【クロス注意】幼馴染inNRC Part12

  • 1125/03/22(土) 11:45:04

    ここだけデクとかっちゃんがツイステのNRCにトリップしちゃった世界


    【以下前提条件】

    >トリップ地点は入学式の棺桶の中

    >トリップしたのは最終決戦後の二人

    >個性はかっちゃんだけ使える(反動で心臓ダメージあり)

    >監督生はデク


    ※前スレ含めてこのスレの内容とSSは無断転載禁止です!

    スレ内でSSとかWriteningに書いてくれるのは歓迎です

  • 2125/03/22(土) 11:45:56

    前スレ

    【クロス注意】幼馴染inNRC Part11|あにまん掲示板ここだけデクとかっちゃんがツイステのNRCにトリップしちゃった世界【以下前提条件】>トリップ地点は入学式の棺桶の中>トリップしたのは最終決戦後の二人>個性はかっちゃんだけ使える(反動…bbs.animanch.com

    ▼プロローグ

    【クロス注意】ここだけ|あにまん掲示板ここだけデクとかっちゃんがツイステのNRCにトリップしちゃった世界【以下前提条件】>トリップ地点は入学式の棺桶の中>個性は dice1d3=@2 (2)@1. 二人とも使えない2. かっち…bbs.animanch.com

    ▼第一章

    【クロス注意】幼馴染みinNRC|あにまん掲示板ここだけデクとかっちゃんがツイステのNRCにトリップしちゃった世界【以下前提条件】>トリップ地点は入学式の棺桶の中>トリップしたのは最終決戦後の二人>個性はかっちゃんだけ使える(反動…bbs.animanch.com

    ▼第二章

    【クロス注意】幼馴染inNRC Part3|あにまん掲示板ここだけデクとかっちゃんがツイステのNRCにトリップしちゃった世界【以下前提条件】>トリップ地点は入学式の棺桶の中>トリップしたのは最終決戦後の二人>個性はかっちゃんだけ使える(反動…bbs.animanch.com

    ▼第三章

    幼馴染inNRC Part5|あにまん掲示板ここだけデクとかっちゃんがツイステのNRCにトリップしちゃった世界【以下前提条件】>トリップ地点は入学式の棺桶の中>トリップしたのは最終決戦後の二人>個性はかっちゃんだけ使える(反動…bbs.animanch.com

    ▼第四章

    【クロス注意】幼馴染inNRC Part8|あにまん掲示板ここだけデクとかっちゃんがツイステのNRCにトリップしちゃった世界【以下前提条件】>トリップ地点は入学式の棺桶の中>トリップしたのは最終決戦後の二人>個性はかっちゃんだけ使える(反動…bbs.animanch.com
  • 3125/03/22(土) 11:46:09
  • 4125/03/22(土) 11:46:21

    素敵な支援SS様

    ……ノーコメントで | Writeningパソスト風じゃなく普通のSSです。お目汚し失礼。 登場人物:出久+勝己+グリム+エース+デュース+ジャック+エペル+セベク ふわっと頭に浮かんだワンシーンを書きたいなと思ったらなんか長くなってしまいました…writening.net
    なんてことない普通の日 | WriteningパソストではなくSSです、ご注意を。 登場人物 トレイ・クローバー 尾白猿夫 砂藤力道(名前のみ) 個人的に尾白くんとトレイ先輩は仲良しであってほしいなぁと思う今日この頃。 アリアーブ・ナーリヤとかいっ…writening.net
    マスターシェフ〜地獄のニラ〜 | Writening登場人物:轟、リリア、砂藤、トレイ、エペル、デュース、エース、麗日、峰田、青山、学園長 ちょっと体調不良表現あるので苦手な方要注意、なんでも許せる人向け 「食」それは生命の礎。 清き海。強き山。優…writening.net
    もぎもぎパニック!ドアと化したフロイド | Writening登場人物:フロイド、峰田、緑谷、エース、デュース、ラギー、カリム、ジャミル、ルーク、リドル、セベク、飯田、イデア、オルト キャラエミュ間違い、キャラ崩壊あるかも なんでも許せる人向け 「おーいエ…writening.net
    ドキッ!漢だらけの新メニュー決定戦〜飯テロもあるよ〜 | Writening登場人物:アズール、ジェイド、フロイド、ラギー、青山、飯田、上鳴、切島、瀬呂、砂藤(回想のみ) キャラエミュ間違いあったらスマソ、後半キャラ崩壊あるかも 何でも許せる人向け 「……皆さんが集まっていた…writening.net

    素敵な支援イラスト様は各スレにて!

  • 5二次元好きの匿名さん25/03/22(土) 11:46:35

    新スレ乙〜

  • 6125/03/22(土) 11:49:34

    現在好感度まとめ
    【出久→相手/相手→出久、 爆豪→相手/相手→爆豪】
    *グリム 91/97、 58/47 
    *エース 100/100、 42/88
    *デュース 100/100、 100/93
    *リドル 61/70、 57/94
    *ケイト 99/100、 85/87
    *トレイ 30/27、 60/40
    *レオナ 2/65、 36/16
    *ラギー 14/59、 72/21
    *ジャック 83/100、 52/91
    *アズール 72/93、 73/21
    *ジェイド 26/65、 21/43
    *フロイド 8/33、 28/69
    *カリム 77/100、 49/86
    *ジャミル 84/66、 47/62
    *ヴィル 92/69、 74/85
    *ルーク 92/23、 55/97
    *エペル 67/15、 79/87
    *マレウス 75/30、 -/-
    *リリア 39/36、 45/21
    *クルーウェル 56/-、 13/-
    *トレイン 78/-、 36/-
    *バルガス 16/-、 6/

  • 7125/03/22(土) 11:55:42

    前回までのざっくりあらすじ

    片やグリムの付き合い、片や中庭で出会ったヴィルに煽られて見返すために『ボーカル&ダンスチャンピオンシップ(VDC)』のオーディションを受けた二人。勝己は尖ったデスボイスを武器に選考を勝ち抜いた。
    喜びも束の間、学園長がオンボロ寮を選抜メンバーの合宿所にすると言い出した。急な話だが、承諾した場合の好待遇に心がぐらついて、二人は寮を提供することにしたのだった。
    寮まぜこぜのカオス合宿が今始まる――!

  • 8125/03/22(土) 12:02:15

    >>6

    改めてみると出久→ポム三年生への初期好感度高いですね

    5章だとアレですが、二人とも頼れる先輩なのでそのあたり無意識に見抜いている感じでしょうか


    あとエペル→出久が低くてエペル→爆豪が高いのはあからさまで面白いですね

    「バクゴークン、いかつくて強そうでたげカッケェ!」「ミドリヤクンはなよっこぐて男らしくねぇべな」って感じ

  • 9二次元好きの匿名さん25/03/22(土) 12:04:07

    好感度上昇が来ないからずっと放置されてる出久→レオナの好感度が低すぎて笑っちゃうんだ
    まあ隙あればサボるし不正も辞さないからしょうがないけど
    6章でちょっとは巻き返せるといいね

  • 10二次元好きの匿名さん25/03/22(土) 12:04:59

    立て乙です!

  • 11二次元好きの匿名さん25/03/22(土) 12:06:38

    >>8

    分かる、エペルからの分かりやすい

    まあ脱いだらそこそこヤバいんですがね、鍛え方も傷も……

  • 12二次元好きの匿名さん25/03/22(土) 18:48:03

    > 勝己は尖ったデスボイスを武器に選考を勝ち抜いた。

    ここほんま草

  • 13125/03/22(土) 21:38:56

    そして、合宿初日。

    「ボンジュール!ミドリヤくん、バクゴーくん、グリムくん」
    「いらっしゃいませ!」
    「民泊じゃねンだわ。もてなしとか期待すンじゃねーぞ」

    最初にやってきたのはポムフィオーレの三人だった。
    ヴィルは古めかしいオンボロ寮の内装が珍しいのか、棚の上にひとさし指を滑らせた。客人が来るということで一応掃除を念入りしたので、指先に埃はついていない。

    「これから4週間、お世話になるね。よろしくたのむよ」
    「あら、思ったより綺麗にしてるのね」
    「おじゃまします…………」

    次にやってきたのは、スカラビアの二人。

    「おぉ、なんか天井が低い屋敷だな。魔法の絨毯に乗ったらすぐに頭をぶつけちまいそうだ」
    「はぁ……まず、屋内で飛ぼうとするな。ミドリヤ、悪いが俺の部屋はカリムと同じと隣にしてくれないか。鏡舎を通らないぶん、スカラビアよりもセキュリティが甘いからな」
    「うん。もともと部屋数足りてないから、カリムくんとジャミルくんは同じ部屋に割り振ってるよ。あと、セキュリティは僕とかっちゃんが気を付けるようにするから安心してね」
    「俺らは要人警護の訓練も受け取るから心配は捨てとけ」
    「相変わらず心配性だなぁ、ジャミルは。学園内で刺客に狙われたことなんか、入学以来一度もないだろ?それにしても、ミドリヤとバクゴーは元の世界だとヒーロー科だったんだっけ?頼りにしてるぜ!」

