- 1二次元好きの匿名さん25/04/01(火) 23:19:09
- 2二次元好きの匿名さん25/04/01(火) 23:19:41
「トレーナー────服を脱いでくださる?」
「……え?」
彼女からの唐突な脱衣要請に、俺は言葉を失うしかなかった。
第二の住処ともいえるトレーナー室、その場にいるのは俺ともう一人だけ。
鹿毛のドーナッツヘア、幼さを残す顔立ち、それでいて貫禄のある目つき、左耳にはハート型の髪飾り。
担当ウマ娘のジェンティルドンナは、困惑する俺を真紅の瞳でじっと見つめていた。
「あら、聞こえなかったのかしら?」
「いや、ちゃんと聞こえているよ、聞こえてはいるんだけど」
「なら早くなさい……それとも、私がお手伝いをして差し上げましょうか?」
「い、いや、それは及ばないよ、うん」
俺が困惑していると、ジェンティルは催促するように言葉を続ける。
その様子はふざけているようにも、冗談を言っているようにも見えず、ただ淡々としていた。
何故、服を脱がなければならないのか。
それについては何の心当たりもないが、彼女が無意味にそんなことを言うわけがないのは良く知っている。
何か意図があっての事だろう、そう考えて、着ているジャージのジッパーを降ろした。
そこでふと、疑問が思い浮かぶ。
「あの、ジェンティル……脱ぐって、どこまで脱ぐんだ?」
俺の質問に対してジェンティルは無言のまま、おもむろに鉄球を取り出す。
そして彼女は、見る者に恐怖すら感じさせるであろう美麗な微笑みを浮かべた。
「貴方が淑女の前で自らの雄々しさを誇示したいというのであれば、ご自由にどうぞ」
そう、静かに告げながら────ジェンティルは鉄球を、ぎゅっと握り潰す。
何処とは言わないが、ひゅんとした。まあ、冷静に考えれば、それはそうだろう。
ごめん、と小さく謝罪を告げながら、俺はそそくさと服を脱ぎ始めるのであった。 - 3二次元好きの匿名さん25/04/01(火) 23:20:11
「へえ、ふぅん」
「……」
上半身裸となった俺の周りを、ジェンティルは品定めをするように見て回る。
こつこつと響く靴音、そして、時折聞こえてくる彼女の興味深そうな声。
正直に言って、なんか、すごく恥ずかしい。
身嗜みに関しては、彼女に恥をかかせないようにきっちりと行っているつもりだ。
契約してからは筋トレも欠かしておらず、少なくともだらしない体型ではない、はず。
とはいえ、人様に見せるような身体つきかどうかは、別の話なわけで。
「ごめんあそばせ」
「うお」
背後から聞こえてくるジェンティルの声。
そして直後、ぴたりと暖かくて柔らかな手のひらが背中へと触れた。
突然の温もりに思わず声を漏らしてしまうが、彼女はそれを全く意に介さない。
ただ、その長い指先で、ゆっくりと撫でるように身体をなぞっていく。
「広背筋……三角筋……僧帽筋……」
「……っ!」
何かを確かめるような、妙に優しい手つき。
ぞくぞくとするようなこそばゆさが走って、身体が反応してしまいそうになった。
腰の辺りから肩の方へ向けてジェンティルの手が動いていき、やがて俺の両腕へと辿り着く。 - 4二次元好きの匿名さん25/04/01(火) 23:20:52
「上腕二頭筋……上腕三頭筋……上腕筋……」
ジェンティルは、俺の両腕を軽く揉むようにしながら呟く。
いつの間にか彼女との距離は詰められていたらしく、生暖かな吐息が背中へとかかっていた。
妙な緊張感が入って、心臓の鼓動が少しだけ大きくなっていく。。
気持ちを落ち着かせるべき、深呼吸を一つ。
その刹那、小さな微笑みが鼓膜を揺らした。
「ふふ……トレーナー、両腕を上げてくださるかしら?」
「あ、ああ」
不思議な状況に、冷静さを失っていたこともあるのだろう。
俺は彼女の問いかけに何の疑問も持たぬまま、言われるがままに両腕を上げる。
すると、しゅるりと後ろから長い腕が伸びて来て、がっしりと絡みついて来た。
そして背中には、大きな二つの膨らみがぎゅっと押し付けられる。
圧倒的なまでの重量感、それでいて伝わってくる柔らかさと温もり、ふわりと漂う甘い香り。
その、あまりに艶めかしい感触もさることながら────特筆すべきはその体幹である。
俺は真っ直ぐ立っていて、ジェンティルは前傾姿勢に近い形。
持ち上げられてしまえばなす術もないが、この状態ではまだ抜け出す余地はある、本来ならば。
しかしどうだろうか、俺の身体は地面に縫い付けられたかのように、ぴたりと動くことが出来ない。
彼我のパワー差は勿論あるが、それ以上に、彼女の惚れ惚れするようなボディバランスが為せる技というべきだろう。
ジェンティルドンナはトレーナーを鯖折りにするつもりなのかもしれない。
