【閲覧注意】ここだけ、ナギサ様がひっそりと入水する話

  • 1125/03/30(日) 09:43:48

    見たいよね
    書きます

  • 2二次元好きの匿名さん25/03/30(日) 09:44:48

    おいおいとんでもねえな…
    ポップコーン持ってくる

  • 3二次元好きの匿名さん25/03/30(日) 09:47:06

    見たいので保守

  • 4二次元好きの匿名さん25/03/30(日) 09:50:30

    10まで保守

  • 5二次元好きの匿名さん25/03/30(日) 09:51:44

    保守ついでに全裸待機

  • 6二次元好きの匿名さん25/03/30(日) 09:55:51

    保守

  • 7二次元好きの匿名さん25/03/30(日) 09:58:16

    楽しみ

  • 8二次元好きの匿名さん25/03/30(日) 09:58:42

    期待

  • 9二次元好きの匿名さん25/03/30(日) 09:59:11

    脱いだ

  • 10二次元好きの匿名さん25/03/30(日) 10:00:06

    このレスは削除されています

  • 11125/03/30(日) 11:00:29

     酷く、穏やかな陽気だった。

     エデン条約調印式会場、ミサイルが直撃したあの日あの時あの瞬間。
     いがみ合い、バラバラだったトリニティは確かに一つに纏まったのだ。

     ETOを強行採決し、アリウスを救い、大人げない黒幕をシャーレの手を借り捕縛した。
     トリニティ内で問題がなくなった訳ではないが、確かにハッピーエンドと呼ばれるような終わりを迎えた筈だった。

    「――ナギちゃん?」
    「えっ? あ、ああ、ミカさん。どうしたんです?」
    「もう、皆でピクニックに行くって言ってるのにまだ準備してないみたいだったから呼びに来たのにどうしたのって……そんな言いかたってある?」
    「……ですから、ピクニックでは無く各派閥の垣根を超えた親睦会だと、何度言ったら分かるんですか」

     ぶー垂れるミカさんを眺めながら、ほんの僅かな期間にあった地獄を思い出す。
     トリニティの裏切り者とし、パテル派の代表を降ろされ虐めにあっていたあの時を。
     手を差し伸ばすことも許されずに、ただ眺めているだけしか出来なかったあの頃を。

     だが今は違う。

  • 12125/03/30(日) 11:01:02

    「まあ、ミカさんはピクニック気分でも許されるかも知れませんけどね」
    「うっ……で、でもこのままならまた私首長に戻ることになるし? 同じ目線だと思うんだけどなあ~?」
    「さて、同輩を待たせるわけにもいきませんし、ピクニックの準備でもしてきましょうか」
    「ちょ、ナギちゃん無視するの!?」

     黒幕を捕縛出来たおかげか、ミカさんに対する周囲からの反応はだいぶ落ち着いた物へと変わっていった。
     何よりも、ミカさんが手を差し伸ばしていたアリウス側からの証言も有ったことが大きかった。

     人知れずアリウスを取り込もうとした、野心家だとは思われている。
     けれど、トリニティを陥れようとした魔女だと思われることは無くなったのだ。

     はしゃいでいるミカさんの声をどこか遠くに聞きながら、今日行われる親睦会の場所を思い出す。
     確か、コスモスの花畑が綺麗な場所だったと思う。

  • 13125/03/30(日) 11:01:20

     遅ればせながらミカさんと共に親睦会の会場である花畑に到着した。
     既に他の組織の方々が思い思いの物を持ち寄って、交流を深めていた。

     シスターフッドであればクッキーやハーブティを。
     救護騎士団であればチョコやコーヒーなど。
     ティーパーティであればケーキや紅茶等々。

     ……何をすれば良いのか分かっていないアリウス生たちを自身の派閥の色に染め上げるためのちょっとした押し付け合いがあるものの、銃声一つない、平和な親睦会が目の前には広がっていた。

    「わっ、秘蔵のお菓子とかも配ってるみたいだよ? ナギちゃん、何処からよる?」
    「……そう、ですね。ミカさんが行きたいところからで構いませんよ」
    「そう? それじゃあシスターフッドから見て回ろっか」

     そう言って、無邪気に私の手を取り先に進んで行く。
     ふと、横目から遠くに見えた補習授業部の面々が、何やら楽しそうに騒いでいるのが見えた。
     すぐさま視線をミカさんに戻し、躓かないようにしっかりと後を追う。

     この会合はトリニティ生徒であれば参加することが許されている。
     それはアリウス生徒たちもトリニティ生であるということを示すためのちょっとした箔付けでもあるのだが、そんな裏事情はどうでもいいだろう。

     皆が笑顔で、ここに居る。
     それだけで、この会合はきっと素晴らしいものだといえるのだから。

  • 14125/03/30(日) 11:01:38

     問題を起こし、今も尚一名欠けているティーパーティがアリウス生徒たちの大部分の面倒を見ることは決して許されなかった。
     だからこそ、弱者救済を日頃行い、派閥としても比較的近縁にあるシスターフッドが主にアリウス生徒たちを受け持つことになるのは自然の流れだった。

    「あら、ミカさんと……ナギサさん。おはようございます」
    「おはよ~、シスターフッド秘蔵のクッキーを貰いに来たよ」
    「おはようございます、サクラコさん……それとミカさん、目に余る態度は止めてください」
    「別にかっちりとした場じゃないんだし、少しくらいフレンドリーな方がシスターフッドとしてもやりやすいでしょ?」

     それをこちらから口に出すなと、内心で溜息を吐いているとサクラコさんは穏やかに微笑んだ。

    「そうですね。今回は気を張らなくとも問題ない場所、というお題目ですし。先程のような態度の方が好ましいですね」
    「ほら~」
    「ほらーじゃありません……クッキー頬張りながら人に指を差さない」

     奔放な真似を続けるミカさんに頭が痛くなってくるのを感じていると、サクラコは淑やかに笑った。
     けれど微笑みはすぐに消え去り、まるで懺悔でもするかのように沈痛な面持ちで語りだした。

  • 15125/03/30(日) 11:01:58

    「我々は、余りにも距離を置きすぎたのだと思います」
    「……」
    「もぐもぐ」
    「血も涙もないと、あの時、ナギサさんを糾弾しましたが……それは、ティーパーティからしてみればシスターフッドにも言える言葉だったのではと、思えてくるのです」
    「それは……」
    「さくさく」
    「エデン条約のあの日、傷だらけになりながらも立ち上がり、トリニティを、ゲヘナを……そしてアリウスまでも救おうとしていた貴方を見れば、分かります。ナギサさん、貴方は血も涙もない人では無く、ただ優し過ぎた人なのだと」
    「そんなことは決して――」
    「ずずーっ」
    「ああもうっ! さっきっから何なんですかミカさんは!」

    「ここは親睦を深める場所で、罪を吐き出す空間じゃないんだけど? ナギちゃんこそ、ちょっと落ち着くべきじゃない?」

  • 16125/03/30(日) 11:03:13

    書き溜めもしてないから一旦ここまでじゃんね
    因みにここのナギちゃんはすーぱーナギちゃんだから原作ブレイクしてるじゃんね

  • 17二次元好きの匿名さん25/03/30(日) 11:04:54

    入水って聞いて身構えちゃった!

  • 18二次元好きの匿名さん25/03/30(日) 11:06:45

    あんた助けてくださいってスレの人かい?保守出来ずに言うのもあれだが前の続きもみたいなと思ってるんだがどっかに投げたりした?

  • 19125/03/30(日) 11:10:54

    >>18

    助けてくださいの人ですね

    完成したらハーメルンに投げる予定ではありますが、前の奴はまだ50%しか書き終えてないし締め切り(スレ落ち)も無くなったのでもうこっち書き始めてます

    楽しみにしてくれてありがとうだけど、ごめんね……!

    溢れ出るナギサ様を湖にぶち込む欲求を抑えきれないの……!!

  • 20二次元好きの匿名さん25/03/30(日) 11:13:48

    >>19

    了解した!どちらも楽しみにしてます

  • 21125/03/30(日) 12:31:22

    >>15

     それは私に言っていて、けれどサクラコを刺している言葉でもあった。


    「そんな話より、私はこのクッキーの話でも聞きたいかな? 何だか目が冴えて来るし、何入ってるの? 違法ハーブとか?」

    「ミカさん!?」

    「た、確かに以前のシスターフッドではそう言った物も扱っていたとは聞き及んでいますが……!」

    「サクラコさん!?」

    「な、な~んて、単なる冗談じゃんね。ちょっとしたアイスブレイクのつもりだったんだけど……」


     三人寄れば姦しいとはこの事かと、どこかズレた思考をしながら聞いていない独白を続けそうになるサクラコさんを止める。

     私たちだけの空間ならばまだしも、至る所に耳目があり、後々の禍根とも言えることをこんな所で吐き出して欲しくは無かった。


     ……あっ、生徒たちがクッキーを返しに来た。


    「や、やはり、私たちはそのような集団だと周りから見られているのでしょうか……!!」

    「ああ、ちょっと! こんな時に周りから頭下げてるように見られるような恰好は止めてってば! な、ナギちゃ~ん!」

    「……」


     慌てふためくミカさんを尻目に、シスターフッドに返却されたクッキーを一枚貰う。

     素朴で、ティーパーティでは決して出されないであろう不格好なクッキーだなと思いつつも、一口齧る。


     何故か、目の前に居るシスターが息を飲む音が聞こえた。

  • 22125/03/30(日) 12:31:37

    「……ローズマリーですね。少し、癖が強いですし……クッキー一枚とは思えない程度の満腹感も感じられますね。サクラコさん、これはどのような時に食べるクッキーなのですか?」
    「こ、これは夜通し行われる祭事や宿舎の警備を行う者たちに配られるクッキーです。眠気覚ましや、空腹感を紛らわすためのちょっとした工夫がされているんです」
    「なるほど……ですが、それだけではありませんよね?」

     思考が冴え渡る。
     きっとそれだけでは無いのだ。この場に出すクッキーとして、これ以上無いくらい相応しい理由があるのが分かる。
     サクラコさんに笑いかけると、サクラコさんも何時もの笑みを取り戻して答えてくれた。

    「これは、アリウス派の生徒たちに手伝ってくれたクッキーなんです。些か不格好ではありますが、味のほどは問題無いはずですが」
    「勿論、十二分に美味しかったですよ。ですが、この後も回らないといけませんからこの一枚だけで充分ですよ」
    「満足して頂けたのなら何よりです」

     ニコリニコリと笑顔が飛び交う。
     クッキーを返した生徒たちも、謝りながら再度クッキーを受け取ろうと戻ってくる。

     これでいいのだ、これが良いのだ。

     そんな満足感に浸っていると、サクラコさんは少しだけ表情に影を落とした。

    「申し訳ございません……お手を煩わせてしまい」
    「構いませんよ。お手を煩わせるだなんて、言ってしまえば我々はアリウスの保証を全てシスターフッドに押し付けているんです」
    「ですが、また皆さんに要らぬ誤解を」

    「変革に痛みは付き物です。シスターフッドは変わって行ってるのです、より良い方向に」

  • 23125/03/30(日) 12:31:59

    「……そう言っていただけるのであれば、これ以上悩んでいても仕方ありませんね」
    「ええ、悩みなんて――悩むなんて、大抵どうしようもないことか、どうでもいいことの二つですから」
    「? それは」
    「――ナギちゃーん!」

     サクラコさんを遮るように、ミカさんが飛び込んでくる。
     ……何故か小脇に、シスターを抱えたまま。

    「な、何をしているんですか? ミカさん」
    「ちょーっと、お話聞いてもらいたいかなって。ほら」
    「あっ、えっと、その……」

     綺麗に整えられていたであろう金髪は少しだけはねて、落ち着けなさげに修道服の握る。
     どういうつもりかとミカさんを見ると、どこか優し気に、そして申し訳なさそうに此方に一つウィンクを飛ばした。

     思わず零れ落ちそうになった溜息を飲み込み、目の前の生徒が落ち着く様に笑顔を見せる。
     しかして逆効果だったか、顔を赤らめいっぱいいっぱいになった表情で彼女は言葉を吐き出した。

    「あ、あの! お、美味しかったでしょうか! わ、私、お菓子作りなんて今回が初めてなのに、その……えっと……」
    「――大丈夫」

  • 24125/03/30(日) 12:32:15

     俯き、修道服を握りしめる彼女の手を包み、上がってきた視線に合わせるようにして答える。

    「作って頂き、ありがとうございます。様々な困難がこれからも待っているでしょうけども、私たちは決して――」
    「な、ナギちゃん。盛り上がってるとこ悪いんだけど……」
    「えっ?」

    「う”う”う”う”う”~~~~~!!!」

    「もう、聞こえてないみたいだから……」
    「……どうしましょう」

     涙と鼻水をこれでもかと流す彼女に手の施しようが無いと困惑するティーパーティ。
     ティーパーティは泣く子に弱いとどこかに書かれるだろうかと、シスターフッドの皆様と協力して何とか慰めることは出来た。

  • 25125/03/30(日) 12:34:18

    とりあえずここまでじゃんね
    遅筆な癖して描写を盛り始めると際限なく脱線して行くからシスフで区切って投稿しちゃうじゃんね
    多分湖に泳ぎに行くのは同程度の文量を書いた後になりそうじゃんね

