ここだけノエル先生が『一周目の記憶』を引き継いだ世界 9

  • 1スレ主25/03/22(土) 17:11:32
  • 2スレ主25/03/22(土) 17:12:18
  • 3二次元好きの匿名さん25/03/22(土) 17:13:22

    たて乙

  • 4スレ主25/03/22(土) 17:13:52

    このスレのノエル先生
    ・フランス事変後に修道院に隔離されて間もなく『一周目の記憶』を自覚する
    ・隔離後すぐに代行者として就任。この時点でエレイシアに対する報復を決意し復讐者として生きる
    ・エレイシアが目覚めて代行者になるまでの六年半でひたすらに自己研鑽&限界を超えるための代償を払い続ける。その甲斐あって原作とは非にならない強さを得る
    ・人間以上の耐久を得るための一環で左足を聖別化した義足に改造してもらってる
    ・偶然にも手に入れた十四の石を用いて人外と化す。外見の変化は肌が白くなったくらい。完全に適応してからは恐らく瞳孔も十字になってると思われる
    ・幻想種の中で神獣に区分される『白鯨』モビーディックの遺骸を直接的な経口摂取で取り込み、更に肉体の存在規模を拡張させる事に成功している
    ・現時点での強さは少なくともシエルとの連携でなら後継者をも斃せるまでになっている
    ・というよりシエルとの連携の末に二十七祖のクロムクレイに引導を渡すという大快挙を成しえてしまった
    ・↑の功績もあって教会から『焔(ほむら)のノエル』という異名をつけられる
    ・着実に強くなっていってる事と『一周目の記憶』の自分を反面教師にしてる事もあって大分精神が安定している
    ・ただし完全な復讐者として生きているので高い身分だの裕福な生活だのと言った人並みの幸せには全く固執していない。もはや彼女が望んでいるのはロアやシエルに対する復讐のみとなっている
    ・そんなんだからマーリオゥからは『手を焼かせる制御不能の猪』と厄介に思われてる
    ・ここまで復讐鬼に振り切っているものの、無辜の人々が死徒に虐殺されるのを何よりも許せない代行者としての正義感もちゃんとあったりする
    ・実はシエルを誰よりも憎み蔑んでいる一方で、憎んでいる故に誰よりも彼女を気にかけていたりする。シエルの理解者

  • 5スレ主25/03/22(土) 17:14:50
  • 6二次元好きの匿名さん25/03/22(土) 17:15:38

    たて乙

  • 7二次元好きの匿名さん25/03/22(土) 17:25:56

    たて乙

  • 8二次元好きの匿名さん25/03/22(土) 17:37:58

    たて乙

  • 9二次元好きの匿名さん25/03/22(土) 17:50:06

  • 10二次元好きの匿名さん25/03/22(土) 18:03:18

  • 11二次元好きの匿名さん25/03/23(日) 00:12:27

    fgoに実装された世界線なら藤丸に対しては常に面倒見のいい優しい姉貴みたいになってそう

  • 12二次元好きの匿名さん25/03/23(日) 00:41:51

    >>11

    アヴェンジャーだからムーンキャンサーのシエルには相性不利なんだよね…

  • 13二次元好きの匿名さん25/03/23(日) 08:20:45

    アヴェンジャーもいいけれど敢えてルーラーで実装されて
    第三再臨で復讐者全開の姿と台詞になるのも捨てがたい

  • 14二次元好きの匿名さん25/03/23(日) 17:01:51

    シエル先輩とノエル先生はわかり合えそうでわかり合えない悲しい関係性なのつらいね

  • 15二次元好きの匿名さん25/03/23(日) 22:21:02

    どのエンディングも最高だしとてもしんどくて好き

  • 16二次元好きの匿名さん25/03/24(月) 07:52:02

  • 17二次元好きの匿名さん25/03/24(月) 16:42:27

  • 18二次元好きの匿名さん25/03/24(月) 22:21:47

  • 19二次元好きの匿名さん25/03/25(火) 02:55:43

    ここのノエル先生とマリーオルタの絡みが見たいと思ってる自分がいる
    時代は違えど同じフランス生まれの復讐者で、性格的にも反りが合わなさそうで案外意気投合しそうな雰囲気があると個人的に思う
    カルデアに召喚されたら邪ンヌも交えてフランス系アヴェンジャー女子会でもしてほしいな

  • 20二次元好きの匿名さん25/03/25(火) 09:35:42

    エドモンとかのセリフありそうだけどノエル先生サイドからのボイスは誰が居るだろう?

  • 21二次元好きの匿名さん25/03/25(火) 18:56:53

    保守

  • 22二次元好きの匿名さん25/03/25(火) 21:05:57

    シエルに何言うのかは気になる

  • 23二次元好きの匿名さん25/03/25(火) 22:35:06

    ノエル先輩ってノエル先生の記憶もあるから本来の謎の代行者に会っても色々言いそうやなぁ

  • 24スレ主25/03/26(水) 07:14:28

    ここ数日忙しくてレスする余裕なかったけど今日は時間ができると思うので気長に待っててください


    >>23

    シエル先輩がノエル先生に似た気質のエリちゃんを見てそこはかとなく頭痛が走った描写がクリスマスイベであったけど、そんな先輩がこのノエル先生を見たら色んな意味でフリーズしちゃいそうだね

    で、ノエル先生もとい復讐鬼ノエルはなぜか水着姿の彼女を不可解に思いつつも『こんなところにもおまえはいるのね』と明確に意識して目を付けるんだろうな

    とはいえ流石にカルデア内で自分本位の復讐に走る事はできないので、それこそ前スレで言われてたように失われた故郷の味のパンとかをさり気なく渡す……みたいな細やかな意趣返しを度々繰り返す程度に収めると思う

  • 25二次元好きの匿名さん25/03/26(水) 09:42:21

    ノエルの炎って巌窟王に比べたら対死徒特効に秀でてそう
    罪ある者を焼き尽くす煉獄の炎
    シエルを鉄の女と称したならノエルは罪ある者を焼き溶かす炎の女とかになるのかね

  • 26二次元好きの匿名さん25/03/26(水) 18:23:00

    保守

  • 27二次元好きの匿名さん25/03/26(水) 21:23:38

    このレスは削除されています

  • 28二次元好きの匿名さん25/03/26(水) 21:25:30

    割と復讐心抜けば普通の人間だし現代の人間だから話しやすいタイプな気がするけど藤丸はどんな反応するかな?

  • 29二次元好きの匿名さん25/03/26(水) 21:40:03

    歯がゆくて、口惜しくて、憎らしくて。
    どうしようもない感情(いかり)が、壊れた蛇口からとめどなく溢れる汚水のように湧いてくる。
    こんなの、こんなのあんまりだ。どうして、いつもこうなるのか。
    どんなに上手くいこうと頑張っても失敗する。それまでどんなに順調でも、最後の最後で全てが台無しになってしまう。
    私は運命の気まぐれがどれだけ理不尽かを知っている。だからこそ、その上で全てが上手くいくように代償を払って払って払いまくって、ようやく悲願が叶う手前まで漕ぎ着けられた筈だった。

    「シエル。シエル、シエル、シエル、シエル。シエルシエルシエルシエルシエルシエル。
    シエルゥゥゥゥ………っ!!!!」

    その果てがコレだ。
    贖罪に生き、私の報いを受けて然るべき悪魔は手前勝手の都合で私の復讐の意味すらも奪って手前勝手に死んだ。
    あとに残ったのはこの通り、それまで生きてきた存在意味を簒奪された哀れな復讐鬼だけだ。

    「―――、―――、―――。
    ねぇ、今どんな気持ち…………?無力だったガキが、これまでの13年間で一体どれだけ足掻いてきたのかを理解者した上でそうして自分の幸福(つごう)を優先してさ。相棒を心身ともに自分の意志でズタズタに引き裂いてどんな気持ち?
    私なんか目の上のたん瘤に過ぎないから無視してもいいってか?それとも所詮こんな狂人の復讐とか、付き合ってやるだけ馬鹿馬鹿しいってか?
    ああ、或いはここで自ら死んで私を置き去りにしたらどんな反応をするのか、だなんて考えていても全然あり得るわよね。何なら今言ったコト全部当てはまっててもおかしくないわ。
    寧ろそうでないと、こんな、こんなのは考えられない。あり得ない。信じられない。認められる筈も赦される筈もない。
    ねぇ、ねぇ……ねぇったら。おい。どんな気持ちでそうしたのか、答えろよ……!」

    ……無論、それでも目の前にいる女は何も答えない。
    アイツはただ、眠っている彼に寄り添っている。私の声には何一つとして反応しない。ピクリとも動かない。
    本当に、どうかしている。なんでこうなった。
    何が、一体何がいけなかった?どこで狂った?

  • 30二次元好きの匿名さん25/03/26(水) 22:22:44

    この女が遠野志貴に恋を覚えた事?この女が礼拝堂で遠野志貴と接触する前に私が始末に動かなかった事?律儀に彼の意地に付き合って時間を消費した結果、コイツの再起を許してしまった事?
    そもそもコイツが遠野志貴に接触する前に私が殺さなかった事?廃工場に彼がやってきた時にそこで殺さなかった事?
    分からない。どこが決定的な間違いだったのかが分からない。

    ……いいや、違う。それこそ違う。
    そうだ。何もかも、何もかもが間違っている。狂っている。
    13年前のあの日から、全てがおかしくなっている。コイツが彼を庇いやがったのも私を裏切ったのも、私が人を辞めて復讐にしか生きられなくなったのも、あの日を境に全てが壊れてしまったのが原因であり起因だ。
    馬鹿だ。みんな、みんな馬鹿だ。
    私もおかしいし、コイツもおかしい。遠野志貴もおかしいし、あの白い化け物もおかしい。

    「でも私は、そんな狂った毎日の中で弱者なりに藻搔いて足掻いて生きてきた。この記憶を頼りとして、自分に出来る事を何でもやってきた。
    分からないでしょうね、おまえは。あの礼拝堂で私のこれまでを見せつけられたクセに。思い知った筈のクセに。
    私の事なんて、どうせ過去に引き摺られて意味もなく生きてる愚か者としか見てなかったんでしょう」

    気持ち悪い。頭に、体に、心に鈍い痛みと喪失感が走る。
    同時に、燻る怒りは未だ静まらない一方で、厭に熱が冷めていく感覚を覚える。
    もう結構だ。もう沢山だ。もう、うんざりだ。
    腕を前に差し出す。再び炎を集中させていく。もう、その姿を一秒でも早く消し炭にしたい。炭すら残したくない。
    コイツはロアとして殺されても、その六年後に独りでに蘇生した。なら、今度はそんな不気味なコトが絶対に起きないようにこの地上から焼却してやる。

    「じゃあね、“エレイシア”。せいぜい地獄で苦しんでちょうだ―――ぃ……?」

    炎を放とうとした瞬間、妙な違和感を覚える。
    違和感の原因は……遠野志貴だった。よく見ると、真祖に開けられた胸の風穴が消えている。そして見間違いでなければ、微かにその胸が上下している。

    まさか、これって………本当に生き返った、っていうの…………?

  • 31二次元好きの匿名さん25/03/26(水) 22:39:58

    >>24

    パンの件書いた者です。作者様に気に入って貰えたなら何より……!

  • 32二次元好きの匿名さん25/03/26(水) 23:04:19

    「……いや、だからなんだって言うの。生き返ったから何?そんなの、私にはこれっぽっちも関係ない」

    生き返って、その後は?教会の粛清から逃れるために私に庇ってもらいながら、私の監視の下で細々と生きていく?
    冗談じゃない。そんなの、私が何かの要因で死んだ瞬間に彼もまた終わっちゃうでしょう。
    あのジャリガキだって、ヒトとも死徒とも言えない中途半端な異端者のケツを持ってやるほど寛大じゃない。
    そもそもこの子は自分の手で決着を付けて死んだ。
    『もしもキミがロアに負けずにヒトに戻れたのなら、キミもシエルも殺さないであげる』。私から吹っ掛けた意味のない勝負だったとはいえ、それでも彼がヒトとしての意地を貫いた以上、勝負は私の負けで終わったも同然だ。

    「だったら、ここで私と付き合ってもその先は終わらない生き地獄でしかない。このままキミをヒトでもバケモノでもない宙ぶらりんなナニカとして生かすくらいなら、このまま楽にしてやるわ」

    彼はあの女のように加害者(ロア)にならず、ロアや真祖という吸血鬼たちに抗った被害者としてその命を終えた。
    なら、その尊厳は穢されてはいけない。折角ロアの呪いから解放されたのに、またも人間として扱われなくなる日々を送らせる事だけはあってはならない。
    そう、それが………それで、いいんだ。

    「多分、今はまだ夢現の微睡みにいるのでしょうね。そのままずっと、眠っていなさい」

    そう、これでいい。遠野志貴はヒトとして死んだ。これが彼にとっての最善だ。ここでシエルと共に焼き尽くす。

    ああ、それでも。
    この女に然るべき罰を与えられなかった事は、本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に――――――悔しいなぁ。









    「…………………………………………待て、よ?」

  • 33二次元好きの匿名さん25/03/26(水) 23:20:50

    そういや、今回は前回ENDと色々逆転してんだなぁと思いつつなんか不穏だァ!(ずっとそうだけど)

  • 34二次元好きの匿名さん25/03/26(水) 23:37:19

    遠野志貴は、ロアを殺す為に直死の力で以て死んだ。その不可変である筈の死は、シエルが自らの命を捧げて補填した事で帳消しにされた。
    そしてシエルは、文字通り命を捧げやがった事で死を迎えた。でも、それならコイツは直死とは関係なく自発的に動いて死んだ事になる。線を割かれたわけでも点を突かれたわけでもない。

    それなら―――“やり方”によってはコイツの息を吹き返させられる余地があるというワケだ。

    そう、例えそれが―――『人道を踏み外した方法』であったとしても、可能性はあるワケだ。

    「………………ふ、ふふ。
    うふ、んふふふ。ひ、ひひひ、んっふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ、ふふふふふふふ………」

    何か、酷く淀んでいるモノが内側からせりあがってくる。
    笑みが止まらない。そうだ、そうじゃないか。
    私には、『最高の復讐』があるじゃないか。なんで今の今まで思い出さなかったの。ああでも、よくぞ今思い出したわね。
    このまま燃やす?とんでもない! それこそ間違っていたわ。そんな潔いキレイな締めくくりじゃあ私の復讐は成就しえない。例え故郷を滅ぼした悪魔たちを皆殺しにできても、言いようのない喪失感が一生拭えなくなる。
    今はまだ未完成だし、そもそも試した時の確証もないけれど………ああ、そういえばすぐそこに都合よく“アレ”の血痕が微かに残ってたじゃないの。

    「く、くふ、うふふふふふふふふふふふふふっあはははは、はっははははははははははははははははははは!
    …………ええ、それなら。敢えて、敢えてこの子をこのまま生かしてやるのも悪くないかもね。
    もし、私の企てている事の通りに上手くいけば―――アンタはそう遠くない内に、一番見られたくない姿を一番見てほしくない恋人に見られる事になるんだからねぇぇぇぇぇ?エレイシアぁぁぁぁ?」

  • 35二次元好きの匿名さん25/03/27(木) 08:23:42

    一回死亡を挟んだせいでノエル先生の情緒が完全にぶっ壊れちゃってる…

  • 36二次元好きの匿名さん25/03/27(木) 11:19:02

    もしかして死徒の命を利用して補填すればシエル蘇生できるのか…?
    しかも充填された死徒の魂は人間とは全く異なるモノだから復活したシエルは十中八九死徒化するだろうし
    意趣返しとしては丁度いいな
    死徒であるシエルとそれを庇う志貴を纏めて正真正銘の教会にとっての天敵にできる

  • 37二次元好きの匿名さん25/03/27(木) 11:21:57

    >>36

    現状の実力でロズィーアンを狩れる上に一度遭遇したパラノダリアなら次は不覚を取らないだろうからこの二つの魂を媒介にして死徒としてシエル復活させようぜ

    おそらく復讐の炎がより強まってる現状だと志貴死亡endよりも更に強化されてるだろうし

  • 38二次元好きの匿名さん25/03/27(木) 12:36:22

    ノエル先生流石復讐者だから普通の人と考え違いすぎてカッコいいよ

  • 39二次元好きの匿名さん25/03/27(木) 12:39:18

    このレスは削除されています

  • 40スレ主25/03/27(木) 12:39:35
    【第四話】月姫 -A piece of blue glass moon- ムーンフェイズ|TYPE-MOONコミックエース公式サイト「月姫 -A piece of blue glass moon- ムーンフェイズ」(中谷/TYPE-MOON)の第四話を無料で公開中!web-ace.jp

    ムーンフェイズが更新されてるからさっそく読んだけどさぁ……

    神の視点で言えばシエル先輩だってノエル先生と同じぐらいにロアという吸血鬼の被害者なんだよね

    でもノエル先生は(心の底では理解してても)それを認めることはないし何よりシエル先輩本人も絶対に被害者として主張したりなんかしない

    前回のお話といい、2人の関係が拗れに拗れまくったのも結局は全部ロアのせいなんだ

    そしてこのスレの先生はロア以上にシエル先輩へ憎しみと殺意を向けてるから、先輩も被害者だって分かっていようが『それはそれ、これはこれ』という考えで復讐を止める事は絶対にない