    最後にやってきたのは、オンボロ寮の勝手知ったるエーデュースコンビ。

    「お邪魔しまーす」
    「ミドリヤ、バクゴー、今日から世話になる。これ、トレイ先輩から」
    「えっ、これってトレイ先輩のケーキ?嬉しいなぁ!」
    「別の寮に世話になるんだから、手土産くらい持って行けってさ。お母さんかっての。あとでみんなで食べようぜ」
    「うん!食堂から余ってるお古の食器をいっぱい分けてもらったから、ご飯のときに切って出すね」

  • 14二次元好きの匿名さん25/03/22(土) 21:49:20

    このレスは削除されています

  • 15125/03/22(土) 21:53:22

    これまで出久たちはトレイのケーキを何度もごちそうになっており、美味しさはお墨つきだ。練習が終わったあとのご褒美に選抜メンバーに切ってだそう、と出久が箱を受け取ろうとしたところで、ヴィルに遮られた。


    「―――残念だけど、その手土産は没収させてもらうわ」

    「ふなっ!?な、なんで!?」

    「まったく、トレイは相変わらずね。『良かれ』で甘やかして相手を駄目にする、一番気を付けなきゃいけないタイプの男」


    *ヴィルのトレイ評 (1.そうかも……、2.そうかな……)

    出久 dice1d2=2 (2)

    爆豪 dice1d2=1 (1)


    「もしかして、オメーもリドルみてぇにルールだとかいって食料を捨てるつもりか?食い物を粗末にするヤツはオレ様が許さねぇんだゾ!」

    「はぁ?なんの話?捨てるなんて言ってないでしょう」

    出久としても食べ物が無駄になる事態は受け入れられないところだったので、ヴィルの言葉にほっと息を吐いた。


    「合宿前に大事な話をするから、みんな荷物をもったまま談話室に集合してちょうだい」


    『VDC』の選抜チームのプロデューサーはヴィルであり、この合宿の監督は実質ヴィルだ。

    ヴィルは選抜メンバーに指示を出すと、美しい歩き姿で談話室へと向かっていった。


    「ヴィル先輩が歩くと、なんだかオンボロ寮の廊下もランウェイみたいだね」

    「お前ファッションショーなんかまともに見た事あンのかよ」

    「いや、ない。イメージだけで話してる」

    「だろォな」


    *かっちゃんのヴィル評 dice1d3=1 (1)

    1.ジーパンのがイケとるな

    2.まぁジーパンにも負けてねぇかもな

    3.本職だけあってジーパンより姿勢は綺麗かもな

  • 16二次元好きの匿名さん25/03/22(土) 21:55:13

    ヴィルのトレクロ評、
    デク→そうかな?
    かっちゃん→そうかも
    なの解釈一致すぎる

  • 17二次元好きの匿名さん25/03/22(土) 21:56:47

    ジーニスト(師)の方がイケてるって思うかっちゃんにホッコリ

  • 18125/03/22(土) 22:13:19

    「で、ヴィル。なんなんだ?大事な話って」
    「みんな、持ってきた荷物を開けてみせてちょうだい」
    「えぇ?荷物広げるなら部屋に行ってからのほうが……」
    「いいから開けて」

    有無を言わせないヴィルの指示で、メンバーたちがそれぞれの鞄を開けた。ちなみに勝己は高みの見物だ。
    ガサゴソ。ヴィルは空港の荷物検査員のようにメンバーの鞄の中身をチェックしていった

    「…………やっぱりね」

    ヴィルは呆れたようにため息をつくと、鞄から何点か物品を抜き取って犯罪の証拠品のように並べ立てた。
    エースとデュースの持ってきたスナック菓子と炭酸ジュース。
    カリムの鞄にぎっしり詰まった、ジャミルお手製のお菓子が入った容器。

    「ここにある砂糖や小麦粉を使ったお菓子・ドリンク類は全て没収よ!」

    ちなみに、ジャミルの持ってきた万が一のための解毒用魔法薬と薬草のセットと、エペルのもってきた自家製林檎ドライチップはお目こぼしされた。ルークに至っては分厚いアルバム一冊しか荷物に入っていなかった。本人曰く「ライフワーク」の記録とのことだが、中身は全くの謎である。閑話休題。

    「アンタたち、強化合宿をなんだと思ってるの?」
    合宿開幕からヴィルはおかんむりだ。
    「アンタたちには『VDC』に向けて、心身を曇り一つない鏡のように磨き上げてもらわなきゃならない。本番までの4週間……肥満の原因になりやすい単糖類と小糖類たっぷりのスイーツやドリンク。そして肌荒れの原因になる脂質や香辛料を多量に含んだ食事は一切禁止!」

    「シュガーマンとクリエティには致命的な食事制限だね」ヒソヒソ
    「俺らも低血糖低脂肪じゃいざってときに本気でねェだろが」ヒソヒソ

    「そこっ!緑ジャガと棘ジャガ、うるさいわよ!心配しなくても、栄養豊富かつ高タンパク低カロリーの食事メニューを考えてあるわ。だらしないボディラインを徹底的に引き締めてもらうわよ」

  • 19二次元好きの匿名さん25/03/22(土) 22:16:40

    ストレス生みそうだなあ

  • 20二次元好きの匿名さん25/03/22(土) 22:23:21

    でもヴィル様、ヤオモモや砂藤くんみたいな体質というか本当に必要な事に関してはしっかり説明したら口出ししないタイプだよな多分、とプレイヤー視点では思う
    まあこのVDCで色々煮詰まってる時で参加者だったら別だろうけど

  • 21125/03/22(土) 22:29:18

    「はぁ?オレら育ち盛りなんですけど?」
    「あら。アタシは深夜にお菓子をつまみ食いしなくても183cmまで身長が伸びたわ。育ち盛りにとって大切なのは、栄養素を過不足なく摂り、しっかりと睡眠をとることであって、食べたいだけお菓子を貪って、あちこちニキビを作ることじゃない。覚えておきなさい」
    エースの反論は完膚なきまでに論破され、撃沈した。

    「げー……マジかよ……」
    「大丈夫だよ、エースくん!食事管理ってちゃんと効果出るし、最後の方はなんか気持ちよくなってくるから」
    「ミドリヤがジム通いのトレーニーみたいなこと言ってくる~」

    中学までどちらかといえば食が細くひょろひょろだった出久の肉体改造を叶えた、オールマイトのアメリカンドリームプラン。その内容は心を磨く奉仕活動、体を磨く筋トレ、そして栄養管理された食事。食事管理の効果は出久の肉体が証明している。特訓は辛かったが、日に日に体が筋肉で引き締まっていく感覚には高揚や快感も混ざっていた。

    「なあ、オレ様たちは選抜メンバーじゃねぇんだから食ってもいいんだろ?」
    「好きにすればいいけど、メンバーの前で食べてストレスを与えるのはやめて」
    「ふな~……」
    「僕は選抜メンバーの食事と合わせようかな。最近お金のなさにかまけて食事管理が緩んでた気がするし、一回引き締め直すぞ!」

    「フフ。ムシュー・そばかすの言う通り、ヴィルはキミたちにダイエットをさせようとしているわけじゃない。食の観点からも、より効率的に身体を引き締め美しくなってもらうというだけさ」
    「さ、さすが。テッペン目指してる人は覚悟が違うな……」
    「フッ……この程度で“覚悟”ですって?これはただの“基本”よ」
    たじろいだデュースのつぶやきを、ヴィルが一生に付した。

    「じゃあさっさと自分の部屋に荷物を置いてきて。すぐにレッスンを始めるわよ」

  • 22125/03/22(土) 22:39:09

    それぞれの部屋に荷物を置くために移動しようとしたところで、ヴィルのスマホが鳴った。
    「ん、マネージャーから電話……なにか急用かしら?ごめんなさい、ちょっと出るわね」

    横から話を聞いている感じでは、どうやらヴィルに映画出演のオファーが来たらしい。ヴィルは学生生活に本腰を入れるために撮影機関が長引く撮影を断っているようだが、それでもぐらつくようなビッグタイトルだったようだ。

    「――ちょっと待って。また美形の悪役?アタシ、そういうタイプキャストの依頼は断れって言ったわよね?」
    「――オーディション無しでアタシをご指名なら、当然主役ももう決まってるんでしょう」
    「…………また、ネージュ?」
    通話をするヴィルの表情が、喜びの笑顔からどんどん曇って険しいものに変わっていく。

