- 1125/04/01(火) 03:00:10
- 2125/04/01(火) 03:01:02
- 3125/04/01(火) 03:02:47
「だれが世界一可愛いアイドルかって?それはもちろん星南さんのことですよ。」
———それは、何でもない初夏の日の出来事だった。
一日の授業が終わり、廊下が学園の生徒たちで溢れ返る。ある生徒はレッスン室へ、ある生徒は近くの商店街へ、彼女たちがそれぞれの放課後を過ごしに向かう姿を横目に私—、十王星南は私とプロデューサーの事務所へと足を運んでいた。事務所に行くといっても目的はミーティングなどのアイドル活動のためではなく、生徒会での会議の資料を取りに行く為である。生徒会長として誰よりも早く来て準備をしなきゃと生徒会室に来たものの、資料の一部が無い事に気付いたのが今から10分ほど前、そこから事務所に忘れてきた事を思い出し、『最近の貴様は少々抜けているのではないか?…とにかく、ただ資料を取りに行くだけだろうが会議の時間までには戻るように、ただでさえ1年生共が問題児ばかりなのに、生徒会長である貴様が遅刻でもしたら、示しがつかんからな。』と言われ返事をしつつ、生徒会室を出て今に至るという訳である。
ここまでを思い返しているうちに、私は事務所の扉の前に辿り着いていた。
——そういえば、今日みたいに私に予定がある休養日には、プロデューサーは何をしているのかしら。二人の予定が空いている時は、近くのショッピングモールにお出かけすることも少なくないけれど…。
そんな事を考えつつ扉を開けると、彼はパソコンの画面に集中していた。おそらく事務作業か課題をしているのだろう。扉が開く音で気付いたのか、先輩が体をパソコンから私へと向けてきた。
「おや、こんにちは星南さん。今日は会議のための休養日ではありませんでしたか?」
「こんにちは、先輩。確かにこの後会議なのだけれど、昨日ここに資料を忘れてしまったみたいで、取りに来たの。」
なんてことを話しているうちに、お目当ての資料を見つけ回収する。早く戻ると言って来たので長居するつもりはなかったが、戻る前に一つ、抱いていた疑問を解消することにした。 - 4125/04/01(火) 03:03:55
「ねえ先輩、一つ質問があるのだけれど。」
「どうしましたか、後輩。」
「あなたは、今日みたいに一人での休養日には何をしているのかしら?見たところ事務作業か課題をしている様に見えるのだけれど、後輩プロデューサーとして気になるから教えて欲しいの。」
「なるほど、説明するよりは見てもらった方がわかりやすいかもしれません。以前ご覧になったとは思いますが…」
そう言って彼はパソコンの画面をこちら側に向けてきた。「なッ…!」画面に描かれていたのは私のレッスン中の映像とそれに付いた『【今日の十王星南】シリーズ78【レッスン中のカワイイ♡シーン】』というタイトルだった。思わず、私はプロデューサーに詰め寄る。
「プロデューサー!?これはどういうことなの!?」
「?この件については既に了承を得たはずなのですが。」
「確かにしたけれど…シリーズ78って、いつの間にそんなに出していたの!?それに、今この編集をしているってことは…もしかしてあなた、休養日はずっとこんなことをしているの!?」
私が寄って言葉を捲し立てても、彼はいつものように、むしろニコニコと楽しそうに話している。
——もしかして、先輩に限らず初星学園のプロデューサーにとってはこれが当たり前なのだろうか…
「ご存じではなかったのですか?第100回が見えてきたこのシリーズはどの動画も大人気で投稿から4日以内には100万回再生、初期の動画は1000万回再生も超えている、今や大人気コンテンツですよ。」
「いつの間にそんなに人気コンテンツになっていたのね…」
「ある程度は予定通りですね。あと、星南さんは休養日にもプロデュース活動をしている私のことを気にかけてくれているようですが、これまでのイメージとは異なる世界一可愛いアイドルの姿を世間にも見せていくのは俺にとっても楽しいことなのですよ。あっ、そういえば第82回では初星学園にち——」
「ちょっと待って!」 - 5125/04/01(火) 03:04:33
私が彼の言葉を遮ると、ここでようやく彼はいつもの余裕そうな表情からキョトンとした表情に変わっていた。彼のこんな顔を久しぶりに見れたような気がするが、それよりも彼の話にはどうしても聞き流せないことばがあった。
「今、聞き捨てならないことがあったのだけれど…」
「うーん、やっぱり82回は数字としては中途半端ですかね…」
「そうじゃなくて!」
「えーと、ああ!別に星南さんの動画を制作することは別に苦じゃないですよ。むしろ編集作業中に録画した星南さんの可愛らしく、美しい姿をたくさん見ることが、俺の毎日の原動力といっても過言ではありませんよ。」
「なッ…!ってそれでもなくて!先輩、本当にわからないの?」
「ごめんなさい。さっぱりわかりませんね…」
——どうやらプロデューサーは私が何を気にしているのか本当にわからないようだ。こういう時に担当アイドルの心情を察してこそのプロデューサーではないのだろうか。…大声を出したせいか顔が熱い気がする。
「はぁ…じゃあはっきり聞くわね…先輩、さっき世界一可愛いアイドルって言っていたけれど、あれは誰のことを言っていたのかしら?」
質問をすると、先輩は首をかしげながら、それでもさも当たり前のように返答した。
「だれが世界一可愛いアイドルかって?それはもちろん星南さんのことですよ。」 - 6二次元好きの匿名さん25/04/01(火) 03:05:54
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- 7125/04/01(火) 03:07:28
「~♪」
「—のカフェがね…あっ星南会長だ、こんにちはー。」
「星南センパイ、こんにちは。」
「~♪…あら紫雲清夏さんに葛城リーリヤさんね、こんにちは、ウフフ。~♪」
事務所を出た私は資料を手に、行きのときよりも少し人がまばらになった廊下を歩いていた。
——全く先輩ったら、さっきのあれはどういうつもりなのかしら…私が世界一か…かわいいだなんて。だって、あなたは藤田ことねちゃん教の枢機卿なのに…
生徒会室に向かいながら、私は先ほどまでのことを思い返していた。 - 8二次元好きの匿名さん25/04/01(火) 03:08:02
このレスは削除されています
- 9125/04/01(火) 03:09:48
「…。」
「…。」
事務所内が静寂に包まれている。それも当然だ、私がこれほどにも怒っているのだから。さっきからやけに顔が熱いのもきっと怒りのせいだろう。
「……あの。」
この空気感に耐えられなくなったか、先輩がおずおずと口を開いた。こんな先輩はなかなか見られないので、一時間くらいは観察して居たいが、いまはそれどころではない。
