【閲覧注意】いいですか、ことねさん、広さん

  • 1二次元好きの匿名さん25/03/31(月) 04:07:01

    そう言ってプロデューサーは机に座った二人の前に、明らかに男子高校生が二人がかりで食べるであろう量のよだれ鶏にモッツァレラチーズを乗せたものを差し出す
    「これからプロデュースにあたって、BMIが明らかに足りません、ですからまずは死ぬほど食べてもらいます」
    対する二人は絶句していた
    そして絶句する二人の眼の前でプロデューサーは普段の1.5倍はありそうな大きさの茶碗に米をよそう
    「そんな肋骨でステージの上で歌って踊れるほど、アイドルは簡単な仕事ではない」
    そう言いながらプロデューサーはもりもりとシーザーサラダにチーズを掛けて二人に差し出す
    「篠澤さんもことねさんも、これを食べ終えた後は三十分休憩したら水泳からです」
    「ちょ、ちょちょ……あの! プロデューサー! ……量、多くないですか?」
    「確かに……流石にいきなり、これは無理」
    「時間はいくらかかっても構いません、まずは入れてから喋ってください」
    ことねの顔から血の気が引いたが、構わずプロデューサーは食後のスムージーを作り始めている
    「ふ、ふふ……ままならない……ね……」
    広の顔が恍惚としていることに気がついたことねは、無言で頭を抱えた、まともなのはここにはことねしか居ないのだ

  • 2二次元好きの匿名さん25/03/31(月) 04:13:58

    頭を抱えはするが、兎にも角にも飯を食べるしか無い
    作ってもらったものならば尚更である、そんなことを考えつつひとまずよだれ鶏に手を伸ばして口に入れる
    「……あ、美味しい」
    ピリ辛ではあるものの、チーズのマイルドさもあってさして気になるほどでもない
    問題があるとしたら、明らかに量だけである
    とはいえ、ピリ辛というのはありがたいかもしれない
    ひとまず御飯を一口咀嚼し、隣を見ると広も取り敢えず飯に手をつけ始めたらしい
    一つ摘んで、そして咀嚼して飲み込む
    少し飽きたら辛味のタレに付け直して摘み、口の中に入れる
    それを何度か繰り返すうちに、不意に隣の人の手が止まった
    額に汗をかいている彼女は、明らかにもうお腹いっぱいという顔だ
    「ちょっ、だ、大丈夫?」
    少しの後、口の中の物体を飲み込んだ広が無言で固まる
    「あ、うん、水飲みな……」
    先行きが思いやられるプロデュース初日の出来事である

  • 3二次元好きの匿名さん25/03/31(月) 04:21:36

    それから1時間無言で黙々と、7割をことねが広が3割を食べて何とか昼食を済ませる
    栄養価は明らかに良いはずなのだが、普段菓子パンで済ますことが多い二人にはあまりに厳しい分量だった
    後半は最後の一口を飲み込むのにたっぷりと3分は使っていたはずだ
    それから30分私達はぐったりとしながら天を仰ぐ
    「これで本当にアイドルになれるのかなぁ」
    私がそうして言葉を呟くと、隣の瀕死の体だった広が呟く
    「……ぁ……」
    「あ、ごめん、やっぱりまだ喋らなくていいよ……」
    いや正しくは呟こうとして、彼女は吐き気に見舞われたらしい
    そんな不安を感じている中、プロデューサーが私達の水着を持って部屋に入ってきた
    「ふむ……思っていたより深刻ですね」
    そう言いながら、彼は私に水着を手渡すと口を開いた
    「恐らく胃の機能が耐えきれるように出来ていませんね、もう30分休憩したら今日は広さんは水中歩行から、ことねさんは基本的な水泳の練習から始めてください」