    ここに来てシエル先輩が特大の裏切りをかましてしまった現状なら尚更

  • 41二次元好きの匿名さん25/03/27(木) 13:38:57

    >>25

    故にこそ>>4で書かれてあるように教会から『焔のノエル』という異名で呼ばれてるんだよね

    まさにこのノエルにはピッタリな通り名だ

    シエルが何者にも壊せない鉄の女ならノエルはその鉄を焼き溶かす焔……という感じの連想もさせられるしな

  • 42二次元好きの匿名さん25/03/27(木) 21:21:18

    このまま枯れ果てると思ったら、初志貫徹できる状況だったのすごいどんでん返しだ、シエルは死体、志貴は生き返った直後で眠ってる、これは邪魔する奴がいねえなあ

  • 43二次元好きの匿名さん25/03/27(木) 21:44:01

    >>41

    個人的に焔から死徒や罪ある者に永遠の永遠の責め苦を与える地獄の焔にまで至って欲しいな

    罪を受け入れた人にとっては罪を贖う為の煉獄の焔にも

  • 44二次元好きの匿名さん25/03/27(木) 23:48:04

    >>40

    というかノエルがシエルに対して唯一無条件に尊敬してた要素が裏切りで完全に消滅したからなんとも…

  • 45二次元好きの匿名さん25/03/28(金) 06:38:19

  • 46二次元好きの匿名さん25/03/28(金) 10:33:29

    ああ、そうと来ればさっそく動かないと!
    シエルの死と志貴クンの事はすぐに教会も知る事になるだろう。
    そうなれば教会の連中は、特にジャリガキの奴は現場にいるのもあって即座に回収にやって来る筈だ。
    でも。これは私の復讐。私の、私による、私だけの報復だ。そんな連中に回収なんてされてたまるか。

    「とはいえ、私自身こんな死に体で一時は自由に動けない。その上である程度治るまでコイツらを、どうにかして教会の目から隠さないといけないわね」

    口はこうしてベラベラと喋れているものの、肉体の方は半死半生に等しい。
    そんな状態でこの街からひっそりと出るのは不可能だ。街のどこかにシエルの死体だけでも隠すしかない。
    デパート地下の礼拝堂、下水道のロアの柩……或いは私の部屋?
    正直、どこに隠そうとも焙り出される懸念が拭えない。されど、このままただ時間を消費するだけじゃ何も好転しない。

    「……ええ、そうよ。神様は、どんなに苦しい状況でも諦めずに奔走する人間だけを見てくださっている。だったら尚の事、ここで諦観なんかしてられない。
    とりあえず、この女は…………私の部屋にしまっておきましょうか」

    下手に遠い場所に隠しても、もし見つけられたら咄嗟の対応がとても間に合わない。
    ならいっそ、自分の部屋で厳重に管理するのが合理的と言える。バレたらその時は口で軽く脅せばいい。
    万が一、武力行使されても問題ない。武器がなくとも、身体がボロッボロでも、暴れられるだけの根性はある。
    私の復讐は、こんなところで虚しく終わっていいものなんかじゃない。絶対に、絶対に与えるべき罰を与えなくちゃいけないんだ。

    「……………………」

    動けない身体に鞭打って、2人の目の前まで歩み寄る。
    志貴クンは未だに眠っている。いつ目覚めるかは分からないけど、なんとなく、もう間もなくして瞼を開くような気がする。
    ……シエルの顔を覗き込む。彼を優しく見守るように微笑んでいるその顔には、頬に涙の伝った跡があった。
    今まで見たこともないような顔。コイツの作った笑顔はこれまで散々見てきたけど、こんな顔は一度も見た覚えがない。
    どうしてこんな顔をしているのか。あれだけ私に今更すぎる謝罪を繰り返していたのに、どうして微笑んでいるのか。
    志貴クンには、遠野志貴には、せめて後悔に塗れた表情ではなく微笑みを向けて逝こう。などと考えていたんだろうか。

  • 47二次元好きの匿名さん25/03/28(金) 10:53:15

    マーリオゥはノエルとシエルの件に関しては不干渉を貫きそうだがどうだろ

  • 48二次元好きの匿名さん25/03/28(金) 11:28:51

    「……本当に、どこまでもムカつく女だわ」

    今すぐその顔面を握り潰して燃やしてやりたい衝動に駆られるが、それでは後の愉しみが無くなる。
    どうせこれからコイツの尊厳を徹底的に凌辱して穢して壊してめちゃくちゃにしてやるんだ。今はまだ手をかける時じゃない。
    そして志貴クンは………今さっきも思ったけど、恐らくもうすぐ目を覚ますだろうから起こしてやる必要はないかしら。
    とはいえ、今ここで目覚められるのは都合が悪い。ここは……魔術でもうしばらく眠っていてもらうわ。

    「ロアが消えて死徒でなくなったなら、キミをこれ以上どうこうするつもりはなかったけど……あくまでもキミがシエルを愛して、シエルと共に生きていきたいと望んで、そしてそれ故に私の復讐の邪魔をするって言うのであれば。
    キミも、私の復讐に付き合ってもらうわよ?」

    暗示の魔術を掛けながら、私は彼にそう言った。
    この子は言うなれば、シエルの絶望というメインディッシュを味わい深く盛り付ける為の前菜だ。
    この子の目の前で私に延々と殺され続ける事でシエルが絶望し、そしてその様を見せつけられる事でこの子も絶望する。
    そう。この子には直接的な事は何もせず、ただひたすらに見せつけるだけでいい。ただそれだけで、この子はどん底まで絶望するのだから。
    重ねて思うが、この子は被害者だ。吸血鬼どもに日常をめちゃくちゃにされた、どこにでもいるような一般人だ。
    ただ、それはあくまでも立場的な話に過ぎない。この子がどこまでもこの女の味方をするってんなら、それはつまるところ私の復讐に対立するという事。
    なら、私もこの子に対して容赦をしてあげる理由も慈悲を与えてあげる意味もない。
    『大切な人が目の前で好き放題にされて、自分は何もできずにそれを嫌でも見続ける事しかできない』。そんな絶望を、この子にも味わってもらうとしましょう。

    「キミにはこれと言って怨みはない。だけど……くふ、ふふふふっふふふふふ。
    ―――この女を愛するのなら、私の復讐を阻むのなら。相応の目には遭ってもらうわよ?ねぇ、志貴クン?」

    “アレ”の血痕を採取し、人除けの魔術も施して、私は帰路につく。眠っている人間を2人抱えるのはしんどい事この上ないけど、そんな我儘も言ってられないので気合で足を動かす。
    現状、上手いこと好転していっている。今はその事実だけでも私が笑みを浮かべるのには十分だった。

  • 49二次元好きの匿名さん25/03/28(金) 11:49:03

    今の先生ってシエル先輩から受けた脇腹の傷が開いてる+アルクの真空攻撃で内臓が何個か潰れてる状態だからガチで死に体なんだよね
    本当に復讐への妄執だけで強引に動いてるのか……当人にも狂ってる自覚があるとはいえ尋常じゃない執念だなぁ

  • 50二次元好きの匿名さん25/03/28(金) 17:48:28

    志貴さん殺すんじゃなくてシエル先輩痛めつけるところを見せつけて絶望させる方向なんだね、てっきり志貴くんをめちゃくちゃに痛ましい姿にして復讐するのかと思ったけど確かに前者の方が絶望度数は高いよね
    流石ノエル先生だわ

  • 51二次元好きの匿名さん25/03/28(金) 20:46:18

    そこから何とかしてアパートの自室に到着し、志貴クンを床に寝かせてシエルを戸棚のロッカーに仕舞い込んだ。
    死体に防腐の秘蹟を掛けておいたから痛む心配はない。ま、この女の事だし態々そうしなくても腐ったりしなさそうな気はするけど。

    「ふぅ、これでいいわね。軽量化の秘蹟を掛けていたとはいえ、道中この2人をずっと抱え続けていたのは骨に来たわ……。
    あとは―――」

    視線を落とし、自分の脇腹を見る。血は止まっているが、悪化している事に変わりはない。
    今も身体の内側から耐え難い激痛を感じる。非常にまずい容態だ。人間だったならとっくに死んでいるだろう。
    あの金髪の化け物め、よくもここまでズタボロにしてくれたな。

    「っ………ああ、ヤバい。ちょっとぐらついて、きた。血が足りない。何か、飲まないと。身体を、横にしないと」

    ふらつく足取りで冷蔵庫の中を漁り、飲料水やジュースを手当たり次第に飲み下す。
    それから治癒力を促進する秘蹟を施して、身体をベッドに預けて横にした。

    「………そういえば、毛布はここを出る直前に証拠隠滅で燃やしたんだった。こうして枕だけを残していたのは英断だったわね」

    などと言いつつも、喋ると腹に痛みが走るので黙る事にした。
    あとはこのままゆっくりと回復を待つだけ―――じゃない。“アイツら”がいつやって来るのか、それにも神経を割かなくちゃいけない。
    本当にゆっくりできるのは、まずソイツらをどうにかして追い出してからだ。

    「…………………」

    瞼を閉じる。このまま私も一時眠りたい。今日は人生で一番と言っていいぐらいにあれやこれやと頑張りすぎた。
    なんで負傷した状態で暴走した真祖と闘り合わないといけなかったのか。あれほど生きた心地がしなかったのは13年前のあの日と人間を辞めるまでの数年間ぐらいだ。
    そして今、また頑張らないといけない。今日に限った事じゃなく、これから先ずっと。ずっとずっとずぅーっと。
    私の心が折れようが関係ない。私が生きている限り、私は前に進まなくちゃいけない。
    そうでないと、神様は見てくださらない。私の復讐は、志半ばで儚く消えてしまうのだから。
    それが嫌なら、逃げてはいけないし籠ってもいけない。
    過去を引き摺ってでも、私の怒りと憎しみは、絶対に吸血鬼という悪魔共に振るい下す。その為だけに、この道を13年間奔ってきたんだ。

  • 52二次元好きの匿名さん25/03/28(金) 22:49:48

    「…………………」

    カチ、コチ、カチ、コチ。
    秒針の動く音を立てて過ぎる時間。こうして何もせずにじっと寝ていると、それだけで落ち着くものがある。
    ……夢を見るのは嫌だけど。

    「………………………」

    カチ、コチ、カチ、コチ。
    一時間は過ぎただろうか。小さくない眠気を覚える。志貴クンは……まだ目を覚ます気配はない。
    明かりは一応点けてはいるけれど、もし消してしまったらそのまま意識を落としてしまいそうだ。こんな時もこれまで何度かあったが、眠たいのに眠れないこの感覚は相変わらず慣れなくて辛い。

    “ピンポーン”

    「………!」

    眠気に苛まれていた意識がハッとする。無音状態の部屋に響く、軽快なインターホンの音。次にガチャリと、ドアノブがこじ開けられる音が聞こえた。
    即座に私はベッドから降りて臨戦態勢に入る。そしてそのまま待ち構えて、

    「―――こんばんは、代行者ノエル。オレらがここへ来た理由は、言わなくてもわかるよな?」

    このように、我が家へずけずけと不法侵入してきた司祭代行の御一行サマと対峙した。
    彼の側にいる2人の男……カリウスと安藤はそれぞれ拳銃と警棒で武装している。司祭代行サマも鍵盤織機(ピアノマシン)の篭手を着けている。考える間でもなく状況によっては荒事も辞さないつもりだ。

    「あら。こちらこそこんばんは、マーリオゥ司祭代行。言わなくても分かるよなと仰られましても、口にしていただけなければ理解を示せません。
    女性の部屋に不法侵入、というのは目を瞑るとして……どのようなご用件でわざわざここへご足労を?」
    「あぁ?とぼけやがって。んなモン一つしかねえだろ。テメェが隠してやがる死体(もん)の回収だよ。
    オラ、言え。どこに隠しやがった―――なんて言うと思ったか?荒事になる前にさっさとそこのロッカーから取り出して明け渡した方が賢明だぜ?」

    …………ちっ、流石にロッカーに隠した程度じゃ即お見通しってか。面倒臭いわねぇ。

  • 53二次元好きの匿名さん25/03/28(金) 22:51:58

    正直この三人相手ならノエル1人でボコれるんだろうけど
    立場があるからなぁ…

  • 54二次元好きの匿名さん25/03/29(土) 00:02:48

    「……一応、訊きますが。なぜ貴方々に代行者シエルの遺体を渡さないといけないのでしょうか?異端者の遺体など、他に腐るほど教会にあるでしょうに」
    「逆に聞くが、なんでテメェはソイツの遺体をそうして隠してやがんだ?現場で代行者の遺体が残っているなら上に渡すのは常識だろ?
    そら、答えろ。これは命令だ」

    司祭代行はそう言って、既に察してるだろう私の返答を敢えて強要する。
    ああ、これだからこのガキは苦手なんだ。分かってるクセにわざわざこうして問い質すような性格の悪さは始末に負えない。

    「………その意図も把握してるクセして、その上で命令してまで私の口から言わせるんですね。ええ、なら言って差し上げましょう。
    ―――復讐に利用する為ですよ。私がこの女の死体をわざわざこのように隠す理由なんて、それしかないでしょう?」
    「……………」

    司祭代行は苛立ちでも憐れみとも分からない目で私を見る。
    だからなんだって話だけど。

    「知ってますよ。この子が教会に引き取られたら、その最終的な送還先は埋葬機関になるんでしょう?
    で、そこに引き取られてしまえば尊厳なんて知ったことではない凌辱恥辱のオンパレードに晒されるみたいじゃないですか。
    貴方がこうしてここへ来たのも、そんな未来を憐れんでの事でしょう?ご自身が引き取れば少なくとも埋葬機関に送られる事はなくなるし、この女を安らかに眠らせられる。
    大方、そんなところなんじゃないんですか?」
    「おう、猪のクセによく分かってんじゃねえか。なら話は早え。もう一度だけ言う、シエルの遺体を渡せ。
    ソイツはとんだ金食い虫で散々迷惑かけてきたが、それでも隣人の為に戦ってきた女だ。安らかに眠る権利はあるんだよ。テメェの復讐の為だけに消費されていいモンじゃねえ。
    拒否すれば、分かるよな?」

    カリウスと安藤がそれぞれ構える。マーリオゥも姿勢は変わってないが、目は臨戦態勢のそれになっている。
    ………ああもう。どいつもこいつも私の復讐を阻もうとしやがって。どうしてこう、邪魔が入るのか。
    とはいえ、こういう流れになるのも想定内ではあったけど。

    「へえ、拒否すればどうなるんです?ここで私を押さえてでも奪おうと?すぐ側に彼が、遠野志貴が無防備で寝ているのに?
    言っておきますが、貴方たちがこのまま武力行使しようってんなら私はこの子やシエルを跡形もなく焼き尽くしますよ?」

  • 55二次元好きの匿名さん25/03/29(土) 00:34:19

    本編と違ってこのノエルと対峙するのは正面からの圧力凄いだろうな…

  • 56二次元好きの匿名さん25/03/29(土) 01:31:51

    「勿論、貴方たちも含めて。
    ここの教会関係者の指揮や町長などの御偉方と話をつけたりしているのは他ならぬ貴方ですよね?そんな貴方が今ここで“不慮の事故”で死んでしまえば、後始末の対応に一体どれだけの影響が出るんでしょうかね?」

    別に武力行使でも構わないけど、今の私は文字通りの死に体だ。荒事は極力回避したいので口で脅して黙らせるしかない。

    「ほう、随分と生意気言いやがる。確かにテメェはイカれた狂人だ。必要とあらば上司一人殺すくらいワケないだろうよ。
    けどな、よく考えて行動に移せよ?ラウレンティスの一族は受けた恩は忘れないが恨みも忘れねえ。もしオレが“不慮の事故”で死んだら、事の真相を知った一族が必ずテメェに然るべき報復を与えに動き出す。
    テメェも知ってるだろうが、ジジイの組織における影響力は埋葬機関みてえな例外を除けば絶大そのものだ。ジジイがその気になりゃ、何十もの手練れの代行者たちが一斉にテメェ一人に集中するぜ?」

    このガキの言ってる事は嘘じゃない。ラウレンティス枢機卿の組織を動かす力はそれこそトップクラスと評していい。
    大勢の代行者を動かし、それらをたった一人の異端者に容赦なく差し向けるなんてワケないだろう。コイツは控えめな感じで何十と言ったけど、実際は百人を優に超えていても全然不思議じゃない。
    確かにここで私がコイツを害し、況して殺そうものならそう時間を置かずに枢機卿からの報復が襲い来るだろう。

    ―――ただし。ここにこのガキがいる事が、正式なものであればの話だが。

    「なるほど、それはそれは恐ろしい事この上ないですね。ところで、少しばかり話を逸らしますが貴方はお忍びでこの街へ来られているのでしたよね?確か、私と同じくロアを追っていたんでしたっけ」
    「は?なんだ急に。………おう、そうだったな。もっとも、今となっちゃその目的もご破算になっちまったが。
    で、何が言いてえんだテメェ?」
    「いやぁ、実はひっそりとシエルから聞いていたのよ。法王庁に確認を取ったところ、どうやら貴方は現在アイスランドのデータバンクを視察中……との事らしいじゃないですか。
    おかしいですね。お忍びの言い訳とは重々理解してはいますが、どうしてアイスランドにいる筈の貴方がこんな辺境な街にいるのでしょう?貴方は本当にマーリオゥ・ジャッロ・ベスティーノ司祭代行であせられますか?」

  • 57二次元好きの匿名さん25/03/29(土) 01:42:45

    ノエル先生交渉術も上手になってるなぁ…
    相手が腹に一物抱えてるのを認識した上で的確に突いてる
    そっか教会の重鎮がロアに与するような事をやらかしてた場合にライバルの枢機卿からしてみれば権威や権力を失墜させるいい機会でもある上に
    現状最強とも言える正式な代行者を敵に回すとなると流石のマーリオゥでも下手に動けないわ

  • 58二次元好きの匿名さん25/03/29(土) 02:01:58

    「………おい。もう一度言うぞ。つまり何が言いてえんだ、代行者ノエル?」
    「いえ、ですから。
    ここにいる筈のない人物であれば、最悪殺してしまっても正確な情報が向こうに伝わるのに一体どれだけの時間が掛かるのでしょうかね?と言いたいんですよ。
    もっと突き詰めて言えば―――貴方を『司祭代行の名を騙る死徒』として今ここで殺す事も躊躇いなくできるってワケなのよ。お分かり?」

    言い終わると同時に、右腕を前に掲げる。
    微かに炎を纏わせて、いつでも放てるという無言の脅しを掛ける。
    私がどれだけ厄介な手合いなのかは向こうも把握している。何しろ仮にも上司と部下の関係だ。
    私をよく知っているからこそ、コイツは私の事を制御の利かない猪として扱っている。

    「今ここで退いてくだされば、私はこの手を下げましょう。後を追ったりもしませんし、干渉しません。
    ですが。もしもこのまま力づくで事に移ろうとすれば―――命の保証はない。そう思ってくださると幸いです✩」
    「――――――」

    笑顔で、敢えて軽やかな感じで脅迫する。それを突き付けられたマーリオゥは黙った。
    ほんの僅かではあるけど、動揺と苛立ちの色が見え隠れしているように見える。ガキのクセして私なんかよりずっと頭が回る筈だろうに、意外にも反論の一手はしてこないようだ。
    ブラフなのか、本当に今この瞬間は他にどうしようもないから黙らざるを得ないのか。どちらにせよ現状は私に傾いていると見ていいだろう。

    「………貴様」
    「―――待てカリウス。
    ………………はぁ。クソが、テメェ本当に度し難いクソアマだな。テメェの過去は知っている。そして復讐に走るその動機も理解はできる。
    だが、テメェの復讐は常軌を逸してる。その遺体をどう利用するんだ?死体に八つ当たりする、などと単純なもんじゃねぇだろ。
    テメェ、何を企んでいやがる?『被害者としての復讐』の範疇を超えた、虫唾が走るモンを考えちゃいねえだろうな?いいや違うな、もうとっくに腹に抱えてんだろ?
    ……………地獄に墜ちるぞ、テメェ」

    ふぅん、クソアマね。地獄に墜ちるぞ、ね。それの何が、私の復讐を止めるものに成りえるのかしら?