「ねえ先輩。」
「はい…。」
「あなたの身近なところに私よりもっとかわいいアイドルがいるのを忘れてないかしら。」
そう聞くと、先輩は顎に手を当てて思案を始めた。普段私のプロデュースについて考えてくれているときの真剣な表情だ。
「身近なアイドル…改めて考えましたが、やはり星南さん以上に可愛いアイドルはこの学園…いやそれどころか世界を探しても星南さんより可愛い人など存在しないと思います。」
「フフッ…どうやら勘違いをしているようだから教えないといけないようね。
あのね、先輩。気持ちはうれしいけれど、世界一かわいいアイドルは私ではなくことねよ!藤田ことねちゃん教の枢機卿でありながら、ことねの魅力に気づけないなんて、まだまだ精進が足りないようね。これからことねのかわいさについて一から学び直すといいわ!」
そう言って私は、自分の机の中にきれいにしまわれていた機材やファイルなどを先輩の前に置いた。
「えっと…このビデオカメラや大量のDVDなどは…?」
「ことねのライブや営業の映像や資料などよ。今から二人で一緒に見返しながら、ことねについて語り合いましょう、フフッ。」
「…?では星南さんの望みとあれば喜んで。それに、新しいプロデュースのアイデアもわいてくるかもしれませんし。」
そうして事務所内で私と先輩のことねのライブ鑑賞会が始まった。
「—それでこの次のライブはね…って、もうこんな時間だわ。まだ途中だけれど、このあと会議があるから今日はこれでお開きにしましょう。先輩、これからも藤田ことねちゃん教の枢機卿として精進していくことね。フフッ、じゃあまた明日ね。」
「生徒会の会議、頑張ってきてください。ではまた明日、星南さん。」 - 10125/04/01(火) 03:10:18
——何度も見ているライブ映像なのに、それでもあっという間に時間が過ぎてしまうなんて、さすがは私のことねね。…それでも私の先輩は私を世界一かわいいって思ってくれていたのね。もう、先輩ったら…フフッ、ウフフフフフ……
- 11125/04/01(火) 03:12:11
~♪
放課後の廊下、夏の始まりを告げるセミなどの鳴き声に混ざって美しい鼻歌が響き渡っている。ただの鼻歌でも遠くまで響いてきれいな音色ということにさすがは一番星、学園のトップはすごいなという月並みな感想がでてくる。隣にいる私の親友も同じ人について考えていたようだが、その内容は少々違うようだった。
「…ねえ、リーリヤ。さっきの会長、すっごくうれしそうだったよね。」
「うん、ずっとニコニコしていたけど。何かいいことでもあったのかな—
「リーリヤも気になるよね!」
「うわっ!」
急に食い気味にかぶせてきた清夏ちゃんに驚いて思わずのけぞってしまった。ウキウキで話す清夏ちゃんの様子に、なんとなくこの会話の方向に察しがついた気がする。
「でさ、こないだ先輩たちと話してたときに先輩たちがね、『星南先輩は最近になって雰囲気が変わったよね。』って言ってたんだよね〜。話を聞くだけでも、うすうす勘付いてはいたんだけど、さっきの星南会長をみて確信したんだよ!」
「いったいなにに?」
「星南会長はきっと落ちちゃったんだよ…恋に!」 - 12125/04/01(火) 03:13:37
初星学園に来て、アイドルの卵となってからはなかなかできなかったであろう恋バナに、清夏ちゃんはとてもテンションが上がっているようだ。しかし、正直私は清夏ちゃんの話に対して半信半疑、いやかなり懐疑的だった。
「もう清夏ちゃん、星南センパイはトップアイドルなんだよ。そんな人が恋をしてるなんて、そんなことある訳ないよ。それに、星南センパイほどの何でもできて、おっきな家に住んでいる人が好きになるようなすごい人がそう簡単にいるわけ…」
「いやいや、別にアイドルが恋したらダメってわけじゃないし、あれは絶対恋する乙女の顔だったよ。それにいるじゃん、星南会長の近くにいて、星南会長が好きになってもおかしくないようなすごい人。」
「それって誰の事?」
「星南会長のプロデューサーさんだよ!ほら、この会見のときにいた若い男の人。」
そういって清夏ちゃんはN.I.A.であった謝罪会見のときの記事を見せてきた。
——普通プロデューサーは表舞台に出ないから仕方ないけれど、検索したときに出るのが謝罪会見のときの写真ばかりなのは少しかわいそう。
「こう見るとなんだかお堅そうなイメージがあるけど、前に星南会長と一緒にいるのを見かけたとき、星南会長に対してすっごく優しい表情を向けててかっこよかったんだよ。それにトレーナーの話だとね、この人何でも知っててユーモアもあるし、教えるのも1年生とは思えないほど上手いんだって。」
「そんなにすごい人なんだ…。」
「リーリヤ?」
少しうつむいてしまった私に対し、清夏ちゃんが心配そうに私を見つめる。
「ううん…私にもそんなにすごいプロデューサーがついてくれる日が来るのかな…って。」
「来るにきまってるじゃん!そりゃ…まだあたしもリーリヤもステージでライブをさせてもらえるようになったばかりだし?まだまだ実績もないけど、このまま頑張っていけばいつか星南会長のプロデューサーみたいな人に、見つけてもらえるって!」
「清夏ちゃん…!」
「じゃあ夏のH.I.F出場を目指して、今日のレッスンも頑張ろっか!出場も簡単じゃないけど、今ならまだ遅くはないっしょ!」 - 13125/04/01(火) 03:17:27
「ずいぶんと遅いぞ、十王星南!」
生徒会室に戻ると、扉の前で副会長にして私の幼馴染である雨夜燕が仁王立ちで待ち構えていた。
——一体どれくらいの間ここで待っていたのだろうか。
「おかしいわね…会議までには余裕があるし、まだほかの子は来ていないようだけれど。」
「確かに会議の時間には間に合っている。しかし忘れたのか?「遅くても30分もかからないわ。」自分で言っていたではないか。だというのに、ただ事務所から資料を取ってくるだけというのに何時間かけるつもりだ!もしやまたあの男がらみじゃないだろうな。」
「ええ、そのとおりよ。プロデューサーと一緒にライブ映像を見ていたの。」
「やはりか…。全くあの男はいつもいつもいつも!貴様が最近腑抜けているのも全部あの男の仕業だろう!あんな考えの読めないような男など放っておいてさっさと目を覚ましたらどうだ、十王星南!」
「ええあなたの言う通りよ!」
「やっとわかってくれたか!そうとなれば今すぐにでもあの男との——」
「あの人ったら何を考えているのかさっぱりわからないのよ!だって今日もね。彼、私のことを世界一かわいいって言ってきたのよ!彼は藤田ことねちゃん教の枢機卿なのにどういうつもりなのかしら!」
「けっ…けしから~~~んっ!何かあったと思ったらまた惚気か!そもそもいちゃつくたびにいちいち私に報告しに来るんじゃない!そんなにいちゃつきたければ私の知らないところで二人で好きなだけやっていろ!
