも、ただじゃあ無いです。交換条件、出して良いですよね?」
サオリ「ああ。私に出来る礼なら何でも言って欲しい」
ナレーション
「「何でも」なんて、軽く言ったらダメですよ」と笑うイチカだったが、サオリも考え無しに言った訳ではない。
アリウス解放作戦の時からの戦友を、トリニティでも何かと気に掛けてくれた友人を、イチカを信じていた。
・・・かつてはスクワッドの仲間を守るので手一杯で、アリウス内でも信頼出来た者は僅かだったサオリが、
自らの意思で「かつて恨んだトリニティの生徒」に選択を委ねた。大きな信頼であり、成長である。
イチカ「まぁ、そんなに難しいことじゃないですよ。
トリニティを守っていて欲しい。それで、私たちが帰って来たら「ただいま」って言って欲しいっす」
ナレーション
そしてイチカもまた、サオリの信頼に応えてくれた。
- 60二次元好きの匿名さん25/04/02(水) 00:56:41
みんなで生きて帰ってくるって約束の念押しにもなってるな
- 61二次元好きの匿名さん25/04/02(水) 08:45:47
友達が増えたね
- 62二次元好きの匿名さん25/04/02(水) 16:03:28
おかえり、ただいまって言える関係って良いな
- 63◆VLlUGaOg9c25/04/02(水) 23:21:52
ミカ「えーっと・・・これで映ってる?」
セイア(通信)『ああ。心配しなくても、ちゃんと繋がっているよ』
ナレーション
一方、こちらはカナとミカのペア。2人はシャーレから宛がわれたミカの部屋でナギサたちと通信を取っていた。
シャーレの宿泊室はトリニティの豪華な部屋に慣れたミカからすると手狭で物も少なく感じられたが、
かつてのアリウスや地下牢での生活を知るカナからすれば、ベッドもエアコンも照明も全て揃っていて過ごし易い。
ミカもカナも利用したことはないので気がつかなかったが、部屋のコンセプトはビジネスホテルに良く似ていた。
ナギサ(通信)『ミカさん、カナさん、調子の方はどうでしょうか?
大規模作戦を控えた中、重圧と慣れない環境で大変だと思いますが・・・』
ミカ「あはは!平気だよ、ナギちゃん。
確かにちょっと手狭だけど寝るだけなら問題ないし、先生のお陰かゲヘナの連中も大人しいしね」
いや、あれはフウカ先生とヒナ委員長が睨みきかせてくれてるお陰だと思う。
ナレーション
あの治安最悪でお馴染みのゲヘナの生徒たちでさえ、今夜ばかりは大人しかった。
ミカが言うように先生の手前だからでもあるし、カナが言うようにヒナやフウカのお陰でもあるし、
単純に各学園との合同作戦なので比較的頭のネジが残っているメンバーが選出されているお陰でもある。
そうした様々な要因が重なって、基本的にはゲヘナ嫌いのミカも平穏な一時を過ごすことが出来ていた。
セイア(通信)『・・・個人的には、君がゲヘナの生徒と揉め事を起こさないかが1番心配なのだがね』
ナギサ(通信)『確かに、また「角付き」だ等と言って突っかかりに行かないか心配です』
ミカ「ちょっと!?流石にそこまで空気読めてない訳じゃないじゃんね!」
ナレーション
ミカは怒ったが、残念ながら当然である。 - 64二次元好きの匿名さん25/04/03(木) 07:04:01
フウカはすっかりアリウスの先生呼びが定着したな
- 65二次元好きの匿名さん25/04/03(木) 13:09:06
フウカはアリウスの新たな伝統の呼び水となってくれた偉大な存在だからな
- 66二次元好きの匿名さん25/04/03(木) 21:58:56
ミカって感情の人なんだもの…
- 67◆VLlUGaOg9c25/04/03(木) 22:43:48
ミカ「・・・まぁ、確かに思うところはあるよ?