そんな疑念は、再び身体を這いまわり始めた彼女の手の感触によって、吹き飛ばされた。
しっとりとした肌触りが、ゆっくりと全身をまさぐるように、俺の腹筋を、胸筋を、じっくりと撫で回していく。
そして背中では、すりすりと、彼女が鼻先を擦りつけていた。 - 5二次元好きの匿名さん25/04/01(火) 23:21:11
「外腹斜筋……腹直筋……大胸筋……あら、少し心拍数が高いのではなくって?」
「キミのような子に密着されたら、誰だってこうもなるさ」
「……ほほほ」
一瞬、ぎゅっと抱き締める力を強めてから、ジェンティルは身体を離した。
彼女の体温で暖められた身体は、急速に冷やされていく。
そこでようやく、俺は全身がうっすらと汗ばんでしまっていることに気づいた。
……不愉快じゃなかっただろうか、と彼女の様子を窺う。
「どうやら、トレーニングはしっかりと続けていたようね?」
俺の不安を他所に、ジェンティルは小さく頷きながらそう言った。 - 6二次元好きの匿名さん25/04/01(火) 23:21:29
キミみたいにパワーをつける────契約したばかりの頃、ジェンティルに対して誓ったことだった。
最初の頃は一日のトレーニングで生まれたての小鹿のようになっていたが、今は毎日でもこなせるようになっている。
流石に、彼女並みとはまだまだ行かないけれど、それなりに結果は出ていると考えていた。
なるほど、突然何の奇行かと思ったが、トレーニングを怠っていないかどうかを確認していたのか。
……まだまだ、結果が出ているとは言えないかな、そう苦笑いを浮かべつつも言葉を返す。
「勿論、キミに対して言ったことを、翻すつもりはないから」
「“それ”は心配しておりませんわ……私が選んだトレーナーですもの、ねぇ?」
ジェンティルの口角が、楽しげに吊り上がる。
はて、どうやら俺のことを疑っていたわけではないらしい。
では何故、あそこまで肉付きを確かめるような触れ方をしていたのだろうか。
疑問に首を傾げてしまいそうになる直前────ジェンティルの目が、微かに鋭くなった。
「けれど、筋肉量の増え方が私の想定を、少しだけ上回っていたわ」
「そうだった?」
「ええ……貴方、私の把握していないトレーニングをされているのではなくって?」
「えっと、それは」
確かに、最初の頃はジェンティルの指導の下、筋トレを行っていた。
彼女の厳しい指導は性に合っていたし、何となく、彼女も楽しそうに見えていたから。
しかしデビューを果たしてからは、実家のことも相まって彼女はとても多忙な日々を過ごしている。
そのため俺のトレーニング付き合わせる時間などはなく、時折二人で、トレーニングメニューを調整する程度にしていた。
……そもそも、担当ウマ娘をトレーナーのトレーニングの指導をさせることが、本来おかしいわけなのだが。 - 7二次元好きの匿名さん25/04/01(火) 23:21:47
「ちょっと前から筋トレを始めた同僚がいてさ、彼とやる時間が増えたんだよ」
「そう」
「やっぱり誰かと一緒にやるのが俺には合ってるみたいでさ、全体的な負荷も少しずつ上げられて」
「へえ」
「しっかり効果が出ているなら良かったなって……あのさ、ジェンティル?」
「なにか?」
「……何か怒ってる?」
先ほどから、ジェンティルは少ない言葉で相槌を打っていた。
そして回数を重ねるごとに、眉尻が少しずつ上がっていたのである。
怒っているというよりは、拗ねているといった表情。
彼女は俺の言葉に耳をピンと立てると、呆れたように、小さなため息をついた。
「ふう……まさか、怒る理由なんてありませんわ」
「それなら良いけど」
「ただ、結果よりも過程を重視する方々の気持ちが、ほんの少し、理解出来ただけ」
ジェンティルはそう言いながら、傍らに置かれていた俺のジャージを羽織った。
ウマ娘の中でも彼女は恵体の類ではあるが、それでもやはり、男女の差というものはある。
袖が余ってしまうくらいにブカブカではあるが────どうやら、それがお気に召した模様。
彼女の口元が緩み、眉の曲線が和らいで、尻尾がぱたぱたと揺れ動く。
そんな光景を俺がきょとんと眺めていると、やがて彼女はちらりとこちらに視線を向けた。 - 8二次元好きの匿名さん25/04/01(火) 23:22:03
「貴方はこれから、ランニングに行くつもりだったのよね?」
「あ、ああ、でもキミに何か用事があればそちらを優先するから」
今日は、ジェンティルの休養日であった。
ミーティングもなく、事務作業の気分転換がてら走りに行こうと思ったら、彼女が来たのである。
俺はジャージを諦めて、シャツを着込みながら言葉を待つ。
すると、彼女は不敵な笑みを浮かべた。