  • 59二次元好きの匿名さん25/03/29(土) 02:11:48

    シエルもノエルもマーリオゥも所業からして全員地獄行き確定だろうからね
    マーリオゥもロア関連でのツケを払わないといけない時が来るだろうし

  • 60二次元好きの匿名さん25/03/29(土) 09:47:34

  • 61二次元好きの匿名さん25/03/29(土) 13:37:11

    「地獄に墜ちる?結構。私はそんな事など13年前に代行者として、復讐鬼として歩み始めた時点で覚悟していますので。
    私の復讐は誰にも邪魔させない。遠野志貴にも、シエルにも、真祖にも、貴方々にも、聖堂教会にも。
    司祭代行もご存知でしょう?私は文字通り死徒そのものへの復讐に身命を、人生を捧げているんです。それの邪魔をするとであれば、誰であろうが躊躇いなく焼き尽くしてこの世から亡くす。
    私はそういう決意と覚悟の下で生きているのよ。なぜ、そこまで何もかもを代償にしながら尚も復讐にこうして縋るのか。
    理由はシンプル。そうしないと、そうまでして狂わないと私のような弱者が怪物に報復を与える事など永遠にできないから。実に分かりやすく、実にありきたりな理由でしょう?
    そして私はこの選択、この人生に納得……はしていませんが後悔もしていません。だってその選択のおかげで、今の強い私がいるのだから!
    そう、私が求めていたのは平和な日常でも教会においての立場向上でも安心して過ごせる場所でもない。ただ復讐ができるだけの力が欲しかった!憎い憎い吸血鬼たちへ刃を振り下ろせるだけの力が欲しかった!吸血鬼どもを出し抜けるだけの知恵が欲しかった!この女に果てのない絶望を与えてやれるだけの圧倒的な力が欲しかった!この女が、シエルが、エレイシアが、苦悶に顔を歪めて絶叫を上げて赦しを乞い願いながら無様に哀れに虚しく徒花と散り果てる瞬間が欲しかった!それを何よりも望んでいた!その瞬間を見届けて、嘲笑って、心ゆくまで愉しむ為にこのクソみたいな13年間をひたすらに藻掻き苦しみながら這いずって来た!
    なのに。なのになのに、なのになのになのになのに、なのになのになのになのに、なのになのになのになのに、なのにぃっ!!
    このクソアマは私のそういう苦しみと憎しみを見せつけられておきながら、理解していながら!私の復讐に向き合うと言っておきながら!私を置いて惚れた男を優先して死にやがった!!私の相棒などと宣っておきながら私を軽視した、無視をした。私の復讐に生きる人生の意味そのものを手前勝手の醜くて目を背けたくなるぐらい一方的な都合で理不尽に奪いやがった!!」

  • 62二次元好きの匿名さん25/03/29(土) 13:37:27

    「そう、奪った。奪われたのよ!13年前に目の前で同級生やお父さんや恋人が奪われたように!もう奪えるところなんてどこにもないってぐらい私から簒奪しやがったクセに第二の人生の意義すらフイにして死んだ!何も、何も返さずに返そうともせずに死んだのぉ!
    こ、こんな、こんなの許せる筈がない。この化け物をブチ殺す為だけに人間である事ですらもかなぐり捨ててまで奔ってきたのにあんまりだ!認められるワケも受け入れられる道理もない!
    だから私はこれからこの女の死体を利用し、この女を生き返らせる事でこの女がやらかした身勝手な死を否定する。その想いも、その覚悟も、その決意も、その尊厳も、全部全部全部全部否定する。徹底的に、容赦も慈悲も情けもなく余すことなく踏みにじる。
    私が、故郷の人々(わたしたち)がそうされたように何もかもを蹂躙されて凌辱される事の痛みと苦しみと絶望を!この女の骨身に、心に、魂に刻んで刻んで刻んで刻んで刻んで刻んで刻んで刻んで刻んで刻んで刻んで刻んで刻んで刻んで刻んで刻んで刻んで刻んで刻んで刻んで刻んで刻んで刻んで刻んで刻んで思い知らせてやるんだァっ!!!!!





    ――――――と、そういうワケです。ご理解の程、示してくださるかしら。マーリオゥ司祭代行?」

  • 63二次元好きの匿名さん25/03/29(土) 20:51:09

    「…………………」
    「…………………」

    再び、互いに沈黙する時間が生まれる。自分が今どんな顔をしているかは分からないが、一応は微笑んでいるつもりだ。
    10、20、30……と秒数がゆっくりと過ぎ去っていく。1分くらい経った辺りだろうか。マーリオゥが神妙な顔つきになる。

    「………そうかよ。だったらもうテメェの好きにしろ。オレから言う事も、関わる事もねえ。
    退くぞカリウス、アンドー。代行者シエルの遺体の回収は断念する。オレたちは今後一切、この狂人には干渉しない。そうせざるを得ない。
    ジジイに下手にチクる事もできやしねえ。死ぬほど腹正しいが、オレたちじゃこの女には敵わない」

    それは軽蔑か、或いは失望か。そんな感情が剥き出しになっている声でマーリオゥは言った。
    たかが代行者一人くらい、後からどうとでもできるだけの立場にいるにも関わらず、マーリオゥたちはすごすごと私の部屋から立ち去る。
    その去り際で、

    「……テメェも哀れで虚しいな、ノエル。理不尽な運命に踊らされて、その果てで人の道を踏み外した。
    オレはそんなテメェに同情はしねえ。ただ、憐れむだけだ」

    吐き捨てるように告げて、その場を後にした。文字通りの捨て台詞、というヤツだろうか。
    憐れむ?なに上から目線で言ってんのかしら。おまえの感性で、価値観で、視点で私を勝手に憐れむな。
    これだからあのジャリガキはいけ好かない。多分、シエルと同じようにアイツもまた私とは根っこから粗利が合わないんだろうなぁ。

    「まあ、いいわ。もう少しひと悶着が続くと思っていたけど、案外あっさりと退いてくれた。これは嬉しい誤算ね。
    じゃあ、さっさとベッドに横になるか。突っ立ってるだけでも全身痛いし………」

    マーリオゥという厄介な脅威が消えてくれた以上、もう警戒する必要はない。後はゆっくりと身体を癒す事に集中するだけだ。
    そう思って消灯しようとして、

    「………っ………………ノエル、さん………?」

    彼が薄っすらとその瞼を開けて、私に声を掛けた。

  • 64二次元好きの匿名さん25/03/29(土) 21:58:20

    とうとうお目覚めか

  • 65二次元好きの匿名さん25/03/29(土) 23:57:50

    「……あら、お目覚めのようね。おはよう、志貴クン。と言っても、まだ深夜の一時過ぎだけど」

    これまた都合がいいのか悪いのか、このタイミングで彼が目を覚ました。
    まあ、アイツらが去ってくれた後というのを考えれば悪くないだろう。私はもうしばらく眠れなくなっちゃったけど。

    「深夜の……。ここ、どこですか?先輩の部屋、じゃないみたいですけど」
    「私の部屋よ。あの後、キミをここまで運んだの。あのままグラウンドの地面にほったらかし、なんてするワケにもいかないでしょう?」
    「……俺を、どうするつもりですか」
    「そう警戒しなくていいわよ。キミはロアの侵食から解放されて、そして人間に戻った。それなら、私がキミを害する理由も意味もない。真祖と殺し合う直前に約束した勝負、覚えてる?―――君の勝ちよ、遠野志貴クン」

    私なりの細やかな賛辞を送る。それで少しは警戒心が解けたのか、彼の顔から険しさが取れた。
    お人好し故のチョロいところは相変わらずか。流石に緩み切ってはいないようだけど。

    「そう、ですか。それはどうも。
    ………ところで、シエル先輩は?姿が見えないのですが。あの人は………どこに、行ったんですか」

    ふん、キミならそこは気になって当然よね。
    でも、その引きつった顔に震えが隠し切れていない弱々しい声色……ああ、そういう事。夢現の中で、アイツから事の仔細を聞いたりでもしたのかしら?
    キミも可哀想な子。恋人の為に命張ったってのに、その恋人に命を返されて置いていかれちゃったんだし。

    「…………シエルは、死んだわ。
    キミを私に託すと言って、いなくなる自分の分まで私と共に普通の日常を楽しんでほしい。だなどと一方的にお願いしてきて、そしてキミに自分自身の命を捧げた。
    ほんと、自分勝手よね。置いていかれる側がどれほどやりきれない気持ちに襲われるかも知らないでさ。
    ………いいえ。多分それも分かっている上で、キミに自分の未来(いのち)を託したのでしょう」

    諭すように、宥めるように、慰めるように、落ち着き払った声で語りかける。彼の心を、なるべく傷つけないように。
    今はただ、シエルの死という事実を共有するだけに留める。

    「………っ………そうです、か。先輩は、やっぱり。
    まあ、そう、ですよね。実は生きてた、なんて……ある筈、ない。俺がこうして、生きているのが……その、証……なんだから……………っ」

  • 66二次元好きの匿名さん25/03/30(日) 00:14:25

    次にかける言葉は二度と自分に関わろうとして来るなって事かな?
    守るべき一般人であってもノエル側からしたら二度と顔も見たくない訳だし

  • 67二次元好きの匿名さん25/03/30(日) 09:27:10

  • 68二次元好きの匿名さん25/03/30(日) 15:44:57

    彼は俯き、鼻をすすり出す。顔をくしゃくしゃにして涙を零していく。

    「っ、うぅ……、っ……う、ああぁ、ぁぁぁぁ………!」
    「………………」

    その様を見て、いつかの少女(じぶん)を思い出す。
    あの時の小娘も、礼拝堂で同級生が二つ折りにされたり、お父さんがぐしゃぐしゃのリンゴにされて踏み潰されるのを目の当たりにしながら、みっともなく哭(な)いていたっけ。
    大切な人を失う悲しみ。それは同情や理解を示す事はできるけど、真に共感する事はできない。
    だってその悲しみは、喪失感は、虚しさは、他ならぬ当人にしか分からない。それらを当人と共有できるのは、それこそ家族や恋人といったような、心身からの強い繋がりを持っている人たちぐらいだろう。
    もっとも―――私に、私と悲しみを共有できる家族や恋人はもういないけど。この子と違って、帰る家さえない。
    私のこの感情(かなしみ)は、私だけのものだ。理解してもらおうだなんて思わないし、されたところで復讐を止める気などない。寧ろ同情するなら止めてくれるなと言ってやる。

    「………泣いているところに口を挟むのもアレだけど。キミはこれからどうするの?普通の日常に戻る……と言っても、仮にも元転生体だから教会に目を付けられるかもしれない。
    とはいえ私としては、できればそうしてもらった方がいいわ。キミはもう人間に戻ったんだから、日常の世界で生きていく方が無難で最善なのよ」

    ま、割合で言うならヒトとしての部分が8で死徒の部分が2という具合かしらね?夜になると人より活発的になる、という程度かな。
    それに……『例のモノ』が出来上がるまでは近くに居座らせたくはない。この子の勘は馬鹿にならないから死体を隠してる事にも悟られそうだし。
    一旦は日常の世界に置いといて、計画が実行できる段階まで進んだらその時に改めて呼び寄せるんだ。
    時間はそれなりに掛かるだろうけど、その分上手くいった時の見返りはこれ以上ないほど愉しい結果になると見ていいでしょう。

    「………少し、考えさせてください。まず、気持ちの整理を、したいんで」
    「分かったわ。じゃあ、私はしばらく横になっておくから……考えが決まったら起こしてちょうだい」

    寝る間際、さり気なくロッカーに人除けの魔術を施す。下手に勘付かれたら終わりだからね。
    はぁぁ………きっつ。ほんの一時だけどようやくリラックスして眠れるわあ。

  • 69二次元好きの匿名さん25/03/30(日) 23:39:38

  • 70二次元好きの匿名さん25/03/31(月) 00:03:23

    ――――――。
    ――――――――――。
    ――――――――――――――。

    気がつくと、一面に黒い薔薇が広がっている花園に立っていた。
    薔薇はその一つ一つが咲き乱れていて、真っ黒に染まっている花弁を舞い散らしている。
    その光景に見惚れていると、茎の下の地面にふとした違和感を覚えた。固い土の感触ではなく、何かこう、柔らかいものを踏んでいるような。
    違和感のままに地面の方へ視線を落とすと、

    「…………なに、これ」

    地面だと思っていたのは、ヒトの形をした死体だった。薔薇の下に広がっているのは地面ではなく死体の絨毯だったと気づいた。黒い薔薇は、その死体の海から茎を生やして花を咲かせていたのだ。
    悍ましい、と感じた。けど、妙に納得もしていた。
    黒い薔薇の花言葉は、確か………呪いだったり、憎しみだったり、不吉を象徴するような感じだった筈。ということは、この薔薇たちは誰かの呪いや憎しみなのか。そういう怨嗟が、こういう形となっているのだろうか。

    「……………」

    何も言わずに、下に広がる死体を見る。よく見るとそれは全身が焼けていた。一人二人じゃない。見渡す限り、全てが焼け焦げていた。中には炭化しているように見えるモノもある。
    焼け焦げた焼死体の上に咲き誇る黒薔薇の園。それはまるで、憎しみのままに吸血鬼たちを数え切れないほどに葬ってきた復讐鬼(だれか)が築き上げてきた道のようだった。

    「………………………」

    別にこのまま突っ立いていてもよかったが、何となく、当てもなく歩こうと思った。
    黒薔薇はどこまでも果てなく続いている。尽きる事のない憎しみのように。
    私は歩き続ける。ただの直感にすぎないが、このまま進んでいけば誰かと出会ったりするんじゃないかと思った。周りの景色は真っ黒で、雲一つない。なのに薔薇の海はこうしてハッキリと見える。
    不思議に思いつつ、彷徨うように歩いていく。

    「……?」

    すると、ひとつだけ。たったひとつだけ、遠くに真っ赤な薔薇が咲いているのが見えた。

  • 71二次元好きの匿名さん25/03/31(月) 00:48:36

    周囲の世界全てが黒に染まっている中で、その朱い薔薇はただ一輪だけそこに咲いていた。
    私はその薔薇に近づいていく。興味本位か、それともただそこにあったから近くで見たかっただけかは分からない。
    黒い薔薇を踏みしめながら歩いていく。誘蛾灯に誘われる蝶のように。

    「…………え?」

    いつからだろうか。気がつけば、何かが鳴り響く音が聞こえていた。
    それは赤い薔薇に近づくほどにハッキリと聞こえてくる。これは………鐘だ。そう、チャペルの音だ。
    なんでそんなのが聞こえてくるんだろう?

    『―――ああ、そういえばアナタはチャペルとは13年前から縁がなかったのよね。疑問に思うのも無理ないか』
    「……!?」

    突然、私に声が語りかけてくる。どこからなのかと思って周囲を見渡すが、黒い薔薇が広がっているだけで誰もいない。

    『どこを見ているの。前を見なさいよ、前を』
    「は……?」

    言われるままに前方に視線を向ける。すると、そこにほんのさっきまで咲いていた筈の朱い薔薇はなく―――一人の少女が立っていた。
    朱い薔薇と同じぐらいに真っ赤な髪をたなびかせ、瞳は鮮血の色をしている。服装は扇情的で、されど見ただけで気分を悪くするような毒々しい彩色をしている。

    そして。その顔は、その声は、酷く覚えのあるモノだった。

    『直接、こうして話すのは初めてになるわよね。
    ―――ずぅーっと、見ていたわよ。ノエル(わたし)?』
    「……なんで、おまえがいるの」

    ここにいる筈のない、もうこの世のどこにも存在していない筈の―――記憶の中で何度も見た、死徒に堕落した私が目の前にいた。

  • 72二次元好きの匿名さん25/03/31(月) 00:58:13

    まさかここに来て精神世界で一周目の自分自身と顔を合わせる事になるとは………

  • 73二次元好きの匿名さん25/03/31(月) 02:28:54

    『あはっ何動揺してんの!自分自身との対話とか、別にそんなに驚く事でもないでしょう?
    ……なぁんて言っても流石に平気じゃいられないかしら?ま、どうでもいいけど!』
    「……答えなさい。なんで、なんでおまえがここにいる。おまえは、あくまでも記憶の中にしかいない筈。そのおまえが、」
    『どうしてこんな風に、さも当たり前のようにアナタに語りかけているのか?ふふ、わざわざそんな疑問をぶつけるなんて、変なところで察しが悪いのね。わたしはアナタ、アナタはわたしなんだから、少ぉし頭を捻ればすぐに理解でき』
    「答えろと言っているっ!!!」

    ベラベラと煽っているだけの吸血鬼に返答を強要する。ぐちぐち宣わずにさっさと言え。
    なぜおまえがここにいて、私の前に現れたのか。なぜおまえという存在がいるのか。

    『おお、怖い怖い。そんなに急かさなくたっていいじゃない。どうせここは現実じゃないんだし……待って、分かった。分かったから腕に炎を纏わせないで。とっとと話せばいいんでしょ!
    ………あー、まずわたしはね?記憶の中のわたしそのものじゃなくて、記憶の中にある『死徒ノエルという存在の残滓がカタチを成したモノ』なの。要は一種の精神体よ』
    「は……?記憶の、残滓?」

    何を、言っているの?コイツは、記憶の中のノエルであって、だけどそのものではない?
    分からない。本人ではなく残滓とはどういう事なのか。

    『なに、ピンと来ない?それじゃあこう言えば伝わるかしら?
    わたしはアナタの抱える『もう一人のノエルの記憶』という情報が、死徒ノエルの情報を元に独立した意識を持った存在。
    もっと分かりやすく例えるなら―――転生体に植え付けられたロアの情報そのもの。ロア本人ではなく、ロアという存在を構成する情報体。そんなところかしらねぇ。
    ああ、ついでに言うならアナタが代行者になった時点から既にアナタの奥底にいたわよ!あっはははは!』

    「………………………は、ぁ?」

    なんだそれ。なんなの、それ。
    じゃあ、私は。あの悪魔と、エレイシアと同じように。エレイシアが、そうだったように。
    13年前に何の前触れもなく、この記憶が流れ込んだ瞬間から―――ずっと、ずっと………別の意識が潜んでいたって、言うの?