ゲヘナが嫌いなのはそうだし、なのにカナちゃんはゲヘナの友だち作ってるし、正直複雑には思ってる」
ミカ「・・・たださ、アリウスのみんなと出会って、カナちゃんと友だちになって、ずっと近くで見てきて思ったんだ。
良く考えたら、私の「これ」も、ただの貰い物だったのかな?って」
ナレーション
ミカはゲヘナが嫌いである。それはトリニティとゲヘナの間に続く因縁であり、本来はミカのものではない。
ただ、ミカは古くからトリニティに連なる由緒正しい家系に生まれ育った。ゲヘナへの憎しみを教えられて育った。
かつてのアリウスと同じだ。教えられた通り、そうであると刷り込まれた通り、ゲヘナへの嫌悪感を募らせた。
ミカ「だからってゲヘナが好きになった訳じゃないよ?理由は兎も角、嫌いなモノは嫌い。
ゲヘナ嫌いの子は他にも多いから、ティーパーティーとしても1人くらいそういう子の味方が必要だしね」
ミカ「・・・ただ、まぁ、プライベートだけなら「ゲヘナ」じゃなくて、同じ生徒として接してみても良いかな?って」
ナレーション
ミカは感情の人だ。嫌いなモノは嫌いだし、好きなモノは好き。幾ら論理的でも簡単に考えは変えられない。
けれど、感情の人だからこそ、1度生じた疑問を放っておくこともしない。自分の心に嘘はつけない。
だから、ミカはもう他人の怨みに振り回されないように「ゲヘナ」という括りで縛るのを止めたのだ。
ミカ「・・・あの、なんで黙ってるの?何か言ってよ」
ナギサ(通信)『す、すいません。つい驚いてしまって・・・・・・立派になりましたね。ミカさん』
セイア(通信)『ああ、本当に驚いたよ。人とは成長するモノだね』
ミカは偉いな!凄い!
ミカ「バカにしてるのかなぁっ!?」
ナレーション
心からの称賛を受け取ったにも関わらず、ミカは何だか小馬鹿にされた気分だった。
- 68二次元好きの匿名さん25/04/04(金) 06:37:17
仲良いね
- 69二次元好きの匿名さん25/04/04(金) 12:21:00
気のおけないやり取り可愛い
- 70二次元好きの匿名さん25/04/04(金) 20:26:01
ほんとに偉いよミカ
我が身を省みるのって難しいからね - 71◆VLlUGaOg9c25/04/05(土) 00:56:10
ナギサ(通信)『いえ、本気で褒めているのですよ?人間、誰しも自分の間違いは認めたくないものです』
セイア(通信)『ああ。特に私たちのような自分を「そこそこ賢い」と思っている人間はね。
・・・ミカ。君は私たちでは出来ないだろうことをやったんだ。それは友として誇らしいことだよ』
ナレーション
ミカは何だか子ども扱いされたようで、むすっと不機嫌さをアピールしていたが、彼女は本当に成長した。
「今まで」を顧みて、自分の信じてきたことを考え直すのは難しい。自身の「過去」を否定するに等しいからだ。
後悔回避バイアス。今まで自分がしてきたことを「後悔」したくない心理が、無意識の内に逃げへと誘導するのだ。
けれどミカは逃げなかった。切欠があったとはいえ、自ら「後悔」に立ち向かった。とても勇敢で、偉大なことだ。
ミカ「本当かなぁ・・・」
ナレーション
ミカは尚も訝しげに、映像越しにナギサやセイアへとジトッとした視線を向ける。
目の前の友人たちは悪い女では無いが、どこか自分を幼い子どものように見ている節があるとミカは知っていた。
今回も体格と筋力ばかり立派に育ったゴリラが急にマトモなことを言い出した。とか、
失礼なことを考えいるんじゃないかと疑い・・・・・・・・・やがて諦めたように目を閉じて息を吐いた。
ミカ「まぁ、ここまで踏ん切り付けられたのはあの子・・・もう1人の私のお陰かな?