  • 26二次元好きの匿名さん25/03/30(日) 14:02:56

    じっくり煮詰めてからひっそり入水するのが鬱くしいと思うので遅筆だろうと構わない
    それに凝った描写は好きで読んでて楽しいのでゆっくり待ってます

  • 27125/03/30(日) 15:39:45

    >>26

    嬉しいこと言ってくれるじゃんね

    感想を貰えるとやっぱり筆が乗るじゃんね

    ク〇ゲやりながら書いてるけど

  • 28125/03/30(日) 15:40:25

    >>24

    「大丈夫、なのでしょうか」

    「気にし過ぎだって。それに、たぶんもっと大変だったと思うから気にするだけ無駄だと思うけど?」

    「それは……そうですね」


     交流もそこそこに、私たちはシスターフッドが設営したエリアから離れた。

     長居し過ぎても迷惑でしょうし、何より主役とも言える来賓が来る前に内輪での挨拶は終わらせておきたかった。


    「そういえば……ティーパーティの設営はセイアさんがやってくれたんでしょうか?」

    「あははっ、出不精なセイアちゃんが態々音頭を取るわけないじゃん。私だよ、わ・た・し」

    「ミカさんが……?」

  • 29125/03/30(日) 15:40:45

     少し……いや、かなり驚いた。
     今の彼女はティーパーティの一員ではあるが、パテル派の代表ではない非常に複雑な立場だ。
     同じパテル派で手伝ってくれる人物がいるであろうことは想像に難くないが、全体の指揮を執るために彼女自身のプライドを打ち壊す真似を一つか二つは行ったはずだ。

     そんな驚嘆した表情が顔に出ていたのか、ミカさんはどこか苦笑いしながら答えた。

    「確かに、ね……一筋縄じゃいかなかったよ。どの面下げてって見てくる人も居たよ。でもね?」

     どこか眩しいものを見つめるような瞳をこちらに向け、ミカは続ける。
     ――胸が、ジクリと痛む。

    「ナギちゃんが、あんなにも頑張ってるのに……何もできないのは悔しかったから」
    「――」

     息が漏れる。
     脳が拒絶するようにミカの言葉が脳を震わす。
     駄目だ、ダメだ、だめだ!

     痛みを堪えるように歯を食いしばる。
     必死に、表情がバレないように。

  • 30125/03/30(日) 15:41:10

    「……ナギちゃん?」
    「……はぁー、全く私の節穴具合にはほとほと呆れますよ」
    「へっ?」

     大きく、大きく、全ての息を吐き出すような溜息を吐いて、そう溢した。
     そうして、ミカさんに笑みを向ける。
     自然と零れた涙を隠すことなく、曝け出しながら。

    「ミカさん、パテル派首長に復帰するんですものね」
    「えっ、まあーそうだね」
    「真面にミカさんを見れずに否定して……相変わらず、私は間違えてしまうんでしょうね」
    「……いや、普通に仕事し過ぎなんじゃないかなあ~って私思うんだけど」



     二人の距離は、どこか遠くで不確かで。
     実の所両隣りに居ることを二人はまだ知らない。

     一人は、とても遠く。
     一人は、とても低く。
     一人は、この場に居らず。

     それが、現在のティーパーティの実情であった。

  • 31二次元好きの匿名さん25/03/30(日) 21:22:48

    すごく平和な風景なのに、これから湖へダイブするという前提があるから心の奥底で焦燥感がフツフツと…

  • 32125/03/30(日) 22:30:08

    >>30

     その嗅ぎなれない香りが鼻腔を擽ったのは近づいた証だった。


    「この香りは……」

    「うわっ、コーヒーの匂い……私、コーヒー嫌いなんだよね」


    「確かにトリニティでは、馴染みの薄い香りですよね」


     いつものシールドを持ちながら、救護騎士団団長であるミネさんは顔を出した。

     強いコーヒーの香りを漂わせているミネさんに、顔を顰めるトリニティ生は少なくないだろう。

     どうしても、印象としてゲヘナの人間を思わせるからだろうか?


     現に、ゲヘナ嫌いを公言するミカさんは苦々しくミネさんを見つめていた。


    「全く、トリニティの親睦会なのにコーヒー持ってくるってどうかしてるんじゃない? また争いの種でも撒きたいの?」

    「……そうかも、しれませんね」

    「へっ?」

    「み、ミネさん……?」


     いつものミカさんの軽口に呼応するように、ミネさんは肯定した。

     まさか……今完全に武装しているのはそういう意図が……?

  • 33125/03/30(日) 22:30:26

     私たちの疑念と困惑の混ざった視線を受けてか、ミネさんはハッとしたように盾を落とし、恥ずかしそうに謝罪した。

    「も、申し訳ありません。少し言葉足らずでしたね……」
    「少しどころかまるっきり足りてないんじゃないかなあ~? ……ビックリしちゃったよ」

     そう答えるミカさんは心底安堵したように大きく溜息を吐いていた。
     盾を拾いなおし、救護騎士団が設営したエリアの方を見ながら彼女は言った。

    「エデン条約機構が成立したことによって、ゲヘナにある救急医学部の救援を受けて手伝うことも増えて参りました。それに伴い、ゲヘナ生との衝突も」
    「まあ、おかげで正実からはかなり楽に仕事ができるって話だけどね。私はまだ納得できないけど」
    「確かに、ゲヘナの風紀委員会も同様に似たようなことを述べていましたね。きっとETOを成立させたことは間違いでは無かったんです」
    「それが……どうして争いの肯定だなんて……」

     紙面上では犯罪率の低下や検挙率の増加は見られる。
     だが、数値と現場の差と言うのは体感してみなければ分からないものだ。
     口に突いて出た疑問に、ミネさんは少しだけ顔を伏せた。

  • 34125/03/30(日) 22:30:37

    「ゲヘナ生のバイタリティの高さは、ご存じですか?」

     唐突に、そんなことを言った。

    「彼女等は、自身のやりたいことであれば犯罪であろうとも軽々とその心理的ハードルを飛び越えていきます。まだ、それならば理解はまだ出来るのですが……」

     何かを思い出しているのか、彼女の持つ盾が震える。
     そして衝動のまま地面に突き立て――。

    「楽しそうと思ったから爆破! 襲撃! 乱闘! トリニティの文化が全く通用しないのです!」

     土埃と、ミネの怒声が舞い上がった。
     事前に取り出していたハンカチで口元を覆っていたので私は助かったが、ミカさんは思いっきり咳き込んでいた。

    「正義実現委員会の方々が忌み嫌うのも分かります! 根本が相いれないと、身に染みて知っているのでしょうから!」
    「ぐぉっほ!ごっほお! ……あははっ、内容には同意するけど、ちょっと興奮し過ぎじゃない? 救護騎士団が周りを怖がらせちゃ駄目でしょ」

     ミカさんの言葉が耳に入ったようで、激昂していたミネさんは静かになった周囲を見渡した。
     怯え、困惑、不安の混じった視線が四方八方から飛んでくる。
     親睦会の荒らし、混乱の元。

     そう判断した蒼森ミネの行動は早かった。

    「もはやこの命で償う他ありません!!」
    「ちょっ、盾は刃物じゃないんだけど! いやそれで貫通する恐れがある方が怖いから止めてって!」

     銃は持っていなかったのか、盾を縁で自決を計ろうとする女、蒼森ミネ。
     そんな良くも悪くも、日常風景の一コマ。
     漂っていた不穏な空気は、ものの見事に霧散したのだった。

  • 35125/03/30(日) 22:30:48

    「――……」

     ただ、一人を除いて。

  • 36125/03/30(日) 22:32:23

    とりあえず今日はここまでじゃんね
    明日の朝、更新するために頑張って書いておくじゃんね
    まあホスト規制されてたらどうなるかわかんねえじゃんね
    保守してくれると助かるじゃんね
    おやすみじゃんね

  • 37二次元好きの匿名さん25/03/30(日) 22:33:00

    乙です!
    ナギサ様全否定されちゃったね

  • 38二次元好きの匿名さん25/03/30(日) 22:43:20

    貴女がやってることは机上の空論でしたって突きつけられたのか

  • 39二次元好きの匿名さん25/03/31(月) 00:02:08

    団長さぁ・・・

  • 40二次元好きの匿名さん25/03/31(月) 06:15:51

    早朝保守

  • 41二次元好きの匿名さん25/03/31(月) 06:46:41

    なんか、死期が近い人って素でこんな感じだよな
    …()

  • 42二次元好きの匿名さん25/03/31(月) 07:19:45

    このレスは削除されています

  • 43125/03/31(月) 07:20:32

    >>35

    「申し訳ありませんでした……」


     ミカに盾さえ奪われたミネは、ナギサにただ謝ることしか出来なかった。

     己が謝罪を受けているという事実が、固まったナギサの頭を動かし始めた。


    「そうですね……ここで許すと言っても納得できないでしょう? 今から、救護騎士団の所に挨拶しに行こうとしていたんです。それまでのエスコートを、お願いしてもよろしいですか」

    「分かりました……必ずやこの身に代えても」

    「ちょっとちょっと、盛り上がり過ぎじゃない? はい盾、重いから持ってほしいんだけど」


     文句を投げながらも盾を手渡すミカさんと、再び盾を持ち直したミネさん。

     不穏な空気は殆ど無くなったと確認して、救護騎士団が設営したエリアに向かう。

     その道中、途中で途切れてしまった話に戻っていた。


    「それで、結局のところ何故コーヒーをここで配ることにしたのですか?」

    「確かに確かに~! 団長は切れやすいけど私欲で動くタイプじゃないよね? 何かここでコーヒーを出す意図があるんでしょ?」


     ミカさんはからからと笑いながらミネさんに尋ねる。

     実際、ミネさんたちも基本は紅茶を嗜んでいた筈だ。

     普段使うものを捻じ曲げて迄、ここでコーヒーを出したかった理由があると考えるのは自然だろう。

     ミネさんは観念するように、ポツリポツリと語りだした。

  • 44125/03/31(月) 07:20:49

    「実は……救急医学部の部長から頂いた物なんです」

    「長期間の拘束が珍しくないゲヘナでは、基本的に熟さなければならない雑務はどうしても溜まって行ってしまうとかで」

    「眠らない為に、全て片付けるために備え付けてあるものだと」

    「ですが、今皆様に配っているものは、救急医学部が常備しているものとは違うんです」

    「協力の感謝の印として、個人で愛飲している物を部活単位で頂いてしまいましたので……」

    「きっと、私共で頂くのが筋だとは思ったんです」

    「けれど、このコーヒーの香りと同じで、友好を結べる者たちは友好を結べば良いのだと、示したかったのです」

    「ゲヘナだからと、一瞥で判断せずに」

    「その人自身の思想や行動で、手を取り合えるのかを判断して貰いたかったのです」

  • 45125/03/31(月) 07:21:17

     その結果が、これなのですけどね。
     ミネさんは寂しそうな笑みを浮かべながら、救急医学部の設営したエリアを案内する。

     伽藍洞、と言うほど人が居ないわけではないが、居ても数人。
     どうしようもなく、空いたスペースが目立っていた。

    「私の我儘で、救護騎士団員を傷つけては居ないだろうかと。この香りを嗅いだ参加者が嫌な気分になっていないのかと……どうしても心配になってしまうのです。私は、ミカ様の仰るような清廉な人物ではありませんから……」
    「……」
    「……えっ? ちょっとミカさん!?」

     ミネさんの独白を聞き終えたミカさんはコーヒーを配る生徒の下へ行った。
     おずおずと差し出されたコーヒーを受け取り、顔を顰めながら黒い液体を飲み込んだ。

     そして――。

    「にっがっ!? ちょ、これ愛飲してるとか信じられないんだけど……あ、砂糖とミルクってある? 沢山入れてくれない?」
    「み、ミカさん……!」

     余りにもあんまりな態度を見せた。
     まあ元々好き好んで腹芸を行うタイプではないが、だとしても余りにもあんまりではないだろうか。

     たっぷりの砂糖とミルクが入ったコーヒーモドキをチビチビと啜りながら、ミカさんはミネさんの前に立った。
     どこか複雑そうな表情を見せるミネさんに、ミカさんは持ってるコーヒーモドキを差し出した。

  • 46125/03/31(月) 07:21:42

    「ミネ団長、これが私の答えだよ」

     飲んでみて? と、茶目っ気たっぷりにウィンクと共にコーヒーモドキを受け取らせる。
     何処までも渋顔のまま、ミカさんと同じようにコーヒーモドキを啜り――渋顔のまま答えた。

    「甘くて、確かに飲みやすい……ですが、これでは本来のコーヒーの味や香りが――」
    「それでいいんだよ」

     受け渡したコーヒーを奪い返し、今度は一息で飲み干した。
     溶け切っていない砂糖が紙コップの底面に残るのを眺め、舌を唇に這わせる。

    「最初っから選択肢が狭かったら、本当に知って貰いたい人に届かないかも知れない。意固地になって別の可能性を信じないと、もっと嫌いになるかも知れない。目指してるのが融和なら、まず私たちが寛容に成らないと駄目なんだよ」
    「ミカさん……」

     いま彼女は、ミネさんを見ていない。
     遠く遠く、もう届くことの無い過去の自分に向かって吐き捨てているのだ。

     ――エデン条約調印前の、アリウスへの救済案。

     ゲヘナとの政策が嫌だったからこそ、見つけた組織だったのだろう。
     私たちにその詳細を詰めぬまま、絵空事のように語っていたからこそ。
     具体的な案を相談することなく、独断専行で目指したからこそ。
     ただ一つのボタンのかけ間違いがでもあったら、きっと今笑い合うことなど出来なかったと知っているからこそ。