……やっぱり報告しに来い!」
「ありがとう燕!じゃあこれからも何かあったら報告するわね。…あら。」 - 14125/04/01(火) 03:19:19
生徒会室の扉が静かに開いた音がして、振り向くとそこにいたのは、クラスメイトで普段から競い合う仲間でもある、書記の姫崎莉波だった。
「すみません会長、燕ちゃん。結構ギリギリじゃなかったかな?」
「いや、時間には間に合っているし、事前連絡も貰っていたから全く問題はないぞ。」
「それならよかったです。そういえば入ってきたとき何やら楽しそうに話し合っていたようですが、何かあったのですか?」
——私と燕はただ先輩の考えが読めないという話をしていただけなのに、どうして楽しそうに見えると思ったのだろうか。すこし気にはなったが、それよりも莉波が興味を持っているようなので、きょうの先輩について話すことにした。
「莉波にも聞いてほしいわ!私のプロデューサーがね、私が世界一かわいいって言うの。身近なところにことねというアイドルがいるのに、本当に困った人よね!」
「会長のプロデューサーさん…ですか。…とても仲が良い様で何よりですね。」
——莉波ったら私は困っているという話をしただけなのに、仲が良いなんてどうしてそう思ったのかしら…?…そういえばもう会議の時間なのに、1年生たちがまだきていないわね…
「燕。まだあの子たちが誰もきていないけれど、たしか千奈からは連絡があったわよね。」
「ああ。プールの授業で足を攣ったと個人チャットで連絡が来ていた。色々言いたい気持ちはあるが、問題は他の二人だ。連絡もせずいったい何処をほっつき回っているんだ全く。」
「何度か連絡してもでないようだし、探してきた方が早いかしらね。燕、私が探しに行っている間にあの子たちがきたら連絡お願いね。それじゃあ。」
「お、おい待て— - 15125/04/01(火) 03:19:52
「…行って、しまいましたね。」
「…ああ…そうだな…。」
「燕ちゃん?」
「全く、ここ最近の十王星南ときたら…思えばあの男が近づいてから十王星南はおかしくなっていったのだ。」
「うーん…本当にそうでしょうか。少なくともここ最近の会長はさらに磨きがかかった気がしますし、とっても楽しそうにしていますよ。何より後輩たちからも『今の会長は可愛くて親しみやすい。』なんてよく聞きますし。」
「そこが問題なのだ!あの男のせいでこれまでの完璧なアイドルだった十王星南のイメージが崩れ去っている。これをここまで見続けてきた者として嘆かずにどうしろというのだ!」
「まあまあ、落ち着きましょう。それに、ええと…次のH.I.Fで会長を超える理由が増えたと考えればいいんじゃない…ですかね?」
「ふん!これまではライバルだと思っていたが、今となってはあやつなどどうでもいい。最早興味すらわかんわ!次のH.I.Fでは私が十王星南を…ん?通知か…?
……はッ!…十王星南の、新しい動画…だと…!全員揃うまでにはまだ時間がある…しかし、本来ならば始まっている時間…。あの男、何故これほどまでに私を苦しめるのだ…!」
「あ、あはは…。」
———生徒会の最近の日常風景である。 - 16125/04/01(火) 03:21:25
とりあえずはできたところまで。もう寝ます。
今度こそはちゃんと更新しますので… - 17二次元好きの匿名さん25/04/01(火) 08:31:20
乙!
新社会人がんば! - 18二次元好きの匿名さん25/04/01(火) 17:45:52
ほしゅ
- 19125/04/02(水) 01:37:48
佑芽たちをさがしに生徒会室を出た私は、1年2組の教室に向かいながら次に探す場所を考えていた。
——こうして向かってはいるけれど、おそらく二人とも教室にはいないでしょうね。あの二人が授業が終わってから1時間以上も教室にとどまっているとは考えにくいもの。
(…あっという間だったけれど、私と先輩1時間もライブを見ていたのね…。)
——千奈や篠澤広さんがいるとすればまだ可能性はあったけれど、千奈だけでなく篠澤広さんも保健室にいると聞いたからその線はない。
(…確か事務所に置いてある映像は全部で3時間分はあったはずなのだけれど、あの後も先輩は見ているのかしら…。)
——それに、千奈と一緒にいるのなら千奈が会議をサボっている二人を見逃すはずもない、だから自動的に保健室も選択肢からは外れる。
(…それとも私が来たときみたいに、動画の編集をしているのかしら…。)
——そもそも、なぜ二人は来ていないのか。佑芽は…ただ会議のことを忘れているだけでしょうね。彼女のことだから、黙ってサボるなんてしないはず。おそらくは、会議を忘れるほど何かに熱中している。といったところかしら。
(…そういえばあの時の動画、レッスン中のものだったけれど、それを編集したってことは…レッスン中の私の恥ずかしい部分もたくさん見られていたってこと…!?)