あの子が言っていることが本当なら、私もああなるかも知れなかったってことだし、それを考えたら・・・ね」
ナレーション
ミカの脳裏に浮かぶのは、自身と同じ聖園ミカを名乗った謎多き少女。
そうなるかもしれなかった、或いはそうなるかもしれない、自身の可能性の1人。
彼女の存在は、ミカにとって自身を顧みる良い機会になったらしい。
- 72二次元好きの匿名さん25/04/05(土) 08:06:55
そこの決着もどうなるかなぁ
- 73二次元好きの匿名さん25/04/05(土) 15:05:43
中々素直には受け取れないよね
- 74二次元好きの匿名さん25/04/05(土) 23:30:48
あんな姿になった自分を見つめ直して顧みるのは中々出来ない事だろうな
- 75◆VLlUGaOg9c25/04/05(土) 23:50:06
・・・サオリを恨んでいたってことは、きっと、あのミカをあんな風にしたのは・・・アリウスだ。
ナレーション
もう1人の聖園ミカに対して、複雑な思いがあるのはミカだけでは無い。
最初の襲撃では一目しか会っていないカナも、サオリに憎しみを向けていたという話を聞けば色々と想像が湧く。
元々、ベアトリーチェは私たちにトリニティへの「怨み」を教えていた。
ベアトリーチェだけじゃない。お姉ちゃんは穏健派だったけど、ずっと昔から「怨み」はアリウスに根付いてた。
ナレーション
脈々と受け継がれてきた、長い長い怨嗟の歴史が「ベアトリーチェ」という怪物を生み出したことを、
アリウス分派のホストであるカナは忘れてはいけない。ずっと、今でも覚えている。
だからこそ、その「怨み」の行き着く果てに何が起こり得たのか?想像するのは難しくなかった。
きっと、あのミカの世界の私たちは止まれなかったんだ。
教えられた「怨み」を自分のモノだと思い込んで、虚しさの責任を押しつけて、色んな人を傷つけたんだ・・・と思う。
ナギサ(通信)『・・・だとしても、それは向こうの世界のアリウスがやったことです。カナさんたちの責任ではない』
セイア(通信)『そうだね。幾ら別の世界の自分たちだからと言って、君たち自身では無い』
ナレーション
それは「あまり気に病まないで欲しい」というナギサたちの優しさだったが、カナは甘えるつもりは無かった。
確かに別の世界のアリウスは、この世界のカナたちとは無関係。そんなのはカナにも分かっている。
・・・確かに別世界の私たちは、私たちじゃない。でも、だから、出来ることがあると思う。
怨みの連鎖を断ち切れた私たちだから、言えることがある・・・・・・筈だ。
ナレーション
けれど、それは「怨み」に取り込まれた誰かに、手を伸ばさない理由にはならない。
- 76二次元好きの匿名さん25/04/06(日) 08:50:23
色々乗り越えてきたカナ達だから言えることだね
- 77二次元好きの匿名さん25/04/06(日) 16:58:35
大分変わっちゃってるからなぁこの世界は
- 78◆VLlUGaOg9c25/04/06(日) 23:26:21
ナレーション
一方その頃。シャーレの大広間には何人もの生徒たちが集まって、顔を突き合わせていた。
元より外交やシャーレの当番、虚妄のサンクトゥムの攻略等で顔を合せていた各校の生徒会の面々と違い、
ウトナピシュティムの本船のクルーとして急に呼び出された一般生徒たちは互いに面識の無い者も多い。
なので、都合の付く面々が集まって、船出前の顔合わせをしよう。という話になったのだが・・・・・・
ハナコ「うふふ・・・」
ノドカ「・・・あの、なんで、あの人はスクール水着を?」
ヒフミ「あ、あはは・・・」
ナレーション
約1名が披露した水着姿によって場は奇妙な緊張感に包まれていた。
暫くの間続いた沈黙を意を決したノドカが打ち破り、ようやく会話が始まったばかりだった。
ハナコ「いえ。そう大したことはありません。これはそう、私の覚悟なのです」
フウカ「・・・なにが?」
アリス「何か凄い雰囲気を感じます。もしかして、あの「危ない水着」には何か特殊な効果があるのですか!?」
ケイ「王女。従者として、友人として断言します。そんなものはありません」
ナレーション
何人かの生徒は既に己の失敗を悟り、どうやってこの場を抜け出すかを考え始めた。
しかし、結局、月に見守られた少女たちの奇妙な会合は、浦和ハナコの「覚悟」の話は夜遅くまで続くのだった。 - 79◆VLlUGaOg9c25/04/06(日) 23:29:18
- 80二次元好きの匿名さん25/04/07(月) 03:23:31
ハナコェ…
この世界でもやったのか - 81二次元好きの匿名さん25/04/07(月) 10:07:28
会話は難しいね
- 82二次元好きの匿名さん25/04/07(月) 18:16:37
最終決戦か…
- 83◆VLlUGaOg9c25/04/07(月) 22:41:47
ナレーション
さぁさぁ、皆様お立ち会い。いよいよ、これより始まるは大空への旅路。
勇敢なる少女たちが乗り込むは、長き時を超えて砂の寝床より起き上がった古代戦艦。
"これがオペレーターの衣装!!"