  • 47125/03/31(月) 07:21:57

     同じ轍を踏んで欲しくは無いと、愚者からの調べを奏でたのだ。
     慣れないコーヒーを飲んで迄、道化を演じて。

     ……いえ、ミカさんですし好奇心で動いただけかもしれないですね。

    「……否定は、出来ませんが」

     そんなミカさんからの言葉に、ミネさんは確かに心を動かされていた。
     しかし、それでも歯切れ悪く答えるのはまた別の理由がある様に思えた。

    「あの、ミネさん。まずは試してみるだけでもいいのではないんですか?」
    「そうしたいのは山々なのですが。現在のコーヒーに合ったミルクと砂糖の分量を調べるのは困難で……」
    「え~? じゃあさ、ご自由にお使いくださいって置いとくのはどう?」
    「それも衛生管理上の問題が起きぬよう、確実に此方で対処したいのです。……万が一でも救護騎士団が食中毒でも起こすなど有ってはならないのです……!!」

     真面目や誠実さは美点だが、こういった時にどうしても融通が利かなくなってしまう。
     如何したものかとミカさんと顔を合わせていると、チョコレートを配る場所で大きな声が上がった。

    「これはシェール・アルコマーニ……!? ゲヘナの香りに釣られてみれば、まさかの出会いだ。にひ、これこそ正にロマン、と言うわけだね」
    「へえ~……あ、これコーヒーと合う」
    「わ、私はコーヒーはちょっと無理かな……カフェオレなら何とか飲めるんだけど」
    「じゃあミルクと砂糖入れて貰うよう言っときなさいよ。すみませーん」

    「……渡りに船、とはこのことですかね」
    「ナギちゃん、あの子たち知ってるの?」

     放課後スイーツ部の面々に事情を話、他の組織が出しているお茶菓子を持ってくることを条件に手伝ってもらうことに成功したのだった。
     それからそこそこの賑わいを見せ始めたエリアを尻目に、私たちは本来居るべき場所に帰るのだった。

  • 48125/03/31(月) 07:25:23

    区切りが良いのでここまでじゃんね
    基本的にストックは残さない性質じゃんね
    あと、ナギちゃんが湖に飛び込む理由に欠片も引っ掛かってないのに責められる団長でちょっと草生えちゃったじゃんね
    お仕事から帰って来て書き始めるから保守してくれるとありがたいじゃんね

  • 49二次元好きの匿名さん25/03/31(月) 11:25:21

    団長もサクラコも勘違いされやすいからね、しょうがないね

  • 50125/03/31(月) 19:04:03

    >>49

    どっちかというと私がナギちゃん目線で書いてるせいじゃんね

    ミネ団長に何の非も無いと思ってるせいで生まれたギャップじゃんね

    おかげでナギちゃん死亡後にミネ団長がライナーすること確定したじゃんね

    ありがとじゃんね

  • 51二次元好きの匿名さん25/03/31(月) 19:04:56

    書いてくれてありがとうじゃんね

  • 52125/03/31(月) 21:05:52

    >>47

    「全く、ミネ団長は相変わらず手を焼かされるよね」

    「それをミカさんが言いますか」

    「ふふーん、私が団長とは違うってことを御覧じろ、ってね?」


     各組織、または各部活が開く出し物の間を行きかう生徒たちが増え始める。

     太陽の日差しもその強さを増していく頃、私たちはティーパーティの設営したエリアを目指していた。


    「大丈夫、ナギちゃんが心配せずとも一日中回る様にシフトも組んであるから」

    「……もとより、疑っていませんよ。ミカさんがそこまで力を入れたのですから」

    「そ、そこまで全幅の信頼をされるのもちょっと怖いじゃんね……」


     冷や汗を流しながら計画に問題が無いかミカさんが空をなぞっていると、その指先は一人の生徒に向けられた。

     修道服にその身を包んでいるがウィンプルは被っていないようで、艶やかに照らされた長髪を振り回し焦っているようだった。

     恐らく、誰か探しているのだろう。

     同じように気づいたミカさんは呆れたように目を細め、手を挙げて彼女名を呼んだ。


    「誰探してるの、サオリ」

    「――ッ! ……ミカか」

  • 53125/03/31(月) 21:06:04

     目に見えるように落胆するサオリからは、驚くほどに邪気を感じることは無い。
     あの時、あの場に居たトリニティ生が見たらその変貌ぶりに驚くこと間違いないだろう。

     彼女はトリニティ襲撃の主犯格、アリウスの主戦力であるアリウススクワッドのリーダー、錠前サオリ。
     目の前で怒気や殺気や憎しみが込められた視線と銃を向けていた彼女が、ただ平和に居なくなってしまった人を探しているのは奇跡と言っても差し支えないのだろう。

     ……いや、本当は分かっている。
     彼女たちアリウス生徒たちは、普通を奪われたその中に負の感情を詰め込まれていたに過ぎないのだ。
     負の感情を抜いた今の姿こそが、彼女たちの本性なのだろう。
     穏やかに、友を思いやることの出来る、私とは正反対な――。

    「……ゃん? おーい、ナギちゃーん?」
    「えっ!? あ、えっと……ど、どうしました?」

     いけない。
     意識を切り替えると、ミカさんが不安そうな顔をこちらに向けていた。
     違和感こそを持たれなかったようだが、心配したような表情で続ける。

    「……サオリがアツコちゃんたちと逸れちゃったみたいだから一緒に探しに行こうと思ったんだけど」
    「ああ、それなら一緒に」
    「それより! ナギちゃんには私が作った陣地を見て来て欲しいなーって……ダメ?」

     不思議と、ショックは大きくなかった。
     まるで我儘を言っている子供のような物言いだが、我儘を言ってミカさんに迷惑をかけたのは私なのは明白だ。
     ちょっと目を離した隙に上の空になる人間を連れ回そうとするほど、彼女は子供ではないのだ。

    「すまない、ナギサ……様。他に頼る伝手も無くてミカを借りることになってしまって……」
    「あはっ☆ どうしてナギちゃんには様を付けて私には何もないのかな?」
    「ミカがそう呼ばれたいならそうするが……私は友人にそうは呼びたくはない」
    「……いーよ、特別に許してあげる。でも、TPOは弁えてね」

  • 54125/03/31(月) 21:06:18

     軽口を叩きあう二人からは、どこか近寄りがたい空気を感じてて。
     こちらに手を振りながら人を探しに行ったミカさんに対し、私は力なく手を振り返す事しか出来なかった。

  • 55125/03/31(月) 21:07:38

    短いけど、ここまでじゃんね
    やっぱり理想とは違う始め方しちゃったから色々と難しいじゃんね
    だから想定の数倍の不穏さを出して中和するじゃんね

  • 56125/03/31(月) 21:55:20

     ――その姿を見たのは、ほんの偶然の交わりに過ぎなかった。

    「……ナギサ様?」

     何故か偶然にもティーパーティが主催した親睦会の近くに出展されているモモフレンズの出店に向かう途中、光に隠れてしまいそうな浅黄色の髪の持ち主とヒフミはすれ違った。
     すぐさま振り返るが、遠い人ごみの中――ティーパーティが設営したエリアの方向――に消えていってしまった。

     理由は分からないが、漠然とした不安感がヒフミの胸中を覆った。
     確かに、補習授業部の件で以前とは別の距離感が生まれたのは知っている。
     だが、それでも。

     誰にも目もくれずに先に進むナギサは別人のように思えて――。

    「――ヒフミ?」
    「あ、アズサちゃん?」
    「もう! ヒフミが態々会場出てまで見に行きたいって言うから付き合ってあげてるのに、はぐれないでよね!」
    「そうですよね。今度は逸れないように、ピッタリと♡ 密着して歩きましょう?」
    「そ、そんなこと言って! どこ触るつもりなのよ! エッチなのは駄目なんだから!」
    「ヒフミ、スカルマンのグッズはあるだろうか」
    「わわっ! アズサちゃん! そんな急に引っ張らないでください!」

     つんのめる様に腕を引かれる。
     騒がしくも、明るく楽しい青春の物語へと帰っていく。
     一抹に抱かれた不安感は拭い去られ――無情にも溶けて無くなっていった。

  • 57125/03/31(月) 21:55:32

     終ぞ語られなかった奇跡の象徴さえも去った。
     残るのは、ただの現実か。

     それとも。

  • 58125/03/31(月) 21:58:41

    今日はこれでホントのホントに終わり!
    短いとか……そんな文句言わないでよね!
    本当だったら、入水落ちを隠したストーリーが書きたかったんだから、仕方ないでしょ!
    寝不足は駄目! おやすみ!!

  • 59二次元好きの匿名さん25/03/31(月) 22:46:42

    後悔半端なくなりそう

  • 60二次元好きの匿名さん25/04/01(火) 02:03:00

    結末はどうなるのでしょうか?
    ハッピーでもバットでも構いません!

  • 61125/04/01(火) 08:18:09

    >>60

    ん……一応最後まで行けばハッピーエンドにはなるかも

    でも再度スレ立てする気はないから仄暗い絶望の底で沈む終わりも出来る、二度おいしい

    本音を言えばそんな終わり方が一番好きなんだけど、大勢の人はそうじゃないから幸せの道筋は用意しておく……ん、創作は難儀な物


    昨日はアイデアが浮かばなくて妖怪足舐め禿の両足をへし折ってたから続きの更新はない……ごめんね

    でも明日は休みだから一つの山場は越えられそう

    他にも感想質問があったら嬉しい

  • 62二次元好きの匿名さん25/04/01(火) 12:04:31

    そういえば入水の読みは「じゅすい」と「にゅうすい」のどちらでも成立するんだよな

    湖って誰か気付かないと助からないのでは

  • 63二次元好きの匿名さん25/04/01(火) 12:13:14

    入水ナギサ様、なんというか、うん。
    ゾクゾクする()

  • 64二次元好きの匿名さん25/04/01(火) 17:54:48

    (私のような人間は水で膨れ上がり醜く腐り果てるのがお似合いだ)

  • 65125/04/01(火) 19:15:47

    >>64

    ナギサ様が醜く死んでしまうのは嫌です

    そんな暗くて憂鬱なお話、私は嫌なんです

    それが現実だって、物理的な現象だって言われても、私は好きじゃないんです!


    私には、好きな人がいます!

    平凡で、大したSSも書けない私ですが……自分の好きなシュチュについては、絶対に譲れません!


    孤独に苦難を乗り越え

    努力がきちんと報われて

    辛いことは一人で耐え、誰にも気づかれないようにして……!

    苦しいことがあっても……周囲が最後に、笑顔になれるような!


    そんなハーッピーエンドが私は好きなんです!!

    誰が何と言おうとも、何度だって言い続けてみせます!

    私が描くナギサは、眠ったように死ぬって!

    終わりになんてさせません、まだまだ続けていくんです!


    私たちの物語……


    私たちの、欲望の物語を!!

  • 66二次元好きの匿名さん25/04/01(火) 21:48:34

    >>65

    結局最後死んでませんそれ?

  • 67125/04/01(火) 22:09:48

    >>54

     ティーパーティが設営したエリアは、見渡すばかりの生徒たちで埋め尽くされていた。

     部活の垣根を超え、文化の壁を理解し、各々の方法で穏やかに交流を続けていた。


     この光景を見て、ティーパーティの威信が失墜していると思う者は誰一人としていないであろう。

     それどころか、トリニティが生まれて初めてのことを成し遂げているのかも知れない。


    「……流石ですね、ミカさんは」


     溜息と共に、言葉が零れ落ちる。

     きっとこれで、心配事など一つも無くなるのだろう。

     漸く、疑心に塗れた悪魔であろうとも息をすることが許されるのだろうと。


     ――愚かにも、そう思ってしまった。

  • 68125/04/01(火) 22:10:04

    “ナギサ、今日は呼んでくれてありがとう”
    「先生」

     声のした方を向くと、連邦捜査部シャーレの顧問、先生がそこに居た。
     ETO成立、アリウス生徒たちへの説得、――そしてあの黒幕の捕縛。
     全て、先生が居なければ成し得なかった話だ。

    「当然ですよ、先生が居なければこの平和な時間を作り出すことは出来なかったんですから」
    “……私は少しばかり手を出したに過ぎないんだけどね”
    「ご謙遜為さらないでください。私達だけではゲヘナ生たちを落ち着かせることが出来ませんでしたし……それに」

     口を突いて出そうになった、この場に似つかわしくない人物の名前。
     ある一点に置いて酷い共感を覚えてしまったその名を呼ぼうとして、口を塞ぐ。

     あからさまな態度と、言葉の繋がりから何を言おうとしたのか察したのか、先生は苦笑しながら分かりやすく話題を変えた。

    “そう言えば会場の外側、沢山出店とかが並んでたんだけど……いいの?”
    「ああ、あれですか。ある一定のラインを侵入しないことを絶対条件として、出店を許可しているんです。我々としても昼食の準備をせずに済みますから」
    “(……目玉が飛び出るほど高かった気がしたが、きっと気のせいなのだろう。うん)”

     そこから他愛のない話していると、パテル派の生徒の一人から声をかけられた。

    「ナギサ様、ミカ様があちらにお席をご用意しておりますので……先生とご一緒にどうぞ」
    「……とのことですが、どうです? 続きはあちらで」
    “それじゃあ、お言葉に甘えようかな”

     連れられ、案内された場所は、周囲一帯に花が咲き乱れる幻想的な席だった。

  • 69125/04/01(火) 22:10:19

    「……」
    “綺麗だね……”

     視界を遮るものが何もない、雄大な自然を感じさせる花畑が広がっていた。
     色とりどりに咲くパンジーたちは融和と成ったトリニティを表しているようで。
     どうしようもなく締め付けられる胸を抱いていると、先生が真剣な眼差しをこちらに向けていた。

    “……ナギサ、君に伝えたいことが――”
    「失礼しま……もしかして、お邪魔でしたか?」
    “……いや、ううん。気にしないで”

     ティーセット持ってきた生徒に水を差され、先生の眼差しはゆるゆるとした物へと変わっていった。
     生徒は先生に謝り倒し、先生は生徒を必死に止めていた。

     そんな光景に、思わず笑みがこぼれていた。

  • 70125/04/01(火) 22:10:42

    >>57

    “――奇跡を起こすことは、できない”


    “――有ったのは選択と、選んだ答えのみだった”


    “――限りある力を使おうとも”


    “――既に起こった事象を、捻じ曲げることは、できない”


    “――私の、ミスだった”

  • 71125/04/01(火) 22:17:15

    今日はここまでじゃんね

    目標シーンがあったけど、難聴患ったせいで全然集中できないじゃんね

    明日で一山超えたかったのにそれも難しそうで悔しいじゃんね

    皆も体に気を付けるじゃんね

    おやすみじゃんね


    >>66

    あはは……これはナギサ様が惨たらしく死んで欲しいか、眠っているように死んでいて欲しいかの絶対に負けられない戦いなんです!!

