【閲覧注意】イオリ、PTSD持ち概念

ん、不快だったら消して欲しい

　まさか、こんなことになるなんて思いもしなかったんだ。
　平和な日常が、いとも容易く崩れ落ちるだなんて知っていた筈なのに――。

“イオリ！”
「覚悟しろよ、この規則違反者どもめ！」

　シャーレ当番は唐突に争いごとに巻き込まれることがある。と言うか多い。
　今日はＤＵ市内のパトロールと言う事で、案の定不良に絡まれてしまった。

「ぐへっ！」「がはっ！」「たわぱっ！！」
「急に先生に攻撃してきやがって！　一人たりとも……逃すかッ！」
“ちょっ……イオリはやっ……！　待って……！！”

　先生の身に危険が及ぶ前に、逃げ惑う馬鹿共を黙らせていく。
　その殆どを無力化し、最後の一人も廃ビルの中まで追い詰めることが出来た。

「もう逃げられないからな。大人しく投降するなら痛い目に遭わなくて済むよ」
「……黙れ！　諸共消し飛べええええ！！」

　自棄になったのか、手榴弾を投げようとしたバカの頭を撃ち抜く。
　バカは気絶し、手榴弾もそのバカの足元へと転がる。
　精々自爆でもしていろ、とピンの抜かれた手榴弾を見送る。

　――それがどうしようもない間違いだと、気づくのは全てが手遅れになった時だった。

50二次元好きの匿名さん25/04/01(火) 00:08:32

“イオリ！　早くそこから――”
「えっ？」

　後ろから怒声と共に廃ビルに入ってくる先生に気づくと同時に、手榴弾が起爆する。
　直後、四方八方からの衝撃に見舞われた。

「……うぅ、ぐ……！」

　いったい、なにが。
　酷く痛む全身が、冷静な思考を奪い去り考える能力を失わせる。

「そ、そうだ……せんせい……！」

　だが、単純化された頭は直前に声をかけた存在を想起させた。
　粉塵が晴れ、瓦礫の隙間から漏れ出た光はそれを映し出していた。

「……えっ？」

　タブレットを持った、大人の腕。
　積み重ねられた瓦礫の下から、それは伸びていた。

「……せ、せんぐぅ！？」

　引き寄せられるように伸ばした私の腕は、途中で届かなくなってしまう。
　なぜ、と辺りを見渡してすぐにわかった。

　私の両足も、瓦礫の下敷きになっていた。

51二次元好きの匿名さん25/04/01(火) 00:08:48

「――ぐううううぅ……！」

　知覚してしまったせいか、酷く痛みを感じる。
　だが、今は痛みに呻いている暇はない！

「だ、誰か！　誰か助けてくれないか！　ここにシャーレの、先生が埋まってるんだ！」

　動けないなりにも出来ることはあると信じて、声を張り上げる。

「誰でもいい！　早く、早く先生を助けてくれ！！」

　瓦礫の間を響き渡る救援は。

「誰か！！！」

　誰の耳にも、入ることは無かった。

52二次元好きの匿名さん25/04/01(火) 00:09:04

　その後、私と先生は助かった。
　倒壊した廃ビルの中に居たのを、アコちゃんたちが助けてくれた。

　どうやら私が倒した不良はこのビルの上下階層にサーモバリック爆薬を敷き詰めていたらしく、元々追い込んで仕留める算段だったらしい。

　それを一掃してしまったから、瓦礫の中で一日を過ごすことになったのだ。

　私が不良を追い詰め過ぎなければ
　先生は爆発に巻き込まれなかった

　私が不良を掃討していなければ
　先生はすぐに助けられていた

　私が考え無しに突っ込んでいなければ
　先生と一緒に、今も笑えていた

　先生は、あの事件のせいで、両足が動かなくなった。

　……私が、先生の両足を奪ったんだ