ユウカ「・・・これ、本当に必要なの?」
ノア「まぁまぁ、良いじゃないですか。先生が喜んでますから」
ナレーション
という訳で、宇宙戦艦のお約束。寝起きの船を導く、白き衣装を身に纏ったオペレーターたちのお披露目。
バカみたいに分厚いマニュアルを見事暗記し、オペレーターの座を勝ち取った10人の晴れ舞台?である。
ミレニアムサイエンススクールより早瀬ユウカ、生塩ノア。
ハナコ「うふふ♡宇宙戦艦のオペレーターですからね。お約束。というものです」
キキョウ「・・・まぁ、それで士気が上がるのなら服の一着ぐらいは別に良いけれど・・・」
アヤネ「あの・・・これは「宇宙戦艦」ではないという結論だった気がしますが・・・」
ナレーション
トリニティ総合学園より浦和ハナコ。
百鬼夜行連合より桐生キキョウ。
アビドス高校より奥空アヤネ。
アコ「・・・そもそも、誰の要請ですか?それ」
カヨコ「なんで私まで・・・」
ナレーション
ゲヘナ学園より天雨アコ、鬼方カヨコ。
それに連邦生徒会の七神リン、岩櫃アユム、由良木モモカの3人を加えた計10人。
彼女たちが栄えある?ウトナピシュティムの本船のオペレーターたちである。 - 84◆VLlUGaOg9c25/04/07(月) 22:46:18
- 85二次元好きの匿名さん25/04/08(火) 06:28:09
選択肢が増えたわけだし妥当
- 86二次元好きの匿名さん25/04/08(火) 14:00:06
こういうメンバーの違いもIFの醍醐味よね
- 87二次元好きの匿名さん25/04/08(火) 21:08:29
キキョウとノアのオペレーター服いいなぁ
- 88◆VLlUGaOg9c25/04/08(火) 22:59:07
ヒマリ(通信)『ふふふ・・・さて、そちらの衣装には着用者のサポートをする様々な機能が備えられています。
着用者の健康管理機能に加えて、通信、計算補助、タイマー、Bluetooth・・・・・・』
ウタハ(通信)『他にも防弾・防炎・防爆・防水・自動染み抜きなどなど・・・・・・様々な機能が盛り沢山の専用装備だ』
カヨコ「・・・これ、私たちじゃなくて実働隊に着て貰うべきじゃない?」
ハナコ「まぁまぁ♡私たちには時間が無いのですから、細かいことは気にしないで本題に移りましょう」
ナレーション
カヨコが困惑しながらツッコミを入れるが、残念ながら衣装はオペレーター役に合せて製作した10着しかない。
サイズが違う以上は貸し出しという訳にもいかず、ハナコの言う通り一刻を争うので追加製作も間に合わない。
結局、衣装はオペレーターの生徒たちが着る他なかった。
リン「・・・そうですね」
ナレーション
リンは諦めたかのように1度目を瞑ると、再び、今度は真剣な鋭い眼差しを開いて眼鏡の位置をクイッと直した。
リン「今から私たちは「ウトナピシュティムの本船」に乗り、
キヴォトス上空75.000メートルにある「アトラ・シハースの箱舟」に突入・・・箱船を占領、機能を無力化し、
――ーその上で、無事日常に戻らなくてはなりません」
ナレーション
見渡してみれば、緊張に顔を強ばらせる者は居ても、怯えて身体を震わせる者はいない。
先生も、オペレーターも、実働隊も、地上組も・・・・・・・皆、多かれ少なかれ覚悟を決めて仕事に臨んでいた。
役目を果たし、キヴォトスを救い、帰るべき学園に帰る。その為に旅立つのだと、彼女たちは分かっていた。
- 89二次元好きの匿名さん25/04/09(水) 03:49:09
おぉ流石…Bluetooth?