——美鈴は…わかってサボっていてもおかしくはないわね。あの子のことだから、どこか気持ちいいところでお昼寝でもしているのかしら。
(あの映像を見ることが原動力…とか、あれがなきゃやってられない…だなんて、見られているこっちの身にもなってみなさいよ…。)
——先輩さえ言ってくれれば…あの映像なんかよりもいいものを先輩だけにいくらでも見せてあげるのに…。
(今日みたいな晴れた日なら、少なくとも一人は校庭か中庭にいると考えるのが妥当かしら。だとしたらどちらがいてもおかしくはない中庭を先に回ってみましょうか。)
——それでもあんな映像でも先輩は私をか…かわいいって…世界一かわいいって…。
(とりあえず教室に着く前でも、聞き込みでもしましょうか…二人のことを知っている人が近くにいるといいのだけれど…。)
——まったく…これまであんなにことねの良さを語ってきたのに…なぜ伝わらなかったのかしら…あら?
「あそこにいるのは…。」 - 20二次元好きの匿名さん25/04/02(水) 10:48:17
保守
- 21二次元好きの匿名さん25/04/02(水) 20:22:10
歩
- 22125/04/03(木) 02:58:19
1年生A「麻央先輩、手伝ってくれてありがとうございます!…一体、どうお礼をすればいいのか…。」
麻央「別に気にしなくてもいいよ、ボクもレッスン前に何もすることがなくて暇だったからね。だからまた困ったことがあったら遠慮なく頼ってくれると嬉しいよ。」
1年生A「は、はい!これからもよろしくお願いします!そ、それでは!」
麻央「うん、またね。さて、そろそろ…って会長、こんなところでどうかされました?」
やはりそこにいたのは私のクラスメイトでみんなから慕われる寮長。有村麻央であった。ちょうどいいところにいてくれた。
星南「ねえ麻央、話を聞いてほしいのだけれど。」
麻央「はい、いいですよ会長。それでどんな話題ですか?」
——あれ、そういえば何を聞こうとしていたんだっけ…さっきまでの考えをたどれば…そうだ! - 23125/04/03(木) 02:58:33
星南「あのね、さっき私が私のプロデューサーに『世界一かわいいアイドルは誰?』って聞いたの。そしたら彼、なんて答えたと思う?『それは星南さんですよ。』なんて答えたのよ。私は彼がプロデューサーとして最高の腕があると思っているのだけれど、あれほど近くにいてことねのかわいさに気づけないなんて後輩として先輩の目が少し不安に感じちゃうわ。それで麻央はこれについてついてどう思うかしら?」
麻央「なるほど…会長はプロデューサーさんの観察眼が心配ってことですか…。ボクから言わせてもらうと、会長の可愛らしい一面にすぐに気づいて広めた。というだけでも十分に素晴らしい目をしていると思いますよ。」
星南「そ、そうなのかしら…。」
麻央「はい。それに、プロデューサーならば自分の担当アイドルを一番に感じて当然だと思います。ボクにはプロデューサーも担当アイドルもいないので実際のところはわかりませんが…と、すみません会長。そろそろレッスンの時間になるので今日はこの辺で。とにかく、プロデューサーさんと仲の良い様で何よりです。それでは。」
星南「え、ええまた明日ね。」
そう言って急いでレッスン室に向かっていく麻央を見届けると、私は再び歩き出した。
星南「おかしいわね…莉波といい私の悩みを相談しただけなのに、どこで私と先輩の仲が良いなんて考えたのかしら…それにしても、『担当アイドルを一番に感じて当然』…ね。確かにことねだけじゃなくてあの子たちも、誰が1番なんてないけれどそれでもみんな特別な子たちね。
——プロデューサーも私のことをそう見ていてくれるのかしら、たった一人の担当である私を誰よりも特別って…いや、それでも世界一かわいいのがことねじゃない理由にはならないわ。これについては、もっといろんな人に意見を聞かないと。……そういえば、何か忘れているような気がするわ…何かを探していたような…まあ、こうして歩いていればいつかは思いだすはずよね! - 24二次元好きの匿名さん25/04/03(木) 12:28:51
保守
- 25二次元好きの匿名さん25/04/03(木) 22:23:57
ほし
- 26二次元好きの匿名さん25/04/04(金) 02:10:03
——初星学園の保健室、そこに設置されているベッドの上にわたくし、倉本千奈は安静のために寝かされていました。すっかりと顔馴染みとなっている養護教諭さんは現在、保健室を出払っておりここにいるのは私と友達の二人だけです。
千奈「うぅ…。」
広「どうしたの、千奈。攣った足、まだ痛む?」
首を横に向けると隣にあるベッドに寝かされている友達、篠澤広が見える。この数か月で両手でも数え切れないほどに見た景色だ。
千奈「いえ、足は全然痛みませんわ。ここにいるのも大事を取ってのことですし、それよりも。…最近ようやくレッスンをこなせるようになって、保健室を卒業できた。とみんなの前ではしゃいだ矢先にこれとは、わたくし恥ずかしくて穴があったら入りたい気分ですわ…。」
広「ふふ…私も、自分の限界をわかっているつもりだった。…まさか見学中に熱中症になるなんて、ふふ。私も、穴があったら入りたい、かも。」
千奈「もう、篠澤さんったら。…それよりも、今日は生徒会の会議ですのに遅れてしまうなんて、みなさまに申し訳ありませんわね…」
広「生徒会…授業やレッスンで忙しいのに、仕事もこなすのは、大変そう。それができるなんて、千奈、すごい。」
千奈「褒めていただいてうれしいのですが。今のわたくしがいるのも篠澤さんや周りの皆様方に支えられたからこそ、本当に感謝してもしきれませんわ。」