「丁度良いわ、その筋肉がハリボテではないか────私が確認してあげる」 - 9二次元好きの匿名さん25/04/01(火) 23:22:19
トレセン学園近くの河川敷。
定番のランニングコースとなっているそこを、俺は息を切らしながら駆けていた。
まだ大した距離は走っていない、にもかかわらず、その負担はいつもの数倍に感じるほど。
その原因はというと。
「フォームが乱れてきている、ちゃんと背筋を伸ばして!」
ジェンティルの叱責が飛ぶ。
懐かしさすら感じる声に、俺は心の中で笑みを浮かべながらも背筋を伸ばした。
通りすがる人達から驚きと困惑の視線を感じるが、それは全く気にならない。
「ほら、もっとスピードを上げる、トロトロ走っていては迷惑だわ、私に恥をかかせる気?」
「そんなわけ……ない……っ!」
「……ふふ」
気合を入れて速度を上げると、小さな微笑みが聞こえて来た。
どこか誇らしげな表情を浮かべているジェンティルは、俺の腕の中でこちらを見上げている。
そして俺は、彼女の背中と膝裏に手を入れて、横向きに抱きかかえながら走っていた。
いわゆる────お姫様抱っこ。
俺の身体にちゃんと“力”が備わっているのかどうか確かめるために、彼女が科した枷であった。
ウマ娘一人分の重量は、なかなかの負荷になる。
だからこそ、俺が彼女と同じ手札を一枚でも持てるようになったかを示す、絶好の機会といえた。 - 10二次元好きの匿名さん25/04/01(火) 23:22:33
「……」
「……」
しっかり走れているせいか、ジェンティルはしばらく無言のまま俺を見つめていた。
こうして抱きかかえてみると、彼女の身体は思いの外、小さく感じる。
柔らかくて暖かくて、こうして黙っていると、まるで普通の女の子のようにも見えた。
「……あら、あの方達は」
ジェンティルは遠くを見つめながら、そう呟いた。
その視線を辿ってみると、少し離れた所に前を走る人影が見つける。
ジャージを着込んだ男性と、それに背負われる、青いロングヘアーのウマ娘。
遠目からでも俺達にはわかる────何かと縁のある、ヴィルシーナとそのトレーナーであった。
何でおんぶしながらランニングしてるんだろ、と言いかけたが言える立場でないことを思い出し、口を噤む。
元々、彼とともにランニングをする予定だったから、居合わせるのは不思議ではないのだが。
「トレーナー」
「……何かな?」
「まさかとは思うけど、私に、あの方達の背中を見せ続けるつもりかしら?」
まあ、そうくるよな。
挑むように、試すように、言葉を向けて来るジェンティル。
その瞳はある種の期待に満ち溢れていて、まるで宝石のように輝いて見えた。
ああ、そんな目で見つめられたら、応えなくてはいけない。
俺は自身を奮い立たせて、走りのギアを一段階上げた。
「────よろしくてよ」
ジェンティルは柔らかな笑顔を浮かべながら、囁くように言葉を紡ぐ。
そして、そっと両腕を俺の背中に回して、身体を寄せるのであった。 - 11二次元好きの匿名さん25/04/01(火) 23:22:58
お わ り
所々変なネタが入ってる気がしますが特に意味はありません - 12二次元好きの匿名さん25/04/01(火) 23:23:54
良Ssありがとう
トレーナー試すドンちゃん可愛かったよ… - 13二次元好きの匿名さん25/04/01(火) 23:25:49
ヒソヒソ…またジェンティルドンナさんよ…
ヒソヒソ…最強のトリプルティアラはトレーナーも最強なのだとアピールしているんだわ… - 14二次元好きの匿名さん25/04/01(火) 23:49:36
おつおつ
筋トレというていでいちゃつきやがってよぉ… - 15二次元好きの匿名さん25/04/01(火) 23:59:44
おつおつ
今回も最高でした… - 16二次元好きの匿名さん25/04/02(水) 07:59:01
ありがとう・・・ありがとう・・・
- 17二次元好きの匿名さん25/04/02(水) 16:36:16
唐突なTBRでダメだった
- 18125/04/02(水) 23:35:37
- 19二次元好きの匿名さん25/04/03(木) 01:21:59
心拍数のくだりから繰り出されるトレーナーのカウンター好き
- 20二次元好きの匿名さん25/04/03(木) 02:13:14
トレ吸いはウマ娘の嗜みなのだ
- 21二次元好きの匿名さん25/04/03(木) 10:16:15
いいレースになりそうだ
- 22125/04/03(木) 20:06:23
- 23二次元好きの匿名さん25/04/03(木) 20:07:01
お姫様抱っこに憧れてる乙女ジェンティルはいいぞ…