- 90二次元好きの匿名さん25/04/09(水) 09:13:27
オペレーターは準備万端だな
- 91二次元好きの匿名さん25/04/09(水) 09:32:21
あ、自爆機能はないのね
- 92二次元好きの匿名さん25/04/09(水) 15:20:25
自動染み抜き良いな
- 93◆VLlUGaOg9c25/04/09(水) 23:08:10
リン「それでは、点呼を取ります」
ナレーション
まるでカウントダウンを刻むように、静かなリンの声が1人づつ船員たちを数えていく。
先生、自身を含めたオペレーターたち、名前を呼ばれた者たちは改めて気を引き締める。
リン「「ウトナピシュティムの本船」の発進後、地上で航空管制および技術支援を担当するのは――
ミレニアムサイエンススクールヴェリタス、明星ヒマリ、各務チヒロ、音瀨コタマ、小鈎ハレ、小塗マキ。
そしてートリニティ総合学園のアリウス分派、月雪リア」
ナレーション
戦うのは船に乗る生徒たちだけではない。送り出す側も、またそれぞれの戦場に立っている。
これから、彼女たちは自身が灯台となって道行きを照らし、船を目的地まで先導しなくてはならない。
ウトナピシュティムの本船へと乗り込んだ同胞たちにとって、彼女たちこそがセントエルモなのだから。
チヒロ(通信)『正直、上空75.000メートル先まで航空管制のアナウンスをするなんて流石に初めてだけどね・・・・・』
ヒマリ(通信)『心配要りませんよ、チーちゃん。
この超天才病弱美少女が指揮を執るのですから、大船に乗った気持ちで任せてくれて構いません』
チヒロ(通信)『・・・まぁ、珍しくウチの部長も居るしね。何とか、やってみるよ』
ナレーション
そういう意味では、何時通りを崩さず、自信満々に胸を張るヒマリの言葉は頼もしい響きを持っていた。 - 94二次元好きの匿名さん25/04/10(木) 06:00:21
さすヒマ
- 95二次元好きの匿名さん25/04/10(木) 12:34:20
大丈夫って言ってくれると安心感増すよね
- 96二次元好きの匿名さん25/04/10(木) 19:01:38
保守
- 97◆VLlUGaOg9c25/04/10(木) 22:58:22
リン「箱舟への突入後、襲撃に備え占領戦のサポートを行うのは――
ートリニティ総合学園の聖園ミカ、神子柴カナ、仲正イチカ」
ミカ「はーい☆まぁ、任しといてよ、私強いからさ」
ナレーション
トリニティから実働部隊として選出されたのは3人。
トリニティの最終兵器ミカ、カードを持つカナ、他学園との折衝能力を期待されたイチカの3人だ。
他にも最強の正義実現委員長ツルギや前線を張れる救護騎士団長ミネ等も候補には挙がったのだが、
船の定員やトリニティ自治区の防衛、他学園との兼ね合いも考慮した結果、実働隊は3人に収った。
リン「現在、この船唯一の武装であるレールガンの所有者、ミレニアムサイエンススクールの天童アリス、ケイ。
更に対箱舟における「観測手」として、レッドウィンター連邦学園の天見ノドカ。
―そして、C&Cの美甘ネル、ゲヘナ学園の空崎ヒナ、アビドス高校の小鳥遊ホシノ。
以上、トリニティの3名を含めた9名が占領戦のサポートを行います」
ホシノ「よろしくね~」
ナレーション
そしてトリニティ以外の学園からは、これでもかというほどに強い面子が集まった。
シャーレの先生もお墨付き。まず間違いなく、キヴォトス全体で「最強」の候補に上がる生徒たちである。
詳しい者がその面子の名を聞けば、一体何に喧嘩を売るつもりなのか?と戦慄すること間違いない。
リン「箱舟内での長距離輸送を担当するのはトリニティ総合学園の阿慈谷ヒフミ、ゲヘナ学園の愛清フウカ。
フウカさんには、皆さんの食事も担当して貰います」