    正直土座衛門は結構理解出来るんですけど、ナギサ様は死ぬ時は綺麗に死んでいて欲しいじゃないですか!!

  • 72二次元好きの匿名さん25/04/01(火) 22:19:37

    せめて安らかに、穏やかな死を

  • 73二次元好きの匿名さん25/04/01(火) 22:50:46

    >>65

    結局死んでて草

  • 74ん、ホスト規制25/04/02(水) 00:48:10

    区切りのいいとこまで書けてもこれ……ん、残念
    起きたら落ちてるとか嫌だから保守

  • 75二次元好きの匿名さん25/04/02(水) 02:44:19

    >>65

    早いうちに陸に打ち上げられればワンチャン?(そういう話ではない)

  • 76二次元好きの匿名さん25/04/02(水) 02:47:21

    入水して助かった場合って後遺症あったりするのかな……(素朴?な疑問)

  • 77二次元好きの匿名さん25/04/02(水) 05:14:11

    基本は脳に障害が残ったりとかだろうね
    もちろん運よく何もない場合もあるだろうけど

  • 78二次元好きの匿名さん25/04/02(水) 07:53:44

    正直綺麗な死体になって欲しいのはわかる

  • 79125/04/02(水) 08:28:50

    >>69

     オレンジのムースケーキを突きながら、何気ない談笑が続く。

     先ほど言いかけた何かは、軽く問うてもはぐらかされてしまった。


     まあ別にいいだろう。

     言いたく無いことを無理矢理聞き出したいわけでもない。

     それに、こんなにもいい天気で、用意された絶景があるのだ。

     そこを不用意に突いて、穏やかな時間を壊したくも無かった。


    “――それで、徹夜でトリニティの書類を片付けてたらいつの間にセリナが現れたような気がして……いつの間にかベットで寝ていたんだ”

    「そ、それは……」

    “記憶が混濁するまで徹夜なんかしちゃあ駄目だと身に染みたよ。ナギサは最近無理とかしてない?”

    「わ、私は先生ほど無理は出来ませんよ……」

    “……そっか”


     思わず歪む口角は、果たして。

     どの口が心配を口にしているのだろうと思いながらも、目の前の人物を見据える。


     ――思えばここから始まった。


     シャーレの権限を悪用し、疑心に駆られた私は、何ら罪のない生徒たちをトリニティから放逐しようとした。

     お題目のゴール板を踏み切らせないために、難易度を上げ、場所を変え、あまつさえテストを受けることすら出来ないようにした。

     それでも、彼女たちは裏切者だったミカさんを捕らえ、私が引き上げたお題目のゴールを全員で駆け抜けていった。


     ……思い返せば、どれだけ私の頭がおかしかったのだろうと。

     テスト会場を変えたことなどまさにそうだ。


     ゲヘナ生に捕まろうが、風紀委員会に捕まろうが、きっと私はその時点で彼女たちを切り捨てていた。

     トリニティとは無関係の生徒だと、補習部のテスト期間が過ぎるまでゲヘナで拘留されてて貰おうと、そう思っていた。

     ……もしそうなっていた場合は、きっと彼女たちは二度とトリニティの地を踏むことは無かったのだろう。

  • 80125/04/02(水) 08:29:24

    「……」

     フォークが、止まる。

     彼女たちは、きっと私を許してしまう。
     親しい同輩を切り捨てようとした私でさえも。
     それでは出来ないのだ、納得が。

    “……ナギサ?”
    「――おっ、主役の揃い踏みだね☆」
    “ああ、こんにちはミカ。素敵な場所だね”
    「でしょ~? ちょっと手入れされてないとこもあるけど、それ以上にここより良いとこが見当たらなくてさ」

     自慢をするように、花畑に向かって両手いっぱいを広げるミカ。
     彼女はどう思っているのだろう。

    「っ……ミカさん、サオリさんが探していた人は見つかったんですか?」

     …………あぶなかった。
     いま、私は何を考えていた?
     今はとっくに真面に成ったと思っていたが、まだまだおかしいのかも知れない。
     咄嗟の切り替えが上手く行ったのか、ミカさんは不思議がる様子も見せずに楽しげに笑った。

    「ああ~それがね、外の出店で無銭飲食したらしくて、今頃四人揃ってタコ焼き焼いてるかな?」
    “あらら……”
    「ミカさんが払わなかったのですか?」

     代表からは落ちたが、今のミカさんもティーパーティの一員だ。
     その程度であれば支払えるはずだが……。
     ミカさんも似たようなことを提案したのか、同意するように苦笑していた。

  • 81125/04/02(水) 08:29:41

    「そうなんだけどね……サオリが巻き込むわけにはいかないって言って追い返されちゃったの。あ~あ、折角サオリが働いてる姿撮って遊ぼうと思ったのに、残念」
    「ミカさん……」
    “ほ、ほどほどにね?”

     そう言ったミカさんの横顔は、拗ねているように見えてどこか寂しさを感じていた。
     余裕があれば、手伝うつもりだったのだろう。
     だが、時は来たのだ。

    「――皆様、お早いお集まりで」
    「申し訳ありません、少し用事がありまして」
    「サクラコさん、先程はあの状況で別れてしまいすみません。ミネさんも定刻には間に合っていますからお気になさらずに」

    「さあ~ってと! これで全員揃ったね」

     各々が用意された席に移動し、花畑を背景にミカさんが立ち上がる。
     はしたなくティーカップを持ち上げ、号令をかける。

    「皆さま、本日はお日柄も良く……なんて、こんな場に似つかわしくないよね」

     格式ばった挨拶はほんの僅かに砕かれて、ティーカップをソーサーの上に置いて手を叩いて軽く言った。

    「それじゃ、第一回トリニティのガールズトークを始めるじゃんね☆」

     ――それは余りにも滑り散らしていて。
     サクラコさんは事態を理解できていないのか瞬きをし、
     ミネ団長は怪訝な表情をミカさんに向け、
     先生はガールズトークなら離れといた方が良いのかな……みたいな見当違いをしながら生徒たちに視線を投げて。

  • 82125/04/02(水) 08:29:55

    「――始めるじゃんね☆!!!!!!!!!!」


     再度の号令で、問答無用に始まった。

  • 83125/04/02(水) 08:33:21

    ここからガールズトークさせるとか正気じゃんね?
    でも集まる理由とかミカの性格とか考えたら自然とガールズトークという択に辿り着いたじゃんね
    まあキャッキャウフフするような話に成らないのは仕方のない面子じゃんね

  • 84突発性難聴じゃんね25/04/02(水) 14:28:14

    休みの日なのに更新できそうにないじゃんね……
    みんなの健康を祈るね☆

  • 85二次元好きの匿名さん25/04/02(水) 18:26:25

    >>84

    お大事にしてほしい

  • 86二次元好きの匿名さん25/04/02(水) 20:33:10

    綺麗な死体といえばミカがナギサを埋葬するやつがあった
    なぜか18Gだったのでクッション挟むね
    h ttps://www.pixiv.net/artworks/127080853

  • 87二次元好きの匿名さん25/04/02(水) 23:27:18

    なんだよおい…最高のスレとss書きを見つけちまったじゃねぇか…楽しみが1つ増えちまったぜ…!

  • 88二次元好きの匿名さん25/04/03(木) 04:01:48

    待ち

  • 89二次元好きの匿名さん25/04/03(木) 06:33:16

    水中天使

  • 90125/04/03(木) 09:01:33

    >>85

    お薬が効いてきたから夜は頑張って更新できそうじゃんね

    楽しみに待ってくれると嬉しいじゃんね

  • 91二次元好きの匿名さん25/04/03(木) 10:37:44

    待つ

  • 92二次元好きの匿名さん25/04/03(木) 16:37:50

    祈るね

  • 93125/04/03(木) 21:32:40

    >>82

     破天荒な始まりでこそあったが、その内容は極めて真っ当なものであり、また酷くつまらない物だと言えた。


    「それで? アリウス生徒たちとシスターフッドの間で何かしら問題は起きてないの?」

    「ご安心を。シスターフッド内での諍いは一つも御座いませんから……ただ、どこの所属と限った話では無いのですが、度々生傷を作って教会に戻る生徒が少ないながらも確かにいます」

    「一般生徒とかパテル派だったら話は早いんだけど……ミネ団長は何か聞き覚えは無い?」

    「……残念ながら。怪我を隠して帰宅しているということは、我々救護騎士団の預かり知らぬ所で問題が発生しているのだとは思われますね」


     建設的に繰り広げられる議論は問題無く続き、明確な答えは出せないままではあるが、各々が抱える問題の情報共有だけでもすることができた。


     ――これがどれだけの偉業なのか、ミカは分かっているのだろうか?


     誇らしい友の姿と、それに這い寄る自身という汚点。

     自然と揺れる瞳は、やがて自分以外を視界に入れて、花園に咲く光を見た。

  • 94125/04/03(木) 21:32:59

    “……ナギサ?”

     光が、私を見る。
     不安そうな顔で、心配をしている。

    「――すみません、昨晩の雑務の疲労が抜けていなくて」
    “それなら……いや、良くはないんだけどね?”

     面白いことを言う。
     いや、先生はそういう人だったか。

     ゴミ箱に放りこまれた塵であろうとも手を伸ばす人。
     底抜けの、救世主。

     ミカに声をかけられ会議の方へ戻って行く先生を尻目に、私はぽつりと、席を埋めていた。

     事、書類業務などの雑務であればこの中の誰よりもトリニティの内情に詳しいと言える。
     だが、今話しているのは現場で実際に起きている問題の数々だ。
     私では解決しようのない話が飛び交い、各々の意見を出し合い、一枚岩へと近づいて行く。



     何故だかそっと、心の重りが取り除かれたような気がした。

  • 95125/04/03(木) 21:33:14

     ふと、鳴き声が聞こえた。その方を向くと、空高く鳥が飛んでいるのが見える。
     自由に飛び回る様に、どうしようもない程の羨望を感じてしまい、手を伸ばした。

    「――ちょっとナギちゃん!? 大丈夫!?」
    「……えっ?」

     ミカがこちらに突っ込んで、驚いた表情を向ける。
     何をそんなと思えば、身体から紅茶の香りが漂ってきた。
     ……濡れている。びしょ濡れだ。

     ミカが持っていたハンカチで私を拭こうとするのを抑え、私はそっと席を立った。

    「ごめんなさい、ミカさん。この場を汚してしまって……」
    「いや、うん。そんなことはどうでもいいんだけどね? ナギちゃんこそ大丈夫なの……? 紅茶、熱くなかった?」
    「大丈夫です。少しばかり席を外しますね。汚れを落としてきますので」
    「あっ、ちょっとナギちゃん!」

     未だ触れようとする光を牽制するように笑みを向け、言葉を組み上げていく。

    「ミカさん、ティーパーティ代表としてお二人をお願いしますね」
    「うっ……わ、分かった」

     逡巡したミカだったが、ナギサの笑顔がミカの想いを断ち切った。
     恭しく一礼すると、桐藤ナギサはその場を去った。

     ――それが、この場に居た全員が最後に見た桐藤ナギサの姿だった。

  • 96125/04/03(木) 21:36:09

    とりあえずここまでじゃんね
    テンポを考えてガールズトークは適当に切らせて貰うじゃんね
    うごごご……展開とやりたいことが全然噛み合わなくて禿げあがりそうじゃんね
    今回の時空とは違う私がやりたかった展開も投げるじゃんね大暴投じゃんね