    「アタシの気持ちをお金で買おうとしないで。どれだけ積まれたって出たくないものには出ない。アタシはただ……舞台の上に最後まで立っていたいだけ」
    「今は『VDC』に全力を尽くしたいの。今回のオファーは断っておいて」
    「しつこい!もう『VDC』が終わるまでかけてこないで!」
    最後は、ヴィルの叫びとともに一方的に通話が終わった。

    「どうした?なんか良くない知らせか?」
    カリムがヴィルの表情を覗き込もうとしたが、ヴィルはしっしっと手で払った。
    「大したことじゃなかったわ。さあ、レッスンを始めましょう。緑ジャガ、アンタも着いてきなさい」
    「緑ジャガって…………」
    「アンタのことに決まってるでしょう」
    「ですよね…………」

  • 23125/03/22(土) 22:48:17

    オンボロ寮には練習できる場所がない。従って、レッスンはポムフォーレのボールルームで行われる。


    「各自柔軟体操が済んだら、集合して。『VDC』で発表する曲が仕上がってきてるわ」

    ヴィル曰く、ここ数年の『VDC』ではオリジナル曲の制作は常識らしく、コンポーザーに楽曲制作の依頼をかけていたらしい。


    「『VDC』は、ビューティーコンテストでもファッションショーでもない。評価基準は歌唱力とダンス技術。そして、自分たちに似合う曲を選べているか。会場の共感を得るためには、アタシたちにピッタリの曲を選ぶのも大切」

    「そういえば、この大会は会場の投票で優勝チームが決まるんでしたね」

    「そう、ジャミルの言うとおりよ。『VDC』で勝敗を決めるのは、会場にいる者全員よ。観客も出場者もスタッフも1票ずつ勝者にふさわしいと思うチームに投票する権利を持っている」

    「出場メンバーも?それって、絶対に自分たちに入れちまわねーか?誰だって自分たちが一番だ!って思うはずだし……」

    投票システムを聞いてカリムが首を傾げた。


    *口を挟むのは dice1d2=2 (2)

    1.爆豪

    2.ヴィル

  • 24二次元好きの匿名さん25/03/22(土) 23:00:57

    >>15

    トレイパイセンは女を肥えさせる男だと思っていたが……7章で確定してたな

    絶対夢の中のデクとかっちゃんも同じようになってるぞ

  • 25二次元好きの匿名さん25/03/22(土) 23:03:42

    >>18

    砂藤の個性の関係上、個性使用しながら食べれば糖分過多の心配はないな

    それ以外の摂取過多は知らない

  • 26125/03/22(土) 23:08:38

    「素人考えではそうでしょうね。でも…………実力のある人間ほど、自分に投票できない場合もある」

    ヴィルは腕を組み、どこか遠くを見た。


    「パフォーマンスを見た瞬間にわかってしまうの。『自分じゃ絶対に敵わない』ってね。そうなると、自分の心を偽って自らを賞賛するのが惨めになる」


    *かっちゃん 共感レベル dice1d100=20 (20)


    「それは……少し分かる気がします」

    ジャミルが共感を示した。

    「自分を、偽る……」

    エペルも思うところがあるようで、ヴィルの言葉を小さく反芻した。


    「だからアタシは胸を張って自分自身に投票できるように最善を尽くす。今回用意したオリジナル曲も、その1つよ」

    「高みを目指すキミの横顔、実にボーテ!輝いているよヴィル。さっそく私たちにも曲を聞かせてもらえるかい?」

    「もちろん。それじゃあ、マネージャー。オーディオプレイヤーで曲を再生してくれる?」

    「………………あっ、僕ですか?」

    「アンタ以外に誰がいるのよ、緑ジャガ。学園長にサポートを頼まれたんでしょう?賞金が欲しいなら、アタシたちのためにキリキリ働きなさい」

    「わかりました……」


    仮にも合宿所になっているオンボロ寮の監督生なのだが、この合宿において出久はマネージャーというよりも小間使いのような役割でしかない。

    が、これも全獲りのため!と気合を入れ直し、出久はサイドキックって感じのデクとしてサポート業に邁進することにした。


    オーディオプレイヤーを再生すると、出久にはジャンルが分からないが、電子的なサウンドの曲が流れた。


    *曲の第一印象 出久 dice1d2=1 (1)

    1.カッコイイ曲だ

    2.難しそうな曲だ

  • 27二次元好きの匿名さん25/03/22(土) 23:11:12

    共感レベルが低めなのはちょっと意外
    初めての戦闘訓練で轟くんに対して思ってた感覚に似てそうなんだけど…もしかしてその時は井の中の蛙だったから?

  • 28125/03/22(土) 23:17:45

    「うわ、すげー本格的」

    「いいリズムだ!恰好いいな」

    「ジャンルとしてはエレクトロニック・ダンス・ミュージックでしょうか?この曲で踊るなら、アーバンヒップホップ……いや、ヒップホップジャズ?」

    「アーバンヒップホップをベースに、ジャズやブレイキン、ヴォーギングを交えて仕上げようと思ってるわ」

    ジャミルとヴィルの話を聞いても出久はチンプンカンプンだ。


    「呆けたツラしとんな。アホナード」

    「知ってる単語が一つもなくって、何にも分かんない……」

    「……じゃあお前、Aバンドの曲決めの時に耳郎が言っとったことは」

    「耳郎さんは音楽に詳しくてすごいなーって思ってたよ!」

    「雑っっっ魚」

    「勝ち誇った顔やめてよ」


    「それじゃあ、歌割りを発表していくわよ」


    *かっちゃんのポジション dice1d2=1 (1)

    1.メインボーカル

    2.バックコーラス

  • 29二次元好きの匿名さん25/03/22(土) 23:20:10

    まあデスボはメインで目立たせないとね

  • 30二次元好きの匿名さん25/03/22(土) 23:28:26

    このレスは削除されています

  • 31125/03/22(土) 23:28:53

    「メインボーカルは4名。それ以外のメンバーはコーラスとダンスを中心にパフォーマンスしてもらう予定よ」
    「えぇ?みんなで歌うんじゃないのか?」
    「斉唱は高い技術がないとがなっているように聞こえてノイジー……。今から7人全員の歌唱レベルを合わせるのは難しい。だったら、それぞれ集中するポイントを作って取り組むべきよ」

    「か、会話に出てくる単語の意味が全然わからない……」
    「オレ様もなんだゾ」
    デュースとグリムがぽかんと呆けている。
    「僕もだよ」
    「なんだ。優等生のミドリヤでも分からないなら安心だな」
    「下に基準合わせんなスペード野郎」

    「振り付けも、曲に合わせたオリジナルのものを用意してる。ざっくりした仕上がりがイメージしやすいように雰囲気が似たダンス動画を見せるわね。マジカメにプロのダンスグループの動画がたくさん上がっているはず……あった、これね」
    「オレ様知ってるんだゾ。動画見る前はCM見ないといけねぇんだろ」
    「いや、きっとヴィル先輩は有料版だからCMなんて」
    「あら、よく知ってるじゃないの」
    「有料版じゃないんですか!!?」

    『大切にしたいのは、パウダースノーの軽やかさ。デリケートな肌を守る、UVベース誕生』
    『これは君の願いを叶える、魔法の日焼け止め』
    『フェリシテ・コスメティックス。プレシャス・プロテクションベース』
    『ねえ、ここへ来て……』

    画面の中で、ネージュが花が綻ぶような笑みを浮かべた。

  • 32125/03/22(土) 23:31:38

    そういえば振ろうと思って忘れてました


    *ネージュへの印象

    出久 dice1d100=6 (6) (最低保証50)

    爆豪 dice1d100=38 (38)


    チェカのときもですが、出久はRSAとかプリンセスサイドのキャラに対して最低保証50つけますね

    多分魂が同族なので

  • 33二次元好きの匿名さん25/03/22(土) 23:34:17

    二人ともなんか印象イマイチだな…(デクは補正あるとはいえ)
    まあ今のところCMしか見ていないわけだけど

  • 34二次元好きの匿名さん25/03/22(土) 23:38:14

    魂が同族で笑ってしまった
    納得しかない

  • 35二次元好きの匿名さん25/03/22(土) 23:42:05

    出久もデズニー世界に放り込まれたら自然と歌って小動物たちと友達になってそうな雰囲気あるもんな
    アメリカンドリームプランとか歌とともに遂行してそう

    かっちゃんは分からん。多分デスボでヴィラン薙ぎ払ってると思われる

  • 36二次元好きの匿名さん25/03/23(日) 00:35:30

    >>35

    かっちゃんはアレだ…


    シンプルに蛮族

  • 37125/03/23(日) 00:37:14

    CMを見ると、ネージュの話題になった。ネージュは今マジカメで一番ホットな芸能人にして、ロイヤルソードアカデミーの代表として『VDC』に出場するライバルだ。


    「彼を射落とさなければ我らの優勝への道は絶たれると言っても過言ではない。しかし……」

    ルークは一度言葉を切り、求愛シーンのミュージカル俳優のような、あるいはキメているときの青山のようなポーズをとった。


    「ああ……彼の唇は赤い薔薇。髪はくろぐろと輝いやいて、可憐な笑顔は誰をも魅了する……。ライバルながら、実にボーテ……!!!」


    *dice1d2=2 (2)