フウカ「任せて下さい。何時もに比べたら、このくらい大した仕事じゃありません!」
- 98二次元好きの匿名さん25/04/10(木) 23:28:10
カナちゃんは直感力めっちゃ高いからな
一緒に居ると安心感が違う - 99二次元好きの匿名さん25/04/11(金) 06:42:56
フウカ重要だな
- 100二次元好きの匿名さん25/04/11(金) 12:18:28
頼もしい
- 101二次元好きの匿名さん25/04/11(金) 12:50:19
アビドス組は全員で来て欲しかったなぁ
- 102二次元好きの匿名さん25/04/11(金) 21:05:29
まぁ今回は相手の世界線も違うしね
- 103◆VLlUGaOg9c25/04/11(金) 23:47:31
代理モブ「今回はシロコが攫われてない上に、他の学園も本腰入れて協力していますからね。
アビドス勢が全員船に乗り込む理由がありません。・・・・・・美食研?警備に追い返されました」
代理モブB「というか、原作の占領戦実働班の面子が、「乗りたい人を乗せました」みたいなメンバーなのが、
1は少し気になってましてね。美食研はテロリストなのに、リンちゃん何で普通に受け入れてるの?」
代理モブC「アビドス廃校対策委員会、ゲーム開発部、美食研究会ですからね。
体制側の組織が身内捜しに来たアビドス勢しか居ないの可笑しくないです?」
リン「・・・それでは、先生。お願いします」
ナレーション
さて、船員の点呼が終ったとなれば、後はもう出港するだけなのだが・・・・・・それには少し工夫が要る。
ウトナピシュティムの本船は理外の技術で建造された古代の兵器。その機動も容易なモノではない。
本来はサンクトゥムタワーの力を使い起動するのだが、タワーが無い今、この兵器を起動出来るのは・・・
”うん、任せてよ”
ナレーション
ウトナピシュティムの本船と同じく、理外の技術で造られた「シッテムの箱」に他ならない。
つまり、シッテムの箱の所有者でなければ、先生でなければ船は動かせないのだ。
”・・・アロナ、お願い”
ナレーション
手元のタブレットに向けて、何かを決意を固めたような顔を見せる先生の姿が見えた。
- 104二次元好きの匿名さん25/04/12(土) 02:00:07
原作と同じ流れになるなら、次の見せ場はアリスが玉座起動するあたりかな。楽しみ。
- 105二次元好きの匿名さん25/04/12(土) 10:42:01
アロナの出番だ
- 106二次元好きの匿名さん25/04/12(土) 18:38:16
いよいよそろってまいりました
- 107二次元好きの匿名さん25/04/12(土) 23:18:02
突撃か?
- 108◆VLlUGaOg9c25/04/13(日) 00:26:26
ナレーション
先生がウトナピシュティムの本船を起動しようとすると、同時に黒いカードを持つ手が重なった。
”カナ!?一体何して・・・”
いや、何か先生が凄い覚悟決めてるように見えたから、大変なことがあるなら少しでも助けになりたくて・・・・・・
ナレーション
ゲマトリアの連中が言うにはカナが持つカードは、使ってもカナたちに危害が及ぶことはない。
ゲマトリアを「子どもを利用する悪い大人」として嫌う先生でも、黒服のその言葉自体は信用していた。
だが、同時に先生は「黒服は嘘をつかないが、相手を騙す」こともまたよく知っている。
・・・えっと、何か、間違えてたか?
ナレーション
けれど、純粋に自分を心配して、助けようと手を伸ばしてくれた可愛い生徒を振り払うことは、先生には出来ない。
もし、カナのこの選択が裏目に出たとしても、何かがあった時は”先生”として私が責任を取ろう。
”・・・カナ、1つ聞きたいことがあるんだ”
・・・?何が聞きたいんだ?