  • 97二次元好きの匿名さん25/04/03(木) 21:37:00

    やっぱ好きだわぁ…
    空を飛ぶ鳥に手を伸ばしたりするの好き
    本当に好き

  • 98二次元好きの匿名さん25/04/03(木) 21:39:36

    飛び降りを選ばないのは鳥に憧れることすら烏滸がましいと考えた末なのかはたまた…

  • 99125/04/03(木) 23:08:37

    >>95

     ――私の我儘で、トリニティに混乱が巻き起こった。

     ――私の仕返しで、友人を一人失いそうになった。

     ――私の暴走で、今なお、親友はその身も体も傷つけていた。


    「ナギちゃん……」


     確かな足取りでここから遠ざかっていくナギちゃんから、先程のような不安定さは感じられない。

     ……ティーカップを持ったまま、空に手を伸ばしていたナギちゃん。

     零れた紅茶に目もくれず、汚れる衣服に意識を向けず、指先に引っ掛かったティーカップすら視界に入らないように、ただ空だけを見つめているように見えた。


     そんな姿を見たのはきっと私だけだろうけど、流石に全身紅茶濡れになったナギちゃんを前にして何の問題も無いと思えるほど、頭の中までお花畑な人はここには居なかった。


    「……ナギサさんは大丈夫なのでしょうか」

    「……私たちとほぼ同じ温度の紅茶ですよね? これは速やかな救護が必要なのでは?」

    「……身内の恥を晒すようで悪いんだけどさ。ナギちゃん、殆ど一人でティーパーティのホスト回してるんだよね。アリウス問題、ETOを抱えたままさ……」


     そう言うと、苦虫を噛み潰したような顔を皆が見せる。

     誰もがこの問題の難しさを知っているからこそ、軽々しく手伝うなどと言えないのだ。

     沈痛な雰囲気がこの場を満たす中、サクラコは再び、懺悔するかのように言葉を溢した。


    「アリウス生徒に関して言えば、シスターフッドはティーパーティに……いえ、ナギサさんに借りを作っている最中です。急遽増えた生徒に対する急ピッチな寮の建築、トリニティのBD一式を人数分以上揃えてくださったり、娯楽に関しても……」

    「……あははっ、歌住サクラコ。自分が何言ってるか分かってるの? 自分はティーパーティの走狗ですって言ってるようなもんじゃんね☆ またトリニティに問題を一つ増やしたいの?」

    「その気がある人がこの場に一人でもいるのであれば、そうなのでしょう。私は、この場にそのような人物が居ないと確信しておりますから」

  • 100125/04/03(木) 23:08:50

     真っすぐに、こちらを見ながらそんなことを言うサクラコ。
     ……ムカつく。そんなことを明け透けに言い放てる彼女が憎い。
     そして、それ以上にそんな彼女に嫉妬している自分が居ることに更に腹が立った。

    「……お次は、私ですかね」

     睨み合いとも言える私たちの視線を断ち切ったのは、ミネだった。

    「先程、ETOが採決されて事件件数が減ったとは言いましたが……実の所、ナギサ様が動いていなければ条約自体が最悪の印象を迎えたまま決裂に向かってもおかしくは無かったのです」
    「……あの女を、捕まえた日のこと?」
    「いえ」

     思わず沸々と湧いてきた怒りを否定するようにミネは鷹揚に首を横に振った。
     では一体どの時なのか、その疑問はすぐに氷解した。

    「あの事件が一段落し、ETO機構が正式に活動を開始した日です。こちらからはツルギ委員長がトップとして就任しましたが……ナギサ様が口利きしていなければ、ゲヘナのトップは万魔殿の誰かだった……との話です」
    「はっ……?」

     ――万魔殿は裏でアリウスと繋がっていた。

     これはあの女どころか、一般のアリウス生ですら知っていた事実だ。
     元々エデン条約を壊すつもりだった馬鹿がETO機構のトップに座る予定だった?
     舐め腐った考えに自然と翼が広がっていくが、そっと背をサクラコに触れられる。

    「落ち着いてください、ミカさん。結局は起こらなかった事象。そのことについて怒りを露わにしても無駄な体力を使うだけです」
    「――……はあぁ~、確かにその通りだね」

  • 101125/04/03(木) 23:09:05

     背に生えた翼が折りたたまれて行き、落ち着いたと示すと、ミネは続きを語りだす。

    「実際はヒナ風紀委員長がトップを務めましたが……ヒナ風紀委員長はエデン条約が成立したら風紀委員長の座から退く予定だったようです」
    「……なるほど、そこをナギちゃんが口説いた訳ね」
    「ええ……おかげで風紀委員会との軋轢も最小限に抑えて活動できています。……もしも、ナギサ様が先んじて動いていなければどうなっていたか」

     そう呟くミネの表情は複雑で、恐らくナギちゃんに無理をしてほしくは無いと思ってはいるものの、彼女が自由に動けなければ被害がより甚大だったと分かるからこその、表情。
     単なる脳無救護女ではない……なんて悪態が零れる前に、溜息を吐いた。

     違う、そんなこと言いたいわけじゃない。
     私たちはこんなにも助けられている。
     それなのに、ナギちゃんはいつまで経っても一人でボロボロで立ち続けている。

     助けたいんだ。助けてくれたから。
     助けたいんだ。友達だから。
     助けたいんだ。かけがえのない親友なんだから。

    「……ほんと、どうすればいいんだろうね」

     願いも、気持ちも、やる気だってある。
     でも、どうしても手段が思い浮かばない。
     必死に私たちの出来ることはやっているけど、それだけじゃ到底足りない。

     せめて、ナギちゃんが如何したいのかだけでも、知ることが出来たら。

  • 102125/04/03(木) 23:09:17

    “……おっと”

     不意に、先生のスマホが鳴った。
     先生は画面を見て――目を見開いた後、こっちに視線を投げた。

    “ごめん、ちょっと用事が出来たから離れるよ”

     そう言って、先生はこの場を離れた。

     ……もしかすると、ナギちゃんからの電話だったのかも知れない。
     力も、能力も足りていない私たちではなく、力も能力もある先生に頼る。
     とても合理的だ。正しいと言える。

     けど……。

    「……私を頼って欲しかったなあ」

     去り行く先生の影を見つめて、後悔だけを口にする。
     問題だらけの私だけど、まだ私と同じで親友だと思ってくれているなら。

     今度は私を、頼ってください。

  • 103125/04/03(木) 23:11:33

    ということで今日はここまでじゃんね
    流石に視点を分けないと紅茶塗れになるナギちゃんの意味が伝わりにくいと思って適当に加筆するじゃんね
    なんか思った以上にナギちゃん上げになったけどナギちゃんは何処までも高く上げていいって心の中の欲望が叫んでいるから従うじゃんね

    一回だけ欲望回を挟むじゃんね
    脱線だけどごめんじゃんね
    おやすみじゃんね

  • 104二次元好きの匿名さん25/04/03(木) 23:17:31

    最ッ高だよ!!
    こういうバッドエンドはなんぼあってもええですからねぇ…!!

  • 105二次元好きの匿名さん25/04/03(木) 23:21:53

    今一番楽しみなスレ

  • 106二次元好きの匿名さん25/04/04(金) 08:37:14

    ナギちゃんはいくら上げても良い

  • 107二次元好きの匿名さん25/04/04(金) 10:18:21

    そういえばセイアちゃん出てこないけど今どうしてるんだ?

  • 108二次元好きの匿名さん25/04/04(金) 14:30:34

    待つジャン

  • 109二次元好きの匿名さん25/04/04(金) 14:53:59

    >>107

    恐らく療養中

    メタな事を言うなら直感でナギサ様が入水するの察知できるから出禁…

  • 110125/04/04(金) 19:25:21

    >>107

    この世界は最終章のシナリオが発動しないから予知夢がまだ残ってて相変わらず病床フォックスですまない……しているじゃんね

    実際メタ的な理由でも療養して貰ってるのもまた事実じゃんね

    でも安心して欲しいじゃんね、ちゃんとこの後セイアちゃんにも花園にも来てもらうしとびっきりの見せ場があるじゃんね


    まあ今日は私の欲望大暴投の日なので明日を待ってくれるといいじゃんね

  • 111二次元好きの匿名さん25/04/04(金) 21:34:36

    ナギちゃんには幸せになって欲しいと言う欲望と同時に、
    ナギちゃんを失って絶望のどん底に陥る周囲の姿も見たいと言う相反する衝動があるじゃんね

  • 112私はゴミじゃんね……25/04/04(金) 23:39:34

    があ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!全然書きたいシーンに届かねえじゃんねええ!!
    マジでヤバいじゃんね真っ当に反省して思いやりの塊みたいになったミカが全然ナギちゃんをいい感じに奮起させてくれないじゃんね……
    なんじゃんねこの女……腹立つのに思いやりが節々に感じられて憎めないのに普通に邪魔なのやめてくれじゃんね理想の為に潰れてしまえばいいじゃんね……

    と言うわけでごめんじゃんね
    明日は早いからもう寝ないといけないじゃんね
    夜は確実に更新するから保守してくれると嬉しいじゃんね

    後ナギちゃんが幸せになって欲しい気持ちはとても良くわかるじゃんね
    だからナギちゃんは自分が居ない方が幸せだと思うようにするじゃんね
    こうすればみんな曇って性癖先輩も満たせてお得じゃんね

    それじゃ、おやすみじゃんね

  • 113二次元好きの匿名さん25/04/05(土) 02:16:54

    祈るね

  • 114二次元好きの匿名さん25/04/05(土) 08:25:58

    続きが待ち遠しいね。夜の更新楽しみにしてる。

  • 115二次元好きの匿名さん25/04/05(土) 14:38:10

    発狂してる…

  • 116二次元好きの匿名さん25/04/05(土) 16:11:39

    このレスは削除されています

  • 117125/04/05(土) 16:14:25

    >>95

     しとどに濡れた姿のまま会場に顔を出すのは気が引けた。

     考えずとも分かるだろう。

     トリニティのトップが集まり、その内の一人が紅茶をかけられたような姿で戻って来る。


     何かきな臭い事が起こったと考えるのが妥当だ。

     今でさえも不安定なバランスの上で成り立っているトリニティ総合学園内部。

     私という存在がアリの一穴になる可能性は大いにあり得る。


    「――あら?」


     どうした物かと会場と会場の狭間で佇んで居ると、ふと、声が聞こえた。

     何事かとそちらを向くと、私にお誂え向きな獣道がそこにはあった。


     迷うことなく、躊躇うことなく、獣道へと歩を進める。

  • 118125/04/05(土) 16:14:39

     脳裏に響く声に導かれるように――

     ――東に行け、と。

     ナギサが獣道を踏み締めると、圧し折れ、枯れ落ちた草木が蘇っていく。
     ナギサの姿が見えなくなった時には、そこに獣道があったとは思えない程に緑が雄々しく生い茂っていた。

     桐藤ナギサは気づかない。
     否、気付こうとも眉の一つも動かさないだけだ。

     幸福は、すぐそこにあるのだから。

  • 119125/04/05(土) 16:16:16

    今回はここまでじゃんね
    スマホでぴほぴほ書いてると労力の割に文章が短くなっちまうじゃんね……
    まあ今のナギちゃん視点だと碌に心理描写が描けないから妥当でもあるじゃんね

  • 120二次元好きの匿名さん25/04/05(土) 17:31:37

    スマホ入力は大変そう

  • 121二次元好きの匿名さん25/04/05(土) 19:21:50

    おや?誘導されてるのかな?

  • 122125/04/05(土) 19:36:07

    >>121

    安心するじゃんね、ちゃんと全部ナギちゃんの意思じゃんね

    全部ね

  • 123二次元好きの匿名さん25/04/05(土) 19:39:50

    ほならこれから起きることも全部ナギサの意志かぁ…

  • 124二次元好きの匿名さん25/04/05(土) 20:41:30

    すみません、普通は歩いた傍から植物が蘇るなんてしないんですよ

  • 125二次元好きの匿名さん25/04/05(土) 20:43:19

    >>124

    ナギサの神秘…いや待てラファエルにそんな逸話あったっけ?

  • 126125/04/05(土) 21:49:47

    >>102

     フリーのメールアドレス、登録されていない番号から届いたその文言は思わず会合から離脱を即決させる文面だった。


    『紅い貴婦人の終売をお知らせします』


    “……アロナ、例のポイントの反応はやっぱり?”

    【申し訳ありません……! データも完全に消えて復旧すら困難です!!】

    “いつの間に……”


     周囲に生徒が居ない、会場と会合を繋ぐ一本道の道を駆けながら後悔だけが募る。

     アリウス生徒たちを支配していた大人、ベアトリーチェはその危険度の高さからシャーレ預かりとし、矯正局だけではなく三大校の力を借りて全くの干渉が出来ない場所に監禁していた。


     物理での脱出で言うのであれば、万全のヒナでさえも数日かかる程で。

     情報での突破を図ろうものなら、アロナでさえも数時間かかる程。


     可能な限り、最大限の警戒は施した筈だった。

     それがなぜ逃げられたのか。どうして連絡をして来たのか。


     疑問が渦巻く中、自然のトンネルは通り抜け、生徒たちが楽し気にお茶菓子を楽しんでいる姿が目に入る。


    (“――早く止めないと!”)