    出久「すごく愛らしい人ですよね」

    爆豪「完膚なきまでに叩きのめしたるわ」


    「この大会にはオレ様のツナ缶富豪の夢がかかってるんだゾ!ぜってー優勝するんだゾ!」

    「アンタたち、くだらないおしゃべりをしてないで、ダンス動画に集中しなさい!今度こそ……絶対に負けるわけにはいかないのよ」

    一瞬、ヴィルは沸騰する直前の水がたてる音のような不穏な雰囲気を発したが、すぐに元の雰囲気に戻った。


    「話がそれちゃったわね。それじゃ、レッスンの前に、メインボーカルとダンスメンバーの発表をするわ。オーディションでのパフォーマンスを基準に、アタシが選んだ人選よ。今後の上達具合によってポジションは入れ替わる可能性もある。たとえメインボーカルに選ばれなかったとしても、ポジションを奪いとるくらいの気持ちで取り組んで」


    ヴィルは、メインボーカルはジャミル、エペル、バクゴー、そして自分だと告げた。

  • 38二次元好きの匿名さん25/03/23(日) 00:51:15

    かっちゃん適任だなあ
    相手が誰でも完膚無きまでに勝つってのが今回は特に

  • 39125/03/23(日) 00:59:05

    「おおっ!やったじゃないかジャミル!」

    「わあっ、メインボーカルだって!すごいねかっちゃん!」


    「俺がメインボーカル、ですか……?」

    「っしゃァ!観客全員、俺の歌でコロしたるわ!!」


    「ミドリヤとカリム先輩、はしゃぎ方がなんか似てるな」

    「んで、ジャミル先輩とバクゴーの反応の差ね」

    「バクゴーって本当に遠慮がねぇんだゾ」

    二組の幼馴染を見守ってグリムたちがしげしげと呟いた。


    「そうよ。ジャミル、なにかご不満?」

    「不満なんてとんでもない。しかし俺よりもカリムのほうが…………………いや、やめよう。わかりました。ご期待に沿えるよう努力します」

    ジャミルは譲りかけていたのを止め、自分に与えられたポジションを素直に受け取った。些細なことだが、これまでの積み重ねを思えた大きな一歩だろう。


    「それから、バクゴー。アンタのその尖ったアンクリーン・ボーカルは武器になるけど、使いところを間違えると観客から顰蹙を買うわ。指定されたパート以外でその声だしたら、毒で声帯を潰すわよ」

    「チッ」

    名指しで釘を刺され、勝己は舌打ちした。


    「ってか、バクゴーって普通の声でも歌えんの?」

    「音楽の授業くらいしか聞く機会なかったけど、普通の声でも歌えるよ」

    「勝手に返事してんじゃねェわ」


    *かっちゃんの普通の歌声

    ・声質 dice1d5=3 (3) (低いとハスキー、高いとクリア)

    ・音域 dice1d5=5 (5)

    ・ビブラート dice1d5=2 (2)

    ・のびやかさ dice1d5=3 (3) (低いとシンガー系、高いとミュージカル系)

  • 40125/03/23(日) 01:12:53

    「あの、僕は……ちょっと自身がない、です。別の人のほうが……いいんじゃない、かな」
    エペルが消え入りそうな声でヴィルに意見するが、ヴィルはそれを一蹴した。

    「アンタに拒否権はないわ。入学してすぐ、アタシと交わした約束を忘れたの?アンタにはアイツを仕留める“毒林檎”になってもらわないと困るのよ」
    「…………はい。わかりました」

    (毒林檎?)

    ヴィルとエペルの会話の内容は分からなかったが、二人の間ではそれで通じるのだろう。もしかしたらこの世界の慣用句なのかもしれない、と違和感を胸にしまっておいた。

    「“メイン”と名前が付いているけど、メインボーカルが主役でコーラスが脇役なわけじゃない。全員、自分が主役だと思って真剣に取り組んで。さて。ポジションも決まったことだし、本格的なレッスン開始よ。マネージャー、音楽を」
    「はい!!」

    かくして、強化合宿が本格的に始まった。



    「ストップ、ストップ!ぜんぜん違う、新ジャガ2号!」
    新ジャガ2号というのはデュースのことだ。ちなみに1号はエースで、勝己は棘ジャガと呼ばれている。
    「手のフリに気を取られ過ぎて、足元が完全にお留守。なによりも動きが硬すぎ。背中に物干しざおでもくくりつけてるの?」
    「す、すんません……!」

    ヴィルのダンスレッスンはとにかく厳しかった。
    文化祭のときの芦戸のレッスンも厳しかったのだが、芦戸はなんといっても笑顔があって、一の叱責に対して励ましの言葉が十あった。
    対するヴィルのレッスンはひたすらにストイックで、見守っているだけの出久でさえ神経が削れるような心地がした。

  • 41二次元好きの匿名さん25/03/23(日) 01:14:17

    声質が中間で音域広いから中の人(岡本信彦)と同レベルの歌い方できそう

  • 42二次元好きの匿名さん25/03/23(日) 07:30:15

    緑ジャガってソラニンたっぷりで危なそう
    棘ジャガも言わずもがな凶器っぽくて危なそう

    …峰田がいたら紫ジャガなのかな?それとも見た目通りぶどう?

  • 43二次元好きの匿名さん25/03/23(日) 13:05:04

    >>33

    二人とも顔の良し悪しで人を判断するタイプじゃないから、台本通りのCM見ても「ふーん」って感じ以上の感想にはならないのかもね

  • 44125/03/23(日) 13:52:32

    「硬さに関してはエペル、アンタもよ。ジャズヒップホップに必要なのは柔軟さ」

    「でも、こんなくねくねした女の子みたいな振り付け……僕、やりたく、ない、です」

    「はぁ?『くねくねした女の子みたい』……?」

    エペルの言葉に、ボールルームの温度が数度下がったようだった。 


    「ずいぶんはっきりした寝言ね。寝言だとしても聞き捨てならないけど」

    「い、いだだっ!耳を引っ張らないでくださいっ!」

    「ヴィ、ヴィル先輩。暴力は……」

    「お黙り緑ジャガ。まだ夕方なのに可愛い林檎ちゃんはおネムのようだから、よく聞こえるように手伝ってあげてるだけよ」

    引っ張られて横に広がったエペルの耳に流し込むように、ヴィルは説教をした。

    「いいこと?『くねくね』した動きは、インナーマッスルをきちんと鍛えてこそ綺麗に見えるの。服にもダンスにも「男専用」「女専用」なんかない。男だから女性的なフリを踊るのが恥ずかしいなんてマインドが前時代すぎる」


    「まあまあ。ヴィル。そんなに怒らなくてもいいじゃんか」

    重く気まずい部屋の空気に風穴を開けたのは、こんなときでも明るいカリムの声だった。

    「エペル。最初はちょっと恥ずかしくても、思い切って大きく踊ってれば楽しくなってくるぜ!」

    「カリムの言う通り。モジモジしたへっぴり腰のダンスなんて、全然美しくない」

    「えぇ?オレ、別にそういうつもりで言ったわけじゃ……もががっ!」

    発言の意図を訂正しようとしたカリムだったが、不要な面倒の気配を察知したジャミルによって口をふさがれた。


    「……決めた。明日からエペルはアタシたちとは別メニューにしましょ。アタシがいいと言うまで1人でバレエレッスンよ」

    「え、バレエって、あの6人でやる球技の……?」

    「文脈を読みなさい。バレリーナのバレエに決まってるでしょう」

    「うぇええええっ!?そ、そんなこと急に言われたって……!!」


    「ひぇ……飛行術のバルガスより鬼コーチなんだゾ」

    「絶対目ぇつけられたくないタイプ。大人しくしとこ」

    詰められるエペルを遠巻きにして、グリムとエースが身震いした。


    *バレエレッスン (1.自分もやると申し出る、2.申し出ない)

    出久 dice1d2=1 (1) 爆豪 dice1d2=2 (2)  (※二人とも1だった場合はdice1d2=1 (1) (1.出久、2.爆豪)優先)