  • 74二次元好きの匿名さん25/03/31(月) 10:17:31

  • 75二次元好きの匿名さん25/03/31(月) 17:56:42

  • 76二次元好きの匿名さん25/04/01(火) 00:14:42

    保守

  • 77二次元好きの匿名さん25/04/01(火) 09:30:31

  • 78二次元好きの匿名さん25/04/01(火) 09:37:32

    ノエルの中にロアが…ってこと!?

  • 79二次元好きの匿名さん25/04/01(火) 17:10:49

    『理解したみたいね。まあ、そういうワケだからさっきも言ったけど、この深層意識の中でアナタのこれまでをずーっと見ていたわ。
    良かったじゃないの。予想外の事態に何度も何度もぶりかりながらも、最終的にはアナタの復讐が成就できるかもしれないんだから!』
    「………じゃあ、何?おまえが死徒のノエルの情報体だって言うなら、本物のノエルは記憶の通りに死んだままなの?」
    『ええ、そうなるわね。本物は今頃地獄で延々と焼かれているでしょう。ま、色々と救われない人生を歩んできたとはいえ、最期には死徒として罪を犯したんだから因果応報よねぇ』

    それはそうだ。どのような経緯だろうと、50人もの無辜の人々たちを弄んで殺した罪は決して赦される事なんかじゃない。
    別の自分だからと言って、そこに同情はしない。寧ろ自分だからこそ尚更に軽蔑せずにはいられない。
    もし、その自分が目の前に現れれば私は躊躇いなく刃を振り下ろすだろう。

    もっとも―――私もこれから、全てを覚悟の上で赦されざる大罪を犯そうとしているのだけど。

    「おまえは、私のこれまでをずっと見ていたと言った。
    だったら、私がシエルに対してこれから何をしようと考えているのかもお見通しってワケね」
    『ええ勿論!ふふふ、死徒に堕として思う存分に虐めるだなんて実に醜悪で邪悪じゃない。
    しかも?その上であの女の彼氏も呼んで、彼氏の目の前でそれを淡々とヤり続けて絶望させるんでしょ?
    あっはははは、仮にも代行者が考えている所業とは思えないわ!狂気の沙汰にも限度があるっての!』

    私の復讐を口にしたノエルは、けらけらと愉快そうに嗤う。
    その反応に不快感を覚えるが、これに関しては私自身の事なのでどうこうと言うつもりはない。
    何より、私も実際にその時が来たら絶対に嗤いだすに違いない。それはもう、狂ったように。壊れたように。

    「……褒め言葉として受け取っておくわ。アイツへの意趣返しとしてはこれ以上ないでしょう?」
    『ふっふふふ……それはそうね。記憶の中のノエルじゃあ、そんな事は思いついても絶対に出来ないわ』

  • 80二次元好きの匿名さん25/04/01(火) 23:26:40

    記憶の中のノエルでは絶対にできない、か。
    確かにその通りだけど……私がここまで来れたのは、そのノエルの記憶があってこそのもの。
    それがなければ、この私も記憶の中と変わらない末路を辿っていたかもしれない。よしんばあんな末路は迎えなかったとしても、一生シエルに復讐だなんて出来ずにのうのうと生きていただろう。

    「ところで、一つ思ったのだけれど。
    おまえは私の深層意識にこうして潜んでいるようだけど、どうして今になって干渉してきたのかしら?
    この13年間、こんな事はただの一度もなかったってのに。これは偶然?それともおまえの故意によるもの?」
    『あら、そんなに気がかりかしら?そうね、この状況に関しては……故意、と言いたいけど偶然によるものよ。
    ほら、アンタ今死にかけてるでしょう?その影響でここまで意識が沈んできちゃったってコト』
    「……死にかけた事なら今回に限った事じゃないし、今までに何度も何度もあった。
    偶然だとおまえは言ってるけど、それらと今回とで何が違うの?」
    『うーん?そうね……考えられる事と言えば、記憶を保持してる事による影響がここ最近の間に強く出てきたからとか?
    例えばそう―――寝ている時に自分が体験した事のない誰かの記憶を追想したり、その影響で起きたら頭痛がした……なぁんてあったりしたかしら?』
    「………!」

    そういえば。
    言われてみれば、ここ一週間近くの間でそんな現象に苛まれていた気がする。
    夢の内容がどんなだったのかは相変わらず朧気だけど……頭痛は日を跨ぐ毎に酷くなっていたのは覚えている。今思えば、あれは記憶の中のノエルが歩んだ人生だったって言うの……?

    『心当たりがあるようね。という事は、日に日にそういう感じで影響が徐々に強くなっていった結果、こうして深層意識のわたしのところまで繋がってしまった……と、考えるのが妥当かしら。
    まあ、これも予想外っちゃ予想外ね。さっきも言ったように、わたしはあくまでこの世界にしか存在できない情報意識体だから、死ぬまでアナタと顔を合わせる事はないだろうなって思っていたもん』

  • 81二次元好きの匿名さん25/04/01(火) 23:47:01

    「ふん、私としても出来ればそうあってほしかったわ。何が好きでおまえという死徒に堕ちた自分自身の顔を見なくちゃいけないのか。況してやこうして話さなくちゃいけないのか。
    それと、おまえは自分の事を転生体に植え付けられたロアの意識のようなモノと言ったわね。
    まさかとは思うけど、私の意識を塗り潰そうだなんて事は企んでいないわよね?わたしはアナタ、アナタはわたしなどとほざいていたし」
    『あはっ残念ながらそれはないわ。だって、仮にもしわたしが汚染して人格を塗り潰すような精神体なら、13年間もアナタがアナタでいられてるワケがないでしょう?
    さりとて、わたしは別個の意識としてアナタという身体にこうして潜んでいる。故にわたしはアナタ、アナタはわたし。そこは言葉の綾じゃないわ!』

    半ば屁理屈に近い回答をノエルは言うが、こっちとしては自分とは別の意識が知らず知らずのうちに13年間も寄生していたって事実に怖気が走る。なんでこうして遭ってしまったの……。

    『あらあら、そんなに嫌い?まあ当たり前か!この姿はアナタにとって忌むべき象徴の一つなんだからねぇ。
    ああ、なんなら初めて人間の血を吸って殺した時の感覚と感触を教えてあげましょうか?あの瞬間はそれはそれは、』
    「黙れ。求めてもいないのに勝手に喋りだすな。おまえは私の質問に大人しく答えていればいいのよ」

    いちいちと癇に障る。記憶の中を散々見てきた中で思ったが、どうしてコイツは他人の神経を逆撫でするような事を口にするのか。
    これだから死徒は始末に負えない。……というのは今に始まった事じゃないけど。

    『んもう、そんな邪険にしなくたっていいのに。ま、別にいいわ。
    それで?次は何を質問してくれるワケ?』
    「………正直に言うと、これは最初からずっと疑問に思っていた。でも、その疑問を問えるヤツもいなかったから仕舞い込んだままだった。
    おまえなら、この疑問に答えられるんじゃないのかしら?」

    13年間、ずっとずっと気になっていた。私がここまで上手くやってこれた切っ掛けについて―――即ち。

    「―――あの記憶は、妄想でも何でもない『本当にあった別のノエルの記憶』なの?そうだとして、どうしてその記憶が私というノエルの中に入ってきたの?」

  • 82二次元好きの匿名さん25/04/01(火) 23:56:20

    とうとう一周目の記憶についての核心的な質問をするか
    実際なんで引き継がれたんだろうな……シナリオ書いてるのはスレ主だからそこら辺もこれから色んな独自解釈を交えて説明するのかな

  • 83スレ主25/04/02(水) 01:06:59

    >>82

    この流れでこう言うのも何だけどこのシリーズ自体が見切り発車なんでそこら辺は何も考えてなかったりする

    なんかそれっぽい理由を思いついたらそれに沿って書こうと思うし思いつかなかったら多少有耶無耶な感じに濁そうとも考えてます

    ただ流石に何もわかりませんの一言で済まそうなどとは思ってないです

  • 84二次元好きの匿名さん25/04/02(水) 11:00:07

    前々から言われてるけど見切り発車と言う割にはストーリーの深みがありすぎるんだよなぁ
    スレ主なら元々考えてなかったような箇所も上手いこと説明できると信じてるよ

  • 85二次元好きの匿名さん25/04/02(水) 19:06:41

  • 86二次元好きの匿名さん25/04/03(木) 01:35:31

  • 87二次元好きの匿名さん25/04/03(木) 02:00:28

    13年前。教会に汚染者として修道院に隔離されたあの日、突如としてこの頭に流れ込んできたノエルの記憶。
    どうしてそんなコトが何の前触れもなく起こったのか?なんで私に流れ込んできたのか?

    『んー、一つずつ説明するけど……まず、さっきも言ったように記憶の中のノエルは今頃は地獄で裁かれてる筈なのよね。わたしはあくまで情報意識体だし。
    つまり―――その記憶は文字通り、“別の世界線のノエルが歩んだ人生そのもの。” これに間違いはないわ』

    実際に、こうして明確に答えられると衝撃を覚えるものがある。
    世界多元論なんて所詮はただのSF的な与太話に過ぎないと思っていたけど……コイツの説明を真に受けるなら、世界は本当に一つだけじゃなかったんだ。
    つまるところこの記憶は、そんな無限にも等しい世界の、色んなノエルが辿った可能性(じんせい)の一つという事なのか。

    「……なるほど。人間時代の私なら今の説明を聞いても付いていけずにちんぷんかんぷんだったでしょうけど、マジで違う世界のノエルの人生(きおく)なのね。
    正直、こうしてハッキリと理解した上で俄かには信じ難いわ。同時にすんなりと納得がいったかな」
    『今までも記憶を閲覧する度にそうなんじゃないかって考え自体はチラついてたんでしょう?でも、話が突飛すぎるから納得するには至らなかったってトコかしら。だけど、そんな突飛すぎる事が本当にあるのよねえコレが!』
    「………もう一つの質問に対しても説明しなさい。どうして、そんな別の世界のノエルの記憶が、この私というノエルに流れ込んできたのかを」

    この記憶が自分とは別のノエルのモノだというのは、よく分かった。
    そして、それ以上に知りたいのがコレだ。何が要因で、何が切っ掛けで、何の因果で、何の運命で、この記憶が私の頭へと入ってきたのか。

    『うん。それはねぇ。実のところ、わたしも当初はなんでそうなったのかがピンと来なかったのよ』
    「は……?おまえも、この現象について分からなかったって言うの?」
    『まあね。わたしだって所詮ノエルだから全知なんかとは程遠いし……と、言いたいけど何年も考えてる内に恐らくこうだろうなって推論は思いついてるわ。
    結論から言うと―――記憶の中のノエルが抱えていた強すぎる無念の力が、ロアの転生魔術による転生体への情報移植と同じような現象を偶発的に引き起こしたのかもって考えてるのよ』

  • 88二次元好きの匿名さん25/04/03(木) 08:28:34

    「……まって。ちょっと、待って。ノエルの無念が?ロアの転生移植みたいな事を?引き起こした?」

    何を言ってるんだコイツ。推論だからって付け足しとけばどんなふざけた事も抜かしていいとでも思っているの?

    『まあ、いきなりそんなコト言われても意味不明よね。わたしもアホらしいと思ってるし。
    けど、一応こんなでもわたしなりに真面目に考えた末の推論なの。ひとまずは聞くだけ聞いてちょうだい。
    アナタだって、なんで自分に別のノエルの記憶が流れ込んできたのかが気になるんでしょう?なら、例え馬鹿馬鹿しい推論だったとしても聞いておいて損はないと言えるんじゃない?
    ま、わたしとしては別にどうでもいいからアナタの判断に任せるだけよ。いくら推論や妄想を垂れ流そうが、とっくに過ぎた事なんだからねえ』

    混じり気のない鮮血色の毛先を適当そうに弄りながら、私の判断に任せるとコイツは言った。
    過ぎた事……確かに、ここで今更コイツの荒唐無稽な仮説を聞いたところで、違う世界を生きたノエルの記憶が私の中に流れた事実には何の影響もない。
    ただ、例えそれがどんなに馬鹿馬鹿しい仮説だったとしても。
    少なくとも私よりも記憶についての事情に詳しいだろうコイツの推論を、敢えて聞くのもいいかもしれない。
    私自身、この現象についてずっと気にしていたのは本当なんだし。

    「……聞かせなさい。さっきはあまりに妄想が過ぎてたようにしか聞こえなかったから混乱したけど、おまえは“結論から言えば”と前置きを付けた。
    つまり、その結論に至るまでの過程が当然あるのよね?適当に考えて雑に導き出したモノじゃなくて、おまえなりにじっくりと考えた上での過程が」
    『そうっちゃそうだけど……あくまで状況証拠から色々と妄想しただけだし、100%この通りと断言はできないわよ。それでもいいのね?』
    「くどい。私は今、聞かせなさいと言ったでしょう?おまえはただそれに従ってさっさと喋ればいいのよ」

    妄想であったとしても、コイツが記憶の中のノエルの情報を元に生じた存在で、且つここまで記憶周りの事情に詳しいのなら聞く価値はある。少なくとも、今はそう判断した。

    『はいはい、ヒト使いが荒いわねぇ。いえ、この場合は吸血鬼使いが荒いが正し……だからそうして炎出して脅してくんのやめてって!わたし、情報体ゆえに脆いんだからさ!燃やされようもんならそのまま消えちゃうの!』

  • 89二次元好きの匿名さん25/04/03(木) 09:18:49

    『あーあ。折角何も知らないアナタに対して説明してあげようと思ってたのに、あんまりそうして急かして来られるとその気も失せ―――ごめんなさい調子に乗りました今すぐ話します。
    ……ん”ん。あー、まずね。どうしてわたしがそんな結論に至ったかって言うと、似たような現象を幾つか思いついたというのが主になるわ』
    「……続けなさい」
    『はいはい。で、その幾つかの似たような現象の一つがバラフライエフェクト。
    ほら、ある場所で蝶が何気なく羽を動かしたら、それが遠因となって全く別のところで台風が発生したってヤツ。
    それと似たように、記憶の中でシエルに討たれたノエルが消滅の間際まで抱いてた無念と悲しみと怒りが、『記憶』という概念として因果の糸を揺蕩うように辿っていった末に、アナタというノエルに至った。
    その結果。記憶の中のノエルとそんなに変わらない、実に滑稽で哀れで惨めな顛末を辿るかもしれなかっただろうアナタの人生はほぼ180°逆転した。
    記憶の中の矮小で卑しいノエルじゃ絶対に得られなかった強さを手にして、肥前で卑屈な彼女じゃ絶対にできない立ち回りもできるようになって、馬鹿で臆病なアイツじゃ絶対に考えつかないし実行もできない手段も当たり前のようにやれるようになった。
    たった一人の可哀想な愚者(おんな)の今わの際の感情(うらみ)が、巡り巡って違う世界の弱者(しょうじょ)に計り知れない影響を与えて復讐鬼(きょうしゃ)に変貌させた。
    ね、こう考えると納得できない事もないでしょう?まあ、だからって世界の壁を越えて影響を与えるとかあり得ないでしょって今でも思うけど』
    「今わの際の、朧気な無念……そんな取るに足らないものが、結果として私というノエルの人生にこれほどの大きな変化を齎した、可能性………」

    無論、これは事実なんかじゃない。あくまでコイツの考えてる事に過ぎない。
    ただ、これを前提として考えるなら……何というか、仮にそうだとしても、こんなにも都合よく変わるものなのだろうかと思ってしまう。
    記憶が流れた程度でここまで変わるほどなら、このノエルももう少し頭を捻れば上手く立ち回れはできたんじゃないか。

    『あははっバカね。そんな度胸と知恵があったら、あんな末路は辿ってないじゃない!』

  • 90二次元好きの匿名さん25/04/03(木) 12:03:26

    『そして、言ってしまえばそれはアナタも同じコト。アナタだって、ここまでクレバーに立ち回れたのは偏にこの記憶があってこそでしょう?ああ、でもそれ以上にアナタ自身の覚悟と努力が大きいかしら。
    言ってしまえば、記憶を抱えたところでそこから反省して頑張れるかは完全にアナタ次第だったでしょ?
    そして、アナタは自分から進んで茨の道を突き進んでいる。それは、記憶の中のノエルじゃ絶対に出来ない選択だわ。そこはもう存分に誇っていいと思うわよ?』

    ……誇っていい、ね。そんなのを誇ったところでマウントを取れるのは結局死徒として無様に死んだノエルしかいない。
    何が悲しくて別の自分にマウント取る必要があるうのか。
    いや、そもそもそんな浅ましい腹積もりでこのトゲだらけの道を進む事を選んだんじゃない。
    私がこの道を進んでいるのは吸血鬼に、故郷を滅ぼした悪魔どもに、あの女に、振り下ろさなくてはならない復讐の刃を振り下ろす為なんだ。