広「そ、そう…こちらこそ、ありがと…」 - 27二次元好きの匿名さん25/04/04(金) 02:11:37
わたくしがそう言うと條澤さんは顔を赤らめ、少しうつむいた。感情が読めないようで照れている時はわかりやすいのが彼女の可愛らしい所だと思う。そうして話していると扉が開く音が聞こえ、振り返ると養護教諭さんが戻ってきたところだった。
養護教諭「二人とも思ったより元気そうでよかったわ。」
千奈「はい!わたくしもう元気ですわ!ですので!」
広「千奈、はしゃぎすぎ、また攣っちゃうよ。」
養護教諭「篠澤さんの言う通りよ、気をつけなさい。ちょっと触らせてもらうわね。…張っている感じもないし、痛みもなさそう…。よし、千奈さん。もう動いてもいいわよ。ただし、くれぐれも今日一日は安静にね。」
千奈「はい!先生、感謝申し上げますわ!ではわたくしは生徒会室に向かいますので、また明日お会いしましょう、條澤さん!」
広「うん。また明日、ね。」
挨拶を済ませると、急いで私は生徒会室に向かった。会議はもうとっくのとうに始まってしまっているだろうが、そんなことはゆっくりしている理由にはならない。遅刻した以上は何としても生徒会のみんなの力にならなくては。
「星南お姉さま。すぐに着くのであと少しだけお待ちくださいましー!」 - 28125/04/04(金) 02:12:24
麻央と別れ、校舎から出た私は中庭の方を歩いていた。まだ本格的に夏は始まっておらず、涼しい風が吹いている。ジョギングやお昼寝をするのには絶好の気候だろう。そうして歩いていると見知った顔が向こうから歩いてくるのが見えた。
星南「あら、佑芽に花海咲季さんね、こんにちは。」
だんだん近づいてくる佑芽を見て、ようやく私は佑芽と美鈴を探しにここまで来たことを思い出した。
佑芽「星南先輩、こんにちは!」
咲季「こんにちは、十王会長。佑芽もいるし私のことは咲季でいいわよ。」
星南「ええ、じゃあその呼び方にさせてもらうわね、咲季。見るに、二人でジョギングでもしてたところかしら。」
佑芽「はい、さっきまでお姉ちゃんと川の近くを軽く走ってきた帰りなんですよ!」
咲季「軽く…ええ、軽く、ね…。」
咲季が佑芽の言葉に少し顔を青くして答える。私も体験したことがあるからわかるが、少なくとも軽いジョギングではなかったのだろう。そんな姉の表情の変化には気づかないまま、佑芽が私に質問をしてきた。
佑芽「それで、星南先輩はこんなところで何をしてるんですか?」
——それは、佑芽たちをさがしに来たからだったはずなのだけれど、そもそもなぜそんなことをしていたのかしら…確か、何か言いたいことがあったような…そうだ! - 29125/04/04(金) 02:14:22
星南「そうよ!ちょうど佑芽に聞いてほしいことがあったの!」
佑芽「なんですか?先輩。」
星南「あのね、プロデューサーがね、私を世界一かわいいって言うのよ!確かに私は彼の担当アイドルなのだけれど、ことねを差し置いて私が世界一かわいいだなんて、私のプロデューサー少し変わってるんじゃないかしら!佑芽はどう思う?」
咲季「ちょ、ちょっと待ちなさい!」
そのとき咲季が私と佑芽の話に割って入る。青ざめていたのが一転真っ赤な顔をしておりどうやらずいぶんとお怒りのようだ。
咲季「あなた何言ってるのよ!現役のアイドル、それもトップアイドルが何で当然のようにプロデューサーといちゃついてるの!?もっとアイドルとしての自覚を持ちなさいよ!」
佑芽「星南先輩だけじゃなくて先輩のプロデューサーさんは間違っていますよ!」
咲季「その通りよ!佑芽ももっと言ってやりなさい!」
佑芽「うん!星南先輩のプロデューサーは間違っています!なぜなら、世界一かわいいのは私のお姉ちゃんだからです!」
咲季「ふぇ!?」
佑芽の発言にさっきまでの勢いはどこへ行ったのか、咲季が動揺して何も言えなくなってしまった。気のせいだろうか、先ほどよりも顔が赤く見える。
佑芽「確かに星南先輩もことねちゃんも可愛いですが、お姉ちゃんほどではありません!それに、お姉ちゃんは可愛いだけじゃなくてカッコよくて何でもできる。最高のアイドルなんですから!」
咲季「もう~佑芽ったら~♡」
気づけば咲季の表情がすっかりととろけきっていた。ほかに形容する言葉が思いつかないが、少なくともファンの前では出せないような表情であることは確かだった。
——これがさっきまで『アイドルとしての自覚』と言っていた少女の顔でいいのかしら…。 - 30125/04/04(金) 02:14:34
佑芽「とにかく、私が言いたいのはお姉ちゃんこそが最高ってことです!それにしても、先輩のプロデューサーさんって星南先輩のこと大好きなんですね!」
星南「ふぇ!?そ、それってどういう…?」
佑芽「そのまんまですよ!だって、先輩のプロデューサーさんってば星南先輩がいるときずっと目で追ってますし。それに、いくらプロデューサーだからって『世界一可愛い』なんて、大大大好きな相手にしか言えませんって!きっと星南先輩にしちゃったんですよ!」
星南「な、なにを…?」
佑芽「そんなの決まってるじゃないですか…プロデューサーとアイドルの禁断の恋!」
星南「せ、先輩が…私に…恋……ウフフ♡…せんぱいったらどれだけわたしのことがすきすぎるのよ♡もうこまっちゃうわ♡…」 - 31125/04/04(金) 02:21:28
失礼します。
研修がしんどすぎて正直思った以上に時間がかかってます。それでも何とか明日には終わらせたいなと思いますので最後までよろしくお願いします。 - 32二次元好きの匿名さん25/04/04(金) 08:20:27
読んでるよ!