  • 45125/03/23(日) 14:09:33

    「あの、シェーンハイト先輩。バレエレッスン、僕も一緒にやらせてもらえませんか」
    話を聞いていたデュースがヴィルに申し出る。

    「お前、マジ?なんでわざわざ自分から……」
    エースは信じられないといった表情で目を見開いている。
    「僕も『男らしいか』どうかとか、よく考えてしまうので。せっかく受かった選抜メンバー。テッペン狙うなら、マジでやりたいんです」
    「デュースクン……」
    「いいでしょう。ある程度バーレッスンをこなせば、カカシもヒトに近づくかもしれないしね」

    「あの、ヴィル先輩。僕も一緒にバレエレッスンやっても良いでしょうか?」
    「アンタも?マネージャーがレッスンしてどうするのよ」
    「単純に僕も柔らかく体を使う方法を知りたくて」
    OFAの力を失ったところで、出久が腕に爆弾を抱えている事実は変わらない。自力の腕力だけならばOFAほどの衝撃は出せないため爆発する危険性は減るが、今後も戦闘するときは足技主体にしておいた方が安全だ。
    そのため、身体の柔軟性を保って股関節の可動域を広げておく訓練は、出久にとって得られるものが大きい。

    「……そうね。オーディションのときに思ったけど、アンタ、センスはからきしで動きは固かったけど、肉体そのものは柔軟性が高くて悪くなかった。カチコチの化石二人きりでやらせるより、柔軟のコツが分かるのが1人いたほうが上達も早いかしら。いいわ、許可しましょう」
    「ありがとうございます!」
    「ふなっ!?イズクがバレエレッスンしてる間、マネージャーはどうするんだゾ!?」
    「テメェがやれやクソ狸。いつまでも出久に甘え切ってんじゃねぇぞ」

    「それじゃ、今日のレッスンはここまで」
    「ウィ。さあ、みんなでオンボロ寮に戻って夕食をいただこうじゃないか」

  • 46125/03/23(日) 14:34:45

    練習帰り、メインストリートにて。

    「だぁ~~~っ、もうくたくた~~~。レッスン後に、ボールルームの床を四つん這いで雑巾がけさせるなんて、ヴィル先輩鬼かよ」
    「僕はワイパーみたいに腕を大きく振りながら窓ふきをさせられた。腕と背筋が痛い……」
    「真剣にやる掃除ってのはあんな大変なもんなんだなぁ」
    石畳でエースは腰を、デュースは背中を、カリムは腕をとんとんと叩きながらよろよろと歩いている。

    「あんくらいで音ェあげてンじゃねェわ雑魚ども」
    「……バクゴー片手なのにブルドーザーみたいな勢いで床拭いてくからビビったわ。バランス感覚と筋力どうなってんだよ」
    「テメェらとは鍛え方が違ェんだよ」
    「確かに。バクゴークンの背筋、すごく鍛えられてて恰好良いよね。同じ男として憧れる、かな」

    「はっはっは!手間暇かけた掃除にだって意味はあるんだよ。雑巾がけや窓ふきは、美しい背筋を育てるトレーニングになる。練習の場と、キミたちのボディ、どちらも美しく保つためのヴィルなりのメニューなのさ」
    「ルーク先輩は、本当にヴィル先輩に理解がありますね」
    呆れと感心まじりのジャミルの言葉に、ルークは「ウィ!」と朗らかに返事をした。

    「美しい人やものは、ただ存在しているだけで私を豊かにしてくれる。『美しさ』はときに見るものを救い、ときに狂わせる強いパワーだ。だが、同時にとても儚く脆いもの。目を離せばすぐ損なわれてしまう。だから私は、力の限り美を守り、美を助けたいと思っているだけだよ」
    「ヴィル先輩のこと、まるで花や美術品のように言うんですね。確かに彼は美しい人です。しかし……守らねばならないほど儚く脆い印象かと言われればそうは思えないというか……」
    「オレも。ヴィルは、ダイヤみたいに硬くて強いって感じがするぜ」
    「そうとも。ヴィルは私が守る必要など全くない。手を差し伸べようものなら、13センチヒールの華麗なる踵落としを脳天にお見舞いされそうだ。私が守りたいのはヴィル自身ではなく、ヴィルのもつ『美』なのさ」

    ルークの感性は独特で、表現は詩的。その場にいる者たちの大半はルークの言葉に共感を示せず困惑した。

  • 47125/03/23(日) 14:43:42

    「やべ……ますます意味分からねぇ」ヒソヒソ
    「やっぱりポムフィオーレ寮って変わってるな……」ヒソヒソ
    「僕もポムフィオーレ寮だけど、ちょっとよくわからない……かな?」ヒソヒソ
    「それじゃあオレ様たちがお手上げでも当然なんだゾ」ヒソヒソ

    「なんだろう。言ってることはあんまり分からないけど、僕ちょっとルーク先輩に親近感あるんだ」ヒソヒソ
    「オタク仲間だからだろ。オールマイトについて熱弁してるときのテメェも大体あんな感じだわ」ヒソヒソ
    「えぇ、本当?」ヒソヒソ
    「無自覚かよ。これだからオタクは」ヒソヒソ

    「ふふふ。キミたちにもいつかわかる日がくるはずだよ。目もくらむほどの美しさで人生を明るく照らしてくれる……そんな存在に出会った時にね」
    語るルークの瞳はキラキラと輝いている。

    出久がオールマイトが沢山の人を“助ける”姿に、勝己がオールマイトが凶悪な敵に“勝つ”姿に憧れ、焦がれ、指針としたように。
    それがルークにとっては“美しさ”だったのかもしれない。

    目もくらむほどの存在、という感覚には覚えがあったため、出久は一人納得するとともに、「やっぱりこの人オタクなんだろうなぁ」と同族感情を高めた。

  • 48125/03/23(日) 14:47:05

    ちょっとダイス

    *ヘルシー食の満足度

    出久 dice1d100=46 (46)

    爆豪 dice1d100=55 (55)

  • 49125/03/23(日) 15:06:54

    オンボロ寮に戻ると、ゴーストたちがヴィルの提案したレシピに従ってヘルシーな夕食を用意してくれていた。


    「はぁ~……夕食食い終わったけど、なんか物足りなかったな」

    「わかる。まずくはなかったけど、全体的に辛さのパンチと油のコクが足りてねぇってかんじだ」

    若者らしくジャンクフードを好むエースと、味付けの濃い熱砂の国の料理に慣れているカリムがため息をついた。


    “痩せ”ではなく“引き締め”のためのメニューだという食事は、野菜、鶏肉のささみ、フルーツが中心で、量は十分だが食べ盛りの十代には満足感が足りなかった。


    「野菜ばっかじゃ食った気がしねぇんだゾ。イズクとオレ様は大会に出ねぇんだから、肉と揚げ物食わせろってんだ~!」

    「まあまあ。そりゃあカツ丼とかに比べれば物足りないけど、ヘルシーで美味しかったよ」

    「味のしねぇ病院食よか1億倍マシだわ」

    四肢の損傷中心だった出久と異なり、勝己は内臓を損傷しての入院だったため、一時期は離乳食じみた消化に優しい低刺激な病院食生活を余儀なくされていた。あれに比べれば、噛み応えがあって塩味がするだけマシというものだ。


    ――BEEP!


    「あれ、お客さん?こんな時間に誰だろう。はーい、今出ます!」

    オンボロ寮の呼び鈴が鳴ったので、出久は会話を切り上げて玄関へと向かった。

    やってきたのは宅配ゴーストで、エペル宛ての段ボールを10箱も届けにきたという。エペルを呼んでサインしてもらい受け取ると、オンボロ寮の玄関があっという間に段ボールで埋まってしまった。


    「絶対ばっちゃ……あ、おばあさまからだ。もう、電話で何度も贈らなくていいって言ったのに!」

    「実家からの仕送り?」

    「うん。僕の故郷は林檎が特産品で……たぶんこれ全部、林檎ジュース……かな」

    「全部!?すごい量だね……。あっ、エペルくん、この箱に手紙が付いてるよ」

    「えっ。どれどれ……『売れ残ってしまい、賞味期限が近いです。学校の友達と分けてください』。……も~!売れ残りば押すつげるなよ。でも、こんなに売れ残ってるなんて……」

    積みあがった段ボールの山をみて、エペルは悲しそうに目を伏せた。


    *出久の反応 dice1d2=2 (2)

    こんなにジュースを沢山送ってくれるなんて……。

    1.エペルくんっていいところの子なのかも。

    2.エペルくんって青森出身なのかな?