”「二つ目の古則」についてなんだけど”
こそく・・・こそく?すまない、先生。そのフタツメノコソク?が分からない。
ナレーション
こてんと可愛らしく首を傾げた生徒に、先生は”内心カナらしいな”と若干失礼なことを考える。
けれど、そんなカナのお陰で、二つ目の古則の答えは見つけられた気がした。
- 109◆VLlUGaOg9c25/04/13(日) 00:31:04
- 110二次元好きの匿名さん25/04/13(日) 07:50:52
かわいい、だけじゃすまないよな
- 111二次元好きの匿名さん25/04/13(日) 14:09:40
古則は難しい
- 112二次元好きの匿名さん25/04/13(日) 22:47:39
こういう事は変に理屈を捏ねるよりも感じたままを受け入れたりする方が良かったりするのかな?
- 113◆VLlUGaOg9c25/04/13(日) 22:49:06
”・・・いや、大丈夫だよ。
(確かに、私たちはみんな他人だ。心の底から全てを分かり合うなんて、出来ないのかも知れない。だけど・・・)
”ちゃんと、答えは見つけられたから”
ナレーション
先生はそう笑ってみせると、ウトナピシュティムの本船の起動装置にシッテムの箱を繋げる。
勿論、そのシッテムを持つ先生の手の上には、黒いカードを持つ手が重なっていた。
アコ「メインパワーの起動を確認しました!」
アユム「メインコントロールの稼働、完了・・・・・・!」
モモカ「各エリアの通信システム、演算システムのチェック、オールクリア」
キキョウ「エンジンシステムもオールクリア。何時でもいけるわ」
ハナコ「多次元解釈システムのチェック、クリア。オールクリアです!」
ノア「管制システムチェック、オールクリア!・・・・・・これで全ての機能を使えます」
ナレーション
船の目覚めを告げるように、オペレーターたちから次々と報告の声が上がる。
動力が動き出し、ウトナピシュティムの本船のあらゆる場所にエネルギーが回り、全ての機能が復活する。
ユウカ「発射準備、完了!何時でも行けます、先生!」
リン「先生、発信の号令をお願いします・・・!
ナレーション
旅立ちの時だ。
これから1人の大人と沢山の生徒たちを乗せた船は上空75.000メートルを目指す。
キヴォトスを救う、帰るべき日常を護る為の、長くて短い冒険の旅が・・・今、始まる。
”宇宙戦艦「ウトナピシュティム」、発信!!”
- 114二次元好きの匿名さん25/04/14(月) 06:40:37
やったぜ
- 115二次元好きの匿名さん25/04/14(月) 12:41:19
最終決戦だ
- 116二次元好きの匿名さん25/04/14(月) 21:41:31
ドキドキだね
- 117◆VLlUGaOg9c25/04/14(月) 22:41:17
ナレーション
ウトナピシュティムの本船が飛び立った瞬間、時間にしてみればほんの僅か刹那の合間、カナは夢を見ていた。
気がつくと全然が居ない電車に揺られていて、初めて会う白い服の人と向かい合って座っている。不思議な夢だ。
白い服の人「・・・・・・私のミスでした。私の選択、そしてそれによって招かれたこの全ての状況」
すまない、良く分からない!けど、それより早く治療しないとダメだと思う!
ナレーション
白い服の人は怪我をしていた。
ただ銃弾の当たりどころが悪かったとか、そんな些末なレベルの怪我ではない。血塗れの重傷であった。
なのに白い服の人は落ち着き払って何でも無いように振る舞っていて、カナだけが慌てていた
白い服の人「・・・いえ、大丈夫です。どの道、もう治ることはありませんから」
それ、絶対大丈夫じゃない!