保守 - 33二次元好きの匿名さん25/04/04(金) 18:07:50
保守
- 34二次元好きの匿名さん25/04/04(金) 23:09:39
保守します
- 35125/04/05(土) 02:28:40
星南「——フ…フフッ…ウフフフフフ……♡」
佑芽「星南先輩?どこに行くんですかー?」
話の途中で何故か急に星南先輩がさっきのお姉ちゃんみたいにふにゃふにゃになってしまった。そしてそのままフラフラどこかへ歩いていく星南先輩をあたしとお姉ちゃんはどこか呆然としながら見送っている。
咲季「ねえ佑芽。」
佑芽「どうしたのお姉ちゃん?」
咲季「今の十王会長、あなたにはどう見えるかしら?」
お姉ちゃんが顎に手を当てジト目であたしにそう問いかけてくる。さっきまでとは一転なんだか不機嫌そうに見える。どうやら何か気に入らないようなことがあったようだ。
佑芽「今の星南先輩?うーん…ちょっと前の先輩はきっちりがっちりって感じだったけど、なんだか最近の先輩は恋する乙女みたいですっごく可愛く見えるよ!」
咲季「恋する乙女…やっぱりそう見えるわよね…はあ…。」
あたしの返答に深いため息をついたお姉ちゃんはさっきよりもさらにテンションを落としているように見えた。
佑芽「?なんだかお姉ちゃん元気がないけど、なにかあったの?」
咲季「元気がない…?いいえ、わたしは元気がないどころか今猛烈に怒っているのよ…!」
あたしが質問をすると、お姉ちゃんは心底不満げに語りだした。
咲季「わたしね、こう見えてもここ最近の十王会長の活躍に注目していたの。簡単に数値では測れない何か…それが何かはわからないけど、今の会長からそれを感じられてわたしは…ちょっとだけ羨ましいって思ってたの…。」
お姉ちゃんが目を伏せ、少し悲しそうにうつむく。なんだかいつものお姉ちゃんらしくないが、どうしたのだろうか。
佑芽「お姉ちゃん…?それってどういう——」」 - 36125/04/05(土) 02:33:10
そうあたしが次の言葉に入る前に、お姉ちゃんはがばっと顔を上げ星南先輩に対する怒りをあらわにした。
咲季「なのに!さっきのあれはいったい何なのよ!人前であんなに気の抜けた顔をさらした上に、あまつさえ恋する乙女ですって!?あの人にはアイドルとしての自覚とかはないのかしら!?」
佑芽「でも先輩のふにゃふにゃした顔、さっきのお姉ちゃんとよく似てたと思うよ?」
するとお姉ちゃんは再び不機嫌そうな顔を見せた。今日はお姉ちゃんの表情がコロコロ変わっていて少し面白い。
咲季「佑芽やめて、不快よ。」
佑芽「うーん、でもやっぱり似てる気がするなー。」
咲季「…まったく、そもそもアイドルに恋愛なんてご法度なのに自分のプロデューサーにうつつを抜かすなんて、本当にあり得ないわ。それに佑芽もあんな人にプロデュースされていると、色ボケがうつっちゃうわよ。手遅れになる前にほかの生徒会の——」
佑芽「あ゛ー゛ー゛ー゛ー゛!゛!゛!゛!゛」
そこでようやくあたしは今日が生徒会の会議の日だと思い出した。おそらくさっき星南先輩があたしに会いに来たのもそれを伝えるためだったのだろう。直接的に教えなかったのも、あたしがお姉ちゃんに遅刻を怒られないように気を使ってくれたのだろう。そうとあれば今すぐに生徒会室に戻らねば。きっとみんなが待っているはずだ。
咲季「佑芽?急に大声を出してどうしたのよ。」
佑芽「え、えーとね…そう!この後クラスメイトと遊びに行く約束を思い出したの!じゃあお姉ちゃん、また部屋でね!」
咲季「ちょ、ちょっと!佑芽!?…行っちゃったわね…。」 - 37125/04/05(土) 02:36:04
十王星南が一年生達を探しにここを飛び出して早数十分、燕と莉波は会議資料の読み合わせを行いつつ、ほかのメンバーが来るのを待っていた。
燕「まったく、どいつもこいつもどれだけ会議を遅らせるつもりなんだ。この後全員の時間が空くのがいつになるのかわからないというのに。」
莉波「まあまあ、燕ちゃん。きっと今頃会長が見つけてくれてるはずですよ。それに、いつも大変な準備のほとんどを会長が終わらせてくれたから、みんなが揃ったらすぐに始められそうですし。」
燕「確かに準備には助けられている。だが、独断であてもなくこの学園を探し回るなんてそれこそ時間の無駄だ、おとなしくここで待って一年共に連絡をかけつつ読み合わせを行う方が得策だろう。」
莉波「確かに…それはそうですね。」
燕「そうだろう、やはり今の十王星南はいまいち信用できん。とにかく今すぐに電話でもして呼びも——」
千奈「皆様―!大変お待たせして申し訳ありませんわー!…あら?」
生徒会室の扉が勢いよく開かれ、千奈が入ってくる。少し息が乱れているのを見るに急いでここまで来たのだろう。
莉波「千奈ちゃん、よかった。ケガしてたって聞いてたんだけど元気そうだね。」
千奈「え、ええ…お足を攣ってしまっただけなので何も問題ありませんわ…そ、それより星南お姉さま方が見えないのですが…もっももももしかして…もう会議は終わってしまいましたの…?」
莉波「ううん、終わるどころかむしろまだ始まってすらいないよ。」
千奈「そうなのですね。それは本当によかったですわ!」
燕「はあ…ともかく倉本が着いたから、そろそろ十王星南に電話でもしよう。」
『プルルルルル』
『——セカイイーチーカワイイ!♪』
燕が電話を掛けた途端、生徒会室に軽快なメロディが響き渡った。
「…。」
「…。」
「…あの、どうしましたの…?」 - 38二次元好きの匿名さん25/04/05(土) 10:02:11
ほしゅ
- 39二次元好きの匿名さん25/04/05(土) 19:54:31
保守
- 40125/04/06(日) 01:17:51
美鈴「まりちゃん、お味はいかがですか?」
手毬「うん、このからあげおにぎりすごくおいしい。またつくって。」