  • 50125/03/23(日) 15:24:33

    (大量に送られてくる林檎ジュースの仕送り……。これってまさか……)


    「エペルくんの地元って、ひょっとして青森県だったりする……?」

    「アオモリケン?それってどごだが?わー、……僕の地元は輝石の国にある“豊作村”ってところ、かな」

    「やっぱり違うよね……」

    ダメ元で聞いてみたが、やはりエペルの出身は青森ではないらしい。一瞬、元の世界と繋がっている場所があるのかも、と無為な期待をしてしまったため、出久はガックリと肩を落とした。


    「ミドリヤクン、なんかわからないけどごめんね。よかったらこれ、飲んでみて。林檎果汁100%、保存料ナシ。ビタミンたっぷりだから、ジュースだけどヴィルサンも怒らない……かも。味は保証するよ!!!」

    「こっちこそごめんね、エペルくん。ありがとう」


    「おい、テメェらいつまで玄関に……ってなんだその箱」

    「かっちゃん!玄関塞がっちゃったから、談話室に箱動かすの手伝ってくれる?」

    話を聞きつけて、先に談話室に戻っていたメンバーも段ボールの移動を手伝いに来てくれた。


    「飲み物だけをたくさん送ってくれるって、エペルもすごいお坊ちゃまなんだな」

    「えっ!?」

    「あ、なるほど。エペルは林檎ジュースのブランドにこだわりがあって、これしか飲みたくないとか?」

    「ぜ、ぜんぜんそういうわけじゃない……かな!?」

    デュースとエースの言葉にエペルが首をブンブンと振る。


    *かっちゃんの反応 dice1d2=1 (1)

    いかにも質が良さそうな林檎ジュースの仕送り……

    1.多分いいとこのヤツだな

    2.コイツの地元、絶対青森だろ

  • 51125/03/23(日) 15:53:14

    手助けもあり、段ボールの移動はすぐに終わった。

    「みんな、手伝ってくれてありがとう……ございます。早速だけど、よかったら林檎ジュース飲んでいって。林檎に含まれるクエン酸やポリフェノールは疲労によく効くんだ。レッスンで疲れた身体にぴったりのはず……かな?」

    談話室のテーブルの上に並べたグラスに、エペルが瓶の中身をなみなみと注いでいく。白く濁った林檎ジュースはいかにも濃厚そうで、甘酸っぱくみずみずしい香りがした。


    「これは……セ・ボン!実に美味だよ、エペルくん!」

    「本当だ!僕、こんなに美味しい林檎ジュース初めてだよ!」

    「確かに美味ぇな。うちのババァが昔買ってきたバカ高ぇ青森の林檎ジュースみてぇな味する」

    「またアオモリ……?」


    「酸っぱすぎず、甘すぎず。のどごしの爽やかさはまるで林檎畑を吹き抜ける涼やかな風のようさ。愛情を込めて真摯に作られているのがわかる逸品だ」

    「そうでしょう!このジュースは何種類かの林檎をブレンドして作ってる、故郷の自信作なんです!」

    自慢げに話すエペルはこの合宿で初めてといってもいい満面の笑みを浮かべており、次々と地元産の林檎の売り文句を語る姿からは故郷への愛情が伝わってくる。


    「でも………、輝石の国の片田舎で作っているせいか、どうも知名度が低くて。年々観光客も減ってて、このままじゃ……」

    「アンタたち。いつまで談話室にたむろっているの?」

    騒ぎを聞きつけて、自室いたはずのヴィルが談話室に下りてきた。


    「エペルくんの実家から林檎ジュースが届いてね。みんなで頂いていたところさ」

    「お、お砂糖は入ってません!保存料も!だからその、長期保管がきかないので……ヴィルサンもよければ、飲んでください」

    「ふぅん、そう。気が向いたらいただくわ。それよりそろそろ22時になる。就寝時間よ」


    「22時就寝!?小学生かよ」

    「寝る時間が早いイコール子どもだなんて考えこそお子ちゃまマインドね。美しい肌と髪を保つためには、7時間以上の睡眠が推奨されているんだから」

    夜更かし癖のあるエースがげんなりと呟くのを、ヴィルが鼻で笑った。


    *幼馴染の普段の就寝時間

    爆豪 dice1d5=1 (1)

    1.21時 2.21時半 3.22時 4.22時半 5.23時

    出久 dice1d4=1 (1)

    ↑の 1.同時 2.約30分後 3.約1時間後 4.約90分後 

  • 52二次元好きの匿名さん25/03/23(日) 15:56:52

    OFAがあった頃は深夜にトレーニングやってたり公式ドット動画だと夜に宿題やらやってたけど…
    今は無個性かつ非寮制だから生活リズム変わった感じかなあ

  • 53二次元好きの匿名さん25/03/23(日) 16:00:51

    必要そうな時は夜更かしするけど平均というか基本は早寝早起き、って感じなんだろな……

  • 54125/03/23(日) 16:06:25

    「ふわぁ……、そういえばもうこんな時間なんだね。眠くなってきちゃった」

    「オンボロ寮はもう消灯時間なンだわ。テメェらとっととクソして寝やがれ」

    「ミドリヤとバクゴーも寝るの早っ!?ジャックかよ……」

    普段の就寝時間を過ぎているため、出久と勝己はすでに眠気を感じている。元の世界ではナード趣味で夜更かしすることもあった出久だが、この世界ではヒーロー雑誌も特番もない。インターンなどで夜の任務にいくこともないので、早寝早起きで日中に全力で動くサイクルで生活している。


    「ああ、そうだ。全員に聞いておこうと思ってたけど……アンタたち、ヘアケアとスキンケアはどこのメーカーを使ってるの?」

    ヴィルの言葉に、その場にいた者の大半がぽかんとした。


    「え?ケアって……なんですか?」

    デュースが首を傾げる。

    「洗いざらしにしておくと髪が絡まるのでヘアオイルはつけてますが……肌は特に何も」

    「実家にいた頃はいろいろつけられてたけど、寮生活になってからはなにもしてねぇや」

    ジャミルの髪を除き、スカラビアコンビもあまり頓着がないらしい。


    *オンボロ寮のケア用品事情

    肌用 (1.ある、2.ない)

    ・保湿クリーム dice1d2=1 (1)

    ・日焼け止め dice1d2=2 (2)

    髪用 dice1d4=4 (4)

    ・全身石鹸

    ・トニックシャンプー

    ・リンスインシャンプー

    ・シャンプー+コンディショナー


    ドライヤー (1.使っている、2.使っていない)

    出久 dice1d2=1 (1)

    爆豪 dice1d2=1 (1)

  • 55二次元好きの匿名さん25/03/23(日) 16:11:07

    2人も身体のあちこちに傷跡あるしね

  • 56125/03/23(日) 16:15:22

    「肌が乾燥すると傷がヒリヒリするので、保湿クリームくらいは塗ってますけど……」

    「コイツのモジャ毛が爆発すっから、一応コンディショナーもドライヤーも置いとる」

    「君の髪も大概だけどね」


    「油分を洗い流した肌をそのまま放置しているなんて、正気!?」

    ヴィルは合宿メンバーのあまりの美意識の低さに目を見開いた。

    「今からアタシのお手製スキンケアグッズを配るわ。それで朝晩の洗顔のあとは必ずケアして」

    「私とエペルくんはこのヴィルお手製スキンケアを使い始めてから肌荒れ知らずさ」

    「はい。これ以外にも日焼け止めとか、ルースパウダーとか、リップクリームとかハンドクリームとか……。いっぱい押し付……いただきました」

    なんとヴィルのケア用品は手作りらしい。流石は魔法薬学に長けた生徒が集まるポムフィオーレの寮長である。


    「ところで……瓶がいくつもあるけど、どうやって使うんだ?」

    「どこから?仕方ないわね……まずは洗顔料から教えましょう」


    *ヴィルが掴んだのは…… dice1d2=1 (1)

    1.出久の顔

    2.カリムの顔

  • 57125/03/23(日) 16:25:14

    「ミドリヤをモデルに実戦するから、アンタたちよく見て覚えなさい」

    「「は、はい」」

    ヴィルに頬を掴まれたかと思うと、出久はヴィルの前で椅子に座らされた。


    「ミドリヤ。アンタ普段洗顔するとき、なにを使ってるの?」

    「水……です」

    「論外!まず、ネットでよく泡立てた洗顔料の泡で顔を包み込むように洗って。ゴシゴシ擦るのは厳禁」

    羽が触れるような優しい力加減で出久の頬を濃密な泡が撫でていく。

    それが終わったら拭き取り化粧水。次に保湿化粧水。その次に乳液。それから3日に1度のスペシャルケア用パック。ドライヤーの前のヘアオイル。シャワーの後のボディーミルク。

    何がなんだかよく分からないまま、出久は花の香りがする液体を何種類も塗りたくられた。


    「ま、魔法薬学の実験手順のテスト並みに難しいぞ」

    デュースはすでに及び腰になっている。


    「おぉ……ヴィル先輩に色々やってもらったら、肌がいつもよりツルツルになった気がする!傷痕も柔らかくなったみたいで引き攣るような感覚がなくなって、なんだか調子が良いかも。触ってみる?」