    『うーん、さっすが復讐に狂ったヘンタイ代行者!初志貫徹の姿勢は絶対に変わらないし変わることもないってワケか!
    と、あまりどうでもいいコト言ってまた脅されるのもイヤだから説明の続きを話すわね。
    たった今話したバタフライエフェクトとは別に、他にも似た現象を思いついていたんだけど……言うなればそう、タイムリープ。
    要するに世界そのもの時が巻き戻って―――或いは、その世界よりも前の時間軸の世界に何故か記憶だけが跳んだ。
    そういう可能性もありそうと思ったの』
    「………?つまり?記憶の中でのノエルがいた世界をAとするなら、そのAよりも過去の時間を進んでいる………もとい、私というノエルがいる世界に記憶だけが干渉してきたってコト?」
    『……いや、なんで疑問符を浮かべてんの。一回でバッチリ理解してんじゃん』

    そんなコトはない。世界は複数あるというのは把握できても、特定の一個人の記憶だけが世界を隔てる境界を越えて過去の世界に流れ着くって理屈が意味不明すぎる。
    さっきのバタフライエフェクトの説がまだ納得のいく余地がある。そう思えてしまう。

    『いや、別にそこまで深刻に捉える必要はないからね?何度も言うけど、わたしが勝手に考察してる推論に過ぎないんだし……とりあえず、続けるわよ』

  • 91二次元好きの匿名さん25/04/03(木) 21:11:33

  • 92二次元好きの匿名さん25/04/04(金) 00:52:55

    精神体ノエルちゃんも突っ込んでるけどやっぱりこの√のノエル先輩って原作の先生よりかなりIQ高くなってるよね
    これも13年間の地獄を生き延びてきた故の賜物か……
    あとノエルちゃんもノエルちゃんで何だかんだノエル先輩の努力を認めてて好き
    ずっと精神世界で見てきたからなんだろなぁ

  • 93二次元好きの匿名さん25/04/04(金) 01:08:02

    >>84

    なんというか、ノエルを始めとした登場人物たちの心理描写が特に凄いよね

    前エンドの死徒化シエルとの拷問生活パートとか絶対好きな人多いでしょ

    文章読んでて引き込まれるものがあるしスレ民から続きを望まれるのも納得なんだ

    見ろよこの保守率

  • 94二次元好きの匿名さん25/04/04(金) 10:39:36

  • 95二次元好きの匿名さん25/04/04(金) 19:04:05

  • 96二次元好きの匿名さん25/04/04(金) 22:11:18

    このレスは削除されています

  • 97二次元好きの匿名さん25/04/04(金) 22:35:34

    『で、この記憶だけが都合よく過去の時間軸―――この世界にタイムリープしたのは、ノエル自身の祈りによって起きた奇跡の結果なんじゃないかなと思うのよ。
    アナタも代行者なら、祈りによる奇跡は理屈を超えた現象を引き起こすって理解してるでしょう?それと同じよ。
    ノエルの無念が歪んだ祈りとなって、けれど祈りとはとても言い難い“呪い”が、彼女の記憶(じんせい)を過去の世界に転移させるという奇跡を起こした。
    ま、こんなところかしら。正直自分でも無理があるとは思ってるけど、言うてただの不確定な推論なんだし?
    他にも誰かが意図的に起こした可能性、なんてのも考えたけど……ぶっちゃけこんな誰がどう得するのかも分からないコトを考察しても意味ないでしょ?だからこれについてはそもそも考えてないわ。
    とまあ、ここまでベラベラと喋ってあげたけど。
    要するにさっきのアナタの疑問に対するわたしの答えは、『バタフライエフェクトとかタイムリープとか、幾つかそれっぽい可能性はあるけど結局何が決定的な引き金なのかは分からない。ただ事実として異なる人生を生きたノエルの記憶が、このようにアナタというノエルに引き継がれている』。こんなところかしら』
    「………………………」

    退屈そうに言ってくるノエルとは裏腹に、私は釈然としない気持ちになる。
    『何も分からない』から『こういう可能性なんじゃないか』になったのはいい。ただ、結局コイツでも記憶が流れ込んだ原因が分からないんならお手上げだ。
    この記憶のおかげで、この記憶のせいで、私の人生は良くも悪くも大きく大きく変わった。
    だから、どうしてこの記憶が私に入ってきたのかを知りたかった。それを知る事で、もしかしたら私にとっての更なる益に繋がるかもしれないと思ったからだ。

    「……そう。おまえでもそう言うなら、もうこれ以上疑問をぶつけても無駄ってワケ。肝心なところで使えないわね、おまえ。やっぱり死徒に期待したところでたかが知れていたか」
    『あはは、ひっどい言い草じゃない。まあ死徒にとっては褒め言葉かしら?期待を裏切られて残念だったわねえ!わたしからの細やかな仕返しと思って存分に悔しが ぎゃああああああああ!!??』

    もういい。コイツでもダメならこの事に関しては“そういう奇跡”とだけ思っておこう。13年間も密かに気にしてた自分が途端に馬鹿らしくなってきた……。

  • 98二次元好きの匿名さん25/04/05(土) 02:52:38

  • 99二次元好きの匿名さん25/04/05(土) 12:28:12

    保守

  • 100二次元好きの匿名さん25/04/05(土) 15:52:30

    このレスは削除されています

  • 101二次元好きの匿名さん25/04/05(土) 23:24:06

  • 102二次元好きの匿名さん25/04/06(日) 08:55:01

    保守

  • 103二次元好きの匿名さん25/04/06(日) 17:37:40

  • 104二次元好きの匿名さん25/04/06(日) 22:05:18

    保守

  • 105二次元好きの匿名さん25/04/07(月) 07:19:51

  • 106二次元好きの匿名さん25/04/07(月) 16:52:46

    ノエルちゃん燃やされてて草
    死徒ノエルの情報で構成されてるせいなのかどうしても上から物言ってしまう生意気な性格になってる悲しきメスガキになってんのね……

  • 107二次元好きの匿名さん25/04/07(月) 23:09:48

  • 108二次元好きの匿名さん25/04/07(月) 23:57:11

    「まあいいわ。とりあえずこれで聞きたいことの凡そは済んだ。
    おまえがどういう存在なのか、ここはどんなところか、私に流れ込んできたこの記憶は何なのか。
    知りたい事は十分知ったから、もうさっさと目を覚ましたいところね。こんなトコ、いても楽しくないし」
    『あ、っづ、ぅうぅっぐ、あ”………!マジで、躊躇いなく燃やすヤツが、あるかぁ……!!
    ふ―――ふ―――見なさい、よ。この、真っ黒に炭化した、手と足を、さ。仮にも自分に対して、こんな、酷い事して……心が痛まないワケぇ!?』

    仮にも人間を弄んで殺しまくる死徒の情報を基にした精神体が何やら囀ってるわね。うるさいから今度はその口と喉を炙ってやろうかしら。

    『ひっ!?まま、待って!待って、わかったから!もうバカなコトは言わないから!
    おお落ち着きましょう、ね?ね?わたしだって一応こうして意思があるから痛いものは痛いし、怖いものは怖いの。
    言うまでもないけど精神体としての力もないからロアみたいにアナタという意思を支配する事もできない、そんなただのクソザコ貧弱ノエルちゃんなの。
    ね?つまるところ無害なんだからさ、その手を下げてちょうだい?お、お願い……!』
    「……必死すぎでしょ。おまえ、本当に傲慢不遜で卑しい死徒ノエルの精神体なの?
    いえ、卑しいからこそそうやって惨めに情けなく命乞いしてるのかしら?
    はは!だとしたら、それはそれで本物のエミュレートがちゃんと出来ているじゃない。おまえ自身、意識して真似ているつもりはないんでしょうけど。
    ふん、なら別にいっか。何れにせよおまえはここで私を見ている事しかできないようだし、それに免じて燃やすのはやめておきましょう」

    とはいえ、何もできないクセに生意気な口を訊いてくるこのクソみたいな性格は……どうにもならないか。
    やっぱり燃やした方がいいんじゃ?―――と言いたいけど、コイツを消す事で私の中にある『別のノエルの記憶』にどんな影響が生じるのかが分からない。
    特に何もなければそれが一番だけど、何かしら起きてしまえばマズイ。
    コイツはこの記憶から生じた精神体だ。記憶そのものと密接に繋がっていてもおかしくないし、ここで消すというのは適切な選択とは言えないわね。

  • 109二次元好きの匿名さん25/04/08(火) 08:01:26

    死徒つっても本人は地獄で記憶単体だしね…

  • 110二次元好きの匿名さん25/04/08(火) 13:59:47

    「…………あのさ。話は変わるけど、今すぐ都合よく目が覚めて、この精神世界から抜け出せたりしない?もう気になる事は聞き終えたんだし、正直これ以上ここにいる理由がないのよ。
    というより、おまえの顔がそもそも見たくないから同じ空間にいたくないわ」
    『んなモン言われてもわたしがどうにかできる事じゃないわよ。向こうのアナタは深い眠りに付いてるんだし、大人しく自然に意識が浮上するのを待つことね。べぇ~~!』

    は?なによこのクソガキ。マジでブチ殺されたいのか?
    それとも私が殺すのを躊躇っているのをイイ事に煽れるだけ煽り散ら………いや違うわコレ、そんなの関係なくナチュラルにそういう言動を取ってるだけか。
    何というか、同情はしないけどそれはそれとしてコイツも可哀想なヤツね。

    「あっそ。じゃあ私はおまえから離れて適当なところで寝そべるとするわ。死体の上で身体を横にするのは慣れてるから問題ないし。
    ああでも、おまえは外の様子を見れるんだったかしら?なら、もし目覚めそうになったらその時は教えなさい。んじゃ」
    『ちょっと待ちなさいよ。実を言うとわたしもまた、アナタに対して一つだけ質問したい事があるわ。
    アナタの一方的な疑問に律儀に答えてやったんだし、たかが一つくらいならそっちも答えてやるのが筋ってもんよね?』

    何なの急に。死徒なんざに通してやる筋とかないんだけど……でも、その一方で少しだけ気にはなる。
    コイツはこれまでの私の人生を観てきた。それだけじゃなく、私の意識にこうして介在している故に私の思考や感情もある程度は把握できるんだろう。
    そんなコイツが私に対して何を問いたいと言うのか。これまでの私の全てを観ていたクセに、何が気になるというのかしら。

    「……おまえのほざく筋とかどうでもいいけど、答えられる範囲なら教えてあげなくもないわ」
    『あらそう。急に対応が優しくなったじゃないの。じゃあ、遠慮なく質問させてもらうけど、
    ―――アナタは、どうして復讐(この人生)を選んだの?
    記憶があるのなら、自分がどんな失敗をどのタイミングでやらかすか?なんて事も把握できるワケだし、そうした危険を極力回避しつつも人並みの幸福を手に入れようと奔走する道だって選べたわ。
    アナタはそれも理解した上で、血と憎悪で舗装されたこの地獄(ルート)を自分から進んで選択した。それは一体、どうしてなのかしら?』

  • 111二次元好きの匿名さん25/04/08(火) 15:00:58

    何を訊いてくるのかと思えば、そんな単純な質問だった。
    正直に言えば多少身構えてさえいただけに、問われた事の内容に拍子抜けした。
    なんで今更、そんな分かり切った事をわざわざ訊くんだろう?

    「どうしてって……そんなの、あの女が―――エレイシアが、心の底から憎いからに決まっているからじゃない。
    アイツが生まれてさえ来なければ、私の家族も友達も、故郷も人生も奪われる事はなかった。私が、こんなクソみたいな第二の人生を歩む事もなかった。
    だから報復するのよ。アイツに、全てを踏みにじられて凌辱されてゴミのように殺された人々の……いえ、私の怨嗟を思い知らせるの。
    結局、私というノエルも自分の都合しか頭にない自己中な女だからさ。故郷の人々や家族の為なんかじゃなくて、単に私があの化け物を殺したいから復讐しようと決意したってだけ。
    そもそもよ。教会に汚染物扱いされて首輪付けられてる時点で、人並みの幸せとかあってないようなものでしょ?可笑しいわよね、私はその時点じゃあ何も悪くないただの被害者だってのに。
    私の人生を観てきたってんなら、当時の私が一時過ごした修道院での生活がどれだけ最悪だったのかってのもわかるでしょう?どうして人並みの幸せを奪われた先で、そんな生きた心地のしない生活を送らなければいけないのか。
    だから私は、正直に言えば全てが嫌いなの。私の人生を奪った吸血鬼共も、私を被害者どころかヒトとしてさえまともに扱わなかった聖堂教会の連中も、私をこんなにも理不尽で吐き気の催す地獄に墜としてくれやがった運命の気まぐれも。
    優しい言葉にはいつも裏がある。暖かい対応には打算が入り混じり、慈しみのある慰めは所詮上っ面。
    鉄の意思も、信頼と信用を交えた贖罪と復讐の誓いも、何かしらの切っ掛け一つでバラバラに瓦解して、あっさりと他人を裏切る。ブルータスに暗殺されるカエサルのように。
    血。そう、血よ。どこにいっても、どこを見渡しても血しかないの!腐って黒ずんだ血と肉と骨と死体しかないの!
    部屋に入ったら!地下に行ったら!礼拝堂に行ったら!人間の人生とかどうでもいいと言わんばかりに化け物が血を啜って肉を喰らって骨を噛み砕いてるの!ヒトの形をしたヒトのようなナニカが、ヒトだったモノをぐちゅぐちゅと貪り喰ってるのよ!!

  • 112二次元好きの匿名さん25/04/08(火) 15:22:30

    ああ、悍ましい。怖ろしくて気持ち悪くて仕方がない。こんな生き物がゴキブリのように這い回って数を増やしてのさばっている事実に気が狂いそうだった!いいや、いいやいやいやいやいや!もう狂っていた。そう、狂っていたの。そうでなければ代行者なんて今日までやってこれるワケがないしとっくにドコかでぶっ壊れているんだから!
    ひ、ひぃひひひひひ!だからぁ、だから私は、私がこの道を選んだのはね?
    私の人生を粉々に踏み砕いて!私を狂わせたあの悪魔を!この手で何度も何度も何度も何度も何度も何度もずっとずっとずっとずっとずっと殺し続けて!その果てに燃やして焼いて塵も遺さずにこの世界から消し去りたかったからなのよぉ!!
    全てが、全てが気に入らなぁい!アイツの才能も、力も、異常性も!性格も言動も顔も声も、私を置いてただの人間に成り下がりやがった事も!
    全部、全部全部ぜぇぇぇんぶ否定したかったからだぁぁ!!!!」

    ああ、おまえにこの気持ちが分かるかしら?
    いいえ、こればっかりは分からないでしょうねえ寧ろ分かってたまるか。これは、このぐちゃぐちゃとした感情(もの)は私だけのものだ。
    他の誰にも分からないし分かってほしくもない。私だからこそ理解できて、共感できて、同情できて、憐れむ事も蔑む事もできて、できなかったらそれはもう私じゃない。私だったただの壊れた廃人だ。

    「んっふふふふふふ、ふふふふふふふふうふふふ。
    ね、これで満足のいく答えになったわよね?ノーとは言わせないわ。だってこれが今も変わらない、私の本音ですもの。
    本音だからこそ嘘偽りなくありのままに話せる。思いの丈をぶちまけられる。
    そこに嘘や躊躇いがあればそれらは不純物となって本音を曇らせる。本心を隠してしまう。
    でも、私はそれもまたいいと思っているわぁ!第一、本音だけで何とかやっていけるほど世の中単純じゃないんだし。誰も彼もが嘘と本音を交えながら生きているのだから、私もちゃんとそれに合わせて生きていかないと。
    私、復讐鬼ではあるけど社会不適合者じゃないの!うふふふ、ふふふふふふふうふふふふふふふ」
    『…………………』

    ふふ、その顔は何かしら?絶句?唖然?呆然?それとも無関心?或いは同情?
    まあ、おまえがどんな面持ちだろうと本当にどうでもいい事この上ないけどね。私はあくまで聞かれた事に対して答えてやったに過ぎないし。

  • 113二次元好きの匿名さん25/04/08(火) 15:55:51

    頭のネジなんていつから外れているのか知った事じゃない。そんな余分は復讐の上で邪魔でしかないわ。必要なのは倫理を無視できる狂気と覚悟に他ならない。

    「で、もうどっか行ってもいい?ていうかいいわよね、一回限りの質問には答えたんだからさ」
    『…………ええ、そうね。
    ………好きになさい』

    なんか歯切れ悪いわね。まあいっか。これで心置きなく寝られる。
    ………深層意識の中で更に寝たらどうなるんだろう。仮にもっと深いところに沈むんだったなら、それはそれで戻って来れなさそうで怖い。
    一応、目は開けておこうかな。

    「それにしても、早く目覚めてくんないかな。私にはまだやるべき事がいっぱいあるのに……」
    『………アナタ、仮にも死にかけてるって忘れてる?少なくともあと数時間は絶対に起きないわよ』
    「は?」

    勝手に盗み聞きすんなっての。デリカシーもないのかしらこのクソガキは。というか、いま数時間って言った?

    「ヒトの呟きを勝手に盗み聞いた事には目を瞑るとして、たったその程度とは意外ね。
    てっきり半日以上は起きないと思ってたわ。ああ、何だったら丸二日くら」
    『―――もう半日過ぎてるわよ?アナタがここに来て、わたしとこうして話してる間にね』
    「……え」

    ちょっと待て。コイツ、もう半日過ぎてるっつったか?
    私がここに来てから、って事は……確か、最後に確認したのが深夜の2時近くだったから…………昼の、14時過ぎ!?