  • 4二次元好きの匿名さん25/03/31(月) 04:30:47

    「ちょ、ちょっとまってください、走るとかダンスとかじゃないんですか?」
    私がそう尋ねると、プロデューサーは頭を振った
    「二人共御飯を抜きすぎです、そして広さんは歩行すら覚束ない、つまり膝に負担を掛けると足が死にます」
    そう言ってプロデューサーは広に目線を向けるが、広は瀕死のまま休憩室のベッドに寝そべっている
    「先ずアイドルというのは幾つかに種類が分かれますが、歌特化系、外見の良さ特化、ダンス等の演技力系などあります」
    「ですがどれもこれも、先ずは歌う、走る、そして踊るつまり体力です」
    「それは……そうですが……」
    「安心してください、ことねさんの金銭問題はこっちで何とかしますから先ずは体力をつける、そしてことねさんは勉学の方は広さんから教わってください」
    そう言うとプロデューサーは慌ただしく、部屋を出ていった
    そういう問題なんだろうか……そう思いつつ、プロデューサーに口説かれた時を思い出しつつまた休憩室のベッドに仰向けになる

  • 5二次元好きの匿名さん25/03/31(月) 04:37:47

    結果からいえば方針としては何も間違いではなかった
    だが、問題があったとすれば広がアホみたいにチャレンジ精神溢れていたことだけが認識の誤りだった
    それから30分後にフラフラの彼女はプールに入った後、少しして気絶した
    賢いはずのこいつは、無理だからやるという謎のチャレンジ精神を持っているらしく、兎に角無茶をしたがった
    吐き気と低い水の温度に気絶した広を抱えてプールから担ぎ出したPは吐いていないことだけは褒めていたが
    その後復帰した彼女は腰ほどの高さの下半身プールで暫く時間を過ごすことになる
    私の方といえば懐かしい気持ちを思い出しつつ、30分もしないうちに体力の限界を迎えていた
    「はぁ……はぁ……」
    思ったよりも、ずっと泳ぐというのは疲れるものらしい
    背泳ぎ、クロール、バタフライ……結局25mプールを何度か往復するうちにあっという間に体力が尽きた
    「限界が着たら歩いてください」
    そう言ってプロデューサーはこちらをじっと見ている、私は一体何をしているんだろうか

  • 6二次元好きの匿名さん25/03/31(月) 04:46:26

    そして2時間が経過した後、休憩を入れようとした所プロデューサーに捕まってぐったりした私達はまた食事部屋に連れ込まれる
    疲れ切った私達はさして抵抗も出来ず、なにより全身が筋肉痛で歩くたびに滅茶苦茶に全身が痛い
    「さあ、夕飯です」
    そう言って出されたのたは、普通の和食……にしては量が多い
    また大盛りの御飯に、多めのお味噌汁、鮭の切り身にサラダボウルに乗った生魚の切り身に、お漬物
    更には卵焼き、佃煮、木綿豆腐の冷奴、納豆
    「お、多くないですか?」
    「何言ってるんですか、今日は二食だけですが明日からは四食食べてもらいます」
    「……ま……ま……なら……ない……ね……」
    瀕死の声が隣で囁かれた
    その通りである、ままならない
    だが声の主は箸を掴むと、ゆっくりと御飯を食べ始めている
    考えてたアイドルと何か違う! そんなことを思いつつことねはまた渋々と飯を食べ続けていく

  • 7二次元好きの匿名さん25/03/31(月) 04:55:57

    内臓が強いことは肉体的な強さに直結するんだよね
    学生時代に牛丼5杯とか合宿のときに食わされたの思い出すなぁ
    あれはトラウマもん

  • 8二次元好きの匿名さん25/03/31(月) 04:56:11

    それから一週間が過ぎた、全身の筋肉痛にも慣れてきた頃、まだ誰も起きくる人が居ない食堂で不意に広が呟いた
    「……今日は行けるかも」
    そう言って立っている彼女は数日前の立っているだけでよれている姿はなく、少し肉付きが良くなったのかきっちりと地面を踏みしめている
    「こっちも一時間弱泳げるようになったけど、そんなに差があんのかなぁ」
    そう言っている間にも、今日もプロデューサーが食堂に突撃してくると私達を飯に運び始める
    「二人共お疲れ様です、今日は朝は御飯、味噌汁、納豆、サラダボウル、鶏ささみです」
    「「うわ出た」」
    相変わらずおかしい量だが、最近では何だかこれに慣れてきている二人ではある
    取り敢えずモクモクと御飯を食べている最中に、プロデューサーが呟く
    「今日からは広さんはことねさんと同様に少しずつ泳ぐ練習をしてください」
    「ふふふ……急に難易度上げたね」
    「ええ、少なくとも一曲踊りきれる体力をつけるまでは朝ご飯、アイドルトレーニング、前昼食、勉強と軽くランニング、後昼食、水泳、夕飯そして就寝です」
    「と、ところで……アルバイトは……」
    「アホ言ってないでさっさとご飯食べてトレーニング行ってください」
    「は、はぁい……」