    *かっちゃん dice1d2=2 (2)

    1.触ってみる

    2.触らない

  • 58125/03/23(日) 16:37:48

    「触るワケねェだろ」
    「だよね~」
    「じゃあ、オレが代わりに触って良いか?おお~、ミドリヤのほっぺ、もちもちだな!」
    ぷにぷに、とカリムの指が出久の左頬をつつくと、すかさずヴィルから「素手でべたべた顔に触らない!手は雑菌の温床なのよ」と叱責が飛んできた。

    「あのー、ヴィル先輩って魔法が得意だから寮長になったんすよね?肌とか髪とか、魔法でパパっと綺麗にする方法ってないんすか?」
    手間のかかるケアにすでに嫌気が差しているエースが、なんとも意識の低いことを言った。

    「アンタたちも魔法士なら理解していると思うけど、ほとんどの魔法や魔法薬に永続的な効果はないわ。魔法で取り繕った美は、一瞬夢を見せてくれるでしょうけど……アタシは、午前0時の鐘で解ける魔法に興味はないの。偽りのない純粋な美しさを手に入れたい。魔法の鏡が認めた、“美しき女王”のようにね」
    強い意思の籠った声でヴィルが語る。

    (ヴィル先輩……厳しい人だけど、それだけ真剣なんだ)

    出久は美容や舞台に興味をもったことはなくて、今もそうであるが、ヴィルの真剣な想いは理解できた。
    ヒーローが個性に頼り切りにならずに自らを強く鍛え続ける必要があるように、スターもまた自らを美しく磨き続ける必要がある厳しい道であるらしい。

    「もし伝説の鏡が現存していたら、きっとヴィルの美しさを認めていたに違いないさ」
    「………………そうね」
    ルークの賛辞に、ヴィルはやや間をおいてから返事をした。

    「少し話し過ぎたわ。全員部屋に戻りなさい。寝る前にスキンケアをするのを忘れないように!」
    「「は、はい……」」

  • 59125/03/23(日) 16:43:50

    「ふなぁ~。まだ合宿1日目だってのにもうクタクタなんだゾ~」

    「マネージャーも大変だね。出演者のみんなはなおさらだ」

    普段と違うことをすると心身ともに疲れるもので、鏡の寝室に戻るとグリムがよたよたとベッドに上った。


    「~~~♪………~~~♪」


    そのとき、オンボロ寮の庭のほうから歌が聞こえてきた。


    「この声……。様子を見に行ってみようか。かっちゃんも行く?」


    *かっちゃん dice1d2=2 (2)

    1.「行く」

    2.「行かねぇ」

  • 60125/03/23(日) 17:00:03

    「この声、ターバンだろ。俺は部屋から庭全体を見張っとる」
    「わかった。よろしくね」
    カリムは暗殺の可能性が常にある人物ということで、ジャミルが傍にいたとしても放置はできない。
    勝己は敷地内外に不審人物がいないか上から見守ることにして、出久が現地へ向かうことにした。

    「~~~~~~~~~~♪……んんっ、やっぱここでつまずいちまうな」
    「コラッ、カリム!夜ふかしすると、鬼コーチ・ヴィルにどやされるんだゾ!」
    「カリムくん、こんな夜にどうしたの?体冷やしたら大変だよ」
    「おわっ!グリムにミドリヤ!もしかして、寮まで聞こえてたか?悪い、悪い!」
    話を聞くと、カリムはここで歌の練習をしていたのだという。

    「……オレ…………。メインボーカルに選ばれなかったの、結構悔しくってさ」
    「へ?全然そんなふうに見えなかったんだゾ」
    「オレも発表された時はなんにも感じなかったけど、さっきベッドに入って目を閉じたらだんだん悔しくなってきて……いてもたってもいられなくて、練習しにきたんだ」
    ハァ、とカリムが白い息を吐いた。いつもは天真爛漫な輝きを湛えている大きな目が、物憂げに伏せられた。

    「……オレ、こんな気持ちになったの、初めてでさ」
    「はは~ん。さてはオメー、今まで手に入らねぇもんなんかなんにもなかったんだろ!」
    「あ~、う~ん、そうなんだけど、そうじゃないっていうか……ちょっと違うんだよなぁ」

    「オレ、『自分が選ばれて当然だ』なんて考えたことさえ、一度もなかった。ってことは、それが一度も頭をよぎらないくらい、ジャミルがオレに席を譲ってくれてたってことなんだよな……きっと」
    ゆっくり低い声でカリムが話す。その姿は、いつもよりもずっと大人びて見えた。

  • 61125/03/23(日) 17:13:09

    「カリムくん……」

    「……悔しいよ。スゲー悔しい」

    「そんなこと言ったら、オーディションに落ちたオレ様の方がよっぽど悔しいんだゾ」

    「あっ、それもそうか。悪い、嫌味を言うつもりじゃなかったんだ!いやぁ~、オレ、こういうとこだよな~。ほんとスマン!」

    「ウッ、素直に謝られると、尻の座りが悪い。エースたちなら逆に煽ってくるのに……」

    素直なカリムに逆に面食らったようで、グリムは居心地悪そうに出久の太ももにもたれかかった。


    「ゴホンッ!そう思うなら絶対に『VDC』で優勝するんだゾ」

    「そうだな。頑張るから応援してくれよ!」

    「うん、傍でずっと応援してるよ!」

    「ありがとな、ミドリヤ!よし。騒がしくして他の奴らを起こしたくないし、歌の練習はやめにして、今日は寝るとするぜ」

    「うん。おやすみ、カリムくん」

    「おう。おやすみ、ミドリヤ。グリム!」

    挨拶を交わすと、カリムはオンボロ寮の中へと戻っていった。


    「イズク。オレ様たちも早く部屋に戻ろうぜ。肉球の裏がヒエヒエなんだゾ」

    「そっか、グリム裸足だもんね。僕につかまって」

    肉球に息を吐くグリムが寒そうだったので、出久はグリムの足が雪の積もった地面につかないように抱き上げた。


    「…………グリム」

    「なんなんだゾ、イズク。そんなに頭撫でるんじゃねぇ」

    「あっ、嫌だったらごめんね」


    *出久 dice1d2=1 (1)

    1.「大きくなったなぁ、と思って」

    2.「成長したなぁ、と思って」


    *出久→グリム 好感度上昇 dice1d10=4 (4)

  • 62125/03/23(日) 17:21:51

    「ふなっ?オレ様別に身長伸びてねぇんだゾ」

    「体じゃなくて、心の話」


    先ほどのカリムの会話で、出久は殆ど話を挟まなかった。カリムと進んで話していたのはグリムの方だ。

    まだ人の機敏に疎く無神経なところはあるものの、出会ったばかりのグリムなら、カリムの心情なんてまるで理解しなかっただろうし、最後に寄り添うような言葉だってかけなかっただろう。


    先ほどの会話からグリムの情緒の成長を感じて、出久は少し嬉しい気持ちになった。


    「でも、体も少し大きくなったかな。なんか重みが増してる気が……」

    「な~んだ、じゃあやっぱり身長も伸びてるんだゾ!次の身体測定が楽しみなんだゾ~♪」

    「そうだといいんだけど……」

    これで体重だけ増えていた場合、ツナ缶減量を言い渡す勝己とグリムが揉めるのが目に見えている。多分成長期だろう、と自分に言い聞かせ、出久はグリムを抱っこしたままオンボロ寮に戻った。


    *目星ロール (1.成功 2.失敗)

    出久 dice1d2=2 (2)

    ※成功すると近くでジャミルが見守っていたことに気づきますが、特に会話等は発生しません。

  • 63125/03/23(日) 17:41:51

    その日、出久は夢を見た。


    絹を裂くような少女の悲鳴が聞こえる。

    雪のような肌の少女に狩人襲い掛かり、心臓を抉り取ろうとナイフを振りかぶる。しかし、そのナイフが振り下ろされることはなく、狩人は葛藤の果てに涙を流した。


    ――ダメです、私にはできない。そうかご勘弁を……お許しを……

    ――女王が姫君を妬んで亡き者にと……逃げなさい!


    女王は狩人から心臓を受け取ると、魔法の鏡に語り掛けた。


    ――世界で一番美しいのは、白雪姫です


    鏡の返答は変わらない。狩人が献上したのは、豚の心臓だった。


    ――あの裏切り者め!


    怒りに囚われた女王は、城の地下で怪しげな魔法の薬を調合した。


    ――いざ、見せよ。その魔法の力を


    盃の中身を飲み干すと、彫刻のように整った女王の姿が、溶けるようにして変化していく。

    肌は垂れ、鼻は横に広がり、目は落ちくぼみ、歯は抜けて不揃いになる。女王は、老いた姿へと変わり果てていた。


    ――これなら誰にもわかるまい。どんな方法がよかろうか?