    「待って、志貴クンは?そんだけ時間が経過してるんなら志貴クンはとっくに起きてる筈よね?
    あの子は今何やってんの?まさかとは思うけどロッカーに近づいて、」
    『いや、寧ろ付きっ切りで一向に起きないアナタを看ているわよ。今のところ心配になった妹が家に侵入してる、なんて思わぬトラブルも起きてないし。況してやロッカーの事なんて気にも留めてないわね』

    ――――――。
    焦った。コイツの言ってる事を信じれば、まだ何も問題ないってワケか………。

  • 114二次元好きの匿名さん25/04/08(火) 23:38:31

    保守

  • 115二次元好きの匿名さん25/04/08(火) 23:54:29

    「そう、じゃあ別にマズイ事態にはなっていないワケだ。志貴クンに要らぬ心配を掛けさせてるだけってコトね」
    『そうなるわね。こりゃあ起きたら軽く泣き付かれそうかしら。ただでさえシエルの死にメンタル参っちゃってるんだし、覚悟しといた方がいいわよー』

    あら、それは確かに腹を括る必要があるわね。思ったより彼を不安にさせてしまってるようだし。
    もっとも、そう遠くない内に不安どころか更なる絶望に叩き落としてあげるつもりなんだけど。

    『うわ、なんて悪い顔してんのよ。仮にも外見年齢18歳の女が浮かべる表情とは思えないわ。死体みたいな青白い素肌といい、完全に悪霊のそれにしか見えないんだけど?』
    「あっそ、それは褒め言葉として受け取っておくわ。実際、私は生きた怨霊みたいなものだしね。
    恨みを原動力にしてこれまでを生き抜いてきたんだもの。人間としては13年前から死んでるも同然よ」

    くだらない問答をしつつ、地面に寝そべる。
    そのまま何をする事もなく、ただ時が過ぎていくのをひたすらに、じっくりと待つ。
    ここは精神世界だ。時間の感覚は意識の外とは違うし、ほんの少し過ごしているだけでもすぐに何時間と経っていたっておかしくない。
    現に、この一時間にも満たないような間で外では半日以上も過ぎちゃってるワケだし。

    「……………………」
    『………~♪………、………~~♪』

    ――――――。
    ――――――――――。

    ただ、無の時間が過ぎていく。そう離れていないところでアイツの鼻歌が聞こえる。
    呑気なヤツだ。恐らくはああいう感じで、他人(わたし)の苦労を退屈しのぎのつもりで今まで観ていたに違いない。そう思うと腹が立つ。
    ………よし、ここは少しばかり突っかかろう。どうせちょっかい掛けてる間にも時間、が――――――?

    「――――――ぁ?」
    『………ん。来たわね。ほーら、喜びなさい。そろそろ時間よ』

    不意に襲い掛かる眩暈の感覚。周りを見渡すと、世界が徐に歪み始める。それらに伴うかのように、身体の浮遊感が強くなっていく。
    ……ああ。これは、つまりそういうコト。はあ、しばらくは志貴クンにうるさく泣かれるだろうなあ。

  • 116二次元好きの匿名さん25/04/09(水) 02:06:30

    段々と境界が曖昧になっていく。
    視界は霞んでいき、自分がどんな体勢でどこにいるのかも不明瞭になっていく。

    『あ、そうだ。多分、わたしたちがこうしてハッキリと顔を合わせるのは今回が最初で最後になるかもしれないからさ。
    今のうちにアナタに言いたいコト言っておくわね』

    全てが急速に虚ろになっていく中で、確かにソイツの声だけは聞こえた。
    ………私に対しての小言でも呈するつもりだろうか?

    『そんなんじゃないっての。いや、でもそれも含まれてるかしら?ま、時間がないからとっとと吐くわ。
    ……ノエル。アナタのここから先の人生は、どのような結末であれ凄絶で凄惨な復讐劇として終わるでしょう。
    地獄へ真っ逆さまに転げ落ちる事を覚悟の上で尚も突き進むというのなら、どうぞ怨嗟の赴くままにその血塗られた道を歩むといいわ。
    シエルとの確執。エレイシアへの憎悪。拭いきれない、忘れられない悲劇(かこ)の因縁。それら全てを精算し、ケリをつけるべく進もうとする意思はもう誰にも止められない。
    誰であろうと、アナタは排除する。阻むモノの悉くを退けた果てで、アナタはとうとう自らの復讐譚にピリオドを打つのでしょう。
    ……それは救いのない、独り善がりの虚しく儚い狂気でしかない、地獄への黄泉路と言っていい。それでもアナタは一歩ずつ、この路を踏みしめていくのね?』
    「―――――――――――」

    は。この期に及んでまだそんな戯言(かくにん)を取るのか。
    何度訪ねようが私の答えは変わらない。変わらないからこそ、これまで一度も折れずに砕けずに壊れずにやってこれたんだから。

    『愚問だったか。それじゃあ、そんな歪みに歪みきった救いようのないアナタに、わたしから手向けの言葉を。

    ―――せいぜい、存分に復讐を愉しんで。そしてその果てで無様に死になさい。わたしはその瞬間まで、ここからずーっと観ているわ!』

    最後まで憎たらしく、けれど分かりやすい、コイツなりの激励。
    言ってろ、クソガキ。なんて思いながら、私の意識は浮上していった――――――。

  • 117二次元好きの匿名さん25/04/09(水) 04:00:41

    【DAY15/夜の虹】

    D■Y15/夜の■

    DAY1■/■の■

    D■Y■■/■■虹

    ■■■■■■■■■

    ■■■■■螟懊�陌ケ

    ■■■■■證√�蠢�↓
















    【DAY16/暁の心火】

  • 118二次元好きの匿名さん25/04/09(水) 09:16:16

    このレスは削除されています

  • 119二次元好きの匿名さん25/04/09(水) 18:11:58

  • 120二次元好きの匿名さん25/04/09(水) 20:21:51

    ロアは消滅し、アルクを死闘の末に何とか退けて、シエルの死体を回収して、マーリオゥたちを追い返して、精神世界で死徒の自分からの皮肉と嘲りを交えた激励をもらって、あとは志貴を上手いこと言いくるめて自分のもとから離しつつ復讐の準備を進めるだけ
    字に起こすと本当にこの二日間近くで色々と起こりすぎてるな
    その上でノエルにとって都合のいい方向に進みつつあるから読んでる側としても応援したくなる
    頑張れあともう少しだ先生

  • 121二次元好きの匿名さん25/04/09(水) 20:30:26

    夜の虹というタイトルが侵食されるように文字化けしていって暁の心火に変わるの好き
    まるでシエル先輩と志貴の悲しくも尊い死別をノエル先生が否定してるみたいだなあ

  • 122二次元好きの匿名さん25/04/09(水) 20:44:02

    >>121

    心火って激しい怒りや憎悪といった煮えたぎるような感情を火に例えた意味もあるから復讐鬼と化してシエルの全てを否定するノエルに相応しい言葉よな

    前回のendは何だかんだで愛憎入り混じってシエル好きぃになってたけど今のところは憎悪一点になってるし果たしてここからどうなるのか

  • 123二次元好きの匿名さん25/04/09(水) 21:01:50

    >>121

    シエルの裏切りを防げたからこその前回の結末だからね…

    志貴を生かそうとする限りシエルとの和解ENDはほぼ不可能という詰み

  • 124二次元好きの匿名さん25/04/10(木) 00:37:17

    保守

  • 125二次元好きの匿名さん25/04/10(木) 06:51:24

    このレスは削除されています

  • 126二次元好きの匿名さん25/04/10(木) 13:02:48

    このレスは削除されています

  • 127スレ主25/04/10(木) 22:14:36

    今ストーリー練ってるけど正直に言うと死徒ノエル(精神体)はマーリオゥたちを追い返すパートの辺りまではまったく登場させる予定がなかったです
    でも一周目の記憶を引き継いだ理由や原因とかに触れる上で、単純にノエル先生の考察だけで完結させるのも何か物足りないし普通すぎるなと思ったのでノリと勢いで出しました
    こう、説明する役がいてくれた方が筆が進みやすいんですよね
    そんなこんなで実質LASTDAYに相当するパートに入った訳ですが今の時点ではどういう結末にするかはまだ決めあぐねてます
    ただ一応2パターンくらいは浮かんでますね

  • 128二次元好きの匿名さん25/04/10(木) 22:51:18

    本当に登場させるつもりなかったのかと疑ってしまうくらいにはガッツリ書いてて笑うんだ
    前回のも含めたこれまでのendではそれぞれ何を思ったんだろうかこのノエルは
    慢心、ダメ、絶対。の場合とかゲラゲラ笑ってるか心底呆れてそうだな

  • 129二次元好きの匿名さん25/04/11(金) 01:43:39

  • 130二次元好きの匿名さん25/04/11(金) 08:26:22

  • 131二次元好きの匿名さん25/04/11(金) 17:18:38

  • 132二次元好きの匿名さん25/04/12(土) 00:06:36

  • 133二次元好きの匿名さん25/04/12(土) 03:40:21

    深夜だけど支援絵を投下する
    めちゃくちゃ楽しみなssだから気長に待ってます!

  • 134二次元好きの匿名さん25/04/12(土) 12:02:54

  • 135二次元好きの匿名さん25/04/12(土) 14:35:47

    ノエルとシエルの関係はこんな感じだろうなぁ…

    ミザン/flower, 歌愛ユキ


  • 136二次元好きの匿名さん25/04/12(土) 18:23:00

    ――――。

    ――――――。

    ――――――――――。

    「――――――んっ……ぁ………」

    重い瞼を開ける。瞬間、視界に写るは電灯の明かり。それに反射的に顔を顰めながらも、辺りを見回す。
    時刻は18時半。暗くなった外を写すカーテンの窓に、布団や着替えを収納する為の襖。床には質素なカーペットが敷かれている。
    そして、自分が寝ているベッドのすぐ横に立っているロッカー。

    「……はぁぁ。どうやら、目が覚めた…………みたいね」

    周りの状況を確認し、夢から醒めた事を自覚する。
    すぐに身体を起こそうと思ったけど、未だにズキリと全身が痛む。流石に昨日よりは幾分マシにはなっているが、それでもこの感じだとまだまだ安静と回復が必要らしい。

    「っ……、痛っっつ………!」

    痛みを堪えつつ、上半身をゆっくりと起こす。痛い。痛いけど、起きる気が失せる程のレベルじゃない。とはいえ無理は禁物だ。とは言うものの食事の用意とかは自分で何とかして動かないといけない。
    はぁ~~~~つっっら………。こういう時に都合よく誰かが代わりに動いてくれたりとかは――――――ぁ。

    「………そう言えば。志貴クンはどこに、」
    「――――――ノエル、さん?」

    ……噂をすれば何とやら。部屋の襖を開ける音と、そこから聞こえてきた声の方へ意識を向けると―――彼が立っていた。

    「あ、はは。驚いたわ。まだいたんだね、志貴ク」
    「ノエルさん………!!」
    「えっ、ちょ……!?」

  • 137二次元好きの匿名さん25/04/12(土) 18:50:03

    私の事を認識した途端、彼はいきなり縋り付くように駆け寄ってきて、私を抱きしめた。

    唐突な志貴クンの豹変に動揺していると、耳元で微かに咽ぶような声が聞こえた。


    「っ……よか、った……!このまま、あなたも目を覚まさないんじゃないか、って……怖かった。すごく、怖かった!

    起きてくれて……本当に、ほんとうに、よかった………!!」

    「………………はいはい。心配かけてごめんなさいね。それはそれとして身体が痛むから、悪いけど離れてくれる?」

    「! ……はい。すみま、せん。つい、衝動的になってしまいました」

    「いいわよ、悪気がないのは理解してるから。昨日の事を考えれば、尚更ね」


    そりゃ仕方ないわよね。お人好しが過ぎるキミの立場になってみれば、最愛の人を失っただけじゃなく、その相棒まで後を追うように死んでしまうんじゃないかって不安と恐怖に襲われてたんだもの。安堵のあまり抱擁するのも無理からぬ事かしら。

    もっとも私としては、一度は殺し合ったキミにそこまで心配される謂れも筋合いも無いんだけど。


    「ところで……一つ、改めて確認しておきたい事があるのだけど。

    どう?私がこうして目を覚ますまでの間に、考えは決まったかしら?」

    「……! それ、は……」


    日常の生活に戻るのか、それとも私の監視下に入る事を覚悟の上で教会側に行くのか。

    前者ならそれに越したことはないけど、後者を選ぶのなら面倒だ。復讐の計画を悟られる可能性を生み出すワケにはいかない。この子の勘の良さは、恐らく私が思ってる以上に脅威でしょうから。

    ただそれはそれとして、まずは一応、この子自身の意思で決めた返答を聞こう。焦って強引に進めてはいけない。急いては事を仕損じる、だ。


    「まあ、まだ決めあぐねてるなら別に構わないわ。ただし、出来れば今日中に決断してもらえると都合がいいかしら」

    「………いえ、そこまで待ってもらう必要はないです。もう、決めています。

    俺は―――」


    dice1d2=2 (2)

    1.普通の日常に戻ります

    2.シエル先輩を、生き返らせたいです

  • 138スレ主25/04/12(土) 19:02:17

    >>133

    おおおありがとうございます!

    復讐に燃え狂うノエル先生の狂気と憎悪の笑顔が恐ろしくも悲しいなぁ

    背景の黒薔薇と黒い焔も復讐鬼の彼女を歪に彩っているようで何とも言えない儚さが感じられる


    >>135

    歌詞や雰囲気もだけどこの子たちの見た目も2人に似ているな(主に髪型)

    “過去だけ見つめては悲劇を気取るのね 私もきっと同じ様に生きていくわ”の部分とかまんま過去を引き摺りまくってるノエル先生じゃん……

  • 139二次元好きの匿名さん25/04/12(土) 19:46:30

    シエルの代わりとして埋葬機関からのスカウト来そう

  • 140二次元好きの匿名さん25/04/12(土) 22:42:08

    ノエルの前でコレ言うのって志貴自身は相手がブチギレるのはわかってて言ってるだろうな…
    その相手は更にヤバい事考えてそうなんであんまり映えないけど
    まぁノエルさんは蔑ろにされ過ぎてキレるだろうな

  • 141二次元好きの匿名さん25/04/12(土) 23:22:29

    「――――――そう。それが、キミの答えというワケね」

    はあ、と心の中でため息をつく。
    やっぱり、やっぱりそう答えるのか。私としては普通の日常に戻りたいと答えてくれた方が都合がよかったんだけどなあ。
    シエルを生き返らせたい、か。
    そう。生き返らせたい、ねぇ。

    「その気持ちは分かるけど、当てはあるの?ないでしょう?
    私だってそんなのには見当がまるで無いしね。それに、その返答が意味するところはつまり聖堂教会に入るって事よ。
    言うまでもないけど教会の一員として働くのは過酷極まりないわ。況してやキミは元転生体の異端者、いい扱いは期待できたモノじゃないでしょうね。たらい回しにされたって文句の吐ける立場にはなれないと思うわ。
    それでも、キミの意思は変わらないと言うのかしら?」
    「………はい、変わりません。あなたが目覚める間、俺はずっと考えていました。
    俺は、取り返しのつかないバカな間違いを犯してしまった。
    自分がロアと共に死 ねば、先輩はロアから解放され、ノエルさんも復讐の矛先を先輩に向けられる。
    仲良くなる、なんて事は絶対にないだろうけど……それでもロアというしがらみから解き放たれたのなら、互いに折り合いを付けながら本当の意味で向き合っていけると思った。
    それを、愚かにも最善だと信じてしまった。その結果がこれだ。俺もノエルさんも、先輩に置いていかれた。
    俺が考えていた独り善がりの最善なんかとは、真逆の結末になってしまった」
    「………………」
    「だから―――そんな取り返せない間違いを犯したのなら、ここからはもう間違わない。
    俺は、ああだのこうだのと言ったところで、何をどうやったところで、結局は彼女がいないとダメな人間で。
    あの人の傍にいて、あの人に助けられながら、あの人と生きていくべきだったんです。
    だからこそ、俺は俺の人生を生きる。先輩が望んだ通りの、“自分が正しいと思った人生を生きよう”って、決めたんです」

    ふうん。随分と悟ったようにベラベラと語るのね。いや、実際に悟っているからこそ、ここまで想いを口にできるのと言うべきかしら。
    キレイなご高説。イヤな現実を散々見てきたクセにその上でこんなコト言ってくるだなんて、思わず拍手の一つでも送りたくなる。

  • 142二次元好きの匿名さん25/04/12(土) 23:57:17

    「そう。それはまあ、尊い決意と覚悟じゃないの。
    でも、さっきも口にしたけど私はヒトを生き返らせる方法に見当なんてない。代行者になって13年になるけど、そんな手段は聞いた覚えすらない。
    私さえそんなんだから、志貴クンがどれだけ頑張ったところで見つけるどころか手掛かりの一つすら掴めずに終わるでしょう。
    志貴クンが言っているコトを要約するなら、シエルのヤツに人生を掛けて恩返ししたいってワケよね?
    なら断言するわ。その為に聖堂教会の一員として生きても確実に無駄な徒労に終わる。その方法があったとしても、そこに手が届く前にキミの精神が音を上げる。そんな気はないという自信が今はあったとしても。
    だから、さ。折角もらった人生(いのち)をそんな選択で棒に振るよりも、普通の日常に戻って慎ましく生きた方が絶対に益になると思うのよ。
    アイツにとっても、そうして普通の幸せに浸ってるキミの姿が見たいから託したんでしょうし。私はそう思うけど、どう?」

    あの女は、私よりもこの子を優先した。だからこそこの子の幸せを願って手前勝手に自分の命を散らしやがった。
    不本意ではあるが、ここはシエルの遺志に僅かながら合わせる。これでこの子の気が変わってくれるといいのだけど。

    「そう、ですね。それを言われると、正直弱いです。
    ………でも、それも覚悟の上です。俺は俺自身の人生を、ありもしないような可能性を掴む為だけに自分から棒に振る。それはともすれば、俺にこの命を託してくれた彼女への冒涜になるのかもしれない。
    それでも、俺は行きたい。行って、探して、正しいと思った通りに動きたい。
    俺は本来、ロアに取り憑かれた時点で死ぬ筈だったし、実際に一度は死んだ。そんな俺に、先輩は多くのものをくれたんです。
    十分すぎるほどの幸福を貰った。だから―――どんな手を使っても、必ずこの命を彼女に返す。
    遠野志貴の人生じゃ考えられない、あり得ないような奇蹟。そこに辿り着いて、絶対に返したい。
    俺の残りの人生は、その為に使いたいと決めたんです」