     目的は分からない。

     だが、タイミングを考えれば何かしらの意図があるのは明確だ。

     逸る気持ちを抑えつつも、アロナの解析を待つ。


     メール自体を解析したところ、何かしらの数字の羅列――恐らくは何らかの連絡手段――が見つかった。

     果たして何を伝えたいのか、どうして欲しいのか。

     掌の上で踊ることにはなるが、既に出し抜かれている以上、無闇に動くのはマズイ。

  • 127125/04/05(土) 21:50:04

    【――出ました! ここから約2km先の場所です! 位置は……トリニティ各組織のライン上にあります……!!】
    “急がないと……!!”

     トリニティの一大事とも言える危機だが、相手が暗号のように伝えてきた事実を考えると、考え無しに伝えていいものでは無かった。
     強いて言えばナギサかサクラコ辺りが適任だろうが……ナギサは言わずもがなキャパシティオーバー、サクラコも今はミネが近くに居ることで妙な勘繰りを受けかねない。

     ならばツルギかハスミだろうか――、そんなことを考えているとアロナが追加の情報を叫んだ。

    【ま、待ってください! 先生一人で来るように、と続いています! ……貴方は奇跡を握っているようだから、だそうです】
    “黒服か……”

     だとすると、このメールは契約の一種なのだろう。
     スパムに近いが、情報は真実。
     セキュリティレベルややけにまどろっこしい言い回し、真意に気づいたからこそ契約は有効とされる。

    (“赤い貴婦人……仮に他の人にメールを見られても幾らでも誤魔化しが出来るようにされている。アロナですら一瞬で解けないセキュリティ……ヴェリタスの子達やヒマリでも難しいだろう。コユキなら読み解けるかも知れないが……読んだところで数字の羅列群に意味を見出すのに時間がかかりすぎる”)

     要するに、一人で向かう他無いのだ。
     だが、どうしても拭えない違和感があった。

     呼び出しているのは恐らく黒服だ。
     けれど黒服にしてはやけに手が込んでいる。
     奴はもっと分かりやすくアプローチを仕掛けてくる。

    “……”

     この先に何が待っているのか、それは全くの不明だった。
     確実に言えることは、良くない知らせなのだろうことだった。

  • 128125/04/05(土) 21:50:18

    「お待ちしておりましたよ、先生」
    “……”

     指定された座標。
     トリニティが開催した親睦会の花園と、人々に見捨てられた廃墟の狭間で奴は待っていた。

    「さて……ここに辿り着いたということは、マダム――ベアトリーチェが解放されたこともご存じなのでしょう?」
    “またトリニティに混乱を生むつもりか?”
    「相変わらずお優しい事で……そもそも我々としてはトリニティと敵対する意図は無いのですが……これでは無駄に疑念が深まるだけですね」

     分かりやすくしましょう、と黒服は指を一つ立てた。

     ――ベアトリーチェは死にました。

     思考が、止まる。
     死んだ? 何故? どうしてそれをこちらに言う為に態々こんな真似を?

     疑問、疑念、疑惑。
     逆巻く感情を置いてけぼりにして、黒服は尚も続ける。

    「先生は何故殺すためにあの部屋から態々逃がしたのかと……そうお考えなのでしょう。ですが、前提として違っているのです。まず、我々はベアトリーチェを逃がしてはいません。逃げだしたのです、自力で」
    “自力で……?”

     確かに、奴は化け物に変身する力があった。
     だが、それで簡単に壊されるような設計はしていない。

     湧いた疑問を一つ一つ潰すように、黒服は尚も語り続ける。

  • 129125/04/05(土) 21:55:21

    筆が乗ってるし明日は休みだし幾らでも書けそうだけど、今日はここまでじゃんね
    代わりに明日は沢山更新できるよう頑張るじゃんね
    ここから結構理屈っぽい、退屈な部分が続くかも知れないから言うけど、夜の更新はみんなが待ってるシーンに持ってけるよう頑張るじゃんね

    あとラファエルに植物の成長促進なんてものはないじゃんね
    少なくとも適当に調べた限りそれっぽいものは見当たらなかったじゃんね

    理屈っぽい長話も、理不尽っぽい力もただ意味がある、ってだけじゃんね

    あとじゃんねじゃんね入力し過ぎて脳内の語尾にじゃんねがつきそうになって激やばじゃんね人間になる所だったじゃんね
    みんなも気を付けるじゃんね

  • 130二次元好きの匿名さん25/04/05(土) 21:58:21

    そもそもベアトリーチェがボッシュートされてなくてさらに捕えられてたトリニティから脱走してさらに死んで…何なのだこれは!?どうすればいいのだ!?

  • 131二次元好きの匿名さん25/04/05(土) 23:27:27

    保守じゃんね

  • 132125/04/06(日) 07:43:49

    >>128

    「まず、先生は勘違いをしています。ベアトリーチェの能力は化け物に変貌する……などと、そんな稚拙な物ではありません」


    「彼女は仮にもゲマトリアに加入を許された人物……ただの俗物ではないのですよ」


    「端的に……いえ、ここはマエストロのように行きましょうか」


    「――先生、位相という言葉はご存じですか?」


    「トポロジーと呼ばれる位相数学の一種であったり、物理学の変数の一種であったり、そういったものです」


    「厳密に言えば私の説明は合っていませんが、解釈の擦り合わせとしてはこの程度の認識でも構わない……そう言う言葉がある事を知って貰えれば十分なのです」


    「特定の現象にのみ震える力と言うわけではありませんから」


    「彼女は異なる層を認識することが出来、彼女は移り変わる相に干渉することが出来、彼女は異形の相を持つ」


    「自らの求める崇高へと至る為に偽りの天国へと導いた……」


    「成就することはありませんでしたので、その真意を知ることは到底叶いませんが――」


    「……ふむ、やはりマエストロのようにはいきませんね。私自身、彼のように熱意あって紹介するならまだしも、何処まで行っても猿真似に過ぎません」


    「だからこそ、分かりやすく説明いたしましょう」


    「ベアトリーチェはキヴォトスにある別の位相から力を引き出すことが出来るようです」


    「極限まで引き出した結果が自身の存在までも捻じ曲げることに繋がり」


    「本来であれば完全に隔離されていたあの空間からの脱出を可能としたわけです」

  • 133125/04/06(日) 07:44:08

    “……要するに、ベアトリーチェは死んだと”
    「クックック……そう、最初に言ったではありませんか。その通り、大切な部分はそこにある」

     愉快そうに笑う奴に、嫌な汗が流れる。

     私と彼らは敵だ。
     ベアトリーチェは生きていると誤情報を流している方が彼らにとって動きやすくなるはずだ。
     それを、何故今こうして話すのか。
     結局、そんなシンプルな回答に辿り着いた。

     奴はまだ、笑みを深める。

    「では……何故我々が今になってベアトリーチェに訃報を伝えたのか――おや、その表情……もしや先ほど亡くなったばかりだと勘違いしているようですね」
    “……”
    「クックック……まあいいでしょう。このままでは埒も飽きませんし、何より、目的のその殆どは完遂している訳なのですから」
    “どういう……意味だ……!”

     何処までも、何処までも掌の上で踊らされる。
     だが感情的になってはいけない、それでは奴の思うつぼなのだ。
     契約を順守する奴の言葉に、意図的に隠されているものは有れど明確な嘘が混ざることは無い。
     だから聞き逃してはならない。

     そんな思いは――

  • 134125/04/06(日) 07:44:21

    「――桐藤ナギサ、と言う生徒はご存じですよね?」

     続く言葉に、打ち壊された。

  • 135125/04/06(日) 08:18:14

    今回はここまでじゃんね
    なんか黒服が小難しそうな話をしてるけど気にする必要はないじゃんね
    所詮二次設定山盛りの舞台装置じゃんね

  • 136二次元好きの匿名さん25/04/06(日) 08:21:59

    賢者の石のときのヴォルデモートみたいになってるのかな

  • 137125/04/06(日) 11:01:53

    >>134

    “どうして今彼女の名前が出てくる!?”


     気が付けば、口からそんな言葉が突いて出ていた。


     桐藤ナギサ。

     確かに彼女はベアトリーチェを捕まえるその場にも居た。

     しかし、彼女がベアトリーチェと対話している暇も無ければ、ベアトリーチェに何かされたような形跡も見られなかった。

     そもそもナギサは、アリウス地区を制圧するためにあの時は動いていた。

     ベアトリーチェをほぼ無力化し、最後の一押しと言った場面で援軍として現れた。


     ……真意が、まるで見えてこない。

     暗中模索をしている気分だが、幸か不幸か答えの明かりを持っている者が居る。

     ――暗い暗い、闇の灯りだが。


    「実は、彼女に計画を邪魔された者が居るのですよ――マエストロと言うのですが」


     マエストロ。

     先ほども黒服が口にしていた人物の名前だが、聞き覚えは無い。

     ゲマトリアの一員なのだろうが、一体いつナギサが計画を邪魔したというのか。


    「彼はベアトリーチェに力を貸す予定があったのですが……それを見事に打ち砕かれてしまいましてね」

    “そのための報復か?”

    「クックック……そう焦らずとも、時間は余裕はありますのでね。いえ、貴方の思想に乗っ取って言えばもう無いと言い換えてもよろしいのですが……クックック! このまま役割を完遂出来なければ片手落ちの謗りを受けかねませんね」


     奴は笑う。楽し気に笑う。

     以前ホシノとの契約が無効だと宣言する時に見せた【大人のカード】を使おうとした時のような、無邪気で、悪意の無い、それでいて神経を逆撫でするような笑い声。

     ナギサの何がゲマトリアの琴線に触れたのか――心の奥底で拭い切れない焦燥感が管を巻く。


     今はただ、奴の言葉を聞き入れるしか選択は無いというのに。

  • 138125/04/06(日) 11:02:07

    「まず、マエストロには桐藤ナギサに対する敵意や害意などは一切ありません。そもそもの話ですが、ベアトリーチェに力を貸すこと自体、マエストロは乗り気ではなかったのですから」
    “じゃあなんでナギサのことを……”
    「いえいえいえ、彼も現場に居たのですよ……力を貸す予定でしたからそこは納得して頂けますね? そこで見えたらしいのですよ――神秘の輝きとやらが」

     ニタリと、黒服の笑みが深くなる。

    「本来であれば傷つき、倒れ、最悪の場合ヘイローが壊れかけない傷を負っても尚、その場に立ち上がり続けた奇妙奇天烈摩訶不思議な生徒の一人……桐藤ナギサの姿を」

     黒服は指を一つ立てて、大きく話を変えた。

    「以前、私も試してみたことがあったのです。優れた神秘を持たぬ者であっても、一瞬の輝きならば有数の神秘に届くのではないのかと……結果は、私が暁のホルスに執着している時点でお判りでしょうが」
    “……”
    「そう、理論は出来ていた。しかし現実で行うには余りにも人体への配慮がなされていなかった。人間が立つ代わりに逆立ちで日々を過ごすことが不可能なように……これはそう言った話なのですよ」

     だが、仮説は証明された。と。

    「私としては何処までもイレギュラーである彼女を軸に研究を続ける気は毛頭ありませんが……マエストロはその外れ値を甚く気に入っているようで」
    “彼女に何を……何をしたんだ……”
    「……クックック。そうでしょう、先生。貴方ならば、最も気になる部分はそこでしょう。――いいでしょう! 私たちが彼女に何をしたのかを、今ここに! 嘘偽りなく答えさせていただきます」

     奴らの計画は既に完遂しているという。
     それならばこれは言わばプレゼンの場。
     付け入るスキがあるのであれば、この時しか――。

  • 139125/04/06(日) 11:02:24

    「――我々は何もしておりませんよ、先生」
    “……!?”