美鈴「ええ、食べたいのであればもっとたくさん作ってもいいのですが。」
ここは初星学園の中庭の端、美鈴がよく昼寝をしているベンチで私、月村手毬は秦谷美鈴にもらったおにぎりを食べていた。
手毬「それはいいよ。これはレッスンを頑張ったご褒美だから、たくさん食べたら意味ないから。」
美鈴「そうでしたね。…ふふ。」
手毬「美鈴?どうかしたの?」
美鈴「いえ…またこうして二人で話せる時が来たのが感慨深くて。」
手毬「私も大人になったからね。美鈴もN.I.Aのあとからなんだか優しくなったし。」
美鈴「私はまりちゃんにはずっと優しくしてたつもりだったのですが―…はあ。」
手毬「美鈴?」
美鈴が何かに気付いたのかため息をついて、私の奥の方を見つめている。振り返ってみると、星南会長がこちらに歩いてくるのが見えた。美鈴のテンションが明らかに下がっているが、もしかして仲が悪かったりするのだろうか。
星南「あらみすずじゃない♡それにあなたはみすずのともだちのつきむらてまりさんね♡こんにちは♡」
手毬「こ、こんにちは。」
手毬(こんなところにいるってことは美鈴に何か用でもあるのかな。美鈴もこんなだしあんまり聞かないほうがいい話題かも。)
美鈴「まりちゃん、ちょっとここで待っていてくださいね。…会長どうし—
星南「みすず、きいて♡わたしのプロデューサーがね、わたしのこと好きすぎてね♡」
美鈴「?????」
星南「きょうね♡わたしが—♡」
手毬(あの美鈴が完全に押されてる…!?改めて見たら会長の様子も明らかにおかしいし…早く誰か助けを呼ばないと—
星南「つきむらさんもきいて♡あのね—♡」
手毬「ヒィッ!」
手毬(み、美鈴ぅ~!たすけてぇ~!) - 41125/04/06(日) 01:19:22
私が心の中でそう叫ぶと、混乱状態になっていた美鈴が星南会長の両肩をつかみ、自分の方へと向き直させた。何か策でもあるのだろうか…?
美鈴「話を聞くに、星南会長は相当プロデューサーさんに愛されているんですね。」
星南「あっ愛!?…さすがに…そこまでは…。」
美鈴「いいえ、きっとそうに違いありませんよ。もしかすると、会長に隠れてもうしているかもしれませんよ。…告白の準備とか。」
星南「告白…!?でも、まだわたしはアイドルなのに…交際なだんて…♡」
美鈴「大丈夫ですよ会長。バレなければ何も問題ありません。あのプロデューサーがそこを考えてないとは思えませんよ。それにその先の結婚も—
星南「けっけけけけ結婚!?ま、まだそれはきがはやいんじゃないかしら…!?」
美鈴「はい、たしかに結婚は少し早い話だったかもしれませんね。そんなことより会長は早くプロデューサーさんのところにでも行って想いに応えてきたらどうですか?あの方がいつまでもノーマークだなんて都合のいいことあるとは思えませんし。」
星南「ええ…そうね!アドバイスありがとうみすず♡かんしゃするわ♡」
そういうと星南会長は校舎の方へと去っていった。
手毬「ありがとう美鈴ぅ~!怖かったよぉ。」
美鈴「大丈夫ですよまりちゃん。こんなのはお安い御用です。……それに、その方が—…。」
手毬「?」
最後に何か言ったような気がしたが、何だったのだろうか。
美鈴「—それに、その方が都合がいいですしね…。」
見えなくなっていく会長を見やりながら、私はそうボソッとつぶやいた。…会長が見えたはきっと、会議に来ない私を探しにでも来たのだろうと思っていたが、まさかあんな惚気話を聞かせられるとは夢にも思わなかった。
——だけど、この状況はうまく使えそうだ。
そう考えると私はスマホを取り出し、『ある人』にチャットを送り、まりちゃんの方に向き直った。
美鈴「まりちゃん。私、急用を思い出しまして…また部屋で会いましょう。」
手毬「美鈴が急用…?珍しいね、なにか大事な用?」
美鈴「ええ、…そんなところです。」 - 42二次元好きの匿名さん25/04/06(日) 01:21:23
——せんぱいったら、まさかけっこんしたいっておもうほどわたしのことがすきだったなんて…うふふふ…♡
事務所に向かい、自身のプロデューサーに会いに行くために星南は校舎を一人歩いていた。
星南「~♪」
2年生A「ねえあれ、十王会長だよね?」
2年生B「うん、でも今日の会長なんだかすっごくふわふわしてるよね。…やっぱり会長のプロデューサー絡みかなー?」
2年生A「かなー?」
このときの星南の蕩けきった表情、意識せずとも自然と流れる鼻歌、そして何より本人からあふれ出る幸せオーラ、これらはその時その場にいた人達からして星南に関する噂の信憑性を高める材料に映ったようで、実際この後『星南会長とそのプロデューサーは交際している。』という噂が初星学園の一部生徒の中で広まることとなった。
星南(そろそろせんぱいのところにつけそうね♡そしたらわたしはせんぱいに…♡あら?) - 43125/04/06(日) 01:22:17
事務所に向かう階段へと差し掛かったところで星南は廊下の奥に人がいるのが目に入った。今までは毎日のようにアプローチをかけては逃げられるも、今は自身の担当アイドルとして可愛がっている後輩、藤田ことねである。当然彼女を星南が見逃すはずもなく、いつものように駆け寄っていった。
星南「きぐうねことね!」
ことね「うぎゃーーー!!!星南プロデューサー!?いきなりなんなんですか一体!?」
星南「そのとうりよことね!わたしのプロデューサーについてきいてほしいのよ♡」
ことね「いや、こっちの話ちゃんと聞けし。」
星南「わたしのせんぱいがね!わたしのことがすきすぎてね♡わたしとけっこんしたいなんてかんがえてるのよ♡」
ことね「あーはいはいいつもの…って結婚!?何がどうしてそうなったんですか!?」
星南「せんぱいがね♡藤田ことねちゃんきょうのすうききょうであるはずなのにね♡わたしがせかいいちかわいいなんていってくれたの♡」