    迷いはある。躊躇いもなくはない。恐怖だって微かに見え隠れしている。
    それでも彼は、そんな憂いを跳ね除けるぐらいの真っ直ぐな瞳と声で言い切った。

    「………あっそ。そこまで言うんなら……ま、やれるだけやってみなさい。無駄に終わると思うけどね」

  • 143二次元好きの匿名さん25/04/13(日) 02:01:16

    前回エンドのリベンジマッチとしてパラノダリアには一度遭遇してるから勝てそうで安心
    シエルの復活の対価として祖の魂を焚べまくろうぜ

  • 144二次元好きの匿名さん25/04/13(日) 09:46:10

    彼の決意をやんわりと突っぱねる。なるほど、どうやら意地でも意思は変わらないらしい。
    あーあ、これだから覚悟がガンギマった人間は面倒でイヤなのよねぇ。

    ……それを、復讐の意味すら奪われた私の前で長々と垂れ流すんじゃねえっての。

    「その言い方は、つまり」
    「遠回しに同意してくれているのか、って?馬鹿言わないで。単に呆れているだけよ。
    そうしたいという意思のままに突き進みたいなら、どうぞご勝手に。私は協力しないから。
    吸血鬼に対する復讐で手一杯なのよ、こちとら。上から命令でもされない限り、キミの面倒まで見てあげるつもりはないと言っておくわ」

    アイツは死に際に私にこの子を託すだとか抜かしてやがったけど、なんでそんなお願いを律義に汲んでやらなきゃいけないのか。
    つってもこんだけガチガチに覚悟を固めているのなら、言葉で説得しても日常には戻ってくれないだろう。
    じゃあ記憶を消すか?否、消せるのはあくまで数日分だけだから効果は薄いだろう。暗示もまた然りと言える。

    ほんのさっきまで私の監視下におくという選択肢も浮かんでたけど、それもやっぱり躊躇いを覚える。
    人間を死徒化させる計画。それも被験対象にしているのが他ならない最愛の彼女だなんて知られたら終わりだ。
    無論、知られたとしてもこの子だけなら大した問題はない。叩きのめして監禁すればいいのだから。
    怖れるべき懸念は、それが教会の方にも露見してしまう事だ。
    秘密裏に計画を進めて、実行し、全てが上手くいった後でなら自分からバラしてもいい。そこまで来た時点で最早後の祭りだし。
    しかし、まだ実行に移してもいない段階で計画の事が漏れてしまえばマズイ。いや、マズイというか文字通り私の復讐人生も私自身も終わる。
    代行者が死徒を生み出そうと画策してる、なんて事実とか赦される筈がない。バレようものなら即座に異端者として消されるだろう。

    「……まあ、そうですよね。ノエルさんからすれば、俺の面倒を見るなんてのは厄介事だろうし。
    あなたにとって俺は、代行者シエルを恋に狂わせた忌むべき男も同然ですよね」
    「はぁ?勘違いすんじゃないわよガキンチョが。あの女が恋に狂って人間に戻ったのも、私との誓いを裏切ったのも、全部あの女の意思によるものよ。
    そこにキミは関係ないわ。理解した、志貴クン?」
    「あ……はい。すいません…………」

  • 145二次元好きの匿名さん25/04/13(日) 19:12:35

    保守

  • 146二次元好きの匿名さん25/04/13(日) 19:39:09

    とりあえず、これでこの子が日常に戻る可能性は無くなった。
    私が何もしなくてもこの子が勝手に動いて教会に干渉するだろうし、小細工を弄しても無駄な手間になる。
    ……無理矢理気絶させて監禁する、という強行手段も考えなかったワケじゃないけど、どっかでボロが出るかもしれないし何よりも妹の襲来が怖い。
    第一、いくら私がこの子よりずっと強いからってそんな頭の悪い行動は起こさないし起こしたくない。
    復讐というのは知恵を絞りに絞ってこそ初めて叶うものなんだから。

    「ところで……キミは今からどうするの?私とのやり取りも済んだんだし、これ以上ここにいる理由はないでしょ。
    妹さんだってキミの事を心配していると思うのだけど」
    「それは……どうかな。秋葉は俺なんかがいなくても当主として抜かりなくやっていけてるし、俺を遠野邸に入れてくれているのも一応は血の繋がった家族だから渋々受け入れているだけに感じられるというか。
    そりゃあ門限を思い切り破ってる今は後が怖いけど……それはそれとしてこんな状態のノエルさんを放っておくワケにもいきませんよ。
    そういう事ですので、しばらくはノエルさんの傷が治るまでここで看病を手伝います。せめてこれぐらいはさせてください」
    「えぇ……?」

    看病って。そりゃあ世話してくれた方が一人で身体に鞭打ちながら動く必要がないから助かるけど……面倒な事になったわ。
    自分は後々この子も絶望のどん底に叩き落とす腹積もりなのに、その志貴クンからここで借りを作られるのはイヤだ。
    あー、何とかして追い払えないかな。

    「……私を気に掛けるよりも、まずは自分の家に帰りなさい。こっ酷く怒られはするでしょうが、それさえ我慢すれば済む話でしょうに。
    だいたい、私の身体は人間じゃないから治癒力もその分だけ凄まじいの。今でこそ重体だけど三日~四日も経てば大体治ってるでしょうから、わざわざキミの世話になる必要もないのよ」
    「こんな状態から、たった四日程度で?
    ……なるほど。それじゃあ、俺が世話をすればもっと治りが早くなりますよね。
    そういうワケで、堪忍して大人しくしていてください。一人で動けるとしても無理は禁物だよ、ノエルさん」

    はぁ~~~~なんだこのガキ???なんでこうも食い下がってくんの?
    ………ちっ、しょうがない。非常に不本意だけど体調が回復しきるまでこの子に看病されるとしましょう。

  • 147二次元好きの匿名さん25/04/13(日) 23:39:08

    それからは志貴クンの手で色々と面倒を見てもらった。
    お腹が空いた時は外で弁当とかを買ってきてもらったり、喉が乾いた時は適当な飲料水を用意してもらったりしていた。
    だけどそのうち、頼んでもいないのに部屋の掃除をやり出したり洗濯物を干したりとで世話焼きが加速していった。
    安静にしていてほしいというのは理解できるけど、何もそこまでしなくたっていいのに。これじゃ介護と変わらないじゃない。

    ―――そんな調子で過ごしているうちに、早くも五日が経った。

    「調子はどうですか、ノエルさん。まあ、その様子を見るに殆ど完治してそうですが」
    「ん、そうね。表面の傷は見ての通りで、脇腹の刺し傷も、折れたり砕けてた骨も大方元通りにはなったかしら」

    潰れていた内臓も再生しきってはいる。が、まだ動く度にキリキリと痛みを感じるので完治には至っていない。
    されど誤魔化せる範囲の痛みなので、志貴クンに悟らせない分には十分だ。

    「そうですか……治ってくれて本当によかった。懸命に看てきた甲斐があったというものです。
    それで、怪我が治った今、ノエルさんはこれからどうするんですか?」
    「んー?そうねえ。とりあえずはこの街での残りの任務を終えた後に、本国へ戻ろうかなと思ってるわ。
    ……前にも言ったけど、キミの面倒は見ないからね?どうしても教会に接触したいってんなら、自分でどうにかしなさい」
    「………はい。分かっています。元より、ここは俺個人の問題です。
    ノエルさんに頼らずとも、教会に付くぐらいは自分でやってみせますよ」
    「そう、いい覚悟ね。せいぜい頑張りなさい」

    まずはシエルの死体を“あの場所”へと隠す。今となっては誰も寄り付かない、あの呪われた場所に。
    その後で本国の方へと帰還して適当に報告する。そこからは機が熟するまで教会の目を気にしつつ、計画の準備を進める。
    柩にあったロアの死体から採った血と、あの夜にどさくさ紛れに採っておいた真祖の血痕。
    私もあの時はボロボロだったからシエルの血液だけは採り損ねたけど、幸いにも死体というサンプルが目の前にあるからそれも支障ない。
    そして、それらを抽出し、上手く混ぜ合わせる事で出来るだろう死徒化の薬。まずはコレを完成させないと話にならない。
    問題は―――薬が完成してそれを射ち込んだとしても、シエルを死徒として生き返らせれるかは断定できない点だ。

  • 148二次元好きの匿名さん25/04/13(日) 23:42:33

    志貴が接触するならマーリオゥとかだろうけどどうかねぇ…

  • 149二次元好きの匿名さん25/04/14(月) 00:33:13

    シエルは志貴クンにその命を捧げて死んだ。という事は、今のコイツは文字通り魂の残滓すら残っていないだろう抜け殻そのものと言える。
    なら、いくら死徒化の薬といえどそんな抜け殻に射したところで生き返るのだろうか?
    無論、真祖の血は例え血痕だろうと超常の力を秘めている。そしてそんな血なら新しく魂を再生させる、だなんて奇蹟を起こしてくれる可能性もゼロではないかもしれない。
    しかし、あくまで可能性があるだけで確実性は全くない。それでもし息を吹き返さなかったら?
    それこそご破算だ。ただ悪戯に時間を消費しただけに終わってしまう。

    だったら―――何かこう、魂の種芋となるようなモノが必要だ。それなら都合よく生き返ってくれる可能性が大いに期待できる。
    けど、私はロアみたいに魂を観測できもしなければ干渉する事もできない。
    考える間でもなく当たり前だ。魂というのは本来、目に見えない形而上の概念。知覚や干渉ができないのが普通であり、それをやってのけたどころか伝達可能の情報体として加工するにまで至ったあのクソ蛇がおかしいだけ。
    だけど、当然ながらそんな気色悪い芸当は私には不可能だ。出来っこない。
    死徒の魂を燃やす事はできても、それを観測し、況してや回収するなんて出来るワケない。
    第一そんな直接的に干渉できるような魂なんて、

    「………………あ」
    「……? どうしました、ノエルさん?」

    ――――――ある。ある。ある。
    そうだ。そうよ。あるじゃないの。
    直接触れることができて、目で見る事ができて、実体を持って、魂の種芋になってくれるかもしれないほどの力を秘めている。そんな都合のいい魂が。
    ああ、でも。それは、それは簡単に手に入るような代物じゃない。生きるか死ぬかのリスクを強いられる。いいえ、死ぬ方のリスクがずっとずっとずっと上回る。
    アイツは、シエルは当たり前のように一人でそれをやってのけていた。でも私はアイツより弱い。本気でやるとなったら十中八九生きて帰れないでしょう。

    だげど、その上でやってみるだけの価値はある。生きて“ソレ”を手にする事ができた場合のリターンもまた計り知れない。
    今はまだ私の勝手な推論に過ぎないがソレをこの女の死体に入れれば、ほぼ確実に失われた魂を補填してくれるだろう。そして補填された魂をもとにシエルは死徒として蘇ってくれる筈だ。

  • 150二次元好きの匿名さん25/04/14(月) 00:41:06

    この世界でもロズィーアンとパラノダリアのどっちかもしくは双方が死ぬことが確定したな
    しかも生け捕りを成功させた場合前の世界のノエルよりも格段に強くなってるぞ

  • 151二次元好きの匿名さん25/04/14(月) 01:08:07

    原理をぶち込むんか…

  • 152二次元好きの匿名さん25/04/14(月) 08:29:19

  • 153二次元好きの匿名さん25/04/14(月) 10:02:50

    元より復讐の過程で生じるリスクの悉くを無視してきたんだ。今更その程度の死のリスクなんかで私は躊躇いも慄きもしない。
    私の復讐に阻むものが現れれば、例えソイツが国そのものと比喩される化け物だろうと関係なく踏み斃すだけなのだから。

    「あの、ノエルさん?大丈夫ですか?」
    「………少し考え事をしていただけよ」

    うん、やりましょう。やってやろうじゃない。
    シエルに少しでも追いつく為にここまで貪欲に強さを求めてきたんだ。これもアイツを超える為の試練だと思おう。
    そうだ。あの女にとってロアを始めとした吸血鬼共を殺す為の通過点に過ぎなかったように、私にとってもそれは復讐に必要な通過点の域を出ない。
    そもそもシエルを殺すという事は、シエルという最大の助力を自ら消した上で吸血鬼と戦っていく事を意味する。
    それは復讐を決めて間もない頃から考えていた。だからこそアイツを超える為に、そしてアイツに縋らずとも戦えるように、力をひたすらに欲してこの身に蓄えてきた。

    「そんなコトより、キミはそろそろ遠野邸の方へと戻った方がいいんじゃないかしら。
    この通りもう治ったんだし、看護してくれた事は感謝しているけど、かと言っていつまでも居座られると気分が良くないわ」
    「それは……まあ、はい。それじゃあ、俺はこれから一旦戻ります。
    そして、自分が正しいと思ったままに生きていきます。もしかしたらあなたと顔を合わせるのもこれが最後になる、というのもあり得るし、言いたいコトを言っておきますね」
    「なに。恨み言?それとも皮肉?」
    「まさか。そんなコトを吐くようならここまで付きっ切りで看てなんかいませんよ。
    ――――――あなたは、俺をロアの転生体と認識していながらも、俺を俺として見てくれていた。
    ただ俺を殺すだけなら、あの時に礼拝堂で先輩の目の前で殺す事もできた筈なのに、俺の意地にわざわざ律義に付き合ってくれた。
    先輩が俺に命を託して置いていった時に、寝ている俺をそのまま先輩ごと殺す事もできた筈なのに、こうして生かしてくれた。
    それが例え打算的な意図によるものだったとしても、あくまで結果的にそうなっただけとしても、あなたは俺を殺さなかった。
    ……ありがとう、ノエルさん。先輩の優しさだけじゃなく、あなたの慈悲と情けも含めて、今の俺があります。
    これからの人生を、自分の意志で生きていける。俺は、それが嬉しいんです」

  • 154二次元好きの匿名さん25/04/14(月) 19:41:49

  • 155二次元好きの匿名さん25/04/14(月) 20:11:17

    私にとってはこれもある意味皮肉に聞こえるけど、この子にとっては悪意のあの字もない純粋な感謝なんだろう。澄んだ顔と声の抑揚で十分に伝わってくる。
    ………その幸せな気持ちを、他ならぬ私自身にブチ壊される事も知らずに。

    「それじゃあ、俺はこれで。うっとおしく思われない内に出ていきますね」
    「ええ、そうしてちょうだい。物分かりのいい子は嫌いじゃないわ。
    ………あ、待って。そう言えば一つ忘れてた」
    「?」

    ぽかんとしている志貴クンにある物を投げ渡す。受け取った志貴クンがそれを確認し、意外そうな顔をする。

    「……これって」
    「私の番号よ。不本意な看護を受けたワケだけど、それでも一応は借りができたのは事実。
    施しを受けておいて何も返さないのもアレだし、それを私からのお礼って事で受け取りなさい」

    何よりキミなんかに対する借りをそのままにしておくのは腹が立つ。
    それに、これはそういう個人的な事情だけじゃない。計画が実行の段階まで進んだ時に、いつでもこっちから呼び出せるようにしておいた方が都合がいい。

    「……ありがとうございます。それじゃあ、何かあった時は連絡させてもらいますね」
    「はいはい。面倒ごとだけは持ち込まないでよね。ま、キミからの連絡なんて十中八九普通じゃないと思うけど」

    “はは、恐らくそうでしょうね。”
    なんて気軽に言いながら彼は出ていった。残ったのは病み上がりになった私一人。
    ほとんど治りはしたけど内臓の方はまだ完治しきれていない。もう一日は大人しくしておいた方が無難ね。

    「さて、これで自由になった。あの子がそうするように、私も自分の復讐(せいぎ)に従って動く時よ」

    鉄の代行者はただの少女(にんげん)として愛する人に命を託し、託された少年は自分の人生を愛する少女の為に使って生きていくと決意した。うん、実に儚くはあるけど希望のある結末じゃないの。愛って尊いわ!