     思考が凍る。先程まで熱弁していた言葉のギャップで考えが掻き乱され続ける。
     ならば何をしようと言うのだ!! 何が目的なんだ!!
     恥も外聞もかなぐり捨てて叫びたくなる衝動を奥歯で噛み殺す。

     細められた黒服の瞳から炎が揺れる。

    「先ほども言った通り、実験で成果を出すことは出来ませんでした。つまり、我々の介入など意にも介さない精神の強さが根底に無ければ、マエストロが彼女に拘る理由もない訳です」
    “それを見せたのが……エデン条約の時の……”
    「ええ、その通りです」

     不敵に笑う黒服に、どうしようない焦りが募る。
     一度話を切り上げ、ナギサと連絡を取ろうかと、そんな考えに至った時。

     黒服は、こちらに手を差し向けた。

  • 140125/04/06(日) 11:02:37

    「――何故、桐藤ナギサはミサイルを耐えられたのか?」

     それはこの話の総括で。

    「何故、桐藤ナギサはETOを採決しようと決められたのか?」

     それはこの話の根底で。

    「何故、桐藤ナギサはアリウスの救済を行ったのか?」

     それはこの話の意味を語るものだった。


    「何故何故何故――誰も桐藤ナギサの真意を聞き取らなかったのか?」

  • 141二次元好きの匿名さん25/04/06(日) 11:04:58

    アロワナノー

  • 142125/04/06(日) 11:07:46

    とりあえずここまでじゃんね……

    うごごごご……黒服まどろっこしいじゃんね……さっさと先生が動く様に喋れじゃんね鬱陶しい

    会話を空転させないといけないのは知ってるけど余りにも退屈で脳がバグるじゃんね……


    >>136

    ハリポタよく覚えてないけど感覚的には近しいと思うじゃんね

    ただベアトは意識を分けたり分身したりは出来ないからやっぱそんな強くないじゃんね

    買いかぶりすぎじゃんね

  • 143125/04/06(日) 13:10:56

    >>140

     それは暗に此方を責め立てているような言葉だった。

     実情は違うのだろう、だが……。


    “……”

    「クックック……おためごかしに走らないのは、評価いたしますよ。先生」


     差し出した手を指揮者のように振るい、言葉を続ける。


    「確かに、桐藤ナギサに心配事を伝えたのでしょう。確認を、何度も取ったのでしょう。ですが、その全て、悉くが桐藤ナギサの心には届かなかった」


     広げられた腕は――手は、握られ、潰されるように絞められた。


    「足りなかったのです。彼女があの時に決めた覚悟とは段違いで、彼女ならば大丈夫だろうという貴方がたの驕りこそが――必定ともいえる悲劇へと導かれた」


     掌を合わせ、磨り潰すように握る。


    「だから桐藤ナギサは燃え尽きる事を選んだ」


    「地獄の罪人を全て楽園へ還した後に、最も地獄に近い者を裁いて――終幕を迎えることを」


    「ですから分かりやすく、私らしくお伝えしましょう」




    「桐藤ナギサの楽園は死だった、ということです」

  • 144125/04/06(日) 13:11:10

     私はその場から駆け出した。

     まだ間に合うと、信じて。



     ……信じて。

  • 145125/04/06(日) 13:11:24

     夕焼けから遠ざかる様に、乙女の花園へと飛び込む彼を見て思う。
     確かに見ていて、可能な限りの抵抗を見せた彼であろうとも届かない神秘――。

    「ククク……再び理論体系から構築し直した方が賢明かもしれませんね」

     是非とも、欲しい。
     上張りされたテクスチャを塗り替える手法の確立は、確実に目指す崇高への足掛かりとなるだろう。
     ならば先ずは神秘の観測を、そんな折にマエストロは現れた。

    「契約通り、先生の足止めは遂行いたしました。しかしベアトリーチェの血に汚れ、先生と対立して迄完遂する――」
    「――一つの崇高を、見た」

     かくん、と。
     頭部の木人形を揺らし、こちらの話を遮って淡々と語る。

    「静かに燃え盛る意思は何物にも揺らがず、完全性が垣間見えた」

    「癒しと救いのみを求め、全て振り撒く姿から物証に拘らない意図が見えた」

    「本来ばら撒かれるはずだった罪科の炎だけをその身に纏って、燃え殻すら残らずに塵も消えた」


    「……それはそれは、大きな収穫があったようで?」
    「――だが、悲しむべきかな」

     とても愛おしいものを見たような、焦がれた物を見たような、マエストロは柄にもなく胸を抱き【複製】を発動した。
     ……しかし、何も起こらなかった。

  • 146125/04/06(日) 13:11:35

    「……私は「原本」や「複製」といった区分は無意味だと考えているが、ここでは認めてはくれないようだ」
    「複写であろうとも、顕現することすら不可能だと?」
    「ああ――胸躍ることにな」

     かくん、と頭を翻らせ空を見上げる。
     紅と青の混じった群青色の空模様は、この先のキヴォトスを暗示しているように思えた。

    「アレは私には目指せぬ崇高の一つだ。けれども理解と、納得が得られた。頂きがある事を知っているだけでは無意味であることを、届きうる世界へのアプローチの方法も」
    「満足して頂けたならば、此方としても仕事をしたかいがある……と言うものです。では、私も一目見に行きましょうか」
    「早くした方がいい」

     その場を移動しようとした私を引き留め、マエストロは忠告、否、予言染みたことを言った。

    「人々は炎に助けられ、また炎は自身の熱で溶け切ってしまった。では、炎に目が眩んだ者たちが次に求める炎はなんだ? 炎と縁のある人々だ。ここからが見所に成りえる者も居るだろう……情報は多い方がいいだろう?」

     彼は芸術家で、人波の動きを読むことを得意とはしない。
     だが、その彼がそこまで言うのは明らかな異常事態――否。

    「……クックック。それほどまでに眩かったのですか、あの神秘は」
    「肉体と言う枷が惜しいと……いや、私が考える時点で予測を上回ることは無いのか。確かに眩かった」

     普通ならば盲目になってしまう程に。

     マエストロはそう言って姿を暗ました。
     恐らく、自身の工房へ行って溢れ出るインスピレーション形に変えているのだろう。

     ならば私も急がなくてはならない。
     クライマックスに間に合うように。

  • 147125/04/06(日) 13:15:22

    今回はここまでじゃんねえ
    あーマエストロの口調全然わかんねえじゃんねえ!
    でもなんとかラストシュートに繋げることが出来たじゃんね……
    というか湖ダイブするって言ってから倍の文量かかるって言っておいて四倍くらいの文量かかったじゃんね……見積もりガバガバじゃんね……

    と言うわけで折角掲示板で投稿してるから掲示板らしいことも死体じゃんね
    ナギちゃんがドボンした後の視点を誰から進めていきたいか、トリニティに関する生徒の名前をここから下五名まで抽選したいじゃんね
    その後ダイスで決めた子の視点で続きが始まるじゃんね

  • 148二次元好きの匿名さん25/04/06(日) 13:20:35

    未来を見ることが出きるのに何も出来なかったセイアを見たいからセイアって言いたかったけど…今後重要な役回りをさせるっぽいこと言ってたので……

    一番付き合いの長いミカだな

  • 149二次元好きの匿名さん25/04/06(日) 13:38:36

    ナナナナー ナナナナー
    ナギえもんどざえもん

  • 150二次元好きの匿名さん25/04/06(日) 13:44:24

    同じくミカで。

  • 151二次元好きの匿名さん25/04/06(日) 13:58:30

    ミカは他の人が挙げてるのでミネ団長じゃんね

  • 152二次元好きの匿名さん25/04/06(日) 13:59:12

    ヒフミで

  • 153125/04/06(日) 14:04:35

    みんなさんきゅーじゃんね


    >>148

    別にセイアちゃんの役割があろうとも選択して貰って構わないじゃんね

    けど流石に死人視点は無理じゃんね……


    なので上からセイアミカミカミネヒフミで振るじゃんね☆

    これは素振りじゃんね

    dice1d5=1 (1)

  • 154125/04/06(日) 14:05:48

    みんなの幸運を……祈るね……


    1.セイア

    2.ミカ

    3.ミカ

    4.ミネ

    5.ヒフミ

    dice1d5=1 (1)

  • 155二次元好きの匿名さん25/04/06(日) 14:07:32

    ^^

  • 156125/04/06(日) 14:08:48

    間違ってないよね?ダイスの振り方間違えてないよね??dice1d5=3 (3)

    まあいっか……それじゃあセイアちゃんの視点で死亡後は展開していくじゃんね~


    いやぶっちゃけ助かったじゃんね

    私も最初ミカの視点で進めようと思ってたんだけど目の前でナギちゃんに死なれたミカが真面に動くわけないからどうしたもんかと悩んでたんじゃね


    それじゃあ夜の更新に間に合わせるため頑張ってくるじゃんね

  • 157二次元好きの匿名さん25/04/06(日) 14:22:16

    せめて…せめてネットは広大だわルートになれないのか…

  • 158二次元好きの匿名さん25/04/06(日) 14:25:05

    セイアぁ…ひとまず苦しむといいセイアぁ…

  • 159二次元好きの匿名さん25/04/06(日) 14:26:47

    最終編が起こらずナギサが助からないか…次の先生は上手くやってくれるでしょう

  • 160125/04/06(日) 18:38:25

    >>118

     歩く、歩く、歩く。


     自然に作られた獣道は、僅か十数メートル進んだところで道とは呼べぬほどになっていた。

     けれど、この先にあるという。


     歩く、歩く、歩く。


     日頃歩き慣れた道とは違い、全く舗装されていないというのにすいすいと先に進むことが出来る。

     やはりそうなのだろう。今日の私は、何処までも許される日なのだろうと確信を得る。


     歩く、歩く、歩く――。


     不意に、鬱蒼と茂る前方の緑から光が差し込む。

     ここ、なのだろうか。

     木々や草木を掻き分けて、光に足を踏み入れる。


    「――……綺麗」


     思わず、声に出た。


     一面に広がる湖面。天辺迄上った日に照らされ、小さな虹を作っている滝壺。

     水の流れる音だけが響き渡る空間は、何処か幻想的で冷めていた心をほんのりと温めてくれた。


    「……そういえば」


     そのおかげで、気が付いた。


     振り返ると、道らしき道は存在せず、緑の壁がナギサと湖を孤立させていた。

     ……ほんの少し申し訳ない気持ちになりながらも、しかし同時にこれでいいのだと思って湖に目を向けた。

  • 161125/04/06(日) 18:38:39

    「……」

     少しだけ土に汚れ、草の匂いが染みついてしまったハイヒールを脱ぐ。
     タイツ越しに感じる土の柔らかさに、何だかいけないことをしているような気がして、僅かに気分が高揚する。

     ――今から何をしようと、分からない訳では無いのに。

    「――……」

     ほんの少し、ほんの少しだけ顔を出した幼い自分の息の根を止めるように囁かれる。
     全く持ってその通りだ。私は、遊びに来た訳でも無いのに……。

     揃えたハイヒールを水に濡れていない大石の上に置き、隠し持っていたロイヤルブレンドのマガジンを確認する。
     軽い音が鳴って外れたマガジンには弾丸は込められておらず、古めかしい鍵が一本だけ、中に入っていた。

    「ありがとう、ございました……」

     銃を手放し、責務を捨てて。
     ここに漸く、裁かれるのみである桐藤ナギサその人が誕生した。

  • 162125/04/06(日) 18:38:55

     ――冷たい。

     こんなにも日に当てられているというのに、湖は恐ろしい程の冷たさを保っていた。
     湖の底に転がる礫が、自らの罪を自覚させるように鈍く痛む。

     ――あっ。

     一歩、二歩と先に進んで行くと、思わず転んでしまった。
     まだ湖の底に手をつけることが出来たが、マズイ。
     腰回りを見ると、案の定翼は僅かに痙攣していた。

     ――急ぎ、ませんと。

     立ち上がり、歩を進める。
     この程度の罰で、私の罪が……。

     ――……。

     太腿まで、湖に浸かる。
     いえ、いえ。違います。そんな立派な、強い人のような気持ちでこの場には居ないのです。

     ――っうぁ。

     腰元まで浸かり、一気に呼吸が辛くなる。
     倒れそうになる体を必死に堪えて、一歩一歩、確実に湖の中央へと足を運ぶ。

  • 163125/04/06(日) 18:39:07

     私が無能なせいで、フィリウスの同輩たちへ迷惑をかける。
     私が愚かなせいで、ヒフミさん、ハナコさん、コハルさん、アズサさんに無用な恐怖を与える。
     私が弱いせいで、ティーパーティに混乱をもたらす。


     私が、疑心暗鬼に、溺れなければ。


     ――あっ。

     ずるり、と。道を踏み外したように、私の体が湖に隠れていく。
     水飛沫をあげながら沈み切った体は、もう動かせなかった。

     ――綺麗……。

     薄くなっていく視界の中、何も遮るものの無い暗い水中を一筋の光が照らしていた。
     思わず開いた口に、水が流れ込む。
     ただ押し込まれる水流に、自然と飲み下していく他なかった。

     最後に残った思考は、水と共に押し流されて行き。

     口を突いて出そうになった願いは、意識と共にこの世から書き消えてしまった。

  • 164125/04/06(日) 18:42:02

    お疲れさまでした。
    今回はここまでとなります。
    しかし、物語は終わりません。
    ここからが始まりなんです。
    誰も悪くない、誰かが悪者に成らなくて済む物語……。


    そんな物語を私が書くことになってますどうなってるんですかセクシーフォックスさん

  • 165二次元好きの匿名さん25/04/06(日) 18:55:42

    ここからどうにかして全員救ってね!

  • 166二次元好きの匿名さん25/04/06(日) 19:17:00

    ナギサ…眠る様に息を引き取ったんだな…
    最近、嘘喰いを読んでいてエアポーカー編のゲームを始める前に溺死を懇切丁寧教えているシーンが頭によぎったから苦しみの中でお亡くなりになったんじゃないかって思ってた

  • 167二次元好きの匿名さん25/04/06(日) 19:28:50

    あぁナギちゃん…美しいね…?

  • 168125/04/06(日) 19:36:33

    >>166

    いや実の所どうナギちゃんを逝かせるか考えたところエグイ描写しか脳内から出てこなくて

    流石にコイさんにお目目パクパク(最大限優しい表現)はやべえじゃんね……とか

    ウジとかムシとかは中学の頃散々擦ったじゃんね……とか成ってたから精一杯綺麗な死に方になるよう模索してたじゃんね……

    ちゃんとそう受け取ってもらえて嬉しいじゃんね我慢した甲斐があったじゃんね


    まあ苦しくないとは言ってないけど

  • 169二次元好きの匿名さん25/04/06(日) 20:00:07

    便利な言葉それは神秘!溺死するという思いをトリガーにヘイローが自壊したとすれば穏やかな死に顔と崩れない骸が出来上がるのだ(適当)

  • 170二次元好きの匿名さん25/04/06(日) 20:09:34

    >>169

    ターミネーター2のラストのシュワちゃん的な

  • 171125/04/06(日) 20:18:44

    >>169

    安心するじゃんね

    そこら辺を詰めた結果死体フックショットが登場することになったけどちゃんと安らかな死に顔じゃんね


    たぶん

  • 172二次元好きの匿名さん25/04/06(日) 20:20:03

    あれやろ
    水温が冷たかったからなんとかなった某推しの子システムやろ

  • 173二次元好きの匿名さん25/04/06(日) 21:17:50

    スレチだけど安価スレでブルアカSS書いてた人?