ことね「いやちょっと待ってください!枢機卿?藤田ことねちゃん教!?一体何なんですかそれは!?」 - 44125/04/06(日) 01:22:47
星南「あら、つたえてなかったかしら…?……藤田ことねちゃん教はね、N.I.Aの後に私と先輩が話し合って今後開設する予定を立てている、あなたの公式ファンクラブよ。…N.I.Aのイベント中あなたはそれはもう数えきれないほどのファンを抱える人気アイドルになったわ。でもせっかくファンになってくれた子たちもイベント後全員がついてきてくれるとは限らない…だからこそファンクラブという名目でその子たちの受け皿を用意することにしたの。ちなみに私は会員ナンバー1、教皇で先輩は会員ナンバー2の枢機卿よ。」
ことね「急にまともになった…それにしても名前はともかく、星南プロデューサーはイベント後のその辺のところきっちり考えてくれてたんですね、ありがとうございます。本当にすごいです。」
星南「ありがとう、ことね…でも本当にすごいのは先輩の方よ。確かに私もファンの子たちの受け皿について考えてファンクラブも検討していたけれど、実際の骨組みから細かいところまで先輩がいなかったらここまでうまくはまとまらなかったと思うわ…。」
ことね「へえ、そうだったんですか。担当じゃないあたしのためにここまでやってくれるなんて、星南会長のプロデューサーさんは優しくて、腕もあって、担当に愛情をもって接することのできる最高のプロデューサーさんなんですね。」
星南「ええ…ええ……ええ!そうなの!わたしのぷろでゅーさーはね♡ほんとになんでもできて♡わたしのことをとってもあいしてくれるさいこうのぷろでゅーさーなの♡それでね♡…ことね、どうしたの?きゅうにかたまって。」
ことね「い、いや…後ろにですね…。」
星南「うしろ…?もしかしてせんぱいかしら♡」
星南が後ろを振り返る。そこにいたのは彼女のプロデューサーではなく、息を切らしている彼女の幼馴染、雨夜燕だった。
燕「ハア…ハア…貴様…!いいかげんにしろーーーーーーーー!!!!!!!!」
彼女の怒号は校舎中に響き渡るほどの声量と迫力であったという。 - 45125/04/06(日) 01:24:36
星南「はあ…思い出すだけで消えてしまいたくなるわ…。」
翌日の早朝、まだ片手で数えるほどしか生徒のいない校門からの道を私、十王星南は歩いていた。
あの後、燕に発見されたまま引きずられ、生徒会室に運び込まれた私を待っていたのは、私以外の生徒会メンバー全員であった。そしてすぐに会議が始められ、滞りなく終わったと思うとそのまま私に対する燕からの説教が始まったのだった。怒髪天をつく勢いの燕と必死になだめる莉波、キラキラした目で私に質問をする千奈と佑芽、時々煽りを入れる美鈴と生徒会室は色々とカオスな空間となっていた。
星南(いつから昨日の私はおかしくなっていたのかしら…美鈴に何か言われたとき…?佑芽達とお話ししたとき…?それとも、事務所にいた時点から…?)
今現在、私はプロデューサーとの事務所に向かっている。昨日はいろんな人に絡んでしまったが、一番迷惑をかけてしまったのはやはり勝手に名前を出して風評被害を与えてしまった彼だろう。一度文面で謝罪はしたが、実際に会って謝らなければ…。 - 46125/04/06(日) 01:24:52
星南「よし…心の準備は万全なはず…。」
一度一呼吸を入れた私は事務所の扉を開く。中で昨日のようにパソコンに向かい合っていた先輩が今日は私に気が付くと立ち上がって私の方へと歩いてきた。
星南「先輩、昨日はごめんなさい。色々と振り回してしまったわよね。」
P「いえ、これくらいのこと全然気にしてませんよ。それよりも昨日渡された藤田さんの映像を見て、いろいろな気付きを得ることができたんですよ。」
星南「あの後に全部見てくれていたのね。」
P「はい、星南さんが常日頃から語っていた藤田さんの可愛さを俺なりに理解することができたんです。確かにあの人は世界一可愛いと言っても決して過言ではありませんね。」
星南「そ…そうなのね…。」
なぜだろうか、当初の予定であったことねの布教を成功することができたはずなのに、心がモヤモヤする…。どうしてしまったのだろうか。
星南「ね、ねえ…先輩…。」
P「どうしましたか?後輩。」
星南「先輩の中でことねが世界一可愛いアイドルになったのはわかったわ…そしたら私は…?昨日まで先輩の中で世界一可愛いかったのは私なのでしょう?」
震える声で問いかける私に先輩は私の目をよく見てこう言った。
P「藤田さんの映像を見た後星南さんのライブ映像を見て考え、俺はある一つの気づきに至りました…。藤田さんは世界一可愛いアイドルだがが、それと同時に星南さんは宇宙一可愛い存在だ、ということに。気持ち悪く思われるかもしれませんが、俺の中では星南さんこそが一番だという考えは変わりそうにありませんよ。」
星南「ねえ♡きいてよ♡つばめ~♡わたしのせんぱいがね♡わたしのことをね—♡」
燕「なぜこうなったんだ…。」 - 47125/04/06(日) 01:34:13
ここまでお付き合い頂き、本当にありがとうございました。初めて書くSS、とりあえず最後まで書き切ることを目標としていたので達成出来て良かったのですが、少しずつ書いて投稿する手法を取ったことが原因か、読み返していてかなり途中の表現方法やフォーマットにムラ、さらに脱字などのミスも目立ってしまったので、いつか大幅に修正してどこかに投げようかなと思います。(スレ立て直しはおそらくしません。)あと空いている途中に新しいアイデアが浮かんだので、今後名乗る予定はありませんが今度はほとんど書ききってからまたスレ立てしようかなと思うのでよろしくお願いします。ここまでありがとうございました。