    ――――――そんなふざけた別離、許す筈がないじゃない。他人の人生を粉々に踏み躙った悪魔には、それに見合った末路こそが相応しいんだから。
    ヒトとしての死なんて、絶対に認めるものか。おまえも、おまえを愛するあの子も、等しく絶望に堕としてやる。

  • 156二次元好きの匿名さん25/04/15(火) 01:01:31

    ―――1ヶ月後。私は、とある場所で作業をしていた。

    「………ふぅ。これでひとまずは完成に漕ぎつけられたかな」

    そう言って、不気味なまでに朱い液体の入った容器を手に取る。
    顕微鏡で確認した感じだと、上手い具合に細胞が混じり合い、お互いを喰い合う事もなく馴染んでいる。と言っても案の定、真祖の細胞が中心となって占めているけど。
    その容器に注射器の先端を入れて抽出する。慎重に取り出したのち、先端に蓋をして懐にしまう。
    ついに、ついに出来上がった。射した人間を死徒に変貌させる血の魔薬を、この手で完成させた。これで第一段階が終わった。次は……というか寧ろここからが本番だ。

    何しろ、次に手に入れなくちゃいけないのは―――死徒二十七祖が内包している呪いの特異点、即ち『原理血戒』なのだから。

    正直に言うと、これは避けたい。一歩間違えたら殺されるのはこちらだ。
    されど、復讐を確実なものにしたいのであれば、どのみちやらざるを得ないと言えるでしょう。
    それに……私の故郷を滅ぼし、こんな無人のゴーストタウンに変えやがったのも二十七祖の連中だ。
    何もシエルだけが復讐の対象じゃない。文字通り、二十七祖も含めた全ての吸血鬼を灰にするまで私は止まらない。
    それを考えるとこれは寧ろいい機会だ。二十七祖にも序列による格差というものがある以上、まずは比較的弱い方から消していこう。

    「……待っていなさい。あとどれくらいになるのかは分からないけど、そう遠くない内におまえに最高の絶望と苦しみを提供してあげるからね。エレイシア?」

    “柩”のフタを徐にずらし、女の死体に言葉を投げる。
    あれから定期的に防腐の秘蹟を掛け続けているのもあって、当時と全く変わりない保存状態を維持できている。
    当初、ここへ来た時はジッパー付きの大きな収納袋に雑に入れていたけど、偶々霊安室にあった柩を見つけてからはコレに入れている。
    どうしてそんなのが都合よくあったのか。それもその筈、私が今いるここは『教会』だからだ。
    もっとも教会というのはかつての姿に過ぎず、今は“屠殺場だった廃屋”という言い方が正しいが。

    「どうせ次に目を覚ます時は吸血鬼という化け物になっているんだ。なら、それに相応しい寝床をこうして用意しておくべきのがオツってものよねぇ?ふふ、ふふふふふふふふふふふふふ。うふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ」

  • 157二次元好きの匿名さん25/04/15(火) 07:40:50

  • 158二次元好きの匿名さん25/04/15(火) 17:26:34

  • 159二次元好きの匿名さん25/04/15(火) 23:53:21

    段々と狂気の復讐計画が進んでるけどそれはそれとして個人的に何だかんだで志貴クンに対してそこまで邪険にはしてないなと思う
    多少無理をすれば即座に追い出す事もできたろうにちゃっかり看護を受け入れてる辺り対応が丸いよね
    つってもノエル先輩としては彼も思い切り巻き込むつもりみたいだけど……

  • 160二次元好きの匿名さん25/04/16(水) 08:06:29

  • 161二次元好きの匿名さん25/04/16(水) 16:30:10

    このレスは削除されています

  • 162二次元好きの匿名さん25/04/16(水) 22:52:10

  • 163二次元好きの匿名さん25/04/17(木) 01:05:23

    それから更に半年後。二十七祖に関する手掛かりをあの手この手で探し、見つけ、掴む事をひたすらに繰り返していた。
    その果てに、とうとうソイツらの根城を探し当てるに至った。特定したのは『薔薇』の原理血戒を司る祖、リタ・ロズィーアン。
    私はすぐに行動を起こし、教会に黙って秘密裏にソイツを討ち取りに行った。

    ―――約一ヶ月。その間ずっと、私はロズィーアン並びにその一族と殺し合った。
    どのタイミングでかは分からないが、やはりというか後から教会の連中もコトの騒ぎに気づいたらしい。といっても私という怪物と二十七祖の一族が暴れまわってるところに割って入れるような度胸は無かったみたいで、決着が付いてほとぼりが冷めるまで連中が仕掛けてくる事はなかった。

    ロズィーアンたちとの戦いの中で不衛生極まる下水道に忍び込まざるを得なかった場面もあったが、元より血に穢れている私からすれば大したことはなかった。………少しだけ柄にもなく震え上がっちゃったけど。
    そういう事もあって戦いは長引いていったけど、最終的にはロズィーアンとの一騎討ちでその身を跡形もなく焼き尽くし、とうとうこれを制する事ができた。
    魔眼を使われた時はどうしようかと焦った………なんて事はなく、『魔力はより強い魔力に洗い流される』というシエルの教えの通りに白鯨の力でその呪いを相殺した。
    そして、後に遺った『薔薇』の原理血戒を手に入れ、計画における第二段階の目標を達成した。正直生きた心地がしなかったけど、それでも達成できた瞬間は苦労と覚悟が報われた歓びで狂いそうになったかしら。
    それからは一方的な『掃除』だった。白鯨の力で城(なわばり)の周囲を津波の壁で囲い、その上から全域に炎の絨毯爆撃を振り撒いた。
    一族に連なるだけあって奴らも相応の力を秘めていたけど、弱点である流水の壁に閉じ込められた上に炎の雨あられを浴びせられたとなれば、流石に死ぬしかなかったようだ。

    その有様を見て、私は色々とはちきれそうだった。
    私というたった一人の代行者如きに全てをめちゃくちゃにされた事への怒り、恐怖、焦燥、諦観、そして絶望。
    そんな感情をそれぞれの顔に浮かべながら悲鳴を上げて無様に焼け死んでいく光景が、あまりにも可笑しくて可笑しくて。
    私は嗤った。それはもう壊れたようにケタケタと嗤い狂った。人生であんなにも嗤って踊った事はなかったと言えるぐらい。

  • 164二次元好きの匿名さん25/04/17(木) 01:06:23

    家族も、家も、全てを奪われる事の理不尽さってのを少しは思い知らせてやれただろうか。まあ、あのクズどもは人間の心なんて理解できないから怪しいところではあるけど。

    とはいえ、死んだ奴らの事なんて私も今はどうでもいい。重要なのは、その殺し合いでこの手にできたコレだ。
    私はその後、教会には何も報告せずに帰路に付き、そして廃教会(ここ)にいる。
    例え向こうに裏で気づかれていようが、私は秘密裏にロズィーアン討伐へと赴いているのだからわざわざ表立って報告なんてする必要がない。ロズィーアン一族滅亡の件と私は何も関係ない、というテイでいいのだから。

    「さて、色々と進みつつあるけど……これ、どうしようかしら?」

    手元の真っ赤な呪いの果実を見ながら呟く。死徒化の魔薬は言わずもがな、このように命の補填になるだろう原理血戒も手にした。
    あとは慎重に手順を踏んで、この女にブチ込んでやればいいんだけど…………。

    「どうせなら、より確実に死徒として蘇ってもらう為に“もう一つ”調達してから……というのも悪くはないかしらね?」

    普通、こんなモノを複数取り込もうものなら肉体も精神も粉微塵に消滅したっておかしくない。
    だけどこの女はそんな特級の呪物を既に三個以上取り込んでいる。ヴローヴの原理に、アインナッシュの『森』に、クロムクロイの『城、即ち王国』。
    この女が色々と可笑しいのは今に始まった事じゃないけど、どうして人間としての心身を保ったまま取り込めていたのか。ワケがわからないし、わかりたくもない。

    「……ま、んなコト考えても時間の無駄ね。今決めるべきはこのまま実験を決行するか、それとも“もう一つ”手に入れてからにするのか、よ」

    無論、欲を出して突っ走ったらその先で待つのは死だ。いくら確実性を求めてもその過程で死んでしまったら笑い種、合理性を考えるならこの時点でさっさとやってしまった方がいい。
    でも、この原理血戒一つと魔薬を射ち込んだとしてもこの女が絶対に生き返るという保証は断言しきれない。ならもう一つぐらい持って来てまとめて投与しちゃった方が可能性もより現実的になるだろう。

  • 165二次元好きの匿名さん25/04/17(木) 01:28:26

    ある意味でのリベンジマッチ…
    今度こそノエルさんには博士ことパラノダリアに完全勝利を収めて欲しい

  • 166二次元好きの匿名さん25/04/17(木) 01:29:03

    「んん?いやでも、この魔薬だって神秘マシマシな真祖の成分が大半を占めてるし、原理血戒と反応すればそれを元に新しく魂を再生してくれる……なんて奇蹟を起こしてくれるかもしれないわよね。
    だったらわざわざもう一度死のリスクを踏みに行く必要はない、とも考えられるし……はぁ、マジでどうしよ」

    正直言うとこのまま決行したい。だってもう前提条件は揃っているんだから、シエルへの復讐という最大の悲願を目の前にしてこれ以上のリスクは許容したくない。
    長年に渡る人生の目標を前にして欲張った結果無様に死んだ、なんてダーウィン賞も鼻で笑うような末路はごめんだ。

    ただ、それはそれとして敢えてその憂いを承知の上で再び祖と殺し合いをするという選択肢もなくはない。
    もし仮に上手くいけば、シエルを蘇らせれる事の確実性がより高まるだけじゃなく、私自身の実力が更に成長する事にも繋がる。先のロズィーアン同様、ハイリスクではあるものの同時にハイリターンでもあるワケだ。

    「……これは、今しばらく考える必要があるわね。こういう時こそ今まで以上に慎重にならないといけないし、パッと決めれるモンじゃあないわ」

    そんなワケで、二つの選択を頭の中にある天秤に乗せて思案する事にした。
    どちらがより良い結果を招き、どちらを取るのが相応しいか。そんな風に思考を回し、吟味し、今の気持ちがどちらに傾くのかを見つめる。
    やがて時間はあっという間に過ぎていき、帰り着いた時は深夜だったのが、気がつけば朝日の光が礼拝堂に差し込んでいた。
    そして、それから間もなく私の考えも決まった。多分、こんなに熟考したのも人生で数えるほどしかなかったと思うな。

    「………うん。よし、ようやく気持ちが傾いたわ。私は――――――」

  • 167二次元好きの匿名さん25/04/17(木) 08:16:36

    今度こそ勝ってくれ…

  • 168二次元好きの匿名さん25/04/17(木) 16:08:25

    2か月ぶりくらいに読み返したけどとても楽しみな展開になってワクワクしてきた

  • 169二次元好きの匿名さん25/04/17(木) 22:49:52

    「………よし、これで今日の分は終わりだな。あとは結果を報告しないと」

    ――――――あの夜から早くも1年以上。

    俺はマーリオゥの手引きで日本を離れたのち、さっそく教会の一員として仕事に従事する毎日を送っている。
    そうは言ってもまだまだこちらに着いて日が浅いので、仕事の大変さに慣れ切っていないのが現状ではあるが。

    「そう言えば、ノエルさんはどうしているんだろうか。あの日を最後に全く音沙汰がないけど……」

    一応、当時に受け取った番号は今も大事に持っているし、頭の中にもしっかりと入れている。
    それはそれとして電話の一つも寄越してくれた事がないし、教会の人たちにさり気なく何度か聞いてみたものの動向を把握していないらしい。
    代行者としての活動は今も普通にやっているようだが、それ以上の具体的な事は知り得なかった。枢機卿やマーリオゥと言ったお偉いさんたちならあの人の行動を逐一知っているかもしれないが、日の浅い下っ端信徒に過ぎない今の俺じゃ接触は不可能だ。
    結論として、俺はあの人が今どうしているのかを全く知らない。殉職の報せなんかは一切聞いていないので、少なくとも普通に生きているとは思うけど。

    「……こっちから通話してみるか?
    これまでずっと遠慮していたけど折角番号を貰っているんだし、そろそろ様子を伺いに掛けてみるのもいいかもな」

    まあ、向こうのタイミングによっては掛けても繋がらない可能性もあるが。いや、あの人なら例え死徒狩りの最中に通話できる余裕もあるだろうから案外話せるか?

    「とりあえず掛けてみよう。ずっと遠慮してたから緊張を覚えるけど、それ以上に気になるしな。ここは躊躇わずに行け、遠野志貴」

    万が一の可能性として番号を変えてる、というのがよぎる。流石にそうだとしたらどうしようもないけど、余程の諸事情とかが無い限りその可能性は低い筈。
    頼む、多少ながらもそこそこの勇気を出して掛けたんだから出てくれ……!

    『―――おかけになった番号は、電源が入っていないか、電波の届かない場所にいる為、かかりません』

    「――――――」

    ………繋がらなかった。どうやら無駄な勇気に終わったらしい。めちゃくちゃ気まずいけど、後でもう一度掛けなおそう。

  • 170二次元好きの匿名さん25/04/17(木) 23:19:13

    というより、電波の届かない場所って……いや、代行者ならそういう人の手が行き届いていない場所にだって潜伏するか。
    現在使われておりません、とは出なかったからこの番号はまだ使っているんだろう。そこは安心した。

    「まあ、うん。ひとまずやる事やったから、さっさと報告しようか」

    その後、教会に信徒として報告した。こういう下積みがあとどれぐらい続くかは分からないが、それは俺の努力次第と言ったところだろう。
    教会の深部にあると言われる『天使の書庫』。俺にとって何よりも愛しい人を生き返らせる手段がある可能性は、そこが一番希望がある。
    ただ、安藤氏やカリウス氏が言ってたように俺じゃそこには辿り着けない。大望を抱えていると言っても所詮は勢いで入ってきただけの一端の信徒。ゼロでこそないが、限りなくそれに近いと言っていい。

    「でも、そんなのはとっくに覚悟の上だ。俺はそれでも、遠野志貴ではあり得ない筈の奇蹟を起こしてみせる。
    いや、必ず起こしてやる。その為にこの世界へ足を踏み入れたんだ」

    マーリオゥは、俺の精神が持つのは約10年程度と言った。その指摘に狂いはないと思うし、だからこそそれまでにほんの僅かでも希望を掴まないといけない。
    うん。今はまだ道半ば……というより始まったばかりだけど、精一杯頑張ろう。あの人に報いる為に。

    “―――ブー、ブー、ブー”

    「……?」

    改めて決意を固めていると、唐突にスマホが震え出す。
    時間は午後の17時。こんな中途半端な時間に呼び出しを受けた事はあまりない。誰からだ、ろ―――?

    「………これ、って」

    画面を確認すると、そこに映っていたのは未登録の番号だった。ただ、その番号が、酷く見覚えのあるもので。
    恐る恐る通話応答をタッチして、耳に傾ける。この番号が示す人物なんて、一人しかいない。



    『――――――はぁい、久しぶり。元気にしてるかしら。遠野志貴クン?』

  • 171二次元好きの匿名さん25/04/17(木) 23:55:36

    よかったな志貴願いが叶うぞ

  • 172二次元好きの匿名さん25/04/18(金) 00:09:27

    「………ノエル、さん」

    間違いない。最後に声を聞いたのも1年以上前だが、忘れる筈もない。
    でも、どうして?なぜここに来てこの人のほうからこうして掛けてきた?

    『ん?なんか覇気が無いわね。ふふ、1年以上も音沙汰なしな女が突然掛けてきたら動揺するかしら?
    まあ、そんな事はどうでもいいわ。なんで私がいきなり掛けてきたのか、気になってるでしょう?』
    「………ええ、そうですね。俺が遠慮してたってのもありますけど、正直このままずっと会話を挟む事ないんじゃないかって思ってましたよ。
    それで、どうしてここに来てあなたの方から掛けてきたんです?」
    『うん。それなんだけど、ちょぉっとキミに用事があってさ。私にとってもキミにとっても無視できない、大事な大事な用事がね。
    それを伝えるにあたって、ある場所にまで来てもらいたいの。この通話が終わったらすぐに位置情報をメールで寄越すから、それを頼りにしなさい。
    あと、この電話の事は誰にも言わないでね?他言無用を意識して、その上で秘密裏に行動してちょうだい』
    「え?秘密裏って………それに、俺にとっても無視できない用事って何なんですか?」
    『それは今は言えないわ。ああ、警戒してるなら別に構わないわよ?この電話の件はなかった事にするだけだしね。
    もし知りたかったら、まずは私の言う通りに動いて指定の場所まで来なさい。時間は……そうね、今から最長で4時間以内よ。そっちも色々と都合があるでしょうけど、それ以上は待たないわ。
    ―――それじゃあ、せいぜい来てくれる事を楽しみにしているわよ。志貴クン』
    「あ、ちょっと……!」

    ………一方的に切られた。頭の中に幾つもの疑問が生まれるが、それらをぶつける前にノエルさんは伝えるだけ伝えて通話を終わらせた。
    この様子だと今すぐ掛けなおしても応答してくれないだろう。とりあえず、通話で言ってた位置情報とやらが来るまでは―――ってさっそく来た。
    メールを開くと、そこには確かに待ち合わせ予定にしてるらしい場所までのルートが示されてる地図があった。
    ここからだと……車で行って約1時間半くらい掛かる長距離だ。となると、今のうちに急いだ方がいいか。

    「それはそうと、あの人は―――あの人の言っていた用事って、何なんだ…………?」

  • 173二次元好きの匿名さん25/04/18(金) 00:42:05

    俺にとっても無視できない、とはどういう事だろうか。
    それに、誰にも悟られずに来いって……分からない。分からないが、少なくとも普通の用事なんかじゃないという事は直感で分かる。
    ………考えたくもないが、万が一の可能性もある。普段から常備しているけど、懐のナイフに意識を向けていた方がいいかもしれない。
    どういう意図かは知りようがない。が、それでもここで無視したら何となく一生後悔する気がする。
    俺にとっても無視できない、という言葉が本当ならば尚更だ。

    「……行こう。相手の意図が分からない以上、下手に関わろうとするのは危険だ。
    でも、ここで踏み出さなければ俺は千載一遇の機を逃してしまうかもしれない」

    改めて、俺にとって無視できないものとは何かを考える。
    言うまでもない。あの人を、生き返らせる事。そして今度こそ、人並みに幸せな日々を歩んでもらう事だ。
    という事は、ノエルさんの言ってた用事というのはあの人を生き返らせる為の重要な手掛かりなのかもしれない。
    あの人は代行者として何年も教会に務めているし、深部の一端に触れていたっておかしくない。
    俺は人並みの幸せを楽しんでもらいたい、ノエルさんは復讐したい。想いは真逆であれ、それなら確かに双方にとって無視できない大事な事だ。
    なら、例えこれから蜘蛛の巣に入ろうとも、危険を犯してまで知りに行く価値はある。

    覚悟を決めているとはいえ、それでも今のままじゃ人生を棒に振る可能性の方が圧倒的に高いんだ。楽な方を選んで妥協し続けたところで望みには辿り着けない。

    「……待っててください、先輩。俺は必ず、あなたに貰ったものを返します」

    胸に秘める決意に従い、行動を起こす。教会の車じゃ足が付きやすいし、そもそも個人的な私用で借りれるほど偉くもない。なのでタクシーを使って移動する事にした。

    ノエルさんがどんな事を考えているのかは分からない。でも、分からないからって怖気づいていても何も始まらない。
    本気で自分の望みを叶えたいのなら、藪蛇をつついてでも覚悟して進むしかないのだから。

    けど、ただの気のせいだろうか。今行かなかったら絶対に後悔するという直感は間違いなくある。

    なのに――――――“絶対に遠野志貴はそこに行ってはならない。行けば今まで信じてきた全てが崩れ去る”という本能から来る恐怖と拒絶も感じているのは、どうしてだろうか?

  • 174二次元好きの匿名さん25/04/18(金) 00:57:26

    おかしいねぇ
    ただの知り合いからの呼び出しなのにどうして志貴クンはこんなに怯えてるのかな?(すっとぼけ)

スレッドは4/18 10:57頃に落ちます

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