  • 174125/04/06(日) 21:19:45

    >>173

    私のことー? 残念だけど安価スレやったことないじゃんね

    これ二個目だから掲示板初心者じゃんね

  • 175二次元好きの匿名さん25/04/06(日) 21:36:02

    ここのミカはホシノへのカウンターに…いや最終編がそもそも起こってないからプラナいないのか

    どーすんのこれ…

  • 176二次元好きの匿名さん25/04/07(月) 01:23:17

    あぁ、ついにナギちゃんが……次の更新が楽しみすぎる。

  • 177二次元好きの匿名さん25/04/07(月) 04:04:51

    しかし残された面子、なんでナギちゃんが自裁したのか訳分からんだろうな
    最後に見た時の挙動が変ではあったが、自殺を思わせるほどのものでもなかった
    さらには遺書もない

  • 178二次元好きの匿名さん25/04/07(月) 04:54:04

    それナギサのせいじゃないでしょって事で病んでるから察知は無理
    精神誘導が入ってる可能性があるくらい飛躍してる、けど自裁する人の思考らしくはある

  • 179125/04/07(月) 07:26:28

    あ、まだスレ生き残ってるじゃんね
    昨日はナギちゃんが死んじゃったせいで、それがすっごい悲しくて最後まで更新できなくてごめんじゃんね
    でも待ってる人も居るし頑張って第二部戦闘潮流に繋げられるように頑張るじゃんね
    夜まで捕手ってくれるとありがたいじゃんね

  • 180二次元好きの匿名さん25/04/07(月) 10:07:25

    >>179

    キャラがひとりでに動いたってやつだったのか

  • 181二次元好きの匿名さん25/04/07(月) 12:21:43

    >第二部戦闘潮流に繋げられるように頑張るじゃんね

    第二部の主人公はナギちゃんの孫なのか…(マテ

  • 182125/04/07(月) 18:53:03

    >>180

    違うんだ。

    確かに私の意思でナギサを死に追いやった。

    切なくももどかしい感情を掻き立てられると思ったんだ。


    でも違ったんだ。


    どうしてナギサを殺したのか、そんな疑問符に溢れてるんだ。悲しいんだ。寂しいんだ。

    ナギサの死に目を見たかったのは事実だけど、殺したかったわけじゃなかったんだ。

    誰も見せてくれなかった。だからやったんだ。

    だけど、思ったよりも苦しいな。


    ちょっと弱音を吐いちゃったじゃんね☆

    明日は休みなりましたから……セイアさんにバトンタッチしてやります

  • 183二次元好きの匿名さん25/04/07(月) 18:57:27

    言い方はあれだが…じゃんね☆って言い過ぎてミカに精神…
    ナンデモナイデス

  • 184二次元好きの匿名さん25/04/07(月) 19:04:49

    >>183

    ミカはミカでもエアプミカだよ…

  • 185二次元好きの匿名さん25/04/07(月) 22:23:20

  • 186125/04/07(月) 23:30:37

    >>146

    「――ねえ、二人とも遅くな~い?」


     日が沈み始め、辺りが暗くなっていく頃、ミカはテーブルの上のアロマキャンドルを突きながらそうぼやいた。

     一面に広がる花園は既に闇にのまれ始めているが、テーブル周辺はキャンドルの他にも少し安っぽい電飾が飾られており、ミカの不満気な表情は二人にも丸見えだっ。


     ――余談だが、ここの飾り付けはミカ一人で行っており、ナギサに見てもらうために少ない自腹を切ってやりくりしていた。


    「まあ、お二人で積もる話もあるのでしょう」

    「……ですが、やはり遅すぎるような」


     ミネは口ではそういうものの、僅かばかりの疑念が拭えず、今にも飛び出しそうになっていた。

     サクラコも少しばかりの不安感を覚えながらも、しかしその場で待つ判断を下したのだ。


     それは恐らく真っ当で、だからこそ誤った判断だった。




     皆のスマホが一斉に鳴り、ミカのスマホに着信が来る。

     ――これが天使のラッパだったと、気づく者はまだ誰も居ない。

  • 187125/04/07(月) 23:31:18

    “ミカ! ナギサは何処に!?”

     聞こえてきた怒声は、誰がどう聞いても切羽詰まっていた。
     だがその焦りさえもミカにすれば苛立ちの種だった。

    「ま~ったく、二人して一体何処ほっつき歩いてるの? 私たち風邪ひいちゃいそうなんだけど~?」
    “……ごめん。それよりもそこにナギサは居ないんだよね?”
    「ちょっと、それよりって何? それよりって」
    「待ってください。先生はナギサさんと一緒では無いのですか?」

     唇を尖らせ続けるミカを遮るようにサクラコが問いかける。
     チラリとサクラコを見るミカだったが、それ以上口を開くことは無かった。
     実際、ミカも気になっていたのだ。

    “……私はナギサがどこに行ったのかすら聞いていない。みんなは?”

     やけに重苦しく、後悔に滲んだ声だった。妙な胸騒ぎがミカの胸中に渦巻く。

     こんな場に相応しくも無い、真剣味を帯びた声色だ。
     まるで初めてアリウス地区に乗り込んだ時のような悲痛さが籠った――。

     ――待って、どうしてそんな声でナギちゃんを呼んでいるの?

     ミカの脳裏に過った嫌な予感は、先生の言葉によって現実として表されてしまった。

    “落ち着いて聞いて欲しい。今、ナギサの身に危険が迫っているんだ”
    「――ッ」
    「ミカ様! ……まずは落ち着いて、話を最後まで聞いてからにしてください。今救護騎士団員を集めて――」
    「今この場に、ですか? ミネ団長も落ち着いてください。クーデターの策謀だと勘繰られる方が危険です」
    “人海戦術以外に、方法はなさそうだね……大事になって欲しくは無いんだけど”

  • 188125/04/07(月) 23:31:32

    『――その必要は無いよ。先生』

     三者三葉の慌てぶりを見せる皆を止めるように、ミネの端末からセイアからの連絡が届いた。
     ……その顔は酷く窶れ、真面に起きていていい状態では無いのは明らかではあるのだが。

    「セイア様! その様子……それより、今はどちらへ?」
    『今、其方に向かっている……大事にはしたくないんだ。かなり、難しいだろうけども』

     苦虫を噛み潰したように呟いたセイアは何を見たのか。
     すぐにでもベットに叩き込み、安静にして欲しいという願いを押し殺して、ミネがセイアにこの後どうすればいいのか聞こうとした。

    「セイア様、ならば私たちは――」
    「セイアちゃん」

     その言葉は、隣から発せられる圧によって掻き消されてしまったが。
     必死に心を押し殺しながらその場に立つミカは握り拳を作りながら、セイアを見た。

    「ナギちゃんは、どこ?」
    『……今君が立って居る場所から右に四十四度傾いた先に居るよ。道を切り開いてくれないか?』
    「分かった」
    「――ッミカ様!! セイア様!?」

     血に滲んだ拳を振り上げ、咲き誇るパンジー畑を踏み荒らしながら木々を薙ぎ倒していく。
     恐慌とも言えるセイアの判断とミカの行動にミネは悲鳴のように呼び止めた。

     そんなミネに対し、セイアは沈痛な面持ちで首を振ることしかできなかった。

  • 189125/04/07(月) 23:31:43

    『これが、これが最善なんだ』

    『フィリウスに頼ろうが、パテルに頼もうが、サンクトゥスを動かそうが』

    『シスターフッドを動員しようが、救護騎士団に捜索して貰おうが』

    『――例えトリニティ全組織を動員して動かそうが』

    『ミカが力を振るって切り開いた先の方がまだマシだった』

    『……いや、所詮先延ばしに過ぎないのかも知れないけれど』

    『頼む、ミネ、サクラコ……先生』

    『ミカについて行ってくれないか?』

    『この先を一人で見るのは、余りにも過酷だ』

    『どうやら私は、少しだけ遅れてしまいそうだから』

  • 190125/04/07(月) 23:31:57

     殴る、蹴る、ぶつかる。
     頭突く、蹴飛ばす、振りかぶる。
     殴る、殴る、殴る――!

     轟音を響かせながら、木々がへし折れて行く。
     その先に何が待ち受けるのか考えないようにして、でもいち早くたどり着けるように、ただ壊す。

     きっと正しいはずだ、私の判断では無いのだから。
     きっと間違えていないはずだ、私の判断では無いのだから。
     きっと平穏が待っているはずだ、私の判断では無いのだから。

     盲目にも似た狂信を拳に込め、最後の木を殴り飛ばした。


     ――そこには、一面の湖が広がっていた。

  • 191二次元好きの匿名さん25/04/07(月) 23:32:02

    まだだ……溺れたタイミングと先生の到着が同じなら……ワンチャンある…あるハズ

  • 192125/04/07(月) 23:32:09

    「はっ……はあっ……なに、ここ……」

     肩で息をしながら周辺へ目を向ける。
     まるで外敵からの侵入を許さないとばかりに広がる深い緑。
     湖面を照らす夕暮れは湖をほんのり紫色に映し、まるで毒のような錯覚をさせる。

     そんな湖の中心に、見覚えのある白い羽が見えた。

    「――ナギちゃん」
    “待つんだミカ!”

     誰にとっての幸か不幸か、先生の言葉が耳に入るよりも先にミカは湖へと飛び込んだ。
     全身に生まれた擦り傷が沁みるがミカの足を止める理由にはならない。
     自身の胸元迄進んだ頃、急に足元が抜ける。
     僅かに水を飲んでしまったが、それでも、この距離ならば。

    「――ごぼっ!?」

     あと数センチ、そう言った所で突如ミカの体に変化が現れた。
     先ほどまで動いていた体が痺れ、上手く動かない。
     それどころか強烈な嘔吐感に襲われ、湖を汚していってしまう。

     一気に体力が、気力が削られ意識を手放しそうになる。
     このまま沈んで行ってしまうのだろうか――そう思った矢先に、何か動く物を掴んだ。

     酩酊する意識の中、ミカは必至にその何かを掴み続け……ほんのわずかに揺られながら、陸へと打ち上げられた。

    「……うおえぇ……はぁ、はあっ……何が、起きて……」
    「相変わらず、頑丈なんだな君は。……寝ていればよかったものを」

  • 193125/04/07(月) 23:32:24

     セイアが、そこには居た。
     右手に握られた拳銃は何か紐のような物が伸びており、その先は――。

    「ナギサ様! ナギサ様ッ! しっかりしてください!!」
    「……主よ」

    「――えっ?」

     ミネが、必死に呼びかけながら、胸を押し続けている。
     サクラコが、瞼に雫を溜めながら、誰かに祈っている。
     先生が、ただ何も言わず、空だけを眺めている。

     ナギちゃんが、眠っていた。

  • 194125/04/07(月) 23:32:37

     酷く、酷く苦しそうな顔をしている。
     とても、とても悪い夢を見ているのだろう。
     今も尚胸を押し続けるミネを押しのけ、ナギサの肩を掴む。

    「ナギちゃん」
    「――」

    「ねえ、ナギちゃん」
    「――」

    「起きてよ、ねえ」
    「――」

     がくがくと、揺すられる体。
     それでもなお、ナギサが目覚めることは無い。

    「私さ、頑張ったの。ナギちゃんがあんなに頑張ってくれたからさ」
    「――」

    「もう大丈夫だって、ナギちゃんに言いたかったから。ほら、飾りつけも、したんだよ」
    「――」

    「……なぎちゃん」
    「――」

     もう、ナギサの体が、揺らされることは無かった。
     溢れ出る涙が、彼女の頬を伝う。
     零れ落ちた涙が、彼女の頬を濡らす。

     残った水滴が涙のように、ナギサの目から流れ落ちた。

  • 195125/04/07(月) 23:32:52

    「――ッ!!!」

     堪え切れなかった。
     堪えるつもりは、もう無かった。

     恥も外聞も全てかなぐり捨て、ミカは彼女の胸で泣いた。

     森の中に響き渡る幼子のような鳴き声は、幸いにも四人しか聞くことは無かった。

     最も届いて欲しい五人目に、彼女の声は届くことは無かった。

  • 196125/04/07(月) 23:36:06

    そして ナギサ入水のスレはここにひとまず幕を下ろします
    しかし! それはまた新たな悲劇の時代の幕開けでもあったのです……


    第一部完――



    と言うわけでここまでじゃんねえ
    続きはまた別スレを立てるじゃんね
    セクシーフォックスが目印じゃんね
    ここまでさんきゅー、じゃんね☆

  • 197二次元好きの匿名さん25/04/07(月) 23:38:18

    ゲマトリアのふわふわロジック的にこのキヴォトスはもう終わりや

  • 198二次元好きの匿名さん25/04/07(月) 23:38:54

    まだ悲劇が足りないというのですか…
    ドウシテ・・・ドウシテ・・・

  • 199二次元好きの匿名さん25/04/07(月) 23:40:27

    セクシーフォックスを目印に我々は集う
    次スレ待ってますね

  • 200二次元好きの匿名さん25/04/07(月) 23:41:07

    乙でした
    これからがほんとうの地獄だ…

オススメ

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