ナレーション
白い服の人の言う「大丈夫」はどう考えても大丈夫ではなく、カナは自分の服を破って包帯にしようとした。
白い服の人「・・・神子柴カナさん」
ナレーション
その手を、白い服の人は優しく掴む。カナが白い服の人の方を見ると、表情は優しげだが決意の色に染まっていて、
かつて別れた「お姉ちゃん」と同じ、自らの最期を覚悟した人の目をしているのが一目で分かってしまう。
カナの腕から力が抜けて、悲しみを抑えながら白い服の人へと向き合った。
白い服の人「この邂逅は、先生のシッテムの箱とカナさんのカードが同時に使われたことで発生した一時的な混線。
きっと、先生と同じように、カナさんも私と出会ったことは忘れてしまうでしょう」
- 118二次元好きの匿名さん25/04/15(火) 06:01:40
思わぬ出会い
- 119二次元好きの匿名さん25/04/15(火) 12:38:29
助けられないって悲しいなぁ
- 120二次元好きの匿名さん25/04/15(火) 20:39:31
しかしなんだかんだ長く続いてるなあ
- 121二次元好きの匿名さん25/04/15(火) 20:40:11
一瞬の例外か
- 122◆VLlUGaOg9c25/04/15(火) 21:50:03
代理モブ「最初は1発ネタのつもりだったんですけどね。ここまで来たら、やれるだけやってみようと思います」
白い服の人「それでも構いません。何も覚えて無くても、きっと貴女はもう大丈夫」
ナレーション
カナは知るよしもないが、白い服の人はずっとキヴォトスを見てきた。
アビドスも、ミレニアムも、アリウスも、トリニティも、SRTも、生徒たちの戦いをずっと見続けてきた。
だからこそ、確信出来た。
数多くの仲間をとともに、新しい居場所を得て、過去の傷と向き合い答えを得た。カナはきっともう、大丈夫だ。
白い服の人「大事なのは選択。貴女にしか出来ない、貴女が積み上げてきた経験から得られた答え」
白い服の人「兵士として、ホストとして、生き残った者としての責任と義務。その延長線上にあった、貴女の選択。
そして、それが意味する心延えも。だから、カナさんどうか・・・・・・」
ナレーション
あの日、アリウスで白い服の人は美しいものを見た。
先生という「主人公」のテクストに頼らない、生徒たちが自ら「主人公」となり、新たなる物語を紡ぎ上げる。
キヴォトスというテクスチャの理を超越し、新たなる形の奇跡を描き上げた、青春の物語を。
白い服の人「この、絆を――キヴォトスで紡ぎ上げた思い出・・・・・・過ごしてきたすべての日々を・・・・・・どうか・・・・・」
- 123◆VLlUGaOg9c25/04/15(火) 23:35:50
ナレーション
言い終えるよりも早く、カナの手が白い服の人の手を包んで持ち上げた。
まさか触られると思っていなかったのか?白い服の人が目を見開くと、その先ではカナが笑っている。
何時か見たような、何の陰りも感じさせない満面の笑みだった。
何にも覚えてなくても、ここで白い服の人と会って、話して、こうして触れ合ったことはなくならない。
だから、大丈夫だ!白い服の人との思い出も、私が一緒に未来に連れて行く!
白い服の人「カナさん・・・」
それに、あれだ!あの、前にサオリたちと寮の大広間で観た映画で言ってた!
「一度あったことは忘れないものさ、思い出せないだけで」・・・らしい!
だから、もし白い服の人のことが思い出せなくなっても、きっと、また思い出せる・・・・・・筈だ!
ナレーション
全部、本気で言っているのだと白い服の人は良く分かっていた。
カナは本気で、忘れて・・・いや思い出せなくなっても、ここであったすべてを未来に連れていくつもりだ。
カナは本気で、ここであったすべてを何時か思い出せる日が来ると信じている。
この電車が何なのか知らないから口に出来る楽観。と言ってしまえば、それまでなのかもしれないが・・・・・・
白い服の人「・・・カナさんはきっと、何度でも、同じ状況で同じ選択をするのでしょう」
ナレーション
例えすべてを知っていても、先生と同じように、カナは何度でも自らの答えを選び取る。
白い服の人「・・・カナさん。どうか、先生をお願いします。
私が信じられる貴女たちなら、きっとこの捻れて歪んだ終着点とは、また別の結末を・・・・・・」