    老婆となった女王は、キヒヒと不気味な笑い声を上げた。


    *出久 夢への違和感 dice1d10=3 (3) +82

  • 64125/03/23(日) 17:44:03

    ちょっとダイス


    *対抗ロール

    グリム dice1d100=25 (25)

    爆豪 dice1d100=6 (6)


    グリムの数値が高ければ爆豪は寝たまま、爆豪の数値が高ければ起きます

  • 65125/03/23(日) 17:53:32

    ゆさゆさ。身体を揺さぶられ、出久は不吉な夢から覚醒した。

    まぶたをあけると、グリムの燐光のような色の目が覗き込んでいた。


    「グリム……?」

    「やっと起きたか。黙ってオレ様と一緒に来るんだゾ。みんな寝てるからな。足音を立てるんじゃねーんだゾ!」

    勝己に聞かれたくないのか、グリムは出久の耳もとギリギリで小さな声で囁いた。


    なんだろう、と思いつつもグリムに着いていった先、談話室でエースとデュースが待っていた。

    「あ、来た。こっちこっち」

    「エースくん、デュースくん。なにかあったの?」

    「やっぱ夕食あんだけじゃ食った気しなくってさあ。冷蔵庫にトレイ先輩のお土産のタルトがあること思い出して。オレ、食べ物粗末にするのは良くないと思うんだよね~」

    要するに、深夜のつまみ食いしたい、ということらしい。イチゴのタルトをつまみ食いしてリドルに首輪をかけられたことの反省がまるで生きていない。


    「僕は食べにきたわけじゃないぞ。み、水!水を飲みにきただけだ」」

    デュースは慌てて弁明した。

    「夜にこっそり盗み食いするおやつは昼間の100倍美味いんだゾ、ぐひひ!冷蔵庫、オープン!」


    冷蔵庫の中には、トレイが焼いた宝石のようなケーキが並んでいる。ケーキは消費期限が短い。もって明日の昼までだろうが、合宿の内容的に食べるタイミングはこないだろう。


    *出久 dice1d2=1 (1)

    1.いや、でもやっぱりつまみ食いはダメだよね。食べない。

    2.捨てちゃうのは勿体ないしなぁ。食べる。

  • 66125/03/23(日) 17:56:24

    「オレ、チョコレートケーキにしようっと」

    「オレ様はアップルパイがいい!」

    悪戯が成功したような笑みを浮かべ、グリムとエースがケーキを手に取った。


    「僕はなにも見てない。なにも見てないからな」

    「やっぱりつまみ食いは気が引けるし、僕もいいかな」


    *対抗ロール

    出久 dice1d100=91 (91)

    エース dice1d100=15 (15)

  • 67二次元好きの匿名さん25/03/23(日) 18:18:21

    出久強っ…

  • 68125/03/23(日) 18:21:13

    「ミドリヤ、デュース、ちょっとこっち向いて」
    「ん?……おっと」
    「ん?……ふがっ!!」
    二人が振り向くと、エースがケーキを口に差し込もうとしてきた。出久は避けたが、デュースはよけきれずに口にケーキを突っ込まれた。

    「ふぁにふるんふぁ!トレイ先輩のアップルパイ。手に入れたからには、お前も共犯な」
    「はぐはぐっ!う~~~ん、ごろごろ入った林檎が罪の味なんだゾ!」
    「もごもご……ごくん。く、口をつけたものを残すのももったいない。一切れだけなら……」
    「取り上げられた炭酸ジュースも飲んじゃおっと」
    「あ~あ……。僕、知らないからね」

    目の前の光景に出久は呆れてしまった。深夜にお菓子を食べて肌荒れなどしようものなら、ヴィルの雷が落ちるのは自明である。

    「あらあら。夜中にキッチンでなにをしているの?子ネズミたち」
    「ふなっ!?この声は……」
    「言いつけを守れない悪い子は、お仕置きよ」
    パチリ、と談話室の照明が点く。そこにいたのはヴィルだった。

    「オレら育ち盛りっすよ!夜中に腹減るのくらい当たり前じゃん」
    「ハーツラビュル寮生としては、クローバー先輩の手作りスイーツを無視することはどうしてもできねぇっていうか……!」
    「ひ、開き直っている……!」
    エースもデュースも完全に自分を正当化しにかかっている。ヴィルは意外にも激昂せず、冷ややかな目をして談話室の掛け時計に目をやっただけだった。

    「……そろそろ時間ね」
    「はあ?時間って…………ッ!!?」

    バタン!エースの声が不自然に途切れたかと思うと、ケーキを食べた3人の体が一斉に倒れた。
    ただならぬ事態に、出久はすぐに三人に駆け寄った。

  • 69125/03/23(日) 18:23:18

    「みんな、どうしたの!?意識はある?吐き気はない!?」

    「意識も吐き気も大丈夫だけど、体が動かなくて……」

    「呼吸、発汗に異常はなし。心拍も正常。瞳孔の散大や縮小もなし。筋肉の痙攣もなし。チアノーゼもない……。中毒症状はないのに動けないってことは、『凝血』みたいな動きを拘束する魔法……?」

    「ふっ……惜しいわね。拘束魔法じゃないわ。それは“呪い”」

    エースたちの様子を見るために膝を着いている出久を、ヴィルが見下ろした。


    「の、呪い?呪いを食べ物に仕込むってどういう……」

    「これはアタシのユニーク魔法。『美しき華の毒(フェアレスト・ワン・オブ・オール)』。この魔法は、手で触れたものに“呪い”を付与することができるの」

    爪の先まで手入れされた美しいヴィルの手が、力を示すように妖しく動いた。


    「この強烈な呪いは、条件を満たすまでアタシにも解けない。昼間アンタたちから回収した菓子にかけた呪いはこうよ……『これを口にした愚か者は、翌日日が昇るまで動けなくなるだろう』」


    *出久の反応 dice1d2=1 (1)

    1.ヴィルの魔法への驚き

    2.食べ物に呪いをかけたことへの怒り

  • 70二次元好きの匿名さん25/03/23(日) 18:26:59

    食べ物アウトって言ってたし何か対策してても不思議じゃ無い

    個人的には食べ物を食べなければ発動しないから食べ物に魔法をかけたことには粗末にしたって印象無いな

  • 71二次元好きの匿名さん25/03/23(日) 21:24:52

    このケーキの呪いとく条件ってほんぺんで分かってたっけ?それが分からないと場合によっては粗末にする事になりそうだよな……って思っちゃう
    ※合宿終わるまでみたいな期間→いくら冷蔵庫入れてようとダメになる、みたいに

  • 72二次元好きの匿名さん25/03/23(日) 21:33:24

    >>71

    後々の話で術者の心次第で呪いにも祝福にもなるって言われてたはず

    だから「このケーキは腐らないし味も落ちない」って呪ったら保存できるんじゃない?

  • 73二次元好きの匿名さん25/03/23(日) 21:57:28

    食べ物を粗末にはしない、って言ってたから消費する算段自体はつけてたのかなぁ
    一日の摂取カロリーと消費カロリーの釣り合いを取るなら許可するとか、いっそトレイに返してハーツラビュルで食べてもらうとか
    この呪い「日が昇るまで動けない」だから昼間に食べるなら無効なのかな

  • 74二次元好きの匿名さん25/03/23(日) 22:34:20

    >>73

    「翌日日が昇るまで」なら昼に食べたら食べた日の次の日の日の出までなんじゃない?

  • 75二次元好きの匿名さん25/03/24(月) 00:20:38

    このレスは削除されています

  • 76二次元好きの匿名さん25/03/24(月) 00:22:51

    このレスは削除されています

  • 77125/03/24(月) 00:23:33

    (ミスったので再送)

    めっちゃ暇だったから幼馴染のSD風イラスト作ってみた
    何をしてもデクのシルエットが野暮ったくなって直せなかったけど諦めてそのままにしてます
    寮章付けるか迷いましたが、確かPart1で二人が寮章つけてないセリフがったので、このスレではオンボロ寮の寮章は存在しないってことで
    そのうち他の衣装verも作りたいね……
    (見苦しくなってすみませんが、念の為無断転載禁止ロゴ入れさせてもらいました)

  • 78二次元好きの匿名さん25/03/24(月) 00:32:10

    すげえええええええええ!!!
    二人共可愛いです!!!
    デクのぶっといネクタイと赤いシューズがお馴染み感出てるし、かっちゃんの片手袋もかっこいいです!!!
    確かPart1で決めてましたね…なんかもう、全部すごい!!!ありがとうございます!!!

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