  • 9二次元好きの匿名さん25/03/31(月) 05:03:33

    御飯は相変わらず美味しい、だが以前ほど量に対して不満を抱かなくはなってきた
    だが兎に角不安なのは通帳残高である
    以前アルバイトに行こうとした瞬間プロデューサーに手を掴まれて、笑顔で数時間の説教を食らったことを思い出す
    お金が……と言おうとしたら、奨学金制度に加えて小規模事業者資金調達まで活用してきたのだから恐れ入る
    何でも学園のアイドル候補生向けの制度があるとかなんとか
    そんなことを何日も繰り返し、犬かきを必死にしていた広が真っ当に25mをクロールできるようになった頃
    プロデューサーが私達の体重を測りつつ、口を開いた
    「そろそろ水泳は十分でしょう」
    そう言って広の足を見たプロデューサーはこちらを見つめながら、とんでもないことを言い出した
    「ライブ練習をします」
    「……は?」
    「……ふふ、私がしたいって言った」
    「……は?」
    次の瞬間私は隣で呟いた女の顔を見て血の気が引く
    「25m泳ぎ切ったら、ライブをしたいって言った」
    こいつが何を言っているのか、わからなかった

  • 10二次元好きの匿名さん25/03/31(月) 05:09:28

    それからは地獄が更に加速した
    二人のダンスレッスンに、突然持ってこられた歌の練習、振り付けに、アホみたいな量のランニングと勉強
    アルバイトのことなんか頭の片隅からも消え失せて、飯、練習、飯、練習、飯、練習、飯
    気がつけば一日四食は五食に変わり、昼には筋肉痛で苦しんでいるとエアーマットレスに寝かされて無理やり寝かされる
    アスリート育成させられているのか、それともアイドルになろうとしているのかがわからなくなった頃
    私達の振り付けが踊りきれるようになり、プロデューサーは何処からか小さなライブ会場を捕まえて私達に見せつける
    「では来週ということで」
    「……は、はぁ、ふっ……っぅ」
    「ふ、ふふ、ふぅ……ふぅ……」
    あらましを説明するプロデューサーは、エアーマットレスの上にぶっ倒れている私達にそう告げた頭がおかしくなりそうだった

  • 11二次元好きの匿名さん25/03/31(月) 05:16:26

    正直こんな計画性の無い昭和な食わせ方すんのおかしいけどな

  • 12二次元好きの匿名さん25/03/31(月) 05:18:13

    気がつけば入学して2ヶ月が経とうとしていた頃、気がつけば私達は必死でライブ会場で歌って踊っていた
    考えてみれば確かに広はしっかり踊れていたし、私も色々麻痺しているのかただただ精一杯目の前のことをこなし続けている
    「お疲れ様でした、まだまだ改善点はありますが二人共、きちんと踊りきれましたね」
    そう言ってプロデューサーは私と広に活動費用を振り込んだ後、疲労困憊の私達を一人づつタクシーに入れて寮まで運んでいった
    滅茶苦茶だ
    何もかもが滅茶苦茶
    そんなことを思いつつ、私は不意にお腹が空いたことに気がつく
    「今夜はお祝いに寿司を10人前頼みましたから、お腹いっぱい食べてください」
    そう言ってこちらを見るプロデューサーの目は嬉しそうに微笑んでいた
    「わ……わぁ……」
    私がそう呟くと、隣の満身創痍の広がまたいつもの言葉を呟いたような気がした

  • 13二次元好きの匿名さん25/03/31(月) 05:19:58

    終わり

    BMI最低組のことねと広に美味い飯をガッツリ食わせるSS書こうとしたら滅茶苦茶な方向に走り出しちゃったので終わりです

  • 14二次元好きの匿名さん25/03/31(月) 05:37:41

    普通に飯テロだった

  • 15二次元好きの匿名さん25/03/31(月) 06:02:09

    咲季がウキウキしそうな肉体改造メニュー

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